(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190910
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】フレーム間固定器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/62 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61B17/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099430
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL18
4C160LL42
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、連結部材をフレームの半天球方向における所望の傾斜位置に調節可能とし、且つ調整された傾斜位置を保持する手段を提供する。
【解決手段】フレームと、上記フレームの挿通孔に挿通されて接続される連結部材と、上記連結部材を上記フレームに対して傾斜可能で該傾斜状態で固定可能な傾斜固定機構とを有し、上記傾斜固定機構は、上記フレームの挿通孔の一面周囲に凹曲面状を成す凹部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
上記フレームの挿通孔に挿通されて接続される連結部材と、
上記連結部材を上記フレームに対して傾斜可能で該傾斜状態で固定可能な傾斜固定機構とを有し、
上記傾斜固定機構は、
上記フレームの挿通孔の一面周囲に凹曲面状を成す凹部を備える、ことを特徴とするフレーム間固定器。
【請求項2】
前記傾斜固定機構は、
前記凹部に配設される凸曲面状を成す凸状座面部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のフレーム間固定器。
【請求項3】
前記凹部の曲率と、凸状座面部の曲率がほぼ一致する、ことを特徴とする請求項2に記載のフレーム間固定器。
【請求項4】
前記凹部の曲率よりも、凸状座面部の曲率の方が大きい、ことを特徴とする請求項2に記載のフレーム間固定器。
【請求項5】
前記凸状座面部は、長尺の連結部材を挿通する座金部材の一面に形成される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のフレーム間固定器。
【請求項6】
前記座金部材は、前記連結部材を傾斜して挿通可能な十分な遊間を以て設けられる貫通孔を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のフレーム間固定器。
【請求項7】
前記凹部は、前記フレームの一部を切り欠いて成る切欠部によって略C字状を成す、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のフレーム間固定器。
【請求項8】
前記凸状座面部は、前記連結部材を挿通し得、且つ、該連結部材の軸方向位置に係合可能な固定部材の一面に形成される、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のフレーム間固定器。
【請求項9】
前記フレームは、前記挿通孔の他面周囲に凹曲面状を成す凹部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のフレーム間固定器。
【請求項10】
前記フレームを挟持するように一対の雌ねじ体を備える、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のフレーム間固定器。
【請求項11】
前記一対の雌ねじ体は、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第一雄ネジ螺旋溝に螺合する第一雌ねじ体と、
上記リード角及び/又はリード方向に対して相違なるリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第二雄ネジ螺旋溝に螺合する第二雌ねじ体で構成される、ことを特徴とするフレーム間固定器。
【請求項12】
前記フレームは、前記一対の雌ねじ体の内、一方の雌ねじ体のフレームに対する回転を防止する回転止め部が形成される、ことを特徴とする請求項10又は11に記載のフレーム間固定器。
【請求項13】
前記連結部材の外周には、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第一雄ネジ螺旋溝と、
上記リード角及び/又はリード方向に対して相違なるリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第二雄ネジ螺旋溝が形成される、ことを特徴とするフレーム間固定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生まれつき又は骨折などにより左右の脚長が異なった人の骨を延長し、両足の脚長を同一にする治療や、粉砕骨折などの骨折の治療に際し、骨折部を体外から固定する創外固定器のようなフレーム間固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の創外固定器としては、対向する2つのリング状フレームの間に、複数の連結部材を接続して構成するものが知られている。
【0003】
このような創外固定器の人体への取り付けは、2つのリング状フレームの間に治療する肢体の患部が位置するようにリング状フレームを配置し、例えば、分離した骨分節に、リング状フレームに取り付けられるワイヤの一端を挿入する。これによって、患部が人体の外側から固定される。
【0004】
2つの対向するリング状フレームは、人体への取り付け態様によっては、対向するリング状フレームの向きは必ずしも平行が最良な状態ではなく、傾斜して取り付けた方が患部の固定には適している場合がある。
【0005】
このようなことを考慮して、例えば、特表2016-501051(特許文献1)に開示される創外固定器は、対向するリング状フレームが、一端にヒンジ機構が設けられた連結部材によって接続され、対向するリング状フレームが互いに傾斜することが可能で、且つ傾斜状態を維持することができるようにしている。また、特表2009-505736(特許文献2)に開示される創外固定器は、リング状フレームと連結部材との接続に際し、球面座金を適用することで、特許文献2と同様に、対向するリング状フレームが互いに傾斜することが可能で、且つ傾斜状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-501051公報
【特許文献2】特表2009-505736公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、伸縮式の接続部材の端部に、接続部材の軸方向に対して一方向への傾斜を許容する角度調整機構を有し、該角度調整機構を接続部材の軸回りに回転できるようにする回転調整機構を有して構成するものが開示されている。
【0008】
特許文献2は、凸状の球面ワッシャと、凹状の球面ワッシャとを利用して、角度と回転位置とを同時に調整できるものが開示されている。
【0009】
特許文献1の創外固定器は、対向する2つのリング状フレームを互いに傾斜させるため、角度位置を調整する機構と回転位置を調整する機構の2つの機構が必要となる。従って、構成が複雑になると共に、所望の傾斜位置に調整するには2つの機構を操作する必要があり、また、傾斜状態を維持するためには2つの機構をそれぞれ固定しなければならないため、容易に操作することができず、また、調整が難しいという問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2の創外固定器は、凸状の球面ワッシャと凹状の球面ワッシャとが必要になることから、部品点数が多くなり、各部材間のアライメントにより組付けガタが発生して、所望の傾斜位置に確実に固定することが難しいという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、連結部材をフレームの半天球方向における所望の傾斜位置に調節可能とし、且つ調整された傾斜位置を保持する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフレーム間固定器は、フレームと、上記フレームの挿通孔に挿通されて接続される連結部材と、上記連結部材を上記フレームに対して傾斜可能で該傾斜状態で固定可能な傾斜固定機構とを有し、上記傾斜固定機構は、上記フレームの挿通孔の一面周囲に凹曲面状を成す凹部を備える。
【0013】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記傾斜固定機構は、前記凹部に配設される凸曲面状を成す凸状座面部を有する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記凹部の曲率と、凸状座面部の曲率がほぼ一致する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記凹部の曲率よりも、凸状座面部の曲率の方が大きい、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記凸状座面部は、長尺の連結部材を挿通する座金部材の一面に形成される、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記座金部材は、前記連結部材を傾斜して挿通可能な十分な遊間を以て設けられる貫通孔を有する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフレーム間固定器は、 前記凹部は、前記フレームの一部を切り欠いて成る切欠部によって略C字状を成す、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記凸状座面部は、前記連結部材を挿通し得、且つ、該連結部材の軸方向位置に係合可能な固定部材の一面に形成される、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記フレームは、前記挿通孔の他面周囲に凹曲面状を成す凹部を有する、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記フレームを挟持するように一対の雌ねじ体を備える、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記一対の雌ねじ体は、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第一雄ネジ螺旋溝に螺合する第一雌ねじ体と、上記リード角及び/又はリード方向に対して相違なるリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第二雄ネジ螺旋溝に螺合する第二雌ねじ体で構成される、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記フレームは、前記一対の雌ねじ体の内、一方の雌ねじ体のフレームに対する回転を防止する回転止め部が形成される、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明のフレーム間固定器は、前記連結部材の外周には、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第一雄ネジ螺旋溝と、上記リード角及び/又はリード方向に対して相違なるリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成された第二雄ネジ螺旋溝が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な構造によって、連結部材をフレームの半天球方向における所望の傾斜位置に調節可能とすると共に、調節された傾斜位置を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第一の実施形態に係る創外固定器を示す斜視図である。
【
図2】第一の実施形態に係る創外固定器を示す正面図である。
【
図3】連結部材の一部(A)正面図、(B)側面図、(C)平面図である。
【
図4】(A)第二雌ねじ体、(B)第一雌ねじ体を示す斜視図である。
【
図5】(A)フレームと連結部材との接続状態を示す一部断面図と、(B)(A)の一部拡大図である。
【
図6】(A)第二雌ねじ体を示す裏面図と、(B)第一雌ねじ体を示す平面図である。
【
図7】変形例に係る創外固定器を示す一部正面図である。
【
図8】(A)変形例に係るフレームと連結部材との接続状態を示す一部断面図と、(B)(A)において連結部材が傾斜した状態を示す一部断面図である。
【
図9】(A)外周側に切欠部が形成される変形例に係るフレーム(B)切欠部が無い変形例に係るフレームを示す一部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の創外固定器の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は第一の実施形態に係る創外固定器を示す斜視図、
図2は第一の実施形態に係る創外固定器を示す正面図、
図3は連結部材の一部(A)正面図、(B)側面図、(C)平面図、
図4は(A)第二雌ねじ体、(B)第一雌ねじ体を示す斜視図、
図5は(A)フレームと連結部材との接続状態を示す一部断面図と、(B)(A)の一部拡大図、
図6は(A)第二雌ねじ体を示す裏面図と、(B)第一雌ねじ体を示す平面図である。
【0028】
本実施形態においては、本発明のフレーム間固定器を、創外固定器に適用した例を説明するが、創外固定器以外の固定器、例えば、建築用足場の固定器など様々なものに適用しても良い。
【0029】
図1に示すように、創外固定器1は、二つのフレーム2、2を有し、フレーム2、2は、複数の連結部材3、3・・・によって連結される。なお、フレームは、二つに限られず、一つあるいは三つ以上であってもよい。また、連結部材は、三つ以下あるいは五つ以上であってもよい。
【0030】
図2に示すように、フレーム2は、治療患部の少なくとも一部を包囲可能なように略湾曲板状で略環状に形成される。フレーム2には、略等間隔で複数の挿通孔21、21・・・が一面から他面に貫通して形成され、各挿通孔21、21・・・は、それぞれ内周側に切欠部22、22・・・を有することで、内周側から連結部材3を挿入することが可能となっている。勿論、この切欠部22、22・・・は、必ずしもフレーム2の内周側から切り欠いた様に形成されなければならないと言うものではなく、フレーム2の外周側から切り欠いた様に形成したり、或いは、内周側と外周側とからの形成を混在させたものであっても好く、また、その数量や形成割合も適宜設定することができる。
【0031】
挿通孔21の周囲には、フレーム2の一面及び他面のそれぞれに段部23と凹部24とが形成される。段部23が挿通孔21を囲むように配置され、さらに、凹部24が段部23を囲むように配置される。段部23は、切欠部22から挿通孔21(フレーム2の内周側から外周側)に向かうに従って幅広となるように構成され、これにより、後述するように、該段部23に、連結部材3を保持する第二雌ねじ体6の嵌合部53が嵌合することで、連結部材3が切欠部22から抜け出ないようにしている。
【0032】
凹部24は、凹曲面状を成し、切欠部22を除いた挿通孔21を囲むように略C字状に形成されている。凹部24は、挿通孔21に挿通した連結部材3の中心軸の所定位置を中心とした半径Rに形成してもよい(
図5参照)。段部23と凹部24は、フレーム2の一面と他面との間の中心を挟んで、略対称的に形成することができるが、必ずしも対称でなければならないというものではない。
【0033】
連結部材3は、対向するフレーム2、2の間隔を治療部位に合わせて所定の間隔に調整できる程度の長さを有する長尺状に形成される。連結部材3の外周には、
図3に示すように、左ねじである第一雄ネジ螺旋溝31及び右ねじである第二雄ネジ螺旋溝32の二種類の雄ネジ螺旋溝を同一領域上に重複して形成している。具体的には、連結部材3の軸心(ねじ軸)Cの垂直となる面方向に連続する略三日月状のネジ山3aが、連結部材3の一方側(
図3(A)の左側)及び他方側(
図3(A)の右側)に交互に設けられており、ネジ山3aをこのように構成することで、右回りに旋回する螺旋溝及び左回りに旋回する螺旋溝の二種類の螺旋溝をネジ山3a同士の間に形成することができる。
【0034】
本実施形態では、第一雄ネジ螺旋溝31及び第二雄ネジ螺旋溝32の二種類の雄ネジ螺旋溝を、連結部材3の外周に重畳形成している。従って、連結部材3は、右ねじ及び左ねじの何れかの雌ねじ体とも螺合することが可能となっている。なお、二種類の雄ネジ螺旋溝を形成する構造の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0035】
また、本実施形態では、第一雄ネジ螺旋溝を左ねじとし、第二雄ネジ螺旋溝を右ねじとしているが、これに限られず、一方の螺旋溝を適宜のリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成し、他方の螺旋溝を該リード角及び/又はリード方向に対して相違なるリード角及び/又はリード方向に設定されるように形成するものであれば良い。
【0036】
図4に示す第一雌ねじ体5(固定部材)は、そのねじ孔に、左ねじとしての第一雌ねじ螺旋条が形成されて、連結部材3の外周に形成される第一雄ネジ螺旋溝31に螺合し、第二雌ねじ体6(固定部材)は、そのねじ孔に右ねじとしての第二雌ねじ体螺旋条が形成されて、連結部材3の外周に形成される第二雄ネジ溝32に螺合する。
【0037】
第一雌ねじ体5は、締結具が係合可能な六角部51と、フレーム2の挿通孔21よりも大径で凹部24に係合するフランジ部52と、フレーム2の段部23に嵌合する嵌合部53と、第二雌ねじ体6側に向かって突出する内筒部54とを有している。第二雌ねじ体6は、締結具が係合可能な六角部61と、フレーム2の挿通孔21よりも大径で凹部24に係合するフランジ部62と、第一雌ねじ体5の内筒部54が挿入される管状の外筒部63とを有している。
【0038】
嵌合部53は、
図6(B)に示すように、フレーム2の段部23に嵌合するように、平面視で、角部が弧状の略台形状に形成されている。これにより、嵌合部53が段部23に嵌合した状態において、第二雌ねじ体6が、挿通孔21から切欠部22を通って内周側へ抜け出すのが防止され、且つ、第二雌ねじ体6のフレーム2に対する回転が防止される。
【0039】
図5に示すように、フランジ部52、62には、フレーム2の凹部に当接するように配設される、それぞれ凸状座面部52a、62aが形成されている。凸状座面部52a、62aは、凸曲面状を成し、挿通孔21に挿通した連結部材3の中心軸の所定位置を中心とした半径rに形成される(
図5参照)。これによって、第一雌ねじ体5及び第二雌ねじ体6は、フレーム2に対して半天球方向のあらゆる方向に傾斜しても、フランジ部52、62が全周に亘ってフレーム2との係合関係を保持することが可能となる。
【0040】
凸状座面部52a、62aの半径rとフレーム2の凹部24の半径Rとの関係は、半径r<半径Rを満たす、すなわち、凹部の曲率よりも凸状座面部52a、62aの曲率の方が大きいように形成されているが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0041】
図6(A)に示すように、第二雌ねじ体6の外筒部63の円錐内周面は、略正円形状であり、かつ、軸方向に沿って径方向に拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは内周面が、第一雌ねじ体5に向かって拡径しており、内筒部54の外周面と平行になる。この内周面は、平滑面となる。内周面の内周長は、突端側が最も大きく、基端側が最も小さい。挿通孔21は、外筒部63が傾斜して挿通可能な十分な遊間を有するように設定されている。
【0042】
図6(B)に示すように、第一雌ねじ体5の内筒部54の外周面には、周方向に移動するにつれて、径方向に変位する突起が周方向に120°の位相で3ヶ所均等に配置される。結果として、内筒部54を軸視すると、平面を三つの角丸でつないだ略正三角形状を成す。
【0043】
第二雌ねじ体6の外筒部63は当初略正円形状を成しているが、第一雌ねじ体5の略三角錐状の内筒部5を受け入れることによって、徐々に内筒部5の外形に適合するように角丸の略正三角形状に変形し、最終的には、内筒部54と外筒部63とが嵌合(フィット)した状態になる。この状態において、軸方向に一致する場所の内筒部54の外周長と、外筒部63の内周長が、ほぼ等しくなる。勿論、これは、内筒部54の外周長と、外筒部63の内周長とを予めほぼ等しい長さとなるように設定しておくことで達するように構成してもよい。
【0044】
このように、略正円形状の外筒部63は角丸の略正三角形状の内筒部54に弾性変形及び/又は塑性変形(弾塑性変形)をしながら、適合させつつ双方を互いに嵌合させることから、弾塑性変形によって、第一雌ねじ体5と第二雌ねじ体との相対回転を効果的に抑止する構造となっている。挿通孔21は、外筒部63が傾斜して挿通可能な十分な遊間を有するように設定されている。
【0045】
以上のような構成の創外固定器の人体への取り付け方法を以下に説明する。
【0046】
まず、連結部材3の所定位置に二対の第一雌ねじ体5と第二雌ねじ体6とを螺合し、対向するフレーム2、2の想定される取り付け位置にそれぞれ一対の両雌ねじ体5、6を予め配置する。この時、第一雌ねじ体5の内筒部54と第二雌ねじ体6の外筒部6とは嵌合しない程度に互いに接近した位置に配置される。
【0047】
続いて、フレーム2、2に肢体を通し、治療部位が対向するフレーム2、2の間にくるようにフレーム2、2の傾斜位置及び間隔を調整して配置する。フレーム2、2の内側に二対の第一雌ねじ体5、第二雌ねじ体6を設置した連結部材3を通し、一対の第一雌ねじ体5、第二雌ねじ体6のフランジ部52、62間にフレーム2を配置して、外筒部63(内筒部54)を切欠部22から挿通孔21へと挿入する。
【0048】
このとき、対向するフレーム2、2は互いに傾斜することがあるが、第一雌ねじ体5と第二雌ねじ体6のフランジ部52、62の凸状座面部52a、62aと、フレーム2の凹部24、24とが係合することによって、第一雌ねじ体5と第二雌ねじ体6は、フレーム2に対して所望の方向に傾斜させることができる。
【0049】
この状態で、第一雌ねじ体5の嵌合部53をフレーム2の段部23と嵌合し、その後、第二雌ねじ体6を締結側(右回転側)に回転すると、第二雌ねじ体6の外筒部63内に第一雌ねじ体5の内筒部54が挿入され、外筒部63が内筒部54の外形に適合するように弾塑性変形し、最終的に外筒部63と内筒部54とが嵌合する。
【0050】
これによって、第一雌ねじ体5と第二雌ねじ体6とがフレーム2に対して所望の傾斜を保った状態で、相対回転不能に固定されることから、連結部材3がフレーム2に対して所望の傾斜で固定される。
【0051】
これを繰り返して、フレーム2、2に複数の連結部材3・・・が固定される。
【0052】
以上説明したように、第一の実施形態は、簡易な構造によって、連結部材をフレームの半天球方向における所望の傾斜位置に調節可能に構成すると共に、調節された傾斜位置に保持することができる。
【0053】
第一の実施形態の変形例としては、例えば、
図7に示すように、フレーム102に形成される、挿通孔121の形状(凹形状)と、隣接する切欠部121、121間の形状(凸形状)とが、略同形状であって、フレーム102の内側には、これら凹凸形状が交互に繰り返して形成されている。内周側の切欠部121、121間の形状が弧状を成すため、人体に接触しても人体を傷つけることが無い。
【0054】
連結部材103は、外周に右ねじのねじ部136のみが形成された構成とし、対向する側面が平行な平面135となる断面略楕円形状を有している。連結部材103の対向する二平面135、135の幅は、切欠部122の開口幅よりも小さく、また、直径は、切欠部122の開口幅よりも大きく設定されている。そのため、連結部材103を、その間隔が狭い二平面135、135間が切欠部122を通して挿通孔121へ挿入し、その後、軸回りに90°回転することで、連結部材103の挿通孔121からの抜け出しが防止される。挿通孔121は、連結部材103が傾斜して挿通可能な十分な遊間を有するように設定されている。
【0055】
連結部材103には、ねじ孔に右回りのねじ溝が形成される雌ねじ体105(固定部材)が螺合され、雌ねじ体105とフレーム102との間には、座金部材106を備えている。
【0056】
具体的には、
図8に示すように、一対の雌ねじ体105、105を有し、雌ねじ体105とフレーム102との間には、一面にフレーム102の凹部124に当接するように配設される凸状座面部106aが形成され、他面(雌ねじ体105側)に平面部が形成される座金部材106を備えている。
【0057】
座金部材106、106の凸状座面部106aは、凸曲面状を成し、これによって、フレーム2に対して半天球方向のあらゆる方向に傾斜しても、フランジ部52、62が全周に亘ってフレーム2との係合関係を保持することが可能となる。
【0058】
以上のような構成の創外固定器の人体への取り付けは、まず、対向するフレーム102、102の想定される取り付け位置にそれぞれ一対の雌ねじ体105、105と座金部材106、106を予め配置する。
【0059】
続いて、フレーム102、102に肢体を通し、治療部位が対向するフレーム102、102の間に位置するようにフレーム102、102の傾斜位置及び間隔を適宜調整して配置する。連結部材3を通し、一対の座金部材106、106間にフレーム2を配置して、接続部材103を切欠部122から挿通孔121へと挿入する。
【0060】
このとき、対向するフレーム102、102は互いに傾斜することがあるが、
図8(B)に示すように、座金部材106、106の凸状座面部106a、106aと、フレーム102の凹部124、124とが係合することによって、座金部材106、106は、フレーム2に対して所望の方向に傾斜することができる。
【0061】
この状態で、雌ねじ体105、105を締結側(右回転側)に回転すると、座金部材106、106間にフレーム2が挟持されて固定される。
【0062】
これによって、座金部材106、106が所望の傾斜を保った状態で、固定されることから、連結部材103がフレーム102に対して所望の傾斜で固定される。
【0063】
これを繰り返して、フレーム102、102に複数の連結部材103・・・が固定される。
【0064】
以上説明したように、変形例によっても、簡易な構造によって、連結部材をフレームの半天球方向における所望の傾斜位置に調節可能に構成すると共に、調節された傾斜位置に保持することができる。
【0065】
その他の変形例としては、例えば、
図9(A)に示すように、フレーム202に形成される挿通孔221、221・・・は、それぞれ外周側に切欠部222、222・・・を有するようにしても良い(外側切欠タイプ挿通孔)。また、
図9(B)に示すように、フレーム302には、挿通孔321、321・・・のみを形成するようにしても良い(切欠無し挿通孔)。これらのタイプの挿通孔と、さらに、第一の実施形態で示したような、フレーム2の挿通孔21に内周側から切欠部22を設ける、内側切欠タイプ挿通孔を適宜組合せて、フレームを構成するようにしても良い。
【0066】
本実施形態においては、凹部24、124、224、324、連結部材3、103、第一雌ねじ体5、第二雌ねじ体6、雌ねじ体105、座金部材106、凸状座面部52a、62a、106aなどが傾斜固定機構を構成している。
【符号の説明】
【0067】
1 創外固定器
2 フレーム
24、124、224、324 凹部
3、135 連結部材
5 第一雌ねじ体
6 第二雌ねじ体
52a、62a 凸状座面部
105 雌ねじ体
106 座金部材
106a 凸状座面部