(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019097
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】地絡検出回路、および地絡検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20220120BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20220120BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20220120BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20220120BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20220120BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/16 A
G01R31/50
G01R31/58
G01R31/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122682
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】田中 源紀
【テーマコード(参考)】
2G014
5G004
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AB29
2G014AB33
2G014AC18
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA01
5G004CA02
(57)【要約】
【課題】発生電圧が異なる複数の直流電圧装置が混在する場合でも正側供給線の地絡と負側供給線の地絡とを誤動作なく区別して報知する。
【解決手段】直流電圧装置210と負荷220とを接続する正側供給線231の地絡、負側供給線232の地絡を個別に検出する地絡検出回路110であって、正側供給線231を基準電位とする第一カレントミラー回路130と、負側供給線232を基準電位とする第二カレントミラー回路140と、両カレントミラー回路が共有する参照電流線150と、両カレントミラー回路が共有するコピー電流線160と、二つのカレントミラー回路の間のコピー電流線160に設けられる接地部161と、二つのカレントミラー回路の間の参照電流線150に介在的に接続され、参照電流を決定する参照電流回路と、参照電流に基づき、負側供給線232に対する接地部161の接地電位を決定する接地電位回路と、を備える地絡検出回路110。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧装置と負荷とを接続する正側供給線、および負側供給線のいずれか一方の地絡を個別に検出させるための地絡検出回路であって、
前記正側供給線に接続され、前記正側供給線を基準電位とする第一カレントミラー回路と、
前記負側供給線に接続され、前記負側供給線を基準電位とする第二カレントミラー回路と、
前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有する参照電流が流れる参照電流線と、
前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有するコピー電流が流れるコピー電流線と、
前記コピー電流線に設けられる接地部と、
前記参照電流に基づき、前記負側供給線に対する前記接地部の接地電位を決定する接地電位回路と、
を備える地絡検出回路。
【請求項2】
前記接地電位回路は、前記参照電流線に分岐的に接続され、前記コピー電流線に介在的に接続される電位確定用トランジスタを備え、
前記電位確定用トランジスタのベースまたはゲートは、前記参照電流線に接続され、エミッタまたはソースは、前記コピー電流線の前記接地部側に接続され、コレクタまたはドレインは、前記コピー電流線の前記第一カレントミラー回路側または前記第二カレントミラー回路側に接続される
請求項1に記載の地絡検出回路。
【請求項3】
前記接地電位回路は、
前記電位確定用トランジスタのベースまたはゲートと前記第二カレントミラー回路との間の前記参照電流線に介在的に接続される定電圧回路を備える
請求項2に記載の地絡検出回路。
【請求項4】
前記定電圧回路は、ツェナーダイオードを備える
請求項3に記載の地絡検出回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の地絡検出回路と、
前記第一カレントミラー回路と前記接地部との間の電流を検出する第一検出素子と、
前記第二カレントミラー回路と前記接地部との間の電流を検出する第二検出素子と、
前記第一検出素子、および前記第二検出素子が検出した電流の変化をそれぞれ報知する第一報知手段、および第二報知手段と、
を備える地絡検出装置。
【請求項6】
前記第一検出素子、および前記第二検出素子は、電流に基づき発光する発光素子であり、
前記第一報知手段、および第二報知手段は、前記第一検出素子、および前記第二検出素子の発光をそれぞれ検出する第一光検出素子、および第二光検出素子を備える
請求項5に記載の地絡検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡検出回路、および地絡検出装置に関し、特に、負荷に対して直流の電力を供給する電力供給線における地絡を正側、負側のそれぞれを区別して検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流の電力源から負荷までの間に接続される二本の電力供給線における地絡をそれぞれ個別に検出させるための地絡検出回路が特許文献1において提案されている。特許文献1に記載される地絡検出回路は、負荷に電力が供給されているか否かについても検出できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、電圧の異なる複数の電力供給源と、これらそれぞれに接続される負荷が存在し、電力供給線の一方の電位が共通する場合、それぞれに設けられた地絡検出回路が誤動作することを発明者は見出した。
【0005】
本発明は、発明者の知見に基づきなされたものであり、一方の電位が共通する複数の電力供給源、および負荷が存在する場合でも誤動作を抑制できる地絡検出回路、および地絡検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つである地絡検出回路は、直流電圧装置と負荷とを接続する正側供給線、および負側供給線のいずれか一方の地絡を個別に検出させるための地絡検出回路であって、前記正側供給線に接続され、前記正側供給線を基準電位とする第一カレントミラー回路と、前記負側供給線に接続され、前記負側供給線を基準電位とする第二カレントミラー回路と、前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有する参照電流が流れる参照電流線と、前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有するコピー電流が流れるコピー電流線と、前記コピー電流線に設けられる接地部と、前記参照電流線に介在的に接続され、前記参照電流に基づき、前記負側供給線に対する前記接地部の接地電位を決定する接地電位回路と、を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の他の1つである地絡検出装置は、直流電圧装置と負荷とを接続する正側供給線、および負側供給線のいずれか一方の地絡を個別に検出させるための地絡検出回路であって、前記正側供給線に接続され、前記正側供給線を基準電位とする第一カレントミラー回路と、前記負側供給線に接続され、前記負側供給線を基準電位とする第二カレントミラー回路と、前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有する参照電流が流れる参照電流線と、前記第一カレントミラー回路と前記第二カレントミラー回路とが共有するコピー電流が流れるコピー電流線と、前記コピー電流線に設けられる接地部と、前記参照電流線に介在的に接続され、前記参照電流に基づき、前記負側供給線に対する前記接地部の接地電位を決定する接地電位回路と、前記第一カレントミラー回路と前記接地部との間の電流を検出する第一検出素子と、前記第二カレントミラー回路と前記接地部との間の電流を検出する第二検出素子と、前記第一検出素子、および前記第二検出素子が検出した電流の変化をそれぞれ報知する第一報知手段、および第二報知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本地絡検出回路によれば、地絡を検出するための電位を任意に設定できるため、他の電力供給源による電位と地絡を検出するための電位とが類似することを回避でき、地絡検出回路の誤動作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る地絡検出回路を備えた地絡検出装置を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る正側供給線に地絡が発生した場合の地絡検出装置を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る負側供給線に地絡が発生した場合の地絡検出装置を示す図である。
【
図4】
図4は、接地電位回路の取付位置のバリエーション1を示す図である。
【
図5】
図5は、接地電位回路の取付位置のバリエーション2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る地絡検出回路、および地絡検出装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、実施の形態における地絡検出回路を備えた地絡検出装置を示す図である。なお、本図には、地絡検出装置100と併せて、直流電圧装置210、および負荷220も示されている。
【0012】
直流電圧装置210は、正側端子211と負側端子212との間に、直流電圧を発生させる電源である。直流電圧装置210が発生させる直流電圧Vは、特に限定されるものではなく、例えばDC12V、DC24V、DC48V、DC/DCコンバータによって昇圧されたDC280V等を例示できる。
【0013】
負荷220は、直流電圧装置210の正側端子211に接続される正側供給線231、および負側端子212に接続される負側供給線232を介して接続される負荷であり、例えば、モーターや電気機器等である。負側供給線232は、グランド(GND)に接続されている。グランドに接続されるとは、直流電圧装置210、負荷220の動作の基準となる電位のことであり、接地電位やフレームグランドとは異なる電位である。本実施の形態の場合、アース線162の接続先は機器のフレームグランドであり、機器はアース(大地)には接続されていない。
【0014】
地絡検出装置100は、正側供給線231、および負側供給線232のいずれか一方における地絡を区別して検出しユーザーなどに報知する装置であり、地絡検出回路110と、第一検出素子101、第二検出素子102、第一報知手段103、第二報知手段104と、を備えている。
【0015】
地絡検出回路110は、正側供給線231の地絡、負側供給線232の地絡に対応して、電流の変化する箇所が異なることにより、個別に地絡を検出させるための回路であって、第一カレントミラー回路130と、第二カレントミラー回路140と、参照電流線150と、コピー電流線160と、接地部161と、接地電位回路と、を備えている。
【0016】
カレントミラー回路(以下、第一カレントミラー回路130、および第二カレントミラー回路140を総称して「カレントミラー回路」と記載する場合がある。)は、供給された電力で増幅や整流などの動作を行う能動素子を用い、参照電流線150に流れる参照電流をコピーして参照電流と同じ値のコピー電流をコピー電流線160に流すことができる回路である。
【0017】
地絡検出回路110が備えるカレントミラー回路は、特に限定されるものではなく、電流-電圧変換器、電圧-電流変換器をカスケード接続したもの、オペアンプを利用したものなどを例示することができる。本実施の形態の場合、カレントミラー回路は、トランジスタを用いて構成される。トランジスタの種類は、FET(Field effect transistor)など特に限定されるものではないが、本実施の形態においてはバイポーラトランジスタを用いて説明する。
【0018】
第一カレントミラー回路130は、正側供給線231に接続され、正側供給線231を基準電位とするカレントミラー回路である。本実施の形態の場合、第一カレントミラー回路130は、PNPタイプのバイポーラトランジスタであって相互に同一仕様の第一トランジスタ131と、第二トランジスタ132と、を備えている。第一トランジスタ131と第二トランジスタ132とは、相互にベースが接続されている。なお、同一仕様とは、例えば同じ型番の素子という意味などであり、素子間の公差や誤差などが含まれる。
【0019】
第一トランジスタ131のエミッタは、正側供給線231に接続され、コレクタは、負側供給線232(第二カレントミラー回路140)に接続されている。第一トランジスタ131は、コレクタとベースとが接続されている。第一トランジスタ131のエミッタ-コレクタ間には参照側の電流が流れる。
【0020】
第二トランジスタ132のエミッタは、正側供給線231に接続され、コレクタは、負側供給線232(第二カレントミラー回路140)に接続されている。第二トランジスタ132のベースは第一トランジスタ131のコレクタと接続されている。第二トランジスタ132は、コレクタとベースとが接続されていない。第二トランジスタ132のエミッタ-コレクタ間にはコピー側の電流が流れる。
【0021】
なお、明細書、および特許請求の範囲に記載する「接続」とは、電気的な接続を意味し、「AはBに接続される」、「AとBとが接続される」などはAからB、またはBからAに電流が流れるように接続することを意味する。AとBとの間に素子Cなどが単数、または複数介在する場合や、AとBとの間に電流の分岐や合流する箇所があったとしてもAとBとの間に電流が流れる場合は、「接続」に含まれる。また、「接続」には電流が流れない場合などにおいて、AとBとが同電位になるような接続も含まれる。また、「AとBとの間にCが介在的に接続される」とは、AとCとが接続され、CとBとが接続される状態、つまりCを介してAとBとが接続される状態を意味する。「AとBとの間にCが分岐的に接続される」とは、AとBとはCを介することなく接続され、Cは、AとBとの間に流れる電流から分岐する、またはAとBとの間に流れる電流に合流する電流が流れるように接続する状態を意味する。「D線にCが分岐的に接続される」とは、D線はCによって分断されることなく、D線に流れる電流から分岐する、またはD線に流れる電流に合流する電流が流れるようにCを接続する状態を意味する。
【0022】
第二カレントミラー回路140は、負側供給線232に接続され、負側供給線232を基準電位とするカレントミラー回路である。本実施の形態の場合、第二カレントミラー回路140は、NPNタイプのバイポーラトランジスタであって同一性能の第三トランジスタ141と、第四トランジスタ142と、を備えている。第三トランジスタ141と第四トランジスタ142とは、相互にベースが接続されている。
【0023】
第三トランジスタ141のエミッタは、負側供給線232に接続され、コレクタは、正側供給線231(第一カレントミラー回路130)に接続されている。第三トランジスタ141は、コレクタとベースとが接続されている。第三トランジスタ141のエミッタ-コレクタ間には参照側の電流が流れる。
【0024】
第四トランジスタ142のエミッタは、負側供給線232に接続され、コレクタは、正側供給線231(第一カレントミラー回路130)に接続されている。第四トランジスタ142のベースは第三トランジスタ141のコレクタと接続されている。第四トランジスタ142は、コレクタとベースとが接続されていない。第四トランジスタ142のエミッタ-コレクタ間にはコピー側の電流が流れる。
【0025】
なお、カレントミラー回路は、トランジスタのそれぞれの性能的バラツキを吸収する抵抗などの素子を備えても構わない。また、トランジスタとしてFETを用いる場合、ベースをゲートと、エミッタをソースと、コレクタをドレインと読み替えれば良い。
【0026】
参照電流線150は、第一カレントミラー回路130と第二カレントミラー回路140とが共有する参照電流が流れる電線、配線パターンなどである。本実施の形態の場合、参照電流線150は、第一カレントミラー回路130の第一トランジスタ131のコレクタと第二カレントミラー回路140の第三トランジスタ141のコレクタとを接続している。
【0027】
参照電流線150に流れる参照電流の電流値は、直流電圧装置210が発生させる直流電圧と、参照電流線150に接続される、第一トランジスタ131、第三トランジスタ141、その他の素子による合成抵抗値に基づき決定される。なお、参照電流線150に、定電流素子、または回路を介在的に接続し、参照電流を決定しても構わない。定電流素子は、一定電圧以上の電圧が印加されたときに、参照電流を一定値(例えば、5mA)に維持する回路(素子を含む)である。定電流素子としては、定電流ダイオード等を例示することができる。
【0028】
コピー電流線160は、第一カレントミラー回路130と第二カレントミラー回路140とが共有するコピー電流が流れる電線、配線パターンなどである。本実施の形態の場合、コピー電流線160は、第一カレントミラー回路130の第二トランジスタ132のコレクタと第二カレントミラー回路140の第四トランジスタ142のコレクタとを接続している。
【0029】
コピー電流線160に流れるコピー電流の電流値は、地絡が発生していない通常の状態においては、第一カレントミラー回路130、および第二カレントミラー回路140の作用により参照電流線150と同じ値である。
【0030】
接地部161は、第一カレントミラー回路130と第二カレントミラー回路140との間のコピー電流線160に設けられる端子などである。接地部161は、接地部161の電位が接地電位になるようにいわゆるアース線162に接続される。
【0031】
接地電位回路は、参照電流線150に流れる参照電流に基づき、グランドに接続された負側供給線232に対する接地部161の接地電位を決定する回路である。本実施の形態の場合、接地電位回路は、第一カレントミラー回路130と第二カレントミラー回路140との間の参照電流線150に分岐的に接続され、第一カレントミラー回路130と第二カレントミラー回路140との間のコピー電流線160に介在的に接続される電位確定用トランジスタ171を備える。
【0032】
本実施の形態の場合、電位確定用トランジスタ171は、NPN型のバイポーラトランジスタであり、ベースは、参照電流線150に接続され、エミッタは、コピー電流線160の接地部161側に接続され、コレクタは、コピー電流線160の第一カレントミラー回路130側または第二カレントミラー回路140側に接続されている。
【0033】
なお、電位確定用トランジスタとしてFETを用いる場合、ベースをゲートと、エミッタをソースと、コレクタをドレインと読み替えれば良い。
【0034】
また、接地電位回路は、電位確定用トランジスタ171のベースと第二カレントミラー回路140との間の参照電流線150に介在的に接続される定電圧回路172を備える。定電圧回路172は、温度や直流電圧装置210が供給する電圧が変化しても一定の電圧を供給する回路であれば、特に限定されるものではなく、ツェナーダイオード、三端子レギュレータなどを備える回路を例示できる。本実施の形態の場合、定電圧回路172は、ツェナーダイオードを備えている。
【0035】
定電圧回路172によれば、接地部161の電位である接地電位を任意に設定することができる。従って、例えば負側供給線232の電位が共通となる他の直流電圧装置が発生させる電位よりも低い電位に各地絡検出装置100における接地部161の電位を設定することで、地絡検出装置100の誤動作を抑制することができる。具体的には、発生させる電圧がDC12V、DC24V、DC48Vの複数の直流電圧装置210が混在し、負側供給線232が共通の場合、それぞれの直流電圧装置210における各地絡検出装置100の接地部161の接地電位が4~8V程度かつ各地絡検出装置100において同電位になるような定電圧回路172を設ければ、各地絡検出装置100の誤動作を抑制することができる。
【0036】
本実施の形態の場合、逆電圧防止回路180を備えている。逆電圧防止回路180は、地絡が発生した場合、例えば電位確定用トランジスタ171などの接地電位回路が備える素子やカレントミラー回路が備える素子に逆電力が印加され、故障などの不具合の発生を抑制するために設けられる。逆電圧防止回路180としては、例えば本実施の形態のように、接地部161と電位確定用トランジスタ171との間のコピー電流線160にアノードを電位確定用トランジスタ171側、カソードを接地部161側に向けて介在的に接続された整流ダイオードが逆電圧防止回路180として機能している。
【0037】
第一検出素子101は、第一カレントミラー回路130と接地部161との間のコピー電流線160に流れる電流を検出する素子である。第二検出素子102は、第二カレントミラー回路140と接地部161との間のコピー電流線160に流れる電流を検出する素子である。
【0038】
検出素子(以下、第一検出素子101、および第二検出素子102を総称して「検出素子」と記載する場合がある。)は、コピー電流線160に流れる電流を検出する素子である。検出素子は、コピー電流線160に流れる電流の変化を検出できるものであれば、特に限定されるものではなく、直流電流計、コピー電流線160に流れる電流の変化を取得するコイルなどでも構わない。本実施の形態の場合、検出素子は、発光素子(発光ダイオード)である。
【0039】
第一報知手段103は、第一検出素子101が検出した電流の変化を報知する装置である。第二報知手段104は、第二検出素子102が検出した電流の変化を報知する装置である。
【0040】
報知手段(以下、第一報知手段103、および第二報知手段104を総称して「報知手段」と記載する場合がある。)は、検出素子が検出した電流の変化を人や他の機器に情報として報知できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、検出素子が発光素子の場合、発光の有無によって人に電流の有無を情報として報知できるため、検出素子は報知手段としての機能も備えている。本実施の形態の場合、報知手段はフォトダイオードである。また、第一検出素子101と第一報知手段103とはパッケージ化されたいわゆるフォトカップラである。同様に第二検出素子102と第二報知手段104とはパッケージ化されたいわゆるフォトカップラである。
【0041】
なお、報知手段は、図示されていない報知回路や、通信装置などを備え、コンピュータ等の他の機器に情報を出力しても構わない。
【0042】
次に、以上のように構成された本実施の形態における地絡検出回路110、および地絡検出装置100の動作について説明する。
【0043】
(定常時)
地絡が発生していない定常時の動作について説明する。直流電圧装置210が発生する直流電圧が負荷220に印加され、かつ、正側供給線231、および負側供給線232のいずれにおいても地絡が発生していない場合が定常時である。定常時において地絡検出回路110の参照電流線150には、正側供給線231から負側供給線232に向かって一定の参照電流が流れている。参照電流の値は、特に限定されるものではないが、例えば、参照電流の値が5mAとなるように、参照電流線150に接続される複数の素子の抵抗値を調整すればよく、参照電流を所定値にするための抵抗を参照電流線150に介在的に接続し抵抗値を調整しても構わない。
【0044】
所定値の参照電流が参照電流線150に流れると、第一カレントミラー回路130、および第二カレントミラー回路140に基づきコピー電流線160にコピー電流が流れる。コピー電流の値は参照電流と同じである。検出素子は、所定値のコピー電流を検出し、報知手段は検出素子の検出状態を報知する。なお、定常時においては、コピー電流の電流値は一定であるため、検出素子はコピー電流の変化を検出しない場合があるが、本実施の形態の場合、検出素子は電流に基づいて光を照射する発光素子であるため、第一検出素子101、および第二検出素子102は、コピー電流に基づき発光している。また、第一報知手段、および第二報知手段は所定値でコピー電流が流れていることを示す情報を報知している。これにより定常時であることを把握することもできる。
【0045】
なお、定常時においては、直流電圧装置210は、電位的に接地部161に接続されるアースに対し、地絡検出装置100の回路インピーダンスが高くフローティング状態であると見なせるので、コピー電流線160を流れるコピー電流がアースに流れることはない。
【0046】
(正側供給線地絡時)
次に、正側供給線231に地絡が発生した場合について、
図2を用いて説明する。
【0047】
正側供給線231において地絡が発生した場合、第一カレントミラー回路130の第二トランジスタ132のエミッタ側の電位とコピー電流線160の接地部161の電位が同電位(接地電位)となる。従って、コピー電流線160の第一カレントミラー回路130と接地部161と間に電流が流れなくなる。これにより、発光素子である第一検出素子101は、発光しなくなり、フォトダイオードである第一報知手段103は、電流が流れなくなった旨、つまり正側供給線231が地絡した旨の情報を報知する。
【0048】
一方、負側供給線232に対する接地部161の接地電位は、接地電位回路の定電圧回路172により設定された電位が維持され、また負側供給線232が共通する他の直流電圧装置が発生する電圧とも異なるため、接地部161から負側供給線232の間のコピー電流線160には電流の流れが維持される。その結果、発光素子である第二検出素子102の発光は維持され、フォトダイオードである第二報知手段104は、電流に変化がない旨、つまり負側供給線232に地絡は発生していない旨の情報を報知する。
【0049】
(負側供給線地絡時)
次に、負側供給線232に地絡が発生した場合について、
図3を用いて説明する。
【0050】
負側供給線232において地絡が発生した場合、第二カレントミラー回路140の第四トランジスタ142のエミッタ側の電位とコピー電流線160の接地部161の電位が同電位(接地電位)となる。従って、コピー電流線160の第二カレントミラー回路140と接地部161と間に電流が流れなくなる。これにより、発光素子である第二検出素子102は、発光しなくなり、フォトダイオードである第二報知手段104は、電流が流れなくなった旨、つまり負側供給線232が地絡した旨の情報を報知する。
【0051】
一方、正側供給線231に対する接地部161の接地電位は、接地電位回路の定電圧回路172により設定された電位が維持されるため、接地部161から正側供給線231の間のコピー電流線160には電流の流れが維持される。その結果、発光素子である第一検出素子101の発光は維持され、フォトダイオードである第一報知手段103は、電流に変化がない旨、つまり負側供給線232に地絡は発生していない旨の情報を報知する。
【0052】
以上のように、本実施の形態の地絡検出回路110を備えた地絡検出装置100によれば、接地部161を挟んで第一カレントミラー回路130、および第二カレントミラー回路140を設けることにより正側供給線231の地絡の発生と、負側供給線232との地絡の発生とを区別して報知することができる。さらに、負側供給線232を共有する他の直流電圧装置が存在した場合でも、誤動作を起こすことなく地絡の位置を区別して報知することができる。
【0053】
また、接地電位を一定に設定できる接地電位回路により、負荷220の変動などにより直流電圧装置210が発生させる電圧が不安定になった場合でも、接地部161の接地電位は安定するため、地絡検出装置100の誤動作を抑制することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0055】
たとえば、本実施の形態では、地絡の検出について説明したが、第一検出素子101、および第二検出素子102に電流が流れていることを示す情報を、報知手段を用いて取得することで、地絡が発生することなく直流電圧装置210が正常に動作している状態を把握することも可能である。
【0056】
また、正常に動作している状態を把握した後、第一検出素子101、および第二検出素子102に電流が流れなくなったことを示す情報を、報知手段を用いて取得することで、直流電圧装置210に発生した異常を把握することも可能である。
【0057】
また、接地電位回路は、
図4に示すように接地部161と第二カレントミラー回路140との間に設けても構わない。
【0058】
また、接地電位回路は、
図5に示すように第一カレントミラー回路130と接地部161との間、および接地部161と第二カレントミラー回路140との間の両方に設けても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、直流電圧装置と負荷とを接続する正側供給線、および負側供給線における地絡を検出する地絡検出回路、地絡検出装置、特に負側供給線を共有する複数の直流電圧装置であって供給電圧が相互に異なる場合にも利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 地絡検出装置
101 第一検出素子
102 第二検出素子
103 第一報知手段
104 第二報知手段
110 地絡検出回路
130 第一カレントミラー回路
131 第一トランジスタ
132 第二トランジスタ
140 第二カレントミラー回路
141 第三トランジスタ
142 第四トランジスタ
150 参照電流線
160 コピー電流線
161 接地部
162 アース線
171 電位確定用トランジスタ
172 定電圧回路
180 逆電圧防止回路
210 直流電圧装置
211 正側端子
212 負側端子
220 負荷
231 正側供給線
232 負側供給線