(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191139
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/169 20210101AFI20221220BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20221220BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20221220BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20221220BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20221220BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221220BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20221220BHJP
H01M 50/153 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/198
H01G11/78
H01G11/84
H01M50/109
H01M50/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022449
(22)【出願日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021099517
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB12
5E078HA03
5E078HA25
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
5H011FF04
5H011HH02
5H011HH08
5H011JJ25
5H011KK04
(57)【要約】
【課題】確実な封止性を得ること。
【解決手段】第1接合壁12を有する第1容器20と、第1接合壁に対して溶接接合された第2接合壁21を有し、第1容器との間に収容空間4を形成する第2容器20とを備えた外装体2と、正極電極及び負極電極を有し、収容空間内に収容された電極体30と、第1容器に対して絶縁性の樹脂材60を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板61と、を備え、第2接合壁には溶接痕が形成されている電気化学セル1を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合壁を有する第1容器と、前記第1接合壁に対して溶接接合された第2接合壁を有し、前記第1容器との間に収容空間を形成する第2容器と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、
前記第1容器に対して絶縁性の樹脂材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板と、を備え、
前記第2接合壁には、溶接痕が形成されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルにおいて、
前記溶接痕は、前記第2接合壁のうち前記第1接合壁に溶接接合された接合面とは反対側に位置する対向面に形成されている、電気化学セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1接合壁及び前記第2接合壁は、前記第1接合壁と前記第2接合壁との間に形成された溶接金属層を介して溶接接合されている、電気化学セル。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学セルにおいて、
前記溶接金属層は、前記第1容器を構成する母材金属、及び前記第2容器を構成する母材金属よりも融点が低い、電気化学セル。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1容器は、前記集電板が前記樹脂材を介して溶着された底壁部、及び周壁部を有する有底筒状に形成され、
前記第2容器は、前記周壁部の上端開口縁に対して上方から重なるフランジ部を有し、前記周壁部に対する前記フランジ部の溶接接合によって前記第1容器の開口部を閉塞し、
前記周壁部が前記第1接合壁とされ、
前記フランジ部が前記第2接合壁とされ、
前記溶接金属層は、前記周壁部の上端開口縁と前記フランジ部との間に形成されている、電気化学セル。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学セルにおいて、
前記溶接金属層は、前記フランジ部の外周面側に回り込むように形成され、前記フランジ部の外周面を覆っている、電気化学セル。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1容器は、前記集電板が前記樹脂材を介して溶着された頂壁部、及び第1周壁部を有する有頂筒状に形成され、
前記第2容器は、底壁部、及び前記第1周壁部の外側に全周に亘って溶接接合された第2周壁部を有する有底筒状に形成され、
前記第1周壁部が前記第1接合壁とされ、
前記第2周壁部が前記第2接合壁とされ、
前記第2周壁部の外周面に前記溶接痕が形成されている、電気化学セル。
【請求項8】
第1接合壁を有する第1容器と、前記第1接合壁に対して溶接接合された第2接合壁を有し、前記第1容器との間に収容空間を形成する第2容器と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、
前記第1容器に対して絶縁性の樹脂材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板と、を備えた電気化学セルの製造方法であって、
前記収容空間内に前記電極体を収容した状態で、前記樹脂材を介して前記集電板が溶着された前記第1容器と前記第2容器とを組み合わせる工程と、
前記第2接合壁側から加熱を行うことで、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いに溶接接合する工程と、を備えていることを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第2接合壁には、前記加熱に起因する溶接痕が形成されている、電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第2接合壁側からレーザ光を照射して、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いにレーザ溶接によって溶接接合する、電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第2接合壁にローラ電極を押し付けながら通電し、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いにシーム溶接によって溶接接合する、電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第1容器又は前記第2容器に予め圧力開放用の逃げ孔を形成する工程と、
前記第1容器と前記第2容器との溶接接合後、前記逃げ孔を塞ぐ工程と、を備えている、電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び電気化学セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腕時計、スマートウオッチ、スマートフォン、ヘッドセット、補聴器等の小型電子機器やウエアラブル機器用の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
近年、この種の電気化学セルへのニーズとして、小型化及び薄型化に対する要求がさらに強くなっている。その一因としては、電気化学セルが実装される各種電子機器におけるIC(集積回路)の極微細化及び低消費電力化による高性能化に伴って、従来にはないハイスペックな機能を具備する電子機器が提案され始めているからである。
【0003】
この種の電気化学セルでは、電極体を内部に収容する外装体として、例えば金属ケースを利用したものが知られている。金属ケースは、例えば有底筒状のケース本体と、ケース本体の開口部を、樹脂製のガスケットを介してカシメ等によって封止する封口板とを備え、全体としてコイン形状、ボタン形状、筒形状等に構成される場合が多い。
【0004】
しかしながら、ケース本体と封口板とをカシメ等によって封止する場合には、十分な封止性を得られない場合があるうえ、体積効率が悪くなる傾向にある。なお、体積効率とは、電池全体の体積に対する電極が占める体積の割合、すなわち「電極部分体積/電池全体体積」を言う。
そこで、ケース本体と封口板とをカシメ等によって固定することに代えて、レーザ溶接(例えば特許文献1参照)或いは抵抗溶接(例えば特許文献2参照)等によって、ケース本体と封口板とを溶接接合し、封止性を向上させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-239764号公報
【特許文献2】特開平11-260326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケース本体と封口板とを溶接接合することで外装体を構成した場合、正極又は負極用の外部接続端子として機能する金属製の集電板を、樹脂シール等の絶縁性の樹脂材を介してケース本体又は封口板に取り付ける場合が多い。これにより、例えば外装体の内部に収容される電極体を構成する正極電極及び負極電極のうちの一方の電極を容器体に導通させ、且つ他方の電極を集電板に導通させることが可能である。従って、容器体及び集電板を、正極用の外部接続端子および負極用の外部接続端子としてそれぞれ機能させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、この場合において、ケース本体と封口板との溶接接合時に加えた熱(溶接熱)の影響によって、樹脂材が可塑化してしまい、樹脂材が剥離するおそれがあった。この場合には、封止性が低下し易いうえ、電解液等の揮発による漏液等を引き起こしてしまう可能性がある。
特に上述した小型の電気化学セルの場合、溶接時の溶融池が凝固した溶接部や、溶接部の周囲の熱影響部(HAZ:Heat-Affected Zone)のみならず、熱影響部の近傍においても溶接熱の影響により樹脂材が可塑化し易い。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、確実な封止性を得ることができる電気化学セル、及び電気化学セルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る電気化学セルは、第1接合壁を有する第1容器と、前記第1接合壁に対して溶接接合された第2接合壁を有し、前記第1容器との間に収容空間を形成する第2容器と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、前記第1容器に対して絶縁性の樹脂材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板と、を備え、前記第2接合壁には、溶接痕が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気化学セルによれば、第1接合壁及び第2接合壁同士が溶接接合されることで第1容器と第2容器とが一体に組み合わされているので、電極体が収容されている収容空間内を適切に封止することができる。特に、第2接合壁に溶接痕が形成されていることから明らかなように、樹脂材を介して集電板が溶着された第1容器の第1接合壁側からではなく、第2接合壁側から加熱が行われることで第1容器と第2容器とが溶接接合されている。そのため、溶接時に加えられた熱(溶接熱)が樹脂材に伝わってしまうことを抑制することができる。
従って、樹脂材に関して、溶接熱の影響を受け難くすることができ、意図しない温度上昇によって樹脂材が溶融する等、可塑化してしまうことを防止することができる。そのため、樹脂材が剥離する等の不都合を防ぐことができ、収容空間内の確実な封止を行うことができる。これにより、例えば集電板を外部接続端子として機能させることができると共に、作動信頼性が高い高品質な電気化学セルとすることができる。
【0011】
(2)前記溶接痕は、前記第2接合壁のうち前記第1接合壁に溶接接合された接合面とは反対側に位置する対向面に形成されても良い。
【0012】
この場合には、第2接合壁における対向面に溶接痕(例えばレーザビームの照射によるレーザ溶接痕、ローラ電極の加圧・通電による溶接痕等)が形成されているので、第2接合壁側から加熱が行われることで第1容器と第2容器とが確実に溶接接合された外装体とすることができる。
【0013】
(3)前記第1接合壁及び前記第2接合壁は、前記第1接合壁と前記第2接合壁との間に形成された溶接金属層を介して溶接接合されても良い。
【0014】
この場合には、例えば金属メッキ膜等が溶融凝固することで形成された溶接金属層を介して第1接合壁及び第2接合壁が溶接接合されているので、第1容器と第2容器とをさらに強固に接合することができ、収容空間内の封止性を向上することができる。
【0015】
(4)前記溶接金属層は、前記第1容器を構成する母材金属、及び前記第2容器を構成する母材金属よりも融点が低くても良い。
【0016】
この場合には、溶接金属層が第1容器及び第2容器の母材金属の融点よりも融点が低いので、溶接時における溶接熱の熱量を抑えることができる。これにより、樹脂材が加熱され難くなるので、樹脂材が剥離する等の不都合を効果的に抑制することができる。
【0017】
(5)前記第1容器は、前記集電板が前記樹脂材を介して溶着された底壁部、及び周壁部を有する有底筒状に形成され、前記第2容器は、前記周壁部の上端開口縁に対して上方から重なるフランジ部を有し、前記周壁部に対する前記フランジ部の溶接接合によって前記第1容器の開口部を閉塞し、前記周壁部が前記第1接合壁とされ、前記フランジ部が前記第2接合壁とされ、前記溶接金属層は、前記周壁部の上端開口縁と前記フランジ部との間に形成されても良い。
【0018】
この場合には、溶接時、周壁部の上端開口縁に重なるフランジ部の上方から例えばレーザビーム等を照射する等して加熱を行うことで、周壁部とフランジ部との間に溶接金属層を形成することができる。これにより、溶接金属層を介して第1容器と第2容器とを強固に溶接接合することができる。特に、フランジ部側からの加熱によって溶接金属層を形成する際に、金属メッキ膜等が溶融した溶融池を、周壁部を利用して深く形成し易く、溶接接合強度を高めることができる。
【0019】
(6)前記溶接金属層は、前記フランジ部の外周面側に回り込むように形成され、前記フランジ部の外周面を覆っても良い。
【0020】
この場合には、溶接金属層を、周壁部とフランジ部との間だけでなく、フランジ部の外周面を覆うように形成しているので、第1容器と第2容器との溶接接合強度をさらに高めることができる。
【0021】
(7)前記第1容器は、前記集電板が前記樹脂材を介して溶着された頂壁部、及び第1周壁部を有する有頂筒状に形成され、前記第2容器は、底壁部、及び前記第1周壁部の外側に全周に亘って溶接接合された第2周壁部を有する有底筒状に形成され、前記第1周壁部が前記第1接合壁とされ、前記第2周壁部が前記第2接合壁とされ、前記第2周壁部の外周面に前記溶接痕が形成されても良い。
【0022】
この場合には、第1容器の第1周壁部と第2容器の第2周壁部とを二重筒状に組み合わせたうえで、第2周壁部の外側から加熱を行うことで、第2周壁部の外周面に溶接痕を形成しながら第1周壁部と第2周壁部とを全周に亘って溶接接合することができる。特に、第1周壁部と第2周壁部とを二重筒状に組み合わせた状態で溶接接合しているので、収容空間内の密閉性をさらに向上することができ、封止性を高めることができる。
さらに、樹脂材が溶着された頂壁部から離れた位置で溶接を行うことが可能であるので、樹脂材までの伝熱距離を稼ぐことができ、樹脂材に溶接熱が伝わり難くすることができる。それに加えて、第1周壁部と第2周壁部とを面接触させているので、溶接熱を分散させ易く、この点においても樹脂材に溶接熱が伝わり難くすることができる。従って、樹脂材が剥離する等の不都合を効果的に抑制することができる。
【0023】
(8)本発明に係る電気化学セルの製造方法は、第1接合壁を有する第1容器と、前記第1接合壁に対して溶接接合された第2接合壁を有し、前記第1容器との間に収容空間を形成する第2容器と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、前記第1容器に対して絶縁性の樹脂材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板と、を備えた電気化学セルの製造方法であって、前記収容空間内に前記電極体を収容した状態で、前記樹脂材を介して前記集電板が溶着された前記第1容器と前記第2容器とを組み合わせる工程と、前記第2接合壁側から加熱を行うことで、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いに溶接接合する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る電気化学セルの製造方法によれば、第1接合壁及び第2接合壁同士が溶接接合されることで第1容器と第2容器とが一体に組み合わされているので、電極体が収容されている収容空間内を適切に封止することができる。
特に、第1容器と第2容器とを溶接接合する際、樹脂材を介して集電板が溶着された第1容器の第1接合壁側からではなく、第2容器の第2接合壁側から加熱を行う。これにより、溶接時に加えられた熱(溶接熱)が樹脂材に伝わってしまうことを抑制することができる。従って、樹脂材に関して、溶接熱の影響を受け難くすることができ、意図しない温度上昇によって樹脂材が溶融する等、可塑化してしまうことを防止することができる。そのため、樹脂材が剥離する等の不都合を防ぐことができ、収容空間内の確実な封止を行うことができる。これにより、例えば集電板を外部接続端子として機能させることができると共に、作動信頼性が高い高品質な電気化学セルとすることができる。
【0025】
(9)前記第2接合壁には、前記加熱に起因する溶接痕が形成されても良い。
【0026】
この場合には、第2接合壁に、加熱に起因する溶接痕(例えばレーザビームの照射によるレーザ溶接痕、ローラ電極の加圧・通電による溶接痕等)が形成されているので、第2接合壁側から適切に加熱を行いながら、溶接時に加えられた熱(溶接熱)が樹脂材に伝わってしまうことを抑制することができる。
【0027】
(10)前記第2接合壁側からレーザ光を照射して、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いにレーザ溶接によって溶接接合しても良い。
【0028】
この場合には、特殊な溶接方法ではなく、レーザ溶接によって第1容器と第2容器とを溶接接合できるので、溶接作業を簡便且つ確実に行うことができる。
【0029】
(11)前記第2接合壁にローラ電極を押し付けながら通電し、前記第1接合壁と前記第2接合壁とを互いにシーム溶接によって溶接接合しても良い。
【0030】
この場合には、特殊な溶接方法ではなく、抵抗溶接の1つであるシーム溶接によって第1容器と第2容器とを溶接接合できるので、溶接作業を簡便且つ確実に行うことができる。
【0031】
(12)前記第1容器又は前記第2容器に予め圧力開放用の逃げ孔を形成する工程と、前記第1容器と前記第2容器との溶接接合後、前記逃げ孔を塞ぐ工程と、を備えても良い。
【0032】
この場合には、溶接時に外装体の内圧が上昇したとしても、逃げ孔を通じて内圧を開放できるので、意図しない内圧上昇を抑制することができ、高品質な電気化学セルを得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、確実な封止性を得ることができる電気化学セルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿った二次電池の縦断面図である。
【
図3】
図2に示す溶接金属層の周辺を拡大した断面図である。
【
図5】
図4に示すB-B線に沿った電極体の縦断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例を示す二次電池の斜視図である。
【
図8】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図9】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第3実施形態を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示すC-C線に沿った二次電池の縦断面図である。
【
図11】第3実施形態の変形例を示す二次電池の縦断面図である。
【
図13】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第4実施形態を示す縦断面図である。
【
図14】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第5実施形態を示す縦断面図である。
【
図15】
図14に示す二次電池の斜視図であって、レーザ溶接痕が周壁部の上端部側に全周に亘って形成されている二次電池の斜視図である。
【
図16】
図14に示す二次電池の斜視図であって、レーザ溶接痕が周壁部の中央部分に全周に亘って形成されている二次電池の斜視図である。
【
図17】
図14に示す二次電池の斜視図であって、レーザ溶接痕が周壁部の上端部側及び下端部側に全周に亘って形成されている二次電池の斜視図である。
【
図18】
図14に示す二次電池の変形例を示す縦断面図である。
【
図19】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第6実施形態を示す縦断面図である。
【
図20】
図19に示す電極体を支柱部に巻き付ける場合の一工程図であって、支柱部の外周面にセパレータを固定した状態を示す図である。
【
図21】
図20に示す状態から支柱部を回転させて、セパレータを先行して支柱部に巻き付けている状態を示す図である。
【
図22】本発明に係る電極体の変形例を示す斜視図である。
【
図23】
図22に示す一組の正極電極及び負極電極の組み合わせ状態を、負極電極を上向きにした状態で見た斜視図である。
【
図24】
図23に示す一組の正極電極及び負極電極の組み合わせ状態の説明するための分解図である。
【
図25】本発明に係る電極体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気化学セルの実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に二次電池という。)を例に挙げて説明する。
【0036】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の二次電池1は、いわゆるボタン(コイン)形の電池とされ、金属製の外装体2と、外装体2の内部に収容された発電要素3とを備えている。
【0037】
外装体2は、有底筒状に形成された金属製の容器体(本発明に係る第1容器)10と、容器体10の開口部を閉塞するように容器体10に溶接接合され、容器体10との間に収容空間を形成する金属製のリッド部材(本発明に係る第2容器)20と、を備えている。
発電要素3は、正極電極40及び負極電極50を有する電極体30を備えていると共に、図示しない電解液(電解質溶液)を含んでおり、外装体2の内部に形成された収容空間4内に収容されている。
【0038】
本実施形態では、外装体2の中心を通り上下方向に沿って延びる軸線を電池軸Oという。また、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸Oに交差する方向を径方向といい、電池軸O回りに周回する方向を周方向という。さらに、電池軸Oに沿って、容器体10の底壁部11からリッド部材20に向かう方向を上方といい、その反対を下方という。
【0039】
(外装体)
外装体2について詳細に説明する。
容器体10は、平面視円形状に形成された底壁部11と、底壁部11における外周縁部の全周に亘って連設され、底壁部11から上方に向かって延びた周壁部12と、を備えた有底円筒状に形成されている。
ただし、容器体10の形状は有底円筒状に限定されるものではなく、例えば平面視で外形が楕円状、四角形状、多角形状となるように形成しても構わない。
【0040】
底壁部11における中央部には、該底壁部11を上下方向に貫通する貫通孔13が電池軸Oと同軸に形成されている。貫通孔13の形状は、特に限定されるものではないが、例えば平面視円形状に形成されている。
【0041】
上述のように構成された容器体10は、金属製とされ、電極体30に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。容器体10の厚みとしては、例えば0.01mm~0.30mm程度とされ、薄肉の金属製容器とされている。但し、各図面では、図示を見易くするために容器体10の厚みを誇張して図示している。
【0042】
容器体10の具体的な金属材質としては、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させる、或いは負極用の外部接続端子として機能させるかによっても異なるが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼や、同種或いは異種の金属同士を圧着して形成したクラッド材(高機能性金属材料)を用いることができる。ただし、これらの場合に限定されるものではない。
ステンレス鋼としては、例えばSUS430やSUS444といったフェライト系ステンレス鋼やSUS329J4Lといったオーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼を挙げることができる。
【0043】
また例えば、本実施形態の二次電池1を時計の用途に用いる場合、容器体10の金属材料としては耐食性に加えて非磁性であることが好ましい。具体的には上述のアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のほか、ステンレス鋼としては、例えばSUS201、SUS202、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS321、SUS347といった各種のオーステナイト系ステンレス鋼を挙げることができる。
【0044】
クラッド材としては、例えばCu(内層)/Fe(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材や、Ni(内層)/Fe(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材や、Al(内層)/SUS(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材等が挙げられる。但し、クラッド材としては、3層に限定されるものではないし、その他の金属同士を多層に圧着することで形成してもかまわない。
【0045】
クラッド材としてCuを用いた場合には、熱伝導性を高めることができるので、溶接時における放熱性を向上することができる。従って、Cuをクラッド材の内層に採用することで、電極体30の保護に繋げることができるので、好ましい。
【0046】
さらにクラッド材の内面及び外面のいずれか一方、或いは内面及び外面の両方にメッキ処理を施して、金属メッキ膜を形成することが好ましい。容器体10の内面に金属メッキ膜を形成することで、化学的に安定させることができ、電解液等に対する耐性を向上させることができる。また、容器体10の外面に金属メッキ膜を形成することで、防錆機能等の機能を付加することができると共に、電気抵抗を低減させることができるので、外部端子との電気的な接続性を向上させることができる。
【0047】
具体的な金属メッキ膜としては、例えばNiメッキ膜、Ni等の合金メッキ膜等を採用することができ、特に共晶金属材料の合金メッキ膜を採用することが好ましい。共晶金属材料の合金メッキ膜を採用した場合には、例えば抵抗溶接を行うときに融点を下げることができ、溶接時の温度を下げることが可能である。
その他、Au-Niの合金メッキ膜や、Ni-Pの合金メッキ膜や、Ni-Bの合金メッキ膜等も好適に採用することができる。
【0048】
図1及び
図2に示すように、リッド部材20は、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合う平坦なプレート状に形成され、容器体10における周壁部12の上端開口端に対して全周に亘って上方から重なった状態で溶接接合されている。従って、リッド部材20の外周縁部は、周壁部12の上端開口端に対して上方から重なるフランジ部21として機能する。
【0049】
なお、リッド部材20の形状は、容器体10の形状に対応していれば良く、例えば平面視で外形が楕円状、四角形状、多角形状となるように形成しても構わない。リッド部材20の厚みとしては、容器体10と同様に例えば0.01mm~0.30mm程度とされ、薄肉とされている。ただし、
図2では、図示を見易くするためにリッド部材20の厚みを誇張して図示している。この点は、その他の図面においても同様である。
【0050】
このように構成されたリッド部材20は、金属製とされている。リッド部材20の具体的な金属材質としては、例えば容器体10と同種或いは別種の金属材質を採用することができる。リッド部材20の金属材質として、例えば容器体10と別種の金属材質を採用する場合には、容器体10と熱膨張係数が近似するものを採用することが好ましい。
さらにリッド部材20についても、容器体10と同様に、内面及び外面のいずれか一方、或いは内面及び外面の両方にメッキ処理を施して、金属メッキ膜を形成することが好ましい。金属メッキ膜としては、先に述べた金属メッキ膜を採用することができる。
【0051】
上述のように構成されたリッド部材20は、組立作業時、容器体10の周壁部12の上端開口縁に上方から重ね合わされた後、例えば上方から加圧されながら溶接される。これにより、先に述べたように、周壁部12とフランジ部21とは、全周に亘って溶接によって強固に接合されている。これにより、リッド部材20を利用して容器体10の開口部を塞ぐことができ、容器体10との間に発電要素3を収容する収容空間4(密閉空間)を形成している。
従って、リッド部材20のフランジ部21は、容器体10における周壁部(本発明に係る第1接合壁)12に対して溶接接合される接合壁(本発明に係る第2接合壁)として機能する。
【0052】
容器体10とリッド部材20との溶接方法としては、特に限定されるものではないが、例えばレーザ溶接、超音波接合、シーム溶接等の抵抗溶接や、摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)等を採用することができる。
これらの溶接の際、図示しない溶接器側を固定した状態で溶接対象ワークである外装体2側を動かしながら溶接を行う、いわゆるワークムーブ方式で行っても構わないし、溶接対象ワークである外装体2側を固定し、溶接器側を動かしながら溶接を行う、いわゆるヘッドムーブ方式で行っても構わない。レーザ溶接を行う場合には、さらにガルバノスキャニング式レーザ溶接器等を採用することが可能である。
【0053】
なお、本実施形態の場合には、容器体10の周壁部12の上端開口縁にリッド部材20を上方から重ねた状態で溶接接合を行うので、ガルバノスキャニング方式を利用して、さらにヘッドムーブ方式を併用したレーザ溶接を行うことが好ましい。
【0054】
具体的に、本実施形態の外装体2は、
図3に示すように、容器体10の周壁部12と、リッド部材20のフランジ部21とが、周壁部12の上端開口縁とフランジ部21との間に形成された溶接金属層(いわゆる境界層)5を介して溶接接合されている。
そのため、本実施形態の容器体10において、少なくとも周壁部12の上端開口縁上に第1金属膜6が形成され、リッド部材20において少なくともフランジ部21の下面21aに第2金属膜7が形成されている。そして、溶接時に加えられた熱(溶接熱)によって、第1金属膜6及び第2金属膜7同士が溶融し合った後に凝固することで、溶接金属層5が形成される。
【0055】
なお、
図3では、周壁部12の上端開口縁だけに第1金属膜6を形成した状態を図示しているが、第1金属膜6は容器体10の内面に亘って形成されていても構わないし、容器体10の全面に亘って形成されても構わない。同様に、
図3では、フランジ部21の下面21aだけに第2金属膜7を形成した状態を図示しているが、第2金属膜7はリッド部材20の下面(フランジ部21の下面21aを含む)全体に亘って形成されていても構わないし、リッド部材20の全面に亘って形成されていても構わない。
なお、第1金属膜6及び第2金属膜7としては、先に述べた各種の金属メッキ膜を採用することができる。
【0056】
特に本実施形態では、容器体10の周壁部12とリッド部材20のフランジ部21とを溶接接合する際に、フランジ部21の上方からレーザビームを照射することで周壁部12とフランジ部21との界面を加熱させ、溶接を行っている。この点は、後に説明する。
そのため、
図1に示すように、フランジ部21のうち周壁部12に溶接接合された下面(本発明に係る接合面)21aとは反対側に位置する上面(本発明に係る対向面)21bには、レーザ溶接痕(本発明に係る溶接痕)9が形成されている。レーザ溶接痕9は、例えばフランジ部21の全周に亘って連続して形成されている。
【0057】
ここでレーザ溶接痕9は、溶接時に金属が溶融して生じる溶融池が凝固することで形成された溶接部と、溶接部の周囲に形成される熱影響部(HAZ:Heat-Affected Zone)とを含むものである。熱影響部とは、溶接時において、溶融までには至らなかったものの、溶接熱の影響や酸化等による変質によって、元の組織とは異なる組織(組成)を有する部分(領域)である。
なお本実施形態では、上述したように、容器体10に形成された第1金属膜6と、リッド部材20に形成された第2金属膜7とを溶融させることにより、容器体10とリッド部材20とを溶接接合することについて、
図3を参照して説明している。ただし、第1金属膜6及び第2金属膜7を用いない場合であっても、フランジ部21の上方からレーザビームを照射することで、容器体10の周壁部12の上端開口縁とリッド部材20のフランジ部21の下面21aとを局所的に加熱して溶融させることが可能である。そして、両者(周壁部12の上端開口縁及びフランジ部21の下面21a)が融け合った溶融池を固化させることで図示しない溶融金属部を形成することができ、これによって容器体10とリッド部材20とを溶接接合することができる。この場合であっても、レーザ溶接痕9は、例えばフランジ部21の上面21bに、全周に亘って連続して形成される。
【0058】
(集電板)
上述のように構成された容器体10の底壁部11には、
図2に示すように、シーラントフィルム(本発明に係る絶縁性の樹脂材)60を介して熱溶着(溶着)され、少なくとも一部分が外部(下方)に露出した集電板61が設けられている。
具体的には、シーラントフィルム60及び集電板61は、底壁部11のうち収容空間4とは電池軸O方向の反対を向いた下面側に配置されている。そして、集電板61は、シーラントフィルム60を介して底壁部11の下面に熱溶着され、全面に亘って下方に露出している。
【0059】
シーラントフィルム60は、底壁部11に形成された貫通孔13を囲む環状に形成され、電池軸Oと同軸に配置された状態で底壁部11の下面に重なるように配置されている。図示の例では、シーラントフィルム60は、貫通孔13の直径よりも小さい内径で形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、シーラントフィルム60の内径は、貫通孔13の直径と同等、或いは大きく形成されていても構わない。
【0060】
さらに、シーラントフィルム60は、内周縁部から上方に向けて折り返されるように形成され、底壁部11の貫通孔13の内周面を全周に亘って径方向の内側から塞ぐ保護部60aを備えている。これにより、貫通孔13の内側から容器体10への意図しない導通(ショート)を防止することができ、好ましい。
【0061】
なお、シーラントフィルム60は、例えばポレオレフィン製の熱可塑性樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチックから形成されている。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等を挙げることができる。
さらにシーラントフィルム60としては、上述した各ポリオレフィンのコポリマーやブレンドポリマー、或いは不織布で強化されたポリプロピレン等の複合体を用いても良い。さらに、寸法、形状、或いは厚みの異なる複数のシーラントフィルム60を重ねて用いてもよい。
【0062】
さらにシーラントフィルム60としては、フッ素系樹脂を採用することが好ましい。具体的なフッ素系樹脂としては、例えばFEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)等が挙げられる。
【0063】
一般的にフッ素系樹脂は、高融点のため耐熱性が高い特性を有する。そのため、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を採用した場合には、容器体(第1容器)10とリッド部材(第2容器)20との溶接接合(溶封封止)時に、シーラントフィルム60に対する溶接熱の影響をさらに効果的に抑制することができる。
さらにフッ素系樹脂は、耐薬品性が高く、且つ高密度の樹脂とされている。従って、フッ素系樹脂製のシーラントフィルム60とした場合であっても、シーラントフィルム60として十分な封止性を得ることができる。
さらには、フッ素系樹脂は線膨張係数が小さい特性を有する。従って、フッ素系樹脂製のシーラントフィルム60とした場合には、容器体(第1容器)10とリッド部材(第2容器)20との溶接接合時に熱膨張し難く、この点においても封止性に優れている。
【0064】
なお、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60とした場合、融着時の加工性に関しては、融点が例えば260℃~270℃の温度範囲内であることが好ましい傾向にある。保存時の劣化特性としては、吸水率が小さいほど好ましい傾向にある。さらに温度変化に対する耐性については、線膨張係数が小さいほど好ましい傾向にある。
従って、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を採用する場合には、融点、吸水率、線膨張係数等の各物性を鑑みて、具体的な材料(FEP、ETFE、PFA)を適宜選択することが良い。
【0065】
集電板61は、金属製のプレートであって、電極体30に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。図示の例では、集電板61は、シーラントフィルム60の外径よりも小さい直径で平面視円形状に形成されており、電池軸Oと同軸に配置された状態でシーラントフィルム60の下面に重なるように配置されている。これにより、集電板61は貫通孔13を下方から塞いでいる。
【0066】
集電板61の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばニッケル等を好適に用いることができる。さらに集電板61の外部接続可能な面には、例えば金又はニッケル等といった良電性材料からなる金属、或いはこれらの金属を含む合金メッキ膜が形成されていても良い。
【0067】
上述したシーラントフィルム60は、底壁部11の下面及び集電板61の上面に対してそれぞれ熱溶着されている。具体的には、シーラントフィルム60は、集電板61の上面に熱溶着によって一体に組み合わされた合成樹脂製の第1シール材と、底壁部11の下面に熱溶着によって一体に組み合わされた合成樹脂製の第2シール材と、を互いに熱溶着することで形成されている。
これにより、集電板61は、シーラントフィルム60を介して底壁部11の下面に熱溶着され、容器体10との間に絶縁性を維持しながら貫通孔13を下方から気密に封止している。
【0068】
なお、上述した第1シール材及び第2シール材を利用する場合に限定されるものではなく、例えばシーラントフィルム60を底壁部11及び集電板61に対して直接的に熱溶着しても構わない。
特に、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を利用して、集電板61を底壁部11に熱溶着する場合には、フッ素系樹脂が電磁波を吸収し難い傾向があるため、例えばシーラントフィルム60側を直接加熱(誘電加熱)するのではなく、集電板61側を誘導加熱することが好ましい。この際、電子の局所放電や反射等を避けるために、集電板61の表面を平滑面とするのではなく、表面粗さを大きくすることが好ましい。この場合、集電板61の表面のうち、少なくともシーラントフィルム60が熱溶着される部分の表面粗さを大きくしても構わないが、好ましくは集電板61の全面の表面粗さを大きくすることが良い。
さらに、電子の局所放電や反射を避ける方法して、先に述べたように、集電板61を平滑面やエッジ等がない形状とすることが良く、さらには上述の表面粗さを大きくする以外として、例えば以下の方法も有効である。
すなわち、プレス加工、鍛造を用いたC面取り加工や、フィレット加工等により集電板61の角部を落とすことも有効である。
【0069】
なお、シーラントフィルム60は、集電板61と容器体10とを絶縁している。そのため、本実施形態の二次電池1は、集電板61と容器体10とがそれぞれ、図示しない電子機器の接圧端子やホルダ等と接触することにより、電子機器の正極側端子及び負極側端子のうちのいずれかの端子に電気的に接続することができる。
また、集電板61及び容器体10のうちの少なくとも一方に金属製の端子をさらに溶接した後、半田付けや溶接等により電子機器に電気的に接続しても良い。例えば
図1及び
図2示す二次電池1のように、上下方向の最外部に集電板61と容器体10とが配置されている構造では、集電板61及び容器体10にそれぞれ図示しない平板状(断面視直線状)の端子をレーザ溶接等により溶接することが可能となる。これにより、端子を溶接した場合であっても、上下方向における電池の厚みの増加を抑えることができる。なお、このような端子の材質としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼を用いることができる。
【0070】
(発電要素)
図2に示す発電要素3は、電極体30及び図示しない電解液を含み、外装体2内部の収容空間4内に密封状態で収容されている。
電解液としては、例えば支持塩を非プロトン性の非水溶媒に溶解させた液体を好適に用いることが可能である。支持塩としては、例えばフルオロリン酸リチウム(LiPF6)等を用いることができる。溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)と共に低沸点溶媒を用いることができる。
【0071】
ただし、発電要素3は、電解液に代えて、例えば固体電解質、ポリマー電解質、ゲル電解質等の電解質を利用した電極体30を採用しても構わない。ポリマー電解質としては例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)やポリプロピレンオキサイド(PPO)やそれら含むブレンドポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン等を挙げることができる。また、電解液にポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン、PVdF-HFP)を含有したゲル電解質を用いても良い。
【0072】
(電極体)
図4及び
図5に示すように、電極体30は、正極電極40及び負極電極50が図示しないセパレータを挟んで電池軸O方向に交互に積層されるように例えば扁平に捲回された、いわゆる積層型電極とされている。なお、
図2では電極体30の図示を簡略化している。
電極体30は、平面視で外形が円形状となるように形成されている。ただし、電極体30の外形形状は、この場合に限定されるものではなく、その他の形状、例えば楕円状、長円形状或いは菱形状等であっても良く、適宜変更して構わない。
【0073】
本実施形態の正極電極40及び負極電極50は、セパレータを挟んで捲回されることで互い違いに積層されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば正極電極40及び負極電極50が互いに交差する方向からそれぞれつづら折り形状に折り畳まれることで、互い違いに積層されても構わない。さらには、セパレータの両面に正極電極40と負極電極50とを具備する、いわゆるペレット型の電極体としても構わない。
【0074】
電極体30の構造について簡単に説明する。
正極電極40は、捲回前における展開した状態において帯状に形成された正極集電体(正極集電箔)41と、正極集電体41の両面に形成された図示しない正極活物質層と、を備えている。
【0075】
正極集電体41は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属材料で厚みの薄いシート状(金属箔)に形成され、複数の正極本体42及び複数の正極接続片43を備えている。正極集電体41の厚みとしては、例えば数μm~10数μm程度である。なお、正極集電体41は、金属箔のほか、例えばエッチング箔、エンボス加工を施した箔(凹凸加工)、パンチングメタル(貫通孔加工)、エキスパンドメタル、焼結金属体、若しくは発泡金属体等を用いることができる。
正極本体42は、例えば円板状に形成され、捲回前における展開した状態において一列に並ぶように間隔をあけて配置されている。正極接続片43は、捲回前における展開した状態において隣接する正極本体42の間に配置され、隣接する正極本体42同士を接続している。複数の正極本体42のうち、捲回状態において最外周に配置される正極本体42には、正極端子タブ44が形成されている。
【0076】
正極活物質層は、正極端子タブ44を除いた正極集電体41の両面に形成されている。正極活物質層の形成材料として、正極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して正極用スラリーを作製することができる。なお、正極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「正極用スラリー」ということができる。この正極用スラリーを正極集電体41に塗布し、乾燥させることにより正極活物質層を形成できる。
正極活物質としては、例えばニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム(NMC)、ニッケル-コバルト-アルミ酸リチウム(NCA)、チタン酸リチウム(LTO)、マンガン酸リチウム(LMO)等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が挙げられる。
【0077】
負極電極50は、捲回前における展開した状態において帯状に形成された負極集電体(負極集電箔)51と、負極集電体51の両面に形成された図示しない負極活物質層と、を備えている。
【0078】
負極集電体51は、例えば銅、銅合金、ニッケル及びステンレス等の金属材料で厚みの薄いシート状(金属箔)に形成され、複数の負極本体52及び複数の負極接続片53を備えている。負極集電体51の厚みとしては、例えば数μm~10数μm程度である。なお、負極集電体51は、金属箔のほか、例えばエッチング箔、エンボス加工を施した箔(凹凸加工)、パンチングメタル(貫通孔加工)、エキスパンドメタル、焼結金属体、若しくは発泡金属体等を用いることができる。
負極本体52は、正極本体42と同様に例えば円板状に形成され、捲回前における展開した状態において間隔をあけて配置されている。負極接続片53は、捲回前における展開した状態において隣接する負極本体52の間に配置され、隣接する負極本体52同士を接続している。複数の負極本体52のうち、捲回状態において最外周に配置される負極本体52には、負極端子タブ54が形成されている。
【0079】
なお、負極電極50は、外形形状が先に述べた正極電極40の外形形状に対して同等の相似形状とされている。ただし、正極電極40の外形サイズは、負極電極50の外形サイズよりも僅かに小さく(一回り小さく)形成されている。具体的には、正極電極40の外径サイズは、正極電極40の厚みと同等以上、且つ負極電極50の外径サイズよりも小さいことが好ましい。例えば、正極電極40の外形サイズは、負極電極50の外形サイズよりも20μm以上小さいことが好ましく、50μm以上小さいことがより好ましい。
【0080】
負極活物質層は、負極端子タブ54を除いた負極集電体51の両面に形成されている。負極活物質層の形成材料として、負極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン等)、増粘剤(例えば、セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、溶剤(例えば、純水等の任意の溶媒)を混合して負極用スラリーを作製することができる。なお、負極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「負極用スラリー」ということができる。この負極用スラリーを負極集電体51に塗布し、乾燥させることにより負極活物質層を形成することができる。
負極活物質としては、例えばシリコン、シリコン酸化物、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム(LTO)、LiAl等の単体又は混合物等が挙げられる。
【0081】
上述のように構成された正極電極40及び負極電極50は、先に述べたようにセパレータを挟んで捲回されることで、互い違いに積層されている。そして、捲回によって得られた電極体30は、
図4及び
図5に示すように、正極端子タブ44が形成された正極本体42が最下段に位置し、負極端子タブ54が形成された負極本体52が最上段に位置する。従って、電極体30は、正極端子タブ44が下方を向き、負極端子タブ54が上方を向くように配置された状態で外装体2内に収容される。
【0082】
なお、セパレータは、例えばポリオレフィン等の樹脂製のマイクロポーラスフィルムや、ガラス製若しくは樹脂製の不織布、セルロース繊維等の繊維の積層体等により形成され、図示しないイオン透過孔を通じてリチウムイオンを通過させることが可能とされている。さらにセパレータとして、例えば空孔内に電解液を保持できる多孔質体や、リチウムイオン導電性を有する樹脂層等を採用できる。
【0083】
さらに電極体30は、正極電極40及び負極電極50のうちの一方の電極が集電板61に導通(電気的接続)し、他方の電極がリッド部材20(或いは容器体10)に導通(電気的接続)している。なお、電気的接続とは、例えば炭素系材料を介した接触、金属同士の溶接、或いは金属同士の接触等が挙げられる。
【0084】
本実施形態では、負極電極50をリッド部材20に導通させ、正極電極40を集電板61に導通させている。これにより、集電板61を正極用の外部接続端子として機能させることができ、リッド部材20を負極用の外部接続端子として機能させることができる。
ただし、この場合に限定されるものではなく、負極電極50を集電板61に導通させることで、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させ、正極電極40をリッド部材20に導通させることで、リッド部材20を正極用の外部接続端子として機能させても構わない。
【0085】
負極電極50をリッド部材20に導通させる場合には、例えば負極端子タブ54を直接的にリッド部材20に対して電気的接続させても構わないし、図示しないリード線に相当する導体を介して負極端子タブ54とリッド部材20とを電気的接続させても構わない。
正極電極40を集電板61に導通させる場合には、例えば正極端子タブ44を、容器体10の貫通孔13を通じて、直接的に集電板61に対して電気的接続させても構わないし、正極端子タブ44と集電板61とを繋ぐ図示しないリード線に相当する導体を貫通孔13の内側に配置させることで、正極端子タブ44と集電板61とを電気的接続させても構わない。
【0086】
(二次電池の作用)
上述のように構成された二次電池1によれば、
図1及び
図2に示すように、負極用の外部接続端子として機能するリッド部材20が外部に露出し、正極用の外部接続端子として機能する集電板61が外部に露出している。従って、これらリッド部材20及び集電板61を通じて外部と電気的接続することができ、二次電池1を使用することが可能となる。
【0087】
特に、本実施形態の二次電池1によれば、
図3に示すように、周壁部12及びフランジ部21同士が溶接接合されていることで容器体10とリッド部材20とが一体に組み合わされているので、電極体30が収容されている収容空間4内を適切に封止することができる。
しかも、フランジ部21の上面21bにレーザ溶接痕9が形成されている(
図1参照)ことから明らかなように、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着された容器体10側からではなく、フランジ部21側から加熱が行われることで容器体10とリッド部材20とが溶接接合されている。そのため、溶接時に加えられた熱(溶接熱)がシーラントフィルム60に伝わってしまうことを抑制することができる。
【0088】
従って、シーラントフィルム60に関して、溶接熱の影響を受け難くすることができ、意図しない温度上昇によってシーラントフィルム60が溶融する等、可塑化してしまうことを防止することができる。そのため、シーラントフィルム60が剥離する等の不都合を防ぐことができ、収容空間4内の確実な封止を行うことができる。
これにより、集電板61を正極用の外部接続端子として機能させることができると共に、作動信頼性が高い高品質な二次電池1とすることができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の二次電池1によれば、確実な封止性を得ることができる。特に、
図3に示すように、容器体10の周壁部12とリッド部材20のフランジ部21とを溶接金属層5を介して溶接接合しているので、容器体10とリッド部材20とを強固に接合することができ、収容空間4内の封止性を向上することができる。
さらに、
図2に示すように、集電板61を底壁部11の下面側に配置しているので、集電板61を全面に亘って大きく露出させることができる。従って、集電板61を正極用の外部接続端子として有効に利用し易く、使い易く、実装性に優れた二次電池1とすることができる。
【0090】
(二次電池の製造方法)
次に、第1実施形態の二次電池1の製造方法の一例について以下に簡単に説明する。
なお、上記第1実施形態では、集電板61と底壁部11とをシーラントフィルム60を介して熱溶着した場合を説明したが、シーラントフィルム60は例えば単層の合成樹脂層であっても構わないし、多層の合成樹脂層が接合されることで形成されていても構わない。さらには、セラミックやガラス等の無機材料からなるシール材であっても構わない。
【0091】
以下に説明する第1製造方法及び第2製造方法では、先に述べたように合成樹脂製の第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着することで、シーラントフィルム60としている場合を例にしている。
【0092】
<第1製造方法>
はじめに、集電板61の上面に第1シール材を重ね合わせ、両者を熱溶着によって一体に組み合わせる工程を行う。これにより、集電板61と第1シール材とが一体に組み合わされた集電板アッセンブリを得ることができる。
本工程と同時、或いは前後して、容器体10の底壁部11の下面に第2シール材を重ね合わせ、両者を熱溶着によって一体に組み合わせる工程を行う。これにより、容器体10と第2シール材とが一体に組み合わされた容器体アッセンブリを得ることができる。
【0093】
ここで、上述の2工程を行う場合、熱溶着の方法としてヒーターによる加熱のほか、レーザビームの照射による加熱、高周波を利用した誘導加熱といった手法を用いても良い。これらの手法を用いることで、ヒーターを用いて各部材を加熱する場合に比べて、より短時間で、且つ局所的、選択的に加熱を行うことができ、樹脂製の第1シール材及び第2シール材への熱の影響を抑制しつつ、効率的に熱溶着を行うことができる。
【0094】
レーザビームの照射の場合、例えば、集電板61に第1シール材を配置した後、ファイバーレーザやYAGレーザ等のレーザ照射機を用いて、第1シール材の上方からレーザビームを照射する。このとき、レーザビームは第1シール材を透過して集電板61に吸収されることで、集電板61が局所的に加熱される。これにより、加熱によって生じた集電板61の熱により第1シール材が局所的に溶融し、集電板61と密着する。このようにして集電板61の上面に第1シール材を密着性よく重ね合わせた状態で接合することができる。
【0095】
なお、レーザビームの照射径は、数十μm程度であり、これを連続的或いはパルスとして線形に照射することができる。このとき、集電板61と第1シール材とが重なりあう円環状の領域において、レーザビームを円周状に照射することで、集電板61と第1シール材とをリング状に熱溶着することができる。そして、このような円周状の溶着箇所を、同心円状に複数形成することで、溶着面積が小さくても充分に溶着強度を得ることができる。これにより、第1シール材への熱の影響を抑制することができる。
【0096】
また、誘導加熱を行う場合には、例えば、集電板61に第1シール材を配置した後、利用する電磁波を上方から照射する。このとき、レーザビームの照射と同様に、集電板61が選択的に加熱されることで発熱し、さらに第1シール材のうち集電板61と接触する表面部分のみが局所的に溶融して集電板61と密着する。また誘導加熱の条件によっては、集電板61の発熱のみならず、第1シール材が電磁波の照射により誘電加熱されることで溶融し、集電板61と密着する場合もある。このようにして集電板61の上面に第1シール材を密着性よく重ね合わせた状態で接合することができる。
【0097】
なお、誘導加熱には、例えば超長波(VLF)~センチメートル波(SHF)の周波数帯の電磁波を利用することができる。具体的には、例えば300MHz~30GHzの周波数帯のいわゆるマイクロ波を用いることができる。特に、周波数が2.45GHz帯のマグネトロンを用いた発振器を用いることで、照射装置を安価に構成することができる。
さらに、コイル式の装置を用いて、10~500kHzの周波数帯、特に電磁誘導加熱式調理器に用いられる20~100kHzの周波数帯の電磁波を照射することも好適である。
【0098】
集電板61と第1シール材との熱溶着と同様に、上述した手法により、容器体10と第2シール材についても熱溶着することができる。
なお、予め、集電板61や容器体10の金属表面、第1シール材や第2シール材の樹脂表面にそれぞれ表面処理を施すことで、集電板61と第1シール材との密着性、及び容器体10と第2シール材との密着性をさらに向上させることができる。具体的には例えば、電子線照射等を用いて金属表面の酸化被膜を除去する等して、清浄な面とすることができる。さらに電子線照射やオゾン酸化といった手法を用いて、樹脂表面を改質し性状を整えることができる。
さらに、表面処理を施したこれらの金属表面、或いは樹脂表面に予めプライマーを塗布した後、上述の2工程の熱溶着を行うことで、密着性をさらに向上させることができる。
【0099】
上述の2工程が終了した後、第1シール材と第2シール材とが重なり合うように、集電板アッセンブリと容器体10アッセンブリとを組み合わせた後、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着する工程を行う。これにより、第1シール材及び第2シール材が熱溶着によって一体化したシーラントフィルム60を介して、集電板61と容器体10とを一体的に組み合わせることができる。
【0100】
上述した工程と同時、或いは前後して、電極体30を形成する工程を行うと共に、容器体10内に電極体30をセットすると共に電解液を注液する工程を行う。次いで、容器体10に対してリッド部材20を重ねるように組み合わせる工程を行う。これにより、容器体10の周壁部12の上端開口縁に対してフランジ部21を上方から重ね合わせることができる。
【0101】
最後に、フランジ部21の上方から例えばレーザビームを照射して、容器体10における周壁部12とリッド部材20のフランジ部21とを全周に亘って溶接する工程を行う。
リッド部材20のフランジ部21に対して上方からレーザビームを照射することで、リッド部材20のフランジ部21及び容器体10の周壁部12の上端開口縁を局所的に加熱することができ、
図3に示すように第1金属膜6及び第2金属膜7を互いに溶融させることができる。そして、両者(第1金属膜6及び第2金属膜7)が融け合った後に固化させることで、溶接金属層5を形成することができる。その結果、容器体10の周壁部12とリッド部材20のフランジ部21とを溶接金属層5を介して全周に亘って溶接接合することができる。
【0102】
その結果、
図1及び
図2に示す二次電池1を得ることができる。この際、フランジ部21の上面21bには、フランジ部21の上方からレーザビームを照射したことによる加熱の影響によってレーザ溶接痕9が形成される。従って、レーザ溶接痕9の存在によって、フランジ部21の上方からレーザビームの照射による加熱が行われたことを把握することができる。
【0103】
上述のように、フランジ部21の上方からレーザビームの照射によって加熱を行っているので、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着された容器体10側を加熱する場合とは異なり、先に述べたように溶接熱がシーラントフィルム60に伝わってしまうことを抑制することができる。従って、溶接熱の影響を受け難くすることができ、シーラントフィルム60が溶融する等、可塑化してしまうことを防止することができる。これにより、シーラントフィルム60が剥離する等の不都合を防ぐことができ、収容空間4内の確実な封止を行うことができる。
【0104】
なお、レーザビームのビーム径を絞る等して照射強度を高めることで、溶接接合強度を高めることができる。従って、強固な溶接を行うという観点によれば、リッド部材20の板厚を厚くすることが好ましい。
なお、レーザビームを照射する際、リッド部材20のフランジ部21に対して上方からレーザビームが照射されれば良く、例えばリッド部材20のフランジ部21の上方から真下に向けてレーザビームを照射しても構わないし、リッド部材20の上方で且つ電池軸O側から斜め下方に向けてレーザビームを照射しても構わないし、リッド部材20の上方で且つ容器体10の外側から斜め下方に向けてレーザビームを照射しても構わない。
【0105】
また、パルスレーザを用いたレーザビームの照射の場合、照射する最初のパルスの出力が安定しない場合がある。そのため、全周に亘ってレーザビームを照射する際には、最初に照射したパルスと、終わりに照射したパルスとがオーバーラップするように照射することが好ましい。なお、この場合において、パルス同士が完全にオーバーラップしてしまうと、過剰に溶接される懸念がある。そのため、例えば径方向におけるパルスの重なりが僅かとなるように、パルスをずらして照射することが好ましい。これにより、過剰な溶接を回避することができる。
【0106】
さらに、上述した溶接作業を行う際に、例えば上方から加圧しながらレーザ溶接を行うことが可能である。これにより、容器体10とリッド部材20とをさらに強固に溶接接合することができ、収容空間4を高い気密性で封止することが可能である。
【0107】
<第2製造方法>
次に、第1製造方法とは異なる工程順番で二次電池1を製造する第2製造方法について説明する。本製造方法では、底壁部11に形成された貫通孔13を利用して、電解液を最後に注液する方法である。
【0108】
本製造方法では、第1製造方法と同様に、集電板61と第1シール材とを一体に組み合わせた集電板アッセンブリ、及び容器体10と第2シール材とを一体に組み合わせた容器体アッセンブリを形成する工程を行う。
【0109】
上述した工程と同時、或いは前後して、電極体30を形成する工程を行うと共に、容器体10内に電極体30をセットする工程を行う。なお、この段階では、まだ電解液を注液しない。
次いで、容器体10に対してリッド部材20を重ねるように組み合わせる工程を行うと共に、フランジ部21の上方から例えばレーザビームを照射して、容器体10における周壁部12とリッド部材20のフランジ部21とを全周に亘って溶接する工程を行う。
【0110】
これにより、第1製造方法と同様に、容器体10の周壁部12とリッド部材20のフランジ部21との間に溶接金属層5を形成することができ、周壁部12とフランジ部21とを溶接金属層5を介して全周に亘って溶接接合することができる。
【0111】
そして上記溶接作業を行った後、容器体10の底壁部11が上方を向くように外装体2を上下反転させた後、底壁部11に形成された貫通孔13を通じて、容器体10の内部に電解液を注液する工程を行う。この際、例えば真空中で電解液を注液することも可能である。
最後に、第1シール材と第2シール材とが重なり合うように、容器体アッセンブリに対して集電板アッセンブリを組み合わせた後、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着する工程を行う。これにより、第1シール材及び第2シール材が熱溶着によって一体化したシーラントフィルム60を介して、集電板61と容器体10とを一体的に組み合わせることができると共に、貫通孔13を塞ぐことができる。
【0112】
その結果、
図1及び
図2に示す二次電池1を製造することができる。
特に、本製造方法によれば、容器体10とリッド部材20との溶接接合後に、電解液を注液するので、電解液が溶接時の影響を受けることがない。従って、溶接作業を行い易くなるうえ、電解液の品質、特性等を維持し易い。
さらに、本製造方法の場合であっても、容器体10の底壁部11に先に熱溶着した第2シール材に関し、容器体10とリッド部材20との溶接接合時の溶接熱の影響を受け難くすることができる。従って、第1シール材との熱溶着前の段階で、第2シール材が例えば可塑化する等の不都合を生じさせ難い。従って、本製造方法の場合であっても、収容空間4を高い気密性で封止した二次電池1を得ることができる。
【0113】
また、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着する代わりに、例えば超音波溶着することもできる。この場合には、溶着により生じる熱量を、熱溶着の場合に比べてさらに低減することができる。従って、電解液の品質、特性等をさらに維持することができ好ましい。
【0114】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態において、容器体10の周壁部12とリッド部材20のフランジ部21との間に形成される溶接金属層5を、容器体10を構成する母材金属(例えばステンレス鋼)、及びリッド部材20を構成する母材金属(例えばステンレス鋼)よりも融点が低くなるようにすることが好ましい。
この際、第1金属膜6の組成比及び膜厚(メッキ厚)、及び第2金属膜7の組成比及び膜厚(メッキ厚)等によって、生成される溶接金属層5の組成比、融点等を調整することが可能である。例えば溶接金属層5としては、Ni(ニッケル)を主成分とし、P(リン)、B(ホウ素)、Au(銅)から選択される少なくとも1つの金属を含む組成比からなる金属層が挙げられる。例えば、Niを85~99重量%、Pを1~15重量%含む溶接金属層5や、Niを80~99重量%、Pを0~10重量%、Auを1~20重量%含む溶接金属層5としても構わない。
なお、溶接金属層5がBを含む場合には、融点が高くなる傾向にあるため、容器体10及びリッド部材20を構成する母材金属の融点を考慮してBの含有率を決定すれば良い。
【0115】
さらに上記第1実施形態では、レーザ溶接を行う場合を例に挙げて説明したが、レーザ溶接に限定されるものではなく、例えば超音波接合、シーム溶接等の抵抗溶接や、摩擦撹拌接合等を採用することができる。これらの場合であっても、シーラントフィルム60を介して集電板61が熱溶着された容器体10側からではなく、フランジ部21側から加熱を行うことで、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0116】
特にシーム溶接を行う場合には、
図6に示すように、フランジ部21の上面21bと外周面との角部P1に対してローラ電極65を押し当てながら通電することで、加圧しながら加熱することができるので、周壁部12とフランジ部21との間に形成した溶接金属層5を介して容器体10とリッド部材20とを強固に溶接接合することができる。
【0117】
従って、シーム溶接であっても、本発明に有効である。しかも、ローラ電極65を利用したシーム溶接を採用した場合には、
図6に示すように、リッド部材20のフランジ部21における上面21bと外周面との角部P1に、ローラ電極65を押し当てながら加熱することに起因して発生する断面テーパ状の押当面(本発明に係る溶接痕)66が形成される。この押当面66は、フランジ部21の全周に亘って連続して形成される。
従って、リッド部材20のフランジ部21に形成された押当面66の有無によって、フランジ部21側から加熱が行われたか否かを容易に判別することが可能となる。
【0118】
さらにシーム溶接を行う場合において、
図6に示すように、フランジ部21の外周面が容器体10の周壁部12の外周面よりも径方向の内側にシフトするようにリッド部材20を構成しても構わない。
具体的には、二次電池1の縦断面視において、電池軸Oに対する第1仮想線L1の傾斜角度が、電池軸Oに対する第2仮想線L2の傾斜角度よりも小さい傾斜角度となるようにリッド部材20を形成している。なお、第1仮想線L1は、周壁部12における上端開口縁と外周面との角部P2と、押当面66の下端部とを繋ぐ仮想線である。第2仮想線L2は、押当面66の面上に沿った仮想線である。
【0119】
このようにリッド部材20を構成することで、溶接時に第1金属膜6及び第2金属膜7同士が溶融した溶融金属部の一部を、表面張力によってフランジ部21の外周面側に回り込ませることができる。これにより、溶接金属層5を、周壁部12とフランジ部21との間にだけなく、フランジ部21の外周面側に回り込むように形成することができ、フランジ部21の外周面を覆うことができる。そのため、容器体10及びリッド部材20との溶接接合強度をさらに高めることができる。
【0120】
なお、フランジ部21の外周面を覆うように溶接金属層5を形成する場合には、必ずしも押当面66が必要ではなく、例えばレーザビームの照射により第1金属膜6及び第2金属膜7を加熱する場合であっても同様に形成することが可能である。ただし、押当面66が形成されるシーム溶接の場合には、フランジ部21の外周面側への溶接金属層5の回り込み量を制御し易い。
【0121】
また例えば、溶接金属層5が容器体10を構成する母材金属、及びリッド部材20を構成する母材金属よりも融点が低くなるように構成した場合には、溶接痕(例えばレーザ溶接痕9、ローラ電極の加圧・通電による押当面66等)の形成を要さない温度で溶融金属層5を形成することができる場合がある。このような場合であっても、上述した第1製造方法、及び第2製造方法を採用することで、溶接熱によりシーラントフィルム60が剥離する等の不都合を防ぐことができ、収容空間4内の確実な封止を行うことができる。
【0122】
さらに上記第1実施形態において、
図7に示すように、例えばリッド部材20に該リッド部材20を上下に貫通する圧力開放用の逃げ孔70を形成しても構わない。
逃げ孔70は、封止部71によって閉塞されている。封止部71としては、例えば逃げ孔70を埋めるように形成された合成樹脂材であっても構わないし、各種の溶接方法やろう付け等によって、逃げ孔70を埋めるように溶着された金属片、金属線材或いは金属球等であっても構わない。なお、封止部71を金属製とする場合には、リッド部材20の融点よりも低い低融点金属であることが好ましい。
【0123】
このように逃げ孔70を形成する場合には、容器体10とリッド部材20とを溶接接合し、且つ容器体10内に電解液を注液した後に、最後の工程として封止部71を利用して逃げ孔70を塞げば良い。これにより、例えば溶接の影響によって電解液が加熱等され、それによって外装体2の内圧が上昇したとしても、逃げ孔70を通じて内圧を開放することができる。従って、内圧上昇を抑制することができ、高品質な二次電池1を製造することができる。
【0124】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0125】
図8に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)80は、リッド部材の形状が第1実施形態と異なっている。
本実施形態のリッド部材(本発明に係る第2容器)81は、平面視円形状に形成され、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合うように配置された頂壁部82と、頂壁部82における外周縁部の全周に亘って連設され、頂壁部82から上方に向かって延びた内側周壁部83と、内側周壁部83の上端部から径方向の外側に向かって延びた環状のフランジ部84と、を備えた有頂円筒状に形成されている。
【0126】
内側周壁部83は、容器体10における周壁部12よりも上方に向けて僅かに突出していると共に、周壁部12の内側に径方向に二重に重なった状態で配置されている。フランジ部84は、内側周壁部83の上端部から径方向の外側に向けて延びており、周壁部12の上端開口端に対して全周に亘って上方から重なった状態で溶接接合されている。
具体的には、第1実施形態と同様に、周壁部12及びフランジ部84は、周壁部12とフランジ部84との間に形成された溶接金属層5を介して溶接接合されている。
【0127】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池80であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、組立作業時、溶接作業を行う前に、容器体10の周壁部12の内側にリッド部材81を、例えばしまり嵌めのような嵌め合い関係で嵌め込むことができる。従って、容器体10とリッド部材81とを溶接接合することで、収容空間4内をさらに高い気密封止性で封止することができる。
【0128】
なお、本実施形態の場合であっても、フランジ部84のうち周壁部12に溶接接合された下面(本発明に係る接合面)84aとは反対側に位置する上面(本発明に係る対向面)84bに、第1実施形態と同様にレーザ溶接痕9(
図1参照)が形成される。
【0129】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態(第2実施形態も同様)では、容器体10の底壁部11にシーラントフィルム60を介して集電板61を溶着した構成を例に挙げて説明した。これに対して、本実施形態では、リッド部材にシーラントフィルムを介して集電板を溶着させている。
【0130】
図9及び
図10に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)90は、外装体2が有底筒状の容器体10と、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着されたリッド部材91とが組み合わされて構成されている。従って、本実施形態では、リッド部材91が本発明に係る第1容器として機能し、容器体10が本発明に係る第2容器として機能する。
【0131】
容器体10は、底壁部11及び周壁部12を有する有底筒状に形成されている。ただし、底壁部11には、第1実施形態における貫通孔13が形成されていない。なお、本実施形態の周壁部12は、本発明に係る第2接合壁として機能する。
【0132】
リッド部材91は、平面視円形状に形成され、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合うように配置された頂壁部92と、頂壁部92における外周縁部の全周に亘って連設され、頂壁部92から上方に向かって延びた内側周壁部93と、を備えた有頂円筒状に形成されている。
【0133】
リッド部材91は、容器体10における周壁部12の上端開口縁よりも頂壁部92が下方に位置し、且つ周壁部12の上端開口縁と内側周壁部93の上端開口縁とが面一となるように、周壁部12の内側に配置されている。これにより、内側周壁部93は、容器体10の周壁部12の内側に径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。そのため、リッド部材91の内側周壁部93が本発明に係る第1接合壁として機能する。
【0134】
そして本実施形態では、リッド部材91の頂壁部92の中央部に、該頂壁部92を上下方向に貫通する貫通孔94が電池軸Oと同軸に形成されている。貫通孔94の形状は、特に限定されるものではないが、例えば平面視円形状に形成されている。
【0135】
先に述べたように、貫通孔94が形成された頂壁部92には、シーラントフィルム60を介して集電板61が熱溶着されている。具体的には、集電板61は、シーラントフィルム60を介して頂壁部92の上面に熱溶着され、全面に亘って上方に露出している。
シーラントフィルム60は、頂壁部92に形成された貫通孔94を囲む環状に形成され、電池軸Oと同軸に配置された状態で頂壁部92の上面21bに重なるように配置されている。図示の例では、シーラントフィルム60は、内周縁部から下方に向けて折り返され、頂壁部92に形成された貫通孔94の内周面を全周に亘って保護する保護部60aを有している。
【0136】
集電板61は、シーラントフィルム60の外径よりも小さい直径で平面視円形状に形成されており、電池軸Oと同軸に配置された状態でシーラントフィルム60の上面に重なるように配置されている。これにより、集電板61は貫通孔94を上方から塞いでいる。
【0137】
上述のように構成された外装体2において、容器体10の周壁部12とリッド部材91の内側周壁部93とが、径方向に二重に重なった状態で全周に亘って溶接接合されている。なお、本実施形態においては、周壁部12と内側周壁部93とが、溶接金属層を介して接合されていても構わないし、溶接金属層を介在させない状態で接合されても構わない。
【0138】
なお、周壁部12と内側周壁部93とを溶接接合する際に、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着された内側周壁部93側からではなく、容器体10の周壁部12の外側から周壁部12に向かって例えば水平にレーザビーム等を照射することによって溶接接合を行う。
そのため、
図9に示すように、周壁部12のうち内側周壁部93に溶接接合された内周面(本発明に係る接合面)12aとは反対側に位置する外周面(本発明に係る対向面)12bには、レーザ溶接痕9が形成されている。レーザ溶接痕9は、例えば周壁部12の全周に亘って連続して形成されている。
【0139】
さらに本実施形態の二次電池90では、集電板61を負極用の外部接続端子と機能させ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができる。
この場合において、負極電極50を集電板61に導通させる場合には、例えば負極端子タブ54を、リッド部材91の貫通孔94を通じて直接的に集電板61に対して電気的接続させても構わないし、負極端子タブ54と集電板61とを繋ぐ図示しないリード線に相当する導体を貫通孔94の内側に配置させることで、負極端子タブ54と集電板61とを電気的接続させても構わない。
同様に、正極電極40を容器体10に導通させる場合には、例えば正極端子タブ44を直接的に容器体10に対して電気的接続させても構わないし、図示しないリード線に相当する導体を介して正極端子タブ44と容器体10とを電気的接続させても構わない。
【0140】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池90であっても、周壁部12の外周面12bにレーザ溶接痕9が形成されていることから明らかなように、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着されたリッド部材91側からではなく、容器体10の周壁部12側から加熱が行われることで容器体10とリッド部材91とが溶接接合されている。そのため、溶接時に加えられた熱(溶接熱)がシーラントフィルム60に伝わってしまうことを抑制することができる。
【0141】
従って、本実施形態の二次電池90であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。特に、周壁部12と内側周壁部93とが全周に亘って面接触しているので、溶接熱を分散させ易く、シーラントフィルム60に溶接熱が伝わり難くすることができる。この点においても、シーラントフィルム60が可塑化し、剥離してしまう等の不都合を防止することができる。
【0142】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態において、
図11に示すように、容器体10の周壁部12が上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけて延びるように形成しても構わない。すなわち、周壁部12が上方にむけて徐々に拡径するように容器体10を形成しても構わない。
【0143】
具体的には、
図11に示すように、周壁部12は、底壁部11の外周縁部から上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけて延びる第1周壁部12Aと、第1周壁部12Aの上端部から上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけてさらに延びる第2周壁部12Bと、を備えている。
【0144】
図12に示すように、第1周壁部12Aは、底壁部11に垂直な法線Nに対して第1傾斜角度θ1で傾斜しており、上方に向かうにしたがって拡径するように形成されている。第2周壁部12Bは、上記法線Nに対して、第1傾斜角度θ1よりも大きい第2傾斜角度θ2で傾斜しており、上方に向けて第1周壁部12Aよりも大きく拡径するように形成されている。
このように、容器体10は、第1周壁部12A及び第2周壁部12Bによって、上方に向けて2段階に拡径する逆テーパ筒状に形成されている。
【0145】
図11に示すように、リッド部材91は、内側周壁部93が、第2周壁部12Bの形状に対応して、頂壁部92の外周縁部から上方に向かうにしたがって径方向の外側に向けて延びるように形成され、且つ法線Nに対して第2傾斜角度θ2で傾斜するように形成されている。これにより、内側周壁部93は、第2周壁部12Bに対して全周に亘って隙間なく接している。従って、リッド部材91は、第2周壁部12Bの内側に内側周壁部93が径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。
【0146】
上述のように構成された二次電池90であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、容器体10に対してリッド部材91を組み合わせたときに、第2周壁部12Bが傾斜しているため、第2周壁部12Bに対して内側周壁部93を上方から重ねた状態でリッド部材91を組み合わせることができる。これにより、第2周壁部12Bを利用してリッド部材91を支持することができる。従って、容器体10に対するリッド部材91の位置ずれ等を効果的に抑制した状態で溶接作業を行うことができ、容器体10とリッド部材91とをさらに精度良く適切に溶接接合することができる。
【0147】
さらに容器体10の第1周壁部12Aが第1傾斜角度θ1で傾斜しているため、例えば成形金型等を利用したプレス加工によって容器体10を形成する場合であっても、成形金型から容器体10を離型し易くなる。従って、二次電池90の製造効率の向上化に繋げることができる。
【0148】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
上記第3実施形態では、集電板61をリッド部材91の上面側に配置した構成としたが、本実施形態では、集電板61をリッド部材91の下面側に配置している。
【0149】
図13に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)100は、集電板61がシーラントフィルム60を介してリッド部材91の下面に溶着されている。これにより、集電板61は、リッド部材91に形成された貫通孔94を下方から塞ぐように、リッド部材91に対して一体的に組み合わされていると共に、収容空間4内に配置されている。従って、集電板61は、貫通孔94を通じて上方に向けて部分的に露出している。
【0150】
なお、本実施形態において、シーラントフィルム60の保護部60aの内側にメッキ液を導入して、無電解メッキを行っても構わない。この場合には、集電板61のうち外部に露出する部分に図示しない金属メッキ膜を形成することができ、外部接続端子との電気接続性の向上化や、耐久性等を向上することができる。
【0151】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池100であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。なお、リッド部材91の下面側に集電板61を配置したとしても、貫通孔94を通じて集電板61を部分的に露出させることができるので、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させることができる。従って、図示しない外部端子の端子部を、リッド部材91に対して非接触状態で集電板61に接触させることで、外部端子と集電板61とを電気的接続させることで、二次電池100を使用することができる。
【0152】
なお、集電板61を収容空間4側に配置する構成は、先に説明した第1実施形態から第3実施形態に適用しても構わないし、以下に説明する他の実施形態に適用しても構わない。
【0153】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0154】
図14に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)110は、リッド部材(本発明に係る第1容器)111の形状が第3実施形態と異なっている。
本実施形態のリッド部材111は、内側周壁部93が頂壁部92の外周縁部から下方に向かって延びるように形成されている。そしてリッド部材111は、容器体10における周壁部12の上端開口縁よりも頂壁部92が上方に位置し、且つ内側周壁部93が周壁部12の内側に隙間なく入り込むように配置されている。特に、内側周壁部93は、容器体10の底壁部11付近まで延びるように形成されている。
これにより、内側周壁部93の全体は、容器体10の周壁部12の内側に径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。
【0155】
(二次電池の作用)
本実施形態の二次電池110であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。それに加え、容器体10の周壁部12とリッド部材111の内側周壁部93と、が広範囲に亘って二重に重なりあっているので、周壁部12と内側周壁部93とを溶接接合し易いうえ、溶接個所を電池軸O方向の広い範囲に亘って任意に選択し易い。
【0156】
例えば
図14に示す矢印N1の如く、周壁部12の上端部付近にレーザビームを照射することで、
図15に示すように周壁部12の上端部側の外周面12bにレーザ溶接痕9を形成した状態で、周壁部12と内側周壁部93とを溶接接合することができる。
さらには、
図14に示す矢印N2の如く、周壁部12の上下方向の中央部付近にレーザビームを照射することで、
図16に示すように周壁部12の上下方向の中央部付近にレーザ溶接痕9を形成した状態で、周壁部12と内側周壁部93とを溶接接合することができる。
さらには、
図14に示す矢印N1及びN3の如く、周壁部12の上端部及び下端部付近にレーザビームを照射することで、
図17に示すように周壁部12の上端部側及び下端部側の外周面12bにレーザ溶接痕9をそれぞれ形成した状態で、周壁部12と内側周壁部93とを2箇所に亘って溶接接合することができる。
【0157】
また、パルスレーザを用いたレーザビームの照射の場合、照射する最初のパルスの出力が安定しない場合がある。そのため、全周に亘ってレーザビームを照射する際には、最初に照射したパルスと、終わりに照射したパルスとがオーバーラップするように照射することが好ましい。なお、この場合において、パルス同士が完全にオーバーラップしてしまうと、過剰に溶接される懸念がある。そのため、例えば電池軸O方向におけるパルスの重なりが僅かとなるように、パルスをずらして照射することが好ましい。これにより、過剰な溶接を回避することができる。
【0158】
このように、本実施形態の二次電池110によれば、溶接個所を電池軸O方向の広い範囲に亘って任意に選択することができるので溶接作業を行い易いうえ、周壁部12と内側周壁部93とを例えば2箇所以上に亘って溶接接合することも可能であるので、溶接接合強度を高めて、封止性をさらに高めることができる。
【0159】
さらに、本実施形態の場合には、
図14に示すように、シーラントフィルム60を介して集電板61が溶着されたリッド部材111の頂壁部92から離れた位置で溶接を行うことができるので、シーラントフィルム60までの伝熱距離を稼ぐことができ、シーラントフィルム60に溶接熱が伝わり難くすることができる。従って、シーラントフィルム60に溶接熱がさらに伝わり難く、シーラントフィルム60が剥離してしまう等の不都合をさらに効果的に防止することができる。
【0160】
なお、本実施形態において、溶接時において周壁部12の外周面12bにレーザビームを照射する際、同じ高さ位置で全周に亘って照射する必要はなく、例えば周壁部12の外周面12bにスパイラル状(渦巻き状)に照射しても構わない。このようにレーザビームを照射することで、全周に亘る照射を、容器軸O方向に分けて複数回行う場合とは異なり、照射回数を1回で済ませることができる。そのため、特にパルスレーザを照射する場合に、出力の安定したレーザビームを連続的に照射することができ、安定した溶接を行うことができる。
なお、この場合には、単にスパイラル状にレーザビームを照射するのではなく、螺旋状に形成されたレーザ溶接痕9を電池軸O方向に横断するように縦長のレーザ溶接痕9が少なくとも1本以上、交差した状態で形成されるようにレーザビームを照射することが好ましい。
この際、螺旋状のレーザ溶接痕9と、縦長のレーザ溶接痕9とが交差する箇所において、局所的に過度な加熱がされないように、レーザビームの照射強度を一時的に低下させても良い。
【0161】
また、本実施形態において、容器体10の周壁部12とリッド部材111の内側周壁部93との重なりの大きさは、少なくとも、レーザ溶接痕9よりも大きく形成されていれば良い。このようにすることで、周壁部12と内側周壁部93との重なりを、溶接による熱影響部(HAZ:Heat-Affected Zone)よりも大きくすることができ、シーラントフィルム60が熱影響部の近傍に配置されることを避けることができる。この場合には、
図14に示すような、電池の高さ方向(電池軸O方向)全体に亘って周壁部12と内側周壁部93とを重ねる必要は必ずしもなく、例えば電池高さの半分程度の重なり、或いはさらに小さい重なりであっても良い。例えば
図18に示すように、容器体10の周壁部12を、容器体10の開口部側が広くなるような2段円筒状に形成し、開口部側(上端部側)の内側にリッド部材111の内側周壁部93が重なるように構成しても構わない。
【0162】
また、本実施形態においても第1実施形態と同様に、
図14に示すように、集電板61と容器体10とが電池の上下方向の最外部に配置されている。したがって、金属製の端子をさらに溶接する場合に、平板状(断面視直線状)の端子を用いることができ、端子を溶接した場合であっても、上下方向における電池の厚みの増加を抑えることができる。
【0163】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態(その他の実施形態も同様)では、電極体30として、正極電極40及び負極電極50が図示しないセパレータを挟んで電池軸O方向に交互に積層されるように扁平に捲回された積層型電極を例に挙げて説明した。
本実施形態では、電池軸Oと同軸に配置された支柱部の中心軸線回りに、径方向に多重に捲回されることで構成された電極体を具備している。
【0164】
図19に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)120は、外装体2における収容空間4内に収容された支柱部121を備えている。
支柱部121は、電池軸Oに沿って上下方向に延びる軸状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。図示の例では、支柱部121は中空の円筒状に形成され、その外径は貫通孔94の直径よりも小さい。これにより、支柱部121は、貫通孔94を通じて上端部が集電板61に対して下方から接触し、且つ下端部が容器体10の底壁部11に対して上方から接触するように配置されている。
従って、支柱部121は、集電板61を介してリッド部材91を下方から支持する役割を果たしている。
【0165】
なお、支柱部121は、セラミック等の無機材料や合成樹脂材料等の絶縁性材料で形成されている。支柱部121を合成樹脂製とする場合には、例えば融点がセパレータ131と同等の温度を有する熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。具体的には、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂等材料を採用できる。さらには、これらの合成樹脂のコポリマーやブレンドポリマー等も利用することが可能である。
【0166】
(電極体)
図19に示すように、本実施形態の電極体130は、セパレータ131を挟んで配置された正極電極132及び負極電極133を有し、電池軸O回りに多重に捲回された捲回電極とされている。
具体的には、電極体130は、支柱部121に巻き付けられることで、セパレータ131を挟んで正極電極132及び負極電極133が重ね合わされた状態で、電池軸Oと同軸に配置された支柱部121の中心軸線C回りに、径方向に多重に捲回されることで構成されている。従って、本実施形態の支柱部121は、電極体130を捲回する際の巻き芯としての機能を兼ねている。
【0167】
電極体130は、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸O(支柱部121の中心軸線C)を中心として、多重の渦巻き状に捲回されている。本実施形態では、電極体130のうち支柱部121側に位置する最内層から容器体10の周壁部12側に位置する最外層に向けて、負極電極133、セパレータ131、正極電極132、セパレータ131、負極電極133、セパレータ131、正極電極132という順番で繰り返し配置されるように捲回されている。
【0168】
図20に示すように、正極電極132は、電極体130の捲回前における展開した状態において、一定幅で帯状に延びるように形成された長尺な正極集電体(正極集電箔)132aと、正極集電体132aの片面或いは両面に塗工等によって形成された正極活物質層132bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。
【0169】
正極集電体132aの両端部のうち支柱部121から離れた側に位置する一端部には、正極端子タブ132cが形成されている。正極端子タブ132cは、正極活物質層132bが形成されておらず、他の部品に対して電気的に接続可能とされている。正極端子タブ132cは、電極体130の捲回時、電極体130の外層側に配置される。
なお、正極集電体132a及び正極活物質層132bとしては、第1実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0170】
負極電極133は、電極体130の捲回前における展開した状態において、一定幅で帯状に延びるように形成された長尺な負極集電体(負極集電箔)133aと、負極集電体133aの片面或いは両面に塗工等によって形成された負極活物質層133bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。
【0171】
負極集電体133aの両端部のうち支柱部121から離れた側に位置する一端部には、負極端子タブ133cが形成されている。負極端子タブ133cは、負極活物質層133bが形成されておらず、他の部品に対して電気的に接続可能とされている。負極端子タブ133cは、電極体130の捲回時、電極体130の外層側に配置される。
なお、負極集電体133a及び負極活物質層133bとしては、第1実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0172】
図19に示すセパレータ131は、例えばポリオレフィン等の樹脂製のマイクロポーラスフィルムや、ガラス製若しくは樹脂製の不織布、セルロース繊維等の繊維の積層体等により形成され、図示しないイオン透過孔を通じてリチウムイオンを通過させることが可能とされている。さらにセパレータ131として、例えば空孔内に電解液を保持できる多孔質体や、リチウムイオン導電性を有する樹脂層等を採用できる。
【0173】
セパレータ131は、正極電極132及び負極電極133の層間全体に配置され、正極電極132と負極電極133との間を絶縁している。従って、セパレータ131は少なくとも正極電極132と負極電極133とが対向する領域の全体で正極電極132と負極電極133との間に介在するように配置されている。
【0174】
上述のように構成された電極体130は、
図19に示すように、支柱部121に巻き付くように捲回されることで、支柱部121と一体に組み合わされると共に、支柱部121の中心軸線C回りに正極電極132及び負極電極133がセパレータ131を間に挟んだ状態で径方向に多重に積層するように捲回された捲回電極となる。
なお、このように構成された電極体130を具備する場合であっても、例えば集電板61を負極用の外部接続端子として機能させることができ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができる。
【0175】
(電極体の形成)
支柱部121を巻き芯として利用して、電極体130を形成する場合について、以下に簡単に説明する。
図20に示すように、セパレータ131、正極電極132及び負極電極133をそれぞれ用意した後、支柱部121の外周面12bにセパレータ131を溶着する。これにより、支柱部121の外周面とセパレータ131とを互いに溶着することで形成した溶着部134を位置決め部と利用することができ、支柱部121に対してセパレータ131を位置決めすることができる。
【0176】
なお、予めセパレータ131の長さが決まっている場合には、セパレータ131の長さ方向の中央部よりも、正極電極132が重ね合わされる領域R1側にシフトした部分を支柱部121の外周面に溶着する。これにより、セパレータ131のうち正極電極132が重ね合わされる領域R1よりも、負極電極133が重ね合わされる領域R2の方を大きく確保することができる。
【0177】
次いで、
図20に示す矢印Mの如く、支柱部121を中心軸線C回りに回転させる。この際、セパレータ131のうち負極電極133が重ね合わされる領域R2を、先行して支柱部121に巻き付けるように支柱部121を回転させる。
次いで、支柱部121に先行して巻き付けられたセパレータ131と支柱部121との間に負極電極133を挿し込むように、セパレータ131と負極電極133とを重ね合わせる。この際、
図21に示す矢印Sの如く、溶着部134に突き当たるまで負極電極133を挿し込む。この状態で支柱部121をさらに回転させることで、支柱部121に対して負極電極133を先行して巻き付けることができ、電極体130としての最内層を負極電極133で形成することができる。
【0178】
さらにセパレータ131に正極電極132を重ね合わせながら支柱部121を連続回転させて、セパレータ131、正極電極132及び負極電極133を巻き付けるように捲回する。その結果、
図19に示すように、支柱部121に巻き付くように捲回された電極体130を作製することが可能である。
【0179】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池120の場合であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、支柱部121を利用してリッド部材91を支持することができるので、例えばリッド部材91の溶接前にリッド部材91が撓んでしまう等の意図しない変形を抑制することができ、容器体10に対するリッド部材91の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0180】
さらに捲回によって電極体130を形成した後、支柱部121ごと電極体130を容器体10内に収容することができる。そのため、組立作業を効率良く行うことができ、生産性の向上化に繋げることができる。
【0181】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0182】
例えば上記各実施形態では、電気化学セルの一例として二次電池を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイスに適用しても構わない。
【0183】
電気化学セルを電気二重層キャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極を一対の分極性電極として利用すれば良い。この場合の分極性電極としては、例えば賦活処理にて得られる粉末状の活性炭を、導電助剤やバインダと共に混合し、カレンダーロールプレス或いは粉末圧粉プレス成形したものが挙げられる。なお、プレス成形としては、ダイパンチ式プレスとしても構わない。
電解液としては、例えば4級アンモニウム塩等の支持塩を非水溶媒に溶解させたもの等が挙げられる。なお、混合の際に、スラリーを経て、塗工・乾燥後に電極に加工し、使用することもできる。また、バインダとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて、混錬して成型した板状材料を、集電箔に導電性ペーストで貼り合わせたものを電極として用いることも可能である。
【0184】
電気化学セルをリチウムイオンキャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極のうちの一方の電極のみを、上述の分極性電極を用い、他方の電極にはリチウムイオン電池用の電極を用いることができる。電解液としては、リチウムイオン電池と同じものを用いることができる。特に、リチウムイオン電池用の電極として、チタン酸リチウム(LTO)を用いることで、電流特性を向上することができる。
【0185】
さらに上記各実施形態において、形状の異なる外装体の例を説明したが、容器体及びリッド部材の形状は適宜変更して構わない。例えば、リッド部材に断面U字状の環状溝部を形成して、リッド部材の剛性を向上させても構わない。さらにリッド部材を有頂筒状に形成しても構わない。
【0186】
さらに上記各実施形態において、電極体としては特定の構造に限定されるものではなく、既知の電極体を適宜採用しても構わない。
例えば
図22に示すように、セパレータ141を挟んで正極電極142と負極電極143とを電池軸O方向に多層に積層されることで電極体(積層電極体)140を構成しても構わない。
図示の例では、正極電極142及び負極電極143が、それぞれ12層積層された電極体140を例に挙げている。ただし、12層に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0187】
図22~
図24に示すように、正極電極142は、平面視D形状に形成された薄膜状の正極集電体(正極集電箔)142aと、正極集電体142aの両面に塗工等によって形成された正極活物質層142bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。正極集電体142aの一部は、正極活物質層142bが未塗工とされた正極端子タブ142cとされ、外側に突出している。
【0188】
セパレータ141は、正極電極142の形状に対応して平面視D形状に形成されたシート体とされ、正極電極142を上下から挟み込むように配置されている。この際、セパレータ141は、正極電極142より一回り大きいサイズに形成されている。これにより、正極電極142は、2枚のセパレータ141によって上下から挟み込まれて保護されている。
なお、正極端子タブ142cは、セパレータ141よりも外側に突出するように配置されている。
【0189】
負極電極143は、正極電極142の形状に対応して平面視D形状に形成された薄膜状の負極集電体(負極集電箔)143aと、負極集電体143aの両面に塗工等によって形成された負極活物質層143bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。負極集電体143aの一部は、負極活物質層143bが未塗工とされた負極端子タブ143cとされ、外側に突出している。
【0190】
負極電極143は、セパレータ141に対して同等或いは僅かに小さいサイズに形成されている。従って、正極電極142は、負極電極143よりも小さいサイズに形成されている。なお、正極端子タブ142cは、セパレータ141よりも外側に突出するように配置されていると共に、正極端子タブ142cに対して上下方向に対向しないように配置されている。
【0191】
このように構成された電極体140の場合には、
図22に示すように、正極電極142及び負極電極143が、セパレータ141を間に挟んで交互に12層積層されることで構成される。また、複数(12個)の正極端子タブ142c及び負極端子タブ143cは、それぞれ電池軸O方向に沿って並ぶように配置されている。
【0192】
複数の正極端子タブ142cは、例えば溶接等によって1つにまとめられることで互いに電気的に接続される。同様に複数の負極端子タブ143cは、例えば溶接等によって1つにまとめられることで互いに電気的に接続される。
【0193】
そして電極体140は、収容空間4内に配置され、例えば正極端子タブ142cが容器体10に導通され、負極端子タブ143cが集電板61に導通される。これにより、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができ、二次電池を利用することができる。
【0194】
さらに、別の電極体として、例えば
図25に示すように薄い円板状に形成された正極電極152と負極電極153とを電池軸O方向に積層した電極体150を採用しても構わない。
【0195】
正極電極152は、平面視リング状に形成された薄膜状の正極集電体(正極集電箔)152aと、正極集電体152aの両面に塗工等によって形成された正極活物質層152bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。図示の例では、図面を見易くするために、正極活物質層152bにドット状のハッチングを付している。
正極活物質層152bは、正極集電体152aのうち内周縁部152cを除く部分に形成されている。これにより正極集電体152aの内周縁部152cを利用して集電を行うことが可能とされている。
【0196】
負極電極153は、正極電極152の形状に対応して平面視リング状に形成された薄膜状の負極集電体(負極集電箔)153aと、負極集電体153aの両面に塗工等によって形成された負極活物質層153bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。図示の例では、図面を見易くするために、負極活物質層153bにドット状のハッチングを付している。
【0197】
なお負極電極153は、外径が正極電極152の外径よりも大きく、且つ内径が負極電極153の内径よりも大きく形成されている。これにより、正極活物質層152bの全領域が負極活物質層153bに対して電池軸O方向に対向するように構成されている。
負極活物質層153bは、負極集電体153aのうち外周縁部153cを除く部分に形成されている。これにより負極集電体153aの外周縁部153cを利用して集電を行うことが可能とされている。
【0198】
上述のように構成された正極電極152及び負極電極153を具備する電極体150を利用する場合、
図22に示す電極体140と同様に、正極電極152及び負極電極153を交互に複数層(例えば12層)、積層することで構成しても構わない。
【0199】
そしてこの場合の電極体150は、収容空間4内に配置され、例えば正極集電体152aの内周縁部152cを利用して例えば容器体10に導通させ、負極集電体153aの外周縁部153cを集電板61に導通させる。これにより、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができ、二次電池を利用することができる。
【0200】
なお、正極電極152を形成する場合には、例えば長尺なシート状に形成された正極集電体152aの両面に塗工等によって正極活物質層152bを形成する。次いで、シート状の正極集電体152aを打ち抜き加工等によってリング状に加工し、さらに正極活物質層152bをレーザ加工等によりトリミングして部分的に除去することで、正極電極152を形成することができる。
なお、負極電極153についても同様の方法で形成することが可能である。
【0201】
なお、
図25に示す正極電極152において、必ずしもリング状に形成する必要はなく、円板状に形成しても構わない。この場合には、正極集電体152aの中央部分を利用して集電を行うことができる。
さらに、
図25に示すように正極電極152をリング状に形成した場合において、正極集電体152aの内周縁部152cを含め、正極集電体152aの全領域に範囲に亘って正極活物質層152bを塗工しても構わない。この場合であっても、例えば集電棒を正極電極152に突き刺すように組み合わせることで、正極活物質層152bに覆われた正極集電体152aの集電を図ることができる。
【0202】
さらに
図25に示す負極電極153において、負極端子タブを有するように負極集電体153aを形成し、負極端子タブを除く、負極集電体153aの全領域に範囲に亘って負極活物質層153bを塗工しても構わない。
【0203】
さらに上記各実施形態において、形状の異なる外装体の例を説明したが、有底筒状に形成された容器体にリッド部材を溶接接合して、容器体の開口部を閉塞することができれば、容器体及びリッド部材の形状は適宜変更して構わない。
例えば、リッド部材に断面U字状の環状溝部を形成して、リッド部材の剛性を向上させても構わない。さらにリッド部材を有頂筒状に形成しても構わない。
【0204】
さらに上記各実施形態において、外装体を構成する第1容器及び第2容器である、容器体及び封口板は、必ずしも金属製である必要はない。例えば、ステンレス鋼等からなる金属層とフィルム状の樹脂層とが積層したラミネートフィルムを用いて容器体及び封口板の少なくとも一方を形成しても構わない。このような場合であっても、金属層を利用して溶接接合等を行うことができる。
【符号の説明】
【0205】
C…支柱部の中心軸線
O…電池軸
1、80、90、100、110、120…二次電池(電気化学セル
2…外装体
4…収容空間
5…溶接金属層
9…レーザ溶接痕(溶接痕)
10…容器体(第1容器、第2容器)
11…底壁部
12…容器体の周壁部(第1接合壁、第2接合壁)
12a…周壁部の内周面(接合面)
12b…周壁部の外周面(対向面)
13、94…貫通孔
20、81…リッド部材(第2容器)
21、84…リッド部材のフランジ部(第2接合壁)
21a、84a…フランジ部の下面(接合面)
21b、84b…フランジ部の上面(対向面)
30、130、140、150…電極体
40、132、142、152…正極電極
50、133、143、153…負極電極
60…シーラントフィルム(樹脂材)
61…集電板
66…押当面(溶接痕)
70…逃げ孔
91、111…リッド部材(第1容器)
93…リッド部材の内側周壁部(第1接合壁)