(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191039
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】見積推定装置、見積推定方法および見積推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20120101AFI20221220BHJP
【FI】
G06Q30/06 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099649
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彭 飛
(72)【発明者】
【氏名】浅野 豊
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 達也
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏喜
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB22
(57)【要約】
【課題】異常な見積を容易に把握することができる見積推定装置を提供する。
【解決手段】実施形態の見積推定装置は、見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータと、見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータと、見積回答の見積単価とを学習データとし、ニューラルネットワークを用いて推定モデルを生成する推定モデル生成部と、推定モデル生成部が生成した推定モデルを用いて、製品/部品の単価を推定する推定部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータと、前記見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータと、前記見積回答の見積単価とを学習データとし、ニューラルネットワークを用いて推定モデルを生成する推定モデル生成部と、
前記推定モデル生成部が生成した前記推定モデルを用いて、製品/部品の単価を推定する推定部と、
を有する、見積推定装置。
【請求項2】
前記見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータは、前記見積単価の算出に直接関係する項目の項目名、および、前記見積単価の算出に直接関係する項目の項目名に対応する入力データを含み、
前記見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータは、前記見積単価の算出に直接関係しない項目の項目名、および、前記見積単価の算出に直接関係しない項目の項目名に対応する入力データを含む、請求項1に記載の見積推定装置。
【請求項3】
前記見積単価の算出に直接関係する項目の項目名、前記見積単価の算出に直接関係しない項目の項目名、および、前記見積単価の算出に直接関係しない項目の項目名に対応する入力データを数値化する前処理を行う分析部を有する、請求項2に記載の見積推定装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記推定部により推定された単価と、前記見積回答の見積単価との関係を示す分析レポートを生成して表示装置に表示する請求項3に記載の見積推定装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記推定モデル生成部が前記推定モデルを生成する際に前記単価を推定するのにどの程度の影響を与えているかを示す重要度係数を算出する請求項3に記載の見積推定装置。
【請求項6】
前記分析部は、前記重要度係数の高い項目の類似度及び/又は前記重要度係数の類似度によって前記製品/部品に類似した類似品を検索する請求項5に記載の見積推定装置。
【請求項7】
前記推定モデル生成部は、前記推定モデルを生成するときに前記単価を推定する際の根拠となる項目を選出し、選出した項目についてそれぞれ標準単価を算出する請求項1に記載の見積推定装置。
【請求項8】
前記推定モデル生成部は、前記製品/部品毎に前記推定モデルを生成し、生成した複数の推定モデルを推定モデル群として記憶装置に記憶する請求項1に記載の見積推定装置。
【請求項9】
見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータと、前記見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータと、前記見積回答の見積単価とを学習データとし、ニューラルネットワークを用いて推定モデルを生成し、
生成した前記推定モデルを用いて、製品/部品の単価を推定する、
見積推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータと、前記見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータと、前記見積回答の見積単価とを学習データとし、ニューラルネットワークを用いて推定モデルを生成するステップと、
生成した前記推定モデルを用いて、製品/部品の単価を推定するステップと、
を実行させるための見積推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、見積推定装置、見積推定方法および見積推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サプライチェーン管理(SCM)システムが広く利用されている。サプライチェーンは、部品の調達などの流れを1つの供給のチェーンとして捉えたものである。サプライチェーンでは、購買者(バイヤー)と販売者(サプライヤー)の関係が規定される。SCMシステムは、サプライチェーンにおける部品などの製品の供給を管理する。
【0003】
バイヤーはSCMシステムを利用してサプライヤーに部品などの見積依頼を行うと、サプライヤーはSCMシステムを利用して見積回答をバイヤーに送付する。
【0004】
しかしながら、バイヤーがサプライヤーから大量の見積を一気に取得した場合、全ての見積を完璧に精査することができず、異常な見積を見逃す可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、異常な見積を容易に把握することができる見積推定装置、見積推定方法および見積推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の見積推定装置は、見積回答の見積単価の算出に直接関係するデータと、見積回答の見積単価の算出に直接関係しないデータと、見積回答の見積単価とを学習データとし、ニューラルネットワークを用いて推定モデルを生成する推定モデル生成部と、推定モデル生成部が生成した推定モデルを用いて、製品/部品の単価を推定する推定部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態のサプライチェーン管理システムの構成の一例を示す構成図である。
【
図2】サプライチェーンを説明するための模式図である。
【
図3】サーバにおいて実行されるプログラム及びデータの構成を示すブロック図である。
【
図4】サプライヤーからバイヤーに送付される見積回答の一例を示す図である。
【
図5】見積回答の見積内訳の項目からニューラルネットワークに入力する入力項目の一例を示す図である。
【
図6】推定モデルの生成処理および類似品検索処理の流れの一例を説明するための図である。
【
図7】ニューラルネットワークの構成例を示す図である。
【
図8】推定モデルの生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】見積単価の推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】見積単価と推定単価との関係を示す分析レポートの一例を示す図である。
【
図11】見積内訳の項目の重要度の一例を示す図である。
【
図12】重要度を用いて類似品を検索する際の類似品検索画面の一例を示す図である。
【
図13】重要度を用いた類似品検索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、一実施形態のサプライチェーン管理システムの構成の一例を示す構成図である。サプライチェーン管理システム1は、見積管理装置としてのサーバ2と、複数のバイヤー用の複数の端末3と、複数のサプライヤー用の複数の端末4と、通信用のネットワーク5を含む。
【0010】
サーバ2と複数の端末3,4は、ネットワーク5を介して互いに通信可能に接続されている。ネットワーク5は、ここではインターネットである。各端末3,4は、入力装置と、表示装置3aとを有する。入力装置は、キーボード、マウスなどであり、表示装置3aは、モニタである。なお、
図1では、1つの端末3にのみ表示装置3aを示している。
【0011】
サーバ2は、プロセッサ11と記憶装置12を有する。記憶装置12は、後述するサプライチェーン管理システムのための各種ソフトウエアプログラムを記憶すると共に、各種情報を記憶する。
【0012】
プロセッサ11が、記憶装置12から見積推定プログラムなどの必要なプログラムを読み出し実行することにより、サプライチェーン管理システムの各種機能、及び後述する見積査定や見積結果の表示のための機能が実現される。
【0013】
サプライチェーン管理システム1は、複数のバイヤーと複数のサプライヤーが、各々の購入あるいは供給する部品などの製品のサプライチェーンを管理するためのシステムである。そして、後述するように、サーバ2は、ネットワーク5を介する端末3,4からの要求に応じて、ネットワーク5を介してサプライチェーンリスク情報を端末3,4へ送信することができる。
【0014】
各バイヤーは、サプライチェーン管理システム1を利用して、自己のサプライチェーンの管理を行うことができる。そのため、各バイヤーは、自己の端末3から、サーバ2にアクセスして、自己のサプライチェーン情報を登録することができる。各バイヤーは、自己のサプライチェーン情報を全て登録してもよいし、各サプライヤーが自己のサプライチェーン情報を登録してもよいし、一次サプライヤーが、二次以降のサプライヤー情報を登録してもよい。
【0015】
また、各バイヤーは、自己の端末3から、サーバ2にアクセスして、各サプライヤーについての情報(取引先基本情報(取引先リスク情報RIを含む))を登録することができる。
【0016】
各バイヤー及び各サプライヤーは、自己の端末3,4を利用して、ネットワーク5経由でサーバ2へアクセスすると、ブラウザを利用した画面により、データの入力、表示、出力をすることができる。なお、各端末3,4からサーバ2へのアクセスは、各種認証を経て可能となる。
【0017】
図2は、サプライチェーンを説明するための模式図である。
図2は、部品X,Yについてのサプライチェーンの例を示す。
図2は、あるバイヤーが、部品Xを、サプライヤーAから購入し、部品Yを、サプライヤーDから購入して、自社の製品を製造販売としている場合を示している。この場合、サプライヤーA、Dは、それぞれ部品X、Yの一次サプライヤーである。
【0018】
しかし、サプライヤーA、Dは、それぞれ、部品X,Yを製造し販売するために、サプライヤーB,Eから部品x1,y1を購入している。さらに、サプライヤーB,Eは、それぞれ、部品x1,y1を製造し販売するために、サプライヤーC,Fから部品x2,y2を購入している。さらに、サプライヤーC,Fは、それぞれ、部品x2,y2を製造し販売するために、他のサプライヤーから部品x3,y3を購入している。すなわち、サプライチェーンは、複数の階層を含む。よって、各サプライヤーは、バイヤーでもあり得る。
【0019】
なお、
図2において点線で示すように、サプライチェーンは、複数のサプライヤーに分岐する場合もある。例えば、バイヤーは、部品Xに関し、2つのサプライヤーから部品の供給を受けている場合もあり得るし、サプライヤーDも、2つのサプライヤーから部品の供給を受けている場合もあり得る。
【0020】
図3は、サーバにおいて実行されるプログラム及びデータの構成を示すブロック図である。サーバ2は、SRM(Supplier Relationship Management)によるバイヤーとサプライヤー間の業務を管理するソフトウエアプログラムを有する。サプライチェーン管理システム1は、SRMのためのソフトウエアプログラムを記憶装置12に格納している。
【0021】
図3では、サプライチェーン管理におけるSRMのための、調達分析部PA、BCP(ビジネス継続プランニング)管理部、汎用文書交換部、電子見積部、ワークフロー管理部、ドキュメント管理部、取引先基本情報部、推定モデル生成部MG、推定部EPが示されているが、他にも各種処理部を有する。さらに、サプライチェーン管理システム1へのアクセス管理のためのポータルプログラムも有している。
図3において、バイヤー用ポータルは、バイヤーがサーバ2にアクセスするための処理部であり、各種認証処理を行う。適切に認証されると、バイヤーは、サーバ2を使用することができる。サプライヤー用ポータルは、サプライヤーがサーバ2にアクセスするための処理部であり、各種認証処理を行う。適切に認証されると、サプライヤーは、サーバ2を使用することができる。
【0022】
調達分析部PA、BCP管理部等は、ソフトウエアプログラムとして記憶装置12に記憶され、必要なときに読み出されて、プロセッサ11により実行可能となっている。
【0023】
調達分析部PAは、各バイヤーについての、サプライヤーへの調達に関する分析を行う。調達分析部PAは、例えば、見積履歴情報ERIに基づき、自己に関わる各サプライヤーに関する見積件数、見積結果、各種評価などの分析レポートを生成することができる。
【0024】
BCP管理部は、サプライチェーンを構成する各サプライヤーの拠点の緯度/経度の情報を収集し、災害などの有事の際に影響範囲内に存在する拠点の特定などを行う。
【0025】
汎用文書交換部は、バイヤーとサプライヤー間で文書交換を行う。
【0026】
電子見積部は、サプライヤーへの見積依頼とサプライヤーからの見積回答の管理を行う。バイヤーは、電子見積部を用いて、1以上のサプライヤーへ製品/部品の見積依頼をすることができる。見積依頼は、その1以上のサプライヤーへ送信され、サプライヤーは、バイヤーへ見積回答を送信できる。
【0027】
ワークフロー管理部は、バイヤーとサプライヤー間での各種処理のワークフロー管理を行う。
【0028】
ドキュメント管理部は、バイヤーが作成したドキュメント、サプライヤーから受信したドキュメントなどの管理を行う。
【0029】
取引先基本情報部は、一次サプライヤーなどについての基本的な情報(資本金、社長、取引先リスク情報RI、等々)を、取引先情報BAIとして、記憶装置12に登録し管理する。バイヤーが全てのサプライヤーについての情報を登録できない場合、一次サプライヤーが、二次以下のサプライヤーについての基本的な情報を登録できるようにしてもよい。
【0030】
取引先情報に含まれる取引先リスク情報RIは、サプライヤーにおける災害対策などについての数値化されたリスク度rを含む。リスク度rは、所定の評価基準に基づいて数値化された値である。例えば、リスク度rは、4段階のレベルを有する。レベル1は、最もリスク度rが低く、例えば、災害対策が十分にとられている、製品在庫が十分に確保されている場合である。レベル4は、最もリスク度rが高く、例えば、災害対策が不十分な場合である。例えば、バイヤーが、各サプライヤーにヒアリングして、所定の評価基準に基づいてレベルを決定する。例えば、二次以下のサプライヤーのリスク度rは、一次サプライヤーが決定する。
【0031】
推定モデル生成部MGは、見積履歴情報ERI等の見積回答を読み込んでディープラーニングにより学習して、推定モデルを生成する。推定モデル生成部MGは、製品/部品や加工の種類、例えば樹脂成型加工、切削加工、組立加工毎にディープラーニングによる学習を行って、推定モデルを生成する。推定モデル生成部MGは、生成した複数の推定モデルを推定モデル群Mとして記憶装置12に記憶する。
【0032】
推定部EPは、サプライヤーがバイヤーからの見積依頼に基づき新たな見積回答を送付すると、見積回答を推定モデル群Mの対応する製品/部品の推定モデルに入力して、製品/部品の単価を推定する。推定部EPは、見積回答に記載されている見積単価と、AIにより推定された推定単価との差分を算出し、算出結果を表示装置3aに表示することができる。
【0033】
サーバ2の記憶装置12には、ソフトウエアプログラム以外に、各種情報も記憶されている。
図3では、取引先情報BAI、サプライチェーン情報SCI、見積履歴情報ERI、推定モデル群Mのみが示されている。
【0034】
取引先情報BAIは、上述したように一次サプライヤーなどについての基本的な情報(資本金、社長、取引先リスク情報RI、等々である。
【0035】
サプライチェーン情報SCIは、サプライチェーンにおける納入品(部品、製品など)毎の、一次サプライヤー、二次サプライヤー、三次サプライヤーなどの拠点情報である。一次サプライヤー、二次サプライヤー、三次サプライヤーなどの拠点情報が、登録されている。各拠点情報は、拠点名と位置情報を含む。各拠点は、下請け会社などの工場のある場所である。位置情報は、緯度/経度の情報を含む。二次サプライヤー、三次サプライヤーなどについての拠点情報は、一次サプライヤーにより登録される。
【0036】
見積履歴情報ERIは、見積依頼、見積回答、見積結果などの情報である。推定モデル群Mは、推定モデル生成部MGによって生成された複数の推定モデルの情報を含む。
【0037】
図4は、サプライヤーからバイヤーに送付される見積回答の一例を示す図である。
バイヤーが電子見積部を経由してサプライヤーに見積依頼を行うと、サプライヤーが
図4の見積回答Eを記入後、電子見積部を経由してバイヤーに送付する。バイヤーは、見積回答Eの精査を行い、製品/部品の見積単価(見積金額)に異常がないかを確認する。
【0038】
見積回答Eは、成型品に関する見積であり、材料費、着色費、成型加工費等の記入欄を含む。なお、見積回答Eは、材料費、着色費、成型加工費の記入欄だけではなく、材料メーカー等の項目を含む材料情報、管理費利益等の項目を含む単価明細等の図示していない記入欄を有する。
【0039】
材料費の項目は、素材コード、素材名称、仕様、数量(g)、素材単価、ロス(%)を含む。また、着色費の項目は、着色材、倍率、素材名称、数量(g)、着色単価、ロス(%)を含む。成型加工費の項目は、成型機サイズ、数量、機種単価/日、ショット数(回/日)、ロス(%)を含む。
【0040】
材料費の項目のうち、数値データが入力され、見積単価の算出に直接関係する項目は、項目A1の数量(g)、項目A2の素材単価、項目A3のロス(%)である。一方、材料費の項目のうち、数値データが入力されず、見積単価の算出に直接関係しない項目は、項目B1の素材コード、項目B2の素材名称、項目B3の仕様である。
【0041】
また、着色費の項目のうち、見積単価の算出に直接関係する項目は、数量(g)、着色単価、ロス(%)であり、見積単価の算出に直接関係しない項目は、着色材、倍率、素材名称である。さらに、成型加工費の項目のうち、見積単価の算出に直接関係する項目は、成型機サイズ、数量、機種単価/日、ショット数(回/日)、ロス(%)であり、見積単価の算出に直接関係しない項目はない。
【0042】
図5は、見積回答の見積内訳の項目からニューラルネットワークに入力する入力項目の一例を示す図である。
図5において、項目Aは見積回答Eの項目A1、A2、A3等の数値データが入力される項目名であり、項目Bは見積回答Eの項目B1、B2、B3等の非数値データ(プルダウンデータ)が入力される項目名である。すなわち、項目Aは、見積単価の算出に直接関係する「数量(g)」、「素材単価」及び「ロス(%)」等の数値データが入力される項目名であり、項目Bは、見積単価の算出に直接関係しない「素材コード」、「素材名称」及び「仕様」等の非数値データが入力される項目名である。項目Aの項目名および項目名に対応する数値データと、項目Bの項目名および項目名に対応する非数値データが後述するニューラルネットワークNNの入力層に与えられる。
【0043】
一般的に、
図4の見積回答Eから推定モデルを生成する場合、ニューラルネットワークNNに対して、見積単価の算出に直接関係するデータ(項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ))を入力層に与え、見積回答に記載されている見積単価を出力層に与える。なお、項目Aの項目名は、非数値データであるため、数値化するための前処理を行う。
【0044】
これに対し、本実施形態では、見積単価の算出に直接関係するデータ(項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ))に加え、見積単価の算出に直接関係しないデータ(項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(非数値データ))を用いて推定モデルを生成する。具体的には、ニューラルネットワークに対して、見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(第1のデータセット)と、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(第2のデータセット)とを入力層に与え、見積単価を出力層に与えることで推定モデルを生成する。なお、項目Aの項目名、項目Bの項目名、および、項目Bの項目名に対応する入力データは、非数値データであるため、数値化するための前処理を行う。
【0045】
図6は、推定モデルの生成処理および類似品検索処理の流れの一例を説明するための図である。
調達分析部PAは、見積履歴情報ERIを読み込んで学習データの前処理を行う。具体的には、調達分析部PAは、見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する数値データを抽出するとともに、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する非数値データを抽出する。そして、調達分析部PAは、非数値データである項目Aの項目名、項目Bの項目名、および、項目Bの項目名に対応する入力データを数値化する前処理を行う。推定モデル生成部MGは、数値データである項目Aの項目名に対応するデータと、前処理によって数値データに変換された項目Aの項目名、項目Bの項目名、および、項目Bの項目名に対応するデータとを入力層に与え、見積単価を出力層に与えて学習処理を行い、推定モデルを生成する。
【0046】
調達分析部PAは、見積履歴情報ERIに基づき、
図10に示す分析レポートを生成する。また、調達分析部PAは、推定モデル生成部MGが推定モデルを生成する際に後述する
図11に示す重要度の項目および重要度係数を取得する。調達分析部PAは、重要度係数の高い項目の類似度や重要度係数の類似度によって類似品を検索することができる。
【0047】
図7は、ニューラルネットワークの構成例を示す図である。推定モデル群Mを構成する推定モデルは、
図7に示すニューラルネットワークNNを用いて生成される。
【0048】
ニューラルネットワークNNは、入力層31と、隠れ層32と、出力層33を有している。
図7では、入力層31は、見積内訳項目のうち、見積単価に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応するデータと、見積単価に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応するデータの要素数分だけ、丸で示す入力ユニット31aを有している。
【0049】
入力層31には、見積内訳の項目のうち、見積単価に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応するデータと、見積単価に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応するデータが入力される。
【0050】
隠れ層32は、複数の隠れ層32aを含む多層構造を有する。
出力層33は、1つの出力ユニット33aを有し、1つの出力ユニット33aに見積内訳項目の見積単価が与えられ、推定モデルが生成される。推定モデルは、製品/部品毎に生成され、生成された複数の推定モデルが推定モデル群として記憶装置12に記憶される。
【0051】
図8は、推定モデルの生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
調達分析部PAが見積履歴情報ERIを読み込む(S1)。調達分析部PAが見積履歴情報ERIの見積回答Eから学習データの前処理を行う(S2)。前処理では、上述したように、非数値データである項目Aの項目名、項目Bの項目名、および、項目Bの項目名に対応する入力データを数値化する処理が行われる。
【0052】
次に、推定モデル生成部MGがディープラーニングにより、見積内訳の項目を学習して推定モデルを生成する(S3)。見積内訳の項目は、見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ)、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(非数値データ)、及び、見積回答Eに記載されている見積単価である。推定モデル生成部MGが推定モデルを記憶装置12に保存し(S4)、処理を終了する。
【0053】
図9は、見積単価の推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
推定部EPが見積回答Eを推定モデルに入力する(S11)。具体的には、推定部EPは、見積回答Eの見積内訳の項目のうち、見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ)と、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(非数値データ)とを推定モデルに入力する。上述したように、項目Aの項目名、項目Bの項目名、および、項目Bの項目名に対応する入力データは、非数値データであるため、数値化するための前処理を行う。なお、前処理は、調達分析部PAによって行われる。推定部EPが製品または部品の見積単価を推定し(S12)、処理を終了する。見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ)と、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(非数値データ)とを推定モデルに入力することで、推定モデルによって推定された見積単価(推定単価)が推定部EPから出力される。このように推定された推定単価は調達分析部PAによる分析レポートの生成に用いられる。
【0054】
以上のように、推定モデル生成部MGは、見積単価の算出に直接関係する項目Aの項目名および項目名に対応する入力データ(数値データ)と、見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ(非数値データ)とを用いて推定モデルを生成する。
【0055】
そして、推定部EPは、新たな見積回答Eが入力された際に、このように生成された推定モデルを用いて見積単価を推定する。この結果、推定部EPではベテランのバイヤーでなければ見逃すような項目(見積単価の算出に直接関係しない項目Bの項目名および項目名に対応する入力データ)も考慮した見積単価を推定することができるため、バイヤーは異常な見積を容易に把握することができる。
【0056】
図10は、見積単価と推定単価との関係を示す分析レポートの一例を示す図である。
図10において、横軸は推定モデルによって推定された推定単価を示し、縦軸は見積回答Eで見積された見積単価を示している。調達分析部PAは、見積単価と推定部EPが推定モデルを用いて推定した推定単価とに基づいて分析レポートを生成することができる。具体的には、
図10に示すように、見積回答Eの見積単価と、推定モデルによって得られた推定単価との関係をマーカーMKによって表示する。
【0057】
直線Lは推定単価と見積単価とが同じ点を結んだ線となっている。直線Lの上側のマーカーMKは、推定単価よりも見積単価が高いことを示し、直線Lの下側のマーカーMKは、推定単価よりも見積単価が低いことを示している。すなわち、直線LからマーカーMKまでの距離が離れているほど、推定単価と見積単価とに大きな差異があることを示している。バイヤーは、直線Lから距離が大きく離れているマーカーMKを入力装置等により選択すると、推定単価と見積単価とに大きな差異がある異常な見積回答Eを表示装置3aに表示することができる。
【0058】
分析レポートの優先コストダウン領域は、単価が高い製品/部品であり、かつ、見積単価が推定単価より高くなっている領域である。そのため、優先コストダウン領域の製品/部品の単価を優先的に下げることで大きなコストダウンを図ることができる。
【0059】
また、改善施策検討領域は、見積単価が推定単価より低くなっているため、サプライヤーがコストダウンためのノウハウを有していると推定できる領域である。このようなノウハウを優先コストダウン領域の製品/部品に適用することで、継続的なコストダウンを図ることができる。
【0060】
さらに、自動化領域は、製品/部品の単価が低く、かつ、見積単価が推定単価より低くなっているため、見積回答Eのチェックを人によって行わずに、自動的にその製品/部品を採用する領域である。
【0061】
図11は、見積内訳の項目の重要度の一例を示す図である。
推定モデル生成部MGが推定モデルを生成する際に、どの項目(変数)が見積価格の推定にどの程度の影響を与えているかを示す重要度(重要度係数)を算出する。
図11に示すように、調達分析部PAは、推定モデル生成部MGにより算出された重要度(重要度係数)が大きい、例えば15個の項目を表示装置3aに表示する。この結果、推定単価を算出する際に寄与する上位15個の重要な項目(変数)が表示装置3aに表示される。
【0062】
バイヤーは製品/部品の単価に寄与する重要度の高い項目(変数)を把握することができ、バイヤーが見積回答Eを査定する際にどの項目を重点的に確認すればよいかの手助けとなる。また、バイヤーは製品/部品の単価に寄与する重要度の高い項目(変数)を把握することで、価格交渉に役立つ情報を得ることができ、継続的なコストダウンを図ることができる。
【0063】
また、調達分析部PAは、推定モデル生成部MGによって算出された重要度(重要度係数)を用いて、過去に見積を行った見積履歴情報ERIから類似品を検索することができる。
【0064】
図12は、重要度を用いて類似品を検索する際の類似品検索画面の一例を示す図である。
類似品検索画面40は、重要度係数A、B及びCが入力(選択)される入力欄41、42及び43を有する。重要度係数A、B及びCの順番は、重要度の高い順番となっている。また、類似品検索画面40は、重要度係数Aの上限値が入力される入力欄44、重要度係数Aの下限値が入力される入力欄45を有する。重要度係数Aが入力(選択)される入力欄41には、重要度係数を選択するための選択ボタン46が設けられている。重要度係数BおよびCについても同様の構成となっている。
【0065】
ユーザが入力装置等を用いて選択ボタン46を押下すると、重要度係数の一覧が表示される。ユーザは、表示された重要度係数の一覧から所望の重要度係数を選択することができる。また、ユーザは、選択した重要度係数Aの上限値を入力欄44、下限値を入力欄45に入力することができる。
図12の例では、重要度係数Aとして、[材料費]数量(g)が選択され、上限値として24、下限値として12が入力されている。
【0066】
また、類似品検索画面40は、検索ボタン47を有する。ユーザは重要度係数A、B、Cを選択し、各係数の上限値および下限値を入力した後、検索ボタン47を押下することで、過去に見積を行った見積履歴情報ERIから類似品を検索することができる。
【0067】
なお、選択される重要度係数は、重要度係数A、B及びCの3つに限定されることなく、1つ、2つ、あるいは、4つ以上であってもよい。また、選択された重要度係数の上限値および下限値は、両方入力される必要はなく、いずれか一方であってもよい。また、選択された重要度係数が非数値データの項目Bであった場合、上限値および下限値が入力される必要はない。
【0068】
ユーザは、類似品検索画面40を用いて、重要度(係数)の順番、各係数の上限値および下限値による範囲を任意に設定することで、検索条件を調整しながら過去に見積を行った見積履歴情報ERIから類似品を検索することができる。
【0069】
図13は、重要度を用いた類似品検索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
調達分析部PAは、推定モデル生成部MGにより算出された重要度の高い項目及び重要度係数を取得する(S21)。調達分析部PAは、見積履歴情報ERIとして記憶されている過去の見積回答Eから、類似品検索画面40で設定された重要度の高い項目の順番、及び、重要度係数が近い見積回答Eを抽出する(S22)。調達分析部PAは、抽出した見積回答Eの製品/部品を類似品として表示装置3aに出力し(S23)、処理を終了する。
【0070】
以上の処理により、バイヤーは、あるサプライヤーからある製品/部品の見積回答Eを受けた際に過去の類似品を検索し、その類似品を提供している別のサプライヤーにある製品/部品の見積依頼を行うことで、複数のサプライヤーで見積単価を比較することができる。また、バイヤーは、見積回答Eの見積単価と過去の類似品の見積単価とを容易に比較することができ、異常な見積を把握することができる。
【0071】
図14は、標準単価テーブルの一例を示す図である。推定モデル生成部MGは、ニューラルネットワークNNにより見積内訳の項目を学習して推定モデルを生成するときに、見積単価を推定する際の根拠となる項目を選出し、選出した項目についてそれぞれ標準単価を算出する。算出された標準単価は、
図13に示すように、見積内訳名称、項目名称、単位/基準条件、及び、通貨と対応付けられ、標準単価テーブルとして記憶装置12に記憶される。
【0072】
バイヤーは、標準単価テーブルを参照することで、見積単価に直接関係しない項目Bの標準単価を得ることができるため、見積回答Eの見積単価に異常がないかを把握することができる。
【0073】
なお、本明細書におけるフローチャート中の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。
【0074】
発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…サプライチェーン管理システム、2…サーバ、3,4…端末、3a…表示装置、5…ネットワーク、11…プロセッサ、12…記憶装置、31…入力層、31a…入力ユニット、32,32a…隠れ層、33…出力層、33a…出力ユニット、40…類似品検索画面、41,42,43,44,45…入力欄、46…選択ボタン、47…検索ボタン。