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特開2022-191184断熱ハウジングを有する温度センサデバイス
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  • 特開-断熱ハウジングを有する温度センサデバイス 図1
  • 特開-断熱ハウジングを有する温度センサデバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191184
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】断熱ハウジングを有する温度センサデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G01K1/16
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094045
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】21305816.7
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517220508
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ センサーズ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】522232053
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス ハンガリー テルメロー カーエフテー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ヴネ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ クリストファー ペケ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ ダ クルス
(72)【発明者】
【氏名】ポール ワフォ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト トレクスラー
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】物体の環境からの断熱によって恒久的な検知動作を可能にする温度センサデバイスを提供する。
【解決手段】物体の表面8の温度を検知するための温度センサデバイス10に関し、温度センサデバイス10は、特にサーミスタであるか、またはサーミスタを含む、温度センサ素子30と、ハウジング20と、物体の表面8と接触するように構成された測定面7とを備え、ハウジング20は、外側シェル1と、内側シェル2と、外側シェル1と内側シェル2との間に形成された外側キャビティ3とを備える。外側シェル1、内側シェル2、および外側キャビティ3は、測定キャビティ6および測定面7を物体の環境から断熱するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面(8)の温度を検知するための温度センサデバイス(10)であって、
- 特にサーミスタであるか、またはサーミスタを含む、温度センサ素子(30)と、
- 測定キャビティ(6)と、
- ハウジング(20)と、
- 前記物体の前記表面(8)と接触するように構成された測定面(7)と、
を備え、
前記ハウジング(20)は、外側シェル(1)と、内側シェル(2)と、前記外側シェル(1)と前記内側シェル(2)との間に形成された外側キャビティ(3)とを備え、
前記ハウジング(20)の前記外側シェル(1)、前記内側シェル(2)、および前記外側キャビティ(3)は、前記測定キャビティ(6)および前記測定面(7)を前記物体の環境から断熱するように構成されている、
温度センサデバイス(10)。
【請求項2】
前記ハウジング(20)は、一体成形された1つの単一部品で作製されている、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項3】
前記ハウジング(20)は、
- 測定キャビティシェル(4)であって、前記測定キャビティ(6)が前記測定キャビティシェル(4)と前記測定面(7)との間に形成されている、測定キャビティシェル(4)と、
前記内側シェル(2)と前記測定キャビティシェル(4)との間に形成された内側キャビティ(5)と、
をさらに備えている、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項4】
a)前記外側シェル(1)および前記測定面(7)は、一体成形された1つの単一部品で作製されている、または
b)前記測定キャビティシェル(4)、前記内側シェル(2)、および前記外側シェル(1)は、一体成形された1つの単一部品で作製されている、または
c)前記測定キャビティシェル(4)、前記内側シェル(2)、前記外側シェル(1)、および前記測定面(7)は、一体成形された1つの単一部品で作製されている、請求項3に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項5】
前記内側キャビティ(5)および/または前記外側キャビティ(3)は、
a)前記外側シェル(1)および前記内側シェル(2)の熱伝導率よりも低い熱伝導率の気体または材料で満たされている、または
b)真空にされている、請求項3に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項6】
前記外側シェル(1)および/または前記内側シェル(2)は、金属材料で作製されているか、または金属材料を含んでいる、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項7】
前記外側シェル(1)および前記内側シェル(2)は、同じ金属材料で作製されている、
請求項6に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項8】
前記内側シェル(2)は、前記測定面(7)と接触している、かつ/または前記測定面(7)と一体成形されている、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項9】
前記外側シェル(1)、および/または前記内側シェル(2)、および/または前記測定キャビティシェル(4)は、少なくとも部分的な半球形または矩形の形状を有している、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項10】
前記測定面(7)は、平坦な形状または湾曲した形状を有している、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項11】
前記外側シェル(1)および前記内側シェル(2)は、3D金属プリンティング、または射出成形、または機械加工によって製造されている、
請求項1に記載の温度センサデバイス(10)。
【請求項12】
温度センサデバイス(10)を製造する方法であって、
ハウジング(20)の外側シェル(1)および内側シェル(2)、ならびに、特に測定シェル(4)および測定面(7)の、3D金属プリンティング、または射出成形、または機械加工を含む前記温度センサデバイス(10)用の前記ハウジング(20)の製造を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面の温度を検知するための温度センサデバイス、特に、温度センサデバイスの測定面を物体の環境から断熱するためのハウジングを備えた温度センサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサは、例えば自動車への利用を含む多様な用途に有用である。温度センサは、例えば、工業的条件を監視する状況において、または燃焼機関および燃焼機関と動作可能に接続された手段の動作を制御するために、または風防ガラスワイパーの加熱、換気、空気調節、および動作を自動的に制御する目的で車両に設置された風防ガラス用の検知デバイスとして用いることができる。
【0003】
物体(の表面)の温度について正確かつ確実な監視を可能にするには、検知デバイスのセンサは、確実に物体の表面との接触を常に保たなければならず、また全寿命期間にわたり、機械的な衝撃および振動に耐えなければならないことが多い。さらに、温度測定が物体の環境の温度による影響を受けるのを避けなければならない。
【0004】
当技術分野では、プリント回路基板(PCB)を備えたセンサデバイスが知られている。例えば、サーミスタは、柔軟なポリイミドフィルムに取り付けられる。ポリイミドフィルムの一端はPCBに接続され、サーミスタが取り付けられた他端は、温度を測定しなければならない物体に取り付けられる。当技術分野では、実際の温度測定に対する物体の環境の影響を低減するために、断熱手段が設けられる。既知の断熱手段、例えば断熱スリーブは、比較的嵩があり、経年変化の影響(例えば、特に断熱手段が有機材料を含む場合、振動、熱の影響、日射、湿度などにより生じる)によって深刻な劣化を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のことを考慮し、本発明の目的は、低コストで簡単に製造することができるが、それでも確実かつ恒久的な検知動作を可能にする温度センサデバイスを提供することであり、確実かつ恒久的な検知動作は、温度センサデバイスによって温度を測定しなければならない物体の環境からの断熱によって容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物体の(湾曲した、または平坦な)表面の温度を検知するための温度センサデバイスを提供することによって、これまでに言及した目的に対処するものである。物体は限定されず、例えば管または湾曲した表面を含む他の物体でもよく、あるいは、ある程度平坦な表面を呈する物体でもよい。温度センサデバイスは、特にサーミスタ(もしくは抵抗温度検出器、もしくはシリコンベースの半導体温度センサ、もしくは熱電対)であるか、またはそれらを含む温度センサ素子を備えている。さらに、温度センサデバイスは、測定キャビティと、ハウジングと、物体の表面と接触するように構成された測定面(ハウジングの一部でもよい)とを備えている。
【0007】
ハウジング、またはハウジングの一部は、測定キャビティ/温度センサ素子/温度センサ素子の測定面を物体の環境(例えば、物体を囲む空気)から断熱するように構成されている。さらに、ハウジングは、機械的および化学的な攻撃からの保護を可能にする。ハウジングは、外側シェルと、少なくとも1つの内側シェルと、外側シェルと少なくとも1つの内側シェルとの間に形成された外側キャビティとを備え、外側シェル、少なくとも1つの内側シェル、および外側キャビティは、測定キャビティ/温度センサ素子/測定面を物体の環境から断熱するように構成されている。
【0008】
外側シェルは、内側シェルよりも温度センサデバイスの環境に近く、環境と直接接している。内側シェルは、外側シェルよりも温度センサ素子に近い。外側シェルおよび内側シェルは、互いに同心に配置することができる。特に、温度デバイスには、キャビティによって互いに隔てられた複数の内側シェルが含まれてもよい。特に、温度センサデバイスは、温度センサデバイスの測定面を物体の環境から断熱するための追加の断熱材/断熱手段を含まないように構成することができる。
【0009】
このように決められた構成は、きわめてコンパクトな設計で、比較的簡単にコスト効率よく製造することが可能である。長期にわたる確実な温度測定動作を行うことができる。ハウジングは、例えば、一体成形された1つの単一部品で作製することができる。特に、ハウジングは、機械的および化学的な保護、ならびに断熱を可能にする。そうしたハウジングを備えた温度センサデバイスは、例えば振動や高い周囲温度などの形の機械的変動、または化学的攻撃性のある環境に対して頑強である。
【0010】
温度センサ素子によって検知されたデータの処理および温度センサデバイスの制御のために、温度センサデバイスを、測定および制御回路を備えたプリント回路基板(PCB)に接続できることに留意されたい。原理的には、PCBの有無にかかわらず、有線および無線の構成を実装することができる。原理的には、温度センサデバイスを、温度とは異なる測定量を検知するように構成された1つまたは複数のセンサと組み合わせて用いることもできる。
【0011】
一実施形態によれば、ハウジングは、(例えば、金属材料で作製されたか、または金属材料を含む)測定キャビティシェルをさらに備え、測定キャビティシェルと測定面との間に測定キャビティが形成される。ハウジングは、少なくとも1つの内側シェルと測定キャビティシェルとの間に内側キャビティをさらに備えている。したがって、温度センサデバイス(のハウジング)は、少なくとも3つのキャビティを含み、その1つ(測定キャビティ)は、ハウジングによって覆われた温度センサ素子のために設けられ、他の2つのキャビティ(内側キャビティおよび外側キャビティ)は、測定キャビティシェルの上に形成され、ハウジング内の温度管理のために設けられる。そうした構成において、内側シェルは、有利には、内側キャビティと外側キャビティとの間の熱対流/熱放射バリアとして作用することができる。外側シェル、内側シェル、および測定キャビティシェルは、周縁に、特に互いに同心に配置することができる。
【0012】
内側キャビティおよび/または外側キャビティは、断熱の目的で、外側シェルおよび内側シェルの熱伝導率よりも低い熱伝導率の気体または材料で満たすことができる。あるいは、内側キャビティおよび/または外側キャビティを真空にすることができる。特定の実施形態によれば、測定キャビティおよび内側キャビティは異なる材料で満たされる。
【0013】
高い熱伝導率を与えるために、外側シェルおよび/または内側シェルは、金属材料(例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム合金、銅合金、マルエージング鋼などの鉄合金、またはオーステナイト系ニッケル-クロム基超合金(インコネル(登録商標)))で作製すること、またはそうした金属材料を含むことができる。例えば、外側シェルおよび内側シェルは、同じ金属材料で作製される。あるいは、外側シェルおよび内側シェルは、異なる材料で作製されてもよい。これまでに言及した測定キャビティシェルも、金属材料(例えば、ステンレス鋼、マルエージング鋼などの鉄合金、またはオーステナイト系ニッケル-クロム基超合金(インコネル(登録商標))、特に外側シェルおよび内側シェルと同じ材料で作製されてもよい。あるいは、測定キャビティシェルは、外側シェルおよび内側シェルの材料と異なる材料で作製される。
一実施形態によれば、測定キャビティシェルと外側シェル、または測定キャビティシェルと内側シェルと外側シェルは、一体成形された1つの単一部品で作製される。例えば、測定キャビティシェル、内側シェル、および外側シェルの1つまたは複数の厚さは、0.1~1.5mmの範囲内である。
【0014】
本発明の温度センサデバイスの一実施形態によれば、内側シェルは、測定面と(直接)接触する。例えば、内側シェルは、測定面に(直接)形成されるか、または測定面と一体成形される。一実施形態によれば、測定面および外側シェルは、1つの単一部品で作製される。一実施形態によれば、測定キャビティシェル、内側シェル、外側シェル、および測定面は、1つの単一部品で作製される。内側シェルと測定面の接触によって、熱を測定面から、または測定面へ伝えることが可能になり、したがって、有利には、測定キャビティシェルによって画定される測定キャビティ、ならびに測定キャビティシェルおよび内側シェルよって画定される内側キャビティに対する温度勾配を小さくすることができる。
【0015】
原理的には、外側シェル、内側シェル、および測定キャビティシェルの幾何学的形状は限定されない。例えば、コンパクトな設計および機械的安定性の点から、外側シェル、および/または内側シェル、および/または測定キャビティシェルを、完全な球形または半球形(完全なまたは部分的な半球の幾何学的形状を伴う)より小さくなるように形成すると有利になる場合がある。温度センサデバイスの実際の用途によっては、少なくとも部分的に矩形の形状が適していると考えられる場合もある。
【0016】
温度センサデバイスによって表面温度を決定する物体の幾何学的形状に合わせるのに適しているため、センサ素子の測定面は、平坦な形状または湾曲した形状を有することができる。
【0017】
既に言及したように、温度センサデバイスは、コンパクトなサイズで比較的簡単に製造することができる。例えば、外側シェルおよび内側シェルは、一般に、例えば直接金属レーザ焼結法(DMLS:Direct Metal Laser Sintering)などの3D金属プリンティング、または射出成形、または機械加工によって製造することができる。外側シェルと内側シェル、または外側シェルと内側シェルと測定キャビティシェル、または外側シェルと内側シェルと測定キャビティシェルと測定面は、1つの単一3D金属プリンティングステップまたは(金属)射出成形ステップにおいて一体成形されてもよい。この点から、ハウジングの外側シェルおよび内側シェル(1つまたは複数の内側シェル)の3D金属プリンティングまたは(金属)射出成形を含む、温度センサデバイス用のハウジングを製造する方法も提供される。
さらに、ハウジングの外側シェルおよび内側シェル(1つまたは複数の内側シェル)の3D金属プリンティングまたは(金属)射出成形を含む温度センサデバイス用のハウジングの製造を含む、温度センサデバイスを製造する方法が提供される。さらに、ハウジングの外側シェルおよび内側シェル(1つまたは複数の内側シェル)の3D金属プリンティングまたは(金属)射出成形、ならびに温度センサデバイスの温度センサ素子の測定キャビティシェルの3D金属プリンティングまたは(金属)射出成形を含む温度センサデバイス用のハウジングの製造を含む、温度センサデバイスを製造する方法が提供される。
【0018】
これまでに説明した温度センサデバイスの実施形態はすべて、有利には、例えば自動車向けおよび工業的な用途に用いることができる。
【0019】
したがって、燃焼機関の動作、特に燃焼機関によって発生する排気ガスの温度を制御するための燃焼機関制御手段が提供され、燃焼機関制御手段は、本発明の温度センサデバイスの前述の実施形態の1つによる温度センサデバイスを備えている。
【0020】
さらに、風防ガラスを備えた自動車用の防曇制御手段またはワイパー動作制御手段が提供され、防曇制御手段またはワイパー動作制御手段は、風防ガラスの湿度を検知するための湿度センサデバイスと、前述の実施形態の1つによる温度センサデバイスとを備えている。
【0021】
本発明のさらなる特徴および利点について、図面を参照しながら説明する。説明では、本発明の実施形態を示すことを意図した添付図面を参照する。そうした実施形態は、本発明の完全な範囲を表すものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による、複数のシェルを有するハウジングを備えた温度センサデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図2】本発明による、複数のシェルを有するハウジングを備えた温度センサデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、例えば車両の管または風防ガラスなどの物体の表面の温度を検知するための温度センサデバイスを提供し、温度センサデバイスは、センサ素子/測定面を物体の環境から断熱するための複数のシェルを有するハウジングを備えている。提供される温度センサデバイスは、例えば-200℃~1000℃の広い温度範囲を検知するために、適切に用いることができる。
【0024】
図1および図2(それぞれ、長手方向および横方向の断面図)は、本発明による温度センサデバイス10の一実施形態を例示的に示している。図1および図2に示す温度センサデバイス10は、ハウジング20を備えている。ハウジング20は、汚染、ならびに化学的および物理的な攻撃からの保護を可能にする。ハウジング20は、外側シェル1と、少なくとも1つの内側シェル2とを備えている。外側シェル1と内側シェル2との間には、外側キャビティ3が形成されている。外側シェル1と内側シェル2はどちらも、金属材料、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム合金、銅合金、マルエージング鋼などの鉄合金、またはオーステナイト系ニッケル-クロム基超合金(インコネル(登録商標))で作製すること、またはそうした金属材料を含むことができる。
外側シェル1および内側シェル2は、同じ金属材料で作製すること、または同じ金属材料を含むことが可能であり、また、例えば(粉末ベースの)3D金属プリンティングによって、単一の製造ステップで形成することができる。3D金属プリンティングは、直接金属レーザ焼結(DMLS)デバイスによって実施することができる。内側シェル2の形成が完了した後に3Dプリンティング用の粉末を除去するために、内側シェル2に1つまたは複数の開口を形成することができる。あるいは、ハウジング20、または外側シェル1および内側シェル2は、例えば(金属)射出成形によって製造することができる。
【0025】
キャビティによって互いに隔てられた1つより多い内側シェル2を設けてもよい。外側シェル1および/または内側シェル2は、完全な球形または半球形(完全なまたは部分的な半球を伴う)よりも小さくすることができ、そうした形状は、温度センサデバイス10のコンパクトな設計および機械的安定性をもたらす観点から有利になる場合がある。温度センサデバイスの実際の用途によっては、矩形の形状が適していると考えられる場合もある。
【0026】
さらに、温度センサデバイス10は、温度センサ素子30を備えている。温度センサ素子30は、サーミスタ、もしくは抵抗温度検出器、もしくはシリコンベースの半導体温度センサ、もしくは熱電対であるか、またはそれらを備えることができる。温度センサ素子30は、検知された温度を電気的な出力信号に変換する導電性リードを有することができる。
【0027】
内側シェル2と測定キャビティシェル4との間には、内側キャビティ5が形成されている。測定キャビティシェル4は、比較的高い熱伝導率を得るために、金属材料、例えば、ステンレス鋼、マルエージング鋼などの鉄合金、またはオーステナイト系ニッケル-クロム基超合金(インコネル(登録商標))、ならびに、例えば外側シェル1および内側シェル2と同じ材料で作製すること、またはそうした材料を含むことが可能である。特に、測定キャビティシェル4は、例えば(粉末ベースの)3D金属プリンティングまたは射出成形によって、外側シェル1および内側シェル2と同じ単一の製造ステップで製造することができる。外側シェル1、および内側シェル2、および測定キャビティシェル4は、完全な球形または半球形(完全なまたは部分的な半球を伴う)よりも小さくすることができる。
【0028】
さらに、測定キャビティシェル4は、測定キャビティ6を画定し、測定キャビティ6の底部は、測定(検知)面7によって形成されているか、または測定(検知)面7を備えているか、または測定(検知)面7に接続されている。温度センサデバイス10は、測定面7に流入する電流、または測定面7によって与えられる電気抵抗もしくは電圧の測定に基づいて、物体の表面温度を検知するように構成することができる。物体の表面温度を検知するために、測定面7は、物体の表面8と接触(例えば、面接触)する。測定面7は、ハウジング20の一部とすることができる。測定キャビティシェル4と温度センサデバイス10によって表面温度を測定する物体の表面8との間に、直接の機械的/熱的接触がないことに留意されたい。
【0029】
測定面7は、温度センサをそれによって物体に取り付ける熱伝導性パッドの一部とすることができる。測定面7の幾何学的形状は、表面温度を測定する物体の表面に適合させることができる。例えば、平坦な、または湾曲した(凸形もしくは凹形の)測定面7を設けることができる。測定面7と外側シェル1、または測定面7と外側シェル1と内側シェル2、または測定面7と外側シェル1と内側シェル2と測定キャビティシェル4は、一体成形された1つの単一部品で作製することができる。
【0030】
ハウジング20は、測定キャビティ6/温度センサ素子30/測定面7を、物体(および温度センサデバイス10)の環境E(例えば、周囲の空気)から断熱し、物体の表面温度の測定が環境Eの温度から受ける影響を小さくする(すなわち、ハウジング20を設けることによって、いかなる温度のオフセットも著しく低下させる)。所望の断熱を得るために、図1および図2に示すハウジング20に、断熱材/断熱手段(特に、比較的嵩のある有機または無機の断熱手段)を追加する必要がない。但し、特定の実施形態によれば、測定キャビティ6、内側キャビティ5、および外側キャビティ3のうちの1つまたは複数を、外側シェル1および内側シェル2の熱伝導率よりも低い熱伝導率の複数種類の気体または1種類の材料で満たすこと、あるいは測定キャビティ6、内側キャビティ5、および外側キャビティ3のうちの1つまたは複数を真空にすることが可能である。
特定の実施形態によれば、測定キャビティ6および内側キャビティ5は、異なる材料で満たされる。例えば負の温度が測定されるときには、例えば、測定キャビティ6および内側キャビティ5をポリマー材料で満たすことが適している場合がある。
【0031】
図1および図2に示す構成では、温度センサデバイス10による正確な温度測定を行うために、内側シェル2は、効率的な熱対流バリア(熱の垂直方向の流れを実質的に遮断する)、および外側キャビティ3と内側キャビティ5との間の熱放射バリア(熱の径方向の流れを実質的に遮断する)を提供し、それによって、温度センサデバイス10のこれらの領域における温度勾配を最小限に抑える。
【0032】
特に、温度センサデバイス10は、コンパクトなサイズで、比較的簡単に、かつ比較的低コストで製造することが可能である。外側シェル1の形成に用いる材料の選択に応じて、温度センサデバイス10は、比較的低い温度の環境(例えば、-200℃の低温)、および高い温度の環境(約100℃または約1000℃以上の温度)で確実に動作することが可能である。さらに、温度センサデバイス10は、化学的および物理的に過酷な環境において確実に動作することができ、特に機械的な振動に耐えることができる。例えば、温度センサデバイス10を、(排気ガスと熱的に接触している物体、例えばいくつかの管の表面を介して)車両の燃焼機関の排気ガスの温度を検知するために用いることができる。
【0033】
これまでに論じた実施形態はすべて、限定するものではなく、本発明の特徴および利点を示す例として役立つものである。これまでに説明した特徴の一部またはすべてを、様々な形で組み合わせることも可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0034】
1 外側シェル
2 内側シェル
3 外側キャビティ
4 測定キャビティシェル
5 内側キャビティ
6 測定キャビティ
7 測定面
8 物体の表面
10 温度センサデバイス
20 ハウジング
30 温度センサ素子
E 物体の環境
図1
図2
【外国語明細書】