(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191160
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221220BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20221220BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20221220BHJP
B62J 1/28 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/02 A
B62J1/12 B
B62J1/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073659
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】63/210,680
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】矢口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】木屋 勝洋
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ボトムプレートにナットを組み付けやすくして、組み付け作業の作業性を向上させることができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートは、乗員を支持する乗員支持部を有し、乗員支持部は、乗員支持部を構成するベース部材としてのボトムプレート10を備えている。ボトムプレート10には、ボトムプレート10を固定するためのナット20を収容するナット収容部40が設けられ、ナット収容部40には、ナット20を挿入するための挿入口44と、ナット20を固定するための爪部45とが設けられている。挿入口44は、ボトムプレート10の面に沿った方向におけるナット収容部40の一端部である側部43に設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を支持する乗員支持部を有する乗物用シートであって、
前記乗員支持部は、前記乗員支持部を構成するベース部材としてのボトムプレートを備え、
前記ボトムプレートには、前記ボトムプレートを固定するためのナットを収容する収容部が設けられ、
前記収容部には、前記ナットを挿入するための挿入口と、前記ナットを固定するための爪部とが設けられ、
前記挿入口は、前記ボトムプレートの面に沿った方向における前記収容部の一端部に設けられることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記収容部は、乗員側を向いた面である表面と、該表面と反対側を向いた面である裏面とを有し、
前記収容部の前記挿入口は、シート左右方向における前記収容部の一方の側部に設けられ、
前記挿入口の開口は、前記収容部の前記側部から前記収容部の前記裏面の一部まで連通して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記爪部は、前記収容部の端部から前記収容部の内側へ向かって延びており、
前記爪部の基端部は、前記爪部の先端部よりも幅広の補強部で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記収容部には、前記ナットの端部を係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記収容部に前記ナットを挿入する方向に平行な方向を第一方向、前記ボトムプレートの前記面に平行かつ前記第一方向に垂直な方向を第二方向としたとき、
前記係止部は、前記第二方向における前記収容部の両端部に設けられており、かつ、前記第一方向及び前記第二方向において、前記爪部と重ならない位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記収容部に前記ナットを挿入する方向に平行な方向を第一方向、前記ボトムプレートの前記面に平行かつ前記第一方向に垂直な方向を第二方向としたとき、
前記爪部は、前記ナットを前記収容部に収容した状態において、前記ナットに形成されたボルト貫通孔と前記第一方向で重なる位置に設けられており、
前記係止部は、前記ナットを前記収容部に収容した状態において、前記ボルト貫通孔と前記第二方向で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記収容部は、前記ナットが収容される収容空間と、所定の厚さを有するとともに前記収容空間の周囲を囲む外周壁と、を備え、
前記外周壁は、前記爪部が設けられた部分である第一壁部と、前記爪部が設けられた部分以外の部分である第二壁部と、を有し、
前記ボトムプレートの前記面に垂直な方向を第三方向としたとき、前記第三方向における前記第二壁部の厚さが、前記第三方向における前記第一壁部の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記爪部の前記補強部には、返しが設けられており、
前記返しは、前記ナットに形成されたボルト貫通孔の径よりも幅広であることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記爪部の前記補強部は、前記補強部と前記ボトムプレートとの接続部よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記挿入口は、前記収容部の内側から外側に向けて広がっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特にボトムプレートを有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バギー(全地形対応車)等の小型の乗物に用いられる乗員着座用のシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。このバギー等の乗物用シートでは、クッション材を載置する支持部材として、樹脂材料からなるボトムプレートが用いられており、ボトムプレートを乗物のフレームに固定するために別部材のナットを使用している。
【0003】
図16に従来のボトムプレートにおけるナットの組付構造を示す。
図16は、シートバックのボトムプレート510を後方から見た斜視図、及びナット収容部540を前方から見た拡大説明図である。ボトムプレート510の後面には、後方から前方へ窪んだ凹部510a、凹部510bが、ボトムプレート510の幅方向に延在して上下方向に並んで形成されている。そして、凹部510a、凹部510bの各々の左右の端部には、ナット520を収容するためのナット収容部540が設けられている。
【0004】
ナット収容部540は、前方に向かって開口する前方から後方へ窪んだ矩形の凹部からなり、凹部の外周を形成する縁部の上下の対向する位置に、それぞれ下方、上方に突出した脱落防止用の爪部545,545が形成されている。ナット520を組み付ける際には、ナット収容部540の前方からナット520を挿入し、爪部545を乗り越えて爪部545の後方の空間に嵌るまで押し込んで、ナット520をナット収容部540に組み付ける。爪部545が形成されていることにより、ナット520が一度ナット収容部540に嵌り込むと、爪部545にナット520の前面が当接し、ナット520がナット収容部540の凹部の開口から前方へ抜け落ちて脱落することなく、ナット収容部540内に収容されるようになっている。
【0005】
そして、ナット収容部540にナット520を収容した状態で、ボトムプレート510の凹部510a,510bの後面に不図示のフレームを当接させ、ナット520の前方から不図示のボルト等の締結具をナット520と締結することで、ボトムプレート510を車体側のフレームに固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16に記載の技術では、ナット収容部の凹部は前方に向かって、すなわちボトムプレートの面に垂直な方向に向かって開口しており、開口はナットの外周と同程度の大きさを有している。ナットを組み付ける際に、平板状のナットの上下端又は左右端をつまんでこの開口の正面から凹部に押し込む必要があるため、ナットを挿入しづらく、作業性の向上が求められていた。また、開口の正面から後方に向かってナット収容部にナットを強く押し込んでしまうと、爪部が損傷し、又は外れてしまう虞があった。また、爪部が外れないように爪部の長さを伸ばしたり、大きくしたりすると、ナットを挿入し難くなる虞があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボトムプレートにナットを組み付けやすくして、組み付け作業の作業性を向上させることができる乗物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ナット収容部の爪部が外れない構造を有するボトムプレートを備えた乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗員を支持する乗員支持部を有する乗物用シートであって、前記乗員支持部は、前記乗員支持部を構成するベース部材としてのボトムプレートを備え、前記ボトムプレートには、前記ボトムプレートを固定するためのナットを収容する収容部が設けられ、前記収容部には、前記ナットを挿入するための挿入口と、前記ナットを固定するための爪部とが設けられ、前記挿入口は、前記ボトムプレートの面に沿った方向における前記収容部の一端部に設けられること、により解決される。
【0010】
このように、ナットを挿入するための挿入口が、ボトムプレートの面に沿った方向における収容部の一端部に設けられているため、挿入口を小さくすることができる。また、ボトムプレートの面に沿った方向における一端部側からナットを挿入するため、挿入口からボトムプレートの面に沿ってナットをスライドさせながら収容部に挿入することができる。収容部のこのような位置に挿入口を設けることで、収容部の前方からナットを押し込んで収容部に挿入する場合と比べ、ナットが収容部へ挿入しやすくなり、ボトムプレートへのナットの組み付けが容易になり、組み付け作業の作業性が向上する。また、ナットを挿入口から挿入する際、前方から強く押し込む必要がないため、収容部の爪部が外れない構造となり、ナットが爪部から外れることがなく、さらには、爪部に与える負担を軽減でき、爪部の損傷を抑制できる。
【0011】
このとき、前記収容部は、乗員側を向いた面である表面と、該表面と反対側を向いた面である裏面とを有し、前記収容部の前記挿入口は、シート左右方向における前記収容部の一方の側部に設けられ、前記挿入口の開口は、前記収容部の前記側部から前記収容部の前記裏面の一部まで連通して形成されていると好適である。
上記構成により、収容部の側部に設けられた挿入口からシート左右方向にナットを挿入して組み付けることができるので、ナットが挿入しやすくなる。また、挿入口の開口が側部から裏面まで連通して形成されているので、開口部分が大きく、ナットの挿入が容易となる。
【0012】
また、前記爪部は、前記収容部の端部から前記収容部の内側へ向かって延びており、前記爪部の基端部は、前記爪部の先端部よりも幅広の補強部で構成されていると好適である。
上記構成により、爪部の強度を向上させることができる。また、爪部の強度を上げるために爪部を厚くする必要がないため、ナットの挿入し易さを維持したまま、爪部の強度を向上させることができる。
【0013】
また、前記収容部には、前記ナットの端部を係止する係止部が設けられていると好適である。
上記構成により、ナットを係止する部分を爪部以外にも設けることで、ナットを強固に固定することができる。
【0014】
また、前記収容部に前記ナットを挿入する方向に平行な方向を第一方向、前記ボトムプレートの前記面に平行かつ前記第一方向に垂直な方向を第二方向としたとき、前記係止部は、前記第二方向における前記収容部の両端部に設けられており、かつ、前記第一方向及び前記第二方向において、前記爪部と重ならない位置に設けられていると好適である。
上記構成により、ナットを係止するための係止部と爪部の配置をバランスよく設定することができ、ナットをバランスよく支持することができる。
【0015】
また、前記収容部に前記ナットを挿入する方向に平行な方向を第一方向、前記ボトムプレートの前記面に平行かつ前記第一方向に垂直な方向を第二方向としたとき、前記爪部は、前記ナットを前記収容部に収容した状態において、前記ナットに形成されたボルト貫通孔と前記第一方向で重なる位置に設けられており、前記係止部は、前記ナットを前記収容部に収容した状態において、前記ボルト貫通孔と前記第二方向で重なる位置に設けられていると好適である。
上記構成により、ナットに形成させたボルト貫通孔との位置関係において、係止部と爪部がバランスよく配置されているため、ボルトを締結する際にナットをバランスよく、かつ安定して支持することができる。
【0016】
前記収容部は、前記ナットが収容される収容空間と、所定の厚さを有するとともに前記収容空間の周囲を囲む外周壁と、を備え、前記外周壁は、前記爪部が設けられた部分である第一壁部と、前記爪部が設けられた部分以外の部分である第二壁部と、を有し、前記ボトムプレートの前記面に垂直な方向を第三方向としたとき、前記第三方向における前記第二壁部の厚さが、前記第三方向における前記第一壁部の厚さよりも厚いと好適である。
上記構成により、ナットが収容される収容空間の周囲に形成された外周壁のうち、第二壁部、すなわち爪部がない部分の外周壁を厚くすることで、ボルトの締結によりナットが空転した際に、ナットからの力が加わる部分の壁の強度を確保することができる。
【0017】
また、前記爪部の前記補強部には、返しが設けられており、前記返しは、前記ナットに形成されたボルト貫通孔の径よりも幅広であると好適である。
上記構成により、ナットを収容部に挿入する際に爪部の返しがボルト貫通孔に入り込むことを防止でき、スムーズにナットを挿入することができる。また、作業者が、ボルト貫通孔に返しが入り込んでナットが爪部に引っかかった状態で、ナットの挿入が完了したものと勘違いすることを防止できる。
【0018】
また、前記爪部の前記補強部は、前記補強部と前記ボトムプレートとの接続部よりも薄く形成されていると好適である。
上記構成により、爪部が撓みやすくなるため、ナットが挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【0019】
また、前記挿入口は、前記収容部の内側から外側に向けて広がっていると好適である。
上記構成により、ナットを収容部に挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ナットが収容部へ挿入しやすくなり、ボトムプレートへのナットの組み付けが容易になり、組み付け作業の作業性が向上する。また、収容部の爪部が外れない構造を有するので、ナットが爪部から外れることがなく、爪部に与える負担を軽減でき、爪部の損傷を抑制できる。
本発明によれば、ナットの挿入し易さを維持したまま、爪部の強度を向上させることができる。
本発明によれば、ナットを強固に固定することができる。
本発明によれば、ナットをバランスよく、安定して支持することができる。
本発明によれば、ナットが空転した際にナットからの力が加わる収容部の部分の強度を確保することができる。
本発明によれば、ナットを収容部に挿入する際に爪部の返しがボルト貫通孔に入り込むことを防止でき、スムーズにナットを挿入することができる。また、作業者が、ボルト貫通孔に返しが入り込んでナットが爪部に引っかかった状態で、ナットの挿入が完了したものと勘違いすることを防止できる。
本発明によれば、ナットを収容部に挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る乗物用シートの外観斜視図である。
【
図2】シートバックのボトムプレートの後面図である。
【
図3】ナットを収容した状態のナット収容部の後面図である。
【
図4】ナットを収容した状態のナット収容部の前面図である。
【
図5】ナット収容部にナットを挿入する状態を示す説明図である。
【
図7】変形例に係るナットを収容した状態のナット収容部の後面図である。
【
図8】変形例に係るナットを収容した状態のナット収容部の前面図である。
【
図9】変形例に係るナットを収容した状態のナット収容部の斜視図である。
【
図11】シートクッションのボトムプレートの下面図である。
【
図12】自動二輪車の乗物用シートに適用した例を示す説明図である。
【
図13】自動二輪車の乗物用シートに適用した他の例を示す説明図である。
【
図14】自動二輪車の乗物用シートに適用した他の例を示す説明図である。
【
図15】自動二輪車の乗物用シートに適用した他の例を示す説明図である。
【
図16】従来のボトムプレートにおけるナットの組付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートとして、バギー(全地形対応車)の車両用シートSの構成について、
図1~
図6を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明するシート構成部品の材質、形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0023】
以下の説明中、「前後方向」、「シート前後方向」、「シート前方」、「シート後方」とは、車両用シートの乗員から見たときの前後方向、前方、後方を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「左右方向」、「シート左右方向」、「シート右側」、「シート左側」とは、車両用シートの乗員から見たときの左右方向、右側、左側を意味する。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの乗員から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」、「シート上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致する。
【0024】
図1は、車両用シートSの外観斜視図である。
図1に示すように、車両用シートSは、シートバック1と、シートクッション2とを備えている。シートバック1は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、乗員支持部に相当する。シートバック1は、シートバック1を構成するベース部材としてのボトムプレート10(
図2参照)に不図示のパッド材を載置して、ボトムプレート10及びパッド材を表皮材1aで被覆して構成されている。シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、乗員支持部に相当する。シートクッション2は、同様に、シートクッション2を構成するベース部材としてのボトムプレート30(
図11参照)に不図示のパッド材を載置して、ボトムプレート30及びパッド材を表皮材2aで被覆して構成されている。
【0025】
<第一実施形態>
第一実施形態として、シートバック1のボトムプレート10にナット収容部が設けられている車両用シートSについて説明する。
図2は、シートバック1のボトムプレート10の後面図である。
ボトムプレート10は、シートバック1の外形を形成するベース部材であり、ベースプレートや底板とも呼ばれ、パッド材が載置されてパッド材を支持するパッド支持体でもある。ボトムプレート10は、乗物(バギー)の外形を形成する不図示のフレームにボルト締結によって固定され、車内に設置される。ボトムプレート10は、樹脂材料からなり、左右方向及び上下方向に延在して前面及び後面を有する板状であって所定の形状に成形されている。
なお、本実施形態のボトムプレート10は、前面と後面が全体的に略平行に形成されているため、以下において、「ボトムプレート10の面に沿う」とは、ボトムプレート10の前面及び/又は後面に沿う状態であり、ボトムプレート10の前面及び/又は後面に略平行な状態を意味するものとする。
【0026】
図2に示すように、ボトムプレート10には、上部及び下部それぞれのシート右側及びシート左側の合計4箇所に、ボトムプレート10を固定するために用いられるナット20を収容するための収容部としてのナット収容部40が設けられている。ナット20は、ボトムプレート10をフレームに固定する際のボルト締結時に、不図示のボルトと締結される。
【0027】
以下、本実施形態に係るナット収容部40について、ボトムプレート10において4箇所に設けられたナット収容部40のうち、
図2における右上に設けられているナット収容部40を一例として、
図3~
図6を参照して説明する。なお、他の箇所に設けられたナット収容部40について、
図2における左側に設けられたナット収容部40は、下記に説明するナット収容部40と左右対称である点において相違するが、その他の構成においては同様である。
【0028】
図3及び
図4はそれぞれ、ナット20を収容した状態のナット収容部40の後面図及び前面図、
図5は、ナット収容部40にナット20を挿入する状態を示す説明図、
図6は、
図3のVI-VI線断面図である。
本実施形態に係る車両用シートSで用いられるナット20は、
図3~
図6に示すように、略矩形平板状の台座部21と、台座部21の中央に設けられて台座部21から突出した中空の筒状部22と、筒状部22の内側に形成されたボルト貫通孔23と、を有している。本実施形態に係るナット20は金属材料で形成されており、ボルト貫通孔23を形成する筒状部22の内側面には、ボルトと締結するためのねじ切りが形成されているが、各図において、ねじ切りの図示は省略する。ただし、これに限られず、樹脂材料で形成されていてもよい。
【0029】
ナット収容部40は、ボトムプレート10の面に形成されている。具体的には、ボトムプレート10の後面10aと前面10bのそれぞれから、ボトムプレート10の厚さ方向、本実施形態ででは前後方向に隆起して、ボトムプレート10と一体に形成されている。
図3及び
図4に示すように、ナット収容部40は、ナット20が収容される略直方体の収容空間41と、前後方向に所定の厚さを有して収容空間41の周囲を囲むように形成された外周壁42とを有している。外周壁42は、ボトムプレート10の後面10aのうち、ナット収容部40が形成されている部位の周囲の後面10aから後方に隆起して形成された後壁42aと、ボトムプレート10の前面10bのうち、ナット収容部40が形成されている部位の周囲の前面10bから前方に隆起して形成された前壁42bとを含んでいる。
【0030】
なお、シートバック1のボトムプレート10において、シート前方を向いた前面10bは、乗員側を向いた面、すなわち乗員の背中を後方から支持する面である乗員支持面であり、本実施形態における表(おもて)面である。ナット収容部40の前壁42bは、乗員側を向いた面である表面を有して構成されている。また、シート後方を向いた後面10aは、本実施形態における表面と反対側を向いた裏面であり、ナット収容部40の後壁42aは、表面と反対側を向いた裏面を有して構成されている。
【0031】
ナット収容部40のうち、ボトムプレート10の面に沿った方向における一端部には、ナット20を挿入するための挿入口44が設けられている。具体的には、ナット収容部40の左右方向における一方の端部(一端部)である側部43に挿入口44が設けられている。挿入口44は、ナット収容部40の側部43側が開口した側部開口44aと、ナット収容部40の裏面である後面(換言すると外周壁42の後壁42a)のうち、側部開口44a側の一部が開口した後面開口44bとが連通した開口によって形成されている。このように、挿入口44が、ナット収容部40の側部43からナット収容部40の裏面である後壁42aの一部まで連通した開口により形成されており、開口部分が広く確保されているので、ナット20の挿入が容易になる。なお、挿入口44は、ナット収容部40における、車両用シートSの左右方向の外側、すなわち、ボトムプレート10の外周に近い側の側部43に設けられている。
【0032】
ナット収容部40の挿入口44が設けられている側の端部である側部43には、端部から、具体的には挿入口44の側部開口44aの縁部から、ボトムプレート10の面に略平行な方向に沿ってナット収容部40の内側へ向かって延びる爪部45が設けられている。爪部45は、側部開口44aの縁部と接続している根本部分である基端部45aと、基端部45aから収容空間41の内側へ向かって延びる先端部45bとを有しており、基端部45aは、先端部45bよりも幅広に形成されている。
【0033】
より詳細には、
図3~
図5に示すように、爪部45の基端部45aは、側部開口44aの縁部との接続部分では、側部開口44aの縁部の上端から下端に亘る上下幅、すなわち上下方向の長さを有しており、内側へ向かうにつれて徐々に上下幅が狭くなるように、すなわち上下方向の長さが小さくなるように形成され、先端部45bへとつながっている。このように、爪部45において、基端部45aの上下幅は先端部45bの上下幅よりも広く形成されており、この上下幅が広い部分が補強部としての機能を有している。このように、基端部45aは幅広の補強部で構成されている。幅広の補強部が設けられているので、爪部45の強度を向上させることができる。また、爪部45の強度を上げるために爪部45を厚くする必要がないため、ナット20を挿入しやすくなる。
【0034】
爪部45の基端部45aにおける、収容空間41側を向いた面、すなわちナット収容部40の内側を向いた面には、先端部45bとの境目近傍の位置に、ナット収容部40の内側に突出した突起からなる返し45cが設けられている。
図5及び
図6に示すように、返し45cは、ナット20が挿入口44から爪部45の内側の面に沿わせて挿入されるときに、返し45cを乗り越えられる程度の突出量を有している。また、返し45cの内側を向いた面は、基端部45a側から先端部45b側に向かってなだらかに上昇する傾斜面となっている。返し45cの先端部45b側の端部(端面)は、爪部45の内側の面に対して略垂直方向に立設している。なお、返し45cの内側への突出量は、ナット20の厚さよりも小さく形成されている。
【0035】
ナット20の収容を詳細に説明すると、ナット20は、ボトムプレート10の面、具体的にはボトムプレート10においてナット収容部40が形成されている部分又はその周囲の面に沿う方向(すなわち当該面に略平行な方向)、本実施形態では左右方向に沿って、挿入口44から収容空間41に挿入され、ナット収容部40に収容されて、ボトムプレート10に組み付けられる。このとき、ナット20は、挿入口44から爪部45の内側の面に沿わせて挿入され、返し45cの傾斜面を乗り越えて収容空間41に移動する。そして、ナット20の全体が返し45cを乗り越えて収容空間41に収容されると、ナット20の挿入口44側の端部(端面)が、返し45cの先端部45b側の端部(端面)と当接して係止され、ナット20が抜けることが防止される。このように、爪部45は、先端部45bによりナット20を前後方向において支持するとともに、返し45cによりナット20を左右方向において係止する。
【0036】
上記のとおり、ナット20を、ナット収容部40の側部43に設けられてた挿入口44から、ボトムプレート10の面に沿う方向、かつ爪部45の延出方向に沿う方向に移動させて、ナット収容部40に挿入するため、爪部の延出方向に対して交差する方向(具体的には略垂直な方向)にナットを挿入する従来の構成と比して、大きな力を加えてナット20を押し込む必要がなく、ナット20をナット収容部40へ挿入しやすくなり、ボトムプレート10へのナット20の組み付け作業を容易に行うことができる。また、爪部45が外れることがなくなるとともに、爪部45に与える負担を軽減でき、爪部45の損傷を抑制できる。また、挿入口44が、車両用シートSの左右方向の外側、すなわち、ボトムプレート10の外周に近い側の側部に設けられているので、より作業性が向上する。
【0037】
図3に示すように、ナット収容部40の後面を形成する後壁42aには、シート左右方向の外側から内側に向かってC字状に切欠かれた、ナット20の筒状部22が挿入されて嵌合する受け部46と、複数の孔47が設けられている。孔47が複数形成されているので、ナット収容部40を設けたボトムプレート10を金型成形する際に、金型を抜くことが可能となる。
【0038】
図4に示すように、ナット収容部40の前面を形成する後壁42aには、ナット20の台座部21の外周の一部が視認可能な程度の大きさの開口48が形成されている。この開口48の挿入口44側の側部には、上記で説明した爪部45が設けられている。また、ナット収容部40の上端部及び下端部、より具体的には、開口48の上端及び下端には、開口48の中央に向かって突出する突起からなる係止部49が設けられている。係止部49は、ナット20の端部、具体的にはナット20の台座部21の上端及び下端を係止するものである。
【0039】
爪部45及び係止部49の配置について、詳細に説明する。爪部45は、開口48の一方の側部(具体的には外周壁42の側部43側の側部)における上下方向の略中央位置から、開口48の中央に向かって延在し、開口48の横幅の半分程度の位置まで延びている。係止部49は、開口48の上端及び下端の2箇所に上下方向に並んで設けられており、それぞれが爪部45とは左右方向及び上下方向において重ならない(並ばない)位置に設けられている。また、ナット20をナット収容部40に収容した状態において、爪部45は、ナット20に形成されたボルト貫通孔23と左右方向で重なる位置に設けられており、係止部49は、ボルト貫通孔23と上下方向で重なる位置に設けられている。なお、爪部45の左右方向の長さは、ナット20のボルト貫通孔23と前後方向では重ならない長さとなっている。
【0040】
このように、ナット収容部40に爪部45以外に係止部49を設けることで、爪部45と係止部49とでナット20を支持し、ナット20を強固に固定することができる。特に、爪部45は返し45cによりナット20を左右方向において支持し、係止部49はナット20を前後方向において支持するので、ナット20を全体的にしっかり支持することができる。また、爪部45と係止部49とが上下左右に重ならないようにバランスよく配置されているため、バランスよく安定してナット20を支持することができる。また、ボルト貫通孔23の上下左右の位置にバランスよく爪部45及び係止部49が配置されているため、ボルト締結により力が加わったときに、バランスよく安定してナット20を支持することができる。
【0041】
ここで、ナット収容部40にナット20を挿入する方向に平行な方向(本実施形態では左右方向)を「第一方向」とし、ボトムプレート10の面に平行かつ第一方向に垂直な方向(本実施形態では上下方向)を「第二方向」とし、また、ボトムプレート10の面に垂直な方向(本実施形態では前後方向)を「第三方向」としたとき、上記した爪部45、係止部49、ボルト貫通孔23の配置は、次のように換言される。
爪部45は、第一方向における開口48の一方の側部において、第二方向の略中央位置から、開口48の中央に向かって延在し、開口48の横幅の半分程度の位置まで延びている。係止部49は、ナット収容部40の開口48の第二方向における両端部の2箇所に第二方向に並んで設けられており、それぞれが爪部45とは第一方向及び第二方向において重ならない(並ばない)位置に設けられている。また、ナット20をナット収容部40に収容した状態において、爪部45は、ナット20に形成されたボルト貫通孔23と第一方向で重なる位置に設けられており、係止部49は、ボルト貫通孔23と第二方向で重なる位置に設けられている。なお、爪部45の第二方向の長さは、ナット20のボルト貫通孔23と第三方向では重ならない長さとなっている。
【0042】
ナット収容部40の周りを囲む外周壁42の後壁42aにおける、爪部45と左右方向において反対側には、外側に向かって窪んだ凹部50が形成されている。凹部50が形成されることにより、ナット収容部40の互いに対向する側部の一方、すなわち爪部45が設けられた側が凸形状を有し、他方、すなわち凹部50が設けられた側が凹形状を有して、互いに対応する形状となっている。このように、対向する側部の一方の形状を他方の形状に対応させ、他方の形状に合わせることで、成形時に金型から抜きやすくすることができる。
【0043】
図6に示すように、外周壁42の後壁42aは、前方へ隆起する量が二段階に設定されており、隆起量が変わることにより段差が生じる段差部42cを有している。外周壁42の前後方向(上記した第三方向)における厚さを後壁42aの前後方向における厚さと後壁42aの前後方向における厚さとを合わせた厚さであるとしたとき、外周壁42は、厚さが小さい(薄い)第一壁部42dと厚さが大きい(厚い)第二壁部42eとを含んでいる。より具体的には、外周壁42のうち、爪部45、特に爪部45の基端部45aが設けられている部分が第一壁部42dであり、爪部45が設けられた部分以外の部分が第二壁部42eである。第一壁部42dは、前後方向(第三方向)における厚さt1を有しており、第二壁部42eは第一壁部42dよりも前方へ隆起して厚さt1よりも厚い、前後方向(第三方向)における厚さt2を有している(すなわち、t1<t2)。
【0044】
外周壁42のうち、爪部45がない部分である第二壁部42eには、ナット20の上端、下端、及び爪部45と反対側の側部端部が当接している。不図示のボルトをボルト貫通孔23に挿入し、ナット20と締結するよう回転させると、ナット20の空転が生じることがある。ナット20が空転した際に、爪部45に係止されているナット20の端部は、補強部としての基端部45aが設けられた爪部45によりしっかり支持されており、ナット20の空転を抑制している。一方で、それ以外の端部、すなわちナット20の上端、下端、及び爪部45と反対側の側部端部は爪部45には支持されていないため、当接する第二壁部42eの当接面に負荷がかかる。そこで、第二壁部42eを厚くすることで、ナット20からの力が加わる部分の壁の強度を確保し、ナット20の空転を一層抑制するようにしている。このような構成により、ボルト締結時に、ナット20を安定して収容空間41内に支持することができる。
【0045】
<ナット収容部の変形例>
次に、ナット収容部の変形例としてのナット収容部60の構成について、
図7~
図10を参照しながら説明する。本変形例に係るナット収容部60は、上記したナット収容部40と同様、シートバック1を構成するボトムプレート10において4箇所に設けられており、上記と同様の位置(4箇所における右上)に配置されているナット収容部60を一例として説明する。なお、上記したナット収容部40と同一の構成、部材については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図7、
図8及び
図9はそれぞれ、ナット20を収容した状態のナット収容部60の後面図、前面図及び斜視図であり、
図10は、
図9のX-X線断面図である。
ナット収容部60の左右方向における一方の端部側(一端部側)である側部63には、ナット20を挿入するための挿入口64が設けられている。挿入口64は、ナット収容部60の側部63側が開口した側部開口64aと、ナット収容部60の後面である後壁42aのうち、側部開口64a側の一部が開口した後面開口64bとが連通した開口によって形成されている。
【0047】
ナット収容部60の挿入口64には、
図7に示すように、上下にそれぞれ傾斜部64cが形成されている。上側の傾斜部64cは、ナット収容部60の内側から外側に向かって上方に傾斜して延び、下側の傾斜部64cは、ナット収容部60の内側から外側に向かって下方に傾斜して延びており、挿入口64が内側から外側に向かって広がるように形成されている。このように、挿入口64が内側から外側に向かって広がっているので、ナット20をナット収容部60に挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【0048】
ナット収容部60の挿入口64が設けられている側の側部63には、挿入口64の側部開口64aの縁部から、ボトムプレート10の面に略平行な方向に沿ってナット収容部60の内側へ向かって延びる爪部65が設けられている。爪部65は、側部開口64aの縁部と接続している根本部分である基端部65aと、基端部65aから収容空間41の内側へ向かって延びる先端部65bとを有している。
【0049】
図8に示すように、爪部65における内側の上下位置に切欠き65dが形成されており、先端部65bの上下幅(上下方向の長さ)が基端部65aの上下幅(上下方向の長さ)よりも小さく、狭くなっている。換言すると、基端部65aの上下幅が先端部65bの上下幅よりも大きく、幅広に形成されている。この上下幅が広い基端部65aが補強部を構成しており、爪部65の強度を向上させることができる。
また、爪部65の先端、すなわち先端部65bの内側の端部は、上下の角が丸みを帯びた形状を有している。このように、爪部65の先端が丸い形状であるので、金型の形状を丸い形状とすることができ、強度が向上する。先端に角が付いていると、力がかかりやすいが、丸みを帯びた形状である場合、力が分散し、強度が向上する。
【0050】
爪部65の基端部65aにおける、収容空間41側を向いた面、すなわちナット収容部60の内側を向いた面には、先端部65bとの境目近傍の位置に、ナット収容部60の内側に突出した突起からなる返し65cが設けられている。返し65cは、
図7に示すように、ナット20に形成されたボルト貫通孔23の径よりも上下方向の幅が大きく、幅広に形成されている。このように、爪部65の返し65cがボルト貫通孔23の径よりも幅広に形成されているので、ナット20をナット収容部60に挿入する際に、返し65cがボルト貫通孔23に入り込むことを防止でき、スムーズにナット20を挿入することができる。また、作業者が、ボルト貫通孔23に返し65cが入り込んでナット20が爪部65に引っかかった状態で、ナット20の挿入が完了したものと勘違いすることを防止できる。なお、上記以外の返し65cの構成及び作用・機能については、返し45cと同様であるので、説明を省略する。
【0051】
図8及び
図10に示すように、爪部65は、基端部65aとボトムプレート10とが接続される部分である接続部66を有し、接続部66を介してボトムプレート10と接続されている。爪部65の基端部65aの前面は、接続部66の前面よりも後方に凹んでおり、基端部65aの前後方向における厚さが接続部66の前後方向における厚さがよりも薄く(小さく)なっている。このように、補強部としての基端部65aが薄く形成されているので、爪部65が撓みやすくなり、ナット20が挿入しやすくなる。
【0052】
また、後壁42aのうち、ナット20の筒状部22が挿入される受け部46の周囲に、後壁42aの他の部分よりも前方へ窪んだ凹部67が形成されている。受け部46の周囲に凹部67を形成することで、ナット20の周囲の外周壁42の厚さを薄くし、前後方向の高さを低くしている。これにより、ナット20を挿入する際の作業者の指掛かり性が良くなり、作業性が向上する。
【0053】
上記実施形態では、ナット収容部の挿入口がシート左右方向における側部に設けられる例を説明したが、挿入口の配置はこれに限定されるものではない。ボトムプレート10の面に沿った方向の他の一つであるシート上下方向の一端部、すなわち、ナット収容部の上端部又は下端部に設けられていてもよい。つまり、上記したナット収容部40又はナット収容部60の構成の全体を略90度上方または下方に回転させた構成のナット収容部を設けることができる。このように、ナット収容部の上端部又は下端部に挿入口が設けられていても、同様に、ナット20を前方から押し込むのではなく、ボトムプレート10の面に沿った方向に挿入できる。
【0054】
<第二実施形態>
次に、
図11を参照して、第二実施形態について説明する。
図11は、シートクッション2のボトムプレート30の下面図である。
第一実施形態では、車両用シートSにおける、シートバック1のベース部材であるボトムプレート10にナット収容部40又はナット収容部60を設ける構成を例にして説明したが、第二実施形態では、
図11に示すように、シートクッション2の外形を形成するベース部材であるボトムプレート30にナット収容部40又はナット収容部60と同様の構成を有するナット収容部40’を設けている。
【0055】
ボトムプレート30は、樹脂材料からなり、左右方向及び前後方向に延在して、上面及び下面を有する板状であって所定の形状に成形されている。本実施形態のボトムプレート30は、上面と下面が全体的に略平行に形成されているため、以下において、「ボトムプレート30の面に沿う」とは、ボトムプレート30の上面及び/又は下面に沿う状態であり、ボトムプレート30の上面及び/又は下面に略平行な状態を意味するものとする。
【0056】
シートクッション2のボトムプレート30において、シート上方を向いた上面(不図示)は、乗員側を向いた面、すなわち乗員を下方から支持する面である乗員支持面であり、本実施形態における表(おもて)面である。また、シート下方を向いた下面30aは、本実施形態における表面と反対側を向いた裏面である。
【0057】
本実施形態では、ナット収容部40’そのものの構成はナット収容部40又はナット収容部60と同様であるので、説明を省略する。
ボトムプレート30の下面30a、上面がそれぞれ第一実施形態におけるボトムプレート10の後面10a、前面10bと対応しており、ナット収容部40’の下壁がナット収容部40の後壁42a、ナット収容部40’の上壁がナット収容部40の前壁42bに相当する。
【0058】
ナット収容部40’の挿入口44’は、ナット収容部40’のうち、ボトムプレート30の面に沿った方向における一端部である、左右方向における一方の端部に設けられている。このような構成により、本実施形態においても、ナットは、ボトムプレート30の面、具体的にはボトムプレート30においてナット収容部40’が形成されている部分又はその周囲の面に沿う方向に沿って、ナット収容部40’に収容されて、ボトムプレート30に組み付けられる。
【0059】
また、ナット収容部40’にナットを挿入する方向に平行な方向(本実施形態では左右方向)を「第一方向」とし、ボトムプレート30の面に平行かつ第一方向に垂直な方向(本実施形態では前後方向)を「第二方向」とし、また、ボトムプレート30の面に垂直な方向(本実施形態では上下方向)を「第三方向」としたとき、爪部、係止部、ボルト貫通孔の配置は、第一実施形態で説明したのと同様に、次のように換言される。なお、爪部、係止部、ボルト貫通孔の構成は、第一実施形態の
図3~10で示した構成と方向以外は同じであるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0060】
ボトムプレート30の面に略平行な方向に沿ってナット収容部40’の一端部から内側へ向かって延びる爪部が設けられている。ナット収容部40’の開口の第二方向における両端部の2箇所に、係止部が第二方向に並んで設けられており、係止部のそれぞれが爪部とは第一方向及び第二方向において重ならない(並ばない)位置に設けられている。また、ナットをナット収容部40’に収容した状態において、爪部は、ナットに形成されたボルト貫通孔と第一方向で重なる位置に設けられており、係止部は、ボルト貫通孔と第二方向で重なる位置に設けられている。
【0061】
さらに、ナット収容部40’の外周壁についても、ボトムプレート30の面に垂直な方向(本実施形態では上下方向)を「第三方向」としたとき、次のように換言される。すなわち、外周壁は、爪部が設けられた部分である第一壁部と、爪部が設けられた部分以外の部分である第二壁部と、を有し、第三方向における第二壁部の厚さが、第三方向における第一壁部の厚さよりも厚い。なお、外周壁の第一壁部及び第二壁部を含む本構成は、第一実施形態の
図6示した構成と方向以外は同じであるため、図示を省略する。
【0062】
上記構成のように、シートクッション2のボトムプレート30にナット収容部を設けることができる。
また、ナット収容部の挿入口がシート左右方向における側部に設けられる例を説明したが、挿入口の配置はこれに限定されず、ボトムプレート30の面に沿った方向の他の一つであるシート前後方向の一端部、すなわち、ナット収容部の前端部又は後端部に設けられていてもよい。このように、ナット収容部の前端部又は後端部に挿入口が設けられていても、同様に、ナットをナット収容部の収容空間の正面から押し込むのではなく、ボトムプレート30の面に沿った方向に挿入できる。
【0063】
<他の適用例>
上記各実施形態では、バギーに搭載される車両用シートを例にして説明したが、これに限定されるものではない。以下では、バギー以外の乗物として、自動二輪車の乗物用シートに本発明を適用する例について、
図12~
図15を参照しながら説明する。
【0064】
図12は、可動式背もたれ付きシートを備えたオートバイの乗物用シートへの適用例を示す説明図である。
図12に示すように、本例における乗物用シートは、乗員の背中を支持する背もたれを構成するボトムプレート110と、車体120に設けられて背もたれの可動機構を構成するヒンジ機構112と、ヒンジ機構112に取り付けられた補助プレート114と、を有している。そして、ボトムプレート110における、補助プレート114とボルト116で締結される締結部位に、上述したナット収容部40又はナット収容部60と同様の構成を有するナット収容部140が形成されている。本例では、ボトムプレート110の上部の左右に2箇所、下部の中央に1箇所の計3箇所にナット収容部140が設けられている。ナット収容部140にはナットが挿入され、ボルト116とナットが締結されて補助プレート114にボトムプレート110が固定される。このように、ボトムプレート110を補助プレート114に固定する機構に、ナット収容部140を用いることができる。
【0065】
図13は、ラゲッジスペースを備えたオートバイの乗物用シートへの適用例を示す説明図である。
図13に示すように、本例における乗物用シートの着座部を構成するボトムプレート210は、略平坦な形状で乗員の臀部を支持する支持部211と、支持部211から前方へ向かうにつれて上方へ湾曲して隆起し、略半球体状を有する隆起部212とを有している。隆起部212は、乗物用シートの着座部前側の下部にラゲッジの収容空間を形成している。隆起部212の前面には開口213が形成されている。別部材からなり隆起部212と対応する略半球体状を有する蓋部215が、隆起部212及び開口213を覆うようにしてボトムプレート210の前側に取り付けられる。
【0066】
そして、ボトムプレート210における、蓋部215と不図示のボルトで締結される締結部位に、上述したナット収容部40又はナット収容部60と同様の構成を有するナット収容部240が形成されている。本例では、ボトムプレート210の隆起部212の後方に4箇所、ナット収容部240が設けられている。ナット収容部240にナットを挿入し、蓋部215に形成された孔216からボルトを挿入してボルトとナットを締結し、ボトムプレート210に蓋部215を固定する。このように、ラゲッジスペースを形成するボトムプレート210の隆起部212に蓋部215を固定する機構に、ナット収容部240を用いることができる。
【0067】
図14は、オートバイの乗物用シートへの他の適用例を示す説明図である。
図14に示すように、本例における乗物用シートの着座部を構成するボトムプレート310は、後端部に車体固定用のステー312が取り付けられ、ステー312を車体に固定することで、ボトムプレート310を車体に固定するよう構成されている。ボトムプレート310の後端部の左右両端部には、上述したナット収容部40又はナット収容部60と同様の構成を有するナット収容部340が形成されている。ナット収容部340にはナット20が挿入され、ステー312がボトムプレート310の後端部に下側から取り付けられる。この状態で、ステー312に形成された孔314に下方からボルト316を挿入してボルト316とナット20を締結し、ボトムプレート310にステー312を固定する。このように、ボトムプレート310に車体固定用のステー312を固定する機構に、ナット収容部340を用いることができる。
【0068】
図15は、オートバイの乗物用シートへのさらに他の適用例を示す説明図である。
図15に示すように、本例における乗物用シートの着座部を構成するボトムプレート410には、側部に車体固定用の固定部412が一体的に形成されている。固定部412は、ボトムプレート410の側部から下方に延出し、ボトムプレート410を車体に載置したときに車体を構成するフレーム420の外側面又は内側面に当接するように構成されている。そして、この固定部412に、上述したナット収容部40又はナット収容部60と同様の構成を有するナット収容部440が形成されている。ナット収容部440にナット20を挿入し、フレーム420に形成された孔にボルト416を挿入してボルト416とナット20を締結し、固定部412をフレーム420に固定することでボトムプレート410を車体に固定する。このように、ボトムプレート410を車体に固定する機構に、ナット収容部440を用いることができる。
【0069】
また、本発明に係る乗物用シートは、バギー及び自動二輪車以外の乗物であってもよい。例えば、自動三輪車、スノーモービル、水上バイク、自動四輪車、鉄道、建機など車輪を有する地上走行用乗物に搭載されるシート、地上以外を移動する航空機や船舶等に搭載されるシートに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
S 車両用シート(乗物用シート)
1 シートバック(乗員支持部)
2 シートクッション(乗員支持部)
1a,2a 表皮材
10,30,110,210,310,410,510 ボトムプレート
10a 後面(ボトムプレートの面)
10b 前面(ボトムプレートの面)
20,520 ナット
21 台座部
22 筒状部
23 ボルト貫通孔
30a 下面(ボトムプレートの面)
40,40’,60,140,240,340,440,540 ナット収容部(収容部)
41 収容空間
42 外周壁
42a 後壁(収容部の裏面)
42b 前壁(収容部の表面)
42c 段差部
42d 第一壁部
42e 第二壁部
43,63 側部(一端部側)
44,44’,64 挿入口
44a,64a 側部開口
44b,64b 後面開口
45,65,545 爪部
45a,65a 基端部、補強部
45b,65b 先端部
45c,65c 返し
46 受け部
47 孔
48 開口
49 係止部
50 凹部
64c 傾斜部
65d 切欠き
66 接続部
67 凹部
112 ヒンジ機構
114 補助プレート
116,316,416 ボルト
120 車体
211 支持部
212 隆起部
213 開口
215 蓋部
216,314 孔
312 ステー
412 固定部
420 フレーム
510a,510b 凹部