(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190931
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
G04B 19/14 20060101AFI20221220BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20221220BHJP
G04C 9/00 20060101ALI20221220BHJP
G04R 60/10 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
G04B19/14 F
G04B19/06 C
G04C9/00 301A
G04R60/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099473
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 修一
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101CJ12
(57)【要約】
【課題】落下衝撃などがあっても文字板を位置決めでき、平面サイズを小さくできる時計の提供。
【解決手段】時計は、文字板保持面を有する樹脂製の文字板受け部材と、文字板保持面から突出して配置され、金属材料で形成された位置決めピンと、文字板保持面に重なる位置に配置され、位置決めピンに係合する位置決め受け部を有する文字板と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字板保持面を有する樹脂製の文字板受け部材と、
前記文字板保持面から突出して配置され、金属材料で形成された位置決めピンと、
前記文字板保持面に重なる位置に配置され、前記位置決めピンに係合する位置決め受け部を有する文字板と、
を備える時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記文字板受け部材は、地板または地板に保持される文字板受けリングである
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の時計において、
前記位置決めピンは、非磁性の金属材料で形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の時計において、
前記文字板の裏側に配置され、前記位置決めピンに係合する第2位置決め受け部を有するソーラーパネルを備える
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の時計において、
前記文字板の表側に配置され、前記位置決めピンで位置決めされるダイヤルリングを備える
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の時計において、
前記位置決めピンは、前記文字板の前記位置決めピンの軸方向の移動を規制する軸方向規制部を備える
ことを特徴とする時計。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の時計において、
前記位置決め受け部は、前記文字板の径方向の移動を規制する径方向規制部を備える
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の時計において、
前記文字板の外周に配置されるアンテナを備え、
前記アンテナは、内周面に、前記位置決めピンが配置される収納部を備える
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地板に第1固定用凸部を形成し、この凸部にソーラーパネルの凹部を嵌め合わせて、ソーラーパネルの周方向の移動を規制することが開示されている。また、地板の第1固定用凸部に、文字板の凹部を嵌め合わせて、文字板の周方向の移動を規制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、樹脂製の地板に凸部を形成して案内するため、時計の落下衝撃などを考慮すると、凸部のサイズを大きくし、文字板やソーラーパネルの凹部も凸部に合わせて大きくする必要があるため、時計の平面サイズが大きくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電子時計は、文字板保持面を有する樹脂製の文字板受け部材と、前記文字板保持面から突出して配置され、金属材料で形成された位置決めピンと、前記文字板保持面に重なる位置に配置され、前記位置決めピンに係合する位置決め受け部を有する文字板と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の電子時計を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態の電子時計を示す概略断面図である。
【
図3】第1実施形態の電子時計の要部を示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態の文字板およびソーラーパネルの位置決め構造を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態の文字板およびソーラーパネルの位置決め構造を示す拡大斜視図である。
【
図6】第2実施形態の文字板およびソーラーパネルの位置決め構造を示す断面図である。
【
図7】変形例の文字板およびソーラーパネルの位置決め構造を示す断面図である。
【
図8】他の変形例の文字板の位置決め受け部を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態の電子時計10を図面に基づいて説明する。
図1は、電子時計10を表面側から見た平面図であり、
図2は、電子時計10の概略を示す断面図である。
電子時計10は、GPS衛星からの電波を受信して内部時刻を修正する腕時計である。なお、GPSは、Global Positioning Systemの略語である。GPS衛星は、地球の上空において、所定の軌道上を周回する航法衛星であり、1.57542GHzの電波に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。以降の説明では、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波を衛星信号という。衛星信号は、右旋偏波の円偏波である。
【0008】
電子時計10は、
図1および
図2に示すように、外装ケース30と、カバーガラス33と、金属製の裏蓋34とを備えている。外装ケース30は、金属製の円筒状のケース31に、金属製のベゼル32が嵌合されて構成されている。以下の説明では、電子時計10の各部品において、カバーガラス33側を表面または上面、裏蓋34側を裏面または下面と定義する。
外装ケース30の内側には、ベゼル32の内周に取り付けられているダイヤルリング40と、光透過性の文字板11と、太陽電池であるソーラーパネル50と、リング状のカレンダー車16と、第1耐磁板160と、地板100と、回路基板120と、第2耐磁板170と、回路押さえ122とが配置されている。
【0009】
さらに、外装ケース30内には、文字板11の平面中心に配置された指針軸25,26,27と、指針軸25,26,27に取り付けられた指針21,22,23と、指針21,22,23やカレンダー車16を駆動する駆動機構140が配置されている。
図1に示すように、外装ケース30の側面には、文字板11の平面中心に対して、2時方向の位置にAボタン12が設けられ、4時方向の位置にBボタン13が設けられ、3時方向の位置にリュウズ14が設けられている。
文字板11およびソーラーパネル50には、カレンダー小窓15、55が設けられている。このため、文字板11、指針21,22,23、カレンダー車16は、ベゼル32の開口に取り付けられたカバーガラス33やカレンダー小窓15、55を通して、視認可能となっている。
【0010】
文字板11は、合成樹脂製の光透過性の材料、例えばポリカーボネイトなどで形成されている。
文字板11の裏面には、光発電を行うソーラーパネル50が配置されている。ソーラーパネル50は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する複数のソーラーセルを直列接続した円形の平板である。
文字板11およびソーラーパネル50は重ねて配置され、その外周は、ダイヤルリング40の内周部の下面に配置されている。すなわち、文字板11およびソーラーパネル50の外周縁はダイヤルリング40で被覆されている。このため、ダイヤルリング40は、文字板11の外周を見切る見切り材として機能し、ダイヤルリング40の内周開口の直径が、文字板11の見切り径とされている。
ソーラーパネル50の裏面側にはカレンダー車16が配置され、このカレンダー車16はカレンダー小窓15から視認可能となっている。カレンダー車16は、
図3に示すように、円板状のカレンダー押さえ17で文字板11側に移動しないように規制されている。
【0011】
図3は、電子時計10の文字板11およびソーラーパネル50の位置決め構造を示す分解斜視図であり、
図4は前記位置決め構造の要部を示す断面図であり、
図5は前記位置決め構造の要部を示す拡大斜視図である。
地板100は、合成樹脂製の材料で形成され、
図3に示すように、地板100の表面の外周には、地板100からカバーガラス33側に突出する第1突出部101と、第2突出部102とが形成されている。第1突出部101は、1箇所に形成され、第2突出部102は、複数箇所、具体的には3箇所に形成されている。
第1突出部101、第2突出部102の上面は平坦面とされ、文字板11やソーラーパネル50が載置される載置面とされている。このため、第1突出部101、第2突出部102の上面によって、文字板11やソーラーパネル50を保持する文字板保持面103が構成され、地板100によって文字板保持面103を有する文字板受け部材が構成される。
文字板保持面103には、位置決めピン80が配置されている。位置決めピン80は、非磁性の金属材料、例えば真鍮やリン青銅で形成された丸棒状の部材である。また、位置決めピン80の径は0.4~0.6mmであり、長さは1.0~4.0mm程度である。位置決めピン80は、下部側が第1突出部101や第2突出部102に形成された貫通孔に圧入され、上部側は文字板保持面103の法線方向に突出している。
【0012】
文字板11の外周縁には、位置決めピン80に係合する位置決め受け部110が4箇所に設けられている。位置決め受け部110は、文字板11の外周面から外側に突設された2つの固定用凸部111、112を備え、これらの固定用凸部111、112間に、位置決めピン80が配置される係合溝113が形成されている。
ソーラーパネル50の外周縁には、位置決めピン80に係合する第2位置決め受け部510が4箇所に設けられている。第2位置決め受け部510は、ソーラーパネル50の外周面から外側に突設された2つの固定用凸部511、512を備え、これらの固定用凸部511、512間に、位置決めピン80が配置される係合溝513が形成されている。
文字板11およびソーラーパネル50は、互いに重ねられて文字板保持面103に載置され、位置決めピン80に係合溝113、513が係合することで取り付けられている。
このため、文字板11およびソーラーパネル50は、文字板保持面103に重なる位置、すなわち、文字板11の表面に直交する法線方向から見た平面視で、文字板11の位置決め受け部110およびソーラーパネル50の第2位置決め受け部510が、文字板保持面103に重なる位置に配置されている。
また、第1突出部101には、ソーラーパネル50の裏面に形成される電極端子と回路基板120の端子とを導通する導通部材60が配置されている。導通部材60は、金属などの導電性材料によって構成されるコイルばねであり、第1突出部101を貫通して設けられている。
【0013】
地板100の外周部分には、アンテナ200がネジ250によって取り付けられている。
アンテナ200は、
図3に示すように、衛星信号を受信するリングアンテナであり、誘電体基材201の表面にめっきや銀ペースト印刷などによりアンテナ電極を形成して全体として環状に形成されている。
誘電体基材201は、環状に形成された本体部210と、アンテナ固定部220とを備える。アンテナ固定部220は、誘電体基材201を地板100にネジ250で固定するために複数箇所に設けられている。アンテナ固定部220の上面は、文字板保持面103よりも低くされ、平面視で文字板11およびソーラーパネル50とアンテナ固定部220およびネジ250とを重ねて配置できる。
本体部210の内周面には、第1突出部101、第2突出部102が収納、つまり位置決めピン80が収納される収納部211が形成されている。収納部211は、
図5に示すように、本体部210の内周面に形成された凹部である。このため、
図4、5に示すように、アンテナ200の本体部210は、収納部211が形成された部分の径方向の厚さ寸法が、他の部分に比べて小さくされている。
【0014】
図2、4に示すように、文字板11の外周に沿ってダイヤルリング40が配置されている。ダイヤルリング40は、平板部41および傾斜部42を備えたリング状の合成樹脂材で構成されている。
平板部41は、カバーガラス33と平行に設けられ、外周端の上面がベゼル32の内周の突部下面に接している。傾斜部42は、平板部41から延出され、内周端の下面が文字板11に接触する。傾斜部42の表面つまりダイヤルリング40の内周面は、表面側から裏面側に向かって直径が小さくなるように傾斜されている。このため、ダイヤルリング40の内周面は、電子時計10の内側に向かうほど文字板11に対する高さが小さくなり、文字板11は広い角度範囲で視認することができる。
【0015】
ダイヤルリング40と、ベゼル32とによりドーナツ形状の収納空間が形成され、この収納空間内に、アンテナ200が収納されている。アンテナ200は、地板100を貫通する貫通孔105に設けられるアンテナ給電ピン240によって回路基板120に電気的に接続されている。
また、回路基板120のグランドパターンは、回路押さえ122の導通バネ部123を介して金属製の裏蓋34に導通しており、回路基板120とともに外装ケース30や裏蓋34もグランドプレーンとして利用できる。外装ケース30や裏蓋34をグランドプレーンとして利用することで、グランドプレーンの面積を大きくとることができ、アンテナ利得が向上してアンテナ特性を向上できる。
ダイヤルリング40は、合成樹脂などの非導電性材料で形成されているので、アンテナ200による電波受信を妨げない。また、ダイヤルリング40がアンテナ200を覆うため、アンテナ200が隠され、電子時計10の外観上の違和感を与えることが防止され、電子時計10の意匠性を向上できる。
図4に示すように、ダイヤルリング40の下面には凹部43が形成され、この凹部43に位置決めピン80の上端部が挿入されている。これにより、ダイヤルリング40は位置決めピン80で位置決めされている。
【0016】
図2に示すように、駆動機構140は、地板100の裏面に取り付けられ、回路基板120で裏面側から覆われている。駆動機構140は、ステップモーターと歯車などの輪列とを有し、指針21~23、カレンダー車16を駆動する。なお、本実施形態では、指針21は秒針であり、指針22は分針であり、指針23は時針であり、カレンダー車16は日車である。そして、本実施形態では、駆動機構140として、指針22および指針23を駆動する時分針駆動機構と、指針21を駆動する秒針駆動機構と、カレンダー車16を駆動する日車駆動機構とを備える。
【0017】
地板100の文字板11側、具体的にはカレンダー車16と地板100との間には第1耐磁板160が設けられている。
第1耐磁板160は、駆動機構140の各モーターに平面視で重なるように構成されている。第1耐磁板160は、モーターのコイルが外部磁界の影響を受けてモーターが誤動作することを防止する機能と、指針23である時針が取り付けられる筒車を押さえる機能を備える。第1耐磁板160は、地板100にネジ止めされ、指針軸25,26,27や日回し車等が配置される穴が形成されている。
【0018】
図2に示すように、回路基板120には、GPS受信IC300、制御IC400が搭載されている。また、回路基板120の切欠部には、ソーラーパネル50が発電した電力で充電されるリチウムイオン電池などの二次電池130が配置されている。
回路基板120のGPS受信IC300および制御IC400が設けられた裏面側には、平面視で駆動機構140の各モーターに重なる第2耐磁板170が配置されている。第2耐磁板170は、二次電池130や、GPS受信IC300、制御IC400とは平面視で重ならない形状で形成されている。第2耐磁板170は、モーターのコイルが外部磁界の影響を受けてモーターが誤動作することを防止する。
第2耐磁板170の裏面側には、回路基板120を地板100に固定する回路押さえ122が配置されている。回路押さえ122は、二次電池130とは平面視で重ならない形状で形成されている。回路押さえ122は、金属板で構成され、裏蓋34に接触する導通バネ部123を有している。
【0019】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態によれば、金属製の位置決めピン80を用いて文字板11を位置決めしているので、樹脂製の位置決め部材を用いて位置決めする場合に比べて、位置決めピン80の強度が高いので位置決めピン80の径を小さくでき、電子時計10の平面サイズも小さくできて小型化できる。すなわち、樹脂製の位置決め部材を用いた場合は、電子時計10の落下衝撃等を考慮して位置決め部材の径を大きくする必要があり、その分、時計の平面サイズも大きくなる。これに対し、本実施形態では、金属製の位置決めピン80を用いているので、強度を確保するために必要な径を樹脂製の場合に比べて小さくでき、その分、電子時計10の平面サイズも小さくできて小型化できる。
また、金属製の位置決めピン80を用いているので、インデックスなどの加飾要素を含めた文字板11の重量制限を緩和できる。このため、文字板11のデザイン自由度を向上できる。
【0020】
位置決めピン80を地板100の文字板保持面103に設けているので、地板100を文字板受け部材として用いることができる。このため、地板100とは別体の文字板受け部材を設ける必要が無く、従来から利用されている地板100に金属製の位置決めピン80を取り付けるだけでよいため、簡易な構造で安価に実現できる。
【0021】
位置決めピン80を、真鍮やリン青銅などの非磁性の金属材料で形成したので、耐磁しにくい位置決めピン80を用いることができ、時計部品に対する影響、例えばアンテナ200での電波受信への影響を低減できる。また、位置決めピン80は、真鍮またはリン青銅で形成しているので、電子時計10用に用いられる径が0.4~0.6mm程度の微小なピンであっても比較的容易にかつ安価に製造できる。
【0022】
ソーラーパネル50の第2位置決め受け部510を、文字板11の位置決め受け部110と共に位置決めピン80に係合して位置決めしているので、文字板11とソーラーパネル50との位置ずれを防止できる。このため、文字板11、ソーラーパネル50に形成されたカレンダー小窓15、55の位置ずれも防止できる。また、文字板11用の位置決めピンとソーラーパネル50用の位置決めピンとを別々に設ける場合に比べて、位置決めピン80の本数を少なくでき、位置決めピン80の占有部分などの位置決めに必要な面積を削減できる。
【0023】
位置決めピン80は、ダイヤルリング40の凹部43に挿入されてダイヤルリング40の位置決めにも利用されているので、文字板11とダイヤルリング40の位置ずれを防止できる。このため、電子時計10の意匠性の低下を防止でき、かつダイヤルリング40に目盛が設けられている場合には、目盛に対する指針の指示位置がずれて指示精度が低下することを防止できる。
また、位置決めピン80は金属製であり、強度が高いので、ダイヤルリング40の重量制限も緩和でき、ダイヤルリング40のデザイン自由度も向上できる。
【0024】
文字板11の外周に配置されるリング状のアンテナ200を備え、アンテナ200は、内周面に、位置決めピン80および文字板保持面103が配置される収納部211を備える。この際、金属製の位置決めピン80を用いているので、位置決めピン80の径、および、文字板保持面103の面積を小さくでき、これらが配置される収納部211の面積も小さくできる。このため、アンテナ200の径を小さくでき、電子時計10を小型化できる。
【0025】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の電子時計10Aの要部を示す断面図である。なお、電子時計10Aにおいて、電子時計10と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
電子時計10Aは、アンテナ200を備えていない点で第1実施形態の電子時計10と相違する。このため、電子時計10Aでは、ダイヤルリング40や文字板11の外周側にアンテナ200を配置するスペースを確保する必要が無い。したがって、文字板11の外周面と外装ケース30の内周面との間隔を小さくできる。
また、外装ケース30の内周面と文字板11の外周面との間隔が小さいため、ダイヤルリング40Aは、平板部41Aに対する傾斜部42Aの傾斜角度が大きくされている。また、ダイヤルリング40Aの下面には、円筒状の凹部43Aが形成されている。この凹部43Aに位置決めピン80を挿入することで、ダイヤルリング40Aは位置決めされている。
【0026】
このような電子時計10Aによれば、前記第1実施形態と同様に作用効果を奏することができる。また、アンテナ200を設けていないので、文字板11の外周面と外装ケース30の内周面との間隔を小さくでき、外装ケース30の径を小さくできて電子時計10Aの平面サイズをさらに小さくできる。
【0027】
[変形例]
なお、本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本開示に含まれるものである。
例えば、位置決めピン80は丸棒状のものに限らず、
図7に示すように、軸方向規制部81を備える位置決めピン80Bを用いてもよい。軸方向規制部81は、位置決めピン80Bの軸方向に直交する方向に突設された突片であり、文字板11の上面に当接可能とされて文字板11およびソーラーパネル50が位置決めピン80Bの軸方向に移動すること、つまりカバーガラス33側に移動することを規制している。また、ダイヤルリング40Bは、軸方向規制部81を配置可能な凹部43Bが形成されている。
【0028】
このような位置決めピン80Bを用いた電子時計10Bによれば、文字板11およびソーラーパネル50が位置決めピン80Bの軸方向に移動することを軸方向規制部81によって規制でき、文字板11やソーラーパネル50が外れるリスクを低減できる。また、時計の組立時や修理時にダイヤルリング40を取り外した状態でも文字板11やソーラーパネル50等が外れることを防止できる。
なお、電子時計10Bにおいて、全ての位置決めピンを、軸方向規制部81を備える位置決めピン80Bとしてもよいし、一部のみを位置決めピン80Bとし、他を位置決めピン80としてもよい。
また、位置決めピン80Bに、係合溝113、513を係合させる場合は、例えば、軸方向規制部81を外側に向けておき、係合溝113、513に軸方向規制部81を通しながらソーラーパネル50、文字板11を配置し、その後、軸方向規制部81を内側に向くように回転させてもよいし、ソーラーパネル50や文字板11を配置してから位置決めピン80Bを取り付けてもよい。
【0029】
図8に示すように、固定用凸部111、112に径方向規制部115を設けた文字板11Cを用いてもよい。径方向規制部115は、固定用凸部111、112の端部から互いに近接する方向に突出され、固定用凸部111、112間に形成される係合溝113Cの端部開口の幅寸法が位置決めピン80の径よりも小さくなるように構成されている。
このような文字板11Cを用いれば、位置決めピン80が係合溝113Cの端部から外れることを防止できるため、文字板11Cが径方向に移動して位置決めピン80から外れるリスクを低減できる。
また、位置決めピン80の径を係合溝113Cの寸法よりも大きくすることで締め代を設け、この締め代によって位置決めピン80に対して文字板11Cを固定する場合、製造誤差によって締め代が小さくなった場合でも、径方向規制部115が設けられることで文字板11Cが係合溝113Cの端部から外れることを防止できる。
【0030】
位置決めピン80は地板100に設けられるものに限定されず、地板100とは別体で地板に保持される文字板受けリングを設け、この文字板受けリングに文字板を配置する場合には、この文字板受けリングに位置決めピン80を設けてもよい。
前記実施形態では、文字板11、11C、ソーラーパネル50、ダイヤルリング40、40A、40Bを同じ位置決めピン80で位置決めしていたが、文字板11、11Cを位置決めする位置決めピン80と、ソーラーパネル50やダイヤルリング40、40A、40Bを位置決めする位置決めピンとを別々に設けてもよい。
また、ソーラーパネル50やダイヤルリング40、40A、40Bの位置決めは、金属材料で形成された位置決めピン80を用いるものに限定されず、例えば地板100等に形成した樹脂ダボ等の樹脂製の位置決め部材で位置決めしてもよい。
さらに、文字板11等を複数箇所の位置決めピン80で位置決めする場合に、例えば、2箇所では位置決めピンの径よりも係合溝113の開口幅寸法を小さくして締め代を設定し、他の箇所では締め代を設定しない場合に、締め代を設定した部分には金属製の位置決めピン80を配置し、締め代を設定しない部分には樹脂製の位置決め部材を用いてもよい。
【0031】
電子時計10ではリング状のアンテナ200を用いていたが、リングアンテナ以外の他のアンテナを用いてもよい。例えば、文字板11,11Cの裏側にパッチアンテナを備えてもよい。この場合、パッチアンテナと金属製の位置決めピン80は平面視で重ならないように配置すればよい。
また、ソーラーパネル50を備えない時計において、文字板11の位置決め用に金属製の位置決めピン80を用いてもよい。この場合、文字板11は透光性材料で構成する必要が無いため、金属製の文字板11を用いてもよい。また、時計としては、ステップモーターで指針を駆動する電子時計に限定されず、例えば、ゼンマイ駆動の時計でもよい。
【0032】
[本開示のまとめ]
本開示の時計は、文字板保持面を有する樹脂製の文字板受け部材と、前記文字板保持面から突出して配置され、金属材料で形成された位置決めピンと、前記文字板保持面に重なる位置に配置され、前記位置決めピンに係合する位置決め受け部を有する文字板と、を備えることを特徴とする。
本開示の時計によれば、金属製の位置決めピンを用いているので、樹脂製の位置決め部材を用いて文字板を位置決めする場合に比べて、位置決めピンの強度が高いのでピンの径を小さくできる。ピンの径を小さくできるため、電子時計の平面サイズを小さくできる。
また、金属製の位置決めピンを用いているので、位置決め部材の強度に左右される文字板の重量制限を緩和できる。このため、インデックスなどの加飾要素を含めた文字板の材質やデザイン自由度を向上できる。
【0033】
本開示の時計において、前記文字板受け部材は、地板または地板に保持される文字板受けリングであることが好ましい。
本開示の時計によれば、従来から利用されている地板や文字板受けリングに金属製の位置決めピンを取り付けるだけでよいので、簡易な構造で安価に実現できる。
【0034】
本開示の時計において、前記位置決めピンは、非磁性の金属材料で形成されていることが好ましい。
本開示の時計によれば、耐磁しにくい位置決めピンを用いることができるので、内部の時計部品に対する影響を低減できる。例えば、時計部品としてアンテナを設ける場合、アンテナにおける電波受信に対する影響を低減できる。
【0035】
本開示の時計において、前記非磁性の金属材料は、真鍮またはリン青銅で形成されていることが好ましい。
本開示の時計によれば、位置決めピンを真鍮またはリン青銅で形成しているので、位置決めピンを比較的容易でかつ安価に製造できる。
【0036】
本開示の時計において、前記文字板の裏側に配置され、前記位置決めピンに係合する第2位置決め受け部を有するソーラーパネルを備えることが好ましい。
本開示の時計によれば、文字板の位置決め用に用いる位置決めピンを、ソーラーパネルの位置決め用に用いるため、文字板用の位置決めピンとソーラーパネル用の位置決めピンとを別々に設ける場合に比べて、位置決めピンの本数も少なくでき、位置決めに必要な面積を削減できる。
【0037】
本開示の時計において、前記文字板の表側に配置され、前記位置決めピンで位置決めされるダイヤルリングを備えることが好ましい。
本開示の時計によれば、文字板を位置決めする位置決めピンでダイヤルリングの位置決めを行うため、文字板とダイヤルリングの位置ずれを防止できる。また、金属製の位置決めピンでダイヤルリングを位置決めするため、ダイヤルリングの重量制限の規制を緩和でき、ダイヤルリングのデザイン自由度も向上できる。
【0038】
本開示の時計において、前記位置決めピンは、前記文字板の前記位置決めピンの軸方向の移動を規制する軸方向規制部を備えることが好ましい。
本開示の時計によれば、軸方向規制部を備える位置決めピンを用いているので、文字板が位置決めピンの軸方向に移動して外れることを防止できる。
【0039】
本開示の時計において、前記位置決め受け部は、前記文字板の径方向の移動を規制する径方向規制部を備えることが好ましい。
本開示の時計によれば、径方向規制部を備える位置決め受け部を文字板に設けているので、位置決めピンに対して文字板が径方向に移動して外れることを防止できる。
【0040】
本開示の時計において、前記文字板の外周に配置されるアンテナを備え、前記アンテナは、内周面に、前記位置決めピンが配置される収納部を備えることが好ましい。
本開示の時計によれば、金属製の位置決めピンを用いることで、位置決めピンの径を小さくでき、位置決めピンが配置される収納部も小さくできる。このため、アンテナの径を小さくでき、時計を小型化できる。
【符号の説明】
【0041】
10…電子時計、10A…電子時計、10B…電子時計、11…文字板、11C…文字板、16…カレンダー車、21…指針、22…指針、23…指針、30…外装ケース、31…ケース、32…ベゼル、33…カバーガラス、34…裏蓋、40…ダイヤルリング、40A…ダイヤルリング、40B…ダイヤルリング、41…平板部、41A…平板部、42…傾斜部、42A…傾斜部、43…凹部、43A…凹部、43B…凹部、50…ソーラーパネル、60…導通部材、80…位置決めピン、80B…位置決めピン、81…軸方向規制部、100…地板、101…第1突出部、102…第2突出部、103…文字板保持面、110…位置決め受け部、111…固定用凸部、112…固定用凸部、113…係合溝、113C…係合溝、115…径方向規制部、120…回路基板、130…二次電池、140…駆動機構、160…第1耐磁板、170…第2耐磁板、200…アンテナ、201…誘電体基材、210…本体部、211…収納部、220…アンテナ固定部、240…アンテナ給電ピン、250…ネジ、300…GPS受信IC、400…制御IC、510…第2位置決め受け部、511…固定用凸部、512…固定用凸部、513…係合溝。