(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190948
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】減衰力調整式緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/46 20060101AFI20221220BHJP
F16F 9/06 20060101ALI20221220BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20221220BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20221220BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/06
F16F9/32 H
F16F9/34
H01F7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099491
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 貴義
【テーマコード(参考)】
3J069
5E048
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069CC09
3J069CC13
3J069DD48
3J069EE05
3J069EE18
3J069EE62
5E048AB02
5E048AD01
(57)【要約】
【課題】 全体を小型化することによって設置スペースを小さくすると共に、部品点数を削減して組立作業性を向上できるようにする。
【解決手段】 シリンダ2には、他側室Bとリザーバ室Cとの間で作動油が流れる流路8をシリンダ2の外部に設け、この流路8には、ロッド側アクチュエータ10およびボトム側アクチュエータ11の動作によって、ピストン3の移動により生じる作動油の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構9を設ける構成としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に挿入されて該シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、
前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延びるピストンロッドと、
前記シリンダ内の前記他側室に挿入されて該シリンダ内を該他側室と体積保障を行うリザーバ室とに画成するように設けられるボディ部と、
前記他側室と前記リザーバ室との間で前記作動流体が流れる流路と、
前記流路に設けられるアクチュエータの動作によって、前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
を備える減衰力調整式緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であり、
前記ボディ部に設けられ、前記他側室と前記リザーバ室とを連通する他の流路と、
前記他の流路に設けられ、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、
を有し、
前記アクチュエータは、
前記他側室側に設けられ、無電源時に前記作動流体が流通するよう動作する第1アクチュエータと、
前記リザーバ室側に設けられ、無電源時に前記作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力より低い所定の値になると開弁する第2アクチュエータと、
を有する減衰力調整式緩衝器。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝器であり、
前記ボディ部に設けられ、前記他側室と前記リザーバ室とを連通する他の流路と、
前記他の流路に設けられ、前記リザーバ室の圧力が前記他側室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、
を有し、
前記アクチュエータは、
前記他側室側に設けられ、無電源時に前記作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力より高い所定の値になると開弁する第1アクチュエータと、
前記リザーバ室側に設けられ、無電源時に前記作動流体が流通するよう動作する第2アクチュエータと、
を有する減衰力調整式緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物、自動車、鉄道車両等の振動を緩衝するのに好適に用いられる減衰力調整式緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地震による建築物の振動、自動車、鉄道車両が走行するときの振動を抑制するのに緩衝器が用いられている。この緩衝器は、作動油等の作動流体が封入されるシリンダと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内をロッド側室と反ロッド側室とに画成するピストンと、ピストンに連結されてシリンダの外部へ延びるピストンロッドと、を備えている。
【0003】
また、緩衝器には、シリンダを内筒と外筒との二重構造とすることにより、内筒と外筒との間にリザーバ室を形成したものがある。この上で、ロッド側室とリザーバ室との間には、調整された減衰力を発生する減衰力発生機構が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の発明では、減衰力発生機構を設けるためにシリンダを二重構造としている。このため、シリンダが大型化するから、緩衝器を設置する場合に大きなスペースが必要になるという問題がある。また、部品点数が増大して組立作業性が低下するという問題もある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、全体を小型化することによって設置スペースを小さくすると共に、部品点数を削減して組立作業性を向上できるようにした減衰力調整式緩衝器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されて該シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延びるピストンロッドと、前記シリンダ内の前記他側室に挿入されて該シリンダ内を該他側室と体積保障を行うリザーバ室とに画成するように設けられるボディ部と、前記他側室と前記リザーバ室との間で前記作動流体が流れる流路と、前記流路に設けられるアクチュエータの動作によって、前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、全体を小型化することによって設置スペースを小さくすることができる。また、部品点数を削減して組立作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態による減衰力調整式緩衝器を示す斜視図である。
【
図3】
図2中の矢示III-III方向から見た減衰力調整式緩衝器の断面図である。
【
図4】
図3中の減衰力発生機構等を拡大して示す断面図である。
【
図5】無電源状態の減衰力発生機構等を
図4と同様位置から示す断面図である。
【
図6】有電源状態の減衰力調整式緩衝器の減衰力特性と無電源状態の減衰力調整式緩衝器の減衰力特性とを示す特性線図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態による減衰力発生機構等を示す断面図である。
【
図8】無電源状態の減衰力発生機構等を
図7と同様位置から示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る減衰力調整式緩衝器を、例えば、電磁アクチュエータの動作によって調整した減衰力を発生し、この減衰力が地震によって建築物に作用する振動を抑制するセミアクティブ式の減衰力調整式緩衝器として用いた場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1ないし
図6は、本発明の第1の実施形態を示している。この第1の実施形態では、ボディ部に設けられ、他側室とリザーバ室とを連通する他の流路と、他の流路に設けられ、他側室の圧力がリザーバ室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、を有し、アクチュエータは、他側室側に設けられ、無電源時に作動流体が流通するよう動作する第1アクチュエータと、リザーバ室側に設けられ、無電源時に作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、他側室の圧力がリザーバ室の圧力より低い所定の値になると開弁する第2アクチュエータと、を有している。
【0012】
図1ないし
図3において、減衰力調整式緩衝器1は、後述のシリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、ボディ部6、流路8、減衰力発生機構9、第1リリーフ流路13、第2リリーフ流路14、第1リリーフバルブ15、第2リリーフバルブ16を含んで構成されている。
【0013】
シリンダ2は、有底の単筒体(モノチューブ)として形成されている。シリンダ2内には、作動流体として作動油等が封入されている。作動流体としては、作動油に限らず、例えば添加剤を混在させた水等を用いることができる。
【0014】
また、シリンダ2の一端は、開口端2Aとなり、この開口端2Aからは、後述のピストンロッド4が突出している。一方、シリンダ2の他端は、ボトムキャップ2Bによって閉塞されている。さらに、シリンダ2には、ボトムキャップ2B寄りの中間部に、内周側に突出した全周かしめ部2Cが設けられている。この全周かしめ部2Cは、後述するボディ部6を固定している。なお、ボディ部6を固定する手段としては、全周かしめ部2C以外にも、周方向の複数箇所、例えば4点や6点といった部分かしめを用いてもよい。
【0015】
開口端2Aは、全周かしめ部2Cと同様に、内周側に突出するように縮径して形成されている。これにより、開口端2Aは、後述のロッドガイド5等を固定している。さらに、シリンダ2のボトムキャップ2Bには、建築物の構造体にブラケット(いずれも図示せず)を介して取付けられるボトム側取付ブラケット2Dが取付けられている。
【0016】
シリンダ2には、全周かしめ部2C(ボディ部6)を挟んだ位置に2個の取付孔2E,2Fが設けられている。取付孔2E,2Fは、シリンダ2の径方向に貫通している。後述の他側室Bに連通した取付孔2Eには、後述する減衰力発生機構9のロッド側アクチュエータ10が取付けられている。また、後述のリザーバ室Cに連通した取付孔2Fには、ボトム側アクチュエータ11が取付けられている。
【0017】
ピストン3は、シリンダ2内に軸方向に移動(摺動)可能に配置されている。ピストン3は、シリンダ2内をピストンロッド4側の一側室Aと反ピストンロッド4側(ボディ部6側)の他側室Bとに画成している。ピストン3には、当該ピストン3がシリンダ2内を変位したときに一側室Aと他側室Bとの間で作動油を流通させる連通路3A,3Bと、連通路3A,3Bを流通する作動油の流れを制限するディスクバルブ3C,3Dとが設けられている。
【0018】
ピストンロッド4は、ピストン3に一端側が連結され、他端がロッドガイド5を介してシリンダ2の一端から突出している。ピストンロッド4の他端には、建築物の構造体にブラケット(いずれも図示せず)を介して取付けられるロッド側取付ブラケット4Aが取付けられている。
【0019】
ボディ部6は、シリンダ2内の他側室Bに挿入された厚肉な円板体からなり、全周かしめ部2Cによって固定されている。ボディ部6は、シリンダ2内を他側室Bと体積保障を行うリザーバ室Cとに画成している。ボディ部6には、第1リリーフ流路13、第2リリーフ流路14、第1リリーフバルブ15、第2リリーフバルブ16が設けられている。リザーバ室Cは、ピストンロッド4の縮小時(縮み行程)に当該ピストンロッド4の進入体積分の作動油を逃がすための油室である。
【0020】
フリーピストン7は、シリンダ2内に位置して、ボトムキャップ2Bとボディ部6との間に摺動可能に挿嵌されている。これにより、フリーピストン7は、ボトムキャップ2Bとボディ部6との間の空間を、ボディ部6側のリザーバ室Cと、ボトムキャップ2B側のガス室Dとに画成している。ガス室Dには、リザーバ室Cが拡大、縮小(フリーピストン7が移動)するのを許容するためのガスが封入されている。
【0021】
次に、本発明の特徴部分となる流路8、減衰力発生機構9の構成、機能等について述べる。
【0022】
流路8は、他側室Bとリザーバ室Cとの間で作動油を流通させるための通路である。流路8は、後述するロッド側アクチュエータ10の軸孔10B、ボトム側アクチュエータ11の軸孔11Bおよび接続管12の管内通路12Aによって構成されている。
【0023】
図4、
図5に示すように、減衰力発生機構9は、第1アクチュエータとしてのロッド側アクチュエータ10と第2アクチュエータとしてのボトム側アクチュエータ11とを備えている。減衰力発生機構9は、流路8に設けられるロッド側アクチュエータ10とボトム側アクチュエータ11の動作によって、ピストン3の移動により生じる作動油の流れを規制して減衰力を発生させる。
【0024】
ロッド側アクチュエータ10は、他側室Bに連通した状態でシリンダ2に設けられている。ロッド側アクチュエータ10は、磁力を利用して後述のプランジャ10Cを移動させる電磁アクチュエータとして構成されている。
【0025】
ロッド側アクチュエータ10は、一端部がシリンダ2の取付孔2Eに取付けられ、他端部が閉塞された有蓋の円筒状の筒部10Aと、筒部10A内に軸方向に延びて設けられた軸孔10Bと、軸孔10Bに摺動可能に設けられたプランジャ10Cと、プランジャ10Cの外周側に設けられたマグネット10Dと、筒部10Aの他側に位置して軸孔10Bと同じ内径寸法を有する筒状のコイル10Eと、軸孔10Bに設けられプランジャ10Cを開弁方向となる他側(リザーバ室Cと反対側)に向けて付勢するスプリング10Fと、を含んで構成されている。プランジャ10Cは、流路8の流路面積を調整する弁体を兼ねている。
【0026】
また、ロッド側アクチュエータ10の筒部10Aには、全開位置(
図5に示す位置)のプランジャ10Cよりも一側となる位置に、筒部10Aの径方向に貫通して接続孔10Gが設けられている。筒部10Aは、接続孔10Gがボトム側アクチュエータ11に向くように、シリンダ2に取付けられている。そして、接続孔10Gには、後述する接続管12の一端部が挿着されている。
【0027】
ここで、ロッド側アクチュエータ10は、無電源時(例えば、停電や故障によって電気的に停止した状態)に作動油が流通するよう動作する。具体的には、ロッド側アクチュエータ10は、給電されていない状態では、
図5に示すように、スプリング10Fの付勢力によってプランジャ10Cを他側に移動している。これにより、軸孔10Bは、他側室Bと接続管12(管内通路12A)とに連通している。
【0028】
一方、ロッド側アクチュエータ10は、コイル10Eに給電されることによって磁力を発生し、スプリング10Fに抗してプランジャ10Cを適宜に移動させる。これにより、プランジャ10Cは、軸孔10Bと接続管12(管内通路12A)との間の流路面積を調整することができる。
【0029】
しかも、ロッド側アクチュエータ10は、シリンダ2の外部に設置されているから、シリンダ2の取付孔2Eに取付けるだけの簡単な作業、単純な形状の電磁アクチュエータ、単純な配線作業をもって形成することができる。
【0030】
次に、ボトム側アクチュエータ11は、リザーバ室Cに連通した状態でシリンダ2に設けられている。ボトム側アクチュエータ11は、ロッド側アクチュエータ10と同様に、電磁アクチュエータとして形成され、筒部11A、軸孔11B、プランジャ11C、マグネット11D、コイル11E、スプリング11F、接続孔11Gを含んで構成されている。しかし、ボトム側アクチュエータ11は、スプリング11Fの位置が変更されている点と、絞り通路11Hが設けられている点と、の2点でロッド側アクチュエータ10と相違している。
【0031】
ボトム側アクチュエータ11のスプリング11Fは、軸孔11Bの他側に設けられ、プランジャ11Cを閉弁方向となる一側(リザーバ室C側)に向けて付勢している。また、プランジャ11Cには、軸方向に貫通して絞り通路11Hが設けられている。この絞り通路11Hは、プランジャ11Cが
図5に示す閉弁位置に配置された状態で、ピストンロッド4が縮小してピストン3が他側に移動したときに、流路8を通じて他側室Bからリザーバ室Cに流れる作動油の流量を制限することにより、減衰力を発生する。
【0032】
ここで、ボトム側アクチュエータ11は、無電源時に作動油の流通を抑制するよう動作する。具体的には、ボトム側アクチュエータ11は、給電されていない状態では、スプリング11Fの付勢力によってプランジャ11Cを一側の閉弁位置に移動する。これにより、プランジャ11Cは、リザーバ室Cと接続管12(管内通路12A)との間を遮断する。また、プランジャ11Cの閉弁位置では、絞り通路11Hによって他側室Bからリザーバ室Cに流れる作動油の流量を制限することにより、減衰力を発生することができる。
【0033】
さらに、無電源時のボトム側アクチュエータ11は、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力より低い所定の値になると、スプリング11Fに抗してプランジャ11Cが開弁する。また、ボトム側アクチュエータ11は、ロッド側アクチュエータ10と同様に、シリンダ2の外部に設置されているから、シリンダ2の取付孔2Fに取付けるだけの簡単な作業、単純な形状の電磁アクチュエータ、単純な配線作業をもって形成することができる。なお、上述した所定の値とは、減衰力調整式緩衝器の性能、設定、使用環境に応じて適宜に定められる値である。
【0034】
接続管12は、内部が管内通路12Aとなった管体からなり、流路8の一部を構成している。接続管12は、シリンダ2の外部に位置し、シリンダ2の外周面に沿って直線状に延びるように配置されている。接続管12の一端部は、ロッド側アクチュエータ10の接続孔10Gに挿着され、他端部は、ボトム側アクチュエータ11の接続孔11Gに挿着されている。これにより、管内通路12Aは、ロッド側アクチュエータ10の軸孔10B、ボトム側アクチュエータ11の軸孔10Bと協働して他側室Bとリザーバ室Cとを連通している。
【0035】
他の流路としての第1リリーフ流路13は、ボディ部6に設けられ、他側室Bとリザーバ室Cとを連通している。第1リリーフ流路13は、リザーバ室C側に弁座13Aを有している。
図3に示すように、第2リリーフ流路14は、第1リリーフ流路13と異なる位置でボディ部6に設けられ、他側室Bとリザーバ室Cとを連通している。第2リリーフ流路14は、他側室B側に弁座14Aを有している。
【0036】
リリーフバルブとしての第1リリーフバルブ15は、第1リリーフ流路13に設けられている。第1リリーフバルブ15は、弁座13Aに離着座する弁部15Aを有し、スプリング15Bによって着座方向に付勢されている。第1リリーフバルブ15は、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力よりも高い所定の値になると開弁する。具体的には、第1リリーフバルブ15は、ピストンロッド4が速い速度で縮小したときにスプリング15Bに抗して開弁する。
【0037】
第2リリーフバルブ16は、第2リリーフ流路14に設けられている。第2リリーフバルブ16は、弁座14Aに離着座する弁部16Aを有し、スプリング16Bによって着座方向に付勢されている。第2リリーフバルブ16は、リザーバ室Cの圧力が他側室Bの圧力よりも高い所定の値になると開弁する。具体的には、第2リリーフバルブ16は、ピストンロッド4が速い速度で伸長したときにスプリング16Bに抗して開弁する。
【0038】
第1の実施形態による減衰力調整式緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。この動作は、減衰力調整式緩衝器1の動作の一例であり、減衰力の制御内容は、これに限るものではない。
【0039】
減衰力調整式緩衝器1は、シリンダ2に設けられたボトム側取付ブラケット2Dが建築物の構造体に取付けられ、ピストンロッド4に設けられたロッド側取付ブラケット4Aが建築物の構造体に取付けられる。この状態で、地震によって構造体が振動すると、減衰力調整式緩衝器1が伸長、縮小する。この伸長動作、縮小動作によって減衰力調整式緩衝器1の減衰力発生機構9等が減衰力を発生することにより、この減衰力で構造体の揺れを制限することできる。
【0040】
また、地震の発生時には、停電することがある。この停電による無電源時における減衰力調整式緩衝器1の動作についても説明する。
【0041】
まず、電源が生きている通電状態では、地震によって構造体が振動したときには、ピストンロッド4がシリンダ2から伸長、縮小するように変位する。このときには、
図4に示すように、減衰力発生機構9では、ロッド側アクチュエータ10のコイル10Eが励磁されることにより、マグネット10Dを有するプランジャ10Cがスプリング10Fに抗して移動され、流路8を絞る位置に配置される。一方、ボトム側アクチュエータ11は、コイル11Eが励磁されることにより、マグネット11Dを有するプランジャ11Cがスプリング11Fに抗して移動され、流路8を開放する全開位置に配置される。
【0042】
従って、ピストンロッド4の縮小時には、他側室Bから流路8を通じてリザーバ室Cに向かう作動油の流れが、ロッド側アクチュエータ10のプランジャ10Cによって制限される。また、ピストンロッド4の縮小速度が速く、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力よりも高い所定の値になると、第1リリーフバルブ15が開弁し、他側室Bから第1リリーフ流路13を通じてリザーバ室Cに作動油が流れる。このときの、減衰力特性は、
図6に実線で示すようになる。
【0043】
ピストンロッド4の伸長時には、リザーバ室Cから流路8を通じて他側室Bに向かう作動油の流れが、ロッド側アクチュエータ10のプランジャ10Cによって制限される。また、ピストンロッド4の伸長速度が速く、リザーバ室Cの圧力が他側室Bの圧力よりも高い所定の値になると、第2リリーフバルブ16が開弁し、リザーバ室Cから第2リリーフ流路14を通じて他側室Bに作動油が流れる。このときの、減衰力特性は、ピストンロッド4の縮小時と同様に、
図6に実線で示すようになる。
【0044】
次に、地震によって減衰力発生機構9に対する給電が絶たれたとき、即ち、無電源時における減衰力調整式緩衝器1の動作について述べる。
【0045】
図5に示すように、無電源時の減衰力発生機構9では、ロッド側アクチュエータ10のコイル10Eへの給電が絶たれるから、プランジャ10Cは、スプリング10Fによって流路8を開放する全開位置に配置される。また、無電源時は、ボトム側アクチュエータ11のコイル11Eへの給電も絶たれるから、プランジャ11Cは、スプリング11Fによって流路8を遮断する全閉位置に配置される。
【0046】
従って、ピストンロッド4の縮小時には、他側室Bから流路8を通じてリザーバ室Cに向かう作動油の流れが、ボトム側アクチュエータ11のプランジャ11Cに設けられた絞り通路11Hによって制限される。また、ピストンロッド4の縮小速度が速く、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力よりも高い所定の値になると、第1リリーフバルブ15が開弁し、他側室Bから第1リリーフ流路13を通じてリザーバ室Cに作動油が流れる。このときの、減衰力特性は、
図6に点線で示すようになる。
【0047】
無電源時のピストンロッド4の伸長時には、リザーバ室Cから流路8を通じて他側室Bに向かう作動油の流れが、ボトム側アクチュエータ11のプランジャ11Cに設けられた絞り通路11Hによって制限される。また、ピストンロッド4の伸長速度が速く、リザーバ室Cの圧力が他側室Bの圧力よりも高い所定の値になると、スプリング11Fに抗してプランジャ11Cが開弁し、他側室Bから流路8を通じてリザーバ室Cに作動油が流れる。また、ピストンロッド4の縮小速度がさらに速くなり、プランジャ11Cの開弁圧よりも高い所定の値になると、第2リリーフバルブ16が開弁し、リザーバ室Cから流路8と第2リリーフ流路14を通じて他側室Bに作動油が流れる。このときの、減衰力特性は、無電源時のピストンロッド4の縮小時と同様に、
図6に点線で示すようになる。
【0048】
以上のように、第1の実施形態では、シリンダ2には、他側室Bとリザーバ室Cとの間で作動油が流れる流路8をシリンダ2の外部に設け、この流路8には、ロッド側アクチュエータ10およびボトム側アクチュエータ11の動作によって、ピストン3の移動により生じる作動油の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構9を設ける構成としている。
【0049】
従って、第1の実施形態では、シリンダ2を単筒体(モノチューブ)として形成することができる。この結果、シリンダ2を大型化することができ、減衰力調整式緩衝器1を小さな設置スペースにも設置することができる。また、シリンダ2を単筒体として形成することにより、部品点数を削減することができ、組立作業性を向上することができる。しかも、ロッド側アクチュエータ10とボトム側アクチュエータ11は、シリンダ2の外部に設けることができるから、これらの取付作業、調整作業等を容易に行うことができる。
【0050】
ボディ部6には、他側室Bとリザーバ室Cとを連通する他の流路としての第1リリーフ流路13が設けられ、この第1リリーフ流路13には、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力よりも高い所定の値になると開弁する第1リリーフバルブ15が設けられている。この上で、アクチュエータは、他側室B側に設けられ、無電源時に作動油が流通するよう動作する第1アクチュエータとしてのロッド側アクチュエータ10と、リザーバ室C側に設けられ、無電源時に作動油の流通を抑制するよう動作すると共に、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力より低い所定の値になると開弁する第2アクチュエータとしてのボトム側アクチュエータ11と、を有している。
【0051】
これにより、地震によって減衰力発生機構9に対する給電が絶たれて無電源状態となった場合でも、通常の給電状態と同様の減衰力を得ることができ、減衰力調整式緩衝器1の制震性能を維持することができる。
【0052】
次に、
図7および
図8は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ボディ部に設けられ、他側室とリザーバ室とを連通する他の流路と、他の流路に設けられ、リザーバ室の圧力が他側室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、を有し、アクチュエータは、他側室側に設けられ、無電源時に作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、他側室の圧力がリザーバ室の圧力より高い所定の値になると開弁する第1アクチュエータと、リザーバ室側に設けられ、無電源時に作動流体が流通するよう動作する第2アクチュエータと、を有することにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
ここで、第2の実施形態では、ボディ部6に設けられた第2リリーフ流路14が他の流路を構成している。
【0054】
図7、
図8において、第2の実施形態による減衰力発生機構21は、第1アクチュエータとしてのロッド側アクチュエータ22と第2アクチュエータとしてのボトム側アクチュエータ23とを備えている。
【0055】
ロッド側アクチュエータ22は、他側室B側に設けられ、無電源時に作動油の流通を抑制するよう動作すると共に、他側室Bの圧力がリザーバ室Cの圧力より高い所定の値になると開弁する。ロッド側アクチュエータ22は、第1の実施形態によるロッド側アクチュエータ10と同様に、筒部22A、軸孔22B、プランジャ22C、マグネット22D、コイル22E、スプリング22F、接続孔22Gを含んで構成されている。
【0056】
しかし、第2の実施形態によるロッド側アクチュエータ22は、プランジャ22Cに軸方向に貫通して絞り通路22Hが設けられている点と、スプリング22Fがプランジャ22Cを閉弁方向に向けて付勢する位置に配置されている点と、で第1の実施形態によるロッド側アクチュエータ10と相違している。このロッド側アクチュエータ22の構成は、第1の実施形態によるボトム側アクチュエータ11の構成と同様となっている。
【0057】
ボトム側アクチュエータ23は、リザーバ室C側に設けられ、無電源時に作動油が流通するよう動作する。ボトム側アクチュエータ23は、第1の実施形態によるボトム側アクチュエータ11と同様に、筒部23A、軸孔23B、プランジャ23C、マグネット23D、コイル23E、スプリング23F、接続孔23Gを含んで構成されている。
【0058】
しかし、第2の実施形態によるボトム側アクチュエータ23は、絞り通路が廃止されている点と、スプリング23Fがプランジャ23Cを開弁方向に向けて付勢する位置に配置されている点と、で第1の実施形態によるボトム側アクチュエータ11と相違している。このボトム側アクチュエータ23の構成は、第1の実施形態によるロッド側アクチュエータ10の構成と同様となっている。
【0059】
ここで、ロッド側アクチュエータ22とボトム側アクチュエータ23の動作は、ロッド側アクチュエータ22が第1の実施形態によるボトム側アクチュエータ11と同様の動作となり、ボトム側アクチュエータ23が第1の実施形態によるロッド側アクチュエータ10と同様の動作となるために省略するものとする。
【0060】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
なお、各実施形態では、建築物に作用する振動を抑制するために減衰力調整式緩衝器1を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、4輪自動車、2輪車および鉄道車両に用いる減衰力調整式緩衝器、一般産業機器を含む各種の機械機器に用いる減衰力調整式緩衝器等、緩衝すべき対象の振動を緩和する各種の減衰力調整式緩衝器にも適用することができる。
【0062】
以上説明した実施形態に基づく減衰力調整式緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0063】
減衰力調整式緩衝器の第1の態様としては、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されて該シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延びるピストンロッドと、前記シリンダ内の前記他側室に挿入されて該シリンダ内を該他側室と体積保障を行うリザーバ室とに画成するように設けられるボディ部と、前記他側室と前記リザーバ室との間で前記作動流体が流れる流路と、前記流路に設けられるアクチュエータの動作によって、前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備える。
【0064】
第2の態様としては、第1の態様において、前記ボディ部に設けられ、前記他側室と前記リザーバ室とを連通する他の流路と、前記他の流路に設けられ、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、を有し、前記アクチュエータは、前記他側室側に設けられ、無電源時に前記作動流体が流通するよう動作する第1アクチュエータと、前記リザーバ室側に設けられ、無電源時に前記作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力より低い所定の値になると開弁する第2アクチュエータと、を有する。
【0065】
第3の態様としては、第1の態様において、前記ボディ部に設けられ、前記他側室と前記リザーバ室とを連通する他の流路と、前記他の流路に設けられ、前記リザーバ室の圧力が前記他側室の圧力よりも高い所定の値になると開弁するリリーフバルブと、を有し、前記アクチュエータは、前記他側室側に設けられ、無電源時に前記作動流体の流通を抑制するよう動作すると共に、前記他側室の圧力が前記リザーバ室の圧力より高い所定の値になると開弁する第1アクチュエータと、前記リザーバ室側に設けられ、無電源時に前記作動流体が流通するよう動作する第2アクチュエータと、を有する。
【符号の説明】
【0066】
1:減衰力調整式緩衝器、2:シリンダ、3:ピストン、4:ピストンロッド、6:ボディ部、8:流路、9,21:減衰力発生機構、10,22:ロッド側アクチュエータ(第1アクチュエータ)、11,23:ボトム側アクチュエータ(第2アクチュエータ)、13:第1リリーフ流路(他の流路)、14:第2リリーフ流路(他の流路)、15:第1リリーフバルブ(リリーフバルブ)、16:第2リリーフバルブ(リリーフバルブ)、A:一側室、B:他側室、C:リザーバ室