(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190986
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20221220BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20221220BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221220BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20221220BHJP
B60W 20/14 20160101ALI20221220BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221220BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/16
B60W20/14
B60W20/00 900
F02D29/06 D
F02D29/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099558
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】米村 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 一真
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB01
3D202BB08
3D202BB11
3D202BB53
3D202CC13
3D202CC44
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD22
3D202DD26
3G093BA22
3G093CA12
3G093DA04
3G093EA03
3G093EB08
3G093EC02
3G093EC03
(57)【要約】
【課題】内燃機関の間欠運転が禁止された状態であっても、内燃機関の過回転を防止できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置35は、発電用の第1モータ・ジェネレータ25と、走行用の駆動力を出力可能な内燃機関2及び第2モータ・ジェネレータ26と、を備えたハイブリッド車両1において、内燃機関2を間欠運転させて走行するように構成された制御装置35であって、内燃機関2のオイル希釈量を推定する推定手段と、内燃機関2に設けられた排ガス浄化触媒の温度を計測する計測手段と、内燃機関2および第1モータ・ジェネレータ25の回転数を検知する検知手段と、を備えている。オイル希釈量が所定値を超えた場合、かつ、触媒温度が所定値を超えた場合には、内燃機関2の間欠停止を禁止した上で、第1モータ・ジェネレータ25の制御の応答性を高めること、又は、内燃機関2の回転数上限閾値を引き下げることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用の第1モータ・ジェネレータと、走行用の駆動力を出力可能な内燃機関及び第2モータ・ジェネレータと、を備えたハイブリッド車両において、前記内燃機関を間欠運転させて走行するように構成された制御装置であって、
前記内燃機関のオイル希釈量を推定する推定手段と、
前記内燃機関に設けられた排ガス浄化触媒の温度を計測する計測手段と、
前記内燃機関及び前記第1モータ・ジェネレータの回転数を検知する検知手段と、を備え、
前記オイル希釈量が所定値を超えた場合、かつ、触媒温度が所定値を超えた場合には、前記内燃機関の間欠停止を禁止した上で、
前記第1モータ・ジェネレータの制御の応答性を高めること、又は、
前記内燃機関の回転数上限閾値を引き下げること
を特徴とする、
ハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を間欠停止してモータ・ジェネレータだけで走行できるように構成されたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の駆動中にピストンとシリンダとの隙間からクランクケースに僅かに漏れるブローバイガスには、未燃焼の燃料が含まれている。ブローバイガスの温度が下がると、気化していた燃料が凝集して潤滑油に混入する。燃料によって希釈された潤滑油は、クランクケースを潤滑する性能が低下してしまうため、クランクケース内を換気して潤滑油から燃料を揮発させる。潤滑油から揮発した未燃焼の燃料を大気中に開放することは法令で規制されている。クランクケースを換気した空気は、内燃機関の吸気系に導入されて燃料と空気とを混合した混合気に合流する。
【0003】
潤滑油に混入している燃料が多いときには、クランクケースの換気回数を増やして燃料の揮発を促したいところ、ハイブリッド車両は、内燃機関を間欠停止してモータ・ジェネレータだけで走行できるため、モータ走行中にクランクケースの換気が止まり燃料の除去が進みにくい。そこで、潤滑油に混入した燃料の濃度を検知し、燃料が多いときには内燃機関の間欠停止を禁止して内燃機関吸気系への燃料供給を止めないハイブリッド車両の制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、特許文献1には開示されていないが、排ガス浄化触媒が高温のうちは内燃機関が停止しないように間欠運転を禁止することにより、排ガス浄化触媒の溶損や劣化を防止できる。内燃機関の排気系には、内燃機関の排気ガスを浄化する排ガス浄化触媒が取り付けられている。排ガス浄化触媒は、炭化水素を酸化して窒素酸化物を還元する貴金属等の触媒と、触媒を担持する多孔質の担体と、で構成されている。燃料を酸化すると反応熱で触媒自体の温度が上昇して活性が高くなる。触媒が高温になるに従って酸化反応が急速に進行するようになり、ますます温度上昇しやすくなる。
【0006】
排ガス浄化触媒は、内燃機関で燃え残ったごく少量の燃料を浄化した反応熱や排気ガスとの熱交換で所定の温度域になるように調製されている。活性化している触媒に対して、少量ではなく多量の燃料を含んだ混合気を供給すると、反応熱が過大になって触媒温度が急速に上昇する。貴金属触媒を担持する担体が溶け落ちて変形したり、担体上で溶融・再凝固した貴金属触媒が粒成長して排気ガスに触れる反応面積が小さくなったりしてしまう。
【0007】
ハイブリッド車両において内燃機関を間欠停止すると、吸気系の空気が排ガス浄化触媒に供給される。クランクケースを換気した空気には、未燃焼の燃料が含まれているため、排ガス浄化触媒がまだ高温のうちに内燃機関を間欠停止すると、活性化している触媒にクランクケースから揮発した燃料が多量に供給されて排ガス浄化触媒が溶損するおそれがある。内燃機関の間欠運転を禁止すれば、そのような事態を防止できる。
【0008】
ところで、ハイブリッド車両において内燃機関の回転数を引き下げる場合、内燃機関への燃料の供給を停止してエンジンブレーキの効きを強くし、かつモータ・ジェネレータを制御して回生ブレーキの効きを強くして内燃機関の回転数が下がる側にトルクを出すことにより、内燃機関とモータ・ジェネレータと両方から内燃機関の回転数を抑え込むように制動する。しかしながら、内燃機関の間欠運転が禁止されていると、内燃機関への燃料の供給を止めることができず、タイヤがスリップしたときに内燃機関の回転数が急上昇して過回転に至るおそれがある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の間欠運転が禁止された状態であっても、内燃機関の過回転を防止できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る制御装置は、発電用の第1モータ・ジェネレータと、走行用の駆動力を出力可能な内燃機関及び第2モータ・ジェネレータと、を備えたハイブリッド車両において、内燃機関を間欠運転させて走行するように構成された制御装置であって、内燃機関のオイル希釈量を推定する推定手段と、内燃機関に設けられた排ガス浄化触媒の温度を計測する計測手段と、内燃機関および第1モータ・ジェネレータの回転数を検知する検知手段と、を備えている。オイル希釈量が所定値を超えた場合、かつ、触媒温度が所定値を超えた場合には、内燃機関の間欠停止を禁止した上で、第1モータ・ジェネレータの制御の応答性を高めること、又は、内燃機関の回転数上限閾値を引き下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハイブリッド車両において内燃機関の間欠運転が禁止された状態であっても内燃機関の過回転を防止できる制御装置を提供することができる。内燃機関の間欠運転を禁止している間に、潤滑油に混入した燃料を効率的に除去したり、排ガス浄化触媒の溶損を防止したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えたハイブリッド車両の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された内燃機関を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された制御装置が実施する制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、充電加算値を算出するための算出マップの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された制御を用いて内燃機関への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された制御の変形例を用いて内燃機関への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。
【
図7】
図7は、タイヤスリップ時に内燃機関への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。
【
図8】
図8は、従来の制御を用いて内燃機関への燃料供給を停止した場合の共線線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
図1は、本発明の各実施形態に共通するハイブリッド車両の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、内燃機関2と、ハイブリッドトランスアクスル3と、を備えたシリーズパラレル型のハイブリッド車両として構成されている。内燃機関2は、4つの気筒2aを有する直列4気筒型の内燃機関である。
【0014】
図2は、
図1に示された内燃機関を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、内燃機関2は気筒2a毎に設けられたピストン5と、ピストン5とクランク軸6とを連結するコネクティングロッド7とを有する。各気筒2aには吸気通路8及び排気通路9がそれぞれ接続されている。吸気通路8は吸気弁10にて、排気通路9は排気弁11にてそれぞれ開閉される。各気筒2aの天井部には点火プラグ12が設けられている。クランク軸6は回転可能な状態でクランクケース15に収容されており、クランクケース15の底部には潤滑油Oが溜まっている。
【0015】
潤滑油Oを内燃機関2の各部に供給するためオイルポンプ16が設けられている。オイルポンプ16はオイルストレーナ17を介して潤滑油Oを吸引し、吸引した潤滑油Oを不図示のオイル通路を介して内燃機関2の各部に供給する。また、ピストン5を冷却するためクランクケース15の内部側からピストン5に潤滑油Oを噴射するオイルジェット20が設けられている。オイルジェット20はオイル通路から分岐する分岐路21と、分岐路21の先端部に設けられた噴射ノズル22と、分岐路21に設けられた制御弁23と、を備えている。制御弁23の開度を調整することにより潤滑油Oの噴射量を調整できる。
【0016】
また、内燃機関2にはクランクケース15内を換気して吸気系の一例である吸気通路8に導入する換気装置24が設けられている。換気装置24はクランクケース15と吸気通路8とを連通する換気通路24aと、換気通路24aに設けられた制御弁24bと、を備えている。制御弁24bは吸気通路8の負圧が小さいほど開度が大きくなるように、換言すれば吸入空気量が多いほどブローバイガスの導入量が多くなるように動作する周知のものである。
【0017】
図1に示すように、ハイブリッドトランスアクスル3は、2つの第1及び第2モータ・ジェネレータ25、26と、内燃機関2及び第1モータ・ジェネレータ25が連結され、遊星歯車機構として構成された動力分割機27と、動力分割機構27から出力される動力を左右の駆動輪30に分配するディファレンシャル機構28と、を含んでいる。ハイブリッドトランスアクスル3に含まれるこれらの構成要素は不図示のケースに収容されている。
【0018】
内燃機関2の動力は動力分割機構27にて分割される。動力分割機構27にて分割された一方の動力は第1モータ・ジェネレータ25の発電に利用され、分割された他方の動力はディファレンシャル機構28に伝達される。第2モータ・ジェネレータ26は動力分割機構27からディファレンシャル機構28までの動力伝達経路に対して動力伝達可能な状態で設けられている。
【0019】
各モータ・ジェネレータ25、26はDC-DCコンバータ及びインバータとしてそれぞれ機能する電気回路31を介してバッテリの一例であるHVバッテリ32に電気的に接続されている。HVバッテリ32は直流200V程度の比較的高電圧な例えばニッケル水素バッテリとして構成されている。電気回路31はHVバッテリ32の直流電力を昇圧しつつ交流電力に変換して各モータ・ジェネレータ25、26に供給でき、かつ各モータ・ジェネレータ25、26の発電電力を減圧しつつ直流電力に変換してHVバッテリ32に供給できる。
【0020】
車両1はコンピュータとして構成された電子制御装置(ECU)35にて制御される。ECU35は車両1に設けられた内燃機関2の運転状態を制御するとともに、電気回路31を操作することにより各モータ・ジェネレータ25、26を制御する。なお、内燃機関2を制御する制御装置と電気回路31を制御する制御装置とを別々に設け、これらの制御装置を相互に通信可能な状態とすることによりECU35を構成することも可能である。
【0021】
ECU35には、車両1の各部の情報を検出する様々なセンサ類からの信号が入力される。図示の例では、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ36、車両1の車速に応じた信号を出力する車速センサ37、及びHVバッテリ32の残量に応じた信号を出力するSOCセンサ38が、車両1にそれぞれ設けられている。
【0022】
また、ECU35は、HVバッテリ32の残量が目標値を中心として推移させるため、HVバッテリ32への充放電要求量に応じた第1モータ・ジェネレータ25の発電量が得られるように内燃機関2を制御する。この場合における内燃機関2のエンジン要求出力は次式1にて定義される。
【0023】
エンジン要求出力=ドライバ要求出力+電気負荷電力+充放電要求量 ……1
【0024】
式1において、ドライバ要求出力はアクセル開度に基づいて計算され、電気負荷電力は車両1に搭載された不図示のエアコン等の電装品の消費電力に基づいて計算される。式1から明らかなように、充放電要求量が大きくなるとそれだけエンジン要求出力が大きくなるので内燃機関2の吸入空気量が増加する。
【0025】
以下、ECU35が実施する制御の一例について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る制御の一例を示すフローチャートである。
図4は、充電加算値を算出するための算出マップの一例を示す図である。
図3に示された制御ルーチンのプログラムはECU35に保持されていて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0026】
図3のステップS1において、ECU35はオイル希釈度を所得する。オイル希釈度は内燃機関2の潤滑油へ燃料が混入するオイル希釈の程度のことである。本実施形態ではECU35が別ルーチンで実施する空燃比のフィードバック制御の制御中心のずれに基づいてオイル希釈度を取得する。オイル希釈度が高いほど潤滑油から蒸発する燃料成分が増えて混合気の空燃比がリッチ側にシフトするので、ECU35はそのシフト量に基づいてオイル希釈度を推定して取得する。
【0027】
ステップS2において、ECU35はオイル希釈度が基準値以上か否かを判定する。この基準値は換気装置24によるクランクケース15の換気により空燃比が過剰にリッチとならないように設定される。また、空燃比が過剰にリッチとならず、かつ燃料カットによってエンジン空転時に不図示の排ガス浄化触媒上で燃料が浄化されて触媒温度が所定値以上とならないように、基準値が設定されてもよい。オイル希釈度が基準値以上である場合はステップS3に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。排ガス浄化触媒の触媒温度が所定値以上である場合はステップS3に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了するように構成してもよい。
【0028】
オイル希釈度が基準値以上である場合や排ガス浄化触媒の触媒温度が所定値以上である場合において、ECU35は内燃機関2の間欠運転を禁止してクランクケース15の換気回数を増やし、潤滑油Oを希釈する燃料の揮発を促す制御を実施する。このときECU35はオイルジェット20の制御弁23を操作することによって潤滑油の噴射量をオイル希釈度に応じて制御する。オイル希釈度が基準値を超えて当該制御を実施する場合はオイル希釈度が基準値以下の場合よりもオイルジェット20による潤滑油の噴射量が増加する。これによりピストン5に噴射された潤滑油がピストン5の熱を受けて燃料の蒸発が促進されるのでオイル希釈を抑制又は低減できる。
【0029】
ECU35は内燃機関2の間欠停止を禁止し、かつ充電量増加制御を実施する。そして、今回のルーチンを終了する。充電量増加制御は上述した充放電要求量を充電側に増加させるものである。具体的には、ECU35が次式2に基づいて充放電要求量を算出することによって充電量増加制御を実施する。
【0030】
充放電要求量=通常充放電要求量+充電加算量≦充電量上限値 ……2
【0031】
式2において、通常充放電要求量はHVバッテリ32の残量等に応じて計算される。充電量上限値はHVバッテリ32の残量や温度等によって計算される。充電加算量は一例として
図4に示された算出マップに基づいてオイル希釈度に応じて算出される。
図4に示すように、充電加算量はオイル希釈度が基準値を超えるまではゼロであり、オイル希釈度が基準値を超えてからはオイル希釈度に応じて増加するように算出される。ただし、充電量上限値を超えることができないため、充電加算量は上限値に制限される。この上限値は、充電量上限値から通常充電量を差し引いたものに相当する。
【0032】
式2に基づいて充放電要求量が算出されることにより、充放電要求量が充電側に増加する。その結果、式1で算出されるエンジン要求出力はオイル希釈度が基準値以下の場合と比べて増加する。なお、充電加算量は大きいほどオイル希釈の抑制又は低減効果が高くなるが、充電加算量を大きくすることによる弊害を考慮することが望ましい。そのような弊害としては、HVバッテリ32の残量を目標値(例えば60%)に制御する制御性の悪化や、吸入空気量が少なくて済む運転状態時に吸入空気量が増加することによる騒音の悪化等が考えられる。これまで説明した内燃機関2の間欠運転を禁止する状態は、所定の条件が揃ったとき解除される。
【0033】
ステップS3において、ECU35は内燃機関2の間欠運転が禁止されている状態が継続中であるか否かを判定する。間欠運転の禁止が継続中である場合はステップS4に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0034】
間欠運転の禁止が継続中に車両1のタイヤがスリップした場合、ステップS4において、ECU35は第1モータ・ジェネレータ35のフィードバック制御及び/又はフィードフォワード制御に算入される入力値がタイヤスリップ前よりも大きい値になるように、ゲインに応じて入力値を切り替えて第1モータ・ジェネレータ35の制御の応答性を高める。一例として、ECU35が第1モータ・ジェネレータ35のトルクを内燃機関2の目標回転数に対して制御する場合、上限となる目標回転数に対して実回転数が大きく過回転している状態では、その乖離量に比例する入力値や乖離量の時間積分に比例する入力値をゲインに応じて制御する。これにより、切り替え前よりも回生ブレーキの効きが強くなるようにし、動力分割機構27を介して第1モータ・ジェネレータ35から内燃機関2に力を掛けて内燃機関2の回転数を下げる側に第1モータ・ジェネレータ25を制御できる。
【0035】
図5乃至
図8は、内燃機関2の間欠運転を禁止した状態においてタイヤのスリップが発生した前後における第1モータ・ジェネレータ25、内燃機関2、第2モータ・ジェネレータ26の動作を示す共線図である。各々の共線図において、左の縦軸は第1モータ・ジェネレータ25の回転数を示し、真ん中の縦軸は内燃機関2の回転数を示し、右の縦軸は第2モータ・ジェネレータ26の回転数を示している。
【0036】
回転数0を示す横軸よりも上側は正の向きの回転数であり、下側は負の向きの回転数である。前述したように、第1モータ・ジェネレータ(発電機)25、内燃機関2、第2モータ・ジェネレータ(電動機)26は、動力分割機構(プラネタリーギア)27で互いに接続されている。三本の縦軸の間隔は、動力分割機構27のギア比を示し、各々の回転数は直線で結ばれる。
【0037】
図7は、タイヤスリップ時に内燃機関への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。
図7に示すように、タイヤがスリップすると、タイヤを駆動する第2モータ・ジェネレータ26の回転数がタイヤスリップの直前に比べて急速に上昇する。動力分割機構27によって第2モータ・ジェネレータに接続された内燃機関2の回転数も急速に上昇し、内燃機関2が過回転に至るおそれがある。
【0038】
図8は、従来の制御を用いて内燃機関2への燃料供給を停止した場合の共線線図である。従来の制御では、内燃機関2の回転数が上限の閾値を超えると、間欠運転が禁止されている状態であっても内燃機関2への燃料供給を停止してエンジンブレーキの効きを強くし、第1モータ・ジェネレータ25を制御して回生ブレーキの効きを強くして内燃機関2の回転数を引き下げていた。
【0039】
しかしながら、
図8に示された従来の制御では、内燃機関2の回転数の引き下げが間に合わないおそれがあった。本発明では、オイル希釈量が多く、触媒温度が高い場合、つまり間欠禁止を継続する必要があり、内燃機関2の過回転が懸念される条件では、第1モータ・ジェネレータ25のゲインを切り替える。回転数の上昇に応じて可変にしてもよい。ゲイン値を切り替えることにより第1モータ・ジェネレータ25の制御の応答性を高めて、内燃機関2の過回転を防止することができる。
【0040】
図4は、第1モータ・ジェネレータ25のゲイン切替制御を示す図であって、横軸のエンジン回転数が基準値に達したタイミングでゲイン値が切り替わることを示す図である。図示した例では、ゲインを上げ始めないと過回転を抑制できない回転数を基準値として、該基準値に達したタイミングで従来のゲインが過回転を抑制するゲインに切り替わっている。
【0041】
図5は、
図4に示された制御を用いて内燃機関2への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。前述したように、制御装置の一例であるECU35は、タイヤスリップを検知したとき、第1モータ・ジェネレータ25のフィードバック制御に算入されるフィードバックゲインがタイヤスリップ前よりも大きい値になるように切り替えるか、第1モータ・ジェネレータ25のフィードフォワード制御に算入されるフィードフォワードゲインがタイヤスリップ前よりも大きい値になるように切り替えるか、その双方の手段かによって、第1モータ・ジェネレータ25の応答性を高める制御を実施する。
【0042】
これにより、
図5に示すように、第2モータ・ジェネレータ26の回転数が正の向きに急速に上昇しても、第1モータ・ジェネレータ25の回転数を負の向きに大きく引き下げてバランスさせ、内燃機関2の回転数の急速な上昇を抑えることができる。
【0043】
図6は、
図4に示された制御の変形例を用いて内燃機関への燃料供給を停止しなかった場合の共線図である。変形例では、第1モータ・ジェネレータ25の応答性を高くする代わりに、内燃機関2の回転数上限の閾値を従来の制御よりも小さい数値に引き下げている。変形例の制御によれば、第1モータ・ジェネレータ25による内燃機関2の回転数の引き下げが従来の制御よりも早くから開始するため、内燃機関2が過回転に至る前に間に合うように回転数を引き下げ始めることができる。
【0044】
以上のように構成されたECU35及び該ECU35を備えた車両1によれば、内燃機関2の間欠運転が禁止された状態であっても内燃機関2の過回転を防止できる。内燃機関2の間欠運転を禁止している間に、潤滑油Oに混入した燃料を効率的に除去したり、排ガス浄化触媒の溶損を防止したりすることができる。
【0045】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…車両、2…内燃機関、2a…気筒、3…ハイブリッドトランスアクスル、5…ピストン、6…クランク軸、7…コネクティングロッド、8…吸気通路、9…排気通路、10…吸気弁、11…排気弁、12…点火プラグ、15…クランクケース、16…オイルポンプ、17…オイルストレーナ、20…オイルジェット、21…分岐路、22…噴射ノズル、23…制御弁、24…換気装置、24a…換気通路、24b…制御弁、25…第1モータ・ジェネレータ、26… 第2モータ・ジェネレータ、27…動力分割機構、28…ディファレンシャル機構、30…駆動輪、31…電気回路、32…HVバッテリ、35…ECU(制御装置の一例)、O…潤滑油、S1~S4…ステップ。