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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190918
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20221220BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099450
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐津 尚哉
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC03
3J063BA11
3J063CA01
3J063CA05
3J063CD65
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD33
3J063XD53
3J063XD62
3J063XD72
3J063XE18
3J063XF13
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】オイルガターにより多くの潤滑油を捕捉してより多くの潤滑油を潤滑油被供給部に供給でき、潤滑油被供給部の潤滑性能を向上できる動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】変速機1のオイルガター41の底板42に、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を油路47に導入する潤滑油導入孔48が形成されている。レフトケース4は、底壁4Aと、底壁4Aから上方に延び、リバースアイドラギヤ9Aとリバース軸9の軸線方向に並ぶ縦壁部4Cと、レフトケース4の底壁4Aからリバースアイドラギヤ9Aの外周形状に沿って湾曲しながら上方に延び、リバースアイドラギヤ9Aの径方向でリバースアイドラギヤ9Aに対向する円弧状壁部4rとを有し、円弧状壁部4rの上端部4nは、リバース軸9の軸線9aよりも上方に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、
前記ケース部材の底部に貯留される潤滑油を掻き上げるギヤ部材を有し、前記ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、
前記ギヤ部材の直上を通過して前記回転軸の軸線方向に延び、前記ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を捕捉して潤滑油被供給部に供給するオイルガターとを有し、
前記オイルガターは、底板と、前記底板から上方に突出する側壁とによって構成される油路と、前記ギヤ部材の直上に位置するようにして前記底板を上下方向に貫通し、前記ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を前記油路に導入する潤滑油導入孔と、前記油路を流れる潤滑油を前記潤滑油被供給部に供給する潤滑油供給部とを有する動力伝達装置であって、
前記ケース部材は、底壁と、前記底壁から上方に延び、前記ギヤ部材と前記回転軸の軸線方向に並ぶ縦壁部と、前記ケース部材の前記底壁から前記ギヤ部材の外周形状に沿って湾曲しながら上方に延び、前記ギヤ部材の径方向で前記ギヤ部材に対向する円弧状壁部とを有し、
前記円弧状壁部の上端部は、前記回転軸の軸線よりも上方に位置していることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記潤滑油導入孔は、前記回転軸の軸線方向の一端部が前記縦壁部と上下方向に並んで位置し、前記回転軸の軸線方向の一端部から前記回転軸の軸線方向の他端部に向かうにつれて前記回転軸の軸線から離れるように前記回転軸の軸線方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記底板の下面にガイド部が設けられており、
前記ガイド部は、前記回転軸の軸線側の前記潤滑油導入孔の縁部に沿って前記回転軸の軸線方向に延び、かつ、前記回転軸の軸線から離れるように前記縁部から下方に突出しており、
前記オイルガターを前記回転軸の軸線方向から見た場合に、前記ガイド部は、前記円弧状壁部の延長線上に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記オイルガターは、前記潤滑油導入孔の縁部から上方に突出し、前記潤滑油導入孔を取り囲む周壁を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記底板の下部に突出壁が設けられており、
前記突出壁は、前記回転軸の軸線方向の一端部に位置する前記潤滑油導入孔の縁部から前記縦壁部に向かって突出しており、
前記縦壁部は、前記回転軸の端部を回転自在に支持する支持部と、前記突出壁に向かって開口する開口部を有し、前記開口部から導入される潤滑油を前記回転軸の端部に供給する潤滑油通路とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された変速機等の動力伝達装置において、変速ギヤにより潤滑油を掻き上げて潤滑個所の潤滑を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される変速機は、変速機ケースの底部に貯留される潤滑油を掻き上げる第1大径ギヤおよび第2大径ギヤと、第1大径ギヤおよび第2大径ギヤによって掻き上げられた潤滑油をそれぞれ捕集する第1レシーバおよび第2レシーバを有する。
【0004】
第1レシーバおよび第2レシーバは、軸体の軸線方向に延在して配置されており、捕集した潤滑油を潤滑箇所に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-7210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の変速機にあっては、第1大径ギヤおよび第2大径ギヤによって掻き上げられた潤滑油を第1レシーバおよび第2レシーバによって捕集しているだけであるので、第1大径ギヤおよび第2大径ギヤにより多くの潤滑油を捕集できないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、オイルガターにより多くの潤滑油を捕捉してより多くの潤滑油を潤滑油被供給部に供給でき、潤滑油被供給部の潤滑性能を向上できる動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、前記ケース部材の底部に貯留される潤滑油を掻き上げるギヤ部材を有し、前記ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、 前記ギヤ部材の直上を通過して前記回転軸の軸線方向に延び、前記ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を捕捉して潤滑油被供給部に供給するオイルガターとを有し、前記オイルガターは、底板と、前記底板から上方に突出する側壁とによって構成される油路と、前記ギヤ部材の直上に位置するようにして前記底板を上下方向に貫通し、前記ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を前記油路に導入する潤滑油導入孔と、前記油路を流れる潤滑油を前記潤滑油被供給部に供給する潤滑油供給部とを有する動力伝達装置であって、前記ケース部材は、底壁と、前記底壁から上方に延び、前記ギヤ部材と前記回転軸の軸線方向に並ぶ縦壁部と、前記ケース部材の前記底壁から前記ギヤ部材の外周形状に沿って湾曲しながら上方に延び、前記ギヤ部材の径方向で前記ギヤ部材に対向する円弧状壁部とを有し、前記円弧状壁部の上端部は、前記回転軸の軸線よりも上方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、オイルガターにより多くの潤滑油を捕捉してより多くの潤滑油を潤滑油被供給部に供給でき、潤滑油被供給部の潤滑性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の平面図であり、変速機ケースを透過して要部のみを表示した変速機の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のライトケースを取り外した状態でレフトケースを右方から見た図である。
図3図3は、図2のIII-III方向矢視図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のリバースアイドラ軸の周辺を左前斜め前方から見た図である。
図5図5は、図2のレフトケースを図3のV-V方向で切った断面図である。
図6図6は、図2のレフトケースを図3のVI-VI方向で切った断面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の入力軸、リバース軸およびオイルガターの平面図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のオイルガターの正面図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のオイルガターの潤滑油導入孔の周辺を前斜め上方から見た図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置のオイルガターの潤滑油導入孔の周辺の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る動力伝達装置は、底部に潤滑油が貯留されるケース部材と、ケース部材の底部に貯留される潤滑油を掻き上げるギヤ部材を有し、ケース部材に回転自在に支持される回転軸と、 ギヤ部材の直上を通過して回転軸の軸線方向に延び、ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を捕捉して潤滑油被供給部に供給するオイルガターとを有し、オイルガターは、底板と、底板から上方に突出する側壁とによって構成される油路と、ギヤ部材の直上に位置するようにして底板を上下方向に貫通し、ギヤ部材によって掻き上げられた潤滑油を油路に導入する潤滑油導入孔と、油路を流れる潤滑油を潤滑油被供給部に供給する潤滑油供給部とを有する動力伝達装置であって、ケース部材は、底壁と、底壁から上方に延び、ギヤ部材と回転軸の軸線方向に並ぶ縦壁部と、ケース部材の底壁からギヤ部材の外周形状に沿って湾曲しながら上方に延び、ギヤ部材の径方向でギヤ部材に対向する円弧状壁部とを有し、円弧状壁部の上端部は、回転軸の軸線よりも上方に位置している。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る動力伝達装置は、オイルガターにより多くの潤滑油を捕捉してより多くの潤滑油を潤滑油被供給部に供給でき、潤滑油被供給部の潤滑性能を向上できる。
【実施例0013】
以下、本発明の一実施例に係る動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から図10は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置を示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、車両には変速機1が設置されており、変速機1にはエンジン2が連結されている。変速機1とエンジン2は、車両の図示しないエンジンルームに設置されている。
【0015】
変速機1は、変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4およびライトケース5を有する。本実施例の変速機1は、動力伝達装置を構成し、変速機ケース3は、ケース部材を構成する。
【0016】
レフトケース4には変速機構6が設置されている。変速機構6は、車幅方向に延びる入力軸7を有し、入力軸7にはエンジン2の動力が伝達される。
【0017】
変速機構6は、入力軸7と平行に延びるカウンタ軸8およびリバース軸9を有する。入力軸7には1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7R、2速入力ギヤ7B、3速入力ギヤ7C、4速入力ギヤ7D、5速入力ギヤ7Eおよび6速入力ギヤ7Fが設けられている。
【0018】
1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7Rおよび2速入力ギヤ7Bは、入力軸7に固定されて入力軸7と一体で回転し、入力ギヤ7C、7D、7E、7Fは、入力軸7と相対回転自在となっている。
【0019】
カウンタ軸8には1速カウンタギヤ8A、2速カウンタギヤ8B、3速カウンタギヤ8C、4速カウンタギヤ8D、5速カウンタギヤ8E、6速カウンタギヤ8F、リバースカウンタギヤ8Rおよびファイナルドライブギヤ8Gが設けられている。
【0020】
リバースカウンタギヤ8R、ファイナルドライブギヤ8Gおよび3速カウンタギヤ8Cから6速カウンタギヤ8Fは、カウンタ軸8に固定されてカウンタ軸8と一体で回転し、1速カウンタギヤ8Aおよび2速カウンタギヤ8Bは、カウンタ軸8と相対回転自在となっている。
【0021】
カウンタギヤ8Aからカウンタギヤ8Fは、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fに噛み合っており、ファイナルドライブギヤ8Gは、ディファレンシャル装置10のファイナルドリブンギヤ12に噛み合っている。
【0022】
リバース軸9にリバースアイドラギヤ9A、9Bが設けられている。リバースアイドラギヤ9Aは、リバース軸9に固定されてリバース軸9と一体で回転し、リバースアイドラギヤ9Bは、リバース軸9と相対回転自在となっている。
【0023】
リバースアイドラギヤ9Aは、リバース入力ギヤ7Rに噛み合っており、リバースアイドラギヤ9Bは、リバースカウンタギヤ8Rに噛み合っている。
【0024】
入力軸7、カウンタ軸8およびリバース軸9にはそれぞれ同期装置31A、31B、31C、31Dが設置されており、同期装置31A、31B、31C、31Dは、各軸7、8、9の軸線方向に移動自在となっている。
【0025】
同期装置31Aは、3速入力ギヤ7Cと4速入力ギヤ7Dの間に設置されている。同期装置31Aは、図示しない内周スプラインを有し、入力軸7の軸線方向に移動自在に設けられたスリーブ31aと、スリーブ31aの内方に位置して入力軸7と一体回転自在に設けられ、スリーブ31aの内周スプラインに嵌合する外周スプラインを有する図示しないハブとを有する。
【0026】
3速入力ギヤ7Cには外周スプラインが形成されたドグ7cが設けられており、ドグ7cは、3速入力ギヤ7Cと一体で回転する。4速入力ギヤ7Dには外周スプラインが形成されたドグ7dが設けられており、ドグ7dは、4速入力ギヤ7Dと一体で回転する。
【0027】
スリーブ31aにはシフト機構の3速-4速用のシフトフォーク34A(図2参照)が嵌合されており、3速-4速用のシフトフォーク34Aによってスリーブ31aが3速入力ギヤ7C側に移動されると、スリーブ31aの内周スプラインがドグ7cの外周スプラインに嵌合する。
【0028】
これにより、3速入力ギヤ7Cがスリーブ31aを介して入力軸7に連結され、入力軸7の回転が3速入力ギヤ7Cから3速カウンタギヤ8Cを介してカウンタ軸8に伝達される。
【0029】
このとき、エンジン2の動力は、入力軸7、3速入力ギヤ7C、3速カウンタギヤ8Cからカウンタ軸8に伝達された後、ファイナルドライブギヤ8Gからファイナルドリブンギヤ12に伝達される。
【0030】
ディファレンシャル装置10に伝達されたエンジン2の動力は、左右の図示しないドライブシャフトを介して図示しない左右の前輪に伝達される。
【0031】
なお、同期装置31B、31C、31Dは、同期装置31Aと同様の構成と機能を有しており、詳しい説明は省略する。
【0032】
図2に示すように、同期装置31C、31Dのスリーブにはシフトフォーク34B、34Cが嵌合され、同期装置31Bのスリーブには図示しないシフトフォークが嵌合されている。
【0033】
これらシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークは、複数のシフトヨーク群34Yの中でシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークに対応するシフトヨークを介して図示しないシフトアンドセレクト軸によって操作される。
【0034】
図1に示すように、ディファレンシャル装置10は、ライトケース5に設けられた膨出壁部5Aとレフトケース4に収容されている。膨出壁部5Aは、ライトケース5の隔壁5Wから右方に膨出している。
【0035】
すなわち、ライトケース5の隔壁5Wは、膨出壁部5Aの膨出方向の先端よりもレフトケース4側に位置している。レフトケース4の内部とライトケース5の内部は、隔壁5Wによって仕切られている。
【0036】
図1図2において、レフトケース4は、底壁4Aと、底壁4Aの前端部から上方に延びる前壁4Fと、後壁4Rと、底壁4Aの左端部から上方に延び、かつ、前壁4Fの左端部と前記後壁4Rの左端部とを連結する左側壁4Lとを有する。
【0037】
レフトケース4は、底壁4Aの右端部から上方に突出し、かつ、後壁4Rの右端部に連結される縦壁4Wと、前壁4Fの上端部と後壁4Rの上端部と左側壁4Lの上端部とを連結する上壁4Bとを有する。
【0038】
後壁4Rは、縦壁4Wの高さ方向の中央部よりも上方において、縦壁4Wの前端部から左方に延びている。図1に示すように、レフトケース4は、底壁4Aと上壁4Bと前壁4Fと後壁4Rとによって囲まれる変速機室4Mを有する。
【0039】
変速機室4Mには変速機構6に収容されている。すなわち、変速機室4Mは、縦壁4Wよりも奥側(左側)に形成される底壁4Aと上壁4Bと前壁4Fと後壁4Rとによって囲まれる空間である。
【0040】
ディファレンシャル装置10は、デフケース11と、デフケース11の外周部に取付けられ、デフケース11と一体で回転するファイナルドリブンギヤ12とを有する。
【0041】
デフケース11の内部には図示しない差動歯車機構が収容されている。差動歯車機構には図示しない左右のドライブシャフトの一端部が接続されている。左右のドライブシャフトの他端部は、図示しない左右の前輪にそれぞれ接続されており、前輪は、ドライブシャフトと一体回転する。本実施例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両である。
【0042】
変速機1において、変速機構6は、エンジン2の動力(回転速度)を変速し、差動歯車機構から左右のドライブシャフトおよび前輪に動力を差動回転可能に伝達する。
【0043】
図1図2に示すように、レフトケース4の縦壁4Wには軸受支持部4aが形成されている。デフケース11の左端部は、軸受17Aを介して軸受支持部4aに回転自在に支持されている。
【0044】
図1に示すように、ライトケース5の膨出壁部5Aには軸受支持部5aが形成されている。デフケース11の右端部は、軸受17Bを介して膨出壁部5Aの軸受支持部5aに回転自在に支持されている。
【0045】
レフトケース4とライトケース5の底部、すなわち、変速機ケース3の底部には潤滑油Oが貯留されており、エンジン2が停止した状態で潤滑油Oの油面は、軸受支持部4aの下端部と上端部との間および軸受17Gの下方に位置している(図2図5参照)。
【0046】
図2に示すように、レフトケース4とライトケース5の上部にはキャッチタンク19が設置されている。キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cに対してファイナルドリブンギヤ12から水平方向に離れ、かつ、ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cよりも上方に設置されている。
【0047】
ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、キャッチタンク19に導入されてキャッチタンク19に一時的に貯留される。
【0048】
図1に示すように、入力軸7の左端部には軸受17Cが設けられており、入力軸7は、軸受17Cを介してレフトケース4の左側壁4Lの軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0049】
入力軸7の右端部には軸受17Dが設けられており、入力軸7は、軸受17Dを介してライトケース5の隔壁5Wの軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0050】
カウンタ軸8の左端部には軸受17Eが設けられており、カウンタ軸8は、軸受17Eを介してレフトケース4の左側壁4Lの軸受支持部4bに回転自在に支持されている。
【0051】
カウンタ軸8の右端部には軸受17Fが設けられており、カウンタ軸8は、軸受17Fを介してライトケース5の隔壁5Wの軸受支持部5bに回転自在に支持されている。
【0052】
リバース軸9の軸長は、入力軸7とカウンタ軸8の軸長よりも短く、リバース軸9の左端部は、レフトケース4の左側壁7Lまで届いていない。
【0053】
図1図2に示すように、レフトケース4の前壁4Fは、縦壁部4Cを有する。縦壁部4Cは、底壁4Aから上方に延び、かつ、前壁4Fの下側から後方に延びており、リバースアイドラギヤ9Aに対して左側壁4L側に位置している。
【0054】
すなわち、レフトケース4の前壁4Fの下側の部分の一部は、前壁4Fから後方に窪む縦壁部4Cを有する。
【0055】
図1に示すように、縦壁部4Cは、リバース軸9の軸線方向でリバースアイドラギヤ9Aと並んでおり、左側壁4L側とリバースアイドラギヤ9Aのリバース軸9の軸線方向の隙間は、リバースアイドラギヤ9Aの歯幅(リバース軸9の軸線方向の板厚)よりも小さい。
【0056】
図5に示すように、前壁4Fには円弧状壁部4rが設けられている。円弧状壁部4rは、レフトケース4の底壁4Aからリバースアイドラギヤ9Aの外周形状に沿って湾曲しながら上方に延びており、リバースアイドラギヤ9Aの径方向(リバース軸9の軸線9aと直交する方向)でリバースアイドラギヤ9Aに対向している。
【0057】
円弧状壁部4rの上端部4nは、リバース軸9の軸線9aよりも上方で、かつ、縦壁部4Cの上端部4mよりも下方に位置している。すなわち、円弧状壁部4rは、底壁4Aからリバースアイドラギヤ9Aの外周形状に沿って上端部4nに到るまで湾曲している。リバースアイドラギヤ9Aの外周形状は円である。
【0058】
縦壁部4Cには軸受支持部4cが設けられており(図1参照)、リバース軸9の左端部(端部)は、軸受17Gを介して軸受支持部4cに回転自在に支持されている。
【0059】
リバース軸9の右端部には軸受17Hが設けられており、リバース軸9は、軸受17Hを介してライトケース5の隔壁5Wの軸受支持部5cに回転自在に支持されている。
【0060】
レフトケース4にはオイルガター41が設けられている。図5に示すように、オイルガター41は、リバースアイドラギヤ9A、縦壁部4Cの上端部4mよりも上方に設置されている。
【0061】
図3図7に示すように、オイルガター41の右端部は、リバースアイドラギヤ9Bの直上に位置しており、右端部からリバースアイドラギヤ9Aの直上(図7参照)を通過してリバース軸9の軸線9aの方向に延びている。以下、リバース軸9の軸線9aの方向をリバース軸9の軸線方向ともいう。
【0062】
オイルガター41の左端部は、入力軸7の左端部7fまで延びており、軸受17Cの上方に位置している。本実施例のリバース軸9は、回転軸を構成し、リバースアイドラギヤ9Aは、ギヤ部材を構成する。リバースアイドラギヤ9Aは、潤滑油Oに浸かっている。
【0063】
本実施例のリバースアイドラギヤ9Aは、車両の前進走行時に図5の右方視で反時計回りRに回転し、レフトケース4の底部に貯留された潤滑油Oを掻き上げ、円弧状壁部4rに沿ってオイルガター41に供給する。
【0064】
リバースアイドラギヤ9Aの径方向におけるリバースアイドラギヤ9Aと円弧状壁部4rとの隙間は、リバースアイドラギヤ9Aの歯厚aの2倍程度であり、リバースアイドラギヤ9Aの径方向の外端は、円弧状壁部4rに近接している。
【0065】
リバースアイドラギヤ9Aの径方向におけるリバースアイドラギヤ9Aと円弧状壁部4rとの隙間は、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油が円弧状壁部4rに沿って円滑に掻き上げられる幅に形成されている。
【0066】
オイルガター41に供給された潤滑油は、オイルガター41によって左方に導かれ、軸受17Cに供給される。
【0067】
軸受17Cと左側壁4Lの間には潤滑油を入力軸7の左端部7fに案内する図示しないガイド部材が設けられている。
【0068】
入力軸7の内部には図示しない潤滑油通路が形成されている。潤滑油通路は、入力軸7の軸線方向に沿って延びており、潤滑油通路の左端部は開口している。
【0069】
オイルガター41から軸受17Cに供給された潤滑油は、軸受17Cを潤滑した後、軸受17Cと左側壁4Lの間を通してガイド部材に導かれ、ガイド部材から入力軸7の潤滑油通路に導入される。
【0070】
入力軸7には図示しない排出孔が形成されており、排出孔は、潤滑油通路を流れる潤滑油を入力軸7の回転による遠心力によって入力軸7の半径方向外方に排出する。
【0071】
排出孔から入力軸7の径方向外方に排出された潤滑油は、入力軸7と相対回転する入力ギヤ7C、7D、7E、7Fや同期装置31A、31Bを潤滑する。本実施例の入力ギヤ7C、7D、7E、7F、軸受17Cおよび同期装置31A、31Bは、潤滑油被供給部を構成する。
【0072】
このように本実施例のオイルガター41は、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を捕捉して入力軸7の左端部7fに供給する。
【0073】
図7図8に示すように、オイルガター41は、底板42と、前側壁43と、後側壁44と、左側壁45と、右側壁46とを備えている。
【0074】
図7に示すように、底板42は、リバースアイドラギヤ9Bの直上からリバース軸9の軸線方向に沿って左方に延びており、左側が後方に湾曲している。
【0075】
前側壁43は、底板42の前端部と左端部から上方に延びており、底板42の延びる方向に沿って延びている。
【0076】
後側壁44は、底板42の後端部から上方に延びており、前後方向および左右方向で前側壁43に対向している。
【0077】
左側壁45は、底板42の左端部から上方に延びており、前側壁43の左側部と後側壁44の左端部とを連結している。
【0078】
右側壁46は、底板42の右端部から上方に延びており、前側壁43の右端部と後側壁44の右端部とを連結している。
【0079】
オイルガター41は、底板42、前側壁43、後側壁44、左側壁45および右側壁46によって潤滑油が流れる油路47が形成されている。底板42の左端部には潤滑油供給孔42aが形成されている。本実施例の前側壁43、後側壁44、左側壁45および右側壁46は、側壁を構成する。
【0080】
潤滑油供給孔42aは上下方向に貫通しており、潤滑油供給孔42aは、油路47を流れる潤滑油を軸受17Cに供給(排出)する。本実施例の潤滑油供給孔42aは、潤滑油供給部を構成する。
【0081】
図7に示すように、オイルガター41は、リバース軸9の軸線方向に直線状に延びる第1のオイルガター部41Aと、第1のオイルガター部41Aから入力軸7の左端部7f側に湾曲する湾曲部41Bと、湾曲部41Bから入力軸7の左端部7f(軸受17C)に向かって延びる第2のオイルガター部41Cとを有する。
【0082】
なお、湾曲部41Bは、底板42、前側壁43、後側壁44を湾曲することによって形成されている。
【0083】
換言すれば、オイルガター41は、底板42、前側壁43、後側壁44がリバース軸9の軸線方向に直線状に延びる第1のオイルガター部41Aと、第1のオイルガター部41Aから入力軸7の左端部7f側に湾曲するように底板42、前側壁43、後側壁44が湾曲される湾曲部41Bと、湾曲部41Bから入力軸7の左端部7fに向かって底板42、前側壁43、後側壁44が延びる第2のオイルガター部41Cとを有する。
【0084】
オイルガター41において、湾曲部41Bによって構成される油路47の幅W1は、湾曲部41Bの手前(右側)の第1のオイルガター部41Aによって構成される油路47の幅W2よりも大きく形成されている。
【0085】
オイルガター41の底板42には潤滑油導入孔48が設けられている。潤滑油導入孔48は、リバースアイドラギヤ9Aの直上に位置するようにして底板42を上下方向に貫通しており、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を油路47に導入する。
【0086】
すなわち、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油の一部は、潤滑油導入孔48を通して油路47に導入され、残りの潤滑油は、前方から前側壁43を乗り越えて油路47に導入される。
【0087】
潤滑油導入孔48は、リバース軸9の軸線9a側に位置し、リバース軸9の軸線方向に延びる後縁部48aと、リバース軸9の軸線9aと反対側に位置して後縁部48aと前後方向に対向し、リバース軸9の軸線方向に延びる前縁部48bとを有する。
【0088】
潤滑油導入孔48は、リバース軸9の軸線方向の左端部に位置する左縁部48cと、リバース軸9の軸線方向の右端部に位置する右縁部48dとを有する。
【0089】
潤滑油導入孔48は、オイルガター41の上面視で潤滑油供給孔42aに向かうにつれてリバース軸9の軸線9aに近づくようにリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0090】
すなわち、潤滑油導入孔48は、オイルガター41の上面視において、リバース軸9の軸線方向で右縁部48dから左縁部48cに向かうにつれてリバース軸9の軸線9aに近づくようにリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0091】
本実施例の後縁部48aは、回転軸の軸線側の潤滑油導入孔の縁部を構成し、前縁部48b、左縁部48cおよび右縁部48dは、潤滑油導入孔の縁部を構成する。左縁部48cは、潤滑油導入孔の回転軸の軸線方向の一端部を構成し、本実施例の右縁部48dは、潤滑油導入孔の回転軸の軸線方向の他端部を構成する。
【0092】
図3に示すように、潤滑油導入孔48の左縁部48cは、縦壁部4Cと上下方向に並んで位置している。図7に示すように、潤滑油導入孔48は、左縁部48cから右縁部48dに向かうにつれてリバース軸9の軸線9aから離れるようにリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0093】
すなわち、潤滑油導入孔48は、リバース軸9の軸線方向で縦壁部4Cから離れるにつれて円弧状壁部4rに近づくようにリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0094】
ここで、リバース軸9の軸線方向に延びるとは、リバース軸9の軸線9aと平行に延びるのではなく、リバース軸9の軸線9aの方向に沿って延びることを意味し、リバース軸9の軸線9aに沿って延びるとは、リバース軸9の軸線9aと平行に延びることを意味する。
【0095】
潤滑油導入孔48のリバース軸9の軸線方向の長さは、リバースアイドラギヤ9Aの歯幅の2倍程度に形成されている。潤滑油導入孔48のリバース軸9の軸線方向の長さは、リバースアイドラギヤ9Aの歯幅以上の長さがあればよい。
【0096】
図7図9に示すように、第1のオイルガター部41Aにおいて、底板42には後側壁49が設けられている。後側壁49は、リバース軸9の軸線9a側の潤滑油導入孔48の後縁部48aから上方に突出しており、後縁部48aに沿ってリバース軸9の軸線方向に延びている。本実施例の後側壁49は、壁部を構成する。
【0097】
図7に示すように、後側壁49は、第1の後側壁49Aと第2の後側壁49Bとを有する。第1の後側壁49Aは、右端部49aからリバース軸9の軸線方向で潤滑油供給孔42a側の左端部49bに向かってリバース軸9の軸線9aに近づくように、潤滑油導入孔48の後縁部48aと共に直線状に延びている。
【0098】
第2の後側壁49Bは、第1の後側壁49Aの左端部49bからリバース軸9の軸線方向で潤滑油供給孔42aに向かい、潤滑油導入孔48の後縁部48aと共に直線状に延びている。
【0099】
第2の後側壁49Bは、第1の後側壁49Aの左端部49bを境にして、第1の後側壁49Aに対して前側壁43側に屈曲している。
【0100】
リバース軸9の軸線9aに対する第2の後側壁49Bの傾きよりもリバース軸9の軸線9aに対する第1の後側壁49Aの傾きが大きく形成されている。
【0101】
本実施例の第2の後側壁49Bは、リバース軸9の軸線9aと平行に延びており、第1の後側壁49Aは、リバース軸9の軸線9aに対して傾いている。
【0102】
本実施例の第1の後側壁49Aは、第1の壁部を構成し、第2の後側壁49Bは、第2の壁部を構成する。第1の後側壁49Aの右端部49aは、第1の壁部の回転軸の軸線方向の一端部を構成し、第1の後側壁49Aの左端部49bは、第1の壁部の潤滑油供給部側の他端部を構成する。
【0103】
図7図9に示すように、第1のオイルガター部41Aにおいて、底板42には前側壁50と、左側壁51と、右側壁52と、傾斜壁53とが設けられている。
【0104】
前側壁50は、後側壁49に対してリバース軸9の軸線9aと反対側の潤滑油導入孔48の前縁部48bから上方に突出しており、前縁部48bに沿ってリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0105】
図9に示すように、後側壁49と前側壁50は、高位部49m、50mと、高位部49m、50mよりも高さが低い低位部49n、50nとを有する。高位部49m、50mは、リバース軸9の軸線方向で低位部49n、50nに対して潤滑油供給孔42aから離れる側(右側)に設けられており、低位部49n、50nは、リバース軸9の軸線方向で高位部49m、50mに対して潤滑油供給孔42aに近づく側(左側)に設けられている。
【0106】
すなわち、後側壁49と前側壁50は、リバース軸9の軸線方向で高さが変化するように形成されている。
【0107】
左側壁51は、潤滑油導入孔48の左縁部48cから上方に突出しており、前側壁50の左端部と後側壁49の左端部とを連結している。
【0108】
すなわち、左側壁51は、リバース軸9の軸線方向で潤滑油供給孔42a側の潤滑油導入孔48の左縁部48cから上方に突出している。
【0109】
右側壁52は、潤滑油導入孔48の右縁部48dから上方に突出しており、前側壁50の右端部と後側壁49の右端部とを連結している。
【0110】
すなわち、右側壁52は、リバース軸9の軸線方向で潤滑油供給孔42aと反対側の潤滑油導入孔48の右縁部48dから上方に突出している。右側壁52の上下方向長さは、左側壁51の上下方向長さよりも長く形成されている。すなわち、右側壁52は、左側壁51よりも高く形成されている。
【0111】
本実施例の後側壁49、前側壁50、左側壁51および右側壁52は、潤滑油導入孔48を取り囲んでおり、周壁を構成している。左側壁51は、導入孔側縦壁部を構成する。
【0112】
傾斜壁53は、リバース軸9の軸線方向で左側壁51の上端部51aから潤滑油供給孔42aに向かうにつれて下方に傾斜している。
【0113】
図3図4に示すように、オイルガター41の底板42の下面にガイド板54Aが設けられている。
【0114】
ガイド板54Aは、潤滑油導入孔48の後縁部48aから下方に突出しており、後縁部48aに沿ってリバース軸9の軸線方向に延びている。具体的には、ガイド板54Aは、潤滑油導入孔48の後縁部48aに対してリバース軸9の軸線9aから離れるように下方に傾斜している。
【0115】
これにより、ガイド板54Aは、潤滑油導入孔48の後縁部48aから円弧状壁部4rに近づくように傾斜している。
【0116】
図5に示すように、オイルガター41をリバース軸9の軸線方向から見た場合に、ガイド板54Aは、円弧状壁部4rの延長線C1上に位置している。すなわち、ガイド板54Aは、円弧状壁部4rの延長線C1を通過する位置に設置されている。
【0117】
図3図4に示すように、底板42の下部にガイド板54B、54Cが設けられている。図3に示すように、ガイド板54Bは、潤滑油導入孔48の左縁部48cから縦壁部4Cに向かって下方に突出しており、下端部がガイド板54Aに連結されている。本実施例のガイド板54Aは、ガイド部を構成し、ガイド板54Bは、突出壁を構成する。左縁部48cは、回転軸の軸線方向の一端部に位置する縁部を構成する。
【0118】
ガイド板54Cは、潤滑油導入孔48の右縁部48dから下方に突出しており、下端部がガイド板54Aに連結されている。ガイド板54Bとガイド54Cは、リバース軸9の軸線方向で対向しており、ガイド板54Aは、リバース軸9の軸線方向でガイド板54Bとガイド54Cの間に設置されている。
【0119】
図6に示すように、レフトケース4の縦壁部4Cには潤滑油通路4sが設けられている。潤滑油通路4sは、ガイド板54Bに向かって開口する開口部4hを有し、開口部4hとリバース軸9の左端部とを連通している。
【0120】
リバース軸9の内部には潤滑油通路9sが設けられており、潤滑油通路9sの左端部は開口している。潤滑油通路4sからリバース軸9の左端部に供給された潤滑油は、軸受17Gを潤滑した後、潤滑油通路9sに導入される。
【0121】
潤滑油通路9sに導入された潤滑油は、リバース軸9の回転による遠心力でリバースアイドラギヤ9A、9Bと同期装置31Cに供給される。これにより、リバースアイドラギヤ9A、9Bと同期装置31Cが潤滑油によって潤滑される。
【0122】
次に、本実施例の変速機1の効果を説明する。
車両の前進走行時において、変速機ケース3の底部に貯留される潤滑油Oは、図5の右方視で反時計方向Rに回転するリバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられる。
【0123】
本実施例の変速機1は、リバースアイドラギヤ9Aの直上を通過してリバース軸9の軸線方向に延び、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を捕捉して入力軸7の左端部7fに供給するオイルガター41を有する。
【0124】
オイルガター41は、底板42と、底板42から上方に突出する前側壁43、後側壁44、左側壁45および右側壁46によって構成される油路47と、リバースアイドラギヤ9Aの直上に位置するようにして底板42を上下方向に貫通し、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を油路47に導入する潤滑油導入孔48と、油路47を流れる潤滑油を入力軸7の左端部7fに供給する潤滑油供給孔42aとを有する。
【0125】
レフトケース4は、底壁4Aと、底壁4Aから上方に延び、リバースアイドラギヤ9Aとリバース軸9の軸線方向に並ぶ縦壁部4Cと、レフトケース4の底壁4Aからリバースアイドラギヤ9Aの外周形状に沿って湾曲しながら上方に延び、リバースアイドラギヤ9Aの径方向でリバースアイドラギヤ9Aに対向する円弧状壁部4rとを有する。
【0126】
これに加えて、円弧状壁部4rの上端部4nは、リバース軸9の軸線9aよりも上方に位置している。
【0127】
これにより、リバースアイドラギヤ9Aと縦壁部4Cと円弧状壁部4rの間に狭い空間を形成できる。
【0128】
このため、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油O1(図5参照)を縦壁部4Cと円弧状壁部4rに沿ってオイルガター41に効率よく導くことができ、オイルガター41によって掻き上げられる潤滑油の一部がオイルガター41に到達する前にオイルガター41の周辺に飛び散ることを抑制できる。この結果、オイルガター41に向かって掻き上げられる潤滑油量を増大できる。
【0129】
リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油の一部(この潤滑油を図7において潤滑油O2で示す)が潤滑油導入孔48から油路47に導入され、残りの潤滑油(この潤滑油を図7において潤滑油O3で示す)が前側壁43を乗り越えて油路47に導入される。
【0130】
これにより、リバースアイドラギヤ9Aによって油路47により多くの潤滑油を効率よく導入でき、オイルガター41に捕捉される潤滑油量を増大できる。
【0131】
このため、オイルガター41によって多くの潤滑油を潤滑油供給孔42aに円滑に導くことができ、潤滑油供給孔42aから入力軸7の左端部7fに多くの潤滑油を供給できる。
【0132】
この結果、入力軸7の左端部7fから多くの潤滑油を入力ギヤ7C、7D、7E、7F、軸受17Cおよび同期装置31A、31Bに供給でき、入力ギヤ7C、7D、7E、7F、軸受17Cおよび同期装置31A、31Bの潤滑性能を向上できる。
【0133】
また、本実施例の変速機1は、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油をキャッチタンク19に導入してキャッチタンク19に一時的に貯留するとともに、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油をオイルガター41に一時的に貯留できるので、潤滑油Oの油面を低下できる。
【0134】
このため、ファイナルドリブンギヤ12やリバースアイドラギヤ9Aの攪拌抵抗を低減でき、エンジンによって掻き上げられた潤滑油をオイルガター41に一時的に貯留できる。この結果、潤滑油Oの油面を低下でき、エンジン2の燃費を低減できる。
【0135】
ここで、縦壁部4Cは、リバースアイドラギヤ9Aに対して左側壁4L側に位置し、リバース軸9の軸線方向でリバースアイドラギヤ9Aと並んでいるので、リバースアイドラギヤ9Aと縦壁部4Cの間の空間が狭い。
【0136】
このため、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられる潤滑油は、縦壁部4Cに対向するリバースアイドラギヤ9A側においては勢いが強く、縦壁部4Cから離れるリバースアイドラギヤ9A側においては勢いが弱い。
【0137】
本実施例の変速機1によれば、潤滑油導入孔48は、左縁部48cが縦壁部4Cと上下方向に並んで位置し、左縁部48cから右縁部48dに向かうにつれてリバース軸9の軸線9aから離れるようにリバース軸9の軸線方向に延びている。
【0138】
これにより、縦壁部4Cから離れるほどリバースアイドラギヤ9A側の上方に位置する潤滑油導入孔48を円弧状壁部4rに近づけることができる。
【0139】
このため、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油を円弧状壁部4rに沿って潤滑油導入孔48に円滑に導くことができ、オイルガター41に捕捉される潤滑油量を増大できる。
【0140】
また、本実施例の変速機1によれば、底板42の下面にガイド板54Aが設けられており、ガイド板54Aは、潤滑油導入孔48の後縁部48aに沿ってリバース軸9の軸線方向に延び、かつ、リバース軸9の軸線9aから離れるように後縁部48aから下方に突出している。
【0141】
これに加えて、オイルガター41をリバース軸9の軸線方向から見た場合に、ガイド板54Aは、円弧状壁部4rの延長線C1上に位置している。
【0142】
これにより、リバースアイドラギヤ9Aの回転によって円弧状壁部4rに沿って掻き上げられた潤滑油を、勢いが強い状態を維持して潤滑油導入孔48を通して油路47に導入できる。このため、より多くの潤滑油を油路47に導入でき、オイルガター41に捕捉される潤滑油量を増大できる。
【0143】
また、本実施例の変速機1によれば、底板42の下部にガイド板54B、54Cが設けられており、ガイド板54B、54Cは、潤滑油導入孔48の左縁部48cと右端部48dから下方に延びている。
【0144】
これに加えて、ガイド板54Aは、リバース軸9の軸線方向でガイド板54Bとガイド54Cの間に設置されている。
【0145】
これにより、リバースアイドラギヤ9Aの回転によって円弧状壁部4rに沿って掻き上げられた潤滑油がガイド板54B、54Cからリバース軸9の軸方向の外方に流れることを防止でき、オイルガター41に捕捉される潤滑油量をより効果的に増大できる。
【0146】
また、本実施例の変速機1によれば、潤滑油導入孔48の後縁部48a、前縁部48b、左縁部48cおよび右縁部48dから上方に突出し、潤滑油導入孔48を取り囲む後側壁49、前側壁50、左側壁51および右側壁52を有する。
【0147】
これにより、潤滑油導入孔48から油路47に導入された潤滑油が潤滑油導入孔48に逆流しようとした場合に、潤滑油を後側壁49、前側壁50、左側壁51および右側壁52によって遮ることができる。
【0148】
このため、潤滑油導入孔48から油路47に導入された潤滑油が油路47から潤滑油導入孔48に逆流することを抑制でき、より多くの潤滑油をオイルガター41に導入できる。この結果、オイルガター41に捕捉される潤滑油量を増大できる。
【0149】
また、本実施例の変速機1によれば、底板42の下部にガイド板54Bが設けられており、ガイド板54Bは、潤滑油導入孔48の左縁部48cから縦壁部4Cに向かって突出している。
【0150】
これに加えて、縦壁部4Cは、リバース軸9の左端部を、軸受17Gを介して回転自在に支持する支持部と、ガイド板54Bに向かって開口する開口部4hを有し、開口部4hから導入される潤滑油をリバース軸9の左端部に導く潤滑油通路4sとを備えている。
【0151】
これにより、潤滑油導入孔48からオイルガター41に導入されなかった潤滑油をガイド板54Bから開口部4hに向かって指向させ、開口部4hから潤滑油通路4sを通してリバース軸9の左端部に供給できる。
【0152】
このため、リバース軸9の潤滑油通路9sに潤滑油を導入し、潤滑油通路9sからリバースアイドラギヤ9A、9Bと同期装置31Cに潤滑油を供給できる。このため、潤滑油によってアイドラギヤ9A、9Bと同期装置31Cを潤滑できる。
【0153】
なお、本実施例の変速機1は、FF車両に適用されているが、入力軸7やリバース軸9が前後方向に延びるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に変速機を適用する場合には、オイルガター41は、リバース軸9の軸線方向に沿って前後方向に延びる。
【0154】
また、本実施例のオイルガター41は、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油をリバース軸9と隣接する入力軸7の左端部7fに供給しているが、これに限定されるものではない。
【0155】
例えば、カウンタ軸8が回転軸を構成する場合には、カウンタ軸8の所定のカウンタギヤが掻き上げた潤滑油をオイルガター41で捕捉し、油路47を流れる潤滑油をカウンタ軸8の左端部に供給してもよい。
【0156】
すなわち、同一軸に設けられたギヤ部材によってオイルガター41によって掻き上げられた潤滑油を同一軸に供給してもよい。
【0157】
なお、本実施例の動力伝達装置は、変速機に適用されているが、ギヤ部材を有する回転軸とオイルガターとを備えた動力伝達装置であれば、変速機に限定されるものではない。
【0158】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0159】
1...変速機(動力伝達装置)、3...変速機ケース(ケース部材)、4C...縦壁部、4h...開口部、4n...上端部(回転軸の上端部)、4r...円弧状壁部、4s...潤滑油通路、7C,7D,7E,7F...入力ギヤ(潤滑油被供給部)、9...リバース軸(回転軸)、9A...リバースアイドラギヤ(ギヤ部材)、9a...軸線(回転軸の軸線)、17C...軸受(潤滑油被供給部)、31A,31B...同期装置(潤滑油被供給部)、41...オイルガター、42...底板、43...前側壁(側壁)、44...後側壁(側壁)、45...左側壁(側壁)、46...右側壁(側壁)、48...潤滑油導入孔、48a...後縁部(回転軸の軸線側の潤滑油導入孔の縁部)、48b...前縁部(潤滑油導入孔の縁部)、48c...左縁部(潤滑油導入孔の縁部、回転軸の軸線方向の一端部に位置する縁部)、48d...右縁部(潤滑油導入孔の縁部)、49...後側壁(周壁)、50...前側壁(周壁)、51...左側壁(周壁)、52...右側壁(周壁)、54A...ガイド板(ガイド部)、54B...ガイド板(突出壁)、C1...円弧状壁部の延長線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10