(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191026
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ポリシロキサンの製造方法、およびポリシロキサンの利用
(51)【国際特許分類】
C08G 77/06 20060101AFI20221220BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221220BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20221220BHJP
C08G 59/30 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08G77/06
C08L83/04
C08G77/14
C08G59/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099631
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】深海 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 信二
(72)【発明者】
【氏名】八幡 雄大
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J246
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD130
4J002FD140
4J002FD200
4J002FD310
4J002FD340
4J002GG01
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
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4J002GP03
4J002GQ01
4J002GQ05
4J036AK17
4J036GA17
4J036JA01
4J036KA01
4J246AA03
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246CA68X
4J246CA69X
4J246FA061
4J246FA131
4J246FA371
4J246FA441
4J246FC091
4J246GA01
4J246GA11
4J246GB04
4J246HA22
4J246HA56
(57)【要約】
【課題】耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサンを提供する。
【解決手段】アルコキシシラン成分(I)を加水分解・脱水縮合する1段目の重合工程と、前記1段目の重合工程で得られたポリシロキサンマクロマーと、アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合する2段目の重合工程を含む、ポリシロキサンの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水および中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る、1段目の重合工程と、
(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、前記ポリシロキサンマクロマーと、前記アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る、2段目の重合工程と、
を含むポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
前記アルコキシシラン成分(I)、および前記アルコキシシラン成分(II)の総重量100重量部に対する、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、およびフェニルトリアルコキシシランの合計量が90重量部以上である、請求項1に記載のポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液に含まれる、前記アルコキシシラン成分(I)に由来するアルコキシラン化合物、および前記アルコキシシラン成分(I)に由来する構成単位の合計量100モル%に対する、T1と、T2の合計量が25~60モル%であり、かつ、
T0の量が、1モル%未満である、請求項1または2に記載のポリシロキサンの製造方法。
(ここで、前記T1、または前記T2とは、それぞれ、前記ポリシロキサンマクロマーの全構成単位中の、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、かつ、シロキサン結合を1個または2個形成している構成単位であり、前記T0は、前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液に含まれる、シロキサン結合を形成していないモノオルガノトリアルコキシシランである。)
【請求項4】
さらに、(3)前記ポリシロキサンを含む溶液を加熱して、脱アルコールしたポリシロキサンを含む溶液を得る、脱アルコール工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
さらに、(4)前記ポリシロキサンを含む溶液を加温する熟成工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサンのエポキシ当量が150~400である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサンは、グリシジルオキシ基を有する構成単位、およびエポキシシクロヘキシル基を有する構成単位を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
【請求項8】
グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位とするブロック構造を2つ以上有するポリシロキサンであって、
前記ブロック構造の構成単位の組成が、それぞれ異なるポリシロキサン。
【請求項9】
前記ブロック構造として、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、を有する請求項8に記載のポリシロキサン。
【請求項10】
請求項8または9に記載のポリシロキサンを含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項8または9に記載のポリシロキサンを含む、多液型硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化性樹脂組成物、または請求項11に記載の多液型硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサンの製造方法に関する。本発明はまた、ポリシロキサン、前記ポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物、および前記ポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、家電、自動車等の幅広い業界で使われている塗料として、オルガノポリシロキサンを主成分とする硬化性樹脂組成物が知られている。特に、官能基(オルガノ基)として、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを含む樹脂組成物は、耐傷性、耐薬品性等に優れることから、好適に使用されている。
【0003】
そのようなエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを含む樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、2種類以上のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むことで、硬化物の物性を改善した硬化性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2には、ブロック型のシロキサン化合物を含む硬化性樹脂組成物を、光半導体プリント配線基板として使用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/235524号公報
【特許文献2】特開2014-185263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術は優れたものであるが、得られる硬化物の耐候性について改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の一態様は、耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリシロキサンの製造方法に際して、原料となるグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物および/またはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の加水分解・脱水縮合反応を2段階で行うことにより、耐候性に優れる硬化物を提供し得るポリシロキサンを提供できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、(1)グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水および中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る、1段目の重合工程と、(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、前記ポリシロキサンマクロマーと、前記アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る、2段目の重合工程と、を含むポリシロキサンの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
特許文献1に記載のように、2種類以上の、エポキシ基を有するシラン化合物を構成単位とするポリシロキサンを硬化してなる硬化物(塗膜)は、耐薬品性等に優れたものであるが、得られる硬化物の耐候性について、改善の余地があった。
【0012】
本発明者らは、2種類以上の、エポキシ基を有するシラン化合物を構成単位とするポリシロキサンを硬化してなる硬化物(塗膜)について、耐候性を改善すべく研究を進めた結果、以下の知見を得るに至った。
・(1)グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水と中性塩を用いて加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る、1段目の重合工程と、(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、前記ポリシロキサンマクロマーと、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る、2段目の重合工程と、を含むポリシロキサンの製造方法により得られるポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物は、耐候性に優れる硬化物を提供できる。
・上記製造方法により得られたポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、耐傷性、耐薬品性、耐水性にも優れる。
【0013】
耐傷性、耐薬品性、および耐水性に優れると共に、耐候性にも優れる硬化物を提供できるポリシロキサンは、これまでに存在しなかったものであり、本発明の一実施形態に係るポリシロキサンの製造方法は、極めて有用である。
【0014】
〔2.ポリシロキサンの製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリシロキサンの製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)は、(1)グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水および中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る、1段目の重合工程と、(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、前記ポリシロキサンマクロマーと、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、前記ポリシロキサンマクロマーと、前記アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る、2段目の重合工程、を含むことを特徴とする。
【0015】
本明細書において、「ポリシロキサン」とは、1種類以上の、複数のアルコキシシラン化合物が、各アルコキシシラン化合物間でシロキサン結合を形成することで形成したオルガノポリシロキサンを意図する。
【0016】
本製造方法によれば、分子中に特定のアルコキシシラン化合物に由来するブロック構造を、少なくとも2つ含むポリシロキサンを提供する。本製造方法により提供されるポリシロキサン(以下、本ポリシロキサンとも称する)は、(i)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を含むブロック構造を含んでいてもよく、(ii)エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を含むブロック構造を含んでいてもよく、(iii)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、の両方を含むブロック構造を含んでいてもよい。
【0017】
本明細書において、ブロック構造とは、特定のアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を、当該ブロック構造中の、全構成単位の合計量100モル%中、80モル%以上含む重合体を意図し、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上含む重合体を意図する。なお、本明細書において、ブロック構造を構成する全構成単位100モル%中、80モル%以上含まれる構成単位を主要な構成単位と称する場合がある。
【0018】
ブロック構造を有するポリシロキサンは、複数のブロック構造(重合体)をグラフト重合(2段目の重合)してなる重合体であるともいえる。本明細書において、特に、2段目の重合に供されるブロック構造(重合体)をポリシロキサンマクロマーとも称する。
【0019】
本製造方法は、上述の通り、(1)1段目の重合工程と、(2)2段目の重合工程と、を含み、さらに、任意で、(3)脱アルコール工程と、(4)熟成工程と、を含む。以下、本製造方法に係る各工程について詳説する。
【0020】
<(1)1段目の重合工程>
本製造方法における、1段目の重合工程は、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水と中性塩を用いて加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る工程である。
【0021】
(アルコキシシラン成分(I))
本発明の一実施形態に係るアルコキシシラン成分(I)は、少なくとも、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する。アルコキシシラン成分(I)は、(i)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物のみを含んでもよく、(ii)エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物のみを含んでもよく、(iii)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の両方を含んでいてもよい。また、前記(i)~(iii)の各態様において、アルコキシシラン成分(I)は、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物以外のアルコキシシラン化合物(その他のアルコキシシラン化合物と称する)を含んでいてもよい。
【0022】
(グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物)
グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基としてアルコキシ基、および、グリシジルオキシ基を含む有機基を有する、1種類、または2種類以上のシラン化合物である。
【0023】
グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、有機基(オルガノ基)としてグリシジルオキシ基を含む有機基を有する、モノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、トリオルガノモノアルコキシシランが挙げられる。中でも、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、有機基としてグリシジルオキシ基を含む有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシランが好ましい。グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、モノオルガノトリアルコキシシランを単独で使用してもよく、モノオルガノトリアルコキシシランとジオルガノジアルコキシシランとの組み合わせであってもよく、モノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、および/または、トリオルガノモノアルコキシシランの組み合わせであってもよい。ここで、モノオルガノトリアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、1個のグリシジルオキシ基を有する有機基と、3個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、ジオルガノジアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも1つのグリシジルオキシ基を有する有機基と、2個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、トリオルガノモノアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも1つのグリシジルオキシ基を有する有機基と、1個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。
【0024】
アルコキシシラン成分(I)として、トリオルガノモノアルコキシシラン、および/または、テトラアルコキシシランを使用する場合、その使用量は発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、アルコキシシラン成分(I)の全量100モル%に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
【0025】
グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有するアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~3のアルコキシ基等が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。前記アルコキシ基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0026】
グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有するグリシジルオキシ基を含む有機基としては、例えば、1-グリシジルオキシメチル基、2-グリシジルオキシエチル基、3-グリシジルオキシプロピル基、4-グリシジルオキシブチルメチル基、6-グリシジルオキシヘキシル基、8-グリシジルオキシオクチル基等のグリシジルオキシアルキル基等が挙げられる。前記グリシジルオキシ基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0027】
グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも一つのアルコキシ基と、少なくとも1つのグリシジルオキシ基を含む有機基と、を含んでいればよく、それら以外に、その他の有機基(グリシジルオキシ基を含まない有機基)を含んでいてもよい。
【0028】
このようなその他の有機基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基や、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基等が挙げられる。前記アルキル基、アルケニル基、およびアリール基は、無置換の基であってもよいし、置換基を有するものであっても良い。前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3であり、よりさらに好ましくは1~2である。前記アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2~3である。前記その他の有機基は、1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、グリシジルオキシ基を含む有機基を有するトリアルコキシシラン化合物、グリシジルオキシ基を含む有機基とその他の有機基を有するジアルコキシシラン化合物、グリシジルオキシアルキル基を有するトリアルコキシシラン化合物、グリシジルオキシアルキル基と、その他の有機基を有するジアルコキシシラン化合物等が挙げられる。グリシジルオキシ基を含む有機基を有するアルコキシシラン化合物としては、より具体的には、1-グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-グリシジルオキシプロピル基を有するトリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物が好ましく、3-グリシジルオキシプロピル基を有するトリアルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0030】
(エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物)
エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基としてアルコキシ基、および、エポキシシクロヘキシル基を含む有機基を有する、1種類、または2種類以上のシラン化合物である。
【0031】
エポキシシクロヘキシル基を含む有機基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、有機基(オルガノ基)としてエポキシシクロヘキシル基を含む有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、トリオルガノモノアルコキシシランが挙げられる。中でも、有機基(オルガノ基)としてエポキシシクロヘキシル基を含む有機基を有するアルコキシシラン化合物としては、モノオルガノトリアルコキシシランが好ましい。エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物としては、モノオルガノトリアルコキシシランを単独で使用してもよく、モノオルガノトリアルコキシシランとジオルガノジアルコキシシランとの組み合わせであってもよく、モノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、および/または、トリオルガノモノアルコキシシランの組み合わせであってもよい。ここで、モノオルガノトリアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、1個のエポキシシクロヘキシル基を含む有機基と、3個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、ジオルガノジアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも1つのエポキシシクロヘキシル基を含む有機基と、2個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、トリオルガノモノアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも1つのエポキシシクロヘキシル基を含む有機基と、1個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。
【0032】
アルコキシラン成分(I)として、トリオルガノモノアルコキシシラン、および/または、テトラアルコキシシランを使用する場合、その使用量は発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、アルコキシシラン成分(I)の全量100モル%に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
【0033】
エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有するアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~3のアルコキシ基等が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。前記アルコキシ基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0034】
エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有するエポキシシクロヘキシル基を含む有機基としては、例えば、1-(エポキシシクロヘキシル)メチル基、2-(エポキシシクロヘキシル)エチル基、2-(エポキシシクロヘキシル)プロピル基、3-(エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。前記エポキシシクロヘキシル基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0035】
エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基として、少なくとも一つのアルコキシ基と、少なくとも1つのエポキシシクロヘキシル基を含む有機基とを含んでいればよく、それら以外に、その他の有機基(エポキシシクロヘキシル基含まない有機基)を含んでいてもよい。
【0036】
このようなその他の有機基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基や、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基等が挙げられる。前記アルキル基、アルケニル基、およびアリール基は、無置換の基であってもよいし、置換基を有するものであっても良い。前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3であり、よりさらに好ましくは1~2である。前記アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2~3である。前記その他の有機基は、1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、エポキシシクロへキシル基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、エポキシシクロへキシルアルキル基を有するトリアルコキシシラン、エポキシシクロへキシルアルキル基と前記その他の有機基を有するジアルコキシシラン等が挙げられる。より具体的には、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、1-(2,3-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジエトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジメトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジエトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリメトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリエトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジエトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルトリメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルトリエトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基を有するトリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物が好ましく、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基を有するトリアルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0038】
(その他のアルコキシシラン化合物)
その他のアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基としてアルコキシ基を有し、グリシジルオキシ基を含む有機基および、エポキシシクロヘキシル基を含む有機基を有さない、1種類、または2種類以上のシラン化合物である。その他のアルコキシシラン化合物の具体例としては、モノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、トリオルガノモノアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが挙げられる。その他のアルコキシシラン化合物は、少なくとも1種類のモノオルガノトリアルコキシシランを有することが好ましい。その他のアルコキシシラン化合物は、モノオルガノトリアルコキシシランのみであってよいし、モノオルガノトリアルコキシシランとジオルガノジアルコキシシランの組み合わせであってもよいし、モノオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、トリオルガノモノアルコキシシラン、および/または、テトラアルコキシシラン化合物の組み合わせであってもよい。ここで、モノオルガノトリアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、1個の有機基と、3個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、ジオルガノジアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、2つの有機基と、2個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指し、トリオルガノモノアルコキシシランとは、ケイ素原子上の置換基として、3つの有機基と、1個のアルコキシ基を有するシラン化合物を指す。
【0039】
その他のアルコキシシラン化合物として、トリオルガノモノアルコキシシラン、および/または、テトラアルコキシシランを使用する場合、その使用量は発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、例えば、アルコキシシラン成分(I)の全量100モル%に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
【0040】
その他のアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有するアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~3のアルコキシ基等が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。前記アルコキシ基は1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0041】
その他のアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有する有機基としては、グリシジルオキシ基および、エポキシシクロヘキシル基以外の有機基であれば特に、限定されず、例えば、炭素数1~8のアルキル基や、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基等が挙げられる。前記アルキル基、アルケニル基、およびアリール基は、無置換の基であってもよいし、置換基を有するものであっても良い。前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3であり、よりさらに好ましくは1~2である。前記アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2~3である。前記有機基は、1種類のみであってもよいし、2種以上が混在していてもよい。
【0042】
その他のアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子上の置換基として、グリシジルオキシ基を含む有機基および、エポキシシクロヘキシル基を含む有機基有さず、かつ、少なくとも一つのアルコキシ基を有する限り、特に限定されない。その他のアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有する有機基が、無置換のアルキル基である場合の、アルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
上述のように、その他のアルコキシシラン化合物がケイ素原子上の置換基として有する有機基は、置換基を有する有機基であってもよい。当該置換基としては特に限定されないが、入手容易性から、チオール基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、フェニル基、シクロヘキシル基、および、クロロ基が好ましい。
【0044】
前記有機基がチオール基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、1-メルカプトメチルトリメトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、4-メルカプトブチルメチルジメトキシシラン、4-メルカプトブチルトリエトキシシラン、4-メルカプトブチルメチルジエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、6-メルカプトヘキシルメチルジメトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルメチルジエトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリメトキシシラン、8-メルカプトオクチルメチルジメトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリエトキシシラン、8-メルカプトオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
前記有機基がイソシアネート基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジエトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン、2-イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリエトキシシラン、2-イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、4-イソシアネートブチルトリメトキシシラン、4-イソシアネートブチルメチルジメトキシシラン、4-イソシアネートブチルトリエトキシシラン、4-イソシアネートブチルメチルジエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリメトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルメチルジメトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルメチルジエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルメチルジメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
前記有機基が(メタ)アクリロイル基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
前記有機基がフェニル基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、2-フェニルエチルトリメトキシシラン、2-フェニルエチルトリエトキシシラン、3-フェニルプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルプロピルトリエトキシシラン、4-フェニルブチルトリメトキシシラン、4-フェニルブチルトリエトキシシラン、5-フェニルペンチルトリメトキシシラン、5-フェニルペンチルトリエトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリメトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
前記有機基がシクロへキシル基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリメトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリエトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリメトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリエトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリメトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリエトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリメトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
前記有機基がクロロ基を有するアルキル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、4-クロロブチルトリメトキシシラン、4-クロロブチルトリエトキシシラン、5-クロロペンチルトリメトキシシラン、5-クロロペンチルトリエトキシシラン、6-クロロヘキシルトリメトキシシラン、6-クロロヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
前記有機基がアルケニル基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
前記有機基がアリール基である場合の、その他のアルコキシシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0052】
その他のアルコキシシラン化合物としては、グリシジルオキシ基、およびエポキシシクロへキシル基以外のエポキシ基を含む有機基を、ケイ素原子上の置換基として含むものを使用してもよい。そのようなその他のアルコキシシラン化合物としては、例えば、エポキシトリメトキシシラン、エポキシメチルジメトキシシラン、エポキシトリエトキシシラン、エポキシメチルジエトキシシラン、1-エポキシメチルトリメトキシシラン、1-エポキシメチルメチルジメトキシシラン、1-エポキシメチルトリエトキシシラン、1-エポキシメチルメチルジエトキシシラン、2-エポキシエチルトリメトキシシラン、2-エポキシエチルメチルジメトキシシラン、2-エポキシエチルトリエトキシシラン、2-エポキシエチルメチルジエトキシシラン、3-エポキシプロピルトリメトキシシラン、3-エポキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-エポキシプロピルトリエトキシシラン、3-エポキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-エポキシブチルトリメトキシシラン、4-エポキシブチルメチルジメトキシシラン、4-エポキシブチルトリエトキシシラン、4-エポキシブチルメチルジエトキシシラン、6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-エポキシオクチルトリメトキシシラン、8-エポキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-エポキシオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
本発明の一実施形態において、アルコキシシラン成分(I)は、アルコキシシラン成分(I)の含むアルコキシシラン化合物の合計量100モル%に対して、モノオルガノトリアルコキシシラン70~100モル%含み、かつ、ジオルガノジアルコキシシラン0~30モル%を含むことが好ましい。前記モノオルガノトリアルコキシシランの割合は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、99モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
【0054】
アルコキシシラン成分(I)における、アルコキシシラン成分(I)の含むアルコキシシラン化合物の合計量100モル%に対する、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、およびエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の合計量は、50~100モル%であることが好ましく、60~100%がより好ましく、70~100モル%がさらに好ましく、100モル%であってもよい。また、アルコキシシラン成分(I)の含む、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物との比率は、特に限定されないが、例えば、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物(モル%):エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物(モル%)が、100:0~0:100であってもよく、95:5~5:95であってもよく、90:10~10:90であってもよく、80:20~20:80であってもよい。アルコキシシラン化合物(I)の含むアルコキシシラン化合物の種類、およびその量(比率)は、最終産物であるポリシロキサンの組成および物性、ならびに、2段目の重合工程に供されるアルコキシシラン成分(II)の組成を考慮して、適宜設定することができる。
【0055】
(中性塩)
本製造方法において、1段目の重合工程において、上記アルコキシシラン成分(I)を、加水分解・脱水縮合反応させる際に、中性塩を添加する。中性塩を添加することにより、脱水縮合反応を促進することができ、また、グリシジルオキシ基、およびエポキシシクロヘキシル基の失活を抑制でき、かつ、密着性、および、耐傷性に優れる硬化物を得ることができる。中性塩は、脱水縮合触媒して機能することから、中性塩触媒ともいえる。
【0056】
本明細書において、中性塩とは、強酸と、強塩基とから生成する塩を意図する。具体的には、第一族元素イオン、第二族元素イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、およびグアニジウムイオンよりなる群から選ばれるいずれかのカチオンと、フッ化物イオンを除く第十七族元素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、および過塩素酸イオンよりなる群から選ばれるいずれかのアニオンとの組合せからなる塩である。中性塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化グアニジウム;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化フランシウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ラジウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化グアニジウム;ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化フランシウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ラジウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化グアニジウム;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸フランシウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラプロピルアンモニウム、硫酸テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラペンチルアンモニウム、硫酸テトラヘキシルアンモニウム、硫酸グアニジウム;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸フランシウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸ラジウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、硝酸テトラプロピルアンモニウム、硝酸テトラブチルアンモニウム、硝酸テトラペンチルアンモニウム、硝酸テトラヘキシルアンモニウム、硝酸グアニジウム;過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム、過塩素酸フランシウム、過塩素酸ベリリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ラジウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラペンチルアンモニウム、過塩素酸テトラヘキシルアンモニウム、過塩素酸グアニジウム等が挙げられる。これら中性塩は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0057】
1段目の重合工程において添加する中性塩の量は、加水分解・脱水縮合反応の所望の進行度に応じて適宜決定することができるが、アルコキシシラン成分(I)の総量に対して、1ppm~100,000ppmであることが好ましく、10ppm~10,000ppmがより好ましく、20ppm~5,000ppmがさらに好ましく、50ppm~1,000ppmがよりさらに好ましい。
【0058】
1段目の重合工程において、アルコキシシラン成分(I)を加水分解・脱水縮合して得られるポリシロキサンマクロマーは中性塩を含有し得る。その結果、本ポリシロキサンも、中性塩を含有し得る。本ポリシロキサンに含まれる中性塩の量は、ポリシロキサン100重量部に対して、0.001~1重量部以下であることが好ましく、0.005~0.1重量部であることがより好ましく、0.01~0.05重量部であることがさらに好ましい。
【0059】
(水)
本製造方法において、1段目の重合工程における、水の使用量は、アルコキシシラン成分(I)に含まれる、ケイ素原子に直結したアルコキシ基の合計量100モル%に対して、20~100モル%であることが好ましく、20~90モル%がより好ましく、25~80モル%がさらに好ましく、30~80モル%がよりさらに好ましく、30~60モル%が特に好ましい。1段目の重合工程における水の使用量が20モル%以上であると、加水分解・脱水縮合反応が十分に進行し、100モル%以下であると、得られる硬化物の基材に対する密着性や耐水性がさらに向上し得る。
【0060】
本発明の一実施形態に係る1段目の重合工程において、水に加えて、水以外の有機溶剤を使用してもよい。このような有機溶剤としては、水と併用するため、水への溶解度の高い有機溶剤が好ましい。また、アルコキシシラン成分の溶解性を確保するため、炭素数が4以上の有機溶剤が好ましい。以上の観点から、好ましい有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら有機溶剤の中でも、特に、水と任意に混和するアルコール類が好ましく、より具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0061】
1段目の重合工程における、アルコキシシラン成分(I)を、加水分解・脱水縮合する際の反応温度は、当業者が適宜設定できるが、例えば、アルコキシシラン成分(I)と、中性塩と、を含む水溶液を、50℃~110℃に加熱してもよく、50℃~90℃に加熱することが好ましい。加水分解・脱水縮合反応を50℃~110℃の温度で行うと、ポリシロキサンマクロマーを製造することが容易になる。また、特に50℃~90℃以下の温度で加熱することにより、(а)適度なグラフト性を有するポリシロキサンマクロマーが得られ、かつ、(b)加水分解・脱水縮合反応により生じるアルコールの意図しない蒸発を防ぐことができるため好ましい。
【0062】
また、1段目の重合工程において、加水分解・脱水縮合反応を実施する際の反応時間は、当業者が適宜設定できるが、適度なグラフト性を有するポリシロキサンマクロマーを得られることから、6時間以内が好ましく、4時間以内がより好ましい。また、反応時間の下限は、十分に高い縮合度を有するポリシロキサンマクロマーが得られることから、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0063】
(ポリシロキサンマクロマー)
ポリシロキサンマクロマーは、本製造方法における1段目の重合工程において、アルコキシシラン成分(I)を、加水分解・脱水縮合することにより得られる重合体である。上記ポリシロキサンマクロマーは、1段目の重合工程に供されるグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および/または、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位(主要な構成単位)とするブロック構造を有する重合体である。本製造方法において、ポリシロキサンマクロマーは、通常、水溶液中に溶解した状態で得られる。
【0064】
本発明の一実施形態において、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液(すなわち、1段目の重合工程終了直後の溶液)に含まれる、全アルコキシラン化合物、および、アルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量100モル%に対する、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位(以下、T1と称する)の量、および、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を2個形成している構成単位(以下、T2と称する)の合計量が、25~60モル%であることが好ましく、30~55モル%がより好ましく、35~50モル%がさらに好ましい。上記構成によれば、グラフト性が十分に高いポリシロキサンマクロマーが得られることから、後述する2段目の重合工程において、効率的にブロック構造を有するポリシロキサンを得ることができる。
【0065】
また、本発明の一実施形態において、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液に含まれる、全アルコキシラン化合物、および、アルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量100モル%に対するシロキサン結合を形成していない(すなわち、他のアルコキシシラン化合物と脱水縮合していない)モノオルガノトリアルコキシシラン(以下、T0と称する)の量が、1モル%未満であることが好ましく、0.5モル%未満であることがより好ましく、0.1モル%未満であることがさらに好ましい。上記構成によれば、後述する2段目の重合工程において、ブロック構造を有するポリシロキサンの収率が高まるという利点がある。T0の量の下限は特に限定されず、0モル%であってもよい。
【0066】
ここで、前記T0の量、前記T1の量、および、前記T2の量、は、29Si-NMRによって測定された、ポリシロキサンマクロマーを含む水溶液中の、Q0、Q1、Q2、Q3、Q4、T0、T1、T2、T3、D0、D1、D2、およびM0、M1それぞれに由来するピークのピーク面積の、合計ピーク面積に対するT0,T1、および、T2に由来するピーク面積の割合(%)として算出することができる。
【0067】
ここでQ0とは、シロキサン結合を形成していないテトラアルコキシシランであり、テトラアルコキシシランに由来し、Q1、Q2、Q3、またはQ4とは、それぞれ、テトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、3個、または4個形成している構成単位であり、T0は、シロキサン結合を形成していないモノオルガノトリアルコキシシランであり、T1、T2、またはT3とは、それぞれ、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、または3個形成している構成単位の量であり、D0は、シロキサン結合を形成していないジオルガノジアルコキシシランであり、D1、またはD2とは、ジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、または2個形成している構成単位であり、M0は、シロキサン結合を形成していないトリオルガノモノアルコキシシランであり、M1は、トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位である。
【0068】
したがって、前記T0の量は、「T0/(Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+T0+T1+T2+T3+D0+D1+D2+M0+M1)」と、表現することもできる。前記T1の量は、「T1/(Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+T0+T1+T2+T3+D0+D1+D2+M0+M1)」と、表現することもできる。前記T2の量は、「T2/(Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+T0+T1+T2+T3+D0+D1+D2+M0+M1)」と、表現することもできる。また、前記T1、および、前記T2の合計量は、「(T1+T2)/(Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+T0+T1+T2+T3+D0+D1+D2+M0+M1)」と、表現することもできる。また、前記T3の量は、「T3/(Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+T0+T1+T2+T3+D0+D1+D2+M0+M1)」と、表現することもできる。
【0069】
ポリシロキサンマクロマーを含む水溶液において、T1と、T2との合計量25~60モル%であることは、ポリシロキサンマクロマーが、反応可能な官能基(シラノール基)を十分に含むことを意味する。したがって、そのようなポリシロキサンマクロマーは、後述する2段目の重合工程において、効率的、かつ十分にグラフト重合を行うことができる。
【0070】
本製造方法において、得られるポリシロキサンマクロマーの縮合度は、2段目の重合工程における、ポリシロキサンマクロマーと、アルコキシラン成分(II)との相溶性が良好となることから、70~90%が好ましく、75~85%がより好ましい。ここで、ポリシロキサンマクロマーの縮合度とは、下記式によって算出される値である:
縮合度(%)={(1×前記T1の量)+(2×前記T2の量)+(3×前記T3の量)}/3
ポリシロキサンマクロマーを含む水溶液におけるT0、T1、T2の量、およびポリシロキサンマクロマーの縮合度は、1段目の重合工程における加水分解・脱水縮合反応時に使用する水の使用量や、中性塩の種類、量、反応温度などを調節することで制御することができる。
【0071】
本ポリシロキサンマクロマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、2段目の重合工程における、ポリシロキサンマクロマーと、アルコキシラン成分(II)との相溶性が良好となることから、500~10000であることが好ましく、1000~9000であることがより好ましく、1500~8000であることがさらに好ましい。なお、ポリシロキサンマクロマーの重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0072】
<(2)2段目の重合工程>
本発明の一実施形態に係る2段目の重合工程は、前記1段目の重合工程で得られたポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を混合し、前記ポリシロキサンマクロマーと、前記アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る工程である。
【0073】
(アルコキシシラン成分(II))
本発明の一実施形態に係るアルコキシシラン成分(II)は、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含む。ここで、「グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含む」とは、前記アルコキシシラン成分(II)が、前記1段目の重合工程に供されたアルコキシシラン成分(I)とは、異なる量(比率)、および/または、異なる種類のグリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含むことを意図する。また、アルコキシシラン成分(II)は、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に加えて、その他のアルコキシシラン化合物を含んでもよい。
【0074】
なお、アルコキシシラン成分(II)に含まれる、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物、および、その他のアルコキシシラン化合物について、以下に説明した事項に加えて、上記(アルコキシシラン成分(I))項の記載が適宜援用される。
【0075】
本発明の一実施形態に係る2段目の重合工程においては、上述のように、上記アルコキシシラン成分(I)の組成に合わせて、アルコキシシラン成分(II)の組成を適宜調整する。以下、アルコキシシラン成分(I)と、アルコキシシラン成分(II)との関係性について詳説する。
【0076】
アルコキシシラン成分(I)が、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含み、かつ、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合を含まない場合(以下、場合Aと称する)について、説明する。
【0077】
場合Aにおいて、アルコキシシラン成分(II)は、(A1)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(A2)エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(A3)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と、を含んでもよく、(A4)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と同じ種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と、を含んでもよい。また、本願の効果を阻害しない範囲で、上記(A1)~(A4)の各態様を組み合わせてもよい。
【0078】
アルコキシシラン成分(I)が、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含み、かつ、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含まない場合(以下、場合Bと称する)について、説明する。
【0079】
場合Bにおいて、アルコキシシラン成分(II)は、(B1)アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(B2)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(B3)アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と、を含んでもよく、(B4)アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と同じ種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と、を含んでもよい。また、本願の効果を阻害しない範囲で、上記(B1)~(B4)の各態様を組み合わせてもよい。
【0080】
アルコキシシラン成分(I)が、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含む場合(以下、場合Cと称する)について、説明する。
【0081】
場合Cにおいて、アルコキシシラン成分(II)は、(C1)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(C2)アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよく、(C3)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および、アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と異なる種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と、を含んでもよく、(C4)アルコキシシラン成分(I)が含むグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物と同じ種類の、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、および/または、アルコキシシラン成分(I)が含むエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物と同じ種類の、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含んでもよい。また、本願の効果を阻害しない範囲で、上記(C1)~(C4)の各態様を組み合わせてもよい。
【0082】
上記場合A~Cにおいて、2段目の重合工程で使用するグリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物、ならびに、その他のアルコキシシラン化合物の組成、および量(すなわち、アルコキシシラン成分(II)の組成、および量)は、1段目の重合工程で使用されたグリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物、ならびに、その他のアルコキシシラン化合物の量(すなわち、アルコキシシラン成分(I)の組成、および量)を考慮して適宜設定することができる。本製造方法においては、1段目の重合工程に供されるアルコキシシラン化合物、および、2段目の重合工程に供されるアルコキシシラン化合物の合計量と、得られるポリシロキサンを構成する構成単位の量とが比例する。したがって、得られるポリシロキサンにおける各構成単位の量の比率(モル%)が所望の値となるように、上記場合A~Cにおける、1段目の重合工程に供されるアルコキシシラン化合物、および、2段目の重合工程に供されるアルコキシシラン化合物の量、比率、およびその組成等を決定できる。
【0083】
例えば、場合(A4)において、アルコキシシラン成分(I)およびアルコキシシラン成分(II)の含む、同じ種類のグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の総量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(II)の含む当該グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の量は、例えば、30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは、10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下であり、よりさらに好ましくは3モル%以下であり、特に好ましくは、1モル%以下である。
【0084】
例えば、場合(B4)において、アルコキシシラン成分(I)およびアルコキシシラン成分(II)の含む、同じ種類のエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の総量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(II)の含む当該エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の量は、例えば、
30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは、10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下であり、よりさらに好ましくは3モル%以下であり、特に好ましくは、1モル%以下である。
【0085】
例えば、場合(C4)において、アルコキシシラン成分(I)およびアルコキシシラン成分(II)の含む、同じ種類のグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の総量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(II)の含む当該グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の量は、例えば、(a)20モル%以下であり、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは、1モル%以下である。また、その場合、アルコキシシラン成分(I)およびアルコキシシラン成分(II)の含む、同じ種類のエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の総量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(II)の含む当該エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の量は、例えば、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは、99モル%以上である。また、アルコキシシラン成分(II)の含む当該グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物の量は(b)80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であってもよく、より好ましくは95モル%以上であってもよく、さらに好ましくは、99モル%以上であってもよい。また、その場合、アルコキシシラン成分(I)およびアルコキシシラン成分(II)の含む、同じ種類のエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の総量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(II)の含む当該エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物の量は、例えば、20モル%以下であり、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは、1モル%以下である。 本製造方法において、アルコキシシラン成分(I)と、アルコキシシラン成分(II)、との合計量100モル%に対する、アルコキシシラン成分(I)と、アルコキシシラン成分(II)のモル比は、15~85モル%:85~15モル%が好ましく、20~80モル%:80~20モル%がより好ましく、25~75モル%:75~25モル%が特に好ましい。
【0086】
本製造方法においては、上述した場合A~Cの中でも、場合(A2)および場合(B2)が、より耐候性に優れるポリシロキサンを得ることができるため、好ましい。すなわち、本発明の一実施形態は、以下の(a)または(b)の態様であることがより好ましい。
【0087】
(a):(1)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含むアルコキシシラン成分(I)を、中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る1段目の重合工程と、(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含むアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、加水分解・脱水縮合し、ポリシロキサンを含む溶液を得る2段目の重合工程と、を含むポリシロキサンの製造方法
(b):(1)エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含むアルコキシシラン成分(I)を、中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る1段目の重合工程と、(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含むアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、加水分解・縮合し、ポリシロキサンを含む溶液を得る2段目の重合工程と、を含むポリシロキサンの製造方法。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記アルコキシシラン成分(I)、および前記アルコキシシラン成分(II)の総重量100重量部に対するグリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物、ならびに、その他のアルコキシシラン化合物の種類および量は特に限定されないが、例えば、前記アルコキシシラン成分(I)、および前記アルコキシシラン成分(II)の総重量100重量部に対する、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、および、フェニルトリアルコキシシランの合計量が90重量部以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、得られるポリシロキサンの硬化性が十分に高くなり、耐傷性に優れる硬化物(塗膜)を得ることができる。
【0089】
本発明の一実施形態に係る2段目の重合工程は、1段目の重合工程にて得られたポリシロキサンマクロマーを含む溶液中で行われる。当該溶液中には、1段目の重合工程に供された水、および中性塩が存在するため、新たに中性塩、および/または水を添加せずとも加水分解・脱水縮合反応を行うことができるが、必要に応じて、新たに中性塩、および/または水を添加してもよい。
【0090】
2段目の重合工程における、ポリシロキサンマクロマーと、アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合する際の反応温度は、当業者が適宜設定できるが、例えば、ポリシロキサンマクロマーと、アルコキシシラン成分(II)と、を含む溶液を、50℃~110℃に加熱することが好ましい。加水分解・脱水縮合反応を50℃~110℃以下の温度で行うと、ポリシロキサンを製造することが容易になる。また、加水分解・脱水縮合反応を実施する際の反応時間は、当業者が適宜設定できるが、例えば10分間~12時間程度であってよい。
【0091】
2段目の重合工程の後(好ましくは後述する脱アルコール工程の後、より好ましくは、後述する熟成工程の後)に、反応系を冷却(例えば、30℃以下に冷却)して、ポリシロキサンを、ポリシロキサンを含む溶液の状態で得ることができる。
【0092】
((3)脱アルコール工程)
本製造方法は、前記2段目の重合工程の後に、アルコキシラン化合物の加水分解反応により発生したアルコールを溶液(ポリシロキサンを含む溶液)から除去(揮発)し、脱アルコールしたポリシロキサンを含む溶液を得る、脱アルコール工程を含むことが好ましい。本製造方法が脱アルコール工程を含む場合、効率的に脱水縮合反応が進行するため、得られるポリシロキサンのグラフト率を向上させることができる。
【0093】
脱アルコール工程としては、前記溶液中のアルコールを除去することができる限り特に限定されないが、例えば、前記溶液を加熱して、減圧蒸留に付してアルコールを留去する方法が好ましい。減圧蒸留の条件は当業者が適宜設定することが可能であるが、この時の温度としては、ブロック構造を有するポリシロキサンを製造することが容易になることから、50℃~110℃であることが好ましい。脱アルコール工程では、上記加水分解反応により発生したアルコールのうち、80モル%以上のアルコールを除去することが好ましく、90モル%以上のアルコールを除去することがより好ましい。
【0094】
また、脱アルコール工程において、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤を溶液に添加し、ポリシロキサンを含む溶液の固形分濃度(SC)を調整してもよい。
【0095】
((4)熟成工程)
本製造方法は、前記2段目の重合工程の後、好ましくは、前記脱アルコール工程の後に、前記ポリシロキサンを含む溶液(脱アルコールしたポリシロキサンを含む溶液)を加温する熟成工程を含むことが好ましい。本製造方法が熟成工程を含む場合、得られるポリシロキサン(熟成工程後のポリシロキサン)の、保管中での経時変化を抑制することができる。熟成工程において、前記ポリシロキサンを含む溶液を加温する温度は特に限定されないが、脱水縮合反応を進行させる観点から、40~180℃が好ましく、60~160℃がより好ましく、80~150℃がさらに好ましい。熟成工程において、前記ポリシロキサンを含む溶液を加温する時間は特に限定されないが、熟成工程における脱水縮合反応はポリマー間の反応であり、拡散律速であるため短時間だと十分に反応し得ない虞がある。したがって、十分に脱水縮合反応を進行させるという観点から、20分~7時間が好ましく、40分~5時間がより好ましく、1~3時間がさらに好ましい。すなわち、熟成工程においては、前記ポリシロキサンを含む溶液を80~150℃で、1~3時間維持することが特に好ましい。
【0096】
また、熟成工程において、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤を溶液に添加してもよい。これらの有機溶剤は沸点が十分に高いため、熟成工程に供される前記ポリシロキサンを含む溶液の温度を、十分に高い温度とすることができるという利点を有する。
【0097】
〔3.ポリシロキサン〕
本発明の一実施形態において、それぞれ異なる種類のグリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位とするブロック構造を2つ以上有する、ポリシロキサンを提供する。本ポリシロキサンについては、以下に記載した事項に加え、上記〔2.ポリシロキサンの製造方法〕の記載が適宜援用される。
【0098】
本ポリシロキサンの提供方法は、特に限定されないが、例えば、〔2.ポリシロキサンの製造方法〕項に記載の方法によって製造される。すなわち、本ポリシロキサンは、前記アルコキシシラン成分(I)に由来する構成単位を有するブロック構造、および、前記アルコキシシラン成分(II)に由来する構成単位を有するブロック構造を有する重合体であり、少なくとも、2つのブロック構造を含む重合体であるともいえる。本ポリシロキサンの含むブロック構造の数は、2つ以上であれば特に限定されず、例えば、トリブロック構造であってもよく、テトラブロック構造であってもよい。
【0099】
本ポリシロキサンの含むブロック構造は、(a)ブロック構造中の全ての構成単位が、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位のみから構成されてもよく、(b)ブロック構造中の全ての構成単位が、エポキシシクロヘキシル基を有する化合物に由来する構成単位のみから構成されてもよく、(c)グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を両方含んでいてもよい。すなわち、本ポリシロキサンは、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造を2つ以上有するポリシロキサンであると言える。また、前記アルコキシシラン成分(I)と、前記アルコキシシラン成分(II)と、はそれぞれ異なる組成であることから、本ポリシロキサンの含むブロック構造の構成単位の組成も、同様に、それぞれ異なる。中でも、より耐候性に優れた硬化物を提供し得ることから、本ポリシロキサンは、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、を有することが特に好ましい。
【0100】
上記(a)~(c)の中でも、得られる硬化物の耐傷性、密着性、および耐水性を向上させることができることから、上記(c)の態様が好ましい。すなわち、本ポリシロキサンは、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を有することが好ましい。
【0101】
本ポリシロキサンは、前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、前記その他のアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量100モル%に対して、モノオルガノトリアルコキシシラン70~100モル%、およびジオルガノジアルコキシシラン0~30モル%を含有することが好ましい。前記モノオルガノトリアルコキシシランの割合は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、99モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
【0102】
本ポリシロキサンにおける、前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、前記その他のアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量100モル%に対する、前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量は、50~100モル%であることが好ましく、60~100%がより好ましく、70~100モル%がさらに好ましく、100モル%であってもよい。本ポリシロキサンが、前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位を合計で50モル%以上含む場合、架橋点となるエポキシ基の密度が高くなり、得られる硬化物の架橋密度が向上し、耐傷性を向上させることができる。
【0103】
本ポリシロキサンにおける、前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位、および、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の合計量100モル%に対する前記グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の量は、10~99モル%が好ましく、20~95モル%がより好ましく、30~90モル%がさらに好ましい。また、前記エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物に由来する構成単位の量は、1~90モル%が好ましく、5~80モル%がより好ましく、10~70モル%がさらに好ましい。上記構成によれば、耐候性に優れ、かつ反応性にも優れるポリシロキサンを得ることができる。
【0104】
本ポリシロキサンは、本ポリシロキサンの全構成単位100モル%中の、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位(以下、T1と称する)の量、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を2個形成している構成単位(以下、T2と称する)の量、および、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を3個形成している構成単位(以下、T3と称する)の量が、それぞれ3~80モル%であり、かつ、前記T1、前記T2、および、前記T3の合計量が、90~100モル%であることが好ましい。上記構成によれば、本ポリシロキサンと、硬化性樹脂組成物に含まれるその他の樹脂(例えば、アクリルポリオール)との相溶性および反応性が良好となる。
【0105】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサンにおける前記T1の量は、3~80モル%であることがより好ましく、5~60モル%であることがさらに好ましく、10~40モル%であることが特に好ましい。本ポリシロキサンにおける前記T2の量は、10~80モル%であることがより好ましく、15~70モル%であることがさらに好ましく、20~60モル%が特に好ましい。また、本ポリシロキサンにおける前記T3の量は、10~80モル%であることがより好ましく、30~75モル%であることがさらに好ましく、50~70モル%であることが特に好ましい。さらに、前記T1、前記T2、および、前記T3の合計量は、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることがさらに好ましい。
【0106】
ここで、本ポリシロキサンにおける前記T1の量、前記T2の量、および、前記T3の量は、29Si-NMRによって測定された、Q1、Q2、Q3、Q4、T1、T2、T3、D1、D2、およびM1それぞれに由来するピークのピーク面積の合計ピーク面積に対するT1、T2、および、T3に由来するピーク面積の割合(%)として算出することができる。
【0107】
ここで、Q1、Q2、Q3、またはQ4とは、それぞれ、テトラアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、3個、または4個形成している構成単位であり、T1、T2、またはT3とは、それぞれ、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、2個、または3個形成している構成単位の量であり、D1、またはD2とは、ジオルガノジアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個、または2個形成している構成単位であり、M1は、トリオルガノモノアルコキシシランに由来し、シロキサン結合を1個形成している構成単位である。
【0108】
したがって、本ポリシロキサンにおける、前記T1の量は、「T1/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)」と、表現することもできる。前記T2の量は、「T2/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)」と、表現することもできる。前記T3の量は、「T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)」と、表現することもできる。また、前記T1、前記T2、および、前記T3の合計量は、「T1+T2+T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)」と、表現することもできる。
【0109】
本ポリシロキサンにおいて、T3の量が高い値(例えば、50モル%以上)であることは、多くのアルコキシ基がシロキサン結合に変換されており、シルセスキオキサン構造を有する部位T3が本ポリシロキサン中に多く含まれることを意味する。シルセスキオキサン構造はち密な架橋構造と柔軟性を併せ有する構造であり、硬化物の耐傷性、および耐水性の発現に寄与する構造である。逆に、T3の割合が0%であると、シルセスキオキサン構造が存在せず、本ポリシロキサンによる所望の物性を発現しにくくなる。
【0110】
本ポリシロキサンは、シラノール基を有することが好ましい。本ポリシロキサンが「シラノール基を有する」ことは、本ポリシロキサンの縮合度によっても、評価することができる。本ポリシロキサンが「シラノール基を有する」とは、本ポリシロキサンの縮合度が100%未満であることを意味する。ここで、縮合度とは、下記式によって算出される値である:
縮合度(%)={(1×T1の量)+(2×T2の量)+(3×T3の量)}/3
本ポリシロキサンの縮合度は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。本ポリシロキサンの縮合度が90%以下であれば本ポリシロキサンと、その他の樹脂との相溶性および反応性が良好となる。また、本ポリシロキサンの縮合度の下限は特に限定されないが、例えば70%以上でありえる。本ポリシロキサンの縮合度が70%以上であれば、硬化物(硬化塗膜)を得る際の収縮応力が過剰に大きくなることがなく、厚膜(例えば、塗膜の厚みが20μm以上)の硬化塗膜を作成する場合であっても、塗膜におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0111】
本ポリシロキサンにおけるT1、T2、およびT3の量は、前記1段目の重合工程、および前記2段目の重合工程で使用する水の使用量や触媒の種類・量、反応温度、加水分解反応で発生したアルコールの除去量などを調節することで制御することができる。
【0112】
本ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、耐傷性と相溶性に優れる硬化物を提供できることから、2000~20000であることが好ましく、3000~15000であることがより好ましく、4000~10000であることがさらに好ましい。なお、ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0113】
本ポリシロキサンのエポキシ当量は、150~400であることが好ましく、160~300であることが好ましく、170~250であることがさらに好ましい。ポリシロキサンのエポキシ当量が400以下であれば、当該ポリシロキサンの架橋構造が十分に得られ、高い耐傷性、耐薬品性を有する硬化物を得ることができる。また、150以上であれば、硬化物中に未反応で残存するエポキシ基の量が少なくなる。
【0114】
本明細書において、ポリシロキサンのエポキシ当量とは、ポリシロキサンの含むエポキシ基1個当たりの分子量を意図し、具体的には、下記式に基づいて算出する値である:
エポキシ当量=ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)/ポリシロキサン1分子当たりのエポキシ基の数(平均数)。なお、ポリシロキサンの組成が不明等の理由により、上記式に基づいて、ポリシロキサンのエポキシ当量が算出できない場合は、ポリシロキサンのエポキシ当量は、JIS K7236に準じて測定することができる。
【0115】
〔4.硬化性樹脂組成物〕
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【0116】
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物(以下、「本硬化性樹脂組成物」と称する。)は、本ポリシロキサンを含む限り特に限定されず、例えば、本ポリシロキサンと、金属触媒と、任意でその他の添加剤と、を含む硬化性樹脂組成物であってもよく、本ポリシロキサンと、金属触媒と、樹脂成分と、ポリイソシアネート化合物と、任意でその他の添加剤と、を含む硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0117】
(金属触媒)
本硬化性樹脂組成物は、金属触媒を含むことが好ましい。金属触媒としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機鉄化合物等の有機金属系類酸触媒が好適に使用できるが、中でも、有機アルミニウム化合物(以下、アルミニウム化合物と称する)が好ましい。これら金属触媒の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0118】
本明細書において、アルミニウム化合物とは、アルミニウム原子に直接結合した有機基を少なくとも一つ有する化合物を意図する。このような有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、β―ジカルボニル基、カルボキシ基等が挙げられる。これら有機基は1種類のみであってもよく、2種類以上が混在してもよい。
【0119】
アルミニウム化合物は下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい:
【0120】
【0121】
(式中、R1、R2およびR3は、アルキル基、アルコキシ基、β-ジカルボニル基、またはカルボキシ基である。R1、R2およびR3は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
前記式(I)において、R1、R2およびR3は、少なくとも一つがβ-ジカルボニル化合物であることが好ましく、R1、R2およびR3は、すべてがβ-ジカルボニル化合物であることが好ましい。R1、R2およびR3の、少なくとも一つがβ-ジカルボニル化合物であれば、貯蔵安定性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができる。ここで、β-ジカルボニル化合物とは、1個の炭素原子に2個のカルボニル基が結合した構造を有する化合物である。β-ジカルボニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルアセトアセテート、アセチルアセトネート、メチルアセトアセテート、ジメチルマロネート等が挙げられる。中でも、本ポリシロキサン、(メタ)アクリルポリオール、および溶剤への溶解性が良好となることから、エチルアセトアセテートが好ましい。
【0122】
前記式(I)において、R1、R2およびR3のうち、β-ジカルボニル化合物以外の有機基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、secブトキシ基、tertブトキシ基等であり得る。
【0123】
アルミニウム化合物としては、アルミニウム原子に直接結合した有機基を少なくとも一つ有する限り特に限定されないが、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(secブトキシド)等が挙げられる。これらの中でも本ポリシロキサンおよび(メタ)アクリルポリオールへの溶解性が高く、かつエポキシ硬化性が高い(ルイス酸性が高い)ことから、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートが好ましい。アルミニウム化合物としては、これらのうち1種類のみを単独で使用してもよく、複数種類を混合して使用してもよい。
【0124】
本硬化性樹脂組成物は、本ポリシロキサン100重量部に対して、金属触媒を1~20重量部含むことが好ましく、2~17重量部含むことがより好ましく、3~15重量部含むことがさらに好ましい。本硬化性樹脂組成物における、本ポリシロキサン100重量部に対する金属触媒の含有量が、1~20重量部である場合、十分な硬化触媒性を発現することができる。
【0125】
(樹脂成分)
本硬化性樹脂組成物は、本ポリシロキサンに加えて、樹脂成分(他の樹脂成分)を含んでいてもよい。そのような樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリルポリオール脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリル系樹脂等が挙げられる。これら樹脂成分の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら他の樹脂成分の中でも、優れた耐傷性、耐薬品性を有する硬化物を提供できることから、(メタ)アクリルポリオールが好ましい。
【0126】
本明細書において、(メタ)アクリルポリオールとは、(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を有する単量体と、を共重合(例えば、ラジカル重合)してなる、分子中に水酸基を2個以上有する共重合体を意図する。(メタ)アクリルポリオールは、ラジカル重合することにより得られるものであることが好ましい。(メタ)アクリルポリオールは、(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を有する単量体と、を含む共重合体であるともいえる。(メタ)アクリルポリオールとしては、1種類の(メタ)アクリルポリオールを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0127】
本明細書において、(メタ)アクリルポリオールの含む(メタ)アクリル系単量体としては、成分(メタ)アクリル基を有する限り特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数4~20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の炭素数3~20のアラルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルポリオールは、これら(メタ)アクリル系単量体の1種類のみを含んでもよく、2種類以上を含んでもよい。(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル基を有する単量体であるともいえる。
【0128】
(メタ)アクリルポリオールの含む水酸基を有する単量体としては特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシスチレンビニルトルエンなど水酸基含有ビニル系単量体;PlaccelFA-1、PlaccelFA-4、PlaccelFM-1、PlaccelFM-4(以上ダイセル化学(株)製)などの重合可能な炭素-炭素二重結合を末端に有する変性ラクトンまたはポリエステル;ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日油(株)製)、A-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(以上、日本乳化剤(株)製)などの重合可能な炭素-炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレン等が挙げられる。(メタ)アクリルポリオールは、これら水酸基を有する単量体の1種類のみを含んでもよく、2種類以上を含んでもよい。
【0129】
本硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリルポリオールを含むことにより、本ポリシロキサンと、(メタ)アクリルポリオールと、がC-O-Siで表される構造を形成し架橋する。かかる構造を形成することによって、密着性、耐久性等に優れる硬化物を得ることができる。
【0130】
また、(メタ)アクリルポリオールは、上述した(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する単量体、以外の単量体(その他の単量体)を含んでもよい。その他の単量体としては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体、スチレン系単量体、マレイン酸、フマル酸等の酸系単量体、無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。これらその他の単量体は1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0131】
また、(メタ)アクリルポリオールは、その他の単量体として、反応性ケイ素基を有する単量体を含んでもよい。すなわち、(メタ)アクリルポリオールは、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリルポリオールであってもよい。このような反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリルポリオールは、例えば、(メタ)アクリルポリオールの含むアクリル系単量体と、水酸基を有する単量体と、反応性ケイ素基を有する単量体と、をラジカル重合することにより得ることができる。
【0132】
反応性ケイ素基を有する単量体としては特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n-プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシラン等が挙げられる。
【0133】
(メタ)アクリルポリオールの分子中に含まれる水酸基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、例えば、3個以上であり、5個以上であることが好ましく、7個以上であることがより好ましい。(メタ)アクリルポリオールの分子中に含まれる水酸基の数が3個以上であれば、緻密な架橋構造が得られ、耐傷性に優れる硬化物を得ることができる。また、(メタ)アクリルポリオールの分子中に含まれる水酸基の数の上限は特に限定されないが、例えば、50個以下であり、好ましくは40個以下である。(メタ)アクリルポリオールの分子中に含まれる水酸基の数が50個以下であれば、硬化物(塗膜)に硬化反応後に残存する水酸基の数が少なくなり、耐水性に優れる硬化物(塗膜)が得られる。
【0134】
(メタ)アクリルポリオールの水酸価は、20~300mgKOH/gであることが好ましく、50~250mgKOH/gであることがより好ましく、80~230mgKOH/gであることがさらに好ましく、100~200mgKOH/gであることが特に好ましい。(メタ)アクリルポリオールの水酸価が20~300mgKOH/gであれば、架橋密度が高く、かつ耐傷性および耐薬品性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができる。なお、本明細書において、水酸価とは、JIS K 1557-1の規格に基づいて測定した値である。
【0135】
(メタ)アクリルポリオールの数平均分子量(Mn)は、1,000~6,000であることが好ましく、1,500~5,000であることがより好ましく、2,000~4,500であることがさらに好ましく、2,500~4,200が特に好ましい。(メタ)アクリルポリオールの数平均分子量(Mn)が1,000~6,000であれば、架橋密度が高く、かつ耐傷性および耐薬品性に優れる硬化物を得ることができる。
【0136】
(メタ)アクリルポリオールの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、(メタ)アクリルポリオールの相溶性および反応性の観点から、2,000~12,000であることが好ましく、3,000~10,000であることがより好ましく、4,000~9,000であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリルポリオールの重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0137】
本硬化性樹脂組成物は、本ポリシロキサン100重量部に対して、樹脂成分を5~100重量部含むことが好ましく、10~90重量部含むことがより好ましく、15~80重量部含むことがさらに好ましく、20~70重量部含むことが特に好ましい。本硬化性樹脂組成物における樹脂成分の含有量が、本ポリシロキサン100重量部に対して、5重量部以上である場合、本ポリシロキサンと十分に反応し緻密な架橋構造を形成することができる。また、100重量部以下である場合、本ポリシロキサン単独の硬化反応を阻害しないという利点を有する。なお、本硬化性樹脂組成物が2種類以上の樹脂成分を含む場合、各樹脂成分の合計量が、本硬化性樹脂組成物における樹脂成分の含有量となる。
【0138】
((メタ)アクリルポリオールの製造方法)
上述した(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を有する単量体と、任意でその他の単量体とを、公知の方法によって重合することにより(例えば、重合開始剤の存在下で加熱することにより)、(メタ)アクリルポリオールを製造することができる。
【0139】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、加熱することによってラジカルを発生させることができる開始剤(ラジカル重合性開始剤)であることが好ましい。そのような重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物類等が挙げられる。これら重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0140】
(メタ)アクリルポリオールを製造する際の、上記重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、上述したアクリル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、および、その他の単量体の合計量100重量部に対して、0.1~5.0重量部であることが好ましく、0.3~4.0重量部であることがより好ましく、0.5~2.0重量部であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量が0.1重量部以上であると、重合反応が適切に進行する。また、重合開始剤の使用量が5.0重量以下であると、適切な分子量の共重合体を得ることができる。
【0141】
(メタ)アクリルポリオールは、(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を有する単量体と、任意でその他の単量体と、を溶剤の存在下で重合して製造してもよい。このような溶剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒等の炭化水素系溶剤;トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル(IBAC)等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジブチルエーテル、ジペンチニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶剤;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤;等が挙げられる。
【0142】
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリルポリオールを製造する際に、上記重合開始剤に加えて、
連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用することにより、(メタ)アクリルポリオールの分子量(数平均分子量)を、好適な範囲に制御することができる。連鎖移動剤としては特に限定されないが、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸-2-エチルヘキシル、n-オクチルメルカプタン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメイルジメトキシシラン、メルカプトエタノール、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0143】
(メタ)アクリルポリオールを製造する際の、上記連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、上述したアクリル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、および、その他の単量体の合計量100重量部に対して、0.5~10重量部であることが好ましく、0.5~8重量部であることがより好ましく、0.5~6重量部であることがさらに好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.5重量部以上であると、(メタ)アクリルポリオールのポリマー末端に上記重合開始剤(ラジカル発生剤)由来の官能基(ニトリル基、カルボキシル基、エステル基等)が導入されず、それらの官能基による本ポリシロキサンの硬化阻害を抑制できる。また、連鎖移動剤の使用量が10重量以下であると、ポリマー末端に効率的に導入されるため、未反応物(可塑剤)として硬化性樹脂組成物中に残存する虞がない。
【0144】
(ポリイソシアネート化合物)
本硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。本硬化性樹脂組成物がポリイソシアネート化合物を含むことにより、耐傷性に優れる硬化物を得ることができる。
【0145】
本明細書において、ポリイソシアネート化合物とは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意図する。すなわち、ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する。
【0146】
ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の数は、1分子中に2個以上であれば特に限定されないが、1分子中に2.1個以上であることが好ましく、2.3個以上であることがより好ましく、2.5個以上であることがさらに好ましい。ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の数の上限は、特に限定されないが、例えば、20個以下であること好ましく、10個以下であることがより好ましい。
【0147】
ポリイソシアネート化合物の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、相溶性および反応性が良好となることから、150~1000であることが好ましく、200~800であることがより好ましく、300~700であることがさらに好ましい。なお、本ポリシロキサンの数平均分子量(Mn)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0148】
ポリイソシアネート化合物としては、従来公知のポリイソシアネート化合物を使用することができる。そのようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0149】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等のジイソシアネート化合物;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0150】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3-イソシアネートメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,6-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0151】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼンまたはそれらの混合物等のジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0152】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-トルイジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4′-ジフェニルメタン-2,2′,5,5′-テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0153】
本発明の一実施形態において、ポリイソシアネート化合物として、前記各種のポリイソシアネート化合物の変性体を使用してもよい。そのような、変性体としては、アロファネート変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
【0154】
ポリイソシアネート化合物は、環状構造または直鎖構造もしくは分岐鎖構造を有するポリイソシアネートであることが好ましく、ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および芳香脂肪族ポリイソシアネートよりなる群から選択される1種以上であることがさらに好ましい。脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等の、分子内に環状構造を有するポリイソシアネートは、得られる硬化物の物性(接着性、靭性、耐衝撃性)改良効果が顕著である為、より好ましい。これらの中でも、芳香族ポリイソシアネートがよりさらに好ましく、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、得られる硬化性樹脂組成物が接着性に優れることから特に好ましい。
【0155】
脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物を使用した場合、得られる硬化物の耐候性に優れることから好ましい。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および、これらのイソシアヌレート変性体が好ましい。
【0156】
これらポリイソシアネート化合物の使用に際し、黄変性が問題になる場合には、脂肪族、脂環族、または芳香脂肪族のポリイソシアネートを使用するのが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環族ポリイソシアネートがより好ましい。
【0157】
本発明の一実施形態において、ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基をブロック剤でマスクし、常温で不活性化したブロックイソシアネートとすることも可能である。ここで、ブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、トリアゾール類、カプロラクタム類、アセチルアセトンやアセト酢酸エチル等のβジカルボニル化合物等が挙げられる。
【0158】
本硬化性樹脂組成物は、本ポリシロキサン100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物を5~150重量部含むことが好ましく、10~120重量部含むことがより好ましく、12~100重量部含むことがさらに好ましく、15~70重量部含むことが特に好ましい。本硬化性樹脂組成物における、本ポリシロキサン100重量部に対するポリイソシアネート化合物の含有量が、5重量部以上である場合、弾性率に優れる硬化物を提供することができ、150重量部以下である場合、十分な靭性を有する硬化物を提供することができる。
【0159】
(溶剤)
本硬化性樹脂組成物は、溶剤をさらに含むことが好ましい。
【0160】
溶剤としては、特に限定されることなく、各種の化合物を使用することができる。より具体的には、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒等の炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル(IBAC)、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、ジブチルエーテル、ジペンチニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤等が挙げられる。中でも、本ポリシロキサンおよび(メタ)アクリルポリオールへの溶解性が高く、また、スプレー塗装時の揮発性が高いことから、エステル系溶剤、エーテル系溶剤が好ましく、酢酸イソブチル、メトキシプロピルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが特に好ましい。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0161】
本硬化性樹脂組成物における溶剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、40~80重量%であることが好ましく、45~75重量%であることがより好ましく、50~70重量%であることがさらに好ましい。本硬化性樹脂組成物における溶剤の含有量が40重量%以上であると、粘度が低く、かつ、チクソ性が高い、作業性に優れる硬化性組成物を得ることができる。また、本硬化性樹脂組成物における溶剤の含有量が80重量%以下であると、一回の塗装で十分な膜厚の硬化物を得ることが出来る。
【0162】
(脱水剤)
本硬化性樹脂組成物は、さらに、脱水剤を含むことが好ましい。本硬化性樹脂組成物が、脱水剤を含む場合、貯蔵安定性に優れるという利点を有する。
【0163】
脱水剤としては、特に限定されないが、例えば、トシルイソシアネート、ビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウム、ゼオライト、p-トルエンスルホニルイソシアネート、3-エチル-2-メチル-2-(3-メチルブチル)-1,3-オキサゾリジン等が挙げられ、これら脱水剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0164】
本硬化性樹脂組成物における脱水剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.5~7.0重量%であることが好ましく、1.0~5.0重量%であることがより好ましい。本硬化性樹脂組成物における脱水剤の含有量が0.1重量%以上であると、硬化性樹脂組成物に対して効果的な脱水性を発現することができる。また、本硬化性樹脂組成物における脱水剤の含有量が10重量%以下であると、乾燥・硬化後に硬化物(塗膜)に残存することなく揮発するため、塗膜から除去しやすいという利点を有する。
【0165】
(安定化剤)
本硬化性樹脂組成物は、さらに、安定化剤を含むことが好ましい。本硬化性樹脂組成物が、安定化剤を含む場合、貯蔵安定性に優れる硬化性樹脂組成物を提供でき、また、密着性、耐傷性および耐薬品性に優れる硬化物を提供することができる。
【0166】
安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル等が挙げられる。これら安定化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0167】
本硬化性樹脂組成物における安定化剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.5~10重量%であり、1.0~5.0重量%であることが好ましく、1.5~3.0重量%であることがより好ましい。本硬化性樹脂組成物における安定化剤の含有量が0.5重量%以上であると、貯蔵安定性に優れる硬化性樹脂組成物を提供できる。また、本硬化性樹脂組成物における安定化剤の含有量が10重量%以下であると、硬化性樹脂組成物(塗液・塗膜)の乾燥・硬化時に迅速に塗液・塗膜から揮発するため、硬化阻害を生じないという利点を有する。
【0168】
(その他の成分)
本硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、粘着性付与剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、エポキシ樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、加水分解安定化剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、低収縮剤、シリコーン界面活性剤、水分等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0169】
<充填材>
本硬化性樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。充填材としては、特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、バライト、無水石膏、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、マイカ、亜鉛華、鉛白、リトポン、硫化亜鉛、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末などの粉末状の充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填材等が挙げられる。また、上記以外に、例えば、酸化チタン、クロム酸鉛、酸化クロム、ウルトラマリン、コバルトブルー、シアニンブルー、シアニングリーン、レーキレッド、キナクリドンレッドなどの着色顔料も用いることができる。
【0170】
本硬化性樹脂組成物における充填剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、1.0~50重量%であり、5.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0171】
<難燃剤>
本硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これら難燃剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0172】
前記ポリリン酸アンモニウムとしては、従来公知のものを広く使用することができる。これらの中でも、耐水性の観点から、樹脂により被覆し、マイクロカプセル化されたポリリン酸アンモニウム、または、表面改質されたポリリン酸アンモニウム等の表面処理されたポリリン酸アンモニウムが好ましく、表面をメラミンホルムアルデヒド樹脂で被覆されたものがさらに好ましい。
【0173】
本硬化性樹脂組成物における難燃剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.5~5.0重量%であることが好ましく、1.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0174】
<分散剤>
本硬化性樹脂組成物は、分散剤を含んでもよい。分散剤としては、顔料と、分散剤と、を公知の方法に従って混合分散して得られる顔料分散ペーストを配合し、使用することも可能である。分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。例えば、ANTI-TERRA(登録商標)-U、ANTI-TERRA(登録商標)-U100、ANTI-TERRA(登録商標)-204、ANTI-TERRA(登録商標)-205、DISPERBYK(登録商標)-101、DISPERBYK(登録商標)-102、DISPERBYK(登録商標)-103、DISPERBYK(登録商標)-106、DISPERBYK(登録商標)-108、DISPERBYK(登録商標)-109、DISPERBYK(登録商標)-110、DISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-112、DISPERBYK(登録商標)-116、DISPERBYK(登録商標)-130、DISPERBYK(登録商標)-140、DISPERBYK(登録商標)-142、DISPERBYK(登録商標)-145、DISPERBYK(登録商標)-161、DISPERBYK(登録商標)-162、DISPERBYK(登録商標)-163、DISPERBYK(登録商標)-164、DISPERBYK(登録商標)-166、DISPERBYK(登録商標)-167、DISPERBYK(登録商標)-168、DISPERBYK(登録商標)-170、DISPERBYK(登録商標)-171、DISPERBYK(登録商標)-174、DISPERBYK(登録商標)-180、DISPERBYK(登録商標)-182、DISPERBYK(登録商標)-183、DISPERBYK(登録商標)-184、DISPERBYK(登録商標)-185、DISPERBYK(登録商標)-2000、DISPERBYK(登録商標)-2001、DISPERBYK(登録商標)-2008、DISPERBYK(登録商標)-2009、DISPERBYK(登録商標)-2022、DISPERBYK(登録商標)-2025、DISPERBYK(登録商標)-2050、DISPERBYK(登録商標)-2070、DISPERBYK(登録商標)-2096、DISPERBYK(登録商標)-2150、DISPERBYK(登録商標)-2155、DISPERBYK(登録商標)-2163、DISPERBYK(登録商標)-2164、BYK(登録商標)-P104、BYK(登録商標)-P104S、BYK(登録商標)-P105、BYK(登録商標)-9076、BYK(登録商標)-9077、BYK(登録商標)-220S、ANTI-TERRA(登録商標)-250、DISPERBYK(登録商標)-187、DISPERBYK(登録商標)-190、DISPERBYK(登録商標)-191、DISPERBYK(登録商標)-192、DISPERBYK(登録商標)-193、DISPERBYK(登録商標)-194、DISPERBYK(登録商標)-198、DISPERBYK(登録商標)-2010、DISPERBYK(登録商標)-2012、DISPERBYK(登録商標)-2015、DISPERBYK(登録商標)-2090、DISPERBYK(登録商標)-2091、DISPERBYK(登録商標)-2095(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)2150、DISPARLON(登録商標)KS-860、DISPARLON(登録商標)KS-873N、DISPARLON(登録商標)7004、DISPARLON(登録商標)1831、DISPARLON(登録商標)1850、DISPARLON(登録商標)1860、DISPARLON(登録商標)DA-1401、DISPARLON(登録商標)PW-36、DISPARLON(登録商標)DA-1200、DISPARLON(登録商標)DA-550、DISPARLON(登録商標)DA-703-50、DISPARLON(登録商標)DA-7301、DISPARLON(登録商標)DN-900、DISPARLON(登録商標)DA-325、DISPARLON(登録商標)DA-375、DISPARLON(登録商標)DA-234(いずれも楠本化成社製)、EFKAPOLYMER4550(EFKA社製)、ソルスパース(登録商標)27000、ソルスパース(登録商標)41000、ソルスパース(登録商標)53095(いずれもアビシア社製)等を挙げることができる。
【0175】
分散剤の数平均分子量は、1000~10万であることが好ましく、2000~5万であることが好ましく、4000~5万であることがさらに好ましい。
【0176】
分散剤の数平均分子量が1000以上であれば、十分な分散安定性を得ることができ、10万以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎる虞がなく、取り扱い性に優れる組成物となる。
【0177】
本硬化性樹脂組成物における分散剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0178】
<消泡剤>
本硬化性樹脂組成物は消泡剤を含んでもよい。消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販の消泡剤としては、例えば、BYK(登録商標)-051、BYK(登録商標)-052、BYK(登録商標)-053、BYK(登録商標)-054、BYK(登録商標)-055、BYK(登録商標)-057、BYK(登録商標)-1752、BYK(登録商標)-1790、BYK(登録商標)-060N、BYK(登録商標)-063、BYK(登録商標)-065、BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-067A、BYK(登録商標)-077、BYK(登録商標)-088、BYK(登録商標)-141、BYK(登録商標)-354、BYK(登録商標)-392、BYK(登録商標)-011、BYK(登録商標)-012、BYK(登録商標)-017、BYK(登録商標)-018、BYK(登録商標)-019、BYK(登録商標)-020、BYK(登録商標)-021、BYK(登録商標)-022、BYK(登録商標)-023、BYK(登録商標)-024、BYK(登録商標)-025、BYK(登録商標)-028、BYK(登録商標)-038、BYK(登録商標)-044、BYK(登録商標)-093、BYK(登録商標)-094、BYK(登録商標)-1610、BYK(登録商標)-1615、BYK(登録商標)-1650、BYK(登録商標)-1730、BYK(登録商標)-1770などの消泡剤(いずれもビックケミー社製)や、DISPARLON(登録商標)OX-880EF、DISPARLON(登録商標)OX-881、DISPARLON(登録商標)OX-883、DISPARLON(登録商標)OX-883HF、DISPARLON(登録商標)OX-70、DISPARLON(登録商標)OX-77EF、DISPARLON(登録商標)OX-60、DISPARLON(登録商標)OX-710、DISPARLON(登録商標)OX-720、DISPARLON(登録商標)OX-720EF、DISPARLON(登録商標)OX-750HF、DISPARLON(登録商標)LAP-10、DISPARLON(登録商標)LAP-20、DISPARLON(登録商標)LAP-30等のアクリル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)OX-66、DISPARLON(登録商標)OX-715等のシリコーン系アクリル系複合型消泡剤、DISPARLON(登録商標)1950、DISPARLON(登録商標)1951、DISPARLON(登録商標)1952、DISPARLON(登録商標)P-410EF、DISPARLON(登録商標)P-420、DISPARLON(登録商標)P-450、DISPARLON(登録商標)P-425、DISPARLON(登録商標)PD-7等のビニル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)1930N、DISPARLON(登録商標)1934等のシリコーン系消泡剤(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0179】
本硬化性樹脂組成物における消泡剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0180】
<粘着性付与剤>
本硬化性樹脂組成物は、粘着性付与剤を含んでもよい。粘着性付与剤としては、特に限定されず、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものを使用することができる。具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等のスチレン系ブロック共重合体、および、その水素添加物、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂等が挙げられる。上記粘着性付与剤は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0181】
本硬化性樹脂組成物における粘着性付与剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0182】
<レベリング剤>
本硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含んでもよい。レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販のレベリング剤としては、例えば、BYKETOL(登録商標)-OK、BYKETOL(登録商標)-SPECIAL、BYKETOL(登録商標)-AQ、BYKETOL(登録商標)-WS(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)1970、DISPARLON(登録商標)230、DISPARLON(登録商標)LF-1980、DISPARLON(登録商標)LF-1982、DISPARLON(登録商標)LF-1983、DISPARLON(登録商標)LF-1984、DISPARLON(登録商標)LF-1985(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0183】
本硬化性樹脂組成物におけるレベリング剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.05~5.0重量%であり、0.1~4.0重量%であることが好ましく、0.2~3.0重量%であることがより好ましい。
【0184】
<チクソ性付与剤>
本硬化性樹脂組成物は、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含んでもよい。垂れ防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。充填材として示した前記ヒュームドシリカもまた、チクソ性付与剤として使用できる。また、特開平11-349916号公報に記載されているような粒子径10~500μmのゴム粉末や、特開2003-155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0185】
本硬化性樹脂組成物におけるチクソ性付与剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0186】
<エポキシ樹脂>
本硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(又はF)型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、含アミノグリシジルエーテル樹脂やこれらのエポキシ樹脂に、ビスフェノールA(又はF)類、多塩基酸類等を付加反応させて得られるエポキシ化合物等、公知のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0187】
本硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、5.0~50重量%であり、7.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0188】
<酸化防止剤>
本硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤(老化防止剤)を含んでもよい。組成物が酸化防止剤を含む場合、得られる硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が挙げられる。中でも、ヒンダードフェノール系が好ましい。本発明の一実施形態において、酸化防止剤として、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)944LD,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARKLA-57,MARKLA-62,MARKLA-67,MARKLA-63,MARKLA-68(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノール(登録商標)LS-770,サノール(登録商標)LS-765,サノール(登録商標)LS-292,サノール(登録商標)LS-2626,サノール(登録商標)LS-1114,サノール(登録商標)LS-744(以上いずれも三共株式会社製)等のヒンダードアミン系光安定化剤を使用することもできる。
【0189】
本硬化性樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0190】
<光安定化剤>
本硬化性樹脂組成物は、光安定化剤を含んでもよい。組成物が光安定化剤を含む場合、得られる硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。特に、3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤が、組成物の貯蔵安定性を改良できるため好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤としては、より具体的には、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもBASF製);MARKLA-57,LA-62,LA-67,LA-63(以上いずれも株式会社アデカ製);サノール(登録商標)LS-765,LS-292,LS-2626,LS-1114,LS-744(以上いずれも三共株式会社製)などの光安定化剤が挙げられる。
【0191】
本硬化性樹脂組成物における光安定化剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0192】
<紫外線吸収剤>
本硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含んでもよい。組成物が紫外線吸収剤を含む場合、得られる硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が挙げられるが、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
【0193】
本発明の一実施形態において、フェノール系、または、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定化剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を混合して使用することが特に好ましい。
【0194】
本硬化性樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0195】
<シランカップリング剤>
本硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。組成物がシランカップリング剤を含む場合、接着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン、(イソシアネートメチル)トリエトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジエトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,NT-ビス[3-(トリメキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等のアミノ基含有シラン類;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等が挙げられる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0196】
本硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0197】
本硬化性樹脂組成物は、上記各成分、およびその他の成分、等に由来する水分を含む場合がある。硬化性樹脂組成物が水分を含む場合、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が損なわれる虞がある。したがって、本硬化性樹脂組成物における水分の含有量は、前記硬化性組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.3重量%以下であり、0.2重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、0重量%であってもよい。
【0198】
(その他)
本硬化性樹脂組成物は、1成分型であってもよいし、多液型であってもよい。1成分型の硬化性樹脂組成物とは、すべての配合成分を予め配合した後、密封保存したものである。1成分型の硬化性樹脂組成物は、使用後に空気中の湿気により硬化することにより硬化物を提供することができる。一方、多液型硬化性樹脂組成物は、樹脂成分を含む第1液と、硬化触媒を含む第2液と、を別途製造、および貯蔵し、使用の直前に、上記の第1液と、第2液と、を混合することにより硬化物を提供することができる。
【0199】
本発明の一実施形態において、本硬化性樹脂組成物は、多液型硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0200】
本実施形態において、多液型硬化性樹脂組成物は、本硬化性樹脂組成物中の本ポリシロキサンおよび樹脂成分(例えば、(メタ)アクリルポリオール)を第1液として含むことが好ましく、本ポリシロキサンおよび樹脂成分を第1液として含み、かつ、ポリイソシアネート化合物および金属触媒を第2液として含むことがより好ましい。なお、第1液は、多液型硬化性樹脂組成物の主剤であるともいえ、また、第2液は多液型硬化性樹脂組成物の硬化剤であるともいえる。
【0201】
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
上述した各成分(本ポリシロキサンと、必要に応じて、樹脂成分、ポリイソシアネート化合物、金属触媒、およびその他の成分等)を公知の方法によって混合することにより、本硬化性樹脂組成物を製造することができる。混合方法としては、特に限定されないが、例えば、プロペラ型/櫂型などの攪拌羽根の付いた混合槽、プラネタリーミキサー、ニーダー、ホーバルトミキサー、ハイスピードミキサー、ラインミキサー、ロールミル、サンドミル、アトライター、2軸ミキサーなどの混合機を用いる方法が挙げられる。
【0202】
また、多液型硬化性樹脂組成物とする場合、下記の方法で得られた、第1液および第2液をさらに混合することで、本硬化性樹脂組成物が得られる。この場合の第1液および第2液を混合する方法としては、例えば、各成分を配合してハンドミキサーやスタティックミキサーで混合する方法、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダーなどを用いて、常温または加熱下で混練する方法、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合する方法等が挙げられる。
【0203】
本硬化性樹脂組成物の製造方法において、上述した各成分を同時に混合してもよく、各成分ごとに投入、混合、および、均一化を順次繰り返しながら混合してもよい。より均一に混合した組成物を得られることから、各成分ごとに投入、混合、および均一化を順次繰り返しながら混合することが好ましい。
【0204】
(多液型硬化性樹脂組成物)
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサンを第1液として含む、多液型硬化性樹脂組成物用を提供する(以下、本多液型硬化性樹脂組成物と称する)。本ポリシロキサンを第1液として含む多液型硬化性樹脂組成物を使用することにより、耐候性に優れる硬化物が得られる。
【0205】
(第1液)
本多液型硬化性樹脂組成物の第1液は、本ポリシロキサンと、好ましくは、樹脂成分と、を含む。本ポリシロキサンおよび樹脂成分については、それぞれ、上記〔3.ポリシロキサン〕および(樹脂成分)の項で記載したものが援用される。
【0206】
(第2液)
本多液型硬化性樹脂組成物の第2液は、ポリイソシアネート化合物および金属触媒を含むことが好ましい。ポリイソシアネート化合物および金属触媒については、それぞれ、上記(ポリイソシアネート化合物)および(金属触媒)の項で記載したものが援用される。第2液は、多液型の硬化性樹脂組成物において、硬化剤として機能する。
【0207】
本発明の一実施形態において、第2液は、ポリイソシアネート化合物および金属触媒に加えて、他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されず、例えば、溶剤、レベリング剤、脱水剤、安定剤、水酸基を有さない有機樹脂等が挙げられる。
【0208】
上述の通り、本多液型硬化性樹脂組成物は、本ポリシロキサンを含む第1液と、硬化剤を含む第2液と、を別途製造、および貯蔵し、使用の直前に、上記の第1液と、第2液と、を混合することにより硬化物を提供することができる。
【0209】
本多液型硬化性樹脂組成物における、第1液と第2液との配合比は、用途等に応じて適宜調節できる。本多液型硬化性樹脂組成物における、第1液と第2液との配合比は、例えば、20:1~1:1であり、15:1~2:1であることが好ましく、10:1~3:1であることがより好ましい。第1液と第2液との配合比が10:1~2:1であれば、混合しやすく性能ムラを生じにくい多液型硬化性樹脂組成物を提供できる。
【0210】
本多液型硬化性樹脂組成物は、例えば、第1液と、第2液と、の混合時に、着色剤等をさらに添加することができる。このことにより、例えば、限られた硬化性樹脂組成物の種類から、サイディングボードの色に合わせて豊富な色揃えのシーリング材を提供することができる等の利点を有する。それゆえ、多液型の硬化性樹脂組成物は、多色化に対する市場からの要望に容易に応えることができ、低層建物用途などに好適である。着色剤は、例えば、顔料、可塑剤、必要に応じて充填材を混合し、ペースト化したものが、作業性が高く好ましい。
【0211】
また、多液型の硬化性樹脂組成物は、多液成分の混合時に遅延剤を添加することができる。これにより、硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
【0212】
〔5.硬化物〕
本発明の一実施形態において、本硬化性樹脂組成物、または本多液型硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物(以下、「本硬化物」を称する。)を提供する。以下、「本硬化性樹脂組成物」および「本多液型硬化性樹脂組成物」を、まとめて、「本硬化性樹脂組成物等」と称することもある。
【0213】
本硬化物は、本硬化性樹脂組成物等を硬化して形成されたものである。好適には、本硬化物は、本ポリシロキサンおよび樹脂成分を含む第1液(主剤)と、ポリイソシアネート化合物および金属触媒を含む第2液(硬化剤)と、を混合し、得られた硬化性樹脂組成物を加熱して硬化させることによって形成されたものである。なお、本硬化性樹脂組成物が、溶剤等の揮発成分を含む場合、当該揮発成分は、硬化時の加熱によって揮発する。したがって、本硬化物は、本硬化性樹脂組成物に含まれる揮発成分を実質的に含まない。
【0214】
本硬化性樹脂組成物等を硬化させる時の加熱温度は特に限定されることなく、通常、50~200℃であるが、60~120℃が好ましく、70~110℃がより好ましく、80~100℃がさらに好ましい。本硬化物は、60~120℃といった比較的低温で形成させても、優れた耐傷性を有することができる。
【0215】
本硬化性樹脂組成物等を硬化させる時の加熱時間は特に限定されないが、コストおよび硬化反応の進行度を両立する観点から、10~120分が好ましく、15~100分がより好ましく、30~60分がさらに好ましい。
【0216】
本硬化物の厚みとしては、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましい。本硬化物の厚みが1μm以上であると、硬化塗膜(本硬化物)の耐傷性や耐水性が良好なものとなる。本硬化物の厚みが100μm以下であると、硬化収縮によるクラックを生じにくい。より好ましくは5~50μmであり、さらに好ましくは10~40μmである。
【0217】
(用途)
本硬化性樹脂組成物等および本硬化物は、種々の用途に用いることができる。例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、インク、着色インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、発光ダイオード用のリフレクター・反射板、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用材料、光造形、電子ペーパー用材料、ホログラム用材料、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素富化膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0218】
また、本硬化性樹脂組成物の第1液と第2液とを混合し、得られた混合物を基材に塗布し、熱源を用いて当該混合物を硬化させ、硬化塗膜を形成することにより、本硬化物を含む積層体を得ることができる。当該積層体は、パソコン、スマートフォン、タブレット等の前面板、自動車等の窓ガラス、自動車等のランプの保護具材、フィルム等に好適に使用できる。
【0219】
前記基材は特に限定されず、例えば、金属(例えば、アルミニウム、SUS、銅、鉄等)、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、石材、プラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ABS、PC-ABSアロイ、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、木材、紙、繊維等であってよい。前記基材はフィルムやシートであってもよい。本硬化性樹脂組成物は、自動車、建築物、家電用品、産業機器等の塗装に好適に使用することができる。本硬化性樹脂組成物は加熱により硬化するものであるため、特に、複雑な形状を有する基材の表面に塗膜を形成する場合に好適である。また、本硬化性樹脂組成物は、上述した通り、60~120℃といった比較的低温で硬化させても優れた耐傷性を達成できる。そのため、基材が有機基材であっても、硬化時の加熱による基材へのダメージを抑制できるので、有機基材に対しても好適に使用できる利点がある。
【0220】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0221】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
<1>(1)グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を含有するアルコキシシラン成分(I)を、水および中性塩の存在下にて、加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得る、1段目の重合工程と、
(2)前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液と、グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を、アルコキシシラン成分(I)とは異なる組成で含有するアルコキシシラン成分(II)と、を混合して、前記ポリシロキサンマクロマーと、前記アルコキシシラン成分(II)と、を加水分解・脱水縮合して、ポリシロキサンを含む溶液を得る、2段目の重合工程と、
を含むポリシロキサンの製造方法。
<2>前記アルコキシシラン成分(I)、および前記アルコキシシラン成分(II)の総重量100重量部に対する、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、およびフェニルトリアルコキシシランの合計量が90重量部以上である、<1>に記載のポリシロキサンの製造方法。
<3>前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液に含まれる、前記アルコキシシラン成分(I)に由来するアルコキシラン化合物、および前記アルコキシシラン成分(I)に由来する構成単位の合計量100モル%に対する、T1と、T2の合計量が25~60モル%であり、かつ、
T0の量が、1モル%未満である、<1>または<2>に記載のポリシロキサンの製造方法。
【0222】
(ここで、前記T1、または前記T2とは、それぞれ、前記ポリシロキサンマクロマーの全構成単位中の、モノオルガノトリアルコキシシランに由来し、かつ、シロキサン結合を1個または2個形成している構成単位であり、前記T0は、前記ポリシロキサンマクロマーを含む溶液に含まれる、シロキサン結合を形成していないモノオルガノトリアルコキシシランである。)
<4>さらに、(3)前記ポリシロキサンを含む溶液を加熱して、脱アルコールしたポリシロキサンを含む溶液を得る、脱アルコール工程を含む、<1>~<3>のいずれか一つに記載のポリシロキサンの製造方法。
<5>さらに、(4)前記ポリシロキサンを含む溶液を加温する、熟成工程を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリシロキサンの製造方法。
<6>前記ポリシロキサンのエポキシ当量が150~400である、<1>~<5>のいずれか一つに記載のポリシロキサンの製造方法。
<7>前記ポリシロキサンは、グリシジルオキシ基を有する構成単位、およびエポキシシクロヘキシル基を有する構成単位を含む、<1>~<6>のいずれか一つに記載のポリシロキサンの製造方法。
<8>前記ブロック構造として、グリシジルオキシ基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位として含むブロック構造と、を有する請求項8に記載のポリシロキサン。
<9>グリシジルオキシ基および/またはエポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシラン化合物を構成単位とするブロック構造を2つ以上有するポリシロキサンであって、
前記ブロック構造の構成単位の組成が、それぞれ異なるポリシロキサン。
<10><8>または<9>に記載のポリシロキサンを含む、硬化性樹脂組成物。
<11><8>または<9>に記載のポリシロキサンを含む、多液型硬化性樹脂組成物。
<12><10>に記載の硬化性樹脂組成物、または<11>に記載の多液型硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
【実施例0223】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されるものではない。
【0224】
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
【0225】
<ポリシロキサン>
(アルコキシシラン化合物)
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(略称「EC」):(信越化学株式会社製の「KBM-303」、分子量246.3)
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(略称「Ge」):(ダウ・東レ株式会社製の「OFS-6040」、分子量236.3)
メチルトリメトキシシラン(略称「Me」):(ダウ・東レ株式会社製の「OFS-6070」:、分子量136.2)
(中性塩)
塩化マグネシウム・6水和物(略称「MgCl2」)(東京化成株式会社製、分子量203.3)
(水)
純水
(有機溶剤)
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称「PMA」):(東京化成株式会社製、分子量132.2)
エタノール:(富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量46.07)
(その他の重合触媒)
リン酸:(東京化成工業株式会社製、分子量97.99)
水酸化カリウム:(富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量56.11)
<樹脂成分>
((メタ)アクリル系単量体)
メチルメタクリレート(略称「MMA」):三菱ガス化学株式会社製
ブチルアクリレート(略称「BA」):株式会社日本触媒製
(水酸基を有する単量体)
2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(略称「HPMA」):株式会社日本触媒製
(その他の単量体)
スチレン(略称「St」):三菱ケミカル株式会社製
(重合触媒)
2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル):(和光純薬工業株式会社製「V59」、分子量192.3)
(連鎖移動剤)
n-ドデシルメルカプタン:(略称「nDM」、分子量202):和光純薬工業株式会社製
t-ドデシルメルカプタン:(略称「tDM」、分子量202):和光純薬工業株式会社製
チオグリコール酸-2-エチルヘキシル:(略称「M-8」、分子量204):和光純薬工業株式会社製
n-オクチルメルカプタン:(略称「M-14」、分子量146):和光純薬工業株式会社製
<ポリイソシアネート化合物>
ヘキサメチレンジイソシアネートの平均3量体(イソシアヌレート変性体(略称「N3300」):コベストロジャパン株式会社製の「スミジュールN3300」)
<金属触媒>
アルミニウム(トリスエチルアセトアセテート)(略称「ALCH」)(川研ファインケミカル株式会社製、分子量414.4)
<その他の成分>
(安定化剤)
アセチルアセトン(略称「AcAc」):(東京化成株式会社製、分子量100.1)
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0226】
(耐傷性)
消しゴム磨耗試験機((株)光本製作所製)を用い、得られたABS上に塗装した硬化物(塗膜)に対してスチールウール#0000に500g/cm2の荷重をかけて、硬化塗膜の表面をストローク長10cmで10回往復させた後の、塗膜の光沢保持率を測定した。ここで、塗膜の光沢保持率はBYK製マイクロトリグロスによって測定した値である。以下の基準に基づき、硬化物の耐傷性を評価した:
A(合格):光沢保持率が80%以上
B(不良):光沢保持率が80%未満
(耐薬品性)
得られたABS上に塗装した硬化物(塗膜)に対して、乳酸10%水溶液を0.2g、塗膜上にスポットし、80℃に調整した熱風乾燥機にて1時間静置した。その後、塗膜の色味変化、および平滑性変化を目視にて確認し、以下の基準に基づき、硬化物の耐薬品性を評価した:
A(良好):色味変化はなく、スポット痕は残らない。また、塗膜の表面は平滑で、縮れはない
B(合格):色味変化はなく、スポット痕は薄く残るのみ。塗膜の表面は平滑で、縮れはない
C(不合格):スポット痕が僅かに白化し、また、塗膜の表面に僅かに縮れが生じる
D(不良):スポット痕が明らかに白化し、また、塗膜の表面に明らかな縮れが生じる。
【0227】
(耐湿性)
得られたABS上に塗装した硬化物(塗膜)を、80℃、95%、RHに調整した恒温恒湿機にて所定の時間静置し、外観変化を目視にて確認した。以下の基準に基づき、塗膜の耐久性を評価した:
A(良好):500時間静置後に外観変化がない
B(合格):500時間静置後に、硬化物が微白化(軽度)、ブリード物は発生しない
C(不合格):500時間静置後に、硬化物が白化(重度)、オイル上のブリード物が発生、または硬化物の表面にクラックが発生する。
D(不良):クラック、縮れ、剥がれなど、白化以外の著しい外観変化を生じている
(耐候性)
得られたABS上に塗装した硬化物(塗膜)を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、サンシャインウェザーメーターS80)にて、ブラックパネル温度63℃の条件に200時間曝露した。曝露後の塗膜の外観を、色彩色差計(株式会社北浜製作所製、CR400)を用いた色差ΔE(曝露前の塗膜と、曝露後の塗膜との色差ΔE)、及び目視により測定、確認し、以下の基準に基づき塗膜の外観変化を評価した。なお、ΔEは、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表色系によって測定される値であり、下記式により算出される値である:
ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb2)1/2
式中、L*は明度であり、a*とb*は、色度である。
A(良好):ΔE<2、かつ目視で著しい外観変化がない
B(不合格):2≦ΔE、かつ目視で著しい外観変化がない
C(不良):2≦ΔE、かつ目視でクラック、縮れ、剥がれなど著しい変化が認められる。 〔実施例1〕
(合成例1:ポリシロキサンの作製)
2Lの4口フラスコにアルコキシシラン成分(I)として、Me0.14g、および、EC47.02gと、MgCl2を0.038gと、純水26.91gと(全アルコキシシリル基に対して62.5モル%)、メタノ―ル15.89gと、を入れ、90℃に設定したオイルバスで加熱し、2時間反応させ、ECを主要な構成単位とするポリシロキサンマクロマーを含む溶液を得た(1段目の重合工程)。表2に示すように、29Si-NMRの測定結果より、1段目の重合工程で得られたポリシロキサンマクロマーを含む溶液におけるT1は10.2モル%であり、T2は、30.5モル%であった。また、T0は、0.1%であった。
【0228】
得られたポリシロキサンマクロマーを含む溶液が入った上記4口フラスコ内に、追加でアルコキシシラン成分(II)として、Me0.14g、および、Ge142.92gと、メタノール0.28gと、を入れ、更に4時間反応させ、ポリシロキサンを含む溶液を得た(2段目の重合工程)。
【0229】
反応系にPMA54.44g追加し、140℃に設定温度を変更したオイルバスを用いて、2時間常圧蒸留を行い、発生したメタノール、および残存水を合計で93.33g除去した(脱アルコール工程)。さらに、前記オイルバス(脱アルコール工程後のオイルバス)を、140℃で維持した状態で2時間加温した(熟成工程)。
【0230】
その後、反応系に安定化剤としてAcAcを4.2g加え、SC調整のためにPMAを1.36g加えることで、約200gのポリシロキサンを含む溶液を得た。得られた溶液中の、ポリシロキサンのSC(固形分)は、70%であり、重量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は7200であり、29Si-NMRの測定結果よりT1/T2/T3は7/32/61の比率で、T3の量(T3/(Q1+Q2+Q3+Q4+T1+T2+T3+D1+D2+M1)×100)は59モル%であり、縮合度は84.5%であった。なお、SCは、得られたポリシロキサンを含む溶液の全量を105℃に加熱した際に、揮発しなかった成分(固形分)が、前記ポリシロキサンを含む溶液の全量に対して占める重量割合を示すものである。上記の1段目の重合工程、2段目の重合工程、および脱アルコール工程において使用した各成分の種類および量、ならびに、ポリシロキサン(またはポリシロキサンマクロマー)を含む溶液の各物性を表1に示す。
【0231】
【0232】
(硬化性樹脂組成物の作製)
表2に記載の配合に沿って、作製したポリシロキサンと、金属触媒であるALCHと、溶剤であるPMAと、を225mlマヨネーズビンに、順番で添加し、マグネチックスターラーを用いて5分間混合し、NV値(Nonvolatile content)が45重量%となるように硬化性樹脂組成物を作製した。なお、NV値とは、乾燥前(硬化前)の硬化性樹脂組成物100重量%に対する、乾燥後の硬化物(塗膜)の重量の割合(重量%)を意図する。
【0233】
(硬化物(塗膜)の作製)
作製した硬化性樹脂組成物を、50×150×2mmのABS基材上に、40番バーコーターで塗装し、80℃に設定した熱風乾燥機内に30分間入れることで溶剤の除去、および塗装した硬化性樹脂組成物の硬化を実施し、ドライで約0.030mm厚の硬化物(塗膜)を得た。さらに、得られた硬化物について、耐傷性、耐薬品性、耐湿性および耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0234】
〔実施例2、比較例1~5〕
各成分の添加量、および種類を表1および表2に記載の量に変更し、かつ、比較例1~3においては、2段目の重合工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様に、ポリシロキサンを作成し(合成例2~7)、当該ポリシロキサンを用いて、硬化性樹脂組成物、および硬化物を作製し、各物性を測定、評価した。結果を表2に示す。
【0235】
【0236】
〔結果〕
表2より、実施例1のポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、耐候性に優れることが示された。すなわち、本発明の一実施形態によって製造されるポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物は、耐候性に優れる硬化物を提供できることが示された。さらに、実施例1のポリシロキサンは、耐傷性、耐薬品性、耐湿性等の物性にも優れる硬化物を提供し得る、硬化性樹脂組成物を提供できることが示された。
【0237】
一方、表2より、比較例1~5のポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の耐候性が不良となっている。すなわち、本発明の構成を満たさない場合、得られるポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、耐候性が不良となることが示された。特に、比較例4~5より、2段階の重合工程を行った場合であっても、中性塩を使用しない場合は、得られるポリシロキサンを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、耐候性が不良となることが示された。