(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190990
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】膝動作支援装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20221220BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61H3/00 B
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099562
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岡野 花奈子
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707KS21
3C707KW07
3C707XK06
3C707XK13
3C707XK27
3C707XK42
4C046AA25
4C046AA44
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD12
4C046DD14
4C046DD15
4C046DD16
4C046DD24
4C046DD39
4C046EE02
4C046EE17
4C046FF02
4C046FF12
4C046FF25
(57)【要約】
【課題】膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力の調整の自由度の高い膝動作支援装置の提供。
【解決手段】膝動作支援装置100は、ユーザの脚部に装着される。膝動作支援装置100は、一対のリンク10、20と、ストロークダンパ4とを備える。ストロークダンパ4は、一対のリンク10、20の他方の一端20aと接するロッド4aと、ロッド4aを介して減衰力を与えるシリンダ4bとを備える。一対のリンク10、20は回動した場合、一対のリンク10、20の他方の一端20aがロッド4aを押し込んで、シリンダ4bからロッド4aを介して減衰力を受けることによって、一対のリンク10、20の回動に対して抵抗力を与える。一対のリンク10、20の他方の一端20aはカム形状を有し、当該カム形状のカム曲線は、一対のリンク10、20が回動した回動角度に対するロッド4aの押し込み量の連続的な変化を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの脚部に装着される膝動作支援装置であって、
一対のリンクと、
前記一対のリンクの一方に設けられたストロークダンパと、を備え、
前記一対のリンクの一方及び他方の一端同士が、回動可能に繋がれており、
前記ストロークダンパは、前記一対のリンクの他方の一端と接するロッドと、前記ロッドを介して減衰力を与えるシリンダとを備え、
前記一対のリンクは回動した場合、前記一対のリンクの他方の一端が前記ロッドを押し込んで、前記シリンダから前記ロッドを介して前記減衰力を受けることによって、前記一対のリンクの回動に対して抵抗力を与え、
前記一対のリンクの他方の一端は、カム形状を有し、
前記カム形状のカム曲線は、前記一対のリンクが回動した回動角度に対する前記ロッドの押し込み量の連続的な変化を示す、
膝動作支援装置。
【請求項2】
前記カム形状のカム曲線は、前記ロッドの押し込み量と前記回動角度との比例定数が、前記回動角度が零度以上所定の角度以下において一定であり、前記一対のリンク間の回動角度が所定の値を超えると低下することを示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の膝動作支援装置。
【請求項3】
前記カム形状のカム曲線は、前記ロッドの押し込み量が前記一対のリンク間の回動角度に対して正比例することを示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の膝動作支援装置。
【請求項4】
前記一対のリンクの他方の一端は、前記一対のリンクの他方のリンク本体に脱着可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の膝動作支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝動作支援装置に関し、特に抵抗力の付与によって膝の動作を支援する膝動作支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような膝動作支援装置の一例として、特許文献1に開示の動作支援装具がある。特許文献1に開示の動作支援装具は、装着者が立脚状態であるか遊脚状態であるかに応じて、膝関節にかかる力を減衰する減衰力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等は、以下の課題を発見した。
膝動作支援装置を装着するユーザは、それぞれ様々な状態にある。膝動作支援装置が膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力を発揮するが、その抵抗力の変化パターンが1つに限定される。そのため、その抵抗力の変化パターンがユーザに合わないことがあった。そこで、その抵抗力の調整を高い自由度で行うことができる膝動作支援装置が要求されている。
【0005】
本発明は、上記した課題に鑑み、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力の調整の自由度の高い膝動作支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膝動作支援装置は、
ユーザの脚部に装着される膝動作支援装置であって、
一対のリンクと、
前記一対のリンクの一方に設けられたストロークダンパと、を備え、
前記一対のリンクの一方及び他方の一端同士が、回動可能に繋がれており、
前記ストロークダンパは、前記一対のリンクの他方の一端と接するロッドと、前記ロッドを介して減衰力を与えるシリンダとを備え、
前記一対のリンクは回動した場合、前記一対のリンクの他方の一端が前記ロッドを押し込んで、前記シリンダから前記ロッドを介して前記減衰力を受けることによって、前記一対のリンクの回動に対して抵抗力を与え、
前記一対のリンクの他方の一端は、カム形状を有し、
前記カム形状のカム曲線は、前記一対のリンクが回動した回動角度に対する前記ロッドの押し込み量の連続的な変化を示す。
【0007】
このような構成によれば、カムの形状に応じて、抵抗力を変化させることができ、自由度を持たせることができる。よって、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力を高い自由度で調整することができる。
【0008】
また、前記カム形状のカム曲線は、前記ロッドの押し込み量と前記回動角度との比例定数が、前記回動角度が零度以上所定の角度以下において一定であり、前記一対のリンク間の回動角度が所定の値を超えると低下することを示すことを特徴としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、一対のリンク間の角度が所定の値を超えると、一対のリンク間の角度に対するロッドの押し込み量の増加速度が減少するため、抵抗力を変化させることができる。
【0010】
また、前記カム形状のカム曲線は、前記ロッドの押し込み量が前記一対のリンク間の回動角度に対して正比例することを示すことを特徴としてもよい。
【0011】
このような構成によれば、ロッドの押し込み量が一対のリンク間の角度に正比例するため、抵抗力を変化させることができる。
【0012】
また、前記一対のリンクの他方の一端は、前記一対のリンクの他方のリンク本体に脱着可能に取り付けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、カム曲線の異なる別のカムを、一対のリンクの他方のリンク本体に取り付けることによって、抵抗力を変化させることができる。そのため、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力の調整が容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力の調整の自由度の高い膝動作支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る膝動作支援装置を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る膝動作支援装置を示す正面図である。
【
図3】実施の形態1に係る膝動作支援装置を示す側面図である。
【
図4】実施の形態1に係る膝動作支援装置の要部を示す背面図である。
【
図7】実施の形態1に係る膝動作支援装置の下腿側リンクの端部の一例を示す側面図である。
【
図8】実施の形態1に係る膝動作支援装置の動作を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る膝動作支援装置の動作を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る膝動作支援装置の動作を示す図である。
【
図11】回動角度に対するロッドの押し込み量を示すグラフである。
【
図12】実施の形態1に係る膝動作支援装置の下腿側リンクの端部の一変形例を示す側面図である。
【
図13】回動角度に対するロッドの押し込み量を示すグラフである。
【
図14】実施の形態1に係る膝動作支援装置の下腿側リンクの端部の一変形例を示す斜視図である。
【
図15】実施の形態1に係る膝動作支援装置の下腿側リンクの端部の一変形例を示す斜視図である。
【
図16】回動角度に対するロッドの押し込み量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
(実施の形態1)
図1~
図6を参照して実施の形態1に係る膝動作支援装置について説明する。なお、当然のことながら、
図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸プラス向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0018】
図1~
図4に示すように、膝動作支援装置100は、上腿側リンク10と、下腿側リンク20とを備える。上腿側リンク10の一端10aと下腿側リンク20の一端20aとは、回転軸Y1軸周りに相互に回動可能に機械的に接続されている。下腿側リンク20の一端20aはカム形状を有し、当該カム形状は、多種多様な形状を採り得る。下腿側リンク20の一端20aのカム形状については後述する。上腿側リンク10と下腿側リンク20との角度は、例えば、0(零)度以上、180度以下である。膝動作支援装置100が、例えば、
図5に示すユーザの脚部に装着されると、上腿側リンク10は、ユーザの脚部の上腿U1bに取り付けられ、下腿側リンク20は、ユーザの脚部の下腿U1dに取り付けられる。
【0019】
上腿側リンク10、又は下腿側リンク20は、検出部12を備えてもよい。検出部12は、角度センサであり、上腿側リンク10と下腿側リンク20との角度を検出する。膝動作支援装置100がユーザの脚部に装着されている場合、上腿側リンク10と下腿側リンク20との回動角度αは、180度からユーザの膝角度θを差分した角度に相当する。ここで、ユーザの膝角度θとは、
図5に示すユーザの上腿U1bの軸方向に延びる直線Z2と、下腿U1dの軸方向に延びる直線Z3とが交差して成す。
【0020】
検出部12は、上腿側リンク10と下腿側リンク20との角度を膝角度検出値として制御装置6へ出力する。膝角度検出値は、歩行サイクルに応じた波形を示す。つまり、膝角度検出値は歩行サイクルに応じて周期的に変化する。
【0021】
なお、検出部12は、角度センサに加えて、慣性計測装置等を備えてもよい。慣性計測装置及び角度センサが検出した値に基づいて、下腿角度βや上腿角度γを求めることができる。
図6に示すように、下腿角度βは、鉛直線Z1と、下腿U1dの軸方向に延びる直線Z3とが交差して成す。また、上腿角度γは、鉛直線Z1と、上腿U1bの軸方向に延びる直線Z2とが交差して成す。検出部12は、下腿角度βや上腿角度γを制御装置6へ出力する。
【0022】
上腿側リンク10は、駆動部2と、調整部3と、ストロークダンパ4と、ローラ5とを備えてもよい。駆動部2、調整部3、ストロークダンパ4、及びローラ5は、上腿側リンク10の他端10bから一端10aに向かってこの順に上腿側リンク10に保持されている。
【0023】
下腿側リンク20は、制御装置6を備えてもよい。本実施形態の係る制御装置6は、下腿側リンク20の一端20aと他端20bとの間に設けられている。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、インターフェース(I/F)、などからなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU、ROM、RAM及びインターフェースは、データバス等を介して相互に接続されている。制御装置6は、抵抗力の変化パターン及びユーザの膝角度検出値を取得する。また、制御装置6は、検出部12から、上腿側リンク10と下腿側リンク20との角度を取得する。
【0024】
制御装置6は、検出部12が検出した膝角度検出値等に基づいて、歩行タイミングを検出することができる。歩行タイミングは、具体的には、1歩行周期における立脚期、及び遊脚期である。
【0025】
制御装置6は、図示しない通信端末からBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等の通信手段により、所定の抵抗力の変化パターンを示す信号を取得する。また、抵抗力の変化パターンは、多種多様であり、それらの例について後述する。制御装置6は、抵抗力の変化パターン、及び膝角度検出値に基づいて、抵抗力制御信号を生成する。制御装置6は、この生成した抵抗力制御信号を、有線通信又は無線通信を用いて駆動部2へ送信する。なお、制御装置6は、適宜、鉛直線と下腿側リンク20との角度(下腿角度)や、鉛直線と上腿側リンク10との角度(上腿角度)を取得してもよい。
【0026】
駆動部2は、制御装置6からの抵抗力制御信号に基づいて回転動力を調整部3に与える。駆動部2は、例えば、モータ及びドライバを備える。なお、駆動部2は、上腿側リンク10の他端10bの側方に設けられていてもよく、ギアやプーリを介して回転動力を調整部3に与える。
【0027】
調整部3は、駆動部2からの回転動力に基づいて、ストロークダンパ4による抵抗力Fを調整する。具体的には、調整部3は、駆動部2の回転動力を受けて、ストロークダンパ4内におけるダンパ液の流路の断面積を連続的に変化させる。
【0028】
ここで、ストロークダンパ4の抵抗力Fと、ダンパ係数kと、ダンパ液が当該流路を通過する速度vとの関係を示す式1を以下に示す。
F=kv …(式1)
【0029】
そのため、ストロークダンパ4内におけるダンパ液の流路の断面積が減少すると、ダンパ係数kが増加し、その結果、ストロークダンパ4による抵抗力Fが増加する。これによって、調整部3は、抵抗力Fの変化パターン及び膝角度検出値に基づいて、ストロークダンパ4による抵抗力Fを調整する。なお、調整部3は、ストロークダンパ4内におけるダンパ液の流路の断面積を複数の段階に調整してもよく、段階の数は特に限定されない。また、後述するように、下腿側リンク20の一端20aのカム形状が変化すると、一端20aがストロークダンパ4のロッド4aを押し込む速度が変化する。そのため、シリンダダンパ液が当該流路を通過する速度vが変化し、その結果、ストロークダンパ4による抵抗力Fが変化する。
【0030】
ストロークダンパ4は、ローラ5を介して、抵抗力Fを下腿側リンク20へ伝える。ストロークダンパ4は、ロッド4a、シリンダ4b、及びスプリング40を備えている。ロッド4aは、シリンダ4bに対して、所定のストロークで往復移動可能に設けられている。ロッド4a及びスプリング40は、上腿側リンク10のダンパ保持部10cとローラ5との間に挟まれている。ロッド4aがシリンダ4bに押し込まれると、ロッド4aの押し込みを減衰させる減衰力が発生する。ローラ5は、ストロークダンパ4と下腿側リンク20の一端20aと間において、回転可能、かつ、上腿側リンク10の軸方向(Z軸方向)移動可能に設けられている。
【0031】
上記した通り、ロッド4aは、ローラ5を介して下腿側リンク20の一端20aと接触しており、一端20aがカム形状を有する。よって、一端20aが回転軸Y1周りに回動すると、一端20aがストロークダンパ4のロッド4aをシリンダ4bへ押し込む。減衰力がシリンダ4bに発生し、ロッド4aの押し込む力が減衰する。一端20aのカム形状を有する部分が原動節であり、ストロークダンパ4のロッド4aが従動節である。一端20aのカム形状のカム曲線は、上腿側リンク10と下腿側リンク20とが回動した回動角度αに対するロッド4aの押し込み量の連続的な変化を示す。
【0032】
(カム形状の第1の例)
次に、
図7~
図11を参照して下腿側リンク20の一端20aが有するカム形状の一例について説明する。なお、
図7~
図10は、説明を明確にするため、カム形状等を強調して記載した。
【0033】
図7に示す下腿側リンク21は、
図1-
図4に示す下腿側リンク20の一例であり、下腿側リンク20の一端20aを除いて、同じ構成を備える。下腿側リンク21の一端21aは、カム形状を有する。一端20aの端面は、上腿側リンク10と下腿側リンク21とが回動する場合、ローラ5を接触する接触面21bを有する。下腿側リンク21の一端21aのカム形状は、少なくとも接触面21bに形成されているとよい。下腿側リンク21の一端21aのカム形状のカム曲線は、一端20aのカム曲線と同様に、上腿側リンク10と下腿側リンク21とが回動した回動角度αに対するロッド4aの押し込み量の連続的な変化を示す。回動角度αは、予め設定した回動角度α0以上、回動角度α8以下の範囲内において変化する。接触面21bの一端21cは、上腿側リンク10と下腿側リンク21との回動角度αが回動角度α0である場合、ローラ5と接触している。接触面21bの他端21dは、上腿側リンク10と下腿側リンク21との回動角度が回動角度α8である場合、ローラ5と接触している。接触面21bは、下腿側リンク21の側面(ここでは、ZX平面)上において、回転軸Y1を中心として接触面21bの一端21cを通過する仮想円C1からその径方向外側に張り出る。
【0034】
ここで、
図8-
図10に示すように、上腿側リンク10と下腿側リンク21との回動角度αが回動角度α0から回動角度α8に到達するよう、下腿側リンク21を回転軸Y1周りに回動させる。言い換えると、下腿側リンク21を、回転軸Y1周りに各
図8-
図10紙面上において時計回り方向に回動させる。また、
図8-
図10に示す下腿側リンク21の一端21aのカム形状によるカム曲線C21を
図11に示す。
【0035】
図8に、上腿側リンク10の軸方向に延びる直線Z10と、下腿側リンク21の軸方向に延びる直線Z20とを示す。下腿側リンク21が回転軸Y1周りに回動した回動角度αは、直線Z10と直線Z20とが交差して成す角度と同じである。下腿側リンク21の回動開始時における回動角度αは、α0、例えば、0(零)度である。
【0036】
図8に示すように、下腿側リンク21と上腿側リンク10との回動角度αが回動角度α0であり、接触面21bの一端21cは、ローラ5と接触している。下腿側リンク21の回転軸Y1周りの回動を開始すると、接触面21bがローラ5を介してロッド4aを押圧し、ロッド4aを、
図1-4に示すシリンダ4bへ押し込む。下腿側リンク21が回動するにつれて、回動角度αは、α1、α2と順次増大する。すると、ロッド4aがローラ5を介してシリンダ4bへ押し込まれる。
図11に示すように、一端21aがロッド4aを押し込む量は、0(零)から距離X11に増大する。
【0037】
引き続き、下腿側リンク21を回転軸Y1周りに回動させる。すると、
図9及び
図10に示すように、回動角度αは、α3、α4、α5、α6、α7、α8と順次増大する。すると、ロッド4aがローラ5を介して上腿側リンク10の上側へ押し込まれる。
図11に示すように、一端21aがロッド4aを押し込む量は、距離X12、X13、X14と順次増大する。
【0038】
一端21aがロッド4aを押し込む量は、回動角度α0から回動角度α2までにおいて一定の速度で増加し、回動角度α2から回動角度α8までにおいて、その一定の速度よりも低い速度で増加する。つまり、一端21aのカム形状によるカム曲線C21は、回動角度αが回動角度α0以上、回動角度α2以下の範囲内において、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が一定であることを示す。また、カム曲線C21は、回動角度αが回動角度α2を超えると、当該比例定数が低下することを示す。
【0039】
以上より、上記した構成によれば、カム曲線C21は、上腿側リンク10と下腿側リンク21との角度に対するロッド4aの押し込み量の連続的な変化を示す。これによって、当該カム形状に応じて、抵抗力Fを変化させることができ、自由度を持たせることができる。よって、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力を高い自由度で調整することができる。このような調整によって、様々な状態にあるユーザにそれぞれ合う抵抗力の変化パターンを生成することができる。膝動作支援装置100は、様々な状態にあるユーザの膝動作に関して、例えば、広い範囲のレベルのリハビリテーションを支援することができる。
【0040】
また、カム曲線C21は、具体的には、回動角度αが回動角度α0以上、回動角度α2以下の範囲内において、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が一定であることを示す。また、カム曲線C21は、回動角度αが回動角度α2を超えると、当該比例定数が低下することを示す。これによって、膝関節の曲げを開始してから所定の回動角度α2まで所定の抵抗力を与え、所定の回動角度を超えると、さらに低い抵抗力を与える。このように、抵抗力を調整することができる。よって、このような抵抗力を膝関節に受けることを望むユーザに好適である。
【0041】
(カム形状の第2の例)
次に、
図12及び
図13を参照して下腿側リンク20の一端20aが有するカム形状の別の一例について説明する。なお、
図12は、説明を明確にするため、カム形状等を強調して記載した。
【0042】
図12に示す下腿側リンク22は、
図1-
図4に示す下腿側リンク20の別の一例であり、下腿側リンク20の一端20aを除いて、同じ構成を備える。下腿側リンク22の一端22aは、カム形状を有する。一端22aの端面は、上腿側リンク10と下腿側リンク22とが回動する場合、ローラ5を接触する接触面22bを有する。下腿側リンク22の一端22aのカム形状は、少なくとも接触面22bに形成されているとよい。接触面22bの一端22cは、上腿側リンク10と下腿側リンク22との回動角度αが回動角度α0である場合、ローラ5と接触している。接触面22bの他端22dは、上腿側リンク10と下腿側リンク22との回動角度αが回動角度α8である場合、ローラ5と接触している。接触面22bは、下腿側リンク22の側面(ここでは、ZX平面)上において、
図7に示す下腿側リンク21の接触面21bと比較して、仮想円C1からその径方向外側にさらに張り出る。下腿側リンク22の一端22aのカム形状のカム曲線は、一端22aがロッド4aを等速で押し込むことを示せばよい。ここで、等速の意味は、回動角度αに対するロッド4aの押し込み量の変化量が等しいことを含む。
【0043】
ここで、
図8-
図10に示す下腿側リンク21の回動と同様に、上腿側リンク10と下腿側リンク22との回動角度αが回動角度α0から回動角度α8に到達するよう、下腿側リンク22を回転軸Y1周りに回動させる。言い換えると、下腿側リンク22を回転軸Y1周りに時計回り方向に回動させる。また、下腿側リンク22の一端22aのカム形状によるカム曲線C22を
図13に示す。
【0044】
下腿側リンク22と上腿側リンク10との回動角度αが回動角度α0であり、接触面22bの一端22cは、ローラ5と接触している。下腿側リンク22の回転軸Y1周りの回動を開始すると、接触面21bがローラ5を介してロッド4aを押圧し、ロッド4aを
図1-4に示すシリンダ4bへ押し込む。下腿側リンク22の回動開始時における回動角度α0は、α0、つまり、0(零)度である。下腿側リンク22が回動するにつれて、回動角度αは、α1、α2、α3、α4、α5、α6、α7、α8と順次増大する。すると、ロッド4aがローラ5を介して上腿側リンク10の上側へ押し込まれる。
図13に示すように、一端22aがロッド4aを押し込む量は、0(零)から距離X21、X22、X23、X24と順次増大する。
【0045】
一端22aがロッド4aを押し込む量は、回動角度α0から回動角度α8までにおいて一定の速度で増加する。つまり、一端22aのカム形状によるカム曲線C22は、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が一定であることを示す。
【0046】
以上より、このような構成によれば、カム曲線C22は、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が一定であることを示す。これによって、膝関節の曲げを開始してから最大の回動角度α8まで一定の抵抗力を与えるように、抵抗力を調整することができる。よって、このような抵抗力を膝関節に受けることを望むユーザに好適である。
【0047】
(下腿側リンクの例)
次に、
図14、及び
図15を参照して下腿側リンク20の別の例である下腿側リンク23について説明する。
【0048】
図14及び
図15に示すように、下腿側リンク23は、カム部23a1と、下腿側リンク本体23a2とを備える。
【0049】
カム部23a1は下腿側リンク本体23a2に脱着可能に取り付けられている。カム部23a1は、下腿側リンク23の一端23aに設けられている。カム部23a1は、接触面23bと、メネジ23g1、23g2と、本体取付部23hとを備える。
【0050】
下腿側リンク23の一端23aは、カム形状を有する。一端23aの端面は、接触面23bを有し、接触面23bは、上腿側リンク10と下腿側リンク23とが回動する場合、ローラ5と接触する。下腿側リンク23の一端23aのカム形状は、少なくとも接触面23bに形成されている。
【0051】
本体取付部23hの表面は、下腿側リンク本体23a2先端部の表面に倣う形状を有する。本体取付部23hと、下腿側リンク本体23a2先端部とが押し合わせた場合、本体取付部23hの表面は、本体取付部23hと下腿側リンク本体23a2とが回転軸Y1周りに回動することを抑制する形状を有するとよい。
【0052】
下腿側リンク本体23a2は、メネジ23f1、23f2とを備える。
【0053】
カム部23a1は、下腿側リンク本体23a2にボルト締結されている。具体的には、図示しないボルトをメネジ23f1とメネジ23g1とに挿し通して締結する。また、図示しないボルトをメネジ23f2とメネジ23g2とに挿し通して締結する。
【0054】
ここで、カム部23a1は、ボルト締結やその解除によって、下腿側リンク本体23a2に脱着可能に取り付けられている。カム部23a1と、カム曲線のみ異なるカム部を下腿側リンク本体23a2に取り付けることによって、抵抗力を変化させることができる。そのため、膝関節にかかる力に抵抗する抵抗力の調整が容易である。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0056】
例えば、上記実施の形態1では、上腿側リンク10が駆動部2と、調整部3と、ストロークダンパ4と、ローラ5とを備えるとともに下腿側リンク20とが制御装置6を備えたが、上腿側リンク10が、ストロークダンパ4、及びローラ5を備えればよい。また、上腿側リンク10が、下腿側リンク20の一端20aのカム形状と同じ形状を有し、下腿側リンク20が、ストロークダンパ4、及びローラ5を備えてもよい。
【0057】
また、上記した、下腿側リンク20の一端20aのカム形状にカム曲線は、多種多様であり、例えば、
図16に示すカム曲線C23、C24であってもよい。
【0058】
カム曲線C23では、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が、回動角度α0からα2までカム曲線C22と比較して高い。当該比例定数が、回動角度α2超過、回動角度α8以下の範囲内においてカム曲線C22と比較して低い。膝関節の曲げの動作の開始時から早期に高い抵抗力を与えるよう、抵抗力を調整することができる。
【0059】
カム曲線C24では、ロッド4aの押し込み量と回動角度αとの比例定数が、回動角度α0から回動角度α3までカム曲線C22と同じである。当該比例定数が、回動角度α3超過、回動角度α5以下の範囲内においてカム曲線C22と比較して高い。当該比例定数が、回動角度α5超過、回動角度α8以下の範囲内においてカム曲線C22と比較して低い。膝関節の曲げの動作の開始時から終了時までの間における所定の期間において高い抵抗力を与えるよう、抵抗力を調整することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 膝動作支援装置
2 駆動部 3 調整部
4 ストロークダンパ
4a ロッド 4b シリンダ
5 ローラ 6 制御装置
10 上腿側リンク
10a 一端 10b 他端
10c ダンパ保持部
12 検出部
20、21、22、23 下腿側リンク
20a、21a、22a、23a 一端 20b 他端
21b、22b、23b 接触面
21c、22c 一端 21d、22d 他端
23a1 カム部 23a2 下腿側リンク本体
23f1、23f2、23g1、23g2 メネジ
23h 本体取付部
C1 仮想円 C21、C22、C23、C24 カム曲線
U1b 上腿 U1d 下腿
X11-X14、X21-X24 距離
Y1 回転軸 Z1 鉛直線
Z2、Z3、Z10、Z20 直線 α、α0-α8 回動角度
β 下腿角度 γ 上腿角度
θ 膝角度