(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190944
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/20 20140101AFI20221220BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20221220BHJP
E05B 79/20 20140101ALI20221220BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20221220BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E05B81/20 B
E05B79/08
E05B79/20
B60J5/00 N
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099487
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 晃士
(72)【発明者】
【氏名】清水 公人
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH02
2E250JJ39
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止するドアロック装置を提供する。
【解決手段】ドアロック装置20は、初期位置からクローズ位置に移動するときにラッチ31をフルラッチ位置に移動させるクローズレバー61と、クローズレバー61に連結されておりドアクローザ装置18により引っ張られるとクローズレバー61を初期位置からクローズ位置に移動させるクローズケーブル81と、初期位置からキャンセル位置に移動するときにキャンセルケーブル82を引っ張ることによってクローズレバー61を引っ張る力を無くすキャンセルレバー71と、モータ41の駆動力によって初期位置から作動位置に移動するときにポール32を規制位置から非規制位置に移動させるとともに、キャンセルレバー71を初期位置からキャンセル位置に移動させるブロックリフトレバー36と、を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結部材を引っ張ることができるとともに、第二連結部材が引っ張られると前記第一連結部材を引っ張る力を無くすように構成されているドアクローザ装置に、前記第一連結部材および前記第二連結部材によって連結される車両用のドアロック装置であって、
車両ドアを全閉位置に保持するフルラッチ位置と、前記車両ドアを半閉位置から開位置に移動しないように保持するハーフラッチ位置と、前記車両ドアを保持しないアンラッチ位置とに移動可能なラッチと、
前記ラッチと係合することによって前記ラッチを前記フルラッチ位置に保持する規制位置と、前記ラッチが前記フルラッチ位置から前記アンラッチ位置の側に移動することを許容する非規制位置と、に移動可能なポールと、
前記第一連結部材と連結されており、前記第一連結部材が前記ドアクローザ装置に引っ張られると初期位置からクローズ位置に移動するように構成されており、前記初期位置から前記クローズ位置に移動するときに前記ハーフラッチ位置に位置している前記ラッチを前記フルラッチ位置に移動させるクローズレバーと、
前記第二連結部材と連結されており、初期位置からキャンセル位置に移動するときに前記第二連結部材を引っ張るように構成されているキャンセルレバーと、
第一位置と第二位置とに移動可能であり、アクチュエータの駆動力によって前記第一位置から前記第二位置に移動するときに前記ポールを前記規制位置から非規制位置に移動させるとともに、前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる第一部材と、
を備える、車両用のドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記第一部材は回転することによって前記第一位置と前記第二位置とに移動可能であり、
前記キャンセルレバーは前記第一部材の回転中心線と平行な直線を中心に回転することによって前記初期位置と前記キャンセル位置とに移動可能であるとともに、前記第一部材の前記回転中心線の方向に沿って前記第一部材と対面配置されており、
前記第一部材は、前記キャンセルレバーの側に向かって突出する突起状の形状の係合部を有しており、前記第一位置から前記第二位置に回転するときに、前記係合部が前記キャンセルレバーに係合することによって、前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
車両用のドアロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記キャンセルレバーは、前記第一部材の側に向かって突出する突起状の係合部を有しており、
前記第一部材が前記第一位置から前記第二位置に回転するときに前記第一部材の前記係合部が前記キャンセルレバーの前記係合部に係合することによって、前記第一部材が前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
車両用のドアロック装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記ポールと係合することにより前記ポールを規制位置に保持する第一位置と、前記ポールの規制位置から非規制位置への移動を許容する第二位置とに移動可能な第二部材をさらに有し、
前記第一部材は、前記第一位置から前記第二位置を越えて第三位置に移動可能であるとともに、前記第一位置から前記第二位置を越えて前記第三位置に移動するときに、前記第二部材を押すことによって前記第二部材を前記第一位置から前記第二位置に移動させる、
車両用のドアロック装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記車両ドアに設けられているドアハンドルの操作に連動して初期位置から作動位置に移動する第三部材をさらに有しており、
前記第三部材が前記初期位置から前記作動位置に移動するときに、前記第三部材が前記キャンセルレバーに係合して前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
車両用のドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替えるドアクローズ動作を実行可能に構成されているドアロック装置(特許文献1においては「ドアラッチ装置」と称される)が開示されている。具体的には、特許文献1のドアロック装置は、回転することによってラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替えるクローズレバーを有する。クローズレバーはクローズケーブルによってドアクローザ装置に連結されており、ドアクローザ装置によってクローズケーブルが引っ張られると、クローズレバーが回転してラッチ機構がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替わる。
【0003】
特許文献1に記載のドアロック装置は、さらに、ドアハンドルの操作に連動して回転するキャンセルレバーを有している。そして、ドアロック装置のキャンセルレバーとドアクローザ装置とは、キャンセルケーブルによって連結されており、ドアロック装置のキャンセルレバーによりキャンセルケーブルが引っ張られると、ドアクローザ装置によるクローズケーブルを引っ張る動作が中止され、その結果、ドアロック装置のドアクローズ動作が中止(キャンセル)される。
【0004】
特許文献2には、アクチュエータ(モータ)を有し、このアクチュエータの駆動力によってラッチ機構をハーフラッチ状態およびフルラッチ状態からアンラッチ状態に切替え可能なドアロック装置が開示されている。特許文献2のドアロック装置によれば、使用者は、操作ボタン(具体的には、電気的なスイッチ)などを操作することによって、すなわち、ドアハンドルを手動操作することなく、ラッチ機構をハーフラッチ状態およびフルラッチ状態からアンラッチ状態に切替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-138534号公報
【特許文献2】特開2021-055493号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、アクチュエータの駆動力によってラッチ機構の状態を切り替え可能に構成されるドアロック装置に対しては、ラッチ機構の状態の切替と同様に、操作ボタンなどを操作することによって、すなわち、ドアハンドルの手動操作によらずに、ドアクローズ動作を中止できるようにしたいという要請がある。しかしながら、特許文献1と特許文献2のいずれにも、アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止するための構成は開示されていない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アクチュエータの駆動力によりドアクローズ動作を中止(キャンセル)できる車両用のドアロック装置を提供することである。
【0008】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係るドアロック装置は、
第一連結部材を引っ張ることができるとともに、第二連結部材が引っ張られると前記第一連結部材を引っ張る力を無くすように構成されているドアクローザ装置に、前記第一連結部材および前記第二連結部材によって連結される車両用のドアロック装置であって、
車両ドアを全閉位置に保持するフルラッチ位置と、前記車両ドアを半閉位置から開位置に移動しないように保持するハーフラッチ位置と、前記車両ドアを保持しないアンラッチ位置とに移動可能なラッチと、
前記ラッチと係合することによって前記ラッチを前記フルラッチ位置に保持する規制位置と、前記ラッチが前記フルラッチ位置から前記アンラッチ位置の側に移動することを許容する非規制位置と、に移動可能なポールと、
前記第一連結部材と連結されており、前記第一連結部材が前記ドアクローザ装置に引っ張られると初期位置からクローズ位置に移動するように構成されており、前記初期位置から前記クローズ位置に移動するときに前記ハーフラッチ位置に位置している前記ラッチを前記フルラッチ位置に移動させるクローズレバーと、
前記第二連結部材と連結されており、初期位置からキャンセル位置に移動するときに前記第二連結部材を引っ張るように構成されているキャンセルレバーと、
第一位置と第二位置とに移動可能であり、アクチュエータの駆動力によって前記第一位置から前記第二位置に移動するときに前記ポールを前記規制位置から非規制位置に移動させるとともに、前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる第一部材と、
を備える。
【0009】
本発明に係るドアロック装置によれば、ドアロック装置のアクチュエータによって、ラッチをフルラッチ位置またはハーフラッチ位置からアンラッチ位置に移動させることができるとともに、ドアクローズ動作を中止できる。すなわち、本発明によれば、アクチュエータの駆動力によってラッチ機構の状態を切り替えるように構成されているドアロック装置に、「アクチュエータの駆動力によって(使用者による手動操作によらずに)ドアクローズ動作を中止する機構」を付加できる。このため、本発明によれば、使用者は、例えばアクチュエータを駆動させるための電気的なスイッチを操作することにより(すなわち、ドアハンドルの手動操作によらず)、ラッチをフルラッチ位置およびハーフラッチ位置からアンラッチ位置に移動させることができるとともに、ドアクローズ動作を中止できる。
【0010】
そして、第一部材を移動させるアクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止できるから、キャンセルレバーをキャンセル位置に移動させるための別のアクチュエータ(第一部材を移動させるアクチュエータとは別のアクチュエータ)は不要である。さらに、第一部材の移動によってキャンセルレバーを初期位置からキャンセル位置に移動させるため、アクチュエータの駆動力をキャンセルレバーに伝達するための新たな部材を追加しなくてもよい。したがって、部品点数の増加およびドアロック装置の大型化を招くことなく、ドアロック装置に「アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止する機構」を付加できる。
【0011】
前記第一部材は回転することによって前記第一位置と前記第二位置とに移動可能であり、
前記キャンセルレバーは前記第一部材の回転中心線と平行な直線を中心に回転することによって前記初期位置と前記キャンセル位置とに移動可能であるとともに、前記第一部材の前記回転中心線の方向に沿って前記第一部材と対面配置されており、
前記第一部材は、前記キャンセルレバーの側に向かって突出する突起状の形状の係合部を有しており、前記第一位置から前記第二位置に回転するときに、前記第一部材の前記係合部が前記キャンセルレバーに係合することによって、前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
という構成が適用できる。
【0012】
本発明がこのように構成されると、第一部材が直接にキャンセルレバーに当接してキャンセルレバーを初期位置からキャンセル位置に移動させる。このため、第一部材の動きをキャンセルレバーに伝達するための部材(第一部材およびキャンセルレバーとは別体の部材)が不要である。したがって、部品点数の増加およびドアロック装置の大型化を招かない。また、本発明がこのように構成されると、第一部材に係合部を追加するのみで(換言すると、第一部材の形状を変更するのみで)、第一部材の動きをキャンセルレバーに伝達できる。したがって、ドアロック装置を構成する各部材の配置を変更しなくてもよい。また、第一部材以外の部材の形状を変更しなくてもよい。したがって、「アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止するための機構」をドアロック装置に容易に付加できる。なお、ここで言う「対面配置」とは、第一部材とキャンセルレバーとの関係において、両者が第一部材の回転中心線方向に対面する部分を有するように配置していることを言い、後述する実施形態のように両者間に別の部材が配設されていて良い。
【0013】
前記キャンセルレバーは、前記第一部材の側に向かって突出する突起状の係合部を有しており、
前記第一部材が前記第一位置から前記第二位置に回転するときに前記第一部材の前記係合部が前記キャンセルレバーの前記係合部に係合することによって、前記第一部材が前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
という構成が適用できる。
【0014】
本発明がこのように構成されると、第一部材およびキャンセルレバーの形状を変更するのみで、第一部材の動きをキャンセルレバーに伝達できる。したがって、ドアロック装置を構成する各部材の配置を変更しなくてもよい。また、第一部材およびキャンセルレバー以外の部材の形状を変更しなくてもよい。したがって、「アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止するための機構」をドアロック装置に容易に追加できる。
【0015】
ドアロック装置は、前記ポールと係合することにより前記ポールを規制位置に保持する第一位置と、前記ポールの規制位置から非規制位置への移動を許容する第二位置とに移動可能な第二部材をさらに有し、
前記第一部材は、前記第一位置から前記第二位置を越えて第三位置に移動可能であるとともに、前記第一位置から前記第二位置を越えて前記第三位置に移動するときに、前記第二部材を押すことによって前記第二部材を前記第一位置から前記第二位置に移動させる、
という構成が適用できる。
【0016】
いわゆるダブルポールタイプのドアロック装置は、ポールを規制位置に保持する第二部材を有しており、第一部材によって第二部材を第一位置から第二位置に移動させるように構成されている。このため、第二部材を移動させる第一部材によってキャンセルレバーを初期位置からキャンセル位置に移動させる構成とすることにより、ダブルポールタイプのドアロック装置に「アクチュエータの駆動力によってドアクローズ動作を中止させる機構」を付加できる。
【0017】
ドアロック装置は、前記車両ドアに設けられているドアハンドルの操作に連動して初期位置から作動位置に移動する第三部材をさらに有しており、
前記第三部材が前記初期位置から前記作動位置に移動するときに、前記第三部材が前記キャンセルレバーに係合して前記キャンセルレバーを前記初期位置から前記キャンセル位置に移動させる、
という構成が適用できる。
【0018】
発明がこのように構成されると、ドアハンドルの操作によってもキャンセルレバーを初期位置からキャンセル位置に移動させることができる。したがって、ドアクローザ装置の駆動力と使用者によるドアハンドルの手動操作とのいずれによっても、ドアクローズ動作を中止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図2は、車両ドアの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ドアロック装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、ドアロック装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、ドアロック装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、ドアロック装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態に係る車両用のドアロック装置20を、「ドアロック装置20」と略して記すことがある。以下の説明において、ドアロック装置20およびドアロック装置20を構成する各部材の方向は、車両10の方向を基準とする。各図においては、ドアロック装置20(すなわち車両10)の前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、車幅方向(左右方向)外側を矢印Outで示し、車幅方向内側を矢印Inで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。
【0021】
(車両および車両ドア)
図1は、車両10の構成例を示す模式図である。
図1に示すように、車両10は、車体11に対して開閉可能に取り付けられている複数の車両ドア12を有している。各車両ドア12は、それらの前端部が車体11に対して回転可能に取り付けられている。そして、各車両ドア12は、車体11に対して回転することにより、閉位置と開位置とに移動可能である。閉位置は、乗員が乗降するための乗降口(車体11に設けられている開口部)を閉鎖する位置である。閉位置には、車両ドア12の可動範囲の一方の端の位置であり乗降口が確実に閉鎖されている全閉位置と、全閉位置から僅かに可動範囲の他方の端の側に移動した位置であり乗降口が不完全に閉鎖されている半閉位置とが含まれる。開位置は、半閉位置から可動範囲の他方の端の側に移動した位置である。なお、開位置は、「乗降口を閉鎖しない位置」ということもできる。そして、車両10には、各車両ドア12が半閉位置にあることを検出できるドアセンサ14(半ドアセンサと称されることもある)が設けられている。
【0022】
各車両ドア12にはドアロック装置20およびドアクローザ装置18が取り付けられている。そして、車両10は、これらのドアロック装置20とドアクローザ装置18を制御するドアロックECU13を有している。ドアロックECU13は、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUは、ROMに格納されているインストラクション又はプログラム又はルーチンを読み出し、RAMに展開して実行できる。また、ドアロックECU13は、各ドアセンサ14に接続されており、各ドアセンサ14による「各車両ドア12が半閉位置に位置するか否か」の検出結果を取得できる。
【0023】
図2は車両ドア12の構成を示す側面図である。
図2に示すように、車両ドア12は、その下半部を構成するドア本体部121と、その上半部を構成するドアサッシュ122とを備えている。ドア本体部121は、アウタパネル123と、インナパネル124と、トリム125とを有している。アウタパネル123は、ドア本体部121の車外側の面(すなわち車両10の側面の一部)を構成する部材である。インナパネル124は、アウタパネル123の車内側に取り付けられている部材である。トリム125は、ドア本体部121の車内側の面を構成する樹脂製の部材であり、インナパネル124の車内側に取り付けられている。
【0024】
アウタパネル123には、アウトサイドドアハンドル15が取り付けられている。インナパネル124には、インサイドドアハンドル16が取り付けられている。アウトサイドドアハンドル15およびインサイドドアハンドル16は、使用者が手動操作可能な操作部材である。アウトサイドドアハンドル15とインサイドドアハンドル16は、いずれも初期位置と作動位置とに移動可能に構成されており、図略のバネなどによって初期位置に向かって常時弾性付勢されている。使用者は、アウトサイドドアハンドル15およびインサイドドアハンドル16を、バネなどの付勢力に抗して初期位置から作動位置へ移動させることができる。なお、以下の説明では、アウトサイドドアハンドル15とインサイドドアハンドル16のそれぞれを初期位置から作動位置に移動させる手動操作を「手動ドア開操作」と記す。
【0025】
さらにインナパネル124には、使用者が操作可能な電気的なスイッチであるアンラッチスイッチ17が設けられている。アンラッチスイッチ17は、後述するドアロック装置20のラッチ機構21をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えるため、および、後述するドアクローズ動作を中止するために操作される。そして、アンラッチスイッチ17はドアロックECU13に接続されており、ドアロックECU13は、アンラッチスイッチ17が操作されたことを検出できる。
【0026】
(ドアロック装置およびドアクローザ装置の概略)
ドアロック装置20およびドアクローザ装置18は、車両ドア12のアウタパネル123とインナパネル124との間(すなわち、ドア本体部121の内部空間)に配置されており、インナパネル124に固定されている。なお、ドアロック装置20の一部は、車両ドア12の後端部において車両ドア12の外部に露出している。そして、ドアロック装置20とドアクローザ装置18とは、第一連結部材の例であるクローズケーブル81と第二連結部材の例であるキャンセルケーブル82とによって連結されている。
【0027】
図3~
図6は、ドアロック装置20の要部の構成を示す図である。なお、
図3は斜視図であり、
図4は後側から見た図であり、
図5は前側から見た図であり、
図6は車外側から見た図である。これらの図に示すように、ドアロック装置20は、ラッチ機構21と、電動操作機構22と、手動操作機構23と、クローザ機構24と、キャンセル機構25とを有している。
【0028】
ドアロック装置20のラッチ機構21は、使用者による手動ドア開操作およびドアロック装置20が有するアクチュエータの駆動力によって、ラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるように構成されている。ラッチ機構21のラッチ状態は、閉位置に位置する車両ドア12を開位置に移動しないように保持する状態である。ラッチ状態は、具体的には、ラッチ機構21が有するラッチ31が後述するラッチ位置に位置しており、かつ、ラッチ31が車体11に設けられているストライカ101を保持している(係合している)状態である。なお、ラッチ状態には、車両ドア12を全閉位置に保持するフルラッチ状態と、車両ドア12を半閉位置から開位置に移動しないように保持するハーフラッチ状態が含まれる。アンラッチ状態は、車両ドア12を保持しない状態(換言すると、車両ドア12の開位置への移動を許容する状態)である。具体的には、アンラッチ状態は、ラッチ31が後述するアンラッチ位置に位置しており、かつ、ラッチ31がストライカ101と係脱自在な状態である。
【0029】
ドアクローザ装置18は、ドアクローザ装置18が有するアクチュエータの駆動力によってクローズケーブル81を引っ張ることができるように構成される。さらに、ドアクローザ装置18は、キャンセルケーブル82が引っ張られるとクローズケーブル81の引張力を無くす(クローズケーブル81を引っ張る動作を中止する、またはクローズケーブル81に掛かっている張力を無くすということもできる)ように構成される。このようなドアクローザ装置18には、例えば、特開2007-138534号公報に記載されている車両用ドアクローザ装置や、特開2013-019215号公報に記載されている車両用ドアロック装置のクローザ装置が適用できる。
【0030】
そして、ドアロック装置20は、車両ドア12が半閉位置に位置し、かつ、ラッチ機構21がハーフラッチ状態であるときに、クローズケーブル81がドアクローザ装置18によって引っ張られると、ラッチ機構21がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替わるように構成されている。なお、以下の説明では、ドアクローザ装置18の駆動力によってラッチ機構21をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替える動作を「ドアクローズ動作」と記す。さらに、ドアロック装置20は、ドアクローズ動作中にキャンセルケーブル82を引っ張ることによって、ドアクローザ装置18がクローズケーブル81を引っ張る動作を中止(キャンセル)するように、すなわち、ドアクローズ動作を中止するように構成されている。
【0031】
(ラッチ機構)
ラッチ機構21は、ラッチ31と、ポール32と、ポールリフトレバー33と、ハーフラッチレバー34と、ブロックレバー35と、ブロックリフトレバー36とを有している。
【0032】
ラッチ31は、フルラッチ爪311と、ハーフラッチ爪312と、ストライカ保持溝313と、クローズ爪314を有している。フルラッチ爪311は、後述するポール32の係合部321と係合可能な部分である。ハーフラッチ爪312は、後述するハーフラッチレバー34の第二係合部342と係合可能な部分である。ストライカ保持溝313は、車体11に設けられているストライカ101を挿抜可能な溝(切り欠きということもできる)である。ストライカ保持溝313は、フルラッチ爪311とハーフラッチ爪312との間に設けられている。クローズ爪314は、後述するクローズレバー61と係合可能な部分である。
【0033】
ラッチ31は、図略のベースプレートに対して、前後方向に略平行な直線C1を中心として回転可能に支持されている。ラッチ31は、回転することによって、フルラッチ位置と、ハーフラッチ位置と、アンラッチ位置(リリース位置と称されることもある)とに移動可能である。フルラッチ位置は、車両ドア12が全閉位置に位置するときにストライカ101を保持する位置(換言すると、ストライカ101と係合する位置)である。
図3~
図6は、ラッチ31がフルラッチ位置に位置している状態を示す。ハーフラッチ位置は、車両ドア12が半閉位置に位置するときにストライカ101を保持する位置である。ラッチ31がハーフラッチ位置に位置するとき、ラッチ31は、車両ドア12を半閉位置から開位置に移動しないように保持する。
図4において、ハーフラッチ位置は、ラッチ31がフルラッチ位置から時計回り方向に所定の角度回転した位置である。アンラッチ位置は、車体11に設けられているストライカ101を保持しない位置(換言すると、ストライカ101と係脱自在な位置)である。つまり、アンラッチ位置は、ラッチ31が車両ドア12を保持しない位置である。
図4において、アンラッチ位置は、ラッチ31がハーフラッチ位置からさらに時計回り方向に所定の角度回転した位置である。ラッチ31は、図略のラッチ復帰バネによって、アンラッチ位置に向けて(
図4中においては時計回り方向に)常時弾性付勢されている。
【0034】
ポール32は、ラッチ31のフルラッチ爪311およびブロックレバー35の係合部351に係脱可能な係合部321を有している。ポール32は、ベースプレートに対して、ラッチ31の回転中心線C1と平行な直線C2を中心として、後述するポールリフトレバー33と一体かつ同軸に回転可能に支持されている。そして、ポール32は、回転することによって規制位置と非規制位置とに移動可能である。ポール32の規制位置は、ラッチ31がフルラッチ位置に位置するときに、ポール32の係合部321がラッチ31のフルラッチ爪311と係合する位置である。具体的には、ポール32の規制位置は、ポール32の回転移動可能な範囲の一方の端の位置であり、ポール32の係合部321がラッチ31のフルラッチ爪311の回転移動軌跡の内側に入り込んでいる位置である。ポール32が規制位置に位置するときにポール32の係合部321がラッチ31のフルラッチ爪311と係合することにより、ラッチ31をフルラッチ位置に保持する(すなわち、ラッチ31がフルラッチ位置からアンラッチ位置の側へ移動することを規制する)。
図4には、ポール32が規制位置である状態が示される。ポール32の非規制位置は、ラッチ31がフルラッチ位置からアンラッチ位置の側へ移動することを許容する位置である。具体的には、非規制位置は、ポール32がラッチ31のフルラッチ爪311の回転軌跡の外側に位置している位置であり、
図4において規制位置にあるポール32が時計回り方向に所定の角度回転した位置である。ポール32は図略のポール復帰バネにより非規制位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0035】
ポールリフトレバー33は、ベースプレートに対してポール32と同軸に回転可能に支持されている。そして、ポールリフトレバー33は、ポール32と一体的に回転するように、ポール32と連結されている。すなわち、ポールリフトレバー33は、ポール32と一体となって、規制位置と非規制位置とに移動可能である。
【0036】
ハーフラッチレバー34は、第一係合部341と第二係合部342とを有している。第一係合部341は、後述するブロックリフトレバー36の第一係合部361と係合可能な部分であり、具体的には、ブロックリフトレバー36の第一係合部361が摺動可能な内周面を有する溝である。第二係合部342は、ラッチ31のハーフラッチ爪312に係合可能な部分である。ハーフラッチレバー34は、ベースプレートに対して、ラッチ31の回転中心線C1と平行な直線C3を中心に回転可能に支持されており、後述するブロックリフトレバー36の回転に連動して回転する。そして、ハーフラッチレバー34は、回転することによって、規制位置と非規制位置とに移動可能である。
【0037】
ハーフラッチレバー34の規制位置は、ハーフラッチレバー34の第二係合部342がラッチ31のハーフラッチ爪312に係合可能な位置である。具体的には、ハーフラッチレバー34の規制位置は、ハーフラッチレバー34の第二係合部342がラッチ31のハーフラッチ爪312の回転軌跡の内側に入り込んでいる位置である。ハーフラッチレバー34が規制位置に位置すると、ハーフラッチレバー34の第二係合部342がラッチ31のハーフラッチ爪312に係合することによって、ラッチ31がハーフラッチ位置からアンラッチ位置に向かって移動することが規制される。非規制位置は、ラッチ31がハーフラッチ位置からアンラッチ位置に向かって移動することを許容する位置である。具体的には、ハーフラッチレバー34の非規制位置は、ハーフラッチレバー34の第二係合部342がラッチ31のハーフラッチ爪312に係合しない位置である。
【0038】
ブロックレバー35は、第二部材の例である。ブロックレバー35は、ポール32の係合部321と係脱自在な係合部351を有している。ブロックレバー35は、ベースプレートに対して、ラッチ31の回転中心線C1に平行な直線C4を中心として回転可能に支持されており、第一位置と第二位置とに回転移動可能である。ブロックレバー35の第一位置は、ブロックレバー35の係合部351がポール32の係合部321と係合することにより、ポール32を規制位置に保持する(換言すると、ポール32が規制位置から非規制位置へ移動することを規制する)位置である。具体的には、ブロックレバー35の第一位置は、ブロックレバー35の係合部351がポール32の係合部321の回転移動軌跡の内側に入り込んでいる位置である。なお、
図4は、ブロックレバー35が第一位置に位置する状態を示す。ブロックレバー35の第二位置は、ポール32が規制位置から非規制位置へ移動することを許容する位置である。具体的には、ブロックレバー35の第二位置は、ブロックレバー35がポール32の回転移動の軌跡の外側に位置する位置である。
図4においては、第二位置は、第一位置から時計回り方向に所定の角度回転した位置である。なお、ブロックレバー35の第二位置は、特定の1点ではなく、所定の範囲を有する。ブロックレバー35は、図略のブロックレバー復帰バネの付勢力によって、第一位置に向かって常時弾性付勢されている。
【0039】
ブロックリフトレバー36は、第一部材の例である。ブロックリフトレバー36は、ベースプレートに対してブロックレバー35と同軸に回転可能に支持されている。また、ブロックリフトレバー36は、ブロックレバー35の前側に、ブロックレバー35に隣接して配置されている。そして、ブロックリフトレバー36は、回転することによって第一位置と第二位置と第三位置とに移動可能である。ブロックリフトレバー36の第一位置は、回転移動可能な範囲の一方の端の位置である。
図4は、ブロックリフトレバー36が第一位置に位置する状態を示す。第二位置は回転移動可能な範囲の中間の位置であり、第三位置は回転移動可能な範囲の他方の端(第一位置とは反対側の端)の位置である。なお、
図4においては、第二位置は第一位置から時計回り方向に所定の角度回転した位置であり、第三位置は第二位置からさらに時計回り方向に所定の角度回転した位置である。ブロックリフトレバー36は、図略のブロックリフトレバー復帰バネによって、第一位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0040】
ブロックリフトレバー36は、第一係合部361と、第二係合部362と、第三係合部363と、第四係合部364と、第五係合部365とを有している。ブロックリフトレバー36の第一係合部361は、ハーフラッチレバー34と係合している部分である。具体的には、ブロックリフトレバー36の第一係合部361は、ブロックレバー35およびブロックリフトレバー36の回転中心線C4を中心とする円の半径方向外側に向かって延出するアーム状の部分と、アーム状の部分の先端部に設けられており回転中心線C4に平行な方向に突出する突起状の部分とを有している。そして、突起状の部分がハーフラッチレバー34の第一係合部341に入り込んでいる。このため、ブロックリフトレバー36とハーフラッチレバー34とは互いに連動して回転する。そして、ブロックリフトレバー36が第一位置に位置すると、ハーフラッチレバー34は規制位置に位置し、ブロックリフトレバー36が第二位置と第三位置のいずれかに位置するとハーフラッチレバー34は非規制位置に位置する。
【0041】
ブロックリフトレバー36の第二係合部362は、リリースレバー44と係脱自在な部分であり、
図3に示すように前側に突出する突起状の構成を有している。第二係合部362は、その下面に後述するリリースレバー44の第二係合部442が当接可能である。ブロックリフトレバー36の第二係合部362は、回転中心線C4よりも車内側に位置している。そして、ブロックリフトレバー36は、第二係合部362が上昇する方向に移動することによって、第一位置から第二位置および第三位置に移動する。
【0042】
ブロックリフトレバー36の第三係合部363は、ブロックレバー35と係脱自在な部分である。第三係合部363は、後側(すなわち、ブロックレバー35が配置されている側)に突出する突起状の構成を有している。そして、ブロックリフトレバー36が第一位置から第二位置に移動すると(または第二位置を越えて第三位置に移動すると)、第三係合部363がブロックレバー35に当接してブロックレバー35を押し、ブロックレバー35を第一位置から第二位置に移動させる。
【0043】
第四係合部364は、ポールリフトレバー33と係脱自在な部分であり、ブロックレバー35およびブロックリフトレバー36の回転中心線を中心とする円の半径方向外側に延出するするアーム状(突起状ということもできる)の構成を有している。ブロックリフトレバー36が第一位置または第二位置に位置していると、第四係合部364は、ポールリフトレバー33に当接(係合)せずに、ポールリフトレバー33から離間している。ブロックリフトレバー36が第一位置から第二位置を越えて第三位置に移動すると、第四係合部364は上昇してポールリフトレバー33に当接し、ポールリフトレバー33を押す。このとき既にブロックレバー35が第二位置に位置しており、ポール32が規制位置から非規制位置へ移動することが許容されている。よって、ブロックリフトレバー36の第四係合部364によってポールリフトレバー33が押されると、ポールリフトレバー33およびポール32が規制位置から非規制位置に移動する。
【0044】
第五係合部365は、後述するキャンセルレバー71の第二係合部713に係合可能な部分である。第五係合部365は、
図5に示すように、前側(すなわち、キャンセルレバー71が配置されている側)に向かって突出する突起状の構成を有している。また、第五係合部365は、回転中心線C4よりも車内側(第二係合部362と同じ側)に位置している。このため、ポールリフトレバー33が第一位置から第二位置および第三位置に移動すると、第五係合部365は上昇する。
【0045】
次に、ラッチ機構21の動作について説明する。車両ドア12が開位置に位置すると、ラッチ31はラッチ復帰バネの付勢力によってアンラッチ位置に保持される。ラッチ31がアンラッチ位置に位置すると、車両ドア12は開閉可能な状態になる。この状態がラッチ機構21のアンラッチ状態である。
【0046】
車両ドア12が開位置から半閉位置(いわゆる「半ドア」の位置)に向かって移動すると、ストライカ101がラッチ31のストライカ保持溝313に入り込み、ラッチ31はストライカ101に押されてハーフラッチ位置に向かって移動する。この際、ラッチ31がハーフラッチレバー34の第二係合部342を押してハーフラッチレバー34を規制位置から非規制位置に移動させる。そして、ハーフラッチレバー34が非規制位置に移動すると、ブロックリフトレバー36はハーフラッチレバー34に連動して第二位置に移動する。この際、ブロックリフトレバー36の第三係合部363がブロックレバー35を押し、ブロックレバー35を第一位置から第二位置に移動させる。さらに、ラッチ31のフルラッチ爪311がポール32を押し、ポール32を規制位置から非規制位置に移動させる。
【0047】
車両ドア12が半閉位置に到達すると、ラッチ31はハーフラッチ位置に位置する。そして、ハーフラッチレバー34はハーフラッチレバー復帰バネの付勢力によって規制位置に移動し、ハーフラッチレバー34の第二係合部342がラッチ31のハーフラッチ爪312と係合する。このため、ラッチ31のハーフラッチ位置からアンラッチ位置への移動が規制される。さらに、ラッチ31がハーフラッチ位置に位置すると、フルラッチ爪311がポール32を押してポール32を非規制位置に保持する。また、ブロックリフトレバー36は、ハーフラッチレバー34の移動に連動して第一位置に移動する。ただし、ブロックレバー35はポール32によって規制位置への移動が阻止され、非規制位置に保持される。この状態が、ラッチ機構21のハーフラッチ状態である。ラッチ機構21がハーフラッチ状態であると、ラッチ31はハーフラッチ爪312によってハーフラッチ位置からアンラッチ位置への移動が規制される。このため、ストライカ101がストライカ保持溝313から抜け出ることができないから、車両ドア12はラッチ31によって半閉位置に保持される(ただし、半閉位置から全閉位置への移動は許容される)。
【0048】
車両ドア12が半閉位置から全閉位置に向かって移動すると、ラッチ31はストライカ101に押されてハーフラッチ位置からフルラッチ位置に向かって移動する。そして、ラッチ31がフルラッチ位置に位置すると、ポール32とフルラッチ爪311との係合が外れてポール32はポール復帰バネの付勢力によって規制位置に移動し、ブロックレバー35はブロックレバー復帰バネの付勢力によって非規制位置から規制位置に移動する。このため、ポール32は規制位置にてラッチ31をフルラッチ位置に保持し、ブロックレバー35は第一位置にてポール32を規制位置に保持する。したがって、ラッチ31はフルラッチ位置に保持され、ハーフラッチ位置およびアンラッチ位置の側への移動が規制される。この状態が、ラッチ機構21のフルラッチ状態である。ラッチ機構21がフルラッチ状態であると、ラッチ31はポール32およびブロックレバー35よってフルラッチ位置からアンラッチ位置への移動が規制される。このため、ストライカ101がストライカ保持溝313から抜け出ることができないから、車両ドア12はラッチ31によって全閉位置に保持される。
【0049】
ラッチ機構21をフルラッチ状態またはハーフラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えるには、ブロックリフトレバー36を第一位置から第二位置を越えて第三位置に移動させる。ラッチ機構21がフルラッチ状態またはハーフラッチ状態である場合にブロックリフトレバー36を第一位置から第二位置に移動させると、ハーフラッチレバー34はブロックリフトレバー36に連動して非規制位置に移動する。また、ブロックレバー35は、ブロックリフトレバー36に押されて第一位置から第二位置に移動する。このため、ハーフラッチレバー34はラッチ31がアンラッチ位置へ移動することを許容する状態となり、ブロックレバー35はポール32が規制位置から非規制位置へ移動することを許容する状態となる。さらに、ブロックリフトレバー36が第二位置を超えて第三位置に移動すると、ブロックリフトレバー36の第三係合部363がポールリフトレバー33を押し、ポール32をポールリフトレバー33とともに規制位置から非規制位置へ移動させる。このため、ポール32は、ラッチ31がアンラッチ位置へ移動することを許容する状態となる。したがって、ラッチ31はラッチ復帰バネの付勢力によって、フルラッチ位置またはハーフラッチ位置からアンラッチ位置に移動し、その結果、ラッチ機構21はアンラッチ状態に切り替わる。
【0050】
(電動操作機構)
電動操作機構22は、アクチュエータの駆動力によって、ラッチ機構21をラッチ状態からアンラッチ状態に切替え可能に構成されている。さらに、電動操作機構22は、アクチュエータの駆動力によってキャンセルケーブル82を引っ張ることができるように構成されている。電動操作機構22は、アクチュエータの例であるモータ41と、モータ41が出力する回転動力に応じて回転するウォームホイール43と、ウォームホイール43の回転により移動するリリースレバー44とを有している。
【0051】
モータ41は、ドアロック装置20の筐体に取り付けられている。モータ41の回転軸にはウォーム42が取り付けられている。
【0052】
ウォームホイール43は、ドアロック装置20の筐体に対して、車幅方向に略平行な直線C5(すなわち、ブロックリフトレバー36の回転中心線C4に略直角な直線)を中心として回転可能に支持されている。また、ウォームホイール43は、ブロックリフトレバー36よりも前側に位置するとともに、ブロックリフトレバー36の回転中心線C4よりも車内側に位置している。ウォームホイール43は、モータ41の回転軸に取り付けられているウォーム42と噛み合っており、モータ41の出力する回転駆動力によって回転するように構成されている。そして、ウォームホイール43は、回転することによって中立位置とリリース位置とに移動可能である。そして、ウォームホイール43は、図略の復帰バネによって中立位置に向けて常時弾性付勢されており、モータ41が作動していない間は、この復帰バネの付勢力によって中立位置に保持されている。なお、ウォームホイール43が付勢バネの付勢力によってリリース位置から中立位置に移動できるように、ウォーム42とウォームホイール43とは逆駆動可能に構成されている。
【0053】
ウォームホイール43には、係合部431が設けられている。ウォームホイール43の係合部431は、リリースレバー44の第一係合部441に係脱可能な部分であり、ウォームホイール43の車外側を向いた面から車外側(すなわち、ブロックリフトレバー36の回転中心線C4が位置する側)に突出する突起状の構成を有している。そして、ウォームホイール43が中立位置からリリース位置に向かって移動すると、ウォームホイール43の係合部431は下降する。
【0054】
リリースレバー44は、ブロックリフトレバー36の前側かつウォームホイール43の車外側に配置されている。リリースレバー44は、ドアロック装置20の筐体に対して、ウォームホイール43の回転中心線C5と平行な直線C6を中心として回転可能に支持されている。具体的には、リリースレバー44の前後方向の中間部には、車幅方向に貫通する軸孔が設けられており、この軸孔に挿通されている図略の支持軸によって、軸孔を中心として回転可能に支持されている。そして、リリースレバー44は、回転することによって、中立位置とリリース位置とに移動可能である。リリースレバー44には、軸孔よりも前側に設けられている第一係合部441と、軸孔よりも後側に設けられている第二係合部442とを有している。リリースレバー44の第一係合部441は車外側に向かって延出する平板状の構成を有している。そして、リリースレバー44の第一係合部441はウォームホイール43の係合部431の下側に位置している。リリースレバー44の第二係合部442は、車外側に向かって延出する平板状の部分を有している。そして、リリースレバー44の第二係合部442は、ブロックリフトレバー36の第二係合部362の下側に位置している。
【0055】
ウォームホイール43がモータ41の駆動力によって中立位置からリリース位置に移動すると、リリースレバー44の第一係合部441がウォームホイール43の係合部431によって押し下げられ、リリースレバー44の第二係合部442が上昇する。すなわち、リリースレバー44は中立位置からリリース位置に移動する。そして、リリースレバー44の第二係合部442が、ブロックリフトレバー36の第二係合部362を押し上げる。ブロックリフトレバー36が第一位置から第二位置を超えて第三位置に移動すると、前記のとおりラッチ機構21はフルラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0056】
ラッチ機構21がアンラッチ状態に切り替わった後、モータ41が停止すると、ウォームホイール43は、復帰バネの付勢力によってリリース位置から中立位置に移動する。その結果、ブロックリフトレバー36の第二係合部362がリリースレバー44の第二係合部442に押されなくなるから、ブロックリフトレバー36は、ブロックリフトレバー復帰バネの付勢力によって第一位置に移動する。また、リリースレバー44は、ブロックリフトレバー36に押されて、中立位置に移動する。
【0057】
(手動操作機構)
手動操作機構23は、手動ドア開操作によって、ラッチ機構21をフルラッチ状態またはハーフラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えるとともに、後述するキャンセルレバー71を初期位置からキャンセル位置に移動させるように構成されている。
【0058】
手動操作機構23は、第三部材の例であるオープンレバー51を含む。オープンレバー51は、ベースプレートに対して、ブロックリフトレバー36の回転中心線C4と平行な直線C7を中心として回転可能に支持されている。そして、回転することによって、初期位置と作動位置とに移動可能である。オープンレバー51は、金属板からなり、プレス加工により製造される。オープンレバー51は、長尺板状の形状を有しており、長尺方向が車幅方向に略平行になる向きで配置されている。オープンレバー51の長尺方向(すなわち、車幅方向)の略中央部には軸孔が設けられている。そして、この軸孔に挿通されている図略の支持軸によって回転可能に支持されている。また、オープンレバー51は、ブロックリフトレバー36の前側に隣接して設けられている。
【0059】
オープンレバー51は、第一係合部511と第二係合部512とを有している。第一係合部511は、前側に向かって延出する平板状の形状を有しており、その上面にオープンロッド83(
図8A参照)が係合可能である。第二係合部512は、後側(すなわち、ブロックリフトレバー36が配置されている側)に向かって延出する平板状の形状を有している。そして、第二係合部512は、ブロックリフトレバー36の回転中心線C4よりも車内側の部分の下側に位置している。
【0060】
オープンレバー51は、回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。オープンレバー51の初期位置は、第一位置に位置しているブロックリフトレバー36の下端から、オープンレバー51の第二係合部512が下方に離間している位置である。
図5に示すオープンレバー51の回転位置が、初期位置である。オープンレバー51の作動位置は、初期位置よりも、第一係合部511が下降し、第二係合部512が上昇する方向に回転した位置である。
図5に示す初期位置のオープンレバー51が反時計回りに所定角度回転した位置が、作動位置である。
【0061】
オープンロッド83は、アウトサイドドアハンドル15とインサイドドアハンドル16と連係している。そして、オープンロッド83は、アウトサイドドアハンドル15とインサイドドアハンドル16との少なくとも一方が手動ドア開操作されると下降するように構成されている。このため、アウトサイドドアハンドル15またはインサイドドアハンドル16が手動ドア開操作されると、オープンレバー51の第一係合部511がオープンロッド83によって下方に押され、オープンレバー51は初期位置から作動位置に移動する。なお、オープンレバー51は、オープンレバー復帰バネによって初期位置に向かって常時弾性付勢されている。このため、オープンレバー51は、手動ドア開操作されていない間は、初期位置に位置する。
【0062】
そして、オープンレバー51が初期位置から作動位置へ移動すると、オープンレバー51の第二係合部512がブロックリフトレバー36の下端(下面)に当接してブロックリフトレバー36を押し上げ、ブロックリフトレバー36を第一位置から第二位置を越えて第三位置へ移動させる。また、オープンレバー51が初期位置から作動位置へ移動すると、オープンレバー51の下端(下面)がキャンセルレバー71の第一係合部712を押し下げ、キャンセルレバー71を初期位置からキャンセル位置に移動させる。
【0063】
(クローザ機構)
クローザ機構24は、車両ドア12が半閉位置に位置し、かつ、ラッチ機構21がハーフラッチ状態であるとき(車両ドア12がいわゆる「半ドア」状態であるとき)に、ドアクローザ装置18の駆動力によってラッチ機構21をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替える機構である。
【0064】
クローザ機構24は、クローズレバー61を有している。クローズレバー61は、ベースプレートに対して、ラッチ31の回転中心線C1と平行な直線C8を中心に回転可能に支持されている。クローズレバー61は、係合部611を有している。係合部611は、回転中心線C8と中心とする円の半径方向外側に向かって延出する板状の部分であり、ラッチ31のクローズ爪314に係脱可能に構成されている。クローズレバー61は、回転することによって初期位置とクローズ位置とに移動可能である。初期位置は、係合部611がラッチ31のクローズ爪314に当接しておらず離間している位置である。そして、クローズレバー61は、初期位置からクローズ位置に移動するときに、ハーフラッチ位置に位置しているラッチ31のクローズ爪314に当接してクローズ爪314を押し、ラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動させる。
【0065】
クローズレバー61には、クローズケーブル81の一端が連結されている。そして、クローズケーブル81がドアクローザ装置18により引っ張られると、クローズレバー61は初期位置からクローズ作動位置に回転する。なお、クローズレバー61は、図略のクローズレバー復帰バネによって、初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0066】
ここで、ドアクローズ動作について説明する。ドアロックECU13は、各車両ドア12についてドアクローズ動作を実行する条件が成立しているか否かを継続的に判定する。例えば、ドアロックECU13は、各ドアセンサ14の検出結果を取得し、半閉位置に位置する車両ドア12が存在する場合、当該車両ドア12についてドアクローズ動作を実行する条件が成立したと判定する。そして、ドアロックECU13は、ドアクローズ動作を実行する条件が成立した車両ドア12のドアクローザ装置18のアクチュエータを作動させる。これにより、クローズケーブル81が引っ張られ、ドアロック装置20のクローズレバー61は初期位置からクローズ位置に向かって移動する。このため、ラッチ31はハーフラッチ位置からフルラッチ位置に向かって移動する。この際、ストライカ保持溝313に入り込んでいるストライカ101は、ラッチ31の回転に伴って車外側に押され、その反力によって車両ドア12は半閉位置から全閉位置に向かって移動する。ラッチ31がフルラッチ位置に位置すると、前述のとおり、ラッチ機構21はフルラッチ状態になるとともに、車両ドア12は全閉位置に位置する。その後、ドアロックECU13は、ドアクローザ装置18のアクチュエータの作動を停止する。
【0067】
(キャンセル機構)
キャンセル機構25は、ドアクローズ動作を中止するために、キャンセルケーブル82を引っ張ることができるように構成されている。キャンセルケーブル82を引っ張る動作を「キャンセル動作」と記す。キャンセル機構25は、キャンセルレバー71を有している。キャンセルレバー71にはキャンセルケーブル82の端部が連結されており、キャンセルレバー71が回転することによって、キャンセルケーブル82を引っ張るように構成されている。
【0068】
キャンセルレバー71は、オープンレバー51と同軸に回転可能に支持されている。具体的には、キャンセルレバー71には前後方向に貫通する軸孔が形成されており、この軸孔に、オープンレバー51とキャンセルレバー71とを同軸に且つ回転可能に支持する支持軸が挿通されている。なお、キャンセルレバー71は、オープンレバー51の前側に、オープンレバー51と隣接して配置されている。このため、ブロックリフトレバー36の前側にオープンレバー51が配置され、さらにその前側にキャンセルレバー71が配置される。すなわち、キャンセルレバー71はブロックリフトレバー36の回転中心線C4の方向に沿って、ブロックリフトレバー36と対面配置されている。なお、「対面配置」とは、ブロックリフトレバー36とキャンセルレバー71との関係において、両者がブロックリフトレバー36の回転中心線C4方向に対面する部分を有するように配置していることを言い、両者間に別の部材であるオープンレバー51が配設されていて良い。
【0069】
キャンセルレバー71は、キャンセルケーブル連結部711と、第一係合部712と、第二係合部713とを有している。キャンセルケーブル連結部711には、キャンセルケーブル82の端部が連結されている。キャンセルレバー71の第一係合部712は、オープンレバー51の下端(下面)に係脱可能な部分である。具体的には、第一係合部712は、後側(すなわち、オープンレバー51が配置されている側)に向かって延出する板状の構成を有しており、オープンレバー51の下側に位置している。キャンセルレバー71の第二係合部713は、ブロックリフトレバー36の第五係合部365と係脱可能な部分である。具体的には、第二係合部713は、後側(すなわち、ブロックリフトレバー36が配置されている側)に向かって突出する突起状(具体的には後側に向かって延出する平板状)の形状を有している。なお、キャンセルレバー71とブロックリフトレバー36との間にはオープンレバー51が配置されているため、キャンセルレバー71の第二係合部713はオープンレバー51と干渉しないように、オープンレバー51の上方に離間する位置に設けられている。さらに、キャンセルレバー71の第二係合部713の後端部は、オープンレバー51よりも後ろ側に位置している。そして、第二係合部713の後端部は、ブロックリフトレバー36の第五係合部365の上側に位置している。
【0070】
キャンセルレバー71は、回転することによって初期位置とキャンセル位置とに回転移動可能である。キャンセルレバー71の初期位置は、キャンセルケーブル82を引っ張らず(キャンセルケーブル82に張力を掛けず)、第一係合部712が初期位置に位置しているオープンレバー51に係合せず、かつ、第二係合部713が初期位置に位置するブロックリフトレバー36の第五係合部365に係合しない位置(第五係合部365と離間している位置)である。キャンセル位置は、初期位置から、第一係合部712が下降し、キャンセルケーブル連結部711および第二係合部713が上昇する方向に所定の角度回転した位置である。なお、キャンセルケーブル連結部711および第二係合部713は回転中心線C7よりも車内側に設けられており、第一係合部712は回転中心線C7よりも車外側に設けられている。そして、キャンセルレバー71は、初期位置からキャンセル位置に移動すると、(すなわち、第一係合部712が上昇し第二係合部713が下降する方向に回転すると)、キャンセルケーブル連結部711が上昇し、キャンセルケーブル連結部711に連結されているキャンセルケーブル82を引っ張る。
【0071】
次に、キャンセル機構25の動作について説明する。本実施形態では、手動ドア開操作とモータ41の駆動力とのいずれによってもドアクローズ動作を中止できる。
【0072】
(モータの駆動力によるキャンセル動作)
図7Aおよび
図7Bは、モータ41の駆動力によるキャンセル動作を示す図である。ドアロックECU13は、アンラッチスイッチ17が操作されたことを検出すると、モータ41を作動させてウォームホイール43を中立位置からリリース位置に移動させる。モータ41が作動してウォームホイール43が中立位置からリリース位置に移動すると、リリースレバー44の第二係合部442がブロックリフトレバー36の第二係合部362を押し上げる。このため、
図7Aに示すように、ブロックリフトレバー36は第一位置から第三位置の側に移動する(
図7Aにおいては反時計回り方向に回転する)。キャンセルレバー71の第二係合部713は、ブロックリフトレバー36の第五係合部365の上側に位置しているから、ブロックリフトレバー36が第一位置から第三位置の側に移動すると、ブロックリフトレバー36の第五係合部365がキャンセルレバー71の第二係合部713に係合(当接)する。ブロックリフトレバー36が
図7Aに示す位置からさらに第三位置の側に向かって回転すると、ブロックリフトレバー36の第五係合部365がキャンセルレバー71の第二係合部173を押し上げる。このため、キャンセルレバー71は初期位置からキャンセル位置に向かって回転する。そして、
図7Bに示すように、ブロックリフトレバー36が第三位置に到達すると、キャンセルレバー71はキャンセル位置に到達する。キャンセルレバー71が初期位置からキャンセル位置に移動すると(換言すると、キャンセルケーブル82が引っ張られると)、ドアクローザ装置18によるクローズケーブル81を引っ張る力がなくなる。従って、ドアクローズ動作中にアンラッチスイッチ17を操作することにより、ドアクローズ動作がキャンセルされる。
【0073】
なお、キャンセルレバー71の第一係合部712は、オープンレバー51の下側に位置しているから、キャンセルレバー71が初期位置からキャンセル位置に移動する場合、キャンセルレバー71の第一係合部712はオープンレバー51から離れる方向に移動する。したがって、オープンレバー51はキャンセルレバー71に干渉しない。
【0074】
(手動ドア開操作によるキャンセル動作)
図8Aおよび
図8Bは、手動ドア開操作によるキャンセル動作を示す図である。手動ドア開操作が実行されると、
図8Aに示すように、オープンロッド83がオープンレバー51の第一係合部511の上面に当接してオープンレバー51の第一係合部511を押し下げる。このため、オープンレバー51は、初期位置から作動位置に向かって移動する。そして、
図8Aに示すように、オープンレバー51が初期位置から作動位置に向かって移動すると、オープンレバー51の下端(下面)がキャンセルレバー71の第一係合部712に当接する。
【0075】
オープンレバー51が
図8Aに示す位置からさらに作動位置に向かって回転すると、オープンレバー51の下端がキャンセルレバー71の第一係合部712を押し下げる。そして、
図8Bに示すように、オープンレバー51が作動位置に移動すると、キャンセルレバー71はキャンセル位置に移動する。キャンセルレバー71が初期位置からキャンセル位置に移動すると、ドアクローザ装置18によるクローズケーブル81を引っ張る力がなくなる。従って、ドアクローズ動作中に手動ドア開操作することにより、ドアクローズ動作がキャンセルされる。
【0076】
なお、キャンセルレバー71の第二係合部713は、回転中心線C7よりも車内側において、オープンレバー51の上方に位置している。このため、キャンセルレバー71が初期位置からキャンセル位置に移動する場合において、オープンレバー51はキャンセルレバー71の動作に干渉しない。また、ブロックリフトレバー36の第五係合部365の前端は、オープンレバー51よりも後ろ側に位置している。したがって、オープンレバー51とブロックリフトレバー36とは干渉しない。
【0077】
本実施形態に係るドアロック装置20によれば、ドアロック装置20のアクチュエータの例であるモータ41の駆動力によって、ラッチ機構21をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるとともに、ドアクローズ動作を中止できる。すなわち、ドアロック装置20に「モータ(アクチュエータ)の駆動力によってドアクローズ動作を中止する機構」を付加できる。このため、使用者は、電気的なスイッチであるアンラッチスイッチ17を操作することにより(すなわち、ドアハンドルの手動操作によらず)、ラッチ機構21の状態を切り替えることができるとともに、ドアクローズ動作を中止できる。
【0078】
さらに、本実施形態によれば、ラッチ機構21の状態を切り替えるモータ41の駆動力によってドアクローズ動作を中止できる。このため、キャンセルレバー71をキャンセル位置に移動させるための別のモータ(ラッチ機構21の状態を切り替えるモータ41とは別のモータ)は不要である。さらに、ブロックレバー35を移動させるブロックリフトレバー36の動きによってキャンセルレバー71を初期位置からキャンセル位置に移動させるため、モータ41の駆動力をキャンセルレバー71に伝達するための部材(モータ41の駆動力をブロックリフトレバー36に伝達する部材およびブロックリフトレバー36以外の部材)を追加しなくてもよい。したがって、ドアロック装置20の部品点数の増加および大型化を招くことなく、ドアロック装置20に「モータ41(アクチュエータ)の駆動力によってドアクローズ動作を中止する機構」を付加できる。
【0079】
また、本実施形態によれば、ブロックリフトレバー36が直接にキャンセルレバー71に当接してキャンセルレバー71をキャンセル位置に移動させる。このような構成であれば、ブロックリフトレバー36の動きをキャンセルレバー71に伝達するための部材(ブロックリフトレバー36とキャンセルレバー71とに跨って配置される部材)が不要である。したがって、ドアロック装置20の部品点数の増加およびドアロック装置20の大型化を招かない。また、ドアロック装置20が「モータ41の駆動力によってドアクローズ動作を中止する機構」を有さない構成に比較して、ブロックリフトレバー36に第二係合部362を設けるとともにキャンセルレバー71に第二係合部713を設けるのみで(すなわち、ブロックリフトレバー36およびキャンセルレバー71の形状を部分的に変更するのみで)、ブロックリフトレバー36の動きをキャンセルレバー71に伝達できる。したがって、ドアロック装置20を構成する各部材の配置を変更しなくてもよい。また、ブロックリフトレバー36およびキャンセルレバー71以外の部材の形状を変更しなくてもよい。したがって、「モータ41の駆動力によってドアクローズ動作を中止するための機構」をドアロック装置20に容易に付加できる。
【0080】
また、本実施形態に係るドアロック装置20によれば、オープンレバー51が初期位置から作動位置に移動することにより、キャンセルレバー71を初期位置からキャンセル位置に移動させることができる。そして、この場合、オープンレバー51およびキャンセルレバー71とブロックリフトレバー36とが干渉しない。このため、手動ドア開操作によっても、キャンセルレバー71をキャンセル位置に移動させることができる。したがって、使用者によるアンラッチスイッチ17の操作によるモータ41の駆動力と使用者によるドアハンドルの手動ドア開操作とのいずれによっても、ドアクローズ動作を中止させることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
例えば、前記実施形態では、ラッチ機構21がブロックリフトレバー36を有し、キャンセルレバー71がブロックリフトレバー36に係合する構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。要は、ドアロック装置20がラッチ機構21をラッチ状態とアンラッチ状態とに切り替えるために移動する部材を有しており、キャンセルレバー71がこの部材に係合する構成であればよい。すなわち、前記実施形態では、ラッチ機構21がいわゆるダブルポールタイプである例を示したが、ラッチ機構21の構成は限定されるものではない。
【0083】
また、ドアクローザ装置18は、クローズケーブル81及びキャンセルケーブル82によってドアロック装置20に連結され、アクチュエータの駆動力によってクローズケーブル81を引っ張ることができるように構成されており、かつ、外部からキャンセルケーブル82が引っ張られることによってクローズケーブル81を引っ張る動作を中止するとともにクローズケーブル81の張力を無くすことができるように構成されていればよい。例えば、ドアクローザ装置18として、アクチュエータと、アクチュエータの駆動力をクローズケーブル81に伝達する動力伝達機構と、キャンセルケーブル82の張力を受けて動力伝達機構からクローズケーブル81への動力の伝達を遮断する動力伝達遮断機構とを備えるものを例示できる。このようなドアクローザ装置によれば、キャンセルケーブル82が引っ張られることによって、アクチュエータからクローズケーブル81への動力伝達が遮断されて、クローズケーブル81を引っ張る動作が中止されるとともにクローズケーブル81の張力が無くなる。しかし、ドアクローザ装置18の構成は、上記の例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0084】
10…車両、12…車両ドア、18…ドアクローザ装置、20…ドアロック装置、31…ラッチ、32…ポール、35…ブロックレバー、36…ブロックリフトレバー、41…モータ、61…クローズレバー、71…キャンセルレバー、81…クローズケーブル、82…キャンセルケーブル