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特開2022-191178特に計時器のための、衝撃ストライク機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191178
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】特に計時器のための、衝撃ストライク機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 21/04 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G04B21/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093513
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】21179616.4
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
(72)【発明者】
【氏名】ポリクロニス ナキス・カラパティス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】計時器のストライク機構において、ハンマーがゴングに当たるときのエネルギーの多くを失ってしまうことを防ぐ。
【解決手段】計時器用ムーブメント3のための、衝撃を発生させるストライク機構1に関し、ストライク機構1は、ストライクされたときに音を発することを可能にする少なくとも1つの共振要素5と、及びハンマー8とを備え、ハンマー8は、平静位置9と、ハンマー8が共振要素5をストライクして共振要素5を振動させるストライク位置の間を動くことができ、ストライク機構1は、解放位置からインパクト位置へと動くように構成している可動インパクター16、17、18を備えるハンマー8をアクチュエートするためのアクチュエートシステムを備え、インパクト位置において、可動インパクターは、その運動量をハンマー8へと少なくとも部分的に伝えて、ハンマー8を平静位置9からストライク位置へと動かして、共振要素5を振動させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に計時器用ムーブメント(3)のための、衝撃を発生させるストライク機構(1)であって、
前記ストライク機構(1)は、ストライクされたときに音を発することを可能にする少なくとも1つの共振要素(5)と、及びハンマー(8)とを備え、
前記ハンマー(8)は、平静位置(9)と、前記ハンマー(8)が前記共振要素(5)をストライクして前記共振要素(5)を振動させるストライク位置(11)の間を動くことができ、
前記ストライク機構(1)は、解放位置(19)からインパクト位置(21)へと動くように構成している可動インパクター(16、17、18)を備える前記ハンマー(8)をアクチュエートするためのアクチュエートシステムを備え、
前記インパクト位置(21)において、前記可動インパクター(16、17、18)は、その運動量を前記ハンマー(8)へと少なくとも部分的に伝えて、前記ハンマー(8)を前記平静位置(9)から前記ストライク位置(11)へと動かして、前記共振要素(5)を振動させる
ことを特徴とするストライク機構。
【請求項2】
前記計時器用ムーブメント(3)に対して固定される磁石(15)を備え、
前記磁石(15)は、前記可動インパクター(16、17、18)を引きつけてインパクト位置(21)にするように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のストライク機構。
【請求項3】
前記ハンマー(8)は、前記磁石(15)が平静位置(9)にあるときに前記磁石(15)と接触する
ことを特徴とする請求項2に記載のストライク機構。
【請求項4】
前記可動インパクター(16、17、18)は、前記磁石(15)に衝撃を与えて、前記磁石(15)を介して前記ハンマー(8)にパルスを与えるように構成している
ことを特徴とする請求項3に記載のストライク機構。
【請求項5】
前記可動インパクター(16、17、18)の解放位置(19)と磁石(15)の間の距離は、前記可動インパクター(16、17、18)がインパクト位置(21)にあるときに、前記磁石(15)が自身の方に前記可動インパクター(16、17、18)を引きつけるように選択される
ことを特徴とする請求項4に記載のストライク機構。
【請求項6】
前記可動インパクター(16、17、18)によって伝えられる前記運動量は、前記ハンマー(8)に作用する前記磁石(15)の磁気的保持力に打ち勝って、前記ハンマー(8)が前記磁石(15)から離れて前記共振要素(5)をストライクする
ことを特徴とする請求項4に記載のストライク機構。
【請求項7】
前記ストライク機構(1)は、前記ハンマー(8)が取り付けられたフレキシブルなガイド(12)を備え、これによって、前記ハンマー(8)が前記平静位置(9)と前記ストライク位置(11)の間を動くことが可能になる
ことを特徴とする請求項1に記載のストライク機構。
【請求項8】
前記アクチュエートシステムは、前記可動インパクター(16、17、18)が取り付けられたフレキシブルなガイドを備え、これによって、前記可動インパクター(16、17、18)が前記解放位置(19)と前記インパクト位置(21)の間を動くことが可能になる
ことを特徴とする請求項1に記載のストライク機構。
【請求項9】
前記フレキシブルなガイド(12)には、フレキシブルな細長材(13、26、27、28)又はフレキシブルな首部がある
ことを特徴とする請求項7に記載のストライク機構。
【請求項10】
前記アクチュエートシステムには、前記可動インパクター(16、17、18)を備えるロータリーデバイス(20)があり、
前記ロータリーデバイスは、前記可動インパクター(16、17、18)を前記解放位置(19)に動かすように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のストライク機構。
【請求項11】
前記アクチュエートシステムは、前記ロータリーデバイス(20)に配置される、少なくとも1つの付加的な可動インパクター(16、17、18)、好ましくは、2つの付加的な可動インパクター、を備え、これによって、各可動インパクター(16、17、18)を順に解放位置(19)に動かす
ことを特徴とする請求項7に記載のストライク機構。
【請求項12】
前記ロータリーデバイス(20)には、ハブ(22)がある
ことを特徴とする請求項1に記載のストライク機構。
【請求項13】
前記ロータリーデバイス(20)には、少なくとも1つのアーム(23、24、25)があり、各アーム(23、24、25)は、可動インパクター(16、17、18)を支える
ことを特徴とする請求項7に記載のストライク機構。
【請求項14】
前記ロータリーデバイス(20)には、前記ハブ(22)のまわりに角度的に分布している複数のアーム(23、24、25)がある
ことを特徴とする請求項7に記載のストライク機構。
【請求項15】
請求項1に記載のストライク機構(1)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、計時器の衝撃ストライク機構に関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなストライク機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0003】
計時器の分野において、ストライク機構を伝統的な計時器用ムーブメントと組み合わせて、特に、ミニッツリピーターとして機能させたり、スケジュールされたアラーム時間を通知させたりすることができる。このようなストライク機構は、典型的には、サファイア、水晶、又は鋼、青銅、貴金属、金属ガラスのような金属材料によって作られた少なくとも1つのゴングを備える。このゴングは、例えば、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のフレーム内の計時器用ムーブメントのまわりにて円の少なくとも一部にわたって延在している。ゴングは、その少なくとも一方の端を介してゴングホルダーに固定され、このゴングホルダー自体が携行型時計プレートと一体的になっている。ストライク機構のハンマーは、例えばゴングホルダーの近くにて、プレート上を回転してゴングをストライクして振動させることができるように取り付けられる。ハンマーがストライクしたゴングが発生させる音は、特に1kHz~20kHzの可聴周波数の範囲にある。これによって、携行型時計の着用者に、特定の時間、スケジュールされたアラーム、又はミニッツリピーターの音を通知することが可能になる。
【0004】
欧州特許文献EP1574917A1に示されているように、携行型時計のストライク機構が複数のゴングを備えることができ、これらのゴングは、その端の1つを介して1つの同じゴングホルダーに固定され、このゴングホルダーがプレートと一体的となっている。各ゴングを対応するハンマーでストライクすることができる。このために、各ハンマーをその専用の駆動ばねによって駆動し、この駆動ばねは、ミニッツリピーターの音やアラームの時間を知らせるために、事前に力をためてからハンマーをゴングの方に動かす必要がある。2つの減衰用カウンターばねが設けられて、それぞれが平静モードにおいて2つのハンマーをゴングから離して保持する。ストライクモードにおいて、この減衰用カウンターばねが大きな力で作用し、ゴングをストライクする前に各ハンマーの打撃動作を遅くする。このようなカウンターばねによって、ストライク後に各ハンマーを平静位置まで戻すことができる。カウンターばねの動作を調整するための偏心機構も設けて、ゴングをストライクした後に各ハンマーがリバウンドすることを実質的に防ぐ。
【0005】
このようなカウンターばねを備えるストライク機構の構造の課題として、ゴングをストライクするときに相当に大きい量のハンマーの運動エネルギーが失われて、これによって、ストライクの音量レベルが小さくなってしまうということがある。このエネルギー損失は、主に、ハンマーがゴングをストライクするときにハンマーを邪魔する各カウンターばねによってハンマーが遅くなってしまうことに起因する。また、駆動ばねに事前にためる力を大きくしたとしても、このことは、リバウンドを防ぐように偏心機構を介してカウンターばねを適応させることが必要であることを意味し、このようなストライク機構の別の課題を発生させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況で、本発明は、ハンマーがゴングに当たるときのエネルギーの多くを失ってしまうことを防ぐように意図された計時器のストライク機構を提供することによって、前記の従来技術の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、特に計時器のための、衝撃を発生させるストライク機構に関し、前記ストライク機構は、ストライクされたときに音を発することを可能にする少なくとも1つの共振要素と、及びハンマーとを備え、前記ハンマーは、平静位置と、前記ハンマーが前記共振要素をストライクして前記共振要素を振動させるストライク位置の間を動くことができる。
【0008】
このストライク機構は、ハンマーをアクチュエートするためのアクチュエートシステムを備え、このアクチュエートシステムが、解放位置からインパクト位置へと動くように構成している可動インパクターを備え、この可動インパクターが、インパクト位置においてハンマーに運動量を伝えて、ハンマーを平静位置からストライク位置へと動かして共振要素を振動させるために、画期的である。
【0009】
このように、インパクターが与える運動量を利用してハンマーを動かす。インパクターの運動量のおかげで、ハンマーは、ゴングをストライクして振動させるために十分なエネルギーを受ける。また、ハンマーとインパクターの間に特定の質量差があるように選択することによって、ハンマーの速さを適応させることができる。例えば、質量の小さいハンマーを選択して、このハンマーが、質量がより大きいインパクターよりも速い速さでゴングをストライクするように動くようにすることができる。
【0010】
このストライク機構によって、ハンマーを動作させるために必要なエネルギーを節約することができる。また、より軽い、速く動くハンマーによって、ゴングをストライクした後にリバウンドしてしまうリスクを減らすことができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記ストライク機構は、前記計時器用ムーブメントに対して固定される磁石を備え、前記磁石は、前記可動インパクターを引きつけてインパクト位置にするように構成している。
【0012】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ハンマーは、磁気伝導性材料を含む。
【0013】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記可動インパクターは、前記磁石によって引きつけられるように磁気伝導性材料を含む。
【0014】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ハンマーは、前記磁石が平静位置にあるときに前記磁石と接触する。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記可動インパクターは、前記磁石に衝撃を与えて、前記ハンマーにパルスを与えるように構成している。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記可動インパクターの解放位置と磁石の間の距離は、前記可動インパクターがインパクト位置にあるときに、前記磁石が自身の方に前記可動インパクターを引きつけるように選択される。
【0017】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記可動インパクターによって伝えられる前記運動量は、前記ハンマーに作用する前記磁石の磁気的保持力に打ち勝つほど十分に大きく、これによって、前記ハンマーが前記磁石から離れて前記共振要素をストライクする。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ストライク機構は、前記ハンマーが取り付けられたフレキシブルなガイドを備え、これによって、前記ハンマーがその平静位置とそのストライク位置の間を動くことが可能になる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記フレキシブルなガイドは、前記ハンマーを前記磁石の方に押すように構成している。
【0020】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記アクチュエートシステムは、前記可動インパクターが取り付けられたフレキシブルなガイドを備え、これによって、前記可動インパクターが前記解放位置と前記インパクト位置の間を動くことが可能になる。
【0021】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記フレキシブルなガイドには、フレキシブルな細長材又はフレキシブルな首部がある。
【0022】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記アクチュエートシステムには、前記可動インパクターを備えるロータリーデバイスがあり、前記ロータリーデバイスは、前記可動インパクターを前記解放位置に動かすように構成している。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記アクチュエートシステムは、前記ロータリーデバイスに配置される、少なくとも1つの付加的な可動インパクター、好ましくは、2つの付加的な可動インパクター、を備え、これによって、各可動インパクターを順に解放位置に動かす。
【0024】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ロータリーデバイスには、ロータリーハブがある。
【0025】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ロータリーデバイスには、少なくとも1つのアームがあり、各アームは、可動インパクターを支える。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ロータリーデバイスには、前記ハブのまわりに角度的に分布している複数のアームがある。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記インパクターの質量は前記ハンマーの質量よりも大きく、例えば、前記インパクターの質量は前記ハンマーの質量の少なくとも2倍である。
【0028】
本発明は、さらに、このようなストライク機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0029】
添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、他の特定の特徴や利点が明確になる。この説明は、大まかなガイドとして与えられるものであって限定するためのガイドとして与えられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃ストライク機構を備える計時器の概略図である。
図2図1のストライク機構の拡大図である。
図3】インパクターが解放位置にある図1のストライク機構の概略図である。
図4図1のストライク機構の概略図であり、磁石とのストライク位置にあるインパクターと、ゴングとのストライク位置にあるハンマーを示している。
図5図1のストライク機構の概略図であり、インパクターがインパクト位置でも解放位置でもなくなっており、ハンマーが平静位置に戻っている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上で説明したように、本発明は、衝撃ストライク機構1に関する。ストライク機構1は、図1に示している携行型時計のような計時器10のためのものであることが意図されている。計時器10は、ケースミドル部2と、好ましくは機械式ムーブメント3である、計時器用ムーブメント3を備える。この計時器用ムーブメント3には、例えば、プレート4と、動作エネルギーを供給するためのバレルばねがある。以下において説明する実施形態は、「磁気的ガウスキャノン」の原理と衝突時の運動量保存の原理の組み合わせに基づいている。
【0032】
図1~5において、ストライク機構1は、例えば伝統的に計時器のストライク機構において用いられているゴングである、共振要素5を備える。共振要素5によって、ストライク時に音を発することが可能になる。図面において、共振要素5は、まっすぐな部分6がある棒体である。共振要素5は、好ましくは、プレート4に固定され、例えばプレートの平面に平行な平面内にて、プレート4の上や横において延在している。
【0033】
共振要素5の他の構成も可能である。共振要素5には、さらに、図1に示している円弧状部分7があることができ、この円弧状部分7は、特に、ケースミドル部2の内面に沿って延在している。
【0034】
音を発するために、機構1は、プレート4に対して動くことができるハンマー8を備える。ハンマー8は、2つの位置、すなわち、共振要素5から離れた平静位置9と、ハンマー8が共振要素5をストライクして振動させるストライク位置11との間を動くことができる。このようにして、共振要素5は、携行型時計を通って伝播する振動を発生させる。携行型時計の外側部分は、このような振動を放射して音を発する。ハンマー8と共振要素5について、様々な形態の他の実施形態が可能である。
【0035】
この場合のストライク機構1には、ハンマー8が取り付けられてハンマー8が平静位置9とストライク位置11の間を動くことができるフレキシブルなガイド12がある。フレキシブルなガイド12は、好ましくは、第1のフレキシブルな細長材13を含み、この第1のフレキシブルな細長材13は、一方ではプレート4に組み付けられ、他方ではハンマー8に組み付けられる。第1のフレキシブルな細長材13は、好ましくは、ハンマー8が平静位置9にあるときに共振要素5と実質的に平行に配置される。第1のフレキシブルな細長材13の弾性変形によって、ハンマー8は、平静位置9からストライク位置11へ、又はその逆へと動く。
【0036】
ストライク機構1は、さらに、プレート4に対して固定される磁石15を備える。磁石15は、好ましくは、プレート4に組み付けられる。磁石15は、例えば、共振要素5に対向する突端14に配置される。
【0037】
好ましくは、磁石15は、ハンマー8をその平静位置9に保持するように構成している。このために、ハンマー8は、磁気伝導性材料を含み、これは、ハンマー8に磁石15の方への引力を発生させる。
【0038】
代わりに、磁気伝導性材料を含まないハンマー8を選択することができる。このような場合、フレキシブルなガイド12は、ハンマー8に予応力を与えてハンマー8を磁石8に押し付けるように構成している。
【0039】
したがって、平静位置9において、ハンマー8は、磁石15の前面29と接触している。ハンマー8は、共振要素5をストライクする瞬間を除いて常にこの平静位置に留まる。フレキシブルなガイド12は、突端14と共振要素5の間にてプレート4に組み付けられる。したがって、ハンマー8は、フレキシブルなガイド12のおかげで、磁石15と共振要素5の間を動くことができる。
【0040】
前面29には、好ましくは、実質的に平坦な面がある。ハンマー8は、例えば、円筒状又は球形である。このような丸まった形によって、ハンマー8を磁石15の前面29から分離しやすくなる。
【0041】
本発明によると、ストライク機構1は、ハンマー8をアクチュエートするためのアクチュエートシステムを備える。このストライク機構1は、ハンマー8をその平静位置9からそのストライク位置11へと動かすように構成している。特に、このストライク機構1は、ハンマー8を磁石15から分離し、このストライク機構1が共振要素5に及ぶことを可能にすることに貢献する。
【0042】
このために、アクチュエートシステム20は、少なくとも1つの可動インパクター16、17、18を備え、この可動インパクター16、17、18は、ハンマー8を平静位置9からストライク位置11へと動かして共振要素5を振動させるために十分な運動量をハンマー8に伝えるように構成している。
【0043】
インパクター16、17、18は、解放位置19からインパクト位置21へと動くように構成しており、このインパクト位置21にてハンマー8に運動量を伝える。
【0044】
図1~5に示している実施形態において、アクチュエートシステムは、3つの可動インパクター16、17、18があるロータリーデバイス20を備える。
【0045】
ロータリーデバイス20には、ハブ22及び3つのアーム23、24、25があり、これらのアーム23、24、25は、ハブ22のまわりに角度的に分布しており、一端がハブ22に接続されている。各アーム23、24、25は、ハブ22とは反対側のアーム23、24、25の端に配置される可動インパクター16、17、18を支える。アーム23、24、25は、好ましくは、ハブ22の軸に実質的に垂直な同じ平面内に配置される。この平面は、好ましくは、さらに、磁石15、ハンマー8及び共振要素5を通り抜ける。
【0046】
各可動インパクター16、17、18は、アーム23、24、25と角度を形成するようにアーム23、24、25に取り付けられる。この角度は、可動インパクター16、17、18が解放位置19にあるときには30~60°の範囲内であり、可動インパクター16、17、18がインパクト位置21にあるときには60~90°の範囲内である。アームは、例えば、長細い形であったり、ギヤ列の歯、又は小さなプレートであったりすることができる。
【0047】
好ましくは、各可動インパクター16、17、18は、フレキシブルなガイドによってアーム23、24、25に取り付けられて、アーム23、24、25に対して可動インパクター16、17、18を動かし、解放位置19からインパクト位置22へと切り替えることを可能にする。ここで、フレキシブルなガイドには、第2のフレキシブルな細長材26があり、この第2のフレキシブルな細長材26は、一方では可動インパクター16、17、18に組み付けられ、他方ではアーム23、24、25の端に組み付けられる。
【0048】
各可動インパクター16、17、18には、接触面31、32、33があり、この接触面31、32、33は、解放位置19からインパクト位置21になるときに磁石15と接触するように意図されている。可動インパクター16、17、18の接触面31、32、33には、好ましくは、丸みがあり、これによって、可動インパクター16、17、18がその解放位置に戻るときに分離しやすくする。
【0049】
ロータリーデバイス20が回転するときに、ロータリーデバイス20は、可動インパクター16、17、18の1つを磁石15に対向するように配置する。そして、可動インパクター16、17、18は、半径方向に動いて解放位置19からインパクト位置21へと動く。衝撃が与えられた後に、ロータリーデバイス20は回転し続けて、可動インパクター16、17、18が磁石15に対向する位置に留まることを防ぐ。可動インパクター16、17、18の形状は、ロータリーデバイス20において可能なかぎり少ないトルクしか必要としないように設計される。例えば、接触面32を回転運動の接線方向に傾斜しているようにする。
【0050】
ロータリーデバイス20は、ハブ22をその軸を中心に回転させることによってアクチュエートされ、アーム23、24、25がハブ22の軸を中心に回転するようにする。したがって、解放位置19に留まっている間に、可動インパクター16、17、18もハブ22の軸を中心に回転する。すなわち、可動インパクター16、17、18は、それらを支えるアーム23、24、25に対して同じ位置に留まる。
【0051】
回転させるために、図示していない噛み合い手段を介してムーブメントのバレルに機械的に接続されている手段22がある。この噛み合い手段は、例えば、ムーブメント3が表示する時間に応じてどのようにストライクするかを決めて、特に、ミニッツリピーターとして機能し、又はスケジュールされたアラーム時間を通知するように構成しているアクチュエートシステムを備える。したがって、このアクチュエートシステムは、1回又は複数回のストライクを行うときにハブ22の回転をトリガーする。
【0052】
ロータリーデバイス20は、インパクターを磁石15の手前における解放位置21にするように構成している。図3は、インパクター21が磁石15の最も近くに位置しているような解放位置にある一例を示している。磁石15には、ロータリーデバイス20の方を向いている反対面30があり、これによって、ロータリーデバイス20が回転しているときに、磁石15の反対面30、及び可動インパクター16、17、18の接触面31、32、33が対向する。反対面30には、好ましくは、実質的に平坦な面がある。
【0053】
磁石15の引力、及び解放位置にある可動インパクター16、17、18の接触面31、32、33と磁石15の反対面30との間の距離は、インパクター16が反対面30の前を通るときに、磁石15がその反対面30の方にインパクター16を引きつけるように選択される。したがって、可動インパクター16、17、18に作用する磁石15が発生させる磁気的ポテンシャルエネルギーは、可動インパクター16、17、18によって運動エネルギーに変換される。この運動エネルギーは、可動インパクター16、17、18の衝撃を通してハンマー8に伝えられる。
【0054】
具体的には、可動インパクター16、17、18が磁石15に引きつけられているときに、可動インパクター16、17、18が加速し、磁石15をストライクする。可動インパクター16、17、18が磁石15の反対面30と衝突するときに、可動インパクター16、17、18の運動量の少なくとも一部が磁石15を介してハンマー8に伝えられる。このハンマー8は、平静位置にて磁石15の前面29に対向するように配置される。
【0055】
この磁気引力と組み合わさった運動伝達の原理は、「ガウスキャノン」として知られる。磁石15の引力は、ハンマー8の各ストライクにおいて強度が最小であることを確実にする。これによって、バレルトルクにかかわらず、ストライクの全持続時間にわたってストライクの一貫性が向上する。
【0056】
図4に示しているように、各可動インパクター16、17、18は、ハンマーにパルスを与えるように磁石15に衝撃を与えるように構成している。
【0057】
また、可動インパクター16、17、18とロータリーデバイス20は、インパクター16、17、18によってハンマー8に伝えられる運動量が、ハンマー8に作用する磁石の保持力よりも大きくなるように構成しており、これによって、図4に示しているように、ハンマー8が磁石15から離れ、十分な力で共振要素5をストライクする。
【0058】
図5に示しているように、磁石15とハンマー8は、さらに、ハンマー8が共振要素5をストライクした後に、前面29が自身の方にハンマー8を引きつけるように構成している。したがって、ハンマー8はその平静位置9に戻り、次の可動インパクター16、17、18によって再びアクチュエートされることができる。また、これによって、ハンマー8がリバウンドして、望まずに共振要素5に再びストライクしてしまうことを防ぐ。
【0059】
磁気伝導性材料を含まないハンマー8の場合、フレキシブルなガイド12がハンマー8を磁石15の方に戻す。
【0060】
ロータリーデバイス20は、回転し続けるにしたがって、可動インパクター16、17、18を引いて磁石15の反対面30から離れるようにする。同時に、ハブ22が回転するにしたがって、次の可動インパクター16、17、18が磁石15に近づく。
【0061】
ロータリーデバイス20は、ストロークが必要なときにムーブメントによってアクチュエートされる。このように、可動インパクター16、17、18、磁石15、ハンマー8及び共振要素5のおかげで、ストロークによって音が自動的に鳴る。
【0062】
動作中に、各可動インパクター16、17、18は、磁石15に次々と1回ずつ衝撃を与えて、毎回音を鳴らす。可動インパクター16、17、18のインパクトごとに、ハンマー8は、共振要素5をストライクし、2つの続くインパクトの間に磁石15の方の平静位置9に戻る。
【0063】
ロータリーデバイスは、実行するストロークの数に応じた所定の時間にわたってアクチュエートされる。
【0064】
好ましくは、同じ頻度で周期的にストロークが実行されるように、一定の速さで回転を行う。
【0065】
また、特定のストロークを実行するように回転の速さを変動させることもできる。
【0066】
当然、本発明は、説明した例に限定されるものではなく、当業者であれば自明であるような様々な代替形態や改変が可能である。特に、ロータリーデバイスは、説明した実施形態のものよりも多かったり少なかったりする数のアームやインパクターを備えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ストライク機構
3 計時器用ムーブメント
5 共振要素
8 ハンマー
12 フレキシブルなガイド
13、26、27、28 フレキシブルな細長材
15 磁石
16、17、18 可動インパクター
20 ロータリーデバイス
22 ハブ
22、23、24 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】