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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191045
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】エッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099662
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信博
(72)【発明者】
【氏名】中込 健
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA19
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA25
5F004DB00
5F004EA34
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】エッチング後のゲルマニウム含有膜の形状を所望のものとすること。
【解決手段】ゲルマニウム含有膜である側壁によって構成される凹部を備える基板を処理容器内に格納する工程と、前記処理容器内に第1のフッ素含有ガス及び第2のフッ素含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記第1の側壁及び第2の側壁についてエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程に含まれ、当該処理容器内における前記第1のフッ素含有ガスの分圧、または前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合を調整して、エッチング後の前記側壁の形状を制御する形状制御工程と、を実施する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム含有膜である側壁によって構成される凹部を備える基板を処理容器内に格納する工程と、
前記処理容器内に第1のフッ素含有ガス及び第2のフッ素含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記第1の側壁及び第2の側壁についてエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程に含まれ、当該処理容器内における前記第1のフッ素含有ガスの分圧、または前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合を調整して、エッチング後の前記側壁の形状を制御する形状制御工程と、
を備えるエッチング方法。
【請求項2】
前記形状制御工程は、前記処理容器内における前記第1のフッ素含有ガスの分圧を調整する工程を含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記凹部は、
第1の側壁によって構成され、第1の幅を有する第1の凹部と、
第2の側壁によって構成され、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2の凹部と、を含み、
前記形状制御工程は、
前記エッチング工程における前記第1の側壁のエッチング量と、前記第2の側壁のエッチング量との各々の大きさを制御することである請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記第1のフッ素含有ガスは三塩化フッ素ガスであり、
前記形状制御工程は、前記第1のフッ素含有ガスの分圧について、
前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合に応じて、前記第1の側壁のエッチング量と前記第2の側壁のエッチング量との各々の大きさを変更可能な第1の範囲における分圧としてエッチングを行う工程を含む請求項3記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記処理容器に格納される基板に応じて、前記流量の割合を決定する工程を含む請求項4記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記第1の範囲は、0.267×10-1Paより大きく、0.933×10-1Paより小さい範囲である請求項4または5記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第1のフッ素含有ガスは三塩化フッ素ガスであり、
前記形状制御工程は、前記第1のフッ素含有ガスの分圧について、前記第1の側壁のエッチング量に比べて前記第2の側壁のエッチング量が大きくなる第2の範囲における分圧としてエッチングを行う工程を含む請求項3記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記第2の範囲は0.933×10-1Pa以上である請求項7記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第1のフッ素含有ガスは三塩化フッ素ガスであり、
前記形状制御工程は、前記第1のフッ素含有ガスの分圧について、前記第2の側壁のエッチング量に比べて前記第1の側壁のエッチング量が大きくなる第3の範囲における分圧に調整する工程を含む請求項3記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記第3の範囲は0.267×10-1Pa以下である請求項9記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記第1のフッ素含有ガスは三塩化フッ素ガスであり、
前記形状制御工程は、前記第1のフッ素含有ガスの分圧について、
前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合に応じて前記第1の側壁のエッチング量と前記第2の側壁のエッチング量との各々の大きさを変更可能な第1の範囲、前記第1の側壁のエッチング量に比べて前記第2の側壁のエッチング量が大きくなる第2の範囲、前記第2の側壁のエッチング量に比べて前記第1の側壁のエッチング量が大きくなる第3の範囲のうち、
前記処理容器に格納される基板に応じて選択された範囲内の分圧となるように行われる請求項3ないし10のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記凹部の側壁は複数段の前記ゲルマニウム含有膜と、当該ゲルマニウム含有膜の間に介挿される介挿膜とにより構成され、
前記形状制御工程は、前記流量の割合を調整して、前記側壁における各段のゲルマニウム含有膜のエッチング後の形状を制御する工程を含む請求項1ないし11のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記ゲルマニウム含有膜はSiGe膜である請求項1ないし12のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【請求項14】
ゲルマニウム含有膜である側壁によって構成される凹部を備える基板を格納する処理容器と、
前記処理容器内に第1のフッ素含有ガス及び第2のフッ素含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記側壁についてエッチングするためのエッチングガス供給部と、
前記エッチング後の前記側壁の形状を制御するために、当該エッチング中における前記処理容器内における前記第1のフッ素含有ガスの分圧を調整するか、または前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合を調整する調整部と、
を備えるエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造するにあたり、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)の表面に形成された各膜のエッチングが行われる。特許文献1では、Si膜とシリコン含有膜であるSiGe膜とが交互に積層されたウエハにClFガス及びHFガスを供給することで、Si膜へのダメージを抑制しつつ、SiGe膜を選択的にエッチングすることが記載されている。また、特許文献2ではClFガスと、Fガス及びNHガスからなる混合ガスとを交互に供給することで、ウエハ表面の酸化膜の孔内に埋設されたSi膜についてエッチング後の表面粗さが抑制されるようにエッチングされることについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-53448号公報
【特許文献2】特開2012-201102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング後のゲルマニウム含有膜の形状を所望のものとすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のエッチング方法は、ゲルマニウム含有膜によって構成される凹部を備える基板を処理容器内に格納する工程と、
前記処理容器内に第1のフッ素含有ガス及び第2のフッ素含有ガスを含むエッチングガスを供給すると共に当該処理容器内における前記第1のフッ素含有ガスの分圧、または前記処理容器内に供給する当該第1のフッ素含有ガスに対する前記第2のフッ素含有ガスの流量の割合を調整して、前記エッチングガスによりエッチングされる前記側壁の形状を制御する形状制御工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エッチング後のゲルマニウム含有膜の形状を所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る処理がなされるウエハの縦断側面図である。
図2】エッチング処理後の前記ウエハの縦断側面図である。
図3】試験の結果を示すグラフ図である。
図4】試験の結果を示すグラフ図である。
図5】前記ウエハの縦断側面図である。
図6】前記ウエハの縦断側面図である。
図7】前記ウエハの縦断側面図である。
図8】前記ウエハの縦断側面図である。
図9】エッチング装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のエッチング方法の一実施形態に係る処理について説明するために、図1を用いてエッチング対象となるウエハWについて説明する。この図1はウエハWの表面の縦断側面図である。図中11は当該ウエハWを構成する基体であり、Si(シリコン)によって構成されている。この基体11上にSiGe(シリコンゲルマニウム)膜12とSi(シリコン)膜13とが、縦方向(ウエハWの厚さ方向)に順番に交互に繰り返し積層されている。この積層構造体は多数のSiGe膜12と多数のSi膜13とにより形成されており、図1では煩雑化を避けるために積層数を省略して、3層ずつのSiGe膜12及びSi膜13により構成されているものとして示している。そしてこの積層構造体の最上層におけるSi膜13上には、マスク膜14が形成されている。このマスク膜14は、エッチング時において当該積層構造体のマスクとなる。なお、このような構成であるためウエハWの厚さ方向において、SiGe膜12の間に介挿膜であるSi膜13が介挿された構成となっている。
【0009】
そして、ウエハWの表面には凹部が複数形成されており、各凹部はマスク膜14の表面から基体11の表層に亘る深さを有するように形成されている。従ってSiGe膜12、Si膜13、マスク膜14及び基体11の表層からなる積層体(積層体15とする)によって、各凹部の側壁が形成されている。従って、この積層体15がウエハWの表面に複数、互いに間隔を空けて配置されていると見ることもできる。積層体15が比較的密集した領域(Dense)と積層体15同士が比較的大きく離間する領域(ISO)とが形成されるように、凹部が形成されている。従って複数の凹部としては、第1の幅L1を有する第1の凹部21と、当該第1の幅L1よりも大きい第2の幅L2を有する第2の凹部22とが含まれる。
【0010】
なお、上記の第1の幅L1、第2の幅L2の大きさの違いは、処理の誤差等によって不可避的あるいは不随意的に形成されるものではなく、設計上形成されるものであり、例えば設計上の幅L2/幅L1は2以上である。また、図1に例示する第1の凹部21、第2の凹部22は、紙面の表裏方向に伸びる溝であるが、孔であってもよい。孔である場合には、第1の幅L1、第2の幅L2は各孔の径の大きさである。
【0011】
上記のSiGe膜12はエッチング対象であるゲルマニウム含有膜である。SiGe膜12のうち、第1の凹部21に臨む部位は第1の側壁をなし、第2の凹部22に臨む部位は第2の側壁をなす。そして本実施形態ではウエハWを処理容器内に格納し、当該処理容器内にF(フッ素)ガス及びClF(三塩化フッ素)ガスを、エッチングガスとして同時に供給する。このエッチングガスが第1の凹部21内及び第2の凹部22内に進入して、図2に示すように積層体15を構成する各段のSiGe膜12を側方からエッチングする。このエッチングは各SiGe膜12の側壁の一部のみが除去されるように行われるため、各段のSiGe膜12はエッチング後に、ウエハWに残留する。
【0012】
このエッチングはSiGe膜12及びSi膜13のうち、SiGe膜12を選択的にエッチングする。従って、エッチングによって第1の凹部21、第2の凹部22に夫々臨むように横方向に開口する凹部が形成される。当該凹部について、第1の凹部21に臨む凹部、第2の凹部22に臨む凹部を夫々、第1の側方凹部23、第2の側方凹部24として図2中に示している。
【0013】
本実施形態のエッチング処理を具体的に説明するために、上記したウエハWのエッチングに関して行われた実験について先に説明する。当実験では、複数の上記したウエハWに対して互いに異なる処理条件を設定して、SiGe膜12のエッチングを行った。このエッチングとしては、上記したエッチングガス(Fガス及びClFガス)の他にAr(アルゴン)ガス及びN(窒素)ガスをエッチングガスと同時に処理容器内に供給した。これらのArガス及びNガスは、エッチングガスのキャリアガスとしての役割及び処理容器内の各ガスの分圧を調整する役割を有する。そして上記のウエハW毎に変更した処理条件としては、処理容器内に供給する各ガスの流量及び処理容器内の圧力(全圧)である。なお、これら流量及び全圧の変更に伴い、処理容器内のFガスの分圧及びClFの分圧についてもウエハW毎に変更されてエッチングが行われている。
【0014】
そして実験においては第1の凹部21に臨む各段(即ちDenseにおける各段)のSiGe膜12のエッチング量、及び第2の凹部22に臨む各段(即ちISOにおける各段)のSiGe膜12のエッチング量について測定している。以降はSiGe膜12のうち、第1の凹部21に臨む部位のエッチング量をDenseエッチング量、第2の凹部22に臨む部位のエッチング量をISOエッチング量として夫々記載する場合が有る。また、上記のように積層体15においてSiGe膜12は多段に設けられている。上側のSiGe膜12をトップ、下側のSiGe膜12をボトム、トップとボトムとの間の高さのSiGe膜12をミドルと記載する場合が有る。
【0015】
設定した処理条件は8通りであり、処理条件1~8とする。下記の表1は処理条件1~8をまとめたものである。なお、処理容器内の圧力を表1において全圧(単位:mTorr)として示している。表1中の各流量についての単位はsccmである。表中のFガス及びClFガスの各分圧(単位:mTorr)は処理容器内の分圧であり、各ガスの流量と処理容器内の圧力とから算出される値である。なお処理条件1~8においてエッチング処理中のウエハWの温度は-40℃~80℃の範囲内における温度で、互いに共通の温度である。なお記載の煩雑化を防ぐため、以下の説明では、処理容器内における分圧を単に分圧と記載し、処理容器内に供給するガスの流量を単に流量として記載する。
【0016】
ところで表1においてはClFガスの分圧を除き、各設定値をアルファベットを用いた値に置き換えて示している。具体的に述べると処理容器の圧力(全圧)については、所定の圧力値(単位:mTorr)をアルファベットのAとし、このAの乗算値をAの前に示すことで、当該全圧を表示している。従って、例えば処理条件1~4、6、8における全圧(2A)については、処理条件5、7における全圧(A)の2倍である。
【0017】
ガス、ClFガス、Nガスの流量についても上記の全圧と同様に、アルファベットB~Dと当該B~Dの乗算値とにより示している。また、表1中に示している流量比は、ClFガス(第1のフッ素含有ガス)の流量に対してのFガス(第2のフッ素含有ガス)の流量の割合であり、「B/C」と、その乗算値とにより、当該流量比を表1中に表している。なお、この流量比については以下、F/ClF流量比と記載する。またFガスの分圧(単位:mTorr)についても全圧やF/ClF流量比と同様にアルファベット(F)とその乗算値とにより表示している。ただしArガスの流量(単位:sccm)については、処理条件間でその値が微差になるものが有ることから、表中において他のガスの表示とは異なり、乗算値による表示を行っていない。表中にArガスの流量として示すE1~E8は個別の値である。
【0018】
(表1)


【0019】
図3は実験結果として、処理条件毎にDENSEエッチング量及びISOエッチング量を表した棒グラフを表示している。グラフの縦軸には所定のエッチング量の刻みで目盛りを付しており、従って各目盛り間のエッチング量は互いに同じ量を示す。DENSEエッチング量を示す棒グラフには斜線を付し、ISOエッチング量を示す棒グラフには斜線を付さずに夫々示している。なお、この図中の棒グラフにて示す各エッチング量は、既述したトップ、ミドル、ボトムの各エッチング量の平均値である。
【0020】
そして、この図3では左側から右側に向って処理条件7、5、6、2、4、1,3の順で棒グラフを示している。ClFガスの分圧について見ると、処理条件5、7では0.2mTorr(0.267×10-1Pa)、処理条件2、4、6では0.4mTorr(0.533×10-1Pa)、処理条件1、3では0.7mTorr(0.933×10-1Pa)である。従って図3ではClFガスの分圧によって区分して、各処理条件の棒グラフを示している。そしてClFガスの分圧が同じである処理条件については、図中の右側に向うほどF/ClF流量比が小さい処理条件の棒グラフが配置されるようにしているため、上記の並びで各処理条件の棒グラフを示している。
【0021】
図3に示すように、ClFガスの分圧が0.7mTorrである処理条件1、3については、DENSEエッチング量とISOエッチング量とを比較すると、ISOエッチング量の方が大きい。また、ClFガスの分圧が0.2mTorrである処理条件5、7については、DENSEエッチング量とISOエッチング量とを比較すると、DENSEエッチング量の方が大きい。従って、ClFガスの分圧が比較的大きいと、上記のF/ClF流量比に関わらずISOエッチング量の方が大きく、ClFガスの分圧が比較的小さいと、上記のF/ClF流量比に関わらずDENSEエッチング量の方が大きいという実験結果となった。
【0022】
また、ClFガスの分圧が0.4mTorrである処理条件2、4、6について見ると、これらの処理条件2、4、6のうちF/ClF流量比が最も小さい処理条件4については、DENSEエッチング量とISOエッチング量とが略等しい。そして処理条件2、4、6のうちF/ClF流量比が処理条件4に次いで小さい処理条件2については、DENSEエッチング量とISOエッチング量とを比較するとISOエッチング量の方が大きい。処理条件6については、DENSEエッチング量とISOエッチング量とを比較するとDENSEエッチング量の方が大きい。
【0023】
以上のように、ClFガスの分圧に応じてDENSEエッチング量とISOエッチング量とが各々変化し、これらのエッチング量の大小関係が変化することが分かる。具体的には当該分圧によって、DENSEエッチング量とISOエッチング量とが同じないしは略同じか、あるいは一方が他方よりも大きくなるように変化し得ることが分かる。
【0024】
ところでClFガスについてはFガスに比べてSiGe膜12に対する反応性が高い。このClFガスの分圧が比較的小さいと、比較的大きい第2の凹部22内でのClFガスの濃度が非常に低いものとなるので、ClFガスとSiGe膜12との反応が起こりにくい。しかしその一方で当該ClFガスの分圧が比較的大きいと、当該第2の凹部22内でのClFガスの濃度が比較的高くなり、ClFガスとSiGe膜12とが効率良く反応することができる。つまり、ClFガスの分圧が0.7mTorrよりも大きい場合には、当該分圧が0.7mTorrである処理条件1、3と同様にISOエッチング量の方が大きくなり、ClFガスの分圧が0.3mTorrよりも小さい場合には当該分圧が0.3mTorrである処理条件5、7と同様にDENSEエッチング量の方が大きくなると考えられる。
つまり、まとめると当該分圧が0.7mTorr以上の範囲内(第2の範囲内)で処理することでISOエッチング量の方が大きく、当該分圧が0.2mTorr以下の範囲内(第3の範囲内)で処理することでDENSEエッチング量の方が大きくなる。そして上記の実験結果より、当該分圧が0.2mTorrより大きく0.7mTorrよりも小さい範囲内(第1の範囲内)での処理においては、F/ClF流量比に応じてDENSEエッチング量とISOエッチング量とが変化し、その結果これらのエッチング量の大小関係が変動する。
【0025】
また上記の実験において、ClFガスの分圧が第1の範囲内の値である0.4mTorrである処理条件2、4、8で処理した各ウエハWから、トップ、ミドル、ボトムにおけるエッチング量の関係について取得している。図4は、そのエッチング量の関係を棒グラフとして示したものである。図4のグラフの縦軸には所定のエッチング量の差の刻みで目盛りを付しており、従って各目盛り間におけるエッチング量の差は互いに同じである。そして図4では、トップのエッチング量-ミドルのエッチング量について斜線を付した棒グラフで示し、ミドルのエッチング量-ボトムのエッチング量について斜線を付さない棒グラフで示している。各棒グラフについては右側に向うほど、上記のF/ClF流量比が小さい処理条件の棒グラフであるように示しており、従って棒グラフは右側に向けて処理条件2、8、4の順で並んでいる。
【0026】
図4に示されるように、ミドルのエッチング量とボトムのエッチング量とに関して、処理条件2、4、8のいずれもボトムのエッチング量の方が大きかったが、処理条件4、8、2の順でミドルとボトムとの間のエッチング量の差が小さく、処理条件2では当該差は僅かであった。処理条件2、8、4のF/ClF流量比は、夫々4B/C、3B/C、2B/Cであるため、F/ClF流量比2B/C~4B/Cの範囲においては、F/ClF流量比が大きくなるほど、ミドルのエッチング量とボトムのエッチング量との差が小さくなることが分かる。
【0027】
またトップとミドルとの間のエッチング量の差を見ると、処理条件4、8では当該エッチング量の差が+の値である。従ってトップのエッチング量の方が大きく、処理条件4、8間ではこのエッチング量の差は処理条件8の方が小さい。そして、処理条件2では当該エッチング量の差については-の値であり、トップよりもミドルのエッチング量が大きい。このようにF/ClF流量比2B/C~4B/Cの範囲においてはその値が大きくなるほど、トップのエッチング量に対するミドルのエッチング量が大きくなることが分かる。なお、処理条件2と処理条件8との間では、エッチング量の差の絶対値が近似している。
【0028】
このようにClFガスの分圧が上記の第1の範囲内であるときに、第1の凹部21及び第2の凹部22の各々に臨むSiGe膜12について上記のF/ClF流量比を変更することで、トップ、ミドル、ボトムの各々のエッチング量を調整することができることが示された。そしてF/ClF流量比について、3B/Cより大きく4B/Cより小さい範囲において、トップとミドルとの間のエッチング量の差をゼロないしは略ゼロにすることができ、且つミドルとボトムとの間のエッチング量をごく小さくすることができる好ましい値が存在すると推定できる。表1に示すようにB/C=24.46であるため、エッチング量についてトップとミドルとボトムとの間でその値を揃えるためには、F/ClF流量比について3×24.46=73.38より大きく、4×24.46=97.84より小さく設定することが好ましい。なお、図4のグラフ中の点線及びa1、b1、c1についてはこの実験を用いたF/ClFの設定の一例として後述する。
【0029】
本実施形態のエッチング処理は、以上に述べた実験で得られた知見に基づいて行う。具体的にはエッチング後におけるウエハWの表面の形状を制御し、所望のものとする。以下、この形状制御の具体例をいくつか述べる。この各具体例では、エッチング後の各積層体15の形状が同じ、ないしは概ね同じになるようにエッチングを行うことを目的とする。言い換えると、積層体15について左右対称の形状となるようにエッチングを行う。
【0030】
先ず第1の具体例を示す。処理容器内に搬送されるエッチング対象のウエハWについて、図1に示すように、各積層体15におけるSiGe膜12の側壁とSi膜13の側壁との横方向の位置が互いに揃っているものとする。この場合、例えばClFガスの分圧を処理条件2、4、6、8の分圧と同じ0.4mTorr、且つF/ClF流量比を基準値に設定してエッチングを行う。このF/ClF流量比の基準値は、例えば図4のグラフで説明した3B/Cより大きく4B/Cより小さい範囲内の値とする。即ち、この基準値はISOエッチング量、DENSEエッチング量が略同じであった処理条件4のF/ClF流量比に近い値であり(図3参照)、そのためこの基準値によるエッチングで、ISOエッチング量及びDENSEエッチング量について概ね同じ値とすることができる。
【0031】
従ってエッチング後は、図2に示すように第1の側方凹部23の深さ及び第2の側方凹部24の深さが互いに揃い、各積層体15の形状を同じないしは略同じとすることができる。また図4で述べたように、F/ClF流量比について上記のように設定しているため、エッチング量についてトップとミドルとボトムとの間の値が揃う。即ちトップ、ミドル、ボトムの各第1の側方凹部23の深さの均一性、トップ、ミドル、ボトムの各第2の側方凹部24の均一性が各々高くなるため好ましい。
【0032】
次に第2の具体例について述べる。この例におけるエッチング処理前のウエハWを図5の上段に示しており、当該ウエハWは図1に示すウエハWと略同様の構成である。ただしエッチング処理の前工程にて各SiGe膜12について、第1の凹部21に臨む側(DENSE側)がエッチングされており、予め第1の側方凹部23が形成されている。当該第1の凹部21に臨むSi膜13の側壁及びSiGe膜12の側壁について、横方向の位置が揃っていない。
【0033】
それ故に図5の上段のウエハWをエッチングして各積層体15の形状を揃えるためには、DENSEエッチング量に比べてISOエッチング量を大きくすることが必要となる。そこでClFガスの分圧を0.4mTorr、且つF/ClF流量比を基準値よりも低くする。そのF/ClF流量比について、一例としては図3で説明した処理条件2と同じ4B/Cに設定してエッチングを行うようにする。そのようにエッチングを行うことで、DENSEエッチング量に比べてISOエッチング量が大きくなる。図5の下段はエッチング後のウエハWを示している。上記のエッチング量の差によって、当該図5の下段に示すように第1の側方凹部23の深さ及び第2の側方凹部24の深さが互いに揃い、エッチング後の各積層体15の形状が同じないしは略同じとなる。
【0034】
続いて、第3の具体例について述べる。この例におけるエッチング処理前のウエハWを図6の上段に示しており、当該ウエハWは図1に示すウエハWと略同様の構成である。ただしエッチング処理の前工程にて各SiGe膜12について、第2の凹部22に臨む側(ISO側)がエッチングされており、予め第2の側方凹部24が形成されている。従って当該第2の凹部22に臨むSi膜13の側壁及びSiGe膜12の側壁について、横方向の位置が揃っていない。
【0035】
それ故に図6の上段のウエハWをエッチングして各積層体15の形状を揃えるためには、ISOエッチング量に比べてDENSEエッチング量を大きくすることが必要となる。そこでClFガスの分圧を0.4mTorr、且つF/ClF流量比を基準値よりも高くする。その流量比について、一例としては図3で説明した処理条件6と同じ6B/Cに設定してエッチングを行うようにする。そのようにエッチングを行うことで、ISOエッチング量に比べてDENSEエッチング量が大きくなる。図6の下段はエッチング後のウエハWを示している。上記のエッチング量の差によって、当該図6の下段に示すように第1の側方凹部23の深さ及び第2の側方凹部24の深さが互いに揃い、エッチング後の各積層体15の形状が同じないしは略同じとなる。
【0036】
第4の具体例について述べる。この例におけるエッチング処理前のウエハWを図7の上段に示しており、当該ウエハWは図1に示すウエハWと略同様の構成である。ただしエッチング処理の前工程にて、第1の凹部21、第2の凹部22に各々臨む各段のSiGe膜12の側壁の位置についてばらつきが生じており、ミドルがトップ及びボトムに比べて大きくエッチングされており、第1の側方凹部23及び第2の側方凹部24が形成されている。トップ及びボトムについては略エッチングされていない。
【0037】
そこでClFガスの分圧を0.4mTorr、且つF/ClF流量比を基準値よりも低い値に設定してエッチングを行う。その設定によって図4に示したように、基準値でエッチングする場合よりもミドルのエッチング量に対してトップ及びボトムのエッチング量が大きくなる。従って図7の下段に示すようにエッチング後のウエハWについて、各段の第1の側方凹部23の深さ、各段の第2の側方凹部24の深さを各々揃えることができる。
【0038】
第5の具体例について述べる。この例でも第4の具体例と同様にエッチング処理前のウエハWについては処理の前工程にて、第1の凹部21、第2の凹部22に各々臨む各段のSiGe膜12の側壁の位置についてばらつきが生じている。具体的には図8の上段に示すように、トップがミドル及びボトムに比べて大きくエッチングされて第1の側方凹部23及び第2の側方凹部24が形成されている。ミドルとボトムとについては略エッチングされていない。
【0039】
その場合はClFガスの分圧を0.4mTorr、且つF/ClF流量比を基準値よりも高い値に設定してエッチングを行う。その設定によって図4に示したように、基準値でエッチングする場合よりもトップに対するミドルのエッチング量が大きくなる。また、ミドルとボトムとの間のエッチング量についての差が小さくなる。それによって、エッチング後のウエハWについて各段の第1の側方凹部23の深さ、各段の第2の側方凹部24の深さを各々揃えることができる。なお、図7、8における第4及び第5の具体例について、F/ClF流量比は例えば処理条件2の4B/Cよりも小さい値に設定している。つまり、DENSEエッチング量とISOエッチング量とが略同じになった処理条件4のF/ClF流量比に比較的近い値に設定されており、当該DENSEエッチング量と当該ISOエッチング量とが揃えられるようにしている。
【0040】
以上に述べたように具体例1~5では、処理容器内におけるClFの分圧を0.4mTorrに設定した上で、処理容器内に搬送されるウエハWに応じたF/ClF流量比を設定している。それによりエッチング後の積層体15について、ウエハW毎の形状のばらつきが抑制されるように制御することができる。
【0041】
なお、以上の具体例1~5について、ClFガスの分圧は0.4mTorrにすることに限られず、既述した第1の範囲内の他の値にした上でF/ClF流量比を同様に変動させて、エッチング後のウエハWの形状を制御してもよい。また、流量比の基準値としても既述した値とすることに限られず、例えば処理条件4と同じ4B/Cに設定し、図5図8で述べたようにウエハWの形状に応じて当該基準値から変更してエッチング処理を行うようにしてもよい。
【0042】
続いて具体例6について説明する。具体例6では、具体例2で述べた図5の上段に示すウエハWをエッチングするものとし、分圧を0.7mTorr以上の範囲内(第2の範囲内)に設定して処理を行う。図3で説明したように、そのように分圧を設定することで、DENSEエッチング量に比べてISOエッチング量が大きくなり、図5の下段に示すように、エッチング後の各積層体15の形状が同じないしは略同じとなる。なお、F/ClF流量比については任意の値に設定すればよい。上記の処理条件1、3で、F/ClF流量比がB/C、2B/CのときにDENSEエッチング量<ISOエッチング量であることが確認されていることから、例えばB/C~2B/Cの範囲内の値とすればよい。
【0043】
続いて具体例7について説明する。具体例7では、具体例3で述べた図6の上段に示すウエハWをエッチングするものとし、分圧を0.2mTorr以下の範囲内(第3の範囲内)に設定してエッチング処理を行う。図3で説明したように、そのように分圧を設定してエッチングすることで、ISOエッチング量に比べてDENSEエッチング量が大きくなり、エッチング後の各積層体15の形状が同じないしは略同じとなる。なお、F/ClF流量比については任意の値に設定すればよい。上記の処理条件5、7で、F/ClF流量比が3B/C、9B/CのときにDENSEエッチング量>ISOエッチング量であることが確認されていることから、例えば3B/C~9B/Cの範囲内の値とすればよい。
【0044】
以上に述べたように上記の具体例1~3ではF/ClF流量比を調整することでISOエッチング量(第1の側壁のエッチング量)とDENSEエッチング量(第2の側壁のエッチング量)との各々について制御し、それによってこれらのエッチング量の大小関係を制御した。しかし、当該具体例6、7のようにClFガスの分圧を調整することによってもISOエッチング量とDENSEエッチング量との各々を制御し、それによって当該大小関係を制御することができる。なお、既述した各具体例の処理において、ウエハWの温度は既述した範囲内の温度に設定するものとする。
【0045】
続いてエッチング装置3について、図9の縦断側面図を参照して説明する。このエッチング装置3は、一のウエハWに対して各具体例のうちのいずれか一つを選択して実施することができる。当該エッチング装置3は、処理容器31を備えている。図中32は、処理容器31の側壁に開口するウエハWの搬送口であり、ゲートバルブ33により開閉される。処理容器31内にはウエハWを載置するステージ41が設けられており、当該ステージ41には図示しない昇降ピンが設けられる。その昇降ピンを介して図示しない基板搬送機構とステージ41との間で、ウエハWの受け渡しが行われる。
【0046】
ステージ41には温度調整部42が埋設されており、ステージ41に載置されたウエハWが既述した範囲内の温度とされる。この温度調整部42は、例えば水などの温度調整用の流体が流通する循環路の一部をなす流路として構成されており、当該流体との熱交換によりウエハWの温度が調整される。ただし温度調整部42としては、そのような流体の流路であることに限られず、例えば抵抗加熱体であるヒーターにより構成されていてもよい。
【0047】
また、処理容器31内には排気管43の一端が開口しており、当該排気管43の他端は圧力変更機構であるバルブ44を介して、例えば真空ポンプにより構成される排気機構45に接続されている。バルブ44の開度の変更により排気流量が変化することで、処理容器31内の全圧が変化する。
【0048】
処理容器31内の上部側には、ステージ41に対向するように、エッチングガス供給部であるガスシャワーヘッド46が設けられている。ガスシャワーヘッド46には、ガス供給路51~54の下流側が接続されており、ガス供給路51~54の上流側は流量調整部55を各々介して、ガス供給源56~59に接続されている。各流量調整部55は、バルブ及びマスフローコントローラを備えている。従って、ガス供給源56~59から供給されるガスについては、当該流量調整部55によって下流側へ供給される流量が調整される。
【0049】
ガス供給源56、57、58、59からは、Fガス、ClFガス、Arガス、Nガスが夫々供給される。従ってガスシャワーヘッド46からは処理容器31内に、これらのFガス、ClFガス、Arガス、Nガスを各々供給することができる。以上のような構成であるため、ガス供給路51、52に各々介設される流量調整部55の動作により、F/ClF流量比を調整することができ、また、ガス供給路52に介設される流量調整部55及び排気管43に介設されるバルブ44の動作により、処理容器31内のClFガスの分圧を調整することができる。つまり、これらF/ClF流量比及び処理容器31内のClFガスの分圧を、既述した各処理例の値にし、当該各処理を実施することができる。上記の流量調整部55及びバルブ44は調整部として構成されている。
【0050】
ところで、図4に示すようにエッチング装置3はコンピュータである制御部30を備えており、この制御部30は、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、既述した各具体例で述べる処理が行われるように命令(各ステップ)が組み込まれており、このプログラムは記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、DVD等に格納され、制御部30にインストールされる。制御部30は当該プログラムによりエッチング装置3の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には例えば、既述した各流量調整部55による下流側へ供給する各ガスの流量の調整、バルブ44の開度の調整などの動作が含まれる。
【0051】
上記のエッチング装置3の処理容器31内に図1等で示したウエハWが搬送され、ステージ41に載置されて当該ウエハWの温度が調整され、当該温度は好ましくは-40℃~20℃とされる。そして処理容器31内が所望の圧力(全圧)とされた状態で、Fガス、ClFガス、Arガス及びNガスが処理容器31内に供給されて、エッチング処理が行われる。各ガスの分圧及びF/ClF流量比について、既述したように所望の値とされる。
【0052】
処理容器31内に搬送されるウエハWに応じて、エッチング装置3のユーザーが手動でF/ClF流量比及び処理容器31内のClFガスの分圧について設定してもよい。ただし上記の制御部30が自動でこれらのパラメータの設定を行うようにしてもよい。このパラメータ設定について具体的に述べると、例えばエッチングの前処理を行う装置に設けられる制御部から、上記の制御部30にエッチング装置3に搬送されるウエハWの形状を特定するための情報が送信されるようにする。さらに具体的に述べると、例えば図2で示したウエハW形状、図5の上段に示したウエハW形状、図6の上段に示したウエハW形状のうちのいずれの形状になるかが、前処理を行う他装置の処理レシピによって切り替わるとする。その場合は、エッチング装置3に搬送されるウエハWがいずれの処理レシピで処理されたかを特定する情報が制御部30に送信され、当該制御部30が当該情報を取得するようにする。
【0053】
そして、制御部30は処理容器31内のClFガスの分圧については第1の範囲内の値に設定し、且つF/ClF流量比については上記の情報に基づいて具体例1で述べた値、具体例2で述べた値、具体例3で述べた値のうちのいずれにするかを選択、決定する。その決定した値でエッチングがなされることで、各図で説明したようにISOエッチング量、DENSEエッチング量が各々制御され、各積層体15の形状が揃えられる。
【0054】
なお上記したように、F/ClF流量比を他装置からの情報に基づいて決定する代わりに、処理容器31内のClFガスの分圧について第1の範囲の値、第2の範囲の値、第3の範囲の値の中から選択することによっても、上記の大小関係を制御することができる。そのため、制御部10による当該ClFガスの分圧の選択が行われて、上記のエッチング量の大小関係が制御されるようにしてもよい。つまり具体例1、具体例6、具体例7で述べたうちのいずれの処理条件で処理を行うかを制御部30が決定するようにしてもよい。
【0055】
また、例えば他装置の処理レシピによって第1の凹部21に臨むSiGe膜12のエッチング量が変化し、当該SiGe膜12についてトップ、ミドル、ボトムの側壁について図1に示した位置関係となるか、図7に示した位置関係となるか、図8に示した位置関係となるかが変化するものとする。制御部30により、ClFガスの分圧については第1の範囲内の値に設定されると共に、F/ClF流量比については上記の処理レシピについて情報に基づいて、既述した基準値とするか、基準値よりも所定の量だけ大きい値とするか、基準値よりも所定の量だけ低い値とするかが決定されてもよい。つまり具体例1、具体例4、具体例5で述べたうちのいずれの処理条件で処理を行うかを制御部30が決定し、F/ClF流量比が切り替えられる。即ち、処理容器31に格納されるウエハWに応じて当該F/ClF流量比が調整されて、第1の凹部21に臨む各段のSiGe膜のエッチング形状が制御されることになる。
【0056】
ところで実験結果の他の利用例を示す。図4中の点線は、実験で得られたF/ClF流量比と、エッチング量のトップ-ミドルとの対応関係について、一次関数として近似して表したものである。この一次関数が制御部30のメモリに記憶されているものとする。そして例えば一のウエハWについてClFガスの分圧が0.4mTorr、且つF/ClF流量比については任意の第1の流量比で処理されたものとする。この一のウエハWの検査を行い、エッチング量のトップ-ミドルについての測定値a1を得る。
【0057】
そして上記の一次関数にて、エッチング量のトップ-ミドルが0となる点b1と測定値a1に対応する点とのF/ClF流量比の変位量c1を読み出し、後続のウエハWを処理するにあたりトップ-ミドルがゼロとなるように、第1の流量比からc1だけずらした流量比(第2の流量比とする)に設定する。つまり、F/ClF流量比をずらした分だけ、一次関数に従ってエッチング量のトップ-ミドルの値が変位するものとみなし、後続のウエハWのトップ-ミドルが0nmになるように先に処理されたウエハWから得られたトップ-ミドルからF/ClF流量比を決める。上記の第2の流量比の決定は、例えば制御部30により行われる。トップ-ミドルを0nmにするように示したが、同様にしてミドル-ボトムを0nmにするように制御が行われてもよい。このように上記の実験に基づいたウエハWの形状制御としては、図5図8等で示したエッチング前のウエハWの形状に基づいて行うことに限られない。
【0058】
以上のようにエッチング装置3で行われる各エッチング処理については、第1の凹部21に臨むSiGe膜のエッチング量、第2の凹部22に臨む各SiGe膜12のエッチング量の大小関係が制御される。より詳しくは、いずれのエッチング量を大きくするか、等量とするかが選択自在である。それにより、エッチング後の積層体15の形状が互いに揃う、つまり所望の形状となるように制御される。さらに、第1の凹部21に臨む各段のSiGe膜12についてのトップ、ミドル、ボトムの各エッチング量についても制御され、このトップ、ミドル、ボトムの形状、より具体的にはこれらの各高さのSiGe膜12の側壁の位置についても制御することができる。
【0059】
なお、既述した各例ではエッチング後の第1の側方凹部23、第2の側方凹部24の各深さが揃うことで、積層体15の形状を揃えているが、これら側方凹部23、24のうちのいずれかを大きくするように処理条件の選択を行ってもよい。つまり、エッチング量を制御するにあたり、各積層体15の形状が互いに揃うように行うことには限られない。また、既述の例のようにSiGe膜12の間にSi膜13が介在する構成でなくてもよく、マスク膜14と基体11との間にはSiGe膜12のみが設けられた構成であってもよい。さらに第1の凹部21、第2の凹部22は縦方向に開口することに限られず、横方向に開口していてもよい。つまり、凹部の側壁とは凹部の底部から見ての側壁であり、横方向に位置することに限られるものではない。
【0060】
本例ではSiGe膜に対するエッチング性が比較的低い第2のフッ素含有ガスとしてFガスを用い、SiGe膜に対するエッチング性が比較的高い第1のフッ素含有ガスとしてClFガスを用いているが、このようなガスの組み合わせとすることに限られない。具体的には例えば第2のフッ素含有ガスとしてはHFガスを用いてもよいし、第1のフッ素含有ガスとしてClFガスの代わりにSFガス、IFガスやIFガスを用いてもよい。また、エッチング対象であるゲルマニウム含有膜としてはSiGe膜に限られず、ゲルマニウム膜であってもよい。
【0061】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0062】
W ウエハ
12 SiGe膜
15 積層体
21 第1の凹部
22 第2の凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9