(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191054
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221220BHJP
【FI】
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099675
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上薗 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】大塚 忍
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA59
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA09
5L096JA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出できる缶蓋検出装置及び缶蓋検出方法を提供する。
【解決手段】タブに異常がある缶蓋C1を備えた缶体Cを缶体群から検出する缶蓋検出装置1であって、缶蓋C1の基準画像データを予め記憶する記憶手段20と、缶蓋C1のタブ及び当該タブの近傍である近傍領域において、入力された缶蓋の画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定する判定手段50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出する缶蓋検出装置であって、
缶蓋の基準画像データを予め記憶する記憶手段と、
缶蓋のタブおよび当該タブの近傍である近傍領域において、入力された缶蓋の画像データと前記基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定する判定手段と、
を備える缶蓋検出装置。
【請求項2】
前記近傍領域は、前記タブを含みつつ前記タブの外縁から周囲に広がる領域であって、前記近傍領域の面積は、前記タブの面積の1.1倍以上である請求項1に記載の缶蓋検出装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、缶蓋におけるタブの位置と当該タブの位置に対して相対的に定められた複数の所定領域の位置との情報を記憶しており、
入力された缶蓋の画像データにおける缶蓋のタブの位置と、前記記憶手段に記憶されている前記情報と、に基づいて、前記画像データにおける複数の所定領域を特定する所定領域特定手段を更に備え、
前記判定手段は、前記所定領域特定手段によって特定された前記複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する請求項1又は請求項2に記載の缶蓋検出装置。
【請求項4】
タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出する缶蓋検出方法であって、
缶蓋のタブおよび当該タブの近傍である近傍領域において、撮像して得られた缶蓋の画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定するタブ判定工程と、
を含む缶蓋検出方法。
【請求項5】
前記近傍領域は、前記タブを含みつつ前記タブの外縁から周囲に広がる領域であって、前記近傍領域の面積は、前記タブの面積の1.1倍以上である請求項4に記載の缶蓋検出方法。
【請求項6】
撮像して得られた缶蓋の画像データにおけるタブの位置と、缶蓋におけるタブの位置及び当該タブの位置に対して相対的に定められる複数の所定領域の位置の情報と、に基づいて、前記画像データにおける複数の所定領域を特定する所定領域特定工程と、
前記所定領域特定工程において特定された前記複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する突出形状判定工程と、
を含む請求項4又は請求項5に記載の缶蓋検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、缶体の缶蓋には、飲料の種類(具体的には、アルコール飲料か否か)が目の不自由な方にも特定可能なように点字が打刻されている。そして、アルコール飲料を内包する缶体の缶蓋には、「おさけ」、「さけ」等を示す点字が打刻されており、一方、アルコール飲料ではない飲料を内包する缶体の缶蓋には、点字が打刻されていない。
このように缶体の缶蓋に打刻された点字は、目の不自由な方にとって、飲料の種類を判別するために重要な役割を担っている。
【0003】
缶体に飲料を密封する際、底蓋を備えた缶胴(缶胴と底蓋とが一体である2ピース缶であっても別体の3ピース缶であってもよい)に飲料を充填した後、缶蓋をかぶせ、缶胴と缶蓋の端部を巻き締めする。
通常、このような作業は生産ラインで実施されるが、製品を切り替えるタイミング(例えば、アルコール飲料からアルコール飲料ではない飲料)において、誤って当該タイミング前の製品に対して後の製品用の缶蓋が巻き締められてしまったり、当該タイミング後の製品に対して前の製品用の缶蓋が巻き締めてられてしまったりするおそれがある。また、生産ラインにおいて、製品の品種を誤り、異種の缶蓋がセッティングされてしまうおそれもある。
【0004】
そして、生産ライン上では、巻き締め作業後などのタイミングで水を用いて缶体を洗浄する場合があり、また、缶体に内包される飲料の温度や雰囲気温度・湿度によっては、缶体表面に結露が生じる場合もある。
このような洗浄作業や結露等によって缶蓋表面に水滴が付着してしまうと、点字が打刻された缶蓋であるか否かの判定が極めて難しくなってしまう。
よって、缶蓋表面に水滴が付着するような状況において、前記のように誤って異種の缶蓋を備えた缶体が現れてしまうと従来の検査装置では、適切に検出するのは不可能であり、誤検出の多発が想定されていた。
そこで、出願人は、以下のような技術を提案した。
【0005】
具体的には、特許文献1に示すとおりであり、缶体群に混在する異種の缶蓋を備えた缶体を検出する缶蓋検出装置であって、缶蓋における特徴部の領域の位置と前記特徴部の領域の位置に対して相対的に定められた複数の所定領域の位置との情報を記憶する記憶手段と、缶蓋の画像データにおける缶蓋の特徴部の位置を検出する特徴部検出手段と、前記特徴部検出手段によって検出された前記特徴部の位置と、前記記憶手段に記憶されている前記情報と、に基づいて、前記画像データにおける複数の所定領域を特定する領域特定手段と、前記領域特定手段によって特定された前記複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する判定手段と、を備える缶蓋検出装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によると、缶体群に混在する異種の缶蓋を備えた缶体を極めて精度よく検出することができる。
【0008】
一方、本発明者らは、生産ライン上での問題について検討した結果、特許文献1が掲げる「異種の缶蓋を備えた缶体の混在」とは異なる問題として、缶蓋上でタブが回転してしまうといったタブに異常がある缶蓋の発生を確認したため、このようなタブに異常のある缶蓋を備えた缶体を検出すべきであると考えた。
加えて、特許文献1に係る発明は、缶蓋の特徴部であるタブを基準として判定を行うことから、タブの異常の存在を検出することができれば、特許文献1に係る発明での誤検出の可能性を更に低減できると本発明者らは考えた。
【0009】
そこで、本発明は、タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出できる缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出する缶蓋検出装置であって、缶蓋の基準画像データを予め記憶する記憶手段と、缶蓋のタブおよび当該タブの近傍である近傍領域において、入力された缶蓋の画像データと前記基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定する判定手段と、を備える缶蓋検出装置。
(2)前記近傍領域は、前記タブを含みつつ前記タブの外縁から周囲に広がる領域であって、前記近傍領域の面積は、前記タブの面積の1.1倍以上である前記1に記載の缶蓋検出装置。
(3)前記記憶手段は、缶蓋におけるタブの位置と当該タブの位置に対して相対的に定められた複数の所定領域の位置との情報を記憶しており、入力された缶蓋の画像データにおける缶蓋のタブの位置と、前記記憶手段に記憶されている前記情報と、に基づいて、前記画像データにおける複数の所定領域を特定する所定領域特定手段を更に備え、前記判定手段は、前記所定領域特定手段によって特定された前記複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する前記1又は前記2に記載の缶蓋検出装置。
(4)タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から検出する缶蓋検出方法であって、缶蓋のタブおよび当該タブの近傍である近傍領域において、撮像して得られた缶蓋の画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定するタブ判定工程と、を含む缶蓋検出方法。
(5)前記近傍領域は、前記タブを含みつつ前記タブの外縁から周囲に広がる領域であって、前記近傍領域の面積は、前記タブの面積の1.1倍以上である前記4に記載の缶蓋検出方法。
(6)撮像して得られた缶蓋の画像データにおけるタブの位置と、缶蓋におけるタブの位置及び当該タブの位置に対して相対的に定められる複数の所定領域の位置の情報と、に基づいて、前記画像データにおける複数の所定領域を特定する所定領域特定工程と、前記所定領域特定工程において特定された前記複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する突出形状判定工程と、を含む前記4又は前記5に記載の缶蓋検出方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法によれば、タブに異常がある缶蓋を備えた缶体を缶体群から適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る缶蓋検出装置の構成を示すブロック構成図である。
【
図2】タブが一切回転しておらず正しい状態(タブに異常がない状態)の缶蓋の画像データの模式図である。
【
図3】タブが回転しており、タブに異常がある状態の缶蓋の画像データの模式図である。
【
図4】点字が打刻された缶蓋の画像データの模式図である。
【
図5】点字が打刻されていない缶蓋の画像データの模式図である。
【
図6】点字が打刻されていない缶蓋であって表面に水滴が付着した缶蓋の画像データの模式図である。
【
図7】本実施形態に係る缶蓋検出方法(本実施形態に係る缶蓋検出装置の動作)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法を実施するための形態(実施形態)について、図を参照して説明する。
【0014】
[缶蓋検出装置の構成]
まず、
図1を参照(適宜、
図2~6参照)して、本実施形態に係る缶蓋検出装置の構成について説明する。
缶蓋検出装置1は、カメラ等の撮像装置2によって撮像され入力される缶蓋C1の画像データに基づいて、タブに異常のある缶蓋C1を備えた缶体Cを缶体C群から検出する装置である。
そして、缶蓋検出装置1は、画像データ入力手段10と、記憶手段20と、特徴部検出手段30と、近傍領域特定手段40aと、所定領域特定手段40bと、判定手段50と、判定結果出力手段60と、を備える。
【0015】
以下では、生産ライン上を連続して搬送される缶体C群の缶蓋には、タブが正常な状態で取り付けられているとともに、これらの缶体C群にはアルコール飲料ではない飲料が内包されている場合を想定する。つまり、缶体C群における大半の缶体Cの「缶蓋」は、タブが回転することなく正常な状態で取り付けられており、かつ、点字が打刻されていない缶蓋C1b、C1c(
図5、6)であり、検出すべき「タブに異常のある缶蓋」はタブが回転している缶蓋C1r(
図3)であり、検出すべき「異種の缶蓋」は点字が打刻されている缶蓋C1a(
図2、4)である場合について説明する。
なお、アルコール飲料とは、アルコール分が1度以上の飲料(ビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュール等)であり、アルコール飲料ではない飲料とは、アルコール分が1度未満の飲料(清涼飲料、ノンアルコール飲料等)である。
【0016】
(画像データ入力手段)
画像データ入力手段10は、カメラ等の撮像装置2を介して缶蓋C1の画像データを入力する手段である。そして、この画像データ入力手段10は、入力した缶蓋C1の画像データを、特徴部検出手段30に出力する。
【0017】
(記憶手段)
記憶手段20は、近傍領域特定手段40a、所定領域特定手段40b、判定手段50において使用する情報を記憶する手段である。そして、この記憶手段20に記憶されている情報は、近傍領域特定手段40a、所定領域特定手段40b、判定手段50によって読み出される。
【0018】
(記憶手段:近傍領域特定手段40aによって読み出される情報)
記憶手段20から近傍領域特定手段40aによって読み出される情報は、缶蓋における特徴部(タブ)の位置の情報と、特徴部と当該特徴部の近傍である近傍領域(特徴部+近傍)の位置の情報である。
【0019】
詳細には、「特徴部の位置」の情報とは、
図2~6に示すように、缶蓋C1(缶蓋C1を囲む領域R3)に対して近傍領域R0内のタブC2の位置(領域)がいかなる場所に位置するかという情報である。この情報に基づき、缶蓋C1の画像データ上において、タブの位置を特定することができる。
【0020】
また、「近傍領域の位置」の情報とは、特徴部と当該特徴部の近傍である近傍領域R0の位置情報であり、タブC2の位置に対して相対的に定められている。この近傍領域R0の位置情報、又は、前記した特徴部(タブC2)の位置情報に基づき、缶蓋C1の画像データを領域R3の内部で回転させて向きを揃えるとともに、当該画像データ上における近傍領域R0を特定することができる。
なお、近傍領域R0は、タブが回転してしまっているなどのタブの異常を判断するための領域であるため、タブC2の形状が占める領域と略同一の領域では不十分であり、タブC2を含みつつタブC2よりも広い領域である。
そして、近傍領域R0の大きさについては、タブの異常を精度良く判定するために、タブC2の面積の1.1倍以上が好ましく、1.3倍以上、1.5倍以上、1.56倍以上がより好ましい。一方、近傍領域R0の上限については特に限定されず、例えば、4倍以下、3倍以下、2倍以下である。
ここで、タブC2の面積とは、詳細には、タブC2の外縁で囲まれた領域の面積であり、指をひっかける穴やリベット周辺の穴などの面積は除外しない。
また、近傍領域R0とは、缶蓋C1上においてタブC2を含みつつタブC2の外縁から周囲に広がる領域であって、例えば、
図2のような長方形であればよい。
【0021】
(記憶手段:所定領域特定手段40bによって読み出される情報)
記憶手段20から所定領域特定手段40bによって読み出される情報は、缶蓋における特徴部の位置の情報と、特徴部の位置に対して相対的に定められた複数の所定領域の位置の情報である。
【0022】
詳細には、記憶手段20から所定領域特定手段40bによって読み出される「特徴部の位置」の情報とは、前記した記憶手段20から近傍領域特定手段40aによって読み出される「特徴部の位置」の情報と同じである。
【0023】
また、「複数の所定領域の位置」の情報とは、缶体Cがアルコール飲料を内包する旨を示すために缶蓋C1に打刻される各点字Bの突出した領域を其々含む領域R2の位置情報であり、特徴部の位置(タブC2の位置)に対して相対的に定められている。この情報に基づき、向きを揃えた画像データ上における領域R2を特定することができる。
複数の所定領域R2は、それぞれ点字Bを含む領域であればよいが、缶蓋C1の画像データのズレによる誤検出の発生を低減するという観点から、各所定領域R2の面積は、各点字Bの面積の1.5倍以上が好ましく、2.0倍以下が好ましい。
【0024】
(記憶手段:判定手段50によって読み出される情報)
記憶手段20から判定手段50によって読み出される情報は、「基準画像データ」と、基準画像データと入力された画像データとの「相関の度合いを判断するための情報」である。
詳細には、「基準画像データ」とは、タブが一切回転していない缶蓋の画像データであって、
図2に示すようなタブが正常な状態で設置されている缶蓋の画像データである。そして、「相関の度合いを判断するための情報」とは、近傍領域R0における基準画像データと入力された画像データとの画像の相関値の閾値であり、例えば、85以上、87以上、90以上、93以上、93.5以上、95以上である。
【0025】
また、記憶手段20から判定手段50によって読み出される情報は、画像データ上の各所定領域R2における突出形状が点字であるか否かの判断の基準となる情報である。
詳細には、この情報は、画像データにおける各点字の面積値A1よりも小さな面積値A2(A1≧A2)のデータである。なお、面積値A2は、各点字よりも小さな面積値の水滴の影響を排除すべく、0.3×A1以上が好ましく、0.5×A1以下が好ましい。
この面積値A2を記憶手段20に記憶させておくことにより、後記する判定手段50において、各所定領域R2に当該面積値A2よりも大きい面積値の突出形状が存在する場合は、点字が存在すると判断し、当該面積値A2よりも小さい面積値の突出形状が存在する場合は、点字は存在しないと判断(小さな水滴等が存在するだけであると判断)することができる。
【0026】
(特徴部検出手段)
特徴部検出手段30は、缶蓋C1の画像データにおける缶蓋C1のタブ(特徴部)の位置を検出する手段である。特徴部検出手段30によるタブの位置の検出方法については特に限定されないが、例えば、画像データにおける色の濃淡や明暗に基づいて特定する方法が挙げられる。
そして、この特徴部検出手段30は、検出したタブの位置の情報を近傍領域特定手段40aと所定領域特定手段40bに出力する。
【0027】
(近傍領域特定手段)
近傍領域特定手段40aは、特徴部検出手段30によって検出されたタブ(特徴部)の位置と、記憶手段20に記憶されている情報と、に基づいて、入力された画像データにおける近傍領域を特定する手段である。
詳細には、近傍領域特定手段40aは、
図2~3に示すように、缶蓋C1の画像データ上におけるタブの位置が記憶手段20の位置情報(「特徴部の位置」の情報)と合致するように画像データを領域R3の内部で回転させ、画像データの向きを揃える。そして、近傍領域特定手段40aは、記憶手段20の情報(「近傍領域R0の位置」の情報)に基づいて、画像データ上における近傍領域R0を特定する。
そして、この近傍領域特定手段40aは、特定した近傍領域の情報を判定手段50に出力する。
【0028】
(所定領域特定手段)
所定領域特定手段40bは、特徴部検出手段30によって検出されたタブ(特徴部)の位置と、記憶手段20に記憶されている情報と、に基づいて、画像データにおける複数の所定領域を特定する手段である。
詳細には、所定領域特定手段40bは、
図4~6に示すように、缶蓋C1の画像データ上におけるタブの位置が記憶手段20の位置情報(「特徴部の位置」の情報)と合致するように画像データを領域R3の内部で回転させ、画像データの向きを揃える。そして、所定領域特定手段40bは、記憶手段20の情報(「複数の所定領域R2の位置」の情報)に基づいて、画像データ上における複数の所定領域R2を特定する。
そして、この所定領域特定手段40bは、特定した複数の所定領域の情報を判定手段50に出力する。
【0029】
なお、前記した近傍領域特定手段40aと所定領域特定手段40bとは、別の手段として説明したが、一つの手段として存在してもよい。
【0030】
(判定手段)
判定手段50は、近傍領域特定手段40aによって特定された近傍領域R0において、入力された画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定する手段である。
詳細には、判定手段50は、近傍領域R0において、入力された画像データと基準画像データとの相関値を算出する。次に、判定手段50は、算出した相関値が所定値以上(記憶手段20から読み出される閾値以上)となるか否かを判定し、所定値以上となった場合は「タブの異常なし」、所定値未満となった場合は「タブの異常あり」と判定する。
なお、判定手段50における画像データの相関値の算出方法については、一般的な算出方法でよい。
そして、この判定手段50は、判定した結果の情報を判定結果出力手段60に出力する。
【0031】
また、判定手段50は、所定領域特定手段40bによって特定された複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する手段である。
詳細には、判定手段50は、
図4~6に示すように、画像データの各所定領域R2において、突出形状の面積値を検出する(突出形状が無い場合は面積値0)。次に、判定手段50は、画像データの各所定領域R2における突出形状の各面積値が所定値以上(記憶手段20から読み出される面積値A2以上)となるか否かを判定する。次に、判定手段50は、全ての所定領域R2において、突出形状(所定値以上の面積値の突出形状)が存在するか否かの結果を出す。
そして、この判定手段50は、判定した結果の情報を判定結果出力手段60に出力する。
【0032】
判定手段50における突出形状の面積値の検出方法については特に限定されないが、例えば、画像データにおける色の濃淡や明暗に基づき、濃淡の値や明暗の値が基準値以上(又は基準値以下)の部分が突出している部分であると判定し、当該部分の面積値を算出するという方法が挙げられる。
【0033】
(判定結果出力手段)
判定結果出力手段60は、判定手段50から入力された判定結果を外部に出力する手段である。
この判定結果出力手段60は、例えば、タブの異常を検出した場合や異種の缶蓋を検出した場合に音や光を発する警報装置、タブの異常がある缶蓋や異種の缶蓋を備える缶体を生産ライン上から除外するような装置、全ての結果を表示できるモニター等に結果を出力する。
【0034】
なお、画像データ入力手段10、特徴部検出手段30、近傍領域特定手段40a、所定領域特定手段40b、判定手段50、判定結果出力手段60は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラムの実行処理や、専用回路等によって実現される。
また、記憶手段20は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一般的な記憶装置で構成することができる。
【0035】
[本実施形態に係る缶蓋検出方法(缶蓋検出装置の動作)]
次に、本実施形態に係る缶蓋検出方法について、
図7を参照(適宜、
図1~6参照)して説明する。なお、前記した本実施形態に係る缶蓋検出装置の動作も併せて説明する。
【0036】
本実施形態に係る缶蓋検出方法は、画像データ入力工程S1と、特徴部検出工程S2と、特徴部有無判定工程S3と、近傍領域特定工程S5と、特徴部異常判定工程S6と、所定領域特定工程S8と、突出形状有無判定工程S9と、を含む。
以下、本実施形態に係る缶蓋検出方法の各工程について説明する。
【0037】
(画像データ入力工程)
画像データ入力工程S1は、缶蓋の画像データを缶蓋検出装置1に入力する工程である。
具体的には、画像データ入力工程S1では、カメラ等の撮像装置2が撮像した缶蓋の画像データが画像データ入力手段10に入力される。
【0038】
(特徴部検出工程)
特徴部検出工程S2は、缶蓋の画像データにおける缶蓋のタブ(特徴部)の位置を検出する工程である。
詳細には、特徴部検出工程S2では、画像データ入力手段10から入力された
図2~6に示すような缶蓋C1の画像データにおいて、缶蓋C1のタブC2の位置を検出する。特徴部検出工程S2でのタブC2の位置の検出方法については特に限定されないが、例えば、画像データにおける色の濃淡や明暗に基づいて特定する方法が挙げられる。
【0039】
なお、特徴部検出工程S2でのタブの位置の検出や、特徴部異常判定工程S6での相関値の算出、突出形状有無判定工程S9での面積値の算出を好適に実施できるように、画像データ上での色の濃淡や明暗を明瞭にすべく、
図1に示す環状の光源Lの光度、生産ライン上を搬送される缶体Cの上端部と光源Lとの上下方向の間隔等を適宜設定しておくのが好ましい。
【0040】
(特徴部有無判定工程)
特徴部有無判定工程S3は、特徴部検出工程S2において検出する特徴部が存在するか否かを判定する工程である。
なお、特徴部有無判定工程S3は必須の工程ではなく、缶蓋C1からタブC2が外れるような可能性がゼロである場合は、この特徴部有無判定工程S3は設けなくてもよい。
【0041】
この特徴部有無判定工程S3は、特徴部検出工程S2において特徴部を検出できた場合は、「Yes」と判定した後、次のステップS5に移行し、万が一、特徴部検出工程S2において特徴部を検出できなかった場合、「No」と判定し、外部に所定の指示を送信(S4)した後、ステップS11に移行する。
なお、特徴部有無判定工程S3の処理は、特徴部検出工程S2の処理と一緒に
図1の特徴部検出手段30が行ってもよく、別途、判定手段50が行ってもよい。
【0042】
(近傍領域特定工程)
近傍領域特定工程S5は、特徴部検出工程S2において特定されたタブ(特徴部)の位置と、タブの領域の位置に対して相対的に定められる近傍領域の情報と、に基づいて、画像データにおける近傍領域を特定する工程である。
詳細には、近傍領域特定工程S5では、
図2、3に示すように、記憶手段20の情報(「特徴部の位置」の情報)に基づいて、缶蓋C1の画像データを領域R3の内部で回転させて、画像データ上のタブの位置を記憶手段20に記憶されているタブC2の位置に合わせることによって、画像データの向きを揃える。そして、記憶手段20の情報(「近傍領域R0の位置」の情報)に基づいて、画像データ上における近傍領域R0を特定する。
【0043】
(特徴部異常判定工程)
特徴部異常判定工程S6は、近傍領域特定工程S5において特定された近傍領域R0において、画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブの異常の有無を判定する工程である。
詳細には、特徴部異常判定工程S6では、
図2、3に示す近傍領域R0において、画像データと記憶手段20に記憶されている基準画像データとの相関値を算出する。
ここで、
図2に示すような画像データが判定対象となる場合、近傍領域R0において基準画像データ(タブが一切回転していない状態の缶蓋の画像データ)との相関の度合いが高くなる結果、相関値が所定値以上であると判定する。その結果、
図7の特徴部異常判定工程S6において「Yes」と判定し、次のステップS8に移行する。
一方、
図3に示すような画像データが判定対象となる場合、近傍領域R0において基準画像データ(タブが一切回転していない状態の缶蓋の画像データ)との相関の度合いが低くなる結果、相関値が所定値未満であると判定する。これは、
図3に示す近傍領域R0において、基準画像データには存在しない缶蓋上の点字や缶蓋の凹凸形状が現れる結果、相関の度合いが低くなるためである。その結果、
図7の特徴部異常判定工程S6において「No」と判定し、外部に所定の指示を送信(S7)した後、ステップS11に移行する。
【0044】
(所定領域特定工程)
所定領域特定工程S8は、特徴部検出工程S2において検出されたタブ(特徴部)の位置と、缶蓋におけるタブの領域の位置及びタブの領域の位置に対して相対的に定められる複数の所定領域の位置の情報と、に基づいて、画像データにおける複数の所定領域を特定する工程である。
詳細には、所定領域特定工程S8では、
図4~6に示すように、記憶手段20の情報(「特徴部の位置」の情報)に基づいて、缶蓋C1の画像データを領域R3の内部で回転させて、画像データ上のタブの位置を記憶手段20に記憶されているタブC2の位置に合わせることによって、画像データの向きを揃える。そして、記憶手段20の情報(「複数の所定領域R2の位置」の情報)に基づいて、画像データ上における複数の所定領域R2を特定する。
なお、近傍領域特定工程S5において、画像データの向きを揃えているため、所定領域特定工程S8における画像データの向きを揃える処理は省略してもよい。
【0045】
(突出形状有無判定工程)
突出形状有無判定工程S9は、所定領域特定工程S8において特定された複数の所定領域の全てにおいて、突出形状が存在するか否かを判定する工程である。
詳細には、突出形状有無判定工程S9では、
図4~6に示すように、画像データの各所定領域R2において、突出形状の面積値を検出する(突出形状が無い場合は面積値0)。次に、画像データの各所定領域R2における突出形状の各面積値が所定値以上(記憶手段20から読み出される面積値A2以上)となるか否かを判定する。次に、全ての所定領域R2において、突出形状(所定値以上の面積値の突出形状)が存在するか否かの結果を出す。
この突出形状有無判定工程S9での具体的な判定方法を、
図4~6を用いて以下に説明する。
【0046】
図4は、缶蓋C1の表面に点字Bが存在し、水滴が存在しない場合の画像データである。
まず、突出形状有無判定工程S9では、9つの所定領域R2における突出形状である点字の面積値A1を検出する。次に、9つの所定領域R2における点字Bの各面積値A1は所定値A2以上となると判定(A1≧A2)する。つまり、「9つ全ての所定領域R2において所定値以上の面積値の突出形状が存在する」に該当すると判定し、点字Bが打刻された缶蓋(アルコール飲料用の缶蓋であって異種の缶蓋)であると判定する。その結果、
図7の突出形状有無判定工程S9において「Yes」と判定し、外部に所定の指示を送信(S10)した後、次のステップS11に移行する。
【0047】
図5は、缶蓋C1の表面に点字が存在せず、水滴も存在しない場合の画像データである。
まず、突出形状有無判定工程S9では、9つの所定領域R2において突出形状の面積値を検出する。次に、9つの所定領域R2における突出形状の各面積値(0mm
2)は所定値A2以上とならないと判定(0<A2)する。つまり、「9つ全ての所定領域R2において所定値以上の面積値の突出形状が存在する」に該当しないと判定し、点字が打刻されていない缶蓋(アルコール飲料ではない飲料用の缶蓋であって所望の缶蓋)であると判定する。その結果、
図7の突出形状有無判定工程S9において「No」と判定し、外部に所定の指示を送信することなく、次のステップS11に移行する。
【0048】
図6は、缶蓋C1の表面に点字は存在しないが、水滴Wが存在する場合の画像データである。
まず、突出形状有無判定工程S9では、9つの所定領域R2において突出形状の面積値を検出する。次に、一部の所定領域R2における突出形状の各面積値(0mm
2)は所定値A2以上とならないと判定(0<A2)する。つまり、「9つ全ての所定領域R2において所定値以上の面積値の突出形状が存在する」に該当しないと判定し、点字が打刻されていない缶蓋(アルコール飲料ではない飲料用の缶蓋であって所望の缶蓋)であると判定する。その結果、
図7の突出形状有無判定工程S9において「No」と判定し、外部に所定の指示を送信することなく、次のステップS6に移行する。
【0049】
突出形状有無判定工程S9における突出形状の面積値の検出方法については特に限定されないが、例えば、画像データにおける色の濃淡や明暗に基づき、濃淡の値や明暗の値が基準値以上(又は基準値以下)の部分が突出している部分であると判定し、当該部分の面積値を算出するという方法が挙げられる。
【0050】
(突出形状有無判定工程以降の工程)
外部に所定の指示が送信(S4、S7、S10)されると、例えば、タブの異常や異種の缶蓋(アルコール飲料用の缶蓋)を検出した旨を音や光を発することで知らせる警報装置が作動したり、タブの異常や異種の缶蓋を備える缶体を生産ライン上から除外する装置が作動したりすることとなる。
なお、いずれの判定結果が得られようと、全ての結果をモニターに表示するという構成としてもよい。
【0051】
ステップS11において、次の画像データが存在する場合は、画像データ入力工程であるステップS1に戻り、画像データが入力される。一方、次の画像データが存在しない場合は、フローは終了する。
【0052】
[本実施形態に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法の効果]
次に、本実施形態に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法の効果について、図を参照して説明する。
【0053】
本実施形態に係る缶蓋検出装置1及び缶蓋検出方法によれば、缶蓋C1のタブC2および当該タブC2の近傍である近傍領域R0において、入力された缶蓋の画像データと基準画像データとの相関の度合いに基づき、タブC2の異常の有無を判定することから、タブC2が回転している異常な状態の缶蓋C1r(
図3)を適切に検出することができる。
そして、本実施形態に係る缶蓋検出装置1及び缶蓋検出方法によれば、事前に、タブC2が回転している異常な状態の缶蓋C1rを適切に検出することができるため、タブC2の位置に相対的に定められた複数の所定領域R2を基準に行う異種の缶蓋C1を検出するに際して、誤検出の可能性をより低減することができる。
具体的には、タブC2が回転している異常な状態の缶蓋C1rの場合、タブC2の位置に相対的に定められた複数の所定領域R2が所望の領域とは異なってしまい誤検出が発生するという事態となるが、このような事態を招く異常な状態の缶蓋C1rを事前に検出することで、異種の缶蓋の誤検出の可能性をより低減することができる。
【0054】
本実施形態に係る缶蓋検出装置1及び缶蓋検出方法によれば、複数の所定領域R2に基づいて缶蓋C1を判定するため、複数の所定領域R2の全てに突出形状が存在する缶蓋C1a(
図4)と、複数の所定領域R2の一部又は全てにおいて突出形状が存在しない缶蓋C1b、C1c(
図5、6)と、を適切に判定することができる。したがって、本実施形態に係る缶蓋検出装置1及び缶蓋検出方法は、缶蓋C1表面に水滴Wが付着するような状況であろうと、アルコール飲料用の缶蓋C1a(点字が打刻されている缶蓋C1a)とアルコール飲料ではない飲料用の缶蓋C1b、C1c(点字が打刻されていない缶蓋C1b、C1c)とを適切に判定することができる。
よって、本実施形態に係る缶蓋検出装置1及び缶蓋検出方法によれば、缶体C群に混在する異種の缶蓋C1aを備えた缶体Cを検出するに際して、誤検出の可能性を低減することができる。
【0055】
[本実施形態に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法の変形例]
本実施形態に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法では、画像データにおける近傍領域を特定する近傍特定手段40a、又は、近傍特定工程S5を含む態様を説明したが、この近傍特定手段40aや近傍特定手段S5を省略する態様であってもよい。
具体的には、記憶手段20に記憶されている基準画像データ上において、タブの位置に相対的に定められた近傍領域の位置データを特定しておく。そして、判定手段50又は特徴部異常判定工程S6において、画像データと基準画像データとの相関値を算出する際に、記憶手段20に記憶された近傍領域の位置データに基づいて、当該近傍領域での相関値を算出する態様とすればよい。
【0056】
図4に示す缶蓋C1の点字は「おさけ」を示す点字であるが、当該点字に限定されず、缶体に含まれる飲食品の種類を示す様々な点字であってもよい。この場合、当然、複数の所定領域R2は、点字の打刻位置や個数に対応したものとなる。
【0057】
図2~6では、タブC2の先端部が左方向を向くように画像データの向きが揃う位置としたが、特に限定されず、例えば、タブC2の先端部が右方向を向くように画像データの向きが揃う位置としてもよい。
図2、3に示す近傍領域R0の形状、及び、
図4~6に示す複数の所定領域R2の形状は、長方形に限定されず、正方形、円形、楕円形等であってもよい。
【0058】
図1に示す近傍領域特定手段40aと所定領域特定手段40b、及び、
図7に示す近傍領域特定工程S5と所定領域特定工程S8では、缶蓋C1の画像データを領域R3の内部で回転させて、画像データ上のタブC2の位置を記憶手段20の位置情報(「特徴部の位置」の情報、つまり「タブの位置」の情報)と合わせることによって、画像データの向きを揃える構成を説明したが、この方法に限定されない。
例えば、
図6に示すように、記憶手段20において、缶蓋C1(缶蓋C1を囲む領域R3)に対してタブC2がいかなる場所に位置するかを特定する領域R1を記憶させておき、缶蓋C1の画像データを領域R3の内部で回転させて、画像データ上のタブCを領域R1に合わせることによって、画像データの向きを揃えるといった方法でもよい。
そして、領域R1を用いる場合、この領域R1に対して相対的に領域R0や領域R2を定めておけばよい。
なお、
図6に示すように、領域R1は、タブC2の長手方向の長さを一辺とし短手方向の長さを一辺とする長方形の領域である。
【0059】
図1に示す生産ライン上を連続して搬送される缶体C群にはアルコール飲料ではない飲料が内包されている場合を想定して説明したが、缶体C群にはアルコール飲料が内包されている場合にも適用できる。つまり、缶体C群における大半の缶体Cの「缶蓋」は点字が打刻されている缶蓋C1a(
図2、4)であり、検出すべき「異種の缶蓋」は点字が打刻されていない缶蓋C1b、C1c(
図5、6)である場合にも適用できる。
【0060】
図1に示す所定領域特定手段40b、及び、
図5に示す突出形状有無判定工程S9では、複数の所定領域R2において、突出形状の面積値が所定値以上(記憶手段20から読み出される面積値A2以上:A2≦各点字の面積値A1)となる場合に点字が存在すると判断する構成を説明したが、当該面積値A2を設けない構成でもよい。例えば、点字よりも小さな面積値の水滴があまり発生しないような場合、各所定領域R2において、僅かでも突出形状を検出した場合を点字があると判定する構成としてもよい。この場合、記憶手段20には、判定手段50が読み出す情報(面積値A2)を記憶させる必要はない。
【0061】
なお、本実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【実施例0062】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る缶蓋検出装置、及び、缶蓋検出方法について説明する。
【0063】
[実施例1:事前試験]
缶蓋におけるタブの回転角度と、開蓋し易さ(開蓋性)との関係を確認する事前試験を実施した。
【0064】
(サンプルの準備)
サンプルとしては、市販されている350mL缶(おさけを示す点字が缶蓋上にあり)を準備し、表1に示す回転角度となるように缶蓋上のタブを回転させた。
【0065】
(開蓋性評価試験)
男性1名、女性3名が各サンプルのタブを指で起こして、開蓋がし易いか否かの開蓋性を評価した。
そして、開蓋性の評価については、タブの回転角度が0°の対照サンプル(タブが回転していない正常な状態の缶体のサンプル)を基準とし、「対照サンプルと同等の開けやすさである」場合を3点、「対照サンプルと比較してやや開けにくい」場合を2点、「対照サンプルと比較して開けにくい」場合を1点と評価した。
【0066】
表1に開蓋性評価試験の結果を示す。
なお、表1の「タブの回転角度」とは、タブが回転していない正常な状態を0°とした場合において、缶蓋上におけるタブ先端の時計回りの回転角度である。
【0067】
【0068】
(結果の検討)
表1の結果によると、サンプル1-1、1-2、1-5、1-6については、開蓋性評価の点数(平均値)が2.5以上となり、好ましい結果が得られた。
つまり、タブの回転角度が0~10°、350~360°の範囲(タブ先端の時計回りの回転角度を+の角度とし、タブ先端の反時計回りの回転角度を-の角度とした場合、-10~+10°の範囲)であれば、十分な開蓋性を確保できることが確認できた。
【0069】
[実施例2:本試験]
(サンプルの準備)
サンプルとしては、市販されている350mL缶(おさけを示す点字が缶蓋上にあり)を準備し、表2、3に示す回転角度となるように缶蓋上のタブを回転させた。
そして、表2に示すサンプルは、水滴が付着していない状態で準備し、表3に示すサンプルは、生産ラインにおける洗浄作業後の状態を模擬するため、缶蓋表面に水を吹き付け、水滴が付着した状態とした。
【0070】
(本試験の実験内容)
本実施形態に係る缶蓋検出装置(
図1)と同様の構成の装置を用いて、表2、3に示すサンプルの缶蓋の画像データと基準画像データとの相関値(
図2に示す近傍領域R0における相関値)を、1つのサンプルについて、それぞれ3回算出した。
なお、近傍領域R0の面積は560mm
2(約28mm×約20mm)であり、タブの面積(約360mm
2)の約1.56倍であった。そして、基準画像データは、タブが一切回転していない正常な状態(タブの回転角度が0°)の缶蓋の画像データを用いた。
また、本実施形態に係る缶蓋検出装置では、
図1に示す缶体Cの上端部と光源L(型式:CA-DC50E、照明明るさ(ボリューム値):511)との上下方向の間隔は、約15mmであった。
【0071】
また、
図1に示す撮像装置2としては、以下のカメラを使用した。
検査機カメラ機種:CA-H048CX、47万画素16倍速カラーカメラ
有効画素数:784(H)×596(V)(プログレッシブ)
シャッタースピード:1/20000
【0072】
表2、3に本試験の相関値の結果を示す。
なお、表2、3の「タブの回転角度」とは、表1と同様、タブが回転していない正常な状態を0°とした場合において、缶蓋上におけるタブ先端の時計回りの回転角度である。
【0073】
【0074】
【0075】
(結果の検討)
表2の結果によると、缶蓋への水滴の付着が想定されない生産ラインに本発明を適用する場合は、相関値の閾値を90以上、93以上、95以上などに設定すれば、タブが僅かに回転したもの(タブ先端の時計回りの回転角度を+の角度とし、タブ先端の反時計回りの回転角度を-の角度とした場合、-5~+5°の範囲を超える回転)であっても検出できることが確認できた。
【0076】
表3の結果によると、缶蓋への水滴の付着が想定される生産ラインに本発明を適用する場合は、相関値の閾値を93.5以上などに設定すれば、タブが僅かに回転したもの(タブ先端の時計回りの回転角度を+の角度とし、タブ先端の反時計回りの回転角度を-の角度とした場合、-5~+5°の範囲を超える回転)であっても検出できることが確認できた。