(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190998
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】表示装置、視線誘導方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20221220BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20221220BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20221220BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/0481
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099585
(22)【出願日】2021-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 3年 4月15日~令和 3年 7月11日に、BnF × DNP ミュージアムラボ 第2回展「これからの文化体験」にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 由愛
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和生
(72)【発明者】
【氏名】三好 美恵子
(72)【発明者】
【氏名】市川 優子
(72)【発明者】
【氏名】山田 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩介
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050CA07
5B050EA19
5B050EA28
5B050FA02
5E555AA06
5E555AA21
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB65
5E555CB66
5E555CC22
5E555DA08
5E555DB06
5E555DC09
5E555DC19
5E555DD08
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】表示装置、視線誘導方法及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示する表示部と、前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する視線誘導部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示する表示部と、
前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する視線誘導部と
を備える表示装置。
【請求項2】
現実空間又は仮想空間上において視野の起点となる位置より視野中心の延長線上で所定距離離れた位置を始点とする
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記オブジェクトは始点から前記特定の位置に向けて動的である
請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示し、
前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する
視線誘導方法。
【請求項5】
現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示し、
前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、視線誘導方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想的な空間を現実であるかのようにユーザに知覚させる仮想現実(VR : Virtual Reality)と呼ばれる技術や、実空間に付加的な情報を重畳してユーザに提示する拡張現実(AR : Augmented Reality)と呼ばれる技術が注目されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮想現実や拡張現実において、ユーザに提示すべきコンテンツがユーザの視野外に配置されている場合、ユーザはそのコンテンツに気付かない可能性がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、現実空間又は仮想空間に配される特定のコンテンツにユーザの視線を誘導できる表示装置、視線誘導方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る表示装置は、現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示する表示部と、前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する視線誘導部とを備える。
【0007】
一態様に係る視線誘導方法は、現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示し、前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する。
【0008】
一態様に係るコンピュータプログラムは、現実空間又は仮想空間上のコンテンツに重畳してコンテンツを表示し、前記現実空間又は前記仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導すべく、前記ユーザの視野領域内から前記特定の位置に向けたオブジェクトを出力する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、現実空間又は仮想空間に配される特定のコンテンツにユーザの視線を誘導できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る表示装置を説明する説明図である。
【
図2】表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】注目コンテンツが前方にある場合の視線誘導を説明する説明図である。
【
図4】注目コンテンツが後方にある場合の視線誘導を説明する説明図である。
【
図6】表示装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は実施の形態に係る表示装置1を説明する説明図である。実施の形態に係る表示装置1は、例えば、ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ(HMD : Head Mount Display)であり、現実空間又は仮想空間上のコンテンツにコンテンツを重畳して表示するための装置である。表示装置1は、表示画面に表示される現実空間又は仮想空間内の所望の位置(座標)に立体的又は平面的な仮想オブジェクトを配置することにより、ユーザに対してコンテンツを提示する。以下、現実空間及び仮想空間を区別して説明する必要がない場合、単に空間と記載する。
【0012】
AR技術やVR技術を用いることにより、提示対象となるコンテンツは、空間内の任意の位置に配置することが可能である。コンテンツは、ユーザの視野の範囲内(すなわち、表示装置1によって表示されている範囲内)に限らず、ユーザの視野から外れた位置に配置することも可能である。このような場合、ユーザは、見回すように視線を変えながら、自身の周囲に配置されたコンテンツを閲覧することが可能である。
【0013】
しかしながら、ユーザに注目して欲しいコンテンツがユーザの視野外(すなわち、表示装置1に表示されていない範囲)に存在する場合、ユーザは、提示されたコンテンツに気が付かない場合がある。実施の形態に係る表示装置1は、空間内の特定の位置(例えば、ユーザに注目して欲しいコンテンツ上の位置)にユーザの視線を誘導すべく、ユーザの視野領域内から特定の位置に向けたオブジェクトを出力する。
【0014】
図1は、四方が壁に囲まれた空間内に2つの仮想的なオブジェクトQ1,Q2を配置した例を示している。これらの仮想的なオブジェクトQ1,Q2は、表示装置1が備えるディスプレイを介して、ユーザによって認識される。
【0015】
便宜的に、
図1の紙面上方を北、紙面下方を南、紙面右方を東、紙面左方を西とする。ユーザは、表示装置1を介して、北側の壁に配置されたオブジェクトQ1が示すコンテンツ(例えば絵画)を閲覧することが可能である。この状態において、ユーザの視野には南側の壁に配置されたオブジェクトQ2は含まれておらず、ユーザは、オブジェクトQ2が示すコンテンツ(例えば別の絵画)を閲覧することはできない。
【0016】
表示装置1は、例えばオブジェクトQ2の解説を始める場合、ユーザの視線をオブジェクトQ2に誘導するために、現在のユーザの視野領域内からオブジェクトQ2に向けた視線誘導オブジェクトPを出力する。具体的には、空間上において視野の起点となる位置より視野中心の延長線上で所定距離離れた位置を始点、オブジェクトQ2上の位置を終点としたとき、表示装置1は、始点と終点とを結ぶ曲線状の経路に沿って視線誘導オブジェクトPを移動させることにより、視線誘導を行う。なお、上記の延長線は、視野の起点となる位置を端点とし、視野中心を通る半直線を表す。
【0017】
視線誘導オブジェクトPには任意の画像を用いることができる。例えば、視線誘導オブジェクトPとして、光の画像を用いてもよい。
図1の例では、球状の視線誘導オブジェクトPを示しているが、球状に限らず、進行方向に沿って延びる有限の長さの線分の画像であってもよい。また、視線誘導オブジェクトPの形状は不変である必要はなく、移動経路に沿って変化するものであってもよい。代替的に、視線誘導オブジェクトPは、仮想的な音源であってもよい。
【0018】
図2は表示装置1の内部構成を示すブロック図である。表示装置1は、例えば、制御部11、記憶部12、画像処理部13、表示部14、音響出力部15、姿勢検出部16、操作部17、及び通信部18を備える。
【0019】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。制御部11が備えるROMには、上記ハードウェア各部の動作を制御するための制御プログラム等が記憶される。制御部11内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラム及び後述する記憶部12に記憶された各種プログラムを実行し、上記ハードウェア各部の動作を制御することにより、装置全体を本願の表示装置として機能させる。制御部11が備えるRAMには、各種プログラムの実行中に一時的に利用されるデータが記憶される。
【0020】
なお、制御部11は上記の構成に限定されるものではなく、シングルコアCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路若しくは制御回路であればよい。また、制御部11は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0021】
記憶部12は、フラッシュメモリなどの記憶装置を備える。記憶部12には、制御部11に実行させる各種のコンピュータプログラムやデータが記憶される。記憶部12に記憶されるプログラムは、コンテンツを再生するための再生プログラムや、ユーザの視線を特定のコンテンツに誘導するための視線誘導プログラムなどを含む。
【0022】
記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体Mにより提供される。記録媒体Mは、例えば、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型のメモリである。この場合、制御部11は、不図示の読取装置を用いて記録媒体Mからプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを記憶部12にインストールする。また、記憶部12に記憶されるプログラムは、通信により提供されてもよい。この場合、制御部11は、通信部18を通じてプログラムを取得し、取得したプログラムを記憶部12にインストールすればよい。
【0023】
記憶部12には、ユーザに提示するコンテンツのデータが記憶されてもよい。本実施の形態におけるコンテンツは、空間内に配置される仮想的なオブジェクトとして用意される。記憶部12には、コンテンツのデータとして、オブジェクトの形状を示すデータ、オブジェクトの表面を覆うテクスチャのデータ、空間内におけるオブジェクトの位置データ等が記憶される。なお、オブジェクトの位置データは、絶対的な位置座標を示すデータである必要はなく、任意の位置(例えばユーザの頭部の位置)を基準とした相対的な位置座標を示すデータであればよい。
【0024】
ユーザに提示するコンテンツのデータは、外部のサーバ装置に記憶されていてもよい。この場合、表示装置1は、サーバ装置にアクセスし、所望のコンテンツのデータを通信により取得すればよい。
【0025】
画像処理部13は、制御部11からの指示に基づき、記憶部12から読み出したコンテンツのデータから、左眼を対象とした左眼用の表示画像の映像信号と、右眼を対象とした右眼用の表示画像の映像信号とを生成する。画像処理部13は、生成した映像信号を表示部14へ出力し、左眼用の表示画像と右眼用の表示画像とを同期させて表示部14に表示させる。
【0026】
表示部14は、左眼用の表示画像が表示される左眼用ディスプレイ14aと、右眼用の表示画像が表示される右眼用ディスプレイ14bとを備える。左眼用ディスプレイ14a及び右眼用ディスプレイ14bは、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより構成される。左眼用ディスプレイ14aは、画像処理部13より出力される映像信号に基づき、左眼用の表示画像を表示し、右眼用ディスプレイ14bは、画像処理部13より出力される映像信号に基づき、右眼用の表示画像を表示する。
【0027】
音響出力部15は、スピーカなどの音響出力デバイスを備えており、コンテンツに含まれる音声又は音響を出力する。
【0028】
姿勢検出部16は、ユーザの姿勢(特にユーザの頭部の動き)を検出するためのセンサを備える。このようなセンサとして、例えば三軸ジャイロセンサ、三軸加速度センサなどが用いられる。姿勢検出部16は、検出したユーザの姿勢の情報を制御部11へ出力する。
【0029】
操作部17は、各種のスイッチやタッチパネルなどの入力インタフェースを備えており、ユーザによる各種の操作や設定の入力を受付ける。操作部17は、受付けた操作や設定の内容を制御部11へ出力する。操作部17は、スイッチやタッチパネルに限らず、音声入力、ジェスチャ入力、リモートコントローラなどを用いてもよい。
【0030】
通信部18は、外部装置と通信するための通信インタフェースを備える。このような通信インタフェースとして、例えば、Bluetooth(登録商標) 、WiFi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)などの通信インタフェースが用いられる。通信部18は、外部装置へ通知すべき各種情報を送信すると共に、外部装置から送信される各種情報を受信する。
【0031】
図3は注目コンテンツが前方にある場合の視線誘導を説明する説明図である。
図3の例は、ユーザの前方に注目コンテンツ(オブジェクトQ2)が存在する場合の提示例を示している。表示装置1は、オブジェクトQ2への視線誘導を行う場合、空間上において視野の起点となる位置より視野中心の延長線上で所定距離(例えば2~3m)だけ離隔した点の座標Aと、オブジェクトQ2の位置を示す点の座標Bとを取得し、座標Aに視線誘導オブジェクトPを配置する。視野の起点は、例えば空間内におけるユーザの眼の位置に相当する。視野中心は、表示部14の画面中心(すなわち、表示部14に表示される画像の中心)である。座標Aを視線誘導の始点とし、座標Bを視線誘導の終点とする。表示装置1は、配置した視線誘導オブジェクトPを座標A及び座標Bを結ぶ曲線の経路に沿って視線誘導オブジェクトPを移動させることにより、ユーザの視線を注目コンテンツに誘導する。ユーザは、空間内で移動する視線誘導オブジェクトPを目で追うことにより、視線を注目コンテンツに向けることができる。
【0032】
なお、
図3の例では、視野の起点(ユーザの眼の位置)と視野中心との間の点を始点としているが、視野中心から更に奥側に変位させた点を始点としてもよい。また、
図3の例ではオブジェクトQ2上の点を終点としているが、オブジェクトQ2の近傍の点を終点としてもよい。
【0033】
図4は注目コンテンツが後方にある場合の視線誘導を説明する説明図である。
図4の例は、ユーザの後方に注目コンテンツ(オブジェクトQ2)が存在する場合の提示例を示している。表示装置1は、前述と同様に、視線誘導オブジェクトPを座標A及び座標Bを結ぶ曲線の経路に沿って視線誘導オブジェクトPを移動させることにより、ユーザの視線を注目コンテンツに誘導する。なお、視線誘導オブジェクトPを移動させる経路として、ユーザの真上を通過するような経路が設定された場合、ユーザは、視線誘導オブジェクトPを目で追うことが困難となることが予想される。このため、ユーザの側方を通り、ユーザの側方を通過した後にオブジェクトQ2に向って上昇するような経路が設定されるとよい。
【0034】
図5は表示装置1における表示例を示す図である。
図5Aは
図1に示した空間において、ユーザが表示装置1を介してオブジェクトQ1を閲覧しているときに表示部14に表示される画像の例を示している。この状態において、例えばユーザの背後に存在するオブジェクトQ2の解説を始める場合、表示装置1は、視野の起点となる位置より視野中心の延長線上で所定距離だけ離れた位置に視線誘導オブジェクトPを配置する。
図5Aは、視野の起点となるユーザの眼の位置から奥行き方向に所定距離だけ離れた位置に視線誘導オブジェクトPを配置した例を示している。視線誘導オブジェクトPを配置する前のユーザの関心は視野中心に存在するオブジェクトQ1にあるが、視線誘導オブジェクトPを配置した場合、ユーザの意識はオブジェクトQ1から視線誘導オブジェクトPに移ることが期待される。この状態において、表示装置1は、視線誘導オブジェクトPを移動させる。
【0035】
例えば、表示装置1は、視線誘導オブジェクトPを配置した後、ユーザの右側を通過し、ユーザの背後に存在するオブジェクトQ2に至る曲線状の軌跡を描くように視線誘導オブジェクトPを移動させる。視線誘導オブジェクトPの移動に伴い、ユーザは視線誘導オブジェクトを目で追いつつ、体の向きを変更する。
図5Bはユーザが体の向きを東側に向けた場合に表示部14に表示される画像の例を示し、
図5Cは視線誘導オブジェクトPがオブジェクトQ2の近傍に到達した場合に表示部14に表示される画像の例を示している。このように、視線誘導オブジェクトPをユーザの視野領域内から目的とする注目コンテンツ(オブジェクトQ2)まで移動させることによって、ユーザの視線を自然に注目コンテンツまで誘導することができる。
【0036】
図6は表示装置1が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。本フローチャートでは、オブジェクトQ2が示すコンテンツに視線誘導を行う場合の処理手順について説明する。表示装置1の制御部11は、オブジェクトQ2が示すコンテンツへの視線誘導を開始するか否かを判断する(ステップS101)。コンテンツがユーザへの解説を含むコンテンツである場合、制御部11は、このコンテンツの解説を開始するタイミングとなったか否かを判断することにより、視線誘導を開始するか否かを判断すればよい。また、制御部11は、ユーザが空間内の所定場所に到達したか否かを判断することによって、視線誘導を開始するか否かを判断してもよい。更に、制御部11は、ユーザにコンテンツの提供を開始してからの経過時間に基づき、視線誘導を開始するか否かを判断してもよい。
【0037】
視線誘導を開始しないと判断した場合(S101:NO)、制御部11は、視線誘導の開始タイミングとなるまで待機する。
【0038】
視線誘導を開始すると判断した場合(S101:YES)、制御部11は、視線誘導の始点の座標(座標A)を取得する(ステップS102)。ユーザは、姿勢検出部16により検出されるユーザの姿勢に応じて表示部14に表示される視野画像を視聴するので、その視野画像に映る光景の範囲が、視野画像を視聴するユーザの視野となる。制御部11は、視野の起点となる位置(すなわち、ユーザの眼の位置)より視野中心の延長線上で所定距離だけ離れた点の座標を視線誘導の始点の座標として導出すればよい。
【0039】
次いで、制御部11は、視線誘導の終点の座標(座標B)を取得する(ステップS103)。制御部11は、オブジェクトQ2の位置情報を記憶部12又は外部のサーバ装置から取得することにより、視線誘導の終点を特定することができる。視線誘導の終点は、オブジェクトQ2上の点、又はオブジェクトQ2の近傍の点に設定される。オブジェクトQ2への視線誘導の終点は、オブジェクトQ2に関連付けて記憶部12に予め記憶されていてもよい。
【0040】
次いで、制御部11は、視線誘導の始点に視線誘導オブジェクトPを配置する(ステップS104)。視線誘導オブジェクトPは、仮想オブジェクトとして空間内に配置される。視線誘導オブジェクトPは、表示部14により表示される画像であってもよく、音響出力部15より定期的に音を出力する仮想的な音源であってもよい。また、視線誘導オブジェクトPは、画像と仮想的な音源とを組み合わせたものであってもよい。更に、制御部11は、画像による視線誘導オブジェクトPと、仮想的な音源による視線誘導オブジェクトPとの切替設定を操作部17にて受け付けてもよい。
【0041】
次いで、制御部11は、配置した視線誘導オブジェクトPを、視線誘導の始点(座標A)から視線誘導の終点(座標B)に向けて、曲線状の経路に沿って移動させる(ステップS105)。視線誘導オブジェクトPが移動する経路は、例えば、始点及び終点を与えた場合に決定される関数として定義される。制御部11は、経路を定義する関数に従って、視線誘導オブジェクトPの位置座標を順次変更していくことにより、視線誘導オブジェクトPを空間内で移動させることができる。
【0042】
次いで、制御部11は、視線誘導オブジェクトPが終点に到達したか否かを判断する(ステップS106)。到達していない場合(S106:NO)、制御部11は、視線誘導オブジェクトPが終点に到達するまで待機する。
【0043】
終点に到達したと判断した場合(S106:YES)、制御部11は、視線誘導オブジェクトPを消滅させる(ステップS107)。
【0044】
次いで、制御部11は、視線誘導を継続するか否かを判断する(ステップS108)。例えば、制御部11は、視線誘導を開始してから所定時間が経過したか否かを判断することにより、視線誘導を継続するか否かを判断してもよい。また、制御部11は、視線誘導を行った回数(視線誘導オブジェクトPが座標Aから座標Bまで移動した回数)をカウントし、カウントした回数が所定回数(例えば3回)に達したか否かを判断することにより、視線誘導を継続するか否かを判断してもよい。更に、制御部11は、ユーザの視野領域内にオブジェクトQ2が含まれるか否かを判断することにより、視線誘導を継続するか否かを判断してもよい。
【0045】
視線誘導を開始してから所定時間が経過した場合、視線誘導を所定回数行った場合、ユーザの視野領域にオブジェクトQ2が含まれた場合等において、制御部11は、視線誘導を継続しないと判断し(S108:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。視線誘導を継続すると判断した場合(S108:YES)、制御部11は、処理をステップS104へ戻し、視線誘導を継続する。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置1は、ユーザの視線を注目コンテンツに誘導する際、ユーザの視野領域内から注目コンテンツに向けてオブジェクトを動的に提示するので、ユーザの視線を効果的に誘導することができる。
【0047】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0048】
例えば、本実施の形態では、表示部14の画面中心を視野中心と擬制したが、表示装置1がユーザの視線方向を検出する視線検出部を備える場合、視線検出部により検出されるユーザの視線方向に基づき視野中心を特定してもよい。すなわち、視野中心は、必ずしも表示部14の画面中心である必要はない。視線方向の検出手法として、例えば、角膜反射法を用いることができる。角膜反射法では、赤外線などの光を眼球に照射し、撮像センサを用いてユーザの眼を撮像し、得られた画像を解析して、瞳孔の位置と角膜表面における光源の角膜反射像の位置との位置関係を特定することにより、ユーザの視線方向を特定することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る表示装置1は、視野の起点となる位置より視野中心の延長線上で所定距離だけ離隔した位置に視線誘導オブジェクトPを配置する構成としたが、視野の起点から離隔させる距離について、操作部17を通じてユーザの設定を受け付けてもよい。ユーザにより設定された距離は記憶部12に記憶される。制御部11は、視線誘導を開始する際、ユーザにより設定された距離を記憶部12から読み出し、読み出した距離に基づき、視線誘導の始点である座標Aを導出すればよい。
【0050】
更に、本実施の形態に係る表示装置1は、視線誘導オブジェクトPが終点に到達したと判断した場合、視線誘導オブジェクトPを消滅させる構成としたが、視線誘導オブジェクトPが終点に到達したと判断した場合、所定のアクションを実行する構成としてもよい。例えば、表示装置1は、視線誘導オブジェクトPが終点に到達したと判断した場合、視線誘導オブジェクトPを点滅させるなどして強調表示してもよく、音響出力部15より音を出力してもよい。また、表示装置1が振動子を備えている場合、視線誘導オブジェクトPが終点に到達した際に振動子を振動させてもよい。
【0051】
更に、表示装置1は、HMDに限らず、タブレット端末、ゲーム機、パーソナルコンピュータなどが備える表示装置であってもよい。すなわち、これらの端末において現実空間又は仮想空間上のコンテンツにコンテンツを重畳して表示し、現実空間又は仮想空間上の特定の位置にユーザの視線を誘導する場合、表示装置は、ユーザの視野領域内から特定の位置に向けたオブジェクトを出力することにより、視線誘導を行えばよい。
【符号の説明】
【0052】
1 表示装置
11 制御部
12 記憶部
13 画像処理部
14 表示部
15 音響出力部
16 姿勢検出部
17 操作部
18 通信部
P 視線誘導オブジェクト