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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191106
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び媒体取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/18 20190101AFI20221220BHJP
   G07D 11/237 20190101ALI20221220BHJP
【FI】
G07D11/18
G07D11/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099779
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】富沢 勝好
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA07
3E141BA08
3E141DA06
3E141DA08
3E141FA03
3E141FA04
3E141FB03
3E141FC03
3E141FC05
3E141FD02
3E141FE02
3E141FG04
3E141FG09
3E141FG12
3E141FG13
3E141FG14
3E141FG15
3E141FH04
3E141FJ02
3E141FJ07
3E141FJ08
3E141FJ09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性を向上させる。
【解決手段】紙幣入出金機は、モータM1で駆動され入出金部12から紙幣を繰り出す取込放出部12Cと、入出金部12と接続され、モータM1に対し独立して駆動するモータM2で駆動され紙幣を搬送する第1搬送部と、第1搬送部に設けられ、搬送される紙幣を鑑別する鑑別部14と、第1搬送部と接続され、モータM1及びM2に対し独立して駆動するモータM3で駆動され、紙幣を搬送する後側搬送部22と、後側搬送部22と接続され、正常紙幣を収納する紙幣収納庫と、第1搬送部において異常紙幣である入金リジェクト紙幣又はジャム紙幣が存在すると判定すると、モータM1の駆動を停止させて取込放出部12Cを停止させると共に、モータM2の駆動を停止させて第1搬送部を停止させ、後側搬送部22に存在する正常紙幣を紙幣収納庫に搬送させ収納させる紙幣制御部とを設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が投入される入金部と、
第1駆動源により駆動され前記入金部から前記媒体を繰り出す繰出部と、
前記入金部と接続され、前記第1駆動源に対し独立して駆動する第2駆動源により駆動され、前記媒体を搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部に設けられ、搬送される前記媒体を鑑別する鑑別部と、
前記第1搬送部と接続され、前記第1駆動源及び前記第2駆動源に対し独立して駆動する第3駆動源により駆動され、前記媒体を搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部と接続され、前記媒体を収納する収納庫と、
前記第1搬送部において異常媒体が存在すると判定すると、前記第1駆動源の駆動を停止させて前記繰出部を停止させると共に、前記第2駆動源の駆動を停止させて前記第1搬送部を停止させ、前記第2搬送部に存在する前記媒体を前記収納庫に搬送させ収納させる制御部と
を有する媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記異常媒体が、前記鑑別部の鑑別結果に基づき判定した、利用者に返却すべきリジェクト媒体である場合、前記第2搬送部に存在する前記媒体を前記収納庫に収納させた後に、前記第1搬送部により前記リジェクト媒体を搬送させ前記入金部へ戻す
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記異常媒体が、前記第1搬送部において詰まったジャム媒体である場合、前記第2搬送部に存在する前記媒体を前記収納庫に収納させた後に、前記ジャム媒体を除去する誘導を所定の誘導部にさせる
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記ジャム媒体が存在する場所として前記第1搬送部を示す部分を強調表示するジャム媒体除去画面を前記誘導部に表示させる
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1搬送部において前記異常媒体が存在すると判定し、前記第1搬送部を停止させた際に、該異常媒体を前記第2搬送部まで到達させずに該異常媒体の搬送を停止させる
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記第1搬送部における前記鑑別部を挟んで前記入金部と反対側に接続され、前記異常媒体を一時的に保留する第3搬送部
をさらに有し、
前記制御部は、
前記第1搬送部において前記異常媒体が存在すると判定すると、該異常媒体を前記第3搬送部に搬送する
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記第2搬送部は、
前記第2駆動源の駆動が停止されて前記第1搬送部が停止された際に、前記第1搬送部における前記異常媒体が前記第2搬送部まで到達しない位置において前記第1搬送部に接続されている
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、複数の前記収納庫が整列された整列方向に沿ってほぼ直線状の前記媒体の搬送経路を形成する
請求項1乃至請求項7の何れかに記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
入金処理において、前記入金部に投入され前記鑑別部の鑑別結果に基づき正常であると判定した正常媒体を、一時的に保留させずに、前記第2搬送部により直接前記収納庫に搬送させる
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の媒体処理装置。
【請求項10】
利用者との間で取引する紙葉状の媒体が投入される入金部と、
第1駆動源により駆動され前記入金部から前記媒体を繰り出す繰出部と、
前記入金部と接続され、前記第1駆動源に対し独立して駆動する第2駆動源により駆動され、前記媒体を搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部に設けられ、搬送される前記媒体を鑑別する鑑別部と、
前記第1搬送部と接続され、前記第1駆動源及び前記第2駆動源に対し独立して駆動する第3駆動源により駆動され、前記媒体を搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部と接続され、前記媒体を収納する収納庫と、
前記第1搬送部において異常媒体が存在すると判定すると、前記第1駆動源の駆動を停止させて前記繰出部を停止させると共に、前記第2駆動源の駆動を停止させて前記第1搬送部を停止させ、前記第2搬送部に存在する前記媒体を前記収納庫に搬送させ収納させる制御部と
を有する媒体取引装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置及び媒体取引装置に関し、例えば紙幣のような紙葉状の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させる入金取引や、顧客へ現金を出金する出金取引等の各種取引を行う。また現金自動預払機の種類として、ある取引において顧客から入金された紙幣を次回以降の取引において再利用して他の顧客へ出金する、いわゆるリサイクル型(又は環流型)と呼ばれるものがある。
【0003】
このようなリサイクル型の現金自動預払機として、例えば紙幣の入出金に関する処理を行う紙幣入出金機を搭載したものがある。この紙幣入出金機としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う入出金部と、紙幣を搬送する搬送部と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種毎に紙幣を収納する紙幣収納庫と、再利用すべきでない紙幣を収納するリジェクト庫とを有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、紙幣入出金機においては、入金取引において、入出金部に投入され鑑別部において鑑別された入金が確定する前の紙幣を一時保留部に一時的に保留せずに、搬送部により入出金部から紙幣収納庫に直接搬送して収納させるダイレクト入金を行うことにより、一時保留部の保留上限枚数に制限されることなく一回の取引で多数の紙幣を入金させ、入金取引を迅速化し運用効率を向上させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-201163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示したような紙幣入出金機においてダイレクト入金を行う際に、搬送部を搬送されている紙幣がリジェクト紙幣であった場合、搬送部における紙幣の搬送を中止し、搬送部に存在している全ての紙幣を入出金部へ戻すことが考えられる。また、そのような紙幣入出金機においてダイレクト入金を行う際に、搬送部を搬送されている紙幣がジャム紙幣となった場合、搬送部における紙幣の搬送を中止する。しかしながらそのような場合、正常紙幣と、異常紙幣であるリジェクト紙幣やジャム紙幣とが搬送部において混在してしまい、正常紙幣を顧客へ返却したり、計数結果を誤ったりしてしまい、信頼性を保てない可能性があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、信頼性を向上し得る媒体処理装置及び媒体取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、媒体が投入される入金部と、第1駆動源により駆動され入金部から媒体を繰り出す繰出部と、入金部と接続され、第1駆動源に対し独立して駆動する第2駆動源により駆動され、媒体を搬送する第1搬送部と、第1搬送部に設けられ、搬送される媒体を鑑別する鑑別部と、第1搬送部と接続され、第1駆動源及び第2駆動源に対し独立して駆動する第3駆動源により駆動され、媒体を搬送する第2搬送部と、第2搬送部と接続され、媒体を収納する収納庫と、第1搬送部において異常媒体が存在すると判定すると、第1駆動源の駆動を停止させて繰出部を停止させると共に、第2駆動源の駆動を停止させて第1搬送部を停止させ、第2搬送部に存在する媒体を収納庫に搬送させ収納させる制御部とを設けるようにした。
【0009】
また本発明の媒体取引装置においては、利用者との間で取引する紙葉状の媒体が投入される入金部と、第1駆動源により駆動され入金部から媒体を繰り出す繰出部と、入金部と接続され、第1駆動源に対し独立して駆動する第2駆動源により駆動され、媒体を搬送する第1搬送部と、第1搬送部に設けられ、搬送される媒体を鑑別する鑑別部と、第1搬送部と接続され、第1駆動源及び第2駆動源に対し独立して駆動する第3駆動源により駆動され、媒体を搬送する第2搬送部と、第2搬送部と接続され、媒体を収納する収納庫と、第1搬送部において異常媒体が存在すると判定すると、第1駆動源の駆動を停止させて繰出部を停止させると共に、第2駆動源の駆動を停止させて第1搬送部を停止させ、第2搬送部に存在する媒体を収納庫に搬送させ収納させる制御部とを設けるようにした。
【0010】
本発明では、正常紙幣を第2搬送部に滞留させないようにし、搬送部において正常紙幣と異常紙幣とが混在することを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正常紙幣を第2搬送部に滞留させないようにし、搬送部において正常紙幣と異常紙幣とが混在することを防止でき、かくして本発明は、信頼性を向上し得る媒体処理装置及び媒体取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】現金自動預払機の外観構成を示す斜視図である。
図2】紙幣入出金機の構成を示す左側面図である。
図3】搬送部の構成を示す左側面図である。
図4】入金処理手順を示すフローチャートである。
図5】正常紙幣の搬送経路を示す左側面図である。
図6】入金リジェクト紙幣発生時の搬送経路(1)を示す左側面図である。
図7】入金リジェクト紙幣発生時の搬送経路(2)を示す左側面図である。
図8】入金リジェクト紙幣発生時の搬送経路(3)を示す左側面図である。
図9】ジャム紙幣発生時の搬送経路(1)を示す左側面図である。
図10】ジャム紙幣発生時の搬送経路(2)を示す左側面図である。
図11】ジャム除去誘導画面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行う。筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。
【0015】
顧客応対部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7及びレシート発行口8が設けられており、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されている。操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理的なキーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0016】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0017】
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0018】
[2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に示すように、内部に紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。紙幣入出金機10は、大きく分けて、上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ブロック10Uと、その下側部分を閉める下部ブロック10Lとにより構成されている。
【0019】
[2-1.上部ブロックの構成]
上部ブロック10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部11、顧客との間で紙幣を授受する入出金部12、紙幣を各部へ搬送する直線搬送部29、紙幣を鑑別する鑑別部14、紙幣を一時的に収納する一時保留部15、及び偽券と鑑別された紙幣を収納する偽券庫18が設けられている。
【0020】
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部11Mを有しており、この記憶部11Mに種々の情報を記憶させる。
【0021】
入出金部12は、上部ブロック10Uの内部における前上部に位置している。この入出金部12は、顧客から入金された紙幣及び顧客へ出金すべき紙幣を収容する収容器12Aを内部に有しており、その上方をシャッタ12Bにより開閉し得る。収容器12Aの内部には、複数の紙幣が紙面を前後方向に向けて集積された状態で、すなわち前後方向に沿って整列された状態で収容される。
【0022】
また入出金部12の前下方には、取込放出部12C及び入出金搬送部12Dが設けられている。取込放出部12Cは、ピックアップローラ12Cp、給紙ローラ12Cf及び分離ローラ12Crにより構成されている。ピックアップローラ12Cpは、収容器12A内と入出金搬送部12Dとを接続する取込放出口(図示せず)の前側に位置し、回転し得る。給紙ローラ12Cf及び分離ローラ12Crは、ピックアップローラ12Cpの下側において、前側及び後側に位置し接触した状態で対に配設されており、例えば、紙幣が複数同時に引き出された場合に、一枚ずつこの紙幣をその下流に位置する入出金搬送部12Dに順次繰り出す。この取込放出部12Cは、紙幣制御部11の制御に基づき、取込モード及び放出モードといった2種類の動作モードを切り替えて動作する。すなわち取込放出部12Cは、取込モードにおいて、ピックアップローラ12Cp及び給紙ローラ12Cfを図2中反時計回りに回転させることにより、収容器12A内の紙幣を1枚ずつに分離して所定の時間間隔毎に下方へ送り出し、入出金搬送部12Dを介して直線搬送部29に受け渡す。これにより直線搬送部29は、紙幣同士の間に所定の搬送間隔を隔てて搬送する。また取込放出部12Cは、放出モードにおいて、ピックアップローラ12Cp及び給紙ローラ12Cfを図2中時計回りに回転させることにより、直線搬送部29から入出金搬送部12Dを介して受け渡された紙幣を収容器12A内へ放出する。
【0023】
偽券庫18は、上部ブロック10Uの内部における後端近傍であって、直線搬送部29の真上に隣接する位置に設けられており、内部に紙幣を収納する空間を有している。この偽券庫18は、後述する鑑別部14及び紙幣制御部11により偽造紙幣(以下、偽券と呼ぶ)と判断された紙幣が直線搬送部29により搬送されてくると、これを内部に収納する。
【0024】
[2-2.搬送部の構成]
直線搬送部29は、上部ブロック10Uの内部における下端部分、換言すれば、後述する下部ブロック10Lの上方に配置されている。すなわち直線搬送部29は、紙幣入出金機10全体における上下のほぼ中央を前後方向に横切るように位置しており、全体的に上下方向に薄く前後方向に細長い形状となっている。この直線搬送部29の内部には、多数の回転するローラや紙幣を案内するガイド等が適宜配置されており、紙幣の短手方向を進行方向として、主に前後方向に沿って搬送させるような直線状の搬送路が形成されている。
【0025】
また直線搬送部29の内部には、複数の切替部が配置されている。各切替部は、ブレードと呼ばれる部材(図中三角形で示す)及びその周囲に配置された複数のローラにより構成されている。ブレードは、左右方向に長く、且つ左右方向から見て楔形に形成されており、回転して傾斜方向を変化させることで、紙幣の搬送方向を2通りに切り替える。各ローラは、紙幣の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されている。この切替部は、紙幣制御部11の制御に従い、各紙幣の搬送先に応じてブレードの傾斜方向を変化させると共に各ローラを所定の回転方向へ回転させることにより、紙幣の搬送方向を適宜切り替えて所望の搬送先へ搬送する。
【0026】
一方、直線搬送部29は、図3に拡大図を示すように、大きく分けて前側の前側搬送部21と、後側の後側搬送部22と、両者を接続する一時保留切替部20とにより構成されている。以下では、入出金搬送部12Dと前側搬送部21とをまとめて第1搬送部35とも呼ぶ。
【0027】
一時保留切替部20は、中心に位置するブレード20Bと、該ブレード20Bの前側、後側及び上側にそれぞれ位置するローラ20R1、20R2及び20R3とにより構成されている。ブレード20Bは、上述した各切替部のブレードと同様、回転して傾斜角度を変化させるものの、他の切替部と異なり、紙幣の搬送方向を3通りに切り替える、いわゆる3ウェイブレードとなっている。この一時保留切替部20と一時保留部15との間には、第3搬送部30が設けられている。
【0028】
具体的に一時保留切替部20は、上側の第3搬送部30と前側の前側搬送部21とを結ぶ搬送経路を形成するか、上側の第3搬送部30と後側の後側搬送部22とを結ぶ搬送路を形成するか、又は前側の前側搬送部21と後側の後側搬送部22とを結ぶ搬送経路を形成するかを切り替える。
【0029】
一時保留部15は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、円筒状のドラムの周側面に紙幣をテープと共に巻き付けることで該紙幣を収納し、またこの周側面から該テープを引き剥がすことで紙幣を繰り出す。
【0030】
以下では、入出金搬送部12D、直線搬送部29(前側搬送部21、一時保留切替部20及び後側搬送部22)並びに第3搬送部30をまとめて、搬送部13とも呼ぶ。搬送部13における各所には、走行監視センサ(図示せず)が配置されている。走行監視センサは、鑑別部14の走行センサ33(後述する)に設けられた光学センサと同様に構成されており、紙幣の搬送状態を検知して、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、搬送される紙幣同士の間隔やスキューの有無、紙幣の重なり、搬送方向の長さやジャムの発生等を認識する。
【0031】
前側搬送部21の内部には、前方から順に、リジェクト切替部23、鑑別部14(詳しくは後述する)及び第1切替部24が直列に配置されると共に、これらの間が比較的短い搬送短路によりそれぞれ接続されており、全体として前後方向に沿った直線状の搬送経路が形成されている。
【0032】
リジェクト切替部23は、ブレードの傾斜方向を変化させて紙幣の搬送経路を2通りに切り替えるようになっており、上側の入出金部12と後側の鑑別部14との間を結ぶ搬送経路を形成するか、又は後側の鑑別部14と下側のリジェクト庫16とを結ぶ搬送経路を形成する。第1切替部24は、リジェクト切替部23と同様に紙幣の搬送経路を2通りに切り替えるようになっており、後側の搬送短路と下側の回収庫19とを結ぶ搬送経路を形成するか、又は後側の搬送短路と前側の搬送短路とを結ぶ搬送経路を形成する。
【0033】
後側搬送部22の内部には、前方から順に、第2切替部25、第3切替部26、第4切替部27及び偽券切替部28が直列に配置されており、前側搬送部21と同様、これらの間が比較的短い搬送短路によりそれぞれ接続されることで、全体として前後方向に沿った直線状の搬送経路が形成されている。
【0034】
第2切替部25、第3切替部26及び第4切替部27は、何れも第1切替部24とほぼ前後対称に形成されており、紙幣の搬送経路を2通りに切り替える。すなわち第2切替部25、第3切替部26及び第4切替部27は、前側の搬送短路と下側の紙幣収納庫17A、17B又は17Cとを結ぶ搬送経路を形成するか、又は前側の搬送短路と後側の搬送短路とを結ぶ搬送経路を形成するかを切り替える。
【0035】
偽券切替部28は、第2切替部25、第3切替部26及び第4切替部27とほぼ上下対称に形成されており、前側の搬送短路と上側の偽券庫18とを結ぶ搬送経路を形成するか、又は前側の搬送短路と後側の搬送短路を介して紙幣収納庫17Dとを結ぶ搬送経路を形成するかを切り替える。
【0036】
[2-3.駆動源の構成]
ところで、取込放出部12Cの各ローラ、入出金搬送部12Dの各ローラ、前側搬送部21の各ローラ、後側搬送部22の各ローラ、及び一時保留切替部20を構成する各ローラは、図3の駆動境界線B1及びB2により区切られる領域毎に、互いに独立して制御される専用のモータM1、M2及びM3からそれぞれ駆動力が伝達される。これらモータM1、M2及びM3は、それぞれの駆動力の伝達対象となる各ローラ等の近傍、すなわち、それぞれ、取込放出部12C、前側搬送部21及び後側搬送部22の内部に取り付けられている。因みに第3搬送部30は、一時保留切替部20のローラ20R3を回転させることにより紙幣を搬送する。
【0037】
すなわち、モータM1は、取込放出部12Cのピックアップローラ12Cp、給紙ローラ12Cf及び分離ローラ12Cr(図2)を駆動する。また、モータM2は、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1と、一時保留切替部20のローラ20R3とを駆動する。さらに、モータM3は、後側搬送部22の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R2とを駆動する。
【0038】
このため取込放出部12C及び搬送部13では、紙幣制御部11によってモータM1、M2及びM3がそれぞれ独立に制御されることにより、取込放出部12Cと、一時保留切替部20のブレード20Bよりも前側と取込放出部12Cとの間の部分と第3搬送部30と、一時保留切替部20のブレード20Bよりも後側の部分とを互いに独立に駆動させ、互いに独立して紙幣を搬送することができる。
【0039】
またモータM1、M2及びM3は、例えばステッピングモータやDC(Direct Current)ブラシレスモータ等のように、紙幣制御部11により回転角度を詳細に制御し得る。このため紙幣制御部11は、モータM1、M2及びM3の正確な回転数や回転角度等を把握しており、またこれに所定の係数を乗じる等の演算処理を施すことにより、各ローラの回転数や回転角度、すなわち紙幣の搬送距離も把握している。
【0040】
このように直線搬送部29は、前側搬送部21、一時保留切替部20及び後側搬送部22により、紙幣収納庫17が整列する整列方向である前後方向に沿った直線状の搬送経路を形成し、この搬送経路に沿って紙幣を主に前後方向へ搬送すると共に、複数の切替部によりその搬送経路を切り替える。
【0041】
[2-4.鑑別部の構成]
鑑別部14は、内部に複数種類のセンサが組み込まれており、搬送される紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)、及び搬送状態を認識し、その認識結果を紙幣制御部11へ送出する。ここで搬送状態とは、例えば紙幣が搬送方向に対し傾斜しているか否か(すなわちスキューが発生しているか否か)、搬送される紙幣同士の間隔が適正か否か、及び複数枚の紙幣が重なっているか否か(すなわち重送や連鎖が発生しているか否か)等の状態を表す。
【0042】
具体的に鑑別部14の内部には、前側の前受渡口と後側の後受渡口との間を前後方向に沿って直線状に結ぶような搬送経路が形成されており、この搬送経路に沿って前側から順に真偽センサ31、イメージセンサ32及び走行センサ33が配置されている。
【0043】
真偽センサ31は、例えば磁気センサでなり、搬送経路上を搬送される紙幣の磁気を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、真偽センサ31から供給された検知結果を基に、紙幣が真正なもの(いわゆる真券)又は偽造されたもの(いわゆる偽券)の何れであるかを判断する。
【0044】
イメージセンサ32は、搬送経路を挟んで対向する2個の撮像素子を有している。この撮像素子は、搬送経路を搬送される紙幣の両面をそれぞれ撮像して画像データを生成し、これらを紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、予め記憶している金種毎の画像データと供給された画像データとを比較することにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を認識し、さらに各紙幣に記されている個別の記番号を認識する。
【0045】
走行センサ33は、例えば厚みセンサ及び光学センサを有している。厚みセンサは、搬送される紙幣の厚みを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ供給する。紙幣制御部11は、厚みセンサから供給された検知結果を基に、搬送されている紙幣の厚みが1枚分に相当するか、又は2枚以上に相当するかを判断する。
【0046】
光学センサは、例えば光を発光する発光素子とこの光を受光する受光素子とが搬送経路を挟んで対向するように配置されており、該搬送経路を搬送される紙幣により光が遮光されたか否かを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。また走行センサ33には、複数の光学センサが左右方向、すなわち搬送方向である前後方向と交差する方向に沿って配置されている。紙幣制御部11は、各光学センサから供給された検知結果及びその時間的な変化等を基に、搬送されている紙幣の搬送方向に沿った長さ、搬送方向に沿った紙幣同士の間隔、及び搬送方向に対する紙幣の傾斜を認識する。
【0047】
すなわち走行センサ33は、厚みセンサ及び各光学センサの検知結果をそれぞれ紙幣制御部11へ供給することにより、紙幣同士の間隔、搬送方向に対する紙幣の傾き(いわゆるスキュー)の有無、及び紙幣同士の重なり(いわゆる重送や連鎖)の有無等といった紙幣の搬送状態を該紙幣制御部11に認識させる。
【0048】
またこの鑑別部14は、前側搬送部21の内部において、一時保留切替部20との距離が極めて短くなるよう設置されている。
【0049】
[2-5.下部ブロックの構成]
図2に示すように、下部ブロック10Lには、再使用すべきでない紙幣を収納するリジェクト庫16、再利用可能な紙幣を収納する4個の紙幣収納庫17(17A、17B、17C及び17D)及び再使用すべきでない紙幣のうちリジェクト庫16以外に収納すべき紙幣を収納する回収庫19が設けられている。
【0050】
リジェクト庫16は、下部ブロック10Lの内部における最も前側且つ上寄りに位置しており、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。因みにリジェクト庫16は、上下方向の長さが下部ブロック10Lの半分程度となっている。このリジェクト庫16は、鑑別部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判断された紙幣が直線搬送部29により搬送されて来ると、該紙幣を内部に収納する。
【0051】
下部ブロック10Lの内部におけるリジェクト庫16の後方には、回収庫19が設けられている。回収庫19は、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。この回収庫19は、再利用すべきで無いと判断された紙幣のうちリジェクト庫16以外に収納すべき紙幣が直線搬送部29により搬送されて来ると、該紙幣を内部に収納する。
【0052】
下部ブロック10Lの内部における回収庫19の後方には、前側から後側へ向けて順に紙幣収納庫17A、17B、17C及び17Dが前後方向である整列方向に沿って並ぶように設けられている。各紙幣収納庫17(17A、17B、17C及び17D)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。因みに紙幣収納庫17は、上下方向の長さが下部ブロック10Lとほぼ同等となっている。
【0053】
各紙幣収納庫17は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。この紙幣収納庫17は、鑑別部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が小さく再利用が可能であると判断された紙幣が、その金種に応じて直線搬送部29により搬送されてくると、該紙幣を内部に集積して収納する。また紙幣収納庫17は、紙幣制御部11から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、直線搬送部29に受け渡す。
【0054】
因みに紙幣収納庫17は、紙幣制御部11の制御により、収納されている紙幣の繰出のみを行う出金庫として動作することや、搬送されてくる紙幣の収納のみを行う入金庫として動作することもできる。
【0055】
また下部ブロック10Lは、その全ての周側面が頑強な金庫筐体10Sにより覆われている。この金庫筐体10Sは、例えば後側に開閉可能な扉及び閉塞状態を維持する錠(何れも図示せず)が設けられており、この錠が解錠され扉が開放された場合のみ、下部ブロック10L内の各部にアクセスすることが可能となっている。
【0056】
直線搬送部29は、この下部ブロック10Lの上方、すなわち金庫筐体10Sの外部に位置している。このため直線搬送部29の前側搬送部21、一時保留切替部20及び後側搬送部22は、金庫筐体10Sの上側において前方から後方へ向けて並べられており、前後方向に沿った一直線状の搬送経路を形成している。また金庫筐体10Sの上面には、直線搬送部29とリジェクト庫16、各紙幣収納庫17及び回収庫19との間にスリット状の細長い貫通孔が穿設されている。直線搬送部29は、この金庫筐体10Sの貫通孔を介して、リジェクト庫16、各紙幣収納庫17及び回収庫19との間で紙幣を上下方向に受け渡すことができる。
【0057】
さらに、この貫通孔と、リジェクト庫16、各紙幣収納庫17及び回収庫19との間における、直線搬送部29とこれらリジェクト庫16、各紙幣収納庫17及び回収庫19とで紙幣が受け渡される箇所であるカセット受渡部には、搬送される紙幣を検出する収納庫走行監視センサ34が配置されている。収納庫走行監視センサ34は、鑑別部14の走行センサ33に設けられた光学センサと同様に構成されており、紙幣の搬送状態を検知して、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、収納庫走行監視センサ34から供給された検知結果を基に、紙幣が各紙幣収納庫17へ収納されたか否かを判断する。
【0058】
[3.入金処理]
次に、顧客(利用者)が現金自動預払機1へ紙幣を入金する際の入金処理手順について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。紙幣入出金機10は、入金処理において、紙幣制御部11の制御に基づき、ダイレクト入金による紙幣の入金処理を行う。
【0059】
具体的に紙幣制御部11は、例えば顧客により操作表示部6(図1)を介して入金処理を開始する旨の操作入力を受け付けると、記憶部11Mから入金処理プログラムを読み出して実行することにより図4に示す入金処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。ステップSP1において紙幣制御部11は、入出金部12のシャッタ12Bを開いて収容器12A内へ紙幣を投入させる。次に紙幣制御部11は、操作表示部6を介して紙幣の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、シャッタ12Bを閉じ、モータM1を駆動して取込放出部12Cを取込モードで動作させると共に、搬送部13を駆動する。具体的に紙幣制御部11は、モータM2を駆動して入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1及び20R3とを回転させ、さらに、モータM3を駆動して後側搬送部22の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R2とを回転させる。これにより紙幣制御部11は、入出金搬送部12D、直線搬送部29及び第3搬送部30を、紙幣を入出金部12から紙幣収納庫17又は一時保留部15へ向かわせる方向である下流搬送方向へ駆動すると共に、収容器12A内の紙幣を取込放出部12Cにより1枚ずつに分離して取り込み、下流に位置する入出金搬送部12Dを介し直線搬送部29の前側搬送部21へ順次受け渡し、ステップSP2へ移る。またこのとき、紙幣制御部11は、一時保留切替部20を切り替えて前側搬送部21と後側搬送部22とを結ぶ搬送経路を形成する。
【0060】
因みに取込放出部12Cは、搬送方向に対し紙幣の短辺をほぼ平行とし、長辺をほぼ直交させた状態で、下流に位置する直線搬送部29の前側搬送部21に受け渡す。また取込放出部12Cは、所定の時間間隔毎に紙幣を取り込んで繰り出すことにより、前側搬送部21により搬送される紙幣同士の間に所定の搬送間隔を隔てる。
【0061】
前側搬送部21は、リジェクト切替部23を切り替えて入出金部12と後側の鑑別部14との間を結ぶ搬送経路を形成し、図5に示す矢印Q1のように、紙幣BLを下流の鑑別部14における前側の前受渡口へ順次受け渡す。
【0062】
ステップSP2において紙幣制御部11は、矢印Q1により示すように、紙幣BLを鑑別部14に受け渡し、ステップSP3へ移る。鑑別部14は、内部で紙幣BLを後方へ搬送しながら、真偽センサ31、イメージセンサ32及び走行センサ33により各紙幣BLを順次鑑別し、後側の後受渡口から該紙幣BLを再び前側搬送部21に受け渡すと共に、その鑑別結果を紙幣制御部11へ送出する。
【0063】
紙幣制御部11は、鑑別部14から取得した鑑別結果を基に、まず各紙幣BLにおける損傷の程度や金種、或いは真偽を判断する。次に紙幣制御部11は、各紙幣BLについて、正常な紙幣BLとして認識でき以降の処理を継続できる入金受入紙幣であるか、又は正常な紙幣BLとして認識できないため一度顧客に返却すべき異常紙幣としての入金リジェクト紙幣であるかを判断する。多くの場合、例えば折り畳まれた状態の紙幣BL、多くの皺が形成された紙幣BL、或いは誤って入出金部12に投入された紙幣BL以外の紙(メモ用紙やレシート等)が入金リジェクト紙幣として判断されると共に、紙幣BL自体は正常であるものの走行中に例えばスキューが発生した紙幣BLが入金リジェクト紙幣として判断される。
【0064】
また紙幣制御部11は、入金受入紙幣について、損傷の程度が大きいリジェクト紙幣についてはリジェクト庫16を、正常であり再利用可能な紙幣である正常紙幣については金種毎の各紙幣収納庫17を、また偽券については偽券庫18を、それぞれ最終的な搬送先として決定する。さらに紙幣制御部11は、紙幣BLの搬送順序と対応付けて、各紙幣BLの金種、記番号、搬送状態(すなわちスキュー及び紙幣BL同士の間隔)、並びに決定した搬送先等を、記憶部11Mに記憶しておく。
【0065】
ステップSP3において紙幣制御部11は、鑑別結果に基づき、紙幣BLが正常紙幣であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このとき紙幣制御部11は、ステップSP4へ移る。このとき前側搬送部21は、第1切替部24により後側の搬送短路と前側の搬送短路とを結ぶ搬送経路を形成し、上流に位置する鑑別部14の後受渡口から受け渡された正常紙幣BLcを後方へ搬送して、該鑑別部14の下流に位置する一時保留切替部20へ順次受け渡す。
【0066】
ステップSP4において紙幣制御部11は、一時保留切替部20を切り替えて前側搬送部21と後側搬送部22とを結ぶ搬送経路を形成することにより、正常紙幣BLcの搬送先を後側搬送部22へ切り替え、矢印Q1により示すように、前側搬送部21と後側搬送部22とを結ぶ搬送経路を形成して後側搬送部22内へ進行させる。続いて紙幣制御部11は、第2切替部25、第3切替部26、第4切替部27及び偽券切替部28を適宜切り替え、全ての正常紙幣BLcを金種別に紙幣収納庫17へ搬送して集積させ、ステップSP16へ移り、入金処理手順RT1を終了する。
【0067】
一方、ステップSP3において否定結果が得られると、このことは、入金リジェクト紙幣が発生したか、又はジャム紙幣が発生した可能性があることを表し、このとき紙幣制御部11は、ステップSP5へ移る。ステップSP5において紙幣制御部11は、鑑別結果に基づき、紙幣BLが入金リジェクト紙幣であるか、又は、紙幣BLを搬送する過程でジャム紙幣が発生したかを判定する。ここで入金リジェクト紙幣が発生したと判定すると、このとき紙幣制御部11は、ステップSP6へ移る。
【0068】
ステップSP6において紙幣制御部11は、モータM1を停止させることにより取込放出部12Cを停止させると共に、一時保留切替部20を切り替えて前側搬送部21と第3搬送部30とを結ぶ搬送経路を形成することにより、入金リジェクト紙幣BLrの搬送先を第3搬送部30へ切り替え、図6に示す矢印Q2のように、前側搬送部21と第3搬送部30とを結ぶ搬送経路を形成して第3搬送部30内へ進行させ一時保留部15手前まで搬送させ、ステップSP7へ移る。
【0069】
ステップSP7において紙幣制御部11は、モータM2を停止させることにより、第1搬送部35及び第3搬送部30の各ローラ(すなわち、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1及び20R3と)を停止させ、ステップSP8へ移る。このとき紙幣制御部11は、モータM3の駆動は停止させずに、後側搬送部22上の正常紙幣BLcを図7に示す矢印Q3のように、金種別に紙幣収納庫17へ搬送して集積させる。
【0070】
ステップSP8において紙幣制御部11は、後側搬送部22上の正常紙幣BLcを全て紙幣収納庫17へ搬送するまで待機し、ステップSP9へ移る。ステップSP9において紙幣制御部11は、モータM3を停止させることにより、後側搬送部22の各ローラを停止させ、ステップSP10へ移る。
【0071】
ステップSP10において紙幣制御部11は、モータM1を駆動して取込放出部12Cを放出モードで動作させると共に、モータM2を駆動して第1搬送部35及び第3搬送部30の各ローラ(すなわち、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1及び20R3と)を回転させる。これにより紙幣制御部11は、入出金搬送部12D、前側搬送部21及び第3搬送部30を、下流搬送方向とは逆方向の上流搬送方向へ駆動すると共に、取込放出部12Cにより収容器12A内へ紙幣BLを放出することにより、第3搬送部30上の入金リジェクト紙幣BLrと、前側搬送部21及び入出金搬送部12D上における、入金リジェクト紙幣BLrの後続の紙幣BLとを、図8に示す矢印Q4のように、入金処理の場合とは反対方向に逆送させて収容器12A内へ戻し、ステップSP16へ移り、入金処理手順RT1を終了する。
【0072】
一方、ステップSP5においてジャム紙幣が発生したと判定すると、このとき紙幣制御部11は、ステップSP11へ移る。ここで、ジャム紙幣は、搬送路上において詰まった紙幣である。本実施の形態においては、後側搬送部22以外の、取込放出部12C、入出金搬送部12D、前側搬送部21、一時保留切替部20又は第3搬送部30において、図9に示す異常紙幣としてのジャム紙幣BLjが発生したとする。図9においては、前側搬送部21でジャム紙幣BLjが発生した場合について示している。
【0073】
ステップSP11において紙幣制御部11は、モータM1を停止させることにより取込放出部12Cを停止させると共に、モータM2及びM3の駆動は停止させずに、ジャム紙幣BLjよりも先行する正常紙幣BLcの末端部分が一時保留切替部20のブレード20Bを通過し後側搬送部22に入るまで待機し、ステップSP12へ移る。このように紙幣制御部11は、ジャム紙幣BLj自体が搬送路にさらに詰まってしまう可能性はありながらも、前側搬送部21上の正常紙幣BLcを全て後側搬送部22へ搬送させる。
【0074】
ステップSP12において紙幣制御部11は、モータM2を停止させることにより、第1搬送部35及び第3搬送部30の各ローラ(すなわち、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1及び20R3と)を停止させることにより、ジャム紙幣BLjがそれ以上搬送されないようにし、ステップSP13へ移る。このとき紙幣制御部11は、モータM3の駆動は停止させずに、後側搬送部22上の正常紙幣BLcを図10に示す矢印Q6のように、金種別に紙幣収納庫17へ搬送して集積させる。
【0075】
ステップSP13において紙幣制御部11は、後側搬送部22上の正常紙幣BLcを全て紙幣収納庫17へ搬送するまで待機し、ステップSP14へ移る。ステップSP14において紙幣制御部11は、モータM3を停止させることにより、後側搬送部22の各ローラを停止させ、ステップSP15へ移る。
【0076】
ステップSP15において紙幣制御部11は、図11に示すジャム除去誘導画面DIPを誘導部としての操作表示部6(図1)に表示させることにより、ジャム紙幣BLjを紙幣入出金機10内部から除去することを係員に提示し、ステップSP16へ移り、入金処理手順RT1を終了する。
【0077】
このジャム除去誘導画面DIPにおいては、ジャムが発生する可能性がある箇所であるジャム紙幣除去箇所RBLjが、図11においては太線で示すように、搬送部13におけるジャム紙幣除去箇所RBLj以外の各所とは色等が異なる態様となり強調表示されている。紙幣入出金機10は、ジャム紙幣BLjを後側搬送部22へ到達させないようにし該ジャム紙幣BLjよりも先行する正常紙幣BLcの全てを紙幣収納庫17へ搬送して集積させた後に、このジャム除去誘導画面DIPを表示する。このためジャム除去誘導画面DIPが表示された時点においては、後側搬送部22(より具体的には一時保留切替部20からカセット受渡部までの範囲)には、ジャム紙幣BLjは存在していないこととなる。これによりジャム除去誘導画面DIPにおいては、第1搬送部35及び第3搬送部30が強調表示されており、一時保留切替部20からカセット受渡部までの間の範囲が、ジャム紙幣除去箇所RBLjから除外されて表示されている。
【0078】
[4.効果等]
従来、ダイレクト入金を行わない現金自動預払機の場合、入金取引において、まず、入金された紙幣の金種等を鑑別しながら枚数を計数し、入金が確定する前の紙幣を一時保留部に保留する入金計数処理を行い、次に、入金が確定すると該一時保留部から紙幣収納庫へ紙幣を搬送して収納する入金収納処理を行う。このため、入金リジェクト紙幣やジャム紙幣等の異常紙幣が発生した場合、現金自動預払機は、入金が確定する前の正常紙幣を一時保留部へ貯留する一方、異常紙幣が入金リジェクト紙幣である場合は該入金リジェクト紙幣を入出金部へ戻し返却する。
【0079】
これに対しダイレクト入金を行う現金自動預払機の場合、入金取引において入金が確定する前の紙幣を紙幣収納庫へ搬送して収納する。このため、入金リジェクト紙幣やジャム紙幣等の異常紙幣が発生した場合、鑑別部と紙幣収納庫との間の搬送部に、異常紙幣よりも先行する正常紙幣が存在する。このような状況において、搬送部上の全ての紙幣を入出金部へ戻した場合、正常紙幣と異常紙幣とが混在してしまい、正常と鑑別されたにも関わらず、正常紙幣が異常紙幣に混ざって入出金部へ返却されてしまう。
【0080】
また、異常紙幣が発生して搬送部が停止した際に、搬送部上に一部分は存在するものの紙幣収納庫へ入りかけの状態の紙幣は、収納庫走行監視センサにより検出され、紙幣収納庫へ既に収納されたものとして計数されている場合がある。このため、そのような状況で搬送部上の全ての紙幣を入出金部へ戻した場合、紙幣収納庫へ収納済みと認識されている紙幣が入出金部へ戻されてしまい、誤計数が発生してしまう可能性があった。
【0081】
これに対し紙幣入出金機10は、ダイレクト入金を実行中に、前側搬送部21において異常紙幣が発生した場合、取込放出部12C、入出金搬送部12D、前側搬送部21及び第3搬送部30を停止させる一方、第2搬送部は停止させないようにし、異常紙幣よりも先行する後側搬送部22上に存在する全ての正常紙幣BLcを紙幣収納庫17へ収納しきるまで待機するようにした。このため紙幣入出金機10は、正常紙幣BLcが後側搬送部22に滞留しないようにし、正常紙幣BLcと異常紙幣とが混在すること防止できる。これにより紙幣入出金機10は、正常紙幣BLcを返却してしまうことを防止できると共に、誤計数を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0082】
ところで、紙幣入出金機10においては、入金処理をできるだけ短時間で完了するべく、直線搬送部29において紙幣BLをできるだけ高速で搬送すると共に、鑑別部14を、前側搬送部21の内部において、一時保留切替部20との距離が極めて短くなるよう設置している。このため紙幣入出金機10は、紙幣BLが入金リジェクト紙幣BLrであると判定してから、一時保留切替部20が前側搬送部21と後側搬送部22とを結ぶ搬送経路を形成した状態のまま、前側搬送部21を停止させると、入金リジェクト紙幣BLrは前側搬送部21に留まらずに後側搬送部22まで入り込んでしまう。その状態のまま後側搬送部22を駆動し続けると、入金リジェクト紙幣BLrが紙幣収納庫17に収納されてしまう可能性がある。
【0083】
これに対し紙幣入出金機10は、異常紙幣が入金リジェクト紙幣BLrであった場合、一時保留切替部20が前側搬送部21と第3搬送部30とを結ぶ搬送経路を形成する状態に切り替えるようにした。このため紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣BLrを前側搬送部21から第3搬送部30へ退避させることができる。これにより紙幣入出金機10は、入金処理を高速化しつつ、入金リジェクト紙幣BLrが前側搬送部21から後側搬送部22へ到達しないようにし、入金リジェクト紙幣BLrが紙幣収納庫17に収納されてしまわないようにできる。
【0084】
さらに紙幣入出金機10は、後側搬送部22上に存在する全ての正常紙幣BLcを紙幣収納庫17へ収納しきるまで待機した後に、入出金搬送部12D、前側搬送部21及び第3搬送部30を上流搬送方向へ駆動し、入金リジェクト紙幣BLrを入出金部12へ搬送するようにした。このため紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣BLrを顧客に返却できる。
【0085】
さらに紙幣入出金機10は、異常紙幣がジャム紙幣BLjであった場合、該ジャム紙幣BLjよりも先行する正常紙幣BLcの末端部分が一時保留切替部20のブレード20Bを通過し後側搬送部22に入るまで待機してから、入出金搬送部12D、前側搬送部21及び第3搬送部30を停止させるようにした。このため紙幣入出金機10は、その後も後側搬送部22を駆動し続けることにより、既に鑑別済みの全ての正常紙幣BLcを紙幣収納庫17へ収納することができる。
【0086】
さらに紙幣入出金機10は、ジャム除去誘導画面DIP(図11)を操作表示部6(図1)に表示するようにした。このため紙幣入出金機10は、係員に対しジャム紙幣除去箇所RBLjの何れかからジャム紙幣BLjを除去することを係員に誘導させることができる。
【0087】
一方、これらに加えて、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、前後方向に沿って直線状に形成された直線搬送部29に対し、入出金部12、鑑別部14、一時保留部15、リジェクト庫16、紙幣収納庫17及び偽券庫18をそれぞれ接続するように構成した。
【0088】
他の観点から見れば、紙幣入出金機10は、直線搬送部29により鑑別部14を貫通するような一直線状の搬送経路を形成し、該鑑別部14の一方(例えば前側)の搬送経路上に入出金部12及びリジェクト庫16を配置して、他方(例えば後側)の搬送経路上に一時保留部15及び紙幣収納庫17をそれぞれ配置する構成とした。これを換言すれば、紙幣入出金機10は、鑑別部14を貫通する搬送経路の両端に、1又は2以上の切替部を直列に接続した搬送経路をそれぞれ接続した。
【0089】
さらに異なる観点から見れば、紙幣入出金機10は、一時保留切替部20により、入出金部12へ向かう搬送経路と、紙幣収納庫17へ向かう搬送経路と、一時保留部15へ向かう搬送経路とのうち2つを互いに接続するよう切り替えるようにした。これに加えて紙幣入出金機10は、入出金部12へ向かう搬送経路上に鑑別部14を配置し、該鑑別部14から見て入出金部12側の搬送経路上に、リジェクト切替部23を介してリジェクト庫16を接続した。
【0090】
これにより紙幣入出金機10では、直線搬送部29における搬送経路をループ状では無く直線状としたことで、従来の紙幣入出金機よりも構成を簡略化でき、小型化や部品点数の削減、さらにはこれに伴う障害発生頻度の低減や保守作業の省力化等を図ることができる。
【0091】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、媒体としての紙幣BLが投入される入出金部12と、第1駆動源としてのモータM1により駆動され入出金部12から紙幣BLを繰り出す取込放出部12Cと、入出金部12と接続され、モータM1に対し独立して駆動する第2駆動源としてのモータM2により駆動され、紙幣BLを搬送する第1搬送部35と、第1搬送部35に設けられ、搬送される紙幣BLを鑑別する鑑別部14と、第1搬送部35と接続され、モータM1及びM2に対し独立して駆動する第3駆動源としてのモータM3により駆動され、紙幣BLを搬送する後側搬送部22と、後側搬送部22と接続され、正常紙幣BLcを収納する紙幣収納庫17と、第1搬送部35において異常媒体としての異常紙幣である入金リジェクト紙幣BLr又はジャム紙幣BLjが存在すると判定すると、モータM1の駆動を停止させて取込放出部12Cを停止させると共に、モータM2の駆動を停止させて第1搬送部35を停止させ、後側搬送部22に存在する正常紙幣BLcを紙幣収納庫17に搬送させ収納させる紙幣制御部11とを設けるようにした。
【0092】
これにより紙幣入出金機10は、正常紙幣BLcを後側搬送部22に滞留させないようにし、搬送部13において正常紙幣BLcと異常紙幣とが混在することを防止できる。
【0093】
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、モータM2により、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20のローラ20R1及び20R3とを駆動する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、モータM2により、入出金搬送部12Dの各ローラと、前側搬送部21の各ローラと、一時保留切替部20におけるローラ20R1とを駆動し、モータM2とは異なるモータにより、一時保留切替部20におけるローラ20R3を駆動しても良い。要は、少なくとも、取込放出部12Cを駆動する駆動源と、前側搬送部21を駆動する駆動源と、後側搬送部22を駆動する駆動源とが、互いに独立して駆動すれば良い。
【0094】
また上述した実施の形態においては、入金リジェクト紙幣BLrを前側搬送部21から第3搬送部30へ退避させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金機10の前後長さが長くなる可能性はあるものの、モータM2が停止され前側搬送部21が停止した際に、前側搬送部21上の入金リジェクト紙幣BLrが後側搬送部22まで到達しない程度に、前側搬送部21における鑑別部14よりも後方の部分の前後長を伸ばして鑑別部14と後側搬送部22との間隔を広げることができる場合、入金リジェクト紙幣BLrを前側搬送部21に保持し、前側搬送部21から第3搬送部30へ退避させなくても良い。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、モータM1、M2及びM3の取付位置を、それぞれの駆動力の伝達対象となる各ローラ等の近傍、すなわち取込放出部12C、前側搬送部21及び後側搬送部22の内部とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばモータM2を前側搬送部21内や直線搬送部29の外部等のように任意の箇所に配置し、該モータM2から図示しないギヤ等を介して駆動力を後側搬送部22内の各ローラ等に伝達しても良い。さらには、例えばモータM2及びM3を省略すると共に図示しないクラッチ機構や歯数の異なるギヤ等を適宜組み合わせて利用することで、モータM1からの駆動力を前側搬送部21内の各ローラ及び後側搬送部22内の各ローラにそれぞれ伝達し、前側搬送部21内と後側搬送部22内とで紙幣BLの搬送を互いに独立に制御しても良い。
【0096】
さらに上述した実施の形態においては、ジャム除去誘導画面DIP(図11)を操作表示部6(図1)に表示することにより、係員に対しジャム紙幣除去箇所RBLjの何れかからジャム紙幣BLjを除去することを係員に誘導させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、ジャム紙幣BLjが存在する箇所を、例えば音声で誘導したり筐体2内に設けたLED等により誘導したりする等、他の種々の誘導部により誘導しても良い。
【0097】
さらに上述した実施の形態においては、走行センサ33を厚みセンサ及び光学センサにより構成し、それぞれの検知結果を基に紙幣制御部11において重送の有無、各紙幣BLのスキュー及び紙幣BL同士の間隔を認識する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々のセンサにより走行センサを構成しても良い。要は、入金処理において各紙幣BLが入金リジェクト紙幣であるか否かを検知できれば良い。
【0098】
さらに上述した実施の形態においては、直線搬送部29から一時保留部15へ入金リジェクト紙幣BLrを搬送するよう搬送経路を切り替える一時保留切替部20を第1切替部24と第2切替部25との間に配置し、該一時保留切替部20により直線搬送部29を前側の前側搬送部21及び後側の後側搬送部22に分けた場合について述べた。本発明はこれに限らず、直線搬送部29の内部における他の箇所に一時保留切替部20を配置しても良い。
【0099】
さらに上述した実施の形態においては、直線搬送部29を大きく前側搬送部21、一時保留切替部20及び後側搬送部22に分けた構成とした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば該直線搬送部29を種々の分け方で複数に分けても良く、或いはこれらを分けること無く1個の直線搬送部29としても良い。ただし、少なくとも、入出金部12に対し紙幣BLを取り込むか又は放出する取込放出部12Cの各ローラと、一時保留切替部20の前側において紙幣BLを搬送するための各ローラと、該一時保留切替部20の後側において紙幣BLを搬送するための各ローラとを、互いに独立して駆動できることが望ましい。これにより搬送部13は、異常紙幣発生時において、異常紙幣を前側搬送部21又は第3搬送部30に保持した状態で、正常紙幣BLcを後側搬送部22から紙幣収納庫17へ搬送できる。
【0100】
さらに上述した実施の形態においては、鑑別部14に真偽センサ31、イメージセンサ32及び走行センサ33といった3種類のセンサを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、鑑別部14に2種類以下又は4種類以上のセンサを設けても良い。また、鑑別部14に限らず前側搬送部21上に各種センサを設けて、紙幣制御部11において入金リジェクト紙幣やジャム紙幣を判別しても良い。要は、得られる検知結果を基に紙幣制御部11において、少なくとも入金処理において各紙幣が正常な紙幣又は入金リジェクト紙幣の何れであるかを判断することができ、搬送先を定めることができれば良い。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、紙幣入出金機10に4個の紙幣収納庫17(17A~17D)を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、3個以下又は5個以上の紙幣収納庫17を設けるようにしても良い。例えば3個の紙幣収納庫17を設ける場合、現金自動預払機1の前後長を大幅に短縮できるため、コンビニエンスストアのように設置面積が制限されている場所に設置する場合に好適である。
【0102】
さらに上述した実施の形態においては、鑑別部14の各センサにおける検知結果を紙幣制御部11へ送出することにより、該紙幣制御部11により紙幣BLの金種、真偽及び損傷の程度等を認識した上でその搬送先を決定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば鑑別部14に専用の鑑別制御部を設け、鑑別部14の各センサにおける検知結果を該鑑別制御部へ送出して、該鑑別制御部において紙幣BLの金種、真偽及び損傷の程度等を認識させるようにしても良い。この場合、鑑別制御部において認識した金種、真偽及び損傷の程度等を表す情報を紙幣制御部11へ送出することにより、該紙幣制御部11において紙幣BLの搬送先を決定すれば良い。これにより、紙幣制御部11の処理負荷を軽減することができる。
【0103】
さらに上述した実施の形態においては、紙幣入出金機10の紙幣制御部11により入金処理等の各種処理を実行する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば現金自動預払機1の主制御部9(図1)により、或いは該主制御部9と紙幣制御部11とを協働させることにより、各処理を実行するようにしても良い。
【0104】
さらに上述した実施の形態においては、顧客との間で紙幣に関する取引処理を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、店舗のバックヤードで利用される入金専用機や、銀行員がバックヤードや窓口の足元で利用する現金処理装置等の現金を取り扱う種々の装置や、各種金券や証券等、或いは入場券や乗車券のような種々の紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。
【0105】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また、本発明は、上述した各実施の形態及び上述した他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用する場合や、該抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加する場合にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0106】
さらに上述した実施の形態においては、入金部としての入出金部12と、繰出部としての取込放出部12Cと、第1搬送部としての第1搬送部35と、鑑別部としての鑑別部14と、第2搬送部としての後側搬送部22と、収納庫としての紙幣収納庫17と、制御部としての紙幣制御部11とによって、媒体処理装置としての紙幣入出金機10及び媒体取引装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入金部と、繰出部と、第1搬送部と、鑑別部と、第2搬送部と、収納庫と、制御部とによって、媒体処理装置及び媒体取引装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、顧客との間で紙幣の入出金に関する取引処理を行う現金自動預払機等でも利用できる。
【符号の説明】
【0108】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……顧客応対部、4……カード入出口、5……入出金口、6……操作表示部、7……テンキー、8……レシート発行口、9……主制御部、10……紙幣入出金機、10U……上部ブロック、10L……下部ブロック、10S……金庫筐体、11……紙幣制御部、11M……記憶部、12……入出金部、12A……収容器、12B……シャッタ、12C……取込放出部、12Cp……ピックアップローラ、12Cf……給紙ローラ、12Cr……分離ローラ、12D……入出金搬送部、13……搬送部、14……鑑別部、15……一時保留部、16……リジェクト庫、17……紙幣収納庫、18……偽券庫、19……回収庫、20……一時保留切替部、20R1、20R2、20R3……ローラ、21……前側搬送部、22……後側搬送部、23……リジェクト切替部、24……第1切替部、25……第2切替部、26……第3切替部、27……第4切替部、28……偽券切替部、29……直線搬送部、30……第3搬送部、31……真偽センサ、32……イメージセンサ、33……走行センサ、34……収納庫走行監視センサ、35……第1搬送部、M1、M2、M3……モータ、BL……紙幣、BLc……正常紙幣、BLr……入金リジェクト紙幣、BLj……ジャム紙幣、DIP……ジャム除去誘導画面、RBLj……ジャム紙幣除去箇所。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11