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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190981
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099550
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】高見 親法
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 道隆
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS02
5H730BB27
5H730BB61
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE08
5H730FD31
5H730FG10
(57)【要約】
【課題】最大出力電力を低下させず、かつ、一次巻線に流れる電流が小さい場合でもゼロボルトスイッチングが実現できる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置A1において、スイッチング素子TR1~TR4を有するインバータ回路2と、制御回路5とを備えた。スイッチング素子TR1,TR3が直列接続され、スイッチング素子TR2,TR4が直列接続され、スイッチング素子TR1,TR2が同じ極性側に接続されている。制御回路5は、駆動信号P1,P4と、駆動信号P1を半周期ずらした駆動信号P3と、駆動信号P4を半周期ずらした駆動信号P2とを生成し、駆動信号P1と駆動信号P4との位相差を調整することで出力電流制御を行い、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの調整デッドタイムを、インバータ回路2の出力電流が小さいほど小さくする。駆動信号P1~P4は、それぞれスイッチング素子TR1~TR4に入力される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ2個のスイッチング素子が直列接続された第1アームおよび第2アームを有するインバータ回路と、
前記第1アームの第1スイッチング素子に入力される第1駆動信号と、前記第2アームにおいて前記第1スイッチング素子と同じ極性側に接続された第2スイッチング素子に入力される第2駆動信号と、前記第1アームの第3スイッチング素子に入力される第3駆動信号と、前記第2アームにおいて前記第3スイッチング素子と同じ極性側に接続された第4スイッチング素子に入力される第4駆動信号とを生成する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記第1駆動信号を半周期ずらした信号を前記第3駆動信号として生成し、
前記第4駆動信号を半周期ずらした信号を前記第2駆動信号として生成し、
前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりタイミングと前記第4駆動信号のパルスの立ち上がりタイミングとの位相差を調整することで出力電流制御を行い、
前記第4駆動信号のパルスと前記第2駆動信号のパルスとの調整デッドタイムを、前記インバータ回路の出力電流が小さいほど小さくする、
電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記電源装置の出力電流と目標電流値との偏差に基づいて、前記位相差を設定する位相差設定部を備え、
前記位相差に基づいて前記調整デッドタイムを設定する、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記インバータ回路の出力電流を検出する電流センサをさらに備え、
前記制御回路は、
前記電流センサの検出信号に基づいて前記調整デッドタイムを設定する、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記インバータ回路の出力電流に基づく調整値を設定する調整値設定部と、
所定の周期を設定する周期設定部と、
所定のパルス幅を設定するパルス幅設定部と、
前記所定の周期ごとにパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、
前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりから前記所定の周期の半周期経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第3駆動信号を生成する第3駆動信号生成部と、
前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりから前記位相差の経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅および前記調整値の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第4駆動信号を生成する第4駆動信号生成部と、
前記第3駆動信号のパルスの立ち上がりから前記位相差の経過後にパルスを立ち上げ、 当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅および前記調整値の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部と、
を備えている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記インバータ回路に直流電圧を供給する直流電源と、
前記インバータ回路が出力する高周波電圧を変圧するトランスと、
前記トランスによって変圧された高周波電圧を整流する整流回路と、
をさらに備え、
前記インバータ回路によって制御された直流電流を溶接トーチに出力する、
請求項1ないし4のいずれかに記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ回路が直流電源から入力される直流電圧を高周波電圧に変換し、トランスが高周波電圧を変圧し、整流回路が整流して出力する電源装置が知られている。また、単相フルブリッジ型のインバータ回路の制御方法として、位相シフト制御が知られている。特許文献1には、位相シフト制御によって制御される電源装置が開示されている。位相シフト制御では、インバータ回路の一方のアームのハイサイドスイッチング素子と他方のアームのローサイドスイッチング素子とでオン期間に位相差を設け、位相差によって出力を調整する。
【0003】
図7は、位相シフト制御を説明するための図である。同図(a)は、電源装置A10の全体構成を示す図である。同図(b)は、各スイッチング素子に入力される各駆動信号の一例を示す波形図である。同図(a)に示すように、インバータ回路20は、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR3とからなる第1アームと、スイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4とからなる第2アームとを備えている。制御回路50で生成された駆動信号P1~P4は、ドライブ回路60で増幅されて、スイッチング素子TR1~TR4にそれぞれ入力される。同図(b)に示すように、駆動信号P4の位相は、駆動信号P1の位相より遅れている。また、駆動信号P2の位相は、駆動信号P3の位相より遅れている。駆動信号P1(P3)のパルスと駆動信号P4(P2)のパルスとが重なる部分が大きいほど、出力が大きくなる。また、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR3(スイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4)が同時にオンしないように、駆動信号P1のパルスと駆動信号P3のパルスとの間(駆動信号P2のパルスと駆動信号P4のパルスとの間)には、デッドタイムが設けられている。
【0004】
図7(b)に示す期間Aでは、スイッチング素子TR1,TR4がオンになっており、スイッチング素子TR1,TR4を介して、トランス30の一次巻線に直流電源10が供給する電流が流れる。期間Bでは、スイッチング素子TR1がオフになるが、トランス30の一次巻線の漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子TR3の還流ダイオードおよびスイッチング素子TR4を介して、一次巻線に電流が流れ続ける。期間Cでは、スイッチング素子TR3がオンになる。スイッチング素子TR3がオンに切り替わるとき、還流ダイオードに電流が流れているので、スイッチング素子TR3のドレイン-ソース間の電圧は「0」である。したがって、ゼロボルトスイッチングとなる。期間Dでは、スイッチング素子TR4がオフになるが、スイッチング素子TR2の還流ダイオード、直流電源1の平滑コンデンサ、およびスイッチング素子TR3の還流ダイオードを介して、一次巻線に電流が流れ続ける。期間Eでは、スイッチング素子TR2がオンになっており、スイッチング素子TR2,TR3を介して、一次巻線に期間Aとは逆向きの電流が流れる。スイッチング素子TR2がオンに切り替わるとき、還流ダイオードに電流が流れている場合、スイッチング素子TR2のドレイン-ソース間の電圧は「0」である。したがって、ゼロボルトスイッチングとなる。以下、上記期間B,C,Dのハイサイドとローサイドとを反対にした状態になって、期間Aに戻る。このように、位相シフト制御では、各スイッチング素子TR1~TR4がオンに切り替わるときに、ゼロボルトスイッチングが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-322189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トランス30の一次巻線の漏れインダクタンスが小さく、かつ、一次巻線に流れる電流が小さい場合、一次巻線の漏れインダクタンスに蓄えられるエネルギーは少ない。この場合、期間Eに達する前にエネルギーが消費されてしまう。期間Eまでにエネルギーが消費されてしまうと、スイッチング素子TR2がオンに切り替わるときに、還流ダイオードに電流が流れておらず、ゼロボルトスイッチングが実現できない。トランス30の一次巻線にコイルを直列接続して漏れインダクタンスを大きくすれば、期間Eに達する前にエネルギーが消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現できる。しかし、漏れインダクタンスが大きくなると、漏れインダクタンスに蓄えられるエネルギーが多くなる代わりに、二次側に伝達されるエネルギーが減少する。つまり、漏れインダクタンスを大きくしたことで、電源装置A10の最大出力電力が低下する。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、最大出力電力を低下させず、かつ、一次巻線に流れる電流が小さい場合でもゼロボルトスイッチングが実現できる電源装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される電源装置は、それぞれ2個のスイッチング素子が直列接続された第1アームおよび第2アームを有するインバータ回路と、前記第1アームの第1スイッチング素子に入力される第1駆動信号と、前記第2アームにおいて前記第1スイッチング素子と同じ極性側に接続された第2スイッチング素子に入力される第2駆動信号と、前記第1アームの第3スイッチング素子に入力される第3駆動信号と、前記第2アームにおいて前記第3スイッチング素子と同じ極性側に接続された第4スイッチング素子に入力される第4駆動信号とを生成する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記第1駆動信号を半周期ずらした信号を前記第3駆動信号として生成し、前記第4駆動信号を半周期ずらした信号を前記第2駆動信号として生成し、前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりタイミングと前記第4駆動信号のパルスの立ち上がりタイミングとの位相差を調整することで出力電流制御を行い、前記第4駆動信号のパルスと前記第2駆動信号のパルスとの調整デッドタイムを、前記インバータ回路の出力電流が小さいほど小さくする。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御回路は、前記電源装置の出力電流と目標電流値との偏差に基づいて、前記位相差を設定する位相差設定部を備え、前記位相差に基づいて前記調整デッドタイムを設定する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記インバータ回路の出力電流を検出する電流センサをさらに備え、前記制御回路は、前記電流センサの検出値に基づいて前記調整デッドタイムを設定する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御回路は、前記インバータ回路の出力電流に基づく調整値を設定する調整値設定部と、所定の周期を設定する周期設定部と、所定のパルス幅を設定するパルス幅設定部と、前記所定の周期ごとにパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりから前記所定の周期の半周期経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第3駆動信号を生成する第3駆動信号生成部と、前記第1駆動信号のパルスの立ち上がりから前記位相差の経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅および前記調整値の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第4駆動信号を生成する第4駆動信号生成部と、前記第3駆動信号のパルスの立ち上がりから前記位相差の経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりから前記パルス幅および前記調整値の経過後にパルスを立ち下げることで、前記第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部とを備えている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記インバータ回路に直流電圧を供給する直流電源と、前記インバータ回路が出力する高周波電圧を変圧するトランスと、前記トランスによって変圧された高周波電圧を整流する整流回路とをさらに備え、前記インバータ回路によって制御された直流電流を溶接トーチに出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、調整デッドタイムは、インバータ回路の出力電流が小さいほど小さくなる。したがって、インバータ回路の出力電流が小さく、トランス30の一次巻線の漏れインダクタンスに蓄えられるエネルギーが少ない場合に、調整デッドタイム(図7(b)の期間D参照)が小さくなって、期間Eまでに消費されるエネルギーが抑制される。これにより、本発明に係る電源装置は、期間Eまでにエネルギーが消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現する。また、トランス30の一次巻線の漏れインダクタンスは増加させないので、本発明に係る電源装置は、最大出力電力を低下させない。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る溶接電源装置の全体構成を示す図である。
図2】各スイッチング素子に入力される各駆動信号の一例を示す波形図である。
図3】駆動信号生成部の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4】第1実施形態に係る溶接電源装置の変形例を示す図である。
図5】(a)は第2実施形態に係る溶接電源装置の制御回路を示すブロック図であり、(b)は第3実施形態に係る溶接電源装置の制御回路を示すブロック図である。
図6】第4実施形態に係る溶接電源装置の全体構成を示す図である。
図7】(a)は従来の溶接電源装置の全体構成を示す図であり、(b)は各スイッチング素子に入力される各駆動信号の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る電源装置を溶接電源装置として用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る溶接電源装置A1を説明するための図であり、溶接電源装置A1の全体構成を示す図である。
【0019】
溶接電源装置A1は、溶接トーチBの電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給するものである。図1に示すように、溶接電源装置A1は、直流電源1、インバータ回路2、トランス3、整流回路4、制御回路5、ドライブ回路6、および、電流センサ7を備えている。
【0020】
直流電源1は、直流電圧を出力するものであり、例えば、電力系統から入力される交流電圧を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。なお、直流電源1の構成は限定されず、インバータ回路2に直流電圧を出力するものであればよい。
【0021】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電圧を高周波電圧に変換して、トランス3に出力する。インバータ回路2は、単相フルブリッジ型のインバータであり、4個のスイッチング素子TR1~TR4を備えている。本実施形態では、スイッチング素子TR1~TR4としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。なお、スイッチング素子TR1~TR4はMOSFETに限定されず、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)などであってもよい。
【0022】
スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR3とは、スイッチング素子TR1のソース端子とスイッチング素子TR3のドレイン端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子TR1のドレイン端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子TR3のソース端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。スイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4とは、スイッチング素子TR2のソース端子とスイッチング素子TR4のドレイン端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子TR2のドレイン端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子TR4のソース端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR3とで形成されているブリッジ構造を第1アーム21とし、スイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4とで形成されているブリッジ構造を第2アーム22とする。第1アーム21のスイッチング素子TR1とスイッチング素子TR3との接続点には出力ラインC1が接続され、第2アーム22のスイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4との接続点には出力ラインC2が接続されている。
【0023】
各スイッチング素子TR1~TR4には、それぞれ逆並列に還流ダイオードが接続されている。また、各スイッチング素子TR1~TR4のドレイン端子とソース端子との間には、それぞれスナバコンデンサが接続されている。各スイッチング素子TR1~TR4のゲート端子には、ドライブ回路6から出力される駆動信号P1~P4(後述)がそれぞれ入力される。各スイッチング素子TR1~TR4は、それぞれ駆動信号P1~P4に基づいて、オンとオフとを切り替えられる。これにより、直流電圧が高周波電圧に変換される。なお、インバータ回路2の構成は限定されない。
【0024】
トランス3は、インバータ回路2が出力する高周波電圧を変圧して、整流回路4に出力する。トランス3は、一次巻線31および二次巻線32を備えている。一次巻線31の一方の入力端子は出力ラインC1に接続され、他方の入力端子は出力ラインC2に接続されている。また、二次巻線32の一方の出力端子は整流回路4の一方の入力端子に接続され、他方の出力端子は整流回路4の他方の入力端子に接続されている。二次巻線32には、2つの出力端子とは別にセンタタップが設けられている。一次巻線31および二次巻線32は、それぞれ図示しないコアに巻回されており、互いに磁気結合可能である。なお、トランス3の構成は限定されない。
【0025】
整流回路4は、トランス3のセンタタップを用いた両波整流回路であり、トランス3が出力する高周波電流を整流して、直流電流として出力する。整流回路4は、2個の整流用ダイオード41,42と、直流リアクトル43とを備えている。整流用ダイオード41,42は、トランス3の二次巻線32の各出力端子に、それぞれアノード端子が接続されて、それぞれのカソード端子が互いに接続されている。直流リアクトル43は、整流用ダイオード41,42のカソード端子側での接続点と、溶接電源装置A1の出力端子aとの間に直列接続されており、出力電流を安定させる。トランス3のセンタタップは、溶接電源装置A1の出力端子bに接続されている。整流回路4が出力する直流電流が、溶接電流として溶接トーチBに流れる。なお、整流回路4の構成は限定されない。
【0026】
電流センサ7は、トランス3のセンタタップと出力端子bとの間の接続線に配置されており、溶接電源装置A1の出力電流を検出して、電流信号Iとして制御回路5に出力する。なお、電流センサ7の配置位置は限定されず、溶接電源装置A1の出力電流を検出できればよい。
【0027】
制御回路5は、インバータ回路2を制御する構成であり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路5は、インバータ回路2を制御するための駆動信号P1~P4を生成して、ドライブ回路6に出力する。制御回路5は、出力電流制御を行っており、電流センサ7より入力される電流信号Iに基づいて、溶接電源装置A1の出力電流をフィードバック制御する。また、制御回路5は、位相シフト制御に類似する制御を行う。具体的には、制御回路5は、位相シフト制御と同様に、インバータ回路2のスイッチング素子TR1とスイッチング素子TR4(スイッチング素子TR3とスイッチング素子TR2)でオン期間の位相差を調整することで、出力電流を制御する。制御回路5は、当該位相差を大きくすることで、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR4(スイッチング素子TR3とスイッチング素子TR2)が同時にオンになる期間を短くして、位相差がない場合(位相差が「0」の場合)より、溶接電源装置A1の出力電流を小さくする。また、本実施形態では、制御回路5は、スイッチング素子TR2とスイッチング素子TR4とによる短絡を防止するためのデッドタイムを、位相差に応じて変化させる。制御回路5は、機能構成として、目標設定部51、減算部52、位相差設定部53、および駆動信号生成部54を備えている。
【0028】
目標設定部51は、溶接電源装置A1の出力電流の目標値である目標電流値I*を設定する。目標設定部51は、設定された目標電流値I*を、減算部52に出力する。目標設定部51は、作業者によって入力されたり、あらかじめプログラミングされている溶接条件に基づいて、目標電流値I*を設定する。減算部52は、電流センサ7より入力される電流信号Iと、目標設定部51より入力される目標電流値I*との偏差ΔI(=I*-I)を算出して、位相差設定部53に出力する。位相差設定部53は、入力される偏差ΔIに基づいて、偏差ΔIを「0」にするための位相差tθを算出して、駆動信号生成部54に出力する。なお、位相差tθの算出方法は限定されない。位相差tθは、偏差ΔIが大きいほど小さくなり、偏差ΔIが小さいほど大きくなる。
【0029】
駆動信号生成部54は、位相差設定部53より入力される位相差tθに基づいて駆動信号P1~P4を生成して、ドライブ回路6に出力する。駆動信号P1~P4は、ドライブ回路6で増幅されて、スイッチング素子TR1~TR4にそれぞれ入力される。
【0030】
図2は、各駆動信号P1~P4の一例を示す波形図である。駆動信号P1および駆動信号P3は、所定の周期Tで所定のパルス幅Tonを有するパルス信号である。駆動信号P1と駆動信号P3とは、位相が半周期(T/2)ずれている。周期Tおよびパルス幅Tonはあらかじめ固定された値が設定されている。したがって、駆動信号P1および駆動信号P3は、波形が変化せず固定されている。また、駆動信号P1のパルスと駆動信号P3のパルスとの間に設けられたデッドタイムも固定されており、半周期(T/2)からパルス幅Tonを減じた期間td(=T/2-Ton)になる。
【0031】
一方、駆動信号P2および駆動信号P4は、波形が固定されておらず、位相差設定部53より入力される位相差tθに応じて変化する。駆動信号P4は、パルスの立ち上がりタイミングが、駆動信号P1より位相差tθだけ遅れる。駆動信号P2は、パルスの立ち上がりタイミングが、駆動信号P3より位相差tθだけ遅れる。したがって、駆動信号P4と駆動信号P2とは、位相が半周期(T/2)ずれている。また、駆動信号P2および駆動信号P4のパルス幅は、位相差tθに基づいて設定された調整値Δtに応じて変化し、パルス幅Tonに調整値Δtを加算したパルス幅になる。これにより、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられたデッドタイムは、駆動信号P1と駆動信号P3とのデッドタイムより調整値Δtだけ短い調整デッドタイム(td-Δt)になる。
【0032】
調整値Δtは、位相差設定部53より入力される位相差tθに基づいて設定される。本実施形態では、位相差tθが(0°≦tθ<90°)の場合に調整値Δtとして「0」が設定され、(90°≦tθ<135°)の場合に調整値ΔtとしてΔt1(>0)が設定され、(135°≦tθ)の場合に調整値ΔtとしてΔt2(>Δt1)が設定される。つまり、位相差tθが大きいほど、調整値Δtが大きくなるように設定されている。したがって、位相差tθが大きいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。また、位相差tθが大きいほど、駆動信号P1(P3)のパルスと駆動信号P4(P2)のパルスとが重なる部分が小さくなるので、インバータ回路2の出力電流が小さくなる。したがって、インバータ回路2の出力電流が小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。調整デッドタイム(td-Δt)は、短絡を防止するためのデッドタイムの最小値tminより小さくならないように制限される。したがって、Δtは、Δt≦td-tminの範囲で設定される。
【0033】
たとえば、各駆動信号P1~P4の周期Tが12.5μs(周波数80kHz)の場合の一例として、駆動信号P1,P3のパルス幅をTon=5.75μsとすると、駆動信号P1のパルスと駆動信号P3のパルスとの間に設けられたデッドタイムは、td=0.5(12.5/2-5.75)μsになる。この場合、たとえば、調整値Δtとして、Δt1=0.1μs、Δt2=0.2μsが設定される。
【0034】
なお、位相差tθが大きいほど、調整値Δtが大きくなればよく、調整値Δtの設定方法は、上記に限定されない。本実施形態では、調整値Δtが3段階で設定されているが、2段階で設定されてもよく、4段階以上で設定されてもよい。また、調整値Δtは、位相差tθに対して線型的に変化するよう設定されてもよい。調整値Δtの設定方法および各設定値は、実験やシミュレーションに基づいて設定される。
【0035】
駆動信号P2,P4のパルス幅が固定されていないので、制御回路5が行う制御は、通常の位相シフト制御とは異なる。また、駆動信号P1,P3のパルス幅が固定されているので、制御回路5が行う制御は、通常のPWM制御とも異なる。
【0036】
図2において、各駆動信号P1~P4の最も左側のパルスは、位相差tθ=45°の場合を示している。駆動信号P4(P2)は、パルスの立ち上がりタイミングが、駆動信号P1(P3)より位相差tθ=45°だけ遅れている。この場合、調整値Δtとして「0」が設定される。したがって、駆動信号P2,P4のパルス幅は、駆動信号P1,P3と同様、Tonである。また、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられた調整デッドタイムは、駆動信号P1のパルスと駆動信号P3のパルスとの間に設けられたデッドタイムと同様、tdである。
【0037】
各駆動信号P1~P4の左から2番目のパルスは、位相差tθ=90°の場合を示している。駆動信号P4(P2)は、パルスの立ち上がりタイミングが、駆動信号P1(P3)より位相差tθ=90°だけ遅れている。この場合、調整値ΔtとしてΔt1が設定される。したがって、駆動信号P2,P4のパルス幅は、(Ton+Δt1)である。また、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられた調整デッドタイムは、(td-Δt1)である。
【0038】
各駆動信号P1~P4の左から3番目のパルスは、位相差tθ=135°の場合を示している。駆動信号P4(P2)は、パルスの立ち上がりタイミングが、駆動信号P1(P3)より位相差tθ=135°だけ遅れている。この場合、調整値ΔtとしてΔt2が設定される。したがって、駆動信号P2,P4のパルス幅は、(Ton+Δt2)である。また、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられた調整デッドタイムは、(td-Δt2)である。
【0039】
位相差tθが変化することで、駆動信号P1のパルスと駆動信号P4のパルスとの重なり期間(図2においてハッチングを付している期間A)が変化し、駆動信号P3のパルスと駆動信号P3のパルスとの重なり期間(図2においてハッチングを付している)が変化している。このように、制御回路5は、位相差tθに応じて、駆動信号P1のパルスと駆動信号P4のパルスとの重なり期間の長さ、および、駆動信号P3のパルスと駆動信号P2のパルスとの重なり期間の長さを調整することで、電源装置A10の出力電流を制御する。
【0040】
また、位相差tθが大きく、電源装置A10の出力電流が抑制される場合、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられた調整デッドタイム(図2における期間D)は小さくなる。期間Cでは、スイッチング素子TR3の還流ダイオードおよびスイッチング素子TR4を介して、一次巻線31に電流が流れる。一方、期間Dでは、スイッチング素子TR2の還流ダイオード、直流電源1の平滑コンデンサ、およびスイッチング素子TR3の還流ダイオードを介して、一次巻線31に電流が流れる。期間Dの方が期間Cより消費されるエネルギーが大きい。したがって、調整デッドタイム(期間D)を小さくすることで、期間Eまでに消費されるエネルギーを抑制できる。
【0041】
図3は、駆動信号生成部54の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。図3に示すように、駆動信号生成部54は、機能構成として、P1生成部541、P2生成部542、P3生成部543、P4生成部544、周期設定部545、パルス幅設定部546、デッドタイム設定部547、および調整値設定部548を備えている。
【0042】
周期設定部545は、所定の周期Tを設定する。周期設定部545は、設定された周期TをP1生成部541に出力する。また、周期設定部545は、周期Tの半周期(T/2)をP3生成部543およびデッドタイム設定部547に出力する。パルス幅設定部546は、所定のパルス幅Tonを設定する。パルス幅設定部546は、設定されたパルス幅Tonを、P1生成部541、P2生成部542、P3生成部543、P4生成部544、およびデッドタイム設定部547に出力する。デッドタイム設定部547は、周期設定部545から入力される半周期(T/2)と、パルス幅設定部546から入力されるパルス幅Tonとに基づいて、デッドタイムtd(=T/2-Ton)を設定する。デッドタイム設定部547は、設定されたデッドタイムtdをP2生成部542およびP3生成部543に出力する。調整値設定部548は、位相差設定部53から入力される位相差tθに基づいて、調整値Δtを設定する。調整値設定部548は、調整値ΔtをP2生成部542およびP4生成部544に出力する。
【0043】
P1生成部541は、周期設定部545から入力される周期Tと、パルス幅設定部546から入力されるパルス幅Tonとに基づいて、駆動信号P1を生成する。P1生成部541は、周期Tごとにパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりからパルス幅Tonの経過後にパルスを立ち下げることで、駆動信号P1を生成する。
【0044】
P3生成部543は、周期設定部545から入力される半周期(T/2)と、パルス幅設定部546から入力されるパルス幅Tonと、P1生成部541から入力される駆動信号P1とに基づいて、駆動信号P3を生成する。P3生成部543は、駆動信号P1の立ち上がりから半周期(T/2)経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりからパルス幅Tonの経過後にパルスを立ち下げることで、駆動信号P3を生成する。なお、P3生成部543は、デッドタイム設定部547からデッドタイムtdを入力され、駆動信号P1の立ち下がりからデッドタイムtd経過後にパルスを立ち上げてもよい。また、P3生成部543は、駆動信号P3のパルスの立ち下がりから、半周期(T/2)とデッドタイムtdの経過後にパルスを立ち上げてもよい。
【0045】
P4生成部544は、パルス幅設定部546から入力されるパルス幅Tonと、位相差設定部53から入力される位相差tθと、調整値設定部548から入力される調整値Δtと、P1生成部541から入力される駆動信号P1とに基づいて、駆動信号P4を生成する。P4生成部544は、駆動信号P1のパルスの立ち上がりから位相差tθの経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりからパルス幅(Ton+Δt)の経過後にパルスを立ち下げることで、駆動信号P4を生成する。
【0046】
P2生成部542は、パルス幅設定部546から入力されるパルス幅Tonと、位相差設定部53から入力される位相差tθと、調整値設定部548から入力される調整値Δtと、P3生成部543から入力される駆動信号P3とに基づいて、駆動信号P2を生成する。P2生成部542は、駆動信号P3のパルスの立ち上がりから位相差tθの経過後にパルスを立ち上げ、当該パルスの立ち上がりからパルス幅(Ton+Δt)の経過後にパルスを立ち下げることで、駆動信号P2を生成する。なお、P2生成部542は、デッドタイム設定部547からデッドタイムtdを入力され、P4生成部544から駆動信号P4を入力されて、駆動信号P4の立ち下がりから調整デッドタイム(td-Δt)経過後にパルスを立ち上げてもよい。
【0047】
P1生成部541が生成した駆動信号P1と、P2生成部542が生成した駆動信号P2と、P3生成部543が生成した駆動信号P3と、P4生成部544が生成した駆動信号P4とは、ドライブ回路6で増幅されて、インバータ回路2のスイッチング素子TR1~TR4にそれぞれ入力される。なお、駆動信号生成部54の内部構成は上記に限定されない。駆動信号生成部54は、図2に示す駆動信号P1~P4を生成できればよい。なお、制御回路5の各部はディジタル回路として実現してもよいし、アナログ回路として実現してもよい。
【0048】
次に、溶接電源装置A1の作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態によると、制御回路5は、駆動信号P1~P4を生成して、インバータ回路2の各スイッチング素子TR1~TR4にそれぞれ入力する。位相差設定部53は、減算部52が算出した、電流信号Iと目標電流値I*との偏差ΔIに基づいて位相差tθを設定する。駆動信号生成部54は、位相差設定部53より入力される位相差tθに応じて、駆動信号P1のパルスと駆動信号P4のパルスとの重なり期間の長さ、および、駆動信号P3のパルスと駆動信号P2のパルスとの重なり期間の長さを調整することで、電源装置A10の出力電流を制御する。調整値設定部548は、位相差設定部53より入力される位相差tθに基づいて調整値Δtを設定する。調整値設定部548は、位相差tθが大きいほど、調整値Δtが大きくなるように設定する。駆動信号生成部54は、駆動信号P4のパルスと駆動信号P2のパルスとの間に設けられたデッドタイムを、駆動信号P1と駆動信号P3とのデッドタイムtdより調整値Δtだけ短い調整デッドタイム(td-Δt)とする。位相差tθが大きく、インバータ回路2の出力電流が小さくなるほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。したがって、インバータ回路2の出力電流が小さく、トランス3の一次巻線31の漏れインダクタンスに蓄えられるエネルギーが少ない場合に、調整デッドタイム(図2の各期間D参照)が小さくなって、期間Eまでに消費されるエネルギーが抑制される。これにより、溶接電源装置A1は、漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギーが期間Eまでに消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現する。また、トランス3の一次巻線31の漏れインダクタンスは増加させないので、溶接電源装置A1は、最大出力電力を低下させない。
【0050】
また、本実施形態によると、調整値設定部548は、位相差設定部53より入力される位相差tθに基づいて調整値Δtを設定する。駆動信号生成部54は、調整値設定部548が設定する調整値Δtに基づいて、調整デッドタイムを設定する。位相差tθが大きいほど、調整値Δtが大きい値に設定されるので、調整デッドタイムは小さくなる。また、位相差tθが大きいほど、インバータ回路2の出力電流が小さくなる。したがって、制御回路5は、インバータ回路2の出力電流が小さくなる場合に、調整デッドタイムを小さくできる。
【0051】
また、本実施形態によると、駆動信号P1のパルスと駆動信号P4のパルスとの重なり期間(図2の各期間A参照)が、駆動信号P3のパルスと駆動信号P2のパルスとの重なり期間(図2の各期間E参照)と同じなので、正極側の通電時間と負極側の通電時間とが等しくなる。これにより、溶接電源装置A1は、トランス3の偏磁を抑制できる。
【0052】
なお、本実施形態においては、制御回路5が、駆動信号P4(P2)のパルスの立ち上がりタイミングを、駆動信号P1(P3)より位相差tθだけ遅らせる場合について説明したが、これに限られない。制御回路5は、駆動信号P4(P2)のパルスの立ち上がりタイミングを、駆動信号P1(P3)より位相差tθだけ進めてもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、駆動信号P1がスイッチング素子TR1に入力され、駆動信号P2がスイッチング素子TR2に入力され、駆動信号P3がスイッチング素子TR3に入力され、駆動信号P4がスイッチング素子TR4に入力される場合について説明したが、これに限られない。例えば、図4(a)に示すように、駆動信号P1がスイッチング素子TR2に入力され、駆動信号P2がスイッチング素子TR1に入力され、駆動信号P3がスイッチング素子TR4に入力され、駆動信号P4がスイッチング素子TR3に入力されてもよい。すなわち、第1アーム21が、基準になるアームであってもよいし、制御の対象になるアームであってもよい。また、図4(b)に示すように、駆動信号P1がスイッチング素子TR3に入力され、駆動信号P2がスイッチング素子TR4に入力され、駆動信号P3がスイッチング素子TR1に入力され、駆動信号P4がスイッチング素子TR2に入力されてもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、制御回路5が各駆動信号P1~P4を、スイッチング素子TR1~TR4のいずれかに固定して出力する場合について説明したが、これに限られない。制御回路5は、各駆動信号P1~P4の出力先を、スイッチング素子TR1~TR4で定期的に切り替えてもよい。この場合、駆動信号P4,P2が入力されて、オン期間が変動するスイッチング素子が固定されないので、同じスイッチング素子だけに負担がかかることを防止できる。
【0055】
図5図6は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0056】
〔第2実施形態〕
図5(a)は、本開示の第2実施形態に係る溶接電源装置A2を説明するための図であり、制御回路5を示すブロック図である。図5(a)においては、制御回路5以外の構成の記載を省略している。本実施形態に係る溶接電源装置A2は、駆動信号生成部54が電流センサ7より入力される電流信号Iに基づいて調整値Δtを設定する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態では、駆動信号生成部54は、位相差設定部53より入力される位相差tθの代わりに、電流センサ7より入力される電流信号Iに基づいて調整値Δtを設定する。本実施形態では、電流信号Iが(I1≦I)の場合に調整値Δtとして「0」が設定され、(I2≦I<I1)の場合に調整値ΔtとしてΔt1(>0)が設定され、(I<I2)の場合に調整値ΔtとしてΔt2(>Δt1)が設定される。つまり、電流信号Iが小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定されている。したがって、電流信号Iが小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。また、電流信号Iは、インバータ回路2の出力電流に略比例する。したがって、インバータ回路2の出力電流が小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。I1は、期間Eに達する前に消費されてしまわないエネルギーを蓄えられる電流に対応した値が設定され、たとえば、溶接電源装置A2の定格電流の75%程度に対応した値が設定される。I2は、I1より小さい値が設定される。なお、電流信号Iが小さいほど、調整値Δtが大きくなればよく、調整値Δtの設定方法は、上記に限定されない。本実施形態では、調整値Δtが3段階で設定されているが、2段階で設定されてもよく、4段階以上で設定されてもよい。また、調整値Δtは、電流信号Iに対して線型的に変化するよう設定されてもよい。調整値Δtの設定方法および各設定値は、実験やシミュレーションに基づいて設定される。
【0058】
本実施形態によると、駆動信号生成部54は、電流センサ7より入力される電流信号Iに基づいて調整値Δtを設定する。駆動信号生成部54は、電流信号Iが小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定する。電流信号Iはインバータ回路2の出力電流に略比例するので、インバータ回路2の出力電流が小さくなるほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。したがって、溶接電源装置A2は、漏れインダクタンスに蓄えられエネルギーが期間Eまでに消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現し、かつ、最大出力電力を低下させない。また、制御回路5は、インバータ回路2の出力電流が小さくなる場合に、調整デッドタイムを小さくできる。また、本実施形態においても、正極側の通電時間と負極側の通電時間とが等しくなるので、溶接電源装置A2は、トランス3の偏磁を抑制できる。
【0059】
〔第3実施形態〕
図5(b)は、本開示の第3実施形態に係る溶接電源装置A3を説明するための図であり、制御回路5を示すブロック図である。図5(b)においては、制御回路5以外の構成の記載を省略している。本実施形態に係る溶接電源装置A3は、駆動信号生成部54が目標設定部51より入力される目標電流値I*に基づいて調整値Δtを設定する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態では、駆動信号生成部54は、位相差設定部53より入力される位相差tθの代わりに、目標設定部51より入力される目標電流値I*に基づいて調整値Δtを設定する。本実施形態では、目標電流値I*が(I1≦I*)の場合に調整値Δtとして「0」が設定され、(I2≦I*<I1)の場合に調整値ΔtとしてΔt1(>0)が設定され、(I*<I2)の場合に調整値ΔtとしてΔt2(>Δt1)が設定される。つまり、目標電流値I*が小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定されている。したがって、目標電流値I*が小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。また、溶接電源装置A3の出力電流は、目標電流値I*に制御されるので、目標電流値I*が小さいほど小さくなる。また、インバータ回路2の出力電流は、溶接電源装置A3の出力電流に略比例する。したがって、インバータ回路2の出力電流が小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。I1は、期間Eに達する前に消費されてしまわないエネルギーを蓄えられる電流に対応した値が設定され、たとえば、溶接電源装置A3の定格電流の75%程度に対応した値が設定される。I2は、I1より小さい値が設定される。なお、目標電流値I*が小さいほど、調整値Δtが大きくなればよく、調整値Δtの設定方法は、上記に限定されない。本実施形態では、調整値Δtが3段階で設定されているが、2段階で設定されてもよく、4段階以上で設定されてもよい。また、調整値Δtは、電流信号Iに対して線型的に変化するよう設定されてもよい。調整値Δtの設定方法および各設定値は、実験やシミュレーションに基づいて設定される。
【0061】
本実施形態によると、駆動信号生成部54は、目標設定部51より入力される目標電流値I*に基づいて調整値Δtを設定する。駆動信号生成部54は、目標電流値I*が小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定する。溶接電源装置A3の出力電流は目標電流値I*に制御され、インバータ回路2の出力電流は溶接電源装置A3の出力電流に略比例するので、インバータ回路2の出力電流が小さくなるほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。したがって、溶接電源装置A3は、漏れインダクタンスに蓄えられエネルギーが期間Eまでに消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現し、かつ、最大出力電力を低下させない。また、制御回路5は、インバータ回路2の出力電流が小さくなる場合に、調整デッドタイムを小さくできる。また、本実施形態においても、正極側の通電時間と負極側の通電時間とが等しくなるので、溶接電源装置A3は、トランス3の偏磁を抑制できる。
【0062】
〔第4実施形態〕
図6は、本開示の第4実施形態に係る溶接電源装置A4を説明するための図であり、溶接電源装置A4の全体構成を示す図である。本実施形態に係る溶接電源装置A4は、駆動信号生成部54が電流センサ8より入力される電流信号I’に基づいて調整値Δtを設定する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態では、溶接電源装置A4は、電流センサ8をさらに備えている。電流センサ8は、出力ラインC2に配置されており、インバータ回路2の出力電流を検出して、電流信号I’として制御回路5に出力する。なお、電流センサ8の配置位置は限定されず、インバータ回路2の出力電流を検出できればよい。たとえば、電流センサ8は、出力ラインC1に配置されてもよい。また、電流センサ8は、各スイッチング素子TR1~TR4にそれぞれ配置されて、各スイッチング素子TR1~TR4に流れる電流を検出してもよい。
【0064】
また、本実施形態では、駆動信号生成部54は、位相差設定部53より入力される位相差tθの代わりに、電流センサ8より入力される電流信号I’に基づいて調整値Δtを設定する。本実施形態では、駆動信号生成部54は、電流センサ8より入力される電流信号I’に基づいて、インバータ回路2の出力電流の電流実効値Irmsを算出する。駆動信号生成部54は、算出した電流実効値Irmsに基づいて調整値Δtを設定する。本実施形態では、電流実効値Irmsが(I1≦Irms)の場合に調整値Δtとして「0」が設定され、(I2≦Irms<I1)の場合に調整値ΔtとしてΔt1(>0)が設定され、(Irms<I2)の場合に調整値ΔtとしてΔt2(>Δt1)が設定される。つまり、電流実効値Irmsが小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定されている。したがって、インバータ回路2の出力電流(電流実効値Irms)が小さいほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。I1は、期間Eに達する前に消費されてしまわないエネルギーを蓄えられる電流に対応した値が設定され、たとえば、インバータ回路2の定格電流の75%程度に対応した値が設定される。I2は、I1より小さい値が設定される。なお、電流実効値Irmsが小さいほど、調整値Δtが大きくなればよく、調整値Δtの設定方法は、上記に限定されない。本実施形態では、調整値Δtが3段階で設定されているが、2段階で設定されてもよく、4段階以上で設定されてもよい。また、調整値Δtは、電流実効値Irmsに対して線型的に変化するよう設定されてもよい。調整値Δtの設定方法および各設定値は、実験やシミュレーションに基づいて設定される。
【0065】
本実施形態によると、駆動信号生成部54は、電流センサ8より入力される電流信号I’に基づいて電流実効値Irmsを算出し、電流実効値Irmsに基づいて調整値Δtを設定する。駆動信号生成部54は、電流実効値Irmsが小さいほど、調整値Δtが大きくなるように設定する。したがって、インバータ回路2の出力電流(電流実効値Irms)が小さくなるほど、調整デッドタイム(td-Δt)は小さくなる。これにより、溶接電源装置A4は、漏れインダクタンスに蓄えられエネルギーが期間Eまでに消費されてしまうことを防いで、ゼロボルトスイッチングを実現し、かつ、最大出力電力を低下させない。また、制御回路5は、インバータ回路2の出力電流が小さくなる場合に、調整デッドタイムを小さくできる。また、本実施形態においても、正極側の通電時間と負極側の通電時間とが等しくなるので、溶接電源装置A2は、トランス3の偏磁を抑制できる。
【0066】
なお、上記第1~4実施形態においては、本発明を溶接電源装置に適用した場合について説明したが、これに限られない。本発明は、インバータ回路で直流電圧を高周波電圧に変換するすべての電源装置に適用可能である。
【0067】
本発明に係る電源装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電源装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0068】
A1~A4:溶接電源装置、1:直流電源、2:インバータ回路、21:第1アーム、22:第2アーム、TR1~TR4:スイッチング素子、3:トランス、4:整流回路、5:制御回路、53:位相差設定部、541:P1生成部、542:P2生成部、543:P3生成部、544:P4生成部、545:周期設定部、546:パルス幅設定部、548:調整値設定部、8:電流センサ、B:溶接トーチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7