(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191246
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】タンパク質の安定化方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20221220BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C12P21/08
C12M1/00 D
A61K38/00
A61P43/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022149473
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2018564413の分割
【原出願日】2017-06-12
(31)【優先権主張番号】62/348,595
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーン、モーサム
(72)【発明者】
【氏名】ポーター、アリソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】培養細胞において発現する、細胞産物、例えば、抗体等のポリペプチドの解離を抑制するための、方法、バイオリアクター及び組成物を提供する。
【解決手段】細胞を培養する間、産物が発現する間、及び/又は産物を回収する間に、1つ又は複数のステップで、酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップ、例えば、確立するステップであり、産生期の初めから産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲である、また、産物を発現する細胞の温度を低下させることによって、細胞代謝の産物、例えば、タンパク質の量を増加させるための、方法、バイオリアクター及び組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、該ステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【請求項2】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、該ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【請求項3】
産生培養物からの細胞の分離の間に、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲で溶存酸素圧(DOT)を確立するステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップであり、産生期の初めから該産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲である、該ステップと、
該産生培養物を、該産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離までに、該産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、該DOTを、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲に増加させるステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、該産生培養物及び該上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、該ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【請求項5】
遷移金属を、前記産生培養物中又は前記産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップであり、該遷移金属のイオンが、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、該ステップを更に含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記DOTが、有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御を抑制すること、有効である場合、オンデマントのCO2ガス流制御を抑制すること、有効である場合、供給材料の添加を抑制すること、有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にすること、及び有効ではない場合、ヘッドスペースの空気/O2流を有効にすること、からなる群から選択される、1つ又は複数の措置によって、更に維持される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-50mVから-300mVまでの範囲で、該産物、例えば、タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立するステップと、
(ii)増殖培養後期において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップと、
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、該産生培養物及び該上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、該ステップと
を含み、
a.該産生培養物を、対数増殖期が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までのT産生温度に冷却するステップ、
b.該産生培養物を、産生期の初めから該産生期の終わりまで、40%を超えて70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷するステップ、
c.遷移金属を、該産生培養物中又は該産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップであり、該遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、該ステップ、
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、該産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、該産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、或いは
f.該産生培養物を、該産生培養物及び該上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却するステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を、又は安定化産物、例えば、安定化タンパク質の調製物を産生させる、
方法。
【請求項8】
a、b及びfを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a、c及びfを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
b及びcを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
a、b、c及びfを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記産生培養物が、少なくとも10%、少なくとも30%、又は30%から70%の間の空気飽和度の酸素負荷レベルを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素負荷レベルが、40%を超えて70%以下までの空気飽和度である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属が、Zn2+、Mn2+及び/又はCu2+である、請求項4から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
Zn2+が、200から400μMまでの濃度で存在する、請求項4から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Mn2+が、10~100μMの濃度で存在する、請求項4から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Cu2+が、10~100μMの濃度で存在する、請求項4から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
Zn2+が、200から400μMまでの濃度で存在し、Mn2+が、10~100μMの濃度で存在し、Cu2+が、10~100μMの濃度で存在する、請求項4から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記安定化タンパク質が、N番目のシステイン残基及びN+1番目のシステイン残基を含み、N=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上、例えば、N=1又はN=3である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
天然の形態において、前記安定化タンパク質が、前記N番目のシステイン残基とN+1番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
i)N=1であって、天然の形態において、ポリペプチドが、1番目のシステイン残基と2番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含むか;
ii)N=3であって、天然の形態において、該ポリペプチドが、3番目のシステイン残基と4番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含むか;又は
iii)N=3であって、天然の形態において、該ポリペプチドが、1番目のシステイン残基と2番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合、並びに3番目のシステイン残基と4番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記安定化産物、例えば、安定化タンパク質の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、サイズ分離によって、例えば、ゲル電気泳動によって、例えば、非還元ゲル電気泳動によって、例えば、決定される所定の状態、例えば、天然のコンフォメーションである、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記産物が、抗体であり、該抗体の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、サイズ分離によって、例えば、ゲル電気泳動によって、例えば、非還元ゲル電気泳動によって、例えば、決定される所定の状態、例えば、天然のコンフォメーションである、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記産物が、抗体であり、該抗体の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、軽鎖可変領域をそれぞれ含む2つの鎖、及び重鎖可変領域をそれぞれ含む2つの鎖を含む、四量体である、請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
T回収が、前記ジスルフィド結合の解離を抑制するのに十分に低い、請求項4から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞を、T回収で、前記産生培養物から分離するステップを含む、請求項4から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞系が、第1の温度であるT培養で培養され、T回収で回収される、請求項4から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
T回収が、T培養未満の、少なくとも19℃から25℃までである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
T回収が、12℃~18℃、例えば、15℃である、請求項4から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
T培養が、30℃~38℃である、請求項27から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
例えば、前記上清の成分としての、前記タンパク質が、T回収で、フィルターに適用される、請求項4から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞が、バイオリアクター中で培養される、請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記バイオリアクターの内容物が、産生期の後、T回収に冷却される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
細胞培養物が、該細胞培養物をT回収にするために適切な温度で、流体、例えば、水を含む、部材、例えば、冷却ジャケットとの接触によって冷却される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記バイオリアクターが、1~250ミリリットル、250ミリリットルから50リットルまで、50から800リットルまで、又は800~200,000リットルの容積を有する、請求項32から34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記バイオリアクターが、単回使用のバイオリアクター、例えば、細胞培養物のインキュベーションを可能にし、その後、使い捨てされるように設計された、例えば、本明細書に記載される、バイオリアクターである、請求項32から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記バイオリアクターが、バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、該スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含む、請求項32から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記バイオリアクターが、1つ又は複数のパラメーター、例えば、pH、溶存酸素圧(DOT)又は温度を、監視及び維持するための、プロセス並びにプローブを含む、請求項32から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記バイオリアクターが、少なくとも4000Lの容積、並びに少なくとも1つの頂部インペラ及び少なくとも1つの底部インペラを有する、自立型の生体適合性のタンクであり、該少なくとも1つの頂部インペラが、ハイドロフォイルインペラであり、該頂部インペラと該底部インペラとの間のインペラ間隔(Ds)が、少なくとも1.229×該底部インペラの直径(D底部)、且つ最大で2×D底部であり、該頂部インペラの上の液体の高さ(Do)が、少なくとも0.3×該頂部インペラの直径(D頂部)、且つ最大で2.5×D頂部であり、該タンクの底部と該底部インペラの中央線との間の底部クリアランス(Dc)が、少なくとも0.35×D底部である、請求項32から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記バイオリアクターが、回収容器と作動可能に連結されている、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記回収容器が、リザーバー培養物の上に、ヘッドスペースを含むか、又は提供するように構成され、例えば、該ヘッドスペースが、ガス、例えば、空気若しくは酸素、又はガス、例えば、空気若しくは空気及び酸素の混合物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記回収容器が、前記上清が該回収容器の壁(単数又は複数)を移動又は滝状に流れ落ちるように、Jチューブ口を通じて、前記ヘッドスペース中で、該上清の収集が可能なように構成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記上清が、前記ヘッドスペース中の、前記回収容器の表面上に、例えば、壁に伝達され、該表面に沿って流れて、前記リザーバー培養物に戻る、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記回収容器における前記上清の移動又は滝状の流れが、該上清の酸素負荷レベルの増加をもたらす、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記上清の前記DOTが、表面通気によって、前記回収容器中で、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲で維持される、請求項40から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記回収容器が、前記リザーバー培養物を5℃から8℃までの温度に更に冷却するための、冷却デバイス及び冷却機構を含む、請求項40から45までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記回収容器が、軸混合が可能なミキサーデバイス、及びpH滴定薬の添加口を含む、請求項40から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記回収容器が、少なくとも1つのヘッドスペースのガス入口、及び少なくとも1つのガス出口を含む、請求項40から47までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記回収容器が、空気及びO2の混合物を提供するための、少なくとも1つの空気流制御器及び少なくとも1つのO2流制御器を更に含む、請求項40から48までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記回収容器が、前記上清の、DOT、酸化還元、温度及びpHを検出するセンサーを含む、請求項40から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、スパージ速度、ヘッドスペース、及び分離の前の前記バイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化;並びに前記回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすために使用される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、前記回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすために使用される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記バイオリアクターが、耐閉塞性のチューブを使用して、前記回収容器に接続される、請求項40から52までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記耐閉塞性のチューブが、編組チューブである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記バイオリアクターと前記回収容器との間の流路が、DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの装置を含む、請求項40から54までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの出力が、前記スパージ速度、ヘッドスペース、及び回収の前の前記バイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化をもたらすために使用される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記バイオリアクターが、該バイオリアクターの前記ヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、要素、例えば、ライン又はノズルを含む、請求項40から56までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記バイオリアクターが、該バイオリアクターの前記ヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、第2の要素、例えば、ライン又はノズルを含む、請求項40から57までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記培養物内の細胞の前記酸化還元電位を監視するステップ、及び同時に、該酸化還元電位を維持する目的のために前記タンパク質を単離するステップを更に含む、請求項1から58までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記酸化還元電位を監視するステップが、インライン監視プローブ、例えば、本明細書に記載のMettler Toledoを使用するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記酸化還元電位を監視するステップが、産物の安定性に影響を与える細胞因子の酸化還元状態を評価するステップを含み、該細胞因子が、グルタチオン/還元グルタチオン経路、チオレドキシン/還元チオレドキシン経路、若しくはペントースリン酸経路の酵素又は代謝補助因子(例えば、グルタチオン還元酵素、チオレドキシン、グルコース-6-リン酸、NADPH、NADP+、6-ホスホノグルコラクトン、6-ホスホグルコン酸又はリブロース-5-リン酸)を損ない得る、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記組換え宿主細胞が、CHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN又はCHO由来細胞であり、該CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)が、例えば、CHO-K1SV GSノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)であり、該CHO FUT8ノックアウト細胞が、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である、請求項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記組換え宿主細胞が、CHO-GSKO細胞であり、CHOXceed細胞CHO GSノックアウト細胞(例えば、GS-CHO細胞)が、例えば、該CHO-K1SVノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)であり、該CHO FUT8ノックアウト細胞が、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である、請求項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記組換え宿主細胞が、HeLa、HEK293、HT1080、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK(ベビーハムスター腎細胞)、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、Y0、EB66、C127、L細胞、COS、例えば、COS1及びCOS7、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11並びにCHOZN、又はこれらに由来する任意の細胞である、請求項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
請求項1から64までのいずれか一項に記載の方法によって産生する、安定化タンパク質。
【請求項66】
請求項65に記載の前記安定化タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項67】
薬学的に許容される、担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、該バイオリアクターが、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、バイオリアクター。
【請求項69】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、該バイオリアクターが、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であり、並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、
バイオリアクター。
【請求項70】
産生培養物からの細胞の分離の間に、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲で溶存酸素圧(DOT)を確立することが可能である、請求項68又は69のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項71】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、該バイオリアクターが、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であって、産生期の初めから該産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲であり;
該産生培養物を、該産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却することが可能であり;
該バイオリアクターから該産生培養物の除去までに、該産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、該DOTを、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲に増加させることが可能であり;並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、該産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、
バイオリアクター。
【請求項72】
前記バイオリアクターが、遷移金属を、前記産生培養物中又は前記産生培養物に、提供する、例えば、添加することが更に可能であり、該遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、請求項68から71までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項73】
有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制すること、有効である場合、オンでマントのアルカリ制御を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御を抑制すること、有効である場合、供給材料の添加を抑制すること、有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にすること、及び有効ではない場合、ヘッドスペースの空気/O2流を有効にすること、からなる群から選択される、1つ又は複数の措置によって、前記DOTを維持することが更に可能である、請求項68から72までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項74】
組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、該バイオリアクターが、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-50mVから-300mVまでの範囲で、該産物、例えば、タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立することが可能であり;
(ii)増殖培養後期において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であり;並びに
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、該産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが該産生培養物及び該上清における該酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ない該スパージをしながら、行われる、
該バイオリアクターが、更に、
a.該産生培養物を、対数増殖期が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までの温度に冷却することが可能であるか;
b.該産生培養物を、産生期の初めから該産生期の終わりまで、40%を超えて70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷することが可能であるか;
c.遷移金属を、該産生培養物中又は該産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であって、該遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択されるか;
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、該産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であるか;
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、該産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であるか;或いは
f.該産生培養物を、該産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却することが可能である、
バイオリアクター。
【請求項75】
a、b及びfが可能である、請求項74に記載のバイオリアクター。
【請求項76】
a、c及びfが可能である、請求項74に記載のバイオリアクター。
【請求項77】
b及びcが可能である、請求項74に記載のバイオリアクター。
【請求項78】
a、b、c及びfが可能である、請求項74に記載のバイオリアクター。
【請求項79】
回収容器と作動可能に連結されている、請求項68から77までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項80】
前記回収容器が、リザーバー培養物の上に、ヘッドスペースを含むか、又は提供するように構成され、例えば、該ヘッドスペースが、ガス、例えば、空気若しくは酸素、又はガス、例えば、空気若しくは空気及び酸素の混合物を含む、請求項79に記載のバイオリアクター。
【請求項81】
前記培養物が前記回収容器の壁(単数又は複数)を移動又は滝状に流れ落ちるように、前記ヘッドスペース中で、前記培養物の循環が可能なように構成される、請求項80に記載のバイオリアクター。
【請求項82】
前記リザーバー培養物からの培養物が、前記ヘッドスペース中の、前記バイオリアクターの表面上に、例えば、壁に伝達され、該表面に沿って流れて、前記リザーバー培養物に戻る、請求項81に記載のバイオリアクター。
【請求項83】
前記移動又は滝状の流れが、前記培養物中の酸素負荷レベルの増加をもたらす、請求項82に記載のバイオリアクター。
【請求項84】
前記回収容器が、前記リザーバー培養物の前記DOTを、表面通気によって、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲で維持することが可能である、請求項79から83までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項85】
前記回収容器が、前記リザーバー培養物を5℃から8℃までの温度に更に冷却するための、冷却デバイス及び冷却機構;軸混合が可能なミキサーデバイス、及びpH滴定薬の添加口;少なくとも1つのヘッドスペースのガス入口、及び少なくとも1つのガス出口;空気及びO2の混合物を提供するための、少なくとも1つの空気流制御器及び少なくとも1つのO2流制御器;並びに前記上清の、DOT、酸化還元、温度及びpHを検出するセンサーからなる群から選択される1つ又は複数の構成要素を含む、請求項79から84までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項86】
前記DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、スパージ速度、ヘッドスペース、及び分離の前の前記バイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化;並びに前記回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすことが可能である、請求項85に記載のバイオリアクター。
【請求項87】
前記DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、前記回収容器中へのpH滴定薬の添加をもたらすことが可能である、請求項85に記載のバイオリアクター。
【請求項88】
耐閉塞性のチューブを使用して、前記回収容器に接続される、請求項79から87までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項89】
前記耐閉塞性のチューブが、編組チューブである、請求項88に記載のバイオリアクター。
【請求項90】
前記バイオリアクターと前記回収容器との間の流路が、DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの装置を含む、請求項79から88までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項91】
前記回収容器の前記ヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、要素、例えば、ライン又はノズルを含む、請求項79から90までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項92】
前記回収容器の前記ヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、第2の要素、例えば、ライン又はノズルを含む、請求項79から91までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項93】
単回使用のバイオリアクター、例えば、細胞培養物のインキュベーションを可能にし、その後、使い捨てされるように設計された、例えば、本明細書に記載される、バイオリアクターである、請求項68から92までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項94】
バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、該スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含む、請求項68から93までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項95】
前記バイオリアクターが、少なくとも4000Lの容積、並びに少なくとも1つの頂部インペラ及び少なくとも1つの底部インペラを有する、自立型の生体適合性のタンクであり、該少なくとも1つの頂部インペラが、ハイドロフォイルインペラであり、該頂部インペラと該底部インペラとの間のインペラ間隔(Ds)が、少なくとも1.229×該底部インペラの直径(D底部)、且つ最大で2×D底部であり、該頂部インペラの上の液体の高さ(Do)が、少なくとも0.3×該頂部インペラの直径(D頂部)、且つ最大で2.5×D頂部であり、該タンクの底部と該底部インペラの中央線との間の底部クリアランス(Dc)が、少なくとも0.35×D底部である、請求項68から92までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月10日に出願された米国特許出願第62/348595号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、培養細胞において発現する、細胞産物、例えば、ポリペプチドの解離を抑制するための、方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
組換え治療用タンパク質等の細胞産物は、一般に、細胞発現系、例えば、哺乳類細胞発現系において、発現する。何百もの販売承認されたバイオ医薬品は、哺乳類細胞系において発現する。しかしながら、これらの生産に関連する高いコストは、世界的な医療費の増加の一因である。産物の解離事象は、細胞培養において増殖した細胞から発現するタンパク質若しくはポリペプチドの予想される安定性又は活性よりも低いという結果をもたらすことがある。これらの事象は、微量の正常な産物と共に、ポリペプチド産物の解離の存在を明らかにする、非還元SDS電気泳動アッセイによって、検出される。他の品質管理試験は、ポリペプチドの解離事象を明らかにしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
更にまた、産物の解離事象は、発現したタンパク質の機能及び安定性を損なうことがある。したがって、培養細胞において発現したポリペプチドの解離を抑制するための方法を、開発及び創作する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、一つには、下記で特定する多数の測定が、発現する産物、例えば、ポリペプチドの解離を抑制することができるという発見に基づく。
【0006】
一態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法を特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期(post-exponential growth culture phase)の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法を特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップであり、産生期の初めから産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲である、ステップと、
産生培養物を、産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離までに、産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、DOTを、40%を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲に増加させるステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-50mVから-300mVまでの範囲で、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立するステップと、
(ii)対数増殖培養後期において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップと、
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
方法が、
a.産生培養物を、対数増殖期(exponential growth phase)が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までの温度に冷却するステップ、
b.産生培養物を、産生期の初めから産生期の終わりまで、40%を超える空気飽和度から70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷するステップ、
c.遷移金属を、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップであり、遷移金属のイオンが、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、ステップ、
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、或いは
f.産生培養物を、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却するステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を、又は安定化産物、例えば、安定化タンパク質の調製物を産生させる、
方法を特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって産生する、安定化タンパク質、又は安定なタンパク質の調製物を特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって産生する、安定化タンパク質、又は安定化タンパク質の調製物を含む医薬組成物を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、バイオリアクターを特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
対数増殖期後の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であり、並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクターを特徴とする。
【0014】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
対数増殖期後の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であって、産生期の初めから産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超える空気飽和度から70%までの空気飽和度の範囲であり;
産生培養物を、産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却することが可能であり;
バイオリアクターから産生培養物の除去までに、産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、DOTを、40%を超える空気飽和度から500%未満までの空気飽和度の範囲に増加させることが可能であり、並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクターを特徴とする。
【0015】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-50mVから-300mVまでの範囲で、産物、例えば、タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立することが可能であり;
(ii)対数増殖期後において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であり;並びに
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクターが、更に、
a.産生培養物を、対数増殖期が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までの温度に冷却することが可能である;
b.産生培養物を、産生期の初めから産生期の終わりまで、40%を超えて70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷することが可能である;
c.遷移金属のイオンを、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であって、遷移金属のイオンが、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される;
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能である;
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能である;または
f.産生培養物を、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却することが可能である、
バイオリアクターを特徴とする。
【0016】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、例えば、増殖期の間、例えば、対数増殖期の間、産生培養物におけるより好適な酸化還元電位を促進するために、多数の条件、例えば、供給材料/栄養補助剤の存在又は物理化学的状態のうちのいずれかを維持するステップを含み、本明細書に開示されるバイオリアクターは、例えば、増殖期の間、例えば、対数増殖期の間、産生培養物におけるより好適な酸化還元電位を促進するために、多数の条件、例えば、供給材料/栄養補助剤の存在又は物理化学的状態のうちのいずれかを維持することが可能である。典型的には、条件は、例えば、少なくとも部分的に、後の段階において、例えば、回収の段階又はポスト回収の段階で、維持される。例として、条件は、細胞が、回収の段階及びポスト回収の段階に入るときに、安定化産物、例えば、安定化タンパク質の産生を最適化するレベルで、維持され、任意選択で、産物がバックグラウンドプロセス及び細胞不純物から単離されるまで、維持される。
【0017】
一実施形態において、供給材料又は栄養補助剤は、例えば、産生培養物中に、それぞれ、200から400μMまでの範囲のZn2+イオンの残留濃度、並びに10から100μMまでの範囲のMn2+及びCu2+イオンの残留濃度を提供するレベルで、Zn2+、Mn2+及びCu2+の塩を含む。
【0018】
一実施形態において、産生培養物の溶存酸素圧(DOT)は、少なくとも40%から70%の空気飽和度の間で維持される。
【0019】
一実施形態において、産生培養物は、最初、第1の温度、例えば、36℃から37℃までに維持され、例えば、所定の時点で、例えば、産生が増殖期を終了した時点で、第2の、典型的にはより低い温度、例えば、30℃から33℃に変更される。一実施形態において、産生培養物の温度は、最初、36℃から37℃までに制御されるが、次いで、温度は、産生培養が増殖期を終了し始めた時点で、典型的には、15日の産生期間の5日目から7日目に、30℃から33℃までに制御される。
【0020】
一実施形態において、本方法は、上記に記載の1つ又は複数の条件を使用することによって、相対的により酸化的な電位、例えば、安定化産物の産生を、例えば、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%増加させる酸化的な電位の方へ、産生培養物の酸化還元電位を維持するステップを含み、或いは、本バイオリアクターは、相対的により酸化的な電位、例えば、安定化産物の産生を、例えば、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%増加させる酸化的な電位の方へ、上記に記載の1つ又は複数の条件を使用することによって、産生培養物の酸化還元電位を維持することが可能である。代替手段は、酸化還元電位をより酸化的な電位の方へ変えるために使用することもでき、これらには、培地の成分に影響を与える他の酸化還元電位、又は温度及びDOTと組み合わせた、デヒドロアスコルビン酸/アスコルビン酸、グルタチオン/グルタチオン-SH、及びシステイン/シスチン等の酸化促進代謝産物を上昇させるための細胞代謝の変化が含まれる。
【0021】
一実施形態において、本方法は、適切なプロセス変化に影響を与える産生培養物内の細胞の酸化還元電位の変化を感知するための、酸化還元電位を表す標識、例えば、染料又は分子プローブを使用して、細胞によって発現されるその後の産物を、解離することから防止するステップを含み、或いは、本バイオリアクターは、適切なプロセス変化に影響を与える産生培養物内の細胞の酸化還元電位の変化を感知するための、酸化還元電位を表す標識、例えば、染料又は分子プローブを使用して、細胞によって発現されるその後の産物を、解離することから防止することが可能である。一実施形態において、本方法は、酸化還元電位のインライン監視プローブ、例えば、本明細書に記載のMettler Toledoプローブを使用するステップを含み、又は、本バイオリアクターは、酸化還元電位のインライン監視プローブ、例えば、本明細書に記載のMettler Toledoプローブを使用することが可能である。
【0022】
一実施形態において、本方法は、産物の解離反応に関わり、且つ細胞系によって発現する、酵素活性(例えば、グルタチオン還元酵素、チオレドキシン、チオレドキシン還元酵素)並びに/又は多数の補助因子及び関連代謝産物(例えば、ペントースリン酸経路と関連する補助因子及び関連代謝産物、例えば、グルコース-6-リン酸、NADPH、NADP+、6-ホスホノグルコラクトン、6-ホスホグルコン酸又はリブロース-5-リン酸)を調べる、分析方法を使用するステップを含む。一実施形態において、酵素活性並びに多数の補助因子及び関連代謝産物を調べるステップは、更なる処理の間に、産物の解離を促進しない、低減されたレベル又は所望のレベルの細胞因子を有する、細胞系及びクローンを選択するために使用される。
【0023】
一実施形態において、本方法は、培養細胞を、深層ろ過又は遠心分離及び深層ろ過ステップを使用して産物含有上清から分離する前に、15±3℃に冷却するステップを含み、或いは本バイオリアクターは、培養細胞を、深層ろ過又は遠心分離及び深層ろ過ステップを使用して産物含有上清から分離する前に、15±3℃に冷却することが可能である。
【0024】
一実施形態において、産生培養物が回収ステップを開始する目標温度に達すると、本方法は、産生培養物の酸素負荷に拮抗する可能性がある全ての要素を、例えば、プロセスの制御によって、最小化することを確実にするステップを含み、又は本バイオリアクターは、産生培養物の酸素負荷に拮抗する可能性がある全ての要素を、例えば、プロセスの制御によって、最小化することを確実にすることが可能である。実施形態において、本方法は、有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制するステップ、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御を抑制するステップ、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御を抑制するステップ、又は有効である場合、供給材料の適用を抑制するステップを含み、或いは本バイオリアクターは、有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御を抑制すること、又は有効である場合、供給材料の適用を抑制することが可能である。
【0025】
一実施形態において、産生培養物が回収ステップを開始する目標温度に達すると、本方法は、産生培養物の酸素負荷を促進する可能性がある全ての要素を、例えば、プロセスの制御によって、最大化及び/又は有効にすることを確実にするステップを含み、或いは本バイオリアクターは、産生培養物の酸素負荷を促進する可能性がある全ての要素を、例えば、プロセスの制御によって、最大化及び/又は有効にすることを確実にすることが可能である。実施形態において、本方法は、有効ではない場合、スパージ空気ガス流を有効にするステップ;有効ではない場合、スパージ酸素ガス流を有効にするステップ;有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にするステップ;有効ではない場合、ヘッドスペースの空気及び/又は酸素流を有効にするステップ;回収操作の間に排出しながら、細胞培養物を、よく混合及び通気したままにすることを確実にするステップ;バイオリアクターの回収ラインが、回収操作の間に所望の流速の圧潰及び妨害に耐えるために、内部の孔のサイズ及び壁の強度に関して設計されていることを確実にするステップ;フィルター清澄化ステップの間のフィルターの閉塞及びファウリングを回避し、それによって、フィルターハウジング内の細胞培養物の滞留時間を増加させるために、デプスフィルターの面積を最適化するステップ;並びに無細胞上清を、よく通気及び混合された収集容器(スチール製又は単回使用)に収集することを確実にするステップのうち、1つ又は複数を含み、或いは本バイオリアクターは、有効ではない場合、スパージ空気ガス流を有効にすること;有効ではない場合、スパージ酸素ガス流を有効にすること;有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にすること;有効ではない場合、ヘッドスペースの空気及び/又は酸素流を有効にすること;回収操作の間に排出しながら、細胞培養物を、よく混合及び通気したままにすることを確実にすること;バイオリアクターの回収ラインが、回収操作の間に所望の流速の圧潰及び妨害に耐えるために、内部の孔のサイズ及び壁の強度に関して設計されていることを確実にすること;フィルター清澄化ステップの間のフィルターの閉塞及びファウリングを回避し、それによって、フィルターハウジング内の細胞培養物の滞留時間を増加させるために、デプスフィルターの面積を最適化すること;並びに無細胞上清を、よく通気及び混合された収集容器(スチール製又は単回使用)に収集することを確実にすることのうち、1つ又は複数が可能である。実施形態において、ある方法における使用のための回収容器は、強制的にろ液を容器壁に滝状に流れ落ちさせる容器壁の方へ向けて内部ノズルを設計することによって、収集したろ液を容器壁に衝突させること、並びにろ液の収集の前に、収集されたろ液の酸素負荷を>40%を超える空気飽和度及び≦500%の空気飽和度に促進するために、空気又は空気及び酸素の任意の所与の配合物で構成されるガス環境で、収集容器を満たす能力の、1つ又は両方によって、良好な表面酸素負荷を促進することを確実にするように設計される。
【0026】
実施形態において、バイオリアクターと細胞の清澄化ステップとの間、及び細胞の遠心分離ステップと上清収集容器、例えば、回収容器との間の流路を、酸化還元、DOT及びpHセンサーで監視することが提案される。加えて、バイオリアクターにおけるパラメーターは、2つの流路内、又は上清収集容器、例えば、回収容器内で、酸化還元、DOT及びpHを変化させて、調節してもよい。
【0027】
一態様において、本開示は、細胞によって、産物、例えば、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドを産生するための方法であって、細胞を含み、及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む細胞系を提供するステップを含む、方法を特徴とする。産生培養物は、産物、例えば、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養され、産生培養物は、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までに冷却され、それにより、産物、例えば、ポリペプチドが作られる。T回収温度、例えば、15℃への産生培養物の更なる冷却は、産生期の終わりに起こる。
【0028】
実施形態において、産物は、2個以上のシステイン残基、例えば、1番目、2番目、3番目及び4番目、又はそれ以上のシステイン残基を含む、ポリペプチドである。実施形態において、天然の形態におけるポリペプチドは、1番目と2番目のシステイン残基の間にスルフヒドリル結合を含む。実施形態において、ポリペプチドは、3番目と4番目のシステイン残基の間にスルフヒドリル結合を含む。実施形態において、T回収は、十分な溶存酸素が、上清中で、細胞因子(酵素的及び代謝産物の両方)の活性化を防止し、ジスルフィド結合の解離を抑制するために利用可能であるように、培養中の溶存酸素の消費を減少させるために、十分に低い。実施形態において、T回収は、参照、例えば、T回収に冷却されなかったが、その他は同様のプロセスから得られる解離のレベルと比較して、少なくとも、10、20、30、40、50、60、70、80又は90%、ジスルフィド結合の解離を防止するために、十分に低い。
【0029】
実施形態において、本方法は、T回収で、培養された細胞から、発現したポリペプチドを分離するステップを含む。
【0030】
実施形態において、本方法は、ポリペプチドを発現する細胞系がT回収に冷却されるときに、発現したポリペプチドを精製するステップを含む。
【0031】
実施形態において、細胞系は、第1の温度であるT培養で培養され、続いて、対数増殖期後、T産生温度(例えば、30℃から33℃まで)に冷却され、産生期の終わりに、回収温度であるT回収(例えば、12℃から18℃まで)に更に冷却される。実施形態において、T培養は、T産生より高い。実施形態において、T産生は、T回収より高い。
【0032】
実施形態において、37℃のT培養で典型的に培養された細胞は、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃又は30℃未満のT産生に置かれる。実施形態において、培養物は、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、5℃若しくは4℃、或いは15℃未満、周囲温度未満、及び/又は室温未満のT回収に更に冷却される。実施形態において、T回収は、6~24℃未満である。一実施形態において、T回収は、15±3℃である。
【0033】
例えば、実施形態において、T産生は、T培養より、少なくとも、1℃、3℃又は6℃下である。
【0034】
例えば、実施形態において、T回収は、T産生より、少なくとも、2℃、5℃又は8℃下である。
【0035】
実施形態において、培養細胞は、T回収で、上清から分離される。
【0036】
実施形態において、上清の別の成分からポリペプチドを分離する分離ステップは、T回収で行われる。
【0037】
実施形態において、例えば、上清の成分としてのポリペプチドは、T回収で、フィルターに適用される。
【0038】
実施形態において、バイオリアクターの内容物は、T回収に冷却される。
【0039】
実施形態において、細胞培養物は、細胞培養物をT回収にするために適切な温度で、流体、例えば、水を含む、部材、例えば、冷却ジャケットとの接触によって冷却される。
【0040】
実施形態において、本方法は、T培養、T産生及び/又はT回収の間に、栄養素又は酸素を提供するステップを更に含む。
【0041】
実施形態において、細胞培養物は、T培養、T産生及び/又はT回収の間に、かき混ぜられる。
【0042】
実施形態において、本方法は、発現したポリペプチドを回収するステップを含む。
【0043】
実施形態において、細胞又はそれらの産物は、T回収で、回収容器中にある。
【0044】
実施形態において、ポリペプチドは、表1及び表2で提供されるポリペプチドの1つ、又はそれらのバリアントである。
【0045】
実施形態において、ポリペプチドは、抗体、例えば、モノクローナル抗体、例えば、IgG1抗体、又は抗体をコードするポリヌクレオチドである。実施形態において、抗体をコードするポリヌクレオチド中の1個又は複数のシステインは、別のアミノ酸で置き換えられる。いくつかの実施形態において、1個又は複数のシステインは、1個又は複数のセリン残基で置き換えられる。
【0046】
実施形態において、細胞系は、哺乳類細胞に由来する。
【0047】
一態様において、本開示は、細胞中で、本明細書に記載の産物を産生させるための方法を特徴とする。一実施形態において、産物は、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドである。
【0048】
本明細書に記載の方法又は組成物のいずれかを使用して産生され得る産物の例には、組換え産物、又は少なくとも1つの部分若しくは成分が、遺伝子操作の結果である産物が含まれる。本明細書に記載の組換え産物は、診断目的又は治療目的のために有用である。一実施形態において、産物は、抗体分子(例えば、二重特異性又はマルチフォーマットの抗体分子)、融合タンパク質又はタンパク質複合体等のポリペプチドを含む。本明細書に記載の方法及び組成物は、例えば、次世代の生物製剤(例えば、融合タンパク質、二重特異性又はマルチフォーマットの抗体分子、多量体タンパク質及びグリコシル化タンパク質)等の商業的使用若しくは治療の使用のために多くの量又は十分な品質で、生産することが難しい産物のために、特に有用であり得る。一実施形態において、例えば、産物を産生するための本明細書に記載の細胞は、産物を発現する。一実施形態において、細胞は、本明細書に記載の産物、例えば、表1、表2、表3又は表4から選択されるポリペプチドをコードする、外因性核酸を含む。産物の追加の例は、「産物」という名称の項に記載する。
【0049】
このような実施形態において、前述の細胞の特性のいずれかの増加又は減少は、改変を有さない細胞と比較することによって、決定することができる。
【0050】
本明細書に記載の方法及びバイオリアクターは、より低温に付されていない細胞と比較して、産物の産生の増加をもたらす。産生の増加は、細胞によって産生される産物の量、収率、若しくは数の増加、及び/又は、産生の速度が経時的に産物の量と等価である場合、産生の速度の増加、という特性を有することができる。一実施形態において、産物、例えば、組換えポリペプチドの産生は、例えば、より低温に付されていない細胞による産生と比較して、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、増加する。
【0051】
本明細書に記載の方法及びバイオリアクターは、より低温に付されていない細胞と比較して、産物の品質の改善をもたらすこともできる。産物の品質の改善は、解離(例えば、より活性の低い形態へのポリペプチドの解離の減少);凝集(例えば、凝集体又は凝集の減少);適切なフォールディング若しくはアセンブリ(例えば、ミスフォールドされたか、若しくはアンフォールドされた産物;又は部分的に集合して構築された若しくは分解された産物の減少);翻訳後の修飾(例えば、グリコシル化不均一性、より高い割合の所望若しくは所定の翻訳後の修飾の増加又は減少);フラグメント化(例えば、フラグメント化の減少);ジスルフィド結合のスクランブリング(例えば、ジスルフィド結合のスクランブリングに起因する、望ましくないアイソフォーム又は構造の減少)の、1つ又は複数の特性を有することができる。一実施形態において、産物、例えば、組換えポリペプチドの品質は、例えば、より低温に付されていない細胞によって産生した産物の品質と比較して、例えば、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、向上する。
【0052】
実施形態において、本明細書に記載の産物を産生させるための方法は、ポリペプチドの安定性又は活性を増強するための1つ又は複数の追加のステップを用いて行うことができる。追加のステップとしては、ERのプロセシング能力(ER拡張)又は分泌を改善する細胞に改変を導入するステップ;細胞から、若しくは細胞の子孫から、又は細胞、若しくは細胞の子孫によってコンディショニングされた培地から、産物を得るステップ;少なくとも1つの細胞成分又は培地成分から産物を分離するステップ;並びに/或いは、例えば、構造部分の活性について又は存在について、産物を分析するステップが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本方法は、PD1、BiP、ERO、又はXBP1をコードする核酸を導入することによって、ERのプロセシング能力(又はER拡張)を改善するためのステップを更に含む。一実施形態において、本方法は、SNARE機構又は分泌経路に関わる他の機構を調節することによって、例えば、SNARE成分をコードする核酸を導入することによって、分泌能力又は分泌の速度を改善するための追加のステップを更に含む。
【0053】
産物
本明細書に記載の方法に適切な産物としては、ポリペプチド、例えば、組換えタンパク質;核酸分子、例えば、DNA若しくはRNA分子;多量体タンパク質若しくは複合体;脂質カプセル化粒子、例えば、ウイルス様粒子、ベシクル若しくはエキソソーム;又は他の分子が挙げられる。一実施形態において、産物は、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドである。例えば、組換えポリペプチドは、次世代の生物製剤、例えば、二重特異性抗体分子、融合タンパク質若しくはグリコシル化タンパク質等の、タンパク質、或いは複合体及び/又は非天然構造を有するタンパク質の発現が困難であり得る。
【0054】
本明細書の記載の方法のいずれかにおいて、産物を産生させるための方法は、産物、例えば、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドをコードする、外因性核酸を細胞に導入するステップを更に含む。
【0055】
本明細書に記載の、組成物、調製物、バイオリアクター又は方法のいずれかにおいて、産物、例えば、組換えポリペプチドは、治療的ポリペプチド又は抗体分子、例えば、抗体、若しくはその抗体フラグメントである。一実施形態において、抗体分子は、モノクローナル抗体である。一実施形態において、抗体分子は、二重特異性の抗体分子、例えば、BiTE(二重特異性T細胞誘導)、DART(二重親和性再標的化又はリダイレクトされたT細胞)である。
【0056】
一実施形態において、産物、例えば、組換えポリペプチドは、表1、表2、表3又は表4から選択される。
【0057】
実施形態において、産物は、細胞によって、安定的に発現される。一実施形態において、産物、例えば、組換えポリペプチドをコードする外因性核酸は、細胞の染色体のゲノムに組み込まれる。或いは、産物は、細胞によって、一時的に発現される。一実施形態において、産物、例えば、組換えポリペプチドをコードする外因性核酸は、細胞の染色体のゲノムに組み込まれない。
【0058】
宿主細胞
本明細書に記載の産物を産生するための細胞及びそのような細胞を遺伝子操作する方法を、本明細書に提供する。
【0059】
本明細書に記載の、組成物、調製物又は方法のいずれかにおいて、細胞は、真核細胞である。一実施形態において、細胞は、哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞、藻類細胞又は植物細胞である。一実施形態において、細胞は、げっ歯類の細胞である。一実施形態において、細胞は、CHO細胞である。CHO細胞の例としては、CHOK1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11、CHOZN又はCHO由来細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書に記載の、組成物、調製物又は方法のいずれかにおいて、細胞は、HeLa、HEK293、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、EB66、C127、L細胞、COS、例えば、COS1及びCOS7、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11及びCHOZNからなる群から選択される。
【0061】
一実施形態において、細胞は、哺乳類細胞以外の真核細胞、例えば、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞又は藻類細胞である。一実施形態において、細胞は、原核細胞である。
【0062】
本明細書に記載の、方法又は細胞、例えば、遺伝子操作された細胞のいずれかにおいて、細胞は、産物、例えば、組換え産物、例えば、二重特異性抗体、融合タンパク質又はグリコシル化タンパク質からなる群から選択される、次世代の生物製剤を、発現するか、又は含む。
【0063】
本明細書に記載の、方法又は細胞、例えば、遺伝子操作された細胞のいずれかにおいて、細胞は、CHOK1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11、CHOZN又はCHO由来細胞からなる群から選択される、CHO細胞である。
【0064】
組成物及び調製物
一態様において、本開示はまた、本明細書に記載の方法によって作られる、本明細書に記載の産物の調製物を特徴とする。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、少なくとも、70、80、90、95、98又は99%が、適切にフォールディングされるか、若しくは集合して構築される。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、凝集する。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、産物のフラグメントである。
【0065】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の細胞、例えば、細胞、及び細胞によって産生する産物を含む混合物を特徴とする。一実施形態において、混合物は、より高濃度、例えば、開示されたプロセスのパラメーターなしで見られるより、産物の、重量又は数による、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20又は30%高い濃度で、産物を含む。一実施形態において、混合物中における産物の、重量又は数による、少なくとも、70、80、90、95、98又は99%が、適切にフォールディングされるか、若しくは集合して構築される。一実施形態において、混合物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、凝集する。一実施形態において、混合物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、産物のフラグメントである。
【0066】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の、温度を低下させる改変に付された細胞の培養によって、コンディショニングされた培地の調製物を特徴とする。一実施形態において、産物は、調製物中に、より高い濃度、例えば、改変なしで見られるよりも、重量又は数による、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20又は30% 100%高い濃度で、存在する。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、少なくとも、70、80、90、95、98又は99%が、適切にフォールディングされるか、若しくは集合して構築される。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、凝集する。一実施形態において、調製物中における産物の、重量又は数による、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満が、産物のフラグメントである。
【0067】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様又は等価な方法及び材料を、本発明の実行又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料を、下記に記載する。本明細書において言及する、全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照は、それらの全体が、参照により組み込まれる。加えて、材料、方法及び例は、説明のためのみのものであって、限定を意図するものではない。見出し、小見出し、又は番号付けされた要素若しくは文字入りの要素、例えば(a)、(b)、(i)等は、単に読みやすくするために提示される。本明細書中における見出し又は番号付けされた要素若しくは文字入り要素の使用は、ステップ若しくは要素が、アルファベット順に行われること、又はステップ若しくは要素が必ずしも互いに別々であることを、必要としない。本発明の、他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】温度、酸素溶解度及び酸素消費速度(OUR)の相互関係を示す図である。
【
図2】バイオリアクター、一次回収筺体及び保管デバイス中でポリペプチドの解離を最小化するための軽減スキームの略図である。
【
図3】細胞の冷却を含む軽減なし及び軽減ありにおける、回収酸素負荷あり、なしの2つのバイオリアクターの回収プロファイルを示す図である。
【
図4】IgG1モノクローナル抗体について、軽減なし(左側パネル)及び軽減あり(右側パネル)で調製された、非還元SDSポリアクリルアミドゲルサンプルを示す図である。
【
図5】ベースライン上流プロセスに関する、及び微量栄養素のボーラス添加又は微量栄養素の連続添加を用いる最適化上流プロセスに関する、培養期間にわたる、産生培養物の酸化還元電位のグラフである。
【
図6】経過時間、標識化段階及び移行点にわたる、細胞内酸素要求量(sLPM)に対する空気及び酸素のスパージ流、並びに産生培養物温度のグラフである。
【
図7A】スパージ空気及び酸素を回収の間に産生培養物中で固定した場合の、培養物の制御プロファイルの例を示す図である。
【
図7B】培養物のDOTを約200%の最大空気飽和度に制限するために、スパージ空気及び酸素を回収の間に産生培養物中で固定した場合の、培養物の制御プロファイルの例を示す図である。
【
図8A】培養の、フロー、パーツ及び機能が標識化された、例としてのバイオリアクター及び回収容器の略図である。
【
図8B】
図8Aの採取容器の丸で囲ったヘッドスペース領域の標識化された拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本開示は、細胞培養物を冷却することによって、産物のより高い収率を得るための方法及び組成物を特徴とする。したがって、細胞は、現在の産生方法から得られる収率及び品質と比較して、改善された品質を示す。本明細書に記載の方法及び組成物はまた、組換え産物を産生させるために現在使用されている細胞発現系と比較して、生産性、産物の品質、頑健性及び/又は培養物生存性が改善された細胞又は細胞系の遺伝子操作に有用である。
【0070】
本方法は、次世代の生物製剤を産生するのに適している。これらの方法が患者における治療的有用性を増加させ続けるにつれて、治療的使用のための高グレードの品質を有する大量の次世代の生物製剤品、並びに生産のための効率的な手段及び産生細胞系の効率的な開発に対する需要は、高まるだろう。更にまた、多くの次世代の生物製剤は、本分野において公知の従来の発現技術を使用する従来の細胞系において発現及び産生させるのが困難である。現在の方法は、これらの産物を、臨床使用に必要な、大量で、高グレードの品質で産生させるのに十分ではない。本明細書に記載の冷却方法は、これらの障害を克服する。
【0071】
定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様又は等価な任意の方法及び材料を、本発明の実行において、及び/又は試験をするために、使用することができるが、好ましい材料及び方法を、本明細書に記載する。本発明の説明及び特許請求の範囲において、定義が提供される場合、それがどのように定義されるかに従って、以下の専門用語が使用されるだろう。
【0072】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解される。
【0073】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書において、1つ、又は2つ以上(即ち、少なくとも1つ)の冠詞の文法的対象を指すために、使用される。例として、「細胞(a cell)」は、1個の細胞又は2個以上の細胞を意味し得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「解離」とは、ポリペプチド内、及びポリペプチド間のシステイン残基の間の還元を介する、ジスルフィド結合の切断又は解離を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「内因性」とは、器官、細胞、組織又は系の内側から、又はこれらの内側で天然に産生する任意の物質を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「外因性」とは、器官、細胞、組織又は系に導入されるか、又はこれらの外側で産生する任意の物質を指す。したがって、「外因性核酸」とは、器官、細胞、組織又は系に導入されるか、又はこれらの外側で産生する核酸を指す。一実施形態において、外因性核酸の配列は、外因性核酸が導入された、器官、細胞、組織又は系の内側で、天然に産生されず、又は天然に見出すことはできない。実施形態において、天然に存在しない産物、又は天然に存在しないタンパク質を含有する産物は、本明細書に記載の宿主細胞に対する外因性物質である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「異種の」とは、異なる種から、器官、細胞、組織又は系に導入される場合の、1つの種からの任意の物質を指す。実施形態において、異種物質は、1つ若しくは複数の種からの部分、又は天然に存在しない部分を含む物質も包含する。例として、一実施形態において、融合タンパク質をコードする核酸であって、融合タンパク質の一部がヒトであり、融合タンパク質の一部が細菌であり、及び融合タンパク質の一部が天然に存在せず、且つ核酸がヒト細胞に導入される、核酸は、異種核酸である。
【0078】
本明細書において互換的に使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、ペプチド結合によって、又はペプチド結合以外の手段によって、共有結合的に結合するアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質の配列又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。一実施形態において、タンパク質は、2個以上、例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上の、ポリペプチドで構成されていてもよく、そのそれぞれのポリペプチドは、共有結合的又は非共有結合的な、結合/相互作用のいずれかによって、互いに会合している。ポリペプチドは、ペプチド結合によって、又はペプチド結合以外の手段によって、互いに連結される2個若しくはそれ以上のアミノ酸を含む、任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、一般に、本分野において、例えば、ペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖、並びに、本分野において、多くの種類がある、タンパク質と一般に呼ばれる、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に同種のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変されたポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が挙げられる。
【0079】
「組換え産物」とは、細胞系又は無細胞系によって産生され得る産物を指す。産物は、分子、核酸、ポリペプチド、又はこれらの任意のハイブリッドであり得る。組換え産物は、産物の少なくとも1つの成分、又は産物の産生若しくは発現を制御する配列の少なくとも1つのヌクレオチドが、遺伝子操作によって形成されたものである。組換え産物をコードする組換え産物又は構築物を発生させるために本明細書で使用される遺伝子工学は、本分野において公知の組換えDNA発現技術(例えば、分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)に記載されているもの);部位特異的なスキャニング若しくはランダム変異誘発;CRISPR戦略;及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)戦略を包含する。一実施形態において、組換え産物は、組換えポリペプチドである。一実施形態において、組換え産物は、天然に存在する産物である。一実施形態において、組換え産物は、天然に存在しない産物、例えば、合成産物である。一実施形態において、組換え産物の一部は、天然に存在するが、組換え産物の他の部分は、天然に存在しない。別の実施形態において、組換え産物の第1の部分は、1つの天然に存在する分子であるが、組換え産物の別の部分は、第1の部分とは異なる、別の天然に存在する分子である。いくつかの実施形態において、組換え産物(例えば、組換えポリペプチド)は、安定化産物である。安定化産物は、適切なフォールディング及び結合配列、例えば、正しく対になったジスルフィド結合の可能性を増加させ、且つマルチサブユニットポリペプチドの解離の可能性を減少させる条件下、細胞、例えば、組換え宿主細胞によって、産生される産物である。いくつかの実施形態において、安定化産物は、安定化タンパク質である。安定化タンパク質は、適切なタンパク質のフォールディング及び結合配列、例えば、適切なジスルフィド結合配列の可能性を増加させ、且つマルチサブユニットポリペプチドの解離の可能性を減少させる条件下、細胞によって産生されるタンパク質である。例えば、安定化タンパク質は、正しいジスルフィド結合を維持する可能性を増加させ且つマルチサブユニットポリペプチドが互いから解離し得る可能性を減少させる、非安定化タンパク質を産生するのに使用される温度及び酸素負荷レベルに比して酸化性環境を生じさせる温度及び酸素負荷レベルで産生され得る。安定化産物、例えば、安定化タンパク質はまた、適切なフォールディング及び結合配列を促進する条件下、一連の分離/クロマトグラフステップによって、細胞又は細胞培養物から、単離、例えば、精製されてもよい。安定化産物、例えば、安定化タンパク質の調製物は、適切なフォールディング及び結合配列の可能性を増加させ、且つマルチサブユニットポリペプチドの解離の可能性を減少させる条件下、例えば、細胞、例えば、組換え宿主細胞から、調製される調製物である。例えば、安定化産物、例えば、安定化タンパク質の調製物は、正しいジスルフィド結合を有する産物、例えば、タンパク質を含む可能性がより高く、解離した産物、例えば、タンパク質、例えば、マルチサブユニットポリペプチドの解離したサブユニットを含む可能性はより低い。産物、例えば、抗体の解離の議題に対して、より深く掘り下げた議論については、例えば、Wai Keen Chungら、2017年、Michael W Handlogtenら、2017年、及びBrian Mullanら、2011年を参照のこと。
【0080】
「組換えポリペプチド」とは、本明細書に記載の細胞によって産生され得るポリペプチドを指す。組換えポリペプチドは、ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチドの配列、又はポリペプチドの発現を制御する少なくとも1つのヌクレオチドの配列が、(細胞又は前駆体細胞の)遺伝子工学又は遺伝子操作によって形成されたものである。例えば、少なくとも1つのヌクレオチドが変更された、例えば、それが細胞に導入されたか、又はそれが遺伝子工学的に再配列された産物である。一実施形態において、組換えポリペプチドの配列は、ポリペプチド若しくはタンパク質の、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームと異ならない。一実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド若しくはタンパク質の、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームの配列と異なる。一実施形態において、組換えポリペプチド及び細胞は、同じ種に由来する。一実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、細胞の内因性ゲノムによってコードされるポリペプチドと、同じ、又は実質的に同じ、又は1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%以下、異なる。一実施形態において、組換えポリペプチド及び細胞は、同じ種に由来し、例えば、組換えポリペプチドは、ヒトポリペプチドであり、細胞は、ヒト細胞である。一実施形態において、組換えポリペプチド及び細胞は、異なる種に由来し、例えば、組換えポリペプチドは、ヒトポリペプチドであり、細胞は、非ヒト、例えば、げっ歯類、例えば、CHO、他の哺乳類細胞、昆虫細胞、植物、真菌、又は細菌細胞である。一実施形態において、組換えポリペプチドは、細胞に対して外因性であり、言い換えれば、細胞は、第1の種に由来し、組換えポリペプチドは、第2の種に由来する。一実施形態において、ポリペプチドは、合成ポリペプチドである。一実施形態において、ポリペプチドは、天然に存在しない起源に由来する。一実施形態において、組換えポリペプチドは、ヒトポリペプチドであるか、或いはヒトポリペプチド若しくはタンパク質の、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームからのアミノ酸配列と異ならないタンパク質である。一実施形態において、組換えポリペプチドは、ヒトポリペプチド若しくはタンパク質の、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームと、1、2、3、4、5、10、15又は20個以下のアミノ酸残基が異なる。一実施形態において、組換えポリペプチドは、ヒトポリペプチドの、天然に存在するアイソフォームと、そのアミノ酸残基の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%又は15%以下が異なる。組換えポリペプチドの一部が、ヒトポリペプチドの、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームの一部に由来する配列を含む実施形態において、組換えポリペプチドの一部は、天然に存在するか、又は天然に存在しない、アイソフォームの対応する部分と、アミノ酸残基の1、2、3、4、5、10、15若しくは20個以下、又はそのアミノ酸残基の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%若しくは15%以下が異なる。
【0081】
酸素負荷レベルと酸素負荷のレベルは、互換的に使用され、本明細書で使用される場合、液体又はガスの容積、例えば、培地中の溶解した酸素のレベルを指す。酸素負荷レベルは、溶存酸素圧(DOT)の単位、例えば、空気飽和度の百分率(例えば、空気中の酸素のレベルの百分率)を単位として、記載することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、産生培養物とは、増殖培地、及び細胞(例えば、少なくとも1つの細胞)、例えば、組換え細胞、例えば、産物、例えば、タンパク質、細胞因子、例えば、酵素及び代謝産物を発現する組換え宿主細胞の混合物を指す。いくつかの実施形態において、産生培養物は、細胞増殖/分裂の特性を含む、1つ又は複数の培養期(例えば、逐次的な及び/又は重複する培養期)を経て進行する。いくつかの実施形態において、産生培養物の処理は、産生培養物が異なる期を経て進行するにつれて、本明細書に記載されるように変化する。本明細書で使用される場合、産生期とは、播種で開始して、特定の基準(例えば、プロセス又は期間の終わり、例えば、10~30日間、例えば、15~20日間)に達するか、又は特定の細胞生存率の基準(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20又は10%未満の生存率、例えば、50%未満の生存率)に達して、終わるまでの、産生培養期を指す。産生期は、細胞増殖及び/又は分裂が指数関数的である、対数増殖期を含み得る。産生期は、細胞増殖及び/又は分裂が、増殖曲線の直線位相にある、例えば、細胞増殖及び/又は分裂の速度が、対数増殖期に対して減少している、対数増殖期に続く対数増殖後期を含み得る。いくつかの実施形態において、産生上清からの細胞の分離、例えば、回収、及び更なる分離又は精製ステップ、例えば、回収後は、産生期の終わりに続く段階である。
【0083】
本明細書で使用される場合、酸化還元電位差とは、2つ以上の化合物、例えば、産物、例えば、安定化産物又は非安定化産物、例えば、安定化タンパク質又は非安定化タンパク質の、酸化還元電位の比較を表す。例えば、安定化産物は、酸化還元電位Aを有していてもよく、一方で、非安定化産物は、酸化還元電位Bを有していてもよく;したがって、安定化産物から非安定化産物までのA-B(AマイナスB)の酸化還元電位差、又は非安定化産物から安定化産物までのB-A(BマイナスA)の酸化還元電位差となる。例えば、絶対的に負の酸化還元電位が高いほど、より還元的な環境であり、本発明の目標は、本明細書に開示される方法によって、より酸化的な環境を作り出し、それにより、絶対的に負の酸化還元電位を正の酸化還元電位の方へ、減少させることである。
【0084】
本明細書で使用される場合、操作可能に連結されるとは、容器の間の関係を表す。一実施形態において、培養培地又は産生培養物は、操作可能に連結された容器の間で、連通され得る。一実施形態において、操作可能に連結された容器の間の培養物の流れは、例えば、ポンプ、フィルター、センサー、培養条件を維持若しくは変更するための手段、及び/又は液体の流れを監視するための手段を使用する、制御された方法で、発生する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、産生培養物、産生培養物の細胞、又は産生培養物からの上清を、異なる期全体にわたって異なる温度で維持するステップを含み、又は本開示のバイオリアクターは、産生培養物、産生培養物の細胞、又は産生培養物からの上清を、異なる期全体にわたって異なる温度で維持することが可能である。本明細書で使用される場合、T培養は、産生培養物の細胞が、例えば、増殖培地中で、播種の初めから産生期の終わりまで、増殖して、タンパク質が産生する産生培養物を産生させる温度である。いくつかの実施形態において、T培養は、30℃~38℃である。本明細書で使用される場合、T産生は、産生培養物が、対数増殖後期の後に冷却される、第1の温度である。いくつかの実施形態において、T産生は、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃又は30℃未満、例えば、30℃~33℃である。本明細書で使用される場合、T回収は、産生培養物が、回収(例えば、上清から細胞の分離)の前に冷却される、第2の温度である。いくつかの実施形態において、T回収は、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃又は4℃である。一実施形態において、T回収は、12℃~18℃、例えば、15℃である。一実施形態において、T回収は、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃又は24℃未満である。一実施形態において、T回収は、15℃±3℃である。
【0086】
本明細書に引用する、ありとあらゆる特許、特許出願及び刊行物の開示は、これにより、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明を、特定の態様に関して開示してきたが、本発明の他の態様及び変形が、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、他の当業者によって、考案されてもよいことは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような態様及び等価な変形を含むと解釈されることを意図するものである。
【0087】
産物
細胞が発現する温度を低下させることによって、高収率の産物及び/又は改善された産物の品質(例えば、安定化産物、例えば、安定化タンパク質)をもたらすことが可能な、細胞若しくは無細胞発現系を、遺伝子操作又は作成するための、方法及び組成物を、本明細書に提供する。本明細書の記載の産物としては、ポリペプチド、例えば、組換えタンパク質;多量体タンパク質若しくは複合体;脂質カプセル化粒子、例えば、ウイルス様粒子、ベシクル若しくはエキソソーム;又は他の分子が挙げられる。一実施形態において、産物は、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドである。一実施形態において、産物は、エキソソームである。例えば、組換えポリペプチドは、次世代の生物製剤、例えば、二重特異性抗体分子、融合タンパク質若しくはグリコシル化タンパク質等の、タンパク質、或いは複合体及び/又は非天然構造を有するタンパク質の発現が困難であり得る。
【0088】
実施形態において、本明細書に記載の方法若しくは組成物によって発生される細胞又は細胞系は、医学的条件、障害又は疾患の処置において有用な、産物、例えば、組換えポリペプチド、例えば、安定化タンパク質を産生する。医学的条件、障害又は疾患の例としては、代謝性疾患又は障害(例えば、代謝酵素欠乏症)、内分泌障害(例えば、ホルモン欠乏症)、止血の調節不全、血栓症、造血障害、肺障害、胃腸障害、自己免疫疾患、免疫調節不全(例えば、免疫不全)、不妊症、移植、がん及び感染性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
実施形態において、産物は、外因性タンパク質、例えば、細胞によって天然に発現しないタンパク質である。一実施形態において、タンパク質は、1つの種に由来するが、細胞は、異なる種に由来する。別の実施形態において、タンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。
【0090】
他の実施形態において、産物は、細胞によって内因的に発現するタンパク質である。一実施形態において、産物は、細胞によって、内因性のレベル又は天然のレベルで、内因的に発現するタンパク質である。本明細書に記載の、本方法及び組成物は、内因性産物、例えば、細胞によって天然に産生される、天然に存在する産物の、産生及び品質を増加させるために使用される。別の実施形態において、産物、例えば、タンパク質をコードする外因性の核酸は、細胞に導入され、細胞によって発現される。別の実施形態において、細胞によって外因的に発現される産物の発現を増加させる外因性の核酸は、細胞に導入される。例として、外因性の核酸は、細胞の内因性産物の発現を制御するプロモーターを活性化する配列を含む。
【0091】
組換え産物は、治療薬、又は、例えば、薬物のスクリーニングのために有用な、診断薬であり得る。治療薬又は診断薬としては、抗体分子、例えば、抗体若しくは抗体フラグメント、融合タンパク質、ホルモン、サイトカイン、成長因子、酵素、糖タンパク質、リポタンパク質、レポータータンパク質、治療用ペプチド、或いはこれらのいずれかの構造的及び/若しくは機能的フラグメント又はハイブリッドを挙げることができるが、これらに限定されない。他の実施形態において、治療薬又は診断薬は、合成ペプチドであり、例えば、その全ポリペプチド又は部分は、任意の天然に存在するポリペプチド、例えば、上記の天然に存在するポリペプチドと同様の任意の配列若しくは構造に、由来しないか、又は有する。
【0092】
一実施形態において、組換え産物は、抗体分子である。一実施形態において、組換え産物は、治療用抗体分子である。別の実施形態において、組換え産物は、診断用抗体分子、例えば、イメージング技術又は診断検査に有用なモノクローナル抗体である。
【0093】
本明細書で使用される場合、抗体分子は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来する、タンパク質又はポリペプチド配列である。一実施形態において、抗体分子は、全長抗体又は抗体フラグメントである。抗体及びマルチフォーマットタンパク質は、ポリクローナル若しくはモノクローナルの、多重鎖若しくは単鎖の、又はインタクトの免疫グロブリンであり得、天然の起源又は組換えの起源に由来していてもよい。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であり得る。一実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であってもよい。一実施形態において、抗体は、IgA抗体、IgG抗体、IgD抗体又はIgE抗体である。一実施形態において、抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である。
【0094】
「抗体フラグメント」とは、インタクト抗体の少なくとも一部、又はその組換えバリアントを指し、抗原結合ドメイン、例えば、抗原等の標的に対して抗体フラグメントの認識及び特異的結合を与えるのに十分な、インタクト抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、scFv抗体フラグメント、直鎖状抗体、sdAb(VL又はVHのいずれか)等のシングルドメイン抗体、ラクダVHHドメイン、及びヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント等の抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体、並びに単離CDR、又は他の抗体のエピトープ結合フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合フラグメントは、シングルドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びビス-scFvに組み込むこともできる(例えば、Hollinger及びHudson、Nature Biotechnology 23巻:1126~1136頁、2005年を参照のこと)。抗原結合フラグメントは、フィブロネクチンIII型(Fn3)等のポリペプチドをベースとするスカフォールドにグラフト化することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載している、米国特許第6,703,199号を参照のこと)。
【0095】
実施形態において、ポリペプチドは、例えば、BOTOX、マイオブロック、ニューロブロック、ディスポート(又は、他の血清型のボツリヌス神経毒)、アルグルコシダーゼアルファ、ダプトマイシン、YH-16、絨毛性ゴナドトロピンアルファ、フィルグラスチム、セトロレリクス、インターロイキン-2、アルデスロイキン、テセロイキン(teceleulin)、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンアルファ-n3(注射剤)、インターフェロンアルファ-nl、DL-8234、インターフェロン、サントリー(ガンマ-1a)、インターフェロンガンマ、サイモシンアルファ1、タソネルミン、DigiFab、ViperaTAb、EchiTAb、CroFab、ネシリチド、アバタセプト、アレファセプト、レビフ、エプトテルミンアルファ、テリパラチド、カルシトニン、エタネルセプト、ヘモグロビングルタマー250(ウシ)、ドロトレコギンアルファ、コラゲナーゼ、カルペリチド、組換えヒト上皮成長因子、DWP401、ダルベポエチンアルファ、エポエチンオメガ、エポエチンベータ、エポエチンアルファ、デシルジン、レピルジン、ビバリルジン、ノナコグアルファ、モノニン、エプタコグアルファ(活性型)、組換え第VIII因子+VWF、リコンビナート(Recombinate)、組換え第VIII因子、第VIII因子(組換え)、アルフマート(Alphnmate)、オクトコグアルファ、第VIII因子、パリフェルミン、インジキナーゼ、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、レテプラーゼ、ナテプラーゼ、モンテプラーゼ、フォリトロピンアルファ、rFSH、hpFSH、ミカファンギン、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム、セルモレリン、グルカゴン、エキセナチド、プラムリンチド、イミグルセラーゼ(iniglucerase)、ガルスルファーゼ、ロイコトロピン、モルグラモスチム(molgramostirn)、トリプトレリン酢酸塩、ヒストレリン(ヒドロン)、デスロレリン、ヒストレリン、ナファレリン、ロイプロリド(アトリゲル)、ロイプロリド(デュロス)、ゴセレリン、ユートロピン、ソマトロピン、メカセルミン、エンフビルチド(enlfavirtide)、Org-33408、インスリングラルギン、インスリングルリジン、インスリン(吸入)、インスリンリスプロ、インスリンデテミル(insulin deternir)、インスリン(ラピッドミスト)、メカセルミンリンファバート、アナキンラ、セルモロイキン、99mTc-アプシタイド、ミエロピド、ベタセロン、グラチラマー酢酸塩、ゲポン、サルグラモスチム、オプレルベキン、ヒト白血球由来アルファインターフェロン、ビリブ、インスリン(組換え)、組換えヒトインスリン、インスリンアスパルト、メカセルミン(mecasenin)、ロフェロン-A、インターフェロン-アルファ2、アルファフェロン、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ、アボネックス組換えヒト黄体形成ホルモン、ドルナーゼアルファ、トラフェルミン、ジコノチド、タルチレリン、ジボテルミンアルファ、アトシバン、ベカプレルミン、エプチフィバチド、ゼマイラ、CTC-111、シャンバック-B、オクトレオチド、ランレオチド、アンセスチム(ancestirn)、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、酢酸プレザチド銅、ラスブリカーゼ、ラニビズマブ、アクティミューン、PEG-イントロン、トリコミン、組換えヒト副甲状腺ホルモン(PTH)1-84、エポエチンデルタ、トランスジェニックアンチトロンビンIII、グランジトロピン、ビトラーゼ、組換えインスリン、インターフェロン-アルファ、GEM-21S、バプレオチド、イデュルスルファーゼ、オマパトリラト(omnapatrilat)、組換え血清アルブミン、セルトリズマブペゴル、グルカルピダーゼ、ヒト組換えC1エステラーゼ阻害剤、ラノテプラーゼ、組換えヒト成長ホルモン、エンフビルチド、VGV-1、インターフェロン(アルファ)、ルシナクタント、アビプタジル、イカチバント、エカランチド、オミガナン、オーログラブ、ペキシガナン酢酸塩、ADI-PEG-20、LDI-200、デガレリクス、シントレデキンベスドトクス(cintredelinbesudotox)、Favld、MDX-1379、ISAtx-247、リラグルチド、テリパラチド、チファコギン、AA4500、T4N5リポソームローション、カツマキソマブ、DWP413、ART-123、クリサリン(デスモテプラーゼ、アメジプラーゼ、コリフォリトロピンアルファ、TH-9507、テデュグルチド、ダイアミド、DWP-412、成長ホルモン、組換えG-CSF、インスリン、インスリン(テクノスフィア)、インスリン(AERx)、RGN-303、DiaPep277、インターフェロンベータ、インターフェロンアルファ-n3、ベラタセプト、経皮インスリンパッチ、AMG-531、MBP-8298、キセレセプト、オペバカン、AIDSVAX、GV-1001、リンホスキャン、ランピルナーゼ、リポキシサン、ルスプルチド、MP52、シプリューセル-T、CTP-37、インセジア、ビテスペン、ヒトトロンビン、トロンビン、TransMID、アルフィメプラーゼ、プリカーゼ、テルリプレシン、EUR-1008M、組換えFGF-I、BDM-E、ロチガプチド、ETC-216、P-113、MBI-594AN、デュラマイシン、SCV-07、OPI-45、エンドスタチン、アンジオスタチン、ABT-510、ボウマンバーク阻害剤、XMP-629、99mTc-Hynic-アネキシンV、カハラリドF、CTCE-9908、テベレリクス、オザレリクス、ロミデプシン(rornidepsin)、BAY-504798、インターロイキン4、PRX-321、ペップスキャン、イボクタデキン、rhラクトフェリン、TRU-015、IL-21、ATN-161、シレンギチド、アルブフェロン、ビファシクス、IRX-2、オメガインターフェロン、PCK-3145、CAP-232、パシレオチド、huN901-DM1、SB-249553、オンコバックス-CL、オンコバックス-P、BLP-25、セルバックス-16、MART-1、gp100、チロシナーゼ、ネミフィチド、rAAT、CGRP、ペグスネルセプト、サイモシンベータ4、プリチデプシン、GTP-200、ラモプラニン、GRASPA、OBI-1、AC-100、サケカルシトニン(エリゲン)、エキサモレリン、カプロモレリン、カルデバ、ベラフェルミン、131I-TM-601、KK-220、T-10、ウラリチド、デペレスタット、ヘマタイド、クリサリン、rNAPc2、組換え第VIII因子(PEG化リポソーム)、bFGF、PEG化組換えスタフィロキナーゼバリアント、V-10153、ソノリシスプロリーゼ、ニューロバックス、CZEN-002、rGLP-1、BIM-51077、LY-548806、エキセナチド(徐放性、メディソルブ)、AVE-0010、GA-GCB、アボレリン、ACM-9604、リナクロチド酢酸塩、CETi-1、ヘモスパン、VAL、速効性インスリン(注射剤、ヴィアデル)、インスリン(エリゲン)、組換えメチオニルヒトレプチン、ピトラキンラ、マルチカイン、RG-1068、MM-093、NBI-6024、AT-001、PI-0824、Org-39141、Cpn10、タラクトフェリン、rEV-131、rEV-131、組換えヒトインスリン、RPI-78M、オプレルベキン、CYT-99007 CTLA4-Ig、DTY-001、バラテグラスト、インターフェロンアルファ-n3、IRX-3、RDP-58、タウフェロン、胆汁酸塩刺激リパーゼ、メリスパーゼ、アラリン(alaline)ホスファターゼ、EP-2104R、メラノタン-II、ブレメラノチド、ATL-104、組換えヒトマイクロプラスミン、AX-200、SEMAX、ACV-1、Xen-2174、CJC-1008、ダイノルフィンA、SI-6603、LAB GHRH、AER-002、BGC-728、ALTU-135、組換えノイラミニダーゼ、Vacc-5q、Vacc-4x、Tatトキソイド、YSPSL、CHS-13340、PTH(1-34)(ノバソーム)、オスタボリン-C、PTHアナログ、MBRI-93.02、MTB72F、MVA-Ag85A、FARA04、BA-210、組換えペストF1V、AG-702、OxSODrol、rBetV1、Der-p1/Der-p2/Der-p7、PR1ペプチド抗原、変異体rasワクチン、HPV-16 E7リポペプチドワクチン、ラビリンチン、WT1-ペプチド、IDD-5、CDX-110、ペントリス、ノレリン、CytoFab、P-9808、VT-111、イクロカプチド、テルベルミン、ルピントリビル、レティキュロース、rGRF、HA、アルファ-ガラクトシダーゼA、ACE-011、ALTU-140、CGX-1160、アンジオテンシン、D-4F、ETC-642、APP-018、rhMBL、SCV-07、DRF-7295、ABT-828、ErbB2特異的免疫毒素、DT3SSIL-3、TST-10088、PRO-1762、コンボトックス、コレシストキニン-B/ガストリン受容体結合ペプチド、111In-hEGF、AE-37、トラスツズマブ(trasnizumab)-DM1、アンタゴニストG、IL-12、PM-02734、IMP-321、rhIGF-BP3、BLX-883、CUV-1647、L-19ベースra、Re-188-P-2045、AMG-386、DC/I540/KLH、VX-001、AVE-9633、AC-9301、NY-ESO-1(ペプチド)、NA17.A2ペプチド、CBP-501、組換えヒトラクトフェリン、FX-06、AP-214、WAP-8294A2、ACP-HIP、SUN-11031、ペプチドYY[3-36]、FGLL、アタシセプト、BR3-Fc、BN-003、BA-058、ヒト副甲状腺ホルモン1-34、F-18-CCR1、AT-11
00、JPD-003、PTH(7-34)(ノバソーム)、デュラマイシン、CAB-2、CTCE-0214、グリコペグ化エリスロポエチン、EPO-Fc、CNTO-528、AMG-114、JR-013、第XIII因子、アミノカンジン、PN-951、716155、SUN-E7001、TH-0318、BAY-73-7977、テベレリクス、EP-51216、hGH、OGP-I、シフビルチド、TV4710、ALG-889、Org-41259、rhCC10、F-991、チモペンチン、r(m)CRP、肝臓選択性インスリン、スバリン、L19-IL-2融合タンパク質、エラフィン、NMK-150、ALTU-139、EN-122004、rhTPO、トロンボポエチン受容体アゴニスト、AL-108、AL-208、神経成長因子アンタゴニスト、SLV-317、CGX-1007、INNO-105、テリパラチド(エリゲン)、GEM-OS1、AC-162352、PRX-302、LFn-p24融合、EP-1043、gpE1、gpE2、MF-59、hPTH(1-34)、768974、SYN-101、PGN-0052、アビスクムミン、BIM-23190、マルチエピトープチロシナーゼペプチド、エンカスチム、APC-8024、GI-5005、ACC-001、TTS-CD3、血管標的化TNF、デスモプレシン、オネルセプト、及びTP-9201である。
【0096】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、アダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード(商標))、リツキシマブ(リツキサン(商標)/マブセラ(商標))、エタネルセプト(エンブレル(商標))、ベバシズマブ(アバスチン(商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標))、ペグフィルグラスチム(pegrilgrastim)(ニューラスタ(商標))、又はバイオシミラー及びバイオベターを含む、任意の他の適切なポリペプチドである。
【0097】
他の適切なポリペプチドは、下記及び米国特許出願公開第2016/0097074号の表1に列挙されるものである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0098】
実施形態において、ポリペプチドは、ホルモン、血液凝固(clotting)因子/血液凝固(coagulation)因子、サイトカイン/成長因子、抗体分子、融合タンパク質、タンパク質ワクチン、又は表2に示すようなペプチドである。
【0099】
本明細書に記載の方法を使用して産生させることができる、代表的な組換え産物としては、下記の表に提供するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0101】
実施形態において、タンパク質は、多重特異性タンパク質、例えば、表3に示すような二重特異性抗体である。
【0102】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0103】
実施形態において、産物は、表4に列挙されるポリペプチドである。
【0104】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【0105】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、がん細胞によって発現される抗原である。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチド又は治療用ポリペプチドは、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原である。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチド又は治療用ポリペプチドは、HER2、CD20、9-O-アセチル-GD3、βhCG、A33抗原、CA19-9マーカー、CA-125マーカー、カルレティキュリン、カルボアンヒドラーゼIX(MN/CA IX)、CCR5、CCR8、CD19、CD22、CD25、CD27、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD63、CD70、CC123、CD138、癌胚抗原(CEA;CD66e)、デスモグレイン4、E-カドヘリンネオエピトープ、エンドシアリン、エフリンA2(EphA2)、上皮性成長因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、ErbB2、胎児アセチルコリン受容体、線維芽細胞活性化抗原(FAP)、フコシルGM1、GD2、GD3、GM2、ガングリオシドGD3、Globo H、糖タンパク質100、HER2/neu、HER3、HER4、インスリン様成長因子受容体1、ルイス-Y、LG、Ly-6、メラノーマ特異的コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSCP)、メソテリン、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、MUC16、ミュラー管抑制物質(MIS)受容体タイプII、形質細胞抗原、ポリSA、PSCA、PSMA、ソニックヘッジホッグ(SHH)、SAS、STEAP、sTn抗原、TNF-アルファ前駆体、及びこれらの組合せから選択される。
【0106】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、活性化受容体であり、2B4(CD244)、α4β1インテグリン、β2インテグリン、CD2、CD16、CD27、CD38、CD96、CDlOO、CD160、CD137、CEACAMl(CD66)、CRTAM、CSl(CD319)、DNAM-1(CD226)、GITR(TNFRSF18)、活性型のKIR、NKG2C、NKG2D、NKG2E、1つ又は複数の自然細胞毒性受容体、NTB-A、PEN-5、及びこれらの組合せから選択され、任意選択で、β2インテグリンは、CD11a-CD18、CD11b-CD18、又はCD11c-CD18を含み、任意選択で、活性型のKIRは、KlR2DSl、KIR2DS4、又はKIR-Sを含み、任意選択で、自然細胞毒性受容体は、NKp30、NKp44、NKp46、又はNKp80を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抑制性受容体であり、KIR、ILT2/LIR-1/CD85j、抑制型のKIR、KLRG1、LAIR-1、NKG2A、NKR-P1A、Siglec-3、Siglec-7、Siglec-9、及びこれらの組合せから選択され、任意選択で、抑制型のKIRは、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR3DL1、KIR3DL2、又はKIR-Lを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、活性化受容体であり、CD3、CD2(LFA2、OX34)、CD5、CD27(TNFRSF7)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD40L、CD84(SLAMF5)、CD137(4-1BB)、CD226、CD229(Ly9、SLAMF3)、CD244(2B4、SLAMF4)、CD319(CRACC、BLAME)、CD352(Ly108、NTBA、SLAMF6)、CRTAM(CD355)、DR3(TNFRSF25)、GITR(CD357)、HVEM(CD270)、ICOS、LIGHT、LTβR(TNFRSF3)、OX40(CD134)、NKG2D、SLAM(CD150、SLAMF1)、TCRα、TCRβ、TCRδγ、TIM1(HAVCR、KIM1)、及びこれらの組合せから選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抑制性受容体であり、PD-1(CD279)、2B4(CD244、SLAMF4)、B71(CD80)、B7H1(CD274、PD-L1)、BTLA(CD272)、CD160(BY55、NK28)、CD352(Ly108、NTBA、SLAMF6)、CD358(DR6)、CTLA-4(CD152)、LAG3、LAIR1、PD-1H(VISTA)、TIGIT(VSIG9、VSTM3)、TIM2(TIMD2)、TIM3(HAVCR2、KIM3)、及びこれらの組合せから選択される。
【0110】
他のタンパク質の例示としては、Leaderら、「タンパク質治療:概要及び薬理学的分類(Protein therapeutics:a summary and pharmacological classification)」、Nature Reviews Drug Discovery、2008年、7巻:21~39頁の表1~10(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の任意のタンパク質;又は本明細書に記載の組換えポリペプチドの、任意の結合体、バリアント、アナログ若しくは機能性フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
他の組換えタンパク質産物としては、限定されないが、DARPins、アフィボディ及びアドネクチン等の、非抗体スカフォールド又は代替タンパク質スカフォールドが挙げられる。このような非抗体スカフォールド又は代替タンパク質スカフォールドは、1つ若しくは2つ、又はそれ以上、例えば1、2、3、4若しくは5、又はそれ以上の、異なる標的或いは抗原を、認識又は結合するように遺伝子操作することができる。
【0112】
一実施形態において、本明細書に記載の、産物、例えば、ポリペプチド、例えば、組換えポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターは、選択マーカーをコードする核酸配列を更に含む。一実施形態において、選択マーカーは、グルタミン合成酵素(GS);ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、例えば、メトトレキサート(MTX)に対する耐性を付与する酵素;プロリン又は抗生物質マーカー、例えば、ハイグロマイシン、ネオマイシン(G418)、ゼオシン、ピューロマイシン又はブラストサイジン等の抗生物質に対する耐性を付与する酵素を含む。別の実施形態において、選択マーカーは、Selexis選択システム(例えば、SUREtechnology Platform(商標)及びSelexis Genetic Elements(商標)、Selexis SAから市販)又はCatalant選択システムを含むか、又はこれらに適合するものである。
【0113】
一実施形態において、本明細書に記載の組換え産物をコードする核酸配列を含むベクターは、本明細書に記載の組換え産物をコードする核酸を含む、細胞(単数又は複数)を特定するのに有用な選択マーカーを含む。別の実施形態において、選択マーカーは、本明細書に記載のように、ゲノムへの組換え産物をコードする核酸配列の組み込みを含む細胞(単数又は複数)を特定するのに有用である。組換えタンパク質をコードする核酸配列が組み込まれた細胞(単数又は複数)の特定は、産物を安定的に発現する、細胞又は細胞系を選択及び遺伝子操作するために有用であり得る。
【0114】
一実施形態において、産物は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個以下のアミノ酸残基が、表1~表4のポリペプチドと異なる。別の実施形態において、産物は、そのアミノ酸残基の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%又は15%以下が、表2又は表3のポリペプチドと異なる。同一性パーセントを決定するための方法は、上記で議論されている。
【0115】
他の組換え産物としては、限定されないが、DARPins、アフィボディ及びアドネクチン等の、非抗体スカフォールド又は代替タンパク質スカフォールドが挙げられる。
【0116】
他の治療用タンパク質又は診断用タンパク質の例示としては、Leaderら、「タンパク質治療:概要及び薬理学的分類(Protein therapeutics:a summary and pharmacological classification)」、Nature Reviews Drug Discovery、2008年、7巻:21~39頁の表1~10に記載、及びWalsh、「バイオ医薬品のベンチマーク2014(Biopharmaceutical benchmarks 2014)」、Nature Biotechnology、2014年、32巻:992~1000頁(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)に記載の任意のタンパク質;又は本明細書に記載の組換えポリペプチドの、任意の結合体、バリアント、アナログ若しくは機能性フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
酸化及び還元
電子が、化合物から供与又は除去される、還元及び酸化反応(酸化還元反応)は、生物系において一般的である。設定された条件下、酸化還元反応において、電子を与える傾向、又は電子を獲得する傾向は、化合物の酸化還元電位によって説明することができる。酸化還元電位(ΔE)は、ボルト(V)又はミリボルト(mV)で測定される。酸化還元電位は、個々の化合物、例えば、タンパク質について、計算することができ、その場合において、酸化還元電位は、電子に対する化合物の親和性を説明し;酸化還元電位が、より正であれば、電子を獲得する傾向が大きくなり、酸化還元電位が、より負であれば、電子を与える傾向が大きくなる。化合物に加えて、溶液、細胞小器官、及び細胞は、酸化還元電位として表される電子を獲得又は失うそれらの傾向を有することもできる。
【0118】
細胞は、いくつかの系を使用して、それらの酸化還元電位を調整する。ヒトにおけるチオレドキシン系は、Trx1及びTrx2の2つのタンパク質を含む。Trxタンパク質は、低い酸化還元電位を有し、タンパク質のジスルフィド結合を還元し、この還元反応は、NADPHからの電子を使用する、チオレドキシン還元酵素(TrxR)によって触媒される。
Trx-S2+NADPH+H+→Trx-(SH)2+NADP+
タンパク質-S2+Trx-(SH)2→タンパク質-(SH)2+Trx-S2
グルタレドキシン系は、グルタレドキシン、グルタチオン及びNADPH依存性グルタチオン還元酵素で構成される。グルタレドキシン系は、グルタチオンを使用して、タンパク質のジスルフィド結合を還元し、これは、NADPHの消費によって、その還元状態に戻る。グルタレドキシンは、ジチオール機構の
R-S2+Grx-(SH)2→R-(SH)2+Grx-S2
Grx-S2+2GSH→Grx-(SH)2+GSSG
又は、モノチオール機構の
R-S-SG+Grx(SH)2→R-SH+Grx-S-SG
Grx-S-SG+GSH→Grx-(SH)2+GSSG
のいずれかによって、タンパク質のチオール基を還元する。
【0119】
酸化還元反応、電位、及び酸化還元反応/電位を調整又は制御する方法に対する更なる情報については、以下を参照のこと:例えば、Holmgrenら、Biochem Soc Trans.2005年12月;33巻(Pt6):1375~7頁;Nordberg及びArner、Free Radic Biol Med.2001年12月1日;31巻(11号):1287~312頁;Ghezzi P.、Biochem Soc Trans.2005年12月;33巻(Pt6):1378~81頁;Ivarssonら、Diabetes.2005年7月;54巻(7号):2132~42頁;Sen,CK.、Biochem Pharmacol 55巻(11号)、1747~1758頁、1998年6月1日;及びMayら、J Biol Chem.1997年9月5日;272巻(36号):22607~10頁;Molteni,S.N.ら、(2004年)、「グルタチオンは、小胞体においてEro1依存性酸化を制限する(Glutathione limits Ero1-dependent oxidation in the endoplasmic reticulum)」、Journal of Biological Chemistry 279巻(31号):32667~32673頁;Kojer,K.及びJ.Riemer(2014年)、「酸化的タンパク質フォールディングのバランシング:ジスルフィド結合の形成に対する還元経路の影響(Balancing oxidative protein folding:The influences of reducing pathways on disulfide bond formation)」、Biochimica et Biophysica Acta-Proteins and Proteomics 1844巻(8号):1383~1390頁;Hanschmann,E.-M.ら(2013年)、「チオレドキシン、グルタレドキシン及びペルオキシレドキシン-分子機構及び健康上の重要性:酸化還元シグナル伝達に対する、補助因子から抗酸化剤まで(Thioredoxins、Glutaredoxins、and Peroxiredoxins-Molecular Mechanisms and Health Significance:from Cofactors to Antioxidants to Redox Signaling)」、Antioxidants & Redox Signaling 19巻(13号):1539~1605頁;Chakravarthi,S.ら(2006年)、「ジスルフィド結合形成におけるグルタチオンの役割及び小胞体が発生する酸化的ストレス(The role of glutathione in disulphide bond formation and endoplasmic-reticulum-generated oxidative stress)」、EMBO Reports 7巻(3号):271~275頁;Flohe,L.(2013年)、「GSSG/GSH酸化還元電位の作り話(The fairytale of the GSSG/GSH redox potential)」、Biochimica et Biophysica Acta-General Subjects 1830巻(5号):3139~3142頁;並びにBanhegyi,G.ら(2007年)、「酸化還元におけるストレス(Stress on redox)」、FEBS Letters 581巻(19号):3634~3640頁、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
酸化還元電位は、細胞によって用いられる酸化還元調節系とは独立して、調節することができる。例えば、溶液中の酸素のレベルを調節することによって、化合物、例えば、産物、例えば、タンパク質の酸化還元電位を調節することができる。溶液中の酸素のレベルを増加させると、例えば、溶液を酸化に有利にすると、産物、例えば、タンパク質の酸化還元電位が増加する。産物、例えば、タンパク質の酸化還元電位を増加させると、産物、例えば、タンパク質のジスルフィド結合が、より低い酸化還元電位で、産物、例えば、タンパク質に対して、還元される可能性が減少し得る。
【0121】
産生の適用
本明細書に開示の、産物、例えば、産物のバリアントの調製の方法は、様々な産物を産生させるため、様々な細胞系を評価するため、或いはバイオリアクター又は処理容器若しくはタンク中での使用のための様々な細胞系の産物を評価するため、或いはより一般的には、任意の供給源と共に、使用することができる。本明細書に記載の、デバイス、施設及び方法は、原核細胞系及び/又は真核細胞系を含む、あらゆる所望の細胞系を培養するために適切である。更に、実施形態において、本デバイス、施設及び方法は、懸濁液細胞又は足場依存性(接着)細胞を培養するために適切であり、ポリペプチド産物若しくは細胞等の医薬品及びバイオ医薬品の生産、並びに/又は細胞治療及び/若しくはウイルス治療で使用されるものなどのウイルスの生産のために構成される産生操作のために適切である。
【0122】
言及するように、実施形態において、デバイス、施設及び方法は、真核細胞、例えば、哺乳類細胞、若しくは、例えば、酵母細胞、糸状菌細胞等の下等な真核細胞、又はグラム陽性細胞若しくはグラム陰性細胞等の原核細胞、並びに/或いは真核細胞又は原核細胞の産物、例えば、大規模な方法での真核細胞によって合成される、タンパク質、ペプチド、抗体、アミノ酸の産生を可能にする。本明細書において特に明記しない限り、本デバイス、施設及び方法は、限定されないが、ベンチスケール、パイロットスケール及び実生産スケールの能力を含む、あらゆる所望の量又は生産能力を含むことができる。
【0123】
また、本明細書において特に明記しない限り、本デバイス、施設及び方法は、限定されないが、撹拌タンク、エアリフト、ファイバー、マイクロファイバー、ホローファイバー、セラミックマトリックス、流動床、固定床、及び/又は噴流床のバイオリアクターを含む、あらゆる適切なリアクター(単数又は複数)を含むことができる。本明細書で使用される場合、「リアクター」又は「バイオリアクター」は、発酵槽若しくは発酵ユニット、又はその他の反応容器を含むことができ、「リアクター」及び「バイオリアクター」という用語は、「発酵槽」と互換的に使用される。例えば、いくつかの態様において、バイオリアクターユニットは、以下の、1つ若しくは複数、又は全ての機能を果たすことができる:栄養源及び/又は炭素源の供給、適切なガス(例えば、酸素)の注入、発酵又は細胞培養培地の入口流及び出口流、気相及び液相の分離、温度の維持、酸素及びCO2レベルの維持、pHレベルの維持、かき混ぜ(例えば、撹拌)、並びに/或いは洗浄/無菌化。発酵ユニットなどのリアクターユニットの例は、ユニット内に複数のリアクターを含んでいてもよく、例えば、ユニットは、それぞれのユニットにおいて、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90若しくは100、又はそれ以上のバイオリアクターを有することができ、及び/或いは施設は、施設内に、単一のリアクター又は複数のリアクターを有する複数のユニットを含んでいてもよい。様々な実施形態において、バイオリアクターは、バッチ、セミフェドバッチ、フェドバッチ、灌流、及び/又は連続発酵プロセスのために適切であり得る。あらゆる適切なリアクターの直径を使用することができる。実施形態において、バイオリアクターは、約100mLから約50,000Lの間の容積を有することができる。非限定的な例として、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル及び/又は50,000リットルの容積が挙げられる。加えて、適切なリアクターは、複数回使用、単回使用、使い捨て、又は非使い捨てであり得、ステンレス鋼(例えば、316L又はその他の適切なステンレス鋼)及びインコネル等の金属合金、プラスチック並びに/又はガラスを含む、あらゆる適切な材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、適切なリアクターは、円形、例えば、円筒状であり得る。いくつかの実施形態において、適切なリアクターは、四角形、例えば、長方形であり得る。場合によっては、四角形のリアクターは、使いやすさ(例えば、当業者による、投入及び設定)、反応器の内容物のより大きな混合及び均一性、並びにより少ないフロア設置面積等の、円形リアクターを上回る利点を提供し得る。
【0124】
実施形態において、本明細書において特に明記しない限り、調製物を作る方法で使用するための本明細書に記載の、デバイス、施設及び方法は、このような産物の分離、精製及び単離のための操作並びに/又は設備等の、他に言及されていないあらゆる適切なユニットの操作並びに/又は設備を含むこともできる。伝統的な現場組み立て施設、モジュール式、移動式及び一時的な施設、又はその他の適切な建造物、施設及び/若しくはレイアウト等の、あらゆる適切な施設及び環境を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、モジュール式のクリーンルームを使用することができる。加えて、特に明記しない限り、本明細書に記載の、デバイス、システム及び方法は、単一の場所若しくは施設において、収容及び/又は機能を果たすことができ、或いは別々若しくは複数の場所及び/又は施設において、収容及び/又は機能を果たすことができる。
【0125】
非限定的な例として、限定されるものではないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0280797号;米国特許出願公開第2012/0077429号;米国特許出願公開第2011/0280797号;米国特許出願公開第2009/0305626号;並びに米国特許第8,298,054号;米国特許第7,629,167号;及び米国特許第5,656,491号は、適切であり得る、施設、設備及び/又はシステムの例を記載している。
【0126】
バイオリアクターの設定及び条件
一態様において、本開示のバイオリアクター又は本開示の方法によって利用されるバイオリアクターは、単回使用のバイオリアクターである。
【0127】
単回使用のバイオリアクターは、バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含んでいてもよい。
【0128】
一実施形態において、本開示は、バイオプロセス容器を含むバイオリアクターを対象とする。バイオプロセス容器は、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料から作られる。例えば、バイオプロセス容器は、多層フィルム等の柔軟性のフィルムから作られ得る。一実施形態において、例えば、フィルムは、親水性表面を形成するために変性された低密度ポリエチレン等のポリエチレンポリマーを含む。親水性表面は、バイオリアクター内の細胞培養物と接触するためであり、湿潤性を改善する。一実施形態において、ポリエチレンポリマーは、放射線照射、光誘導若しくはプラズマ誘導、又は酸化に付されることによって変性される。
【0129】
バイオプロセス容器は、頂部、底部、及びそれらの間の少なくとも1つの側壁を有することができる。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定することができる。中空の筐体は、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル及び/又は50,000リットル等のあらゆる適切な容積を有することができる。
【0130】
バイオリアクターは、バイオプロセス容器の中空の筐体中へ材料を供給するための少なくとも1つの入口を含むことができる。少なくとも1つのかき混ぜ機と連結された回転可能シャフトを含む混合デバイスは、バイオプロセス容器の中空の筐体中に伸びることができる。1つの実施形態において、回転可能シャフトは、折り畳み可能であり得る。例えば、回転可能シャフトは、回転シャフトの方に折り畳み可能又は折り畳み式である、親水性ポリマー材料から作られた、少なくとも1つのインペラを含むことができる。
【0131】
バイオリアクターは、バイオプロセス容器の側壁に隣接して長手方向に伸びるように構成された、少なくとも1つのバッフルを含むこともできる。バッフルは、混合デバイスによる培養培地の混合の間に、中空の筐体中の流体の流れに影響を与えるのに十分な量で、側壁から半径方向に内側に伸びる形状を有することができる。バッフルは、折り畳み可能及び/又は折り畳み式であり得る。一実施形態において、例えば、バッフルは、バッフルを膨張及び収縮させることを可能にする、空気注入式の流体袋を画定することができる。バッフルは、バイオプロセス容器と一体にすることができ、バッフルが、柔軟な形状形成材料で形成されることを意味する。或いは、バッフルは、バイオプロセス容器から分離することができる。バッフルは、中空の筐体の内側に設置されるように構成することができ、又は中空の筐体の外側に設置することができる。中空の筐体の外側に設置する場合、バイオプロセス容器の側壁は、バッフルの形状の周りに合わせる。例えば、一実施形態において、バッフルは、金属シェルの外側に、取り外し可能に取り付けることができる。バイオプロセス容器は、バッフルの形状の周りに合わせるために、金属シェル中に設置することができる。一実施形態において、バイオリアクターは、バイオプロセス容器の中空の筐体の外周の周りに間隔をあけて、約2個から約6個のバッフルを含むことができる。
【0132】
一実施形態において、バイオプロセス容器は、ある一定の直径を有し、1つ又は複数のバッフルは、半径方向内側にバイオプロセス容器の直径の約3%から約20%まで、例えば、約5%から約15%までのある一定の距離伸びる。
【0133】
バイオリアクターは、少なくとも1つのスパージャーを更に含むことができる。例えば、スパージャーは、長手方向部分及び側面部分を有するガスチューブを含む、バラストスパージャーを含んでいてもよい。長手方向部分は、バイオプロセス容器の中空の筐体中に、垂直に伸びることができる。一方、側面部分は、かき混ぜ機の下側の長手方向部分の末端に位置することができる。側面部分は、バイオプロセス容器内に含まれる培養培地中にガスを放出するための複数の孔を画定することができる。一実施形態において、複数の孔は、穿孔される。側面部分は、あらゆる適切な形状を有することができる。一実施形態において、側面部分は、シャフトを安定させるために、混合デバイスの回転可能シャフトと係合するように構成することができる。回転可能シャフトは、側面部分まで伸びていてもよく、又は側面部分に形成されたシャフト受け部材内に収容され得る。
【0134】
一実施形態において、バイオリアクターは、第1の表面下部のスパージャー、及び第2の表面上部のスパージャーを含む。表面下部のスパージャー中の複数の孔は、表面上部のスパージャーの複数の孔よりも、大きくても小さくてもよい。一実施形態において、複数の孔は、穿孔される。
【0135】
一実施形態において、バイオリアクターは、バイオプロセス容器へ流体を供給するために、中空の筐体に伸びる少なくとも1つの供給ラインを含むことができる。供給ラインは、かき混ぜ機に隣接して設置される、表面下部の流体出口を含むことができる。流体出口は、流体が、流体出口から流出することのみを可能にし、反対方向への流体の流れを防止する、流体制御デバイスと関連付けることができる。例えば、流体制御デバイスは、一方向弁を含んでいてもよい。
【0136】
別の実施形態において、バイオリアクターは、バイオプロセス容器の頂部に配置される供給ラインを含むことができる。供給ラインは、バイオプロセス容器中に存在する培養培地の容積の上に配置される表面上部の流体排出を含む。表面上部の流体排出は、流体排出を通じて流れる流体が、バイオプロセス容器内に含まれる培養培地と直接接触するように、位置し得る。一実施形態において、かき混ぜ機は、回転すると円周を形成することができ、供給ラインの表面上部の流体排出は、流体排出を通じて流れる流体が、円周内の培養培地と接触するように、かき混ぜ機の円周の上に配置され得る。
【0137】
バイオリアクターは、中空の筐体内に含まれる培養培地の集合を示すために、ロードセルと操作的に関連して設置され得る。バイオプロセス容器の底部は、排出を容易にするためのドーム形状を有することができる。例えば、バイオプロセス容器は、バイオプロセス容器の底部に位置する排水ラインを含むことができる。流体収集デバイスは、バイオプロセス容器の中空の筐体と排水ラインとの中間に配置され得る。流体収集デバイスは、バイオプロセス容器から排水ラインへの流体の渦流れを誘導するように構成された形状を有することができる。一実施形態において、排水ラインは、中空の筐体の容積に比例する断面積を有する。例えば、例示の目的で、排水ラインは、中空の筐体の容積1リットル当たり、約0.3mm2から約0.7mm2まで、例えば、約0.4mm2から約0.6mm2までの断面積を有することができる。
【0138】
一実施形態において、バイオプロセス容器は、バイオプロセス容器に流体を供給するための複数の補給ラインに接続するための複数の出入口を含むことができる。それぞれの出入口及び対応する補給ラインは、補給ラインをそれぞれの出入口に接続するために、ユーザを助けるためのマッチング指示を含むことができる。例えば、マッチング指示は、それぞれの出入口及び対応する補給ラインが色分けされるような、色を含んでいてもよい。マッチング表示は、供給ライン及び任意の対応する出入口、並びにスパージャー及び任意の対応するコネクタに適用することもできる。
【0139】
一実施形態において、バイオプロセス容器は、汎用コネクタを含む出入口を含むことができる。出入口は、第1の末端及び第2の末端を有することができる。第1の末端は、それぞれの補給ラインへの再接続可能なアタッチメントを形成するためのものであり得る。それぞれの補給ラインは、対応する出入口の上流に配置される流体フィルターを含むことができる。
【0140】
本開示はまた、バイオリアクターシステムを対象とする。バイオリアクターシステムは、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料から作られた、バイオプロセス容器を含むことができる。バイオプロセス容器は、頂部、底部、及びそれらの間の少なくとも1つの側壁を有することができる。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定することができる。バイオプロセス容器は、中空の筐体中へ材料を供給するための複数の入口を含むこともできる。排水ラインは、流体を排出するために、バイオプロセス容器の底部に配置され得る。混合デバイスは、バイオプロセス容器の中空の筐体中に伸びることができ、少なくとも1つのかき混ぜ機と連結された回転可能シャフトを含むことができる。
【0141】
バイオリアクターシステムは、中空の筐体内で少なくとも1つのパラメーターを監視するために、バイオプロセス容器と操作的に関連する、少なくとも1つのセンサーを更に含むことができる。少なくとも1つのセンサーは、pHセンサー、溶存二酸化炭素センサー、溶存酸素センサー、酸化還元センサー、ロードセル、温度センサー、又はタコメーターを含むことができる。制御器は、少なくとも1つのセンサーと通信するように設置することができる。制御器は、少なくとも1つのセンサーから情報を受信して、情報に基づいて、予め設定された限度内で、中空の筐体内に含まれる培養培地の少なくとも1つのパラメーターを維持するための、バイオプロセス容器の流体補給から中空の筐体への流体の流速を変化させるために、流体補給を制御するように構成することができる。
【0142】
例えば、一実施形態において、バイオリアクターシステムは、バイオプロセス容器と流体連通して二酸化炭素ガス補給を含むことができ、及びバイオプロセス容器と流体連通して液体アルカリ補給も含むことができる。少なくとも1つのセンサーは、pHセンサーを含むことができ、制御器は、選択的にpHを低下させるために二酸化炭素ガス補給からの二酸化炭素ガスの量を添加することによって、又は、選択的にpHを増加させるために液体アルカリ補給からのアルカリの量を添加することによって、予め設定された限度内で、培養培地のpHレベルを調整するように構成することができる。一実施形態において、システムは、両方とも制御器と通信する、第1のpHセンサー及び第2のpHセンサーを含むことができる。
【0143】
また別の実施形態において、バイオリアクターシステムは、酸素ガス補給を含むことができ、少なくとも1つのセンサーは、溶存酸素センサーを含むことができる。制御器は、溶存酸素センサーから受信した情報に基づいて、酸素ガス補給から培養培地に酸素ガスの量を定期的に添加することよって、予め設定された限度内で、培養培地内の溶存酸素レベルを調整することができる。
【0144】
更に別の実施形態において、バイオリアクターシステムは、二酸化炭素ガス補給を含むことができ、少なくとも1つのセンサーは、溶存二酸化炭素センサーを含むことができる。制御器は、溶存二酸化炭素センサーから受信した情報に基づいて、二酸化炭素ガス補給から培養培地に二酸化炭素ガスの量を定期的に添加することよって、予め設定された限度内で、培養培地内の溶存二酸化炭素レベルを調整するように構成することができる。
【0145】
更に別の実施形態において、バイオリアクターシステムは、バイオプロセス容器を囲む熱ジャケットを含むことができる。熱ジャケットは、少なくとも1つの加熱された流体又は冷却された流体との流体連通であり得る。バイオリアクターシステムは、バイオプロセス容器内に含まれる培養培地の温度を感知するための温度センサーを更に含むことができる。温度センサーは、制御器と通信することができる。制御器は、温度センサーからの情報を受信して、情報に基づいて、予め設定された温度の限度内で、培養培地を維持するために、バイオプロセス容器に含まれる培養培地の温度を上昇又は低下させるための熱ジャケットへの流体の流れを制御するように構成することができる。
【0146】
別の実施形態において、バイオリアクターシステムは、少なくとも1つのかき混ぜ機に連結された回転可能シャフトの回転速度を監視するためのタコメーターを更に含むことができる。タコメーターは、制御器と通信することができる。制御器は、シャフトを回転させるモーターと通信することができる。制御器は、タコメーターから受信した情報に基づいて、予め定められた速度でシャフトを回転させる方法でモーターを制御するように構成することができる。
【0147】
制御器は、1つ又は複数のマイクロプロセッサを含んでいてもよい。
【0148】
一実施形態において、制御器は、バイオリアクター内の複数のパラメーターを制御するために、複数のセンサーからの情報を受信するように構成することができる。
【0149】
一実施形態において、上記の1つ又は複数のセンサーは、バイオプロセス容器に組み込むことができ、バイオプロセス容器と共に使い捨てすることができる。
【0150】
本開示はまた、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料から作られた、バイオプロセス容器を含むバイオリアクターを対象とする。バイオプロセス容器は、頂部、底部、及びそれらの間の少なくとも1つの側壁を有することができる。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定することができる。少なくとも1つの供給ラインは、バイオプロセス容器へ流体を供給するために、中空の筐体中に伸びることができる。
【0151】
一実施形態において、供給ラインは、かき混ぜ機に隣接して設置される、表面下部の流体出口を含む。流体出口は、流体が、流体出口から流出することのみを可能にし、反対方向への流体の流れを防止する、流体制御デバイスと関連付けることができる。
【0152】
代替の実施形態において、供給ラインは、バイオプロセス容器中に存在する培養培地の容積の上に配置される表面上部の流体排出を含むことができる。表面上部の流体排出は、流体排出を通じて流れる流体が、側壁に接触することなく、バイオプロセス容器内に含まれる培養培地と直接接触するように、位置し得る。
【0153】
一実施形態において、バイオリアクターは、表面下部の流体出口を含む第1の供給ライン、及び表面上部の流体排出を含む第2の供給ラインを含むことができる。一実施形態において、バイオリアクターは、表面上部の流体排出を有する、約1から約5まで、例えば、約2から約3までの供給ラインを含むことができる。
【0154】
また別の実施形態において、本開示は、単回使用のバイオリアクターを作成するための方法を対象とする。本方法は、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料からバイオプロセス容器を構成するステップを含む。バイオプロセス容器は、頂部、底部、及びそれらの間の少なくとも1つの側壁を有する。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定する。中空の筐体は、約1~250ミリリットル、250ミリリットルから50リットルまで、50リットルから800リットルまで、又は800~200,000リットルの容積を有することができる。バイオプロセス容器は、バイオプロセス容器の中空の筐体中へ材料を供給するための複数の入口を含む。それぞれの入口は直径を有する。
【0155】
混合デバイスは、中空の筐体中に挿入される。混合デバイスは、少なくとも1つのかき混ぜ機と連結された回転可能シャフトを含む。少なくとも1つのスパージャーも、バイオプロセス容器の中空の筐体中に挿入される。スパージャーは、長手方向部分及び側面部分を有するガスチューブを含む。長手方向部分は、中空の筐体中に、垂直に伸びている。側面部分は、かき混ぜ機の下側の長手方向部分の末端に位置する。側面部分は、バイオプロセス容器内に含まれる培養培地中にガスを放出するための複数の孔を画定する。複数の孔は直径を有する。
【0156】
排水ラインは、バイオプロセス容器の底部に接続される。排水ラインは、断面積を有する。
【0157】
本開示によれば、入口の直径、スパージャーの複数の孔の直径、及び排水ラインの断面積は、中空の筐体の容積に比例する。例えば、排水ラインは、中空の筐体の容積1リットル当たり、約0.3mm2から約0.7mm2までの断面積を有することができる。
【0158】
本開示はまた、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料から作られた、バイオプロセス容器を含むバイオリアクターを対象とする。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定することができ、少なくとも1つの入口を含むことができる。複数のかき混ぜ機と連結された回転可能シャフトを含む混合デバイスは、バイオプロセス容器の中空の筐体中に伸びることができる。
【0159】
本開示によれば、バイオリアクターは、バイオプロセス容器の中空の筐体と流体連通する細胞保持チャンバーを更に含むことができる。ろ液出口は、細胞保持チャンバーと流体連通して設置され得る。ろ液出口は、液体に対して透過性であるが、培養培地に含まれる生物由来物質に対して不透過性のバイオフィルターを含む。ろ液出口は、連続的又は定期的に、細胞保持チャンバーから液体を除去するためのものである。流量調整弁は、バイオプロセス容器の中空の筐体と細胞保持チャンバーとの間で、灌流プロセスを行うために、培養培地の流量を交互にするように構成される。
【0160】
例えば、流量調整弁は、加圧ガス源及び真空源と連通することができる。流量調整弁は、バイオプロセス容器の中空の筐体と細胞保持チャンバーとの間で流体を往復させて再循環させるために、細胞保持チャンバーに含まれる流体に、真空又はガス圧力を交互に適用するように構成することができる。
【0161】
一実施形態において、流量調整弁は、細胞保持チャンバーに含まれる流体への、圧力の適用と、吸引力の適用とを交互に行う、往復ダイヤフラムを含むことができる。
【0162】
本開示はまた、液体不透過性及び柔軟性の形状適合性材料から作られた、バイオプロセス容器を含むバイオリアクターを対象とする。バイオプロセスチャンバーは、培養培地を受け入れるための中空の筐体を画定する。少なくとも1つのかき混ぜ機と連結された回転可能シャフトを含む混合デバイスは、バイオプロセス容器の中空の筐体中に伸びることができる。本開示によれば、かき混ぜ機は、回転シャフト上で折り畳み可能であり得る。例えば、かき混ぜ機は、少なくとも1つのブレード要素を含むインペラを含むことができる。ブレード要素は、回転可能シャフトの方に折り畳み式であり得る。一実施形態において、回転可能シャフトは、第1のインペラ及び第2のインペラと連結され、両方のインペラは、折り畳み式の少なくとも1つのブレード要素を含むことができる。保持リングは、シャフト上に配置することができる。保持リングは、混合の間に直立位置に、又はそれぞれ圧潰位置及び折り畳み位置に、かき混ぜ機を保持するための、かき混ぜ機係合位置及びかき混ぜ機係合解除位置を含むことができる。
【0163】
一実施形態において、回転可能シャフトは、シャフトスリーブによって囲まれた金属補強棒を含む。ステンレス鋼製であり得る金属補強棒は、一緒に取り付けられる複数の部品から作ることができる。補強棒の頂部は、モーターと磁気的に係合する磁気部材を含むことができる。シャフトスリーブは、ポリマー材料で構成され得る。シャフト上のかき混ぜ機は、親水性ポリマー等のポリマー材料から作ることもできる。例えば、シャフトスリーブ及びかき混ぜ機は、放射線照射、光若しくはプラズマ誘導、又は酸化に付されることによって変性されたポリエチレンポリマーを含むことができる。
【0164】
一実施形態において、本開示による単回使用のバイオリアクターシステムは、単回使用の細胞培養バイオプロセス容器(「SUB」)、操作の間にSUBを保持する再利用可能なシェル、並びにSUBの操作、及び関連サブシステム及びプロセスを制御する制御器を含む。関連サブシステムは、かき混ぜシステム、バッフルシステム、スパージャーシステム、供給システム、回収システム、監視システム、制御システム(単数又は複数)、及び注入システムを含む。
【0165】
一実施形態において、SUBの表面と接触する細胞培養物及びSUBの表面と接触するプロセス流体のそれぞれは、好ましくは、動物由来成分を含まない。
【0166】
本開示の一態様によれば、単回使用のバイオリアクターが提供される。単回使用のバイオリアクターは、バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含んでいてもよい。
【0167】
本開示の単回使用のバイオリアクターはまた、単回使用のバイオリアクター(SUB)システムと共に使用されてもよい。本システムは、単回使用及び使い捨て用である柔軟なバイオリアクターのバイオプロセス容器、柔軟なバイオリアクターのバイオプロセス容器を保持するように構成されたSUBシェル、かき混ぜ機、スパージャー、複数の出入口、並びにSUBシステムが、同様のサイズのステンレス鋼バイオリアクターで産生することが可能な生体材料に対応する生体材料を産生するように、SUBシステムと関連する複数のパラメーターを制御するように構成された少なくとも1つの制御器を含んでいてもよい。
【0168】
本開示によれば、回転可能シャフトは、頂部インペラ及び底部インペラと連結され得る。頂部インペラ及び底部インペラの両方ともポリマー材料から作られ得る。例えば、一実施形態において、インペラは、3Dプリントされてもよい。頂部インペラ及び底部インペラは、両方とも親水性表面を画定することができる。例えば、インペラを形成するために使用されるポリマー材料は、親水性ポリマーを含むことができ、又は表面を親水性にするように表面改質されたポリマーを含むことができる。
【0169】
一実施形態において、例えば、頂部インペラ及び底部インペラは、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンポリマーから作られる。一実施形態において、低密度ポリエチレンを使用することができる。低密度ポリエチレンは、放射線照射、光若しくはプラズマ誘導、又は酸化に付されることによって変性されて、親水性表面を形成することができる。
【0170】
頂部インペラは、ハイドロフォイルインペラを含むことができる。一方、底部インペラは、4ピッチブレードの高ソリディティインペラを含むことができる。インペラとタンクの直径の比は、約0.35から約0.55まで、例えば、約0.44から約0.46までであり得る。頂部インペラ及び底部インペラは、約0.1から約0.9までの動力数(Np)を有することができ、約0.4から約0.9までの流量数(Nq)を有することができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、本開示のバイオリアクターは、米国特許第9,670,446号に記載のバイオリアクターであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、本開示のバイオリアクターは、米国特許第9,670,446号に記載のバイオリアクターの一部又は特徴を含む。
【0172】
一実施形態において、バイオリアクターは、回収容器と作動可能に連結され得る。回収容器は、例えば、培養物の適正な酸素負荷を確実にするための、培養物及びガスを混合するため(例えば、培養物を通気するため)の手段を含んでいてもよい。一実施形態において、回収容器は、例えば、バイオリアクターから回収容器内に蓄積した上清、及び、ガス、例えば、空気、酸素、又は空気及び酸素の混合物を含むヘッドスペースを含む。一実施形態において、回収容器は、ヘッドスペースのガス、例えば、空気若しくは酸素、又は空気及び酸素のガス混合物を用いて、培養上清を酸素負荷するために、表面通気を使用する。表面通気は、回収容器壁の下方のJチューブ入口から、及びヘッドスペースと接触する上清の液体表面からの、上清の滝状の流れ落ち又は流れに関わる。いくつかの実施形態において、移動又は滝状の流れは、培養物の酸素負荷レベルの増加をもたらす。
【0173】
回収容器は、少なくとも1つのミキサー、ヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、容器壁の方に向かう内側のJチューブを有する少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、少なくとも1つの温度プローブ、少なくとも1つの酸化還元プローブ、少なくとも1つのDOTプローブ、及び少なくとも1つのpHプローブ、少なくとも1つの温度制御、少なくとも1つのガス流、例えば、少なくとも1つの空気流制御及び少なくとも1つのO2流制御を含んでいてもよい。一実施形態において、回収容器は、40%を超える空気飽和度から500%以下までの空気飽和度の範囲でDOTを維持する、空気/O2のヘッドスペースガス混合物を含む。
【0174】
一実施形態において、バイオリアクター又は回収容器は、酸化還元プローブ、例えば、インライン酸化還元プローブ、例えば、Mettler Toledoインライン酸化還元プローブを含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、方法は、培養物若しくは培養物の細胞若しくは培養上清中の酸化還元電位を提供又は維持するための、チオレドキシン又はグルタチオン/グルタレドキシン系の成分の活性/豊富さを、提供するステップ、例えば、添加するステップ、又は調整するステップ、例えば、増加させるステップ若しくは減少させるステップを含み、バイオリアクター又は回収容器は、培養物若しくは培養物の細胞若しくは培養上清中の酸化還元電位を提供又は維持するための、チオレドキシン又はグルタチオン/グルタレドキシン系の成分の活性/又は豊富さを、提供すること、例えば、添加すること、又は調整すること、例えば、増加させること若しくは減少させることが可能である。チオレドキシン及びグルタチオン/グルタレドキシン系、並びにこれらの成分は、本分野において公知である。例えば、Holmgrenら、Biochem Soc Trans.2005年12月;33巻(Pt6):1375~7頁;Nordberg及びArner.、Free Radic Biol Med.2001年12月1日;31巻(11号):1287~312頁;Ghezzi P.、Biochem Soc Trans.2005年12月;33巻(Pt6):1378~81頁;Ivarssonら、Diabetes.2005年7月;54巻(7号):2132~42頁;Sen,CK.、Biochem Pharmacol55巻(11号)、1747~1758頁、1998年6月1日;並びにMayら、J Biol Chem.1997年9月5日;272巻(36号):22607~10頁を参照のこと、これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
一実施形態において、方法は、GILT(ガンマ-インターフェロン誘導リソソームチオール還元酵素)の活性/豊富さを、提供するステップ、例えば、添加するステップ、又は調整するステップ、例えば、増加させるステップ若しくは減少させるステップを含み、或いはバイオリアクター又は回収容器は、GILT(ガンマ-インターフェロン誘導リソソームチオール還元酵素)の活性/豊富さを、提供すること、例えば、添加すること、又は調整すること、例えば、増加させること若しくは減少させることが可能である。例えば、Rausch及びHastings.、Mol Immunol.2015年12月;68巻(2Pt A):124~8頁.doi:10.1016/j.molimm.2015.06.008.Epub 2015年6月23日;並びに、Hastings及びCresswell.、Antioxid Redox Signal.2011年8月1日;15巻(3号):657~668頁を参照のこと、これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、方法は、増殖培養物に、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、又はアスコルビン酸若しくはデヒドロアスコルビン酸修飾成分を、提供するステップ、例えば、添加するステップを含み、或いはバイオリアクター又は回収容器は、増殖培養物に、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、又はアスコルビン酸若しくはデヒドロアスコルビン酸修飾成分を、提供すること、例えば、添加することが可能である。アスコルビン酸及びデヒドロアスコルビン酸の、酸化還元電位を調整する性質は、本分野において公知である。例えば、Winklerら、Free Radic Biol Med.1994年10月;17巻(4号):333~49頁を参照のこと、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
一実施形態において、方法は、産生培養物に、細胞内作用因子を提供するステップ、例えば、酸化還元電位指示標識、例えば、酸化還元感受性色素又は分子プローブを添加するステップを含み、或いはバイオリアクターは、産生培養物に、細胞内作用因子を提供すること、例えば、酸化還元電位表示標識、例えば、酸化還元感受性色素又は分子プローブを添加することが可能である。このような酸化還元電位表示標識は、培養物又は培養物内の細胞の酸化還元電位を監視するために有用であり得る。酸化還元電位表示標識としては、2,2’-ビピリジン(Ru錯体)、ニトロフェナントロリン(Fe錯体)、N-フェニルアントラニル酸、1,10-フェナントロリン鉄(II)硫酸錯体(フェロイン)、N-エトキシクリソイジン、2,2’-ビピリジン(Fe錯体)、5,6-ジメチルフェナントロリン(Fe錯体)、o-ジアニシジン、ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミン、ビオローゲン、2,6-ジブロモフェノール-インドフェノールナトリウム、2,6-ジクロロフェノール-インドフェノールナトリウム、o-クレゾールインドフェノールナトリウム、チオニン(ラウツバイオレット)、メチレンブルー、インジゴテトラスルホン酸、インジゴトリスルホン酸、インジゴカルミン(インジゴジスルホン酸)、インジゴモノスルホン酸、フェノサフラニン、サフラニン、ニュートラルレッド、本明細書に組み込まれる任意の文献に開示された標識、及びその全体が参照により本明細書に組み込まれるSchwarzlander Mら、Antioxid Redox Signal、2016年5月1日;24巻(13号):680~712頁に開示された標識が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
別の実施形態において、方法は、産生培養物に、細胞外作用因子、例えば、本明細書に記載の、代謝産物、遷移状態の金属イオンを提供するステップを含み、或いはバイオリアクター又は回収容器は、産生培養物に、細胞外作用因子、例えば、本明細書に記載の、代謝産物、遷移状態の金属イオンを提供することが可能である。
【0179】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター、又は本開示の方法における使用のためのバイオリアクターは、以下の原則に従って設定することができる。
- 産生培養物を回収する間のバイオリアクターの機能的設定は、バイオリアクターから出る培養物がよく酸素負荷され、且つ溶存酸素を次の処理ステップに運ぶことを確実にするのに重要である。細胞培養物が、回収ステップを開始するための目標温度に達すると、産生培養物の酸素負荷に拮抗する可能性がある全てのプロセス制御が抑制されることが確実となる。これらは、有効である場合、スパージ窒素ガス流の抑制、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御の抑制、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御の抑制、及び有効である場合、供給材料の適用の抑制を含んでいてもよい。
【0180】
- 窒素スパージガス流は、通常、酸素についての細胞の要求が低い場合、溶存酸素圧(DOT)を設定点に制御するためのバラストとして使用されるが、これは、産生期の過程の間に、活発な流れを保っていてもよい。窒素は、これらの容器中での混合を維持するためのキャリアバラストとして、エアリフトバイオリアクター中でも使用される。しかしながら、窒素スパージガスが使用される場合、これが、溶存酸素、培養物中のDOTが、100%の空気飽和度(空気のみのスパージが使用される場合)又は予想される最大DOT(空気及び酸素の配合物が使用される場合)に達するのを防止するように、これは、回収ステップの間に、産生培養物に通気するために使用されるスパージガスの酸素組成の希釈を防止するために抑制されなければならない。したがって、スパージ窒素は、所与の空気単独のスパージ又は空気-酸素混合物のスパージについて予想される最大溶存酸素濃度を制限する。CO2ガス流は、制御範囲を上回るプロセスpHの上昇に応答して、産生培養物中にスパージされる。CO2ガス流スパージが活発である場合、これは、スパージガスの酸素組成を希釈し、次に、所与の空気単独のスパージ又は空気-酸素混合物のスパージについて予想される最大溶存酸素濃度も制限する。したがって、産生培養物の回収の間のこの不活化は、通気するスパージガスの希釈を防止する。
【0181】
- 制御範囲を下回るプロセスpHの下落に応答する、産生培養物へのアルカリ溶液の添加は、産生培養物の培養の間の厳しいpH制御のために必要である。しかしながら、操作容積の連続的な減少、及びアルカリ溶液の過剰投与に起因して、産生培養物が回収されている間、アルカリ溶液の適用による細胞傷害及び細胞死が増大する潜在的な危険性がある。産生培養物中への供給材料の適用は、培養物が活発に増殖及び代謝している間に、必要である。しかしながら、回収の間、操作容積の連続的な減少は、バイオリアクターの混合挙動に影響を与え、供給材料の非生理学的性質(高浸透圧及び高pH又は低pH)、及び混合が不十分な容器中で生じる微小環境に起因して、供給材料溶液の適用による細胞傷害及び細胞死の増大をもたらす。
【0182】
- 産生培養物が、回収ステップを開始するための目標温度に達すると、産生培養物の酸素負荷を促進する可能性がある全てのプロセス制御が有効化されることが確実となる。これらは、有効ではない場合、スパージ空気及び/又は酸素ガス流の有効化、有効ではない場合、ヘッドスペースの空気及び/又は酸素流の有効化、並びに有効ではない場合、ヘッドスペースの圧力の最終的な有効化を含んでいてもよい。オンデマンドの空気及び/又は酸素のスパージ流は、産生培養物が増殖を停止すると、又は回収に関して冷却されると、非常に低くなり得、停止してしまってもよい。様々な継続的な固定流速での空気及び酸素スパージの継続的な適用は、産生培養物の酸素負荷に重要な意味を有し、及び産生培養物が、清浄化フィルターハウジング又は遠心分離機、並びにバイオリアクターとフィルターハウジング又は遠心分離機との間の流路、並びにフィルターハウジング又は遠心分離機と上清収集容器(例えば、回収容器)との間の流路で、細胞に、溶存酸素を運ぶことを確実にするのに、重要な意味を有する。ヘッドスペース又はオーバーレイ通気は、典型的には、産生培養物の培養の間に有効であり、バイオリアクターのヘッドスペースが、代謝のCO2ガスで継続的にパージされることを確実にする。回収の間の産生培養物の継続的なオーバーレイ通気は、産生培養物が、バイオリアクターから排出される間に、スパージガスで達成されるよりもゆっくりではあるが、泡の生成を回避して、培養物の表面の酸素負荷を促進する。
【0183】
- ヘッドスペース圧力で操作が可能で、圧力が、液相(培養物)中へのガスの溶解性の増大を補助し、又は容器の無菌の境界を超えて環境汚染物の進入を防止するためのバイオリアクター内の陽圧を維持するために産生培養物の培養の間に使用されるバイオリアクターについては、回収の間に、圧力を維持することが推奨される。実際には、回収が圧力によって推進される場合、バイオリアクターを加圧するために使用されるガスが、空気又は空気及び酸素の混合配合物であれば、培養物の酸素負荷は、補助される。しかしながら、回収がポンプによって推進される場合、典型的には、ヘッドスペース圧力は、使用されない。このような状況における、空気又は空気/酸素ガス混合物によるヘッドスペース圧力の使用は、回収操作の間に必要とされる操作規模に応じて必要な速さの速度で、培養物が流れる場合に、培養物の酸素負荷の補助、及び回収チューブがポンプヘッドの上流の吸い込みヘッド下での圧潰に耐えるために有益である。
【0184】
- 単回使用のバイオリアクターについては、高流速でポンプヘッドの上流に生じる吸い込みの下での圧潰に耐えるための内部の穿孔サイズ及び壁の強度に関する回収ラインの設計は、回収の流速が、チューブ閉塞によって妨げられないことを確実にするのに重要である。チューブ閉塞の影響は、回収の流速の制限だけでなく、細胞死及び細胞溶解の増大、並びに培養物からの溶存酸素の脱気を促進し得る。チューブ閉塞の影響は、ゆっくりとした流速でのハウジング中の滞留時間の増加によるフィルターハウジングでの低酸素/酸素欠乏環境への細胞及び産物の曝露の可能性、圧潰された開口部を通過する細胞死及び細胞溶解の増大による細胞内因子の放出の促進の可能性、並びに、吸い込みゾーン内の脱気、そして培養物によってフィルターハウジング中に運ばれるより少量の溶存酸素による培養物からの溶存酸素の除去の可能性を有する。一実施形態において、本明細書に開示の方法は、産物の安定性に対するこれらの負の影響を回避する。
【0185】
回収チューブの内径及び使用するポンプの選択は、デプスフィルター又はデプスフィルターに連結された遠心分離機による細胞清澄ステップのための、プロセスの容積処理量(フィルター面積当たりのプロセスの上清のリットル、L/m2)を達成するために必要な流速に到達するように選択される。回収ラインの構造物の材料は、ポンプヘッドの上流で生じる吸い込みヘッドにおける圧潰に耐える剛性を有することが必要である。一般に使用されるプラチナ硬化シリコン又はCフレックス以外の材料を、回収チューブの構造物に使用することが提案される。一般に使用される材料の代替として、編組チューブの使用を考慮してもよい。
【0186】
- いくつかの実施形態において、方法は、フィルター清澄化ステップの間に、フィルターのファウリング及び妨害物を回避するデプスフィルター面積の最適化を含み、又はバイオリアクターは、フィルター清澄化ステップの間に、フィルターのファウリング及び妨害物を回避するデプスフィルター面積を最適化することが可能であり、それにより、フィルターハウジング内の細胞培養物の滞留時間の最小化は、産生培養物及び溶存酸素の酸素負荷を確実にする不可欠なステップであり、これは、培養物が上清として排出される前にフィルターハウジングに流入して滞留する間に、バイオリアクターから運び出される溶存酸素は排出されない。更にまた、流速は、清澄化ステップ(フィルターハウジング)と上清収集容器(例えば、回収容器)との間の上清の滞留時間を最小化するために適正でなければならない。
【0187】
細胞清澄フィルター(一次、二次及び三次)の面積は、必要なプロセスの容積処理量が、流束(L/m2/時間)の損失なく、又はフィルターの全域で(微粒子の突破による)ろ液の品質が、一次若しくは段階1のフィルターの下流の二次若しくは段階2及び三次若しくは段階3のフィルターの性能に影響を与える範囲を満たすことを確実にするように最適化される。加えて、最適な細胞清澄化のために選択されるフィルターの面積及びフィルターの種類は、フィルターのファウリング及び切迫したフィルターの妨害物を表す、異なるフィルター段階の間のより高い圧力差を回避しなければならない。したがって、異なる直列に連結されたフィルターをわたる流束の減少が、フィルターハウジング内の滞留時間の増加をもたらし、上清中の低酸素をもたらすフィルターハウジング内の上清中の溶存酸素の消費/消耗の増大をもたらすと予想される。一次と二次の段階のフィルターの間のより高い圧力差の増加はまた、活性化すると産物を不安定にするより高い細胞溶解及び細胞内因子の放出を促進するという理由のために、問題である。
【0188】
- いくつかの実施形態において、方法は、無細胞上清が、よく通気され混合された回収容器(スチール、又は単回使用)中に収集されることを確実にするステップを含み、又はバイオリアクターは、無細胞上清が、よく通気され混合された回収容器(スチール、又は単回使用)中に収集されることを確実にすることが可能である。回収容器は、強制的にろ液を容器壁に滝状に流れ落ちさせる、容器壁の方へ向けて内部ノズルを設計することによって、収集したろ液を、容器壁の表面に衝突させること;並びに/又はろ液の収集の前に、収集されたろ液の酸素負荷を>40%を超える空気飽和度及び≦500%の空気飽和度に促進するために、空気又は空気及び酸素の任意の所与の配合物で構成されるガス環境で、回収容器を満たす能力によって、良好な表面酸素負荷を促進することを確実にするように設計される。
【0189】
一実施形態において、回収容器は、ステンレス鋼の回収容器である。上清収集の方法及び回収容器の設計は、回収ステップの間に産物を保護する手法の最終要素である。現在、回収された上清は、収集された上清を継続的に混合するためのミキサーを有するジャケット付きステンレス鋼容器に収集される。回収された上清は、それがタンクの底部で収集するために壁を滝状に流れ落ちる場所から、容器の壁上での上清の流れに向かわせる、内部の「J」チューブを有するヘッドスペース口を通って、回収容器に排出される。加えて、これらのステンレス鋼容器は、容器が、容器の無菌の境界を越えて環境汚染物質の侵入を防止するために、蒸気で実施する滅菌が行われた後、大気圧以上に加圧し続けるために、無菌空気で満たされる。これらの容器に収集された回収上清は、それが加圧空気雰囲気下で、容器壁を滝状に流れ落ちるにつれて、酸素負荷されると仮定される。上清の更なる酸素負荷は、収集された上清の上部のヘッドスペースと表面との接触によって起こる。
【0190】
別の実施形態において、回収容器は、単回使用の回収容器である。単回使用の上清回収容器は、ガンマ線照射された、真空排気バッグである。上清の収集の間、バッグは、真空で満たされて置換され、収集された上清の上部にガスヘッドスペースを形成しない。これらのバッグは、かき混ぜ機を有さず、したがって、収集された上清は、混合することができず、バッグは、収集された上清を加熱又は冷却することができない、ジャケットなしのプラスチック又はステンレス鋼のシェル中に挿入される。バッグが上清で満たされると、バッグは、14日間まで、+5℃の保管場所に移される。精製プロセスは、回収の直後、又は14日以内の保持期間内に、一次捕捉ステップによって開始してもよい。
【0191】
産生培養物の酸素負荷を確実にする手法は、上清が収集されるときに、それが産物の解離を促進し得る細胞因子の活性化を防止するのに十分な溶存酸素を有するように、清澄化ステップ中及び清澄化ステップにわたって、運ばれると予想される、溶存酸素で、産生培養物を「負荷」することを意図して、回収ステップの間に、40%の空気飽和度を超えて500%未満までの空気飽和度の範囲のDOTで、維持される。回収容器は、回収された上清が、14日まで、+5℃の保管下を保持する間、依然として良好な酸素負荷状態を継続することを確実にするように設計される。これは、例えば、表面通気によって、収集されて+5℃の保管下を保持する間、上清が酸素負荷を継続することを確実にする容器の設計によって達成される。一実施形態において、回収容器の設計は、以下の特徴を含む。
- 容器又は単回使用バッグは、収集した上清が、表面通気によって酸素負荷されることを可能にする、十分な軸方向バルク混合を提供する、かき混ぜ機/ミキサーを有する。
【0192】
- 容器又は単回使用バッグのシェルは、容器の内容物の温度を、+5℃に、例えば、室温から4時間以内に到達させ、同様の時間内で+5℃から室温まで加熱することを可能にする、適切なサイズの熱循環装置を有するジャケット付きである。
【0193】
- 容器又は単回使用バッグのシェルは、ヘッドスペースを、空気、酸素、又は酸素富化ガスで通気することを可能にする、適切なサイズの、空気及び酸素のガス流量制御器が取り付けられている。
【0194】
- 容器又は単回使用バッグ及びシェルは、上清のろ液の収集の間、且つ収集が終了したら、上清のろ液の酸素負荷を>40%を超える空気飽和度及び≦500%の空気飽和度に促進するために、上清のろ液の収集の前に、空気、又は空気及び酸素の任意の所与の配合物を含むガス環境で、回収容器を満たすためのヘッドスペース全域で、空気及び酸素の継続的な流れを可能にする、操作規模に対して適切な流速での空気及び酸素ガスに対して適切なオーバーレイガスフィルター、及び操作規模に対して適切な流速での空気及び酸素ガスに対して適切な排出ガス通気フィルターが取り付けられている。
【0195】
- 容器又は単回使用のバッグ及びシェルは、圧力が、操作規模及び容器の設計に対する安全性の限界を超えると、ヘッドスペースのガスを停止させる、圧力センサー及び安全保護装置が取り付けられている。
【0196】
- 容器又は単回使用のバッグ及びシェルは、pH、DOT、酸化還元及び温度に対する、プロセスセンサー口が取り付けられている。容器又はバッグ内のプローブの位置は、操作規模に対して適切な、最小操作容積で監視することを可能にする。
【0197】
- 容器又は単回使用のバッグは、液体の流れを容器壁の方に向け、液体が容器壁を滝状に流れ落ちるのを促進する内部ノズルが取り付けられた出入口を有する容器の頂部に、添加口が取り付けられている。
【0198】
細胞及び細胞培養
一態様において、本開示は、本明細書に記載の、産物、例えば、組換え産物、例えば、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生する、細胞若しくは細胞系を、遺伝子操作又は作成するための方法及び組成物に関する。別の態様において、本開示は、改善された、例えば、解離を減少させる、生産性及び/又は産物の品質を向上させる、細胞若しくは細胞系を、遺伝子操作又は作成するための方法及び組成物に関する。
【0199】
実施形態において、細胞は、哺乳類細胞、又は非哺乳類細胞、例えば、昆虫細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、古細菌細胞、例えば、古細菌の種若しくは細菌細胞由来の細胞である。一実施形態において、細胞は、ヒト、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアンハムスター、サル、類人猿、イヌ、アヒル、ウマ、オウム、フェレット、魚類又はネコ由来である。一実施形態において、細胞は、動物細胞である。実施形態において、細胞は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞、又はげっ歯類細胞、例えば、ハムスター細胞、マウス細胞若しくはラット細胞である。一実施形態において、細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞である。一実施形態において、細胞は、アクチノバクテリアの種、例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)である。
【0200】
一実施形態において、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一実施形態において、細胞は、CHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN又はCHO由来細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)は、例えば、CHO-K1 SV GSノックアウト細胞である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、ポテリジェント(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である。
【0201】
別の実施形態において、細胞は、HeLa、HEK293、HT1080、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK(ベビーハムスター腎細胞)、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、Y0、EB66、C127、L細胞、COS、例えば、COS1及びCOS7、QC1-3、CHO-K1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DUXB11並びにCHOZN、又はこれらに由来する任意の細胞である。一実施形態において、細胞は、幹細胞である。一実施形態において、細胞は、本明細書に記載の細胞のいずれかの分化型である。一実施形態において、細胞は、培養中の任意の初代細胞に由来する細胞である。
【0202】
一実施形態において、細胞は、産物、例えば、本明細書に記載の産物を産生する、本明細書の記載の細胞のいずれか1つである。一実施形態において、細胞は、組換えポリペプチドをコードする外因性核酸を含む、例えば、組換えポリポリペプチド、例えば、表2又は表3から選択される組換えポリペプチドを発現する、本明細書に記載の細胞のいずれか1つである。
【0203】
一実施形態において、細胞培養は、バッチ培養、フェドバッチ培養、ドローアンドフィル培養(draw and fill culture)、又は連続培養として、行われる。一実施形態において、細胞培養は、接着培養である。一実施形態において、細胞培養は、懸濁培養である。一実施形態において、細胞又は細胞培養は、組換えポリペプチドの発現のためにインビボに置かれ、例えば、モデル生物又はヒト対象中に置かれる。
【0204】
例えば、本方法は、大型のバイオリアクター、例えば、少なくとも2つのインペラを有するバイオリアクター、培養及び哺乳類細胞の大規模な増殖のための大型バイオリアクターシステム並びに方法で行われる。一実施形態において、バイオリアクターは、2011/0312087号に記載のバイオリアクターである。
【0205】
一実施形態において、細胞は、その内容がそれらの全体で本明細書に組み込まれる、米国特許出願第62/242,758号に開示のバイオリアクター中で培養される。それらの開示は、少なくとも1つのバイオリアクターの制御のためのシステム及び方法、他の細胞培養に関する設備、並びにそれらの任意の組合せを含むシステムである。例えば、バイオリアクターの制御のためのシステム及び方法は、発酵、回収のための設備、精密ろ過及び精製のための設備(例えば、液体クロマトグラフィースキッドシステム)、緩衝液調製、培地調製等のような、複数のバイオリアクター及び他の種類の培養関連設備の制御を含んでいてもよい。複数のバイオリアクター及び他の種類の培養関連設備は、プラント中に位置していてもよく、そのような設備の制御は、プラントワイド制御システム(「PWCS」)として公知であり得る。
【0206】
一実施形態において、本方法は、単回使用の使い捨て技術、例えば、その内容がそれらの全体で本明細書に組み込まれる、米国特許出願第62/246,478号に記載のものの、少なくとも1つの部分を使用する、バッチ製造及び連続製造の両方を提供する製造施設において行われる。一実施形態において、製造施設は、原薬(「API」)の産生のためのものである。
【0207】
冷却は、本分野において公知の方法を使用して、達成することができる。例えば、より大きなリアクターは、典型的には、培養物の温度を制御するためのサーモスタットの水が通過するウォータージャケットを有する。実施形態において、プロセスの冷水補給は、ジャケット中に送達されて、実質的及び急速な冷却に至る。実施形態において、冷却ユニットは、熱を除去するために使用される。冷却は、培養する(すなわち、細胞の数の増加を引き起こすか、又は細胞培養物から所望の産物の産生を誘導する)、又は産生期の終わり、若しくは細胞を回収するときに、産生培養物を冷却する場合、1つ又は複数の所望の回数で、行うことができる。生命体は、それらが増殖する最適な温度が異なるので、冷却温度は、冷却ステップに先立つステップ(単数又は複数)の相対的により高い温度に基づいて、選択される。実施形態において、培養された細胞の冷却は、回収流が、回収プロセスを通して酸素負荷されたままであるように、細胞の酸素消費速度を減少させるために行われる。
【0208】
哺乳類細胞系については、培養プロセスの温度の変化は、典型的には、27~35℃(例えば、27、28、29、30、31若しくは32、33、34、又は35℃)である。いくつかの実施形態において、温度は、対数増殖期後に、30~33℃に低下される。理論に縛られることを望まないが、産生期の後に、温度を12~18℃に、例えば、15℃に低下させると、酸素消費の比速度が10倍減少すると考えられる。
【0209】
一実施形態において、培養培地は、無血清である。
【0210】
哺乳類細胞系のための、他の適切な培地及び培養方法は、例えば、米国特許第5,633,162号に記載されるように、本分野において周知である。実験室用フラスコのための標準的な細胞培養培地又は低密度細胞培養の例、及び特定の細胞の種類の要求に適合しているものは、例えば、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地(Morre,G.、The Journal of the American Medical Association、199巻、519f頁、1967年)、L-15培地(Leibovitz,A.ら、Amer.J.of Hygiene、78巻、1p.173ff頁、1963年)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最少必須培地(MEM)、ハムF12培地(Ham,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sc.53、288ff頁、1965年)、又は、アルブミン、トランスフェリン及びレシチンを欠くイスコフ改変DMEM(Iscovesら、J.Exp.med.1、923ff頁、1978年)である。例えば、ハムF10培地又はハムF12培地は、CHO細胞培養のために、特に設計された。CHO細胞培養に特に適合する他の培地は、欧州特許第481791号に記載されている。他の適切な培養方法は、当業者に公知であり、組換えポリペプチド産物及び利用される宿主細胞に依存し得る。細胞によって発現される、産物、例えば、組換えポリペプチドの発現及び産生に適切な条件を決定又は最適化することは、当業者の技術の範囲内である。
【0211】
産生又は分泌された、例えば、培養培地中で分泌された、産物の、量、レベル又は含量を定量化するためのアッセイとしては、タンパク質定量アッセイ、例えば、ブラッドフォードタンパク質アッセイ、SDS-PAGE分析、免疫ブロット法、例えば、ウエスタンブロット法、及び、例えば、ナノドロップデバイスを使用する自動化手段が挙げられる。タンパク質産生の増加を測定するための他の方法は、当業者に周知である。例えば、組換えタンパク質産生の増加は、ELISAによって組織培養培地中の濃度を測定することにより、小規模で決定してもよい(Smalesら、2004年、Biotechnology Bioengineering 88巻:474~488頁)。例えば培地中の組換えモノクローナル抗体(mAb)濃度のハイスループット測定のためのForteBio Octetによって(Masonら、2012年、Biotechnology Progress 28巻:846~855頁)、又はタンパク質AのHPLC(Stansfieldら、2007年、Biotechnology Bioengineering 97巻:410~424頁)によって大規模で、定量的に決定することもできる。産物、例えば、本明細書に記載の組換えポリペプチドの産生を決定するための他の方法は、細胞中の、産物、特に、組換えポリペプチドの特異的な産生速度(qP)、及び/又は生存細胞濃度(IVC)の時間積分を参照することができる。一実施形態において、産生を決定するための方法は、qP及びIVCの決定の組合せを含む。培養培地中のポリペプチドの濃度として定義される、組換えポリペプチドの産生又は生産性は、Porterら(Porterら、2010年、Biotechnology Progress 26巻:1446~1455頁)に従って計算された、これらの2つのパラメーター(qP及びIVC)の関数である。タンパク質の産生を測定するための方法はまた、本明細書に提供される実施例において、更に詳細に記載する。
【0212】
一実施形態において、本明細書の記載の方法は、改善された産物の品質を伴う細胞を作成する。一実施形態において、産物の品質の改善は、向上、例えば、より低温に付されていない細胞によって産生される産物の、量、レベル又は含量と比較して、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%、又はそれ以上の産物の品質の向上;或いは、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍若しくは100倍、又はそれ以上の産物の品質の向上を、もたらす。産物の品質のこのような向上は、例えば、以下の1つ又は複数によって例示することができる:
i)ジスルフィド結合のスクランブリングの増加若しくは減少(例えば、抗体分子産物についての、ジスルフィド結合のスクランブリングの増加若しくは減少に対する結果として、例えば、所望のアイソフォーム又は構造の増加若しくは減少);
ii)非凝集産物の量若しくは含量の増加(又は、凝集産物の量若しくは含量の減少);
iii)適切にフォールディングされたか、又はアセンブルされた産物の量若しくは含量の増加(又は、ミスフォールディングされたか、アンフォールディングされたか、部分的にアセンブルされたか、又はアセンブルされていない産物の量若しくは含量の減少)、或いは適切にフォールディングされたか、又はアセンブルされた産物と、アンフォールディングされたか、ミスフォールディングされたか、部分的にアセンブルされたか、又はアセンブルされていない産物との比率の増加;
iv)全長産物の量若しくは含量の増加(又は、産物のフラグメント化の減少);
v)所望の翻訳後の修飾の増加(又は、未修飾若しくは間違って修飾された産物の減少);
vi)グリカンの不均質性の増加又は減少(例えば、グリコシル化産物について);
vii)機能性産物の量若しくは含量の増加(又は、非機能性若しくは機能不全産物の量若しくは含量の減少)、或いは、非機能性若しくは機能不全産物に対する機能性産物の比率の増加。
【0213】
本明細書に記載のようにして発生させた細胞又は細胞系の、産物の品質、例えば、産物の品質の改善を測定するための方法は、本分野において公知である。一実施形態において、発現した組換えポリペプチド産物の一次配列の忠実度を決定するための方法は、本分野、例えば、質量分析法において、公知である。適切にフォールディングされた産物、例えば、発現された組換えポリペプチドの量又は濃度の増加は、発現された組換えポリペプチドの、円二色性、又は固有の蛍光を評価することによって決定することができる。機能性産物の量又は濃度の増加は、組換え産物、例えば、組換えポリペプチドの性質に応じた、様々な機能性アッセイを使用して、試験することができる。例えば、抗体は、ELISA又は他の免疫親和性アッセイによって試験することができる。産物の品質の増加を決定する、例えば、凝集、翻訳後の修飾、ジスルフィド結合のスクランブリングを決定するための他の方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、動的光散乱(DLS)手法、及びタンパク質電気泳動(PAGE)法によって、評価することができる。
【0214】
いくつかの実施形態において、追加のステップは、産物の発現、例えば、産物の転写、翻訳及び/若しくは分泌、又は産物の品質、例えば、適切なフォールディング及び/若しくは一次配列の忠実度を改善するために、行ってもよい。このような追加のステップは、産物の発現又は産物の品質を改善する薬剤を導入するステップを含む。一実施形態において、産物の発現又は産物の品質を改善する薬剤は、低分子、ポリペプチド、又はタンパク質のフォールディングを改善するポリペプチド、例えば、シャペロンタンパク質をコードする核酸であり得る。一実施形態において、タンパク質のフォールディングを支援する薬剤は、シャペロンタンパク質、例えば、BiP、PD1又はERO1(Chakravarthi及びBulleid、2004年;Borthら、2005年;Davisら、2000年)をコードする核酸を含む。産物の収率及び品質を改善するための他の追加ステップは、XBP1及びATF6(Tigges及びFussenegger、2006年;Cainら、2013年;Kuら、2008年)等の転写因子の過剰発現、並びにカルネキシン及びカルレティキュリン(Chungら、2004年)等のレクチン結合シャペロンタンパク質の過剰発現を含む。本明細書に記載の、タンパク質のフォールディング、産物の品質及び産物の収率を、支援又は改善する薬剤の過剰発現は、薬剤をコードする外因性核酸の導入によって達成することができる。別の実施形態において、産物の発現又は産物の品質を改善する薬剤は、細胞培養物に添加されて、産物の発現又は産物の品質を向上させることができる低分子、例えば、DMSOである。一実施形態において、より低温、例えば、細胞が通常増殖する温度よりも、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10°C低い温度での細胞の維持は、産物の解離の減少又は排除によって、産物の品質を改善することができる。
【0215】
本明細書に記載のいずれかの方法は、高い生産性を有するか、又は高い品質の産物を産生する細胞を特定するための追加の選択ステップを更に含むことができる。例えば、FAC選択は、所望の特性、例えば、フォールディングタンパク質、例えば、シャペロンの、例えばより高いタンパク質の発現を伴う特定の細胞を選択するために利用することができる。
【0216】
一態様において、本開示は、組換えポリペプチド産物を回収する又は取り出すためのステップを含む方法を提供する。組換えポリペプチドが細胞から分泌される実施形態において、本方法は、細胞、細胞集団、又は細胞が培養された培養培地から、組換えポリペプチドを、取り出す、収集する又は分離するためのステップを含むことができる。組換えポリペプチドが細胞内に一実施形態において、組換えポリペプチド産物の精製は、宿主細胞のタンパク質、宿主細胞の核酸、宿主細胞の脂質、及び/又は宿主細胞からの他の残屑のいずれかの1つ又は複数からの、細胞によって産生された組換えポリペプチドの分離を含む。
【0217】
実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、実質的に純粋なタンパク質産物を提供する。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、発熱性物質を実質的に含まない、核酸を実質的に含まない、並びに/又は内因性の細胞タンパク質酵素及び宿主細胞由来の成分、例えば、ポリメラーゼ、リボソームタンパク質、及びシャペロンタンパク質を実質的に含まないことを意味する。実質的に純粋なタンパク質産物は、例えば、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の、汚染する内因性のタンパク質、核酸又は宿主細胞由来の他の高分子を含有する。
【0218】
産物、例えば、組換えポリペプチドの回収及び精製のための方法は、本分野において十分に確立されている。組換えポリペプチド産物を回収するために、物理的又は化学的又は物理化学的方法が使用される。物理的又は化学的又は物理化学的方法は、ろ過方法、遠心分離方法、超遠心分離方法、抽出方法、凍結乾燥方法、沈殿方法、クロマトグラフィー方法、又はこれらの2つ以上の方法の組合せであり得る。一実施形態において、クロマトグラフィー方法は、サイズ排除クロマトグラフィー(又はゲルろ過)、イオン交換クロマトグラフィー、例えば、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及び/又はマルチモーダルクロマトグラフィーの1つ若しくは複数を含む。
【0219】
実施形態において、温度の低下は、pHの低下と共に温度を低下させること、チオレドキシン阻害剤、例えば、金属イオンと組み合わされる。実施形態において、組合せ処理は、上記に記載のバイオリアクターで行われる。
【0220】
番号付きの実施形態
本発明は、以下の番号付き項のいずれかにおいて定義され得る。
【0221】
1.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【0222】
2.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【0223】
3.産生培養物からの細胞の分離の間に、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの範囲で溶存酸素圧(DOT)を確立するステップを更に含む、項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【0224】
4.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立するステップであり、産生期の初めから産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲である、ステップと、
産生培養物を、産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却するステップと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離までに、産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、DOTを、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの空気飽和度の範囲に増加させるステッと、
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を産生させる、
方法。
【0225】
5.遷移金属を、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップであり、遷移金属のイオンが、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、ステップを更に含む、項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【0226】
6.DOTが、有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御を抑制すること、有効である場合、供給材料の添加を抑制すること、有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にすること、及び有効ではない場合、ヘッドスペースの空気/O2流を有効にすること、からなる群から選択される、1つ又は複数の措置によって、更に維持される、項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【0227】
7.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させる方法であって、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で、産物、例えば、タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立するステップと、
(ii)増殖培養後期において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持すると、
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持するステップであり、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、ステップと
を含み、
a.産生培養物を、対数増殖期が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までの温度に冷却するステップ、
b.産生培養物を、産生期の初めから産生期の終わりまで、40%を超えて70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷するステップ、
c.遷移金属を、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップであり、遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、ステップ、
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加するステップ、或いは
f.産生培養物を、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却するステップ
を含み、
それにより、安定化産物、例えば、単離された安定化タンパク質を、又は安定化産物、例えば、安定化タンパク質の調製物を産生させる、
方法。
【0228】
8.a、b及びfを含む、項7に記載の方法。
【0229】
9.a、c及びfを含む、項7に記載の方法。
【0230】
10.b及びcを含む、項7に記載の方法。
【0231】
11.a、b、c及びfを含む、項7に記載の方法。
【0232】
12.産生培養物が、少なくとも10%、少なくとも30%、又は30%から70%の間の空気飽和度の酸素負荷レベルを有する、項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【0233】
13.酸素負荷レベルが、40%を超えて70%以下までの空気飽和度である、項12に記載の方法。
【0234】
14.遷移金属が、Zn2+、Mn2+及び/又はCu2+である、項4から13までのいずれか一項に記載の方法。
【0235】
15.Zn2+が、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、又は250から300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、550、600、650、700又は1000μMまで、例えば、200~400μMの濃度で存在する、項4から14までのいずれか一項に記載の方法。
【0236】
16.Mn2+が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、又は50から60、70、80、90、100、120、140、160、180又は200μMまで、例えば、10~100μMの濃度で存在する、項4から15までのいずれか一項に記載の方法。
【0237】
17.Cu2+が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、又は50から60、70、80、90、100、120、140、160、180又は200μMまで、例えば、10~100μMの濃度で存在する、項4から16までのいずれか一項に記載の方法。
【0238】
18.Zn2+が、200から400μMまでの濃度で存在し、Mn2+が、10~100μMの濃度で存在し、Cu2+が、10~100μMの濃度で存在する、項4から17までのいずれか一項に記載の方法。
【0239】
19.安定化タンパク質が、N番目のシステイン残基及びN+1番目のシステイン残基を含み、N=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上、例えば、N=1又はN=3である、項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【0240】
20.天然の形態において、安定化タンパク質が、N番目のシステイン残基とN+1番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含む、項19に記載の方法。
【0241】
21.i)N=1であって、天然の形態において、ポリペプチドが、1番目のシステイン残基と2番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含むか;
ii)N=3であって、天然の形態において、ポリペプチドが、3番目のシステイン残基と4番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含むか;又は
iii)N=3であって、天然の形態において、ポリペプチドが、1番目のシステイン残基と2番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合、並びに3番目のシステイン残基と4番目のシステイン残基との間にジスルフィド結合を含む、
項20に記載の方法。
【0242】
22.安定化産物、例えば、安定化タンパク質の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、サイズ分離によって、例えば、ゲル電気泳動によって、例えば、非還元ゲル電気泳動によって、例えば、決定される所定の状態、例えば、天然のコンフォメーションである、項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【0243】
23.産物が、抗体であり、抗体の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、サイズ分離によって、例えば、ゲル電気泳動によって、例えば、非還元ゲル電気泳動によって、例えば、決定される所定の状態、例えば、天然のコンフォメーションである、項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【0244】
24.産物が、抗体であり、抗体の、少なくとも、80、85、90、95、96、97、98又は99重量%が、軽鎖可変領域をそれぞれ含む2つの鎖、及び重鎖可変領域をそれぞれ含む2つの鎖を含む、四量体である、項1から23までのいずれか一項に記載の方法。
【0245】
25.T回収が、ジスルフィド結合の解離を抑制するのに十分に低い、項4から24までのいずれか一項に記載の方法。
【0246】
26.細胞を、T回収で、産生培養物から分離するステップを含む、項4から25までのいずれか一項に記載の方法。
【0247】
27.細胞系が、第1の温度であるT培養で培養され、T回収で回収される、項4から26までのいずれか一項に記載の方法。
【0248】
28.T回収が、T培養未満の、少なくとも19℃から25℃までである、項27に記載の方法。
【0249】
29.T回収が、12℃~18℃、例えば、15℃である、項4から28までのいずれか一項に記載の方法。
【0250】
30.T培養が、30℃~38℃である、項27から29までのいずれか一項に記載の方法。
【0251】
31.例えば、上清の成分としての、タンパク質が、T回収で、フィルターに適用される、項4から30までのいずれか一項に記載の方法。
【0252】
32.細胞が、バイオリアクター中で培養される、項1から31までのいずれか一項に記載の方法。
【0253】
33.バイオリアクターの内容物が、産生期の後、T回収に冷却される、項32に記載の方法。
【0254】
34.細胞培養物が、細胞培養物をT回収にするために適切な温度で、流体、例えば、水を含む、部材、例えば、冷却ジャケットとの接触によって冷却される、項32に記載の方法。
【0255】
35.バイオリアクターが、1~250ミリリットル、250ミリリットルから50リットルまで、50から800リットルまで、又は800~200,000リットルの容積を有する、項32から34までのいずれか一項に記載の方法。
【0256】
36.バイオリアクターが、単回使用のバイオリアクター、例えば、細胞培養物のインキュベーションを可能にし、その後、使い捨てされるように設計された、例えば、本明細書に記載される、バイオリアクターである、項32から35までのいずれか一項に記載の方法。
【0257】
37.バイオリアクターが、バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含む、項32から36までのいずれか一項に記載の方法。
【0258】
38.バイオリアクターが、1つ又は複数のパラメーター、例えば、pH、溶存酸素圧(DOT)又は温度を、監視及び維持するための、プロセス並びにプローブを含む、項32から37までのいずれか一項に記載の方法。
【0259】
39.バイオリアクターが、少なくとも4000Lの容積、並びに少なくとも1つの頂部インペラ及び少なくとも1つの底部インペラを有する、自立型の生体適合性のタンクであり、少なくとも1つの頂部インペラが、ハイドロフォイルインペラであり、頂部インペラと底部インペラとの間のインペラ間隔(Ds)が、少なくとも1.229×底部インペラの直径(D底部)、且つ最大で2×D底部であり、頂部インペラの上の液体の高さ(Do)が、少なくとも0.3×頂部インペラの直径(D頂部)、且つ最大で2.5×D頂部であり、タンクの底部と底部インペラの中央線との間の底部クリアランス(Dc)が、少なくとも0.35×D底部である、項32から37までのいずれか一項に記載の方法。
40.バイオリアクターが、回収容器と作動可能に連結されている、項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【0260】
41.回収容器が、リザーバー培養物の上に、ヘッドスペースを含むか、又は提供するように構成され、例えば、ヘッドスペースが、ガス、例えば、空気若しくは酸素、又はガス、例えば、空気若しくは空気及び酸素の混合物を含む、項40に記載の方法。
【0261】
42.回収容器が、上清が回収容器の壁(単数又は複数)を移動又は滝状に流れ落ちるように、Jチューブ口を通じて、ヘッドスペース中で、上清の収集が可能なように構成される、項41に記載の方法。
【0262】
43.上清が、ヘッドスペース中の、回収容器の表面上に、例えば、壁に伝達され、表面に沿って流れて、リザーバー培養物に戻る、項42に記載の方法。
【0263】
44.回収容器における上清の移動又は滝状の流れが、上清の酸素負荷レベルの増加をもたらす、項43に記載の方法。
【0264】
45.上清のDOTが、表面通気によって、回収容器中で、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの空気飽和度の範囲で維持される、項40から44までのいずれか一項に記載の方法。
【0265】
46.回収容器が、リザーバー培養物を5℃から8℃までの温度に更に冷却するための、冷却デバイス及び冷却機構を含む、項40から45までのいずれか一項に記載の方法。
【0266】
47.回収容器が、軸混合が可能なミキサーデバイス、及びpH滴定薬の添加口を含む、項40から46までのいずれか一項に記載の方法。
【0267】
48.回収容器が、少なくとも1つのヘッドスペースのガス入口、及び少なくとも1つのガス出口を含む、項40から47までのいずれか一項に記載の方法。
【0268】
49.回収容器が、空気及びO2の混合物を提供するための、少なくとも1つの空気流制御器及び少なくとも1つのO2流制御器を更に含む、項40から48までのいずれか一項に記載の方法。
【0269】
50.回収容器が、上清の、DOT、酸化還元、温度及びpHを検出するセンサーを含む、項40から49までのいずれか一項に記載の方法。
【0270】
51.DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、スパージ速度、ヘッドスペース、及び分離の前のバイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化;並びに回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすために使用される、項50に記載の方法。
【0271】
52.DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすために使用される、項50に記載の方法。
【0272】
53.バイオリアクターが、耐閉塞性のチューブを使用して、回収容器に接続される、項40から52までのいずれか一項に記載の方法。
【0273】
54.耐閉塞性のチューブが、編組チューブである、項53に記載の方法。
【0274】
55.バイオリアクターと回収容器との間の流路が、DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの装置を含む、項40から54までのいずれか一項に記載の方法。
【0275】
56.DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの出力が、スパージ速度、ヘッドスペース、及び回収の前のバイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化をもたらすために使用される、項55に記載の方法。
【0276】
57.バイオリアクターが、バイオリアクターのヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、要素、例えば、ライン又はノズルを含む、項40から56までのいずれか一項に記載の方法。
【0277】
58.バイオリアクターが、バイオリアクターのヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、第2の要素、例えば、ライン又はノズルを含む、項40から57までのいずれか一項に記載の方法。
【0278】
59.培養物内の細胞の酸化還元電位を監視するステップ、及び同時に、酸化還元電位を維持する目的のためにタンパク質を単離するステップを更に含む、項1から58までのいずれか一項に記載の方法。
【0279】
60.酸化還元電位を監視するステップが、インライン監視プローブ、例えば、本明細書に記載のMettler Toledoを使用するステップを含む、項59に記載の方法。
【0280】
61.酸化還元電位を監視するステップが、産物の安定性に影響を与える細胞因子の酸化還元状態を評価するステップを含み、細胞因子が、グルタチオン/還元グルタチオン経路、チオレドキシン/還元チオレドキシン経路、若しくはペントースリン酸経路の酵素又は代謝補助因子(例えば、グルタチオン還元酵素、チオレドキシン、グルコース-6-リン酸、NADPH、NADP+、6-ホスホノグルコラクトン、6-ホスホグルコン酸又はリブロース-5-リン酸)を損ない得る、項58に記載の方法。
【0281】
62.組換え宿主細胞が、CHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN又はCHO由来細胞であり、CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)は、例えば、CHO-K1SV GSノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)であり、CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、ポテリジェント(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である、項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【0282】
63.組換え宿主細胞が、CHO-GSKO細胞であり、CHOXceed細胞CHO GSノックアウト細胞(例えば、GS-CHO細胞)が、例えば、CHO-K1SVノックアウト細胞(Lonza Biologics,Inc.)であり、CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、ポテリジェント(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である、項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【0283】
64.組換え宿主細胞が、HeLa、HEK293、HT1080、H9、HepG2、MCF7、ジャーカット、NIH3T3、PC12、PER.C6、BHK(ベビーハムスター腎細胞)、VERO、SP2/0、NS0、YB2/0、Y0、EB66、C127、L細胞、COS、例えば、COS1及びCOS7、QC1-3、CHOK1、CHOK1SV、ポテリジェントCHOK1SV、CHO GSノックアウト、CHOK1SV GS-KO、CHOS、CHO DG44、CHO DXB11並びにCHOZN、又はこれらに由来する任意の細胞である、項1から61までのいずれか一項に記載の方法。
【0284】
65.項1から64までのいずれか一項に記載の方法によって産生する、安定化タンパク質。
【0285】
66.項65に記載の安定化タンパク質を含む、医薬組成物。
【0286】
67.薬学的に許容される、担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、項66に記載の医薬組成物。
【0287】
68.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクター。
【0288】
69.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であり、並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクター。
【0289】
70.バイオリアクターが、産生培養物からの細胞の分離の間に、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの空気飽和度の範囲で溶存酸素圧(DOT)を確立することが可能である、項68又は69のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0290】
71.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
対数増殖培養後期の産生培養物において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で提供する、例えば、確立することが可能であって、産生期の初めから産生期の終わりまでの溶存酸素圧(DOT)が、40%を超えて70%までの空気飽和度の範囲であり;
産生培養物を、産生期の終わりに、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、T回収温度に冷却することが可能であり;
バイオリアクターから産生培養物の除去までに、産生培養物中に空気又はO2ガスをスパージすることによって、DOTを、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの空気飽和度の範囲に増加させることが可能であり;並びに
産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクター。
【0291】
72.バイオリアクターが、遷移金属を、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加することが更に可能であり、遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択される、項68から71までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0292】
73.バイオリアクターが、有効である場合、スパージ窒素ガス流を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのアルカリ制御を抑制すること、有効である場合、オンデマンドのCO2ガス流制御を抑制すること、有効である場合、供給材料の添加を抑制すること、有効ではない場合、ヘッドスペース圧力を有効にすること、及び有効ではない場合、ヘッドスペースの空気/O2流を有効にすること、からなる群から選択される、1つ又は複数の措置によって、DOTを維持することが更に可能である、項68から72までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0293】
74.組換え宿主細胞において発現する、安定化産物、例えば、安定化タンパク質を産生させることが可能なバイオリアクターであって、バイオリアクターが、
(i)非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差が、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で、産物、例えば、タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む、産生培養物、例えば、対数増殖後の培養物を、提供する、例えば、確立することが可能であり;
(ii)増殖培養後期において、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であり;並びに
(iii)産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離の間に、非安定化産物から安定化産物までの酸化還元電位差を、-10mVから-1000mVまで、-20mVから-800mVまで、-30mVから-700mVまで、-40mVから-600mVまで、-50mVから-500mVまで、-50mVから-400mVまで、-50mVから-300mVまで、-50mVから-200mVまで、又は-50mVから-150mVまで、例えば、-50mVから-300mVまでの範囲で維持することが可能であって、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離が、スパージなしで、又はスパージが産生培養物及び上清における酸化還元電位を実質的に変化させない程度に十分に少ないスパージをしながら、行われる、
バイオリアクターが、更に、
a.産生培養物を、対数増殖期が起こった後に、細胞系が、正常に培養されたか、又は正常に培養される温度未満の温度である、30℃から33℃までの温度に冷却することが可能であるか;
b.産生培養物を、産生期の初めから産生期の終わりまで、40%を超えて70%以下までの空気飽和度の溶存酸素圧(DOT)に酸素負荷することが可能であるか;
c.遷移金属を、産生培養物中又は産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であって、遷移金属が、Zn2+、Mn4+、Cu2+、Fe3+、Co2+、Cr3+及び/又はNi2+から選択されるか;
d.デヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸、又はデヒドロアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であるか;
e.グルタチオン、例えば、酸化及び/若しくは還元グルタチオン、又はグルタチオン修飾成分を、産生培養物に、提供する、例えば、添加することが可能であるか;或いは
f.産生培養物を、産生培養物及び上清の収集物からの細胞の分離のために、T産生未満の温度である、12℃~18℃のT回収温度に冷却することが可能である、
バイオリアクター。
【0294】
75.バイオリアクターが、a、b及びfが可能である、項74に記載のバイオリアクター。
【0295】
76.バイオリアクターが、a、c及びfが可能である、項74に記載のバイオリアクター。
【0296】
77.バイオリアクターが、b及びcが可能である、項74に記載のバイオリアクター。
【0297】
78.a、b、c及びfが可能である、項74に記載のバイオリアクター。
【0298】
79.回収容器と作動可能に連結されている、項68から77までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0299】
80.回収容器が、リザーバー培養物の上に、ヘッドスペースを含むか、又は提供するように構成され、例えば、ヘッドスペースが、ガス、例えば、空気若しくは酸素、又はガス、例えば、空気若しくは空気及び酸素の混合物を含む、項79に記載のバイオリアクター。
【0300】
81.培養物が回収容器の壁(単数又は複数)を移動又は滝状に流れ落ちるように、ヘッドスペース中で、培養物の循環が可能なように構成される、項80に記載のバイオリアクター。
【0301】
82.リザーバー培養物からの培養物が、ヘッドスペース中の、バイオリアクターの表面上に、例えば、壁に伝達され、表面に沿って流れて、リザーバー培養物に戻る、項81に記載のバイオリアクター。
【0302】
83.移動又は滝状の流れが、培養物中の酸素負荷レベルの増加をもたらす、項82に記載のバイオリアクター。
【0303】
84.回収容器が、リザーバー培養物のDOTを、表面通気によって、10、20、30、40、50又は60%を超えて、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500%以下までの空気飽和度、例えば、40%を超えて500%以下までの空気飽和度の範囲で維持することが可能である、項79から83までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0304】
85.回収容器が、リザーバー培養物を5℃から8℃までの温度に更に冷却するための、冷却デバイス及び冷却機構;軸混合が可能なミキサーデバイス、及びpH滴定薬の添加口;少なくとも1つのヘッドスペースのガス入口、及び少なくとも1つのガス出口;空気及びO2の混合物を提供するための、少なくとも1つの空気流制御器及び少なくとも1つのO2流制御器;並びに上清の、DOT、酸化還元、温度及びpHを検出するセンサーからなる群から選択される1つ又は複数の構成要素を含む、項79から84までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0305】
86.DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、スパージ速度、ヘッドスペース、及び分離の前のバイオリアクターの産生培養物中への供給材料又は栄養補助剤の添加の変化;並びに回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすことが可能である、項85に記載のバイオリアクター。
【0306】
87.DOT、酸化還元、温度及びpHのセンサーの出力が、回収容器中へのpH滴定薬の添加の変化をもたらすことが可能である、項85に記載のバイオリアクター。
【0307】
88.耐閉塞性のチューブを使用して、回収容器に接続される、項79から87までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0308】
89.耐閉塞性のチューブが、編組チューブである、項88に記載のバイオリアクター。
【0309】
90.バイオリアクターと回収容器との間の流路が、DOT及び酸化還元のセンサー/プローブの装置を含む、項79から88までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0310】
91.回収容器のヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、要素、例えば、ライン又はノズルを含む、項79から90までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0311】
92.回収容器のヘッドスペースを画定する表面に、培養物を送達するように構成される、第2の要素、例えば、ライン又はノズルを含む、項79から91までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0312】
93.単回使用のバイオリアクター、例えば、細胞培養物のインキュベーションを可能にし、その後、使い捨てされるように設計された、例えば、本明細書に記載される、バイオリアクターである、項68から92までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0313】
94.バイオリアクターが、バイオプロセス容器、シェル、少なくとも1つのかき混ぜ機、少なくとも1つのスパージャー、スパージャー(単数又は複数)及びヘッドスペースのオーバーレイのための少なくとも1つのガスフィルター入口、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの回収口、少なくとも1つのサンプル口、並びに少なくとも1つのプローブを含む、項68から93までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0314】
95.バイオリアクターが、少なくとも4000Lの容積、並びに少なくとも1つの頂部インペラ及び少なくとも1つの底部インペラを有する、自立型の生体適合性のタンクであり、少なくとも1つの頂部インペラが、ハイドロフォイルインペラであり、頂部インペラと底部インペラとの間のインペラ間隔(Ds)が、少なくとも1.229×底部インペラの直径(D底部)、且つ最大で2×D底部であり、頂部インペラの上の液体の高さ(Do)が、少なくとも0.3×頂部インペラの直径(D頂部)、且つ最大で2.5×D頂部であり、タンクの底部と底部インペラの中央線との間の底部クリアランス(Dc)が、少なくとも0.35×D底部である、項68から92までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0315】
96.産物が、二重特異性抗体を含む、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0316】
97.産物が、表1、表2、表3又は表4に列挙されたタンパク質である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0317】
98.産物が、抗体、例えば、モノクローナル抗体、例えば、IgG1抗体である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0318】
99.組換え宿主細胞が、哺乳類細胞、例えば、マウス、ラット、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、シリアンハムスター、サル、類人猿、ウマ、フェレット又はネコの細胞に由来する、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0319】
100.組換え宿主細胞が、非哺乳類細胞、例えば、アヒル、オウム、魚類、昆虫、植物、真菌、酵母、細菌、例えば、大腸菌(E.coli)、例えば、古細菌又はアクチノバクテリアに由来する、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0320】
101.組換え宿主細胞が、幹細胞である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0321】
102.組換え宿主細胞が、本明細書に記載の細胞のいずれかの分化型である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0322】
103.組換え宿主細胞が、培養中の任意の初代細胞に由来する細胞である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【0323】
104.組換え宿主細胞が、CHOK1SV、GS-KO又はDUX-B11細胞である、項1から64までのいずれか一項に記載の方法、又は項68から95までのいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【実施例0324】
本発明を、以下の例を参照することによって、詳細に、更に説明する。これらの例は、説明のみの目的で提供され、特に規定のない限り、限定を意図するものではない。したがって、本発明は、以下の例に限定されるものとして決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかにされる、ありとあらゆる変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0325】
更なる説明なしに、当業者は、先立つ説明及び以下の例示的な例を使用して、本発明の化合物を作成及び利用し、特許請求の範囲に係る方法を実施することができると考えられる。以下の実施例は、本発明の様々な態様を特に指摘するものであって、本開示の残りの部分を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。
【0326】
(例1)
細胞の冷却は、細胞サンプルの回収及び保管に関連する酸素欠乏を軽減する
酸素の欠乏は、特定及び実証された、解離の原因の経路である。欠乏の速度は、温度と共に減少する。
図1は、O
2の溶解度が、温度に反比例して増加することを示す(37℃、15℃及び5℃の比較)。これらの3つの温度での、3つの他の酸素関連パラメーターの変化も示す。したがって、バイオリアクター/サンプルの冷却が、解離の防止を同様に助けることができると仮定した。
【0327】
細胞の冷却を含む軽減戦略を、バイオリアクター、一次保管チャンバー、及び保管バッグ又はボトルについて、
図2に示す。
【0328】
(例2)
回収物の酸素負荷あり、及びなしでの、2つのバイオリアクターの回収プロファイル
回収物の酸素負荷あり、及びなしでの、2つのバイオリアクターの回収プロファイルを
図3に示す。データは、回収の間の培養物における低酸素事象を示し(0%に近い)、解離についての仮定と一致する。対照的に、示したような軽減戦略を行うことによって、回収の間も依然として酸素負荷(最低のポイントで約20%)のままであった培養物について、プロファイルを示す。
【0329】
(例3)
軽減あり、及びなしでの、非還元SDSポリアクリルアミドゲル
図4は、IgG1モノクローナル抗体について、軽減なし(左側パネル)及び軽減あり(右側パネル)で調製された、非還元SDSポリアクリルアミドゲルのサンプルの表示である。軽減なしで調製されたサンプルについて、解離したポリペプチド種を示す、複数のバンドが観察される。対照的に、解離を証拠付けない単一の高分子量のバンドが、
図2に示す軽減戦略に付されたサンプルについて検出される。これらの結果は、細胞の冷却を含む軽減戦略が、タンパク質の解離を抑制することを実証する。
【0330】
単一の増殖特性(最大生存細胞濃度、回収生存細胞濃度、IVC、回収時の生存率)と解離との間に、単純な傾向は観察されなかった。傾向がないということは、解離と一緒の傾向を示す、増殖パラメーター(単数又は複数)と別のパラメーター(単数又は複数)との間の相互作用の可能性を排除するものではない。
【0331】
(例4)
酸化還元の管理
理論によって縛られることを望まないが、下記の表は、本開示の方法及びバイオリアクターにおいて、空気流、酸素流、ガスの酸素含有量、及びDOTがどのように関連するかを表す。
【0332】
図5は、36.5℃の制御ポイントから33.0℃の制御ポイントまでの細胞増殖期後(典型的には、6日目)の、溶存酸素圧のより高いプロセス制御である60%空気飽和度のDOT、プロセス温度変化の組合せを用いる、ベースライン上流プロセス及び最適化上流プロセスの、産生培養物の酸化還元電位差を示す。加えて、産生培養物には、培養の3日目から培養の10日目まで、断続的に、銅、マンガン及び亜鉛の塩等の高レベルの微量栄養素を有するボーラス供給材料が供給された。最適化上流プロセスの別の変形において、培養の3日目から、培養の15日目に回収されるまで、微量栄養素を連続的に供給した。3日目以降からの酸化促進性微量栄養素の適用の増加は、およそ-50mVの好適な酸化還元電位差を与え、これは、33.0℃への温度の変更、及びおよそ-115mVまでの酸化促進性微量栄養素の継続的適用の後、更に改善される。ベースラインプロセスにおいて産生した産物は、ベースラインの細胞清澄化手順の後、より不安定さが増大した挙動を示した。しかしながら、産物は、回収ステップの間に培養物が低酸素又は酸素欠乏環境に曝露されるようになり得るベースラインの細胞清澄化手順に対して、より弾力的である、産物を産生する酸化還元電位差が最適化プロセスで、産生された。これらの上流プロセスを使用して作成された産物についての不安定な挙動は、以下であった。
- タンパク質A樹脂クロマトグラフィーからの産物の溶出の後、又はウイルス不活化のための低pH処理の後、産物のフラグメントの量の増加。
- 製造プロセス中のウイルスの不活化のために典型的に使用される、低pH保持への曝露の後、産物の凝集の増加。
産物の産生の間のより酸化的な酸化還元電位差の利点は、有益であるが、回収ステップ及び上清の保管の間に同様の酸化的な酸化還元電位差を確実にすることは、同様に有益であり得ると仮定される。
他の酸化促進性細胞培養栄養素及び細胞代謝物(例えば、鉄III塩、シスチン/システイン、デヒドロアスコルビン酸/アスコルビン酸、及びグルタチオン/グルタチオン-SH)は上記の例で試験したものと同様の方法で挙動する可能性があると更に予想される。
【0333】
(例5)
温度管理
図6は、回収操作の前に冷却された場合の産生培養物の温度プロファイル、及び産生培養物によって取り込まれる細胞の酸素に合わせた、オンデマンドの空気及び酸素流のスパージ速度を示す。スパージ速度がプロセスに特有の閾値を下回って低下する事象において、これらのスパージ速度は、回収操作の間、固定される。これらの固定されたスパージ速度は、以下であり得る。
- 培養物の冷却の開始の直前に使用される、最小の0から最大流量までの酸素の一定流量。
- 空気及び酸素のオンデマンドの流量の両方で冷却する直前に適用されるものと同様の酸素量移動係数kLaを達成するための、培養物の冷却の開始の直前の流量に等しい最小流量から最大流量までの空気の一定流量。
【0334】
(例6)
酸素管理
図7Aは、細胞培養物の清澄化のための使い捨てのPODデプスフィルターを使用する、1000Lの単回使用バイオリアクターからの回収の間の、産生培養物中の重要なプロセスパラメーターの例を示す。この例において、産生培養物を、細胞酸素要求量に合うように産生培養物に適用される、同じかき混ぜ(混合)速度及び通気速度で、混合及び通気した。産生培養物の冷却は、
図1で前述したように、細胞の要求を停止した。しかしながら、同様の混合速度及び通気速度の継続的な適用は、培養物のDOTが、スパージガスの酸素富化の割合によって制限されるレベルまで増加を続けることを確実にする。空気は、最大で100%の空気飽和度に、培養物中の溶存酸素を飽和させることに留意されたい。純酸素は、最大で約500%の空気飽和度に、培養物中の溶存酸素を飽和させる。したがって、任意の所与の回収物について、産生培養物は、空気若しくは酸素、又は空気及び酸素の配合物で通気され得る。使用される空気及び酸素の比率に応じて、培養物中の溶存酸素は、特定の産物若しくはプロセス、又は産生培養物を回収するために使用される産生の施設及び設備(例えば、フィルターの種類、フィルター面積、バイオリアクターとフィルターハウジングとの間の流路、並びにフィルターハウジングと上清収集容器、例えば、回収容器との間の流路)、並びに施設内で使用される前方のプロセス操作パターン(例えば、精製プロセスを開始する前に上清を保持する期間)に対して、可変及び特異的であり得る。この例において記載のヘッドスペース圧力は使用されないが、容器は、大気圧よりも高いヘッドスペース圧力で操作することができると予想される。このパラメーターはまた、100%の空気飽和度を超えて、培養物中の溶存酸素を増加させるために使用され得る。しかしながら、培養物は、バイオリアクター内の高圧環境を出るにつれて、脱気され、培養物のDOTが減少して、新しい圧力と平衡になると予想される。
【0335】
図7Bは、細胞培養物の清澄化のための使い捨てのPODデプスフィルターを使用する、50Lの単回使用バイオリアクターからの回収の間、産生培養物中の重要なプロセスパラメーターの例を示す。この例において、産生培養物を、産生培養物に適用される、同じかき混ぜ(混合)で、混合した。しかしながら、通気速度を、回収のための準備で冷却される直前に産生培養物のために必要な、同様の酸素量移動係数kLa(h
-1)を達成するために調節した。スパージガスの酸素の組成はまた、最大の培養物DOTが約200%の空気飽和度を達成するように増加される(この例では、40%まで富化)。
【0336】
回収中の産生培養物の酸素負荷の追加特徴は、回収を始める前に、培養物が高DOTで保持される期間によって、定義され得る。これは、回収のための目標温度に達して<1時間以内と定義されてもよく、又は回収のための目標温度に達して最大で24時間であってもよい。
【0337】
(例7)
バイオリアクターの特性
1000LのcGMP産生培養物の回収の間、スパージ空気及び酸素の流速は、操作規模、この場合では、1000L SUBに依存する。回収操作の性能の再検討で、産生培養物の溶存酸素圧(DOT)は、およそ400Lの培養物がSUB内に残ったままの回収の後半の段階の間に、減少し始めた。DOT減少速度の外挿により、培養物のDOTが、5分以内に、低酸素レベル(0%の空気飽和度のDOT)に低下することが示唆される。低酸素培養物は、その後、更なる酸素負荷が不可能であるときに、デプスフィルターハウジングに入る。したがって、フィルターハウジングに入った細胞培養物及びフィルター清澄化の早期の段階から既に維持されていた細胞は、酸素欠乏になると予想される。この細胞培養プロセス及び産物については、回収の間の低酸素の発生が、タンパク質Aを使用する最初のクロマトグラフィーステップの後に、非還元SDS電気泳動アッセイによって分析されると、「解離して」出現する産物をもたらし得るという証拠がある。
図4を参照のこと。
【0338】
基本的な機構は、産物のサブユニット(IgG重鎖及び軽鎖)を一緒に保持及びフォールディングするジスルフィド結合の還元を触媒する、回収操作の間の、清澄フィルターにおいて生じる細胞の損傷からの細胞因子の放出であると考えられる。これらの放出された細胞因子は、典型的には、それらの還元的状態において、活性である(及び、産物に損傷を与える可能性がある)。しかしながら、バイオリアクター中で、適正なスパージ速度を用いて回収しながら、産生培養物の酸素負荷を続ける間中、十分な酸素を、デプスフィルターに運び、清澄化された上清中を通って運ぶことを可能にする必要がある。清澄化された上清によって運ばれる溶存酸素は、細胞因子の、それらの還元された活性状態への活性化を防止し、それにより、タンパク質のジスルフィド結合の解離反応の触媒的な進行を回避する。しかしながら、現在、培養操作レベルが、バイオリアクター中のDOTセンサーの下側に低下すると、培養物のDOTを、及び培養物がPODフィルターハウジング中に存在している間、又は清澄化された上清がバッグ内に収集されたときに、培養物のDOTを、検出する直接的な方法はない。この限界に起因して、代用手法は、培養物の細胞酸素取り込み速度が、バイオリアクターの能力よりも増大して、酸素が細胞培養物中に移動することを示すDOTの低下傾向、並びに培養物への酸素の移動、及び培養物からの溶存酸素の喪失(DOTの低下傾向によって示される)におけるこの不均衡が続き、続いて、不十分な酸素が、細胞因子の活性化を防止するために清澄化された上清中で利用可能であり、産物の解離が結果として生じることを決して表すことなく、培養物の回収を穏やかに経過させることを確実にするために、スパージ空気及び酸素ガスが連続流で適用される場合に、適用される。
【0339】
したがって、低い流速で固定されたスパージ空気及び酸素の流速を増加させることが提案される。修正されたスパージ条件下では、スパージガスの酸素組成及び容積流量は、より高いDOT空気飽和度に、培養物を飽和させることができる。加えて、総容積スパージガス流量(空気及び酸素の合計流量)は、産生培養物が回収のための調製物中で更に冷却される直前に、少なくとも40%の空気飽和度のプロセスの設定ポイントで、培養物DOTを維持するために産生培養物によって要求されるものに等しい、増加した酸素量移動係数kLaに達せられる。
【0340】
均等論
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、認識し、又は、単なる日常的な実験を使用して確認することができるだろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【0341】
本発明は、1つ若しくは複数の列挙された請求項に由来する1つ又は複数の、限定、要素、条項及び説明用語が、別の請求項に導入される、全ての変形、組合せ並びに順列を包含する。要素が、リストとして、例えば、マーカッシュ群の形式で、又は代替として、提示される場合、要素のそれぞれの下位群も開示され、任意の要素(単数又は複数)を群から削除することができる。
【0342】
一般に、本発明又は本発明の態様が、特定の要素及び/又は特徴を含むものとして言及される場合、本発明のある特定の実施形態又は本発明の態様は、そのような要素及び/若しくは特徴からなるか、又は本質的にそのような要素及び/若しくは特徴からなることが理解されるべきである。「含む(comprising)」及び「含む(containing)」という用語は、オープンであり、追加の要素又はステップを包含することを許容することを意図することにも留意されたい。範囲が与えられる場合、エンドポイントを含む。更にまた、他の指示がない限り、又は当業者の文脈及び理解から他に明らかではない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態において述べられた範囲内の任意の特定の値又は下位の範囲を、文脈が明確に他に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、想定することができる。