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特開2022-19111ワイヤハーネス固定構造およびワイヤハーネス用のプロテクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019111
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス固定構造およびワイヤハーネス用のプロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220120BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H02G3/04 037
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122707
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川名 敏浩
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE08
5G357DE10
5G357DG01
5G363AA07
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA15
5G363DA20
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でありながら、ワイヤハーネスを適切にプロテクタに固定できるワイヤハーネス固定構造を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス固定構造は、軸方向視で略L字形の固定部20を有するプロテクタ10と、前記ワイヤハーネス100を前記固定部20に緊縛固定する固定テープ14と、を備え、前記固定部20は、前記略L字形を構成する第一壁22および第二壁24と、前記第二壁24に形成された開口部26と、前記開口部26の周縁から延びるとともに、前記第二壁24に対して揺動可能な揺動部28と、前記揺動部28のうち前記ワイヤハーネス100との対向面に設けられ、前記ワイヤハーネス100の周面に沿う湾曲面を有する保持部30と、前記揺動部28のうち前記保持部30と反対側の面に設けられ、前記第二壁24よりも外側に突出し、前記固定テープ14から緊縛の力を受ける受圧部32と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスをプロテクタに固定するワイヤハーネス固定構造であって、
前記ワイヤハーネスを保護する本体部と、前記ワイヤハーネスが固定されるとともに軸方向視で略L字形の固定部と、を有するプロテクタと、
前記ワイヤハーネスを前記固定部に緊縛固定する固定テープと、
を備え、前記固定部は、
前記略L字形を構成する第一壁および第二壁と、
前記第二壁に形成された開口部と、
前記開口部の周縁から前記開口部内に向かって延びるとともに、前記第二壁に対して揺動可能な揺動部と、
前記揺動部のうち前記ワイヤハーネスとの対向面に設けられ、前記ワイヤハーネスの周面に沿う湾曲面を有する保持部と、
前記揺動部のうち前記保持部と反対側の面に設けられ、前記第二壁よりも外側に突出し、前記固定テープから緊縛の力を受ける受圧部と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネス固定構造であって、
前記揺動部は、その揺動前の状態で、前記ワイヤハーネスと接触しない位置および形状である、ことを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワイヤハーネス固定構造であって、
前記揺動部は、前記開口部のうち前記第一壁から最も離れた周縁から前記第一壁に近づく方向に延びており、
前記揺動部の揺動軸から前記第一壁までの距離は、前記ワイヤハーネスの半径よりも小さい、
ことを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス固定構造であって、
前記第一壁と平行かつ前記軸方向と直交する方向を第一方向、前記第二壁と平行かつ前記軸方向と直交する方向を第二方向とした場合、
前記第一壁の第一方向寸法および前記第二壁の第二方向寸法は、前記ワイヤハーネスの直径よりも小さい、ことを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項5】
ワイヤハーネスを保護するプロテクタであって、
前記ワイヤハーネスを保護する本体部と、
前記ワイヤハーネスが固定されるとともに軸方向視で略L字形の固定部と、
を備え、前記固定部は、
前記略L字形を構成する第一壁および第二壁と、
前記第二壁に形成された開口部と、
前記開口部の周縁から前記開口部内に向かって延びるとともに、前記第二壁に対して揺動可能な揺動部と、
前記揺動部のうち前記ワイヤハーネスとの対向面に設けられ、前記ワイヤハーネスの周面に沿う湾曲面を有する保持部と、
前記揺動部のうち前記保持部と反対側の面に設けられ、前記第二壁よりも外側に突出し、固定テープから緊縛の力を受ける受圧部と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス用のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ワイヤハーネスをプロテクタに固定するワイヤハーネス固定構造および当該ワイヤハーネス固定構造で用いられるワイヤハーネス用のプロテクタを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に配策されたワイヤハーネスを保護するためのプロテクタが多数提案されている。例えば、特許文献1には、ワイヤハーネスを収容する本体部に、結束部材の一端が挿通される挿通部と、結束部材を係止する係止部と、を設けたプロテクタが開示されている。そして、特許文献1では、本体部の底面と結束部材とで、ワイヤハーネスを挟持することで、ワイヤハーネスをプロテクタに固定している。また、特許文献2には、ワイヤハーネスを電線保護部材で保護できるように、当該ワイヤハーネスを外装するコルゲートチューブを保持する保持具が開示されている。この保持具は、コルゲートチューブを両側から挟むようにヒンジ連結された第2保持部材および第3保持部材と、第2保持部材および第3保持部材を相対移動不能に固定する第4保持部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-129591号公報
【特許文献2】特開2017-099053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術の場合、結束部材の両端それぞれが通る挿通部および係止部は、本体部底面の幅方向両端にある。そのため、結束部材でワイヤハーネスを固定した際、結束部材は、本体部底面の幅方向一端からワイヤハーネスの頂部を通って、本体部底面の幅方向他端に向かうことになる。この場合、本体部底面の幅方向両端の角部には、大きな隙間が形成されてしまい、ワイヤハーネスが動きやすいという問題があった。
【0005】
特許文献2の技術では、コルゲートチューブを挟持する第2保持部材および第3保持部材は、コルゲートチューブの周面に沿う曲面となっているため、第2保持部材および第3保持部材と、コルゲートチューブと、の間の隙間を少なくでき、コルゲートチューブを強固に固定できる。しかしながら、特許文献2の技術では、分割された複数の部品が必要であり、部品点数が多かった。また、特許文献2の保持具は、比較的、凹凸が多く、複雑な形状であるため、金型構造が複雑となり、コストの増加を招いていた。
【0006】
つまり、従来、簡易な構造でありながら、ワイヤハーネスを適切にプロテクタに固定できる技術はなかった。そこで、本明細書では、簡易な構造でありながら、ワイヤハーネスを適切にプロテクタに固定できるワイヤハーネス固定構造およびワイヤハーネス用のプロテクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するワイヤハーネス固定構造は、ワイヤハーネスをプロテクタに固定するワイヤハーネス固定構造であって、前記ワイヤハーネスを保護する本体部と、前記ワイヤハーネスが固定されるとともに軸方向視で略L字形の固定部と、を有するプロテクタと、前記ワイヤハーネスを前記固定部に緊縛固定する固定テープと、を備え、前記固定部は、前記略L字形を構成する第一壁および第二壁と、前記第二壁に形成された開口部と、前記開口部の周縁から前記開口部内に向かって延びるとともに、前記第二壁に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部のうち前記ワイヤハーネスとの対向面に設けられ、前記ワイヤハーネスの周面に沿う湾曲面を有する保持部と、前記揺動部のうち前記保持部と反対側の面に設けられ、前記第二壁よりも外側に突出し、前記固定テープから緊縛の力を受ける受圧部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記揺動部は、その揺動前の状態で、前記ワイヤハーネスと接触しない位置および形状である、ことを特徴とする。また、前記揺動部は、前記開口部のうち前記第一壁から最も離れた周縁から前記第一壁に近づく方向に延びており、前記揺動部の揺動軸から前記第一壁までの距離は、前記ワイヤハーネスの半径よりも小さくてもよい。
【0009】
また、前記第一壁と平行かつ前記軸方向と直交する方向を第一方向、前記第二壁と平行かつ前記軸方向と直交する方向を第二方向とした場合、前記第一壁の第一方向寸法および前記第二壁の第二方向寸法は、前記ワイヤハーネスの直径よりも小さくてもよい。
【0010】
本明細書で開示するプロテクタは、ワイヤハーネスを保護するプロテクタであって、前記ワイヤハーネスを保護する本体部と、前記ワイヤハーネスが固定されるとともに軸方向視で略L字形の固定部と、を備え、前記固定部は、前記略L字形を構成する第一壁および第二壁と、前記第二壁に形成された開口部と、前記開口部の周縁から前記開口部内に向かって延びるとともに、前記第二壁に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部のうち前記ワイヤハーネスとの対向面に設けられ、前記ワイヤハーネスの周面に沿う湾曲面を有する保持部と、前記揺動部のうち前記保持部と反対側の面に設けられ、前記第二壁よりも外側に突出し、固定テープから緊縛の力を受ける受圧部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する技術によれば、簡易な構造でありながら、ワイヤハーネスを適切にプロテクタに固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プロテクタの要部の斜視図である。
図2】プロテクタにワイヤハーネスを固定した様子を示す斜視図である。
図3】プロテクタの断面図である。
図4】ワイヤハーネスをプロテクタに固定した様子を示す断面図である。
図5】揺動軸がワイヤハーネスの中心部が高い場合のプロテクタの断面図である。
図6】プロテクタの他の一例を示す断面図である。
図7】ワイヤハーネスを比較例のプロテクタに固定した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ワイヤハーネス100の固定構造、および、当該固定構造に用いられるプロテクタ10の構成について図面を参照して説明する。図1は、プロテクタ10の要部の斜視図である。また、図2は、プロテクタ10にワイヤハーネス100を固定した様子を示す斜視図である。さらに、図3は、プロテクタ10の断面図である。なお、以下の説明において、ワイヤハーネス100の軸方向を「軸方向Da」と呼ぶ。
【0014】
プロテクタ10は、ワイヤハーネス100の他部材への干渉を防止するために、ワイヤハーネス100の少なくとも一部を覆って保護するもので、例えば、樹脂等で構成される。なお、ワイヤハーネス100は、複数の電線102を束にして集合部品としたもので、複数の電線102と、当該複数の電線102に外装されたチューブ部材104と、を有している。
【0015】
プロテクタ10は、ワイヤハーネス100を保護する本体部12と、当該本体部12に連なる固定部20と、に大別される。本体部12は、ワイヤハーネス100の少なくとも一部を覆って保護する。この本体部12の形状は、求められる保護の形態に応じて、適宜、変更されてもよい。図1図2において、本体部12は、ワイヤハーネス100の周囲二方向を囲む、軸方向視で略L字形となっている。ただし、求められる保護の形態によっては、本体部12は、断面略U字形でもよいし、ワイヤハーネス100の全周囲を覆う筒状でもよい。また、本体部12は、一部品に限らず、複数部品で構成されてもよく、例えば、U字形の第一部品と、第一部品の上端開口を覆う第二部品と、を有するのでもよい。
【0016】
固定部20は、ワイヤハーネス100が固定される部位である。この固定部20は、図1に示すように、本体部12の一端から軸方向Daに延びている。また、固定部20は、第一壁22と、当該第一壁22に対して直交する方向に延びる第二壁24と、を有しており、軸方向視で略L字形となっている。以下では、軸方向Daに直交かつ第一壁22と平行な方向を「第一方向Df」と呼び、軸方向Daに直交かつ第二壁24と平行な方向を「第二方向Ds」と呼ぶ。
【0017】
第一壁22の第一方向Dfの寸法L1、および、第二壁24の第二方向Dsの寸法L2は、ワイヤハーネス100の直径よりも小さい。また、第一壁22の軸方向Da終端からは、第一方向Df外側に突出する爪部36が形成されている。同様に、第二壁24の軸方向Da終端からは、第二方向Ds外側に突出する爪部36が形成されている。この爪部36があることで、後述する固定テープ14の軸方向Daへの動きが防止される。
【0018】
第二壁24には、略矩形の開口部26が形成されている。この開口部26の上縁(すなわち第一壁22から最も離れた周縁)からは、揺動部28が、当該開口部26内に(すなわち第一壁22に近づく方向に)、延びている。揺動部28の基端には、その周囲より薄肉で軸方向Daに延びる脆弱部(図1図2では見えず、図3参照)が揺動軸34として形成されている。揺動部28は、この揺動軸34を中心として、第二壁24に対して揺動可能となっている。この揺動軸34は、ワイヤハーネス100の中心軸より下方に位置している。
【0019】
揺動部28のうち、ワイヤハーネス100と対向する面には、保持部30が形成されている。保持部30は、ワイヤハーネス100を固定した際、ワイヤハーネス100の周面に当接して、ワイヤハーネス100を固定テープ14とともに挟持する部位である。この保持部30は、第二壁24よりもハーネス側に突出しており、ワイヤハーネス100の周面に沿う湾曲面を有している。ここで、「周面に沿う湾曲面」とは、ワイヤハーネス100の周面と同じ向きに凸の湾曲面のことである。したがって、保持部30は、ワイヤハーネス100の周面と同じ向きに凸であれば、当該周面と異なる曲率を有するのでもよいし、非円弧状の湾曲面でもよい。本例の保持部30は、図1図3に示すように、揺動部28の末端に進むにつれて、ワイヤハーネス100に近づく方向に進む略円弧状の湾曲面を有している。なお、本例では、揺動部28の軸方向Da両端にのみ湾曲面を設けており、揺動部28の軸方向Da中間部分は、平坦面としている。
【0020】
揺動部28のうち、保持部30と反対側の面には、受圧部32が形成されている。受圧部32は、ワイヤハーネス100を固定した際に、固定テープ14からの緊縛の力を受ける部位である。この受圧部32は、第二壁24よりも、第一方向Df外側に突出している。また、受圧部32は、固定テープ14の亀裂を防止するために、角部のない滑らかな曲面で形成されている。
【0021】
ワイヤハーネス100をプロテクタ10に固定する際には、図2に示すように、ワイヤハーネス100(より正確にはチューブ部材104)を、第一壁22および第二壁24の双方に押し当てた状態で、ワイヤハーネス100および固定部20の周囲に固定テープ14を巻き付け、ワイヤハーネス100を固定部20に緊縛固定する。固定テープ14は、緊縛状態を維持できるのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、固定テープ14は、それ自身のもつ粘着力で緊縛状態を維持する粘着テープでもよいし、機械的な係合で緊縛状態を維持する結束バンドでもよいし、バングル等の固定具を用いて緊縛状態を維持する他の帯バンド部材でもよい。
【0022】
ここで、本例では、第二壁24に、保持部30および受圧部32を有する揺動部28を設けており、これにより、プロテクタ10をより確実に固定できる。これについて、比較例と比較して説明する。図4は、本例のプロテクタ10でワイヤハーネス100を固定した際の断面図である。図7は、比較例のプロテクタ10*でワイヤハーネス100を固定した際の断面図である。
【0023】
比較例のプロテクタ10*は、第一壁22および第二壁24を有するものの、第二壁24に、揺動部28が設けられていない。かかるプロテクタ10*にワイヤハーネス100を固定する場合には、本例と同様に、第一壁22および第二壁24の双方に押し当てた状態で、ワイヤハーネス100および固定部20の周囲に固定テープ14を巻き付け、ワイヤハーネス100を固定部20に緊縛固定する。このとき、ワイヤハーネス100の周面は円弧面であるのに対し、第一壁22および第二壁24は、平坦面であるため、第一壁22と第二壁24とで構成される角部付近には、大きな隙間40が発生していた。
【0024】
また、この場合、第一壁22とワイヤハーネス100、および、第二壁24とワイヤハーネス100は、線接触することとなり、プロテクタ10*とワイヤハーネス100との接触面積が小さかった。そのため、比較例のプロテクタ10*では、ワイヤハーネス100が、プロテクタ10に対して動きやすかった。こうしたワイヤハーネス100の動きは、ワイヤハーネス100の他部材との干渉を招く。また、固定テープとして粘着テープを用いた場合には、当該粘着テープに、粉塵等の異物が付着するが、ワイヤハーネス100がプロテクタ10*に対して動いた場合、この異物とワイヤハーネス100とが擦れ合い、ワイヤハーネス100の損傷を招くおそれがあった。
【0025】
一方、本例では、上述した通り、第二壁24に、保持部30および受圧部32を有する揺動部28を設けており、受圧部32は、第二壁24よりも外側に突出している。そのため、ワイヤハーネス100および固定部20の周囲に固定テープ14を巻き付けると、図4(a)に示すように、受圧部32に固定テープ14が当接し、固定テープの14の緊縛の力が受圧部32に伝達される。そして、この緊縛の力により、揺動部28は、ワイヤハーネス100に近づく方向に揺動する。
【0026】
受圧部32を介して緊縛の力が入力された際、揺動部28は、保持部30がワイヤハーネス100の周面に当接するまで揺動する。ここで、保持部30は、既述した通り、また、図4(a)に示すように、ワイヤハーネス100の周面に沿うような湾曲面を有している。そのため、揺動部28が揺動することで、保持部30は、ワイヤハーネス100に面状に接触する。そして、これにより、プロテクタ10とワイヤハーネス100との接触面積を大きくすることができ、また、プロテクタ10とワイヤハーネス100との隙間を低減できる。そして、保持部30がワイヤハーネス100の周面に面状に接触することで、ワイヤハーネス100のプロテクタ10に対する動きを効果的に抑制できる。
【0027】
また、本例では、揺動部28(ひいては保持部30)は、ワイヤハーネス100の径に応じて、その揺動量が変化する。その結果、本例のプロテクタ10によれば、径が異なる複数種類のワイヤハーネス100に対応できる。すなわち、接触面積の確保および隙間の低減だけを目的とする場合、第一壁22と第二壁24との角部に、図7において二点鎖線で示すような、ワイヤハーネス100の周面に沿うR面50を形成するのでもよい。しかし、かかるR面50は、当該R面50の半径と同じ半径を持つワイヤハーネス100に対しては有効ではあるものの、異なる半径を持つワイヤハーネス100の周面には接触できない。そのため、単に角部にR面50を設けただけでは、対応できるワイヤハーネス100の径が限定される。
【0028】
一方、本例では、ワイヤハーネス100の径が異なったとしても、保持部30が、ワイヤハーネス100の周面に接触できる位置まで移動するため、大きな接触面積を確保できるとともに、隙間を低減できる。図4(b)は、本例のプロテクタ10で、図4(a)よりも大径のワイヤハーネス100を固定した際の断面図である。
【0029】
なお、保持部30の湾曲面の曲率と、ワイヤハーネス100の周面の曲率と、が異なる場合、理論的には、両者は、面接触しない。しかし、通常、ワイヤハーネス100(より正確にはチューブ部材104)の周面は、適度な弾性を有している。そのため、若干の曲率の違いは、ワイヤハーネス100の弾性変形により吸収でき、保持部30とワイヤハーネス100の周面とを面接触させることができる。つまり、本例によれば、一種類のプロテクタ10で、径が異なる複数種類のワイヤハーネス100に対応できる。
【0030】
なお、上述した通り、本例では、揺動部28は、開口部26の上縁(すなわち第一壁22から最も離れた周縁)から第一壁22に近づく方向に延びており、揺動部28の揺動軸34から第一壁22までの距離H1は、ワイヤハーネス100の半径よりも小さくなっている。換言すれば、本例では、揺動部28を、その揺動前の状態で、ワイヤハーネス100と接触しない位置および形状としている。かかる構成とすることで、緊縛の力を受けた際に、揺動部28を、ワイヤハーネス100に近づく方向に揺動させることができる。例えば、図5に示すように、揺動軸34が、ワイヤハーネス100の中心より高く、揺動前の時点で、揺動部28の一部がワイヤハーネス100に接触している場合を考える。この場合、揺動部28は、その後、受圧部32を介して緊縛の力、ひいては、ワイヤハーネス100に近づく方向の力を受けたとしても、すでに、揺動部28の一部がワイヤハーネス100に接触しているため、それ以上、揺動できない。結果として、保持部30の湾曲面がワイヤハーネス100の周面に十分に接触できない。一方、図4(a)および図4(b)に示すように、揺動前の状態で、揺動部28がワイヤハーネス100の周面と離間している場合には、緊縛の力を受けて、揺動部28が、ワイヤハーネス100に近づく方向に揺動できるため、保持部30をワイヤハーネス100の周面に十分に接触させることができる。
【0031】
また、本例では、第一壁22の第一方向Dfの寸法L1、および、第二壁24の第二方向Dsの寸法L2を、ワイヤハーネス100の直径よりも小さくしている。かかる構成とすることで、ワイヤハーネス100の一部は、固定部20より外側にはみでることになる。これにより、固定テープ14が、ワイヤハーネス100を押さえつけやすくなり、固定テープ14の緊縛力が、より確実に、ワイヤハーネス100に伝わる。
【0032】
また、本例のプロテクタ10の固定部20は、単一部品で構成されている。そのため、プロテクタ10を構成する部品点数を低減できる。さらに、本例のプロテクタ10は、揺動部28に若干の凹凸があるものの、全体としては、凹凸が少ない、単純形状である。そのため、プロテクタ10を成形する際の金型の構造を単純化でき、製造コストを低減できる。
【0033】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、略L字を構成する第一壁22および第二壁24を有し、さらに、第二壁24に、保持部30および受圧部32を有する揺動部28を設けるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、第二壁24にのみ揺動部28を設けているが、第一壁22にも揺動部28を設けてもよい。また、上述の説明では、揺動部28の揺動軸34の位置を調整することで、揺動前における揺動部28とワイヤハーネス100との接触を避けていた。しかし、揺動軸34の位置ではなく、揺動部28(ひいては保持部30)の形状を工夫して、揺動部28とワイヤハーネス100との揺動前の接触を避けてもよい。例えば、図6に示すように、保持部30を、その一部が第二壁24より外側にえぐれた形状とすることで、揺動前におけるワイヤハーネス100との接触を避けるようにしてもよい。また、ワイヤハーネス100を構成する電線102は、チューブ部材104で被覆されることなく、固定部20に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10,10* プロテクタ、12 本体部、14 固定テープ、20 固定部、22 第一壁、24 第二壁、26 開口部、28 揺動部、30 保持部、32 受圧部、34 揺動軸、36 爪部、40 隙間、50 R面、100 ワイヤハーネス、102 電線、104 チューブ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7