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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191128
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】脱気シール及び脱気シールセット
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199051
(22)【出願日】2021-12-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021099295
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390016263
【氏名又は名称】株式会社友功社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA21
3E013BA24
3E013BB20
3E013BE01
3E013BF02
(57)【要約】
【課題】 電子レンジ加熱用包装容器の蓋に切込み状の舌片状の通気口表面に添着するシールにおいて、異物の混入を防止するとともに、層構造を単純化することにより製造を容易としてコストを抑えることができる脱気シール及び、加熱後に蒸気や湯水の吐出を防止することが可能な脱気シールセットを提供する。
【解決手段】 基材2と、該基材の下面側に設けられた接着層21と、該接着層の下面側の外縁より内側に設けられた非接着層22と、基材、接着層及び非接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部3と、該接着層及び非接着層の下面側に、外縁上面側が接着層に接着されるとともに、非接着層及び通気部を覆うように、かつ、非接着層の下面側に接着しない状態で設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルム4を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の下面側に設けられた接着層と、
該接着層の下面側の外縁より内側に設けられた非接着層と、
前記基材、前記接着層及び前記非接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層及び非接着層の下面側に、外縁上面側が前記接着層に接着されるとともに、前記非接着層及び前記通気部を覆うように、かつ、前記非接着層の下面側に接着しない状態で設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルムを備え、
前記樹脂フィルムの収縮に伴い、該樹脂フィルムの外縁上面側が前記接着層から剥離して、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする脱気シール。
【請求項2】
基材と、該基材の下面側に設けられた接着層と、
前記基材及び前記接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層の下面側に、前記通気部を覆うように設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの上面側に、前記接着層に対して剥離可能に設けられた剥離層を備え、
前記樹脂フィルムの収縮にともない、前記剥離層が前記接着層から剥離するとともに、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする脱気シール。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの下面側に、前記接着層の接着強度より弱い接着強度の仮接着層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱気シール。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの縦方向と横方向の収縮率が異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の脱気シール。
【請求項5】
前記接着層及び、前記樹脂フィルムの下面側にセパレーターが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の脱気シール。
【請求項6】
前記通気部が、十字型又は円弧状のスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の脱気シール。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載の脱気シールによる水蒸気の脱気後に、前記通気部を覆うように添着するための被覆シールを備えることを特徴とする脱気シールセット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気シール及び脱気シールセットに関するものであり、詳しくは、電子レンジ加熱容器の蓋に設けられた通気口部分に添付する脱気シール及び脱気シールセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で販売される弁当等の調理済み食品において、電子レンジにそのまま投入して加熱調理できる、所謂レンジアップ商品が販売数量を伸ばしている。そして、これらのレンジアップ商品は、通常、食品を内包する容器本体と蓋から構成される容器に封入された状態で販売されている。
【0003】
上記の調理済み食品は、通常、購入者が家の電子レンジ等で温め直して食したり、コンビニエンスストアで温めて持ち帰って食するが、例えば、水分量の多い食材を含む商品の場合、加熱により容器内で水分が蒸発して水蒸気が発生する。この際、密閉された容器では、発生した水蒸気により蓋が変形するなどの虞があるため、近年では、蓋にU字状やV字状の舌片状の通気口を形成した蓋が用いられている。
【0004】
一方、上記の容器の蓋に設けられた通気口の排気効率は良好であるが、他方で、舌片状の通気口に間隙が生じて、販売時にその隙間から異物が混入するなどの虞が指摘されていた。
【0005】
このような問題に対して、これまでに、容器の蓋に設けられた通気口部分に添着して、水蒸気の発生時にのみ開口して水蒸気を容器外に放出することができるシール状の弁が提案されている(特許文献1)。この提案の弁によれば、熱により収縮する変形可能エレメントの外周に第1のパターン状の接着剤を付設するとともに、開口部を有するカバー層の下面外周部に第2のパターン状の接着剤を付設し、カバー層の第2のパターン状の接着剤の内側に、第1のパターン状の接着剤を介して変形可能エレメントを設けた構成を有している。そして、この構成により、水蒸気等による加熱によって変形可能エレメントが収縮し、変形可能エレメントの下面と開口部が連通して容器内の水蒸気を放出できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5628906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の提案では、第1と第2のパターン状の接着剤の付設位置の設定が複雑であり、製造に高度な技術が必要であるため、製造工程が煩雑となり、手間とコストがかかるという問題があった。また、カバー層と変形可能エレメントの間に必然的に空間が生じるため、開口部から異物が混入し、変形可能エレメントの表面に付着するという問題もあった。さらに、水蒸気放出後に開口部から蒸気が放出し続けたり、熱い湯水が開口部から零れたりして火傷をするという危険性も指摘されていた。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電子レンジ加熱用包装容器の蓋に設けられた通気口の表面に添着するシールにおいて、異物の混入を防止するとともに、層構造を単純化することにより製造を容易としてコストを抑えることができる脱気シール及び、加熱後に蒸気や湯水の吐出を防止することが可能な脱気シールセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す脱気シール及び脱気シールセットが提供される。
第1に、本発明の脱気シールは、基材と、該基材の下面側に設けられた接着層と、
該接着層の下面側の外縁より内側に設けられた非接着層と、
前記基材、前記接着層及び前記非接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層及び非接着層の下面側に、外縁上面側が前記接着層に接着されるとともに、前記非接着層及び前記通気部を覆うように、かつ、前記非接着層の下面側に接着しない状態で設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルムを備え、
前記樹脂フィルムの収縮に伴い、該樹脂フィルムの外縁上面側が前記接着層から剥離して、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする。
第2に、本発明の脱気シールは、基材と、該基材の下面側に設けられた接着層と、
前記基材及び前記接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層の下面側に、前記通気部を覆うように設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの上面側に、前記接着層に対して剥離可能に設けられた剥離層を備え、
前記樹脂フィルムの収縮にともない、前記剥離層が前記接着層から剥離するとともに、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする。
第3に、前記第1又は第2の発明の脱気シールにおいて、前記樹脂フィルムの下面側に、前記接着層の接着強度より弱い接着強度の仮接着層が設けられていることが好ましい。
第4に、前記第1から第3の発明の脱気シールにおいて、前記樹脂フィルムの縦方向と横方向の収縮率が異なることが好ましい。
第5に、前記第1から第4の発明の脱気シールにおいて、前記接着層及び、前記樹脂フィルムの下面側にセパレーターが設けられていることが好ましい。
第6に、前記第1から第5の発明の脱気シールにおいて、前記通気部が、十字型又は円弧状のスリット状に形成されていることが好ましい。
第7に、本発明の脱気シールセットは、前記第1から第6のいずれかの脱気シールによる水蒸気の脱気後に、前記通気部を覆うように添着するための被覆シールを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱気シールによれば、電子レンジ加熱用包装容器の蓋に設けられた通気口の表面に添着するシールにおいて、異物の混入を防止するとともに、層構造を単純化することにより製造を容易としてコストを抑えることができる。また、本発明の脱気シールセットによれば、加熱後に蒸気や湯水の吐出を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の脱気シールを示す概略上面視図である。
図2図1に示す第1実施形態の脱気シールのA-A概略断面図である。
図3】第1実施形態の脱気シールの動作機序を説明するための概略断面図であり、(A)は加熱前の状態、(B)は加熱後、蓋の通気口から水蒸気が放出した状態、(C)は樹脂フィルムが収縮して水蒸気が基材表面から放出した状態を示している。
図4】加熱後に、本発明の脱気シールセットの被覆シールを添着した状態を示す概略断面図である。
図5】本発明の第2実施形態の脱気シールを示す概略上面視図である。
図6図1に示す第2実施形態の脱気シールのB-B概略断面図である。
図7】第2実施形態の脱気シールの動作機序を説明するための概略断面図であり、(A)は加熱前の状態、(B)は加熱後、蓋の通気口から水蒸気が放出した状態、(C)は樹脂フィルムが収縮して水蒸気が基材表面から放出した状態を示している。
図8】通気部の形状のバリエーションを示す概略上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る脱気シールの実施形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態の脱気シールについて説明する。図1は、第1実施形態の脱気シールを示す概略上面視図であり、図2は、図1に示す第1実施形態の脱気シールのA-A概略断面図である。
【0013】
本発明の第1実施形態の脱気シール11は、基材2と、基材2の下面側に設けられた接着層21と、接着層21の下面側に設けられた非接着層22と、基材2、接着層21及び非接着層22を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部3と、該接着層21及び非接着層22の下面側で、少なくとも通気部3を覆うように設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルム4を備えている。
【0014】
基材2は、適度な強度を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、通常の粘着テープに使用される樹脂フィルムや紙製等の材質の基材2を用いることができる。基材2として樹脂フィルムを用いる場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂フィルム基材、また、その他の合成樹脂フィルム基材を例示することができる。また、紙を用いる場合には、例えば、コート紙、上質紙、再生紙等、種々の種類の紙類、又はこれらの積層体からなる紙基材を例示することができる。これらの中でも、強度や取扱性等の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを好適に用いることができる。また、基材2の厚みは、加熱により容易に変形、収縮しない範囲で適宜決定することができる。
【0015】
また、本第1実施形態の脱気シール11においては、基材2の下面側には接着層21が設けられている。接着層21は通気部3及びその外縁を覆うように基材2の下面側全面に設けられている。接着層21を構成する接着剤は、通常のシールに用いられる接着剤であれば特に限定されることなく用いることができる。具体的には、熱により軟化する特性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ホットメルト系接着剤等の接着剤を例示することができ、これらの中でも特にアクリル系接着剤を好適に用いることができる。
【0016】
また、本実施形態1の脱気シール11においては、接着層21の下面側で、かつ、接着層21の外縁より内側の領域に非接着層22が設けられている。非接着層22は、後述する樹脂フィルム4と接着層21とが接着しないように、所謂糊殺しとして設けられる層である。
【0017】
非接着層22を構成する材料としては、上記の条件を満足すれば特に限定されるものではないが、例えば、インキ、樹脂等を例示することができる。これらの中でも樹脂が好ましく、特にUV硬化型樹脂を好適に用いることができる。
【0018】
また、基材2、接着層21及び非接着層22には、基材2の上面と非接着層22の下面を貫通する通気部3が設けられている。通気部3の形状や大きさは、適用する容器の蓋に設けられている通気口の形状や大きさに応じて適宜設定することができ、例えば、切込み、スリット、貫通孔、メッシュ等種々の形状とすることができる。これらの中でも、成形の容易性等を考慮した場合、切込みが好ましく、特に図1に示すような十字型のほか、図8(B)に示す複合十字型や、図8(C)、(D)に示すような複数の円弧状の形状の切込みが好ましい。
【0019】
さらに、接着層21及び非接着層22の下面側には、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルム4が設けられている。樹脂フィルム4は、外縁上面側が接着層21に接着されており、また、非接着層22及び通気部3を覆うように、かつ、非接着層22の下面側に接着しない状態で設けられている。
【0020】
樹脂フィルム4は、一般にシュリンクフィルムとも呼ばれるものであり、熱により収縮する特性を有するものであれば限定されるものではなく、例えば、熱収縮性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂フィルム等を例示することができる。また、本発明において用いる樹脂フィルム4は、全体に均一に収縮するもののほか、縦方向と横方向の収縮率が異なる特性を有するものが好ましい。縦横方向の収縮率が異なる樹脂フィルム4を用いることにより、収縮後に接着層21との接着部が部分的に残り、樹脂フィルム4の脱落を防止することが可能となる。
【0021】
樹脂フィルム4の収縮率は、基本的には基材2の収縮率よりも大きいものであれば特に限定されないが、例えば、常温時から100℃に加熱した場合の収縮率が20~60%程度、好ましくは30~50%程度のものが考慮される。
【0022】
上記第1実施形態の脱気シール11の製造に関しては、基材2の下面側の所定の領域に接着層21及び非接着層22を成形し、通気部3を形成した後、その下面側の所定の位置に樹脂フィルム4を添着する工程のみで製造できるため、非常にシンプルかつ低コストで製造することが可能である。
【0023】
以下に、上記第1実施形態の脱気シール11の動作機序について図3(A)~(C)を用いて説明する。まず、図3(A)に示すように、レンジアップ商品等の容器の蓋7の表面に設けられている舌片状の通気口71を覆うように、脱気シール11を添着する。そして、その状態で電子レンジで加熱すると、容器内の食品の水分が蒸発し、図3(B)に示すように、水蒸気6が舌片状の通気口71から放出される。
【0024】
そして、通気口71から放出された水蒸気6は、脱気シール11の樹脂フィルム4の下面側に当たり、樹脂フィルム4は加熱され収縮を開始する。この際、樹脂フィルム4の外縁部を固定している接着層21も水蒸気6により加熱され軟化するため、接着されている樹脂フィルム4の外縁部は、収縮により軟化した接着層21から離脱して、非接着層22の領域に達して通気部3を露出させる。
【0025】
すると水蒸気6は、図3(C)に示すように、収縮した樹脂フィルム4の外縁部から、基材2、接着層21及び非接着層22を貫通して設けられた通気部3を通って基材2上面に放出される。これにより、脱気シール11の添着による初期の密閉状態から、加熱により初めて水蒸気6が蓋7の外に放出されることになる。
【0026】
なお、レンジによる加熱が終了しても、水蒸気6は通気部3を通して放出し続ける場合があり、例えば、購入後持ち帰る際に入れたバッグ等を汚してしまったり、使用者が、水蒸気6や溜まった高温の湯水等により火傷を負う危険性がある。本発明では、このような状況を想定して、図4に示すように、上記脱気シール11とは別に用意した脱気シールセットとしての被覆シール8を用いて、通気部3の上部を塞ぐように添着することができる。加熱後、被覆シール8により通気部3を塞ぐことにより、通気部3からの蒸気や湯水の吐出を防止することが可能となり、使用者の火傷のリスクを低減することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態の脱気シールについて説明する。図5は、本発明の第2実施形態の脱気シールを示す概略上面視図であり、図6は、図5に示す第2実施形態の脱気シールのA-A概略断面図である。
【0028】
本発明の第2実施形態の脱気シール12は、基材2と、基材2の下面側に設けられた接着層21と、基材2及び接着層21を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部3と、接着層21の下面側に、通気部3を覆うように設けられた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルム4を備えている。また、樹脂フィルム4の上面側には、接着層21に対して剥離可能に設けられた剥離層41が設けれている。
【0029】
第2実施形態の脱気シール12における基材2は、前記第1実施形態の脱気シール11と同様のものを用いることができ、適度な強度を有する通常の粘着テープに使用される樹脂フィルムや紙製等の材質の基材2を用いることができる。基材2として樹脂フィルムを用いる場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂フィルム基材、また、他の合成樹脂フィルム基材を例示することができる。また、紙を用いる場合には、例えば、コート紙、上質紙、再生紙等、種々の種類の紙類、又はこれらの積層体からなる紙基材を例示することができる。これらの中でも、強度や取扱性等の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを好適に用いることができる。また、基材2の厚みは、加熱により容易に変形、収縮しない範囲で適宜決定することができる。
【0030】
また、本第2実施形態の脱気シール12において、基材2の下面側に設けられる接着層21は、通気部3を覆うように基材2の下面側全面に設けられている。接着層21を構成する接着剤は、前記第1実施形態の脱気シール11における接着層21と同様のものを用いることができ、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ホットメルト系接着剤等の接着剤を例示することができる。これらの中でも特にアクリル系接着剤を好適に用いることができる。
【0031】
また、基材2及び接着層21には、基材2の上面側と接着層21の下面側を貫通する通気部3が設けられている。通気部3の形状や大きさは、前記第1実施形態の脱気シール11と同様、適用する容器の蓋に設けられている舌片状の通気口71の形状や大きさに応じて適宜設定することができるが、その形状は、切込み、スリット、貫通孔、メッシュ等種々の形状とすることができる。これらの中でも、成形の容易性等を考慮した場合、切込みが好ましく、図5に示す片側円弧状の形状のほか、図8(A)~(D)に示すような十字型や複数の円弧状の形状の切込みが好ましい。
【0032】
さらに、接着層21の下面側には、上面側に接着層21に対して剥離可能に設けられた剥離層41を備えた、水蒸気の熱により収縮する樹脂フィルム4が設けられている。樹脂フィルム4は、剥離層41を介して接着層21に仮の状態で接着された状態で設けられている。
【0033】
樹脂フィルム4も、前記第1実施形態の脱気シール11に用いたものと同様の種類、特性を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂フィルム等を用いることができる。
【0034】
また、樹脂フィルム4の上面側に設けられる剥離層41は、樹脂フィルム4の表面に定着し、かつ、接着層21には剥離可能に仮の状態で接着可能な特性を有するものであれば特に制限なく、例えば、シリコンや剥離ニス等を含む材料により形成することができる。
【0035】
上記第2実施形態の脱気シール12の製造に関しては、基材2の下面の所定の領域に接着層21を成形し、通気部3を形成した後、接着層21の下面側に、予め上面側に剥離層41を形成した樹脂フィルム4を添着する工程のみで製造できるため、前記第1実施形態の脱気シール11以上にシンプルかつ低コストで製造することが可能である。
【0036】
以下に、上記第2実施形態の脱気シール12の動作機序について図7(A)~(C)を用いて説明する。まず、図7(A)に示すように、レンジアップ商品等の容器の蓋7の表面に設けられている舌片状の通気口71を覆うように脱気シール12を添着する。そして、その状態で電子レンジで加熱すると、容器内の食品の水分が蒸発し、図5(B)に示すように、水蒸気6として舌片状の通気口71から放出される。
【0037】
そして、通気口71から放出された水蒸気6は、脱気シール12の樹脂フィルム4の下面に当たり、樹脂フィルム4は加熱されて収縮を開始する。なお、樹脂フィルム4は、表面に設けられた剥離層41により、接着層21の表面に仮の状態で接着されているため、樹脂フィルム4が収縮を始めると剥離層41が接着層21から剥がれて、樹脂フィルム4とともに収縮して通気部3を露出させる。
【0038】
すると水蒸気6は、図7(C)に示すように、収縮した樹脂フィルム4の外縁部から、基材2及び接着層21を貫通して設けられた通気部3を通って基材2上面に放出される。これにより、脱気シール12の添着による初期の密閉状態から、加熱により初めて水蒸気6が蓋7の外に放出されることになる。
【0039】
なお、レンジによる加熱が終了しても水蒸気6は、通気部3を通して放出し続ける場合があり、使用者は水蒸気6や溜まった高温の湯水等により火傷を負う危険性がある。ここで、本実施形態2の脱気シール12では、剥離層41が剥がれて露出した接着層21の下面側には接着性が残っているため、加熱が終了した後に、脱気シール12の上部から下方に向けて押さえつけることにより、通気口71を覆うように接着層が添着して通気口71を塞ぐことができる。これにより、容易に通気部3からの蒸気や湯水の吐出を防止することが可能となり、持ち帰り時に入れたバッグ等の汚れを防いだり、使用者の火傷のリスクを低減することが可能となる。
【0040】
また、本第2実施形態の脱気シール12においても、第1実施形態の脱気シール11と同様、脱気シール12とは別に用意した脱気シールセットとしての被覆シール8を用いて、通気部3の上部を塞ぐように添着して、通気部3からの蒸気や湯水の吐出を確実に防止することも可能である。
【0041】
また、本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態の脱気シール1においては、図2図6に示すように、樹脂フィルム4の下面側に接着層21の接着強度より弱い接着強度の仮接着層42を設けることができる。樹脂フィルム4の下面側に仮接着層42を設けることにより、種々の形状の容器の蓋に対して安定して添着することができる。
【0042】
さらに、第1実施形態及び第2実施形態の脱気シール1は、予め容器の蓋に設けられた通気口の表面に添着した状態で提供されてもよいが、シール状の形態として、購入者が温め時直前に添着するように提供することもできる。この場合には、接着層21の下面側にセパレーター5(剥離紙)を設けるのが好ましい。セパレーター5を設けることにより、脱気シール1を使用するときに、セパレーター5から剥がして添着して用いることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の脱気シール及び脱気シールセットを実施形態に基づいて説明したが、本発明の脱気シール及び脱気シールセットは上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、上記図1図5図8に示す実施形態の及び脱気シール1では、上面視で基材2及び樹脂フィルム4の形状を円形としているが、形状はこれに限定されず、矩形や他の形状とすることもできる。
【0045】
また、基材2や樹脂フィルム4は透明でよいが、着色された透明や、不透明であっても構わない。また、基材2表面には文字や図柄が印刷されていてもよい。
【0046】
上記構成の本発明の脱気シール1によれば、電子レンジ加熱用包装容器の蓋7の通気口71表面に添着するシールにおいて、異物の混入を防止するとともに、層構造を単純化することにより製造を容易としてコストを抑えることができる。また、本発明の脱気シールセットによれば、加熱後に蒸気や湯水の吐出を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1、11、12 脱気シール
2 基材
21 接着層
22 非接着層
3 通気部
4 樹脂フィルム
41 剥離層
42 仮接着層
5 セパレーター
6 水蒸気
7 蓋
71 通気口
8 被覆シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の下面側に設けられた接着層と、
該接着層の下面側の外縁より内側に設けられた非接着層と、
前記基材、前記接着層及び前記非接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層及び非接着層の下面側に、外縁上面側が前記接着層に接着されるとともに、前記非接着層及び前記通気部を覆うように、かつ、前記非接着層の下面側に接着しない状態で設けられた、水蒸気の熱により収縮する、縦方向と横方向の収縮率が異なる樹脂フィルムを備え、
前記樹脂フィルムの収縮に伴い、該樹脂フィルムの外縁上面側が前記接着層から剥離して、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする脱気シール。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの下面側に、前記接着層の接着強度より弱い接着強度の仮接着層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脱気シール。
【請求項3】
前記接着層及び、前記樹脂フィルムの下面側にセパレーターが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱気シール。
【請求項4】
前記通気部が、十字型又は円弧状のスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の脱気シール。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の脱気シールによる水蒸気の脱気後に、前記通気部を覆うように添着するための被覆シールを備えることを特徴とする脱気シールセット。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の下面側全面に設けられた接着層と、
該接着層の下面側の外縁より内側に設けられた非接着層と、
前記基材、前記接着層及び前記非接着層を貫通して設けられた、水蒸気を放出可能な通気部と、
該接着層及び非接着層の下面側に、外縁上面側が前記接着層の下面側に接着されるとともに、前記非接着層の下面側全面及び前記通気部を覆うように、かつ、前記非接着層の下面側全面に接着しない状態で設けられた、水蒸気の熱により収縮する、縦方向と横方向の収縮率が異なる樹脂フィルムを備え、
前記樹脂フィルムの収縮に伴い、該樹脂フィルムの外縁上面側が前記接着層の下面側から剥離して前記非接着層の領域に達し、前記通気部の通気を可能とすることを特徴とする脱気シール。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの下面側に、前記接着層の接着強度より弱い接着強度の仮接着層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脱気シール。
【請求項3】
前記接着層及び、前記樹脂フィルムの下面側にセパレーターが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱気シール。
【請求項4】
前記通気部が、十字型又は円弧状のスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の脱気シール。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の脱気シールによる水蒸気の脱気後に、前記通気部を覆うように添着するための被覆シールを備えることを特徴とする脱気シールセット。