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特開2022-191085シートパッドおよびシートパッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191085
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】シートパッドおよびシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/72 20060101AFI20221220BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20221220BHJP
   B68G 7/00 20060101ALI20221220BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60N2/72
A47C27/15 A
B68G7/00
A47C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099724
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 陽
(72)【発明者】
【氏名】品川 正樹
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA03
3B084CB01
3B087DE02
3B096AB07
(57)【要約】
【課題】配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供する。
【解決手段】シートパッド1は、発泡ポリウレタン11によって構成された表層部1aを含む。表層部1aに、ワイヤーハーネス3が配線される配線溝2が形成されている。配線溝2は、ハーネス3の直径φ3よりも狭い溝幅Wと、ハーネス3の直径φ3よりも深い溝深さDと、を有している。シートパッドの製造方法は、成形型として、配線溝2を形作るための溝形成突起部を有しているとともに当該溝形成突起部の側面に穴部が形成されている成形型を用いる。前記成形型の内部に発泡ポリウレタン材料を供給し、前記成形型から成形品から取り出すときに前記溝形成突起部の前記穴部から当該穴部に形成された成形部分を無理抜きする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリウレタンによって構成された表層部を含むシートパッドであって、
前記表層部に、ワイヤーハーネスが配線される配線溝が形成されており、
前記配線溝は、前記ワイヤーハーネスの直径よりも狭い溝幅と、前記ワイヤーハーネスの直径よりも深い溝深さと、を有している、シートパッド。
【請求項2】
前記配線溝の側面には、溝幅方向内側に突出する突出部が形作られている、請求項1に記載されたシートパッド。
【請求項3】
前記溝幅は、成形型を用いて成形することが可能な溝幅である、請求項1または2のいずれか1項に記載されたシートパッド。
【請求項4】
前記溝深さは、前記ワイヤーハーネスの直径の3倍以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載されたシートパッド。
【請求項5】
前記表層部の内側にビーズ法発泡体が配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載されたシートパッド。
【請求項6】
少なくとも、成形型と、発泡ポリウレタン材料とを用い、発泡ポリウレタンによって構成された表層部を含んでおり当該表層部に形成された配線溝の側面に溝幅方向内側に突出する突出部が形作られているシートパッドを得るための、シートパッドの製造方法であって、
前記成形型として、前記配線溝を形作るための溝形成突起部を有しているとともに当該溝形成突起部の側面に穴部が形成されている成形型を用い、
前記成形型の内部に前記発泡ポリウレタン材料を供給する発泡ポリウレタン材料供給工程と、
前記成形型から成形品から取り出すときに前記溝形成突起部の前記穴部から当該穴部に形成された成形部分を無理抜きする無理抜き工程と、を含んでいる、シートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドおよびシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートパッドには、ワイヤーハーネス(ケーブルハーネス)を配線するための配線溝(ガイド溝)が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-158096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシートパッドは、ガイド溝に沿ってワイヤーハーネスを配線したのち、当該ワイヤーハーネスをテープなどによって固定する必要がある。このため、上記従来のシートパッドには、配線作業時の作業性と、配線作業に要する費用の抑制と、に改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシートパッドは、発泡ポリウレタンによって構成された表層部を含むシートパッドであって、前記表層部に、ワイヤーハーネスが配線される配線溝が形成されており、前記配線溝は、前記ワイヤーハーネスの直径よりも狭い溝幅と、前記ワイヤーハーネスの直径よりも深い溝深さと、を有している。本発明に係るシートパッドによれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制される。
【0007】
また、本発明に係るシートパッドにおいて、前記配線溝の側面には、溝幅方向内側に突出する突出部が形作られていることが好ましい。この場合、前記ワイヤーハーネスを、より強固に固定することができる。
【0008】
また、本発明に係るシートパッドにおいて、前記溝幅は、成形型を用いて成形することが可能な溝幅であることが好ましい。この場合、安価に製造可能なシートパッドとなる。
【0009】
また、本発明に係るシートパッドにおいて、前記溝深さは、前記ワイヤーハーネスの直径の3倍以上であることが好ましい。この場合、前記配線を、より強固に固定することができる。
【0010】
また、本発明に係るシートパッドは、前記表層部の内側にビーズ法発泡体が配置されているものとすることができる。この場合、耐久性に優れた配線溝を有するシートパッドとなる。
【0011】
本発明に係る、シートパッドの製造方法は、少なくとも、成形型と、発泡ポリウレタン材料とを用い、発泡ポリウレタンによって構成された表層部を含んでおり当該表層部に形成された配線溝の側面に溝幅方向内側に突出する突出部が形作られているシートパッドを得るための、シートパッドの製造方法であって、前記成形型として、前記配線溝を形作るための溝形成突起部を有しているとともに当該溝形成突起部の側面に穴部が形成されている成形型を用い、前記成形型の内部に前記発泡ポリウレタン材料を供給する発泡ポリウレタン材料供給工程と、前記成形型から成形品から取り出すときに前記溝形成突起部の前記穴部から当該穴部に形成された成形部分を無理抜きする無理抜き工程と、を含んでいる。本発明に係る、シートパッドの製造方法によれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッドを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る、シートパッドを概略的に示す平面図である。
図2図1のシートパッドを概略的に示す底面図である。
図3図1のシートパッドをX-X断面で示す断面図である。
図4図2のY-Y断面図である。
図5図1のシートパッドに形成された配線溝にワイヤーハーネスを埋設した状態を図2のY-Y断面で示す断面図である。
図6】シートパッドに形成された配線溝の他の例を図2のY-Y断面で示す断面図であり、当該配線溝にはワイヤーハーネスが埋設されている。
図7】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を概略的に説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を概略的に説明するための他の図である。
図9】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を概略的に説明するためのさらに他の図である。
図10】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法に用いられる成形型に形成された溝形成突起部を概略的に示す要部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、シートパッドおよびシートパッドの製造方法について説明をする。
【0015】
(シートパッド)
本発明の一実施形態に係る、シートパッド1は、車両用のシート(自動車用のシート)に用いられる、車両用のシートパッドである。また、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」とは、シートに着座した着座者から観たときの方向をいう。また、以下の説明において、「左右方向」は、「幅方向」ともいう。また、本実施形態では、「下面」と「底面」とは同義である。さらに、本実施形態では、「後面」と「背面」ともまた同義である。
【0016】
図1は、シートパッド1を上側から概略的に示す平面図である。図2は、シートパッド1を下側から概略的に示す底面図である。図3は、シートパッド1を図1のX-X断面で示す断面図である。図4は、図2のY-Y断面図である。さらに、図5は、シートパッド1に形成された配線溝2にハーネス3を埋設した状態を図2のY-Y断面で示す断面図である。
【0017】
シートパッド1は、発泡ポリウレタン11によって構成された表層部1aを含むシートパッドである。本実施形態では、シートパッド1は、発泡ポリウレタン11によって被覆されている。また、図2を参照すれば、表層部1aには、ワイヤーハーネス(以下、「ハーネス」ともいう)3が配線される配線溝2が形成されている。本実施形態では、配線溝2は、シートパッド1の下側の表層部1aに形成されている。配線溝2は、例えば、ヒータなどが設置される窪み部1Dに通じている。さらに、図4を参照すれば、配線溝2は、溝幅Wと、溝深さDと、を有している。溝幅Wは、図5に示すように、ハーネス3の直径φ3よりも狭い。溝深さDは、図5に示すように、ハーネス3の直径φ3よりも深い。
【0018】
図5には、ハーネス3が配線溝2に埋設された状態が示されている。シートパッド1によれば、ハーネス3は、当該ハーネス3を配線溝2の開口2aから当該配線溝2に押し込むことによって、図5に示すように、当該配線溝2内に埋没させることができる。これによって、ハーネス3は、配線溝2を形作る発泡ポリウレタン11によって保護される。また配線溝2内に埋没させたハーネス3は、配線溝2を形作る発泡ポリウレタン11によって圧縮された状態で固定される。これによって、ハーネス3は、配線溝2内に強固に固定される。したがって、シートパッド1によれば、ハーネス3を配線溝2に押し込むだけの簡単な作業によって、当該ハーネス3を配線溝2に沿って配線することができる。また、シートパッド1を用いた配線作業は、テープなどの固定手段を別途使用することなく、ハーネス3を配線溝2に押し込むだけの作業となる。
【0019】
したがって、シートパッド1によれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制される。
【0020】
本実施形態では、シートパッド1は、クッションパッド(着座者の尻下に位置するパッド)を含むシートパッドである。図1~3を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1はクッションパッドである。また、図3を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1は、発泡ポリウレタン11と、発泡ポリウレタン11に埋設されたビーズ法発泡体12と、を含んでいる。シートパッド1の下面1f2は、発泡ポリウレタン11の下面11f2によって形成されている。ここで、シートパッド1の下面1f2とは、例えば、図2の平面視を参照すれば、シートパッド1の前後左右方向の任意の位置における最も下側の点を連ねた面である。図3を参照すれば、ビーズ法発泡体12の下面12f2の全面は、発泡ポリウレタン11の下面11f2よりも上側に位置している。
【0021】
より詳細には、本実施形態では、シートパッド1は、後部座席用シートパッドである。
【0022】
例えば、図1を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1は、左右2つの座席が一体に形成された後部座席用クッションパッドである。本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211を有している。メインパッド部211は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されている。また、本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211の左側または右側に位置し、メインパッド部211よりも上側へ盛り上がるとともに、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部212を有している。さらに、本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211の間に配置されたセンターパット部213を有している。加えて、本実施形態では、シートパッド1は、シートパッド1を車両に取り付けるための取付部214を有している。さらに、本実施形態では、メインパッド部211は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部211aと、腿下部211aに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部211bと、からなる。本実施形態では、窪み部1Dは、尻下部211bの下側に位置している。
【0023】
本実施形態では、シートパッド1の表層部1aは、発泡ポリウレタン11によって形成されている。発泡ポリウレタン11は、弾力性を有している。発泡ポリウレタンとしては、例えば、軟質発泡ポリウレタンが挙げられる。また、シートパッド1において、ビーズ法発泡体12は、発泡ポリウレタンよりも硬く、弾力性を有する発泡体であればよい。ビーズ法発泡体12としては、例えば、オレフィン系樹脂、具体的には、ビーズ法発泡ポリプロピレン(EPP)、ビーズ法発泡スチロール(EPS)が挙げられる。ここで、「ビーズ法発泡体」とは、いわゆるビーズ法発泡体によって得られた発泡体である。ビーズ法発泡体は、予備発泡させた発泡ビーズを、成形型内で本発泡させることによって得られる。
【0024】
また、図4に示すように、本実施形態では、配線溝2は、上下方向断面でみたときの断面形状がU字形の配線溝である。すなわち、配線溝2は、図4に示すように、溝幅方向に隙間が形成された配線溝である。配線溝2の溝幅Wは、配線溝2の側面2sの間の幅である、本実施形態では、配線溝2の溝幅Wは、図4に示すように、溝深さ方向(上下方向)において等しい。溝幅Wの具体例としては、ハーネス3の直径φ3が4mmの場合、3mmとすることができる。また、溝幅Wの他の具体例としては、ハーネス3の直径φ3が10mmの場合、5mmとすることができる。
【0025】
本実施形態では、溝幅Wは、成形型を用いて成形することが可能な溝幅であることが好ましい。この場合、配線溝2は、成形型を用いることにより、シートパッド1とともに成形することができる。したがって、この場合、安価に製造可能なシートパッドとなる。こうした溝幅Wとしては、例えば、2mm以上の溝幅が挙げられる。
【0026】
また、本実施形態では、溝深さDは、ハーネス3の直径φ3の3倍以上であることが好ましい。この場合、ハーネス3が配線溝2の溝深さ方向中心の位置に埋設された状態であっても、発泡ポリウレタン11の表面(表層部1aの表面)に形成された配線溝2の開口2aまでの距離がハーネス3の直径φ3以上確保されている。このように、本実施形態では、ハーネス3を埋設したときの配線溝2の開口2aまでの間隔を大きく確保することができる。したがって、この場合、ハーネス3を、より強固に固定することができる。具体例としては、ハーネス3の直径φ3が4mmまたは10mmの場合、溝深さDは、35mm≦D≦50mmとすることができる。
【0027】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、シートパッド1は、表層部1aの内側にビーズ法発泡体12が配置されている。
【0028】
発泡ポリウレタン11は着座安定性とともに座り心地を確保する。ビーズ法発泡体12は、発泡ポリウレタン11よりも硬く、着座安定性を確保する。したがって、本実施形態では、座り心地が確保されるとともに着座安定性が向上する。
【0029】
しかしながら、ビーズ法発泡体12は、発泡ポリウレタン11よりも耐熱性が低い。このため、シートパッド1の表層部1a(特に、シートパッド1の下面1f2)に配線溝2を形成した場合、当該配線溝2は、熱の影響を直接的に受けることになる。
【0030】
本実施形態では、ビーズ法発泡体12を発泡ポリウレタン11の内側に配置し、当該発泡ポリウレタン11に配線溝2を形成している。この場合、ビーズ法発泡体12に配線溝2を形成するときに比べて当該配線溝2に生じ得る熱の影響を抑えることができる。したがって、この場合、耐久性に優れた配線溝2を有するシートパッドとなる。例えば、電気自動車の場合、バッテリ、モータなどの高熱を発生する熱源装置は後部座席の下に配置されていることがある。したがって、シートパッド1は、本実施形態のように、後部座席用シートパッドとして用いるのが特に有効である。
【0031】
なお、シートパッド1において、発泡ポリウレタン11は、軟質発泡ポリウレタンで構成されており、ビーズ法発泡体12は、ビーズ法発泡ポリプロピレンまたはビーズ法発泡スチロールで構成されていることが好ましい。この場合、一般に用いられている発泡ポリウレタンおよびビーズ法発泡材料を用いることによって、コスト性に優れたシートパッドとなる。特に、ビーズ法発泡体12がビーズ法発泡スチロールで構成されている場合、ビーズ法発泡スチロールは、他のビーズ法発泡体に比べて熱耐久性が低い。このため、ビーズ法発泡体12がビーズ法発泡スチロールで構成されている場合、本発明を適用すれば、熱耐久性の向上に有効である。ただし、本発明によれば、シートパッド1は、発泡ポリウレタン11のみで構成することができる。
【0032】
図6は、シートパッド1に形成された配線溝2の他の例を図2のY-Y断面で示す断面図である。図6において、配線溝2にはハーネス3が埋設されている。
【0033】
図6を参照すれば、配線溝2の側面2sには、溝幅方向内側に突出する突出部21が形作られている。この場合、ハーネス3を、より強固に固定することができる。
【0034】
本実施形態では、図6に示すように、突出部21は、当該突出部21と配線溝2の溝底2bとの間に配線溝2内に埋設されたハーネス3が配置できるような位置に形成されている。この場合、突出部21は、ハーネス3が配線溝2内から抜けないように抜け止めすることによって、当該ハーネス3を、より強固に固定することができる。
【0035】
特に、突出部21は、本実施形態のように、配線溝2の側面2sの両方に形成されていることが好ましい。この場合、ハーネス3を、より強固にかつ安定的に固定することができる。また、本発明によれば、突出部21は、配線溝2の側面2sのいずれか一方のみに形成することができる。この場合も、ハーネス3を、より強固にかつ安定的に固定することができる。
【0036】
また、本発明によれば、さらに他の例として、突出部21は、当該突出部21と配線溝2の溝底2bとの間に配線溝2内に埋設されたハーネス3が配置されないような位置、すなわち、配線溝2内に埋設されたハーネス3が当該突出部21と接触するような位置に形成することができる。この場合、突出部21は、当該突出部21が配線溝2内に埋設されたハーネス3を押圧することによって、当該ハーネス3を、より強固に固定することができる。
【0037】
(シートパッドの製造方法)
次に、本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法について説明する。この製造方法は、図6を用いて説明したシートパッド1を製造するのに好適に用いることができる。図7図9は、本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を概略的に説明するための図である。また、図10は、本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法に用いられる成形型100に形成された溝形成突起部101を概略的に示す要部断面斜視図である。
【0038】
本発明に係る、シートパッドの製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、少なくとも、成形型100と、発泡ポリウレタン材料とを用い、発泡ポリウレタン11によって構成された表層部1aを含んでおり当該表層部1aに形成された配線溝2の側面2sに溝幅方向内側に突出する突出部21が形作られているシートパッドを得るための、シートパッドの製造方法である。
【0039】
図7を参照すれば、本製造方法では、成形型100として、配線溝2を形作るための溝形成突起部101を有しているとともに当該溝形成突起部101の側面101sに、穴部102が形成されている成形型を用いる。
【0040】
また、本製造方法では、成形型100の内部に発泡ポリウレタン材料を供給する、発泡ポリウレタン材料供給工程と、成形型100から予備成形品から取り出すときに溝形成突起部101の穴部102から当該穴部102に形成された成形部分を無理抜きする、無理抜き工程と、を含んでいる。
【0041】
本製造方法において、成形型100の内部とは、成形型100の内側に形成されたキャビティCである。成形型100は、例えば、上型と下型とを有している。この場合、キャビティCは、前記上型と前記下型とを合わせることによって形成される。キャビティCは、シートパッド1の外形形状を形作る。また、成形型100の内部には、成形型100とビーズ法発泡体12との間に形成された隙間Sが含まれる。
【0042】
本製造方法では、まずビーズ法発泡体セット工程を行う。図7を参照すれば、ビーズ法発泡体セット工程では、成形型100とビーズ法発泡体12との間に隙間Sが形成されるように成形型100の内部にビーズ法発泡体12を配置する。本実施形態では、配線溝2の開口2aは、シートパッド1の下面1f2に形成されている。そして、本製造方法では、シートパッド1の下面1f2は、上型110のキャビティ面110fによって形作られる。したがって、本製造方法では、溝形成突起部101は、上型110のキャビティ面110fに形成されている。
【0043】
次いで、発泡ポリウレタン材料供給工程を行う。本製造方法では、成形型100の内部に軟質発泡ポリウレタン材料を供給する。本製造方法では、図7の矢印に示すように、軟質発泡ポリウレタン材料は、上型110から下側(ビーズ法発泡体12の側)に向かって供給される。これによって、シートパッド1の上面側表面(本実施形態では、ビーズ法発泡体12との接合面)の成形性を高めることができる。
【0044】
成形型100の内部に供給された発泡ポリウレタン材料の発泡が完了すると、図8に示すように、成形型100の内部には、予備成形品が完成する。本製造方法では、前記予備成形品は、発泡ポリウレタン11を表層部1aとし、ビーズ法発泡体12がシートパッド1のコア(シートパッド本体)として埋設されている。前記予備成形品には、穴部102によって成形片11aが成形される。
【0045】
次いで、本製造方法では、無理抜き工程を行う。無理抜き工程は、成形型100から前記予備成形品から取り出すための型外し工程である。型外し工程では、一般的な作業と同様に、上型110と下型(図示省略。)とを分離させる。このとき、図9に示すように、前記予備成形品のうち、穴部102に形成された成形片11aは、溝形成突起部101の穴部102から無理抜きされる。これによって、シートパッド1の成形時に、配線溝2とともに突出部21を成形することができる。
【0046】
穴部102は、貫通穴および非貫通穴(窪み)のいずれかとすることができる。本実施形態では、穴部102は、貫通穴である。この場合、成形片11aは、配線溝2の側面2sを連結する連結片である。本製造方法では、成形片11aは、前記予備成形品の成形片11aが溝形成突起部101の穴部102から無理抜きされることによって、配線溝2の溝幅方向の中心付近で側面2sの一方側と他方側とに分断される。これによって、成形型を取り外すという簡単な作業によって、配線溝2の側面2sの両方に突出部21が形成される。
【0047】
上述のとおり、本製造方法によれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッド1を容易に得ることができる。
【0048】
特に、本製造方法では、穴部102は、貫通穴である。穴部102が非貫通穴の場合、穴部102での樹脂材料の回りが上手くいかないことがある。これに対し、穴部102が貫通穴である場合、穴部102での樹脂材料の回りが良いことから、突出部21(成形片11a)の成形が容易である。したがって、本製造方法によれば、シートパッド1をより容易に得ることができる。
【0049】
また、図10を参照すれば、本製造方法において、溝形成突起部101には、複数の穴部102が形成されている。穴部102は、溝形成突起部101の延在方向(配線溝2の溝長さ方向)に間隔を置いて形成されている。この場合、成形後のシートパッド1において、配線溝2には、当該配線溝2の溝長さ方向に、複数の突出部21が形成される。したがって、この場合、ハーネス3を、より強固にかつ安定的に固定することができるシートパッド1を得ることができる。ただし、本発明によれば、穴部102は、溝形成突起部101の延在方向の1か所のみに形成することができる。
【0050】
上述のとおり、本発明によれば、配線作業の作業性が向上するとともに当該配線作業に要する費用が抑制されるシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することができる。
【0051】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、配線溝2は、シートパッド1の上側、下側、前側、後側、左側および右側の、少なくともいずれか1つの表層部1a、に形成することができる。また、シートパッド1は、クッションパッドとしたが、クッションパッドとバックパッドとを組み合わせたものとすることができる。この場合、本発明に係るシートパッドは、クッションパッド、バックパッド及びクッションパッドの少なくともいずれか1つに適用させることができる。また、本発明に係るシートパッドは、クッションパッド、バックパッド及びクッションパッドのいずれかのみとすることもできる。さらに、本発明に係るシートパッドは、前部座席用シートパッドとすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1:シートパッド, 2:配線溝, 2a:配線溝の開口, 2b:配線溝の底面, 2s;配線溝の側面, 21:突出部, 3:ワイヤーハーネス, 11:発泡ポリウレタン, 12:ビーズ法発泡体, 100:成形型, 101:溝形成突起部, 101f:溝形成突起部の側面, 102:穴部, D:溝深さ, W:溝幅
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