(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191062
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】間接抗菌活性が強化された抗菌材
(51)【国際特許分類】
A01N 63/22 20200101AFI20221220BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20221220BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221220BHJP
A01N 35/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A01N63/22
A01N25/08
A01P3/00
A01N35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099684
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000203656
【氏名又は名称】多木化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸
(72)【発明者】
【氏名】秋津 教雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA01
4H011BB05
4H011BB21
4H011BC06
4H011BC20
4H011DA02
4H011DC10
4H011DF02
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】Bacillus属細菌が担持された担体を含有する抗菌材において、間接抗菌活性が強化された抗菌材の開発を課題とする。
【解決手段】少なくとも間接抗菌活性を備えたBacillus属細菌と、当該細菌によって産生される揮発性抗菌物質の前駆物質と、が担持された乾燥状態の担体を含有した、間接抗菌活性が強化された抗菌材である。前記揮発性抗菌物質は、例えば、揮発性芳香族アルデヒド化合物であり、前記前駆物質は、例えば、フェニルアラニン及び/又はチロシンである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも間接抗菌活性を備えたBacillus属細菌と、当該細菌によって産生される揮発性抗菌物質の前駆物質と、が担持された乾燥状態の担体を含有した、間接抗菌活性が強化された抗菌材。
【請求項2】
前記前駆物質が、フェニルアラニン及び/又はチロシンである、請求項1記載の間接抗菌活性が強化された抗菌材。
【請求項3】
前記揮発性抗菌物質が、揮発性芳香族アルデヒド化合物である、請求項1又は2記載の間接抗菌活性が強化された抗菌材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接抗菌活性が強化された抗菌材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、汚染菌に対して直接的に接触することによって抗菌活性を示す直接抗菌活性(接触抗菌活性とも称される)に加えて、空間を介して、即ち、汚染菌と直接接触しない状況下で汚染菌に対して抗菌活性を示す間接抗菌活性(遠隔抗菌活性、空間抗菌活性、非接触抗菌活性とも称される)を有するBacillus属に属する細菌株が確立されている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
しかし、いずれの細菌株においても、間接抗菌活性が発揮されるメカニズムは解明されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-184394号公報
【特許文献2】特開2016‐149963号公報
【特許文献3】特許第6583935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、Bacillus属細菌が担持された担体を含有する抗菌材において、間接抗菌活性が強化された抗菌材の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、間接抗菌活性が発揮されるメカニズムの解明に挑み、その結果、揮発性抗菌物質が間接抗菌に作用していることを突き止めた。この解明したメカニズムに基づき、間接抗菌活性を強化すべく鋭意検討した結果、Bacillus属細菌を担持した乾燥状態の担体を含有する抗菌材において、Bacillus属細菌が揮発性抗菌物質を産生するための前駆物質を担体に備えさせることによって、抗菌材の使用時には揮発性抗菌物質が早期に産生されその産生期間が長期に亘ること及び高い間接抗菌活性が発揮されることを見出し、係る知見を基に本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]少なくとも間接抗菌活性を備えたBacillus属細菌と、当該細菌によって産生される揮発性抗菌物質の前駆物質と、が担持された乾燥状態の担体を含有した、間接抗菌活性が強化された抗菌材。
[2]前記前駆物質が、フェニルアラニン及び/又はチロシンである、上記[1]記載の間接抗菌活性が強化された抗菌材。
[3]前記揮発性抗菌物質が、揮発性芳香族アルデヒド化合物である、上記[1]又は[2]記載の間接抗菌活性が強化された抗菌材。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】間接抗菌活性確認試験の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
なお、本発明において、数値範囲に関する「数値1~数値2」という表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
【0010】
本発明は、少なくとも間接抗菌活性を備えたBacillus属細菌と、当該細菌によって産生される揮発性抗菌物質の前駆物質と、が担持された乾燥状態の担体を含有した、間接抗菌活性が強化された抗菌材(以下「本発明の抗菌材」という)に関する。なお、特許文献3に開示された技術は、参照により本発明に取り込まれる。
【0011】
(Bacillus属細菌)
Bacillus属細菌としては、例えば、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)、バチルス アゾトフォーマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス クラウジ(Bacillus clausii)、バチルス コーギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス フレキサス(Bacillus flexus)、バチルス フシフォルミス(Bacillus fusiformis)、バチルス グロビスポラス(Bacillus globisporus)、バチルス グルカノリチカス(Bacillus glucanolyticus)、バチルス インフェルムス(Bacillus infermus)、バチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス マリナス(Bacillus marinus)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス モジャベンシス(Bacillus mojavensis)、バチルス ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス パリダス(Bacillus pallidus)、バチルス パラブレビス(Bacillus parabrevis)、バチルス パステウリ(Bacillus pasteurii)、バチルス ポリミキサ(Bacillus polymyxa)、バチルス ポピリアエ(Bacillus popiliae)、バチルス プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス サーモアミロボランス(Bacillus thermoamylovorans)、バチルス スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)等が挙げられる。これらのうち、本発明の抗菌材に用いるBacillus属細菌は、少なくとも間接抗菌活性を備えたものである。また、実用性の面から、細菌株を用いることが好ましい。細菌株の好例は、特許文献3に記載の受託番号:NITE P-02700で寄託されているBacillus subtilisに属するBS-T2株である。BS-T2株は、間接抗菌活性のみならず直接抗菌活性を備えたものであるため、好適なBacillus属細菌である。
【0012】
(揮発性抗菌物質)
Bacillus属細菌によって産生される揮発性抗菌物質の代表例は、酢酸、揮発性芳香族アルデヒド化合物等である。抗菌性を有する揮発性芳香族アルデヒド化合物の例は、ベンズアルデヒド、ベンゼンアセトアルデヒド等である。
【0013】
(前駆物質)
前駆物質は、Bacillus属細菌が揮発性抗菌物質を産生するために利用する物質である。好ましくは揮発性芳香族アルデヒド化合物を産生するための前駆物質であり、代表例は、フェニルアラニン、チロシン等である。前駆物質は、1種類だけ使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0014】
(間接抗菌活性発揮のメカニズムとそれを利用した本発明の抗菌材)
本発明者らは、間接抗菌活性が発揮されるメカニズムを以下のようにして解明した。
BS-T2株を25℃環境下において密閉状態で静置し、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後及び3ヶ月後に、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計を用いて揮発性成分の分析を行った。その結果、抗菌活性を有することが知られているベンズアルデヒド、ベンゼンアセトアルデヒド、インドール、酢酸等が検出された。また、これらの揮発性成分が非接触的にクロカビの生育を抑制することを別途確認した。以上より、BS-T2株が抗菌活性を有する揮発性成分を産生することによって、間接抗菌活性が発揮されることが判明した。
【0015】
次に、本発明者らは、上記メカニズムを利用した間接抗菌活性の強化を試みた。種々の検討の結果、BS-T2株を担体に担持させた上で、この担体に前駆物質を担持させることによって、間接抗菌活性が強化されることを見出した。ここで見出された間接抗菌活性の強化とは、(i) 揮発性抗菌物質の放出時期が早まり、しかもその産生が長期に亘ること、(ii)非接触的な生育抑制効果が高まること、である。
【0016】
これら知見を基に、産業上有用性のある抗菌材としての形態について検討した結果、Bacillus属細菌と前駆物質とが担持された担体を乾燥状態とすることにした。担体を乾燥状態とすることによって、Bacillus属細菌を休眠状態又は活動停止状態とすることができ、Bacillus属細菌による前駆物質の利用を抑制することができる。そして、担体が空気中の水分(湿気)に接触する等によって乾燥状態から脱すると、Bacillus属細菌の活動開始に伴って前駆物質を利用し、その代謝産物として揮発性抗菌物質が放出され、間接抗菌活性が発揮されるようになる。なお、上記休眠状態又は活動停止状態におけるBacillus属細菌の好ましい存在形態は、芽胞である。
【0017】
そこで、本発明の抗菌材の好適な使用方法として、使用前までは密封等の手段により外気との接触を遮断することによって担体を乾燥状態に保ち、使用時に外気と接触させる方法が挙げられる。とりわけ抗菌性の発揮が必要な場所は、高湿度環境下が多いので、乾燥状態から脱したBacillus属細菌が活動を開始するのに好都合である。また、本発明の抗菌材の利点として、揮発性抗菌物質が人体に影響しない低濃度で長期間産生されることが挙げられる。
【0018】
(担体)
担体は、Bacillus属細菌を生菌及び/又は芽胞の状態で担持できるものであることが好ましい。担体の形態の好例は固体であり、形状は粉体又は粒状体が好ましい。また、性状としては、多孔質が好ましい。
【0019】
担体を構成する物質としては、例えば、炭化物、鉱物、金属又は金属塩、ケイ素、高分子等が挙げられる。好例は、珪藻土、竹炭、木炭、籾殻くん炭、活性炭、ゼオライト、パーライト、ベントナイト、セラミクス、アルミナ、石膏、シリカゲル、多孔質ガラス、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレングリコール等である。
【0020】
(菌数)
担体に保持される菌数については特に限定されることなく、使用目的及び担体の担持力に応じて適宜設定すればよいが、例えば、担体1g当たり104CFU(colony forming unit)以上であることが好ましく、より好ましくは105CFU以上であり、更に好ましくは106CFU以上である。上限は特に限定されないが、担体1g当たり1010CFU以下であることが好ましい。なお、以下でも同様であるが、「担体1g当たり」における担体は、乾燥状態のものである。
【0021】
(前駆物質の含有量)
本発明の抗菌材における前駆物質の含有量は、Bacillus属細菌が揮発性抗菌物質を産生するのに好適な量であれば特に限定されることはない。前駆物質の含有量は、例えば、Bacillus属細菌1CFU当りで示すと、0.1×10-16mol/CFU~1000×10-16mol/CFUの範囲であることが好ましい。当該範囲の下限値は、より好ましくは、1×10-16mol/CFUである。当該範囲の上限値は、より好ましくは、500×10-16mol/CFUである。
【0022】
前駆物質の含有量の範囲は、上記以外にも、担体を基準にして設定することができる。担体がとりわけ多孔質状であるときは、担体内において前駆物質とBacillus属細菌をともに分散して担持することができるので、前記の好適な菌数の範囲(担体1g当たり104CFU~1010CFU)では、担体を基準にして前駆物質の含有量の範囲を設定しても特に支障はない。好ましい一形態においては、担体1g当たり104CFU~1010CFUのBacillus属細菌を担持した担体について、担体1g当たりの前駆物質の含有量は、0.1~100μmolの範囲である。当該範囲の上限値は、好ましくは75μmolであり、より好ましくは50μmolである。
【0023】
(担持方法)
Bacillus属細菌を担体に担持させる一方法は、[1]Bacillus属細菌を含む培養液を担体に散布又は含浸させ、[2]これを乾燥するものである。この方法において、前駆物質を担体に担持させる方法として、例えば、(a)上記[1]における散布又は含浸の前に培養液に前駆物質を添加する方法、(b)上記[1]の後に、前駆物質の水溶液を乾燥前に散布又は含浸により添加する方法、(c)上記[2]の乾燥後に、前駆物質の水溶液を散布又は含浸により添加し、次いで再度乾燥する方法、等が挙げられる。なお、上記(c)において、前駆物質の水溶液の添加量や温度・湿度等の条件によって得られた担体が乾燥状態となっている場合は、再度の乾燥はおこなわなくてもよい。
【0024】
(その他構成要素)
本発明の抗菌材は、本発明の目的が阻害されない限り、使用目的に応じて、その他構成要素を含有してもよい。その他構成要素の例は、担体を収容するための網状容器(袋状のものを含む)、当該網状容器を収容する外装容器(袋状のものを含む)であって担体の乾燥状態を保持できる密封可能なもの等が挙げられる。網状容器の好例は、不織布の袋である。
【実施例0025】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0026】
(BS-T2粉体の調製)
所定濃度のBS-T2株の培養液を珪藻土に担持させた後、乾燥させた(以下「BS-T2粉体」という)。BS-T2粉体の菌数は、4×109CFU/gであった。
【0027】
〔実施例1〕
BS-T2粉体30mgに対し、1mmol/LのL-フェニルアラニン水溶液(0.22μmフィルターで滅菌済み)60μLを添加し乾燥させたものを実施例1の抗菌材とした。
【0028】
〔対照区1〕
BS-T2粉体30mgに対し、蒸留水(0.22μmフィルターで滅菌済み)60μLを添加し乾燥させたものを対照区1の抗菌材とした。
【0029】
〈早期放出確認試験〉
実施例1の抗菌材と対照区1の抗菌材をそれぞれ入れたバイアルに、バイアル内が湿度100%になるように滅菌水を加えた後密栓し、温度30℃で1週間培養をおこなった後、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計(後掲)を用いて揮発性有機化合物(VOCs)を測定した。
その結果、実施例1の抗菌材では、揮発性抗菌物質として、ベンズアルデヒドが0.76nmol、ベンゼンアセトアルデヒドが0.51nmol、酢酸が0.75nmol検出された。一方、対照区1の抗菌材では、揮発性抗菌物質がほとんど検出されなかった。
なお、上記と同様の方法によって1ヶ月単位で4ヶ月後まで測定した試験では、いずれの揮発性抗菌物質についても継続的な産生が確認された。
(ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計)
ヘッドスペースには、Agilent Technologies 7697A Headspace Samplerを用いた。ガスクロマトグラフには、Agilent Technologies 7890B GC systemを用いた。GCカラムには、Agilent DB-5msを用いた。質量分析には、Agilent Technologies 5977 MSDを用いた。
【0030】
〔実施例2〕
BS-T2粉体250mgに対し、0.1mmol/LのL-フェニルアラニン水溶液(0.22μmフィルターで滅菌済み)1mLを添加し乾燥させたものを実施例2の抗菌材とした。
【0031】
〔実施例3〕
BS-T2粉体250mgに対し、1mmol/LのL-フェニルアラニン水溶液(0.22μmフィルターで滅菌済み)1mLを添加し乾燥させたものを実施例3の抗菌材とした。
【0032】
〔実施例4〕
BS-T2粉体250mgに対し、1mmol/LのL-チロシン水溶液(0.22μmフィルターで滅菌済み)1mLを添加し乾燥させたものを実施例4の抗菌材とした。
【0033】
〔対照区2〕
BS-T2粉体250mgに対し、蒸留水(0.22μmフィルターで滅菌済み)1mLを添加し乾燥させたものを対照区2の抗菌材とした。
【0034】
〈間接抗菌活性確認試験〉
図1に、間接抗菌活性確認試験の様子を示した。
パーソナルインキュベーター12として、アズワン(株)の製品名「PIC-101」を用いた。網棚15の上(上段)に、PDA培地27を備えたシャーレ24からなるクロカビシャーレ2枚と湿度計39を設置した。なお、クロカビシャーレは、上下反転させて、すなわち、シャーレの開口部が下向きとなるように設置した。クロカビシャーレは、後掲のクロカビシャーレの調製方法に示すように、PDA培地27の開口部側の表面にクロカビ胞子が塗布されたものである。
パーソナルインキュベーター12の下段には、保湿用の水36を入れたステンレス製バット32と、試料74を入れ不織布55で開口部を覆った125mL容の三角フラスコ51を置いた。
試料74として、実施例2~4と対照区2の各抗菌材を供試した。
なお、パーソナルインキュベーター12の内部、網棚15、シャーレ24、PDA培地27、ステンレス製バット32、水36、湿度計39、三角フラスコ51、不織布55は、予め適宜消毒・滅菌した。
パーソナルインキュベーター12の内部を温度25℃、相対湿度90%に設定し、5日間培養した後、画像解析ソフトFijiを用いてクロカビのコロニーの面積を測定した。
【0035】
(クロカビシャーレの調製方法)
クロカビシャーレは、クロカビの胞子1個ずつをできるだけ点在させたものである。点在させる目的は、胞子から形成されたコロニーの大きさを画像解析に供するためであり、また、コロニー同士の接触によって引き起こされる生育抑制を防止するためである。
クロカビとして、Cladosporium cladosporioidesの菌株NBRC 6348を用いた。クロカビを蔓延させたシャーレに、NaClを0.9質量%、ドデシル硫酸ナトリウムを0.01質量%含有した滅菌済みの水溶液を加え、クロカビと当該水溶液をなじませた後、所定量の液を回収した。次に、当該液を10質量%グリセロール溶液で段階的に希釈し、この希釈液を直径90mmのシャーレ24内に設置したPDA培地27の表面に塗り広げて、クロカビの胞子をできるだけ点在させたクロカビシャーレを作製した。
なお、クロカビシャーレを培養したときに形成されるコロニー数としては、10個程度から100個程度までの範囲内であれば試験上特に支障はない。
【0036】
間接抗菌活性確認試験の結果を表1に示した。
表1において、抑制率は、対照区2のクロカビコロニーの面積をScとし、実施例のクロカビコロニーの面積をSxとしたときに、抑制率(%)=(Sc-Sx)/Sc×100によって求めたものである。
【0037】
【0038】
表1から明らかなように、実施例2~4の各抗菌材は、前駆物質を備えることによって、離れた位置にあるクロカビに対する抗菌活性が向上したものである。つまり、間接抗菌活性が強化された抗菌材といえるものであった。