(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190973
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】防舷材用ゴム組成物とそれを用いた防舷材
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20221220BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221220BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221220BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E02B3/26 J
E02B3/26 C
E02B3/26 Z
C08K3/04
C08L9/00
C08L7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099535
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達弥
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC052
4J002AE013
4J002AE033
4J002DA036
4J002DE100
4J002EF050
4J002EN070
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】ゴムとしての良好なゴム物性を有する上、船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供する。
【解決手段】防舷材用ゴム組成物は、総量100質量部中に10~40質量部の割合でBRを含むゴムと、当該ゴムの総量100質量部あたり65~90質量部のカーボンブラックとを含む。防舷材は、上記防舷材用ゴム組成物からなる支承脚部4を少なくとも含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性のゴム、前記ゴムの総量100質量部あたり65質量部以上、90質量部以下のカーボンブラック、および前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含み、前記ゴムは、ブタジエンゴムを、前記ゴムの総量100質量部中に10質量部以上、40質量部以下の割合で含む防舷材用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ブタジエンゴムは、シス-1,4結合の含量が95%以上の高シスブタジエンゴムである請求項1に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴムは、前記ブタジエンゴム、および天然ゴムの2種である請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項4】
船舶等の接舷によって弾性変形する支承脚部を含み、少なくとも前記支承脚部は、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材。
【請求項5】
前記支承脚部を含む全体が、前記防舷材用ゴム組成物によってアーチ型に形成された請求項4に記載の防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば岸壁等に設置されて、船舶等の接舷のエネルギーを吸収する防舷材を形成するための防舷材用ゴム組成物と、当該防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる、ソリッドタイプの防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソリッドタイプの防舷材では、船舶等の接舷によって弾性変形してエネルギーを吸収する支承脚部が、弾性変形の途中で座屈変形を生じることで、上記接舷時のエネルギーの吸収量を維持しながら、反力の過剰な上昇が抑制される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-013120号公報
【特許文献2】特開2016-151095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソリッドタイプの防舷材では、上記のように支承脚部が、船舶等の接舷時にゴム物性を発現して弾性変形する途中で座屈変形して、防舷材に生じる反力の過剰な上昇が抑制されることにより、船舶等や岸壁、あるいは防舷材自体の破損が抑制される。
支承脚部を、船舶等の接舷時に座屈変形しやすくするためには、特許文献1の実施例、比較例における圧縮率-反力特性を示す各図から推測されるように、ゴムに対する、補強材としてのカーボンブラックの割合を少なくすればよい。
【0005】
ところが、ソリッドタイプの防舷材は巨大なゴムの塊であって、使用するゴムの総量が多いため、ゴムの配合単価は安価であることが求められ、防舷材の製造コストの点では、一般に安価な補強材であるカーボンブラックの割合を多くすることが望まれる。
しかしカーボンブラックの割合を多くすれば、上記各図の結果から明らかなように、支承脚部が座屈変形しにくくなって、反力が上昇する傾向がある。
【0006】
そこで、カーボンブラックの割合を多くしても支承脚部を座屈変形しやすくするため、たとえば特許文献2に記載されているように、支承脚部に座屈変形しやすい構造を設ける場合がある。
しかしながら上記構造は、たとえば特許文献2の
図1に記載されているように複雑な立体形状であることが多く、当該構造を取り入れた防舷材を実用化するには設計上の困難を伴う上、製造も容易でなく、却って防舷材の製造コストの上昇に繋がるという課題がある。
【0007】
支承脚部は簡単な立体形状を維持するとともにカーボンブラックの割合を多くして防舷材の製造コストの低減を図りながら、なおかつ支承脚部を座屈変形しやすくすることが肝要である。
本発明の目的は、ゴムとしての良好なゴム物性を有する上、船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は架橋性のゴム、前記ゴムの総量100質量部あたり65質量部以上、90質量部以下のカーボンブラック、および前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含み、前記ゴムは、ブタジエンゴムを、前記ゴムの総量100質量部中に10質量部以上、40質量部以下の割合で含む、防舷材用ゴム組成物である。
また本発明は、船舶等の接舷によって弾性変形する支承脚部を含み、少なくとも前記支承脚部は、前記本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴムとしての良好なゴム物性を有する上、船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例、比較例で圧縮率-反力特性を測定するために作製した、ラムダ型の防舷材のモデルの外観を示す端面図である。
【
図2】
図1のモデルを、実施例1の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図3】
図1のモデルを、実施例2の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図4】
図1のモデルを、実施例3の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図5】
図1のモデルを、実施例4の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図6】
図1のモデルを、比較例1の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図7】
図1のモデルを、比較例2の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図8】
図1のモデルを、比較例3の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図9】
図1のモデルを、比較例4の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図10】
図1のモデルを、比較例5の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【
図11】
図1のモデルを、比較例6の防舷材用ゴム組成物を用いて形成して求めた、圧縮率-反力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《防舷材用ゴム組成物》
前述したように、本発明の防舷材用ゴム組成物は架橋性のゴム、ゴムの総量100質量部あたり65質量部以上、90質量部以下のカーボンブラック、およびゴムを架橋させるための架橋成分を含み、ゴムは、ブタジエンゴム(BR)を、当該ゴムの総量100質量部中に10質量部以上、40質量部以下の割合で含むことを特徴とするものである。
【0012】
先に説明したように、防舷材の支承脚部を座屈変形しやすくするためには、ゴムに対するカーボンブラックの割合を少なくすればよいが、その場合には、相対的にゴムの量が多くなって防舷材用ゴム組成物、ひいては防舷材の製造コストが上昇してしまう。
一方、製造コストを低減するためにカーボンブラックの割合を多くすると、防舷材のゴム物性が低下して、当該防舷材としての良好な圧縮率-反力特性が得られなくなるだけでなく、支承脚部が座屈変形しにくくなってしまう。
【0013】
このように、支承脚部の座屈変形のしやすさ、しにくさに主に関わっているのは、ゴムに対するカーボンブラックの割合である。
しかし発明者の検討によると、かかるカーボンブラックの割合だけでなく、それに加えて、さらにゴムの種類や、2種以上のゴムを併用する場合はその配合比率なども、支承脚部の座屈変形のしやすさ、しにくさに影響を及ぼす。
【0014】
そこで発明者は、ゴムの種類等についてさらに検討した結果、当該ゴムとして、上述した所定の割合でBRを含むゴムを用いればよいことを見出した。
すなわち、支承脚部は簡単な立体形状を維持するとともに、カーボンブラックの割合をゴムの総量100質量部あたり65質量部以上として防舷材の製造コストの低減を図りながら、BRを、ゴムの総量100質量部中に10質量部以上の割合で含むことにより、支承脚部を座屈変形しやすくすることができる。
【0015】
そして、船舶等の接舷時に防舷材に生じる反力の過剰な上昇を抑制して、当該船舶等や岸壁、あるいは防舷材自体の破損を抑制することが可能となる。
ただしBRの割合が、ゴムの総量100質量部中、40質量部以下の範囲を超える場合には、併用する他のゴムの種類にもよるが、防舷材のゴム物性が低下して、当該防舷材としての良好な圧縮率-反力特性が得られなくなる場合がある。
【0016】
これに対し、カーボンブラックの割合を、ゴムの総量100質量部あたり90質量部以下とし、なおかつBRの割合を、ゴムの総量100質量部中の40質量部以下とすることで、防舷材のゴム物性を向上することができる。
そして防舷材に、良好な圧縮率-反力特性を付与することができる。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
【0017】
〈ゴム〉
ゴムとしてはBRと、当該BRとともに架橋しうる他の架橋性のゴムとを併用する。
(BR)
BRとしては、分子中にポリブタジエン構造を備え、架橋性を有する種々のBRがいずれも使用可能である。
【0018】
とくに、温度による物性変化が小さく圧縮率-反力特性が安定した、シス-1,4結合の含量が95%以上である高シスBRが好ましい。
またBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、いずれのタイプのBRも使用可能である。
非油展タイプの高シスBRの具体例としては、たとえば下記の各種BRの1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
宇部興産(株)製のUBEPOL(登録商標)BR150〔シス-1,4結合含量:98質量%〕、BR130B〔シス-1,4結合含量:96質量%〕、BR150B〔シス-1,4結合含量:97質量%〕、BR360B〔シス-1,4結合含量:98質量%〕、BR150L〔シス-1,4結合含量:98質量%〕、BR360L〔シス-1,4結合含量:98質量%〕、BR230〔シス-1,4結合含量:98質量%〕、BR710〔シス-1,4結合含量:98質量%〕。
【0020】
また、油展タイプの高シスBRの具体例としては、たとえば宇部興産(株)製のUBEPOL BR133P〔シス-1,4結合含量:98質量%、オイル量:37.5phr〕等が挙げられる。
これら非油展タイプおよび/または油展タイプのBRの1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
(他のゴム)
BRとともに併用する他のゴムとしては、たとえば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水添アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。
【0022】
とくに、防舷材に良好な圧縮率-反力特性を付与するためには天然ゴムが好ましい。
天然ゴムとしては、たとえばTSR-20、RSS#3等の各種グレードの天然ゴムが挙げられる他、脱蛋白天然ゴム等を用いることもできる。
これら他のゴムの1種または2種以上を用いることができる。
とくに、良好なゴム物性を有する上、船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造することを考慮すると、ゴムとしては、BRと天然ゴムの2種のみ(BR、および天然ゴムについて、それぞれ2種以上を併用する場合を含む。)を用いるのが好ましい。
【0023】
(ゴムの割合)
前述したようにBRの割合は、ゴムの総量100質量部中の10質量部以上、40質量部以下に限定される。
この理由は、先に説明したとおりである。
なお、前述した本発明の効果をより一層向上することを考慮すると、BRの割合は、上記の範囲でも、ゴムの総量100質量部中の13質量部以上、とくに20質量部以上であるのが好ましく、37質量部以下、とくに35質量部以下であるのが好ましい。
【0024】
ゴムとして、BRと天然ゴムの2種のみを併用する場合、天然ゴムの割合は、BRの残量である。
すなわち天然ゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の60質量部以上、85質量部以下に限定され、中でも63質量部以上、とくに65質量部以上であるのが好ましく、82質量部以下、とくに80質量部以下であるのが好ましい。
【0025】
また、BRとともに2種以上の他のゴムを併用する場合は、その合計の割合がBRの残量となるように、併用する2種以上の他のゴムの割合を設定すればよい。
〈カーボンブラック〉
カーボンブラックとしては、たとえばファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の、ゴムのフィラー(充填剤、補強剤)として機能しうる種々のカーボンブラックが使用可能である。
【0026】
カーボンブラックの具体例としては、これに限定されないが、たとえば下記の各種カーボンブラックが挙げられる。
東海カーボン(株)製のシースト(登録商標)シリーズのうちシースト9H〔SAF-HS、窒素吸着比表面積:142m2/g〕、シースト9〔SAF、窒素吸着比表面積:142m2/g〕、シースト7HM〔N234、窒素吸着比表面積:126m2/g〕、シースト6〔ISAF、窒素吸着比表面積:119m2/g〕、シースト600〔ISAF-LS、窒素吸着比表面積:106m2/g〕、シースト5H〔IISAF、窒素吸着比表面積:99m2/g〕、シーストKH〔N399、窒素吸着比表面積:93m2/g〕、シースト3H〔HAF-HS、窒素吸着比表面積:82m2/g〕、シーストNH〔N351、窒素吸着比表面積:74m2/g〕、シースト3〔HAF、窒素吸着比表面積:79m2/g〕、シーストN〔LI-HAF、窒素吸着比表面積:74m2/g〕、シースト300〔HAF-LS、窒素吸着比表面積:84m2/g〕、シースト116HM〔MAF-HS、窒素吸着比表面積:56m2/g〕、シースト116〔MAF、窒素吸着比表面積:49m2/g〕、シーストSO〔FEF、窒素吸着比表面積:42m2/g〕、シーストV〔GPF、窒素吸着比表面積:27m2/g〕、シーストSVH〔SRF-HS、窒素吸着比表面積:32m2/g〕、シーストFY〔SRF-HS、窒素吸着比表面積:29m2/g〕、シーストS〔SRF、窒素吸着比表面積:27m2/g〕、シーストSP〔SRF-LS、窒素吸着比表面積:23m2/g〕、シーストTA〔FT級、窒素吸着比表面積:19m2/g〕。
【0027】
旭カーボン(株)製の旭#95〔窒素吸着比表面積:147m2/g〕、旭#80〔ISAF、窒素吸着比表面積:115m2/g〕、旭#70〔HAF、窒素吸着比表面積:77m2/g〕、旭#70L〔窒素吸着比表面積:84m2/g〕、旭AX-015〔窒素吸着比表面積:145m2/g〕、旭F-200GS〔窒素吸着比表面積:51m2/g〕、旭#65〔窒素吸着比表面積:42m2/g〕、旭#60HN〔窒素吸着比表面積:48m2/g〕、旭#60U〔窒素吸着比表面積:43m2/g〕、旭#55〔窒素吸着比表面積:26m2/g〕、旭#50HG〔窒素吸着比表面積:20m2/g〕、旭#52〔窒素吸着比表面積:28m2/g〕、旭#51〔窒素吸着比表面積:20m2/g〕、旭#50U〔窒素吸着比表面積:27m2/g〕、旭#50〔窒素吸着比表面積:23m2/g〕、旭#35〔窒素吸着比表面積:24m2/g〕、旭#22K〔窒素吸着比表面積:21m2/g〕、旭#15HS〔窒素吸着比表面積:14m2/g〕、旭#15〔窒素吸着比表面積:12m2/g〕、旭#8〔窒素吸着比表面積:12m2/g〕、アサヒサーマル〔窒素吸着比表面積:24m2/g〕。
【0028】
これらカーボンブラックの、1種または2種以上を用いることができる。
とくにカーボンブラックとしては、たとえばSAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF等のファーネスブラックを用いるのが好ましい。
〈カーボンブラックの割合〉
カーボンブラックの割合は、前述したように、ゴムの総量100質量部あたり65質量部以上、95質量部以下に限定される。
【0029】
カーボンブラックの割合がこの範囲未満では、相対的にゴムの割合が多くなって防舷材用ゴム組成物、ひいては防舷材の製造コストが上昇してしまう。
これに対し、カーボンブラックの割合を上記の範囲以上とすることにより、相対的にゴムの量を少なくして、防舷材用ゴム組成物、ひいては防舷材の製造コストを低減することができる。
【0030】
一方、カーボンブラックの割合が上記の範囲を超える場合には、当該カーボンブラックによるゴムの補強性が強くなりすぎるとともに架橋物自体が硬くなりすぎて、支承脚部が座屈変形しにくくなる場合がある。
また、架橋前の防舷材用ゴム組成物の粘度が高くなって、加工性が低下する場合もある。
【0031】
そして、防舷材用ゴム組成物を調製するために各成分を混練したり、防舷材を製造するために防舷材用ゴム組成物を混練したり任意の立体形状に成形加工したりするのが容易でなくなる場合がある。
これに対し、カーボンブラックの割合を上記の範囲以下とすることにより、ゴムの補強性が強くなりすぎるとともに架橋物自体が硬くなりすぎるのを抑制して、支承脚部を座屈変形しやすくすることができる。
【0032】
また、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下するのを抑制することもできる。
なお、これらの効果をより一層向上することを考慮すると、カーボンブラックの割合は、上記の範囲でも、ゴムの総量100質量部あたり90質量部以下、とくに85質量部以下であるのが好ましい。
2種以上のカーボンブラックを併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
【0033】
また、2種以上のカーボンブラックを併用する場合は、たとえばゴムに対する補強性の強い、窒素吸着比表面積の大きいカーボンブラックと、かかる補強性の弱い、窒素吸着比表面積の小さいカーボンブラックとを併用してもよい。
この場合には、カーボンブラックの全体の割合を維持して、防舷材の製造コストの上昇を抑制しながら、ゴムの補強性を弱めることができる。
【0034】
そして、支承脚部をより一層、座屈変形しやすくしたり、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下するのをより一層、良好に抑制したりすることができる。
〈架橋成分〉
ゴムを架橋させるための架橋成分としては、架橋剤、架橋促進剤等が挙げられる。
(架橋剤)
架橋剤としては、たとえば硫黄系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられ、とくに硫黄系架橋剤が好ましい。
【0035】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、オイル入り粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
硫黄の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、とくに0.7質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、とくに2質量部以下であるのが好ましい。
【0036】
硫黄の割合がこの範囲未満では、防舷材用ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって、防舷材の生産性が低下する場合がある。
また、硫黄の割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が防舷材の表面にブルームしたりする場合がある。
なお硫黄として、たとえばオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を用いる場合、上記の割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
【0037】
また、架橋剤として有機含硫黄化合物を使用する場合、その割合は、分子中に含まれる硫黄の、ゴムの総量100質量部あたりの割合が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
(架橋促進剤)
架橋促進剤としては、たとえば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の各種の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤。
2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤。
【0039】
N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤。
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤。
【0040】
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系促進剤。
N,N′-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N′-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系促進剤。
架橋促進剤の割合は、その種類によって任意に設定できるが、通常は、ゴムの総量100質量部あたり、個別に、0.1質量部以上、とくに0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、とくに4質量部以下であるのが好ましい。
【0041】
〈その他〉
防舷材用ゴム組成物には、さらに必要に応じて、カーボンブラック以外の他の充填剤、老化防止剤、架橋助剤、可塑剤、ワックス、着色剤、粘着付与剤等を、任意の割合で配合してもよい。
(他の充填剤)
カーボンブラック以外の他の充填剤としては、たとえばシリカ等が挙げられる。
【0042】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、耐候性老化防止剤、耐熱老化防止剤等の、主な機能によって分類される種々の老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。
老化防止剤としては、たとえばN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体等が挙げられる。
【0043】
とくに、日光亀裂、オゾン亀裂、および屈曲亀裂などの防止効果に優れたN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが好ましい。
老化防止剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、とくに0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、とくに5質量部以下であるのが好ましい。
【0044】
(架橋助剤)
架橋助剤としては、たとえば酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、とくに0.5質量部以上であるのが好ましく、8質量部以下、とくに6質量部以下であるのが好ましい。
【0045】
(可塑剤)
可塑剤としては、たとえばオイルや液状ゴムが挙げられる。
このうちオイルとしては、これに限定されないが、たとえば出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW、NH、NP、NS、NR、NM、AC、AH等の各種グレードのオイルの1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
また液状ゴムとしては、たとえば液状イソプレンゴム、水添液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、あるいはこれらの末端変性物等の1種または2種以上が挙げられる。
可塑剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、とくに3質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、とくに13質量部以下であるのが好ましい。
【0047】
(ワックス)
ワックスとしては、これに限定されないが、たとえば日本精蝋(株)製のオゾエース(登録商標)0355、大内新興化学工業(株)製のサンノック(登録商標)、サンノックN、サンノックP等が挙げられる。
これらのワックスは、老化防止剤との併用によって日光亀裂、オゾン亀裂を防止するために機能する。
【0048】
ワックスの割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、とくに0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、とくに5質量部以下であるのが好ましい。
防舷材用ゴム組成物は、たとえば上記各成分のうち架橋成分以外の各成分を、まずニーダー、バンバリミキサ等を用いて混練したのち、さらに架橋成分を加えて混練するなどして調製できる。
【0049】
調製した防舷材用ゴム組成物を用いて防舷材を製造する工程は、従来同様でよい。すなわち、製造する防舷材の大きさや形状に応じて成形、シート成形、組み立て、および架橋等の任意の工程を組み合わせて、防舷材を製造することができる。
《防舷材》
本発明の防舷材は、岸壁等に固定されて、船舶等の接舷によって弾性変形する支承脚部を含み、少なくとも当該支承脚部が、上記本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなることを特徴とする。
【0050】
本発明の防舷材の具体例としては、たとえば下記の各種防舷材が挙げられる。
・ 船舶等が接舷される平面状の受衝面を構成する頭部と、当該頭部から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部とを、防舷材用ゴム組成物の架橋物によって一体に形成したアーチ型〔いわゆる逆V字型、ラムダ(λ)型、ベータ(β)型を含む)の防舷材。
・ 円盤状の頭部と、当該頭部から径方向に拡開しながら垂下する裁頭円錐状の支承脚部とを、防舷材用ゴム組成物の架橋物によって一体に形成した、いわゆるカッパ(κ)型の防舷材。
・ 鋼材等からなる頭部と、防舷材用ゴム組成物の架橋物からなり、当該頭部から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部とを含む、いわゆるπ型の防舷材。
【0051】
これらの防舷材のいずれにおいても、少なくとも支承脚部を、前述した本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物によって形成することで、船舶等の接舷時に座屈変形しやすくすることができる。
しかも、ゴムの割合を少なくして、防舷材の製造コストを低減することもできる。
とくに、支承脚部だけでなく頭部をも含む防舷材の全体を、本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物によって一体に形成するアーチ型やカッパ型の防舷材において、製造コスト低減の効果が顕著である。
【実施例0052】
以下に、本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)80質量部と、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150L、シス-1,4結合含量:98質量%〕20質量部とを併用した。
【0053】
両ゴムの総量100質量部を、下記表1に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0054】
【0055】
表1中の各成分は下記のとおりであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
カーボンブラック(i):HAF、東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積:79m2/g
架橋助剤I:酸化亜鉛2種、三井金属鉱業(株)製
架橋助剤II:ステアリン酸、日油(株)製の商品名つばき
老化防止剤:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノック
オイル:出光興産(株)製のダイアナ プロセスオイルNH-70S
次いで、下記表2に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0056】
【0057】
表2中の各成分は下記のとおりであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
架橋剤:鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、スルフェンアミド系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS
BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の20質量部、カーボンブラックの割合は、ゴムの総量100質量部あたり70質量部であった。
【0058】
〈実施例2〉
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)65質量部と、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B、シス-1,4結合含量:97質量%〕35質量部とを併用した。
両ゴムの総量100質量部を、下記表3に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0059】
【0060】
表3中のカーボンブラック(ii)は下記のとおり。
カーボンブラック(ii):ISAF、東海カーボン(株)製のシースト6、窒素吸着比表面積:119m2/g
また、他の成分は実施例1と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
【0061】
次いで、下記表4に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0062】
【0063】
表4中の各成分は実施例1と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の35質量部、カーボンブラックの割合は、ゴムの総量100質量部あたり65質量部であった。
〈実施例3〉
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)70質量部と、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150、シス-1,4結合含量:98質量%〕30質量部とを併用した。
【0064】
両ゴムの総量100質量部を、下記表5に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0065】
【0066】
表5中のカーボンブラック(iii)は下記のとおり。
カーボンブラック(iii):FEF、東海カーボン(株)製のシーストSO、窒素吸着比表面積:42m2/g
また、他の成分は実施例1と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
【0067】
次いで、下記表6に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0068】
【0069】
表6中の各成分は実施例1と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の30質量部、2種のカーボンブラックの合計の割合は、ゴムの総量100質量部あたり80質量部であった。
〈実施例4〉
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)87質量部と、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150L、シス-1,4結合含量:98質量%〕13質量部とを併用した。
【0070】
両ゴムの総量100質量部を、下記表7に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0071】
【0072】
表7中の各成分は実施例3と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
次いで、下記表8に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0073】
【0074】
表8中の各成分は実施例1と同じであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の13質量部、2種のカーボンブラックの合計の割合は、ゴムの総量100質量部あたり80質量部であった。
〈比較例1〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)80質量部と、非油展タイプのSBR〔JSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕20質量部とを併用したこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0075】
〈比較例2〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)65質量部と、非油展タイプのSBR〔JSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕35質量部とを併用したこと以外は実施例2と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈比較例3〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)70質量部と、非油展タイプのSBR〔JSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕30質量部とを併用したこと以外は実施例3と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0076】
〈比較例4〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)87質量部と、非油展タイプのSBR〔JSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕13質量部とを併用したこと以外は実施例4と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈比較例5〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)50質量部、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150L、シス-1,4結合含量:98質量%〕30質量部、および非油展タイプの低シスBR〔旭化成(株)製のジエン(登録商標)NF35R、シス-1,4結合含量:35質量%〕20質量部を併用したこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0077】
2種のBRの合計の割合は、ゴムの総量100質量部中の50質量部、カーボンブラックの割合は、ゴムの総量100質量部あたり70質量部であった。
〈比較例6〉
ゴムとして、天然ゴム(TSR20品)50質量部と、非油展タイプの高シスBR〔宇部興産(株)製のUBEPOL BR150L、シス-1,4結合含量:98質量%〕50質量部とを併用したこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0078】
BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の50質量部、カーボンブラックの割合は、ゴムの総量100質量部あたり70質量部であった。
〈タイプAデュロメータ硬さ測定〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を140℃で60分間プレス架橋させて、厚み2mmの架橋シートを作製した。
【0079】
次いで、上記架橋シートを3枚重ねて硬さ測定用の試験片として、日本産業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に規定された測定方法に則ってタイプAデュロメータ硬さを測定した。
測定温度は、標準試験温度(23℃)とした。
〈引張試験〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を140℃で60分間プレス架橋させて、厚み3mmの架橋シートを作製した。
【0080】
次いで上記架橋シートを打ち抜いて、日本産業規格JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されたダンベル状3号形試験片を作製した。
そして作製した試験片について、同規格に規定された引張試験を実施して、引張強さT(MPa)、および切断時伸びEb(%)を求めた。
【0081】
測定温度は、標準試験温度(23℃)とした。
引張強さTは、16MPa未満を「×」、16MPa以上、20MPa未満を「○」、20MPa以上を「◎」と評価した。
また切断時伸びEbは、350%未満を「×」、350%以上、400%未満を「○」、400%以上を「◎」と評価した。
【0082】
〈防舷材のモデルの作製〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を用いて、
図1に示す端面形状を有するラムダ型の防舷材の、ミニチュアサイズのモデル1を作製した。
すなわち、平面状の受衝面2を構成する頭部3と、当該頭部3から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部4と、支承脚部4の下端に連設されて外方へ張り出した取り付け用のフランジ部5とを、防舷材用ゴム組成物によって一体に形成し、架橋させてモデル1を作製した。
【0083】
架橋条件は140℃×120分間とした。
各部の寸法は、頭部3の幅W1が65mm、高さHが100mm、フランジ部5の先端間の幅W2が180mm、全長が200mmであった。
〈圧縮率-反力特性試験〉
上記で作成した防舷材のモデル1を、高さHの52.5%を最大圧縮量として、標準試験温度(23℃)下、高さ方向に15mm/分の速度で、3分間のインターバルを挟んで3回圧縮した。
【0084】
そして2回目と3回目の圧縮時の、圧縮率に応じた反力の平均値を求め、横軸に圧縮率(%)、縦軸に反力(kN)をプロットして圧縮率-反力特性を求めた。
実施例1の結果を
図2、実施例2の結果を
図3、実施例3の結果を
図4、実施例4の結果を
図5、比較例1の結果を
図6、比較例2の結果を
図7、比較例3の結果を
図8、比較例4の結果を
図9、比較例5の結果を
図10、比較例6の結果を
図11に示す。
【0085】
図5~
図11にみるように、比較例1~4の防舷材用ゴム組成物からなる防舷材は、いずれも圧縮によって座屈変形せず、圧縮率に応じて反力が一方的に高くなることが判った。
そのため比較例1~4については、座屈変形なし「×」と評価した。
一方、実施例1~4、比較例5、6の防舷材用ゴム組成物からなる防舷材は、いずれも比較例1~4と同形状であるにも拘らず、
図2~
図5、
図10、
図11にみるように、途中で反力値が低下していることから、圧縮によって座屈変形を生じていることが判った。
【0086】
そこで実施例1~4、比較例5、6については、座屈変形あり「〇」と評価した。
以上の結果を表9、表10に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
表9、表10の実施例1~4、比較例1~4の結果より、防舷材の少なくとも支承脚部を、BRを含むゴムと、当該ゴムの総量100質量部あたり65~90質量部のカーボンブラックとを含む防舷材用ゴム組成物によって形成することにより、ゴムとしての良好なゴム物性を有する上、船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できることが判った。
【0090】
ただし実施例1~4、比較例5、6の結果より、上記の効果を得るためには、BRの割合は、ゴムの総量100質量部中の10~40質量部である必要があること、BRは、シス-1,4結合の含量が95%以上の高シスBRであるのが好ましいこと、ゴムは、BRと天然ゴムの2種であるのが好ましいことが判った。