(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191049
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】手術支援ロボットおよび手術支援ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/32 20160101AFI20221220BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B34/32
H04N7/18 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099667
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼貴
(72)【発明者】
【氏名】一居 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】山守 啓文
(72)【発明者】
【氏名】川端 英雄
(72)【発明者】
【氏名】北辻 博明
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CF06
5C054FE14
5C054HA12
(57)【要約】
【課題】患者に対してアームを精度よく位置決めすることが可能な手術支援ロボットを提供する。
【解決手段】この医療用マニピュレータ1は、受け付けた操舵に基づいてロボット本体部1aを移動させる医療用台車3と、ロボット本体部1aに配置される撮影部51と、撮影部51により撮影された画像が表示される表示部33aと、操作ハンドル35の操舵角に基づいて、医療用台車3の進行方向を示すガイド線GLを撮影部51により撮影された画像に重畳させて表示部33aに表示させる制御を行う画像処理回路31cと、を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術支援ロボットであって、
医療器具が取り付けられるアームを有するロボット本体部と、
操作者による操舵を受け付ける操舵部を含み、受け付けた前記操舵に基づいて前記ロボット本体部を移動させる医療用台車と、
前記ロボット本体部に配置される撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像が表示される表示部と、
前記操舵部の操舵角に基づいて、前記医療用台車の進行方向を示すガイド情報を前記撮影部により撮影された画像に重畳させて前記表示部に表示させる制御を行う制御部と、を備える、手術支援ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、前記操舵部の操舵角と、前記ロボット本体部の姿勢に対する前記撮影部の位置とに基づいて、前記ガイド情報を前記表示部に表示させる制御を行う、請求項1に記載の手術支援ロボット。
【請求項3】
前記ガイド情報は、前記表示部の表示画面の中心近傍を基端として前記医療用台車の進行方向に沿って延びるガイド線を含む、請求項1または2に記載の手術支援ロボット。
【請求項4】
前記医療用台車は、前記操作者による前記操舵部の操舵により回動し、
前記ガイド線は、前記医療用台車の回動方向に沿って円弧状に延びる、請求項3に記載の手術支援ロボット。
【請求項5】
前記表示部には、前記撮影部により撮影された患者の体表面から内視鏡を挿入するためのトロカールの画像が表示されており、
前記制御部は、
前記ロボット本体部と前記トロカールとの位置合わせのための印部を前記表示部の前記表示画面の中心に表示させ、
前記印部を基端として前記医療用台車の進行方向に沿って延びるように前記ガイド線を表示させる制御を行う、請求項3または4に記載の手術支援ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記医療用台車の前進時に前記ガイド情報を前記表示部に表示させる制御を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項7】
前記操舵部は、前記医療用台車の移動を許可または不許可とするイネーブルスイッチをさらに含み、
前記制御部は、
前記イネーブルスイッチの許可信号を受け付けている間のみ前記ガイド情報を前記表示部に更新して表示させる制御を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ロボット本体部の制御のための座標系に基づいて前記撮影部の高さ位置を取得し、
前記操舵部の操舵角と、前記ロボット本体部の姿勢に対する前記撮影部の平面的な位置と、前記取得した前記撮影部の高さ位置とに基づいて、前記ガイド情報を前記表示部に表示させる制御を行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項9】
前記表示部に前記ガイド情報を表示するか否かを前記操作者に選択させるための選択操作部をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項10】
前記選択操作部は、前記表示部に表示されるタッチボタンからなる、請求項9に記載の手術支援ロボット。
【請求項11】
前記医療用台車は、駆動輪としての前輪と、前記操舵部によって操舵される後輪とを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項12】
手術支援ロボットの制御方法であって、
撮影部により、撮影を行うステップと、
前記撮影部により撮影された患者の画像を表示部に表示するステップと、
医療器具が取り付けられるアームを有するロボット本体部を移動させる医療用台車の操舵部に対する操舵を受け付けるステップと、
前記操舵部の操舵角に基づいて、前記医療用台車の進行方向を示すガイド情報を前記撮影部により撮影された画像に重畳させて前記表示部に表示するステップとを備える、手術支援ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、手術支援ロボットおよび手術支援ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アームを有するロボット本体部を移動させる医療用台車を含む手術支援ロボットが知られている。たとえば、特許文献1には、アームと、アームの基端部を支持するベースとを備える手術マニピュレータアセンブリが開示されている。特許文献1では、アームの先端には手術器具が取り付けられている。アームが遠隔制御されることにより、アームの先端に取り付けられた手術器具によって患者に対する手術が行われる。
【0003】
また、特許文献1の手術マニピュレータアセンブリは、床面よりも上方においてベースを支持するセットアップアセンブリを有する。セットアップアセンブリは、床面に対して移動するカートと、カートから水平方向に延びるように配置されるセットアップアームとを有する。アームの基端部を支持するベースは、セットアップアームの先端に配置されている。そして、オペレータにより、カートおよびセットアップアセンブリの少なくとも一方が手動で操作されることにより、患者に対してベースが位置決めされる。
【0004】
また、特許文献1の手術マニピュレータアセンブリには、ベースの位置決めのためにインジケータライトが配置されている。インジケータライトは、患者が位置する手術室内の床面に向かって光を投影する。なお、光を投影された方向はベースおよびカートの少なくとも一方を移動さる方向を示しており、オペレータは、光を投影された光の方向にベースおよびカートの少なくとも一方を移動させる。これにより、ベースが最適な位置に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手術マニピュレータアセンブリでは、手術室内の床面に向かって照射された光の方向によってベースおよびカートの少なくとも一方の進行方向が床面に示されるだけであり、移動後のアームが患者に対して精度よく位置決めできないという問題点が考えられる。
【0007】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、患者に対してアームを精度よく位置決めすることが可能な手術支援ロボットおよび手術支援ロボットの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この開示の第1の局面による手術支援ロボットは、手術支援ロボットであって、医療器具が取り付けられるアームを有するロボット本体部と、操作者による操舵を受け付ける操舵部を含み、受け付けた操舵に基づいてロボット本体部を移動させる医療用台車と、ロボット本体部に配置される撮影部と、撮影部により撮影された画像が表示される表示部と、操舵部の操舵角に基づいて、医療用台車の進行方向を示すガイド情報を撮影部により撮影された画像に重畳させて表示部に表示させる制御を行う制御部と、を備える。
【0009】
この開示の第1の局面による手術支援ロボットでは、上記のように、制御部は、操舵部の操舵角に基づいて、医療用台車の進行方向を示すガイド情報を撮影部により撮影された画像に重畳させて表示部に表示させる制御を行う。これにより、表示部には、ガイド情報とともに、撮影部により撮影された画像が表示されているので、操作者は、医療用台車の進行方向と患者との相対的な位置関係を把握しやすくなる。そのため、操作者は、ガイド情報に従って患者に対して適切な位置に医療用台車を移動させることができる。その結果、患者に対してアームを精度よく位置決めすることができる。
【0010】
この開示の第2の局面による手術支援ロボットの制御方法は、手術支援ロボットの制御方法であって、撮影部により、撮影を行うステップと、撮影部により撮影された患者の画像を表示部に表示するステップと、医療器具が取り付けられるアームを有するロボット本体部を移動させる医療用台車の操舵部に対する操舵を受け付けるステップと、操舵部の操舵角に基づいて、医療用台車の進行方向を示すガイド情報を撮影部により撮影された画像に重畳させて表示部に表示するステップとを備える。
【0011】
この開示の第2の局面による手術支援ロボットの制御方法では、上記のように、操舵部の操舵角に基づいて、医療用台車の進行方向を示すガイド情報を撮影部により撮影された画像に重畳させて表示部に表示するステップを備える。これにより、表示部には、ガイド情報とともに、撮影部により撮影された画像が表示されているので、操作者は、医療用台車の進行方向と患者との相対的な位置関係を把握しやすくなる。そのため、操作者は、ガイド情報に従って患者に対して適切な位置に医療用台車を移動させることができる。その結果、患者に対してアームを精度よく位置決めすることが可能な手術支援ロボットの制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、上記のように、患者に対してアームを精度よく位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態による外科手術システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータの構成を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態による医療用台車の構成を示す斜視図である。
【
図6】患者の体表面に挿入されたトロカールを示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータのアームの構成を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータの操作部の構成を示す斜視図である。
【
図11】アームの並進移動を説明するための図である。
【
図12】アームの回転移動を説明するための図である。
【
図13】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図14】表示部に映し出されたトロカールと印部とガイド線とを示す図である。
【
図15】ガイド線の表示および非表示を選択するための選択操作部を示す図である。
【
図16】医療用台車の回動の半径の算出を説明するための図である。
【
図17】医療用台車の回動の半径の算出を説明するための図である。
【
図18】表示部に表示するガイド線の半径の算出を説明するための図である。
【
図19】
図4とは異なるロールイン姿勢を示す図である。
【
図20】本開示の一実施形態による手術支援ロボットの制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図21】本開示の一実施形態による医療用台車の表示部を示す図である。
【
図22】本開示の一実施形態による医療用台車の表示部を示す図である。
【
図23】表示部に映し出されたトロカールと印部との位置合わせを示す図である。
【
図24】表示部に表示されたガイド線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を具体化した本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1~
図24を参照して、本実施形態による外科手術システム100の構成について説明する。外科手術システム100は、患者P側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。なお、医療用マニピュレータ1は、手術支援ロボットの一例である。
【0016】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。モニタ24は、内視鏡6により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に配置されたセンサにより術者の頭部を検知することにより医療用マニピュレータ1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、医療用マニピュレータ1に送信される。
【0017】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが配置されている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。
【0018】
また、医療用台車3には、入力装置33が配置されている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。なお、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60によりロボット本体部1aが形成されている。
【0019】
図1および
図2に示すように、医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い棒形状を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の根元部が、アームベース50に取り付けられている。複数のアーム60は、折り畳まれた収納姿勢をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、滅菌ドレープにより覆われて使用される。
【0020】
本実施形態では、アームベース50には、撮影部51が配置されている。撮影部51は、手術台5に載置された患者Pを撮影する。また、撮影部51は、手術台5に載置され体表面SにトロカールTが挿入された患者Pに対してアームベース50およびアーム60を位置合わせするために配置されている。
【0021】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3のケーシング34上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50を移動させる。具体的には、ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元的に移動させるように構成されている。
【0022】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。
【0023】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、医療器具4が取り付けられている。医療器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、
図7に示す内視鏡6などからなる。
【0024】
図2に示すように、医療器具4としてのインストゥルメントには、アーム60のホルダ71に配置されたサーボモータM2によって駆動される被駆動ユニット4aが配置されている。また、インストゥルメントの先端には、エンドエフェクタ4bが配置されている。エンドエフェクタ4bは、関節を有する器具として、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステーブルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤーなどを含む。また、エンドエフェクタ4bは、関節を有しない器具として、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィスなどを含む。また、医療器具4は、被駆動ユニット4aとエンドエフェクタ4bとを接続するシャフト4cを含む。被駆動ユニット4aと、シャフト4cと、エンドエフェクタ4bとは、Z方向に沿って配置されている。
【0025】
また、本実施形態では、
図3および
図4に示すように、医療用台車3には、撮影部51により撮影された画像が表示される表示部33aが配置されている。表示部33aは、医療用台車3の入力装置33に配置されている。表示部33aには、撮影部51により撮影された患者Pがリアルタイムで表示されるように構成されている。また、
図5に示すように、表示部33aには、撮影部51により撮影された患者Pの画像と、アームベース50と患者Pとの位置合わせのための印部MKと、が重畳して表示される。具体的には、表示部33aには、撮影部51により撮影された患者Pの体表面Sから内視鏡6を挿入するための
図6に示すトロカールTの画像と、アームベース50とトロカールTとの位置合わせのための印部MKと、が重畳して表示される。そして、表示部33aに表示される印部MKは、表示部33a上において、表示部33aに映し出されたトロカールTと位置合わせされることにより、手術台5に載置された患者Pの手術位置に対して、アーム60が位置合わせされる。
【0026】
なお、表示部33a上に映し出された患者PおよびトロカールTの画像は、撮影部51によって実際に撮影された画像であり、印部MKは、制御部31によって生成されたGUI(Graphical User Interface)画像であり、記憶部32に保存される。そして、制御部31には、撮影部51から得られた画像を表示部33aに表示する、
図1および
図2に示される画像処理回路31cが搭載されている。制御部31に搭載するFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いた画像処理回路31cは、記憶部32に保存された撮影部51によって実際に撮影された患者PおよびトロカールTの画像と、GUI画像により構成された印部MKおよび後述するガイド線GLとを合成して、人が認知しない程度の遅れでリアルタイムに表示部33aに表示する。なお、画像処理回路31cは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の他に、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはシステムオンチップ(SOC)などで構成しても良い。なお、画像処理回路31cは、制御部の一例である。
【0027】
具体的には、トロカールTは、内視鏡6が挿入される第1トロカールT1と、内視鏡6以外の医療器具4が挿入される第2トロカールT2とを含む。そして、表示部33aに表示される印部MKは、表示部33a上において、第1トロカールT1に位置合わせされる第1印部MK1と、第2トロカールT2に位置合わせされる第2印部MK2とを含む。詳細には、第1印部MK1は、表示部33aの略中央に表示されるとともに略円形状を有している。また、第2印部MK2は、略円形状の第1印部MK1を中心とする十字線形状を有する。また、第2印部MK2は、略円形状の第1印部MK1の中心で交差する十字線形状を有する。なお、第1印部MK1は、印部の一例である。また、第1トロカールT1は、トロカールの一例である。
【0028】
また、略円形状の第1印部MK1の大きさは、表示部33aに映し出された第1トロカールT1の大きさよりも大きい。具体的には、略円形状の第1印部MK1の直径は、断面が略円形状を有する第1トロカールT1の直径よりも大きい。
【0029】
また、患者Pの体表面Sにおいて、第2トロカールT2は、複数配置されている。複数の第2トロカールT2は、略直線上に配置されている。また、トロカールTは、複数のアーム60に対応するように、第2トロカールT2、第1トロカールT1、第2トロカールT2および第2トロカールT2の順に配置されている。なお、本実施形態では、アーム60の数は、4つである。
【0030】
また、表示部33aは、略矩形形状を有している。たとえば、表示部33aは、操作者から見て、横長の長方形形状を有する。そして、十字線形状の第2印部MK2は、略矩形形状の表示部33aの縦方向に沿って配置され略直線状の第1線部L1と、略矩形形状の表示部33aの横方向に沿って配置され略直線状の第2線部L2とを含む。そして、医療用マニピュレータ1は、表示部33a上において、複数の第2トロカールT2が、第1線部L1または第2線部L2に沿うように位置合わせされるように構成されている。
【0031】
また、表示部33aにおける第1線部L1および第2線部L2の表示は、表示部33a上において固定されている。また、表示部33aは、医療用台車3に対して固定されている。これにより、第1線部L1に沿った方向が医療用台車3の進行方向に対応する。なお、医療用台車3の進行方向とは、前後方向である。また、表示部33a上において、患者Pが映し出された画像は、アームベース50の移動や医療用台車3の移動とともに変化する。
【0032】
また、表示部33aに映し出された患者Pの画像とともに第1印部MK1の画像を拡大または縮小する倍率変更ボタンBが表示されている。倍率変更ボタンBは、タッチパネル上に表示されている。倍率変更ボタンBが押下されることにより、画像の拡大率が、100%、200%、400%、100%、200%の順にループして変更される。また、画像の拡大率が100%の場合、手術台5の端部と、近傍にいる助手や看護師まで表示部33aに表示される。
【0033】
そして、表示部33a上において、表示部33aに映し出された第1トロカールT1と第1印部MK1とが位置合わせされ、表示部33aに映し出された第2トロカールT2と第2印部MK2とが位置合わせされることにより、手術台5に載置された患者Pの手術位置に対して、アーム60が位置合わせされる。なお、患者Pの手術位置に対するアーム60の位置合わせの詳細については、後述する。また、患者Pの手術位置に対するアーム60の位置合わせを、ロールインと呼ぶ。
【0034】
また、
図3に示すように、医療用台車3の表示部33aの近傍には、ポジショナ40の移動を操作するジョイスティック33bが配置されている。表示部33aに表示される動作モードを選択し、ジョイスティック33bを操作することによりポジショナ40を3次元的に操作できる。そして、ロールイン時は、ジョイスティック33bが操作されることによりアームベース50が2次元平面上を移動するようにポジショナ40が移動される。そして、表示部33a上において、表示部33aに映し出されたトロカールTと印部MKとが位置合わせされる。具体的には、ジョイスティック33bは、入力装置33において、表示部33aの横方向の略中央でかつ、表示部33aの下方に配置されている。
【0035】
また、医療用台車3のジョイスティック33bの近傍には、ポジショナ40の移動を許可または不許可とするイネーブルスイッチ33cが配置されている。そして、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、ポジショナ40が移動される。具体的には、イネーブルスイッチ33cは、入力装置33において、表示部33aの下方でかつ、ジョイスティック33bに隣り合うように配置されている。
【0036】
また、本実施形態では、医療用台車3は、操作者による操舵を受け付ける操作ハンドル35を含む。そして、医療用台車3は、受け付けた操舵に基づいて、ロボット本体部1aを移動させる。なお、操作ハンドル35は、操舵部の一例である。
【0037】
また、操作ハンドル35は、医療用台車3の表示部33aの近傍に配置されている。そして、操作ハンドル35は、看護師、技師などの操作者が把持するとともに回動されることにより医療用台車3の移動を操作するスロットル部35aを有する。具体的には、操作ハンドル35は、入力装置33の下方に配置されている。また、
図3に示すように、スロットル部35aは、操作ハンドル35の片方に配置されている。そして、スロットル部35aが、手前側から奥側に回動されることにより、医療用台車3が前進する。また、スロットル部35aが、奥側から手前側に回動されることにより、医療用台車3が後進する。また、スロットル部35aの回動量に応じて医療用台車3の速度が変更される。また、操作ハンドル35は、R方向で示される左右に回動可能に構成されており、操作ハンドル35の回動とともに医療用台車3が回動する。
【0038】
また、医療用台車3の操作ハンドル35に、医療用台車3の移動を許可または不許可とするイネーブルスイッチ35bが配置されている。そして、イネーブルスイッチ35bが押下され医療用台車3の移動が許可された状態で操作ハンドル35のスロットル部35aが操作されることにより、医療用台車3が移動される。
【0039】
また、表示部33a上において、表示部33aに映し出されたトロカールTと印部MKとが位置合わせされている間、ポジショナ40は、撮影部51が鉛直下方を撮影するようにアームベース50を移動させるように制御されている。なお、この制御は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31により行われる。
【0040】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0041】
図8に示すように、アーム60は、アーム部61と、アーム部61の先端に配置される並進移動機構部70とを含む。アーム部61は、ベース部62、リンク部63および関節部64を含む。アーム60は、アーム60の根元側のアームベース50に対して先端側を3次元に移動させるように構成されている。また、アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。
【0042】
アーム60は、回転軸としてのJT1~JT7軸と、直動軸としてのJ8軸とを備えている。JT1~JT7軸は、アーム部61の関節部64の回転軸に対応する。また、JT7軸は、並進移動機構部70の基端側リンク部72に対応する。JT8軸は、並進移動機構部70の先端側リンク部73を基端側リンク部72に対してZ方向に沿って相対的に移動させる軸に対応する。すなわち、
図13に示すサーボモータM1は、アーム60のJT1~JT7軸のそれぞれに配置されている。また、サーボモータM3は、JT8軸に配置されている。
【0043】
並進移動機構部70は、アーム部61の先端に配置されるとともに医療器具4が取り付けられている。また、並進移動機構部70は、医療器具4を患者Pに挿入する方向に並進移動させる。また、並進移動機構部70は、医療器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、医療器具4を保持するホルダ71が配置されている。ホルダ71には、
図13に示すサーボモータM2が収容されている。
【0044】
また、
図8に示すように、医療用マニピュレータ1は、アーム60に取り付けられ、アーム60を操作する操作部80を備えている。
図9に示すように、操作部80は、イネーブルスイッチ81と、ジョイスティック82とスイッチ部83とを含む。イネーブルスイッチ81は、ジョイスティック82およびスイッチ部83によるアーム60の移動を許可または不許可とする。また、イネーブルスイッチ81は、看護師、助手などの操作者が操作部80を把持して押下されることによりアーム60による医療器具4の移動を許可する状態となる。
【0045】
また、スイッチ部83は、医療器具4の長手方向に沿った医療器具4を患者Pに挿入する方向側に医療器具4を移動させるスイッチ部83aと、医療器具4を患者Pに挿入する方向と反対側に医療器具4を移動させるスイッチ部83bとを含む。スイッチ部83aとスイッチ部83bとは、共に、押しボタンスイッチから構成されている。
【0046】
また、
図9に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4の移動の
図12に示される支点となるピボット位置PPを教示するピボットボタン85を含む。ピボットボタン85は、操作部80の面80bに、イネーブルスイッチ81に隣り合うように配置されている。そして、
図7に示される内視鏡6または
図10に示されるピボット位置教示器具7の先端が、患者Pの体表面Sに挿入されたトロカールTの挿入位置に対応する位置まで移動された状態で、ピボットボタン85が押下されることによりピボット位置PPが教示され、記憶部32に記憶される。なお、ピボット位置PPの教示において、ピボット位置PPは、1つの点として設定され、ピボット位置PPの教示は、医療器具4の方向を設定するものではない。
【0047】
また、
図1に示すように、複数のアーム60のうちの一つの、たとえば、アーム60cには内視鏡6が取り付けられ、残りの、たとえば、アーム60a、60bおよび60dには、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられる。具体的には、手術において、4つのアーム60のうちの1つのアーム60に内視鏡6が取り付けられ、3つのアーム60に内視鏡6以外の医療器具4としての鉗子などが取り付けられる。そして、内視鏡6が取り付けられているアーム60に対して、内視鏡6が取り付けられた状態でピボット位置PPが教示される。また、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられるアーム60に対して、ピボット位置教示器具7が取り付けられた状態でピボット位置PPが教示される。なお、内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのアーム60のうちの、中央に配置される2つのアーム60bおよび60cのうちのいずれかに取り付けられる。すなわち、ピボット位置PPは、複数のアーム60毎に個別に設定される。
【0048】
また、
図9に示すように、操作部80の面80bには、アーム60の位置を最適化するためのアジャストメントボタン86が配置されている。内視鏡6が取り付けられたアーム60に対するピボット位置PPの教示後、アジャストメントボタン86が押下されることにより、他のアーム60およびアームベース50の位置が最適化される。
【0049】
また、
図9に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4を
図11に示される並進移動させるモードと、
図12に示される回転移動させるモードとを切り替えるモード切替ボタン84を含む。また、モード切替ボタン84の近傍には、モードインジケータ84aが配置されている。モードインジケータ84aは、切り替えられたモードを表示する。具体的には、モードインジケータ84aが点灯は、回転移動モードを表し、消灯は、並進移動モードを表す。
【0050】
また、モードインジケータ84aは、ピボット位置PPが教示されたことを表示するピボット位置インジケータを兼ねている。
【0051】
図11に示すように、アーム60を並進移動させるモードでは、医療器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、アーム60が移動される。また、
図12に示すように、アーム60を回転移動させるモードでは、ピボット位置PPが教示されていない時は、鉗子を中心に回転移動し、ピボット位置PPが教示されている時は、ピボット位置PPを支点として医療器具4が回転移動するように、アーム60が移動される。なお、医療器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入された状態で、医療器具4が回転移動される。
【0052】
また、
図13に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機とが配置されている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0053】
また、並進移動機構部70には、医療器具4の被駆動ユニット4aに配置された回転体を回転させるための複数のサーボモータM2と、医療器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、複数のエンコーダE2およびエンコーダE3と、複数の減速機とが配置されている。エンコーダE2およびエンコーダE3は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。複数の減速機は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0054】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機とが配置されている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0055】
また、本実施形態では、
図16に示すように、医療用台車3は、駆動輪としての前輪3aと、操作ハンドル35によって操舵される後輪3bとを有する。なお、後輪3bは、前輪3aよりも操作ハンドル35に近い側に配置されている。また、
図13に示すように、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪3aの各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機とブレーキが配置されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。また、医療用台車3の操作ハンドル35には、
図3に示すポテンショメータP1が配置されており、スロットル部35aの捻りに応じてポテンショメータP1で検出した回転角に基づき、前輪3aのサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の後輪3bは、双輪形式であり、操作ハンドル35の左右の回動に基づき、後輪は操舵される。また、医療用台車3の操作ハンドル35には、
図2に示すポテンショメータP2が配置されており、医療用台車3の後輪3bには、サーボモータM6とエンコーダE6と減速機が配置されている。減速機は、サーボモータM6の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。操作ハンドル35の左右の回動に応じてポテンショメータP2で検出した回転角に基づき、サーボモータM6は駆動される。すなわち、操作ハンドル35の左右の回動による後輪3bの操舵は、サーボモータM6によりパワーアシストされるように構成されている。
【0056】
また、医療用台車3は、前輪3aが駆動されることにより、前後方向に移動する。また、医療用台車3の操作ハンドル35が回動されることにより、後輪3bが操舵されて、医療用台車3が左右方向に回動する。
【0057】
医療用台車3の制御部31は、指令に基づいて複数のアーム60の移動を制御するアーム制御部31aと、指令に基づいてポジショナ40の移動および医療用台車3の前輪3aの駆動を制御するポジショナ制御部31bとを含む。アーム制御部31aには、アーム60を駆動するためのサーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0058】
また、アーム制御部31aには、医療器具4を駆動するためのサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。また、アーム制御部31aには、並進移動機構部70を並進移動するためのサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0059】
そして、遠隔操作装置2に入力された動作指令が、アーム制御部31aに入力される。アーム制御部31aは、入力された動作指令と、エンコーダE1、E2またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1、C2またはC3に出力する。サーボ制御部C1、C2またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1、E2またはE3により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1、M2またはM3に出力する。これにより、遠隔操作装置2に入力された動作指令に沿うように、アーム60が移動される。
【0060】
また、制御部31のアーム制御部31aは、操作部80のジョイスティック82からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1に出力する。これにより、ジョイスティック82に入力された動作指令に沿うように、アーム60が移動される。
【0061】
制御部31のアーム制御部31aは、操作部80のスイッチ部83からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、スイッチ部83から入力された入力信号と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、スイッチ部83に入力された動作指令に沿うように、アーム60が移動される。
【0062】
また、ポジショナ制御部31bには、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の前輪3aを駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の後輪3bを駆動するサーボモータM6を制御するためのサーボ制御部C6が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C6には、サーボモータM6の回転角を検出するためのエンコーダE6が電気的に接続されている。
【0063】
また、入力装置33から準備位置の設定などに関する動作指令が、ポジショナ制御部31bに入力される。ポジショナ制御部31bは、入力装置33から入力された動作指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C4に出力する。サーボ制御部C4は、ポジショナ制御部31bから入力された位置指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて、電流指令を生成するとともに、電流指令をサーボモータM4に出力する。これにより、入力装置33に入力された動作指令に沿うように、ポジショナ40が移動される。同様に、入力装置33からの動作指令に基づいて、ポジショナ制御部31bは、医療用台車3を移動させる。
【0064】
上記のように、本実施形態では、
図16に示すように、医療用台車3は、駆動輪としての前輪3aと、操作ハンドル35によって操舵される後輪3bとを含む。前輪3aは、2つ配置されている。2つの前輪3aは、医療用台車3の側方に各々に配置されている。このように、操作ハンドル35によって後輪3bが操舵される場合、操作ハンドル35の操舵された方向と、医療用台車3の回動方向とが反対になる。たとえば、操作者が操作ハンドル35を右側に回動させた場合、医療用台車3は、左に回動する。このため、操作者は、医療用台車3の進行方向が直観的に分かりづらい。
【0065】
そこで、本実施形態では、
図14に示すように、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角に基づいて、医療用台車3の進行方向を示すガイド線GLを撮影部51により撮影された患者Pの画像に重畳させて表示部33aに表示させる制御を行う。具体的には、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角と、ロボット本体部1aの姿勢に対する撮影部51の位置とに基づいて、ガイド線GLを表示部33aに表示させる制御を行う。なお、患者Pの手術位置に対してアーム60を位置合わせする際のロボット本体部1aの姿勢を、ロールイン姿勢と呼ぶ。また、ガイド線GLは、ガイド情報の一例である。
【0066】
また、本実施形態では、ガイド線GLは、表示部33aの表示画面33a1の中心近傍を基端として医療用台車3の進行方向に沿って延びる。なお、表示画面33a1の中心近傍とは、中心そのものと、中心の近傍とを含む概念である。また、上記のように、表示部33aには、撮影部51により撮影された患者Pの体表面Sから内視鏡6を挿入するための第1トロカールT1の画像が表示されている。そして、画像処理回路31cは、ロボット本体部1aと第1トロカールT1との位置合わせのための第1印部MK1を表示部33aの表示画面33a1の中心に表示させ、第1印部MK1を基端として医療用台車3の進行方向に沿って延びるようにガイド線GLを表示させる制御を行う。なお、
図14では、第1印部MK1の外周縁からガイド線GLが延びているが、第1印部MK1の中心から延びるようにガイド線GLが表示されてもよい。また、第1印部MK1は、印部の一例である。
【0067】
また、本実施形態では、ガイド線GLは、操作者による操作ハンドル35の操舵により回動する医療用台車3の回動方向に沿って円弧状に延びる。すなわち、ガイド線GLは、第1印部MK1を基端として円弧状に延びる。なお、ガイド線GLの算出方法については後述する。
【0068】
また、本実施形態では、画像処理回路31cは、医療用台車3の前進時にガイド線GLを表示部33aに表示させる制御を行う。なお、前進時とは、医療用台車3が患者Pに近づくように移動する際を意味する。すなわち、医療用台車3の後進時には、表示部33aにはガイド線GLが表示されない。
【0069】
また、本実施形態では、画像処理回路31cは、イネーブルスイッチ35bの許可信号を受け付けている間のみガイド線GLを表示部33aに更新して表示させる制御を行う。具体的には、画像処理回路31cは、画像処理回路31cの制御周期毎に、ガイド線GLを計算し、計算したガイド線GLをイネーブルスイッチ35bが押下されている間のみ、表示部33aに更新して表示させる制御を行う。すなわち、ガイド線GLは、表示部33aに1本のみ表示される。そして、操作者の操作ハンドル35の操舵により操舵角が変更された場合、変更された操舵角に対応するガイド線GLが、イネーブルスイッチ35bが押下されている間のみ、表示部33aに更新して表示される。イネーブルスイッチ35bが押下されていない場合は、更新前のガイド線GLが表示部33aに表示される。たとえば、
図14に示すように、現在の操舵角に対応するガイド線GLが実線で示されている。そして、操舵角が変更された場合には、変更された操舵角に対応するように
図14において点線で示されるガイド線GLが表示される。
【0070】
また、本実施形態では、
図15に示すように、医療用マニピュレータ1は、表示部33aにガイド線GLを表示するか否かを操作者に選択させるための選択操作部33a2を備えている。具体的には、選択操作部33a2は、表示部33aに表示されるタッチボタンからなる。選択操作部33a2は、ONボタンとOFFボタンとを有する。操作者がONボタンを押下することにより、ロールインの際に表示部33aにガイド線GLが表示される。操作者がOFFボタンを押下すると、ロールインの際に表示部33aにガイド線GLは表示されない。
【0071】
次に、画像処理回路31cによるガイド線GLの計算方法について説明する。
【0072】
まず、
図16に示すように、操作者によって、医療用台車3の操作ハンドル35が操舵される。これにより、画像処理回路31cには、操作ハンドル35の操舵情報が入力される。画像処理回路31cは、入力された操舵情報に基づいて、操作ハンドル35の操舵角を算出する。具体的には、以下の式(1)により操舵角が算出される。
θm=(V
tIN-V
FS/2-V
to)×φ
e/2 ・・・(1)
ここで、θmは、操作ハンドル35の操舵角である。V
tINは、ポテンショメータP2に入力される電圧である。V
FSは、ポテンショメータP2のフルスケール電圧である。V
toは、オフセット調整電圧である。φ
eは、ポテンショメータP2の片側有効電気角である。
【0073】
また、
図17に示すように、画像処理回路31cは、以下の式(2)に基づいて、操作ハンドル35の操舵に伴って医療用台車3が回動する円の半径を算出する。
r=l/sin(θm) ・・・(2)
ここで、rは、医療用台車3が回動する円の半径である。lは、医療用台車3のホイールベースである。ホイールベースは、医療用台車3を側方から見たときの前輪3aと後輪3bとの間の距離である。
【0074】
また、画像処理回路31cは、円の中心座標を(0,0)として、以下の式(3―1)~(3-3)に基づいて後輪3bの座標(X,Y)を算出する。
X=r×cos(θm) ・・・(3―1)
X=r×cos(θm)×(-1) ・・・(3―2)
Y=l×(-1) ・・・(3―3)
なお、式(3―1)は、医療用台車3が左に回動する場合のX座標であり、式(3―2)は、医療用台車3が右に回動する場合のX座標である。
【0075】
次に、
図18に示すように、画像処理回路31cは、撮影部51の中心座標と、表示部33aに表示する円弧状のガイド線GLの半径rcを算出する。まず、撮影部51の水平面上の位置は、ロールイン姿勢によって異なる。たとれば、ロールイン姿勢は、
図4に示すように、患者Pの頭から足に向かう方向に対して直交するように4つのアーム60が配置されている姿勢や、
図19に示すように、患者Pの頭から足に向かう方向に沿うように4つのアーム60が配置されている姿勢などがある。このようにロールイン姿勢によって撮影部51の水平面上の位置が異なる。なお、ロールイン姿勢が変わっても撮影部51の高さ位置は変わらない。
【0076】
そして、画像処理回路31cは、各ロールイン姿勢における撮影部51の位置と、医療用台車3の後輪3bの座標(X,Y)とに基づいて、中心座標を(0,0)としたときの撮影部51の中心座標(Xc,Yc)と、表示部33aに表示する円弧状のガイド線GLの半径rcとを、以下の式(4―1)~(4-3)から算出する。
【0077】
具体的には、各ロールイン姿勢において、撮影部51の中心位置のX座標であるXcは、ロールインの挿入方向と、医療用台車3が左に回動されるかまたは右に回動されるかによって、下記の式(4-1)により決定される。
Xc=X-400、または、X+400 ・・・(4-1)
【0078】
また、各ロールイン姿勢において、撮影部51の中心位置のY座標であるYcは、ロールインの姿勢によって、下記の式(4-2)により決定される。
Yc=760、1340、または、660 ・・・(4-2)
【0079】
そして、表示部33aに表示される円弧状のガイド線GLの半径rcは、三平方の定理を用いて、下記の式(4-3)により算出される。
rc=√(Xc2+Yc2) ・・・(4-3)
【0080】
そして、
図14に示すように、画像処理回路31cは、算出したガイド線GLの半径rcに基づいて、表示部33aの表示画面33a1に、撮影部51により撮影された患者Pの画像に重畳させてガイド線GLを表示させる制御を行う。操作者は、ガイド線GLが第1トロカールT1に合うように操作ハンドル35を操舵する。
【0081】
(手術支援ロボットの制御方法)
次に、医療用マニピュレータ1のロールイン時の制御方法について説明する。なお、予め患者Pの体表面Sには、1つの第1トロカールT1、および、3つの第2トロカールT2が挿入されている。また、アームベース50の高さ位置は固定されている。また、選択操作部33a2によって、表示部33aにガイド線GLを表示することが選択されているとする。
【0082】
まず、
図20に示すように、ステップS1において、医療用マニピュレータ1のロールインの準備が行われる。具体的には、
図21および
図22に示すように、表示部33aにおいて、術部と、患者Pに対する医療用マニピュレータ1の挿入方向が選択される。なお、術部とは、腹部などである。また、挿入方向は、右側から、などである。
【0083】
次に、ステップS2において、表示部33aに表示されているロールインのボタンが押下される。これにより、ロールインモードが設定され、医療用マニピュレータ1がロールイン姿勢をとるようにアームベース50およびアーム60の移動動作を制御する。ロールイン姿勢は、医療用マニピュレータ1の移動によってアーム60が患者Pの上方に位置付けられたときに、患者Pと干渉しないように各アーム60が折畳まれた姿勢であり、アームベース50に配置された撮影部51が鉛直下方を撮影できるようにポジショナ40によってアームベース50が配置された姿勢であり、且つ、ステップS1で選択された術部の情報と挿入方向の情報に基づいて各アーム60の配列方向が対応するようにポジショナ40によってアームベース50が配置された姿勢である。即ち、表示部33aに表示されているロールインのボタンが押下されロールインモードに移行後、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、制御部31は、自動的に医療用マニピュレータ1がロールイン姿勢をとるようにポジショナ40および各アーム60を移動させる。
【0084】
次に、ステップS3において、
図23に示すように、アーム60の移動動作後、表示部33aの画面が、撮影部51によって撮影される画像に切り替わる。すなわち、アームベース50に配置された撮影部51による撮影画像の表示が開始される。これにより、患者Pの画像が表示部33aに表示される。また、表示部33aには、第1印部MK1および第2印部MK2を含む印部MKが表示されている。この撮影では、動画としての撮影が行われている。なお、術部の情報の入力、患者Pに対する医療用マニピュレータ1の挿入方向の情報の入力、および患者Pに対してアームベース50を位置合わせするモードの設定入力に基づいて、ポジショナ40が、複数のアーム60の配置の方向が対応するようにアームベース50を移動させるように制御されている。また、ロールイン姿勢において、ステップS1で選択された術部と挿入方向に各アーム60の配列方向を対応させるためにアームベース50が水平面内で回動した場合、撮影画像は、アームベース50の回動と反対方向に回動した状態に補正されて表示部33aに表示される。これにより、看護師、技師などの操作者は、操作者の向きに対応する向きに補正された患者Pの画像を見て医療用マニピュレータ1の移動を開始することができる。
【0085】
ここで、本実施形態では、画像処理回路31cは、医療用台車3の操作ハンドル35に対する操舵を受け付ける。そして、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角に基づいて、医療用台車3の進行方向を示すガイド線GLを撮影部51により撮影された患者Pの画像に重畳させて表示部33aに表示させる制御を行う。
【0086】
なお、操作ハンドル35を左右に回動させていない時は、表示部33aに表示された第2印部MK2の第1線部L1およびガイド線GLが医療用台車3の進行方向と一致している。ここで、第1線部L1およびガイド線GLは半透明に表示されるため、重畳して表示されても、それぞれ識別できる。また、表示部33aにおける第1線部L1および第2線部L2の表示は、表示部33a上において固定されている。また、表示部33a上に映し出される画像は、アームベース50の移動や医療用台車3の移動とともに変化する。
【0087】
次に、ステップS4において、
図23に示すように、医療用台車3が手術台5に載置された患者Pの近傍に移動されることにより、アームベース50に配置された撮影部51により、手術台5に載置され体表面SにトロカールTが挿入された患者Pが撮影される。これにより、撮影部51により撮影された体表面SにトロカールTが挿入された患者Pが表示部33aに表示される。また、表示部33aに映し出されたトロカールTに位置合わせされる印部MKが表示部33aに表示されている。この際、医療用台車3の移動に伴うアームベース50の移動とともに変化する、患者Pの体表面Sに挿入されたトロカールTと印部MKとの相対的な位置関係が表示部33a上に表示される。
【0088】
具体的には、表示部33aには、予め、略円形状の第1印部MK1と、十字線形状の第2印部MK2とが表示されている。そして、表示部33aには、第1印部MK1と第2印部MK2とにオーバラップするように、撮影部51に撮影された患者Pの体表面Sが表示される。また、患者Pの画像に重畳するように、ガイド線GLが表示部33aに表示されている。
【0089】
また、ガイド線GLは、イネーブルスイッチ35bの許可信号を受け付けている間のみ、表示部33aに更新して表示される。すなわち、ガイド線GLは、イネーブルスイッチ35bが押下され医療用台車3が移動している間のみ、表示部33aに更新して表示される。
【0090】
次に、ステップS5において、操作者は、表示部33aに映し出された撮影部51によって撮影された画像を視認しながら、略円形状の第1印部MK1の内部に第1トロカールT1が配置されるように、操作ハンドル35を操作して医療用台車3を移動させる。なお、ロールイン姿勢において、ステップS1で選択された術部と挿入方向に各アーム60の配列方向を対応させるようにアームベース50が水平面内で回動されているので、表示部33a上において、略円形状の第1印部MK1の内部に第1トロカールT1が配置された状態で、複数の第2トロカールT2が、第2印部MK2の第1線部L1または第2線部L2上に沿って、ほぼ配置される。
【0091】
なお、ステップS5において、トロカールTと第1線部L1または第2線部L2とがずれている場合、操作者によりイネーブルスイッチ33cが押下された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、アームベース50が水平面内を回転移動される。これにより、アームベース50の位置が微調整される。なお、患者Pの体表面Sの画像は、医療用台車3やアームベース50の回動に伴って回動する。一方、表示部33aにおいて、第1印部MK1と第2印部MK2とは固定されている。また、倍率変更ボタンBが押下されることにより、操作者が視認しやすいように画像の拡大率を切り替えることが可能である。
【0092】
そして、
図24に示すように、ジョイスティック33bが操作されることにより、表示部33a上において、表示部33aに映し出されたトロカールTと印部MKとが位置合わせされるように微調整される。具体的には、略円形状の第1印部MK1の内部に第1トロカールT1が配置された状態で、複数の第2トロカールT2が、第2印部MK2の第1線部L1または第2線部L2上に沿って配置されるように、アームベース50が水平面内で回転移動されることにより、アームベース50の位置が微調整される。
図24では、複数の第2トロカールT2が、第1線部L1に沿って配置されるように、アームベース50が回転移動される。これにより、医療用マニピュレータ1のロールインが完了する。なお、術式によっては、必ずしも複数の第2トロカールT2が、第2印部MK2の第1線部L1または第2線部L2上に沿って配置される必要はない。
【0093】
次に、ステップS6において、複数のアーム60がセットアップ姿勢に移行される。セットアップ姿勢とは、後述するピボット位置PPの教示を行いやすくするように、複数のアーム60がロールイン姿勢よりも開いた姿勢である。次に、表示部33a上のアーム準備のボタンが押下されセットアップ姿勢モードに移行後、イネーブルスイッチ33cが押下されポジショナ40の移動が許可された状態でジョイスティック33bが操作されることにより、制御部31は、医療用マニピュレータ1がセットアップ姿勢をとるようにポジショナ40および各アーム60を移動させる。セットアップ姿勢に移行された後、タッチパネルに表示されるスタビライザを許可するボタンを押下されると、医療用台車3に搭載されたスタビライザが起動する。
【0094】
次に、ステップS7において、第1トロカールT1に対応するアーム60に内視鏡6が取付けられピボット位置PPの教示が行われる。内視鏡6のピボット位置PPの教示が終わった後に、内視鏡6以外の医療器具4の取り付けとピボット位置PPの教示が行われる。
【0095】
なお、ステップS5においては、第1印部MK1の内部に第1トロカールT1が配置されるように医療用台車3を移動させたが、第1印部MK1と第1トロカールT1の位置合わせを行わずにアームベース50の下方に患者Pが配置される位置に医療用台車3を移動させるようにしても良い。この場合には、ステップS5において、操作者がイネーブルスイッチ33cを押下しながら、ジョイスティック33bを操作することにより、ロールイン姿勢を保った状態で、第1印部MK1と第1トロカールT1の位置合わせを行うように、アームベース50の水平面内の回転移動動作と並進移動動作が行われる。
【0096】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0097】
本実施形態では、上記のように、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角に基づいて、医療用台車3の進行方向を示すガイド線GLを撮影部51により撮影された患者Pの画像に重畳させて表示部33aに表示させる制御を行う。これにより、表示部33aには、ガイド線GLとともに、撮影部51により撮影された画像が表示されているので、操作者は、医療用台車3の進行動方向と患者Pとの相対的な位置関係を把握しやすくなる。そのため、操作者は、ガイド線GLに従って患者Pに対して適切な位置に医療用台車3を移動させることができる。その結果、患者Pに対してアーム60を精度よく位置決めすることができる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角と、ロボット本体部1aの姿勢に対する撮影部51の位置とに基づいて、ガイド線GLを表示部33aに表示させる制御を行う。これにより、操作ハンドル35の操舵角と撮影部51の位置とに基づいて、ガイド線GLを表示部33aの表示画面33a1の適切な位置に表示させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、ガイド線GLは、表示部33aの表示画面33a1の中心近傍を基端として医療用台車3の進行方向に沿って延びる。これにより、表示部33aの表示画面33a1の中心と撮影部51の現在の位置とを対応させるように表示部33aに撮影部51に撮影された画像を表示することにより、操作者は、現在の位置からの医療用台車3の進行方向をガイド線GLにより直観的に認識することができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、医療用台車3は、操作者による操作ハンドル35の操舵により回動し、ガイド線GLは、医療用台車3の回動方向に沿って円弧状に延びる。これにより、回動移動する医療用台車3の進行方向を円弧状のガイド線GLにより適切に表示することができる。
【0101】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理回路31cは、ロボット本体部1aと第1トロカールT1との位置合わせのための第1印部MK1を表示部33aの表示画面33a1の中心に表示させ、第1印部MK1を基端として医療用台車3の進行方向に沿って延びるようにガイド線GLを表示させる制御を行う。これにより、表示画面33a1の中心に表示された第1印部MK1と第1トロカールT1とを位置合わせするように医療用台車3を操舵する場合に、ガイド線GLに沿って適切に医療用台車3を操舵することができる。
【0102】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理回路31cは、医療用台車3の前進時にガイド線GLを表示部33aに表示させる制御を行う。これにより、患者Pの手術位置に対してアーム60を位置合わせする際には、操作者が医療用台車3を前進させるので、操作者は、患者Pの手術位置に対してアーム60を位置合わせする際にガイド線GLに従って適切に医療用台車3を操舵することができる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理回路31cは、イネーブルスイッチ35bの許可信号を受け付けている間のみガイド線GLを表示部33aに更新して表示させる制御を行う。これにより、イネーブルスイッチ35bが押下されて医療用台車3が進行している際に操作ハンドル35の操舵角が変更された場合でも、適切なガイド線GLを表示部33aに表示させることができる。
【0104】
また、本実施形態では、上記のように、医療用マニピュレータ1は、表示部33aにガイド線GLを表示するか否かを操作者に選択させるための選択操作部33a2を備える。これにより、操作者は、必要に応じてガイド線GLの表示と非表示とを選択することができる。
【0105】
また、本実施形態では、上記のように、選択操作部33a2は、表示部33aに表示されるタッチボタンからなる。これにより、患者Pの画像およびガイド線GLが表示される表示部33aにタッチボタンが表示されるので、選択操作部33a2が他の部分に配置されている場合と比べて、操作者の操作の利便性を向上させることができる。
【0106】
また、本実施形態では、上記のように、医療用台車3は、駆動輪としての前輪3aと、操作ハンドル35によって操舵される後輪3bとを含む。ここで、前輪3aが駆動輪で後輪3bが操舵輪の場合、操作ハンドル35が操舵された方向と、医療用台車3の回動方向とが反対になる。この場合、操作者は、操舵に対する医療用台車3の進行方向が直観的に分かりにくい。そこで、操作ハンドル35の操舵角に基づいて、医療用台車3の進行方向を示すガイド線GLを表示部33aに表示させることは、医療用台車3の進行方向を直観的に理解し易くする点において特に重要である。
【0107】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0108】
たとえば、上記実施形態では、表示部33aに円弧状のガイド線GLが表示される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、医療用台車3の進行方向を示す矢印が表示部33aに表示されてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、医療用マニピュレータ1のロールイン姿勢に基づいて、撮影部51の位置が算出される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、医療用マニピュレータ1の制御のための座標系に基づいて、撮影部51の位置を算出してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、ガイド線GLが、表示部33aの表示画面33a1の中心に表示される第1印部MK1を基端として表示される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、表示部33aの表示画面33a1の中心に第1印部MK1が表示されない状態で、表示画面33a1の中心を基端としてガイド線GLが表示されてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、医療用台車3が前進するときにのみガイド線GLが表示部33aに表示される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、医療用台車3が前進するときと後進するときとの両方において、ガイド線GLが表示部33aに表示されてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、イネーブルスイッチ35bの許可信号を受け付けている間のみガイド線GLを表示部33aに更新して表示させる制御を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、イネーブルスイッチ35bの許可信号を受け付けていない場合において、操作ハンドル35の操舵角が変更された際に、変更後の操舵角に対応するガイド線GLが表示されてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、ロールイン姿勢が変わっても撮影部51の高さ位置は変わらない例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロールイン姿勢によって、または、ロールインの途中で撮影部51の高さ位置が変わってもよい。ここで、撮影部51の高さ位置が変更された場合には、撮影部51の視野が変化するので、表示部33aに表示される患者Pの画像に対するガイド線GLの位置関係が適切でなくなる。そこで、画像処理回路31cは、ロボット本体部1aの制御のための座標系に基づいて撮影部51の高さ位置を取得する。そして、画像処理回路31cは、操作ハンドル35の操舵角と、ロボット本体部1aの姿勢に対する撮影部51の平面的な位置と、取得した撮影部51の高さ位置とに基づいて、ガイド線GLを表示部33aに表示させる制御を行う。これにより、取得された撮影部51の高さ位置に対応させて表示部33aに表示される患者Pの画像に対するガイド線GLの位置を調整することができるので、撮影部51の高さ位置が変更された場合でもガイド線GLを表示部33aに表示させることができる。
【0114】
また、上記実施形態では、操作者により、表示部33aにガイド線GLを表示するか否かが選択される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、表示部33aにガイド線GLが必ず表示されてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、選択操作部33a2が、表示部33aに表示されるタッチボタンからなる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、選択操作部33a2を押しボタンスイッチなどにより構成してもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、医療用台車3の前輪3aが駆動輪であり、後輪3bが操舵輪である例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、医療用台車3の前輪3aが操舵輪であり、後輪3bが駆動輪であってもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、アーム60が4つ配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、アーム60の数は、少なくとも1つ以上配置されていれば他の任意の数であってもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。7軸多関節ロボット以外の軸構成とは、例えば、6軸や8軸である。
【0119】
また、上記実施形態では、医療用マニピュレータ1が、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50とを備えている例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、ポジショナ40と、アームベース50は必ずしも必要なく、医療用マニピュレータ1が、医療用台車3と、アーム60だけで構成されてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、撮影部51がアームベース50に備えられている例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、撮影部51が医療用マニピュレータ1やポジショナ40に備えられていても良い。
【0121】
また、上記実施形態では、表示部33aが医療用台車3に備えられている例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、表示部33aがポジショナ40に備えられていても良い。
【0122】
また、上記実施例では、画像処理回路31cにおいてガイド線GLが計算される例を示したが、本開示はこれに限らない。たとえば、制御部31においてガイド線GLが計算されていても良い。
【0123】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0124】
1 医療用マニピュレータ(手術支援ロボット)
1a ロボット本体部
3 医療用台車
3a 前輪
3b 後輪
4 医療器具
5 手術台
6 内視鏡
31c 画像処理回路(制御部)
33a 表示部
33a1 表示画面
33a2 選択操作部
35 操作ハンドル(操舵部)
35b イネーブルスイッチ
51 撮影部
60 アーム
GL ガイド線(ガイド情報)
MK1 第1印部(印部)
P 患者
T1 第1トロカール(トロカール)