(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191088
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】炉建設方法
(51)【国際特許分類】
C10B 29/02 20060101AFI20221220BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099729
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】小原 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 典子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051AB03
4K051LF01
4K051LF04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建設場所でのモジュールブロック据え付けの手直し作業を軽減し、かつ、高い精度で効率的にモジュールブロックを据え付けることのできる炉の建設方法を提供する。
【解決手段】炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックを製造するモジュールブロック製造工程、炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程、モジュールブロック設置位置へのモルタル塗布工程、及びモジュールブロック設置工程を含む炉建設方法であって、モジュールブロック製造工程が、複数の定型耐火物を積み上げるモジュールブロック積み上げ工程と、モジュールブロックの輪郭形状を測定する第1の測定工程と、モジュールブロックが設置される位置の輪郭形状を測定する第2の測定工程と、モジュールブロック輪郭形状と設置位置輪郭形状とを比較して、モジュールブロックの形状の合否を判定する判定工程とを含む、炉建設方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックを製造するモジュールブロック製造工程と、
前記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを設置するモジュールブロック設置工程とを含む、炉建設方法であって、
前記モジュールブロック製造工程が、
複数の定型耐火物を積み上げて前記モジュールブロックを製造する積み上げ工程と、
前記積み上げ工程で得られた前記モジュールブロックの輪郭形状を測定してモジュールブロック輪郭形状を得る第1の測定工程と、
前記炉における、前記モジュールブロックが設置される位置の輪郭形状を測定して設置位置輪郭形状を得る第2の測定工程と、
前記モジュールブロック輪郭形状と前記設置位置輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する判定工程とを含む、炉建設方法。
【請求項2】
前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックに代えて、別途製造したモジュールブロックを使用する、請求項1に記載の炉建設方法。
【請求項3】
前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックおよび該モジュールブロックが設置される位置の一方または両方の形状を修正する、請求項1に記載の炉建設方法。
【請求項4】
前記形状の修正を、機械加工によって行う、請求項3に記載の炉建設方法。
【請求項5】
前記形状の修正を、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって行う、請求項3または4に記載の炉建設方法。
【請求項6】
前記第1の測定工程における測定および前記第2の測定工程における測定の一方または両方を、レーザを利用した3次元計測法を用いて行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【請求項7】
前記第1の測定工程における測定および前記第2の測定工程における測定の一方または両方を、複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【請求項8】
前記モジュールブロック製造工程が、
前記判定工程に先立って、前記第1の測定工程で得た前記モジュールブロック輪郭形状と、予め用意したモジュールブロックの適正な輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する予備的判定工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、室炉式コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。室炉式コークス炉は、炭化室と、該炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成されており、炭化室と燃焼室とを隔てる耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給される。室炉式コークス炉には100門以上の炉室を備えるものもあり、そのような室炉式コークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉を構成する定型耐火物は、一般的な建築物用の煉瓦と異なり、上面から見た形状が長方形、台形、L字型など、複雑な形状をしている。さらに、それら定型耐火物の側面、上面、底面には、ダボと呼ばれるズレ防止用の嵌合凸部や、ホゾと呼ばれるズレ防止用の嵌合凹部が設けられている場合がある。コークス炉は、このように極めて複雑な形状を有する定型耐火物を組み合わせて建設される。
【0004】
このような定型耐火物の形状の複雑さのため、コークス炉の築炉は、現在、築炉工による手積み作業で行われている。手積みによる築炉では、定型耐火物を積む位置にコテ等の工具を用いて所定の目地厚になるようにモルタルを塗布し、次いで、モルタル上へ定型耐火物を積み上げるという作業を繰り返し行う必要がある。その際には、複雑な形状の定型耐火物の表面にモルタルを均一に塗布する必要があるなど、極めて高度な技能が要求されるが、そのような技能を有する熟練した築炉工は常に不足している。また、手作業でモルタルの塗布と定型耐火物の積み上げを行う築炉作業は極めて重労働といえる。
【0005】
以上の理由から、定型耐火物を積み上げる作業を、少ない人手で効率的に行う方法の開発が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1では、予めコークス炉の建設場所以外の場所で、水平方向に複数の煉瓦を並べた煉瓦層を、鉛直方向に複数段積層したモジュールブロックを製作し、建設場所に運搬して据え付ける方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で提案されている方法ではスペースに限りがあるコークス炉建設場所ではない別の場所でモジュールブロックを製造するため、十分な作業スペースを確保することができる。そしてその結果、作業効率が向上することに加え、定型耐火物の積み上げやモルタルの塗布を、ロボット等を用いて自動化することも容易である。
【0009】
しかし、本発明者らの検討の結果、特許文献1などの従来の方法には、以下に述べるようにさらなる改善の余地があることが分かった。
【0010】
すなわち、コークス炉の建設に使用される定型耐火物は焼成して製造されるものであるため、寸法にばらつきがある。例えば、一般的に使用される定型耐火物では、平面視や側面視における対角線距離で1~2mm程度の寸法誤差があり、その寸法誤差は個々の定型耐火物ごとに異なっている。そのため、定型耐火物を積み上げて得られるモジュールブロックにも、個体ごとに形状のばらつきが発生する。
【0011】
特に、コークス炉においては、石炭を炭化室に挿入して乾留し、得られたコークスを側面から押し出して排出するため、炭化室の壁面には高い平坦度が要求される。したがって、モジュールブロックの製造時には、炭化室の壁面が要求される平坦度を備えるように定型耐火物の積み方を調整することが考えられるが、その場合でも、他の以外の部分における形状のばらつきを完全になくすことはできない。
【0012】
このモジュールブロック形状のばらつきのために、コークス炉建設の精度や作業効率が低下するという問題がある。例えば、形状のばらつきのためにモジュールブロック間の距離が小さくなりすぎた場合、モジュールブロックの据付精度が低下することに加え、十分なモルタルの厚さを確保できない場合がある。特に、モジュールブロック同士が干渉する場合には、そのままモジュールブロックを積むことはできないため、干渉が生じないように該モジュールブロックを手直しする必要がある。しかし、モジュールブロックの設置作業は通常、モジュールブロックを運搬用の治具によって把持した状態で行われるため、そのままでは手直しを行うことはできない。そこで、一旦モジュールブロックから治具を外したうえで、該モジュールブロックを構成する定型耐火物を削るか、モジュールブロックの少なくとも一部を分解して定型耐火物を積み直す必要がある。このような手直しは非常に手間のかかる作業であり、コークス炉建設現場でモジュールブロックの手直しを行うことにより作業効率が著しく低下する。また、反対に、モジュールブロック間の距離が大きくなりすぎた場合にも、据付精度が低下する場合があることに加え、モジュールブロック間の隙間を多量のモルタルで充填する必要があるため、やはり作業効率が低下する。
【0013】
したがって、モジュールブロックを用いたコークス炉建設方法において、さらに高い精度で効率的にコークス炉を建設できる方法が求められている。また、上記モジュールブロックを用いた工法は、コークス炉以外の炉の建設にも適用可能であるが、その場合にも、やはり同様に、さらに高い精度で効率的に炉を建設できる方法が求められる。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、炉の建設場所におけるモジュールブロックの手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0016】
1.炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックを製造するモジュールブロック製造工程と、
前記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを設置するモジュールブロック設置工程とを含む、炉建設方法であって、
前記モジュールブロック製造工程が、
複数の定型耐火物を積み上げて前記モジュールブロックを製造する積み上げ工程と、
前記積み上げ工程で得られた前記モジュールブロックの輪郭形状を測定してモジュールブロック輪郭形状を得る第1の測定工程と、
前記炉における、前記モジュールブロックが設置される位置の輪郭形状を測定して設置位置輪郭形状を得る第2の測定工程と、
前記モジュールブロック輪郭形状と前記設置位置輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する判定工程とを含む、炉建設方法。
【0017】
2.前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックに代えて、別途製造したモジュールブロックを使用する、上記1に記載の炉建設方法。
【0018】
3.前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックおよび該モジュールブロックが設置される位置の一方または両方の形状を修正する、上記1に記載の炉建設方法。
【0019】
4.前記形状の修正を、機械加工によって行う、上記3に記載の炉建設方法。
【0020】
5.前記形状の修正を、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって行う、上記3または4に記載の炉建設方法。
【0021】
6.前記第1の測定工程における測定および前記第2の測定工程における測定の一方または両方を、レーザを利用した3次元計測法を用いて行う、上記1~5のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【0022】
7.前記第1の測定工程における測定および前記第2の測定工程における測定の一方または両方を、複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって行う、上記1~5のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【0023】
8.前記モジュールブロック製造工程が、
前記判定工程に先立って、前記第1の測定工程で得た前記モジュールブロック輪郭形状と、予め用意したモジュールブロックの適正な輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する予備的判定工程をさらに含む、上記1~7のいずれか一項に記載の炉建設方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、炉の建設場所における手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態における炉建設方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態におけるモジュールブロック製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】モジュールブロックの構造の例を模式的に示す上面図である。
【
図4】モジュールブロックの構造の例を模式的に示す側面図である。
【
図5】水平方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す上面図である。
【
図6】垂直方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す側面図である。
【
図7】モジュールブロック設置工程において設置されるモジュールブロックと、既に設置されているモジュールブロックの配置の例を示す模式図である。
【
図8】本発明の他の実施形態におけるモジュールブロック製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の説明においては、特に断りの無い限り、炉に組み込まれた状態における向きを基準として、定型耐火物、及び該定型耐火物を積み上げて製造されるモジュールブロックについて、上、下、水平、鉛直、及び高さとの用語を用いる。
【0027】
また、本発明における炉の「建設」には、新規に炉を建設する場合に加えて、既存の炉に追加的に新規部分を建設する場合(増設)、および既存の炉の一部を置き換えるように新規部分を建設する場合(補修)も包含するものとする。言い換えると、本発明における「建設」には、新設、増設、および補修を包含する。例えば、稼働中のコークス炉の補修においては、いくつかの燃焼室および炭化室の使用を停止し、それ以外の燃焼室および炭化室については稼働した状態で補修を行うこと(熱間補修)が一般的に行われている。本発明は前記熱間補修にも適用可能である。
【0028】
本発明の一実施形態における炉建設方法は、
図1のフローチャートに示すように以下の工程を含む。
・モジュールブロック製造工程
・モジュールブロック運搬工程
・モルタル塗布工程
・モジュールブロック設置工程
【0029】
以下、上記各工程について説明する。なお、以下の説明では例としてコークス炉を建設する方法を説明するが、本発明はコークス炉以外の炉の建設にも適用可能である。
【0030】
[モジュールブロック製造工程]
前記モジュールブロック製造工程では、炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックを製造する。本発明においては、コークス炉の建設場所以外の場所において製造したモジュールブロックをコークス炉建設場所に運搬、設置してコークス炉を建設するため、従来のように作業性の悪い建設場所において築炉工が一つずつ定型耐火物を手積みする作業を低減し、建設場所における作業効率を格段に向上させることができる。
【0031】
なお、本発明ではモジュールブロック工法を用いるが、形状が複雑な部分など、炉の一部については、モジュールブロックではなく定型耐火物を直接積むことによって作製することもできる。
【0032】
前記「コークス炉の建設場所以外の場所」としては、コークス炉の建設現場とは異なり、かつ定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造することができる場所であれば特に限定されず、任意の場所を用いることができる。例えば、コークス炉の建設を行うための場所に設けられた仮上屋に隣接する土地等のコークス炉建設場所に隣接する場所、該コークス炉を製鉄所内に建設する場合であれば、該製鉄所内の他の場所などで積み上げ工程を実施することができる。また、モジュールブロックの製造は、コークス炉建設場所から離れた遠隔地で行うことも可能であるが、運搬にかかる時間やコストを考慮すると、コークス炉建設場所に隣接する場所で行うことが好ましい。積み上げ工程は、一カ所で集約的に行うことが効率上望ましいが、複数の場所で行って、それぞれの場所で製造されたモジュールブロックを、1つのコークス炉建設現場へ運搬、搬入して用いることもできる。
【0033】
本発明の一実施形態におけるモジュールブロック製造工程は、
図2のフローチャートに示すように以下の工程を含む。
・積み上げ工程
・第1の測定工程
・第2の測定工程
・判定工程
【0034】
[積み上げ工程]
モジュールブロック製造工程においては、まず、複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する(積み上げ工程)。前記モジュールブロックは、コークス炉のいずれの部分を構成するためのモジュールブロックとすることもできるが、比較的構造が単純な部分や、繰り返し構造を有する部分をモジュールブロック化すれば、作業効率の向上効果が大きい。そのため、前記積み上げ工程においては、蓄熱室を構成するモジュールブロックおよび燃焼室を構成するモジュールブロックの少なくとも一方を作製することが好ましい。
【0035】
図3、
図4は、モジュールブロックの構造の例を示す模式図であり、コークス炉の燃焼室を構成するモジュールブロックの構造を表している。なお、
図3、
図4を含む各図面においては、説明のため、定型耐火物の形状や組み合わせ方などを簡略化して示しており、実際の正確な構造を示すものではないことを付記する。
【0036】
モジュールブロック1は、複数の定型耐火物2を積み上げて構成されており、個々の定型耐火物2は、定型耐火物2の間の目地部分に塗布されたモルタル(図示されない)で接合されている。先に述べたように、コークス炉用の定型耐火物2には、
図5、
図6に示すように、ズレ防止などのための嵌合凸部であるダボ3や嵌合凹部であるホゾ4が設けられており、ダボ3とホゾ4とがモルタル5を介して嵌合した状態で接合される。
【0037】
[[定型耐火物]]
前記モジュールブロックを製造するための定型耐火物としては、特に限定されることなく、レンガやプレキャストブロック等、任意の定型耐火物を用いることができる。なかでも、手積みでコークス炉を建設する際に用いられる通常の定型耐火物を用いることが好ましい。通常の定型耐火物を使用することにより、本発明の方法で築炉する場合においても、従来と同様の炉の設計とすることが可能となり、その結果、少なくとも従来と同等の炉の性能を保証することが可能となる。また、大型のモジュールレンガを用いた場合には、亀裂が入った場合にモジュール全体にわたって亀裂が広がるおそれがあるが、通常の定型耐火物を使用すれば、仮に定型耐火物に亀裂が入ったとしても、その亀裂の伝搬を1つの定型耐火物内でとどめることができる。なお、ここでいう通常の定型耐火物とは、モジュールレンガではない、手積み用の定型耐火物全般を指すが、その寸法は、一般的には、高さ10~15cm、水平方向の長さが20~40cmである。
【0038】
[[手作業による定型耐火物の積み上げ]]
上記定型耐火物の積み上げは、手作業によって行うことができる。本発明では、コークス炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックの製造を行うので、コークス炉建設場所で定型耐火物を手積みする場合とは異なり、十分な作業スペースを確保することが可能となる。したがって、同じ手積みであっても作業者への負荷を低減することができる。また、コークス炉建設場所で定型耐火物を積む場合には、積み上げられた定型耐火物の高さに合わせて足場を組み、その上で作業を行う必要があるが、本発明ではモジュールブロック単位で定型耐火物を積む作業を行うため、高所作業のための足場を用いる必要がなく、足下のよい地面の上で作業を行うことができる。
【0039】
[[ロボットによる定型耐火物の積み上げ]]
また、上記定型耐火物の積み上げは、ロボットを用いて行うこともできる。この場合、ブロックの製造工程の一部または全部を自動化することができるため、定型耐火物の手積みという重労働に従事する作業員の数を減らすことができるとともに、高度な技能を要求される定型耐火物積み上げ作業の一部または全部をロボットにより自動化することが可能となる。
【0040】
定型耐火物の積み上げに用いるロボットとしては、特に限定されることなく、任意のロボットを用いることができるが、定型耐火物をハンドリングすることが可能な可動式のアームを有するアーム型ロボットを用いることが好ましい。前記アーム型ロボットの一例としては、産業用ロボットの一種である垂直多関節型ロボットが挙げられる。また、定型耐火物積み上げ用アーム型ロボットとモルタル塗布用アーム型ロボットを用いてモジュールブロックを製造することもできる。
【0041】
[[モジュールブロック製造ライン]]
なお、手積みで行うかロボットを使用するかに関わらず、モジュールブロックの製造ラインは1つとすることも、複数とすることもできる。複数のラインで定型耐火物の積み上げを行ってモジュールブロックを製造すれば、コークス炉建設場所へのモジュールブロックの供給速度を上げることができるため、作業効率の観点からはモジュールブロックの製造ラインの数を2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。一方、製造ラインの数の上限は特に限定されないが、必要以上にライン数を増やしても、その後のモジュールブロック運搬工程や、コークス炉建設場所において行われるモルタル塗布工程やモジュールブロック設置工程が律速工程となるため、それ以上コークス炉の建設スピードを向上させることが困難となり、費用対効果が低下する。したがって、ライン数は、コークス炉の規模や各工程における作業速度等を考慮して決定すればよい。
【0042】
[[モジュールブロックのサイズ]]
前記モジュールブロックのサイズは特に限定されず、任意のサイズとすることができる。しかし、モジュールブロックの製造を手積みで行う場合、モジュールブロックの高さが過度に高いと、高い位置に定型耐火物を積むために、足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける必要がある。例えば、日本においては、労働安全衛生規則第518条の規定により、高さが2m以上で作業を行う場合において墜落のおそれのあるときは、作業床を設けることが求められている。前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を手積みしてモジュールブロックを製造する場合でも、足場などを設置して高所作業を行う必要がないため、作業効率が高い。また、ロボットを用いてモジュールブロックを製造する場合には、前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を積む位置の高さを一般的なアーム型ロボットのアームの可動範囲内とすることができる。そのため、ロボットを水平方向に移動させるのみでモジュールブロックを製造することができるため、作業効率が高い。したがって、作業効率の観点からは、モジュールブロックの高さを2m未満とすることが好ましい。一方、前記モジュールブロックの高さの下限についても特に限定されないが、定型耐火物2段以上とすることが好ましい。
【0043】
また、モジュールブロックの長手方向の長さについても限定されないが、作業効率の観点からは、建設するコークス炉の炉長の1/8以上とすることが好ましい。前記モジュールブロックの長手方向の長さは、建設するコークス炉の炉長の1/4以上であってもよい。一方、前記モジュールブロックの長手方向の長さは、建設するコークス炉の炉長の2/3以下とすることが好ましく、1/2以下とすることがより好ましい。
【0044】
なお、ここで「モジュールブロックの長手方向長さ」とは、モジュールブロックの水平方向断面における長手方向の長さを指し、「モジュールブロックの高さ」とは、該モジュールブロックの下面から上面までの高さを指す。なお、前記「モジュールブロックの長手方向長さ」および「モジュールブロックの高さ」には、モジュールブロックの側面、上面、および底面に設けられたダボ等の凹凸は含めないものとする。また、「コークス炉の炉長」とは、コークス炉を構成する個々の燃焼室および炭化室の長手方向の長さを意味する。なお、現在使用されている一般的なコークス炉の炉長は、15~17m程度である。
【0045】
[第1の測定工程]
次に、前記積み上げ工程で得られた前記モジュールブロックの輪郭形状を測定してモジュールブロック輪郭形状を得る(第1の測定工程)。測定されたモジュールブロック輪郭形状は、後述する判定工程において使用される。
【0046】
前記第1の測定工程においては、モジュールブロックの少なくとも一部の輪郭形状を測定すればよく、モジュールブロック全体の輪郭形状を測定してもよい。
【0047】
前記輪郭形状の測定方法はとくに限定されず、任意の方法を用いることができる。前記測定方法としては、モジュールブロックの3次元的な輪郭形状のデータ測定する3次元計測法を用いることが好ましい。前記3次元計測法では、例えば、モジュールブロック輪郭形状を3次元点群データとして取得することができる。
【0048】
例えば、本発明の一実施形態においては、レーザを利用した3次元計測法を用いて輪郭形状の測定を行うことができる。モジュールブロックに対してレーザを照射し、反射光を検出することによって光源からモジュールブロックの表面の各点までの距離を測定することにより、モジュールブロックの輪郭形状の3次元点群データを取得することができる。反射光による距離の測定に使用できる方法としては、例えば、TOF(Time of Flight)方式や位相差検出方式などを挙げることができるが、これらに限らず任意の方法を用いることができる。
【0049】
また、本発明の他の実施形態においては、モジュールブロックを複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって輪郭形状の測定を行うことができる。すなわち、フォトグラメトリでは、異なる視点から撮影した複数の画像から、当該画像に写った同一の点の3次元座標を三角測量の原理で求めることができる。したがって、画像中の多数の点の3次元座標を求めることにより、モジュールブロックの輪郭形状の3次元点群データを取得することができる。
【0050】
なお、いずれの測定法を用いるかにかかわらず、モジュールブロックの複数の面の輪郭形状を測定した場合、得られた複数の測定データを合成し、複数の面の輪郭形状を含むデータを生成することが好ましい。
【0051】
なお、モジュールブロックを構成する定型耐火物の寸法の公差は、一般的に1~2mm程度である。また、コークス炉における定型耐火物の積み付け精度も、一般的に1~2mm程度であることが要求される。そのため、上記輪郭形状の測定において使用する測定方法の測定精度は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。また、得られた3次元点群データから3次元ポリゴンモデルを作成し、以降の工程において該ポリゴンモデルを使用することもできる。
【0052】
前記第1の測定工程においてモジュールブロックの輪郭形状を測定する部位はとくに限定されないが、少なくともモジュールブロックの下面の輪郭形状を測定することが好ましく、少なくともモジュールブロックの下面および側面の輪郭形状を測定することがより好ましい。その理由については後述する。
【0053】
[第2の測定工程]
また、前記炉における、前記モジュールブロックが設置される位置の輪郭形状を測定して設置位置輪郭形状を得る(第2の測定工程)。測定された設置位置輪郭形状は、上記第1の測定工程で得られたモジュールブロック輪郭形状とともに、後述する判定工程において使用される。
【0054】
ここで、「モジュールブロックが設置される位置」とは、モジュールブロック設置工程において該モジュールブロックを設置する予定の位置を指す。「モジュールブロックが設置される位置の輪郭形状(設置位置輪郭形状)」とは、該モジュールブロックを設置した場合に、該モジュールブロックと(モルタルを介して)当接することになる部位の輪郭形状を指す。前記設置位置輪郭形状には、典型的には、既に設置されているモジュールブロックの輪郭形状が含まれる。また、上述したように、本発明では形状が複雑な部分など、炉の一部については、モジュールブロックではなく定型耐火物を直接手積みすることによって作製することもできる。そのため、前記設置位置輪郭形状には、既に設置されている定型耐火物(モジュールブロックを構成する定型耐火物以外のもの)の輪郭形状も含むことができる。
【0055】
前記第2の測定工程においては、前記モジュールブロックが設置される位置の少なくとも一部の輪郭形状を測定すればよいが、モジュールブロックを設置した際に該モジュールブロックの下面と対向する面および該モジュールブロックの側面が対向する面の輪郭形状を測定することが好ましい。
【0056】
前記輪郭形状の測定方法はとくに限定されず、任意の方法を用いることができる。前記測定方法としては、設置位置の3次元的な輪郭形状のデータ測定する3次元計測法を用いることが好ましい。前記3次元計測法では、例えば、設置位置輪郭形状を3次元点群データとして取得することができる。
【0057】
前記第2の測定工程における測定方法としては、上述した第1の測定工程と同様に、レーザを利用した3次元計測法や、複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリなど、任意の方法によって行うことができる。第1の測定工程で使用する測定方法と第2の測定工程で使用する測定方法は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
使用する測定法にかかわらず、設置位置の複数の面の輪郭形状を測定した場合、得られた複数の測定データを合成し、複数の面の輪郭形状を含むデータを生成することが好ましい。
【0059】
また、上記第1の測定工程において述べた理由と同じ理由から、上記設置位置輪郭形状の測定において使用する測定方法の測定精度は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。また、得られた3次元点群データから3次元ポリゴンモデルを作成し、以降の工程において該ポリゴンモデルを使用することもできる。
【0060】
なお、
図2のフローチャートにおいては、例として、第1の測定工程の後、判定工程の前に第2の測定工程を行う場合を示した。しかし、本発明において第2の測定工程を実施するタイミングはこれに限定されず、判定工程よりも前であれば任意のタイミングで行うことができる。例えば、第1の測定工程よりも前に第2の測定工程を実施してもよく、第2の測定工程と同時に第2の測定工程を実施してもよい。
【0061】
[判定工程]
次に、上記第1の測定工程で得たモジュールブロック輪郭形状と、上記第2の測定工程で得た設置位置輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する(判定工程)。このようにモジュールブロック輪郭形状と前記設置位置輪郭形状とを比較することにより、該モジュールブロックを設置した際にモジュールブロックの形状が設置位置の形状と整合するかどうかを、実際に設置作業を行う前に判定することができる。そしてその結果、炉の建設場所におけるモジュールブロックの手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することが可能となる。
【0062】
上記本発明の効果について、図面を参照してさらに具体的に説明する。
図7は、モジュールブロック設置工程において設置されるモジュールブロックと、既に設置されているモジュールブロックの配置の例を示す模式図である。
図7に示した例では、炉の建設場所にはすでに炉を構成する複数のモジュールブロックが設置されている。この、すでに設置されているモジュールブロックを、以下、既設モジュールブロックという。既設モジュールブロック11a、11b、11cは水平方向に隣接して設置されており、既設モジュールブロック11b、11cの上の段には既設モジュールブロック11dが積まれている。そして、既設モジュールブロック11a、11bの上の段に、既設モジュールブロック11dの横方向に隣接するようにモジュールブロック10を設置する。
【0063】
しかし、モジュールブロックの形状のばらつきや、設置位置、設置角度などのずれのために、モジュールブロック10と既設モジュールブロック11とが干渉する場合がある。例えば、モジュールブロック10の下面は、既設モジュールブロック11aおよび11bの上面と接することになる。そのため、既設モジュールブロック11aおよび11bの上面に設計上意図しない段差があれば、モジュールブロック10の下面と干渉する。また、既設モジュールブロック11aおよび11bの上面に意図しない段差が無い場合でも、既設モジュールブロック11の位置が水平方向にずれている場合、モジュールブロック10の下面のダボと既設モジュールブロック11の上面にあるホゾとの間で干渉が生じる場合がある。
【0064】
本発明によれば、モジュールブロック運搬工程に先立って上記判定を行うことにより、事前にモジュールブロック間の干渉の有無を予測することができる。そしてその結果、炉の建設場所におけるモジュールブロックの手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することが可能となる。
【0065】
前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合の対応についてはとくに限定されないが、該モジュールブロックおよび該モジュールブロックの設置位置の一方または両方に対して、何らかの手当を施すことが好ましい。
【0066】
例えば、本願明細書の一実施形態では、前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックに代えて、別途製造したモジュールブロック(第2のモジュールブロック)を使用することができる。これにより、設置位置の形状に整合しないモジュールブロックが炉の建設現場へ搬入され、現場において手直し作業が発生することを回避できる。
【0067】
なお、第2のモジュールブロックを使用する場合、該第2のモジュールブロックを対象として第1の測定工程と判定工程とを実施し、該第2のモジュールブロックの形状の合否を判定することが好ましい。この場合、判定工程で合格となるモジュールブロックが見つかるまで上記のプロセスを繰り返すことが好ましい。
【0068】
また、本願明細書の他の実施形態では、前記判定工程において前記モジュールブロックの形状が不合格と判定された場合に、該モジュールブロックおよび該モジュールブロックが設置される位置の一方または両方の形状を修正することができる。本発明によれば、予め判定と形状修正を行うことができるため、炉の建設場所におけるモジュールブロックの手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することが可能となる。
【0069】
形状修正の方法は特に限定されず、モジュールブロックおよび設置位置の一方または両方形状を修正できる方法であれば任意の方法を用いることができる。
【0070】
例えば、本発明の一実施形態においては、前記形状の修正を機械加工によって行うことができる。切削などの機械加工を施すことにより、モジュールブロックおよび設置位置の一方または両方の輪郭形状を調整し、干渉をなくすことができる。また、この方法によれば、形状の誤差が大きい部分のみを加工して適正な形状とすることができる。
【0071】
前記機械加工には、特に限定されることなく任意の加工手段を用いることができる。前記加工手段としては、例えば、レーザ加工機およびエンドミルの一方または両方を用いることができる。前記エンドミルとしては、特にボールエンドミルを用いることが好ましい。
【0072】
また、本発明の他の実施形態においては、前記形状の修正を、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって行うことができる。定型耐火物を交換することによって形状修正を行う場合には、例えば、モジュールブロックの一部または全部を一旦定型耐火物に分解し、分解した部分の定型耐火物を積み直せばよい。分解した部分に使用されていた定型耐火物は、再利用してもよいし廃棄してもよい。
【0073】
[モジュールブロック運搬工程]
次に、モジュールブロック製造工程の後の工程について説明する。上記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックは、その後、コークス炉建設場所へ運搬される。モジュールブロック運搬工程におけるモジュールブロックの運搬方法は、特に限定されることなく、モジュールブロックの製造場所とコークス炉の建設場所との距離等に応じて、トラックやトランスポーター(自走運搬台車)、クレーン等の任意の方法を単独または複数組み合わせて使用することができる。例えば、コークス炉建設場所に仮上屋が設けられている場合、モジュールブロックの製造や加工を行った場所から前記仮上屋まではトランスポーターで運搬し、仮上屋内では天井クレーンとステージジャッキを併用して施工位置まで運搬することができる。また、モジュールブロック運搬工程においては、モジュールブロック製造場所からコークス炉建設場所の施工位置まで直接モジュールブロックを運搬することもできるが、まず、モジュールブロック保管場所に運搬して一時的に保管し、築炉の進捗状況に応じて前記ブロック保管場所からコークス炉建設場所の施工位置までモジュールブロックを運搬してもよい。
【0074】
[モルタル塗布工程]
次に、モジュールブロックを設置する位置に、モルタルを塗布する。モルタルの塗布方法は特に限定されず、定型耐火物を積む場合と同様に、モジュールブロックの底面や側面が接触する位置、言い換えれば、モジュールブロックが設置される位置の上面や側面に、モルタルを塗布すればよい。
【0075】
モルタルを塗布した面のうち、据え付けられるモジュールブロックの底面と接触する部分、すなわち、水平方向の目地となる部分には、スペーサーを設置することもできる。当該部分には、モジュールブロックの荷重がかかることにより所期の目地厚が確保できない場合がある。そこで、スペーサーを設置し、その上からモジュールブロックを据え付けることにより、目地厚を容易に確保することが可能となる。前記スペーサーでは、目地厚と同じ高さのものを用いることが好ましい。
【0076】
[モジュールブロック設置工程]
モルタル塗布工程においてモルタルが塗布された位置に、モジュールブロックを設置する。モジュールブロックの設置方法は特に限定されないが、例えば、クレーン等で揚重したモジュールブロックを、モルタルが塗布された面に位置を調整しつつ設置すればよい。このように、モジュールブロック単位で施工することにより、定型耐火物を一つずつ手積みする場合に比べて作業者の負担を低減し、高い精度で定型耐火物を積み上げることができる。
【0077】
なお、モジュールブロックを設置する際には、
図7に示したようにモジュールブロックが互い違いとなるよう設置することが好ましい。モジュールブロックを互い違いに積むことにより、炉の強度を向上させることができる。なお、ここで「互い違い」とは、水平方向に隣接するモジュールブロック間の目地位置が、上下方向に隣接する段の間で一致しないことを指すものとする。
【0078】
以上の手順でモジュールブロックを設置することによりコークス炉を建設することができる。なお、ここまでの説明ではコークス炉の建設を例として本発明を説明したが、上述したように本発明はコークス炉以外の炉の建設にも適用可能である。
【0079】
[予備的判定工程]
本発明の他の実施形態においては、
図8のフローチャートに示すように、前記モジュールブロック製造工程が、前記判定工程に先立って、前記第1の測定工程で得た前記モジュールブロック輪郭形状と予め用意したモジュールブロックの適正な輪郭形状とを比較して、前記モジュールブロックの形状の合否を判定する予備的判定工程をさらに含むことができる。このように、モジュールブロックの形状が適正であるか否かを事前に判定することにより、さらに効率的に、精度良く炉を建設することが可能となる。
【0080】
なお、
図8では、例として、第1の測定工程の後、第2の測定工程の前に予備的判定工程を行う場合を示した。しかし、本発明において予備的判定工程を実施するタイミングはこれに限定されず、判定工程よりも前であれば任意のタイミングで行うことができる。例えば、第2の測定工程よりも後に予備的判定工程を実施してもよい。
【0081】
前記モジュールブロックの適正な輪郭形状としては、例えば、当該モジュールブロックの設計データ(CADデータ等)を用いることができる。
【0082】
前記予備的判定工程においては、モジュールブロック全体の輪郭形状を判定に用いることもできるが、モジュールブロックの一部の輪郭形状のみを用いて判定を行ってもよい。モジュールブロックの一部の輪郭形状のみを用いて判定を行う場合、少なくとも、モジュールブロックのダボ部分およびホゾ部分の輪郭形状を判定に使用することが好ましい。
【0083】
上記予備的判定工程では、例えば、モジュールブロック輪郭形状と予め用意したモジュールブロックの適正な輪郭形状とを比較し、誤差が一定の範囲内であれば形状修正不要、そうでない場合には修正が必要と判断することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 モジュールブロック
2 定型耐火物
3 ダボ
4 ホゾ
5 モルタル
10 モジュールブロック
11a~d 既設モジュールブロック