(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191142
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20221220BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20221220BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
B60C11/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029741
(22)【出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021099592
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三好 康平
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】栗山 智久
(72)【発明者】
【氏名】高槻 大地
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
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3D131EB91X
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3D131EB94X
3D131EB99W
3D131EB99X
(57)【要約】
【課題】操縦安定性及びノイズ性能を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有するタイヤである。外側ショルダー陸部11は、5つの陸部4の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きい。外側ショルダー陸部11には、外側ショルダー周方向溝6に連通する複数の外側ショルダーサイプ42が設けられている。外側ミドル陸部13には、外側ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の外側ミドルサイプ16が設けられている。外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16のそれぞれは、一対のサイプ壁を含む。外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16のそれぞれは、一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含む。外側ショルダーサイプ42の本体部の幅は、外側ミドルサイプ16の本体部の幅よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、車両装着時に最も前記外側トレッド端側に位置する外側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部と隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部は、前記5つの陸部の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きく、
前記外側ショルダー陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ショルダーサイプが設けられ、
前記外側ミドル陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ミドルサイプが設けられ、
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、一対のサイプ壁を含み、
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、前記一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含み、
前記外側ショルダーサイプの前記本体部の幅は、前記外側ミドルサイプの前記本体部の幅よりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記外側ミドルサイプは、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外側ショルダーサイプは、前記外側トレッド端に達することなく前記外側ショルダー陸部内で閉じた端部を有する、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記外側ショルダーサイプの最大の深さは、前記外側ミドルサイプの最大の深さよりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外側ショルダーサイプは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ショルダーサイプの前記面取り部は、前記外側ショルダー周方向溝側に向かって幅が大きくなっている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記外側ミドルサイプは、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断しており、かつ、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ミドルサイプの前記面取り部は、前記外側ミドル陸部の両側の縦エッジから離れた位置に最小の面取り幅を有し、かつ、前記最小の面取り幅の位置からタイヤ軸方向の両側に向かって面取り幅が大きくなっている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記4本の周方向溝は、車両装着時に最も前記内側トレッド端側に位置する内側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部とを含み、
前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝に連通する複数の内側ショルダーサイプが設けられ、
前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプが設けられ、
前記内側ショルダーサイプ及び前記内側ミドルサイプのそれぞれは、一対のサイプ壁を含み、
前記内側ショルダーサイプ及び前記内側ミドルサイプのそれぞれは、前記一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含み、
前記内側ショルダーサイプの前記本体部の幅は、前記内側ミドルサイプの前記本体部の幅よりも大きい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記内側ショルダーサイプは、前記内側トレッド端を超えた位置まで延びている、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記4本の周方向溝は、タイヤ赤道の両側に配された外側クラウン周方向溝及び内側クラウン周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側クラウン周方向溝及び前記内側クラウン周方向溝の間に区分されたクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、タイヤ赤道よりも前記外側トレッド端側の外側領域と、タイヤ赤道よりも前記内側トレッド端側の内側領域とを含み、
前記外側領域の接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記内側領域の接地面のタイヤ軸方向の幅よりも大きい、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記クラウン陸部には、前記内側クラウン周方向溝から延び、かつ、前記クラウン陸部の接地面内で途切れる複数の第1クラウンサイプと、前記外側クラウン周方向溝から延び、かつ、前記クラウン陸部の接地面内で閉じた端部を有する複数の第2クラウンサイプとが設けられている、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記4本の周方向溝は、前記外側ミドル陸部の前記内側トレッド端側に隣接する外側クラウン周方向溝を含み、
前記外側ミドルサイプは、前記外側クラウン周方向溝に達することなく前記外側ミドル陸部内で閉じた端部を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記外側ミドル陸部には、複数の途切れミドルサイプが設けられており、
前記途切れミドルサイプは、前記外側クラウン周方向溝に連通し、かつ、前記外側ショルダー周方向溝に達することなく前記外側ミドル陸部内で閉じた端部を有する、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記外側ミドル陸部には、タイヤ周方向に連続して延びる1本の外側ミドル縦サイプが設けられている、請求項11又は12に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプは、それぞれ、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ミドルサイプの前記面取り部の最大の深さは、前記外側ショルダーサイプの前記面取り部の最大の深さよりも大きい、請求項11ないし13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内側ミドル陸部及び外側ミドル陸部に複数のミドル横サイプが設けられた空気入りタイヤが提案されている。前記空気入りタイヤは、前記ミドル横サイプのピッチ間隔が規定されることにより、操縦安定性及びノイズ性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の車両の高性能化・高出力化に伴い、タイヤについて、操縦安定性のより一層の向上が求められている。一方、タイヤには、ノイズ性能の向上も求められている。とりわけ欧州において、車外騒音規制が厳格化されており、これに対応できるタイヤが求められている。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、操縦安定性及びノイズ性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、前記4本の周方向溝は、車両装着時に最も前記外側トレッド端側に位置する外側ショルダー周方向溝を含み、前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部と隣接する外側ミドル陸部とを含み、前記外側ショルダー陸部は、前記5つの陸部の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きく、前記外側ショルダー陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ショルダーサイプが設けられ、前記外側ミドル陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ミドルサイプが設けられ、前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、一対のサイプ壁を含み、前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、前記一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含み、前記外側ショルダーサイプの前記本体部の幅は、前記外側ミドルサイプの前記本体部の幅よりも大きい、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、操縦安定性及びノイズ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
【
図8】
図1の内側ミドル陸部及び内側ショルダー陸部の拡大図である。
【
図10】
図1のタイヤの接地面形状を示す平面図である。
【
図11】本開示の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
【
図12】本開示の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
【
図13】
図12の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本開示のトレッド部2は、2つのトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4とを含む。すなわち、本開示のタイヤ1は、トレッド部2が5つの陸部4で構成された所謂5リブタイヤとして構成されている。
【0011】
本開示のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定されている。これにより、2つのトレッド端は、タイヤ1の車両装着時に車両内側となる内側トレッド端Tiと、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端Toとを含む。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0012】
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0013】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0014】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0015】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0017】
4本の周方向溝3は、最も外側トレッド端To側に位置する外側ショルダー周方向溝6を含む。さらに、本実施形態の4本の周方向溝3は、内側ショルダー周方向溝5、外側クラウン周方向溝8及び内側クラウン周方向溝7を含んでいる。内側ショルダー周方向溝5は、最も内側トレッド端Ti側に位置している。外側クラウン周方向溝8は、外側ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。内側クラウン周方向溝7は、内側ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0018】
タイヤ赤道Cから外側ショルダー周方向溝6又は内側ショルダー周方向溝5の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから外側クラウン周方向溝8又は内側クラウン周方向溝7の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における内側トレッド端Tiから外側トレッド端Toまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0020】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝6が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0021】
本開示の5つの陸部4は、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13を含む。外側ショルダー陸部11は、外側ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に設けられており、外側トレッド端Toを含んでいる。外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝6を介して外側ショルダー陸部11と隣接している。さらに、本実施形態の5つの陸部4は、内側ショルダー陸部10、内側ミドル陸部12及びクラウン陸部14を含んでいる。内側ショルダー陸部10は、内側ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に設けられており、内側トレッド端Tiを含んでいる。内側ミドル陸部12は、内側ショルダー周方向溝5を介して内側ショルダー陸部10と隣接している。クラウン陸部14は、外側クラウン周方向溝8と内側クラウン周方向溝7との間に区分されている。
【0022】
図2には、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13の拡大図が示されている。
図2に示されるように、本開示において、外側ショルダー陸部11は、5つの陸部4の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きい。本実施形態の外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、トレッド幅TWの15%~25%であり、望ましくは15%~20%である。
【0023】
外側ショルダー陸部11には、外側ショルダー周方向溝6に連通する複数の外側ショルダーサイプ42が設けられている。外側ミドル陸部13には、外側ショルダー周方向溝6に連通する複数の外側ミドルサイプ16が設けられている。
【0024】
図3には、
図2の外側ショルダーサイプ42のA-A線断面図が示されている。
図4には、
図2の外側ミドルサイプ16のB-B線断面図が示されている。
図3及び
図4に示されるように、外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16のそれぞれは、一対のサイプ壁51を含む。また、外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16のそれぞれは、一対のサイプ壁51が実質的に平行に配された本体部50を含む。なお、「実質的に平行に配される」とは、一対のサイプ壁51が完全に平行に延びる態様だけでなく、これらの間の角度が5°以下である態様を含むものとする。
【0025】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、前記本体部50における一対のサイプ壁51の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmである。サイプの開口部には、幅が1.5mmを超える面取り部が連なっても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、本開示では、外側ショルダーサイプ42の本体部50の幅W3は、外側ミドルサイプ16の本体部50の幅W4よりも大きい。本開示では、上記の構成を採用したことによって、操縦安定性及びノイズ性能を向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0027】
図2に示されるように、本開示では、外側ショルダー陸部11が5つの陸部の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きいことにより、外側ショルダー陸部11において大きなコーナリングフォースが発揮され、操縦安定性が向上する。
【0028】
また、外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16は、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13の剛性を緩和するため、接地時の衝撃音を小さくできる。このため、ノイズ性能が向上する。
【0029】
さらに、本開示では、
図3及び
図4に示されるように、外側ショルダーサイプ42の本体部50の幅W3が、外側ミドルサイプ16の本体部50の幅W4よりも大きいため、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13の剛性バランスが適正化され、操縦安定性がより一層向上する。また、本体部50の幅が異なる外側ショルダーサイプ42及び外側ミドルサイプ16によって、これらが発生するピッチ音がホワイトノイズ化し、ノイズ性能が向上し得る。本開示のタイヤは、以上のようなメカニズムにより、操縦安定性及びノイズ性能を向上させることができると推察される。
【0030】
図3に示されるように、操縦安定性及びノイズ性能をバランス良く向上させる観点から、外側ショルダーサイプ42の本体部50の幅W3は、例えば、0.6~1.0mmである。
図4に示されるように、外側ミドルサイプ16の本体部50の幅W4は、例えば、0.4~0.8mmである。また、前記幅W3は、前記幅W4の115%~150%が望ましく、より望ましくは125%~140%である。
【0031】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態の外側ショルダーサイプ42は、例えば、外側ショルダー周方向溝6から延び、かつ、外側トレッド端Toに達することなく外側ショルダー陸部11内で閉じた端部を有する。以下、この端部を途切れ端42aという場合がある。外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2の40%~60%である。
【0033】
外側ショルダーサイプ42は、例えば、タイヤ軸方向に対して右下がりに傾斜している。以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している」という場合がある。外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。このような外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット性能を維持することができる。
【0034】
図3に示されるように、本実施形態の外側ショルダーサイプ42は、両側のサイプエッジの少なくとも一方、本実施形態では両方が面取り部43で形成されている。本実施形態の面取り部43は、例えば、陸部の接地面とサイプの本体部50におけるサイプ壁51との間を延びる傾斜面52aで構成されている。
図2に示されるように、さらに望ましい態様では、外側ショルダーサイプ42の面取り部43は、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっている。これにより、外側ショルダー陸部11に作用する接地圧が均一化し、操縦安定性及びノイズ性能が向上する。
【0035】
外側ショルダーサイプ42の面取り部43の面取り幅は、例えば、途切れ端42aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって連続的に大きくなっている。面取り部43の最大の面取り幅W5は、例えば、2.0~4.0mmである。面取り部43の最大の深さは、例えば、1.0~2.0mmである。なお、本実施形態では、外側ショルダーサイプ42の外側ショルダー周方向溝6側の端において、最大の面取り幅W5が構成されている。
【0036】
図5には、
図2のC-C線断面図が示されている。
図5に示されるように、外側ショルダーサイプ42は、外側ショルダー周方向溝6側に配された第1部分46と、途切れ端42a側に配されかつ第1部分46よりも小さい深さの第2部分47とを含む。第2部分47の深さd2は、例えば、第1部分46の深さd1の60%~75%である。また、本実施形態では、前記第1部分46が、外側ショルダーサイプ42の最大の深さを構成している。外側ショルダーサイプ42の最大の深さは、例えば、3.5~5.0mmとされる。本実施形態では、外側ショルダーサイプ42の最大の深さは、外側ミドルサイプ16の最大の深さよりも大きい。このような外側ショルダーサイプ42は、操縦安定性とノイズ性能とをバランス良く向上させるのに役立つ。
【0037】
図2に示されるように、本実施形態の外側ショルダー陸部11には、複数の外側ショルダー横溝41が設けられている。本実施形態では、外側ショルダー横溝41と外側ショルダーサイプ42とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0038】
外側ショルダー横溝41は、外側ショルダー周方向溝6から外側トレッド端Toを超えた位置まで延びている。外側ショルダー横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側ショルダー横溝41のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。外側ショルダーサイプ42と外側ショルダー横溝41との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような外側ショルダー横溝41は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0039】
図6には、
図2のD-D線断面図が示されている。
図6に示されるように、外側ショルダー横溝41は、溝底が局部的に隆起したタイバー48を含む。外側ショルダー陸部11の接地面からタイバー48の外面までの最小の深さd4は、外側ショルダー横溝41の最大の深さd3の40%~60%である。このようなタイバー48は、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。
【0040】
図2に示されるように、本実施形態の外側ミドルサイプ16は、外側ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断している。外側ミドルサイプ16は、例えば、タイヤ軸方向に対して右上がりに傾斜している。以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している」という場合がある。望ましい態様では、外側ミドルサイプ16のタイヤ軸方向に対する角度は、外側ショルダーサイプ42のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、外側ミドルサイプ16のタイヤ軸方向に対する角度は、20~30°である。このような外側ミドルサイプ16は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0041】
外側ミドルサイプ16は、両側のサイプエッジの少なくとも一方、本実施形態では両方が面取り部55で形成されている。
【0042】
外側ミドルサイプ16の面取り部55は、例えば、定幅部55aと、内側拡幅部55bと、外側拡幅部55cとを含む。定幅部55aは、一定の面取り幅でサイプ長さ方向に延びている。内側拡幅部55bは、例えば、定幅部55aの外側クラウン周方向溝8側に連なっており、定幅部55aから外側クラウン周方向溝8まで面取り幅が大きくなっている。外側拡幅部55cは、例えば、定幅部55aの外側ショルダー周方向溝6側に連なっており、定幅部55aから外側ショルダー周方向溝6まで面取り幅が大きくなっている。これにより、外側ミドルサイプ16の面取り部55は、外側ミドル陸部13の両側の縦エッジから離れた位置に最小の面取り幅を有し、かつ、前記最小の面取り幅の位置からタイヤ軸方向の両側に向かって面取り幅が大きくなっている。このような面取り部55を有する外側ミドルサイプ16は、外側ミドル陸部13に作用する接地圧を均一化させ易く、操縦安定性をより一層向上させるのに役立つ。
【0043】
定幅部55aは、例えば、外側ミドル陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側トレッド端To側に位置ずれして設けられている。これにより、内側拡幅部55bのタイヤ軸方向の長さは、外側拡幅部55cのタイヤ軸方向の長さよりも大きい。具体的には、内側拡幅部55bの前記長さL4は、外側ミドル陸部13の接地面の前記幅W6の40%~60%である。外側拡幅部55cの前記長さL5は、外側ミドル陸部13の接地面の前記幅W6の25%~35%である。これにより、外側ミドル陸部13に作用する接地圧が変化しても、優れた操縦安定性及びノイズ性能が確実に発揮される。
【0044】
図7には、
図2のE-E線断面図が示されている。
図7に示されるように、内側拡幅部55bの最大の深さd5は、外側拡幅部55cの最大の深さd6よりも大きい。具体的には、外側拡幅部55cの前記深さd6は、内側拡幅部55bの前記深さd5の20%~60%である。また、内側拡幅部55bの前記深さd5及び外側拡幅部55cの前記深さd6は、例えば、0.5~3.0mmとされる。また、面取り部20の最小の深さは、例えば、0.3~1.0mmとされる。
【0045】
外側ミドルサイプ16は、例えば、底部が局部的に隆起したミドルタイバー25を含んでいる。ミドルタイバー25は、例えば、外側ミドルサイプ16をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。ミドルタイバー25のタイヤ軸方向の長さL6は、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W6(
図2に示す)の30%~50%である。外側ミドル陸部13の接地面からミドルタイバー25の外面までの深さd8は、外側ミドルサイプ16の最大の深さd7の50%~70%である。このようなミドルタイバー25は、外側ミドル陸部13の剛性を維持し、大きなコーナリングフォースを提供するのに役立つ。なお、外側ミドルサイプ16の最大の深さは、例えば、3.0~5.0mmである。
【0046】
図8には、内側ミドル陸部12及び内側ショルダー陸部10の拡大図が示されている。
図8に示されるように、内側ミドル陸部12には、内側ミドル陸部12をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプ17が設けられている。
【0047】
内側ミドルサイプ17の本体部の幅は、例えば、0.4~0.8mmである。内側ミドルサイプ17の最大の深さは、例えば、3.0~5.0mmである。内側ミドルサイプ17は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。内側ミドルサイプ17のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。このような内側ミドルサイプ17は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0048】
内側ミドルサイプ17は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部56で形成されている。また、内側ミドルサイプ17の面取り部56は、例えば、定幅部56aと、定幅部56aの内側クラウン周方向溝7側に連なる内側拡幅部56bと、定幅部56aの内側ショルダー周方向溝5側に連なる外側拡幅部56cとを含む。内側ミドルサイプ17の定幅部56a、内側拡幅部56b及び外側拡幅部56cには、上述の外側ミドルサイプ16の面取り部55の定幅部55a、内側拡幅部55b及び外側拡幅部55c(
図2に示す)の構成を適用でき、ここでの説明は省略される。
【0049】
内側ショルダー陸部10には、複数の内側ショルダー横溝35と、複数の内側ショルダーサイプ36とが設けられている。本実施形態では、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0050】
内側ショルダー横溝35は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー周方向溝5との間に位置する内端35aから内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダー横溝35は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。内側ショルダー陸部10の接地面における内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W7の70%~90%である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット性能を維持しつつ、制動性能を向上させるのに役立つ。
【0051】
内側ショルダー横溝35は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。内側ショルダー横溝35のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。このような内側ショルダー横溝35は、ウェット走行時、内部の水を内側トレッド端Ti側に案内でき、優れた排水性を発揮する。
【0052】
内側ショルダーサイプ36は、少なくとも内側ショルダー周方向溝5に連通しており、本実施形態では、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダーサイプ36は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜して直線状に延びている。内側ショルダーサイプ36のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。内側ショルダーサイプ36と内側ショルダー横溝35との角度差は、10°以下が望ましく、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能及び乗り心地性を向上させることができる。
【0053】
内側ショルダーサイプ36には、面取り部が設けられていないのが望ましい。すなわち、内側ショルダーサイプ36は、内側ショルダー陸部10の接地面に直接連なりタイヤ半径方向に沿って延びるサイプ壁を有している。このような内側ショルダーサイプ36は、そのエッジによってウェット走行時に大きな摩擦力を提供し得る。
【0054】
内側ショルダーサイプ36の本体部の幅は、例えば、0.6~1.0mmである。より望ましい態様では、内側ショルダーサイプ36の本体部の幅は、内側ミドルサイプ17の本体部の幅よりも大きい。内側ショルダーサイプ36の最大の深さは、4.0~5.5mmである。これにより、操縦安定性及びノイズ性能がより一層向上する。
【0055】
本実施形態の内側ショルダー陸部10には、内側ショルダー周方向溝5から内側ショルダー横溝35の内端35aまで延びる補助サイプ37が設けられている。このような補助サイプ37は、ウェット性能を維持するのに役立つ。
【0056】
図9には、
図1のクラウン陸部14の拡大図が示されている。
図9に示されるように、クラウン陸部14は、タイヤ軸方向の中心位置がタイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To(
図1に示す)側に位置している。これにより、クラウン陸部14において、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側の外側領域14bの接地面の幅W8bは、タイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側の内側領域14aの接地面の幅W8aよりも大きい。具体的には、前記外側領域14bの前記幅W8bは、クラウン陸部14の接地面の幅W8の51%~55%である。このようなクラウン陸部14は、舵角の変化に伴うコーナリングフォースの変化をリニアにし、操縦安定性及び乗り心地性を高めるのに役立つ。
【0057】
クラウン陸部14には、複数の第1クラウンサイプ31及び複数の第2クラウンサイプ32が設けられている。第1クラウンサイプ31は、例えば、内側クラウン周方向溝7から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。第2クラウンサイプ32は、例えば、外側クラウン周方向溝8から延びかつクラウン陸部14内で途切れている。第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32の本体部の幅は、例えば、0.5~1.5mmである。第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32の最大の深さは、4.0~6.0mmである。このような第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、ウェット性能を維持しつつ、転がり抵抗を低減することができる。
【0058】
上述の効果を確実に発揮させるために、第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、それぞれ、クラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横断しておらず、かつ、タイヤ赤道Cを横断していない。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向の長さL8は、例えば、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W8の15%~30%である。
【0059】
第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20~30°である。より望ましい態様では、第1クラウンサイプ31又は第2クラウンサイプ32と、外側ミドルサイプ16との角度差が10°以下とされる。これにより、クラウン陸部14の偏摩耗が抑制される。
【0060】
図10には、前記正規状態のタイヤ1に前記正規荷重の50%が負荷されたとき(以下、「50%負荷状態」という場合がある。)の接地面形状が示されている。
図8に示されるように、50%負荷状態において、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W11は、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の114%~124%であるのが望ましい。
【0061】
同様に、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W12は、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の85%~115%であるのが望ましい。また、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W12は、内側ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W13よりも大きいのが望ましい。具体的には、外側ミドル陸部13の前記幅W12は、内側ミドル陸部12の前記幅W13の105%~115%であるのが望ましい。また、内側ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W13、及び、内側ショルダー陸部10の接地面のタイヤ軸方向の幅W14は、それぞれ、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W10の80%~100%であるのが望ましい。これにより、本実施形態のタイヤ1が車両の全輪に適用された場合において、前輪及び後輪がバランス良くコーナリングフォースを発揮でき、ひいては優れた操縦安定性が発揮される。
【0062】
図11には、本開示の他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。
図11に示されるように、この実施形態では、
図1で示される実施形態と比較して、外側ミドルサイプ16並びに第1クラウンサイプ31及び第2クラウンサイプ32が、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。このような実施形態は、タイヤのコニシティを高めるのに役立つ。なお、
図11の実施形態には、
図1~
図10に示される実施形態に含まれる構成を適用することができる。
【0063】
図12には、本開示の他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。
図13には、
図12に示される実施形態の外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部13の拡大図が示されている。
図12及び
図13に示されるように、この実施形態の外側ミドルサイプ16は、外側クラウン周方向溝8に達することなく外側ミドル陸部13内で閉じた端部を有する。このような外側ミドルサイプ16は、外側ミドル陸部13の剛性を維持でき、操縦安定性を高めるのに役立つ。なお、この実施形態で特に説明されない構成には、
図1~
図10に示される実施形態に含まれる構成を適用することができる。
【0064】
図13に示されるように、この実施形態の外側ミドルサイプ16は、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の中心位置よりも外側ショルダー周方向溝6の側で途切れている。外側ミドルサイプ16のタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W6の25%~45%である。このような外側ミドルサイプ16は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0065】
この実施形態の外側ミドルサイプ16は、両側のサイプエッジの少なくとも一方、望ましくは両方が面取り部55で形成されている。また、外側ミドルサイプ16の面取り部55は、途切れ端16aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっている。外側ミドルサイプ16の面取り部55の最大の面取り幅は、0.5~2.5mmである。また、前記面取り部55の最大の深さは、例えば、0.5~2.5mmである。このような面取り部55を有する外側ミドルサイプ16は、操縦安定性とノイズ性能とをバランス良く高めることができる。
【0066】
この実施形態の外側ショルダーサイプ42の面取り部43の最大の面取り幅は、例えば、1.0~3.0mmである。外側ショルダーサイプ42の面取り部43の最大の深さは、例えば、0.2~2.2mmである。この実施形態において、外側ミドルサイプ16の面取り部55の最大の深さは、外側ショルダーサイプ42の面取り部43の最大の深さよりも大きいのが望ましい。これにより、外側ショルダー周方向溝6の周辺での偏摩耗が抑制される。
【0067】
この実施形態の外側ミドル陸部13には、外側ミドルサイプ16とは別の途切れミドルサイプ57が複数設けられている。途切れミドルサイプ57は、外側クラウン周方向溝8に連通し、かつ、外側ショルダー周方向溝6に達することなく外側ミドル陸部13内で閉じた端部を有する。途切れミドルサイプ57のタイヤ軸方向の長さには、上述の外側ミドルサイプ16の長さを適用することができる。このような途切れミドルサイプ57は、上述の外側ミドルサイプ16と相俟って、操縦安定性及びノイズ性能をより一層向上させることができる。
【0068】
途切れミドルサイプ57は、両側のサイプエッジの少なくとも一方、望ましくは両方が面取り部58で形成されている。また、途切れミドルサイプ57の面取り部58は、途切れ端57aの側から外側ショルダー周方向溝6の側に向かって面取り幅が大きくなっている。より望ましい態様では、途切れミドルサイプ57の面取り部の最大の面取り幅は、外側ミドルサイプ16の面取り部55の最大の面取り幅よりも大きい。また、途切れミドルサイプ57の面取り部58の最大の深さは、外側ミドルサイプ16の面取り部55の最大の深さよりも大きい。これにより、外側ミドル陸部13の偏摩耗が抑制される。
【0069】
この実施形態の外側ミドル陸部13には、タイヤ周方向に連続して延びる1本の外側ミドル縦サイプ59が設けられている。外側ミドル縦サイプ59は、例えば、外側ミドル陸部13の接地面をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されるのが望ましい。また、外側ミドル縦サイプ59は、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で延びており、より具体的にはタイヤ周方向に平行に直線状に延びている。別の実施形態では、外側ミドル縦サイプ59は、ジグザグ状に延びるものでも良い。このような外側ミドル縦サイプ59は、タイヤ軸方向に摩擦力を提供し、旋回性能を高めることができる。
【0070】
図12に示されるように、この実施形態の内側ミドル陸部12には、第1内側ミドルサイプ61、第2内側ミドルサイプ62、及び、内側ミドル縦サイプ63が設けられている。第1内側ミドルサイプ61には、上述の外側ミドル陸部13に設けられた途切れミドルサイプ57の構成を適用することができる。第2内側ミドルサイプ62には、
図12で示される実施形態の外側ミドルサイプ16の構成を適用することができる。内側ミドル縦サイプ63には、外側ミドル縦サイプ59の構成を適用することができる。
【0071】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0072】
図1の基本パターンを有するサイズ235/45R19のタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、比較例として、外側ショルダーサイプの本体部の幅と外側ミドルサイプの本体部の幅とが同じであるタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、
図1で示されるタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤの操縦安定性及びノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×8.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0073】
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記操縦安定性を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0074】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で70km/hの速度でドライ路面を走行したときの車外騒音が測定された。結果は、比較例の車外騒音を100とする指数で示されており、数値が小さい程、車外騒音が小さく、良好であることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0075】
【0076】
表1に示されるように、実施例のタイヤは、操縦安定性及びノイズ性能が向上していることが確認できた。
【0077】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0078】
[本開示1]
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、車両装着時に最も前記外側トレッド端側に位置する外側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記外側ショルダー周方向溝を介して前記外側ショルダー陸部と隣接する外側ミドル陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部は、前記5つの陸部の中で接地面のタイヤ軸方向の幅が最も大きく、
前記外側ショルダー陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ショルダーサイプが設けられ、
前記外側ミドル陸部には、前記外側ショルダー周方向溝に連通する複数の外側ミドルサイプが設けられ、
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、一対のサイプ壁を含み、
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプのそれぞれは、前記一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含み、
前記外側ショルダーサイプの前記本体部の幅は、前記外側ミドルサイプの前記本体部の幅よりも大きい、
タイヤ。
[本開示2]
前記外側ミドルサイプは、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断している、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記外側ショルダーサイプは、前記外側トレッド端に達することなく前記外側ショルダー陸部内で閉じた端部を有する、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記外側ショルダーサイプの最大の深さは、前記外側ミドルサイプの最大の深さよりも大きい、本開示1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示5]
前記外側ショルダーサイプは、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ショルダーサイプの前記面取り部は、前記外側ショルダー周方向溝側に向かって幅が大きくなっている、本開示1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示6]
前記外側ミドルサイプは、前記外側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断しており、かつ、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ミドルサイプの前記面取り部は、前記外側ミドル陸部の両側の縦エッジから離れた位置に最小の面取り幅を有し、かつ、前記最小の面取り幅の位置からタイヤ軸方向の両側に向かって面取り幅が大きくなっている、本開示1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示7]
前記4本の周方向溝は、車両装着時に最も前記内側トレッド端側に位置する内側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部とを含み、
前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝に連通する複数の内側ショルダーサイプが設けられ、
前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドルサイプが設けられ、
前記内側ショルダーサイプ及び前記内側ミドルサイプのそれぞれは、一対のサイプ壁を含み、
前記内側ショルダーサイプ及び前記内側ミドルサイプのそれぞれは、前記一対のサイプ壁が実質的に平行に配された本体部を含み、
前記内側ショルダーサイプの前記本体部の幅は、前記内側ミドルサイプの前記本体部の幅よりも大きい、本開示1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示8]
前記内側ショルダーサイプは、前記内側トレッド端を超えた位置まで延びている、本開示7に記載のタイヤ。
[本開示9]
前記4本の周方向溝は、タイヤ赤道の両側に配された外側クラウン周方向溝及び内側クラウン周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記外側クラウン周方向溝及び前記内側クラウン周方向溝の間に区分されたクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、タイヤ赤道よりも前記外側トレッド端側の外側領域と、タイヤ赤道よりも前記内側トレッド端側の内側領域とを含み、
前記外側領域の接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記内側領域の接地面のタイヤ軸方向の幅よりも大きい、本開示1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示10]
前記クラウン陸部には、前記内側クラウン周方向溝から延び、かつ、前記クラウン陸部の接地面内で途切れる複数の第1クラウンサイプと、前記外側クラウン周方向溝から延び、かつ、前記クラウン陸部の接地面内で閉じた端部を有する複数の第2クラウンサイプとが設けられている、本開示9に記載のタイヤ。
[本開示11]
前記4本の周方向溝は、前記外側ミドル陸部の前記内側トレッド端側に隣接する外側クラウン周方向溝を含み、
前記外側ミドルサイプは、前記外側クラウン周方向溝に達することなく前記外側ミドル陸部内で閉じた端部を有する、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示12]
前記外側ミドル陸部には、複数の途切れミドルサイプが設けられており、
前記途切れミドルサイプは、前記外側クラウン周方向溝に連通し、かつ、前記外側ショルダー周方向溝に達することなく前記外側ミドル陸部内で閉じた端部を有する、本開示11に記載のタイヤ。
[本開示13]
前記外側ミドル陸部には、タイヤ周方向に連続して延びる1本の外側ミドル縦サイプが設けられている、本開示11又は12に記載のタイヤ。
[本開示14]
前記外側ショルダーサイプ及び前記外側ミドルサイプは、それぞれ、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で形成されており、
前記外側ミドルサイプの前記面取り部の最大の深さは、前記外側ショルダーサイプの前記面取り部の最大の深さよりも大きい、本開示11ないし13のいずれかに記載のタイヤ。