(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019104
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】トータルステーションの保護装置および開口部形成方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
G01C15/00 105Z
G01C15/00 103Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122693
(22)【出願日】2020-07-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】514018238
【氏名又は名称】株式会社きんそく
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】奥野 勝司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲二
(72)【発明者】
【氏名】田中 達
(57)【要約】
【課題】安価に構成しながらも風雨などの天候の影響から保護することができるトータルステーションの保護装置を提供する。
【解決手段】所定の基台40に設置され、鉛直回転および水平回転可能な視準用望遠鏡5を備えたトータルステーション10の保護装置であって、前記トータルステーションを覆い、前記視準用望遠鏡と一体に水平回転する第1の保護ケース20と、前記第1の保護ケースを覆い、前記トータルステーションに対して位置固定される第2の保護ケース30と、を備え、前記第1の保護ケースは、前記視準用望遠鏡の鉛直回転時の視準軸の軌跡に沿って形成された第1の開口部22を備え、前記第2の保護ケースは、予め設定された視準方向における前記視準用望遠鏡の視準軸との交差点に形成された第2の開口部32を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基台に設置され、鉛直回転および水平回転可能な視準用望遠鏡を備えたトータルステーションの保護装置であって、
前記トータルステーションを覆い、前記視準用望遠鏡と一体に水平回転する第1の保護ケースと、
前記第1の保護ケースを覆い、前記トータルステーションに対して位置固定される第2の保護ケースと、
を備え、
前記第1の保護ケースは、前記視準用望遠鏡の鉛直回転時の視準軸の軌跡に沿って形成された第1の開口部を備え、
前記第2の保護ケースは、予め設定された視準方向における前記視準用望遠鏡の視準軸との交差点に形成された第2の開口部を備えているトータルステーションの保護装置。
【請求項2】
前記トータルステーションに対して前記第2の保護ケースを位置決めするための位置決め機構を備えている請求項1記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項3】
前記第1の開口部は、所定の鉛直回転角度範囲に形成されたスリットで構成されている請求項1または2記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項4】
前記第1の保護ケースは、前記トータルステーションの本体ケースの一部に固定されたブラケットを介して前記トータルステーションに固定されている請求項1から3の何れかに記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項5】
前記第2の保護ケースは、前記基台と物理的に切り離された第2の基台に固定されている請求項1から4の何れかに記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項6】
前記第2の保護ケースに固定用のベルトを支持するベルト支持部が形成されている請求項1から5の何れかに記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項7】
前記第1の保護ケースまたは前記第2の保護ケースの内側に断熱層が形成されている請求項1から6の何れかに記載のトータルステーションの保護装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載のトータルステーションの保護装置に用いられる前記第2の保護ケースへ前記第2の開口部を形成する開口部形成方法であって、
前記トータルステーションに対して前記第2の保護ケースを位置決め配置する位置決めステップと、
前記視準用望遠鏡を所定の視準方向に調整して測定光を出射し、前記第2の保護ケースに対する測定光の照射位置をマーキングするマーキングステップと、
前記マーキングステップでマーキングした位置を削孔する削孔ステップと、
を備えている開口部形成方法。
【請求項9】
仮のトータルステーションを用いて前記位置決めステップから前記削孔ステップを実行し、
前記削孔ステップで削孔された前記第2の保護ケースを、真のトータルステーションに対して位置決め配置する実装ステップと、
を備えている請求項8記載の開口部形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トータルステーションの保護装置および開口部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地山、法面、野外構造物などに対する変位測量に際して、風雨などの天候の影響からトータルステーションを保護する必要がある。
【0003】
特許文献1には、三脚に取り付けられる測量機の雨よけ・日よけ装置であって、中央に穴を有する円形板と、当該円形板の円周部と組み合わされ前記円形板に対して旋回可能なリング状部材と、当該リング状部材に立設される雨よけ・日よけ部材と、を備え、前記円形板が三脚上部の測量機取付座と測量機下部の取付部との間に配置された状態で測量機が三脚に固定されることで前記円形板が三脚に固定され、前記リング状部材と雨よけ・日よけ部材が前記円形板に組み付けられることで、前記雨よけ・日よけ部材が測量機の上方を覆うと共に、前記リング状部材と雨よけ・日よけ部材とが三脚に対して旋回可能なことを特徴とする測量機の雨よけ・日よけ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した雨よけ・日よけ装置は、測量者が測量機を用いて測量する際に、雨に濡れることで測量機が故障するのを回避し、或いは強い日差しによる測量機の温度上昇に起因して測定精度が低下するのを回避するために、測量機の上部に傘状の雨よけ・日よけ部材を取り付ける構成であり、継続的に無人で変位測量する場合に用いることが想定されておらず、横殴りの雨や、強風に対応できるような構成ではなかった。
【0006】
風雨を避けるために、測量機の周囲を透明な樹脂板で囲繞すると、測定光が樹脂板で屈折して、正確な測量データが得られなくなる虞があり、また、測量の度に樹脂板を開閉するような機構を設けるとコストが嵩むことになる。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、安価に構成しながらも風雨などの天候の影響から保護することができるトータルステーションの保護装置および開口部形成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるトータルステーションの保護装置の第一の特徴構成は、所定の基台に設置され、鉛直回転および水平回転可能な視準用望遠鏡を備えたトータルステーションの保護装置であって、前記トータルステーションを覆い、前記視準用望遠鏡と一体に水平回転する第1の保護ケースと、前記第1の保護ケースを覆い、前記トータルステーションに対して位置固定される第2の保護ケースと、を備え、前記第1の保護ケースは、前記視準用望遠鏡の鉛直回転時の視準軸の軌跡に沿って形成された第1の開口部を備え、前記第2の保護ケースは、予め設定された視準方向における前記視準用望遠鏡の視準軸との交差点に形成された第2の開口部を備えている点にある。
【0009】
第1の保護ケースが視準用望遠鏡と一体に水平回転するため、視準用望遠鏡の鉛直回転に伴う視準軸の軌跡に沿って形成された第1の開口部以外に第1の保護ケースに開口を形成する必要がなく、雨滴が第1の保護ケースを介してトータルステーションに降り注ぐような確率を低く抑えることができる。さらに第1の保護ケースを第2の保護ケースが覆うように配されるので、より確実に雨滴の浸入を阻止することができる。そして、第2の保護ケースに形成された第2の開口部を介して測定光が測定対象に向けて出射されるように、予め設定された視準方向における視準用望遠鏡の視準軸との交差点に第2の開口部が形成されている。強風が吹き荒れるような天候でも第2の保護ケースによって強風が受け止められ、第1の保護ケースおよびトータルステーションへ影響を及ぼすことがない。
【0010】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記トータルステーションに対して前記第2の保護ケースを位置決めするための位置決め機構を備えている点にある。
【0011】
位置決め機構を介して第2の保護ケースがトータルステーションに対して位置決めされるので、例えばメンテナンスなどの際に第2の保護ケースを取り外すような場合でも、その後に適切な位置に精度よく取り付けることができる。
【0012】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記第1の開口部は、所定の鉛直回転角度範囲に形成されたスリットで構成されている点にある。
【0013】
視準用望遠鏡の鉛直回転に伴って変化する視準軸が所定の鉛直回転角度範囲にあるときに第1の開口部であるスリットを介して測定光が出射される。
【0014】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第1の保護ケースは、前記トータルステーションの本体ケースの一部に固定されたブラケットを介して前記トータルステーションに固定されている点にある。
【0015】
視準用望遠鏡はトータルステーションの本体ケースと一体で水平回転するため、本体ケースの一部に固定されたブラケットを介して第1の保護ケースを固定することで、視準用望遠鏡の視準軸と第1の開口部とを正確に位置決め固定できる。
【0016】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第2の保護ケースは、前記基台と物理的に切り離された第2の基台に固定されている点にある。
【0017】
トータルステーションが取り付けられる基台の強度が十分でない場合であっても、基台と物理的に切り離された第2の基台に第2の保護ケースを固定すれば、トータルステーションに影響を及ぼすことなく、強風の影響を第2の基台で受け止めることができる。また、第2の基台のみであれば、容易に十分な強度を付与することができる。
【0018】
同第六の特徴構成は、上述した第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記第2の保護ケースに固定用のベルトを支持するベルト支持部が形成されている点にある。
【0019】
第2の保護ケースに形成されたベルト支持部を介して第2の保護ケースを固定用のベルトでしっかりと固定することができる。
【0020】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記第1の保護ケースまたは前記第2の保護ケースの内側に断熱層が形成されている点にある。
【0021】
夏の炎天下という酷熱の環境や冬の放射冷却という極寒の環境でも断熱層を形成することにより、トータルステーションへの温度による影響を極力回避することができるようになる。
【0022】
本発明による開口部形成方法の第一の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成を備えたトータルステーションの保護装置に用いられる前記第2の保護ケースへ前記第2の開口部を形成する開口部形成方法であって、前記トータルステーションに対して前記第2の保護ケースを位置決め配置する位置決めステップと、前記視準用望遠鏡を所定の視準方向に調整して測定光を出射し、前記第2の保護ケースに対する測定光の照射位置をマーキングするマーキングステップと、前記マーキングステップでマーキングした位置を削孔する削孔ステップと、を備えている点にある。
【0023】
第2の保護ケースに備えた第2の開口部は、予め設定された視準方向における視準用望遠鏡の視準軸との交差点に形成される必要があり、位置がずれると測定光が測定対象に向けて出射できなくなる。また、地山、法面、野外構造物などの変位測量を行なう場合には、其々の測量環境に応じた位置に第2の開口部を形成する必要があり、第2の保護ケースを汎用品で構成することは困難である。そのような場合でも、位置決めステップで第2の保護ケースを位置決め配置した状態でマーキングステップを実行することにより、正確な位置に第2の開口部を形成することができる。
【0024】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、仮のトータルステーションを用いて前記位置決めステップから前記削孔ステップを実行し、前記削孔ステップで削孔された前記第2の保護ケースを、真のトータルステーションに対して位置決め配置する実装ステップと、を備えている点にある。
【0025】
変位測量の現場で位置決めステップ、マーキングステップおよび削孔ステップを実行しなくても、予め工場などに設置した仮のトータルステーションに対して位置決めステップ、マーキングステップおよび削孔ステップを実行して完成した第2の保護ケースを真のトータルステーションに対して位置決め配置することで、煩雑な現場作業から開放される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した通り、本発明によれば、安価に構成しながらも風雨などの天候の影響から保護することができるトータルステーションの保護装置および開口部形成方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(a)から(c)はトータルステーションの説明図
【
図3】(a)はトータルステーションの保護装置の平面視の説明図、(b)は
図3(a)のA-A線断面から視た説明図、(c)は
図3(a)のB-B線断面から視た説明図
【
図4】トータルステーションを設置する基台の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明によるトータルステーションの保護装置および開口部形成方法の一態様を図面に基づいて説明する。
【0029】
[トータルステーションの構成]
図1(a)から(c)に示すように、トータルステーション10は、三脚などの所定の基台に設置される台座1上で鉛直軸Pv周りに水平回転する水平回転部2と、水平回転部2に対して水平軸Ph周りに鉛直回転する鉛直回転部4を備えている。
【0030】
水平回転部2は、操作表示部3が取り付けられた基部2Aと、基部2Aから正面視で上方に立上る左右一対の支持部2B,2Cと、一対の支持部2B,2Cの上部に左右一対のねじ6Aにより固定されたハンドブリップ6を備えている。
【0031】
鉛直回転部4には、左右一対の支持部2B,2Cに水平軸Ph周りに回転自在に支持された視準用望遠鏡5を備えている。水平回転部2および鉛直回転部4には其々電動モータ(図示せず)が組み込まれ、操作表示部3を介した操作入力に基づき、或いは外部接続されたコンピュータ制御部により電動モータが回転制御されることにより、視準用望遠鏡5が鉛直回転および水平回転して視準用望遠鏡5の視準軸Pcが所望の方向に視準するように制御される。
【0032】
鉛直回転部4には、照準器と望遠鏡が捉えた像を接眼部に導く光学系が収納されている。照準器と望遠鏡が捉えた像は、視準用望遠鏡5の基端側に設けられた接眼部を覗くことで視認できる。視準用望遠鏡5が捉えた像は、鉛直回転部4の内部に配置されたカメラによって撮像され、操作表示部3に表示される。
【0033】
視準用望遠鏡5は、測距用のレーザー光と測距対象(例えばターゲットとなる専用の反射プリズム)を追尾および捕捉するための追尾光の光学系を兼ねている。測距光と追尾光の光軸は、望遠鏡の光軸と一致するように光学系が設計されている。
【0034】
操作表示部には、液晶表示部3Aおよびテンキーなどの操作ボタン3Bが配され、トータルステーション10に関する各種の操作やデータの入力および入力の確認が可能になる。液晶表示部3Aには、トータルステーション10の操作に必要な各種の情報や測量データ等が表示される。トータルステーション10には上述した各部を制御し、測定対象までの距離や方向を算出する制御部を備えている。
【0035】
水平回転部2および鉛直回転部3には回転軸Pv,Ph周りの回転角度を検出するセンサが設けられ、制御部はセンサの出力に基づいて視準方向を算出する。また、制御部は視準用望遠鏡5から出射されたレーザー光と、反射プリズムからの反射光に基づいてトータルステーション10から反射プリズムまでの距離を算出する。距離の算出方法として測定光と反射光の位相差に基づいて距離を算出する位相差方式や測定光と反射光の時間差に基づいて距離を算出するTOF方式などが採用される。
【0036】
制御部とコンピュータなどの外部機器とを接続するためのインタフェース用のコネクタが基部2Aに設けられ、制御部とコンピュータなどの外部機器とを無線接続するための無線インタフェースが備わっている。
【0037】
[変位測量]
地山、法面、野外構造物などの変異の有無を定期的に計測して、重大な事故を招くような変位がみられると事前に対策を施すべく、トータルステーション10を野外に設置して長期にわたって観測する変位測量が行なわれる。
【0038】
図2に示す例では、遊園地のジェットコースターなどの遊具の支柱8や梁9などに対する変位測量を行なう際に、上述のトータルステーション10を予め設定された所定の位置に長期にわたり設置して、夜間など予め設定された時刻に定期的に測量して異常の有無が確認される。測量対象位置には予めターゲットとなる専用の反射プリズム7が取り付けられている。
【0039】
トータルステーション10に備えた無線インタフェースを介してコンピュータが接続され、測量データはWi-Fiなどを介してコンピュータから遠隔地のサーバに送信されるように構成されている。
【0040】
そして、このような変位測量の際にトータルステーション10が強い日差しや風雨による影響を受けて故障が生じることが無いように保護装置が設けられている。
【0041】
[トータルステーションの保護装置]
図3(a)から(c)に示すように、トータルステーションの保護装置100は、所定の基台40に設置されたトータルステーション10を覆い、視準用望遠鏡5と一体に水平回転する第1の保護ケース20と、第1の保護ケース20を覆い、トータルステーション10に対して位置固定される第2の保護ケース30とを備えている。第1の保護ケース20および第2の保護ケース30は、半透明のアクリル樹脂で形成されている。
【0042】
第1の保護ケース20は、視準用望遠鏡5の鉛直回転時の視準軸Pcの軌跡に沿って形成された第1の開口部22を備え、第2の保護ケース30は、予め設定された視準方向における視準用望遠鏡5の視準軸Pcとの交差点に形成された第2の開口部32を備えている。
【0043】
第1の開口部22は、所定の鉛直回転角度範囲に形成された幅が5~10mm程度のスリットSLで構成され、視準用望遠鏡5の鉛直回転に伴って変化する視準軸Pcが所定の鉛直回転角度範囲にあるときに第1の開口部22であるスリットSLを介して測定光が出射される。
【0044】
第1の保護ケース20は、平面視円形で天井部が丸いドーム状に形成され、トータルステーション10の本体ケースである水平回転部2の一部、本実施形態ではハンドグリップ6に固定された一対のブラケット24を介してトータルステーション10にねじ止めにより固定されている。
【0045】
視準用望遠鏡5はトータルステーション10の本体ケースである水平回転部2と一体で鉛直軸Pv周りに水平回転するため、本体ケースの一部に固定されたブラケット24を介して第1の保護ケース20を固定することで、視準用望遠鏡5の視準軸Pcが第1の開口部22(SL)を通過するように正確に位置決め固定できる。
【0046】
所定の鉛直回転角度範囲の具体的な値は、測量対象に応じて適宜設定される値であり、特に限定されるものではない。また、第1の開口部22はスリットSLである必要はなく、予め設定された複数の視準方向における視準用望遠鏡5の視準軸Pcとの交差点に形成された複数の開口部22であってもよい。開口部22は径が5~10mm程度の円形に形成されていればよい。
【0047】
第2の保護ケース30は、底部が開口した直方体または立方体形状に形成され、各側面には複数の第2の開口部32が形成されている。第2の開口部32も径が5~10mmの円形に形成され、測量対象に応じて適宜設定される数だけ形成されている。開口部22,32の径は、雨滴の浸入を極力阻止しつつ測定光および反射光が確実に開口部22,32を透過するようなサイズであればよい。
【0048】
第1の保護ケース20が視準用望遠鏡5と一体に水平回転するため、視準用望遠鏡の水平軸Ph周りの鉛直回転に伴う視準軸Pcの軌跡に沿って形成された第1の開口部22以外に第1の保護ケース20に開口部を形成する必要がなく、雨滴が第1の保護ケース20を介してトータルステーション10に降り注ぐような確率を低く抑えることができる。なお、スリットSLの外側に雨滴が内部に降り込まないように止める庇を形成することも可能である。
【0049】
さらに第1の保護ケース20を第2の保護ケース30が覆うように配されるので、より確実に雨滴の浸入を阻止することができる。そして、第2の保護ケース30に形成された第2の開口部32を介して測定光が測定対象に向けて出射されるように、第2の開口部32は、予め設定された視準方向における視準用望遠鏡5の視準軸Pcとの交差点に形成されている。
【0050】
図4には、直方体形状の基台40にトータルステーション10が位置決め固定される様子が示されている。説明の便宜のため、基台40の各面が透明であるように描かれているが、実際には鋼板などで構成されている。基台40の上面中央部に円柱形状の凸部42が設けられ、トータルステーション10の台座1の底面に形成された嵌合孔に凸部42が係合するようにして位置決め固定される。実際には凸部42の周面に形成された雄ねじがトータルステーション10の台座1の底面に形成された嵌合孔に形成された雌ねじと螺合することにより、固定される。また、基台40の上面には、第2の保護ケース30を位置決めするための凸条マーカ44が設けられている。
【0051】
図5(a),(b)に示すように、ドーム形状の第1の保護ケース20が、トータルステーション10のハンドグリップ6に立設したブラケット24を介してねじ止め固定される。その結果、
図6に示すように、基台40の凸部42に位置決め固定されたトータルステーション10に対して、ブラケット24を介して第1の保護ケース20が位置決め固定される。
【0052】
さらに、
図7に示すように、基台40の上面に設けられた凸条マーカ44と位置合わせして第2の保護ケース30が配置され、第2の保護ケース30に備えたベルト支持部34および基台40に備えた係止部46にベルト35で締付け固定される。そのため、強風が吹き荒れるような天候でも第2の保護ケース30によって強風が受け止められ、第1の保護ケース20およびトータルステーション10へ影響を及ぼすことがない。
【0053】
基台40に備えた凸部42によりトータルステーション10が位置決めされ、凸部42を基準に設定された凸条マーカ44により第2の保護ケース30が位置決めされる結果、トータルステーション10と第1の保護ケース20と第2の保護ケース30とが位置決めされる。即ち、凸部42や凸条マーカ44が位置決め機構として機能する。
【0054】
上述した位置決め機構を介して第2の保護ケース30がトータルステーション10に対して位置決めされるので、例えばメンテナンスなどの際に第2の保護ケース30を取り外すような場合でも、その後に適切な位置に精度よく取り付けることができる。なお、位置決め機構の具体的な構造は上述した凸部42や凸条マーカ44に限るものではなく、トータルステーション10と第1の保護ケース20と第2の保護ケース30とが位置決め可能な構成であれば、どのような構造であってもよい。
【0055】
第2の保護ケース30は、基台40と物理的に切り離された第2の基台に固定されていてもよい。トータルステーション10が取り付けられる基台40の強度が十分でない場合であっても、基台40と物理的に切り離された第2の基台に第2の保護ケース30を固定すれば、トータルステーション10に影響を及ぼすことなく、強風の影響を第2の基台で受け止めることができる。また、第2の基台のみであれば、容易に十分な強度を付与することができる。基台40及び第2の基台は、例えば金属製の板状体やアングル材などを用いて構成でき、アンカー部材を介してそれらをコンクリート製の構造体に固定することができる。
【0056】
第1の保護ケース20および/または第2の保護ケース40の内側に断熱層が形成されていることが好ましく、夏の炎天下という酷熱の環境や冬の放射冷却という極寒の環境でも断熱層を形成することにより、トータルステーションへの温度による影響を極力回避することができるようになる。また、第2の保護ケース40の内供空気を外部と循環するファンを備えていてもよい。
【0057】
第1の保護ケース20は、ハンドグリップ6以外の水平回転部2の一部に対して位置決め固定されていればよい。第2の保護ケース30につば部を形成して、つば部に設けた固定用の孔を介して基台40にねじ止め固定されるように構成してもよい。
【0058】
第1の保護ケース20および第2の保護ケース30はアクリル樹脂製に限るものではなく、例えばFRPなど強度の高い樹脂で構成してもよい。
【0059】
[開口部形成方法]
上述した第2の保護ケース30の開口部32は、以下のようにして形成される。トータルステーション10に対して第2の保護ケース30を位置決め配置する位置決めステップと、視準用望遠鏡5を所定の視準方向に調整して測定光を出射し、第2の保護ケース30に対する測定光の照射位置をマーキングするマーキングステップと、マーキングステップでマーキングした位置をドリルなどで削孔する削孔ステップとを含む。
【0060】
第2の保護ケース30に備えた第2の開口部32は、予め設定された視準方向における視準用望遠鏡5の視準軸Pcとの交差点に形成される必要があり、位置がずれると測定光が測定対象に向けて出射できなくなる。
【0061】
また、地山、法面、野外構造物などの変位測量を行なう場合には、其々の測量環境に応じた位置に第2の開口部32を形成する必要があり、第2の保護ケース30を汎用品で構成することは困難である。そのような場合でも、位置決めステップで第2の保護ケース30を位置決め配置した状態でマーキングステップを実行することにより、正確な位置に第2の開口部32を形成することができる。
【0062】
また、現場に設置されるトータルステーションTSに代えて、仮のトータルステーションを用いて位置決めステップから削孔ステップを実行し、削孔ステップで削孔された第2の保護ケース30を、現場に設置された真のトータルステーションTSに対して位置決め配置する実装ステップと、を備えてもよい。
【0063】
変位測量の現場で位置決めステップ、マーキングステップおよび削孔ステップを実行しなくても、予め工場などに設置した仮のトータルステーションに対して位置決めステップ、マーキングステップおよび削孔ステップを実行して完成した第2の保護ケースを真のトータルステーションに対して位置決め配置することで、煩雑な現場作業から開放される。
【0064】
上述した実施形態は何れも本発明の一態様に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏する範囲で各部の具体的な構成は適宜変更設計することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
10:トータルステーション
1:台座
Pv:鉛直軸
2:水平回転部
Ph:水平軸
4:鉛直回転部
5:視準用望遠鏡
6:ハンドブリップ
Pc:視準軸
20:第1の保護ケース
22:第1の開口部(スリット)
30:第2の保護ケース
32:第2の開口部
40:基台
100:トータルステーションの保護装置