(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190964
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20221220BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20221220BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221220BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20221220BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20221220BHJP
B60W 20/14 20160101ALI20221220BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/16
B60W20/13
B60W20/14
F02D29/06 D
F02D29/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099515
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】米村 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 一真
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB01
3D202BB06
3D202BB08
3D202BB15
3D202CC04
3D202CC41
3D202CC58
3D202DD16
3D202DD22
3D202DD45
3G093AA07
3G093BA22
3G093DA06
3G093DA11
3G093DB20
3G093EA05
(57)【要約】
【課題】触媒の溶損を防止できて、バッテリの充電可能量が小さい場合であっても減速感を得ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関2にブローバイガス還元装置24を有したハイブリッド車両1において、制御装置35は、バッテリ32の充電量が所定よりも大きい場合であって、潤滑油Oを希釈する希釈燃料の量が所定以上かつ触媒温度が所定温度以上となる場合には、内燃機関2への燃料供給を停止せずに、希釈燃料だけで、又は、希釈燃料に加えても減速感を得ることが可能な噴射量の燃料供給と希釈燃料とだけで内燃機関2の筒内燃焼を行うことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関にブローバイガス還元装置を有したハイブリッド車両において、減速時にバッテリの充電量が所定以下のときには、モータ・ジェネレータの回生ブレーキにより減速感を得るようにし、減速時に前記バッテリの充電量が所定よりも大きいときには、前記内燃機関への燃料供給を停止して減速感を得るようにする制御装置であって、
前記バッテリの充電量が所定よりも大きい場合であって、潤滑油を希釈する希釈燃料の量が所定以上かつ触媒温度が所定温度以上となる場合には、前記内燃機関への燃料供給を停止せずに、
前記希釈燃料だけで、又は、
前記希釈燃料に加えても減速感を得ることが可能な噴射量の燃料供給と前記希釈燃料とだけで
前記内燃機関の筒内燃焼を行うことを特徴とする、
ハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を間欠停止してモータ・ジェネレータだけで走行できるように構成されたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の駆動中にピストンとシリンダとの隙間からクランクケースに僅かに漏れるブローバイガスには、未燃焼の燃料が含まれている。ブローバイガスの温度が下がると、気化していた燃料が凝集して潤滑油に混入する。燃料によって希釈された潤滑油は、クランクケースを潤滑する性能が低下してしまうため、クランクケース内を換気して潤滑油から燃料を揮発させる。潤滑油から揮発した未燃焼の燃料を大気中に開放することは法令で規制されている。クランクケースを換気した空気は、内燃機関の吸気系に導入されて燃料と空気とを混合した混合気に合流する。
【0003】
潤滑油に混入している燃料が多いときには、クランクケースの換気回数を増やして燃料の揮発を促したいところ、ハイブリッド車両は、内燃機関を間欠停止してモータ・ジェネレータだけで走行できるため、モータ走行中にクランクケースの換気が止まり燃料の除去が進みにくい。そこで、潤滑油に混入した燃料の濃度を検知し、燃料が多いときには内燃機関の間欠停止を禁止して内燃機関吸気系への燃料供給を止めないハイブリッド車両の制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、特許文献1には開示されていないが、排ガス浄化触媒が高温のうちは内燃機関が停止しないように間欠運転を禁止することにより、排ガス浄化触媒の溶損や劣化を防止できる。内燃機関の排気系には、内燃機関の排気ガスを浄化する排ガス浄化触媒が取り付けられている。排ガス浄化触媒は、炭化水素を酸化して窒素酸化物を還元する貴金属等の触媒と、触媒を担持する多孔質の担体と、で構成されている。燃料を酸化すると反応熱で触媒自体の温度が上昇して活性が高くなる。触媒が高温になるに従って酸化反応が急速に進行するようになり、ますます温度上昇しやすくなる。
【0006】
排ガス浄化触媒は、内燃機関で燃え残ったごく少量の燃料を浄化した反応熱や排気ガスとの熱交換で所定の温度域になるように調製されている。活性化している触媒に対して、少量ではなく多量の燃料を含んだ混合気を供給すると、反応熱が過大になって触媒温度が急速に上昇する。貴金属触媒を担持する担体が溶け落ちて変形したり、担体上で溶融・再凝固した貴金属触媒が粒成長して排気ガスに触れる反応面積が小さくなったりしてしまう。
【0007】
ハイブリッド車両において内燃機関を間欠停止すると、吸気系の空気が排ガス浄化触媒に供給される。クランクケースを換気した空気には、未燃焼の燃料が含まれているため、排ガス浄化触媒がまだ高温のうちに内燃機関を間欠停止すると、活性化している触媒にクランクケースから揮発した燃料が多量に供給されて排ガス浄化触媒が溶損するおそれがある。内燃機関の間欠運転を禁止すれば、そのような事態を防止できる。
【0008】
ところで、ハイブリッド車両の制御装置は、減速時にバッテリの充電量が所定以下のときには、モータ・ジェネレータの回生ブレーキにより減速感を得るようにする。一方で、減速時にバッテリの充電量が所定よりも大きいとき、すなわちバッテリの充電可能量が小さいときには、回生ブレーキを使用できないため、内燃機関への燃料供給を停止して減速感を得る。そのため、触媒の溶損を防止するために内燃機関の間欠運転が禁止すると、回生ブレーキが使用できないときであっても内燃機関への燃料供給を停止できないため、意図した減速感を得られないおそれがある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、触媒の溶損を防止できて、バッテリの充電可能量が小さい場合であっても減速感を得ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る制御装置は、制御装置内燃機関にブローバイガス還元装置を有したハイブリッド車両において、減速時にバッテリの充電量が所定以下のときには、モータ・ジェネレータの回生ブレーキにより減速感を得るようにし、減速時にバッテリの充電量が所定よりも大きいときには、内燃機関への燃料供給を停止して減速感を得るようにする。バッテリの充電量が所定よりも大きい場合であって、潤滑油を希釈する希釈燃料の量が所定以上かつ触媒温度が所定温度以上となる場合には、内燃機関への燃料供給を停止せずに、希釈燃料だけで、又は、希釈燃料に加えても減速感を得ることが可能な噴射量の燃料供給と希釈燃料とだけで内燃機関の筒内燃焼を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少量の燃料だけで筒内燃焼を継続するため、内燃機関から発生するトルクが内燃機関のフリクションよりも小さくなり、エンジンブレーキを効かせることができる。バッテリの充電可能量が小さい場合であっても減速感を得ることができる。バッテリの充電可能量に拘わらず内燃機関の間欠運転を禁止できる。筒内燃焼が継続していて希釈燃料が触媒に直に接触しないため、ブローバイガスによる触媒の溶損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えたハイブリッド車両の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された内燃機関を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された制御装置が実施する制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、充電加算値を算出するための算出マップの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示された負トルク制御を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
図1は、本発明の各実施形態に共通するハイブリッド車両の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、内燃機関2と、ハイブリッドトランスアクスル3と、を備えたシリーズパラレル型のハイブリッド車両として構成されている。内燃機関2は、4つの気筒2aを有する直列4気筒型の内燃機関である。
【0014】
図2は、
図1に示された内燃機関を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、内燃機関2は気筒2a毎に設けられたピストン5と、ピストン5とクランク軸6とを連結するコネクティングロッド7とを有する。各気筒2aには吸気通路8及び排気通路9がそれぞれ接続されている。吸気通路8は吸気弁10にて、排気通路9は排気弁11にてそれぞれ開閉される。各気筒2aの天井部には点火プラグ12が設けられている。クランク軸6は回転可能な状態でクランクケース15に収容されており、クランクケース15の底部には潤滑油Oが溜まっている。
【0015】
潤滑油Oを内燃機関2の各部に供給するためオイルポンプ16が設けられている。オイルポンプ16はオイルストレーナ17を介して潤滑油Oを吸引し、吸引した潤滑油Oを不図示のオイル通路を介して内燃機関2の各部に供給する。また、ピストン5を冷却するためクランクケース15の内部側からピストン5に潤滑油Oを噴射するオイルジェット20が設けられている。オイルジェット20はオイル通路から分岐する分岐路21と、分岐路21の先端部に設けられた噴射ノズル22と、分岐路21に設けられた制御弁23と、を備えている。制御弁23の開度を調整することにより潤滑油Oの噴射量を調整できる。
【0016】
また、内燃機関2にはクランクケース15内を換気して吸気通路8に導入する換気装置24が設けられている。吸気通路8は、内燃機関2の吸気系の一例であり、換気装置24は、吸気系にブローバイガスを還流させるブローバイガス還元装置の一例である。換気装置24はクランクケース15と吸気通路8とを連通する換気通路24aと、換気通路24aに設けられた制御弁24bと、を備えている。制御弁24bは吸気通路8の負圧が小さいほど開度が大きくなるように、換言すれば吸入空気量が多いほどブローバイガスの導入量が多くなるように動作する周知のものである。
【0017】
図1に示すように、ハイブリッドトランスアクスル3は、2つの第1及び第2モータ・ジェネレータ25、26と、内燃機関2及び第1モータ・ジェネレータ25が連結され、遊星歯車機構として構成された動力分割機構27と、動力分割機構27から出力される動力を左右の駆動輪30に分配するディファレンシャル機構28と、を含んでいる。ハイブリッドトランスアクスル3に含まれるこれらの構成要素は不図示のケースに収容されている。
【0018】
内燃機関2の動力は動力分割機構27にて分割される。動力分割機構27にて分割された一方の動力は第1モータ・ジェネレータ25の発電に利用され、分割された他方の動力はディファレンシャル機構28に伝達される。第2モータ・ジェネレータ26は動力分割機構27からディファレンシャル機構28までの動力伝達経路に対して動力伝達可能な状態で設けられている。
【0019】
各モータ・ジェネレータ25、26はDC-DCコンバータ及びインバータとしてそれぞれ機能する電気回路31を介してバッテリの一例であるHVバッテリ32に電気的に接続されている。HVバッテリ32は直流200V程度の比較的高電圧な例えばニッケル水素バッテリとして構成されている。電気回路31はHVバッテリ32の直流電力を昇圧しつつ交流電力に変換して各モータ・ジェネレータ25、26に供給でき、かつ各モータ・ジェネレータ25、26の発電電力を減圧しつつ直流電力に変換してHVバッテリ32に供給できる。
【0020】
車両1はコンピュータとして構成された電子制御装置(ECU)35にて制御される。ECU35は車両1に設けられた内燃機関2の運転状態を制御するとともに、電気回路31を操作することにより各モータ・ジェネレータ25、26を制御する。なお、内燃機関2を制御する制御装置と電気回路31を制御する制御装置とを別々に設け、これらの制御装置を相互に通信可能な状態とすることによりECU35を構成することも可能である。
【0021】
ECU35には、車両1の各部の情報を検出する様々なセンサ類からの信号が入力される。図示の例では、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ36、車両1の車速に応じた信号を出力する車速センサ37、及びHVバッテリ32の残量に応じた信号を出力するSOCセンサ38が、車両1にそれぞれ設けられている。
【0022】
また、ECU35は、HVバッテリ32の残量が目標値を中心として推移させるため、HVバッテリ32への充放電要求量に応じた第1モータ・ジェネレータ25の発電量が得られるように内燃機関2を制御する。この場合における内燃機関2のエンジン要求出力は次式1にて定義される。
【0023】
エンジン要求出力=ドライバ要求出力+電気負荷電力+充放電要求量 ……1
【0024】
式1において、ドライバ要求出力はアクセル開度に基づいて計算され、電気負荷電力は車両1に搭載された不図示のエアコン等の電装品の消費電力に基づいて計算される。式1から明らかなように、充放電要求量が大きくなるとそれだけエンジン要求出力が大きくなるので内燃機関2の吸入空気量が増加する。
【0025】
以下、ECU35が実施する制御の一例について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る制御の一例を示すフローチャートである。
図4は、充電加算値を算出するための算出マップの一例を示す図である。
図3に示された制御ルーチンのプログラムはECU35に保持されていて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0026】
図3のステップS1において、ECU35はオイル希釈度を所得する。オイル希釈度は内燃機関2の潤滑油へ燃料が混入するオイル希釈の程度のことである。本実施形態ではECU35が別ルーチンで実施する空燃比のフィードバック制御の制御中心のずれに基づいてオイル希釈度を取得する。オイル希釈度が高いほど潤滑油から蒸発する燃料成分が増えて混合気の空燃比がリッチ側にシフトするので、ECU35はそのシフト量に基づいてオイル希釈度を推定して取得する。
【0027】
ステップS2において、ECU35はオイル希釈度が基準値以上か否かを判定する。この基準値は換気装置24によるクランクケース15の換気により空燃比が過剰にリッチとならないように設定される。また、空燃比が過剰にリッチとならず、かつ燃料カットによってエンジン空転時に不図示の排ガス浄化触媒上で燃料が浄化されて触媒温度が所定値以上とならないように、基準値が設定されてもよい。オイル希釈度が基準値以上であり、かつ排ガス浄化触媒の触媒温度が所定値以上である場合はステップS3に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。オイル希釈度が所定以上であるか、触媒温度が所定温度以上であるか、少なくとも一方を満たした場合には以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了するように構成してもよい。
【0028】
オイル希釈度が基準値以上である場合や排ガス浄化触媒の触媒温度が所定値以上である場合において、ECU35は内燃機関2の間欠運転を禁止してクランクケース15の換気回数を増やし、潤滑油Oを希釈する燃料の揮発を促す制御を実施する。このときECU35はオイルジェット20の制御弁23を操作することによって潤滑油の噴射量をオイル希釈度に応じて制御する。オイル希釈度が基準値を超えて当該制御を実施する場合はオイル希釈度が基準値以下の場合よりもオイルジェット20による潤滑油の噴射量が増加する。これによりピストン5に噴射された潤滑油がピストン5の熱を受けて燃料の蒸発が促進されるのでオイル希釈を抑制又は低減できる。
【0029】
ECU35は内燃機関2の間欠停止を禁止し、かつ充電量増加制御を実施する。そして、今回のルーチンを終了する。充電量増加制御は上述した充放電要求量を充電側に増加させるものである。具体的には、ECU35が次式2に基づいて充放電要求量を算出することによって充電量増加制御を実施する。
【0030】
充放電要求量=通常充放電要求量+充電加算量≦充電量上限値 ……2
【0031】
式2において、通常充放電要求量はHVバッテリ32の残量等に応じて計算される。充電量上限値はHVバッテリ32の残量や温度等によって計算される。充電加算量は一例として
図4に示された算出マップに基づいてオイル希釈度に応じて算出される。
図4に示すように、充電加算量はオイル希釈度が基準値を超えるまではゼロであり、オイル希釈度が基準値を超えてからはオイル希釈度に応じて増加するように算出される。ただし、充電量上限値を超えることができないため、充電加算量は上限値に制限される。この上限値は、HVバッテリ32の充電可能量の一例であり、充電量上限値から通常充電量を差し引いたものに相当する。
【0032】
式2に基づいて充放電要求量が算出されることにより、充放電要求量が充電側に増加する。その結果、式1で算出されるエンジン要求出力はオイル希釈度が基準値以下の場合と比べて増加する。なお、充電加算量は大きいほどオイル希釈の抑制又は低減効果が高くなるが、充電加算量を大きくすることによる弊害を考慮することが望ましい。そのような弊害としては、HVバッテリ32の残量を目標値(例えば60%)に制御する制御性の悪化や、吸入空気量が少なくて済む運転状態時に吸入空気量が増加することによる騒音の悪化等が考えられる。これまで説明した内燃機関2の間欠運転を禁止する状態は、所定の条件が揃ったとき解除される。
【0033】
ステップS3において、ECU35は内燃機関2の間欠運転が禁止されている状態が継続中であるか否かを判定する。間欠運転の禁止が継続中である場合はステップS4に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0034】
ステップS4において、間欠運転の禁止が継続中に車両1が減速した場合、ステップS2で説明したHVバッテリの充電可能量が小さいか否かを判定する。例えば、HVバッテリ21の充電量が所定よりも大きい場合に充電可能量が小さいと判定し、ステップS5に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0035】
ステップS5において、HVバッテリ32を保護するために回生ブレーキの使用を制限する。代わりに、内燃機関2から発生するトルクが内燃機関2のフリクションよりも小さくなるように(負のトルクになるように)燃料の噴射量を制御する。具体的には、換気装置24によって導入された希釈燃料だけで、又は、希釈燃料に加えても減速感を得ることが可能な噴射量の燃料供給と希釈燃料との合計だけで内燃機関2の筒内燃焼を継続するように制御する。これにより、回生ブレーキによらずに、好ましい減速感を得ることができる。
【0036】
図5は、
図3に示された負トルク制御を模式的に示す図である。
図5の縦軸は内燃機関2のエンジントルクを示し、横軸はHVバッテリ32の充電可能量Winを示している。横軸上を左に向かうに従って充電可能量Wiが減少することを示している。例えば、内燃機関2の筒内燃焼を維持できる最低限の燃料の噴射量やその近傍の領域では、内燃機関が発生させるトルクが内燃機関2のフリクションよりも小さいため、内燃機関2を動かしていてもエンジンブレーキによる減速感を得られる。内燃機関2のフリクションは、例えば、吸気通路8の内圧、内燃機関2を構成するピストン5、クランク軸6、コネクティングロッド7の摩擦等から算出される。
【0037】
図5に示すように、縦軸と横軸とが交差する交点近傍では充電可能量Wiが制限され、第2モータ・ジェネレータ26の回生ブレーキを使用しにくく減速度を確保しにくいため、内燃機関2のフリクションで負トルクを発生させている。一方、横軸上を右に向かうに従って充電可能量Wiが大きくなり、第2モータ・ジェネレータ26の回生ブレーキを使用して減速度を確保しやすくなるため、内燃機関2の負トルクが不要になる。
【0038】
なお、吸気系に燃料を供給しなくても筒内燃焼を維持できるほど換気装置24から導入される希釈燃料が濃い場合、燃料を噴射しなくてもよい。内燃機関が発生させるトルクが内燃機関2のフリクションよりも小さくなる範囲内であれば、吸気系に供給する燃料の噴射量を多くしてもよい。
【0039】
以上のように構成されたECU35及び該ECU35を備えた車両1によれば、少量の燃料だけで筒内燃焼を継続するため、内燃機関2から発生するトルクが内燃機関2のフリクションよりも小さくなり、エンジンブレーキを効かせることができる。HVバッテリ32の充電可能量が小さい場合であっても減速感を得ることができる。HVバッテリ32の充電可能量に拘わらず内燃機関2の筒内燃焼を継続してブローバイガスによる触媒の溶損を防止できる。
【0040】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…車両、2…内燃機関、2a…気筒、3…ハイブリッドトランスアクスル、5…ピストン、6…クランク軸、7…コネクティングロッド、8…吸気通路、9…排気通路、10…吸気弁、11…排気弁、12…点火プラグ、15…クランクケース、16…オイルポンプ、17…オイルストレーナ、20…オイルジェット、21…分岐路、22…噴射ノズル、23…制御弁、24…換気装置(ブローバイガス還元装置の一例)、24a…換気通路、24b…制御弁、25…第1モータ・ジェネレータ、26… 第2モータ・ジェネレータ、27…動力分割機構、28…ディファレンシャル機構、30…駆動輪、31…電気回路、32…HVバッテリ、35…ECU(制御装置の一例)、O…潤滑油、S1~S4…ステップ。