(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191166
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】セラミック電子部品、実装基板配置、およびセラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086833
(22)【出願日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021099609
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】会田 森
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5E001AE02
5E001AE03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させつつ、外部電極に必要とされる面積を低減する。
【解決手段】セラミック電子部品は、第1の内部電極と、第1の内部電極と平行に配置された第2の内部電極と、第1および第2の内部電極の間に介在してこれらを囲む誘電体を有する素体と、内部電極の端部に電気的に接続される外部電極を有する。素体は、第1および第2の内部電極の端部が露出する下面および上面を有する。誘電体は、下面に隣接する下部誘電体領域、上面に隣接する上部誘電体領域および下部誘電体領域と上部誘電領域間に配置された中間高さ誘電体領域を有する。下部誘電体領域は、上部誘電体領域の1以上の第2族元素の原子濃度に対する1以上の第14族元素の原子濃度の比率より高い1以上の第2族元素の原子濃度に対する1以上の第14族元素の原子濃度の比率を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1内部電極と、前記第1内部電極と平行に配置された少なくとも1つの第2内部電極と、前記第1内部電極と前記第2内部電極との間に介在し、前記第1内部電極と前記第2内部電極とを囲む誘電体とを有し、前記第1の内部電極の端部および前記第2の内部電極の端部が露出する下面および前記下面とは反対側の上面を有し、前記誘電体が、前記下面に隣接して配置された下部誘電体領域、前記上面に隣接して配置された上部誘電体領域、および前記下部誘電体領域と前記上部誘電体領域の間に配置された中間高さ誘電体領域を備える素体と、
前記第1の内部電極の前記端部に電気的に接続された第1の外部電極と、
前記第2の内部電極の前記端部に電気的に接続された第2の外部電極とを備え、
前記下部誘電体領域と前記上部誘電体領域の両方が、1以上の第14族元素と1以上の第2族元素を含み、前記下部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率が、前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より高いことを特徴とする
セラミック電子部品。
【請求項2】
前記中間高さ誘電体領域は、前記1以上の第14族元素と前記1以上の第2族元素を含み、
前記下部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記第1以上の14族元素の原子濃度の比率が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より高いことを特徴とする
請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記中間高さ誘電体領域は、前記1以上の第14族元素と前記1以上の第2族元素を含み、
前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より低いことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記下部誘電体領域の靭性は、前記中間高さ誘電体領域の靭性よりも高いことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記上部誘電体領域の硬度は、前記中間高さ誘電体領域の硬度よりも高いことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記素体は、前記下面と前記上面とを接続する他の面と、前記他の面と前記上面で形成される上方角部をさらに有し、前記上部誘電体領域は前記上方角部を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記素体の上方角部は、面取りされていることを特徴とする
請求項6に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記素体は、前記誘電体がその間に介在するように交互に積層された複数の第1の内部電極と複数の第2の内部電極を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1および第2の内部電極が積層される方向に沿って延び、
前記第2の外部電極は、前記第1および第2の内部電極が積層された方向に沿って延び、
前記第1の内部電極の各々は、前記第1の内部電極の端部として、前記下面のみで下端部が露出する露出凸部を有し、
前記第2の内部電極の各々は、前記第2の内部電極の端部として、前記下面のみで下端部が露出する露出凸部を有することを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記第1の外部電極および前記第2の外部電極の各々は、下地層と、前記下地層上に形成されためっき層とを有し、前記下地層は、金属と、前記金属中に分散された共材と、前記金属中に分散された前記1以上の第14族元素とを含むことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミックス電子部品。
【請求項10】
前記下部誘電体領域の各々は、前記下地層内の前記第14族元素が拡散されて形成された拡散層を有することを特徴とする
請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電体が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムのうち少なくとも1つを含むセラミック材料を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記1以上の第2族元素がBe、Mg、Ca、Sr、およびBaの1以上であり、前記1以上の第14族元素がC、Si、Ge、Sn、およびPbの1以上であることを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記1以上の第2族元素がBaであり、前記1以上の第14族元素がSiであることを特徴とする
請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記下部誘電体領域は、1.3%以上、3.9%以下であるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率を有することを特徴とする
請求項13に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
前記上部誘電体領域は、0%以上、1.0%以下であるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率を有することを特徴とする
請求項13に記載のセラミック電子部品。
【請求項16】
請求項1または2に記載のセラミック電子部品と、
実装基板と、
前記実装基板上に形成された第1のランド電極と、
前記実装基板上に形成された第2のランド電極と、
前記第1のランド電極と前記第1の外部電極とを接続する第1のはんだ層と、
前記第2のランド電極と前記第2の外部電極とを接続する第2のはんだ層を備える
配置。
【請求項17】
少なくとも1つの第1の内部電極と、前記第1の内部電極と平行に配置された少なくとも1つの第2の内部電極と、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極との間に介在し、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とを囲む誘電体とを有し、前記誘電体が1以上の第14族元素と1以上の第2族元素を含み、前記第1の内部電極の端部と前記第2の内部電極の端部が露出する下面および前記下面とは逆の上面を有する素体を形成することと、
前記下面の前記第1の内部電極の前記端部および前記第2の内部電極の前記端部が露出する領域に、金属と前記金属中に分散された1以上の第14族元素を含有する外部電極の下地層用の下地材料を塗布することと、
前記下地材料を焼結して下地層を形成し、前記下地材料に含まれる前記1以上の第14族元素を、前記下面の前記領域に隣接するよう配置された前記誘電体の下部誘電体領域に拡散させることと、
前記下地層の各々の上にめっき層を形成することとを備える
セラミック電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記誘電体が、前記下面に隣接して配置された下部誘電体領域と、前記上面に隣接して配置された上部誘電体領域と、下部誘電体領域と上部誘電体領域との間に配置された中間高さ誘電体領域とを有し、
焼成後、前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度より低いように、焼成することが行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記素体を形成することは、前記1以上の第14族元素の濃度と前記1以上の第2族元素の濃度の比率が前記中間高さ誘電体のそれよりも小さいグリーンシートを前記上部誘電体領域に貼り付けることを有することを特徴とする
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1以上の第2族元素がBaであり、前記1以上の第14族元素がSiであることを特徴とする
請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品、実装基板配置、およびセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の面積を小さくするために、実装基板に実装されるべきセラミック電子部品の実装面であるほぼ一面にのみに外部電極を設ける方式がある(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-123694号公報
【特許文献2】特開2017-175105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミック電子部品のほぼ実装面のみに外部電極が設けられている場合、セラミック電子部品を実装基板に実装する際に外部電極を介して加わる応力により、素体が破損する可能性がある。また、この場合、実装面と反対側の素体の上方角部が外部電極から露出するため、角部の欠けが発生しやすい。
【0005】
そこで、本発明は、信頼性を向上させつつ、外部電極に必要とされる面積を低減することができるセラミック電子部品、このセラミック電子部品を有する実装基板配置、およびこのセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、セラミック電子部品が提供される。このセラミック電子部品は、少なくとも1つの第1内部電極と、前記第1内部電極と平行に配置された少なくとも1つの第2内部電極と、前記第1内部電極と前記第2内部電極との間に介在し、前記第1内部電極と前記第2内部電極とを囲む誘電体とを有し、前記第1の内部電極の端部および前記第2の内部電極の端部が露出する下面および前記下面とは反対側の上面を有し、前記誘電体が、前記下面に隣接して配置された下部誘電体領域、前記上面に隣接して配置された上部誘電体領域、および前記下部誘電体領域と前記上部誘電体領域の間に配置された中間高さ誘電体領域を備える素体と、前記第1の内部電極の前記端部に電気的に接続された第1の外部電極と、前記第2の内部電極の前記端部に電気的に接続された第2の外部電極とを備える。前記下部誘電体領域と前記上部誘電体領域の両方が、1以上の第14族元素と1以上の第2族元素を含む。前記下部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率が、前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より高い。
【0007】
前記中間高さ誘電体領域は、前記1以上の第14族元素と前記1以上の第2族元素を含んでよく、前記下部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記第1以上の14族元素の原子濃度の比率が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より高くてよい。
【0008】
前記中間高さ誘電体領域は、前記1以上の第14族元素と前記1以上の第2族元素を含んでよく、前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度の比率より低くてよい。
【0009】
前記下部誘電体領域の靭性は、前記中間高さ誘電体領域の靭性よりも高くてよい。
【0010】
前記上部誘電体領域の硬度は、前記中間高さ誘電体領域の硬度よりも高くてよい。
【0011】
前記素体は、前記下面と前記上面とを接続する他の面と、前記他の面と前記上面で形成される上方角部をさらに有してよく、前記上部誘電体領域は前記上方角部を含んでよい。
【0012】
前記素体の上方角部は、面取りされていてよい。
【0013】
前記素体は、前記誘電体がその間に介在するように交互に積層された複数の第1の内部電極と複数の第2の内部電極を有してよい。前記第1の外部電極は、前記第1および第2の内部電極が積層される方向に沿って延びてよい。前記第2の外部電極は、前記第1および第2の内部電極が積層された方向に沿って延びてよい。前記第1の内部電極の各々は、前記第1の内部電極の端部として、前記下面のみで下端部が露出する露出凸部を有してよい。前記第2の内部電極の各々は、前記第2の内部電極の端部として、前記下面のみで下端部が露出する露出凸部を有してよい。
【0014】
前記第1の外部電極および前記第2の外部電極の各々は、下地層と、前記下地層上に形成されためっき層とを有してよい。前記下地層は、金属と、前記金属中に分散された共材と、前記金属中に分散された前記1以上の第14族元素とを含んでよい。
【0015】
前記下部誘電体領域の各々は、前記下地層内の前記第14族元素が拡散されて形成された拡散層を有してよい。
【0016】
前記誘電体が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムのうち少なくとも1つを含むセラミック材料を含んでよい。
【0017】
前記1以上の第2族元素がBe、Mg、Ca、Sr、およびBaの1以上であってよく、前記1以上の第14族元素がC、Si、Ge、Sn、およびPbの1以上であってよい。
【0018】
前記1以上の第2族元素がBaであってよく、前記1以上の第14族元素がSiであってよい。
【0019】
前記下部誘電体領域は、1.3%以上、3.9%以下であるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率を有してよい。
【0020】
前記上部誘電体領域は、0%以上、1.0%以下であるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率を有してよい。
【0021】
本発明の別の態様によれば、実装基板配置が提供される。この配置は、前記セラミック電子部品と、実装基板と、前記実装基板上に形成された第1のランド電極と、前記実装基板上に形成された第2のランド電極と、前記第1のランド電極と前記第1の外部電極とを接続する第1のはんだ層と、前記第2のランド電極と前記第2の外部電極とを接続する第2のはんだ層を備える。
【0022】
本発明の別の態様によれば、セラミック電子部品の製造方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの第1の内部電極と、前記第1の内部電極と平行に配置された少なくとも1つの第2の内部電極と、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極との間に介在し、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とを囲む誘電体とを有し、前記誘電体が1以上の第14族元素と1以上の第2族元素を含み、前記第1の内部電極の端部と前記第2の内部電極の端部が露出する下面および前記下面とは逆の上面を有する素体を形成することと、前記下面の前記第1の内部電極の前記端部および前記第2の内部電極の前記端部が露出する領域に、金属と前記金属中に分散された1以上の第14族元素を含有する外部電極の下地層用の下地材料を塗布することと、前記下地材料を焼結して下地層を形成し、前記下地材料に含まれる前記1以上の第14族元素を、前記下面の前記領域に隣接するよう配置された前記誘電体の下部誘電体領域に拡散させることと、前記下地層の各々の上にめっき層を形成することとを備える。
【0023】
前記誘電体が、前記下面に隣接して配置された下部誘電体領域と、前記上面に隣接して配置された上部誘電体領域と、下部誘電体領域と上部誘電体領域との間に配置された中間高さ誘電体領域とを有してよい。焼成後、前記上部誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度が、前記中間高さ誘電体領域における前記1以上の第2族元素の原子濃度に対する前記1以上の第14族元素の原子濃度より低いように、焼成することが行われてよい。
【0024】
前記素体を形成することは、前記1以上の第14族元素の濃度と前記1以上の第2族元素の濃度の比率が前記中間高さ誘電体のそれよりも小さいグリーンシートを前記上部誘電体領域に貼り付けることを有してよい。
【0025】
前記1以上の第2族元素がBaであってよく、前記1以上の第14族元素がSiであってよい。
【0026】
本発明の態様によれば、信頼性を向上させつつ、外部電極に必要な面積を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す一部を切り欠いた斜視図である。
【
図2A】
図1における線A1-A1に沿って見た(幅方向に沿って見た)積層セラミックコンデンサの断面図である。
【
図2B】
図1における線B1-B1に沿って見た(幅方向に沿って見た)積層セラミックコンデンサの断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4A】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による積層セラミックコンデンサが実装基板に実装された配置を示す断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態によるセラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図7】積層セラミックコンデンサの下部誘電体領域における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の好適な比率および上部誘電体領域における好適な比率を確認するための実験の結果を示す表である。
【
図8A】試料の下部誘電体領域の異なる位置におけるSiとBaの原子濃度を示す表である。
【
図8B】試料の上部誘電体領域における異なる位置のSiとBaの原子濃度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、実施形態に記載された全ての特徴の組み合わせは、本発明にとって絶対に必要なものではない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置や機器の設計、仕様、諸条件(使用条件、使用環境等)に応じて修正および/または変更することができる。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、以下の実施形態によって限定されるものではない。さらに、以下の説明に関連して用いられる図面に示される部品、構成要素、および要素は、部品、構成要素、および要素の理解を容易にするために、構造、図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0029】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図2Aは、
図1における線A1-A1に沿って見た(幅方向に沿って見た)積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2Bは、
図1中の線B1-B1に沿って見た(長手方向に沿って見た)積層セラミックコンデンサの断面図である。
図1において、
図2Bの線C1-C1線に沿って一部を切り取っている。
【0030】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、積層セラミックコンデンサ1は、素体2および外部電極6A,6Bを備える。素体2は、積層体2A、カバー層5A,5Bおよびマージン層5C~5Fを備える。積層体2Aは、内部電極層3Aと、他の内部電極層3Bと、隣り合う内部電極層3A,3Bの間に介在する誘電体層4とを有する。
誘電体層4、カバー層5A,5B、およびマージン層5C~5Fは、第2族元素および第14族元素を含む誘電体で形成することができる。第2族元素は、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、またはBa(バリウム)である。第14族元素は、例えば、C(炭素)、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、またはPb(鉛)である。素体2は、第2族元素としてBaを含み、第14族元素としてSiを含むことが好ましい。
【0031】
内部電極層3A,3Bは、その間に誘電体層4が介在するように交互に積層される。
図2Bでは、内部電極層3A,3Bを合計10枚積層した例を示しているが、内部電極層3A,3Bの積層枚数は限定されない。素体2の形状は、ほぼ直方体形状であってよく、積層体2Aの形状も、ほぼ直方体形状であってもよい。素体2は、素体2の各角部に沿って面取りされていてもよい。
素体2は、互いに反対側にある下面M1および上面M2を有する。
【0032】
以下の説明では、表面M1,M2を垂直に通る方向を素体2の高さ方向(厚さ方向)DHと称し、高さ方向DHに垂直で内部電極層3A,3Bに平行な方向を素体2の幅方向DWと称し、長手方向DLと幅方向DWに垂直な方向を素体2の長手方向DLと称する場合がある。
内部電極層3A,3Bは、誘電体層4がその間に介在するように、長手方向DLに積層されている。
【0033】
積層セラミックコンデンサ1は、実装基板に実装され、実装基板に実装された半導体チップに加わるノイズを除去するなどの様々な目的で使用される。
また、素体2のうち幅方向DWに離れた一対の互いに反対側にある面を一対の側面と称し、素体2のうち長手方向DLに離れた一対の互いに反対側にある面を一対の端面と称することがある。
なお、本明細書において、「上面」、「下面」、「側面」、「高さ」、「厚さ」、「幅」、「右」、「左」等の用語は、理解を容易にするために用いられており、実装基板に実装される際の積層セラミックコンデンサの向きを限定することを意図していない。
【0034】
図2Bに示すように、内部電極層3A,3Bの上端は、マージン層5Fで覆われている。内部電極層3A,3Bの上端は、互いに揃えられていてよい。
一方、内部電極層3A,3Bの下端は、マージン層5Eで部分的だけに覆われ、部分的に露出している。
図1に示すように、内部電極層3Aの左下隅RAは下方に突出して露出している一方、内部電極層3Aの右下端はマージン層5Eで覆われている。これに対し、内部電極層3Bの右下隅RBは下方に突出して露出している一方、内部電極層3Bの左下端はマージン層5Eで覆われている。
内部電極層3A,3Bの左側の縁は互いに揃えられていてよく、内部電極層3A,3Bの右側の縁は互いに揃えられていてよい。
【0035】
外部電極6A,6Bは、下面M1上に配置されている。外部電極6A,6Bは、幅方向DWに互いに離れており、長手方向DLに沿って延びており、互いに平行に配置されている。
内部電極層3Aの左下隅RAと内部電極層3Bの右下隅RBは、幅方向DWに互いに離れており、幅方向DWに沿って延びており、長手方向DLに互いに平行に配置されている。内部電極層3Aの左下隅RAおよび内部電極層3Bの右下隅RBは、下面M1で露出している。
マージン層5Eで覆われていない内部電極層3Aの左下隅RAを、内部電極層3Aの露出凸部RAと称する。また、マージン層5Eで覆われていない内部電極層3Bの右下隅RBを、内部電極層3Bの露出凸部RBと称する。
内部電極層3Aの露出凸部RAは、外部電極6Aと接触させられ、電気的に接続されている。内部電極層3Bの露出凸部RBは、外部電極6Bに接触させられ、外部電極6Bと電気的に接続されている。
内部電極層3Aの露出凸部RAは、長手方向DLに並んでおり、内部電極層3Bの露出凸部RBも、長手方向DLに並んでいる。
幅方向DWにおける露出凸部RAとRBとの間隔INTは、110μm以上である。
【0036】
カバー層5A,5Bは、積層方向(長手方向DL)において、その間に介在する積層体2Aの端面を覆うように、素体2の端面にそれぞれ配置されている。
サイドマージン層5C、5Dは、素体2の側面にそれぞれ配置されており、幅方向DWにおいてその間に介在する積層体2Aの側面を覆う。マージン層5C、5Dは、内部電極層3A,3Bの側縁を覆う。
マージン層5E、5Fは、素体2の下面および上面にそれぞれ配置されており、高さ方向DHにおいてその間に介在する積層体2Aの下面および上面を覆う。上マージン層5Fは、内部電極層3A,3Bの上端を覆う。下マージン層5Eは、内部電極層3A,3Bの下端を部分的に覆う。
【0037】
図2Aに仮想線で描かれているように、下マージン層5Eは、左下部誘電体領域R1A、右下部誘電体領域R1B、および中間下部誘電体領域R1Cを含む。左下部誘電体領域R1Aは、外部電極6Aおよび内部電極層3Aの露出凸部RAに隣接して配置される。右下部誘電体領域R1Bは、外部電極6Bおよび内部電極層3Bの露出凸部RBに隣接して配置される。
図2Bに仮想線で描かれているように、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bは、長手方向DLに沿って延びるが、露出凸部RAまたはRBは対応する下部誘電体領域R1AまたはR1Bに埋設されている。
上マージン層5Fは、上部誘電体領域R2を含む。上部誘電体領域R2は素体2の上方角部を含んでもよく、長手方向DLおよび幅方向DWに沿って延びる。上部誘電体領域R2は、上部マージン層5Fの全体と対応してよく、外部に露出させてよい。
さらに、素体2は、マージン層5Eおよび5Fの間に中間高さ誘電体領域R3を備える。中間高さ誘電体領域R3は、内部電極層3A,3Bの間の誘電体層4、カバー層5A,5B、およびサイドマージン層5C,5Dを含む。
【0038】
左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率は、上部誘電体領域R2におけるそれよりも高く、中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも高くてよい。また、上部誘電体領域R2における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率は、中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも低くてよい。
第2族元素がBaであり、第14族元素がSiである場合、左右の下部誘電体領域R1A,R1BにおけるBaの濃度に対するSiの濃度の比率は1.3%以上、3.9%以下であることが好ましく、上部誘電体領域R2におけるBaの濃度に対するSiの濃度の比率は0%以上、1.0%以下であることが好ましい。
左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの間の中間下部誘電体領域R1Cにおける第14族元素の濃度と第2族元素の濃度の比率は、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおけるそれよりも低くてもよい。
【0039】
左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの靭性は、中間高さ誘電体領域R3の靭性より高くてよい。領域R1A,R1B,R3の靭性は、例えば、領域R1A,R1B,R3のヤング率によって評価することができる。左右の下部誘電体領域R1A,R1Bでの第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が、中間高さ誘電体領域R3でのそれよりも大きい場合、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの靭性を中間高さ誘電体領域R3のそれよりも大きくすることが可能である。
【0040】
上部誘電体領域R2の硬度は、中間高さ誘電体領域R3の硬度より高くしてもよい。領域R2,R3の硬度は、例えば、領域R2およびR3のビッカース硬度によって評価することができる。上部誘電体領域R2における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が、中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも低い場合、上部誘電体領域R2の硬度を中間高さ誘電体領域R3の硬度よりも高くすることができる。
【0041】
外部電極6A,6Bを素体2の下面M1に配置することにより、外部電極6A,6Bが素体2よりも上方に突出したり、素体2の領域から幅方向DWおよび長手方向DLにはみ出したりすることを防止することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ1の面積を小さくしつつ、積層セラミックコンデンサ1の高さを小さくすることができる。したがって、積層セラミックコンデンサ1は、ICチップの実装面と反対側の基板の面に積層セラミックコンデンサを実装するLSC(Land-Side Capacitor)技術に適しており、基板に実装される電子部品の実装密度を向上させることができる。
【0042】
本実施形態では、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が、中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも高い。したがって、中間高さ誘電体領域R3における第14族元素の濃度を抑制することができ、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの靭性を中間高さ誘電体領域R3のそれより高くすることができる。したがって、積層セラミックコンデンサ1を基板に実装する際に、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bが外部電極6A,6Bから応力を受けても、素体2が破損しにくい。また、中間高さ誘電体領域R3における誘電体の比誘電率が低下するのを防止することができるので、積層セラミックコンデンサ1の容量の低下を最小限に抑えることができる。
【0043】
本実施形態では、上部誘電体領域R2での第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が、中間高さ誘電体領域R3でのそれよりも低いので、上部誘電体領域R2の硬度を中間高さ誘電体領域R3の硬度よりも高くすることが可能である。そのため、積層セラミックコンデンサ1の保持時および搬送時に積層セラミックコンデンサ1が何かに衝突しても、素体2の上方角部が欠けにくい。
【0044】
内部電極層3A,3Bおよび誘電体層4の厚さは、0.05μm~5μmの範囲が好ましく、例えば、0.3μmである。
内部電極層3A,3Bの材料の主成分は、例えば、Cu(銅)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Sn、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)またはW(タングステン)といった金属でもよく、これらの金属の少なくとも一つを含む合金であってもよい。
【0045】
誘電体層4の材料の主成分は、例えば、ペロブスカイト構造を有するセラミック材料であってもよい。主成分は、50at%以上の割合で含有されていてもよい。誘電体層4のセラミック材料は、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウムまたはチタン酸ジルコン酸カルシウムであってよい。
【0046】
カバー層5A,5Bおよびマージン層5C~5Fの材料の主成分は、例えば、セラミック材料であってもよい。カバー層5A,5Bおよびマージン層5C~5Fのセラミック材料の主成分は、誘電体層4のセラミック材料の主成分と同じであってよい。
マージン層5Eの厚さは、例えば、15μmとすることができる。
【0047】
外部電極6A,6Bの各々は、素体2の下面M1上に形成された下地層7と、下地層7上に形成されためっき層9とを有している。
外部電極6A,6Bの下地層7は、幅方向DWに互いに間隔をおいて(離れて)いる。外部電極6A,6Bの各々の下地層7は、長手方向DLに沿って延び、互いに平行である。
【0048】
下地層7の導電材料は、例えば、Cu、Fe、Zn、Al、Ni、Pt、Pd、Ag、AuまたはSnといった金属であってもよいし、これらの金属の少なくとも1つを含む合金であってもよい。
【0049】
下地層7は、金属中に分散された共材粒子をさらに含んでもよい。ここで、「粒子」とは、個々の小粒子だけでなく、後述する焼成ステップ後の複数の小粒子の組み合わせで形成される塊も含む意味である。共材は、下地層7に島状に分散することで、素体2と下地層7の熱膨張率の差を小さくし、下地層7に発生する熱応力を緩和する。共材は、例えば、誘電体層4の主成分であるセラミック成分である。また、下地層7は、ガラス成分を含んでもよい。下地層7に含まれるガラス成分は、下地層7を緻密化することができる。ガラス成分は、例えば、Ba、Sr、Ca、Zn、Al、Si、B(ホウ素)等の酸化物であってもよい。
【0050】
また、下地層7は、素体2に含まれる金属成分を含んでもよい。金属成分は、例えば、Mgであってもよいが、Ni、Cr、Sr、Al、Na、および/またはFeを微量に含んでいてもよい。この場合、下地層7は、下地層7の導電材料に用いられる金属と、素体2に含まれる金属と、酸素との化合物、例えば、Mg、Ni、およびOを含む化合物を含んでもよい。
【0051】
下地層7は、誘電体材料を含む導電性塗布ペーストの焼結体で形成されていることが好ましい。これにより、素体2と下地層7との密着性を確保しつつ、下地層7を厚くすることができるので、外部電極6A,6Bの強度が確保され、下地層7と内部電極層3A,3Bの導電性が確保される。
【0052】
また、下地層7は、金属中に分散されたSiなどの第14族元素を含む。したがって、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの各々は、下地層7に添加された第14族元素が下地層7から領域R1A,R1Bに拡散されて形成された拡散層DFを含むことができる。このように、焼結ステップによって、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率を中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも高くすることができるので、工程数を増やさずに左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの靭性を向上させることができる。拡散層DFは、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの各々と同じ領域であってもよい。
【0053】
外部電極6A,6Bの各々のめっき層9は、対応する下地層7を連続的に覆っている。めっき層9は、対応する下地層7を介して内部電極層3Aまたは3Bと電気的に接続されている。また、外部電極6A,6Bの各々のめっき層9は、はんだを介して実装基板上の電極と電気的に接続されている。
【0054】
めっき層9の材料は、例えば、Cu、Fe、Zn、Al、Ni、Pt、Pd、Ag、Au、Sn等の金属であってもよいし、これらの金属の少なくとも1つを含む合金であってもよい。めっき層9は、単一の金属成分の単層であってもよいし、異なる金属成分の複数層であってもよい。
外部電極6A,6Bの各々のめっき層9は、例えば、下地層7上に形成されたCuめっき層と、Cuめっき層上に形成されたNiめっき層と、Niめっき層上に形成されたSnめっき層との3層構造であってもよい。Cuめっき層は、めっき層9と下地層7との密着性を向上させることができ、Niめっき層は、外部電極6A,6Bのはんだ付け時の耐熱性を向上させることができる。Snめっき層は、めっき層9に対するはんだの濡れ性を向上させることができる。
【0055】
図3は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4A~
図4Jは、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。
図4A~
図4Eは、
図1中の線B1-B1に沿って見た断面を示し、
図4F~
図4Jは、
図1中の線A1-A1に沿って見た断面を示している。
図4C~
図4Eは、説明の便宜上、3つの内部電極層3Aと3つの内部電極層3Bのみを、誘電体層4がそれらの間に介在するように交互に積層した状態を示している。
【0056】
図3のステップS1(混合ステップ)では、分散剤および成形助剤としての有機バインダと有機溶剤を誘電体材料粉末に加え、粉砕・混合してスラリを生成する。誘電体材料粉末は、例えば、セラミック粉末を含む。誘電体材料粉末は、添加物を含んでもよい。添加物は、例えば、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Y(イットリウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(カドミウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Co(コバルト)、Ni、Li(リチウム)、B、Na(ナトリウム)、K(カリウム)もしくはSiの酸化物、またはガラスである。有機バインダは、例えば、ポリビニルブチラール樹脂またはポリビニルアセタール樹脂である。有機溶剤は、例えば、エタノールまたはトルエンである。
【0057】
次に、
図3のステップS2(スラリ塗布ステップ)において、
図4Aに示すように、グリーンシート24が製造される。具体的には、セラミック粉末を含むスラリをシート状にキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてグリーンシート24を製造する。キャリアフィルムは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。スラリの塗布は、例えば、ドクターブレード法、ダイコータ法、グラビアコータ法などを用いて行うことができる。ステップS2を繰り返すことにより、複数のグリーンシート24を作製する。
【0058】
次に、
図3のステップS3(電極印刷ステップ)において、
図4Bに示すように、ステップS1で作製したグリーンシートのうち、
図2Bに示す内部電極層3Aまたは3Bが配置されるべきグリーンシート24(24A,24B)の各々に、内部電極層となる導電性ペーストを所定のパターンで塗布して、グリーンシート24A,24Bに内部電極パターン23A、23Bを形成する。
個々の内部電極パターン23Aは、露出凸部RAが接続された2つの内部電極層3Aに対応する。個々の内部電極パターン23Bは、露出凸部RBが接続された2つの内部電極層3Bに対応する。
内部電極層用導電性ペーストは、内部電極層3A,3Bの材料として用いられる金属の粉末を含む。例えば、内部電極層3A,3Bの材料として用いられる金属がNiである場合、内部電極層用導電性ペーストは、Niの粉末を含む。また、内部電極層用導電性ペーストは、バインダ、溶媒、および必要に応じて助剤を含む。内部電極層用導電性ペーストは、誘電体層4の材料の主成分と同じ組成の主成分を有するセラミック材料を共材として含んでもよい。
内部電極層用の導電性ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、またはグラビア印刷法を用いて行ってよい。したがって、ステップS3は電極印刷ステップと称することができる。このようにして、内部電極パターン23が形成された複数のグリーンシート24が作製される。
【0059】
次に、
図3のステップS4(積層ステップ)において、
図4Cに示すように、内部電極パターン23A、23Bが形成された24A,24Bと内部電極パターンが形成されていないグリーンシート25A,25Bを所定の順序で積層してグリーンシートのブロック30を作製する。
内部電極パターンが形成されていないグリーンシート25A,25Bは、外層(カバー層5A,5B)として使用される。カバー層5A,5B用のグリーンシート25A,25Bは、内部電極パターン23A、23Bが形成された24A,24Bよりも厚く形成されている。
ステップS4では、内部電極パターン23A、23Bの端部を幅方向DWに揃え、露出凸部RA,RBが幅方向DWに揃うようにする。
【0060】
次に、
図3のステップS5(圧着ステップ)において、
図4Dに示すように、
図3のステップS4の積層ステップで得られた積層ブロック30をプレスし、グリーンシート24A,24B,25A,25Bを圧着する。積層ブロック30のプレスは、例えば、樹脂フィルムで囲まれた積層ブロック30を静水圧で加圧することで行ってよい。
【0061】
図3のステップS6(切断ステップ)では、
図4Eに示すように、プレスされた積層ブロック30を切断し、それぞれが直方体形状を有する複数の素体に分離する。
積層ブロック30の切断は、
図2Bの高さ方向DHに互いに規則的に間隔をおいた平面P1~P9において行われる。平面P1,P3,P5,P7,P9は、
図1および
図2Bに示す各素体2の下面M1に対応し、互いに接続された2つの内部電極層3Aの2つの露出凸部RAが平面P1,P3,P5,P7,P9で分離され、互いに接続された2つの内部電極層3Bの2つの露出凸部RBが平面P1,P3,P5,P7,P9で分離される。平面P2,P4,P6,P8は、
図1および
図2Bに示す各素体2の上面M2に相当し、平面P2,P4,P6,P8での切断は、内部電極パターン23A、23Bに影響しない。
積層ブロック30の切断は、例えば、ブレードダイシング等の方法によって行うことができる。
【0062】
得られた素体2’を
図4Fに拡大して示すが、
図4Eとは向きを変えている。個々の素体2’において、内部電極層3A,3Bが、その間に誘電体層4が介在するように交互に積層され、さらにカバー層5A,5Bとマージン層5C~5Fが形成される。
図2Bに示すように、内部電極層3A,3Bの積層方向は、素体の長手方向DLである。
図4Fに示すように、内部電極層3Aの露出凸部RAは、下面M1で露出する。また、
図4Fには示していないが、内部電極層3Bは、
図4Fの上下中心に対して内部電極層3Aに対して線対称であるため、内部電極層3Bの露出凸部RBも下面M1で露出する。
【0063】
上部誘電体領域R2における第14族元素(例えばSi)の濃度と第2族元素(例えばBa)の濃度との比率を中間高さ誘電体領域R3におけるそれよりも低くするために、
図4Gに示すように、第14族元素(例えばSi)と第2族元素(例えばBa)の濃度との比率が24A,24Bよりも低いグリーンシート26を上部誘電体領域R2に貼り付けてもよい。
【0064】
次に、
図3のステップS7(面取りステップ)において、
図4Hに示すように、各素体2’の角部を面取りし、角部に曲面を有する素体2を形成する。素体2’の面取りには、例えば、バレル研磨を用いることができる。
【0065】
次に、
図3のステップS8(バインダ除去ステップ)において、各素体2に含まれるバインダを除去する。バインダの除去は、例えば、N
2雰囲気中で素体2を約350℃に加熱することにより行われる。
【0066】
次に、
図3のステップS9(下地層用ペースト塗布ステップ)において、ステップS8でバインダが除去された各素体2の下面M1に、下地層7のための導電性ペーストが選択的に塗布される。ペーストは、各外部電極6A,6Bの下地層7に対応する領域にのみ塗布される。左外部電極6A用のペーストは、内部電極層3Aの露出凸部RAに接触させ、右外部電極6B用のペーストは、内部電極層3Bの露出凸部RBに接触させる。
各素体2の下面M1の領域に下地層用導電性ペーストを選択的に塗布するには、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、またはグラビア印刷法を用いることができる。
その後、導電性ペーストを乾燥させる。
下地層7用の導電性ペーストは、下地層7の導電材料として用いられる金属の粉末またはフィラーを含む。例えば、下地層7の導電材料として用いられる金属がNiである場合、下地層用導電性ペーストは、Niの粉末またはフィラーを含む。また、下地層用導電性ペーストは、共材として、例えば、誘電体層4の材料の主成分であるセラミック成分を含む。例えば、下地層用導電性ペーストには、チタン酸バリウムを主成分とする酸化物セラミックスの粒子(例えば、D50粒子径が0.8μm~4μm)が共材として混合される。下地層用導電性ペーストは、さらにバインダと溶媒とを含む。
さらに、下地層用導電性ペーストは、Siなどの第14族元素を含有する。このため、導電性ペーストには、SiO
2などのガラス成分が添加されていてもよい。
【0067】
次に、
図3のステップS10(焼結ステップ)において、
図4Iに示すように、ステップS8で下地層7用の導電性ペーストを塗布した素体2は焼結処理を受け、内部電極層3A,3Bが各素体2の誘電体層4と一体化し、下地層7が素体2と一体化する。したがって、左外部電極6Aの下地層7は、内部電極層3Aの露出凸部RAに固定され、右外部電極6Bの下地層7は、内部電極層3Bの露出凸部RBに固定される。素体2および導電性ペーストの焼結は、例えば、焼結炉を用いて、1000℃~1400℃の温度範囲で10分~2時間行われる。
内部電極層3A,3Bの材料としてNiやCuなどの卑金属を用いる場合には、内部電極層3A,3Bの酸化を防止するために、焼結炉内を還元雰囲気に保ちながら焼結を行ってもよい。
下地層用導電性ペーストが塗布された素体2の熱処理により、導電性ペーストに含まれる第14族元素(例えば、Si)を下部マージン層5Eに拡散させて、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける第14族元素(例えば、Si)の濃度の比率を高めることができ、一方、中間下部誘電体領域R1Cの第14族元素(例えば、Si)の濃度の比率は高めないようにすることができる。
焼成ステップでは、素体2内の誘電体材料に含まれる一部の酸化物成分が還元されうるため、焼成ステップの後に再酸化ステップを実施してもよい。再酸化ステップは、N
2雰囲気中で、600℃~1000℃の温度範囲で実施してよい。
【0068】
次に、
図3のステップS11(めっき層形成ステップ)において、
図4Jに示すように、下地層7上にめっき層9を形成する。めっき層9を形成する際には、例えば、Cuめっき層、Niめっき層、およびSnめっき層を順次形成してよい。めっき層は、下地層7が形成された素体2がバレル内に収容され、バレル内のめっき液に浸漬され、バレルが回転して電気めっきされることで形成することができる。
【0069】
このとき、下地層7を有する複数の素体2がバレル内で攪拌され、素体が頻繁に互いに衝突する。
しかし、焼結ステップS10により、上部誘電体領域R2での第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が中間高さ誘電体領域R3のそれよりも低くされたので、上部誘電体領域R2の硬度が中間高さ誘電体領域R3の硬度よりも高くされた。そのため、バレル内で素体2同士が頻繁に衝突しても、素体2の上面M2における上方角部が欠けにくい。
【0070】
サイドマージン層5C,5Dの下部に下地層用導電性ペーストを付着させてもよい。この場合、各外部電極6A,6Bの下地層7およびめっき層9は、対応するサイドマージン層5Cまたは5Dの下部に付着されてもよい。
導電性ペーストから第14族元素(例えば、Si)が下マージン層5Eにおける左右の下部誘電体領域R1A,R1Bに拡散する時、外部電極6A,6Bが付着しているサイドマージン層5C,5Dの下部(左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの付近)も、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bと同様に第14族元素を多量に含みうる。この場合、素体2の下面M1および側面に、下地層用導電性ペーストをディッピングにより塗布してよい。
【0071】
第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1が実装基板41に実装された配置を示す断面図である。
図5に示すように、実装基板41の裏面には、ランド電極42A,42B,44A,44Bが形成されている。積層セラミックコンデンサ1は、外部電極6A,6Bのめっき層9にそれぞれ付着したはんだ層43A,43Bを介してランド電極42A,42Bに接続されている。
実装基板41の裏面のランド電極44A,44Bには、それぞれ、はんだボール47A,47Bが形成されている。
【0072】
一方、実装基板41の反対面には、図示しない半導体チップが実装されている。半導体チップは、マイクロプロセッサ、半導体メモリ、あるいはFPGA(Field- Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0073】
別の実装基板45の裏面には、ランド電極46A,46Bが形成されている。実装基板41,45は、はんだボール47A,47Bを介して互いに接続されている。実装基板45は、実装基板41が実装されたマザーボードとして使用することができる。
【0074】
実装基板41,45の間隔は、はんだボール47A,47Bによって一定に保たれている。さらに、実装基板41,45の間の空間には、積層セラミックコンデンサ1を封止する封止樹脂48が充填される。封止樹脂48は、例えば、エポキシ樹脂である。実装基板41,45をはんだボール47A,47Bを介して互いに接続した後、実装基板41,45の間の空間に樹脂48を充填して硬化させてもよい。この場合、封止樹脂48は、積層セラミックコンデンサ1、はんだ層43A,43B、およびはんだボール47A,47Bを覆い、素体2の上面M2に密着する。
【0075】
実装基板41の半導体チップが実装された表面とは反対側の裏面に積層セラミックコンデンサ1を実装することにより、積層セラミックコンデンサ1を半導体チップに近接して配置することができるので、半導体チップに影響を与えるノイズを効果的に除去することができる。
【0076】
外部電極6A,6Bを素体2の下面M1に配置することにより、外部電極6A,6Bが素体2よりも上方に突出することを防止でき、はんだ層43A、43Bが濡れ上がって外部電極6A,6Bをつたって積層セラミックコンデンサ1の上面M2よりも突出することを防止でき、積層セラミックコンデンサ1の高さを小さくすることが可能である。これにより、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41,45の間の空間に積層セラミックコンデンサ1を配置することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1をLSCとして使用することができるようになる。
【0077】
素体2における外部電極6A,6Bに隣接する左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの靭性を高めることにより、積層セラミックコンデンサ1を実装基板41に実装する際に、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bが外部電極6A,6Bから応力を受けたとしても、素体2を破損しにくくすることができる。
【0078】
素体2における上部誘電体領域R2の硬度は中間高さ誘電体領域R3の硬度より高い。このため、例えば、実装基板41,45の間に積層セラミックコンデンサ1を配備する際に、素体2の上方角部に衝撃が加わっても、素体2の上方角部が欠けにくい。
【0079】
第3実施形態
図6は、本発明の第3実施形態に係るセラミック電子部品を示す斜視図である。
図6では、セラミック電子部品として、チップインダクタを例にとっている。
チップインダクタ31は、素体32と、2つの外部電極36A,36Bを備える。素体32は、両端に形成された2つの端部片33A、33Bを有するコイルパターン33と、磁性体34を備える。磁性体34は、コイルパターン33によって形成される内部電極層を絶縁するための誘電体として使用される。
素体32は、ほぼ直方体形状であってよく、下面M11および上面M12を有する。素体32は、素体32の各角部に沿って面取りされていてもよい。
【0080】
コイルパターン33は、磁性体34の中に埋め込まれている。ただし、端部片33Aは、素体32の下面M11において磁性材料34から露出して外部電極36Aに接続され、端部片33Bは、素体32の下面M11において磁性材料34から露出して外部電極36Bに接続されている。
【0081】
コイルパターン33および端部片33A、33Bの材料としては、例えば、Cu、Fe、Zn、Al、Sn、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、Pd、Ta、およびWといった金属、またはこれらの金属の少なくとも1つを含む合金であってよい。磁性体34は、例えば、フェライトである。
【0082】
外部電極36A,36Bは、下面M11に配置されている。外部電極36Aおよび36Bは、幅方向DWに互いに離れており、長手方向DLに沿って延びており、互いに平行に配置されている。
【0083】
下面M11付近であって外部電極36Aおよび36Bに隣接する、素体32の下部誘電体領域R11AおよびR11Bでの第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率は、上面M12付近である素体32の上部誘電体領域R12のそれよりも高く、下部誘電体領域R11A,R11Bと上部誘電体領域R12の間の中間高さ誘電体領域R13のそれよりも高くてもよい。したがって、下部誘電体領域R11A,R11Bの靭性は、中間高さ誘電体領域R13の靭性よりも高くすることができる。
また、上部誘電体領域R12における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率は、中間高さ誘電体領域R13における比率よりも低くてよい。したがって、上部誘電体領域R12の硬度は、中間高さ誘電体領域R13の硬度よりも高くすることができる。
【0084】
上述の実施形態では、セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサとチップインダクタを例に挙げたが、本発明に係るセラミック電子部品は、チップ抵抗器またはセンサチップであってよい。また、上述の実施形態では、各セラミック電子部品は、2つの外部電極を含むが、セラミック電子部品は、3つ以上の外部電極を含んでよい。
【0085】
また、上述した実施形態では、外部電極は、素体2または32の下面M1またはM11にのみ配置されているが、外部電極は、素体の複数の面に配置されていてもよい。外部電極が素体の複数の面に配置されている場合、外部電極に近い領域における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率が、外部電極から遠い領域におけるそれよりも高くてよい。この場合、上述したセラミック電子部品の製造方法を用いることにより、外部電極の下地層から第14族元素が拡散することで、外部電極に近い領域における第2族元素の濃度に対する第14族元素の濃度の比率を高くすることができる。
【0086】
実験
発明者は、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける第14族元素の濃度と第2族元素の濃度の好適な比率と、上部誘電体領域R2における好適な比率を確認するための実験を行った。
図7に実験結果を示す。
実験のために、発明者は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の試料1~6のそれぞれの試験片を1000個準備した。第14族元素としてSiを用い、第2族元素としてBaを用いた。試料1~6は、領域R1A,R1BにおけるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率が異なり、領域R2におけるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率が異なっている。原子濃度の測定は、SEM(Scanning Electron Microscope)と併用するEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により行った。
実験では,試験片に対して角欠け試験,脱離試験,容量密度試験を実施した。角欠け試験では、各試験片の素体2の上方角部の少なくとも1つが欠けたか否かを調べた。脱離試験では、基板に実装した後の各試験片について、外部電極6A,6Bの少なくとも一方が素体2から脱離したか否かを調べた。容量密度試験では、各試験片の容量密度を測定した。
角欠け試験、脱離試験、および容量密度試験の結果に基づいて、試験片を良品と不良品とに分類した。
【0087】
試料1については,上部誘電体領域R2でのSiの比率が低いため,上方角部が十分に硬く,欠けが発生しなかった。しかし、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのSiの比率が低いため、領域R1A,R1Bの緻密化、ひいては靭性が不十分であった。したがって、試料1の10個の試験片において、外部電極6A,6Bの少なくとも一方が基板への実装時の応力に耐えられず、素体2から脱離した。
【0088】
試料2については、上部誘電体領域R2でのSiの比率が高いため、上方角部の硬度が十分でなく、欠けが発生した。また、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのSiの比率が低いため、領域R1A,R1Bの緻密化、ひいては靭性が不十分であった。したがって、試料2の10個の試験片において、外部電極6A,6Bの少なくとも一方が基板への実装時の応力に耐えられず、素体2から脱離した。
【0089】
試料3については、上部誘電体領域R2でのSiの比率が高いため、上方角部の硬度が十分でなく、欠けが発生した。しかし、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのSiの比率が高いため、領域R1A,R1Bの緻密化、ひいては靱性は十分であった。したがって、試料3のすべての試験片において、外部電極6A,6Bは、基板への実装時の応力に耐え、素体2から脱離することはなかった。
【0090】
試料4については、上部誘電体領域R2でのSiの比率が低いため、上方角部が十分に硬く、欠けが発生しなかった。また、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのSiの比率が高いため、領域R1A,R1Bの緻密化、ひいては靱性は十分であった。したがって、試料4のすべての試験片において、外部電極6A,6Bは、基板への実装時の応力に耐え、素体2から脱離することはなかった。しかし、左右の下面誘電体領域R1A,R1BにおいてSiの比率が高すぎたため、容量密度が十分ではなかった。
【0091】
試料5,6については、上部誘電体領域R2でのSiの比率が低いため、上方角部が十分に硬く、欠けが発生しなかった。また、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのSiの比率が高いため、領域R1A,R1Bの緻密化、ひいては靭性は十分であった。したがって、試料5,6のすべての試験片において、外部電極6A,6Bは、基板への実装時の応力に耐え、素体2から脱離することはなかった。さらに、容量密度は十分であった。
【0092】
図7の結果から、左右の下部誘電体領域R1A,R1BでのBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率は、1.3%以上3.9%以下であることが好ましく、上部誘電体領域R2でのBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率は、0%以上1.0%以下であることが好ましいことが分かる。
【0093】
図8Aは、別の試料の素体2の左右の下部誘電体領域R1A,R1Bにおける異なる位置J1A、J1B、J1CにおけるSiとBaの原子濃度を示す。
図8Bは、この試料の素体2の上部誘電体領域R2における異なる位置J2A、J2B、J2CにおけるSiとBaの原子濃度を示す。原子濃度は、SEMと併用したEDSで測定した。
【0094】
また、
図8Aおよび
図8Bは、各位置におけるSiの原子濃度とBaの原子濃度の比率であるSi/Baを示す。
図8Aおよび
図8Bに示すように、領域R1A,R1Bのすべての位置におけるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率は、領域R2のすべての位置におけるBaの原子濃度に対するSiの原子濃度の比率より高い。この試験片は、左右の下部誘電体領域R1A,R1Bの全体において、十分な靭性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0095】
1 積層セラミックコンデンサ
2 素体
2A 積層体
3A,3B 内部電極層
4 誘電体層
5A,5B カバー層
5C~5F マージン層
6A,6B 外部電極
7 下地層
9 めっき層