(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191192
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】患者器官の表面上を伝播する電気信号の視覚化
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20221220BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20221220BHJP
A61B 5/343 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B18/12
A61B5/343
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095581
(22)【出願日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】17/348,002
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】ヤイル・パルティ
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127FF03
4C127HH13
4C127HH16
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK07
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】器官の3次元マップ上に波動ベクトルの2次元投影を提示する方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】システムは、ディスプレイ及びプロセッサを備える。プロセッサは、(i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、3D解剖学的マップのセクションの選択とを受信し、(ii)1つ以上の所与のベクトルを含むセクションの2次元(2D)投影を生成し、かつ(iii)ディスプレイ上に、3D解剖学的マップに重ね合わされた2D投影を提示する、ように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、(i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、前記複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、前記3D解剖学的マップのセクションの選択とを受信することと、(ii)前記1つ以上の所与のベクトルを含む、前記セクションの2次元(2D)投影を生成することと、(iii)前記ディスプレイ上に、前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することと、を行うように構成された、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記3D解剖学的マップが、心臓の少なくとも一部分のマップを含み、前記複数のベクトルが、前記心臓の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記3D解剖学的マップが、第1の倍率を有し、前記プロセッサが、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率で前記2D投影を提示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記セクションの位置で前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記2D投影が、前記1つ以上の所与のベクトルと、前記3D解剖学的マップの前記セクションの1つ以上の解剖学的特徴の前記2D投影を含む背景と、を含み、前記プロセッサが、前記波動ベクトルと前記背景との間のコントラストを増加させるように、前記背景を変更するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
(i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、(ii)前記複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、前記3D解剖学的マップのセクションの選択と、を受信することと、
前記1つ以上の所与のベクトルを含む前記セクションの2次元(2D)投影を生成することと、
前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記3D解剖学的マップが、心臓の少なくとも一部分のマップを含み、前記複数のベクトルが、前記心臓の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記3D解剖学的マップが、第1の倍率を有し、前記2D投影を生成することが、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率で前記2D投影を提示することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記2D投影を提示することが、前記セクションの位置で前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記2D投影が、前記1つ以上の所与のベクトルと、前記3D解剖学的マップの前記セクションの1つ以上の解剖学的特徴の前記2D投影を含む背景と、を含み、前記2D投影を生成することが、前記波動ベクトルと前記背景との間のコントラストを増加させるように、前記背景を変更することを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療デバイスに関し、具体的には、器官の3次元マップ上に波動ベクトルの2次元投影を提示する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
器官の表面上の電気信号の伝播を視覚化するための様々な技術が公開されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2018/0325400号は、伝導速度を判定し、1つ以上の伝導速度及び/又はパターンマップを生成して、不整脈発生機序の識別を容易にする、システム及び方法を記載している。
【0004】
米国特許出願公開第2020/0375489号は、プロセッサにおいて、患者の器官の腔の少なくとも一部分の内面の2次元(two-dimensional、2D)電気解剖学的(electroanatomical、EA)マップを受信することを含む方法を記載しており、この2D EAマップは、内面上のそれぞれの位置で測定された電気生理学的(electrophysiological、EP)値を含む。複素解析関数は、2D EAマップの所与の領域内で測定された一組のEP値に適合され、特異点は、適合された複素解析関数において識別される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、ディスプレイとプロセッサとを備えるシステムを提供する。プロセッサは、(i)複数のベクトルを含む3次元(three-dimensional、3D)解剖学的マップと、複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、3D解剖学的マップのセクションの選択とを受信することと、(ii)1つ以上の所与のベクトルを含むセクションの2次元(2D)投影を生成することと、(iii)ディスプレイ上に、3D解剖学的マップに重ね合わされた2D投影を提示することと、を行うように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、3D解剖学的マップは、心臓の少なくとも一部分のマップを含み、複数のベクトルは、心臓の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む。他の実施形態では、3D解剖学的マップは、第1の倍率を有し、プロセッサは、第1の倍率とは異なる第2の倍率で2D投影を提示するように構成されている。
【0007】
一実施形態では、プロセッサは、セクションの位置で3D解剖学的マップに重ね合わされた2D投影を提示するように構成されている。別の実施形態では、2D投影は、1つ以上の所与のベクトルと、3D解剖学的マップのセクションの1つ以上の解剖学的特徴の2D投影を含む背景と、を含み、プロセッサは、波動ベクトルと背景との間のコントラストを増加させるように、背景を変更するように構成されている。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、(i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、(ii)複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、3D解剖学的マップのセクションの選択と、を受信することを含む方法が更に提供される。1つ以上の所与のベクトルを含むセクションの2次元(2D)投影が生成される。2D投影は、3D解剖学的マップに重ね合わされて提示される。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による、カテーテルベースの追跡及びアブレーションシステムの概略描画図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、3次元(3D)解剖学的マップの概略描写図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、3D解剖学的マップに重ね合わされた、3D解剖学的マップのセクションの2次元(2D)投影の概略描写図である。
【
図3】本発明の実施形態による、3D解剖学的マップに重ね合わされたセクションの2D投影を使用して、波動ベクトルを視覚化する方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
心臓高周波(radiofrequency、RF)アブレーションなどのいくつかの医療処置は、アブレーションを実施する前に心臓の電気解剖学的マッピングを必要とする。場合によっては、マッピングは、心臓の表面上を伝播する電気信号の視覚化を必要とする。心臓の3次元(3D)特性、及び伝播信号に関連付けられたベクトルの複雑さにより、3Dマップ上のベクトルの明確な視覚化を得ることは困難である。
【0012】
以下に記載される本発明の実施形態は、患者の心臓の3Dマップ上に提示された波動ベクトルを視覚化するための改善された技術を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、波動ベクトルを視覚化して、心臓マップ上に波動ベクトルを提示するためのシステムは、ディスプレイと、プロセッサと、を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、簡潔にするために、本明細書ではマップとも呼ばれる、患者の心臓の少なくとも一部分の3D解剖学的マップを受信するように構成されている。マップは、患者の心臓の表面上を伝播する電気信号を示す、本明細書ではベクトルとも呼ばれる、複数の波動ベクトルを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、例えば、ユーザから、3D解剖学的マップのセクションの選択を受信するように構成されている。選択されたセクションは、元々受信された3D解剖学的マップの複数のベクトルの中から1つ以上のベクトルを含む。選択されたセクション内のベクトルは、本明細書では所与のベクトルとも呼ばれる。
【0016】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、1つ以上の所与のベクトルを含む、セクションの2次元(2D)投影を生成するように構成されている。更に、プロセッサは、ディスプレイ上に、3D解剖学的マップに重ね合わされたセクションの2D投影を提示するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、選択されたセクションの元の位置で、マップ上に2D投影を提示するように構成されている。更に、プロセッサは、3D解剖学的マップの倍率と比較して、異なる倍率で2D投影を提示するように構成されている。本実施例では、2D投影の倍率は、波動ベクトルの視覚化を改善するように、3D解剖学的マップの倍率よりも大きい。
【0018】
場合によっては、3D解剖学的マップの背景は、1つ以上の解剖学的特徴及びマップ上に提示される様々な種類の注釈を含む。背景に現れる解剖学的特徴及び注釈は、2D投影された波動ベクトルの提示に干渉し得るノイズを生成する可能性がある。いくつかの実施形態では、プロセッサは、背景によって引き起こされるノイズレベルを低減し、かつ波動ベクトルと背景との間のコントラストを増加させるように、任意の好適な技術を使用して背景を変更するように構成されている。例えば、プロセッサは、提示された波動ベクトルと背景との間のコントラストを改善するように、背景をぼかすように構成されている。上述の投影及び提示技術は、患者の体内の任意の器官の表面上、又は体積内を伝播する任意の信号を視覚化するために使用することができることに留意されたい。
【0019】
開示された技術は、患者の器官の表面上を伝播する信号の改善された視覚化及び提示を提供する。より具体的には、開示された技術は、(i)器官の3Dマップ上に、伝播された信号を示すベクトルの2D投影を提示し、かつ(ii)対象とする器官の3Dマップによって引き起こされるノイズレベルを低減する、ことによって、提示のコントラストを改善する。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテルベースの追跡及びアブレーションシステム20の概略描画図である。
【0021】
いくつかの実施形態では、システム20は、本実施例では心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に説明されている実施形態では、カテーテル22は、心臓26内の組織のアブレーションなどの任意の好適な治療目的及び/又は診断目的で使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信するのに好適であり、かつ本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するのに好適である、フロントエンド回路及びインターフェース回路38を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ34を含む。コンソール24は、プロセッサ34から心臓26のマップ27を受信し、かつマップ27を表示するように構成されたユーザディスプレイ35を更に含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、マップ27は、任意の好適な技術を使用して生成された任意の好適な種類の3次元(3D)解剖学的マップを含むことができる。例えば、解剖学的マップは、好適な医療用撮像システムを使用することによって生成された解剖学的画像を使用して、又はBiosenseWebster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムを使用する高速解剖学的マッピング(fast anatomical mapping、FAM)技術を使用して、又は任意の他の好適な技術を使用して、又は上記の任意の好適な組み合わせを使用して生成することができる。
【0024】
ここで、挿入
図23を参照する。いくつかの実施形態では、アブレーション処置を実行する前に、医師30は、心臓26の対象とする組織の電気解剖学的マッピングを実行するために、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通してカテーテル22を挿入する。
【0025】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は、複数の感知電極(図示せず)を有する遠位端アセンブリ40を含む。例えば、遠位端アセンブリ40は、(i)複数のスプラインを有するバスケットカテーテルであって、それぞれのスプラインが複数の感知電極を有する、バスケットカテーテル、(ii)バルーンの表面上に配置された複数の感知電極を有するバルーンカテーテル、又は(iii)複数の感知電極を有するフォーカルカテーテル、を含むことができる。それぞれの感知電極は、心臓26の組織における電気生理学的(EP)信号の感知に応答して、感知されたEP信号を示す1つ以上の信号を生成するように構成されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、カテーテル22の近位端は、電気解剖学的マッピングを実行するために、これらの信号をプロセッサ34に転送するように、とりわけインターフェース回路38に接続されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、電気解剖学的マッピング中に、遠位端アセンブリ40の感知電極によって生成された信号は、数千のデータポイント、例えば、約50,000個又は更にそれより多いデータポイントを含むことができる。データポイントに基づいて、プロセッサ34は、心臓26の表面上を伝播する電気信号を示すベクトルをマップ27上に提示するように構成されており、提示されたベクトルに基づいて、医師30は、心臓26内の組織をアブレーションするための1つ以上の部位を判定する。しかしながら、医師30は、前述の多数のデータポイント及びベクトルを精査して分析することが困難であり得、これにより、アブレーション処置の継続時間を長引かせることがある。更に、大量のデータポイント及びベクトルは、医師30を困惑させるおそれがあり、したがって、アブレーション処置の品質を低下させることがある。
【0028】
本開示及び特許請求の範囲の文脈において、任意の数値又は数値の範囲に関する用語「約」又は「およそ」とは、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書に記載されたその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0029】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、ベクトルを、例えば、ディスプレイ35上で2つの視覚化層に(i)ベクトルの3D提示(本明細書では波動ベクトルとも呼ばれる)を提示し、かつ(ii)医師30による(又はシステム20の任意の他のユーザによる)マップ27内の対象となるセクションの選択に応じて、3D解剖学的マップに重ね合わされた対象となるセクションの2次元(2D)投影を表示する、ように構成されている。視覚化及び提示については、下記
図2A及び
図2Bに詳細に記載されている。
【0030】
他の実施形態では、カテーテル22は、遠位端アセンブリ40に連結された1つ以上のアブレーション電極(図示せず)を含み得る。アブレーション電極は、心臓26の標的位置で組織をアブレーションするように構成されている。アブレーション計画を決定した後、医師30は、カテーテル22を操作するためのマニピュレータ32を使用することによって、心臓26内の標的位置のすぐ近くに遠位端アセンブリ40をナビゲートする。追加的又は代替的に、医師30は、前述のアブレーション計画を実行するために、心臓26の組織をアブレーションするための任意の異なる種類の適切なカテーテルを使用することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、心腔内の遠位端アセンブリ40の位置は、磁気位置追跡システムの位置センサ(図示せず)を使用して測定される。本実施例では、コンソール24は、駆動回路41を備え、この駆動回路41は、テーブル29に横たわった患者28の外部の既知の位置、例えば、患者の胴体の下に配置された磁界発生器36を駆動するように構成されている。位置センサは、遠位端に連結され、磁界発生器36からの感知された外部磁界に応じて位置信号を生成するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系におけるカテーテル22の遠位端の位置を示す。
【0032】
この位置感知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0033】
いくつかの実施形態では、位置追跡システムの座標系は、システム20及びマップ27の座標系と位置合わせされており、その結果、プロセッサ34は、マップ27上にカテーテル22の遠位端の位置を表示するように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、典型的には、汎用コンピュータを含み、この汎用コンピュータは、本明細書で説明される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0035】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態が対処する特定の問題を説明し、またこのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を明示するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、他の種類の医療システムにも同様に適用され得る。
【0036】
図2Aは、本発明の一実施形態による、3D解剖学的マップ50の概略描写図である。簡潔にするために本明細書ではマップ50とも呼ばれる解剖学的マップ50は、心臓26の少なくとも一部分のマップを含み、例えば、上記の
図1のマップ27を置き換えることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、マップ50は、心臓26の解剖学的特徴を有し、解剖学的特徴に重ね合わされた様々なタイプの表示オブジェクトを含む。表示されたオブジェクトは、上記の
図1に記載された電気解剖学的マッピング中に実行された測定値を示す。表示オブジェクトは、遠位端アセンブリ40の感知電極によって生成された信号に基づいて得られたパラメータを示す。
【0038】
本実施例では、表示オブジェクトは、(i)心臓26の組織上のそれぞれの位置で測定された電圧を示す異なる色52A、52B、及び52C、(ii)心臓26の一般的な測定及び/又は計算された特性を有するデータポイントをそれぞれが示すクラスタ53、(iii)アブレーションライン54、並びに(iv)心臓26の表面上を伝播する電気信号の速度及び方向を示す、本明細書ではそれぞれ波動ベクトル55及び55Aとも呼ばれるベクトル55及び55A、を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、医師30は、コンソール24の入力デバイス(例えば、マウス、トラックボール、又はタッチスクリーン)を使用して、マップ50内の対象となる領域(region of interest、ROI)を示すセクション66を選択することができる。ベクトル55及び55Aは、同様の波動ベクトルを含み、提示及び概念の明確さのために、異なる数字を与えられることに留意されたい。異なる数字(55及び55A)は、マップ50内の波動ベクトルの異なるそれぞれの位置を示す。本実施例では、ベクトル55は、セクション66内に配置されており、ベクトル55Aは、セクション66の外に配置されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、医師30は、マップ50の波動ベクトル(すなわち、ベクトル55A)の中にある、セクション66のベクトル55のうちの1つ以上を精査することを望む場合がある。場合によっては、ベクトル55は、
図2Aに示されるように、セクション66の3D表示において、小さく、かつ十分に明確でなく現れることがある。したがって、医師30は、心臓26の表面上のセクション66内を伝播する電気信号を分析することができるために、ベクトル55の表示を改善する必要があり得る。
【0041】
他の実施形態では、3D解剖学的マップ上に提示されたデータが過剰なことに起因して、プロセッサ34は、
図2Aのマップ50上に任意の波動ベクトルを提示しない場合がある。そのような実施形態では、医師30は、セクション66内のベクトル55の局所表示が必要な場合がある。
【0042】
3D心臓マップ上の2D波動ベクトルの投影
図2Bは、本発明の一実施形態による、マップ50に重ね合わされたセクション66の2D投影77の概略描写図である。
【0043】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、上記の
図2Aに記載されるように、ベクトル55を含むセクション66の2D投影77を生成するように構成されている。本実施例では、プロセッサ34は、ベクトル55と背景との間のコントラストを改善するように、強調されたベクトル55を提示し、かつセクション66の背景62を変更する、例えば、ぼかす、ように構成されている。本開示の文脈及び特許請求の範囲において、「背景」という用語は、ベクトル55を除いて、セクション66内に現れる全ての要素及び/又は構成要素を指す。
【0044】
いくつかの実施形態では、背景62を変更し(例えば、ぼかし)、かつ2D投影77内のベクトル55を強調することによって、プロセッサ34は、心臓26の表面上のセクション66内を伝播する前述の電気信号の方向及び任意選択的に速度の明確な提示及び指標を医師30に提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、マップ50内のベクトルの二準位視覚化を生成するように構成されている。例えば、セクション66の2D投影77内に位置するベクトル55は、セクション66の外に位置するベクトル55Aの倍率よりも高い倍率を使用して表示される。言い換えれば、2D投影77は、マップ50のROI内に配置された波動ベクトルの「拡大強調鏡」として機能する。拡大及び強調は、医師30又はシステム20の任意の他のユーザによるセクション66の選択に応じて実行されることに留意されたい。
【0046】
他の実施形態では、
図2Bの2D投影77及び
図2Aに示されるセクション66は、同様の倍率、又は互いに異なる任意の他の倍率を有することができる。
【0047】
他の実施形態では、背景62をぼかす代わりに、プロセッサ34は、背景62の除去などだが、これに限定されない、任意の他の好適な技術を使用して、又は一様な色を使用して背景62を、かつ背景に選択された色に対して高い契約(contract)を有する異なる色を使用してベクトル55を表示することによって、ベクトル55を強調するように構成されている。
【0048】
代替の実施形態では、プロセッサ34は、マップ50の元の背景、例えば、上記の
図2Aのセクション66の背景に対して強調されたベクトル55を表示するように構成されており、これは、2D投影77の同じ倍率を使用して提示される。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、セクション66の元の位置でマップ50に重ね合わされた2D投影77を提示するように構成されている。本実施例では、2D投影77は、セクション66の倍率と比較してより高い倍率を有する。そのような実施形態では、プロセッサ34は、ディスプレイ35上で、セクション66の重心の元の位置に2D投影77の重心を表示するように構成されている。
【0050】
他の実施形態では、プロセッサ34は、マップ50の任意の他の好適な位置の上に2D投影77を提示するように構成されている。
【0051】
他の実施形態では、3D解剖学的マップ上に提示されたデータが過剰なことに起因して、プロセッサ34は、マップ50からベクトル55Aを省略してもよい(マップ50内の詳細の量を低減するために)。そのような実施形態では、プロセッサ34は、マップ50の上に、マップ50のROI(例えば、セクション66)内に配置された波動ベクトルであるベクトル55のみを提示するように構成されている。
【0052】
図2A及び
図2Bに提示されたマップ50の構成は、例として示されている。他の実施形態では、マップ50は、心臓26の少なくとも一部分内で測定された対象となる任意の特徴を視覚化するために提示される表示オブジェクトの任意の他の好適な構成を含むことができる。
【0053】
図3は、本発明の実施形態による、3D解剖学的マップ50上に提示されたセクション66の2D投影77を使用して、波動ベクトル55を視覚化する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0054】
この方法は、情報受信ステップ100で開始し、プロセッサ34は、上記の
図2A及び
図2Bに詳細に記載されるように、複数のベクトル55及び55Aを含む3D解剖学的マップ50、並びにマップ50の複数のベクトル55及び55Aの中のベクトル55を有するマップのセクション66の(例えば、医師30による)選択を受信する。
【0055】
2D投影ステップ102で、プロセッサ34は、セクション66の2D投影77を生成する。上記の
図2Bに詳細に記載されるように、2D投影77は、本明細書では所与のベクトルとも呼ばれる、ベクトル55を含む。
【0056】
方法を終了する提示ステップ104で、プロセッサ34は、上記の
図2Aに示されるセクション66の元の位置に、マップ50に重ね合わされた2D投影77を提示する。
【0057】
いくつかの実施形態では、マップ50は、心臓26の少なくとも一部分の3D解剖学的又は電気解剖学的マップを含む。更に、ベクトル55及び55Aは、上記の
図2A及び2Bに記載されているように、心臓26の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、上記の
図2Bに示され説明されているように、セクション66の倍率とは異なる、典型的にはより大きい倍率を使用して、2D投影77を提示する。
【0059】
いくつかの実施形態では、2D投影77の提示中に、プロセッサ34は、2D投影77の背景62をぼかす、又は除去することができる。更に、プロセッサ34は、ベクトル55の外観を強調することができ、その結果、医師30は、セクション66で覆われた領域内の心臓26の表面上を伝播する電気信号の方向及び大きさの明確な視認性を有することができる。
【0060】
本明細書に記載の実施形態は、主に心臓マップ上を伝播する電気信号の視覚化に対処しているが、本明細書に記載の方法及びシステムはまた、患者の脳などの患者の任意の器官内で行われる任意の動的プロセスの視覚化などの、他の用途にも使用することができる。
【0061】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0062】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、(i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、前記複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、前記3D解剖学的マップのセクションの選択とを受信することと、(ii)前記1つ以上の所与のベクトルを含む、前記セクションの2次元(2D)投影を生成することと、(iii)前記ディスプレイ上に、前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することと、を行うように構成された、プロセッサと、
を備える、システム。
(2) 前記3D解剖学的マップが、心臓の少なくとも一部分のマップを含み、前記複数のベクトルが、前記心臓の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記3D解剖学的マップが、第1の倍率を有し、前記プロセッサが、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率で前記2D投影を提示するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、前記セクションの位置で前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記2D投影が、前記1つ以上の所与のベクトルと、前記3D解剖学的マップの前記セクションの1つ以上の解剖学的特徴の前記2D投影を含む背景と、を含み、前記プロセッサが、前記波動ベクトルと前記背景との間のコントラストを増加させるように、前記背景を変更するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0063】
(6) (i)複数のベクトルを含む3次元(3D)解剖学的マップと、(ii)前記複数のベクトルの中の1つ以上の所与のベクトルを含む、前記3D解剖学的マップのセクションの選択と、を受信することと、
前記1つ以上の所与のベクトルを含む前記セクションの2次元(2D)投影を生成することと、
前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することと、
を含む、方法。
(7) 前記3D解剖学的マップが、心臓の少なくとも一部分のマップを含み、前記複数のベクトルが、前記心臓の表面上を伝播する電気信号を示す波動ベクトルを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記3D解剖学的マップが、第1の倍率を有し、前記2D投影を生成することが、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率で前記2D投影を提示することを含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記2D投影を提示することが、前記セクションの位置で前記3D解剖学的マップに重ね合わされた前記2D投影を提示することを含む、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記2D投影が、前記1つ以上の所与のベクトルと、前記3D解剖学的マップの前記セクションの1つ以上の解剖学的特徴の前記2D投影を含む背景と、を含み、前記2D投影を生成することが、前記波動ベクトルと前記背景との間のコントラストを増加させるように、前記背景を変更することを含む、実施態様6に記載の方法。
【外国語明細書】