(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191107
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】媒体取扱装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/60 20060101AFI20221220BHJP
B65H 29/62 20060101ALI20221220BHJP
G07D 11/18 20190101ALI20221220BHJP
G07D 11/25 20190101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H29/60 B
B65H29/62 Z
G07D11/18
G07D11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099780
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 一平
(72)【発明者】
【氏名】富沢 勝好
(72)【発明者】
【氏名】三木 和浩
【テーマコード(参考)】
3E141
3F053
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA16
3E141FB03
3E141FG11
3F053EA06
3F053EC02
3F053ED16
3F053LA08
3F053LB04
(57)【要約】
【課題】複数の紙幣収納庫の間で媒体の移動処理を行い得るようにする。
【解決手段】現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、移動処理において、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を入出金部12へ搬送し、次に搬送部13により当該紙幣を一時保留部15へ搬送しながら認識部14により認識し、正常な紙幣を移動先紙幣収納庫へ搬送して収納させる。このため紙幣入出金機10は、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を移動先紙幣収納庫へ移動でき、且つその際に認識部14により認識処理を行うことにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を改めて認識でき、収納されている合計枚数も改めて集計することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉状の媒体を入出する入出部と、
前記入出部と接続され前記媒体を搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部に設けられ、搬送される前記媒体を認識する認識部と、
接続部を介して前記第1搬送部と接続され、前記媒体を搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部と接続され、再利用可能な前記媒体を収納する複数の媒体収納庫と、
前記認識部における認識結果を利用して、前記第1搬送部、前記接続部及び前記第2搬送部による前記媒体の搬送経路を制御する制御部と
を具え、
前記制御部は、移動元となる前記媒体収納庫に収納されている前記媒体を移動先となる前記媒体収納庫に移動させる移動処理において、前記媒体収納庫から前記媒体を繰り出させて前記入出部へ搬送して収納させ、前記媒体を前記入出部から繰り出させ前記第1搬送部により搬送させると共に、前記認識部により当該媒体それぞれの前記認識結果を取得し、当該媒体を当該認識結果に応じて何れかの前記媒体収納庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項2】
前記媒体を一時的に収納し、且つ当該媒体を収納時の正順又は逆順により繰り出す一時保留部
をさらに具え、
前記接続部は、前記第1搬送部及び前記第2搬送部及び前記一時保留部の間で前記媒体の前記搬送経路を切り替える一時保留切替部であり、
前記制御部は、前記移動処理において、前記入出部から繰り出された前記媒体を前記第1搬送部により搬送させて前記一時保留部に収納させると共に、前記認識部により当該媒体それぞれの前記認識結果を取得して記憶し、当該記憶している前記媒体ごとの前記認識結果に応じて、前記一時保留部から繰り出させた前記媒体を何れかの前記媒体収納庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取扱装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動処理において、前記入出部から繰り出された前記媒体を前記第1搬送部により搬送させ、前記認識部により当該媒体それぞれの前記認識結果を取得し、当該認識結果に応じて当該媒体を何れかの前記媒体収納庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取扱装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記媒体を外部から取り入れる取入処理において、前記入出部に前記媒体を投入させ、当該媒体を当該入出部から前記第1搬送部へ繰り出させ、当該媒体を当該第1搬送部により搬送させると共に前記認識部により当該媒体それぞれの前記認識結果を取得し、当該媒体を当該認識結果に応じて何れかの前記媒体収納庫へ搬送させるよう制御し、
前記媒体を外部へ排出する排出処理において、前記媒体を前記媒体収納庫から前記第2搬送部へ繰り出させ、当該媒体を当該第2搬送部及び前記第1搬送部により前記入出部へ搬送させ、当該入出部から当該媒体を排出し、
前記移動処理において、前記排出処理の一部と同等の処理により前記媒体を前記移動元となる前記媒体収納庫から前記入出部へ搬送した後、前記取入処理の一部と同等の処理により当該媒体を前記移動先となる前記媒体収納庫へ搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取扱装置。
【請求項5】
前記第1搬送部と接続され、再利用可能な前記媒体を収納する第1媒体収納庫
をさらに具え、
前記制御部は、前記移動処理において前記媒体を前記認識結果に応じて何れかの前記媒体収納庫又は前記第1媒体収納庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取扱装置。
【請求項6】
前記第1搬送部と接続され、前記認識部において再利用不可能と認識された前記媒体であるリジェクト媒体を収納するリジェクト庫
をさらに具え、
前記制御部は、前記移動処理において、前記認識結果に応じて、再利用可能な前記媒体を何れかの前記媒体収納庫へ搬送させ、前記リジェクト媒体を前記リジェクト庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体取扱装置に関し、例えば顧客に紙幣等の媒体を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するものが広く普及している。この現金自動預払機としては、例えば全体を制御する制御部と、顧客との間で紙幣(媒体)の授受を行う紙幣入出金部と、投入された紙幣を搬送する搬送部と、紙幣の金種や真偽等を認識する認識部と、紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種ごとに紙幣を格納する複数の紙幣収納庫(媒体収納庫)とを有するものが提案されている。
【0003】
また現金自動預払機として、搬送経路が概ね一直線状となるように構成された搬送部に各部を接続するように配置することで、搬送経路を極力短縮し、処理時間の短縮や障害発生頻度の低減を図ったものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-200163号公報(
図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した現金自動預払機では、金融機関等の要望により、一の紙幣収納庫から他の紙幣収納庫へ紙幣を移動させる移動処理を行いたい場合がある。この移動処理では、移動元となる紙幣収納庫から紙幣を繰り出して搬送し、認識部において紙幣の金種や正損等を認識した上で、搬送先となる紙幣収納庫に紙幣を搬送して収納させる、といった動作が要求される。
【0006】
しかし、特許文献1のような構成の現金自動預払機では、搬送部の構造上、一の紙幣収納庫から繰り出した紙幣を認識部により認識した後、他の紙幣収納庫へ紙幣を搬送する、といった経路を形成することができず、連続した動作による移動処理を行い得ない、という問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、複数の紙幣収納庫の間で媒体の移動処理を行い得る媒体取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の媒体取扱装置においては、紙葉状の媒体を入出する入出部と、入出部と接続され媒体を搬送する第1搬送部と、第1搬送部に設けられ、搬送される媒体を認識する認識部と、接続部を介して第1搬送部と接続され、媒体を搬送する第2搬送部と、第2搬送部と接続され、再利用可能な媒体を収納する複数の媒体収納庫と、認識部における認識結果を利用して、第1搬送部、接続部及び第2搬送部による媒体の搬送経路を制御する制御部とを設け、制御部は、移動元となる媒体収納庫に収納されている媒体を移動先となる媒体収納庫に移動させる移動処理において、媒体収納庫から媒体を繰り出させて入出部へ搬送して収納させ、媒体を入出部から繰り出させ第1搬送部により搬送させると共に、認識部により当該媒体それぞれの認識結果を取得し、当該媒体を当該認識結果に応じて何れかの媒体収納庫へ搬送させるよう制御するようにした。
【0009】
本発明は、移動処理を行う場合、移動元の媒体収納庫から媒体を入出部へ搬送して収納させ、その後に該入出部から当該媒体を繰り出し、認識部において認識させた上で、移動先の媒体収納庫へ移動させる。これにより本発明は、移動元の媒体収納庫に収納されていた媒体を移動先の媒体収納庫に移動させ得ると共に、当該媒体についての認識結果も得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の紙幣収納庫の間で媒体の移動処理を行い得る媒体取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】現金自動預払機の構成を示す略線的斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態による紙幣入出金機の構成を示す略線図である。
【
図4】第1の実施の形態による入金計数処理における紙幣の搬送経路を示す略線図である。
【
図5】第1の実施の形態による入金収納処理における紙幣の搬送経路を示す略線図である。
【
図6】第1の実施の形態による出金処理における紙幣の搬送経路を示す略線図である。
【
図7】第2の実施の形態による紙幣入出金機の構成を示す略線図である。
【
図8】第2の実施の形態による入金処理における紙幣の搬送経路を示す略線図である。
【
図9】第2の実施の形態による出金処理における紙幣の搬送経路を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機及び紙幣入出金機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、使用者(すなわち金融機関等の顧客)との間で入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行うようになっている。
【0014】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、使用者(顧客)との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0015】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙により、紙葉状に形成されている。
【0016】
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0017】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0018】
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0019】
紙幣入出金機10は、
図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。紙幣入出金機10は、大きく分けて、上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ユニット10Uと、その下側部分を占める下部ユニット10Lとにより構成されている。説明の都合上、以下では現金自動預払機1又は紙幣入出金機10を媒体取扱装置とも呼ぶ。
【0020】
上部ユニット10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部11、使用者との間で紙幣を授受する入出金部12、紙幣を各部へ搬送する搬送部13及び上搬送部18、紙幣を認識する認識部14、紙幣を一時的に収納する一時保留部15、及び紙幣を収納する上収納庫19が設けられている。
【0021】
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、該記憶部に種々の情報を記憶させると共に、該記憶部から種々の情報を読み出す。
【0022】
入出金部12は、上部ユニット10U内における前上部に位置している。この入出金部12は、使用者から受け取った紙幣及び使用者へ引き渡す紙幣を収容する収容器12Aを内部に有しており、その上方をシャッタ12Bにより開閉し得るようになっている。収容器12A内には、複数の紙幣が紙面を前後方向に向けて集積された状態で収容される。この入出金部12は、収容器12A内の紙幣を1枚ずつに分離して搬送部13に引き渡し、また搬送部13から受け取った紙幣を収容器12A内へ放出して集積させる。
【0023】
搬送部13は、上部ユニット10U内における下端部分に位置しており、全体的に上下方向に薄く前後方向に細長い形状となっている。この搬送部13内には、紙幣を案内する搬送ガイドや多数の回転するローラ等(図示せず)が適宜配置されており、紙幣の短辺を進行方向に沿わせて、主に前後方向へ搬送させるような直線状の搬送路が形成されている。
【0024】
搬送部13は、
図3に拡大図を示すように、大きく分けて、中央付近に配置された一時保留切替部20と、当該一時保留切替部20の前側及び後側にそれぞれ配置された前搬送部21及び後搬送部22により構成されている。すなわち一時保留切替部20は、前搬送部21及び後搬送部22を接続している。そこで以下では、一時保留切替部20を接続部とも呼ぶ。この一時保留切替部20は、紙幣制御部11の制御に基づき、前搬送部21、後搬送部22及び一時保留部15の間で紙幣を搬送するよう、紙幣の搬送経路を切り替える。
【0025】
第1搬送部としての前搬送部21内には、前側から順に、リジェクト切替部24、認識部14及び切替部25が直列に配置されており、前後方向に沿った概ね直線状の前搬送路21Yが形成されている。後搬送部22内には、後側から順に、切替部26、27、28及び29がほぼ直列に配置されており、前後方向に沿った概ね直線状の後搬送路22Yが形成されている。各切替部は、紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣の搬送経路を適宜切り替える。また前搬送部21及び後搬送部22は、それぞれ搬送路中に数枚程度の紙幣を貯留し得るようになっている。
【0026】
認識部14は、前搬送部21内に組み込まれており、紙幣の搬送経路上で入出金部12と一時保留切替部20との間に位置している。この認識部14は、内部に厚みセンサ、イメージセンサ及び磁気センサといった複数種類のセンサが組み込まれており、搬送される紙幣から種々の情報を取得し、これらを基に当該紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)等を認識し、その認識結果を紙幣制御部11へ通知する。
【0027】
一時保留部15(
図2)は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、円筒状のドラムの周側面に紙幣をテープと共に巻き付けることにより当該紙幣を収納し、またこの周側面から当該テープと共に紙幣を引き剥がすことにより該紙幣を繰り出す。このとき一時保留部15は、収納時と逆の順序で紙幣を順次繰り出す。
【0028】
上搬送部18は、搬送部13の上側における後端近傍に配置されており、下端から上部前側へ向けて紙幣を搬送するようになっている。第1媒体収納庫としての上収納庫19は、搬送部13の上側における後寄りの箇所であって、上搬送部18の前側に隣接する位置に設けられている。この上収納庫19は、上搬送部18により搬送された紙幣を受け取ると共に内部に収納するようになっている。
【0029】
因みに上収納庫19は、例えば認識部14において偽券(偽造された紙幣)と判断された紙幣を他の紙幣と区別して収納する偽券収納庫や、リジェクト紙幣(後述する)を収納するリジェクト庫、或いは利用者が入出金部12から取り出し忘れた紙幣を収納する取忘収納庫等として使用される。
【0030】
下部ユニット10Lは、その全ての周側面が頑強な金庫筐体10Sにより覆われている。この金庫筐体10Sの内部には、後側から前側へ向けて、5個の紙幣収納庫16並びにリジェクト庫17が設けられている。
【0031】
因みに下部ユニット10Lには、紙幣収納庫16及びリジェクト庫17を上方向から装填するためのスロットが複数形成された装填部(図示せず)が設けられており、この装填部が所定のスライドレール(図示せず)を介して金庫筐体10Sに取り付けられている。このため下部ユニット10Lでは、装填部を前後方向へスライドさせて金庫筐体10Sの外部に引き出した状態で、この装填部に対し紙幣収納庫16及びリジェクト庫17を着脱させることができる。
【0032】
媒体収納庫としての紙幣収納庫16は、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。また紙幣収納庫16は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。この紙幣収納庫16は、搬送部13から紙幣を受け取ると、これを内部に集積して収納する。また紙幣収納庫16は、紙幣制御部11から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、搬送部13に引き渡す。
【0033】
リジェクト庫17は、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。このリジェクト庫17は、認識部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判断された紙幣(以下これをリジェクト紙幣又はリジェクト媒体と呼ぶ)が搬送部13により搬送されてくると、当該紙幣を内部に収納する。
【0034】
[1-2.紙幣入出金機における各処理]
ところで現金自動預払機1では、使用者との間で入金取引を行う場合、紙幣入出金機10において、入金処理(以下では取入処理とも呼ぶ)を行うようになっている。また現金自動預払機1では、使用者との間で出金取引を行う場合、紙幣入出金機10において出金処理(以下では排出処理とも呼ぶ)を行うようになっている。
【0035】
さらに紙幣入出金機10では、金融機関の職員や保守作業員等(以下、使用者と呼ぶ)からの操作指示に基づき、ある紙幣収納庫16から他の紙幣収納庫16へ紙幣を移動させる移動処理を行うようになっている。以下では、紙幣入出金機10における入金処理、出金処理、及び移動処理について、それぞれ説明する。
【0036】
[1-2-1.入金処理]
紙幣入出金機10(
図2)は、入金処理において、紙幣制御部11の制御に基づき、まず入金された紙幣の金種等を認識しながら枚数を計数する入金計数処理を行い、次に紙幣を適切な収納箇所へ搬送して収納する入金収納処理を行うようになっている。
【0037】
具体的に紙幣制御部11は、例えば使用者により操作表示部6(
図1)を介して入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金計数処理を開始し、
図4に矢印W1として示すような搬送経路に沿って紙幣を搬送していく。
【0038】
入出金部12は、まずシャッタ12Bを開放し、使用者により収容器12Aに紙幣が投入されると、該シャッタ12Bを閉塞して当該紙幣を1枚ずつに分離して取り込み、搬送部13へ順次引き渡す。搬送部13は、入出金部12から受け取った紙幣を前搬送部21により後方へ順次搬送しながら、認識部14により各紙幣を順次認識させ、一時保留切替部20へ順次引き渡す。このとき認識部14は、得られた認識結果を紙幣制御部11へ送出する。
【0039】
紙幣制御部11は、取得した認識結果を基に、各紙幣について、受入が可能であり以降の処理を継続できると判断した場合には入金受入紙幣とし、受入が不可能であり一度使用者に返却すべきと判断した場合には入金リジェクト紙幣とする。さらに紙幣制御部11は、入金受入紙幣について、損傷の程度が比較的小さく再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣収納庫16を、損傷の程度が比較的大きく再利用すべきでないリジェクト紙幣についてはリジェクト庫17を、それぞれ最終的な搬送先として決定し、これらを記憶する。
【0040】
続いて紙幣制御部11は、前搬送部21から一時保留切替部20へ引き渡される紙幣の判断結果に応じて、入金受入紙幣であれば引き続き矢印W1に沿って一時保留部15へ搬送して収納させる。また紙幣制御部11は、当該紙幣が入金リジェクト紙幣であれば、矢印W2に沿って後搬送部22内へ進行させ、後搬送路22Y内に貯留させる。
【0041】
やがて紙幣制御部11は、入出金部12の収容器12Aから全ての紙幣を取り込み終えると、後搬送部22の後搬送路22Y内に入金リジェクト紙幣が貯留されていれば、これを使用者に返却する。具体的に紙幣制御部11は、後搬送路22Y内の入金リジェクト紙幣を矢印W3に沿って入出金部12へ搬送し、シャッタ12B等を開放して使用者に取り出させる。このとき使用者は、収容器12Aから紙幣を取り出してその状態を確認し、必要に応じて入出金部12に再投入する。ここで入出金部12に紙幣が再投入された場合、紙幣制御部11は、上述した一連の処理を繰り返す。一方、紙幣制御部11は、後搬送部22の後搬送路22Y内に入金リジェクト紙幣が貯留されていなければ、入金計数処理を完了する。
【0042】
このとき紙幣制御部11は、入出金部12に投入された紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6(
図1)に表示し、この入金額を使用者に提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。ここで紙幣制御部11は、使用者により入金取引の中止が指示された場合、一時保留部15に保留している全ての紙幣を搬送部13により入出金部12へ搬送して使用者に返却する。
【0043】
一方、紙幣制御部11は、使用者により入金取引の継続が指示された場合、入金収納処理を開始する。具体的に紙幣制御部11は、まず一時保留部15において繰出処理を開始し、収納している紙幣(入金受入紙幣)を順次繰り出し、
図5に矢印W4として示すように、紙幣を一時保留切替部20に引き渡す。
【0044】
このとき紙幣制御部11は、記憶内容を基に、入金計数処理において決定された紙幣毎の搬送先に応じて、一時保留切替部20や各切替部における紙幣の搬送経路を適宜切り替えることにより、各紙幣をそれぞれの搬送先へ搬送して収納させる。これにより紙幣制御部11は、再利用すべき通常の紙幣を金種ごとに分類して各紙幣収納庫16(16A~16E)に収納させ、また再利用すべきで無いリジェクト紙幣をリジェクト庫17に収納させることができる。
【0045】
[1-2-2.出金処理]
紙幣入出金機10(
図2)は、出金処理において、紙幣制御部11の制御に基づき、使用者に指定された出金額に応じて紙幣を出金するようになっている。具体的に紙幣制御部11は、まず使用者から操作表示部6(
図1)を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付け、出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。
【0046】
続いて紙幣制御部11は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫16内に収納されている紙幣を順次繰り出し、搬送部13に順次引き渡す。搬送部13は、
図6に矢印W5として示すように、前搬送部21内を前方へ向けて進行する紙幣を認識部14により認識し、その認識結果を紙幣制御部11へ送出する。
【0047】
紙幣制御部11は、紙幣の認識結果に応じてリジェクト切替部24を切り替えるよう制御し、当該紙幣に問題が無ければ、矢印W5のように入出金部12へ進行させて収納させ、当該紙幣がリジェクト紙幣であった場合や重送されていた場合のように問題があれば、矢印W6のようにリジェクト庫17へ進行させて収納させる。やがて紙幣制御部11は、出金額に応じた全ての紙幣を入出金部12へ搬送し終えると、シャッタ12B等を開放して使用者に取り出させる。
【0048】
[1-2-3.移動処理]
紙幣入出金機10(
図2)は、移動処理が行われる場合、使用者からの操作表示部6(
図1)を介した操作指示により、紙幣の移動元となる移動元紙幣収納庫と、紙幣の移動先となる移動先紙幣収納庫とがそれぞれ指定される。因みに紙幣入出金機10では、移動元として紙幣収納庫16A~16Dを指定可能であり、移動先として紙幣収納庫16A~16E及び上収納庫19を指定可能となっている。以下では、移動元紙幣収納庫が紙幣収納庫16Aであり、移動先紙幣収納庫が紙幣収納庫16Dである場合を例に説明する。
【0049】
また紙幣入出金機10は、この移動処理において、紙幣制御部11の制御に基づき、移動繰出処理、移動認識処理及び移動収納処理といった3段階の処理を順次行うようになっている。このうち前段の移動繰出処理は、移動元紙幣収納庫から入出金部12へ紙幣を搬送する処理である。中段の移動認識処理は、入出金部12から一時保留部15へ紙幣を搬送すると共に認識部14において認識する処理である。後段の移動収納処理は、一時保留部15から移動先紙幣収納庫へ紙幣を搬送して収納させる処理である。
【0050】
具体的に紙幣制御部11は、前段の移動繰出処理において、出金処理(
図6)の場合と同様に、矢印W5に沿って紙幣を搬送するような処理を行う。具体的に移動元紙幣収納庫(紙幣収納庫16A)は、紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送部13に引き渡す。搬送部13は、受け取った紙幣を搬送して入出金部12に引き渡す。入出金部12は、受け取った紙幣を収容器12Aに収容する。因みにこのとき認識部14は、搬送部13により搬送される紙幣の認識処理を行わないようになっている。
【0051】
次に紙幣制御部11は、中段の移動認識処理において、入金計数処理(
図4)の場合と概ね同様に、矢印W1に沿って紙幣を搬送するような処理を行う。具体的に入出金部12は、収容器12A内の紙幣を1枚ずつに分離して搬送部13に引き渡す。搬送部13は、紙幣を一時保留部15へ搬送する。このとき認識部14は、入金計数処理の場合と同様に、搬送される紙幣の認識処理を行い、得られた認識結果を紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、得られた認識結果を基に、正常な紙幣であればその搬送先を移動先紙幣収納庫とし、リジェクト紙幣であればその搬送先をリジェクト庫17として、記憶しておく。
【0052】
さらに紙幣制御部11は、後段の移動収納処理において、入金収納処理(
図5)の場合と同様に、矢印W4に沿って紙幣を搬送するような処理を行う。具体的に一時保留部15は、紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送部13に引き渡す。搬送部13は、紙幣制御部11の制御に基づいて一時保留切替部20を切り替え、正常な紙幣であれば移動先紙幣収納庫(紙幣収納庫16D)へ搬送して収納させ、リジェクト紙幣であればリジェクト庫17へ搬送して収納させる。
【0053】
因みに紙幣制御部11は、移動元紙幣収納庫に収納されている紙幣の枚数が、入出金部12の収容器12Aに収容可能な最大枚数(例えば200枚)以上であった場合、当該最大枚数ごとに移動処理を繰り返すことにより、移動元紙幣収納庫に収納されていた全ての紙幣を複数回に分けて移動させるようになっている。
【0054】
その後、紙幣制御部11は、移動処理の完了を意味する所定のメッセージや、移動先紙幣収納庫及びリジェクト庫17へそれぞれ移動させた紙幣の枚数等を、操作表示部6(
図1)に表示させることにより、移動処理を完了したことを使用者に通知し、移動処理を完了する。
【0055】
[1-3.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、移動処理において、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を入出金部12へ搬送し、次に搬送部13により当該紙幣を一時保留部15へ搬送しながら認識部14により認識し、正常な紙幣を移動先紙幣収納庫へ搬送して収納させる。
【0056】
このため紙幣入出金機10は、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を移動先紙幣収納庫へ移動でき、且つその際に認識部14により認識処理を行うことにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を改めて認識でき、収納されている合計枚数も改めて集計することができる。
【0057】
他の観点から見れば、紙幣入出金機10は、装置構成の小型化や搬送経路長の短縮等のために、搬送部13が概ね前後方向に沿った1本の直線状に形成され、各切替器を介して紙幣収納庫16等が接続された形態であり、且つ搬送部13上に認識部14が設けられている。
【0058】
このため紙幣入出金機10は、入金処理や出金処理のように比較的高い頻度で実行される処理に関しては、紙幣の搬送距離が比較的短くなっており、処理時間の短縮や搬送距離の短縮化に伴う障害発生頻度の低減を実現できている。その一方で紙幣入出金機10は、紙幣の移動処理のように比較的低い頻度で実行される処理に関しては、入出金部12や一時保留部15を利用しながら、比較的複雑な搬送経路により比較的長い時間を要しながらも、実行することができる。
【0059】
すなわち紙幣入出金機10は、金融機関の顧客のような優先すべき利用者の要求に対して、待機時間の短縮や障害発生頻度の低減を図ることができ、且つ金融機関の職員や保守作業員のような相対的に優先度が低い利用者に対して、やや時間を要しながらも紙幣の移動処理を自動的に行うことができる。
【0060】
また紙幣入出金機10は、移動処理において、前段の移動繰出処理において出金処理(
図6)の一部と同等の処理を行い、中段の移動認識処理において入金計数処理(
図4)の一部と同等の処理を行い、後段の移動収納処理において入金収納処理(
図5)の一部と同等の処理を行うようにした。このため紙幣入出金機10は、紙幣制御部11において移動処理のみのために特別な制御を行う必要が無く、基本的な処理として実行している出金処理、入金計数処理及び入金収納処理と同様の制御を行えば良い。
【0061】
他の観点から見れば、紙幣入出金機10では、基本的な処理である出金処理、入金計数処理及び入金収納処理をできるだけ円滑に実行し得るように、各部の形状や配置等が設計されている。このため紙幣入出金機10は、移動処理において、この出金処理、入金計数処理及び入金収納処理を有効に利用し、各処理と同様の経路に沿って紙幣を搬送するため、やはり円滑に実行することができる。すなわち紙幣入出金機10は、例えば不自然な搬送経路を形成したために紙幣の詰まりを誘発させる、といった問題を生じることがない。
【0062】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、移動処理において、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を入出金部12へ搬送し、次に搬送部13により当該紙幣を一時保留部15へ搬送しながら認識部14により認識し、正常な紙幣を移動先紙幣収納庫へ搬送して収納させる。このため紙幣入出金機10は、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を移動先紙幣収納庫へ移動でき、且つその際に認識部14により認識処理を行うことにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を改めて認識でき、収納されている合計枚数も改めて集計することができる。
【0063】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機201は、第1の実施の形態による現金自動預払機1(
図1)と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0064】
図2と対応する
図7に示すように、紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して、上部ユニット10Uに代わる上部ユニット210Uを有する点において相違するものの、下部ユニット10Lについては同様に構成されている。上部ユニット210Uは、上部ユニット10U(
図2)と比較して、紙幣制御部11及び搬送部13に代わる紙幣制御部211及び搬送部213を有する点、及び一時保留部15が省略されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0065】
紙幣制御部211は、紙幣制御部11(
図2)と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、該紙幣制御部11と一部異なる処理を行う。また紙幣制御部211は、紙幣制御部11と同様、内部に記憶部を有しており、種々の情報を記憶する。搬送部213は、搬送部13(
図2及び
図3)と比較して、一時保留切替部20に代わる接続部220により、前搬送部21及び後搬送部22が接続された構成となっている。
【0066】
[2-1.紙幣入出金機における各処理]
ところで紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して一時保留部15が省略されているため、入金処理及び移動処理における処理動作が相違している。以下では、出金処理も含めた各処理についてそれぞれ説明する。因みに紙幣入出金機210では、リジェクト庫17に加えて、上収納庫19にもリジェクト紙幣を収納し得るようになっている。
【0067】
[2-1-1.入金処理]
紙幣入出金機210は、入金処理において、紙幣制御部211の制御に基づき、第1の実施の形態とは異なり、一連の処理として紙幣を計数すると共に収納するようになっている。具体的に紙幣制御部211は、例えば使用者により操作表示部6(
図1)を介して入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金処理を開始し、
図8に矢印W11として示すような搬送経路に沿って紙幣を搬送していく。
【0068】
まず入出金部12は、使用者により収容器12Aに紙幣が投入されると、これを1枚ずつに分離して取り込み、搬送部13へ順次引き渡す。搬送部13は、入出金部12から受け取った紙幣を前搬送部21により後方へ順次搬送しながら、認識部14により各紙幣を順次認識し、得られた認識結果を紙幣制御部211へ送出する。
【0069】
紙幣制御部211は、取得した認識結果を基に、各紙幣について、受入が可能であり以降の処理を継続できると判断した場合には入金受入紙幣とし、受入が不可能であり一度使用者に返却すべきと判断した場合には入金リジェクト紙幣とする。
【0070】
さらに紙幣制御部211は、入金受入紙幣について、損傷の程度が比較的小さく再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣収納庫16を、損傷の程度が比較的大きく再利用すべきでないリジェクト紙幣については上収納庫19を、それぞれ最終的な搬送先として決定し、搬送部213を制御する。搬送部213は、紙幣制御部211の制御に基づいて各切替部における紙幣の搬送経路を適宜切り替えながら、正常な紙幣を矢印W11に沿って各紙幣収納庫16へ搬送して収納させ、リジェクト紙幣を矢印W12に沿って上収納庫19へ搬送して収納させる。
【0071】
因みに紙幣制御部211は、入金リジェクト紙幣が発生した場合、紙幣の搬送を一度停止させると共にその搬送方向を逆転させ、当該入金リジェクト紙幣を直ちに入出金部12に戻すようになっている。
【0072】
[2-1-2.出金処理]
紙幣入出金機210(
図7)は、出金処理において、紙幣制御部211の制御に基づき、第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送して出金するようになっている。すなわち紙幣入出金機210は、出金すべき紙幣の金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫16内に収納されている紙幣を順次繰り出し、搬送部213に順次引き渡す。搬送部213は、
図9に矢印W13として示すように、前搬送部21内を前方へ向けて進行する紙幣を認識部14により認識し、その認識結果を紙幣制御部211へ送出する。
【0073】
紙幣制御部211は、紙幣の認識結果に応じてリジェクト切替部24を切り替えるよう制御し、当該紙幣に問題が無ければ、矢印W13のように入出金部12へ進行させて収納させ、当該紙幣がリジェクト紙幣であった場合や重送されていた場合のように問題があれば、矢印W14のようにリジェクト庫17へ進行させて収納させる。やがて紙幣制御部211は、出金額に応じた全ての紙幣を入出金部12へ搬送し終えると、シャッタ12B等を開放して使用者に取り出させる。
【0074】
[2-1-3.移動処理]
紙幣入出金機210(
図7)は、移動処理において、紙幣制御部211の制御に基づき、第1の実施の形態と一部異なった処理により、紙幣を移動させるようになっている。具体的に紙幣制御部211は、移動繰出処理及び移動収納処理といった2段階の処理を順次行う。以下では、第1の実施の形態と同様に、移動元紙幣収納庫が紙幣収納庫16Aであり、移動先紙幣収納庫が紙幣収納庫16Dである場合を例に説明する。
【0075】
紙幣制御部211は、前段の移動繰出処理において、出金処理(
図9)の場合と同様に、矢印W13に沿って紙幣を搬送するような処理を行う。具体的に、移動元紙幣収納庫(紙幣収納庫16A)は、紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送部213に引き渡す。搬送部213は、受け取った紙幣を搬送して入出金部12に引き渡す。入出金部12は、受け取った紙幣を収容器12Aに収容する。因みにこのとき認識部14は、搬送部213により搬送される紙幣の認識処理を行わないようになっている。
【0076】
次に紙幣制御部11は、後段の移動収納処理において、入金処理(
図8)の場合と概ね同様に、矢印W11及びW12に沿って紙幣を搬送するような処理を行う。具体的に入出金部12は、収容器12A内の紙幣を1枚ずつに分離して搬送部213に引き渡す。搬送部213は、紙幣を後方へ搬送し、認識部14において認識させ、得られた認識結果を紙幣制御部211へ送出する。
【0077】
このとき紙幣制御部211は、得られた認識結果を基に、正常な紙幣であればその搬送先を移動先紙幣収納庫とし、リジェクト紙幣であればその搬送先を上収納庫19として、搬送部213を制御する。搬送部213は、紙幣制御部211の制御に基づいて各切替器における紙幣の搬送経路を切り替えながら、正常な紙幣を矢印W11に沿って移動先紙幣収納庫(紙幣収納庫16D)へ搬送して収納させ、リジェクト紙幣を矢印W12に沿って上収納庫19へ搬送して収納させる。
【0078】
[2-2.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、移動処理において、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を入出金部12へ搬送し、次に搬送部213により当該紙幣を搬送しながら認識部14により認識し、正常な紙幣を移動先紙幣収納庫へ搬送して収納させる。
【0079】
このため紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、移動元紙幣収納庫に収納されていた紙幣を移動先紙幣収納庫へ移動でき、且つその際に認識部14により認識処理を行うことにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を改めて認識でき、収納されている合計枚数も改めて集計することができる。
【0080】
また紙幣入出金機210は、移動処理において、前段の移動繰出処理において出金処理(
図9)の一部と同等の処理を行い、後段の移動収納処理において入金処理(
図8)の一部と同等の処理を行うようにした。このため紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、紙幣制御部211において移動処理のみのために特別な制御を行う必要が無く、基本的な処理として実行している出金処理、及び入金処理と同様の制御を行えば良い。
【0081】
その他の点においても、第2の実施の形態による紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と同様の作用効果を奏し得る。
【0082】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、移動処理における前段の移動繰出処理において、紙幣が認識部14を通過する際に認識処理を行わず、中段の移動認識処理において該認識処理を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば前段の移動繰出処理において、紙幣が認識部14を通過する際に認識処理を行い、得られた認識結果を記憶しておくようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0083】
また上述した第1の実施の形態においては、移動処理における移動元紙幣収納庫を紙幣収納庫16A~16Dの何れかとする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば紙幣収納庫16Eも移動元紙幣収納庫として指定し得るようにしても良い。この紙幣収納庫16Eを移動元紙幣収納庫とする場合、前段の移動繰出処理において、例えば紙幣収納庫16Eから繰り出した紙幣を一時保留部15へ搬送して一度収納させ、当該紙幣を該一時保留部15から繰り出して入出金部12へ搬送すれば良い。第2の実施の形態についても同様であり、この場合は例えば一時保留部15に代えて紙幣収納庫16A~16Dの何れかに紙幣を一時的に収納させてから繰り出し、入出金部12へ搬送すれば良い。
【0084】
さらに上述した第1の実施の形態においては、認識部14において、複数種類のセンサにより紙幣から種々の情報を取得し、これらを基に当該紙幣の金種、真偽、正損等を認識し、得られた認識結果を紙幣制御部11へ通知する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば認識部14において、複数種類のセンサにより紙幣から得られた種々の情報をそのまま紙幣制御部11へ通知し、該紙幣制御部11においてこれらの情報を基に各紙幣の金種等を認識しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0085】
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金処理において入金リジェクト紙幣が発生した場合、これを後搬送路22Yに貯留させておき、収容器12Aから全ての紙幣を取り込み終えた後に、この入金リジェクト紙幣を入出金部12へ搬送して使用者に返却する場合について述べた(
図4)。しかし本発明はこれに限らず、例えば入金処理において入金リジェクト紙幣が発生する度に、紙幣を逆走させて入出金部12へ戻すようにしても良い。
【0086】
さらに上述した第1の実施の形態においては、一時保留部15をテープエスクロ方式として構成し、円筒状のドラムの周側面に紙幣をテープと共に巻き付けることにより当該紙幣を収納する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば紙幣収納庫16等と同様に紙幣を集積して収納する方式とする等、種々の方式により紙幣を一時的に収納する構成としても良い。この場合、複数枚の紙幣を受け取った際と同一の正順又は反対の逆順により繰り出すことができれば良い。
【0087】
さらに上述した第1の実施の形態においては、後搬送部22に4個の紙幣収納庫16(16A~16D)を接続する場合について述べた(
図2)。しかし本発明はこれに限らず、3個以下又は5個以上の紙幣収納庫16を接続しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0088】
さらに上述した第1の実施の形態においては、後搬送部22に上搬送部18及び1個の上収納庫19を接続する場合について述べた(
図2)。しかし本発明はこれに限らず、例えば上搬送部18に所定の切替器を設けると共に2個以上の上収納庫を接続しても良く、或いは上搬送部18及び上収納庫19を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0089】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前搬送部21に1個の紙幣収納庫16(16E)を接続する場合について述べた(
図2)。しかし本発明はこれに限らず、例えば前搬送部21に2個以上の紙幣収納庫16を接続しても良く、或いは該前搬送部21に紙幣収納庫16を接続しないようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0090】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前搬送部21に1個のリジェクト庫17を接続する場合について述べた(
図2)。しかし本発明はこれに限らず、例えばリジェクト庫17に代えて、若しくはこれに加えて、後搬送部22に接続されるリジェクト庫を設けても良く、或いはリジェクト庫17を省略し、上収納庫19をリジェクト庫として機能させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0091】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機10の紙幣制御部11(
図2)が紙幣の移動処理等の各処理を制御する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば紙幣制御部11が主制御部9(
図1)と連携することにより、移動処理等の各処理を制御しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0092】
さらに上述した第1の実施の形態においては、顧客との間で媒体としての紙幣に関する取引処理を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各種金券や証券等、或いは入場券や乗車券のような種々の紙葉状の媒体を取引対象として取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0093】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0094】
さらに上述した実施の形態においては、入出部としての入出金部12と、第1搬送部としての前搬送部21と、認識部としての認識部14と、第2搬送部としての後搬送部22と、媒体収納庫としての紙幣収納庫16と、制御部としての紙幣制御部11とによって媒体取扱装置としての紙幣入出金機10を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入出部と、第1搬送部と、認識部と、第2搬送部と、媒体収納庫と、制御部とによって媒体処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば使用者との間で紙幣に関する入金取引や出金取引を行う現金自動預払機に組み込まれる紙幣入出金器で利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1、201……現金自動預払機、6……操作表示部、9……主制御部、10、210……紙幣入出金機、11、211……紙幣制御部、12……入出金部、13、213……搬送部、14……認識部、15……一時保留部、16……紙幣収納庫、17……リジェクト庫、18……上搬送部、19……上収納庫、20……一時保留切替部、21……前搬送部、22……後搬送部、24……リジェクト切替部、25、27、28……切替部、220……接続部。