(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019092
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】トルク検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122674
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 顕秀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる自己励磁タイプのトルク検出センサを提供する。
【解決手段】第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bが被検出体の軸心方向と直交する対称面Mを中心に第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1及び第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2が鏡面配置となるように積層されており、第一トルク検出部7a及び第二トルク検出部7bにおいて±45度の傾きを有するティース間で複数の磁路が各々形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、
環状の第一コア及び第二コアに周方向に第一ティース及び第二ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイルが直列に接続された第一の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第一ティースに巻かれた前記第一コイル及び前記第二ティースに巻かれた前記第二コイルが直列に接続された第二の通電回路を有する第一トルク検出部と、
環状の第三コア及び第四コアに周方向に第三ティース及び第四ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第三ティースに巻かれた第三コイル及び第四ティースに巻かれた第四コイルが直列に接続された第三の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第三ティースに巻かれた前記第三コイル及び第四ティースに巻かれた前記第四コイルが直列に接続された第四の通電回路を有する第二トルク検出部と、を備え、
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が、前記被検出体の軸心方向と直交する対称面を中心に前記第一の通電回路と前記第三の通電回路及び第二の通電回路と第四の通電回路が鏡面配置となるように積層されていることを特徴とするトルク検出センサ。
【請求項2】
前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路によって励磁される第一ティース及び第二ティースの磁極配置と、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路によって励磁される第三ティース及び第四ティースの磁極配置は、前記対称面を介して鏡面配置となる請求項1記載のトルク検出センサ。
【請求項3】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、同じ極性に励磁される請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【請求項4】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部の前記対称面を介して対称位置にある第一コアの第一ティースと第三コアの第三ティース、前記対称面を介して対称位置にある第二コアの第二ティースと第四コアの第四ティースは、同じ極性に励磁される請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【請求項5】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部の前記対称面を介して対称位置にある第一コアの第一ティースと第三コアの第三ティース、対称面を介して対称位置にある第二コアの周方向に隣り合う第二ティースと第四コアの第四ティースは、異なる極性に励磁される請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ。
【請求項6】
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、
環状の第一コア及び第二コアに周方向に第一ティース及び第二ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイルが直列に接続された第一の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第一ティースに巻かれた前記第一コイル及び前記第二ティースに巻かれた前記第二コイルが直列に接続された第二の通電回路を有する第一トルク検出部と、
環状の第三コア及び第四コアに周方向に第三ティース及び第四ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第三ティースに巻かれた第三コイル及び第四ティースに巻かれた第四コイルが直列に接続された第三の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第三ティースに巻かれた前記第三コイル及び前記第四ティースに巻かれた前記第四コイルが直列に接続された第四の通電回路を有する第二トルク検出部と、を備え、
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、前記第一の通電回路と前記第三の通電回路、前記第二の通電回路と前記第四の通電回路の前記被検出体の軸心方向及び周方向のレイアウトが同じになるように積層されていることを特徴とするトルク検出センサ。
【請求項7】
前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路によって励磁される第一ティース及び第二ティースの磁極と、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路によって励磁される第三ティース及び第四ティースの磁極は、非対称配置となる請求項6記載のトルク検出センサ。
【請求項8】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、同じ極性に励磁されている請求項6又は請求項7記載のトルク検出センサ。
【請求項9】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、異なる極性に励磁されている請求項6又は請求項7記載のトルク検出センサ。
【請求項10】
前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路に通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型センサである請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のトルク検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己励磁型のトルク検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸等の被検出体に作用するトルクを非接触で検出する方法として、磁歪式のトルク検出装置がある。例えば、歪みを検出する被検出体となる軸(シャフト)の表面に、磁歪特性を増加させる表面処理(たとえば、メッキまたは溝加工等)を施し、磁歪効果を測定することによってトルクを検出する。磁歪効果の測定は、シャフトと同軸に巻かれたコイルを配置し、インピーダンスの大きさに基づくビラリ効果により発生したシャフトの透磁率の変化を読み取ることによって行われる。
【0003】
トルク検出装置として、出願人は、被検出体に形成される磁路がその軸心に対して所定角度となるように絶縁筒体に組み付けられた複数のコアとの間に形成される磁路を各々増やすことでトルク検出感度を向上させた磁歪式トルク検出センサを提案した。複数のコアが被検出体の軸心方向に対して所定角度で傾斜して配列され、両側脚部の端面が絶縁筒体の内周面より被検出体に臨むように組み付けられている。また、コ字状に形成されたコアは被検出体の軸心に対して所定角度で傾斜して配列することで、一方の脚部(端面)-被検出体-他方の脚部(端面)-架橋部を通る独立した磁路が形成される。このように、複数のコアに同一のコイルが通っていることでコイルの周りに同一の磁界が発生するため同極となり、そのためコアに磁束を集中させることで隣り合うコア間同士を結ぶ磁路が形成されにくいため、検出感度が向上する構造となっている(特許文献1:特許第6483778号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献のトルク検出装置においては、絶縁筒体の外周面に溝を設け、該溝に沿って複数の検出コイルを巻き付ける必要があり、かつ両側脚部を連結する架橋部に囲まれたコ字状空間部を検出コイルが通過するように複数のコアが絶縁筒体に組み付けられる。
【0006】
このため、検出コイル及びコアを絶縁筒体の径方向の厚みを利用して埋設する必要があることから、センサが径方向及び軸方向に大型化し易い。またコアを構成する両側脚部の端面は、被検出体に臨むように設けられることから、端面形状が平面ではなく弧状の曲面に形成する必要があり、加工コストがかかる。
また、被検出体の全周にわたって、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かくトルクを検出したいというニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、センサを小型化し安価に量産可能であり、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる自己励磁タイプのトルク検出センサを提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、環状の第一コア及び第二コアに周方向に第一ティース及び第二ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイルが直列に接続された第一の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第一ティースに巻かれた前記第一コイル及び前記第二ティースに巻かれた前記第二コイルが直列に接続された第二の通電回路を有する第一トルク検出部と、環状の第三コア及び第四コアに周方向に第三ティース及び第四ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第三ティースに巻かれた第三コイル及び第四ティースに巻かれた第四コイルが直列に接続された第三の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第三ティースに巻かれた前記第三コイル及び第四ティースに巻かれた前記第四コイルが直列に接続された第四の通電回路を有する第二トルク検出部と、を備え、前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部が、前記被検出体の軸心方向と直交する対称面を中心に前記第一の通電回路と前記第三の通電回路及び第二の通電回路と第四の通電回路が鏡面配置となるように積層されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、第一トルク検出部と第二トルク検出部が被検出体の軸心方向と直交する対称面を中心に第一の通電回路と第三の通電回路及び第二の通電回路と第四の通電回路が鏡面配置となるように積層されていると、第一トルク検出部及び第二トルク検出部において±45度の傾きを有するティース間で複数の磁路が各々形成されるので、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【0010】
前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路によって励磁される第一ティース及び第二ティースの磁極配置と、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路によって励磁される第三ティース及び第四ティースの磁極配置は、前記対称面を介して鏡面配置となってもよい。
これにより、千鳥配置されたティース間で±45度の傾きを有するトルク検出に有効な磁路を多数形成して検出感度を向上させることができる。
【0011】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、同じ極性に励磁されもよい。
この場合には、第一トルク検出部と第二トルク検出部の対称面を跨いでティース間で磁路が形成されることなく、検出感度を向上させることができる。
【0012】
前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部の前記対称面を介して対称位置にある第一コアの第一ティースと第三コアの第三ティース、前記対称面を介して対称位置にある第二コアの第二ティースと第四コアの第四ティースは、同じ極性に励磁されてもよい。
この場合には、第一トルク検出部と第二トルク検出部の対称面を跨いで磁路が形成されることないが、第一ティース及び第四ティースにおいて周方向に隣り合うティースとの間に磁路が形成される。しかしながら、トルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので検出感度にほとんど影響しない。
【0013】
また、前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部の前記対称面を介して対称位置にある第一コアの第一ティースと第三コアの第三ティース、対称面を介して対称位置にある第二コアの第二ティースと第四コアの第四ティースは、異なる極性に励磁されてもよい。
この場合には、第一ティース及び第三ティースにおいて周方向に隣り合うティースとの間に磁路が形成される他に、第一トルク検出部と第二トルク検出部の対称面を跨いで第二ティースと第四ティースとの間に被検出体の軸心方向に磁路が形成される。しかしながら、これらの磁路成分はトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので検出感度にほとんど影響しない。
【0014】
また、被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサであって、環状の第一コア及び第二コアに周方向に第一ティース及び第二ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイルが直列に接続された第一の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第一ティースに巻かれた前記第一コイル及び前記第二ティースに巻かれた前記第二コイルが直列に接続された第二の通電回路を有する第一トルク検出部と、環状の第三コア及び第四コアに周方向に第三ティース及び第四ティースが千鳥配置で複数突設され、前記被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きで配置された第三ティースに巻かれた第三コイル及び第四ティースに巻かれた第四コイルが直列に接続された第三の通電回路と、前記被検出体の軸心方向に対して-45度の傾きで配置された前記第三ティースに巻かれた前記第三コイル及び前記第四ティースに巻かれた前記第四コイルが直列に接続された第四の通電回路を有する第二トルク検出部と、を備え、前記第一トルク検出部と前記第二トルク検出部は、前記第一の通電回路と前記第三の通電回路、前記第二の通電回路と前記第四の通電回路の前記被検出体の軸心方向及び周方向のレイアウトが同じになるように積層されていることを特徴とする。
【0015】
この場合には、第一トルク検出部と第二トルク検出部の第一の通電回路と第三の通電回路、第二の通電回路と第四の通電回路の被検出体の軸心方向及び周方向のレイアウトが同じであるので、例えば第一トルク検出部を、複数用意して被検出体の軸心方向に重ねて配置するだけで、±45度の傾きを有する複数の磁路が軸方向に沿って各々多数形成されるので、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【0016】
尚、前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路によって励磁される第一ティース及び第二ティースの磁極と、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路によって励磁される第三ティース及び第四ティースの磁極は、非対称配置となるよう積層される。よって、例えば第一トルク検出部を複数作成して通電回路の軸心方向及び周方向のレイアウトをそろえて積層するだけで、検出感度の高いトルク検出センサを製造することができる。
【0017】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、同じ極性に励磁されていてもよい。
この場合、第一ティースから45度の位相差を有する第二ティースへ向かう磁路と第一ティースから軸心方向に積層面を跨いで第三ティースに向かう磁路が形成される。
また、第四ティースから45度の位相差を有する第三ティースへ向かう磁路と第四ティースから軸心方向に積層面を跨いで第二ティースに向かう磁路が形成される。
上記第一ティースから軸心方向に積層面を跨いで第三ティースに向かう磁路及び第四ティースから軸心方向に積層面を跨いで第二ティースに向かう磁路は、トルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので検出感度にほとんど影響しない。よって、±45度の傾きを有する複数の磁路が軸方向に沿って各々形成されるので、効率は低下するが、トルク検出は可能となる。
【0018】
前記第一コアの周方向に隣り合う第一ティース、前記第二コアの周方向に隣り合う第二ティース、前記第三コアの周方向に隣り合う第三ティース及び前記第四コアの周方向に隣り合う第四ティースは、異なる極性に励磁されていてもよい。
この場合には、第一ティースから45度の位相差を有する第二ティースへ向かう磁路、第一ティースの周方向で隣り合うティースに向かう磁路及び第一ティースから軸心方向に積層面を跨いで第三ティースに向かう磁路が形成される。
また、第二ティースの周方向で隣り合うティースに向かう磁路、第二ティースから45度の位相差を有する第一ティースへ向かう磁路及び第二ティースから軸心方向に積層面を跨いで第四ティースに向かう磁路が形成される。
また、第三ティースの周方向で隣り合うティースに向かう磁路、第三ティースから45度の位相差を有する第二ティースへ向かう磁路、第三ティースから軸心方向に積層面を跨いで第一ティースに向かう磁路及び第三ティースから45度の位相差を有する第四ティースへ向かう磁路が各々形成される。
更には、第四ティースから45度の位相差を有する第三ティースへ向かう磁路、第四ティースの周方向で隣り合うティースに向かう磁路及び第四ティースから軸心方向に積層面を跨いで第二ティースに向かう磁路が形成される。
上記第一~第四ティースから軸心方向に積層面を跨いで形成される磁路及び各ティースから周方向に隣り合うティースに向かう磁路は、トルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので検出感度にほとんど影響しない。よって、±45度の傾きを有する複数の磁路が軸方向に沿って各々形成されるので、効率は低下するが、トルク検出は可能となる。
【0019】
前記第一の通電回路及び前記第二の通電回路、前記第三の通電回路及び前記第四の通電回路に通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型センサであってもよい。
この場合、任意のタイミングで第一の通電回路~第四の通電回路に通電することで被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路及び-45度の傾きを有する複数の磁路を被検出体との間で形成して被検出体に作用する圧縮応力及び引張応力を検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
センサを小型化し安価に量産可能であり、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】トルク検出センサの正面図、右側面図、矢印Y-Y方向断面図及び斜視図である。
【
図2】実施例1のコアの積層状態を示す展開図及び通電回路の説明図である。
【
図3】
図2の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図4】実施例2の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図5】実施例3の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図6】実施例4のコアの積層状態を示す展開図及び通電回路の説明図である。
【
図7】
図6の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図8】実施例5に係る
図6の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図9】他例に係るトルク検出センサのコアの展開図と通電回路の説明図である。
【
図10】実施例6に係る
図9の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図11】他例に係るトルク検出センサのコアの展開図と通電回路の説明図である。
【
図12】実施例7に係る
図11の通電回路に通電してティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図13】
図10の比較例に関するティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図14】
図12の比較例に関するティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図15】他例に係るトルク検出センサと被検出体の正面図、右側面図、及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るトルク検出センサの一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、トルク検出センサ1の概略構成について
図1乃至
図14を参照して説明する。
被検出体の一例としては、逆磁歪効果が大きい材料が好ましい。例えば、逆磁歪効果が高い材料として、パーメンジュール、Fe-Al(アルフェル)、Fe-Nix(パーマロイ)および球状黒鉛鋳鉄( JIS :FCD70 ) などがある。尚、逆磁歪効果とは、磁性体に外部から応力を加えると磁気特性が変化する現象である。また、被検出体には、必要に応じて磁性焼鈍を予め施しておくと、詳しくは後述するが被検出体に作用するトルクを好適に検出できる。また、非磁性材料であっても金属磁性材料を溶射等してコーティングしたり、磁性円筒を軸に圧入したりすることでトルク検出することが可能となる。尚、被検出体は、円柱状であるがこれに限定されない。被検出体は、外形が円柱状であれば、内部の構造は問わない。例えば、内径が軸方向において一定である円筒状、または内径が軸方向に位置により異なっている円筒状であってもよい。また、被検出体は、回転することが予定されているものであってもよいし、予定されていないものであってもよい。更には、被検出体は、中実な軸材料でもよいし、中空状の中空軸等であってもよい。
【0023】
トルク検出センサ1は、被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する。
【0024】
図1Cにおいて、第一トルク検出部7aは、環状の第一コア2a-1,環状の第二コア2a-2に周方向に複数の第一ティース3a1,第二ティース3a2が径方向内側に向けて突設されている。第一コア2a-1と第二コア2a-2は中間コア2c1を介して重ね合わせることで、第一ティース3a1と第二ティース3a2が千鳥配置に設けられている。なお、より正確には第一ティース3a1の被検出体と対向する先端部と第二ティース3a2の被検出体と対向する先端部が中間コア2c1を介して周方向に+45度の位相差を有するように積層されている。各第一ティース3a1,第二ティース3a2の周囲には第一インシュレータ4a1,第二インシュレータ4a2が各々嵌め込まれ、後述する第一,第二の通電回路6a1,6a2に接続された第一コイル5a1,第二コイル5a2が各々巻かれている。第一,第二の通電回路6a1,6a2に接続された第一コイル5a1,第二コイル5a2に通電することにより隣接する第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極に励磁されて対向する被検出体との間で軸心方向に対して+-45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。尚、直列に接続される第一コイル5a1,第二コイル5a2は巻方向を逆にすることで第一ティース3a1,第二ティース3a2が異磁極に励磁される。
【0025】
図2の第一コア2a-1,第二コア2a-2の展開図に示すように、第一トルク検出部7aには、被検出体の軸心方向(
図2の上下方向)に対して+45度の傾きを有する第一ティース3a1及び第二ティース3a2に第一コイル5a1及び第二コイル5a2が各々巻かれて直列接続された第一の通電回路6a1(破線参照)と、被検出体の軸心方向(
図2の上下方向)に対して-45度の傾きを有する第一ティース3a1及び第二ティース3a2に第一コイル5a1及び第二コイル5a2が各々巻かれて直列接続された第二の通電回路6a2(実線参照)を有する。第一の通電回路6a1と第二の通電回路6a2は交差配置されている。
【0026】
図1Cにおいて、第二トルク検出部7bは、環状の第三コア2b-1,環状の第四コア2b-2に周方向に複数の第三ティース3b1,第四ティース3b2が径方向内側に向けて突設されている。第三コア2b-1と第四コア2b-2は中間コア2c2を介して重ね合わせることで、第三ティース3b1と第四ティース3b2が千鳥配置に設けられている。なお、より正確には第三ティース3b1の被検出体と対向する先端部と第四ティース3b2の被検出体と対向する先端部が中間コア2c2を介して周方向に-45度の位相差を有するように積層されている。各第三ティース3b1,第四ティース3b2の周囲には第三インシュレータ4b1,第四インシュレータ4b2が各々嵌め込まれ、後述する第三、第四の通電回路6b1,6b2に直列接続された第三コイル5b1、第四コイル5b2が各々巻かれている。第三、第四の通電回路6b1,6b2に直列接続された第三コイル5b1,第四コイル5b2に通電することにより対向する被検出体との間で軸心方向に対して±45度の傾きを有する複数の磁路が形成されるようになっている。尚、直列に接続される第三コイル5b1,第四コイル5b2は巻方向を逆にすることで第三ティース3b1,第四ティース3b2が異磁極に励磁される。
【0027】
図2の第一コア2a-1,第二コア2a-2の展開図に示すように、第二トルク検出部7bには、被検出体の軸心方向に対して+45度の傾きを有する第三ティース3b1及び第四ティース3b2に第三コイル5b1及び第四コイル5b2が各々巻かれて直列接続された第三の通電回路6b1(破線参照)と、軸心方向に対して-45度の傾きを有する第三ティース3b1及び第四ティース3b2に第三コイル5b1及び第四コイル5b2が各々巻かれて直列接続された第四の通電回路6b2(実線参照)を有する。第三の通電回路6b1と第四の通電回路6b2は交差配置されている。なお、各ティース間の位相差は全て同じであってもよいし、ばらばらであっても良い。また、ティースの本数は偶数でも奇数でも良い。
【0028】
上述した第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、
図2の第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2bの展開図に示すように、被検出体の軸心方向と直交する対称面Mを中心に第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1が鏡面配置となり、第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2が鏡面配置となるように積層されている。尚、対称面Mは
図1Bに示すように中間コア2c3の積層方向中央部に位置する。
このように、第一トルク検出部7a及び第二トルク検出部7bにおいて±45度の傾きを有するティース間で複数の磁路が各々形成されるので、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【0029】
また、
図2の第一コア2a-1,第二コア2a-2及び第三コア2b-1,第四コア2b-2bの展開図に示すように、第一の通電回路6a1及び第二の通電回路6a2によって励磁される第一ティース3a1及び第二ティース3a2の磁極と、第三の通電回路6b1及び第四の通電回路6b2によって励磁される第三ティース3b1及び第四ティース3b2の磁極は、対称面Mを介して鏡面配置となっている。これにより、千鳥配置されたティース間で±45度の傾きを有するトルク検出に有効な磁路を多数形成して検出感度を向上させることができる。
【0030】
図1A,Dにおいて、第一コア2a-1には環状のコアバック部2a1に径方向内側に向かって突設された第一ティース3a1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第一ティース3a1には筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4a1が嵌め込まれ、周囲には第一コイル5a1が巻き付けられている。
【0031】
図1B,Cに示すように、第一コア2a-1は中間コア2c1を介して第二コア2a-2と積層されている。第二コア2a-2には環状のコアバック部2a1に径方向内側に向かって突設された第二ティース3a2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第二ティース3a2には筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4a2が嵌め込まれ、周囲には第二コイル5a2巻き付けられている。第一コア2a-1と第二コア2a―2は、第一ティース3a1と第二ティース3a2が周方向に45度位相がずれて積層されるようになっている(
図2コア展開図上段参照)。
【0032】
図1Cにおいて、第一コア2a-1と同様に第三コア2b-1には環状のコアバック部2b1に径方向内側に向かって突設された第三ティース3b1が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第三ティース3b1には筒状の絶縁樹脂製の第三インシュレータ4b1が嵌め込まれ、周囲には第三コイル5b1が巻き付けられている。
【0033】
図1Cに示すように、第三コア2b-1には中間コア2c2を介して第四コア2b-2が積層されている。第四コア2b-2には環状のコアバック部2b1に径方向内側に向かって突設された第四ティース3b2が、周方向に60度の位相差を設けて合計6か所に設けられている。各第四ティース3b2には筒状の絶縁樹脂製の第四インシュレータ4b2が嵌め込まれ、周囲には第四コイル5b2が巻き付けられている。第三コア2b-1と第四コア2b―2は、第三ティース3b1と第四ティース3b2が周方向に45度位相がずれて積層されるようになっている(
図2コア展開図下段参照)。
【0034】
図1Bに示すように、第二コア2a-2と第四コア2b-2の間には、環状の中間コア2c3を介して積層されている。中間コア2c1,2c2,2c3は、第一コア2a-1,第二コア2a-2間、第三コア2b-1,第四コア2b-2間、或いは第二コア2a-2と第四コア2b-2間に第一ティース3a1,第二ティース3a2の周囲に第一コイル5a1、第二コイル5a2又は第三ティース3b1,第四ティース3b2の周囲に第三コイル5b1,第四コイル5b2を巻くスペースを確保するスペーサとしての役割と、第一コア2a-1,第二コア2a-2、第三コア2b-1,第四コア2b-2或いは第二コア2a-2と第四コア2b-2間の磁路を兼用している。尚、中間コア2c1,2c2,2c3には径方向内側に向かうティースは設けられていない。
【0035】
第一コア2a-1、中間コア2c1、第二コア2a―2、中間コア2c3、第四コア2b-2、中間コア2c2、第三コア2b-1は積層されてかしめ又は接着若しくはこれらの併用により一体化される。
【0036】
図2のコアの展開図に示すように、第一トルク検出部7aの第一コア2a-1,第二コア2a-2に周方向に千鳥配置で形成された第一ティース3a1,第二ティース3a2と、第二トルク検出部7bの第三コア2b-1,第四コア2b-2に周方向に千鳥配置で形成された第三ティース3b1,第四ティース3b2が対称面Mを中心として鏡面配置で積層されている。尚、各コアには、コイルが巻かれていないティースが設けられていてもよい。これにより、±45度の傾きを有するトルク検出に有効な磁路を多数形成して検出感度を向上させることができる。
以下では、第一の通電回路6a1及び第二の通電回路6a2、第三の通電回路6b1及び第四の通電回路6b2を通じた励磁パターンの実施例について説明する。
【0037】
[実施例1]
図3は、上述した第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。図中NAはコイルAによりN極に励磁されたティース、SAはコイルAによりS極に励磁されたティースを表示するものとし、同様に図中NBはBコイルによりN極に励磁されたティース、SBはBコイルによりS極に励磁されたティースを表示するものとする。より正確には被検出体Sと対向するティースの先端部がN極またはS極に励磁される。N極に励磁されるかS極に励磁されるかはAコイル及びBコイル(第一コイル5a1及び第二コイル5a2、第三コイル5b1及び第四コイル5b2)の巻く向きを反対にすれば実現することができる。また、NA及びSAを囲む長枠E1,E2は第一ティース3a1及び第二ティース3a2間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。同様にNB及びSBを囲む長枠E3,E4は第三ティース3b1及び第四ティース3b2との間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。
【0038】
図3に示すように、第一コア2a-1の周方向に隣り合う第一ティース3a1はN極(又はS極)に励磁され、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2はS極(又はN極)に励磁されている。
また、第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1はN極(又はS極)に励磁され、第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2は、S極(又はN極)に励磁されている。
このように、各コアに周方向に形成されたティースを同じ極性となるように励磁されると、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを跨いで磁路が形成されることなく、トルク検出に有効な±45度の磁路を複数形成できるので検出感度を向上させることができる。
【0039】
[実施例2]
また、
図4において、第一コア2a―1の周方向に隣り合う第一ティース3a1、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2、第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1及び第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2は、異なる極性に励磁されていてもよい。
この場合には、対称面Mを介して対称位置にある第二ティース3a2と第四ティース3b2、第一ティース3a1と第三ティース3b1が同磁極となるため、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを跨いで磁路が形成されることないが、第一ティース3a1及び第三ティース3b1において周方向に隣り合うティースとの間に磁路(NB→SA)(NA→SB)が形成される。しかしながら、これらはトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率が低下するものの検出感度にほとんど影響しない。
【0040】
[実施例3]
また、
図5に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを介して対称位置にある第一コア2a-1の第一ティース3a1はS極(又はN極)に励磁され第三コア2b-1の第三ティース3b1はN極(又はS極)に励磁されている。また、対称面Mを介して対称位置にある第二コア2a-2の第二ティース3a2はS極(又はN極)に励磁され、第三コア2b-1の第三ティース3b1はN極(又はS極)に励磁されている。
この場合には、第一ティース3a1及び第三ティース3b1において周方向に隣り合うティースとの間に磁路(NB→SA)(NA→SB)が形成される他に、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを跨いで第二ティース3a2と第四ティース3b2との間に被検出体の軸心方向(
図5の上下方向)に磁路(NA→SA)(NB→SB)が形成される。しかしながら、これらの磁路成分はトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率は低下するが検出感度にほとんど影響しない。
【0041】
[実施例4]
次にトルク検出センサ1の他の構成について
図6乃至
図8を参照して説明する。
図6に示すコアの展開図において、被検出体の軸心方向と直交する対称面Mを中心に第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1が鏡面配置となり、第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2が鏡面配置となるように積層されている点は
図2と同様である。第一トルク検出部7aの第一コア2a-1,第二コア2a-2に周方向に千鳥配置で形成された第一ティース3a1,第二ティース3a2と、第二トルク検出部7bの第三コア2b-1,第四コア2b-2に周方向に千鳥配置で形成された第三ティース3b1,第四ティース3b2が対称面Mを中心として鏡面配置で積層されている点も
図2と同様である。
【0042】
しかしながら、
図6に示すように第一トルク検出部7aに備えた第一の通電回路6a1(破線部分)と第二の通電回路6a2(実線部分)は交差配置されていない。また、第二トルク検出部7bに備えた第三の通電回路6b1(破線部分)と第四の通電回路6b2(実線部分)は交差配置されていない点が異なっている。
【0043】
図7は、
図6に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
図7に示すように、第一コア2a-1の周方向に隣り合う第一ティース3a1はN極又はS極に交互に励磁され、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2もS極又はN極に交互に励磁されている。
また、第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1はN極又はS極に交互に励磁され、第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2は、S極又はN極に交互に励磁されている。
【0044】
この場合には、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを跨いで磁路が形成されることないが、第一トルク検出部7aにおいて第一ティース3a1及び第二ティース3a2と周方向に隣り合うティースとの間に磁路(NA→SA)(NB→SB)(NA→SB)が形成される。また、第二トルク検出部7bにおいて第三ティース3b1及び第四ティース3b2と周方向に隣り合うティースとの間にも同様の磁路が形成される。
しかしながら、これらはトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率が低下するものの検出感度にほとんど影響しない。
【0045】
[実施例5]
図8は
図6に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
図8に示すように、第一コア2a-1の周方向に隣り合う第一ティース3a1はN極又はS極に交互に励磁され、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2もS極又はN極に交互に励磁されている。
また、第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1はN極又はS極に交互に励磁され、第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2は、S極又はN極に交互に励磁されている。
【0046】
この場合には、第一ティース3a1~第四ティース3b2に周方向に隣り合うティース間で磁路(NA→SA)(NA→SB)(NB→SB)(NB→SA)が各々形成される他に、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bの対称面Mを跨いで磁路が形成される。即ち、第一トルク検出部7aの第二ティース3a2と対称面Mを跨いで対向配置された第二トルク検出部7bの第四ティース3b2との間に磁路(NA→SA)(NB→SB)が形成される。
しかしながら、これらはトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率が低下するものの検出感度にほとんど影響しない。
【0047】
[実施例6]
次にトルク検出センサ1の他の構成について
図9及び
図10を参照して説明する。トルク検出センサ1が有する第一トルク検出部7a及び第二トルク検出部7bの概略構成は
図1と同様である。
図9において、第一トルク検出部7aには、環状の第一コア2a―1及び第二コア2a-2に周方向に第一ティース3a1及び第二ティース3a2が千鳥配置で複数突設されている点は実施例1と同様である。また、軸心方向に対して+45度の傾きを有する第一ティース3a1及び第二ティース3a2に第一コイル5a1及び第二コイル5a2が各々巻かれて直列接続された第一の通電回路6a1(破線部分)及び軸心方向に対して-45度の傾きを有する第一ティース3a1及び第二ティース3a2に第一コイル5a1及び第二コイル5a2が各々巻かれて直列接続された第二の通電回路6a2(実線部分)を有する点も同様である。
【0048】
また、第二トルク検出部7bには、環状の第三コア2b-1及び第四コア2b-2に周方向に第三ティース3b1及び第四ティース3b2が千鳥配置で複数突設されている点は実施例1と同様である。また、軸心方向に対して+45度の傾きを有する第三ティース3b1及び第四ティース3b2に第三コイル5b1及び第四コイル5b2が各々巻かれて直列接続された第三の通電回路6b1(破線部分)と、軸心方向に対して-45度の傾きを有する第三ティース3b1及び第四ティース3b2に第三コイル5b1及び第四コイル5b2が各々巻かれて直列接続された第四の通電回路6b2(実線部分)を有する点も同様である。
【0049】
しかしながら、
図9に示すように、第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1(破線部分)、第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2(実線部分)の被検出体の軸心方向(
図9の上下方向)及び周方向(
図9の左右方向)のレイアウトが同じになるように積層されている。第一の通電回路6a1と第二の通電回路6a2は交差位置されており、第三の通電回路6b1と第四の通電回路6b2も交差配置されている。
【0050】
この場合には、第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1、第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2の被検出体の軸心方向及び周方向のレイアウトが同じであるので、例えば第一トルク検出部7a又は第二トルク検出部7bを、複数用意しておいて被検出体の軸心方向に重ねて配置するだけで、±45度の傾きを有する複数の磁路が軸方向に沿って各々多数形成することができる。よって、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【0051】
尚、第一の通電回路6a1及び第二の通電回路6a2によって励磁される第一ティース3a1及び第二ティース3a2の磁極と、第三の通電回路6b1及び第四の通電回路6b2によって励磁される第三ティース3b1及び第四ティース3b2の磁極は、非対称配置となるよう積層される。この場合、尚、第二コア2a-2と第三コア2b-1が中間コア2c3を介して積層されるため、中間コア2c3の積層方向中央部が積層面M´となる。
よって、第一トルク検出部7a又は第二トルク検出部7bを複数作成して通電回路のレイアウトをそろえて積層するだけで、検出感度の高いトルク検出センサを製造することができる。
【0052】
図10は
図9に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
図10に示すように、第一コア2a-1の周方向に隣り合う第一ティース3a1はN極(又はS極)に励磁され、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2もS極(又はN極)に励磁されている。
第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1はN極(又はS極)に励磁され、第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2もS極(又はN極)に励磁されている。
【0053】
この場合、被検出体の軸心方向に対向する第一ティース3a1と第三ティース3b1、第二ティース3a2と第四ティース3b2との間に積層面M´を跨いで磁路(NA→SA)(NB→SB)が各々形成される。
しかしながら、これらの磁路はトルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率が低下するものの検出感度にほとんど影響しない。
【0054】
[実施例7]
次に
図9に示すトルク検出センサ1の他の構成について
図11を参照して説明する。第一トルク検出部7aと第二トルク検出部7bは、第一の通電回路6a1と第三の通電回路6b1(破線部分)、第二の通電回路6a2と第四の通電回路6b2(実線部分)の被検出体の軸心方向(
図11の上下方向)及び周方向(
図11の左右方向)のレイアウトが同じになるように積層されている構成は
図9と同様である。但し、第一の通電回路6a1と第二の通電回路6a2は交差位置されておらず、第三の通電回路6b1と第四の通電回路6b2も交差配置されていない点が異なっている。
【0055】
図12は
図11に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
図12に示すように、第一コア2a-1の周方向に隣り合う第一ティース3a1はN極又はS極に交互に励磁され、第二コア2a-2の周方向に隣り合う第二ティース3a2もS極又はN極に交互に励磁されている。
第三コア2b-1の周方向に隣り合う第三ティース3b1はS極又はN極に交互に励磁され、第四コア2b-2の周方向に隣り合う第四ティース3b2もN極又はS極に交互に励磁されている。
【0056】
この場合、
図12の丸印に示す第三ティース3b1(磁極NA)に注目すると、第二ティース3a2(磁極SA)との間の磁路(NA→SA)と第四ティース3b2(磁極SA)との間の磁路(NA→SA)が互いに打ち消しい合うが、第一トルク検出部7a内及び第二トルク検出部7b内には±45度の磁路が複数形成される。また、第一ティース3a1と第三ティース3b1との間に積層面M´を跨いで形成される磁路(NA→SA)、第二ティース3a2と第四ティース3b2との間に積層面M´を跨いで形成される磁路(NA→SA)や第一ティース3a1~第四ティース3b2に周方向に隣り合うティース間で形成される磁路(NA→SA)も、トルク検出にほとんど影響しない磁路成分であるので効率が低下するものの検出感度にほとんど影響しない。
【0057】
ここで
図9に示す実施例6の比較例について
図13を参照して説明する。
図13は、
図9に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
第二トルク検出部7bの第三ティース3b1(磁極NA,NB)に注目すると、第二ティース3a2との間に+45度の傾きを有する磁路(NA→SA)(NB→SB)が形成され、かつ第四ティース3b2(磁極SA,SB)との間に-45度の傾きを有する磁路(NA→SA)(NB→SB)が形成され、磁路が互いに相殺されるため、検出感度が低下する。このため、このような励磁は好ましくない。
【0058】
ここで
図11に示す実施例7の比較例について
図14を参照して説明する。
図14は、
図11に示す第一,第二の通電回路6a1,6a2及び第三,第四の通電回路6b1,6b2に通電して形成される磁路を例示している。
第一トルク検出部7aの第二ティース3a2(磁極NA)に注目すると、第一ティース3a1との間に+45度の傾きを有する磁路(NA→SA)が形成され、かつ第三ティース3b1との間に-45度の傾きを有する磁路(NA→SA)が形成され、磁路が互いに相殺されるため、検出感度が低下する。このため、このような励磁は好ましくない。
【0059】
次にトルク検出センサ1の他例を示す。上述した実施例は、すべて被検出体が中実な軸材料を想定したインナータイプのセンサである。即ち、コアには径方向内側にティースが突設されていた。しかしながらこれに限定されるものではなく、被検出体が筒状の材料(中空軸)であっても、トルク変化を検出できるアウタータイプのセンサであってもよい。即ち、コアには径方向外側にティースが突設されている。
【0060】
図15A~Cは他例に係るトルク検出センサ1の正面図、組み付け前の状態を示す側面図及び斜視図である。
図15A乃至
図15Cにおいて、第一トルク検出部7aの構成を示す。環状の第一コア2a-1、中間コア2c1、第二コア2a-2が一体に積層されている。第一コア2a-1は、環状のコアバック部2a1に周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向外側に向かって第一ティース3a1が合計4本突設されている。第二コア2a-2は、環状のコアバック部2a2に周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向外側に向かって第二ティース3a2が合計4本突設されている。第一ティース3a1には第一インシュレータ4a1を介して第一コイル5a1が巻かれており、第二ティース3a2には第二インシュレータ4a2を介して第二コイル5a2が巻かれている。第一コア2a-1と第二コア2a-2は、中間コア2c1を介して積層され、かつ第一ティース3a1と第二ティース3a2は周方向に45度の位相差で重ね合わせて4組設けられている。尚、直列接続された第一コイル5a1及び第二コイル5a2を含む第一の通電回路6a1,第二の通電回路6a2の構成は、
図2と同様である。また、図示しないが第三コア2b-1と中間コア2c2を介して第四コア2b-2が積層されている。第三コア2b-1には環状のコアバック部2b1に径方向外側に向かって第三ティース3b1が突設され、第四コア2b-2には環状のコアバック部2b2に径方向外側に向かって突設されている。第三ティース3b1と第四ティース3b2は周方向に45度の位相差で重ね合わせて4組設けられる。尚、直列接続された第三コイル5b1及び第四コイル5b2を含む第三の通電回路6b1,第四の通電回路6b2の構成は、
図2と同様である。第二コア2a-2と第四コア2b-2の間には、環状の中間コア2c3を介して積層される。
【0061】
上述のトルク検出センサ1は、被検出体S(中空軸)の中空孔に同心状に挿入され、第一ティース3a1、第二ティース3a2、第三ティース3b1、第四ティース3b2が、被検出体Sの内周面と対峙するように組み付けられる。これにより千鳥配置されたティース間に被検出体を含む複数の磁路が形成され、±45度の磁路成分からトルク変化を検出することができる。
このように、被検出体Sが中実な軸に限らず、中空軸のトルク変化も検出できるので、汎用性が向上する。
【0062】
以上説明したように、第一トルク検出部7a及び第二トルク検出部7bにおいて±45度の傾きを有するティース間でトルク検出に有効な複数の磁路が各々形成されるので、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、トルク検出に有効な磁路を増やしてきめ細かく検出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 トルク検出センサ 2 コア 2a-1 第一コア 2a-2 第二コア 2b-1 第三コア 2b-2 第四コア 2a1,2b1 コアバック部 2c1,2c2,2c3 中間コア 3a1 第一ティース 3a2 第二ティース 3b1 第三ティース 3b2 第四ティース 4a1 第一インシュレータ 4a2 第二インシュレータ 4b1 第三インシュレータ 4b2 第四インシュレータ 5a1 第一コイル 5a2 第二コイル 5b1 第三コイル 5b2 第四コイル 6a1 第一の通電回路 6a2 第二の通電回路 6b1 第三の通電回路 6b2 第四の通電回路 7a 第一トルク検出部 7b 第二トルク検出部 M 対称面 M´ 積層面 S 被検出体