(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191002
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20221220BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099590
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】大手 優人
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC44
3D131CB06
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31X
3D131EB35X
3D131EB46X
3D131EB81W
3D131EB81X
3D131EB87X
3D131EB90W
3D131EB91X
3D131EB99X
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
3D131EC11X
(57)【要約】
【課題】ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2は、内側トレッド端Tiと、外側トレッド端Toと、周方向溝3と、陸部4とを含む。周方向溝3は、内側ショルダー周方向溝5と、外側ショルダー周方向溝6とを含む。陸部4は、内側ショルダー陸部10と、外側ショルダー陸部11とを含む。内側ショルダー陸部10には、内側ショルダー横溝35と、内側ショルダーサイプ36とが設けられている。外側ショルダー陸部11には、外側ショルダー横溝41と、外側ショルダーサイプ42とが設けられている。外側ショルダーサイプ42は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部43で形成されている。面取り部43は、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、前記内側トレッド端と前記外側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の周方向溝は、最も前記内側トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝と、最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝とを含み、
前記複数の陸部は、前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された内側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された外側ショルダー陸部とを含み、
前記内側ショルダー陸部には、複数の内側ショルダー横溝と、複数の内側ショルダーサイプとが設けられており、
前記内側ショルダー横溝は、前記内側トレッド端と前記内側ショルダー周方向溝との間に位置する内端から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー周方向溝から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記外側ショルダー陸部には、複数の外側ショルダー横溝と、複数の外側ショルダーサイプとが設けられており、
前記外側ショルダー横溝は、前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記外側ショルダーサイプは、前記外側ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記外側ショルダー周方向溝と前記外側トレッド端との間に途切れ端を有しており、
前記外側ショルダーサイプは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されており、
前記面取り部は、前記途切れ端の側から前記外側ショルダー周方向溝の側に向かって面取り幅が大きくなっている、
タイヤ。
【請求項2】
前記外側ショルダーサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記外側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の40%~60%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外側ショルダー横溝は、溝底が局部的に隆起したタイバーを含み、
前記タイバーのタイヤ軸方向の長さは、前記外側ショルダーサイプのタイヤ軸方向の長さよりも小さい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数の陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、
前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプが設けられ、
前記内側ミドルサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端から、前記内側ショルダーサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの10%以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記内側ショルダー横溝の前記内端から前記内側ミドルサイプの前記端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側ショルダー横溝のタイヤ周方向の1ピッチ長さの30%~50%である、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の陸部は、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部と隣接する外側ミドル陸部を含み、
前記外側ミドル陸部には、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドルサイプが設けられ、
前記外側ミドルサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の端から、前記外側ショルダーサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記外側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの10%以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記外側ショルダー横溝の前記外側ショルダー周方向溝側の端から前記外側ミドルサイプの前記端までのタイヤ周方向の距離は、前記外側ショルダー横溝のタイヤ周方向の1ピッチ長さの30%~50%である、請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド面に、複数の傾斜溝と、前記傾斜溝によって形成された略平行四辺形状のブロックとを含む空気入りタイヤが提案されている。また、前記空気入りタイヤは、前記ブロックをサイピングによって3以上のブロック小片の群に区分することにより、ウェット性能などを損ねることなく耐偏摩耗性能及び乗り心地などを改善することを期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のタイヤには、車外騒音の低減と制動性能の向上とを両立させることが要求されており、とりわけ欧州においてこの傾向が顕著である。
【0005】
他方、車外騒音の低減には、トレッド部の溝の容積を低減することが有効であり、これが制動性能の向上にも効果的であると考えられている。しかしながら、トレッド部の溝の容積を低減すると、ウェット性能が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、前記内側トレッド端と前記外側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の周方向溝は、最も前記内側トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝と、最も前記外側トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝とを含み、前記複数の陸部は、前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された内側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された外側ショルダー陸部とを含み、前記内側ショルダー陸部には、複数の内側ショルダー横溝と、複数の内側ショルダーサイプとが設けられており、前記内側ショルダー横溝は、前記内側トレッド端と前記内側ショルダー周方向溝との間に位置する内端から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー周方向溝から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、前記外側ショルダー陸部には、複数の外側ショルダー横溝と、複数の外側ショルダーサイプとが設けられており、前記外側ショルダー横溝は、前記外側ショルダー周方向溝から前記外側トレッド端を超えた位置まで延びており、前記外側ショルダーサイプは、前記外側ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記外側ショルダー周方向溝と前記外側トレッド端との間に途切れ端を有しており、前記外側ショルダーサイプは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されており、前記面取り部は、前記途切れ端の側から前記外側ショルダー周方向溝の側に向かって面取り幅が大きくなっている。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダーサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記外側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の40%~60%であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝は、溝底が局部的に隆起したタイバーを含み、前記タイバーのタイヤ軸方向の長さは、前記外側ショルダーサイプのタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプが設けられ、前記内側ミドルサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端から、前記内側ショルダーサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの10%以下であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー横溝の前記内端から前記内側ミドルサイプの前記端までのタイヤ周方向の距離は、前記内側ショルダー横溝のタイヤ周方向の1ピッチ長さの30%~50%であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の陸部は、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部と隣接する外側ミドル陸部を含み、前記外側ミドル陸部には、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドルサイプが設けられ、前記外側ミドルサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の端から、前記外側ショルダーサイプの前記外側ショルダー周方向溝側の端までのタイヤ周方向の距離は、前記外側ショルダーサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さの10%以下であるのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝の前記外側ショルダー周方向溝側の端から前記外側ミドルサイプの前記端までのタイヤ周方向の距離は、前記外側ショルダー横溝のタイヤ周方向の1ピッチ長さの30%~50%であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図4】
図3の外側ショルダーサイプの拡大図である。
【
図9】
図1の内側ミドル陸部、外側ミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
【
図11】本発明の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
【
図12】比較例のタイヤの外側ショルダー陸部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0017】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両内側となる内側トレッド端Tiと、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端Toとを含む。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0018】
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0019】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0020】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0021】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0022】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0023】
トレッド部2は、内側トレッド端Tiと外側トレッド端Toとの間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4を有する所謂5リブのタイヤとして構成されている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2が3本の周方向溝3に区分された4つの陸部4を有する所謂4リブのタイヤとして構成されても良い。
【0024】
周方向溝3は、最も内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー周方向溝5と、最も外側トレッド端To側に配された外側ショルダー周方向溝6とを含む。本実施形態の周方向溝3は、さらに、内側クラウン周方向溝7及び外側クラウン周方向溝8を含む。内側クラウン周方向溝7は、内側ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。外側クラウン周方向溝8は、外側ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0025】
タイヤ赤道Cから内側ショルダー周方向溝5又は外側ショルダー周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから内側クラウン周方向溝7又は外側クラウン周方向溝8の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における内側トレッド端Tiから外側トレッド端Toまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0026】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0027】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝6が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0028】
本発明の陸部4は、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11を含む。内側ショルダー陸部10は、内側ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に配されており、内側トレッド端Tiを含む。外側ショルダー陸部11は、外側ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に配されており、外側トレッド端Toを含む。
【0029】
また、本実施形態の陸部4は、内側ミドル陸部12、外側ミドル陸部13及びクラウン陸部14を含む。内側ミドル陸部12は、内側ショルダー周方向溝5と内側クラウン周方向溝7との間に区分されている。すなわち、内側ミドル陸部12は、内側ショルダー周方向溝5を介して内側ショルダー陸部10と隣接している。外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝6と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。すなわち、外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝6を介して外側ショルダー陸部11と隣接している。クラウン陸部14は、内側クラウン周方向溝7と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。
【0030】
図2には、内側ショルダー陸部10の拡大図が示されている。
図2に示されるように、内側ショルダー陸部10には、複数の内側ショルダー横溝35と、複数の内側ショルダーサイプ36とが設けられている。本実施形態では、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0031】
内側ショルダー横溝35は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー周方向溝5との間に位置する内端35aから内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。また、内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。
【0032】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、一対のサイプ壁が実質的に平行に配されたサイプの本体部において、2つのサイプ壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmである。サイプの開口部には、幅が1.5mmを超える面取り部が連なっても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0033】
図3には、外側ショルダー陸部11の拡大図が示されている。
図3に示されるように、外側ショルダー陸部11には、複数の外側ショルダー横溝41と、複数の外側ショルダーサイプ42とが設けられている。本実施形態では、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0034】
外側ショルダー横溝41は、外側ショルダー周方向溝6から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー周方向溝6から延び、かつ、外側ショルダー周方向溝6と外側トレッド端Toとの間に途切れ端42aを有している。
【0035】
図4には、外側ショルダーサイプ42の拡大図が示されている。
図5には、
図3のA-A線断面図が示されている。
図4及び
図5に示されるように、外側ショルダーサイプ42は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部43で形成されている。本実施形態の面取り部43は、例えば、陸部の接地面とサイプの内壁との間を延びる傾斜面23で構成されている。この傾斜面23は、例えば、陸部の接地面を通るタイヤ法線に対して30~60°の角度で配されている。
【0036】
また、面取り部43は、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅W2が大きくなっている。本発明では、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0037】
図2に示されるように、内側ショルダー横溝35は、内側ショルダー周方向溝5と内側トレッド端Tiとの間に内端35aを有しているため、ポンピング音が小さく、車外騒音を小さくするのに役立つ。また、内側ショルダー横溝35は、ある程度の排水性も期待でき、ウェット性能を維持するのにも役立つ。
【0038】
内側ショルダーサイプ36は、そのエッジ効果によって、ウェット性能を維持することができる。また、内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の接地面の歪を抑制して接地圧を均一化でき、ひいては内側ショルダー陸部10の接地面の全体で大きな摩擦力を発揮させるのに役立つ。このような作用によって、制動性能が向上する。
【0039】
図3に示されるように、外側ショルダー横溝41は、外側ショルダー周方向溝6から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びているため、優れた排水性を発揮し、ウェット性能を高めるのに役立つ。また、面取り部43が形成された外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー陸部11に作用する接地圧を均一化させる。これにより、外側ショルダー陸部11での摩擦力がタイヤ軸方向でバランス良く発揮され、ひいては制動性能が向上する。
【0040】
さらに、
図4及び
図5に示されるように、外側ショルダーサイプ42の面取り部43は、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっていることにより、外側ショルダー周方向溝6の溝縁が接地するときの打音を小さくでき、かつ、ウェット走行時において外側ショルダーサイプ42が押し退けた水を外側ショルダー周方向溝6側に積極的に案内できる。本発明のタイヤは、以上のようなメカニズムにより、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができると推察される。
【0041】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0042】
図2に示されるように、複数の内側ショルダー横溝35のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1、及び、複数の内側ショルダーサイプ36のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W3の110%~150%である。これにより、ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く向上させることができる。なお、タイヤ周方向に並んだ横溝におけるタイヤ周方向の1ピッチ長さは、隣り合う2つの横溝の溝中心線間のタイヤ周方向の距離に相当する。サイプの1ピッチ長さも同様である。
【0043】
内側ショルダー横溝35は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。内側ショルダー陸部10の接地面における内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W3の70%~90%である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット性能を維持しつつ、制動性能を向上させるのに役立つ。
【0044】
内側ショルダー横溝35は、例えば、タイヤ軸方向に対して右下がりに傾斜している。以下、本明細書において、このような傾斜の向きをタイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜しているという場合がある。内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット走行時、内部の水を内側トレッド端Ti側に案内でき、優れた排水性を発揮する。
【0045】
内側ショルダーサイプ36は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜して直線状に延びている。内側ショルダーサイプ36のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。内側ショルダーサイプ36と内側ショルダー横溝35との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能及び乗り心地性を向上させることができる。
【0046】
内側ショルダーサイプ36には、面取り部が設けられていないのが望ましい。すなわち、内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の接地面に直接連なりタイヤ半径方向に沿って延びるサイプ壁を有している。このような内側ショルダーサイプ36は、そのエッジによってウェット走行時に大きな摩擦力を提供し得る。
【0047】
本実施形態の内側ショルダー陸部10には、内側ショルダー周方向溝5から内側ショルダー横溝35の内端35aまで延びる補助サイプ37が設けられている。このような補助サイプ37は、ウェット性能を維持するのに役立つ。
【0048】
図6には、
図2のB-B線断面図が示されている。
図6に示されるように、本実施形態の補助サイプ37は、例えば、内側ショルダー周方向溝5側の深底部26と、内側ショルダー横溝35(
図2に示す)側の浅底部27とを含んでいる。浅底部27の深さd2は、深底部26の深さd1の40%~60%である。このような補助サイプ37は、内側ショルダー陸部10の剛性を維持しつつ、ウェット性能を向上させることができる。
【0049】
図3に示されるように、複数の外側ショルダー横溝41のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3、及び、複数の外側ショルダーサイプ42のタイヤ周方向の1ピッチ長さP4は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の80%~120%である。
【0050】
外側ショルダー横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側ショルダー横溝41のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。望ましい態様では、外側ショルダー横溝41と内側ショルダー横溝35(
図2に示す)との角度差が10°以下であり、より望ましくは5°以下である。
【0051】
図7には、
図3のC-C線断面図が示されている。
図7に示されるように、外側ショルダー横溝41は、溝底が局部的に隆起したタイバー28を含む。外側ショルダー陸部11の接地面からタイバー28の外面までの最小の深さd4は、外側ショルダー横溝41の最大の深さd3の40%~60%である。このようなタイバー28は、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。
【0052】
タイバー28のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4(
図3に示す)の30%~40%である。望ましい態様では、タイバー28の前記長さL4は、外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向の長さL5(
図3に示す)よりも小さい。これにより、ウェット性能とノイズ性能及び制動性能とがバランス良く向上する。なお、タイバー28のタイヤ軸方向の長さがタイヤ半径方向に変化する場合、タイバー28の前記長さは、タイヤ半径方向の中心位置で測定されるものとする。
【0053】
図3に示されるように、外側ショルダーサイプ42は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。外側ショルダーサイプ42と外側ショルダー横溝41との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット性能を維持することができる。
【0054】
外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向の長さL5は、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W4の40%~60%である。より望ましい態様では、外側ショルダーサイプ42の前記長さL5は、内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向の長さL3(
図2に示す)よりも小さく、補助サイプ37のタイヤ軸方向の長さL6(
図2に示す)よりも大きい。これにより、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11の接地音がホワイトノイズ化し易くなり、ノイズ性能が向上する。
【0055】
図4に示されるように、外側ショルダーサイプ42の面取り部43の面取り幅W2は、例えば、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって連続的に大きくなっている。外側ショルダー陸部11の接地面に表れる外側ショルダーサイプ42の一方のエッジと他方のエッジとの間の角度θ1は、例えば、5~15°である。これにより、制動性能がより一層向上する。
【0056】
面取り部43の最大の面取り幅W5は、例えば、2.0~4.0mmである。なお、本実施形態では、外側ショルダーサイプ42の外側ショルダー周方向溝6側の端において、最大の面取り幅W5が構成されている。
図5に示されるように、外側ショルダーサイプ42の最大の深さd5は、例えば、4.0~6.0mmである。また、面取り部43の最大の深さd6は、例えば、0.5~2.0mmである。但し、本発明の面取り部43は、このような寸法に限定されるものではない。
【0057】
図8には、
図3のD-D線断面図が示されている。
図8に示されるように、外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー周方向溝6側に配された第1部分46と、途切れ端42a側に配されかつ第1部分46よりも小さい深さの第2部分47とを含む。第2部分47の深さd8は、例えば、第1部分46の深さd7の60%~75%である。また、より望ましい態様では、外側ショルダーサイプ42の第1部分46の深さd7は、内側ショルダーサイプ36及び補助サイプ37(
図2に示す)の最大の深さよりも大きい。これにより、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11の接地音がホワイトノイズ化し易くなり、ノイズ性能が向上する。
【0058】
図9には、内側ミドル陸部12、外側ミドル陸部13及びクラウン陸部14の拡大図が示されている。
図9に示されるように、内側ミドル陸部12には、内側ミドル陸部12をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプ17が設けられている。このような内側ミドルサイプ17は、ウェット走行時に摩擦力を提供し、かつ、内側ミドル陸部12の接地面の歪を抑制することができる。
【0059】
内側ミドルサイプ17は、例えば、タイヤ軸方向に対して右上がりに傾斜している。以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している」という場合がある。望ましい態様では、内側ミドルサイプ17のタイヤ軸方向に対する角度は、内側ショルダーサイプ36のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、内側ミドルサイプ17のタイヤ軸方向に対する角度は、20~30°である。このような内側ミドルサイプ17は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0060】
内側ミドルサイプ17は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部56で形成されている。また、内側ミドルサイプ17の面取り部56は、例えば、定幅部56aと、内側拡幅部56bと、外側拡幅部56cとを含む。定幅部56aは、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部56bは、例えば、定幅部56aの内側クラウン周方向溝7側に連なっており、定幅部56aから内側クラウン周方向溝7まで面取り幅が大きくなっている。外側拡幅部56cは、例えば、定幅部56aの内側ショルダー周方向溝5側に連なっており、定幅部56aから内側ショルダー周方向溝5まで面取り幅が大きくなっている。このような面取り部56を有する内側ミドルサイプ17は、内側ミドル陸部12に作用する接地圧を均一化させ易く、制動性能をより一層向上させるのに役立つ。
【0061】
定幅部56aは、例えば、内側ミドル陸部12のタイヤ軸方向の中心位置よりも内側トレッド端Ti(
図1に示す)側に位置ずれして設けられている。これにより、内側拡幅部56bのタイヤ軸方向の長さL7は、外側拡幅部56cのタイヤ軸方向の長さL8よりも大きい。具体的には、内側拡幅部56bの前記長さL7は、内側ミドル陸部12の接地面の前記幅W6の40%~60%である。外側拡幅部56cの前記長さL8は、内側ミドル陸部12の接地面の前記幅W6の25%~35%である。これにより、内側ミドル陸部12に作用する接地圧が変化しても、上述の効果が確実に発揮される。
【0062】
同様の観点から、内側拡幅部56bの最大の面取り幅W7は、外側拡幅部56cの最大の面取り幅W8よりも大きいのが望ましい。具体的には、内側拡幅部56bの前記面取り幅W7は、外側拡幅部56cの前記面取り幅W8の1.3~2.0倍である。
【0063】
図10には、
図9のE-E線断面図が示されている。
図10に示されるように、内側拡幅部56bの最大の深さd9は、外側拡幅部56cの最大の深さd10よりも大きい。具体的には、内側拡幅部56bの前記深さd9は、外側拡幅部56cの前記深さd10の1.5~2.5倍である。
【0064】
内側ミドルサイプ17は、例えば、溝底が局部的に隆起したミドルタイバー25を含んでいる。ミドルタイバー25は、例えば、内側ミドルサイプ17をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。ミドルタイバー25のタイヤ軸方向の長さL9は、内側ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W6(
図9に示す)の30%~50%である。内側ミドル陸部12の接地面からミドルタイバー25の外面までの深さd12は、内側ミドルサイプ17の最大の深さd11の50%~70%である。このようなミドルタイバー25は、内側ミドル陸部12の剛性を維持し、大きなコーナリングフォースを提供するのに役立つ。
【0065】
図1に示されるように、内側ミドルサイプ17の内側ショルダー周方向溝5側の端17aから、内側ショルダーサイプ36の内側ショルダー周方向溝5側の端36aまでのタイヤ周方向の距離は、内側ショルダーサイプ36のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2(
図2に示す)の10%以下が望ましく、より望ましくは5%以下である。本実施形態では、各内側ミドルサイプ17が、上述の態様で配置されている。このような内側ミドルサイプ17の配置は、内側ショルダーサイプ36とともに、各陸部に作用する接地圧を均一化でき、制動性能がより一層向上する。また、このようなサイプの配置は、操舵時のコーナリングフォースの増加をリニアにし、操縦安定性を向上させるのに役立つ。
【0066】
また、内側ショルダー横溝35の前記内端35aから内側ミドルサイプ17の前記端17aまでのタイヤ周方向の距離L10は、内側ショルダー横溝35のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1(
図2に示す)の30%~50%である。これにより、各陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0067】
図9に示されるように、外側ミドル陸部13には、外側ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドルサイプ16が設けられている。このような外側ミドルサイプ16は、ウェット走行時に摩擦力を提供し、かつ、外側ミドル陸部13の接地面の歪を抑制することができる。
【0068】
外側ミドルサイプ16は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。望ましい態様では、外側ミドルサイプ16のタイヤ軸方向に対する角度は、外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、外側ミドルサイプ16のタイヤ軸方向に対する角度は、20~30°である。このような外側ミドルサイプ16は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0069】
外側ミドルサイプ16は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部55で形成されている。また、外側ミドルサイプ16の面取り部55は、例えば、定幅部55aと、内側拡幅部55bと、外側拡幅部55cとを含む。定幅部55aは、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部55bは、例えば、定幅部55aの外側クラウン周方向溝8側に連なっており、定幅部55aから外側クラウン周方向溝8まで面取り幅が大きくなっている。外側拡幅部55cは、例えば、定幅部55aの外側ショルダー周方向溝6側に連なっており、定幅部55aから外側ショルダー周方向溝6まで面取り幅が大きくなっている。このような面取り部55を有する外側ミドルサイプ16は、外側ミドル陸部13に作用する接地圧を均一化させ易く、制動性能をより一層向上させるのに役立つ。
【0070】
定幅部55aは、例えば、外側ミドル陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側トレッド端To(
図1に示す)側に位置ずれして設けられている。これにより、内側拡幅部55bのタイヤ軸方向の長さは、外側拡幅部55cのタイヤ軸方向の長さよりも大きい。外側ミドルサイプ16の内側拡幅部55b及び外側拡幅部55cには、上述の内側ミドルサイプ17の内側拡幅部56b及び外側拡幅部56cの構成を適用することができる。
【0071】
外側ミドルサイプ16の内側拡幅部55bの最大の面取り幅W9は、外側ショルダーサイプ42の面取り部43の最大の面取り幅W5(
図4に示す)よりも大きい。また、外側ミドルサイプ16の外側拡幅部55cの最大の面取り幅W10は、外側ショルダーサイプ42の面取り部43の最大の面取り幅W5よりも小さい。これにより、上述の効果を発揮しつつ、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13の偏摩耗が抑制される。
【0072】
外側ミドルサイプ16は、
図10で示される内側ミドルサイプ17と同様の断面形状を有している。このため、外側ミドルサイプ16には、上述の内側ミドルサイプ17の断面形状の構成を適用することができる。
【0073】
図1に示されるように、外側ミドルサイプ16の外側ショルダー周方向溝6側の端16aから、外側ショルダーサイプ42の外側ショルダー周方向溝6側の端42bまでのタイヤ周方向の距離は、外側ショルダーサイプ42のタイヤ周方向の1ピッチ長さP4(
図3に示す)の10%以下が望ましく、より望ましくは5%以下である。このような外側ミドルサイプ16の配置は、外側ショルダーサイプ42とともに、各陸部に作用する接地圧を均一化でき、制動性能がより一層向上する。また、このようなサイプの配置は、操舵時のコーナリングフォースの増加をリニアにし、操縦安定性を向上させるのに役立つ。
【0074】
外側ショルダー横溝41の外側ショルダー周方向溝6側の端41aから外側ミドルサイプ16の前記端16aまでのタイヤ周方向の距離L11は、外側ショルダー横溝41のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3(
図3に示す)の30%~50%である。これにより、各陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0075】
図9に示されるように、クラウン陸部14には、複数の第1クラウンサイプ31及び複数の第2クラウンサイプ32が設けられている。第1クラウンサイプ31は、例えば、内側クラウン周方向溝7から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。第2クラウンサイプ32は、例えば、外側クラウン周方向溝8から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。このような第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、ウェット性能を維持しつつ、転がり抵抗を低減することができる。
【0076】
上述の効果を確実に発揮させるために、第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、それぞれ、クラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横断しておらず、かつ、タイヤ赤道Cを横断していない。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向の長さL12は、例えば、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W11の15%~30%である。
【0077】
第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。より望ましい態様では、第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32と、外側ミドルサイプ16との角度差が10°以下とされる。これにより、クラウン陸部14の偏摩耗が抑制される。
【0078】
本実施形態では、各陸部において、上述の溝及びサイプの他には、溝やサイプが設けられていない。これにより、上述の各種の性能がバランス良く発揮される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0079】
図11には、本発明の他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。
図11に示されるように、この実施形態では、
図1で示される実施形態と比較して、外側ミドルサイプ16並びに第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32が、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。このような実施形態は、タイヤのコニシティを高めるのに役立つ。なお、
図11の実施形態には、
図1~
図10に示される実施形態で説明された構成を適用することができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0081】
図1の基本パターンを有するサイズ235/45R19のタイヤが表1~2の仕様に基づき試作された。また、比較例として、
図12に示される外側ショルダー陸部aを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤは、外側ショルダー陸部aに設けられた外側ショルダーサイプbが面取り部を含んでいない。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、
図1で示されるものと実質的に同じである。各テストタイヤのウェット性能、ノイズ性能及び制動性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×8.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0082】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記ウェット性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
【0083】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で70km/hの速度でドライ路面を走行したときの車外騒音が測定された。結果は、比較例の車外騒音を100とする指数で示されており、数値が小さい程、車外騒音が小さく良好であることを示す。
【0084】
<制動性能>
上記テスト車両でドライ路面を走行し、様々な状況における制動性能が運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記制動性能を100とする評点であり、数値が大きい程、制動性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1~2に示される。
【0085】
【0086】
【0087】
テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能が向上していることが確認できた。