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特開2022-191186熱分解型フッ素系化合物でコーティングされた基材およびその製造方法
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  • 特開-熱分解型フッ素系化合物でコーティングされた基材およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191186
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】熱分解型フッ素系化合物でコーティングされた基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/02 20060101AFI20221220BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221220BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221220BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B05D3/02 Z
B05D7/24 302R
B05D7/24 302L
C09D7/63
C09D171/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094108
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021099507
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519437777
【氏名又は名称】ユニケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【弁理士】
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】田中 藤丸
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AB01
4D075AC64
4D075AE03
4D075AE05
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB93Z
4D075CA02
4D075CA37
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075DA06
4D075DB13
4D075DB14
4D075DC21
4D075DC22
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA33
4D075EA45
4D075EB14
4D075EB16
4D075EB22
4D075EB37
4D075EB51
4D075EC30
4J038DF011
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA07
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】従来のフッ素系界面活性剤や添加剤の不具合であるリコート性を改善し、かつ環境負荷が少ない新たな基材やその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明として、例えば、次の工程1および2を含む、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法を挙げることができる:
工程1.繰り返し単位が「CFO」のみからなるパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物を含有する組成物を添加したコーティング剤で基材をコーティング処理する工程、
工程2.上記コーティング処理された基材を加熱する工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程1および2を含む、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法:
工程1.繰り返し単位が「CFO」のみからなるパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物を含有する組成物を添加したコーティング剤で基材をコー ティング処理する工程、
工程2.上記コーティング処理された基材を加熱する工程。
【請求項2】
加熱温度が120℃以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
コーティング剤が、レジスト、ハードコート層形成用溶液、ブラックマトリックス形成用組成物、カラーフィルター保護膜形成用組成物、またはインクである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されたコーティング基材に、さらに別のコーティング剤でコーティング処理する工程を含む、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法。
【請求項5】
コーティング剤が、レジスト、ハードコート層形成用溶液、ブラックマトリックス形成用組成物、カラーフィルター保護膜形成用組成物、またはインクである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された、基材。
【請求項7】
請求項4に記載の製造方法により製造された、基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系化合物の技術分野に属する。本発明は、分子中に「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖を含む界面活性剤ないし添加剤でコーティングされた基材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素系界面活性剤ないしフッ素系添加剤は、これまでその高機能、特に表面張力の低下能や表面偏析性・レベリング性を活かして、半導体や電子分野をはじめとする製造業で必要欠くべからざるものとされてきた。
【0003】
しかしながら、近年の含フッ素化合物の化学的安定性に起因する体内蓄積性や環境中での難分解性から、各国での規制が始まり、既にPFOA(パーフルオロオクタン酸)関連化合物はその対象となっており、その代替化合物として使用されているパーフルオロへキシル基含有化合物も、規制論議の対象となりつつあり、さらなる代替化合物が望まれている。
【0004】
また、これらフッ素系界面活性剤や添加剤を各種コーティング剤に添加して使用した場合に、フッ素化合物の持つ撥液性が災いとなって、さらに最外層へコーティングしようとしても濡れ性を阻害しリコート性に不具合を生じる場合が多い。
【0005】
特許文献1には、「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖を含む表面処理剤について開示されているものの、そのほかの含フッ素構造のものと並列に例示されているに過ぎない。その構造の違いによる、特に分解性に関しては開示されていない。
【0006】
特許文献2には、熱処理によって分解する含フッ素熱分解性ポリマーが開示されている。しかし、分解箇所はフッ素鎖の連結部分であって、フッ素鎖そのものを分解するものではないため、フッ素化合物の環境懸念への対応が十分とは言い難い。
【0007】
非特許文献1には、環境懸念物質とされるパーフルオロアルキル基の熱分解開始温度が少なくとも200℃以上であると記載されている。
【0008】
パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、ハードディスクの潤滑剤等に使用される高耐熱性物質であり、非特許文献2には、金属フッ化物や金属酸化物の存在下においてのみ160℃程度から熱分解が始まることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2012-509937号公報
【特許文献2】特開2016-017172号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Environ. Sci. Technol. Lett. 7 343-350 (2020)
【非特許文献2】Macromolecules 25 6791-6799 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来のフッ素系界面活性剤ないしフッ素系添加剤の不具合であるリコート性を改善し、かつ環境負荷が少ない新たな基材やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討した結果、一定のパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物で基材をコーティングした後、加熱処理することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明として、例えば、以下の態様を挙げることができる。
[1]次の工程1および2を含む、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法:
工程1.繰り返し単位が「CFO」のみからなるパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物を含有する組成物を添加したコーティング剤で基材をコーティング処理する工程、
工程2.上記コーティング処理された基材を加熱する工程。
[2]加熱温度が120℃以上である、上記[1]に記載の製造方法。
[3]コーティング剤が、レジスト、ハードコート層形成用溶液、ブラックマトリックス形成用組成物、カラーフィルター保護膜形成用組成物、またはインクである、上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]上記[1]または[2]に記載の製造方法で製造されたコーティング基材に、さらに別のコーティング剤でコーティング処理する工程を含む、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法。
[5]コーティング剤が、レジスト、ハードコート層形成用溶液、ブラックマトリックス形成用組成物、カラーフィルター保護膜形成用組成物、またはインクである、上記[4]に記載の製造方法。
[6]上記[1]または[2]に記載の製造方法により製造された、基材。
[7]上記[4]に記載の製造方法により製造された、基材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フッ素系化合物でコーティング処理された基材表面の接触角を低下させることができ、かつ、当該基材を環境負荷の少ないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】TG-DTA分析結果を表す。各曲線は、TG曲線、DTG曲線、またはDTA曲線を、それぞれ示す。縦軸は、各線種に対応して、それぞれ重量変化(mg)、微分重量変化(減少)(mg/分)、温度差(μV)を示し、横軸は温度(℃)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る製造方法(以下、「本発明製法」という。)は、フッ素系化合物でコーティングされた基材の製造方法であって、次の工程1および2を含むことを特徴とする。
工程1.繰り返し単位が「CFO」のみからなるパーフルオロポリエーテル鎖を含む化合物を含有する組成物(以下、「本発明組成物」という。)を添加したコーティング剤で基材をコーティング処理する工程
工程2.上記コーティング処理された基材を加熱する工程
【0016】
本発明においては、分子中に「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖を含む本発明組成物に係る界面活性剤や添加剤をコーティング剤に添加して、基材に塗布したのち加熱することにより、当該パーフルオロポリエーテル鎖が分解し、かかる分解により、フッ素化合物の撥液性を失い、表面の濡れ性が向上することによりリコート性が改善される。
【0017】
本発明においては、コーティング処理された基材表面を加熱処理することを特徴とするが、本発明組成物に係る、分子中に「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖は、熱分解されやすい構造である。120℃以上の環境下に保持することにより、当該パーフルオロポリエーテル鎖は分解される。従って、工程2における加熱温度としては、例えば、120℃以上が適当であり、120℃~160℃の範囲内の温度が好ましい。加熱時間としては、加熱温度や当該パーフルオロポリエーテル鎖を含む界面活性剤等の種類などにより異なるが、例えば、1分以上を挙げることができる。好ましくは2分~10分の範囲内である。
【0018】
本発明組成物に係る界面活性剤や添加剤としては、分子中に「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖を含んでいれば特に制限されることはなく、また当該パーフルオロポリエーテル鎖を1つ以上含む分子であれば、その結合様式は問わない。
また、当該パーフルオロポリエーテル鎖を含む単量体を単独または他の単量体と共重合したポリマーについても使用することができる。
【0019】
分子中に「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖の好ましい例としては、次の一般式(1)で表される構造のものが挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
本発明組成物に係る界面活性剤や添加剤は、コーティング剤中0.001~100重量%の範囲内で含有することができる。コーティング剤には溶媒を使用することも可能であり、かかる溶媒の種類についても、水や各種有機溶剤を適宜使用することができる。
【0022】
コーティング剤で基材をコーティング処理する方法としては、常法で可能であり特に制限されず、例えば、スプレーコーティング法、バーコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、インクジェット法、ダイコーティング法、ディップコーティング法等、公知の方法を挙げることができる。
【0023】
コーティング対象となる基材としては、例えば、金属、樹脂、ゴム、ガラス、木材等が挙げられるがこれらに制限されるものではない。
【0024】
本発明製法ないし本発明製法で製造された基材の使用用途も制限されるものではないが、例えば、レジスト等を用いた半導体製造、ハードコート層形成用途、ブラックマトリックス形成用途、カラーフィルター保護膜形成用途等での使用を挙げることができ、それらの用途において有効である。
【実施例0025】
以下に実施例等を掲げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
[合成例]「CFO」を繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖を含むモノマーの合成
原料として、CFO(CFO)CFCOCH(Anles社製)を用いて、特許文献1に記載の方法に準じて、CFO(CFO)CFCONHCHCHOH(化合物1)を調製した。
【0027】
次に、冷却管・温度計・滴下ロートを付属した500mL容4ツ口フラスコに、100gの化合物1と21gのトリエチルアミンとを入れ、撹拌下、室温で18gのアクリル酸クロリドを滴下した。滴下後、室温で1時間撹拌後、トリエチルアミン塩酸塩をろ別し、テトラヒドロフランを留去することにより、97gのCFO(CFO)CFCONHCHCHOC(O)CH=CH(化合物2)を得た。
【0028】
[実施例1]
冷却管・温度計・滴下ロートを付属した500mL容4ツ口フラスコに、合成例で得た化合物2を30g、および70gのブレンマーAME400(日油株式会社製)、4gのαチオグリセロール、100gの酢酸エチルを入れ、45℃に加熱撹拌下、4gのアゾイソブチロニトリルを加えた。70℃で4時間撹拌後、酢酸エチルを留去し、ポリマー1を得た。
なお、ブレンマーAME400の構造は、以下の通りである。
【0029】
【化2】
【0030】
[実施例2]
化合物2を20g、ブレンマーAME400を80gとした以外は、実施例1と同様に行い、ポリマー2を得た。
【0031】
[実施例3]
200mL容ナスフラスコにCFO(CFO)CFCOCH(式中、mは3~10の整数、Anles社製)18.5gを入れ、撹拌下、室温で30gのジェファーミンM-1000(ハンツマン社製)を滴下した。滴下後、内温60℃にて5時間撹拌後、発生したメタノールを留去し、ポリマー3を得た。
なお、ジェファーミンM-1000およびポリマー3の構造は以下の通りである。
【0032】
・ジェファーミンM-1000の構造式
【化3】
【0033】
・ポリマー3の構造式
【化4】
【0034】
[参考例1]Polymer1の調製
WO2020/169493公報のExamplesに従い、Polymer1を重合した。
【0035】
・Polymer1の構造式
WO2020/169493公報の段落0073に記載されている。
【化5】
【0036】
レジスト塗膜での評価
[調製例1]組成物1の調製
2gのPolymer1、0.04gの(+)-10-カンファースルホン酸(東京化成工業社製)、0.018gのトリエチルアミン(東京化成工業社製)、68.4gのプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(東京化成工業社製)および29.4gのプロピレングリコール1-モノメチルエーテル(東京化成工業社製)の混合溶液に、2.4mgのポリマー1を添加し、組成物1とした。
【0037】
[調製例2]組成物2の調製
ポリマー1をポリマー2に変更した以外は調製例1と同様に行い、組成物2を得た。
【0038】
[調製例3]組成物3の調製
ポリマー1をポリマー3に変更した以外は調製例1と同様に行い、組成物3を得た。
【0039】
[比較調製例1]比較組成物1の調製
ポリマー1をメガファックR-40(DIC製含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー)に変更した以外は調製例1と同様に行い、比較組成物1を得た。
【0040】
[実施例4]
組成物1をシリコンウェハ上にスピンコートし、加熱炉内で100℃に4時間保持して塗膜を形成し、室温まで放冷後塗膜の表面状態を観察した。その後、加熱炉で140℃に2時間保持した後、室温まで放冷後、再度、組成物1をスピンコートし、加熱炉内で100℃に4時間保持して塗膜を形成し、室温まで放冷後塗膜の表面状態を観察した。
【0041】
[実施例5]
組成物1を組成物2に変更して、実施例4と同様の操作を行った。
【0042】
[実施例6]
組成物1を組成物3に変更して、実施例4と同様の操作を行った。
【0043】
[比較例1]
組成物1を比較組成物1に変更して、実施例4と同様の操作を行った。
【0044】
実施例4、実施例5、実施例6および比較例1での塗膜状態の変化を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
以上の結果より、本発明によれば、最初の塗膜形成後のみならず、2回目の塗膜形成後であっても、表面の塗膜状態を均一で良好なものとすることができることが分かる。
【0047】
ハードコート表面での評価
[調製例4]組成物4の調製
30gのトリプロピレングリコールジアクリレート(東京化成工業社製)、10gのライトアクリレートPE-3A(共栄社化学社製)、160gの酢酸エチル(東京化成工業社製)を混合し、さらに250mgのポリマー1を添加し、撹拌混合し組成物4を得た。
【0048】
[調製例5]組成物5の調製
ポリマー1をポリマー2に変更した以外は調製例4と同様に行い、組成物5を得た。
【0049】
[調製例6]組成物6の調製
ポリマー1をポリマー3に変更した以外は調製例5と同様に行い、組成物6を得た。
【0050】
[比較調製例2]比較組成物2の調製
ポリマー1をメガファックR-40(DIC製含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー)に変更した以外は調製例4と同様に行い、比較組成物2を得た。
【0051】
[実施例7]
組成物4をスライドガラスにディップコートし、30分間室温で乾燥後、サンエナジー社製紫外線照射装置を用いて、波長365nm、紫外線照度90mW/cmで塗膜を硬化させ、塗膜の表面状態を観察した。また、2μLの水滴を用いて塗膜表面の接触角を測定した。その後、加熱炉で140℃に2時間保持した後、室温まで放冷後、再度、組成物4をディップコートし、30分間室温で乾燥後、先と同様に紫外線照射により塗膜を硬化させ、塗膜の表面状態の観察と接触角測定を実施した。
【0052】
[実施例8]
組成物4を組成物5に変更して、実施例7と同様の操作を行った。
【0053】
[実施例9]
組成物4を組成物6に変更して、実施例7と同様の操作を行った。
【0054】
[比較例2]
組成物4を比較組成物2に変更して、実施例7と同様の操作を行った。
【0055】
実施例7、実施例8、実施例9および比較例2での塗膜の表面状態と接触角を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
以上の結果より、本発明によれば、最初の塗膜形成後のみならず、2回目の塗膜形成後であっても、表面の塗膜状態を均一で良好なものとすることができることが分かる。また、本発明によれば、フッ素系化合物でコーティング処理された基材表面の接触角を低下させることができることも明らかとなった。
【0058】
[試験例1]
CFO(CFO)CFCOCH(式中、mは3~10の整数。)の熱分解温度を調べるため、熱重量および示差熱分析(TG-DTA分析)を行った。測定は、セイコーインスツル株式会社製熱重量分析装置TG/DTA7200を用い、25℃~250℃まで、4℃/分の昇温条件で行った。mの平均値(数平均)が5.5の混合試料を用いた場合の結果を図1に示す。
【0059】
図1のDTG曲線より、ピーク(T)の94℃にて分解反応が最大加速を示し、115℃付近(T)にて概ね分解が完了していることが分かる。これは、「CFO」のみからなるパーフルオロポリエーテル鎖が、従来のパーフルオロアルキル基やパーフルオロポリエーテル鎖よりはるかに低温で分解することを示している。
【0060】
以上の結果より、「CFO」のみを繰り返し単位とするパーフルオロポリエーテル鎖は、従来のフッ素鎖より熱分解しやすいことが明らかである。そして、本発明製法により製造されたコーティング基剤に係るフッ素系化合物は、当該パーフルオロポリエーテル鎖を含んだものであるから、本発明製法に係る基材は環境負荷が少ないということも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明製法や、本発明製法により製造されたコーティング基材は、レジスト等を用いた半導体製造、ハードコート層形成、ブラックマトリックス形成、カラーフィルター保護膜形成などにおいて有用である。
図1