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特開2022-191140電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191140
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/474 20210101AFI20221220BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20221220BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20221220BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M50/169
H01M50/489
H01M50/188
H01G11/78
H01G11/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022450
(22)【出願日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021099520
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB12
5E078HA03
5E078HA21
5E078HA22
5E078HA25
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
5H011FF04
5H021HH10
(57)【要約】
【課題】外装体を薄肉にしたとしても確実な封止性を得ることができると共に、生産性の向上化にも繋げること。
【解決手段】底壁部11及び周壁部12を有する有底筒状の容器体10と、容器体に溶接接合され、容器体との間に収容空間5を形成する封口板20とを備えた外装体2と、収容空間内に収容された電極体30と、封口板及び底壁部のうちの少なくとも一方の部材と、電極体との間に電池軸O方向に挟み込まれた状態で収容空間内に配置されたシム部材4とを備え、封口板は、電極体及びシム部材を介して底壁部に対して電池軸方向に重なるように配置されている電気化学セル1を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部及び周壁部を有し、有底筒状に形成された容器体と、前記容器体の開口部を閉塞するように前記容器体に溶接接合され、前記容器体との間に収容空間を形成する封口板と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、
前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と、前記電極体との間に電池軸方向に挟み込まれた状態で前記収容空間内に配置されたシム部材と、を備え、
前記封口板は、前記電極体及び前記シム部材を介して前記底壁部に対して前記電池軸方向に重なるように配置されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルにおいて、
前記シム部材は、前記封口板と前記電極体との間、及び前記底壁部と前記電極体との間にそれぞれ配置されている、電気化学セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学セルにおいて、
前記シム部材は、前記電池軸方向に弾性変形可能とされている、電気化学セル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記シム部材は、絶縁性材料で形成されている、電気化学セル。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記シム部材は、導電性材料で形成されている、電気化学セル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記封口板又は前記底壁部に対して絶縁性のシール材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板を備え、
前記正極電極及び前記負極電極のうちの一方の電極は前記集電板に導通し、他方の電極は前記容器体に導通している、電気化学セル。
【請求項7】
請求項6に記載の電気化学セルにおいて、
前記集電板は、前記封口板のうち前記収容空間とは前記電池軸方向の反対側を向いた上面に前記シール材を介して溶着されると共に、全面に亘って外部に露出し、
前記一方の電極は、前記封口板を前記電池軸方向に貫通するように形成された貫通孔を通じて前記集電板に導通している、電気化学セル。
【請求項8】
請求項6に記載の電気化学セルにおいて、
前記集電板は、前記封口板のうち前記収容空間側を向いた下面に前記シール材を介して溶着されると共に、前記封口板を前記電池軸方向に貫通するように形成された貫通孔を通じて外部に部分的に露出している、電気化学セル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記収容空間内に前記電池軸方向に沿って収容され、前記封口板を支持する支柱部を備え、
前記電極体は、セパレータを挟んで前記正極電極及び前記負極電極が重ね合わされた状態で前記支柱部の中心軸線回りに捲回されている、電気化学セル。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電気化学セルにおいて、
前記電極体は、セパレータを挟んで前記正極電極及び前記負極電極が前記電池軸方向に交互に積層されている、電気化学セル。
【請求項11】
底壁部及び周壁部を有し、有底筒状に形成された容器体と、前記容器体の開口部を閉塞するように前記容器体に溶接接合され、前記容器体との間に収容空間を形成する封口板と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、
前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と、前記電極体との間に電池軸方向に挟み込まれた状態で前記収容空間内に配置されたシム部材と、を備える電気化学セルの製造方法であって、
前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と前記シム部材とを組み合わせる工程と、
前記容器体の内部の前記収容空間に前記電極体をセットする工程と、
前記容器体に前記封口板を組み合わせることで、前記封口板を、前記電極体及び前記シム部材を介して前記底壁部に対して前記電池軸方向に重なるように配置する工程と、
前記容器体に前記封口板を溶接接合する工程と、を備えていることを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記封口板に予め貫通孔を形成する工程と、
前記容器体と前記封口板とを溶接接合した後、前記貫通孔を通じて前記収容空間内に電解液を注液する工程と、
前記電解液の注液後、前記貫通孔を塞ぐ工程と、を備えている、電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記封口板又は前記底壁部に対して絶縁性のシール材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板を備え、
前記集電板に溶着された第1シール材と、前記封口板に溶着された第2シール材とを熱溶着することで、前記第1シール材及び前記第2シール材からなる前記シール材を構成すると共に、前記シール材を介して前記集電板と前記封口板とを組合せる工程と、
前記正極電極及び前記負極電極のうちの一方の電極を前記集電板に導通させ、他方の電極を前記容器体に導通させる工程と、を備えている、電気化学セルの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記集電板と前記第1シール材とを重ね合わせた後、レーザ照射或いは誘導加熱によって前記集電板を加熱し、加熱された前記集電板の熱を用いて前記第1シール材を加熱することで、前記集電板と前記第1シール材とを一体的に組み合わせる、電気化学セルの製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記封口板と前記第2シール材とを重ね合わせた後、レーザ照射或いは誘導加熱によって前記集電板を加熱し、加熱された前記集電板の熱を用いて前記第2シール材を加熱することで、前記封口板と前記第2シール材とを一体的に組み合わせる、電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び電気化学セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腕時計、スマートウオッチ、スマートフォン、ヘッドセット、補聴器等の小型電子機器やウエアラブル機器用の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
近年、この種の電気化学セルへのニーズとして、小型化及び薄型化に対する要求がさらに強くなっている。その一因としては、電気化学セルが実装される各種電子機器におけるIC(集積回路)の極微細化及び低消費電力化による高性能化に伴って、従来にはないハイスペックな機能を具備する電子機器が提案され始めているからである。
【0003】
この種の電気化学セルでは、電極体を内部に収容する外装体として、例えば金属ケースを利用したものや、ラミネートフィルムを利用したもの等が知られている。
金属ケースは、例えば有底筒状のケース本体と、ケース本体の開口部を、樹脂製のガスケットを介してカシメ等によって封止する封口板とを備え、全体としてコイン形状、ボタン形状、筒形状等に構成される場合が多い。
【0004】
これに対して外装体としてラミネートフィルムを利用する場合には、形状自由度を高くすることが可能であるので、電気化学セル自体の小型化及び高容量化等に繋げ易い。
例えば下記特許文献1には、外装体として、ラミネートフィルムによって有底円筒状に形成された第1シートと、ラミネートフィルムによって有底円筒状に形成されると共に、第1シートとの間に電極体を収容した状態で第1シートの内側に配置された第2シートと、を備えた電気化学セルが開示されている。第1シートの周縁部と第2シートの周縁部とは、環状のシーラントフィルムを介して全周に亘って溶着されている。これにより、電極体が収容された内部空間を密封している。なお、シーラントフィルムは、熱可塑性樹脂によって形成されたフィルムを重ね合わせることで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-126558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の電気化学セルのように、外装体としてラミネートフィルムを利用した場合には、熱可塑性樹脂からなるシーラントフィルムを利用した溶着(熱溶着)によって、電極体が収容された内部空間を封止している。しかしながら、樹脂の溶着による封止であるために、十分な封止性を得ることが難しい。
【0007】
これに対して、外装体として有底筒状のケース本体と封口板とを有する金属ケースを採用した場合には、ラミネートフィルムを利用する場合に比べて高い封止性を得ることできる利点がある。特に、ケース本体と封口板とをカシメ等によって固定することに代えて、レーザ溶接等によって溶接接合した場合には、優れた封止性を得ることが可能である。
さらに、ケース本体と封口板とを溶接接合する場合には、カシメ固定する場合に比べて、金属材料に求められる力学的強度を抑えることができるため、金属材の厚み自体を薄肉にし易い。そのため、外装体を薄く形成することができ、その分、内容量の向上化に繋げることができるといった利点を得ることが可能である。
【0008】
しかしながら、封口板の厚みを薄くした場合には、封口板が撓み易くなってしまい、ケース本体と封口板との溶接作業が難しくなる等の作業性の低下を招いてしまう。さらに、封口板の撓みや反り等によって、ケース本体に対して封口板が位置ずれし易く、溶接不良を招いて十分な封止性を得ることができないおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、外装体を薄肉にしたとしても確実な封止性を得ることができると共に、生産性の向上化にも繋げることができる電気化学セル、及び電気化学セルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る電気化学セルは、底壁部及び周壁部を有し、有底筒状に形成された容器体と、前記容器体の開口部を閉塞するように前記容器体に溶接接合され、前記容器体との間に収容空間を形成する封口板と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と、前記電極体との間に電池軸方向に挟み込まれた状態で前記収容空間内に配置されたシム部材と、を備え、前記封口板は、前記電極体及び前記シム部材を介して前記底壁部に対して前記電池軸方向に重なるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電気化学セルによれば、収容空間内に電極体に加えてシム部材が収容されている。シム部材は、封口板及び底壁部のうちの少なくとも一方の部材と電極体との間に電池軸方向に挟み込まれるように配置されている。そのため、収容空間内において、封口板及び底壁部と電極体との間に形成される隙間をシム部材で埋めることができる。従って、電気化学セルの製造時、容器体に対して封口板を組み合わせたときに、電極体及びシム部材を介して封口板を底壁部に対して電池軸方向に重なるように配置することができ、封口板を支持することが可能である。
【0012】
従って、封口板を含む外装体の全体を薄肉に形成したとしても、容器体と封口板との溶接接合の前段階で、封口板が撓んでしまう等の意図しない変形を抑制することができる。従って、容器体に対する封口板の位置ずれ等を抑制した状態で溶接作業を行うことができ、作業効率を向上させて、生産性の向上化に繋げることができる。さらに、容器体と封口板とを精度良く適切に溶接することができ、確実な封止性を得ることができる。従って、作動信頼性が高く高品質な電気化学セルとすることができる。
【0013】
さらに、収容空間内にシム部材を配置するだけであるので、収容空間内のスペースを有効に利用することができ、電極体のサイズをできるだけ大きくすることができるうえ、特定の構造タイプに限定されることなく、種々の電極体を幅広く適用することができる。この点においても、生産性の向上化に繋げることができるうえ、例えば短時間に電流レートで1C(Capacity rate)以上の大電流で充放電(ハイレート充放電)を行うことができる電極体を具備することも可能である。
【0014】
(2)前記シム部材は、前記封口板と前記電極体との間、及び前記底壁部と前記電極体との間にそれぞれ配置されても良い。
【0015】
この場合には、封口板と電極体との間の隙間、及び底壁部と電極体との間の隙間のそれぞれをシム部材で埋めることができるので、容器体に対して封口板を組み合わせたときに、電極体及びシム部材を利用して封口板をより安定して支持することができる。従って、封口板が撓んでしまう等の意図しない変形を効果的に抑制することができ、容器体に対する封口板の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0016】
(3)前記シム部材は、前記電池軸方向に弾性変形可能とされても良い。
【0017】
この場合には、容器体に対して封口板を組み合わせたときに、シム部材を電池軸方向に弾性変形させることができるので、封口板及び底壁部と電極体との間に形成される隙間に対応するようにシム部材の厚みを予め調整しなくても、シム部材を利用して隙間を適切に埋めることができる。従って、電極体及びシム部材を利用して封口板をさらに安定して支持することができ、容器体に対する封口板の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0018】
(4)前記シム部材は、絶縁性材料で形成されても良い。
【0019】
この場合には、封口板、容器体及び電極体に対する導通を考慮する必要がなく、例えばセラミック等の無機材料や絶縁性の合成樹脂材料でシム部材を形成することができる。特に、シム部材と他部品との導通を考慮する必要がないので、シム部材を制約少なく設計することができ、設計自由度を向上することができる。
【0020】
(5)前記シム部材は、導電性材料で形成されても良い。
【0021】
この場合には、シム部材を導体として利用することができるので、例えば電極体における正極電極及び負極電極のうちの少なくとも一方の電極を、シム部材を通じて容器体等に導通させることができる。従って、電気抵抗を低減させ易く、電池性能の向上化を図り易い。さらに、シム部材が弾性変形可能な導体である場合は、外部から振動等の衝撃が加わった際においても、その衝撃を緩和し、電気的接続を維持できるので、安定な電池の出力を維持し易い。
【0022】
(6)前記封口板又は前記底壁部に対して絶縁性のシール材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板を備え、前記正極電極及び前記負極電極のうちの一方の電極は前記集電板に導通し、他方の電極は前記容器体に導通しても良い。
【0023】
この場合には、正極電極及び負極電極のうちの一方の電極が集電板に導通し、他方の電極が容器体に導通しているので、集電板及び容器体を外部接続端子として利用することができる。従って、実装性に優れた電気化学セルとすることができる。
【0024】
(7)前記集電板は、前記封口板のうち前記収容空間とは前記電池軸方向の反対側を向いた上面に前記シール材を介して溶着されると共に、全面に亘って外部に露出し、前記一方の電極は、前記封口板を前記電池軸方向に貫通するように形成された貫通孔を通じて前記集電板に導通しても良い。
【0025】
この場合には、封口板の上面側に集電板を配置することができるので、集電板を全面に亘って大きく外部に露出させることができる。従って、集電板を外部接続端子として有効に利用し易く、使い易く、実装性に優れた電気化学セルとすることができる。
【0026】
(8)前記集電板は、前記封口板のうち前記収容空間側を向いた下面に前記シール材を介して溶着されると共に、前記封口板を前記電池軸方向に貫通するように形成された貫通孔を通じて外部に部分的に露出しても良い。
【0027】
この場合には、封口板の下面側に集電板を配置することができるので、集電板と一方の電極とを導通させ易い。この場合であっても、貫通孔を通じて集電板を外部に部分的に露出させることができるので、集電板を外部接続端子として機能させることができる。
【0028】
(9)前記収容空間内に前記電池軸方向に沿って収容され、前記封口板を支持する支柱部を備え、前記電極体は、セパレータを挟んで前記正極電極及び前記負極電極が重ね合わされた状態で前記支柱部の中心軸線回りに捲回されても良い。
【0029】
この場合には、シム部材を利用した封口板の支持に加え、支柱部を利用して封口板を支持することができるので、封口板が撓んでしまう等の意図しない変形をさらに効果的に抑制することができ、容器体に対する封口板の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。さらに電極体は、支柱部の中心軸線回りに捲回された捲回電極とされている。従って、捲回によって電極体を形成した後、支柱部ごと電極体を容器体内に収容することができる。そのため、組立作業を効率良く行うことができ、生産性の向上化に繋げることができる。
【0030】
(10)前記電極体は、セパレータを挟んで前記正極電極及び前記負極電極が前記電池軸方向に交互に積層されても良い。
【0031】
この場合には、電極体は、セパレータを挟んで正極電極及び負極電極が電池軸方向に交互に積層された積層型電極とされている。これにより、例えばセパレータを挟んで対向する正極電極及び負極電極同士の面積を大きく確保し易く、大電流で充放電を行うことができる充放電特性に優れた電気化学セルとすることが可能である。
【0032】
(11)本発明に係る電気化学セルの製造方法は、底壁部及び周壁部を有し、有底筒状に形成された容器体と、前記容器体の開口部を閉塞するように前記容器体に溶接接合され、前記容器体との間に収容空間を形成する封口板と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と、前記電極体との間に電池軸方向に挟み込まれた状態で前記収容空間内に配置されたシム部材と、を備える電気化学セルの製造方法であって、前記封口板及び前記底壁部のうちの少なくとも一方の部材と前記シム部材とを組み合わせる工程と、前記容器体の内部の前記収容空間に前記電極体をセットする工程と、前記容器体に前記封口板を組み合わせることで、前記封口板を、前記電極体及び前記シム部材を介して前記底壁部に対して前記電池軸方向に重なるように配置する工程と、前記容器体に前記封口板を溶接接合する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る電気化学セルの製造方法によれば、容器体に対して封口板を組み合わせたときに、収容空間内において、封口板及び底壁部と電極体との間に形成される隙間をシム部材で埋めることができる。従って、電極体及びシム部材を介して封口板を底壁部に対して電池軸方向に重なるように配置することができ、封口板を支持することが可能である。
従って、封口板を含む外装体の全体を薄肉に形成したとしても、容器体と封口板との溶接接合の前段階で、封口板が撓んでしまう等の意図しない変形を抑制することができる。従って、容器体に対する封口板の位置ずれ等を抑制した状態で溶接作業を行うことができ、作業効率を向上させて、生産性の向上化に繋げることができる。さらに、容器体と封口板とを精度良く適切に溶接することができ、確実な封止性を得ることができる。従って、作動信頼性が高く高品質な電気化学セルとすることができる。
【0034】
さらに、収容空間内にシム部材を配置するだけであるので、収容空間内のスペースを有効に利用することができ、電極体のサイズをできるだけ大きくすることができるうえ、特定の構造タイプに限定されることなく、種々の電極体を幅広く適用することができる。この点においても、生産性の向上化に繋げることができるうえ、例えば短時間に電流レートで1C(Capacity rate)以上の大電流で充放電を行う(ハイレート充放電)ことができる電極体を具備することも可能である。
【0035】
(12)前記封口板に予め貫通孔を形成する工程と、前記容器体と前記封口板とを溶接接合した後、前記貫通孔を通じて前記収容空間内に電解液を注液する工程と、前記電解液の注液後、前記貫通孔を塞ぐ工程と、を備えても良い。
【0036】
この場合には、容器体と封口板との溶接接合した後に、電解液を注液することができるので、生産性をさらに高めることができる。
【0037】
(13)前記封口板又は前記底壁部に対して絶縁性のシール材を介して溶着されると共に、少なくとも一部分が外部に露出した集電板を備え、前記集電板に溶着された第1シール材と、前記封口板に溶着された第2シール材とを熱溶着することで、前記第1シール材及び前記第2シール材からなる前記シール材を構成すると共に、前記シール材を介して前記集電板と前記封口板とを組合せる工程と、前記正極電極及び前記負極電極のうちの一方の電極を前記集電板に導通させ、他方の電極を前記容器体に導通させる工程と、を備えても良い。
【0038】
この場合には、正極電極及び負極電極のうちの一方の電極が集電板に導通し、他方の電極が容器体に導通しているので、集電板及び容器体を外部接続端子として利用することができる。従って、実装性に優れた電気化学セルとすることができる。
特に、集電板に溶着された第1シール材、及び封口板に溶着された第2シール材同士を熱溶着することでシール材を構成しているので、シール材を介して集電板と封口板とをより強固に接合することができる。
【0039】
(14)前記集電板と前記第1シール材とを重ね合わせた後、レーザ照射或いは誘導加熱によって前記集電板を加熱し、加熱された前記集電板の熱を用いて前記第1シール材を加熱することで、前記集電板と前記第1シール材とを一体的に組み合わせても良い。
【0040】
この場合には、例えばレーザ照射によって集電板を加熱することで、ヒーター加熱等に比べて短時間に加熱することができるうえ、加熱によって生じた集電板の熱を用いて第1シール材を局所的に加熱することができるので、最小限の熱量で集電板と第1シール材とを熱溶着させることが可能である。さらに、マイクロ波照射等の誘導加熱を採用した場合には、例えば集電板を選択的に加熱することが可能であり、第1シール材への熱の影響を抑制しながら集電板と第1シール材とを熱溶着することができる。
【0041】
(15)前記封口板と前記第2シール材とを重ね合わせた後、レーザ照射或いは誘導加熱によって前記集電板を加熱し、加熱された前記集電板の熱を用いて前記第2シール材を加熱することで、前記封口板と前記第2シール材とを一体的に組み合わせても良い。
【0042】
この場合には、例えばレーザ照射によって集電板を加熱することで、ヒーター加熱等に比べて短時間に加熱することができるうえ、加熱によって生じた集電板の熱を用いて第2シール材を局所的に加熱することができるので、最小限の熱量で封口板と第2シール材とを熱溶着させることが可能である。さらに、マイクロ波照射等の誘導加熱を採用した場合には、例えば封口板を選択的に加熱することが可能であり、第2シール材への熱の影響を抑制しながら封口板と第2シール材とを熱溶着することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、外装体に薄肉にしたとしても確実な封止性を得ることができると共に、生産性の向上化にも繋げることができる電気化学セルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示すA-A線に沿った二次電池の縦断面図である。
図3図2に示す電極体の斜視図である。
図4図3に示すB-B線に沿った電極体の縦断面図である。
図5図2に示す第1シム部材の斜視図である。
図6】第1実施形態の変形例を示す図であって、第1シム部材を上下反転してセットした状態における部分拡大断面図である。
図7】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第2実施形態を示す縦断面図である。
図8図7に示す第1シム部材の斜視図である。
図9】第2実施形態の変形例を示す二次電池の縦断面図である。
図10】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第3実施形態を示す縦断面図である。
図11図10示すC-C線に沿った二次電池の縦断面図である。
図12】第3実施形態の変形例を示す二次電池の縦断面図である。
図13図12に示す容器体の部分拡大断面図である。
図14】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第4実施形態を示す縦断面図である。
図15】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第5実施形態を示す縦断面図である。
図16】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第6実施形態を示す縦断面図である。
図17】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第7実施形態を示す縦断面図である。
図18】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第8実施形態を示す縦断面図である。
図19図18に示す電極体を支柱部に巻き付ける場合の一工程図であって、支柱部の外周面にセパレータを固定した状態を示す図である。
図20図19に示す状態から支柱部を回転させて、セパレータを先行して支柱部に巻き付けている状態を示す図である。
図21】本発明に係る電極体の変形例を示す斜視図である。
図22図21に示す一組の正極電極及び負極電極の組み合わせ状態を、負極電極を上向きにした状態で見た斜視図である。
図23図21に示す一組の正極電極及び負極電極の組み合わせ状態の説明するための分解図である。
図24】本発明に係る電極体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気化学セルの実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に二次電池という。)を例に挙げて説明する。
【0046】
図1及び図2に示すように、本実施形態の二次電池1は、いわゆるボタン(コイン)形の電池とされ、金属製の外装体2と、外装体2の内部に収容された発電要素3及びシム部材4とを備えている。
【0047】
外装体2は、有底筒状に形成された金属製の容器体10と、容器体10の開口部を閉塞するように容器体10に溶接接合され、容器体10との間に収容空間5を形成する金属製のリッド部材(本発明に係る封口板)20と、を備えている。
発電要素3は、正極電極40及び負極電極50を有する電極体30を備えていると共に、図示しない電解液(電解質溶液)を含んでおり、外装体2の内部に形成された収容空間5内に収容されている。
【0048】
本実施形態では、外装体2の中心を通り上下方向に沿って延びる軸線を電池軸Oという。また、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸Oに交差する方向を径方向といい、電池軸O回りに周回する方向を周方向という。さらに、電池軸Oに沿って、容器体10の底壁部11からリッド部材20に向かう方向を上方といい、その反対を下方という。
【0049】
(外装体)
外装体2について詳細に説明する。
容器体10は、平面視円形状に形成された底壁部11と、底壁部11における外周縁部の全周に亘って連設され、底壁部11から上方に向かって延びた周壁部12と、を備えた有底円筒状に形成されている。
ただし、容器体10の形状は有底円筒状に限定されるものではなく、例えば平面視で外形が楕円状、四角形状、多角形状となるように形成しても構わない。
【0050】
容器体10は、金属製とされ、電極体30に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。容器体10の厚みとしては、例えば0.01mm~0.30mm程度とされ、薄肉の金属製容器とされている。但し、各図面では、図示を見易くするために容器体10の厚みを誇張して図示している。
【0051】
容器体10の具体的な金属材質としては、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させる、或いは負極用の外部接続端子として機能させるかによっても異なるが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼や、同種或いは異種の金属同士を圧着して形成したクラッド材(高機能性金属材料)を用いることができる。ただし、これらの場合に限定されるものではない。
ステンレス鋼としては、例えばSUS430やSUS444といったフェライト系ステンレス鋼やSUS329J4Lといったオーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼を挙げることができる。
【0052】
クラッド材としては、例えばCu(内層)/Fe(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材や、Ni(内層)/Fe(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材や、Al(内層)/SUS(中層)/Ni(外層)の3層クラッド材等が挙げられる。但し、クラッド材としては、3層に限定されるものではないし、その他の金属同士を多層に圧着することで形成してもかまわない。
【0053】
クラッド材としてCuを用いた場合には、熱伝導性を高めることができるので、溶接時における放熱性を向上することができる。従って、Cuをクラッド材の内層に採用することで、電極体30の保護に繋げることができるので、好ましい。
【0054】
さらにクラッド材の内面及び外面のいずれか一方、或いは内面及び外面の両方にメッキ処理を施して、金属メッキ膜を形成することが好ましい。容器体10の内面に金属メッキ膜を形成することで、化学的に安定させることができ、電解液等に対する耐性を向上させることができる。また、容器体10の外面に金属メッキ膜を形成することで、防錆機能等の機能を付加することができると共に、電気抵抗を低減させることができるので、外部端子との電気的な接続性を向上させることができる。
【0055】
具体的な金属メッキ膜としては、例えばNiメッキ膜、Ni等の合金メッキ膜等を採用することができ、特に共晶金属材料の合金メッキ膜を採用することが好ましい。共晶金属材料の合金メッキ膜を採用した場合には、例えば抵抗溶接を行うときに融点を下げることができ、溶接時の温度を下げることが可能である。
その他、Au-Niの合金メッキ膜や、Ni-Pの合金メッキ膜や、Ni-Bの合金メッキ膜等も好適に採用することができる。
【0056】
また例えば、本実施形態の二次電池1を時計の用途に用いる場合、容器体10の金属材料としては耐食性に加えて非磁性であることが好ましい。具体的には上述のアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のほか、ステンレス鋼としては、例えばSUS201、SUS202、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS321、SUS347といった各種のオーステナイト系ステンレス鋼を挙げることができる。
さらに容器体10として、上述の各種の金属の表面に樹脂層が形成された材料を採用しても良く、例えば、ステンレス鋼からなる金属層とフィルム状の樹脂層とが積層したラミネートフィルムを用いることができる。この場合、金属製のリッド部材20と容器体10の金属層とを接合させることで容器体10の開口部を塞ぐことができる。樹脂層としては、例えば後述するシーラントフィルム60に採用される樹脂材料を用いることができる。
【0057】
図1及び図2に示すように、リッド部材20は、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合う平坦なプレート状に形成され、容器体10における周壁部12の上端開口端に対して全周に亘って上方から重なった状態で溶接接合されている。
図示の例では、リッド部材20の外周縁部には、周壁部12の上端開口端と重なる位置に段差20aが設けられている。これにより、リッド部材20は、段差20aを利用して収容空間5を高い気密性で封止している。
【0058】
なお、リッド部材20の形状は、容器体10の形状に対応していれば良く、例えば平面視で外形が楕円状、四角形状、多角形状となるように形成しても構わない。リッド部材20の厚みとしては、容器体10と同様に例えば0.01mm~0.30mm程度とされ、薄肉とされている。ただし、図2では、図示を見易くするためにリッド部材20の厚みを誇張して図示している。この点は、その他の図面においても同様である。
【0059】
このように構成されたリッド部材20は、組立作業時、容器体10の周壁部12の上端開口縁に上方から重ね合わされた後、例えば上方から加圧されながら溶接される。これにより、先に述べたように、周壁部12とリッド部材20とは、全周に亘って溶接によって強固に接合されている。これにより、リッド部材20を利用して容器体10の開口部を塞ぐことができ、容器体10との間に発電要素3を収容する収容空間5(密閉空間)を形成している。
【0060】
容器体10とリッド部材20との溶接方法としては、特に限定されるものではないが、例えばレーザ溶接、超音波接合、シーム溶接等の抵抗溶接や、摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)等を採用することができる。
これらの溶接の際、図示しない溶接器側を固定した状態で溶接対象ワークである外装体2側を動かしながら溶接を行う、いわゆるワークムーブ方式で行っても構わないし、溶接対象ワークである外装体2側を固定し、溶接器側を動かしながら溶接を行う、いわゆるヘッドムーブ方式で行っても構わない。レーザ溶接を行う場合には、さらにガルバノスキャニング式レーザ溶接器等を採用することが可能である。
【0061】
なお、本実施形態の場合には、容器体10の周壁部12の上端開口縁にリッド部材20を上方から重ねた状態で溶接接合を行うので、ガルバノスキャニング方式を利用して、さらにヘッドムーブ方式を併用したレーザ溶接を行うことが好ましい。
【0062】
リッド部材20における中央部には、該リッド部材20を上下方向に貫通する貫通孔21が電池軸Oと同軸に形成されている。貫通孔21の形状は、特に限定されるものではないが、例えば平面視円形状に形成されている。
【0063】
このように構成されたリッド部材20は、金属製とされている。リッド部材20の具体的な金属材質としては、例えば容器体10と同種或いは別種の金属材質を採用することができる。リッド部材20の金属材質として、例えば容器体10と別種の金属材質を採用する場合には、容器体10と熱膨張係数が近似するものを採用することが好ましい。
さらにリッド部材20についても、容器体10と同様に、内面及び外面のいずれか一方、或いは内面及び外面の両方にメッキ処理を施して、金属メッキ膜を形成することが好ましい。金属メッキ膜としては、先に述べた金属メッキ膜を採用することができる。
【0064】
(集電板)
上述のように構成されたリッド部材20には、図1及び図2に示すように、シーラントフィルム(本発明に係る絶縁性のシール材)60を介して熱溶着(溶着)され、少なくとも一部分が外部(上方)に露出した集電板61が設けられている。
具体的には、シーラントフィルム60及び集電板61は、リッド部材20のうち収容空間5とは電池軸O方向の反対を向いた上面側に配置されている。そして、集電板61は、シーラントフィルム60を介してリッド部材20の上面に熱溶着され、全面に亘って上方に露出している。
【0065】
シーラントフィルム60は、リッド部材20に形成された貫通孔21を囲む環状に形成され、電池軸Oと同軸に配置された状態でリッド部材20の上面に重なるように配置されている。図示の例では、シーラントフィルム60は、貫通孔21の直径よりも小さい内径で形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、シーラントフィルム60の内径は、貫通孔21の直径と同等、或いは大きく形成されていても構わない。
【0066】
さらに、シーラントフィルム60は、内周縁部から下方に向けて折り返されるように形成され、リッド部材20の貫通孔21の内周面を全周に亘って径方向の内側から塞ぐ保護部60aを備えている。これにより、貫通孔21の内側からリッド部材20への意図しない導通(ショート)を防止することができ、好ましい。
【0067】
なお、シーラントフィルム60は、例えばポレオレフィン製の熱可塑性樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチックから形成されている。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等を挙げることができる。
さらにシーラントフィルム60としては、上述した各ポリオレフィンのコポリマーやブレンドポリマー、或いは不織布で強化されたポリプロピレン等の複合体を用いても良い。さらに、寸法、形状、或いは厚みの異なる複数のシーラントフィルム60を重ねて用いてもよい。
【0068】
さらにシーラントフィルム60としては、フッ素系樹脂を採用することが好ましい。具体的なフッ素系樹脂としては、例えばFEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)等が挙げられる。
【0069】
一般的にフッ素系樹脂は、高融点のため耐熱性が高い特性を有する。そのため、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を採用した場合には、容器体10とリッド部材20との溶接接合(溶封封止)時に、シーラントフィルム60に対する溶接熱の影響を抑制することができる。
さらにフッ素系樹脂は、耐薬品性が高く、且つ高密度の樹脂とされている。従って、フッ素系樹脂製のシーラントフィルム60とした場合であっても、シーラントフィルム60として十分な封止性を得ることができる。
さらには、フッ素系樹脂は線膨張係数が小さい特性を有する。従って、フッ素系樹脂製のシーラントフィルム60とした場合には、容器体10とリッド部材20との溶接接合時に熱膨張し難く、この点においても封止性に優れている。
【0070】
なお、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60とした場合、融着時の加工性に関しては、融点が例えば260℃~270℃の温度範囲内であることが好ましい傾向にある。保存時の劣化特性としては、吸水率が小さいほど好ましい傾向にある。さらに温度変化に対する耐性については、線膨張係数が小さいほど好ましい傾向にある。
従って、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を採用する場合には、融点、吸水率、線膨張係数等の各物性を鑑みて、具体的な材料(FEP、ETFE、PFA)を適宜選択することが良い。
【0071】
集電板61は、金属製のプレートであって、電極体30に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。図示の例では、集電板61は、シーラントフィルム60の外径よりも小さい直径で平面視円形状に形成されており、電池軸Oと同軸に配置された状態でシーラントフィルム60の上面に重なるように配置されている。これにより、集電板61は、貫通孔21を上方から塞いでいる。
【0072】
集電板61の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばニッケル等を好適に用いることができる。さらに集電板61の外部接続可能な面には、例えば金又はニッケル等といった良電性材料からなる金属、或いはこれらの金属を含む合金メッキ膜が形成されていても良い。
【0073】
上述したシーラントフィルム60は、リッド部材20の上面及び集電板61の下面に対してそれぞれ熱溶着されている。具体的には、シーラントフィルム60は、集電板61の下面に熱溶着によって一体に組み合わされた合成樹脂製の第1シール材と、リッド部材20の上面に熱溶着によって一体に組み合わされた合成樹脂製の第2シール材と、を互いに熱溶着することで形成されている。
これにより、集電板61は、シーラントフィルム60を介してリッド部材20の上面に熱溶着され、リッド部材20との間に絶縁性を維持しながら貫通孔21を上方から気密に封止している。
【0074】
なお、上述した第1シール材及び第2シール材を利用する場合に限定されるものではなく、例えばシーラントフィルム60をリッド部材20及び集電板61に対して直接的に熱溶着しても構わない。
特に、フッ素系樹脂のシーラントフィルム60を利用して、集電板61をリッド部材20に熱溶着する場合には、フッ素系樹脂が電磁波を吸収し難い傾向があるため、例えばシーラントフィルム60側を直接加熱(誘電加熱)するのではなく、集電板61側を誘導加熱することが好ましい。この際、電子の局所放電や反射等を避けるために、集電板61の表面を平滑面とするのではなく、表面粗さを大きくすることが好ましい。この場合、集電板61の表面のうち、少なくともシーラントフィルム60が熱溶着される部分の表面粗さを大きくしても構わないが、好ましくは集電板61の全面の表面粗さを大きくすることが良い。
さらに、電子の局所放電や反射を避ける方法して、先に述べたように、集電板61を平滑面やエッジ等がない形状とすることが良く、さらには上述の表面粗さを大きくする以外として、例えば以下の方法も有効である。
すなわち、プレス加工、鍛造を用いたC面取り加工や、フィレット加工等により集電板61の角部を落とすことも有効である。
【0075】
なお、シーラントフィルム60は、集電板61と容器体10とを絶縁している。そのため、本実施形態の二次電池1は、集電板61と容器体10とがそれぞれ、図示しない電子機器の接圧端子やホルダ等と接触することにより、電子機器の正極側端子及び負極側端子のうちのいずれかの端子に電気的に接続することができる。また、集電板61及び容器体10のうちの少なくとも一方に金属製の端子をさらに溶接した後、半田付けや溶接等により電子機器に電気的に接続しても良い。
【0076】
(発電要素)
図2に示す発電要素3は、電極体30及び図示しない電解液を含み、外装体2内部の収容空間5内に密封状態で収容されている。
電解液としては、例えば支持塩を非プロトン性の非水溶媒に溶解させた液体を好適に用いることが可能である。支持塩としては、例えばフルオロリン酸リチウム(LiPF6)等を用いることができる。溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)と共に低沸点溶媒を用いることができる。
【0077】
ただし、発電要素3は、電解液に代えて、例えば固体電解質、ポリマー電解質、ゲル電解質等の電解質を利用した電極体30を採用しても構わない。ポリマー電解質としては例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)やポリプロピレンオキサイド(PPO)やそれら含むブレンドポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン等を挙げることができる。また、電解液にポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン、PVdF-HFP)を含有したゲル電解質を用いても良い。
【0078】
(電極体)
図3及び図4に示すように、電極体30は、正極電極40及び負極電極50が図示しないセパレータを挟んで電池軸O方向に交互に積層されるように例えば扁平に捲回された、いわゆる積層型電極とされている。なお、図2では電極体30の図示を簡略化している。
電極体30は、平面視で外形が円形状となるように形成されている。ただし、電極体30の外形形状は、この場合に限定されるものではなく、その他の形状、例えば楕円状、長円形状或いは菱形状等であっても良く、適宜変更して構わない。
【0079】
本実施形態の正極電極40及び負極電極50は、セパレータを挟んで捲回されることで互い違いに積層されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば正極電極40及び負極電極50が互いに交差する方向からそれぞれつづら折り形状に折り畳まれることで、互い違いに積層されても構わない。さらには、セパレータの両面に正極電極40と負極電極50とを具備する、いわゆるペレット型の電極体としても構わない。
【0080】
電極体30の構造について簡単に説明する。
正極電極40は、捲回前における展開した状態において帯状に形成された正極集電体(正極集電箔)41と、正極集電体41の両面に形成された図示しない正極活物質層と、を備えている。
【0081】
正極集電体41は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属材料で厚みの薄いシート状(金属箔)に形成され、複数の正極本体42及び複数の正極接続片43を備えている。正極集電体41の厚みとしては、例えば数μm~10数μm程度である。なお、正極集電体41は、金属箔のほか、例えばエッチング箔、エンボス加工を施した箔(凹凸加工)、パンチングメタル(貫通孔加工)、エキスパンドメタル、焼結金属体、若しくは発泡金属体等を用いることができる。
正極本体42は、例えば円板状に形成され、捲回前における展開した状態において一列に並ぶように間隔をあけて配置されている。正極接続片43は、捲回前における展開した状態において隣接する正極本体42の間に配置され、隣接する正極本体42同士を接続している。複数の正極本体42のうち、捲回状態において最外周に配置される正極本体42には、正極端子タブ44が形成されている。
【0082】
正極活物質層は、正極端子タブ44を除いた正極集電体41の両面に形成されている。正極活物質層の形成材料として、正極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して正極用スラリーを作製することができる。なお、正極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「正極用スラリー」ということができる。この正極用スラリーを正極集電体41に塗布し、乾燥させることにより正極活物質層を形成できる。
正極活物質としては、例えばニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム(NMC)、ニッケル-コバルト-アルミ酸リチウム(NCA)、チタン酸リチウム(LTO)、マンガン酸リチウム(LMO)等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が挙げられる。
【0083】
負極電極50は、捲回前における展開した状態において帯状に形成された負極集電体(負極集電箔)51と、負極集電体51の両面に形成された図示しない負極活物質層と、を備えている。
【0084】
負極集電体51は、例えば銅、銅合金、ニッケル及びステンレス等の金属材料で厚みの薄いシート状(金属箔)に形成され、複数の負極本体52及び複数の負極接続片53を備えている。負極集電体51の厚みとしては、例えば数μm~10数μm程度である。なお、負極集電体51は、金属箔のほか、例えばエッチング箔、エンボス加工を施した箔(凹凸加工)、パンチングメタル(貫通孔加工)、エキスパンドメタル、焼結金属体、若しくは発泡金属体を用いることができる。
負極本体52は、正極本体42と同様に例えば円板状に形成され、捲回前における展開した状態において間隔をあけて配置されている。負極接続片53は、捲回前における展開した状態において隣接する負極本体52の間に配置され、隣接する負極本体52同士を接続している。複数の負極本体52のうち、捲回状態において最外周に配置される負極本体52には、負極端子タブ54が形成されている。
【0085】
なお、負極電極50は、外形形状が先に述べた正極電極40の外形形状に対して同等の相似形状とされている。ただし、正極電極40の外形サイズは、負極電極50の外形サイズよりも僅かに小さく(一回り小さく)形成されている。具体的には、正極電極40の外径サイズは、正極電極40の厚みと同等以上、且つ負極電極50の外径サイズよりも小さいことが好ましい。例えば、正極電極40の外形サイズは、負極電極50の外形サイズよりも20μm以上小さいことが好ましく、50μm以上小さいことがより好ましい。
【0086】
負極活物質層は、負極端子タブ54を除いた負極集電体51の両面に形成されている。負極活物質層の形成材料として、負極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン等)、増粘剤(例えば、セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、溶剤(例えば、純水等の任意の溶媒)を混合して負極用スラリーを作製することができる。なお、負極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「負極用スラリー」ということができる。この負極用スラリーを負極集電体51に塗布し、乾燥させることにより負極活物質層を形成することができる。
負極活物質としては、例えばシリコン、シリコン酸化物、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム(LTO)、LiAl等の単体又は混合物等が挙げられる。
【0087】
上述のように構成された正極電極40及び負極電極50は、先に述べたようにセパレータを挟んで捲回されることで、互い違いに積層されている。そして、捲回によって得られた電極体30は、図3及び図4に示すように、正極端子タブ44が形成された正極本体42が最下段に位置し、負極端子タブ54が形成された負極本体52が最上段に位置する。従って、電極体30は、正極端子タブ44が下方を向き、負極端子タブ54が上方を向くように配置された状態で外装体2内に収容される。
【0088】
なお、セパレータは、例えばポリオレフィン等の樹脂製のマイクロポーラスフィルムや、ガラス製若しくは樹脂製の不織布、セルロース繊維等の繊維の積層体等により形成され、図示しないイオン透過孔を通じてリチウムイオンを通過させることが可能とされている。さらにセパレータとして、例えば空孔内に電解液を保持できる多孔質体や、リチウムイオン導電性を有する樹脂層等を採用できる。
【0089】
さらに電極体30は、正極電極40及び負極電極50のうちの一方の電極が集電板61に導通(電気的接続)し、他方の電極が容器体10に導通(電気的接続)している。なお、電気的接続とは、例えば炭素系材料を介した接触、金属同士の溶接、或いは金属同士の接触等が挙げられる。
【0090】
本実施形態では、負極電極50を集電板61に導通させ、正極電極40を容器体10に導通させている。これにより、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させることができ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができる。
ただし、この場合に限定されるものではなく、負極電極50を容器体10に導通させることで、容器体10を負極用の外部接続端子として機能させ、正極電極40を集電板61に導通させることで、集電板61を正極用の外部接続端子として機能させても構わない。
【0091】
負極電極50を集電板61に導通させる場合には、例えば負極端子タブ54を、リッド部材20の貫通孔21及び後述する第1シム部材71の貫通孔73を通じて、直接的に集電板61に対して電気的接続させても構わないし、負極端子タブ54と集電板61とを繋ぐ図示しないリード線に相当する導体を貫通孔21、73の内側に配置させることで、負極端子タブ54と集電板61とを電気的接続させても構わない。
同様に、正極電極40を容器体10に導通させる場合には、例えば正極端子タブ44を直接的に容器体10に対して電気的接続させても構わないし、図示しないリード線に相当する導体を介して正極端子タブ44と容器体10とを電気的接続させても構わない。さらには、負極端子タブ54を後述する第2シム部材80を通じて容器体10に導通させても構わない。この場合、第2シム部材80は導電性材料で形成すれば良い。
【0092】
(シム部材)
図2に示すように、外装体2の収容空間5内には、リッド部材20及び底壁部11のうちの少なくとも一方の部材と、電極体30との間に電池軸O方向に挟み込まれた状態でシム部材4が配置されている。
本実施形態では、シム部材4は、リッド部材20と電極体30との間、及び底壁部11と電極体30との間にそれぞれ配置されている。これにより、リッド部材20は、電極体30及び2つのシム部材4を介して底壁部11に対して電池軸O方向に重なるように配置されている。
【0093】
シム部材4のうち、リッド部材20と電極体30との間に配置されるシム部材4を第1シム部材70といい、底壁部11と電極体30との間に配置されるシム部材4を第2シム部材80という。
第1シム部材70及び第2シム部材80は、リッド部材20と電極体30との間に形成された隙間、及び底壁部11と電極体30との間に形成された隙間を埋める部材であって、概略プレート状に形成されている。ただし、シム部材4(第1シム部材70及び第2シム部材80)の形状や材質等は、特に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0094】
例えばシム部材4としては、導電性材料で形成しても構わないし、絶縁性材料で形成しても構わない。
導電性材料でシム部材4を形成する場合、例えばカーボンフェルト、カーボンクロス、発泡金属体、導電性樹脂等によって形成することができ、具体的には金属網、金属製ばね等を利用することが可能である。特に、導電性材料でシム部材4を形成する場合には、例えば金又はニッケル等といった良電性材料で形成することが好ましい。また、導電性樹脂として、例えばCNT、グラフェン、黒鉛、カーボンブラック等のカーボン類を含有したフェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、ペースト状として塗布した後に、固化することにより形成することができる。
【0095】
絶縁性材料でシム部材4を形成する場合、例えばガラス製マット、ガラス繊維のマット、セラミック製マット、セラミック繊維のマット、紙製マット、セルロース製ファイバーのマット、熱可塑性樹脂製のマット、発泡体のマット、繊維状のマットや、マイクロポーラスPMFフィルム等を利用することが可能である。
特に、熱可塑性樹脂としてエンジニアプラスチック製の熱可塑性樹脂を採用した場合には、バインダを用いて膠着或いは溶着によって形成しても構わない。
さらにシム部材4としては、例えば無数の孔部(貫通した孔部及び未貫通の孔部を含む)が形成された多孔質状(スポンジ状)に形成されていても構わない。
【0096】
本実施形態では、図2及び図5に示すように、第1シム部材70は下方に凹んだ平面視円板状の平皿状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。
具体的には、第1シム部材70は、電極体30に対して上方から重なるように配置された平面視円形状のシムプレート71と、シムプレート71の外周縁部の全周に亘って連設され、上方に向かって湾曲しながら折り曲げられた折曲部72と、を備えている。
【0097】
シムプレート71の中央部には、該シムプレート71を上下に貫通する貫通孔73が形成されている。貫通孔73は、平面視円形状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。これにより、シムプレート71は、リング状に形成されている。
貫通孔73の直径は、例えばリッド部材20に形成された貫通孔21と同径とされている。ただし、貫通孔73の直径は、リッド部材20に形成された貫通孔21のサイズに関係なく、適宜変更して構わない。なお貫通孔73の形状は、例えば平面視矩形状、多角形状でも構わない。貫通孔73の形成位置は、電池軸Oに対して径方向にずれた位置に形成されていても構わない。
【0098】
折曲部72は、上端縁がリッド部材20に対して下方から接触している。これにより、第1シム部材70は、電極体30とリッド部材20との間の隙間を埋めるように、電極体30とリッド部材20との間に挟まれた状態で配置されている。
さらに本実施形態では、第1シム部材70は、折曲部72が容器体10の周壁部12に対して当接、径方向の内側から或いは近接する程度の直径で形成されている。ただし、第1シム部材70の直径は、この場合に限定されるものではなく、例えば電極体30の外径よりも小さく形成されても構わない。
【0099】
図2に示すように、第2シム部材80は、電極体30の外径よりも僅かに小さい直径で形成された平面視円板状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。ただし、第2シム部材80の直径は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。さらに第2シム部材80の形状は、例えば平面視矩形状、多角形状でも良く、適宜変更して構わない。
第2シム部材80は、電極体30と底壁部11との間の隙間を埋めるように、電極体30と底壁部11との間に挟まれた状態で配置されている。なお、第2シム部材80は、底壁部11に対して重なるように配置されていても構わないし、底壁部11に一体に固定されても構わない。
【0100】
(二次電池の作用)
上述のように構成された二次電池1によれば、図1及び図2に示すように、負極用の外部接続端子として機能する集電板61が外部に露出し、正極用の外部接続端子として機能する容器体10が外部に露出しているので、これら集電板61及び容器体10を利用して、二次電池1を使用することが可能となる。
【0101】
特に、本実施形態の二次電池1によれば、図2に示すように、収容空間5内に電極体30に加えて第1シム部材70及び第2シム部材80が収容されている。第1シム部材70は、リッド部材20と電極体30との間に電池軸O方向に挟み込まれるように配置され、リッド部材20と電極体30との間に形成される隙間を埋めている。第2シム部材80は、底壁部11と電極体30との間に電池軸O方向に挟み込まれるように配置され、底壁部11と電極体30との間に形成される隙間を埋めている。
【0102】
従って、二次電池1の製造時、容器体10に対してリッド部材20を組み合わせたときに、電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80を介してリッド部材20を底壁部11に対して電池軸O方向に重なるように配置することができ、リッド部材20を支持することができる。
【0103】
従って、リッド部材20を含む外装体2の全体を例えば薄肉に形成したとしても、容器体10とリッド部材20との溶接接合の前段階で、リッド部材20が撓んでしまう等の意図しない変形を抑制することができる。従って、容器体10に対するリッド部材20の位置ずれ等を抑制した状態で、溶接作業を行うことができ、作業効率を向上させて、生産性の向上化に繋げることができる。さらに、容器体10とリッド部材20とを精度良く適切に溶接することができ、確実な封止性を得ることができる。従って、作動信頼性が高く高品質な二次電池1とすることができる。
【0104】
さらに、収容空間5内に第1シム部材70及び第2シム部材80を配置するだけであるので、収容空間5内のスペースを有効に利用することができ、電極体30のサイズをできるだけ大きくすることができるうえ、特定の構造タイプに限定されることなく、種々の電極体30を幅広く適用することができる。
特に、本実施形態では、扁平に捲回された積層型電極である電極体30とされ、セパレータを挟んで対向する正極電極40及び負極電極50同士の面積を大きく確保し易いので、短時間に例えば電流レートで1C(Capacity rate)以上の大電流で充放電(ハイレート充放電)を行うことができる。従って、充放電特性に優れた二次電池1とすることができる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の二次電池1によれば、外装体2を薄肉にしたとしても、確実な封止性を得ることができると共に、生産性の向上化に繋げることができる。
特に、収容空間5内に2つのシム部材4(第1シム部材70及び第2シム部材80)を配置して、リッド部材20と電極体30との間の隙間、及び底壁部11と電極体30との間の隙間のそれぞれを埋めているので、リッド部材20をより安定して支持することができる。従って、リッド部材20が撓んでしまう等の意図しない変形を効果的に抑制することができ、容器体10に対するリッド部材20の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0106】
さらに、集電板61をリッド部材20の上面側に配置しているので、集電板61を全面に亘って大きく露出させることができる。従って、集電板61を負極用の外部接続端子として有効に利用し易く、使い易く、実装性に優れた二次電池1とすることができる。
【0107】
さらに本実施形態の二次電池1において、容器体10及びリッド部材20を、先に述べたクラッド材等で形成した場合や、容器体10及びリッド部材20にメッキ処理等を施した場合には、例えば何等かの要因によって二次電池1が発熱する等して内圧が上昇したときに、金属界面を剥離させて内圧を外部に解放させるといったフェールセーフ対策を図ることも可能である。
【0108】
また、先のクラッド材が異なる熱膨張係数を有する金属で形成されている場合には、所望の温度に達したときに、その温度での熱だけで変形し、上述のフェールセーフ機能を発揮させることができる。なお、熱膨張係数の小さい材料として、例えば時計用のバネ材料に用いられるCo基合金やNi基合金等を使用することができる。この場合、電池の内面側に熱膨張性の高い材料を用い、外側には熱膨張係数の小さい材料を配置するクラッド材を利用することができる。さらに、表面の接触抵抗の低減のため、熱膨張係数の小さい側の金属(外側)の表面にニッケル等のメッキを施すことが可能である。
【0109】
なお、本実施形態において、シム部材4(第1シム部材70及び第2シム部材80)は、絶縁性材料で形成しても構わないし、導電性材料で形成しても構わない。
シム部材4を絶縁性材料で形成した場合には、リッド部材20、容器体10及び電極体30に対する導通を考慮する必要がないので、シム部材4を制約少なく設計することができ、設計自由度を向上することができる。
【0110】
シム部材4を導電性材料で形成した場合には、シム部材4を導体として利用することができるので、例えば正極電極40及び負極電極50のうちの少なくとも一方の電極を、シム部材4を通じて容器体10又は集電板61に導通させることができる。従って、専用のリード部材の削減と併せて、電気抵抗を低減させ易く、電池性能の向上化を図り易い。
例えば本実施形態において、第2シム部材80を導電性材料で形成すると共に、正極端子タブ44を第2シム部材80に導通させても構わない。これにより、第2シム部材80を介して正極電極40と容器体10とを導通させることができ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができる。
【0111】
(二次電池の製造方法)
次に、第1実施形態の二次電池1の製造方法の一例について以下に簡単に説明する。
なお、上記第1実施形態では、集電板61とリッド部材20とをシーラントフィルム60を介して熱溶着した場合を説明したが、シーラントフィルム60は例えば単層の合成樹脂層であっても構わないし、多層の合成樹脂層が接合されることで形成されていても構わない。さらには、セラミックやガラス等の無機材料からなるシール材であっても構わない。
【0112】
以下に説明する第1製造方法及び第2製造方法では、先に述べたように合成樹脂製の第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着することで、シーラントフィルム60としている場合を例にしている。
【0113】
<第1製造方法>
はじめに、集電板61の下面に第1シール材を重ね合わせ、両者を熱溶着によって一体に組み合わせる工程を行う。これにより、集電板61と第1シール材とが一体に組み合わされた集電板アッセンブリを得ることができる。
本工程と同時、或いは前後して、リッド部材20の上面に第2シール材を重ね合わせ、両者を熱溶着によって一体に組み合わせる工程を行う。これにより、リッド部材20と第2シール材とが一体に組み合わされたリッド部材アッセンブリを得ることができる。
【0114】
ここで、上述の2工程を行う場合、熱溶着の方法としてヒーターによる加熱のほか、レーザビームの照射による加熱、高周波を利用した誘導加熱といった手法を用いても良い。これらの手法を用いることで、ヒーターを用いて各部材を加熱する場合に比べて、より短時間で、且つ局所的、選択的に加熱を行うことができ、樹脂製の第1シール材及び第2シール材への熱の影響を抑制しつつ、効率的に熱溶着を行うことができる。
【0115】
レーザビームの照射の場合、例えば、集電板61に第1シール材を配置した後、ファイバーレーザやYAGレーザ等のレーザ照射機を用いて、第1シール材の上方からレーザビームを照射する。このとき、レーザビームは第1シール材を透過して集電板61に吸収されることで、集電板61が局所的に加熱される。これにより、加熱によって生じた集電板61の熱により第1シール材が局所的に溶融し、集電板61と密着する。このようにして集電板61の下面に第1シール材を密着性よく重ね合わせた状態で接合することができる。
【0116】
なお、レーザビームの照射径は、数十μm程度であり、これを連続的或いはパルスとして線形に照射することができる。このとき、集電板61と第1シール材とが重なりあう円環状の領域において、レーザビームを円周状に照射することで、集電板61と第1シール材とをリング状に熱溶着することができる。そして、このような円周状の溶着箇所を、同心円状に複数形成することで、溶着面積が小さくても充分に溶着強度を得ることができる。これにより、第1シール材への熱の影響を抑制することができる。
【0117】
また、誘導加熱を行う場合には、例えば、集電板61に第1シール材を配置した後、利用する電磁波を上方から照射する。このとき、レーザビームの照射と同様に、集電板61が選択的に加熱されることで発熱し、さらに第1シール材のうち集電板61と接触する表面部分のみが局所的に溶融して集電板61と密着する。また誘導加熱の条件によっては、集電板61の発熱のみならず、第1シール材が電磁波の照射により誘電加熱されることで溶融し、集電板61と密着する場合もある。このようにして集電板61の下面に第1シール材を密着性よく重ね合わせた状態で接合することができる。
【0118】
なお、誘導加熱には、例えば超長波(VLF)~センチメートル波(SHF)の周波数帯の電磁波を利用することができる。具体的には、例えば300MHz~30GHzの周波数帯のいわゆるマイクロ波を用いることができる。特に、周波数が2.45GHz帯のマグネトロンを用いた発振器を用いることで、照射装置を安価に構成することができる。
さらに、コイル式の装置を用いて、10~500kHzの周波数帯、特に電磁誘導加熱式調理器に用いられる20~100kHzの周波数帯の電磁波を照射することも好適である。
【0119】
集電板61と第1シール材との熱溶着と同様に、上述した手法により、リッド部材20と第2シール材についても熱溶着することができる。
なお、予め、集電板61やリッド部材20の金属表面、第1シール材や第2シール材の樹脂表面にそれぞれ表面処理を施すことで、集電板61と第1シール材との密着性、及びリッド部材20と第2シール材との密着性をさらに向上させることができる。具体的には例えば、電子線照射等を用いて金属表面の酸化被膜を除去する等して、清浄な面とすることができる。さらに電子線照射やオゾン酸化といった手法を用いて、樹脂表面を改質し性状を整えることができる。
さらに、表面処理を施したこれらの金属表面、或いは樹脂表面に予めプライマーを塗布した後、上述の2工程の熱溶着を行うことで、密着性をさらに向上させることができる。
【0120】
上述の2工程が終了した後、第1シール材と第2シール材とが重なり合うように、集電板アッセンブリとリッド部材アッセンブリとを組み合わせた後、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着する工程を行う。これにより、第1シール材及び第2シール材が熱溶着によって一体化したシーラントフィルム60を介して、集電板61とリッド部材20とを一体的に組み合わせることができる。
【0121】
上述した工程と同時、或いは前後して、電極体30を形成する工程を行うと共に、容器体10の底壁部11上に第2シム部材80を組み合わせる工程を行う。この際、第2シム部材80は、容器体10の底壁部11上に重ねるようにセットしても構わないし、底壁部11上に一体に固定するようにセットしても構わない。
次いで、容器体10の内部に電解液を注液した後、電解液が満たされた容器体10の内部に電極体30を収容すると共に、電極体30上に重ねるように第1シム部材70をセットする工程を行う。
【0122】
次いで、容器体10に対してリッド部材20を重ねるように組み合わせる工程を行う。これにより、リッド部材20を、電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80を介して底壁部11に対して電池軸O方向に重なるように配置することができる。従って、リッド部材20を電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80を利用して支持することができる。
【0123】
最後に、容器体10における周壁部12とリッド部材20の外周縁部とを全周に亘って溶接する工程を行う。本工程では、先に述べたように、レーザ溶接、超音波接合、シーム溶接等の抵抗溶接や、摩擦撹拌接合等を採用することができる。これにより、容器体10とリッド部材20とを互いに溶接接合することができ、電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80が収容された収容空間5が密封された外装体2とすることができる。その結果、図1及び図2に示す二次電池1を製造することができる。
【0124】
特に、上述した溶接作業を行う際に、例えば上方から加圧しながらレーザ溶接を行うことができる。従って、容器体10とリッド部材20とを強固且つ容易に溶接接合し易く、収容空間5を高い気密性で封止することが可能である。さらに、リッド部材20を平坦なプレート状に形成できるので、リッド部材20の加工が容易であり、低コスト化を図ることができる。ただし、溶接作業は、レーザ溶接に限定されるものではない。
【0125】
なお、溶接時、リッド部材20の外周縁部に対して、上方からレーザビーム等を照射することで、リッド部材20の外周縁部及び容器体10の周壁部12の上端開口縁を局所的に加熱して溶融させることができる。そして、両者が融け合った溶融池を固化させることで図示しない溶融金属部を形成することができ、リッド部材20の外周縁部と容器体10の周壁部12とを全周に亘って溶接接合することができる。
【0126】
特に、レーザビーム等のビーム径を絞る等して照射強度を高めることで、溶融池を深く形成することが可能となり、溶接接合強度を高めることができる。従って、強固な溶接を行うという観点によれば、リッド部材20の板厚を厚くすることが好ましい。
なお、レーザビーム等を照射する際、リッド部材20の外周縁部に対して上方からレーザビームが照射されれば良く、例えばリッド部材20の外周縁部の上方から真下に向けてレーザビームを照射しても構わないし、リッド部材20の上方で且つ電池軸O側から斜め下方に向けてレーザビームを照射しても構わないし、リッド部材20の上方で且つ容器体10の外側から斜め下方に向けてレーザビームを照射しても構わない。
【0127】
<第2製造方法>
次に、第1製造方法とは異なる工程順番で二次電池1を製造する第2製造方法について説明する。本製造方法では、リッド部材20に形成された貫通孔21を利用して、電解液を最後に注液する方法である。ただし、上記貫通孔21とは別に注液用の貫通孔をリッド部材20に予め形成する工程を行っても構わない。
【0128】
本製造方法では、第1製造方法と同様に、集電板61と第1シール材とを一体に組み合わせた集電板アッセンブリ、及びリッド部材20と第2シール材とを一体に組み合わせたリッド部材アッセンブリを形成する工程を行う。
【0129】
上述した工程と同時、或いは前後して、電極体30を形成する工程を行うと共に、容器体10の底壁部11上に第2シム部材80を組み合わせる工程を行う。次いで、容器体10の内部に電極体30を収容すると共に、電極体30上に重ねるように第1シム部材70をセットする工程を行う。なお、この段階では、まだ電解液を注液しない。
【0130】
次いで、容器体10に対してリッド部材アッセンブリを重ねるように組み合わせる工程を行う。これにより、リッド部材アッセンブリを、電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80を介して底壁部11に対して電池軸O方向に重なるように配置することができる。従って、リッド部材アッセンブリを電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80を利用して支持することができる。次いで、容器体10における周壁部12とリッド部材アッセンブリの外周縁部とを全周に亘って溶接する工程を行う。
【0131】
そして上記溶接作業を行った後、リッド部材20に形成された貫通孔21を通じて、容器体10の内部に電解液を注液する工程を行う。この際、例えば真空中で電解液を注液することも可能である。
最後に、第1シール材と第2シール材とが重なり合うように、リッド部材アッセンブリに対して集電板アッセンブリを組み合わせた後、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着する工程を行う。これにより、第1シール材及び第2シール材が熱溶着によって一体化したシーラントフィルム60を介して、集電板61とリッド部材20とを一体的に組み合わせることができると共に、貫通孔21を塞ぐことができる。
【0132】
その結果、図1及び図2に示す二次電池1を製造することができる。
特に、本製造方法によれば、容器体10とリッド部材20との溶接接合後に、電解液を注液するので、電解液が溶接時の影響を受けることがない。従って、溶接作業を行い易くなるうえ、電解液の品質、特性等を維持し易い。
【0133】
以上、二次電池1の製造方法として、第1製造方法及び第2製造方法を例に挙げて説明したが、これらの方法に限定されるものではない。また、先に述べたように、第1製造方法及び第2製造方法では、第1シール材及び第2シール材同士を熱溶着することでシーラントフィルム60を形成したが、1枚(単層)のシーラントフィルム60を採用しても構わない。
この場合には、集電板アッセンブリ及びリッド部材アッセンブリをそれぞれ作製する必要がなく、1枚のシーラントフィルム60を介して、集電板61とリッド部材20とを一体的に組み合わせれば良い。
【0134】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、第1シム部材70及び第2シム部材80の両方を具備する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、第1シム部材70又は第2シム部材80のいずれか一方だけを用いても構わない。電極体30とリッド部材20との間の隙間や、電極体30と底壁部11との間の隙間等に応じて、使用するシム部材4の枚数等を決定すれば良い。
【0135】
さらに上記実施形態では、第1シム部材70を平皿状に形成し、第2シム部材80を平板状に形成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。
例えば平坦なリングプレート状に形成された第1シム部材70を採用しても構わないし、平皿状に形成された第2シム部材80を採用しても構わない。
【0136】
さらに上記第1実施形態において、図6に示すように、平皿状に形成された第1シム部材70を上下反転させ、シムプレート71がリッド部材20の下面に接触するようにセットしても構わない。この場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、この場合には、シムプレート71から下方に向けて折曲部72が延びるように第1シム部材70を配置できるので、容器体10の周壁部12の上端部とリッド部材20と折曲部72とによって、周囲が囲まれた環状の空間部(断熱空間)81を収容空間5内に形成することができる。これにより、容器体10とリッド部材20との溶接時に、溶融金属由来の成分(例えば溶接ヒューム等の蒸気、プラズマプルーム、デブリ等)によって、電極体30が汚損する等の不都合が生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0137】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0138】
図7に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)90は、第1シム部材91が電池軸O方向に弾性変形可能とされた皿ばねとされている。
図7及び図8に示すように、第1シム部材91は、中央部に貫通孔92が形成され、且つ内周縁部93から外周縁部94に向かうにしたがって下方に向けて延びる円錐状(断面テーパ状)に形成されている。
【0139】
第1シム部材91は、電極体30とリッド部材20との間に電池軸Oと同軸に配置されている。図示の例では、第1シム部材91は、内径がシーラントフィルム60の保護部60aを径方向外側から囲むサイズとされ、外径が周壁部12の内側に収まるサイズとされている。
【0140】
(二次電池の作用)
上述のように構成された本実施形態の二次電池90であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。それに加え、容器体10に対してリッド部材20を組み合わせたときに、第1シム部材91を電池軸O方向に弾性変形させることができるので、リッド部材20と電極体30との間に形成される隙間に対応するように第1シム部材91の厚みを予め調整しなくても、第1シム部材91を利用して隙間を適切に埋めることができる。
従って、電極体30、第1シム部材91及び第2シム部材80を利用してリッド部材20をさらに安定して支持することができ、容器体10に対するリッド部材20の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0141】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態において、図9に示すように、集電板61と電極体30との間に第1シム部材91が挟み込まれるように、リッド部材20に形成された貫通孔21の内側を利用して第1シム部材91を配置させても構わない。
この場合には、第1シム部材91は、内径がリッド部材20に形成された貫通孔21の直径よりも小さく、且つ外径が貫通孔21の直径よりも大きくなるように形成されている。これにより、集電板61と電極体30との間に挟み込まれるように第1シム部材91を配置することができる。
【0142】
なお、第1シム部材91は、シーラントフィルム60の保護部60aによってリッド部材20に対する接触が防止されている。そのため、第1シム部材、91を導電性材料で形成したとしても、第1シム部材91を通じて、集電板61とリッド部材20とが導通してしまうことを防止することができる。
【0143】
このように構成した二次電池90であっても、集電板61がリッド部材20に対して一体に組み合わされているため、電極体30、第1シム部材91及び第2シム部材80を利用してリッド部材20を支持することができ、第2実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
なお、上記第2実施形態において、例えば皿ばね状の第1シム部材91を電池軸O方向に互いに上下反転させながら複数組み合わせて使用しても構わない。
【0144】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0145】
図10及び図11に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)100は、リッド部材の形状が第1実施形態と異なっている。
本実施形態のリッド部材(本発明に係る封口板)110は、平面視円形状に形成され、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合うように配置された頂壁部111と、頂壁部111における外周縁部94の全周に亘って連設され、頂壁部111から上方に向かって延びた内側周壁部112と、を備えた有頂円筒状に形成されている。
【0146】
リッド部材110は、容器体10における周壁部12の上端開口縁よりも頂壁部111が下方に位置し、且つ周壁部12の上端開口縁と内側周壁部112の上端開口縁とが面一となるように、周壁部12の内側に配置されている。これにより、内側周壁部112は、容器体10の周壁部12の内側に径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。なお、頂壁部111の中央部に貫通孔21が形成されている。
【0147】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池100によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、組立作業時、溶接作業を行う前に、容器体10の周壁部12の内側にリッド部材110を、例えばしまり嵌めのような嵌め合い関係で嵌め込むことができる。従って、容器体10とリッド部材110とを溶接接合することで、収容空間5内をさらに高い気密封止性で封止することができる。
【0148】
なお、容器体10の周壁部12の内側にリッド部材110を嵌め込む際に、例えば容器体10内の気体を外部に逃がす微小孔をリッド部材110に予め形成しても構わない。この場合には、容器体10の周壁部12の内側へのリッド部材110の嵌め込みに伴って、容器体10内の圧力を微小孔を通じて逃がすことができるので、容器体10の内圧が意図せずに高くなることを防止することができる。なお、微小孔は最終的に封止すれば良い。
【0149】
さらに溶接作業を行う際に、周壁部12の上端開口縁及び内側周壁部112の上端開口縁が共に同一方向である上方を向いているので、例えば上方からアプローチしながらレーザ溶接等を行うことができる。従って、例えば突合せ溶接等によって、周壁部12と内側周壁部112とを強固且つ容易に溶接接合することができ、収容空間5内を高い気密封止性で封止することができる。
【0150】
なお、本実施形態の場合には、周壁部12と内側周壁部112との境界部分に上方からレーザビーム等を照射することによって溶接接合を行うことができるが、ビーム径を絞る等して照射強度を高めることで、溶融池を深く形成することができる。従って、溶接接合強度を高めることができ、確実な溶接を行うことが可能である。
【0151】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態において、図12に示すように、容器体10の周壁部12が上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけて延びるように形成しても構わない。すなわち、周壁部12が上方にむけて徐々に拡径するように容器体10を形成しても構わない。
【0152】
具体的には、図13に示すように、周壁部12は、底壁部11の外周縁部94から上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけて延びる第1周壁部12aと、第1周壁部12aの上端部から上方に向かうにしたがって径方向の外側にむけてさらに延びる第2周壁部12bと、を備えている。
【0153】
第1周壁部12aは、底壁部11に垂直な法線Nに対して第1傾斜角度θ1で傾斜しており、上方に向かうにしたがって拡径するように形成されている。第2周壁部12bは、上記法線Nに対して、第1傾斜角度θ1よりも大きい第2傾斜角度θ2で傾斜しており、上方に向けて第1周壁部12aよりも大きく拡径するように形成されている。
このように、容器体10は、第1周壁部12a及び第2周壁部12bによって、上方に向けて2段階に拡径する逆テーパー筒状に形成されている。
【0154】
図12に示すように、リッド部材110は、内側周壁部112が、第2周壁部12bの形状に対応して、頂壁部111の外周縁部94から上方に向かうにしたがって径方向の外側に向けて延びるように形成され、且つ法線Nに対して第2傾斜角度θ2で傾斜するように形成されている。これにより、内側周壁部112は、第2周壁部12bに対して全周に亘って隙間なく接している。従って、リッド部材110は、第2周壁部12bの内側に内側周壁部112が径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。
【0155】
上述のように構成された二次電池100であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、容器体10に対してリッド部材110を組み合わせたときに、第2周壁部12bが傾斜しているため、第2周壁部12bに対して内側周壁部112を上方から重ねた状態でリッド部材110を組み合わせることができる。これにより、電極体30、第1シム部材70及び第2シム部材80による支持に加えて、第2周壁部12bをさらに利用してリッド部材110を支持することができる。従って、容器体10に対するリッド部材110の位置ずれ等を効果的に抑制した状態で溶接作業を行うことができ、容器体10とリッド部材110とをさらに精度良く適切に溶接接合することができる。
【0156】
なお、溶接作業を行う場合には、第2周壁部12b及び内側周壁部112に対してレーザビーム等を適切に照射するために、例えばリッド部材110の上方から内側周壁部112に向かうように斜め下方にレーザビーム等を照射、或いは容器体10の外側から第2周壁部12bに向かうように水平或いは斜め上方にレーザビーム等を照射しても構わない。
【0157】
さらに容器体10の第1周壁部12aが第1傾斜角度θ1で傾斜しているため、例えば成形金型等を利用したプレス加工によって容器体10を形成する場合であっても、成形金型から容器体10を離型し易くなる。従って、二次電池100の製造効率の向上化に繋げることができる。
【0158】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0159】
図14に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)120は、リッド部材(本発明に係る封口板)130が、頂壁部111と、頂壁部111における外周縁部から上方に向かって延びた内側周壁部112と、内側周壁部112の上端部から径方向の外側に向かって延びた環状のフランジ部131と、を備えている。
内側周壁部112は、容器体10における周壁部12よりも上方に向けて僅かに突出している。フランジ部131は、内側周壁部112の上端部から径方向の外側に向けて延びており、周壁部12の上端開口端に対して全周に亘って上方から重なった状態で溶接接合されている。
【0160】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池120によれば、第4実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、組立作業時、リッド部材130を容器体10の周壁部12の上端開口縁に上方から重ね合わせた後、例えばリッド部材130を上方から加圧しながら溶接を行える。従って、容器体10とリッド部材130とを強固に溶接接合し易く、収容空間5をさらに高い気密性で封止することが可能である。
【0161】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
上記第1実施形態では、集電板61をリッド部材20の上面側に配置した構成としたが、本実施形態では、集電板61をリッド部材20の下面側に配置している。
【0162】
図15に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)140は、集電板61がシーラントフィルム60を介してリッド部材20の下面に溶着されている。これにより、集電板61は、リッド部材20に形成された貫通孔21を下方から塞ぐように、リッド部材20に対して一体的に組み合わされている。従って、集電板61は、貫通孔21を通じて上方に向けて部分的に露出している。
【0163】
さらに本実施形態のシム部材4は、集電板61と電極体30との間に配置された第1シム部材141を備えている。この場合であっても、第1シム部材141は、集電板61を挟んでリッド部材20と電極体30との間に電池軸O方向に挟まれた状態で配置され、リッド部材20と電極体30との間の隙間を埋めるように配置されている。
【0164】
さらに本実施形態の第1シム部材141は、集電板61の下方に配置されるため、例えば負極用端子タブを集電板61に容易に導通させることができる。従って、第1シム部材141に貫通孔を形成する必要はない。図示の例では、第1シム部材141は、第2シム部材80と同様に平坦な円板状に形成している。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1シム部材141を、貫通孔を有しない平皿状に形成しても構わない。
さらには、第1シム部材141を導電性材料で形成し、集電板61と第1シム部材141とを互いに導通させても構わない。この場合には、負極用端子タブを第1シム部材141に導通させることで、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させることができる。
【0165】
なお、本実施形態において、シーラントフィルム60の保護部60aの内側にメッキ液を導入して、無電解メッキを行っても構わない。この場合には、集電板61のうち外部に露出する部分に図示しない金属メッキ膜を形成することができ、外部接続端子との電気接続性の向上化や、耐久性等を向上することができる。
【0166】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池140であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。なお、リッド部材20の下面側に集電板61を配置したとしても、貫通孔21を通じて集電板61を部分的に露出させることができるので、負極用の外部接続端子として機能させることができる。従って、図示しない外部端子の端子部を、リッド部材20に対して非接触状態で集電板61に接触させることで、外部端子と集電板61とを電気的接続させることで、二次電池140を使用することができる。
【0167】
なお、リッド部材20の下面側に集電板61を配置する構成は、先に説明した第1実施形態から第4実施形態に適用しても構わないし、以下に説明する他の実施形態に適用しても構わない。
【0168】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0169】
図16に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)150は、リッド部材(本発明に係る封口板)160の形状が第1実施形態と異なっている。
本実施形態のリッド部材160は、平面視円形状に形成され、容器体10の底壁部11に対して電極体30を挟んで電池軸O方向に向かい合うように配置された頂壁部161と、頂壁部161における外周縁部の全周に亘って連設され、頂壁部161から下方に向かって延びた内側周壁部162と、を備えた有頂筒状に形成されている。
【0170】
リッド部材160は、容器体10における周壁部12の上端開口縁よりも頂壁部161が上方に位置し、且つ内側周壁部162が容器体10における周壁部12の内側に隙間なく入り込むように配置されている。これにより、内側周壁部162の全体は、容器体10の周壁部12の内側に径方向に二重に重なった状態で溶接接合されている。
【0171】
(二次電池の作用)
本実施形態の二次電池150であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。それに加え、容器体10の周壁部12とリッド部材160の内側周壁部162と、が広範囲に亘って二重に重なりあっているので、周壁部12と内側周壁部162とを溶接接合し易いうえ、例えば電池軸O方向に間隔をあけて多段に溶接することができる。従って、収容空間5内の気密性をさらに高めることができる。
【0172】
なお、本実施形態の場合には、容器体10の外側から周壁部12に向かって例えば水平にレーザビーム等を照射することによって溶接接合を行うことができるが、溶融池を深く形成して溶接接合強度を高めるために、例えばレーザビームの入射側である周壁部12の板厚を、内側周壁部162の板厚よりも厚くすることが好ましい。
【0173】
(第7実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第7実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第7実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態(第2実施形態から第6実施形態も同様)では、リッド部材20にシーラントフィルム60を介して集電板61を溶着した構成を例に挙げて説明した。これに対して、本実施形態では、容器体10の底壁部11にシーラントフィルム60を介して集電板61を溶着させている。
【0174】
図17に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)170は、容器体10における底壁部11の中央部に、該底壁部11を上下方向に貫通する貫通孔171が電池軸Oと同軸に形成されている。貫通孔171の形状は、特に限定されるものではないが、例えば平面視円形状に形成されている。
【0175】
貫通孔171が形成された底壁部11には、シーラントフィルム60を介して集電板61が熱溶着されている。具体的には、集電板61は、シーラントフィルム60を介して底壁部11の下面に熱溶着され、全面に亘って下方に露出している。
シーラントフィルム60は、底壁部11に形成された貫通孔171を囲む環状に形成され、電池軸Oと同軸に配置された状態で底壁部11の下面に重なるように配置されている。図示の例では、シーラントフィルム60は、内周縁部から上方に向けて折り返され、底壁部11に形成された貫通孔171の内周面を全周に亘って保護する保護部60aを有している。
【0176】
集電板61は、シーラントフィルム60の外径よりも小さい直径で平面視円形状に形成されており、電池軸Oと同軸に配置された状態でシーラントフィルム60の下面に重なるように配置されている。これにより、集電板61は貫通孔171を下方から塞いでいる。
【0177】
本実施形態のリッド部材20には、集電板61が容器体10側に組み合わされているため、第1実施形態における貫通孔21が不要とされている。
さらに本実施形態のシム部材4は、リッド部材20と電極体30との間に配置された第1シム部材180と、底壁部11と電極体30との間に配置された第2シム部材190と、を備えている。
【0178】
第1シム部材180は、例えば平坦な円板状に形成され、リッド部材20と電極体30との間の隙間を埋めるように、リッド部材20と電極体30との間に電池軸O方向に挟み込まれた状態で配置されている。
【0179】
第2シム部材190は、電極体30に対して下方から重なるように配置された平面視円形状のシムプレート191と、シムプレート191の外周縁部の全周に亘って連設され、下方に向かって湾曲しながら折り曲げられた折曲部192と、を備えた平皿状に形成されている。
【0180】
シムプレート191の中央部には、該シムプレート191を上下に貫通する貫通孔193が形成されている。貫通孔193は、平面視円形状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。これにより、シムプレート191は、リング状に形成されている。
折曲部192は、下端縁が底壁部11に対して上方から接触している。これにより、第2シム部材190は、底壁部11と電極体30との間の隙間を埋めるように、底壁部11と電極体30との間に電池軸O方向に挟み込まれた状態で配置されている。
【0181】
なお、本実施形態の場合には、例えばリッド部材20が負極用の外部接続端子として機能し、集電板61が正極用の外部接続端子として機能する。
負極電極50をリッド部材20に導通させる場合には、例えば負極端子タブ54を直接的にリッド部材20に対して電気的接続させても構わないし、図示しないリード線に相当する導体を介して負極端子タブ54とリッド部材20とを電気的接続させても構わない。さらに第1シム部材180を介して負極端子タブ54とリッド部材20とを導通させても構わない。
正極電極40を集電板61に導通させる場合には、例えば正極端子タブ44を、容器体10の貫通孔171及び第2シム部材190の貫通孔193を通じて、直接的に集電板61に対して電気的接続させても構わないし、正極端子タブ44と集電板61とを繋ぐ図示しないリード線に相当する導体を貫通孔171、193の内側に配置させることで、正極端子タブ44と集電板61とを電気的接続させても構わない。
【0182】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池170であっても、電極体30、第1シム部材180及び第2シム部材190を利用してリッド部材20を下方から支持することができるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0183】
(第8実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第8実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第8実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第1実施形態(第2実施形態から第7実施形態も同様)では、電極体30として、正極電極40及び負極電極50が図示しないセパレータを挟んで電池軸O方向に交互に積層されるように扁平に捲回された積層型電極を例に挙げて説明した。
本実施形態では、電池軸Oと同軸に配置された支柱部の中心軸線回りに、径方向に多重に捲回されることで構成された電極体を具備している。
【0184】
図18に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)200は、外装体2における収容空間5内に収容された支柱部201を備えている。
支柱部201は、電池軸Oに沿って上下方向に延びる軸状に形成され、電池軸Oと同軸に配置されている。図示の例では、支柱部201は中空の円筒状に形成され、その外径は貫通孔21の直径よりも小さい。これにより、支柱部201は、貫通孔21通じて上端部が集電板61に対して下方から接触し、且つ下端部が容器体10の底壁部11に配置された第2シム部材80に対して上方から接触するように配置されている。
従って、支柱部201は、集電板61を介してリッド部材20を下方から支持する役割を果たしている。
【0185】
なお、支柱部201は、セラミック等の無機材料や合成樹脂材料等の絶縁性材料で形成されている。支柱部201を合成樹脂製とする場合には、例えば融点がセパレータ211と同等の温度を有する熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。具体的には、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂等材料を採用できる。さらには、これらの合成樹脂のコポリマーやブレンドポリマー等も利用することが可能である。
【0186】
(電極体)
図18に示すように、本実施形態の電極体210は、セパレータ211を挟んで配置された正極電極212及び負極電極213を有し、電池軸O回りに多重に捲回された捲回電極とされている。
具体的には、電極体210は、支柱部201に巻き付けられることで、セパレータ211を挟んで正極電極212及び負極電極213が重ね合わされた状態で、電池軸Oと同軸に配置された支柱部201の中心軸線C回りに、径方向に多重に捲回されることで構成されている。従って、本実施形態の支柱部201は、電極体210を捲回する際の巻き芯としての機能を兼ねている。
【0187】
電極体210は、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸O(支柱部201の中心軸線C)を中心として、多重の渦巻き状に捲回されている。本実施形態では、電極体210のうち支柱部201側に位置する最内層から容器体10の周壁部12側に位置する最外層に向けて、負極電極213、セパレータ211、正極電極212、セパレータ211、負極電極213、セパレータ211、正極電極212という順番で繰り返し配置されるように捲回されている。
【0188】
図19に示すように、正極電極212は、電極体210の捲回前における展開した状態において、一定幅で帯状に延びるように形成された長尺な正極集電体(正極集電箔)212aと、正極集電体212aの片面或いは両面に塗工等によって形成された正極活物質層212bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。
【0189】
正極集電体212aの両端部のうち支柱部201から離れた側に位置する一端部には、正極端子タブ212cが形成されている。正極端子タブ212cは、正極活物質層212bが形成されておらず、他の部品に対して電気的に接続可能とされている。正極端子タブ212cは、電極体210の捲回時、電極体210の外層側に配置される。
なお、正極集電体212a及び正極活物質層212bとしては、第1実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0190】
負極電極213は、電極体210の捲回前における展開した状態において、一定幅で帯状に延びるように形成された長尺な負極集電体(負極集電箔)213aと、負極集電体213aの片面或いは両面に塗工等によって形成された負極活物質層213bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。
【0191】
負極集電体213aの両端部のうち支柱部201から離れた側に位置する一端部には、負極端子タブ213cが形成されている。負極端子タブ213cは、負極活物質層213bが形成されておらず、他の部品に対して電気的に接続可能とされている。負極端子タブ213cは、電極体210の捲回時、電極体210の外層側に配置される。
なお、負極集電体213a及び負極活物質層213bとしては、第1実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0192】
図18に示すセパレータ211は、例えばポリオレフィン等の樹脂製のマイクロポーラスフィルムや、ガラス製若しくは樹脂製の不織布、セルロース繊維等の繊維の積層体等により形成され、図示しないイオン透過孔を通じてリチウムイオンを通過させることが可能とされている。さらにセパレータ211として、例えば空孔内に電解液を保持できる多孔質体や、リチウムイオン導電性を有する樹脂層等を採用できる。
【0193】
セパレータ211は、正極電極212及び負極電極213の層間全体に配置され、正極電極212と負極電極213との間を絶縁している。従って、セパレータ211は少なくとも正極電極212と負極電極213とが対向する領域の全体で正極電極212と負極電極213との間に介在するように配置されている。
【0194】
上述のように構成された電極体210は、図18に示すように、支柱部201に巻き付くように捲回されることで、支柱部201と一体に組み合わされると共に、支柱部201の中心軸線C回りに正極電極212及び負極電極213がセパレータ211を間に挟んだ状態で径方向に多重に積層するように捲回された捲回電極となる。
なお、このように構成された電極体210を具備する場合であっても、例えば集電板61を負極用の外部接続端子として機能させることができ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができる。
【0195】
(電極体の形成)
支柱部201を巻き芯として利用して、電極体210を形成する場合について、以下に簡単に説明する。
図19に示すように、セパレータ211、正極電極212及び負極電極213をそれぞれ用意した後、支柱部201の外周面にセパレータ211を溶着する。これにより、支柱部201の外周面とセパレータ211とを互いに溶着することで形成した溶着部202を位置決め部と利用することができ、支柱部201に対してセパレータ211を位置決めすることができる。
【0196】
なお、予めセパレータ211の長さが決まっている場合には、セパレータ211の長さ方向の中央部よりも、正極電極212が重ね合わされる領域R1側にシフトした部分を支柱部201の外周面に溶着する。これにより、セパレータ211のうち正極電極212が重ね合わされる領域R1よりも、負極電極213が重ね合わされる領域R2の方を大きく確保することができる。
【0197】
次いで、図19に示す矢印Mの如く、支柱部201を中心軸線C回りに回転させる。この際、セパレータ211のうち負極電極213が重ね合わされる領域R2を、先行して支柱部201に巻き付けるように支柱部201を回転させる。
次いで、支柱部201に先行して巻き付けられたセパレータ211と支柱部201との間に負極電極213を挿し込むように、セパレータ211と負極電極213とを重ね合わせる。この際、図20に示す矢印Sの如く、溶着部202に突き当たるまで負極電極213を挿し込む。この状態で支柱部201をさらに回転させることで、支柱部201に対して負極電極213を先行して巻き付けることができ、電極体210としての最内層を負極電極213で形成することができる。
【0198】
さらにセパレータ211に正極電極212を重ね合わせながら支柱部201を連続回転させて、セパレータ211、正極電極212及び負極電極213を巻き付けるように捲回する。その結果、図18に示すように、支柱部201に巻き付くように捲回された電極体210を作製することが可能である。
【0199】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池200の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて、第1シム部材70及び第2シム部材80を利用したリッド部材20の支持に加え、支柱部201を利用してリッド部材20を支持することができるので、リッド部材20が撓んでしまう等の意図しない変形をさらに効果的に抑制することができ、容器体10に対するリッド部材20の位置ずれ等をさらに抑制した状態で溶接作業を行うことができる。
【0200】
さらに捲回によって電極体210を形成した後、支柱部201ごと電極体210を容器体10内に収容することができる。そのため、組立作業を効率良く行うことができ、生産性の向上化に繋げることができる。
【0201】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0202】
例えば上記各実施形態では、電気化学セルの一例として二次電池を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイスに適用しても構わない。
【0203】
電気化学セルを電気二重層キャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極を一対の分極性電極として利用すれば良い。この場合の分極性電極としては、例えば賦活処理にて得られる粉末状の活性炭を、導電助剤やバインダと共に混合し、カレンダーロールプレス或いは粉末圧粉プレス成形したものが挙げられる。なお、プレス成形としては、ダイパンチ式プレスとしても構わない。
電解液としては、例えば4級アンモニウム塩等の支持塩を非水溶媒に溶解させたもの等が挙げられる。なお、混合の際に、スラリーを経て、塗工・乾燥後に電極に加工し、使用することもできる。また、バインダとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて、混錬して成型した板状材料を、集電箔に導電性ペーストで貼り合わせたものを電極として用いることも可能である。
【0204】
電気化学セルをリチウムイオンキャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極のうちの一方の電極のみを、上述の分極性電極を用い、他方の電極にはリチウムイオン電池用の電極を用いることができる。電解液としては、リチウムイオン電池と同じものを用いることができる。特に、リチウムイオン電池用の電極として、チタン酸リチウム(LTO)を用いることで、電流特性を向上することができる。
【0205】
さらに上記各実施形態において、形状の異なる外装体の例を説明したが、有底筒状に形成された容器体にリッド部材を溶接接合して、容器体の開口部を閉塞することができれば、容器体及びリッド部材の形状は適宜変更して構わない。
例えば、リッド部材に断面U字状の環状溝部を形成して、リッド部材の剛性を向上させても構わない。さらにリッド部材を有頂筒状に形成しても構わないし、図14に示すリッド部材130を上下反転して用いても構わない。
【0206】
さらに上記各実施形態において、電極体としては特定の構造に限定されるものではなく、既知の電極体を適宜採用しても構わない。
例えば図21に示すように、セパレータ221を挟んで正極電極222と負極電極223とを電池軸O方向に多層に積層されることで電極体(積層電極体)220を構成しても構わない。
図示の例では、正極電極222及び負極電極223が、それぞれ12層積層された電極体220を例に挙げている。ただし、12層に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0207】
図21図23に示すように、正極電極222は、平面視D形状に形成された薄膜状の正極集電体(正極集電箔)222aと、正極集電体222aの両面に塗工等によって形成された正極活物質層222bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。正極集電体222aの一部は、正極活物質層222bが未塗工とされた正極端子タブ222cとされ、外側に突出している。
【0208】
セパレータ221は、正極電極222の形状に対応して平面視D形状に形成されたシート体とされ、正極電極222を上下から挟み込むように配置されている。この際、セパレータ221は、正極電極222より一回り大きいサイズに形成されている。これにより、正極電極222は、2枚のセパレータ221によって上下から挟み込まれて保護されている。
なお、正極端子タブ222cは、セパレータ221よりも外側に突出するように配置されている。
【0209】
負極電極223は、正極電極222の形状に対応して平面視D形状に形成された薄膜状の負極集電体(負極集電箔)223aと、負極集電体223aの両面に塗工等によって形成された負極活物質層223bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。負極集電体223aの一部は、負極活物質層223bが未塗工とされた負極端子タブ223cとされ、外側に突出している。
【0210】
負極電極223は、セパレータ221に対して同等或いは僅かに小さいサイズに形成されている。従って、正極電極222は、負極電極223よりも小さいサイズに形成されている。なお、正極端子タブ222cは、セパレータ221よりも外側に突出するように配置されていると共に、正極端子タブ222cに対して上下方向に対向しないように配置されている。
【0211】
このように構成された電極体220の場合には、図21に示すように、正極電極222及び負極電極223が、セパレータ221を間に挟んで交互に12層積層されることで構成される。また、複数(12個)の正極端子タブ222c及び負極端子タブ223cは、それぞれ電池軸O方向に沿って並ぶように配置されている。
【0212】
複数の正極端子タブ222cは、例えば溶接等によって1つにまとめられることで互いに電気的に接続される。同様に複数の負極端子タブ223cは、例えば溶接等によって1つにまとめられることで互いに電気的に接続される。
【0213】
そして電極体220は、収容空間5内に配置され、例えば正極端子タブ222cが容器体10に導通され、負極端子タブ223cが集電板61に導通される。これにより、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができ、二次電池を利用することができる。
【0214】
さらに、別の電極体として、例えば図24に示すように薄い円板状に形成された正極電極232と負極電極233とを電池軸O方向に積層した電極体230を採用しても構わない。
【0215】
正極電極232は、平面視リング状に形成された薄膜状の正極集電体(正極集電箔)232aと、正極集電体232aの両面に塗工等によって形成された正極活物質層232bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。図示の例では、図面を見易くするために、正極活物質層232bにドット状のハッチングを付している。
正極活物質層232bは、正極集電体232aのうち内周縁部を除く部分に形成されている。これにより正極集電体232aの内周縁部232cを利用して集電を行うことが可能とされている。
【0216】
負極電極233は、正極電極232の形状に対応して平面視リング状に形成された薄膜状の負極集電体(負極集電箔)233aと、負極集電体233aの両面に塗工等によって形成された負極活物質層233bと、を備えた1枚のシート状に形成されている。図示の例では、図面を見易くするために、負極活物質層233bにドット状のハッチングを付している。
【0217】
なお負極電極233は、外径が正極電極232の外径よりも大きく、且つ内径が負極電極233の内径よりも大きく形成されている。これにより、正極活物質層232bの全領域が負極活物質層233bに対して電池軸O方向に対向するように構成されている。
負極活物質層233bは、負極集電体233aのうち外周縁部を除く部分に形成されている。これにより負極集電体233aの外周縁部233cを利用して集電を行うことが可能とされている。
【0218】
上述のように構成された正極電極232及び負極電極233を具備する電極体230を利用する場合、図21に示す電極体220と同様に、正極電極232及び負極電極233を交互に複数層(例えば12層)、積層することで構成しても構わない。
【0219】
そしてこの場合の電極体230は、収容空間5内に配置され、例えば正極集電体232aの内周縁部232cを利用して例えば容器体10に導通させ、負極集電体233aの外周縁部233cを集電板61に導通させる。これにより、集電板61を負極用の外部接続端子として機能させ、容器体10を正極用の外部接続端子として機能させることができ、二次電池を利用することができる。
【0220】
なお、正極電極232を形成する場合には、例えば長尺なシート状に形成された正極集電体232aの両面に塗工等によって正極活物質層232bを形成する。次いで、シート状の正極集電体232aを打ち抜き加工等によってリング状に加工し、さらに正極活物質層232bをレーザ加工等によりトリミングして部分的に除去することで、正極電極232を形成することができる。
なお、負極電極233についても同様の方法で形成することが可能である。
【0221】
なお、図24に示す正極電極232において、必ずしもリング状に形成する必要はなく、円板状に形成しても構わない。この場合には、正極集電体232aの中央部分を利用して集電を行うことができる。
さらに、図24に示すように正極電極232をリング状に形成した場合において、正極集電体232aの内周縁部232cを含め、正極集電体232aの全領域に範囲に亘って正極活物質層232bを塗工しても構わない。この場合であっても、例えば集電棒を正極電極232に突き刺すように組み合わせることで、正極活物質層232bに覆われた正極集電体232aの集電を図ることができる。
【0222】
さらに図24に示す負極電極233において、負極端子タブを有するように負極集電体233aを形成し、負極端子タブを除く、負極集電体233aの全領域に範囲に亘って負極活物質層233bを塗工しても構わない。
【0223】
さらに上記各実施形態において、形状の異なる外装体の例を説明したが、有底筒状に形成された容器体にリッド部材を溶接接合して、容器体の開口部を閉塞することができれば、容器体及びリッド部材の形状は適宜変更して構わない。
例えば、リッド部材に断面U字状の環状溝部を形成して、リッド部材の剛性を向上させても構わない。さらにリッド部材を有頂筒状に形成しても構わないし、図14に示すリッド部材130を上下反転して用いても構わない。
【0224】
さらに上記各実施形態において、外装体を構成する容器体及び封口板は、必ずしも金属製である必要はない。例えば、ステンレス鋼等からなる金属層とフィルム状の樹脂層とが積層したラミネートフィルムを用いて容器体及び封口板の少なくとも一方を形成しても構わない。このような場合であっても、金属層を利用して溶接接合等を行うことができる。
【符号の説明】
【0225】
O…電池軸
C…支柱部の中心軸線
1、90、100、120、140、150、170、200…二次電池(電気化学セル
2…外装体
4…シム部材
5…収容空間
10…容器体
11…底壁部
12…周壁部
20、110、130、160、…リッド部材(封口板)
21、171…貫通孔
30、210、220、230…電極体
40、212、222、232…正極電極
50、213、223、233…負極電極
60…シーラントフィルム(シール材)
61…集電板
201…支柱部
211、221…セパレータ
図1
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