(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190968
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】消臭材
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20221220BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20221220BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221220BHJP
C01G 9/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/06 C
B01J20/30
C01G9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099527
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119265
【氏名又は名称】井上石灰工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美島 佳織
(72)【発明者】
【氏名】橋本 恭邦
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB09
4C180BB11
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4C180EB26Y
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4C180GG07
4G066AA18B
4G066AA37A
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4G066BA02
4G066BA05
4G066BA16
4G066BA20
4G066CA02
4G066CA24
4G066CA25
4G066CA27
4G066CA29
4G066CA56
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】様々な種類の広範囲の臭い成分に対して受光しなくとも短期時間で臭い成分を無くさせる消臭性に優れ、消臭作用が長期間持続できかつ反復継続使用できのみならず消臭性を回復させて再使用が可能であり、白色乃至淡色であって基材成分の着色を阻害せず、そのままの形状で使用したり水溶液・ゲル・固体賦活剤や繊維等に担持させて使用したりしても消臭できる消臭成分を含有する、簡素な消臭材を提供する。
【解決手段】消臭材は、一種類の金属元素を有する水酸化物層を有し層間に、カチオン、アニオン、及び/又は水分子がインターカレートされており、臭い成分をインターカレートさせ又は吸着させ若しくは分解させる層状複水酸化物を、消臭成分として含有するというものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種類の金属元素を有する水酸化物層を有し層間に、カチオン、アニオン、及び/又は水分子がインターカレートされており、臭い成分をインターカレートさせ又は吸着させ若しくは分解させる層状複水酸化物を、消臭成分として含有することを特徴とする消臭材。
【請求項2】
前記金属元素が2価であることを特徴とする請求項1に記載の消臭材。
【請求項3】
前記金属元素が亜鉛であることを特徴とする請求項1~2の何れかに記載の消臭材。
【請求項4】
前記層状複水酸化物が、シモンコライトであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の消臭材。
【請求項5】
前記層状複水酸化物が、六角板状、鱗片状、薄片状、又は不定形状であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の消臭材。
【請求項6】
前記層状複水酸化物が、アスペクト比を100:1~1:1とすることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の消臭材。
【請求項7】
前記消臭成分のまま又はそれを固形状担体と液状又はゲル状流動性担体との何れかに含有された消臭剤、前記消臭成分が布帛に付され又は含浸された消臭性布帛・衣類・衣服類・被服類又はそれらの繊維、若しくは前記消臭成分を含有する建材・工業用製品又は日用品、であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の消臭材。
【請求項8】
一種類の金属の水溶性塩の水溶液と、水酸化アルカリ金属の水溶液とを、混合した後、中和してから、一種類の金属元素を有する水酸化物層を有し層間に、カチオン、アニオン、及び/又は水分子がインターカレートされており臭い成分をインターカレートさせ又は吸着させ若しくは分解させる層状複水酸化物を、結晶化させることを特徴とする消臭成分の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な臭い成分を消臭・脱臭(以下、両者をまとめて消臭という)する層状複水酸化物を消臭成分として含有する消臭材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体やペットなどから発せられる体臭・生活臭、部屋・車両・作業現場・工場などに漂う悪臭などの空間臭、廃液や下水や化学系物質などから発せられる液体臭乃至固体臭を、除去したり軽減したりして消臭をするのに、各種消臭剤や消臭装置が用いられる
【0003】
消臭には、さまざまなタイプの消臭手段が取られる。例えば、各種臭い成分に対する活性炭などのように表面積が大きい吸着剤による臭い成分の物理吸着や、酸性臭い成分に対する炭酸カルシウムとか塩基性臭い成分に対する硫酸アルミニウムなどの吸着材による臭い成分の化学吸着のような吸着手段が、工業用途又は家庭用消臭製品用途に汎用されている。また、酸化チタンの中でも高活性のアナターゼ型酸化チタンなどのような光触媒薬剤系消臭剤、又は紫外線照射やオゾン発生などにより臭い成分を化学的に分解したり変化させたりする分解・除去手段も知られている。さらに、香水・香料・芳香剤などにより嫌な臭いを隠し良い香りを優先的に嗅覚で感じさせるようにするマスキング手段や、悪臭成分を芳香成分に取り込むペアリング手段もある。或いは、バクテリアや酵素や活性汚泥を用いて生ごみや下水中の有機物を分解したり抗菌剤を用いて腐敗菌の増殖を抑制したりする微生物的消臭手段もある。消臭は、これら何れか又は何れか手段の組み合わせによって行われることが殆どである。
【0004】
物理吸着消臭剤である活性炭は、黒色である所為で素材の彩色を遮るため彩色を必要としない用途、例えば活性炭は家庭用消臭剤又は事業用排水処理や排ガス処理用消臭剤として汎用されており、広範な臭い成分を吸着させることができるが、白色乃至着色される衣服用や家具・自動車用の布製品用の布帛として用いることができない。
【0005】
化学吸着消臭剤である炭酸カルシウムや硫酸アルミニウムなどは、酸塩基反応を利用するものであるから、特定の臭い成分に特異的である反面、消臭できる臭い成分が限定されてしまう。
【0006】
また、特許文献1に、吸水性粒状物と、ゼオライトを主体とする非崩壊性の調湿性粒状物とを含むペット用排尿処理材が開示されている。同特許文献には、水溶性銅化合物のような消臭添加剤の他、消臭能を持つ金属塩(例えば塩化亜鉛、硝酸銀、硫酸アルミニウム等)を含有し得る旨記載されている。さらに特許文献2に、増粘剤と研磨剤とを含む液体口腔用組成物が開示されている。同特許文献には、塩化亜鉛等の消臭剤を含有し得る旨記載されている。これら特許文献に記載の塩化亜鉛等の金属塩は水溶性であるため、特許文献1のペット用排尿処理材や特許文献2の液体口腔用組成物は使い捨てであって、消臭性を発現するのに再利用するものではない。
【0007】
活性酸化チタンなどのような光触媒系薬剤などは、光エネルギーが当たることによって臭い成分・細菌・ウイルス・汚れなどを分解するというものであり、光を必要とするために使用範囲が限られてしまう。
【0008】
マスキングやペアリングは、本質的に臭い成分を除去するものではない。また、微生物的消臭手段は、下水処理や工場排水処理など広大な大規模施設で使用されるものであり、日用品等の汎用品に応用し難い。
【0009】
非薬剤系の消臭手段である、紫外線照射やオゾン発生には、大掛かりな装置を必要とするばかりか、大量の紫外線やオゾンの曝露が人体に悪影響を及ぼすため、直接人体に曝露できない。
【0010】
広範な臭い成分に対して使用でき、持続性、反復継続性・再使用性に優れ、着色など製品に必須な特性を阻害せず、液状・ゲル状・固体状でも使用できる、消臭材が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-23163号公報
【特許文献2】特開2019-199466号公報
【特許文献3】国際公開第2016/199905A1号公報
【特許文献4】特開2015-38014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、様々な種類の広範囲の臭い成分に対して受光しなくとも短期時間で臭い成分を無くさせる消臭性に優れ、消臭作用が長期間持続できかつ反復継続使用できのみならず消臭性を回復させて再使用が可能であり、白色乃至淡色であって基材成分の着色を阻害せず、そのままの形状で使用したり水溶液・ゲル・固体賦活剤や繊維等に担持させて使用したりしても消臭できる消臭成分を含有する、簡素な消臭材を提供することを目的とする。また、本発明は、効率的で再現性に優れ歩留まりの良い簡便なその消臭成分の調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するためになされた消臭材は、一種類の金属元素を有する水酸化物層を有し層間に、カチオン、アニオン、及び/又は水分子がインターカレートされており、臭い成分をインターカレートさせ又は吸着させ若しくは分解させる層状複水酸化物を、消臭成分として含有することを特徴とする。
【0014】
この消臭材は、前記金属元素が2価であることが好ましい。
【0015】
この消臭材は、前記金属元素が亜鉛であると一層好ましい。
【0016】
この消臭材は、前記層状複水酸化物が、シモンコライトであると、なお一層好ましい。
【0017】
この消臭材は、前記層状複水酸化物が、六角板状、鱗片状、薄片状、又は不定形状であってもよい。
【0018】
この消臭材は、前記層状複水酸化物が、アスペクト比を100:1~1:1とするものであってもよい。
【0019】
この消臭材は、例えば、前記消臭成分のまま又はそれを固形状担体と液状又はゲル状流動性担体との何れかに含有された消臭剤、前記消臭成分が布帛に付され又は含浸された消臭性布帛・衣類・衣服類・被服類又はそれらの繊維、若しくは前記消臭成分を含有する建材・工業用製品又は日用品というものである。
【0020】
前記の目的を達成するためになされた本発明の消臭成分の調製方法は、一種類の金属の水溶性塩の水溶液と、水酸化アルカリ金属の水溶液とを、混合した後、中和してから、一種類の金属元素を有する水酸化物層を有し層間に、カチオン、アニオン、及び/又は水分子がインターカレートされており臭い成分をインターカレートさせ又は吸着させ若しくは分解させる層状複水酸化物を、結晶化させることを特徴とするというものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の消臭材は、酸性系、アミン系のような塩基系、硫黄系、中性のアルコール乃至アルデヒド系等のような各種生活臭、体臭、工業悪臭などの様々な種類の広範囲の臭い成分に対して、消臭することができる。
【0022】
この消臭材は、受光や人肌程度の加熱などの処理を施さなくても、数分乃至数時間程度の短期時間で臭い成分を低減乃至消滅させることができ、消臭性に優れている。
【0023】
この消臭材は、様々な臭い成分に対しても消臭作用が長期間持続できかつ反復継続使用できるので、経済的で且つ便利である。しかも、この消臭材は、その消臭成分が非水溶性乃至難溶性であることに起因して洗浄例えば水洗により消臭性を回復させて繰返し再使用が可能であるから使い捨てにする必要がなく、環境劣化させることがないので、持続可能な開発目標(エス・ディ・ジーズ:SDGs)にも適応している。
【0024】
この消臭材は、その消臭成分が白色乃至淡色であることに起因して、必要に応じて用いられる基材成分例えば繊維の着色を阻害しないから、被服、カーペット、車両用座席、各種内装などの所望の意匠を損なわない。
【0025】
この消臭材は、その消臭成分を、そのままの粉末乃至粒子形状のまま使用したり水溶液・ゲル・固体賦活剤や繊維等に担持させて使用したりしても、優れた消臭効果を発現するから、汎用的である。
【0026】
この消臭材は、その消臭成分を含有させれば消臭機能を発現するから、簡素な構成とすることができ、日用製品、工業製品、プラントの消臭装置など様々な分野に展開できる。
【0027】
また、本発明の消臭成分の調製方法は、簡便かつ短工程で加熱等の処理をすることなく、効率的で再現性良く、高い歩留まりで、その消臭成分を調製することができ、少量から大量までの任意の量を調製することができ、消臭材の簡便かつ安価な製造に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明を適用する実施例1の消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフである。
【
図2】本発明を適用する実施例2と本発明を適用外の比較例2-1~2-2の消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフである。
【
図3】本発明を適用する実施例3の消臭ゲルである消臭材と本発明を適用外の比較例3の消臭ゲルである消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフである。
【
図4】本発明を適用する実施例4の消臭フィルムである消臭材と本発明を適用外の比較例4の消臭フィルムである消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフである。
【
図5】本発明を適用する実施例5の消臭材と本発明を適用外の比較例5の消臭材による各悪臭成分の再放出率を示すグラフである。
【
図6】本発明を適用する実施例6の消臭材による悪臭成分の消臭後での水溶液中への悪臭成分の溶出率を示すグラフである。
【
図7】本発明を適用する実施例7の消臭材と本発明を適用外の比較例7の消臭材による各悪臭成分の消臭-水洗繰返し回数毎での水溶液中への悪臭成分の溶出率を示すグラフである。
【
図8】本発明を適用する実施例8-1~8-2の厚さ毎の消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフである。
【
図9】本発明を適用する実施例9-1~9-3の形状毎の消臭材による各悪臭成分に対する消臭率を示すグラフ、及び各形状の電子顕微鏡写真である。である。
【
図10】本発明を適用する実施例10-1の消臭材と本発明を適用外の比較例10-1~10-2の消臭材とによる各悪臭成分に対する消臭率の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0030】
本発明の消臭材は、実質的に一種類の金属元素のみを有する層状複水酸化物を、消臭成分として含有するものである。
【0031】
このような層状複水酸化物は、一つの粒子毎に、水酸化物基本層からなる複数の水酸化物層を有している。
【0032】
このような層状複水酸化物は、水酸化物層が正電荷を持つため、主に、層間に負に帯電するアニオンや水分子、及び/又は場合によってはカチオンを挟んでインターカレートしている積層構造である。
【0033】
このような層状複水酸化物は、金属元素が2価の金属、好ましくは亜鉛であるというものである。より具体的には、下記化学式(1)
[M2+
x(OH)(2x-y)][An-
y/n・zH2O] ・・・(1)
(式(1)中、M2+は2価の金属元素のカチオン好ましくは亜鉛イオン、An-はn価(nは1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1)のアニオン好ましくは塩化物イオン、x=1~5好ましくは5、yは1~10好ましくは2、zは1~10、好ましくは1~8、より好ましくは1)で表されるものである。なお、層状複水酸化物は、実質的に前記化学式(1)で表されるものであれば良く、層状複水酸化物中のM2+が実質的に一種類の金属元素のみを有するとは、ppmオーダー例えば最大10,000ppmの2価及び/又は3価の金属イオンからなる亜鉛以外の不純金属イオンを含有し得ることを意味する。
【0034】
より具体的で好ましい層状複水酸化物は、シモンコライト(Simonkollite又はSimonkolleite)である。シモンコライトは、塩基性塩化亜鉛(一水酸化物)、ヒドロキシ塩化亜鉛(一水和物)とも称されるもので、Zn5(OH)8Cl2・zH2O(z=1~8)、例えばZn5(OH)8Cl2・H2Oで表されるものである。このようなシモンコライトは、例えば特許文献3にシモンコライトのような塩化水酸化亜鉛水和物を含む皮膚創傷または皮膚荒れ治療剤が開示され、特許文献4に、Zn5(OH)8Cl2・nH2O(n=1~8)で表される薄片状粉末含有する化粧品に用いられる例が知られているが、消臭作用を有することは、今までに知られていない。
【0035】
この層状複水酸化物は、六角板状、鱗片状、薄片状、又は不定形状であるものが挙げられるが、その形状は特に限定されない。
【0036】
この層状複水酸化物は、六角板状であることが好ましく、六角板状晶の六角形の面の平均わたり径(長さ:L)と六角形の面に垂直方向の平均高さ(厚さ:H)の比であるアスペクト比L:Hが100:1~1:1、好ましくは20:1~1:1、より好ましくは20:1~10:1、より一層好ましくは10±2:1、なお一層好ましくは10:1であると、酸性系、アミン系のような塩基系、硫黄系、中性のような広範な臭い成分に対して、優れた消臭作用を発現できる。
【0037】
この層状複水酸化物は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定された粒子の内、任意の10個の粒子を選定して求めた平均粒径が、数100~数μm、具体的には50~0.5μmであると好ましく、20~1μmであるとより好ましく、10μmであるとなお一層好ましい。平均粒径がこの範囲であると、より幅広い臭気成分(例えば、メチルメルカプタン、トリメチルアミンなど)に対して消臭効果を発揮するという特長がある。
【0038】
この層状複水酸化物が、消臭成分として機能するメカニズムの詳細は、必ずしも明らかでないが、以下のように推察される。
【0039】
層状複水酸化物中の水酸化物層の層間にもともとインターカレートしているアニオンAn-や水分子H2Oなどが、置き換わりまたは置き換わることなく、酸性・塩基性又は中性の臭い成分、特に脂肪酸のような酸性系、アンモニアガスやアルキルアミンのようなアミン系乃至塩基系、脂肪族アルコールのようなアルコール系又は脂肪族アルデヒドのようなアルデヒド系のような中性系の臭い成分を置換または静電相互作用によりインターカレートさせることにより、吸着して、これら臭い成分を消臭するというメカニズムであると推察される。このことは、ほとんどの臭い成分に共通し、層状複水酸化物にインターカレートされた臭い成分は、そのままの状態では層間から離脱することは無いが、消臭材を水洗すると層間から離脱することから、インタカレート-脱インターカレートができる程度の弱い分子間力で層間に留まっているようである。しかし、水洗で全ての臭い成分が離脱して回収されるわけではないから、一部は、層状複水酸化物の金属元素によって分解されているものと推察される。
【0040】
一方、臭い成分の中でも硫黄系臭い成分は、層状複水酸化物で処理して消臭後、水洗しても回収されないことから、層状複水酸化物中の水酸化物層の層間にもともとインターカレートしているアニオンAn-や水分子H2Oなどが、置き換わりまたは置き換わることなく、硫黄系臭い成分をZnS系の化合物へと化学的反応させつつインターカレートされ、または硫黄系に臭い成分を分解又は悪臭を発しないスルホン酸成分に酸化されることによって、消臭されているものと推察される。
【0041】
このような消臭成分である層状複水酸化物は、一種類の金属からなる水溶性塩の水溶液例えば塩化亜鉛水溶液と、水酸化アルカリ金属の水溶液例えば水酸化ナトリウム水溶液との一方を他方に混合例えば滴下又は注ぎ込んだ後、無機酸例えば塩酸で中和してから、層状複水酸化物を結晶化させるように必要に応じて静置例えば0~24時間静置して、結晶を成長させることによって、調製される。
【0042】
なお、その調製方法は、引用文献3中の塩化水酸化亜鉛水和物が、亜鉛塩水溶液およびアルカリ水溶液を使用し、pH調整剤として無機酸を使用して、一定時間熟成させることによって生成される点で、相違している。
【0043】
この層状複水酸化物は、一種類の金属からなる水溶性塩の水溶液に塩化亜鉛水溶液、水酸化アルカリ金属の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を使用することにより六角板状を調製することができ、さらに静置時間を制御することにより0.5μm厚や1.0μm厚などの様々な厚さの結晶に調整されるように調製することができ、反応時の温度を制御するかまたは一種類の金属からなる水溶性の水溶液を塩化亜鉛からヨウ化亜鉛に変更することにより薄片状を調製することができ、不定形状を調製することができる。
【0044】
本発明の消臭材は、消臭成分のまま単体で又は担体以外の添加剤を内添又は外添にて混合又は付して、消臭剤として用いてもよい。その際の添加剤としては、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0045】
本発明の消臭材は、固形状担体例えば樹脂のような賦形剤に含有された、粉末状、ビーズ状、タブレット状、スティック状、シート状、板状、長方体状の固形消臭剤として用いてもよく、液状担体例えば水、アルコール、又はそれら何れかの混合物に含有され必要に応じて前記添加剤を混合していてもよいスプレーのような液状消臭剤として用いてもよい。或いは、消臭材は、消臭成分をκ-カラギーナンのようなゲル状流動性担体に内添又は外添にて混合されて含有され必要に応じて前記添加剤を内添又は外添にて混合していてもよいゲル状消臭剤として用いてもよい。消臭材は、消臭成分と半練り成分とを内添又は外添にて混合されて含有され必要に応じて前記添加剤を内添又は外添にて混合し半練り状にして、歯磨き粉のような練り物状消臭剤として用いてもよい。
【0046】
本発明の消臭材は、消臭成分と必要に応じて前記添加剤や色素・染料・顔料などが紙又は織布・不織布のような布帛に外添により付され、又は含浸によって内添された消臭性紙や消臭性布帛のような消臭材、例えば布地、生地、被服、シーツ、毛布、カーテン、椅子又はソファーの被覆材、絨毯、カーペットなどとして、用いてもよい。
【0047】
本発明の消臭材は、消臭成分と必要に応じて前記添加剤とを各種基材に、内添又は外添にて混合することにより、前記消臭成分を含有する建材、例えば壁材、壁紙、天井材、床材、畳、フローリング、空調設備のフィルターなどとして用いてもよく、前記消臭成分を含有する工業用製品、例えば排気ガスや廃液の処理フィルター又はフィルターユニット、浄水装置の浄水フィルター、自動車・車両の内装材などとして用いてもよく、前記消臭成分を含有する日用品、例えば布団、座布団、クッション、被服消臭用スプレー、部屋消臭用スプレー、歯磨きペースト、口臭予防剤、体臭予防デオドラント、ペット用シートなどの日用品として用いてもよく、シャツ、セーター、肌着などの衣類・衣服類・被服類のような衣類製品、又はそれらの繊維として用いてもよい。
【実施例0048】
以下、本発明を適用する実施例の消臭材と、本発明を適用外の比較例の消臭材とを、示しながら、具体的に説明する。
【0049】
(実施調製例1)
1000mlの反応容器中の40%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液300mlを70℃に設定し、25重量%の塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液400mlを、一気に添加し、70℃に設定して常圧で30分間撹拌した。その後、pH=7.0となるように撹拌しながら35v/v%の塩酸を滴下し層状複水酸化物であるZn5(OH)8Cl2・zH2O(z=1~8)のシモンコライトを合成し結晶を析出させ、室温で6時間静置してシモンコライトの結晶を成長させ、六角板状晶にした。消臭成分であるこの六角板状晶のシモンコライトを、ろ過し残渣を90℃乾燥機中で乾燥することにより、シモンコライト六角板状晶の粉末を得た。この六角板状晶シモンコライトは、六角形の面の平均わたり径(長さ:L)と六角形の面に垂直方向の平均高さ(厚さ:H)の比であるアスペクト比L:Hが10:1で、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定された粒子の内、10個の粒子をランダムに選定して求めた平均粒径の長さLの平均粒径が10μmであった。シモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分(若しくは消臭剤又は消臭材)である実施調製例1の試験試料として用いた。
【0050】
(各種悪臭ガスに対する消臭性の評価試験1:実施例1及び比較例1(対照例))
臭い成分として各種悪臭ガスの消臭効果を評価する消臭性試験方法1は、次の通りである。実施例1として、300mlの別々な密閉性容器内に、(1-i)固形硫化水素を加熱して発生したガスを蒸留水に溶解させることにより調製した硫化水素の溶液を導入し10ppmに悪臭濃度を調整し、(1-ii)メチルメルカプタン標準液を希釈することにより調製したメチルメルカプタンの溶液を導入し20ppmに悪臭濃度を調整し、(1-iii)25~30%のアンモニア水を希釈することにより調製したアンモニアの溶液を導入し150ppmに悪臭濃度を調整し、(1-iv)30%トリメチルアミン溶液を希釈することにより調製したトリメチルアミンの溶液を導入し25ppmに悪臭濃度を調整し、(1-v)99%イソ吉草酸溶液を希釈することにより調製したイソ吉草酸の溶液を導入し40ppmに悪臭濃度を調整し、(1-vi)99%イソブタノールを導入し80ppmに悪臭濃度を調整した。密閉性容器内にそれぞれ、実施調製例1で調製したシモンコライト六角板状晶の消臭成分のみからなる消臭材である試験試料の0.25gずつを、500ml三角フラスコに入れ、ゴム栓で封入した。ゴム栓の隙間からシリンジにて、所定の悪臭濃度となるように各悪臭溶液を0.1~2.0ml注入し、所定時間(評価試験1では2時間)後に、各悪臭濃度を測定した。
比較例1(対照例)として、シモンコライトを用いなかったこと、及び悪臭ガス注入直後に、各悪臭濃度を測定したこと以外は、実施例1と同様にして悪臭濃度を測定した。
各実施例1の2時間後と比較例1(対照例)とについて、アズワン株式会社製の測定検知管:(1-i)硫化水素4LK、4LT、(1-ii)メチルメルカプタン71、(1-iii、iv)アミン類180、(1-v)酢酸81、(1-vi)イソブチルアルコール116を使用して、各検知管を検知管式気体測定器を使用して臭気濃度測定を実施した。各悪臭ガス毎に、比較例1(対照例)の悪臭ガス濃度に対する、各実施例1の2時間後の悪臭ガス濃度の減少率を、消臭率として算出した。その結果をまとめて
図1に示す。
【0051】
図1から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライトを消臭成分とした消臭材は、硫黄系臭い成分、窒素系臭い成分、酸性系臭い成分、アルコール系臭い成分に対して、幅広い消臭作用があることが分かった。
【0052】
(比較調製例2-1)
株式会社クラレ製の製品名クラレコールKWである活性炭を、比較調製例2-1の消臭成分(消臭剤・消臭材)を比較試験試料1-1として用いた。
【0053】
(比較調製例2-2)
アミン系臭い成分に特異的に消臭効果を示す東亞合成株式会社製の消臭剤である製品名ケスモンNS-10(有効成分:リン酸ジルコニウム)を、比較調製例2-2の消臭成分(消臭剤・消臭材)を比較試験試料2-2として用いた。
【0054】
(各種悪臭ガスに対する消臭性試験2:実施例2、比較例2-1及び2-2並びに対照例)
本発明を適用するシモンコライトを消臭成分とした消臭材を用いて、実施例1における臭い成分として硫化水素、メチルメルカプタン、イソ吉草酸を用いたものを、実施例2とし、消臭性試験1と同様に評価した。一方、比較調製例1-1の比較試験試料1-1である活性炭からなる消臭材、比較調製例1-2の比較試験試料1-2であるケスモンからなる消臭材を用いて、比較例2-1及び2-2とし、消臭性試験1と同様に評価した。なお実施例1で用いたのと同様に、対照例について試験した。その消臭結果をまとめて
図2に示す。
【0055】
図2から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライトを消臭成分とした実施例2の消臭材は、硫黄系臭い成分、窒素系臭い成分、酸性系臭い成分に対して、比較例2-1の活性炭と同等以上の消臭効果を示した。一方、ケスモンを試験試料2とする比較例2-2では、硫黄系臭い成分に対して全く効果が無いのに対して、実施例2では、ほぼ完全に消臭効果を示した。また比較例2-2では、酸系臭い成分に対して完全とは言えないもののかなりの消臭効果を示したのに対して、実施例2では、完全に消臭効果を示した。
【0056】
(実施調製例3)
実施調製例1で得たシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分として使用した。50mlビーカー(i)に消臭成分0.25g、アデカトールLB(ADEKA株式会社製)2.0g、エタノールを2.5ml加え、50mlビーカー(ii)に塩化カリウム0.1g、ジエチレングリコール1.5g、蒸留水13.8mlを加え、50mlビーカー(iii)にκ-カラギーナン0.8g、蒸留水30mlを加え、それぞれ70℃乾燥機に静置して、各原料を溶解させた。50mlビーカー(iii)を70℃、400rpmの速度で撹拌しながら、50mlビーカー(i)(ii)の溶液をそれぞれ(iii)に加えて、シモンコライト六角板状晶を含む消臭ゲルである消臭材を、実施調製例3の試験試料として用いた。
【0057】
(比較調製例3)
株式会社クラレ製の製品名クラレコールKWである活性炭を使用したこと以外は、実施調製例3の消臭ゲルである消臭材と同様にして、活性炭を含む消臭ゲルである消臭材を、比較調製例3の試験試料として用いた。
【0058】
(各種悪臭ガスに対するケル形状での消臭性の評価試験3:実施例3、比較例3並びに対照例)
本発明を適用するシモンコライトを消臭成分とした消臭ゲルである消臭材50g(うち消臭成分0.25g)を用いて、実施例1における臭い成分として硫化水素、アンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸を用いたものを、実施例3とし、消臭性試験1と同様に評価した。一方、比較調製例3の比較試験試料3である活性炭を含む消臭ゲルである消臭材を用いて、比較例3とし、消臭性試験1と同様に評価した。なお実施例1で用いたのと同様に、対照例について試験した。その消臭結果をまとめて
図3に示す。
【0059】
図3から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライト六角板状晶を含む消臭ゲルである消臭材の実施例3では、硫化水素、アンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸の何れも、活性炭を含む消臭ゲルである消臭材の比較例3よりも、消臭効果が高かった。このことは、活性炭の高い表面積を有する活性炭がゲルで覆われ十分に消臭作用を発現できなかったのに対し、実施例3では、広い表面積よりもむしろ層状複水酸化物の層間に臭い成分がインターカレートしたり硫化物となってトラップしたりすることにより、消臭効果を示したためと推察される。
【0060】
(実施調製例4)
実施調製例1で得たシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分を使用した。ポリエチレン樹脂7.5gに実施調製例1で得たシモンコライト六角板状晶である消臭成分0.75gを練り込み、プレス機でプレスして100μm厚の消臭フィルムである消臭材を、実施調製例4の試験試料として用いた。
【0061】
(比較調製例4)
東亞合成株式会社製の消臭剤であるケスモンNS-10を使用したこと以外は、実施調製例4の消臭フィルムである消臭材と同様にして、ケスモンを含む消臭フィルムである消臭材を、比較調製例4の試験試料として用いた。なお、活性炭は黒くて着色できないことから消臭フィルムである消臭材の用途の必要性が低いため、比較例としなかった。
【0062】
(各種悪臭ガスに対するフィルム形状での消臭性の評価試験4:実施例4、比較例4並びに対照例)
本発明を適用するシモンコライトを消臭成分とした消臭フィルムである消臭材1.0g(うち消臭成分0.01g)を用いて、実施例1における臭い成分として硫化水素、メチルメルカプタンを用いたものを、実施例4とし、消臭性試験1と同様に評価した。一方、比較調製例4の比較試験試料4であるケスモンを含む消臭フィルムである消臭材を用いて、比較例4とし、消臭性試験1と同様に評価した。なお実施例1で用いたのと同様に、対照例について試験した。その消臭結果をまとめて
図4に示す。
【0063】
図4から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライト六角板状晶を含む消臭フィルムである消臭材の実施例4では、硫化水素、メチルメルカプタンの何れも、消臭効果が高かったのに対し、ケスモンを含む消臭フィルムである消臭材の比較例3では消臭作用が全くなかった。従って、実施例4では、比較例4のような無機系消臭成分を含む消臭材よりも消臭効果が極めて高かった。
【0064】
(実施調製例5)
実施調製例1で得たシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例5の試験試料として用いた。
【0065】
(比較調製例5)
株式会社クラレ製の活性炭である商品名クラレコールKWのみからなる消臭成分である消臭材を、比較調製例5の試験試料として用いた。
【0066】
(各種悪臭ガスに対する臭い成分再放出性の評価試験5:実施例5、比較例5並びに対照例)
本発明を適用するシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分である消臭材1.0gを用いて、実施例1における臭い成分に代えてアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、イソブタノールを用いたものを、実施例5とし、消臭性試験1と同様に消臭させた後、この消臭材を500ml容器に入れ、栓をして70℃の乾燥機中に静置し、容器内のガス濃度を消臭性試験1と同様にして測定することにより、臭い成分の再放出率を算出した。一方、比較調製例5の比較試験試料5であるケスモンである消臭材を用いて、比較例5とし、実施例5と同様に評価した。なお実施例1で用いたのと同様に、対照例について試験した。その消臭結果をまとめて
図5に示す。
【0067】
図5から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライト六角板状晶である消臭成分からなる消臭材の実施例5では、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、イソブタノールの何れも、臭い成分の再放出率が低いことから、シモンコライト六角板状晶である消臭成分は加熱しても吸着した臭い成分乃至臭い成分の分解した二次臭い成分を放出が殆ど認められなかった。一方、比較例5のような活性炭である消臭成分は加熱によって吸着した臭い成分を相当量放出することが分かった。
【0068】
(実施調製例6)
実施調製例1で得たシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例6の試験試料として用いた。
【0069】
(各種悪臭ガスに対する臭い成分の水洗放出性の評価試験6:実施例6、並びに対照例)
本発明を適用するシモンコライト六角板状晶のみからなる消臭成分である消臭材1.0gを用いて、実施例1における臭い成分に代えてアンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸、イソブタノールを用いたものを、実施例6とし、消臭性試験1と同様に消臭させた後、この消臭材を30mlの水により400rpmで24時間撹拌し、パックテスト(型式:WAK-NH4(C)-4、共立理科学研究所製)を使用して、溶液を採取して10分後の比色測定を実施することにより、及び液体検知管(検知管:溶存硫化物211H、GASTEC社製)を使用して、検知管式気体測定器を使用して臭気濃度測定を実施したことにより臭気成分の溶液中への溶出濃度を測定し、水溶液中への溶出率を算出した。なお実施例1で用いたのと同様に、対照例について試験した。その溶出結果をまとめて
図6に示す。
【0070】
図6から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライト六角板状晶である消臭成分からなる消臭材の実施例6では、アンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸、イソブタノールの何れも、臭い成分が水洗で高い溶出率で溶出された。
【0071】
(各種悪臭ガスに対する臭い成分の水洗・消臭の繰返しの評価試験7:実施例7、並びに対照例)
実施例6の臭い成分に代えて、硫化水素、アンモニアを用いたこと、及び5回消臭と水洗との繰返し後の溶出率を測定したこと以外は、実施例6と同様に試験を行った。その結果を
図7に示す。
【0072】
図7から明らかな通り、消臭・水洗を繰り返しても消臭性の低下が認められなかったことから、水洗するだけで、繰返し利用が可能となることが示された。
【0073】
(実施調製例8-1)
1000mlの反応容器中の40%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液300mlを70℃に設定し25重量%の塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液400mlを、一気に添加し、70℃に設定して常圧で30分間撹拌した。その後、pH=7.0となるように撹拌しながら35v/v%の塩酸を滴下して静置時間を1時間として熟成し製造したシモンコライト六角板状晶(膜厚0.5μm;アスペクト比20:1)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例8-1の試験試料として用いた。
【0074】
(実施調製例8-2)
1000mlの反応容器中の40%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液300mlを70℃に設定し25重量%の塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液400mlを、一気に添加し、70℃に設定して常圧で30分間撹拌した。その後、pH=7.0となるように撹拌しながら35v/v%の塩酸を滴下して静置時間を6時間として熟成し製造したシモンコライト六角板状晶(膜厚1μm;アスペクト比10:1)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例8-2の試験試料として用いた。
【0075】
(各種悪臭ガスに対する消臭成分のシモンコライト六角板状晶の厚さ(膜厚)毎の消臭性の評価試験8:実施例8及び対照例)
実施調製例8-1及び8-2の試験試料を用い、実施例1における臭い成分に代えてアンモニア、硫化水素、イソ吉草酸を用いたものを、実施例8とし、実施例1と同様にして消臭性の評価試験を行った。その結果を
図8に示す。
【0076】
図8から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライト六角板状晶である消臭成分からなる消臭材の実施例8では、シモンコライト六角板状晶の厚さ・アスペクト比に拘らず、高い消臭性を示した。
【0077】
(実施調製例9-1)
実施調製例8-2で得たシモンコライト六角板状晶(膜厚1μm;アスペクト比10:1)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例9-1の試験試料として用いた。
【0078】
(実施調製例9-2)
1000mlの反応容器中の40%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液300mlを25℃に設定し25重量%のヨウ化亜鉛(ZnI2)水溶液400mlを、一気に添加し、25℃に設定して常圧で30分間撹拌した。その後、pH=7.0となるように撹拌しながら35v/v%の塩酸を滴下して静置時間を6時間として熟成し製造したシモンコライト(不定形状晶)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例9-2の試験試料として用いた。
【0079】
(実施調製例9-3)
1000mlの反応容器中の40%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液300mlを25℃に設定し25重量%の塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液400mlを、一気に添加し、25℃に設定して常圧で30分間撹拌した。その後、pH=7.0となるように撹拌しながら35v/v%の塩酸を滴下して静置時間を6時間として熟成し製造したシモンコライト(薄片状晶)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例9-3の試験試料として用いた。
【0080】
(各種悪臭ガスに対する消臭成分の結晶形状毎の消臭性の評価試験9:実施例9)
実施調製例8-1、8-2及び8-3の試験試料を用い、実施例1における臭い成分に代えてアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、イソ吉草酸、イソブタノールを用いたものを、実施例9とし、実施例1と同様にして消臭性の評価試験を行った。その結果を
図9に示す。
図9に併せて、各結晶系の電子顕微鏡写真を示す。
【0081】
図9から明らかな通り、本発明を適用する様々な結晶形状のシモンコライトである消臭成分からなる消臭材の実施例9では、シモンコライトの結晶形状に拘らず、同様に高い消臭性を示した。
【0082】
(実施調製例10)
実施調製例8-2で得たシモンコライト六角板状晶(膜厚1μm;アスペクト比10:1)のみからなる消臭成分である消臭材を、実施調製例10の試験試料として用いた。
【0083】
(比較調製例10-1)
株式会社クラレ製の活性炭である商品名クラレコールKWのみからなる消臭成分である消臭材を、比較調製例10-1の試験試料として用いた。
【0084】
(比較調製例10-2)
東亞合成株式会社製の消臭剤であるケスモンNS-10のみからなる消臭成分である消臭材を、比較調製例10-2の試験試料として用いた。
【0085】
(各種悪臭ガスに対する消臭成分の消臭性の経時的な評価試験10:実施例10及び比較例10)
実施調製例10並びに調製比較例10-1及び10-2の試験試料を用い、実施例1における臭い成分に代えて硫化水素、メチルメルカプタン、イソ吉草酸、イソブタノールを用いたものを、実施例10、及び比較例10とし、実施例1と同様にして消臭性の評価試験を行った。その結果を
図10に示す。
【0086】
図10から明らかな通り、本発明を適用するシモンコライトである消臭成分からなる消臭材の実施例10では、硫化水素やイソ吉草酸では短時間でも、またメチルメルカプタンやイソブタノールでは時間と共に、高い消臭性を示し、活性炭の比較例10-1と実質的にほぼ遜色がなかった。一方、ケスモンの比較例10-1は、これらよりも劣っているものがあった。
本発明の消臭材は、層状複水酸化物からなる消臭成分が含有された消臭剤、その消臭成分が布帛に付され又は含浸された消臭性布帛、その消臭成分を含有する建材・工業用製品又は日用品として、用いられる。本発明の消臭成分の調製方法は、これら消臭剤の原料となる消臭成分を製造するのに有用である。