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特開2022-191001内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191001
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20221220BHJP
   H01T 13/32 20060101ALI20221220BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20221220BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/32
F02P13/00 301J
F02P13/00 301A
F02B19/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099588
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
5G059
【Fターム(参考)】
3G019KA01
3G019KA11
3G019KA12
3G019KA15
3G019KA17
3G023AA01
3G023AB01
3G023AB03
3G023AC03
3G023AD03
3G023AD21
3G023AD25
3G023AD28
3G023AD30
5G059AA01
5G059CC02
5G059DD11
5G059EE11
5G059EE21
5G059EE24
(57)【要約】
【課題】着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供すること。
【解決手段】絶縁碍子3と中心電極4とハウジング2と接地電極6とプラグカバー5とを有する内燃機関用のスパークプラグ1。接地電極6は、固定端部61から副燃焼室50内に突出している。プラグカバー5には、大噴孔51と小噴孔52とが形成されている。大噴孔51及び小噴孔52は、噴孔軸が、プラグ先端側へ向かうにつれて、プラグ径方向の外周側へ向かうように傾斜している。大噴孔51を噴孔軸に平行に延長した延長領域の少なくとも一部は、上記放電ギャップの少なくとも一部を通る。プラグ軸方向Zから見たときの、大噴孔51と接地電極6の固定端部61との間の距離は、大噴孔51の直径以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有する内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記接地電極は、上記副燃焼室の外周側において上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記プラグカバーには、大噴孔(51)と、該大噴孔よりも開口面積が小さい小噴孔(52)とが形成されており、
上記大噴孔及び上記小噴孔は、噴孔軸が、プラグ先端側へ向かうにつれて、プラグ径方向の外周側へ向かうように傾斜しており、
上記大噴孔を噴孔軸(51L)に平行に延長した延長領域(51E)の少なくとも一部は、上記放電ギャップの少なくとも一部を通り、
プラグ軸方向(Z)から見たときの、上記大噴孔と上記接地電極の上記固定端部との間の距離は、上記大噴孔の直径以下である、内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項2】
上記接地電極は、上記大噴孔側の周方向側面(62)における、プラグ軸方向の先端側の端縁(621)が、上記放電ギャップに近い側から上記固定端部に向かうほど先端側に向かうように傾斜している、又は、プラグ軸方向に直交している、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記放電ギャップは、互いにプラグ径方向に対向する、上記接地電極における上記大噴孔側の周方向側面(62)と上記中心電極の側面との間に形成されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記放電ギャップは、互いにプラグ軸方向に対向する、上記接地電極の基端面(63)と上記中心電極の先端との間に形成されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを搭載した内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、を有し、
プラグ軸方向から見たとき、上記大噴孔は、外側開口部が上記吸気弁側を向くように形成されている、内燃機関。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを搭載した内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、上記主燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(71)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記インジェクタから噴射された上記燃料を含む噴射流(F)が、上記大噴孔の外側開口部に向かうように、配置されている、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーには、噴孔が形成されている。これにより、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に火炎を噴出させ、主燃焼室の混合気を燃焼させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の内燃機関用のスパークプラグは、副燃焼室内における混合気への着火、すなわち、初期火炎の形成自体については、考慮されていない。つまり、副燃焼室内の放電を引き伸ばして着火性を向上させることについては、何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有する内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記接地電極は、上記副燃焼室の外周側において上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記プラグカバーには、大噴孔(51)と、該大噴孔よりも開口面積が小さい小噴孔(52)とが形成されており、
上記大噴孔及び上記小噴孔は、噴孔軸が、プラグ先端側へ向かうにつれて、プラグ径方向の外周側へ向かうように傾斜しており、
上記大噴孔を噴孔軸(51L)に平行に延長した延長領域(51E)の少なくとも一部は、上記放電ギャップの少なくとも一部を通り、
プラグ軸方向(Z)から見たときの、上記大噴孔と上記接地電極の上記固定端部との間の距離は、上記大噴孔の直径以下である、内燃機関用のスパークプラグにある。
【0007】
本発明の他の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを搭載した内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、を有し、
プラグ軸方向から見たとき、上記大噴孔は、外側開口部が上記吸気弁側を向くように形成されている、内燃機関にある。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを搭載した内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、上記主燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(71)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記インジェクタから噴射された上記燃料を含む噴射流(F)が、上記大噴孔の外側開口部に向かうように、配置されている、内燃機関にある。
【発明の効果】
【0009】
上記内燃機関用のスパークプラグにおいて、上記大噴孔を噴孔軸に平行に延長した延長領域の少なくとも一部は、放電ギャップの少なくとも一部を通る。これにより、内燃機関の膨張行程及び圧縮行程において、大噴孔を通過する気流に伴って、放電ギャップに気流が形成されやすい。
【0010】
そして、大噴孔と接地電極の固定端部との間の距離は、大噴孔の直径以下である。それゆえ、膨張行程においては、接地電極側の放電端を大噴孔に近づく方向に移動させやすくなる。また、圧縮行程においては、接地電極の突出側へ放電を引き伸ばしやすくなる。
これにより、着火性を向上させることができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の正面図であって、図2のI矢視相当図。
図2図1のII-II線矢視断面相当図。
図3図2のIII-III線矢視断面相当図。
図4図2のIV-IV線矢視断面相当図。
図5】実施形態1における、膨張行程時の、放電が伸長した状態の断面説明図。
図6図5のVI-VI線矢視断面相当図。
図7】実施形態1における、膨張行程時の、放電がさらに伸長した状態の断面説明図。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面相当図。
図9】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長した状態の断面説明図。
図10図9のX-X線矢視断面相当図。
図11】実施形態1における、圧縮行程時の、副燃焼室内のタンブル流の説明図。
図12】実施形態2における、内燃機関の断面説明図。
図13】実施形態2における、主燃焼室に形成された気流の向きを説明する、内燃機関を先端側から見た説明図。
図14】実施形態3における、内燃機関の断面説明図。
図15】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図16のXV-XV線矢視断面相当図。
図16図15のXVI-XVI線矢視断面相当図。
図17】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の正面図。
図18】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1図11を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1図4に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。
【0014】
中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3の先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0015】
接地電極6は、固定端部61から副燃焼室50内に突出している。固定端部61は、接地電極6の一端部であって、副燃焼室50の外周側においてハウジング2又はプラグカバー5に固定された端部である。プラグカバー5には、大噴孔51と、大噴孔51よりも開口面積が小さい小噴孔52とが形成されている。大噴孔51及び小噴孔52は、噴孔軸が、プラグ先端側へ向かうにつれて、プラグ径方向の外周側へ向かうように傾斜している。
【0016】
図2図3に示すごとく、大噴孔51を噴孔軸51Lに平行に延長した延長領域51Eの少なくとも一部は、放電ギャップGの少なくとも一部を通る。図2に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たときの、大噴孔51と接地電極6の固定端部61との間の距離は、大噴孔51の直径以下である。
【0017】
本形態において、図3に示すごとく、プラグ径方向から見たときの、大噴孔51と接地電極6の固定端部61との間の距離も、大噴孔51の直径以下である。さらに好ましくは、大噴孔51と接地電極6の固定端部61との間の直線距離は、大噴孔51の直径以下である。
【0018】
大噴孔51の直径は、例えば、小噴孔52の直径の1.2~1.4倍とすることができる。大噴孔51の直径をこの範囲に規定することで、大噴孔51から流出する気流を充分に強くしやすくなる。本形態においては、すべての小噴孔510が、互いに同じ直径を有する。なお、噴孔の直径は、当該噴孔が円形ではない場合には、当該噴孔の開口面積と同じ面積を有する円の直径を意味するものとする。
【0019】
本形態のスパークプラグ1は、図2に示すごとく、噴孔51として、1個の大噴孔51と、3個の小噴孔52とを有する。これら4個の噴孔(すなわち1個の大噴孔51と3個の小噴孔52)は、プラグ周方向に等間隔に配置されている。それゆえ、プラグ周方向に隣り合う噴孔同士は、プラグ周方向に90°、互いにずれた位置に形成されている。そして、プラグ軸方向Zから見て、大噴孔51の近傍に、接地電極6の固定端部61が配されている。なお、大噴孔51と小噴孔52との合計数は、4個に限定されるものではないが、3個以上であることが好ましい。
【0020】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1のプラグ軸方向Zの一端が、内燃機関の主燃焼室に配置される(後述の図12参照)。プラグ軸方向Zにおいて、主燃焼室に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の中心軸PC(図3図4参照)に直交する方向を、プラグ径方向というものとする。また、プラグ中心軸を中心とした円周に沿った方向をプラグ周方向というものとする。
【0021】
図3図4に示すごとく、放電ギャップGは、互いにプラグ軸方向Zに対向する接地電極6の基端面63と中心電極4の先端との間に形成されている。接地電極6は、固定端部61から、プラグ軸方向Zに対して直交する方向に突出している。接地電極6は、突出方向に直交する断面の形状が、略長方形状を有する。そして、接地電極6の基端面63は、略平坦面となっている。この接地電極6の基端面63が、プラグ軸方向Zにおいて、中心電極4の先端と対向している。互いに対向する接地電極6の基端面63と中心電極4との間に、放電ギャップGが形成されている。
【0022】
上述のように、大噴孔51の延長領域51Eの少なくとも一部は、放電ギャップGの少なくとも一部を通る(図2図3参照)。本形態においては、大噴孔51の噴孔軸51Lも、放電ギャップGの一部を通過する。ここで、噴孔軸51Lは、大噴孔51の中心軸を延長した軸線である。
【0023】
図1に示すごとく、接地電極6は、大噴孔51側の周方向側面62における、プラグ軸方向Zの先端側の端縁621が、プラグ軸方向Zに直交している。本形態において、接地電極6の基端面63も、プラグ軸方向Zに直交する。
【0024】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、大噴孔51を噴孔軸51Lに平行に延長した延長領域51Eの少なくとも一部は、放電ギャップGの少なくとも一部を通る。これにより、内燃機関の膨張行程及び圧縮行程において、大噴孔51を通過する気流に伴って、放電ギャップGに気流が形成されやすい。
【0025】
そして、大噴孔51と接地電極6の固定端部61との間の距離は、大噴孔51の直径以下である。それゆえ、膨張行程においては、接地電極6側の放電端を大噴孔51に近づく方向に移動させやすくなる。また、圧縮行程においては、接地電極6の突出側へ放電を引き伸ばしやすくなる。
これにより、着火性を向上させることができる。
【0026】
この点につき、膨張行程点火の場合と、圧縮行程点火の場合とにおいて、それぞれ詳説する。
膨張行程においては、図5図6に示すごとく、大噴孔51及び小噴孔52において、副燃焼室50から主燃焼室へ流出する気流が生じる。そして、特に大噴孔51から流出する気流Aoutがより強く生じる。これに伴い、副燃焼室50における放電ギャップGと大噴孔51との間の領域付近に、大噴孔51へ向かう気流A11が生じる。また、プラグ軸方向Zから見たときの接地電極6における大噴孔51側の周方向側面62に沿って、固定端部61側へ向かう気流A12も形成される。
【0027】
それゆえ、膨張行程点火によって生じた放電Sは、気流A11によって、大噴孔51に向かって引き伸ばされる。また、放電Sの接地電極6側の放電端は、接地電極6の周方向側面62に沿って、固定端部61側へ移動する。その結果、放電Sは、大きく引き伸ばされることとなる。それゆえ、副燃焼室50における着火性を向上させることができ、ひいては、副燃焼室50から主燃焼室へのジェット噴射を強化することができる。
【0028】
また、場合によっては、図7図8に示すごとく、放電端は、大噴孔51の内面にまで移動することもある。この場合には、放電Sが大噴孔51から主燃焼室に突出したり、放電プラズマが大噴孔51から主燃焼室へ噴出したりすることも期待できる。その結果、主燃焼室における着火性を向上させることができる。
【0029】
圧縮行程においては、図9図10に示すごとく、大噴孔51及び小噴孔52において、主燃焼室から副燃焼室50へ流入する気流が生じる。そして、特に大噴孔51から流入する気流Ainがより強く生じる。この気流Ainに伴い、放電ギャップG付近には、接地電極6の突出側へ向かう気流A21が形成される。
【0030】
それゆえ、圧縮行程点火によって生じた放電Sは、気流A21によって、接地電極6の突出側へ向かって引き伸ばされる。その結果、放電Sは、副燃焼室50における冷損を受けにくい空間へ引き伸ばされる。それゆえ、副燃焼室50における着火性を向上させることができ、ひいては、副燃焼室50から主燃焼室へのジェット噴射を強化することができる。
【0031】
また、本形態においては、放電ギャップGが、互いにプラグ軸方向Zに対向する、接地電極6の基端面63と中心電極4の先端との間に形成されている。それゆえ、図11に示すごとく、大噴孔51から流入した気流Ainによって、副燃焼室50において、基端側へ向かう気流A22が生じる。この気流A22は、副燃焼室50の基端部において向きを変え、接地電極6の固定端部61付近における基端面63に向かう。すなわち、副燃焼室50において、いわゆるタンブル流が形成される。この気流A22は、接地電極6の基端面63によって、放電ギャップGに導かれる。そうすると、この気流A22によっても、放電Sが、接地電極6の突出側へ引き伸ばされることが期待できる。
【0032】
なお、上述の接地電極6による気流のガイド機能の観点から、接地電極6の基端面63は、平坦面もしくは凹曲面となっていることが好ましい。なお、基端面63を凹曲面とする場合は、接地電極6の突出方向に直交する断面形状が凹曲線状となるような凹曲面となるようにする。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
【0034】
(実施形態2)
本形態においては、図12図13を参照して、スパークプラグ1を搭載した内燃機関10につき説明する。
内燃機関10は、主燃焼室101と、主燃焼室101に設けられた吸気弁72及び排気弁73と、を有する。図13に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、大噴孔51は、外側開口部が吸気弁72側を向くように形成されている。なお、外側開口部は、大噴孔51における主燃焼室101側の開口部である。つまり、図3の符号511を付した部位が、外側開口部に相当する。
【0035】
本形態の内燃機関10は、図12に示すごとく、シリンダヘッド76と、シリンダブロック75と、シリンダ70内を往復運動するピストン74とを備える。そして、シリンダヘッド76、シリンダブロック75、及びピストン74に囲まれて、主燃焼室101が形成される。シリンダヘッド76には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。そして、シリンダヘッド76における吸気ポート721と排気ポート731との間には、スパークプラグ1が取り付けられる。すなわち、図12図13に示すごとく、スパークプラグ1は、シリンダヘッド76における、2つの吸気ポート721と2つの排気ポート731とに囲まれた位置に配設されている。
【0036】
吸気ポート721及び排気ポート731は、その開口方向が主燃焼室101の中心軸側に向かうように、ピストン74の進退方向に対して傾斜している。また、主燃焼室101の基端面は、スパークプラグ1から遠ざかるにつれて先端側へ向かうように傾斜している。
【0037】
内燃機関10においては、ピストン74の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返される。吸気行程において、吸気ポート721からガス(主として空気)が主燃焼室101内に導入され、排気行程において、排気ポート731から主燃焼室101内のガスが排出される。吸気行程における気流の導入のされ方等に起因して、主燃焼室101に所定の気流が形成され、圧縮行程においても、その気流は残る。
【0038】
そして、主燃焼室101内においては、主として、図12の矢印AF2に示すごとく、ピストン74の摺動方向に直交する方向の軸周りの気流である、タンブル流が形成される。そして、この気流AF2は、図12図13に示すごとく、主燃焼室101内のスパークプラグ1の先端部付近においては、吸気弁72側から排気弁73側へ向かう向きとなる。より具体的には、図13に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの吸気ポート721の中間位置から、2つの排気ポート731の中間位置へ向かう方向に沿った気流AF2が、スパークプラグ1の先端部付近の主な気流となる。
【0039】
なお、主燃焼室101内の気流は、常に一定となっているわけではなく、サイクル間、或いは1サイクル中の異なるタイミングの間において、変動し得る。ただし、主な気流の向き、特に、点火タイミングにおける気流の向きは、概略定まっており、上述した気流AF2は、点火タイミングにおける主な気流を意味する。そして、「主燃焼室101の気流」というときは、特に断らない限り、上述の、点火タイミングにおける、スパークプラグ1の先端部付近の気流AF2を意味する。
【0040】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0041】
本形態の内燃機関において、プラグ軸方向Zから見たとき、大噴孔51は、外側開口部が吸気弁72側を向くように形成されている。これにより、大噴孔51は、主燃焼室101の気流AF2の上流側を向くこととなる。そうすると、特に圧縮行程において、大噴孔51からの流入気流(図9図11における矢印Ain参照)を、より強化することができる。その結果、上述の実施形態1において説明した圧縮行程における着火性の向上効果を、より効果的に得ることができる。
【0042】
また、副燃焼室50から主燃焼室101へ噴出する火炎としては、大噴孔51を介して噴出する火炎が特に大きくなる。それゆえ、プラグ軸方向Zから見たとき、大噴孔51が主燃焼室101の吸気弁72側を向いていることにより、吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができることとなる。そのため、プラグ軸方向Zから見て主燃焼室101における吸気弁72側の混合気の着火性を向上させることができる。それゆえ、主燃焼室101全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0043】
つまり、主燃焼室101は、排気弁73側と比較して、吸気弁72側が低温となりやすい。吸気ポート721から、比較的低温のガスが主燃焼室101へ導入されるからである。それゆえ、一般に、主燃焼室101における、排気弁73側の混合気に対し、吸気弁72側の混合気の燃焼が遅れやすく、主燃焼室101における混合気の燃焼のバランスが悪くなる傾向がある。しかし、本形態においては、上記のごとく、副燃焼室50から主燃焼室101の吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができる。そのため、主燃焼室101全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0044】
(実施形態3)
本形態は、図14に示すごとく、主燃焼室101に直接燃料を噴射するインジェクタ71を有する内燃機関10の形態である。
スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された燃料を含む噴射流Fが、大噴孔51の外側開口部に向かうように、配置されている。
【0045】
内燃機関10の吸気行程から圧縮行程までのいずれかのタイミングにおいて、インジェクタ71から燃料が、主燃焼室101へ噴出される。この燃料を含む噴射流Fが、主燃焼室101において形成され、大噴孔51の外側開口部に向かう。
【0046】
なお、図14に示す矢印Fは、燃料噴射直後の噴射流の向きを示すものであり、これは、必ずしも、吸気行程、圧縮行程又は膨張行程における主燃焼室101内の気流と一致するものではない。また、噴射流Fが大噴孔51の外側開口部に向かう状態とは、プラグカバー5近傍の噴射流Fの方向から大噴孔51の外側開口部が見えるような状態である。
【0047】
吸気ポート721に隣接する位置に、インジェクタ71が設けてある。インジェクタ71は、主燃焼室101の中心軸側に向かって燃料を噴射するような姿勢にて、取り付けられている。
【0048】
主燃焼室101へ噴射された燃料は、例えば、図14に示すごとく、主燃焼室101内の空気と共に噴射流Fを形成して、ピストン74の基端面に当たる。本形態において、ピストン74の基端面は、凹状面を有する。ピストン74の基端面に当たった噴射流Fは、軌道を変えて、基端側、すなわちスパークプラグ1側へ向かう。このとき、噴射流Fは、スパークプラグ1の大噴孔51付近に到達する。
【0049】
噴射流Fは、燃料割合の比較的大きい混合気となっている。それゆえ、噴射流Fが到達した大噴孔51付近は、燃料を多く含む混合気となる。そして、この混合気は、大噴孔51を介して副燃焼室50に導入されることとなる。
その他、実施形態1と同様である。
【0050】
本形態の内燃機関10において、スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された噴射流Fが、大噴孔51に向かうように、配置されている。これにより、燃料密度の高い混合気が、大噴孔51から副燃焼室50内へ導入されやすくなる。その結果、副燃焼室50における着火性が向上し、ひいては主燃焼室101の着火性を向上させることができる。
【0051】
例えば、内燃機関の高負荷運転時のリタード噴射、リタード点火を行う際の着火性の向上効果を、特に期待することができる。リタード噴射が行われる圧縮行程においては、主燃焼室101内の雰囲気が圧縮され、大噴孔51及び小噴孔52を介して、副燃焼室50へ空気が流入する。これにより、副燃焼室50内の圧力も上昇する。したがって、リタード点火のタイミングにおいては、比較的、副燃焼室50内へ混合気が流入しにくいところ、本形態によれば、高濃度の混合気を大噴孔51経由にて副燃焼室50へ導入しやすくなる。あるいは、比較的気流が弱く、燃焼濃度にムラが生じやすい、内燃機関の始動時における着火性の向上にも、特に有効といえる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態4)
本形態は、図15図16に示すごとく、放電ギャップGが、互いにプラグ径方向に対向する、接地電極6と中心電極4との間に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ1の形態である。
【0053】
すなわち、放電ギャップGは、接地電極6における大噴孔51側の周方向側面62と中心電極4の側面との間に形成されている。
【0054】
図16に示すごとく、プラグ軸方向Zから見て、接地電極6は、プラグ径方向に対して傾斜している。そして、接地電極6の突出端部付近における周方向側面62が、プラグ径方向において、中心電極4の側面とプラグ径方向に対向している。この互いにプラグ径方向に対向した接地電極6の周方向側面62と中心電極4の側面との間に、放電ギャップGが形成されている。
【0055】
本形態においては、プラグ軸方向Zから見て、接地電極6の突出方向が、大噴孔51の噴孔軸51Lと略平行となっている。また、接地電極6は、プラグ軸方向Zの幅を、突出方向及びプラグ軸方向Zに直交する方向の幅よりも、大きくすることができる。また、周方向側面62は、平坦面となっている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0056】
本形態においては、大噴孔51から副燃焼室50へ流入する気流が、接地電極6に遮られることなく、放電ギャップGへ向かいやすい。それゆえ、圧縮行程点火における、放電の引き伸ばしをより効果的に実現することができる。また、大噴孔51から流出する気流に伴って、放電ギャップGと大噴孔51との間に生じる気流も、接地電極6によって遮られにくい。それゆえ、膨張行程点火における、放電の引き伸ばしをより効果的に実現することができる。
【0057】
また、接地電極6の周方向側面62がガイドとなって、気流を放電ギャップGに導くことも期待できる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0058】
(実施形態5)
本形態のスパークプラグ1は、図17に示すごとく、接地電極6の、大噴孔51側の周方向側面62における、プラグ軸方向Zの先端側の端縁621が、傾斜している形態である。
端縁621は、放電ギャップGに近い側から固定端部61に向かうほど先端側に向かうように傾斜している。
その他は、実施形態1と同様である。
【0059】
本形態においては、膨張行程点火の際に生じた放電の放電端が周方向側面62の端縁621に沿って大噴孔51の近傍に移動しやすい。つまり、膨張行程時において、放電ギャップGと大噴孔51との間の空間における気流の向きは、概ねプラグ径方向の外側へ向かうと共に、先端側へも徐々に向かうように、傾斜する(図5図7参照)。
【0060】
それゆえ、本形態のように接地電極6の周方向側面62の端縁621を傾斜させることで、端縁621に沿って大噴孔51に近づく向きと、気流の向きとを近付けることができる。そのため、放電端が大噴孔51近傍へ向かう移動を、より円滑にすることが可能となる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0061】
(実施形態6)
本形態のスパークプラグ1は、図18に示すごとく、接地電極6の周方向側面62におけるプラグ軸方向Zの先端側の端縁621が、固定端部61から突出端部に向かうほど先端側に向かうように傾斜している。
つまり、端縁621の傾斜の向きを、実施形態5における端縁621の傾斜の向きと逆向きにしている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0062】
この場合には、上記実施形態1において説明した副燃焼室50内におけるタンブル流(図11の符号A22参照)を、より放電ギャップGに導きやすくなる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0063】
なお、上記実施形態に示したスパークプラグにおいて、放電ギャップを形成する中心電極の先端部と接地電極との一方又は双方に、チップを接合することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、接地電極6の形状として、突出方向に直交する断面の形状が略長方形状のものを示したが、接地電極の形状は特に限定されるものではない。
【0065】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…大噴孔、52…小噴孔、6…接地電極、61…固定端部、63…基端面、L1…大噴孔の中心軸の延長線、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向
図1
図2
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図4
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