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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190963
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】流動層装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/16 20060101AFI20221220BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20221220BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B01J2/16
B01J2/00 B
B01J8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099512
(22)【出願日】2021-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和3年5月15日 販売した場所 株式会社明治 倉敷工場(岡山県倉敷市玉島乙島字新湊8263番地26)
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝路
【テーマコード(参考)】
4G004
4G070
【Fターム(参考)】
4G004BA02
4G004KA01
4G070AA01
4G070AB06
4G070BA05
4G070BB32
4G070CA26
4G070CB03
4G070CB07
4G070CB10
4G070DA05
(57)【要約】
【課題】フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動層装置において、運転開始前にワイヤを緩める作業が確実に行われるようにする。
【解決手段】流動層装置1は、粉粒体を気体により浮遊流動させながら、造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層容器2と、流動層容器2の内部に配置される固気分離用のフィルタ部8と、フィルタ部8を流動層容器2の内部の所定位置に保持する保持部(チャック部12a、膨張シール部9a)と、一端がフィルタ部8に接続され、他端が流動層容器2の外部に配置されるワイヤ14とを備える。フィルタ部8は、前記保持部により保持されていない状態で、ワイヤ14の動作により、ワイヤ14の一端に吊り下げ支持された状態で昇降可能である。フィルタ部8が前記保持部により保持された状態で、ワイヤ14の緩みを検知可能な緩み検知装置17が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を気体により浮遊流動させながら、造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層容器と、該流動層容器の内部に配置される固気分離用のフィルタ部と、該フィルタ部を前記流動層容器の内部の所定位置に保持する保持部と、一端が前記フィルタ部に接続され、他端が前記流動層容器の外部に配置されるワイヤとを備え、前記フィルタ部は、前記保持部により保持されていない状態で、前記ワイヤの動作により、前記ワイヤの一端に吊り下げ支持された状態で昇降可能である流動層装置において、
前記フィルタ部が、前記ワイヤの動作により前記流動層容器の内部の所定位置に配置され、前記保持部により保持された状態で、前記ワイヤの緩みを検知可能な緩み検知装置が設けられていることを特徴とする流動層装置。
【請求項2】
前記緩み検知装置が前記ワイヤの緩みを検知したときに、前記流動層装置の始動を許可するインターロック機能を有する請求項1に記載の流動層装置。
【請求項3】
前記緩み検知装置が、前記ワイヤに接触し、前記ワイヤから受ける力に応じて移動する可動部と、前記力が弱まる際の前記可動部の移動を検知することにより、前記ワイヤの緩みを検知するセンサ部を有する請求項1又は2に記載の流動層装置。
【請求項4】
前記緩み検知装置が、前記可動部を前記ワイヤの側に所定の弾性力で付勢する付勢手段を有する請求項3に記載の流動層装置。
【請求項5】
前記緩み検知装置が、前記可動部に延設された軸部と、該軸部が挿通される円筒状のハウジング部とを有し、
前記付勢手段が、前記軸部の外周に配置され、前記可動部と前記ハウジング部との間に介装されたばね部材である請求項4に記載の流動層装置。
【請求項6】
前記緩み検知装置が、前記軸部の端部に設けられ、前記可動部の移動に応じて前記ハウジング部の端部と接近又は離反するフランジ部を有し、
前記センサ部が、前記フランジ部に配設された近接センサであり、該近接センサは、前記フランジ部が前記ハウジング部の端部と接近したことを検知することにより、前記ワイヤの緩みを検知する請求項5に記載の流動層装置。
【請求項7】
前記可動部における前記ワイヤとの接触部がローラで形成されている請求項4~6の何れか1項に記載の流動層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品製造、食品製造、農薬製造等の各種分野において、粉粒体の造粒、コーティング、乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層装置は、一般に、流動層容器の底部から導入した気体(流動化気体)によって、流動層容器内で粉粒体を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、乾燥等の機能処理を行うものである。この種の流動層装置には、粉粒体の転動、噴流、及び攪拌等を伴うものも含まれ、その代表的なものとして、流動層容器の底部に回転体を配設した転動流動層装置、流動層容器の内部にドラフトチューブを設置したワースター式流動層装置がある。
【0003】
この種の流動層装置では、粉粒体を含む固気混合気体から気体を分離するためのフィルタ部材を有するフィルタ部を流動層容器内に配設し、このフィルタ部のフィルタ部材を介して気体を排気するようにしている。フィルタ部に使用されるフィルタ部材としては、バグフィルタと呼ばれる織布フィルタや(例えば特許文献1参照)、通気性の樹脂シートや金属金網等(濾材)を筒状にしてリテーナに保持させたカートリッジ式フィルタ等が用いられている(例えば特許文献2参照)。特に、後者のカートリッジ式フィルタは、2μm程度までの微粉を捕集するのに適している。なお、当該カートリッジ式フィルタは、プリーツ加工を施して筒状にすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-240608号公報
【特許文献2】特開2008-18297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献1、2に記載されているように、フィルタ部にはワイヤが接続されており、このワイヤの動作により、フィルタ部が、ワイヤに吊り下げ支持された状態で昇降可能となっていることが多い。フィルタ部を下降させた状態では、フィルタ部材の洗浄、フィルタ部材の交換等を行う。そして、フィルタ部を上昇させ、所定の位置に保持した状態で、流動層装置を運転し、造粒、コーティング、乾燥等の処理を行う。
【0006】
このようにフィルタ部の昇降に使用されるワイヤは、張った状態だと、例えば運転中のシェーキング動作等により、滑車との接触部等にストレスがかかることで損傷する可能性がある。
【0007】
そこで、フィルタ部を所定の位置に保持した後、流動層装置を運転する前に、ワイヤを緩める作業が行われるのが通例である。しかしながら、作業者がこのワイヤを緩める作業を忘れる場合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動層装置において、運転開始前にワイヤを緩める作業が確実に行われるようにすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る流動層装置は、粉粒体を気体により浮遊流動させながら、造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層容器と、該流動層容器の内部に配置される固気分離用のフィルタ部と、該フィルタ部を前記流動層容器の内部の所定位置に保持する保持部と、一端が前記フィルタ部に接続され、他端が前記流動層容器の外部に配置されるワイヤとを備え、前記フィルタ部は、前記保持部により保持されていない状態で、前記ワイヤの動作により、前記ワイヤの一端に吊り下げ支持された状態で昇降可能である流動層装置において、前記フィルタ部が、前記ワイヤの動作により前記流動層容器の内部の所定位置に配置され、前記保持部により保持された状態で、前記ワイヤの緩みを検知可能な緩み検知装置が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、前記処理を行う運転のためにフィルタ部が流動層容器の内部の所定位置に保持された状態で、緩み検知装置がワイヤの緩みを検知可能である。流動層装置の運転の開始前に緩み検知装置がワイヤの緩みを検知する場合には、ワイヤを緩める作業が行われていることになる。一方、流動層装置の運転の開始前に緩み検知装置がワイヤの緩みを検知しない場合には、ワイヤを緩める作業が行われておらず、作業者がワイヤを緩める作業を忘れていることになるが、これに対し、例えば、緩み検知装置がワイヤの緩みを検知していない状態をランプ等の報知手段で報知したり、緩み検知装置がワイヤの緩みを検知していない状態では運転を開始できないようにインターロックを掛けたりすること等により、ワイヤを緩める作業が行われていないことを作業者に気付かせ、ワイヤを緩める作業を作業者に行わせることができる。すなわち、本発明に係る流動層装置によれば、フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動層装置において、運転開始前にワイヤを緩める作業が確実に行われるようにすることが可能である。
【0011】
上記の構成において、前記緩み検知装置が前記ワイヤの緩みを検知したときに、前記流動層装置の始動を許可するインターロック機能を有してもよい。
【0012】
この構成であれば、インターロック機能により、ワイヤが緩んでいない状態では、流動層装置の運転を開始できず、ワイヤが緩んでいる状態では、流動層装置の運転を開始することができる。従って、流動層装置の運転の開始前に、ワイヤを緩める作業が行われていないことを作業者に気付かせ、ワイヤを緩める作業を作業者に行わせることがより確実にできる。
【0013】
上記の構成において、前記緩み検知装置が、前記ワイヤに接触し、前記ワイヤから受ける力に応じて移動する可動部と、前記力が弱まる際の前記可動部の移動を検知することにより、前記ワイヤの緩みを検知するセンサ部を有してもよい。
【0014】
この構成であれば、緩み検知装置を簡素な構造で製造することが可能である。
【0015】
上記の構成において、前記緩み検知装置が、前記可動部を前記ワイヤの側に所定の弾性力で付勢する付勢手段を有してもよい。この構成の場合、前記緩み検知装置が、前記可動部に延設された軸部と、該軸部が挿通される円筒状のハウジング部とを有し、前記付勢手段が、前記軸部の外周に配置され、前記可動部と前記ハウジング部との間に介装されたばね部材であってもよく、更に、前記緩み検知装置が、前記軸部の端部に設けられ、前記可動部の移動に応じて前記ハウジング部の端部と接近又は離反するフランジ部を有し、前記センサ部が、前記フランジ部に配設された近接センサであり、該近接センサは、前記フランジ部が前記ハウジング部の端部と接近したことを検知することにより、前記ワイヤの緩みを検知してもよい。
【0016】
上記の構成において、前記可動部における前記ワイヤとの接触部がローラで形成されていてもよい。
【0017】
この構成であれば、可動部とワイヤとの摩擦を低減でき、可動部とワイヤとの摩擦によるワイヤの損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動層装置において、運転開始前にワイヤを緩める作業が確実に行われるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る流動層装置の粉粒体処理時の状態を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る流動層装置のフィルタ部が下降した状態を示す概略図である。
図3】ワイヤが張っている時の緩み検知装置の概略部分断面正面図である。
図4図3の緩み検知装置の概略部分断面平面図である。
図5図3の緩み検知装置の概略部分断面底面図である。
図6図3の緩み検知装置の概略右側面図である。
図7】ワイヤが緩んだ時の緩み検知装置の概略部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る流動層装置の粉粒体処理時の状態を示す概略図である。同図に示すように、この流動層装置1は、上下方向に長尺である中空状の流動層容器2を備えている。流動層容器2の内部は、下方から順に、給気室3と、粉粒体Mの造粒又はコーティングを行う処理室4と、排気室5とに区分される。
【0022】
給気室3と処理室4との間は、パンチングメタル等の多孔板(又は金網)で構成された気体分散板6で仕切られている。給気室3には、給気ダクト3aから熱風等の気体が供給され(図中の矢印A)、この気体が気体分散板6を介して処理室4内に導入される(図中の矢印B)。
【0023】
処理室4には、スプレー液(膜剤液、結合剤液等)を噴霧するスプレーノズル7が設置されており、給気室3から供給された気体により粉粒体Mを浮遊流動させながら造粒又はコーティングを行うようになっている。なお、スプレーノズル7は、後述するようにフィルタ部8を昇降させる際は、フィルタ部8の昇降動作の邪魔にならないように、フィルタ部8の昇降経路外に移動可能な構成とされている。
【0024】
処理室4と排気室5との間は、固気分離用のフィルタ部8を介して連通している。そして、フィルタ部8によって、処理室4の粉粒体Mを含む固気混合気体から気体を分離した後、その分離した気体を排気室5に導入すると共に、排気室5の排気ダクト5aを通じて流動層容器2の外部に排出するようになっている(図中の矢印C)。なお、この実施形態では、流動層容器2の内周面に設けられたリング状のシール部9が有する膨張シール部9aを膨張させてフィルタ部8のベース部8aに当接させることにより、処理室4と排気室5との間が仕切られている。また、膨張シール部9aの膨張により、図1の位置にフィルタ部8のベース部8aが保持される。
【0025】
フィルタ部8は、ベース部8aに取り付けられた複数のバグフィルタ10と、この複数のバグフィルタ10を着脱可能に吊り下げ支持するフィルタ支持部11とを備える。フィルタ支持部11には、シェーキング機構(例えば、シリンダ機構等)12と、流動層容器2の外部に配置されたワイヤ操作手段(例えば、ウインチ等)13によって操作されるワイヤ14とが接続されている。
【0026】
シェーキング機構12は、流動層装置1の運転中に、バグフィルタ10に付着した微粉の払い落とし操作を行うためにバグフィルタ10を上下に振動させるものである。シェーキング機構12は、流動層容器2に取り付けられている。シェーキング機構12は、フィルタ支持部11のロッド部11aをチャック可能なチャック部12aを有する。
【0027】
一方、ワイヤ14は、その一端部が、フィルタ支持部11のロッド部11aの上端に接続されている。ワイヤ14は、複数の滑車15a~15dを介して流動層容器2の外部に引き出され、その他端部が流動層容器2の外部に配置されたワイヤ操作手段13に取り付けられ(接続され)ている。
【0028】
ワイヤ14は、流動層容器2の外部で、中空の柱部16の内部に通されている。柱部16の下端は、流動層装置1に設けられた不図示の支持台に固定されている。滑車15dは、柱部16に回転自在に取り付けられている。ワイヤ操作手段13も柱部16に取り付けられている。
【0029】
ワイヤ操作手段13によってワイヤ14を操作することで、バグフィルタ10の洗浄時や、或いはバグフィルタ10の交換時などにフィルタ部8を流動層容器2の内部で昇降させることが可能となっている。図2に示すように、フィルタ部8を下降させるときは、シェーキング機構12のチャック部12aによるフィルタ支持部11のロッド部11aのチャックを解除することにより、フィルタ部8は、チャック部12aに保持されない状態となる。そして、図1に示すように、フィルタ部8を上昇させて元の位置まで復帰させたときに、チャック部12aがロッド部11aをチャックすることにより、チャック部12aとロッド部11aが再び連結され、フィルタ部8は、チャック部12aに保持される。また、フィルタ部8を流動層容器2の内部で昇降させる時には、シール部9が有する膨張シール部9aを膨張状態から非膨張状態にすることにより、フィルタ部8は、膨張シール部9aにより保持されていない状態となる。
【0030】
以上の説明から分かるように、チャック部12aのチャックと膨張シール部9aの膨張により、図1の位置にフィルタ部8が保持される。フィルタ部8の図1の位置は、粉粒体Mの造粒又はコーティングを行う流動層装置1の運転のための所定位置である。つまり、チャック部12aと膨張シール部9aは、フィルタ部8を流動層容器2の内部の所定位置(図1の位置)に保持する保持部である。そして、フィルタ部8は、チャック部12aと膨張シール部9aにより保持されていない状態で、ワイヤ14の動作により、ワイヤ14の一端に吊り下げ支持された状態で昇降可能となっている。
【0031】
流動層装置1には、フィルタ部8が、ワイヤ14の動作により流動層容器2の内部の所定位置(図1の位置)に配置され、チャック部12aと膨張シール部9aにより保持された状態で、ワイヤ14の緩みを検知可能な緩み検知装置17が設けられている。緩み検知装置17は、柱部16に取り付けられている。
【0032】
また、流動層装置1は、緩み検知装置17がワイヤ14の緩みを検知したときに、流動層装置1の始動(運転の開始)を許可するインターロック機能を有する。
【0033】
図3~6に示すように、緩み検知装置17は、柱部16の壁部に取り付けられる取付板17aと、ハウジング部18と、可動部19と、センサ部20と、ばね部材21とを主要な構成要素とする。
【0034】
ハウジング部18は、円筒状であり、軸線方向の一端部18aが柱部16の内側に配置され、軸線方向の他端部18bが柱部16の外側に配置される。ハウジング部18の一端部18aの側には、取付板17aに取り付けられる取付用フランジ部18cが設けられている。また、ハウジング部18の他端部18bには、センサ部20に検知される被検知用フランジ部18dが設けられている。
【0035】
可動部19には、ハウジング部18に摺動自在に挿通される軸部19aが延設されている。なお、この実施形態では、軸部19aの摺動性を良好にするために、ハウジング部18は、固体潤滑剤(例えば、PTFE等)で形成されたブッシュ部18eを内周に有する。
【0036】
ばね部材21(例えば、圧縮コイルばね等)は、軸部19aの外周に配置され、可動部19とハウジング部18との間に介装されている。ばね部材21の一端は、可動部19に設けられた大径部(この実施形態ではナット19b)にワッシャ19cを介して当接し、ばね部材21の他端は、ハウジング部18の一端部18aに当接している。ばね部材21は、可動部19をワイヤ14の側に所定の弾性力で付勢する付勢手段である。
【0037】
軸部19aの先端部には、可動部19の移動に応じてハウジング部18の他端部18bと接近又は離反するフランジ部19dが設けられている。このフランジ部19dは、ばね部材21による付勢によって軸部19aがハウジング部18から抜けることを防止する。
【0038】
ハウジング部18の被検知用フランジ部18dの下側部位には、ハウジング部18の軸線方向に沿って延びる案内ピン18fが設けられている。案内ピン18fは、可動部19のフランジ部19dの下側部位に設けられた貫通孔19eに隙間をもって挿通されている。この案内ピン18fにより、貫通孔19eを介してフランジ部19dの軸線方向移動が案内される。また、ハウジング部18に対するフランジ部19d(可動部19)の周方向回転が規制される。
【0039】
この実施形態では、センサ部20が、フランジ部19dの上側部位に配設された近接センサであり、該近接センサは、フランジ部19dがハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに接近したことを検知することにより、ワイヤ14の緩みを検知する。この実施形態では、この近接センサは、所定の距離(閾値)以下に検知対象物に接近した場合に、検知信号を発信(検知対象物を検知)し、閾値より検知対象物から離れた場合に、検知信号を発信しなくなる(検知対象物を検知しなくなる)ように構成されている。
【0040】
また、可動部19は、ワイヤ14の側に設けられた一対の支持板部19fと、これらの支持板部19fの間に配置され、支持板部19fに回転自在に支持される主ローラ19gと補助ローラ19hを有する。主ローラ19gは、周面に溝部19iを有し、この溝部19iに嵌合するワイヤ14と接触する接触部である。補助ローラ19hは、周面に溝部は無く、主ローラ19gに隣接して配置され、主ローラ19gの溝部19iからワイヤ14が外れることを防止する。主ローラ19gと補助ローラ19hは、それらの回転軸線が可動部19(軸部19a)の軸線と直交するように配設されている。主ローラ19gと補助ローラ19hの回転軸線は水平方向に沿っている。
【0041】
取付板17aにおけるワイヤ14の側において、主ローラ19gと補助ローラ19hの下方に、ワイヤ14を案内する案内主ローラ17bと案内補助ローラ17cが配設されている。案内主ローラ17bと案内補助ローラ17cは、取付板17aに設けられた一対の板部17dの間に配設され、これらの板部17dに回転自在に支持される。案内主ローラ17bは、周面に溝部17eを有する。案内補助ローラ17cは、周面に溝部が無く、案内主ローラ17bに隣接して配置される。案内主ローラ17bの溝部17eと案内補助ローラ17cの周面とにより、ワイヤ14が案内される。
【0042】
この実施形態では、案内主ローラ17bは、主ローラ19gと同形状、同寸法であり、回転軸線の方向も同じであり、案内補助ローラ17cは、補助ローラ19hと同形状、同寸法であり、回転軸線の方向も同じである。案内主ローラ17bは、主ローラ19gに対し、回転軸線の方向の位置が同じであるが、可動部19(軸部19a)の軸線の方向の位置が異なる。案内補助ローラ17cは、補助ローラ19hに対し、回転軸線の方向の位置が同じであるが、可動部19(軸部19a)の軸線の方向の位置が異なる。また、案内主ローラ17bと案内補助ローラ17cの相対的位置関係と、主ローラ19gと補助ローラ19hの相対的位置関係は同じである。
【0043】
以上のように構成された緩み検知装置17の動作を次に説明する。
【0044】
ワイヤ14が緩んだ状態(図7の状態)から張った状態(図3の状態)になる際には、可動部19は、ワイヤ14に接触している主ローラ19gを介してワイヤ14から受ける力が強くなり、ばね部材21の弾性力(反発力)に抗して柱部16の外部側に移動する。この際に、センサ部20の近接センサは、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに対して離れ、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dを検知しなくなる。
【0045】
つまり、図3に示すワイヤ14が張った状態の場合には、センサ部20の近接センサは、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに対して離れているため、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dを検知していない。つまり、緩み検知装置17(センサ部20)はワイヤ14の緩みを検知していない。なお、図3の状態では、ワイヤ14は、主ローラ19gの溝部19iと案内主ローラ17bの溝部17eに強く接触している。
【0046】
ワイヤ14が張った状態から緩む場合、図7に示すように、可動部19(主ローラ19g)は、ワイヤ14から受ける力が弱くなるので、ばね部材21の弾性力による付勢でワイヤ14の側に移動する。この際に、センサ部20の近接センサが、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに対して接近し、ハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dを検知する。つまり、緩み検知装置17(センサ部20)がワイヤ14の緩みを検知する。そして、更に、ワイヤ14の緩みが進むと、フランジ部19dがハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに当接する。
【0047】
このように、可動部19は、ワイヤ14に接触し、ワイヤ14から受ける力に応じて移動する。そして、緩み検知装置17(センサ部20)は、ワイヤ14から受ける力が弱まる際の可動部19の移動を検知することにより、ワイヤ14の緩みを検知する。
【0048】
なお、この実施形態のワイヤ14を緩める作業では、フランジ部19dがハウジング部18の他端部18bと被検知用フランジ部18dに当接してからも、更にワイヤ14を緩める。そのため、ワイヤ14を緩める作業が完了した時点で、緩み検知装置17の主ローラ19gに対してワイヤ14から実質的に力がかからない状態(ワイヤ14が少したるんだ状態)になる。ただし、図7の状態では、ワイヤ14は、主ローラ19gの溝部19iと案内補助ローラ17cの周面に軽く接触している。
【0049】
次に、流動層装置1の運転開始までの手順を説明する。
【0050】
まず、図2に示す下降した状態のフィルタ部8を、ワイヤ操作手段13によりワイヤ14を操作することにより上昇させる。この時、フィルタ部8がワイヤ14の一端に吊り下げ支持されているため、ワイヤ14は張った状態である。
【0051】
フィルタ部8が図1の位置まで上昇したら、まず、チャック部12aのチャックにより、フィルタ部8が保持され、次に、膨張シール部9aの膨張により、フィルタ部8が保持される。この時、フィルタ部8がワイヤ14の一端に吊り下げ支持されていた直後であるため、ワイヤ14は張ったままの状態である。従って、緩み検知装置17は緩みを検知しない。
【0052】
なお、この状態では、緩み検知装置17が緩みを検知していないので、流動層装置1のインターロック機能により、運転の開始が許可されない(例えば、運転開始ボタンを押し込むことができない)。換言すると、流動層装置1の運転の開始に対してインターロックが掛かっている。
【0053】
次に、ワイヤ操作手段13によりワイヤ14を操作し、ワイヤ14を緩める作業を行う。例えば、ワイヤ操作手段13が手動のウィンチの場合であれば、所定回数ウィンチを回転させ、ワイヤ14を送り出す。すると、フィルタ部8がチャック部12aと膨張シール部9aに保持されているため、ワイヤ14が緩む。従って、緩み検知装置17が緩みを検知するので、流動層装置1のインターロック機能は、流動層装置1の運転の開始を許可する(例えば、運転開始ボタンを押し込むことができるようになる)。換言すると、流動層装置1の運転の開始に対するインターロックが解除される。
【0054】
そして、流動層装置1の運転を開始させる(例えば、運転開始ボタンを押し込む)。
【0055】
仮に、流動層装置1の運転開始前に、作業者がワイヤ14を緩める作業を忘れていた場合、ワイヤ14は張ったままの状態であるため、緩み検知装置17は緩みを検知しない。従って、流動層装置1の運転を開始させようとしても、緩み検知装置17が緩みを検知していないので、流動層装置1の運転開始に対してインターロックが掛かり、運転を開始させることができない。そのため、作業者が、ワイヤ14を緩める作業を忘れていたことに気付き、ワイヤ14を緩める作業を行う。すると、緩み検知装置17が緩みを検知するので、流動層装置1の運転の開始に対するインターロックが解除され、作業者が流動層装置1の運転を開始させることができるようになる。
【0056】
次に、流動層装置1の運転開始後の動作を説明する。
【0057】
まず、流動層装置1の流動層容器2内で粉粒体Mの処理を行う際には、図1に示すように、処理室4に収容された粉粒体Mが、気体分散板6を介して流動層容器2内に導入される気体によって浮遊流動される。浮遊流動させる粉粒体Mには、スプレーノズル7からスプレー液(膜剤液、結合剤液等)が噴霧される。この状態で、スプレーノズル7から噴霧されるスプレー液、例えば膜剤液のミストによって粉粒体Mが湿潤すると同時に、膜剤液中に含まれる固形成分が粉粒体Mの表面に付着し、乾燥固化されて、粉粒体Mの表面に被覆層が形成される(コーティング)。また、スプレーノズル7から噴霧されるスプレー液の種類を、例えば結合剤液に変更すれば、スプレー液のミストによって粉粒体Mが湿潤されて付着凝集し、乾燥されて、所定径の粒子に成長する(造粒)。
【0058】
このような粉粒体Mのコーティングや造粒等の処理を行っている間、処理室4内で上昇する粉粒体Mを含む固気混合気体は、フィルタ部8のバグフィルタ10によって固気分離され、分離された気体が排気室5に導入されると共に、排気ダクト5aを通じて流動層容器2の外部に排出される。また、適宜、シェーキング機構12によるバグフィルタ10に付着した微粉の払い落とし操作が行われる。
【0059】
以上のように構成された流動層装置1では、粉粒体Mの造粒又はコーティングを行う運転のためにフィルタ部8が流動層容器2の内部の所定位置に保持された状態で、緩み検知装置17がワイヤ14の緩みを検知可能である。流動層装置1の運転の開始前に緩み検知装置17がワイヤ14の緩みを検知する場合には、ワイヤ14を緩める作業が行われていることになる。一方、流動層装置1の運転の開始前に緩み検知装置17がワイヤ14の緩みを検知しない場合には、ワイヤ14を緩める作業が行われておらず、作業者がワイヤ14を緩める作業を忘れていることになるが、これに対し、緩み検知装置17がワイヤ14の緩みを検知していない状態では運転を開始できないようにインターロックを掛けることにより、ワイヤ14を緩める作業が行われていないことを作業者に気付かせ、ワイヤ14を緩める作業を作業者に行わせることができる。すなわち、本実施形態に係る流動層装置1によれば、フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動層装置において、運転開始前にワイヤを緩める作業が確実に行われるようにすることが可能である。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、バグフィルタ10を使用したフィルタ部8を備えた流動層装置1を説明したが、本発明は、フィルタ部の昇降にワイヤを使用する流動装置であればよく、例えば、カートリッジ式フィルタを使用したフィルタ部を備える流動層装置であってもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、流動層装置1の流動層容器2で、粉粒体Mのコーティングや造粒をする場合を説明したが、粉粒体Mを乾燥させる処理を行うようにしてもよい。
【0062】
また、フィルタ部8のワイヤ14による昇降動作は、全部を一体的に行ってもよいし、フィルタ部8を複数に分割して、個別に行うようにしてもよい。
【0063】
また、本発明は、上述したような流動層装置1に限らず、転動流動層装置やワースター式流動層装置等の複合型流動層装置にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 流動層装置
2 流動層容器
8 フィルタ部
9a 膨張シール部
10 バグフィルタ
12a チャック部
14 ワイヤ
17 緩み検知装置
18 ハウジング部
18b 他端部
19 可動部
19a 軸部
19d フランジ部
19g 主ローラ(接触部)
20 センサ部
21 ばね部材
M 粉粒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7