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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191141
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20221220BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221220BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20221220BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
B60C11/13 C
B60C11/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029740
(22)【出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021099591
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】古賀 裕章
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC13
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB31X
3D131EB47X
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EB94W
3D131EB95W
3D131EB99W
3D131EB99X
(57)【要約】
【課題】操縦安定性を維持しつつ制動性能を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、一対のショルダー周方向溝3Aと、一対のクラウン周方向溝3Bと、一対のミドル陸部4Aとを含む。ミドル陸部4Aのそれぞれには、複数のミドルサイプ15が設けられている。ミドルサイプ15は、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部20で形成されている。面取り部20は、クラウン周方向溝3Bからショルダー周方向溝3Aまで延びている。面取り部20のクラウン周方向溝3B側の端における第1面取り幅W3は、面取り部20のショルダー周方向溝3A側の端における第2面取り幅W4よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、2つのトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、一対のショルダー周方向溝と、前記一対のショルダー周方向溝の間の一対のクラウン周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された一対のミドル陸部を含み、
前記ミドル陸部のそれぞれには、前記ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドルサイプが設けられており、
前記ミドルサイプは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記面取り部は、トレッド平面視において前記クラウン周方向溝から前記ショルダー周方向溝まで延びており、
前記面取り部の前記クラウン周方向溝側の端における第1面取り幅は、前記面取り部の前記ショルダー周方向溝側の端における第2面取り幅よりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記ミドルサイプは、前記両側のサイプエッジのそれぞれが前記面取り部で形成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記面取り部は、前記クラウン周方向溝に向かって面取り幅が連続的に大きくなる内側拡幅部を含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記面取り部は、前記ショルダー周方向溝に向かって面取り幅が連続的に大きくなる外側拡幅部を含む、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記面取り部は、前記内側拡幅部と前記外側拡幅部との間に、一定の幅で延びる定幅部を含み、
前記定幅部は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記内側拡幅部のタイヤ軸方向の長さは、前記外側拡幅部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、請求項4又は5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記内側拡幅部の最大の深さは、前記外側拡幅部の最大の深さよりも大きい、請求項4ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2面取り幅は、前記第1面取り幅の30%~60%である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記一対のミドル陸部の一方に設けられた前記ミドルサイプと、前記一対のミドル陸部の他方に設けられた前記ミドルサイプとは、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記一対のミドル陸部の一方に設けられた前記ミドルサイプと、前記一対のミドル陸部の他方に設けられた前記ミドルサイプとは、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜している、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して前記ミドルサイプとは逆向きに傾斜した複数の外側ショルダー横溝及び複数の外側ショルダーサイプが設けられている、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端を含み、
前記5つの陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部を含み、
前記内側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して前記ミドルサイプとは逆向きに傾斜した複数の内側ショルダー横溝及び複数の内側ショルダーサイプが設けられている、請求項10又は11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ミドルサイプの最大の深さは、前記ショルダー周方向溝の最大の深さの50%~80%である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ミドルサイプは、底部が局部的に隆起したミドルタイバーを含む、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記ミドル陸部の接地面から前記ミドルタイバーの外面までの最小の深さは、前記ミドルサイプの最大の深さの60%~90%である、請求項14に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記ミドルタイバーのタイヤ軸方向の長さは、前記ミドル陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の30%~50%である、請求項14又は15に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、第1ミドル陸部及び第2ミドル陸部のそれぞれにミドルサイプが設けられたタイヤが提案されている。前記タイヤは、前記ミドルサイプによって、ノイズ性能及び操縦安定性の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤには、制動性能及び操縦安定性の向上が要求されている。制動性能を向上させる手段の1つとしては、ミドルサイプのサイプエッジを面取り部で形成することが挙げられる。前記面取り部は、サイプ周辺において、陸部の接地面に作用する接地圧を均一化できる。このような作用は、前記陸部が提供するタイヤ周方向の摩擦力を大きくし、制動性能を向上させるのに役立つ。
【0005】
しかしながら、上述の作用効果をさらに高めるために、前記面取り部の幅を大きくすると、陸部の接地面積が減少して操舵の応答性の悪化を招き、ひいては操縦安定性が低下するおそれがあった。
【0006】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、操縦安定性を維持しつつ制動性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、2つのトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、前記4本の周方向溝は、一対のショルダー周方向溝と、前記一対のショルダー周方向溝の間の一対のクラウン周方向溝とを含み、前記陸部は、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された一対のミドル陸部を含み、前記ミドル陸部のそれぞれには、前記ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドルサイプが設けられており、前記ミドルサイプは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、前記面取り部は、トレッド平面視において前記クラウン周方向溝から前記ショルダー周方向溝まで延びており、前記面取り部の前記クラウン周方向溝側の端における第1面取り幅は、前記面取り部の前記ショルダー周方向溝側の端における第2面取り幅よりも大きい、タイヤである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、操縦安定性を維持しつつ制動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2図1の一対のミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
図3図2のミドルサイプの拡大図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5図2のB-B線断面図である。
図6図1の内側ショルダー陸部の拡大図である。
図7図1の外側ショルダー陸部の拡大図である。
図8図1のタイヤの接地面形状を示す平面図である。
図9】本開示の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図10】本開示の他の実施形態のミドルサイプの長さ方向に沿った断面図である。
図11】比較例のタイヤの一対のミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0011】
図1に示されるように、本開示のトレッド部2は、2つのトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4とを含む。すなわち、本開示のタイヤ1は、トレッド部2が5つの陸部4で構成された所謂5リブタイヤとして構成されている。
【0012】
本実施形態のトレッド部2は、例えば、車両への装着の向きが指定されている。これにより、2つのトレッド端は、タイヤ1の車両装着時に車両内側となる内側トレッド端Tiと、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端Toとを含む。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。但し、本開示のタイヤ1は、このような態様に限定されず、車両の装着の向きが指定されないものでも良い。
【0013】
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0014】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0015】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0016】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0017】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0018】
4本の周方向溝3は、一対のショルダー周方向溝3Aと、一対のショルダー周方向溝3Aの間に配された一対のクラウン周方向溝3Bとを含む。本実施形態のショルダー周方向溝3Aは、例えば、最も内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー周方向溝5と、最も外側トレッド端To側に配された外側ショルダー周方向溝6とを含む。本実施形態のクラウン周方向溝3Bは、例えば、内側ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられた内側クラウン周方向溝7と、外側ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられた外側クラウン周方向溝8とを含む。
【0019】
タイヤ赤道Cからショルダー周方向溝3Aの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン周方向溝3Bの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における内側トレッド端Tiから外側トレッド端Toまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0020】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0021】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝6が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0022】
本開示の陸部4は、ショルダー周方向溝3Aとクラウン周方向溝3Bとの間に区分された一対のミドル陸部4Aを含む。本実施形態の一対のミドル陸部4Aは、例えば、内側ミドル陸部12及び外側ミドル陸部13を含む。内側ミドル陸部12は、例えば、内側ショルダー周方向溝5と内側クラウン周方向溝7との間に区分されている。外側ミドル陸部13は、例えば、外側ショルダー周方向溝6と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。
【0023】
さらに、本実施形態の陸部4は、クラウン陸部14、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11を含む。クラウン陸部14は、内側クラウン周方向溝7と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。内側ショルダー陸部10は、内側ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されており、内側トレッド端Tiを含む。外側ショルダー陸部11は、外側ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されており、外側トレッド端Toを含む。
【0024】
図2には、一対のミドル陸部4A及びクラウン陸部14の拡大図が示されている。図2に示されるように、ミドル陸部4Aのそれぞれには、ミドル陸部4Aをタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドルサイプ15が設けられている。
【0025】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、一対のサイプ壁が実質的に平行に配されたサイプの本体部において、2つのサイプ壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmである。サイプの開口部には、幅が1.5mmを超える面取り部が連なっても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0026】
図3には、ミドルサイプ15の拡大図が示されている。図4には、図2のA-A線断面図が示されている。図3及び図4に示されるように、ミドルサイプ15は、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部20で形成されている。本実施形態の面取り部20は、例えば、陸部の接地面とサイプ壁との間を延びる傾斜面20aで構成されている。この傾斜面20aは、例えば、陸部の接地面を通るタイヤ法線に対して30~60°の角度で配されている。また、面取り部20の深さは、例えば、0.5~3.0mmである。
【0027】
図3に示されるように、面取り部20は、トレッド平面視においてクラウン周方向溝3Bからショルダー周方向溝3Aまで延びている。面取り部20のクラウン周方向溝3B側の端における第1面取り幅W3は、面取り部20のショルダー周方向溝3A側の端における第2面取り幅W4よりも大きい。本開示では、上記の構成を採用したことによって、操縦安定性を維持しつつ制動性能を向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0028】
図2に示されるように、本開示のミドル陸部4Aは、面取り部20が設けられたミドルサイプ15によって接地面の歪が抑制され、ひいては接地面に作用する接地圧が均一化する。これにより、制動性能及び操縦安定性が向上する。
【0029】
また、本開示のミドル陸部4Aのように、タイヤ赤道とトレッド端との間に配された陸部は、タイヤ赤道側の接地面により大きな接地圧が作用する傾向がある。このような傾向を踏まえ、本開示では、面取り部20のクラウン周方向溝3B側の端における第1面取り幅W3(図3に示す)が、面取り部20のショルダー周方向溝3A側の端における第2面取り幅W4(図3に示す)よりも大きい。これにより、接地圧が相対的に大きいタイヤ赤道側での十分な面取り幅を確保でき、優れた制動性能が発揮される。一方、接地圧が相対的に小さいトレッド端側では面取り幅が小さく、接地面積を大きく確保できるため、操縦安定性を効果的に維持することができる。本開示のタイヤは、以上のようなメカニズムにより、操縦安定性を維持しつつ、制動性能を向上させることができると推察される。
【0030】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0031】
図2に示されるように、一対のミドル陸部4Aの一方に設けられたミドルサイプ15と、一対のミドル陸部4Aの他方に設けられたミドルサイプ15とは、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜している。具体的には、ミドルサイプ15は、外側ミドル陸部13に設けられた外側ミドルサイプ16と、内側ミドル陸部12に設けられた内側ミドルサイプ17とを含む。外側ミドルサイプ16は、例えば、タイヤ軸方向に対して右上がりに傾斜している。以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している」という場合がある。内側ミドルサイプ17は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側ミドルサイプ16と同じ向きに傾斜している。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。なお、特に断りの無い限り、本明細書で説明されたミドルサイプ15の特徴は、外側ミドルサイプ16及び内側ミドルサイプ17の両方に適用することができる。
【0032】
ミドルサイプ15は、例えば、タイヤ軸方向に対して20~30°で傾斜している。このようなミドルサイプ15は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供でき、操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0033】
複数のミドルサイプ15のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、ミドル陸部4Aの接地面のタイヤ軸方向の幅W5よりも大きいのが望ましい。具体的には、ミドルサイプ15の前記1ピッチ長さP1は、ミドル陸部4Aの前記幅W5の130%~180%である。このようなミドルサイプ15の配置は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く向上させる。なお、前記1ピッチ長さは、タイヤ周方向で隣り合う2つのサイプにおけるサイプ中心線(サイプ幅を2等分する線である)間のタイヤ周方向の距離を意味する。
【0034】
図3に示されるように、ミドルサイプ15は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部20で形成されている。これにより、上述の効果がさらに確実に発揮される。なお、本明細書で説明された1つの面取り部20の構成は、1つのサイプに設けられた2つの面取り部20のそれぞれに適用できるのは言うまでもない。
【0035】
第2面取り幅W4は、第1面取り幅W3の30%~60%である。これにより、操縦安定性と制動性能とがバランス良く向上する。
【0036】
具体的には、第1面取り幅W3は、1.5~3.0mmであるのが望ましい。第2面取り幅W4は、0.5~1.5mmであるのが望ましい。また、ミドルサイプ15の面取り部20の最小の面取り幅は、例えば、0.3~1.0mmであるのが望ましい。これにより、陸部の偏摩耗が抑制されつつ、上述の効果が発揮される。
【0037】
面取り部20は、例えば、定幅部21と、内側拡幅部22と、外側拡幅部23とを含む。定幅部21は、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部22は、例えば、定幅部21のクラウン周方向溝3B側に連なっており、定幅部21からクラウン周方向溝3Bまで面取り幅が連続的に大きくなっている。
【0038】
外側拡幅部23は、例えば、定幅部21のショルダー周方向溝3A側に連なっており、定幅部21からショルダー周方向溝3Aまで面取り幅が連続的に大きくなっている。
【0039】
上述の通り、本実施形態のミドルサイプ15は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部20で形成されており、かつ面取り部20が内側拡幅部22及び外側拡幅部23を含む。本実施形態では、このような構成が相俟って、接地圧が大きく変化した場合でも各ミドル陸部4Aが優れた接地性を発揮させることでき、ひいては操縦安定性及び制動性能がより一層向上する。
【0040】
図2に示されるように、定幅部21は、例えば、ミドル陸部4Aのタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向の外側に位置している。これにより、内側拡幅部22のタイヤ軸方向の長さL3は、外側拡幅部23のタイヤ軸方向の長さL4よりも大きい。具体的には、内側拡幅部22の前記長さL3は、ミドル陸部4Aの接地面の前記幅W5の40%~60%である。外側拡幅部23の前記長さL4は、ミドル陸部4Aの接地面の前記幅W5の25%~35%である。これにより、ミドル陸部4Aに作用する接地圧が変化しても、上述の効果が確実に発揮される。
【0041】
図5には、図2のB-B線断面図が示されている。図5に示されるように、内側拡幅部22の最大の深さd1は、外側拡幅部23の最大の深さd2よりも大きい。具体的には、外側拡幅部23の前記深さd2は、内側拡幅部22の前記深さd1の20%~60%である。また、内側拡幅部22の前記深さd1及び外側拡幅部23の最大の深さd2は、例えば、0.5~3.0mmとされる。また、面取り部20の最小の深さは、例えば、0.3~1.0mmとされる。
【0042】
ミドルサイプ15は、例えば、底部が局部的に隆起したミドルタイバー25を含んでいる。ミドルタイバー25は、例えば、ミドルサイプ15をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。ミドルタイバー25のタイヤ軸方向の長さL5は、ミドル陸部4Aの接地面のタイヤ軸方向の幅W5(図2に示す)の30%~50%である。ミドル陸部4Aの接地面からミドルタイバー25の外面までの最小の深さd4は、例えば、ミドルサイプ15の最大の深さd3の60%~90%であり、望ましくは50%~70%である。なお、ミドルサイプ15の最大の深さd3は、例えば、ショルダー周方向溝3Aの最大の深さの50%~80%である。このようなミドルタイバー25は、ミドル陸部4Aの剛性を維持し、大きなコーナリングフォースを提供するのに役立つ。
【0043】
図2に示されるように、クラウン陸部14は、タイヤ軸方向の中心位置がタイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To(図1に示す)側に位置している。これにより、クラウン陸部14において、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側の外側領域14bの接地面の幅W6bは、タイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側の内側領域14aの接地面の幅W6aよりも大きい。具体的には、前記外側領域14bの前記幅W6bは、クラウン陸部14の接地面の幅W6の51%~55%である。このようなクラウン陸部14は、舵角の変化に伴うコーナリングフォースの変化をリニアにし、操縦安定性及び乗り心地性を高めるのに役立つ。
【0044】
クラウン陸部14には、複数の第1クラウンサイプ31及び複数の第2クラウンサイプ32が設けられている。第1クラウンサイプ31は、例えば、内側クラウン周方向溝7から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。第2クラウンサイプ32は、例えば、外側クラウン周方向溝8から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。このような第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、ウェット性能を維持しつつ、転がり抵抗を低減することができる。
【0045】
上述の効果を確実に発揮させるために、第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、それぞれ、クラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横断しておらず、かつ、タイヤ赤道Cを横断していない。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W6の15%~30%である。
【0046】
第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。より望ましい態様では、第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32と、外側ミドルサイプ16との角度差が10°以下とされる。これにより、クラウン陸部14の偏摩耗が抑制される。
【0047】
図6には、内側ショルダー陸部10の拡大図が示されている。図6に示されるように、内側ショルダー陸部10には、複数の内側ショルダー横溝35と、複数の内側ショルダーサイプ36とが設けられている。本実施形態では、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0048】
内側ショルダー横溝35は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー周方向溝5との間に位置する内端35aから内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダー横溝35は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。内側ショルダー陸部10の接地面における内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W7の70%~90%である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット性能を維持しつつ、制動性能を向上させるのに役立つ。
【0049】
内側ショルダー横溝35は、例えば、タイヤ軸方向に対して右下がりに傾斜している。すなわち、本実施形態において、内側ショルダー横溝35は、タイヤ軸方向に対してミドルサイプ15とは逆向きに傾斜している。以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している」という場合がある。内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット走行時、内部の水を内側トレッド端Ti側に案内でき、優れた排水性を発揮する。
【0050】
内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダーサイプ36は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜して直線状に延びている。内側ショルダーサイプ36のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。内側ショルダーサイプ36と内側ショルダー横溝35との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能及び乗り心地性を向上させることができる。
【0051】
内側ショルダーサイプ36には、面取り部が設けられていないのが望ましい。すなわち、内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の接地面に直接連なりタイヤ半径方向に沿って延びるサイプ壁を有している。このような内側ショルダーサイプ36は、そのエッジによってウェット走行時に大きな摩擦力を提供し得る。
【0052】
本実施形態の内側ショルダー陸部10には、内側ショルダー周方向溝5から内側ショルダー横溝35の内端35aまで延びる補助サイプ37が設けられている。このような補助サイプ37は、ウェット性能を維持するのに役立つ。
【0053】
図7には、外側ショルダー陸部11の拡大図が示されている。図7に示されるように、外側ショルダー陸部11には、複数の外側ショルダー横溝41と、複数の外側ショルダーサイプ42とが設けられている。本実施形態では、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0054】
外側ショルダー横溝41は、外側ショルダー周方向溝6から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。外側ショルダー横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。すなわち、本実施形態において、前記外側ショルダー横溝41は、タイヤ軸方向に対してミドルサイプ15とは逆向きに傾斜している。外側ショルダー横溝41のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。望ましい態様では、外側ショルダー横溝41と内側ショルダー横溝35(図6に示す)との角度差が10°以下であり、より望ましくは5°以下である。
【0055】
外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー周方向溝6から延び、かつ、外側ショルダー周方向溝6と外側トレッド端Toとの間に途切れ端42aを有している。外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向の長さL8は、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W8の40%~60%である。
【0056】
外側ショルダーサイプ42は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。外側ショルダーサイプ42と外側ショルダー横溝41との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット性能を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態の外側ショルダーサイプ42は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部43で形成されている。さらに望ましい態様では、面取り部43は、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっている。これにより、外側ショルダー陸部11に作用する接地圧が均一化し、操縦安定性及び制動性能が向上する。
【0058】
外側ショルダーサイプ42の面取り部43の面取り幅は、例えば、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって連続的に大きくなっている。面取り部43の最大の面取り幅W9は、例えば、2.0~4.0mmである。なお、本実施形態では、外側ショルダーサイプ42の外側ショルダー周方向溝6側の端において、最大の面取り幅W9が構成されている。
【0059】
さらに望ましい態様では、外側ショルダーサイプ42の最大の面取り幅W9は、ミドルサイプ15の面取り部43の第1面取り幅W3(図3に示す)よりも小さく、第2面取り幅W4(図3に示す)よりも大きい。これにより、各部の偏摩耗が抑制される。
【0060】
本実施形態では、各陸部において、上述の溝及びサイプの他には、溝やサイプが設けられていない。これにより、上述の各種の性能がバランス良く発揮される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。
【0061】
図8には、前記正規状態のタイヤ1に前記正規荷重の50%が負荷されたとき(以下、「50%負荷状態」という場合がある。)の接地面形状が示されている。図8に示されるように、50%負荷状態において、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W11は、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の114%~124%であるのが望ましい。
【0062】
同様に、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W12は、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の85%~115%であるのが望ましい。また、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W12は、内側ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W13よりも大きいのが望ましい。具体的には、外側ミドル陸部13の前記幅W12は、内側ミドル陸部12の前記幅W13の105%~115%であるのが望ましい。また、内側ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W13、及び、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W14は、それぞれ、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の80%~100%であるのが望ましい。これにより、本実施形態のタイヤ1が車両の全輪に適用された場合において、前輪及び後輪がバランス良くコーナリングフォースを発揮でき、ひいては優れた操縦安定性が発揮される。
【0063】
図9には、本開示の他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。図9に示されるように、この実施形態では、図1で示される実施形態と比較して、外側ミドルサイプ16並びに第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32が、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。これにより、一対のミドル陸部4Aの一方に設けられたミドルサイプ15と、一対のミドル陸部4Aの他方に設けられたミドルサイプ15とは、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。このような実施形態は、タイヤのコニシティを高めるのに役立つ。なお、図9の実施形態には、図1図8に示される実施形態で説明された構成を適用することができる。
【0064】
図10には、本開示の他の実施形態におけるミドルサイプ15の長さ方向に沿った断面図が示されている。図10に示されるように、この実施形態におけるミドルサイプ15は、底部が局部的に隆起したミドルタイバー25を含んでいる。この実施形態のミドルタイバー25は、例えば、ミドル陸部4Aの接地面のタイヤ軸方向の中心位置よりもクラウン周方向溝3Bの側に位置している。具体的には、ミドルタイバー25は、ミドルサイプ15のタイヤ軸方向の端部を含んで隆起している。このようなミドルタイバー25は、ミドル陸部4Aのクラウン周方向溝3B側の剛性を高め、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0065】
さらに別の実施形態において、ミドルタイバー25は、例えば、ミドル陸部4Aの接地面のタイヤ軸方向の中心位置よりもショルダー周方向溝3Aの側に位置しているものでも良い(図示省略)。このような実施形態では、ミドル陸部4Aのショルダー周方向溝3A側の剛性が向上し、ひいては旋回時の操舵の応答性がリニアとなる。
【0066】
ミドルタイバー25のタイヤ軸方向の長さL5は、ミドル陸部4Aの接地面のタイヤ軸方向の幅W5(図2に示す)の30%~50%である。ミドルタイバー25のタイヤ軸方向の長さがタイヤ半径方向で変化する場合、前記長さL5は、タイヤ半径方向の中心位置で測定するものとする。ミドル陸部4Aの接地面からミドルタイバー25の外面までの最小の深さd4は、例えば、ミドルサイプ15の最大の深さd3の60%~90%であり、望ましくは50%~70%である。なお、ミドルサイプ15の最大の深さd3は、例えば、ショルダー周方向溝3Aの最大の深さの50%~80%である。このようなミドルタイバー25は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0067】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0068】
図1の基本パターンを有するサイズ235/45R19のタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、比較例として、図11に示される一対のミドル陸部aを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤのミドル陸部aには、一定の面取り幅で延びる面取り部cを有するミドルサイプbが設けられている。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、図1で示されるものと実質的に同じである。各テストタイヤの操縦安定性及び制動性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×8.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0069】
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記操縦安定性を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0070】
<制動性能>
上記テスト車両でドライ路面を走行し、様々な状況における制動性能が運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記制動性能を100とする評点であり、数値が大きい程、制動性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示されるように、実施例のタイヤは、操縦安定性が101~104ポイントと維持されている一方、制動性能が104~108ポイントと向上していることが分かる。すなわち、本開示のタイヤは、操縦安定性を維持しつつ制動性能を向上させていることが確認できた。
【0073】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0074】
[本開示1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、2つのトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、一対のショルダー周方向溝と、前記一対のショルダー周方向溝の間の一対のクラウン周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された一対のミドル陸部を含み、
前記ミドル陸部のそれぞれには、前記ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のミドルサイプが設けられており、
前記ミドルサイプは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記面取り部は、トレッド平面視において前記クラウン周方向溝から前記ショルダー周方向溝まで延びており、
前記面取り部の前記クラウン周方向溝側の端における第1面取り幅は、前記面取り部の前記ショルダー周方向溝側の端における第2面取り幅よりも大きい、
タイヤ。
[本開示2]
前記ミドルサイプは、前記両側のサイプエッジのそれぞれが前記面取り部で形成されている、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記面取り部は、前記クラウン周方向溝に向かって面取り幅が連続的に大きくなる内側拡幅部を含む、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記面取り部は、前記ショルダー周方向溝に向かって面取り幅が連続的に大きくなる外側拡幅部を含む、本開示3に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記面取り部は、前記内側拡幅部と前記外側拡幅部との間に、一定の幅で延びる定幅部を含み、
前記定幅部は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、本開示4に記載のタイヤ。
[本開示6]
前記内側拡幅部のタイヤ軸方向の長さは、前記外側拡幅部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、本開示4又は5に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記内側拡幅部の最大の深さは、前記外側拡幅部の最大の深さよりも大きい、本開示4ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示8]
前記第2面取り幅は、前記第1面取り幅の30%~60%である、本開示1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示9]
前記一対のミドル陸部の一方に設けられた前記ミドルサイプと、前記一対のミドル陸部の他方に設けられた前記ミドルサイプとは、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している、本開示1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示10]
前記一対のミドル陸部の一方に設けられた前記ミドルサイプと、前記一対のミドル陸部の他方に設けられた前記ミドルサイプとは、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜している、本開示1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示11]
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して前記ミドルサイプとは逆向きに傾斜した複数の外側ショルダー横溝及び複数の外側ショルダーサイプが設けられている、本開示10に記載のタイヤ。
[本開示12]
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端を含み、
前記5つの陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部を含み、
前記内側ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して前記ミドルサイプとは逆向きに傾斜した複数の内側ショルダー横溝及び複数の内側ショルダーサイプが設けられている、本開示10又は11に記載のタイヤ。
[本開示13]
前記ミドルサイプの最大の深さは、前記ショルダー周方向溝の最大の深さの50%~80%である、本開示1ないし12のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示14]
前記ミドルサイプは、底部が局部的に隆起したミドルタイバーを含む、本開示1ないし13のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示15]
前記ミドル陸部の接地面から前記ミドルタイバーの外面までの最小の深さは、前記ミドルサイプの最大の深さの60%~90%である、本開示14に記載のタイヤ。
[本開示16]
前記ミドルタイバーのタイヤ軸方向の長さは、前記ミドル陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の30%~50%である、本開示14又は15に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0075】
2 トレッド部
3 周方向溝
3A ショルダー周方向溝
3B クラウン周方向溝
4 陸部
4A ミドル陸部
15 ミドルサイプ
20 面取り部
W3 第1面取り幅
W4 第2面取り幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11