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特開2022-191005電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191005
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/00 20060101AFI20221220BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20221220BHJP
   G01R 21/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01R21/00 R
G01R35/00 F
G01R21/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099600
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 大地
(72)【発明者】
【氏名】永利 英昭
(57)【要約】
【課題】相線式の設定、又は電圧入力部の接続箇所の間違いを検出することができる電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】電力計測システム10は、電圧測定部11と、相線式設定部143と、相線式判定部142と、を備える。電圧測定部11は、測定対象である対象回路ECに電気的に接続する複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定する。相線式設定部143は、外部から設定情報を受け取り、対象回路ECに対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。相線式判定部142は、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である対象回路に電気的に接続する複数の電圧入力部の各間に印加されている入力電圧を測定電圧として測定する電圧測定部と、
外部から設定情報を受け取り、前記対象回路に対応する相線式の設定である相線式設定を前記設定情報に基づいて行う相線式設定部と、
前記測定電圧が前記相線式設定と整合するか否かを判定する相線式判定部と、を備える
ことを特徴とする電力計測システム。
【請求項2】
前記対象回路は、それぞれ相線式が異なる複数の候補回路のうちのいずれかであり、
前記複数の候補回路の相線式のそれぞれに対応付けた前記入力電圧に関する情報を複数の判定条件として記憶する記憶部を更に備え、
前記相線式判定部は、前記複数の判定条件のうち前記相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件に基づき、前記測定電圧が前記相線式設定と整合するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力計測システム。
【請求項3】
前記複数の判定条件は、前記測定電圧の大きさに関する条件である
ことを特徴とする請求項2に記載の電力計測システム。
【請求項4】
前記対象回路は、多線式電路を有し、
前記電圧測定部は、前記多線式電路における複数の前記入力電圧のそれぞれを前記測定電圧として測定し、
前記複数の判定条件は、前記複数の入力電圧の各間における位相差に関する条件である
ことを特徴とする請求項2に記載の電力計測システム。
【請求項5】
前記測定電圧を前記相線式設定で設定された相線式に対応する正常範囲と比較した結果に基づいて、前記入力電圧が異常であるか否かを判定する変動判定部を更に備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電力計測システム。
【請求項6】
前記変動判定部は、前記測定電圧が前記正常範囲から外れた状態が予め設定された所定時間に亘って継続した場合、前記入力電圧が異常であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の電力計測システム。
【請求項7】
前記相線式判定部の判定結果を外部へ通知する通知部を更に備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電力計測システム。
【請求項8】
前記相線式判定部と、前記変動判定部と、の少なくとも一方の判定結果を外部へ通知する通知部を更に備える
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電力計測システム。
【請求項9】
前記測定電圧が前記相線式設定と整合しないと前記相線式判定部が判定した場合、前記入力電圧と前記相線式設定とが整合しない要因を解消するための手段を示す是正情報を作成する是正情報作成部と、
前記是正情報を提示する提示部と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電力計測システム。
【請求項10】
前記対象回路に流れる電流を検出する電流センサと、
前記測定電圧、及び前記電流に基づいて、前記対象回路の電力を算出する処理部と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の電力計測システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電力計測システムと、
前記電力計測システムを収容する筐体と、を備える
ことを特徴とする電力計測機器。
【請求項12】
測定対象である対象回路に電気的に接続する複数の電圧入力部の各間に印加されている入力電圧を測定電圧として測定する電圧測定ステップと、
外部から設定情報を受け取り、前記対象回路に対応する相線式の設定である相線式設定を前記設定情報に基づいて行う相線式設定ステップと、
前記測定電圧が前記相線式設定と整合するか否かを判定する電圧判定ステップと、を備える
ことを特徴とする電力計測方法。
【請求項13】
コンピュータシステムに、
請求項12に記載の電力計測方法を実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、対象回路の電力を求める電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理部と、通信部と、を備える電力計測システムが開示されている。処理部は、回路に流れる電流を検出する電流センサと、回路の各相に接続する電圧入力部に印加される回路電圧を検出する電圧検出部と、の検出結果に基づいて、回路の電力を動作プログラムに従って求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2020-106311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力計測システムは、接続される回路(対象回路)に対応する相線式の設定に従って、電力を求める。しかし、相線式の設定は正しいが電圧入力部の接続箇所が間違っている場合、又は、電圧入力部の接続箇所は正しいが相線式の設定が間違っている場合が考えられる。その場合、相線式の設定、及び電圧入力部の接続箇所の間違いを検出することができないという問題があった。
【0005】
本開示の目的とするところは、相線式の設定、又は電圧入力部の接続箇所の間違いを検出することができる電力計測システム、電力計測機器、電力計測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電力計測システムは、電圧測定部と、相線式設定部と、相線式判定部と、を備える。前記電圧測定部は、測定対象である対象回路に電気的に接続する複数の電圧入力部の各間に印加されている入力電圧を測定電圧として測定する。前記相線式設定部は、外部から設定情報を受け取り、前記対象回路に対応する相線式の設定である相線式設定を前記設定情報に基づいて行う。前記相線式判定部は、前記測定電圧が前記相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0007】
本開示の一態様に係る電力計測機器は、上記の電力計測システムと、筐体と、を備える。前記筐体は、前記電力計測システムを収容する。
【0008】
本開示の一態様に係る電力計測方法は、電圧測定ステップと、相線式設定ステップと、電圧判定ステップと、を備える。前記電圧測定ステップは、測定対象である対象回路に電気的に接続する複数の電圧入力部の各間に印加されている入力電圧を測定電圧として測定する。前記相線式設定ステップは、外部から設定情報を受け取り、前記対象回路に対応する相線式の設定である相線式設定を前記設定情報に基づいて行う。前記電圧判定ステップは、前記測定電圧が前記相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記の電力計測方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、相線式の設定、又は電圧入力部の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態における電力計測機器の概略構成を示す説明図である。
図2図2は、3相3線式の対象回路に接続している同上の電力計測機器の構成を示すブロック図である。
図3図3は、単相3線式の対象回路に接続している同上の電力計測機器の構成を示すブロック図である。
図4図4は、単相2線式の対象回路に接続している同上の電力計測機器の構成を示すブロック図である。
図5図5は、同上の電圧測定部が測定する測定電圧の時間変化を説明する図である。
図6図6は、同上の電圧測定部が測定する測定電圧の時間変化を説明する図である。
図7図7は、同上の相線式判定部の判定動作を示すフローチャートである。
図8図8は、同上の変動判定部の判定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
(1)概要
以下、実施形態に係る電力計測システム10の概要について、図1図5を参照して説明する。
【0013】
実施形態の電力計測システム10は、図1に示すように、電圧測定部11と、相線式判定部142と、相線式設定部143と、を備える。電力計測システム10は、例えば、工場又は事務所等の需要家において、分電盤のキャビネット内に配置されて用いられる。電力計測システム10は、3相3線式の対象回路EC1(図2参照)、単相3線式の対象回路EC2(図3参照)、又は単相2線式の対象回路EC3(図4参照)を測定対象とする。すなわち、3相3線式の対象回路EC1、単相3線式の対象回路EC2、又は単相2線式の対象回路EC3は、それぞれ相線式が異なる複数の候補回路である。対象回路ECは、複数の候補回路のうちいずれかである。
【0014】
電力計測システム10は、対象回路ECの各相の電圧及び各相の電流を検出して、対象回路ECの電力を求める。ここで、「対象回路ECの電力」とは、対象回路ECのある計測点において供給される電力の瞬時値、及び、対象回路ECのある計測点において所定の期間に供給される電力量のうち少なくとも一方を意味する。また、本実施形態では、電力計測システム10で求められる「電力」は有効電力であるが、皮相電力又は無効電力であってもよい。
【0015】
電圧測定部11は、測定対象である対象回路ECに電気的に接続する複数の電圧入力部12a、12b、12cに印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定する。複数の電圧入力部12a、12b、12cは、対象回路ECの電圧線に接続される端子である。例えば、対象回路ECに電力計測システムを設置する者(以下、設置者とする)が、複数の電圧入力部12a、12b、12cを、対象回路ECの電圧線に接続する。
【0016】
相線式設定部143は、外部から設定情報を受け取り、対象回路ECに対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。ここでの外部は、相線式設定部143を除く構成のことを示す。
【0017】
相線式判定部142は、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0018】
以上から、測定電圧Vが相線式設定と整合しないと相線式判定部が判定したとき、相線式設定部が間違った設定情報に基づいて相線式設定を行った場合と、入力電圧が意図しない箇所に接続された場合と、が考えられる。そのため、相線式の設定、又は複数の電圧入力部12a、12b、12cの接続箇所における間違いを検出することができるという利点がある。
【0019】
(2)詳細な構成
(2-1)電力計測システム
以下に、本実施形態の電力計測システム10の詳細な構成について、図2図8を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の電力計測システム10は、図2に示すように、基本ユニット1と、表示ユニット2と、を備える。
【0021】
(2-1-1)基本ユニット
本実施形態の基本ユニットは、図2に示すように、電圧測定部11と、複数の電圧入力部12a、12b、12cと、信号変換部13と、制御部14と、外部通信部15、接続部16と、通知部17と、コネクタCN1と、を備える。コネクタCN1は、表示ユニット2の後述するコネクタCN2に接続する。
【0022】
(電圧測定部)
電圧測定部11は、対象回路ECの各相に電気的に接続されている複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vab、Vbc、Vcaとして測定する。電圧測定部11は、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの情報を制御部14へ出力する。測定電圧Vab、Vbc、Vcaのそれぞれを区別しない場合は、測定電圧Vと称す。
【0023】
より具体的に、図2を使用し説明する。電圧測定部11は、電圧入力部12aと電圧入力部12bとの間に印加されている入力電圧を測定電圧Vabとして測定する。同様に、電圧測定部11は、電圧入力部12bと電圧入力部12cとの間に印加されている入力電圧を測定電圧Vbcとして測定する。そして、電圧測定部11は、電圧入力部12cと電圧入力部12aとの間に印加されている入力電圧を測定電圧Vcaとして測定する。電圧測定部11は、信号線を介して制御部14に接続されており、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの情報を含む電圧測定信号S1を制御部14へ出力する。
【0024】
(信号変換部)
信号変換部13は、複数(図2では4つ)の電流センサ19に接続されている。各電流センサ19は、電力計測システム10の外部に配置された機器である。各電流センサ19は、例えば、変流器(CT:Current Transformer)である。各電流センサ19は、回路EC1に流れる電流を検出し、電流信号である電流検出信号S2を検出結果として信号変換部13へ出力する。信号変換部13は、各電流センサ19からの電流検出信号S2を電圧に変換し、制御部14へ出力する。以下では、信号変換部13から制御部14へ出力される信号(電圧)を、電流測定信号S3と称す。なお、本実施形態の信号変換部13は4つの電流センサ19に接続しているが、信号変換部13は最大8つの電流センサ19に接続することが可能である。但し、電流センサ19の最大接続数は8つに限定されない。
【0025】
(制御部)
制御部14は、処理部141と、相線式判定部142と、相線式設定部143と、記憶部144と、変動判定部145と、是正情報作成部146と、を有する。
【0026】
制御部14は、コンピュータシステムを備えることが好ましい。コンピュータシステムでは、CPU(Central Processing Unit)、又はMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することによって、制御部14の一部又は全部の機能が実現される。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。
【0027】
(相線式設定部)
本実施形態の相線式設定部143は、設置者によって入力された設定情報を受け取り、対象回路ECに対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。基本ユニット1は、図2に示すように、設定情報を設置者が入力する入力部18を更に有する。本実施形態では一例として、入力部18は、ディップスイッチである。この場合、複数の候補回路の相線式のそれぞれと、ディップスイッチのポジションの組み合わせが紐づけられている。そのため、設置者は、複数の候補回路のうち測定対象である対象回路ECに紐づけられたディップスイッチのポジションを選択することで、設定情報を入力することができる。入力部18は、設置者が入力した設定情報を相線式設定部143へ出力する。
【0028】
また、相線式設定部143は、対象回路ECが3相3線式及び単相2線式のいずれかであるとき、対象回路ECが100V系であるか、200V系であるかを、設定情報に基づき更に設定する。
【0029】
(記憶部)
記憶部144は、複数の候補回路の相線式のそれぞれに対応付けた入力電圧に関する情報を複数の判定条件C1として記憶する。本実施形態の複数の判定条件C1は、測定電圧Vの大きさに関する条件である。記憶部144は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。また、本実施形態では、記憶部144が制御部14のメモリとして機能する。つまり、記憶部144は、制御部14を動作させるためのプログラム(動作プログラム)を更に記憶する。
【0030】
以下、対象回路ECの相線式ごとの判定条件C1について具体的に説明する。
【0031】
測定対象が3相3線式の対象回路EC1である場合、図2に示すように、複数の電圧入力部12a、12b、12cのそれぞれは、対象回路EC1の3相(R相、S相、T相)のそれぞれに電気的に接続されている。3相3線式の対象回路EC1において各相の間には等しい実効値の入力電圧が印加されているため、判定条件C1は以下の(1)式で表すことができる。
Vab=Vbc=Vca ……… (1)式
【0032】
測定対象が単相3線式の対象回路EC2である場合、図3に示すように、複数の電圧入力部12a、12bのそれぞれは、対象回路EC2の2つの電圧線(R相、T相)のそれぞれに電気的に接続されている。一方、電圧入力部12cは、対象回路EC2の中性線(N相)に電気的に接続されている。単相3線式の対象回路EC2において、R相とN相との間の電圧、及びT相とN相との間の電圧は実効値が等しく、T相とN相との間の電圧は、R相とN相との間の電圧の逆位相であるため、判定条件C1は以下の(2)式で表すことができる。
Vbc=Vca かつ
Vbc+Vca=Vab ……… (2)式
【0033】
測定対象が単相2線式の対象回路EC3である場合、図4に示すように、電圧入力部12aは、対象回路EC3の電圧線(R相)に電気的に接続されている。一方、電圧入力部12bは、対象回路EC3の中性線(N相)に電気的に接続されている。なお、電圧入力部12cは、対象回路EC3に接続されない。判定条件C1は、Vabが電圧入力部12aの定格電圧の範囲内であることである。例えば、電圧入力部12aの定格電圧の上限は、想定される最大の入力電圧に基づいて規定される。同様に、電圧入力部12aの定格電圧の下限は、想定される最小の入力電圧に基づいて規定される。具体的には、電圧入力部12aの定格電圧の上限は、想定される最大の入力電圧の実効値240Vから10%増加させた264Vである。電圧入力部12aの定格電圧の下限は、想定される最小の入力電圧の実効値100Vから15%減少させた85Vである。
【0034】
(相線式判定部)
相線式判定部142は、複数の判定条件C1のうち相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1に基づき、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する。より詳細には、相線式判定部142は、複数の判定条件C1の中から相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1を選択し、測定電圧Vの実効値が判定条件C1を満たす場合、測定電圧Vが相線式設定と整合するという整合判定を行う。そして、制御部14は、整合判定の結果を後述する通知部17へ出力する。一方、測定電圧Vが判定条件C1を満たさない場合、測定電圧Vが相線式設定と整合しないという非整合判定を行う。そして、制御部14は、非整合判定の結果を通知部17へ出力する。
【0035】
(是正情報作成部)
是正情報作成部146は、測定電圧Vが相線式設定と整合しないと相線式判定部142が判定した場合、入力電圧と相線式設定とが整合しない要因を解消するための手段を示す是正情報を作成する。是正情報は、例えば、複数の電圧入力部12a、12b、12cの接続箇所、又は入力部18で入力した設定情報が間違っていないか再確認することを設置者に促す情報である。
【0036】
(処理部)
電圧測定部11からの電圧測定信号S1は、信号線を介して制御部14に入力される。また、電流センサ19からの電流検出信号S2は、信号変換部13を経由して電流測定信号S3として制御部14に入力される。制御部14は、電圧測定信号S1及び電流測定信号S3をA/D変換する。処理部141は、回路ECの電力を求める。処理部141は、例えば、電圧測定信号S1の誤差と電流測定信号S3の誤差とをそれぞれ補正する。具体例として、処理部141は、記憶部144に記憶された補正係数を電圧測定信号S1に乗じることにより、電圧測定信号S1の誤差を補正する。処理部141は、記憶部144に記憶された別の補正係数を電流測定信号S3に乗じることにより、電流測定信号S3の誤差を補正する。各補正係数は、電力計測システム10の製造時に、理論値と測定値とを比較することで決定される。処理部141は、補正後の電圧測定信号S1と補正後の電流測定信号S3とを乗算することで、対象回路ECの電力を算出する。基本ユニット1には最大8つの電流センサ19を接続することが可能であるため、測定対象が3相3線式の対象回路EC1又は単相3線式の対象回路EC2である場合、処理部141は、最大4つの計測点における電力を求めることができる。一方、測定対象が単相2線式の対象回路EC3である場合、処理部141は、最大8つの計測点における電力を求めることができる。制御部14は、対象回路ECの電力の値に関する情報を含む通信信号S4を表示ユニット2へ出力する。
【0037】
(変動判定部)
変動判定部145は、測定電圧Vを相線式設定で設定された相線式に対応する正常範囲C2と比較した結果に基づいて、入力電圧が異常であるか否かを判定する。本実施形態の変動判定部145は、測定電圧Vが正常範囲C2から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、入力電圧が異常であると判定する。すなわち、変動判定部145は、測定電圧Vが正常範囲C2に所定時間Tp内に復帰しない場合、入力電圧が異常であるという異常判定を行う。そして、制御部14は、異常判定の結果を通知部17へ出力する。一方、変動判定部145は、測定電圧Vが所定時間Tp内に正常範囲C2に復帰した場合、入力電圧が正常であるという正常判定を行い、入力電圧が異常であるか否かの判定動作を継続する。なお、電圧測定部11は、一定時間の間隔で、対象回路ECの各相に電気的に接続されている複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定する。
【0038】
図5に示すように、時間T1aにおいて、測定電圧Vが正常範囲C2から外れ、時間T1aから所定時間Tpが経過した時間T1bにおいて、測定電圧Vが正常範囲C2から外れた状態が継続している場合、変動判定部145は時間T1bで異常判定を行う。より詳細には、測定電圧Vが時間T1aで正常範囲C2の上限を上回り、時間T1aから所定時間Tpが経過した時間T1bにおいて、測定電圧Vが正常範囲C2の上限を上回った状態が継続している場合、変動判定部145は時間T1bで異常判定を行う。なお、正常範囲C2は、電圧入力部の定格電圧に基づいて規定される。
【0039】
一方、図6に示すように、時間T2aにおいて、測定電圧Vが正常範囲C2から外れ、時間T2aから所定時間Tpが経過していない時間T2cにおいて、測定電圧Vが正常範囲C2に復帰した場合、変動判定部145は時間T2cで正常判定を行う。より詳細には、時間T2aにおいて測定電圧Vが正常範囲C2の下限を下回り、時間T2aから所定時間Tpが経過していない時間T2cにおいて測定電圧Vが正常範囲C2の下限を上回った場合、変動判定部145は時間T2cで正常判定を行う。なお、図6に示す時間T2bは、時間T2aから所定時間Tpが経過したときの時間である。
【0040】
次に、正常範囲C2について、対象回路ECの相線式ごとに具体的に説明する。
【0041】
測定対象が3相3線式の対象回路EC1である場合、対象回路EC1は100V系か、200V系か、のどちらか一方である。そのため、対象回路EC1が100V系であるとき、一例として、正常範囲C2は以下の(3)式で表される。
Vab=100V±10% かつ
Vbc=100V±10% かつ
Vca=100V±10% ……… (3)式
【0042】
よって、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの少なくともいずれかが(3)式で表される範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であると判定する。
【0043】
一方、対象回路EC1が200V系であるとき、一例として、正常範囲C2は以下の(4)式で表される。
Vab=200V±10% かつ
Vbc=200V±10% かつ
Vca=200V±10% ……… (4)式
【0044】
よって、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの少なくともいずれかが(4)式で表される範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であると判定する。
【0045】
測定対象が単相3線式の対象回路EC2である場合、R相とN相との間、及びT相とN相との間には、100Vの実効値の電圧が印加される。そのため、一例として、正常範囲C2は以下の(5)式で表される。
Vbc=100V±10% かつ
Vca=100V±10% ……… (5)式
【0046】
よって、測定電圧Vbc、Vcaの少なくとも一方が(5)式で表される範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であると判定する。
【0047】
測定対象が単相2線式の対象回路EC3である場合、対象回路EC3は100V系か、200V系か、のどちらか一方である。そのため、対象回路EC3が100V系であるとき、一例として、測定対象が3相3線式の対象回路EC1である場合と同様に、正常範囲C2は上記の(3)式で表される。よって、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの少なくともいずれかが(3)式で表される範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であると判定する。
【0048】
一方、対象回路EC3が200V系であるとき、一例として、測定対象が3相3線式の対象回路EC1である場合と同様に、正常範囲C2は上記の(4)式で表される。よって、測定電圧Vab、Vbc、Vcaの少なくともいずれかが(4)式で表される範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であると判定する。
【0049】
(外部通信部)
外部通信部15は、外部装置との間で通信する機能を有している。外部装置は、表示ユニット2以外の装置である。本実施形態では一例として、外部装置は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行うように構成されたコントローラである。コントローラは、電力計測システム10の外部に配置された機器である。HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。外部通信部15は、対象回路ECの電力の値の情報をコントローラに送信することができる。
【0050】
外部通信部15とコントローラとの間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。外部通信部15とコントローラとの間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、外部通信部15とコントローラとの間の通信における通信プロトコルは、例えば、RS-485、Ethernet(登録商標)、ECHONETLite(登録商標)等である。
【0051】
(接続部)
接続部16には、記憶メディアが接続される。本実施形態では一例として、記憶メディアは、SDカードである。すなわち、接続部16は、SDカード用のスロットである。SDカードは、接続部16に接続されると、制御部14との間で通信可能となる。すなわち、接続部16は、回路EC1の電力の値の情報を、接続部16に接続された記憶メディア(SDカード)に記憶させることができる。
【0052】
(通知部)
通知部17は、相線式判定部142と、変動判定部145と、の少なくとも一方の判定結果を外部へ通知する。本実施形態では一例として、通知部17は、スピーカー等の音響機器を有する。通知部17は、周囲へ音を鳴らすことで、聴覚的に相線式判定部142と変動判定部145との少なくとも一方の判定結果を提示してもよい。音は、例えば、繰り返し再生されるビープ音である。
【0053】
(2-1-2)表示ユニット
表示ユニット2は、図2に示すように、提示部21と、操作部22と、コネクタCN2と、を有する。コネクタCN2は、基本ユニットのコネクタCN1に接続されている。表示ユニット2は、コネクタCN2を介して通信可能である。
【0054】
(提示部)
提示部21は、是正情報作成部146が作成した是正情報を提示する。より詳細には、制御部14は、コネクタCN1を介して、是正情報作成部146が作成した是正情報を提示部21へ出力し、提示部21は、制御部14から受け取った是正情報を提示する。提示部21は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。
【0055】
なお、提示部21は、スピーカー等の音響機器を有していてもよく、視覚的な情報とともに聴覚的な情報として是正情報を提示してもよい。
【0056】
また、提示部21は、例えば、相線式判定部142と変動判定部145との少なくとも一方の判定結果、対象回路ECの電力の値、電圧測定信号S1に基づく電圧実効値、及び電流測定信号S3に基づく電流実効値等の情報を更に提示する。
【0057】
(操作部)
操作部22は、例えば、複数のボタンを含む。操作部22は、電力計測システム10に関する設定操作を受け付ける。対象回路ECの電力の値を確認したい者(例えば、設置者、又は需要家を管理する者)が操作部22に設定操作を行うことにより、例えば、提示部21に提示される内容が変更される。
【0058】
(2-2)電力計測機器
本実施形態の電力計測機器は、図1に示すように、上述した電力計測システム10と、筐体3と、を備える。
【0059】
筐体3は、箱状であって、電力計測システム10を収容する。
【0060】
(2-3)電力計測方法
本実施形態の電力計測方法は、電圧測定ステップと、相線式設定ステップと、電圧判定ステップと、を備える。
【0061】
電圧測定ステップは、測定対象である対象回路ECに電気的に接続する複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定する。相線式設定ステップは、外部から設定情報を受け取り、対象回路ECに対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。
【0062】
電圧判定ステップは、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する。より詳細に、説明する。本実施形態の電力計測方法は、記憶ステップを更に備える。記憶ステップは、複数の候補回路の相線式のそれぞれに対応付けた入力電圧に関する情報を複数の判定条件C1として記憶する。そして、相線式設定ステップは、複数の判定条件C1のうち相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1に基づき、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0063】
本実施形態の電力計測方法は、変動判定ステップを更に備える。変動判定ステップは、測定電圧Vを相線式設定で設定された相線式に対応する正常範囲C2と比較した結果に基づいて、入力電圧が異常であるか否かを判定する。より詳細には、変動判定部は、測定電圧Vが正常範囲から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続した場合、入力電圧が異常であると判定する。
【0064】
そして、本実施形態の電力計測方法は、通知ステップを更に備える。通知ステップは、相線式判定ステップと、変動判定ステップと、の少なくとも一方の判定結果を外部へ通知する。
【0065】
また、本実施形態の電力計測方法は、電流検出ステップと、電流算出ステップと、を更に備える。電流検出ステップは、対象回路ECに流れる電流を検出する。そして、電流算出ステップは、測定電圧V、及び電流に基づいて、対象回路ECの電力を算出する。
【0066】
(3)動作
(3-1)相線式判定部の判定動作
以下、相線式判定部142の判定動作について、図7を用いて説明する。
【0067】
まずは、電圧測定部11が、対象回路ECの各相に電気的に接続されている複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定し(S11)、測定電圧Vの情報を含む電圧測定信号S1を制御部14へ出力する。そして、相線式設定部143は、設置者によって入力された設定情報を受け取り、対象回路ECに対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う(S12)。その後、相線式判定部142は、複数の判定条件C1のうち相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1に基づき、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定する(S13)。
【0068】
測定電圧Vが相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1を満たす場合(S13:YES)、相線式判定部142は、測定電圧Vが相線式設定と整合するという整合判定を行う(S14)。制御部14は、整合判定の結果を通知部17へ出力し、通知部17は、整合判定の結果を外部へ通知する(S15)。
【0069】
その後、電流センサ19は、回路EC1に流れる電流を検出し(S16)、検出結果を電流検出信号S2として信号変換部13へ出力する。信号変換部13は、各電流センサ19からの電流検出信号S2を電圧に変換し、電流測定信号S3を処理部141へ出力する。処理部141は、補正後の電圧測定信号S1と補正後の電流測定信号S3とを乗算することで、対象回路ECの電力を算出し(S17)、コネクタCN1及びコネクタCN2を介して、対象回路ECの電力の値に関する情報を含む信号を提示部21に出力する。提示部21は、対象回路ECの電力の値を提示する(S18)。
【0070】
一方、測定電圧Vが相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件C1を満たさない場合(S13:NO)、相線式判定部142は、測定電圧Vが相線式設定と整合しないという非整合判定を行う(S19)。制御部14は、非整合判定の結果を通知部17へ出力し、通知部17は、非整合判定の結果を外部へ通知する(S1A)。その後、是正情報作成部146は、入力電圧と相線式設定とが整合しない要因を解消するための手段を示す是正情報を作成する(S1B)。制御部14は、コネクタCN1を介して、是正情報作成部146が作成した是正情報を提示部21へ出力し、提示部21は、制御部14から受け取った是正情報を提示する(S1C)。
【0071】
(3-2)変動判定部の判定動作
以下、本実施形態の変動判定部145の判定動作について、図8を用いて説明する。
【0072】
まず、電圧測定部11が、対象回路ECの各相に電気的に接続されている複数の電圧入力部12a、12b、12cの各間に印加されている入力電圧を測定電圧Vとして測定し(S21)、測定電圧Vの情報を含む電圧測定信号S1を制御部14へ出力する。そして、変動判定部145は、測定電圧Vが相線式設定で設定された相線式に対応する正常範囲C2外であるか、否かを判定する(S22)。
【0073】
測定電圧Vが正常範囲C2外でない場合(S22:NO)、すなわち、測定電圧Vが正常範囲C2に入っている場合、電圧測定部11は、再度、入力電圧を測定電圧Vとして測定する(S21)。
【0074】
測定電圧Vが正常範囲C2外である場合(S22:YES)、すなわち、測定電圧Vが正常範囲C2に入っていない場合、変動判定部145は、測定電圧Vが正常範囲C2から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続するか否かを判定する(S23)。
【0075】
測定電圧Vが正常範囲C2から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続しない場合(S23:NO)、すなわち、測定電圧Vが所定時間Tp内に正常範囲C2に復帰した場合、変動判定部145は、入力電圧が正常であるという正常判定を行う(S26)。その後、電圧測定部11は、再び、入力電圧を測定電圧Vとして測定する(S21)。
【0076】
測定電圧Vが正常範囲C2から外れた状態が予め設定された所定時間Tpに亘って継続する場合(S23:NO)、すなわち、測定電圧Vが所定時間Tp内に正常範囲C2に復帰しない場合、変動判定部145は、入力電圧が異常であるという異常判定を行う(S24)。制御部14は、異常判定の結果を通知部17へ出力し、通知部17は、異常判定の結果を外部へ通知する(S25)。
【0077】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されていてもよい。また、電力計測方法と同等の機能は、電力計測方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。
【0078】
一実施形態に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記の電力計測方法を実行させるためのプログラムである。
【0079】
本実施形態の複数の判定条件C1は、測定電圧Vの大きさに関する条件であるが、複数の入力電圧の各間における位相差に関する条件であってもよい。より詳細に、説明する。対象回路ECは、多線式電路を有し、電圧測定部11は、多線式電路における複数の入力電圧のそれぞれを測定電圧Vとして測定する。上記の場合、複数の判定条件C1は、複数の入力電圧の各間における位相差に関する条件であってもよい。なお、多線式電路を有する対象回路ECは、例えば、3相3線式の対象回路EC1、単相3線式の対象回路EC2である。
【0080】
具体的には、対象回路ECが3相3線式の対象回路EC1である場合、各相の間に印加される電圧の位相の差は、120°である。そのため、相線式判定部142は、複数の入力電圧の各間における位相差に関する判定条件C1に基づき、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定することが可能である。
【0081】
また、対象回路ECが単相3線式の対象回路EC2である場合、T相とN相との間の電圧は、R相とN相との間の電圧の逆位相である。そのため、相線式判定部142は、複数の入力電圧の各間における位相差に関する判定条件C1に基づき、測定電圧Vが相線式設定と整合するか否かを判定することが可能である。
【0082】
本実施形態の相線式設定部143は、対象回路ECが3相3線式及び単相2線式のいずれかであるとき、対象回路ECが100V系であるか、200V系であるかを、設定情報に基づき設定する。しかし、制御部14が、対象回路ECが3相3線式及び単相2線式のいずれかであるとき、対象回路ECが100V系であるか、200V系であるかを自動的に判定する自動判定部を有していてもよい。
【0083】
本実施形態の基本ユニット1は、増設ユニット又は異種系統ユニットと接続する増設用接続部CN3を有していてもよい。増設ユニットは、対象回路ECにおいて、電流センサ19とは異なる箇所で流れる電流と、基本ユニット1が測定した測定電圧Vと、に基づいて、対象回路ECの電力を算出する。異種系統ユニットは、対象回路ECとは異なる回路の電力を算出し、基本ユニット1を介して、表示ユニット2へ算出結果を出力する。
【0084】
本実施形態の電力計測システム10が、変動判定部145を備えているか否かは任意である。電力計測システム10が変動判定部145を備えていない場合、通知部17は、相線式判定部142の判定結果を外部へ通知する。
【0085】
本実施形態では、基本ユニット1が通知部17を備えているが、表示ユニット2が通知部17を備えていてもよい。
【0086】
本実施形態の通知部17は、発光素子を有していてもよい。通知部17は、発光することによって、視覚的に相線式判定部142と変動判定部145との少なくとも一方の判定結果を提示してもよい。発光素子は、例えば、LED(Light Emitting Diode)である。なお、通知部17が、音響機器及び発光素子の両方を有していてもよい。
【0087】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る電力計測システム(10)は、電圧測定部(11)と、相線式設定部(143)と、相線式判定部(142)と、を備える。電圧測定部(11)は、測定対象である対象回路(EC)に電気的に接続する複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の各間に印加されている入力電圧を測定電圧(V)として測定する。相線式設定部(143)は、外部から設定情報を受け取り、対象回路(EC)に対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。相線式判定部(142)は、測定電圧(V)が相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0088】
この態様によれば、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【0089】
第2の態様に係る電力計測システム(10)では、第1の態様において、対象回路(EC)は、それぞれ相線式が異なる複数の候補回路のうちのいずれかである。第2の態様に係る電力計測システム(10)は、複数の候補回路の相線式のそれぞれに対応付けた入力電圧に関する情報を複数の判定条件(C1)として記憶する記憶部(144)を更に備える。相線式判定部(142)は、複数の判定条件(C1)のうち相線式設定で設定された相線式に対応する判定条件(C1)に基づき、測定電圧(V)が相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0090】
この態様によれば、相線式に対応する判定式に基づき、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【0091】
第3の態様に係る電力計測システム(10)では、第2の態様において、複数の判定条件(C1)は、測定電圧(V)の大きさに関する条件である。
【0092】
この態様によれば、測定電圧(V)の大きさに基づき、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【0093】
第4の態様に係る電力計測システム(10)では、第2の態様において、対象回路(EC)は、多線式電路を有する。電圧測定部(11)は、多線式電路における複数の入力電圧のそれぞれを測定電圧(V)として測定する。複数の判定条件(C1)は、複数の入力電圧の各間における位相差に関する条件である。
【0094】
この態様によれば、複数の入力電圧の各間における位相差に基づき、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【0095】
第5の態様に係る電力計測システム(10)は、第1~第4のいずれかの態様において、変動判定部(145)を更に備える。変動判定部(145)は、測定電圧(V)を相線式設定で設定された相線式に対応する正常範囲(C2)と比較した結果に基づいて、入力電圧が異常であるか否かを判定する。
【0096】
この態様によれば、入力電圧が異常であるか否かを判定することができるという利点がある。
【0097】
第6の態様に係る電力計測システム(10)では、第5の態様において、変動判定部(145)は、測定電圧(V)が正常範囲(C2)から外れた状態が予め設定された所定時間に亘って継続した場合、入力電圧が異常であると判定する。
【0098】
この態様によれば、負荷変動等による一時的な入力電圧の変動が発生した場合に異常判定を行わず、入力電圧が異常であるか否かを精度高く判定することができるという利点がある。
【0099】
第7の態様に係る電力計測システム(10)では、第1~第4のいずれかの態様において、相線式判定部(142)の判定結果を外部へ通知する通知部(17)を更に備える。
【0100】
この態様によれば、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所が間違った状態で運用されることを防ぐことができるという利点がある。
【0101】
第8の態様に係る電力計測システム(10)では、第5又は第6の態様において、相線式判定部(142)と、変動判定部(145)と、の少なくとも一方の判定結果を外部へ通知する通知部(17)を更に備える。
【0102】
この態様によれば、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所が間違った状態、及び、入力電圧が異常である状態で運用されることを防ぐことができるという利点がある。
【0103】
第9の態様に係る電力計測システム(10)は、第1~第8のいずれかの態様において、是正情報作成部(146)と、提示部(21)と、を更に備える。是正情報作成部(146)は、測定電圧(V)が相線式設定と整合しないと相線式判定部(142)が判定した場合、入力電圧と相線式設定とが整合しない要因を解消するための手段を示す是正情報を作成する。提示部(21)は、是正情報を提示する。
【0104】
この態様によれば、是正情報に基づき、設置者が相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを対処することができるという利点がある。
【0105】
第10の態様に係る電力計測システム(10)は、第1~第9のいずれかの態様において、電流センサと、処理部(141)と、を更に備える。電流センサは、対象回路(EC)に流れる電流を検出する。処理部(141)は、測定電圧(V)、及び電流に基づいて、対象回路(EC)の電力を算出する。
【0106】
この態様によれば、設置者が意図しない電力を測定することを防止することができるという利点がある。
【0107】
第11の態様に係る電力計測機器(100)は、第1~第10のいずれかの態様の電力計測システム(10)と、電力計測システム(10)を収容する筐体(3)と、を備える。
【0108】
この態様によれば、電力計測システム(10)の上記の効果を有する電力計測機器(100)を提供できるという利点がある。
【0109】
第12の態様に係る電力計測方法では、電力計測ステップと、相線式設定ステップと、電圧測定ステップと、を備える。電力計測ステップは、測定対象である対象回路(EC)に電気的に接続する複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の各間に印加されている入力電圧を測定電圧(V)として測定する。相線式設定ステップは、外部から設定情報を受け取り、対象回路(EC)に対応する相線式の設定である相線式設定を設定情報に基づいて行う。電圧判定ステップは、測定電圧(V)が相線式設定と整合するか否かを判定する。
【0110】
この態様によれば、専用の電力計測システム(10)を用いなくても、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【0111】
第13の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、第12の態様に係る電力計測方法を実行させる。
【0112】
この態様によれば、専用の電力計測システム(10)を用いなくても、相線式の設定、又は複数の電圧入力部(12a、12b、12c)の接続箇所の間違いを検出することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0113】
100 電力計測機器
10 電力計測システム
11 電圧測定部
12a、12b、12c 電圧入力部
141 処理部
142 相線式判定部
143 相線式設定部
144 記憶部
145 変動判定部
146 是正情報作成部
17 通知部
21 提示部
3 筐体
V(Vab、Vbc、Vca) 測定電圧
EC 対象回路
C1 判定条件
C2 正常範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8