(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190925
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】残渣除去板及び射出体
(51)【国際特許分類】
F41B 6/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F41B6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099463
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 良之
(72)【発明者】
【氏名】柿田 武雄
(57)【要約】
【課題】電磁力によって物体を射出する射出装置において、物体の射出速度の維持及び射出速度のばらつき抑制する
【解決手段】残渣除去板3は、対向して配置された一対の導電レールの間の空間に挿入された導電部材である電機子2に一対の導電レールによって電流を流すことで、電機子2に保持されることで射出される飛翔体1に取り付けられる。残渣除去板3は、飛翔体1と一対の導電レールとの間に挿入された絶縁部材として構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対の導電レールの間の空間に挿入された導電部材である電機子に、前記一対の導電レールによって電流を流すことで、前記電機子に保持された射出対象物を射出する射出装置において、前記電機子によって加速される、前記射出対象物を含む被加速部材に取り付けられる残渣除去板であって、
前記被加速部材と前記一対の導電レールとの間に挿入された絶縁部材として構成される、
残渣除去板。
【請求項2】
前記被加速部材の射出方向と直交する方向の、前記残渣除去板が各導電レールと接触する部分の寸法は、前記被加速部材の射出方向と直交する方向の、前記電機子が各導電レールと接触する部分の寸法よりも大きい、
請求項1に記載の残渣除去板。
【請求項3】
前記被加速部材の射出方向に垂直な断面において、前記被加速部材を囲むように構成された環状の部材として構成される、
請求項1又は2に記載の残渣除去板。
【請求項4】
前記被加速部材と各導電レールとの間に、前記被加速部材の射出方向に2つ以上配列される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の残渣除去板。
【請求項5】
前記被加速部材は、前記射出対象物である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の残渣除去板。
【請求項6】
前記被加速部材は、
前記射出対象物と、
前記射出対象物を保持し、前記射出装置から射出した後に前記射出対象物から脱落するサボと、を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の残渣除去板。
【請求項7】
対向して配置された一対の導電レールの間の空間に挿入された導電部材である電機子に、前記一対の導電レールによって電流を流すことで、前記電機子に保持された射出対象物を射出する射出装置において、前記電機子によって加速される射出体であって、
前記射出対象物を含む被加速部材と、
前記被加速部材と前記一対の導電レールとの間に挿入される、前記被加速部材に取り付けられた絶縁部材である残渣除去板と、を備える、
射出体。
【請求項8】
前記被加速部材の射出方向と直交する方向の、前記残渣除去板が各導電レールと接触する部分の寸法は、前記被加速部材の射出方向と直交する方向の、前記電機子が各導電レールと接触する部分の寸法よりも大きい、
請求項7に記載の射出体。
【請求項9】
前記残渣除去板は、前記被加速部材の射出方向に垂直な断面において、前記被加速部材を囲むように構成された環状の部材として構成される、
請求項7又は8に記載の射出体。
【請求項10】
前記残渣除去板は、前記被加速部材と各導電レールとの間に、前記被加速部材の射出方向に2つ以上配列される、
請求項7から9のいずれか一項に記載の射出体。
【請求項11】
前記被加速部材は、前記射出装置の射出対象物である、
請求項7から10のいずれか一項に記載の射出体。
【請求項12】
前記被加速部材は、
前記射出対象物と、
前記射出対象物を保持し、前記射出装置から射出した後に前記射出対象物から脱落するサボと、を備える、
請求項7から10のいずれか一項に記載の射出体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残渣除去板及び射出体に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁力を用いて飛翔体を加速させる電磁加速装置として、電磁レールガンが知られている(特許文献1)。一般に、レールガンでは、2本の導電レールの間に挿入された、導電性材料からなる電機子に電流を流し、このときに作用する電磁力(ローレンツ力)によって電機子が加速される。射出対象物である飛翔体は、電機子によって保持されており、電機子が加速されることで、電磁加速装置から射出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電磁レールガンにおいては、導電レールの損傷や摩耗を避けるため、電機子は導電レールと比べて融点が低い材料で構成される。飛翔体を射出するために電機子が導電レールに対して摺動するときに、電機子と導電レールとの接触抵抗によって、電機子と導電レールとの境界近傍は高温となる。このとき、融点の低い電機子が溶融し、溶融した電機子の材料が残渣物として導電レールに付着することとなる。このような残渣物が導電レールに付着すると、導電レール表面の平滑さが低下するだけでなく、電機子と導電レールとの間の接触抵抗が不安定となり、以後、飛翔体を射出するときの射出速度の低下、射出速度のばらつき増大を招いてしまう。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態にかかる残渣除去板は、対向して配置された一対の導電レールの間の空間に挿入された導電部材である電機子に、前記一対の導電レールによって電流を流すことで、前記電機子に保持された射出対象物を射出する射出装置において、前記電機子によって加速される、前記射出対象物を含む被加速部材に取り付けられる残渣除去板であって、前記被加速部材と前記一対の導電レールとの間に挿入された絶縁部材として構成されるものである。
【0007】
一実施の形態にかかる射出体は、対向して配置された一対の導電レールの間の空間に挿入された導電部材である電機子に、前記一対の導電レールによって電流を流すことで、前記電機子に保持された射出対象物を射出する射出装置において、前記電機子によって加速される射出体であって、前記射出対象物を含む被加速部材と、前記被加速部材と前記一対の導電レールとの間に挿入される、前記被加速部材に取り付けられた絶縁部材である残渣除去板と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、電磁力によって物体を射出する射出装置において、物体の射出速度の維持及び射出速度のばらつき抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる飛翔体を射出する射出システムの構成を模式的に示す図である。
【
図3】飛翔体、電機子及び残渣除去板の拡大図である。
【
図4】飛翔体及び残渣除去板を
図3の紙面右側から(+X側から、
図3の方向D)見たときの図である。
【
図6】
図4のA-A線における飛翔体及び電機子のZ-X断面を示す図である。
【
図7】飛翔体の溝に残渣除去板をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す図である。
【
図8】飛翔体が初期位置に有るときの例を示す図である。
【
図9】残渣除去板による残渣物の除去を示す図である。
【
図10】飛翔体を複数回射出する場合の射出速度のばらつきを示す図である。
【
図11】実施の形態2にかかる飛翔体、電機子及び残渣除去板の拡大図である。
【
図12】
図11のXII-XII線における飛翔体及び残渣除去板のY-Z断面を示す図である。
【
図14】
図12のB-B線における飛翔体及び電機子のZ-X断面を示す図である。
【
図15】飛翔体の溝に残渣除去板をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す図である。
【
図16】実施の形態3にかかる飛翔体、電機子、サボ及び残渣除去板を示す図である。
【
図17】飛翔体、サボ及び残渣除去板を
図16の紙面右側から(+X側から、
図16の方向D)見たときの図である。
【
図18】飛翔体、サボ及び残渣除去板の斜視図を示す図である。
【
図19】
図17のC-C線における飛翔体、サボ及び電機子のZ-X断面を示す図である。
【
図20】サボの溝に残渣除去板をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
実施の形態1
本実施の形態にかかる飛翔体について説明する。本実施の形態にかかる飛翔体は、いわゆるレールガンによって射出されるものとして構成される。
図1に、実施の形態1にかかる飛翔体1を射出する射出システム100の構成を模式的に示す。射出システム100は、射出装置10、電源装置101、スイッチ102及び制御装置103を有する。
【0012】
射出装置10は、導体からなる電機子2にパルス電流Id(第1の電流とも称する)を流すことで生じる誘導磁場による電磁力(ローレンツ力)によって電機子2を加速する、いわゆるレールガンとして構成される。射出対象物である飛翔体1は、電機子2に押されることで加速され、その結果、射出口から射出される。
【0013】
電源装置101は、射出装置10と接続される射出用電源装置であり、射出装置10にパルス電流Idを供給可能に構成される。
【0014】
スイッチ102は、電源装置101から射出装置10への電源供給経路の開閉を行うももとして構成される。スイッチ102は、射出装置10へ供給される比較的大電流が流れる経路を安全に開閉できる限り、各種のスイッチ、リレーなどを用いることが可能である。
【0015】
制御装置103は、例えばコンピュータなどで構成され、制御信号CONを与えることで電源装置101の動作を制御することができる。例えば、制御装置103は、スイッチ102を制御することで、電源装置101が射出装置10へパルス電流Idを供給するタイミングや期間、パルス電流Idの電流値などを制御することができる。これにより、制御装置103は、射出装置10から飛翔体1が射出されるタイミングや飛翔体1の射出速度を制御することができる。
【0016】
次いで、射出装置10及び飛翔体1の射出について説明する。
図2に、飛翔体1近傍の拡大図を示す。
図2においては、紙面を左から右へ向かう水平方向をX方向、紙面を下から上へ向かう鉛直方向をZ方向、紙面の手前から奥へ向かう法線方向をY方向とする。
【0017】
射出装置10は、導電レール11及び12を有する。導電レール11及び12(第1の導電レールとも称する)は、軸方向(X方向)に延在する一対の導電性部材である。本構成では、導電レール11及び12は、紙面鉛直方向(Z方向)に離隔して配置されている。導電レール11はスイッチ102を介して電源装置101の正極と接続され、導電レール12は電源装置101の負極と接続される。
【0018】
飛翔体1及び電機子2は、導電レール11と導電レール12との間の空間に挿入される。電機子2は、導電レール11及び12に接触する導体で構成されており、飛翔体1の-X方向側に配置される。導電レール11及び12と電機子2とにパルス電流Idを流すことで、電機子2には射出方向(+X方向)の電磁力Fが生じ、電機子2は射出方向へ加速される。
【0019】
これにより、飛翔体1が電機子2に押されることで、飛翔体1は加速され、導電レール11及び12の+X方向側の端部(射出口)から射出される。なお、
図2に示すように、飛翔体1の外周には、導電レール11及び12と接触する絶縁部材である残渣除去板3が設けられている。
【0020】
図3に、飛翔体1、電機子2及び残渣除去板3の拡大図を示す。飛翔体1は、軸方向(X方向)に垂直な平面(Y-Z平面)内において、軸対称な形状を有する部材として構成される。本実施の形態では、飛翔体1は矩形の断面を有するものとして説明する。
【0021】
飛翔体1の外周には、環状の絶縁部材である残渣除去板3が設けられる。
図4に、飛翔体1及び残渣除去板3を
図3の紙面右側から(+X側から、
図3の方向D)見たときの図を示す。飛翔体1は、縦長、すなわちZ方向の辺がY方向の辺に比べて長い矩形の断面を有する。残渣除去板3は、方形環状部材として構成され、この断面においては飛翔体1を囲むように設けられている。上述したように、残渣除去板3の上面3Aは導電レール11と接触し、残渣除去板3の下面3Bは導電レール12と接触している。
【0022】
残渣除去板3は、以下で詳述するように、電機子2が溶融することで導電レールに付着する残渣物を除去するために設けられるので、電機子2と導電レール11及び12とが接触する幅(最大で幅WR)よりも、残渣除去板3の幅WPの方が広いことが望ましい。
【0023】
次いで、飛翔体1への残渣除去板3の取り付けについて説明する。
図5に、飛翔体1の斜視図を示す。また、
図6に、
図4のA-A線における飛翔体1及び電機子2のZ-X断面を示す。
図5の上段及び
図6に示すように、飛翔体1には、残渣除去板3をはめ込むための溝1Aが飛翔体1の外周に設けられている。
【0024】
図7に、溝1Aに残渣除去板3をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す。
図5の下段及び
図7に示すように、飛翔体1に設けられた溝1Aに残渣除去板3をはめ込むことで、残渣除去板3を飛翔体1に固定することができる。
【0025】
なお、以下では、電機子に電流が流れることで加速される部材のうち、残渣除去板を除く部材を被加速部材とも称する。本実施の形態においては、飛翔体1が被加速部材に対応する。また、以下では、電機子によって加速されることで射出される物体、すなわち、飛翔体1及び残渣除去板3を射出体とも称する。
【0026】
次いで、残渣除去板3の機能について説明する。
図8に、飛翔体1が初期位置に有るときの例を示す。レールガンとして構成される射出装置10では、上述したように、通電時に作用する電磁力によって飛翔体1を射出する。このとき、電機子2は導電レール11及び12に対して射出方向に高速に摺動する。一般に、導電レール11及び12の損傷を抑制するために、電機子2は導電レール11及び12よりも融点が低い材料で構成される。飛翔体1の射出時には、電機子2と導電レール11及び12との間に、接触抵抗によるジュール熱が発生するので、融点が低い電機子2がジュール熱で溶融し、溶融物が残渣物13として導電レール11及び12の表面に付着する。これにより、導電レール11及び12の表面の滑らかさが低下し、次回に射出する飛翔体の導電レール11及び12の摩擦が大きくなり、飛翔体1の射出速度が低下したり、速度のばらつきが大きくなってしまう。
【0027】
そこで、本構成では、残渣物の影響を防止ないしは抑制するため、飛翔体1に残渣除去板3を設けている。
図9に、残渣除去板3による残渣物13の除去を示す。本構成では、飛翔体1の射出時に、電機子2が導電レール11及び12に接触する前に、残渣除去板3を導電レール11及び12に接触させることで、残渣物13を除去している。
【0028】
残渣除去板3は、絶縁物で構成されるため、導電レール11及び12の表面に付着した残渣物13と強く接触しても電流が流れることはないので、ジュール熱は生じない。また、摺動性の良好な絶縁物は、一般に金属より柔らかく、残渣物13を取り込みつつ進行方向(+X方向)に残渣物13を押しやり、また、付着強度の弱い残渣物13を剥離しながら、射出方向へ移動する。
図9では、残渣除去板3に取り込まれた残渣物を符号14で表示している。これにより、残渣除去板3によって、導電レール11及び12の表面上の残渣物13の厚みを一定の厚み以下とすることができ、その結果、導電レール11及び12と電機子2との間の摩擦を一定以下に抑えることができる。
【0029】
このように、残渣除去板3は、以前に飛翔体1を射出したときに電機子2が溶融することで導電レール11及び12に付着した残渣物13を取り除き、射出の度に導電レール11及び12に付着する残渣物13の厚みを一定以下に抑えることがでる。その結果、飛翔体1を複数回射出する場合に、飛翔体1の射出速度のばらつきを抑制することが可能となる。
【0030】
また、残渣除去板3は、導電レール11及び導電レール12に対して、Z方向における飛翔体1の位置を保持する支持部材としても機能するので、飛翔体1を射出するときの飛翔体1のブレ(ピッチング)を抑制することもできる。
【0031】
さらに、電機子2の溶融物からなる残渣物のうち、比較的大きなものは残渣除去板3により除去されるので、導電レール11及び12の表面に残渣物13が残存していても、電機子2と導電レール11及び12との間に入り込む残渣物は比較的小さいものに限定される。これらの残渣物13は、同じ材料で構成される電機子2に強く食い込み、かつ、導電性を有しているので、両者の間の接触抵抗は小さくなる。その結果、電機子2に流れる電流が残渣物13によって妨げられることを防止することができる。
【0032】
残渣除去板3が摺動して飛翔体1が射出された時点では、残渣除去板3は摺動による機械的ストレス及び熱的ストレスにより、損傷が進んでいる。これにより、残渣除去板3の形状は相当程度に変形又は離断している。これにより、飛翔体1の射出後に、残渣除去板3は自動的に飛翔体1から離脱するので、飛翔体1の飛翔に対して影響を与えることはない。
【0033】
図10に、飛翔体を複数回射出する場合の射出速度のばらつきを示す。ここでは、残渣除去板無しの条件で25回繰り返して飛翔体の射出を行い、その後、本実施の形態と同様に残渣除去板有りの条件で100回繰り返して飛翔体の射出を行い、飛翔体の射出速度を測定した。また、各射出における飛翔体の射出速度については、全試行における射出速度の平均値を用いて規格化して表示している。
【0034】
図10に示すように、残渣除去板無しの条件では、最初の5回程度は射出速度が安定しているものの、その後の射出では速度が0.4~1.15程度の範囲で大きくばらついていることがわかる。その後、残渣除去板有りの条件に切り替わると、射出速度は0.95~1.1程度の範囲に収まっている。これにより、本実施の形態にかかる残渣除去板を用いることで、電磁力によって飛翔体を射出する場合の射出速度の低下及び射出速度のばらつきを好適に抑制できることが理解できる。
【0035】
実施の形態2
実施の形態2にかかる残渣除去板について説明する。
図11に、実施の形態2にかかる飛翔体1、電機子2、残渣除去板3及び4の拡大図を示す。本実施の形態では、実施の形態1と比べて、残渣除去板4がさらに追加されている。なお、残渣除去板4以外の構成は、実施の形態1と同様であるので、重複する説明については省略する。
【0036】
図12に、
図11のXII-XII線における飛翔体1、残渣除去板3及び4のY-Z断面を示す。飛翔体1、残渣除去板3及び4を
図11の紙面右側から(+X側から、
図11の方向D)見たときの図を示す。残渣除去板4は、残渣除去板3と同様に、方形環状部材として構成され、飛翔体1を囲むように設けられている。本構成では、残渣除去板4は、残渣除去板3よりも電機子2に近い位置、すなわち-X方向に離隔した位置に設けられる。残渣除去板4の上面4Aは導電レール11と接触し、残渣除去板4の下面4Bは導電レール12と接触している。
【0037】
次いで、飛翔体1への残渣除去板4の取り付けについて説明する。
図13に、飛翔体1の斜視図を示す。また、
図14に、
図12のB-B線における飛翔体1及び電機子2のZ-X断面を示す。
図13の上段及び
図14に示すように、飛翔体1には、残渣除去板4をはめ込むための溝1Bが飛翔体1の外周に設けられている。
【0038】
図15に、溝1A及び1Bに残渣除去板3及び4をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す。
図13の下段及び
図15に示すように、飛翔体1に設けられた溝1Bに残渣除去板4をはめ込むことで、残渣除去板4を飛翔体1に固定することができる。
【0039】
以上、本構成によれば、射出方向に対して2つの残渣除去板を配列することで、残渣除去板による残渣物の除去及び導電レール11及び12の表面を整える機能をより向上させることが可能となる。
【0040】
また、1本の導電レールに対して残渣除去板が接触する箇所を2つにすることができるので、射出方向(X方向)と直交する方向(Y方向)への飛翔体1のズレ、及び、直交する方向(Y方向)を回転軸とする飛翔体1のズレ(ピッチング)をより効果的に抑制することが可能となる。
【0041】
なお、本実施の形態では、飛翔体1の外周に、射出方向に2本の残渣除去板が配列される構成について説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、飛翔体1の外周に、射出方向に3本以上の残渣除去板が配列してもよいことは、言うまでもない。また、残渣除去板の配列数に応じて、残渣除去板の射出方向の寸法を変更してもよいことも、言うまでもない。
【0042】
実施の形態3
実施の形態3にかかる残渣除去板について説明する。実施の形態1及び2では、残渣除去板が飛翔体に取り付けられる例について説明したが、射出装置においては、飛翔体をサボ(Sabot)で保持して射出する場合が考え得る。一般に、サボを用いることで、導電レール間の射出空間の寸法よりも小さな任意の形状の飛翔体を射出することができるので、射出装置の運用の柔軟性を高めることができる。そこで、本実施の形態では、サボに残渣除去板を設ける構成について説明する。
【0043】
図16に、実施の形態3にかかる飛翔体5、電機子2、サボ6及び残渣除去板7を示す。本構成では、飛翔体5は、導電レール11と導電レール12との間の空間よりも寸法が小さく、サボ6のサボ部材61及び62によってZ方向に挟まれることで保持されている。本構成では、電機子2が加速されることで飛翔体5及びサボ6が加速されるので、飛翔体5及びサボ6が被加速部材に対応し、飛翔体5、サボ6及び残渣除去板7が射出体に対応することとなる。
【0044】
サボ6の外周には、環状の絶縁部材である残渣除去板7が設けられる。
図17に、飛翔体5、サボ6及び残渣除去板7を
図16の紙面右側から(+X側から、
図16の方向D)見たときの図を示す。飛翔体5は、導電レール11と導電レール12との間の空間よりも小さな矩形の断面を有する。飛翔体5は、サボ6を構成する、上側(+Z方向側)のサボ部材61と、下側(-Z方向)のサボ部材62と、で挟まれることで保持されている。
【0045】
残渣除去板7は、方形環状部材として構成され、この断面においてはサボ6を囲むように設けられている。上述したように、残渣除去板7の上面7Aは導電レール11と接触し、残渣除去板7の下面7Bは導電レール12と接触している。
【0046】
次いで、サボ6への残渣除去板7の取り付けについて説明する。
図18に、飛翔体5、サボ6及び残渣除去板7の斜視図を示す。また、
図19に、
図17のC-C線における飛翔体5、サボ6及び電機子2のZ-X断面を示す。
図18の上段及び
図19に示すように、サボ6には、残渣除去板7をはめ込むための溝6Aが外周に設けられている。
【0047】
図20に、溝6Aに残渣除去板7をはめ込んだ場合のZ-X断面を示す。
図18の下段及び
図20に示すように、サボ6に設けられた溝6Aに残渣除去板7をはめ込むことで、残渣除去板7を飛翔体5に固定することができる。
【0048】
本構成において、残渣除去板7が摺動して飛翔体5及びサボ6が射出された時点では、残渣除去板7は摺動による機械的ストレス及び熱的ストレスにより損傷が進んでいる。これにより、残渣除去板7の形状は相当程度に変形又は離断している。これにより、飛翔体5及びサボ6の射出後に、残渣除去板7が自動的にサボ6から離脱し、かつ、サボ6が飛翔体5から離脱するので、飛翔体5の飛翔に対して影響を与えることはない。その後、サボ6が飛翔体5から離脱することで、飛翔体5が単独で飛翔することとなる。
【0049】
なお、本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、サボの外周に、射出方向に複数の残渣除去板を配列する構成としてもよいことは、言うまでもない。
【0050】
以上説明したように、本構成によれば、サボによって飛翔体を保持する場合においても、サボに残渣除去板を取り付けることで、実施の形態1と同様に、飛翔体の射出速度の低下及び射出速度のばらつきを抑制することができる。
【0051】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、導電レールは、各種の導電性材料、例えば、銅、クロム銅、銅タングステン、真鍮などの銅合金及びアルミナ分散強化銅(GLIDCOP、登録商標)などで構成することができる。
【0052】
電機子は、各種の導電性材料、例えば、亜鉛、アルミニウム、アルミニウム合金及びマグネシウム合金などで構成することができる。
【0053】
残渣除去板は、各種の絶縁材料、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)及びポリアミノビスマレイミド(polyaminobismaleimide:PABM又はPABM)などで構成することができる。
【0054】
上記で説明した射出装置が有するレールガンの構成は例示に過ぎず、上述の実施の形態にかる残渣除去板は、他の各種の構成のレールガンにて飛翔体を射出する場合に適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0055】
1、5 飛翔体
1A、1B、6A 溝
2 電機子
3、4、7 残渣除去板
3A、4A、7A 上面
3B、4B、7B 下面
6 サボ
10 射出装置
11、12 導電レール
13、14 残渣物
61、62 サボ部材
100 射出システム
101 電源装置
102 スイッチ
103 制御装置
CON 制御信号