(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191309
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】蒸着マスクの製造方法、蒸着マスクが割り付けられた中間製品及び蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221220BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221220BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156692
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2017550655の分割
【原出願日】2017-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2016199420
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】池永 知加雄
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 敬典
(72)【発明者】
【氏名】松浦 幸代
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一対の長辺及び一対の短辺からなる蒸着マスクの長辺の領域の変形が抑制された蒸着マスクを提供する。
【解決手段】蒸着マスクは、一対の長辺26及び一対の短辺と、第1面20aと、前記第1面の反対側に位置する第2面20bと、を含む、金属製の板状の基材21と、前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、前記蒸着マスクの断面において、前記長辺には、前記第2面側から前記第1面側に向かうにつれて外側に広がる湾曲面が形成されている。
【選択図】
図25A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスクであって、
一対の長辺及び一対の短辺と、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を含む、金属製の板状の基材と、
前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、
前記蒸着マスクの断面において、前記長辺には、前記第2面側から前記第1面側に向かうにつれて外側に広がる湾曲面が形成されている、蒸着マスク。
【請求項2】
前記長辺は、前記第1面と交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有する、請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
蒸着マスクであって、
一対の長辺及び一対の短辺と、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を含む、金属製の板状の基材と、
前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、
前記蒸着マスクの断面において、前記長辺には、前記第1面側に位置する湾曲面と、前記第2面側に位置する湾曲面とが形成されており、
前記長辺は、前記第1面側の前記湾曲面と前記第2面側の前記湾曲面とが交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有する、蒸着マスク。
【請求項4】
前記長辺と前記第1面とが交わる部分は、前記長辺と前記第2面とが交わる部分よりも外側に位置する、請求項3に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記第1面に形成された第1凹部と、前記第2面に形成された第2凹部と、前記第1凹部と前記第2凹部とを接続する周状の接続部と、を含み、
前記第1面から前記接続部までの、前記第1面の法線方向における距離が、6μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記基材の厚みが、50μm以下である、請求項5に記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク及び蒸着マスクの製造方法に関する。また、本発明は、蒸着マスクを作製するための中間製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が400ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
【0003】
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成された蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対して蒸着マスクを密着させ、次に、密着させた蒸着マスクおよび基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料を基板に蒸着させる蒸着工程を行う。これによって、蒸着マスクの貫通孔のパターンに対応したパターンで、基板上に、有機材料を含む画素を形成することができる。
【0004】
蒸着工程において、蒸着マスクは、所定の剛性を有するフレームに固定されている。例えば、蒸着マスクが一対の長辺及び一対の短辺を有する場合、蒸着マスクは、長辺の方向に引っ張られた状態でフレームに固定される。これによって、蒸着マスクが撓むことを抑制し、画素の寸法精度や位置精度を高めることができる。
【0005】
蒸着マスクの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成する方法が知られている。例えば、はじめに、金属板の第1面上に露光・現像処理によって第1レジストパターンを形成し、また金属板の第2面上に露光・現像処理によって第2レジストパターンを形成する。次に、金属板の第1面のうち第1レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第1面に第1開口部を形成する。その後、金属板の第2面のうち第2レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第2面に第2開口部を形成する。この際、第1開口部と第2開口部とが通じ合うようにエッチングを行うことにより、金属板を貫通する貫通孔を形成することができる。
【0006】
蒸着マスクを効率的に製造する方法として、まず、複数の蒸着マスクに相当する面積を有する金属板を準備し、次に、複数の蒸着マスクに形成されるべき多数の貫通孔を金属板に形成し、その後、金属板から個々の蒸着マスクを抜き出す、という方法が知られている。例えば特許文献1においては、破断線に沿って金属板を切断することによって、金属板から蒸着マスクを抜き出している。特許文献1において、破断線は、蒸着マスクの長辺及び短辺に対応するパターンで金属板に形成されたミシン目である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蒸着マスクを第1面側又は第2面側から観察すると、長辺の領域に、黒く見える部分が観察されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蒸着マスクであって、
一対の長辺及び一対の短辺と、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を含む、金属製の板状の基材と、
前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、
前記蒸着マスクの断面において、前記長辺には、前記第2面側から前記第1面側に向かうにつれて外側に広がる湾曲面が形成されている、蒸着マスクである。
【0010】
本発明による蒸着マスクにおいて、前記長辺は、前記第1面と交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有してもよい。
【0011】
本発明は、蒸着マスクであって、
一対の長辺及び一対の短辺と、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を含む、金属製の板状の基材と、
前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、
前記蒸着マスクの断面において、前記長辺には、前記第1面側に位置する湾曲面と、前記第2面側に位置する湾曲面とが形成されており、
前記長辺は、前記第1面側の前記湾曲面と前記第2面側の前記湾曲面とが交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有する、蒸着マスクである。
【0012】
本発明による蒸着マスクにおいて、前記長辺と前記第1面とが交わる部分は、前記長辺と前記第2面とが交わる部分よりも外側に位置してもよい。
【0013】
本発明による蒸着マスクにおいて、前記貫通孔は、前記第1面に形成された第1凹部と、前記第2面に形成された第2凹部と、前記第1凹部と前記第2凹部とを接続する周状の接続部と、を含み、前記第1面から前記接続部までの、前記第1面の法線方向における距離が、6μm以下であってもよい。
【0014】
本発明による蒸着マスクにおいて、前記基材の厚みが、50μm以下であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を備えた蒸着装置を示す図である。
【
図2】
図1に示す蒸着マスク装置を用いて製造した有機EL表示装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を示す平面図である。
【
図4】
図3に示された蒸着マスクの有効領域を示す部分平面図である。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図5に示す貫通孔およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
【
図9】蒸着マスクの製造方法の一例を全体的に説明するための模式図である。
【
図10】金属板上にレジスト膜を形成する工程を示す図である。
【
図11】レジスト膜に露光マスクを密着させる工程を示す図である。
【
図12】レジスト膜を現像する工程を示す図である。
【
図14】第1凹部を樹脂によって被覆する工程を示す図である。
【
図17】金属板から樹脂及びレジストパターンを除去する工程を示す図である。
【
図18】金属板を加工することによって得られた中間製品を示す平面図である。
【
図19】
図18の中間製品のうち符号XIXが付された点線で囲われた領域を拡大して示す図である。
【
図20】蒸着マスク部分を支持部分から分離する工程を示す図である。
【
図21】中間製品から得られた蒸着マスクを拡大して示す平面図である。
【
図22】
図21の蒸着マスクの短辺を矢印XXIIの方向から見た場合を示す側面図である。
【
図23A】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIIIが付された点線で囲われた領域を第1面側から観察した結果を示す図である。
【
図23B】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIIIが付された点線で囲われた領域を第2面側から観察した結果を示す図である。
【
図24A】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIVが付された点線で囲われた領域を第1面側から観察した結果を示す図である。
【
図24B】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIVが付された点線で囲われた領域を第2面側から観察した結果を示す図である。
【
図25A】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIIIが付された点線で囲われた領域を模式的に示す断面図である。
【
図25B】蒸着マスクの長辺の断面形状の一変形例を示す図である。
【
図25C】
図25Aに示す断面形状を有する長辺を備えた蒸着マスクが有機EL基板に対面している様子を示す図である。
【
図25D】
図25Bに示す断面形状を有する長辺を備えた蒸着マスクが有機EL基板に対面している様子を示す図である。
【
図26】
図21の蒸着マスクのうち符号XXIVが付された点線で囲われた領域を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0017】
図1~
図22は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本発明を適用することができる。
【0018】
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0019】
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
【0020】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
(蒸着装置)
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、蒸着装置90は、その内部に、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。また、蒸着装置90は、蒸着装置90の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
【0022】
(蒸着マスク装置)
以下、蒸着マスク装置10について説明する。
図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備える。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク装置10は、
図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である基板、例えば有機EL基板92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。以下の説明において、蒸着マスク20の面のうち、有機EL基板92側の面を第1面20aと称し、第1面20aの反対側に位置する面を第2面20bと称する。
【0023】
蒸着マスク装置10は、
図1に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を備えていてもよい。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
【0024】
図3は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20a側から見た場合を示す平面図である。
図3に示すように、蒸着マスク装置10は、複数の蒸着マスク20を備える。各蒸着マスク20は、一対の長辺26及び一対の短辺27を含んでおり、例えば矩形状の形状を有している。各蒸着マスク20は、一対の短辺27又はその近傍の部分において、例えばスポット溶接によってフレーム15に固定されている。
【0025】
蒸着マスク20は、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25が形成された、金属製の板状の基材を含む。るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を有機EL基板92の表面に成膜することができる。
【0026】
図2は、
図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、有機EL基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。
【0027】
なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
【0028】
ところで、蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
【0029】
このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20を構成する基材の材料として、30質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む鉄合金を用いることができる。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
【0030】
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数を、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル-コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
【0031】
(蒸着マスク)
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。
図3に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20の一対の短辺27を含む一対の耳部(第1耳部17a及び第2耳部17b)と、一対の耳部17a,17bの間に位置する中間部18と、を備えている。
【0032】
(耳部)
まず、耳部17a,17bについて詳細に説明する。耳部17a,17bは、蒸着マスク20のうちフレーム15に固定される部分である。本実施の形態において、耳部17a,17bは、中間部18と一体的に構成されている。なお、耳部17a,17bは、中間部18とは別の部材によって構成されていてもよい。この場合、耳部17a,17bは、例えば溶接によって中間部18に接合される。
【0033】
(中間部)
次に、中間部18について説明する。中間部18は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された、少なくとも1つの有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。有効領域22は、蒸着マスク20のうち、有機EL基板92の表示領域に対面する領域である。
【0034】
図3に示す例において、中間部18は、蒸着マスク20の長辺26に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の有効領域22を含む。一つの有効領域22は、一つの有機EL表示装置100の表示領域に対応する。このため、
図1に示す蒸着マスク装置10によれば、有機EL表示装置100の多面付蒸着が可能である。
【0035】
図3に示すように、有効領域22は、例えば、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
【0036】
以下、有効領域22について詳細に説明する。
図4は、蒸着マスク20の第2面20b側から有効領域22を拡大して示す平面図である。
図4に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。貫通孔25の一例について、
図5~
図7を主に参照して更に詳述する。
図5~
図7はそれぞれ、
図4の有効領域22のV-V方向~VII-VII方向に沿った断面図である。
【0037】
図5~
図7に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側となる第1面20aから、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側となる第2面20bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスク20の法線方向Nにおける一方の側となる基材21の第1面21aに第1凹部30がエッチングによって形成され、蒸着マスク20の法線方向Nにおける他方の側となる基材21の第2面21bに第2凹部35が形成される。第1凹部30は、第2凹部35に接続され、これによって第2凹部35と第1凹部30とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔25は、第2凹部35と、第2凹部35に接続された第1凹部30とによって構成されている。
【0038】
図5~
図7に示すように、蒸着マスク20の第2面20bの側から第1面20aの側へ向けて、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第2凹部35の開口面積は、しだいに小さくなっていく。同様に、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第1凹部30の開口面積は、蒸着マスク20の第1面20aの側から第2面20bの側へ向けて、しだいに小さくなっていく。
【0039】
図5~
図7に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第1凹部30の壁面31と、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第2凹部35の壁面36とが合流する張り出し部の稜線によって、画成されている。そして、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成する。
【0040】
図5~
図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側の面、すなわち、蒸着マスク20の第1面20a上において、隣り合う二つの貫通孔25は、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間している。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第1面20aに対応するようになる基材21の第1面21a側から当該基材21をエッチングして第1凹部30を作製する場合、隣り合う二つの第1凹部30の間に基材21の第1面21aが残存するようになる。
【0041】
同様に、
図5及び
図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第2面20bの側においても、隣り合う二つの第2凹部35が、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に基材21の第2面21bが残存していてもよい。以下の説明において、基材21の第2面21bの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部43とも称する。このようなトップ部43が残るように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができる。このことにより、例えば搬送中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。なおトップ部43の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料98の利用効率が低下することがある。従って、トップ部43の幅βが過剰に大きくならないように蒸着マスク20が作製されることが好ましい。例えば、トップ部43の幅βが2μm以下であることが好ましい。なおトップ部43の幅βは一般に、蒸着マスク20を切断する方向に応じて変化する。例えば、
図5及び
図7に示すトップ部43の幅βは互いに異なることがある。この場合、いずれの方向で蒸着マスク20を切断した場合にもトップ部43の幅βが2μm以下になるよう、蒸着マスク20が構成されていてもよい。
【0042】
なお
図6に示すように、場所によっては隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に、基材21の第2面21bが残存していない場所が存在していてもよい。また、図示はしないが、第2面21bの全域にわたって隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。
【0043】
図1に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、
図5に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第1面20aが、有機EL基板92に対面し、蒸着マスク20の第2面20bが、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して有機EL基板92に付着する。
図5において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて有機EL基板92の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、有機EL基板92の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通って有機EL基板92に到達するよりも前に、第2凹部35の壁面36に到達して付着する。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための基材21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtの小さな基材21を用いることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚みtは、50μm以下に、例えば5μm以上且つ50μm以下に設定される。なお厚みtは、周囲領域23の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30および第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みtは、基材21の厚みであると言うこともできる。
【0044】
図5において、貫通孔25の最小開口面積を持つ部分となる接続部41と、第2凹部35の壁面36の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、壁面36に到達させることなく可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることの他にも、上述のトップ部43の幅βを小さくすることも有効である。
【0045】
図7において、符号αは、基材21の第1面21aの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅αおよび貫通部42の寸法r
2は、有機EL表示装置の寸法および表示画素数に応じて適宜定められる。例えば、リブ部の幅αは5μm以上且つ40μm以下であり、貫通部42の寸法r
2は10μm以上且つ60μm以下である。
【0046】
限定はされないが、本実施の形態による蒸着マスク20は、450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合に特に有効なものである。以下、
図8を参照して、そのような高い画素密度の有機EL表示装置を作製するために求められる蒸着マスク20の寸法の一例について説明する。
図8は、
図5に示す蒸着マスク20の貫通孔25およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
【0047】
図8においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第1面20aから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った方向における距離、すなわち第1凹部30の壁面31の高さが符号r
1で表されている。さらに、第1凹部30が第2凹部35に接続する部分における第1凹部30の寸法、すなわち貫通部42の寸法が符号r
2で表されている。また
図8において、接続部41と、基材21の第1面21a上における第1凹部30の先端縁と、を結ぶ直線L2が、基材21の法線方向Nに対して成す角度が、符号θ2で表されている。
【0048】
450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、貫通部42の寸法r2は、好ましくは10μm以上且つ60μm以下に設定される。これによって、高い画素密度の有機EL表示装置を作製することができる蒸着マスク20を提供することができる。好ましくは、第1凹部30の壁面31の高さr1は、6μm以下に設定される。
【0049】
次に、
図8に示す上述の角度θ2について説明する。角度θ2は、基材21の法線方向Nに対して傾斜するとともに接続部41近傍で貫通部42を通過するように飛来した蒸着材料98のうち、有機EL基板92に到達することができる蒸着材料98の傾斜角度の最大値に相当する。なぜなら、接続部41を通って角度θ2よりも大きな傾斜角度で飛来した蒸着材料98は、有機EL基板92に到達するよりも前に第1凹部30の壁面31に付着するからである。従って、角度θ2を小さくすることにより、大きな傾斜角度で飛来して貫通部42を通過した蒸着材料98が有機EL基板92に付着することを抑制することができ、これによって、有機EL基板92のうち貫通部42に重なる部分よりも外側の部分に蒸着材料98が付着してしまうことを抑制することができる。すなわち、角度θ2を小さくすることは、有機EL基板92に付着する蒸着材料98の面積や厚みのばらつきの抑制を導く。このような観点から、例えば貫通孔25は、角度θ2が45度以下になるように形成される。なお
図8においては、第1面21aにおける第1凹部30の寸法、すなわち、第1面21aにおける貫通孔25の開口寸法が、接続部41における第1凹部30の寸法r2よりも大きくなっている例を示した。すなわち、角度θ2の値が正の値である例を示した。しかしながら、図示はしないが、接続部41における第1凹部30の寸法r2が、第1面21aにおける第1凹部30の寸法よりも大きくなっていてもよい。すなわち、角度θ2の値は負の値であってもよい。
【0050】
蒸着マスクの製造方法
次に、蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
【0051】
(金属板の準備)
はじめに、蒸着マスクを製造するための金属板64を準備する。金属板64は、例えば、長尺状の金属板を巻き取ることにより得られるロールの形態で準備される。金属板64としては、例えば、ニッケルを含む鉄合金から構成された金属板を用いる。金属板64の厚みは、例えば3μmであり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。また、金属板64の厚みは、例えば50μm以下であり、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。所望の厚みを有する金属板64を作製する方法としては、圧延法、めっき成膜法などを採用することができる。
【0052】
次に、金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に
図9~
図22を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、
図9に示すように、金属板64を加工して、金属板64に、貫通孔25を含む複数の蒸着マスク部分を形成し(加工工程)、その後、蒸着マスク部分を金属板64から分離する(分離工程)ことによって、枚葉状の蒸着マスク20を得ることができる。
【0053】
(加工工程)
金属板64を加工する工程は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺の金属板64に施して、金属板64に第1面64aの側から第1凹部30を形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを金属板64に施して、金属板64に第2面64bの側から第2凹部35を形成する工程と、を含んでいる。そして、金属板64に形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合うことによって、金属板64に貫通孔25が作製される。以下に説明する例では、第1凹部30の形成工程を、第2凹部35の形成工程の前に実施し、且つ、第1凹部30の形成工程と第2凹部35の形成工程の間に、作製された第1凹部30を封止する工程を実施する。以下、各工程の詳細を説明する。
【0054】
図9には、蒸着マスク20を作製するための製造装置60が示されている。
図9に示すように、まず、金属板64をコア61に巻き取った巻き体62を準備する。そして、このコア61を回転させて巻き体62を巻き出すことにより、
図9に示すように帯状に延びる金属板64を供給する。
【0055】
供給された金属板64は、搬送ローラー72によって、加工装置(エッチング手段)70に搬送される。加工装置70によって、
図10~
図17に示された各処理が施される。なお本実施の形態においては、金属板64の幅方向に複数の蒸着マスク20を割り付ける。言い換えると、金属板64から分離されて蒸着マスク20となる後述する蒸着マスク部分が、金属板64の幅方向に複数並ぶように、金属板64を加工する。この場合、好ましくは、蒸着マスク部分すなわち蒸着マスク20の長辺26の方向が、長尺状の金属板64の長手方向に一致するよう、複数の蒸着マスク20を金属板64に割り付ける。
【0056】
まず、
図10に示すように、金属板64の第1面64a上および第2面64b上にネガ型の感光性レジスト材料を含むレジスト膜65c、65dを形成する。例えば、金属板64の第1面64a上および第2面64b上に、ネガ型の感光性レジスト材料を含む塗布液を塗布し、その後、塗布液を乾燥させることにより、レジスト膜65c、65dを形成する。
【0057】
次に、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスク68a、68bを準備し、露光マスク68a、68bをそれぞれ
図11に示すようにレジスト膜65c、65d上に配置する。露光マスク68a、68bとしては、例えば、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板を用いる。その後、真空密着によって露光マスク68a、68bをレジスト膜65c、65dに十分に密着させる。
なお感光性レジスト材料として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクを用いる。
【0058】
その後、レジスト膜65c、65dを露光マスク68a、68b越しに露光する(露光工程)。さらに、露光されたレジスト膜65c、65dに像を形成するためにレジスト膜65c、65dを現像する(現像工程)。以上のようにして、
図12に示すように、金属板64の第1面64a上に第1レジストパターン65aを形成し、金属板64の第2面64b上に第2レジストパターン65bを形成することができる。なお現像工程は、レジスト膜65c、65dの硬度を高めるための、または金属板64に対してレジスト膜65c、65dをより強固に密着させるためのレジスト熱処理工程を含んでいてもよい。レジスト熱処理工程は、例えば室温以上且つ400℃以下で実施され得る。
【0059】
次に、
図13に示すように、金属板64の第1面64aのうち第1レジストパターン65aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。例えば、第1エッチング液を、搬送される金属板64の第1面64aに対面する側に配置されたノズルから、第1レジストパターン65a越しに金属板64の第1面64aに向けて噴射する。この結果、
図13に示すように、金属板64のうちの第1レジストパターン65aによって覆われていない領域で、第1エッチング液による浸食が進む。これによって、金属板64の第1面64aに多数の第1凹部30が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。
【0060】
その後、
図14に示すように、後の第2面エッチング工程において用いられる第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30を被覆する。すなわち、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30を封止する。
図14に示す例においては、樹脂69の膜を、形成された第1凹部30だけでなく、第1面64a(第1レジストパターン65a)も覆うように形成する。
【0061】
次に、
図15に示すように、金属板64の第2面64bのうち第2レジストパターン65bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面64bに第2凹部35を形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成されるようになるまで実施される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。
【0062】
なお第2エッチング液による浸食は、金属板64のうちの第2エッチング液に触れている部分において行われていく。従って、浸食は、金属板64の法線方向N(厚み方向)のみに進むのではなく、金属板64の板面に沿った方向にも進んでいく。ここで好ましくは、第2面エッチング工程は、第2レジストパターン65bの隣り合う二つの孔66aに対面する位置にそれぞれ形成された二つの第2凹部35が、二つの孔66aの間に位置するブリッジ部67aの裏側において合流するよりも前に終了される。これによって、
図16に示すように、金属板64の第2面64bに上述のトップ部43を残すことができる。
【0063】
その後、
図17に示すように、金属板64から樹脂69を除去する。樹脂69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、
図17に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
【0064】
図18は、上述のようにして蒸着マスク20を加工して貫通孔25を形成することによって得られた中間製品50を示す平面図である。中間製品50には、蒸着マスク20が割り付けられている。言い換えると、中間製品50は、複数の蒸着マスク部分51と支持部分56とを備える。
図18において、符号T1は、蒸着マスク20の製造工程における金属板64の搬送方向を表し、符号T2は、搬送方向T1に直交する方向(以下、幅方向とも称する)を表す。搬送方向T1は、長尺状の金属板64の長手方向に一致する。
【0065】
蒸着マスク部分51は、金属板64のうち、分離されることによって蒸着マスク20となる部分である。蒸着マスク部分51は、蒸着マスク20の一対の長辺26及び一対の短辺27に対応する一対の長辺52及び一対の短辺53を含む。また、蒸着マスク部分51には、複数の貫通孔25が形成されている。例えば、蒸着マスク部分51は、複数の貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。
【0066】
図18に示すように、複数の蒸着マスク部分51は、長辺52に交差する方向に並んでいる。例えば、長辺52は搬送方向T1に平行であり、複数の蒸着マスク部分51が並ぶ方向は幅方向T2に平行である。
【0067】
支持部分56は、平面視において複数の蒸着マスク部分51を囲むとともに蒸着マスク部分51に部分的に接続されている部分である。
図18に示す例において、支持部分56は、金属板64のうち蒸着マスク部分51以外の部分である。
【0068】
以下、蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54について説明する。
図19は、
図18の中間製品50のうち符号XIXが付された点線で囲われた領域を拡大して示す図である。
図18及び
図19に示す例において、蒸着マスク部分51の短辺53は、支持部分56に部分的に接続されている。例えば、
図19に示すように、蒸着マスク部分51の短辺53は、支持部分56に向かって突出し、且つ支持部分56に接続されている複数の凸部53aを含んでいる。一方、蒸着マスク部分51の長辺52は、支持部分56に接続されていない。言い換えると、蒸着マスク部分51の長辺52と支持部分56との間には、長辺52の全域にわたって隙間55が存在している。また、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間にも、支持部分56が存在していない。言い換えると、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間には、長辺52の全域にわたって隙間55が存在している。
【0069】
隙間55は、上述の加工工程において貫通孔25と同時に形成され得る。例えば、上述の加工工程において、金属板64のうち隙間55が形成されるべき部分にはレジストパターン65a、65bが残らないように、レジスト膜65c、65dを露光及び現像する。続いて、金属板64のうちレジストパターン65a、65bによって覆われていない領域を、エッチングによって除去する。これによって、複数の貫通孔25と同時に、
図18及び
図19に示す隙間55を金属板64に形成することができる。
【0070】
なお、隙間55を形成するためのエッチングは、金属板64の第1面64a及び第2面64bの両側でそれぞれ実施されてもよく(例1)、金属板64の第1面64a及び第2面64bのいずれか一方の側のみで実施されてもよい(例2)。
【0071】
例1の場合、金属板64の第1面64aのうち隙間55が形成されるべき部分(以下、隙間予定部とも称する)にはレジストパターン65aが残らないように、レジスト膜65cを露光及び現像する。また、金属板64の第2面64bの隙間予定部にもレジストパターン65bが残らないように、レジスト膜65dを露光及び現像する。続いて、金属板64を第1面64a側からエッチングする。これによって、金属板64の第1面64aのうち蒸着マスク20の有効領域22となるべき部分に第1凹部30を形成し、同時に、第1面64aの隙間予定部に第1凹部30を形成する。次に、樹脂69によって第1凹部30を被覆する。その後、金属板64を第2面64b側からエッチングする。これによって、金属板64の第2面64bのうち蒸着マスク20の有効領域22となるべき部分に第2凹部35を形成し、同時に、第2面64bの隙間予定部に第2凹部35を形成する。これによって、貫通孔25と同時に隙間55を形成することができる。
【0072】
例2の場合、例えば、金属板64の第2面64bの隙間予定部にはレジストパターン65bが残らないように、レジスト膜65dを露光及び現像する。一方、金属板64の第1面64aの隙間予定部にはレジストパターン65aが残るように、レジスト膜65cを露光及び現像する。続いて、金属板64を第1面64a側からエッチングし、金属板64のうち蒸着マスク20の有効領域22となるべき部分に第1凹部30を形成する。この際、第1面64aの隙間予定部には第1凹部30が形成されない。次に、樹脂69によって第1凹部30を被覆する。この際、第1面64aの隙間予定部も樹脂69によって被覆される。その後、金属板64を第2面64b側からエッチングする。これによって、金属板64の第2面64bのうち蒸着マスク20の有効領域22となるべき部分に第2凹部35を形成し、同時に、第2面64bの隙間予定部に第2凹部35を形成する。この際、第2凹部35が第1面64a側にまで達するようにエッチングを実施することにより、隙間予定部に隙間55を形成することができる。
例2の場合、第1凹部30を形成する第1のエッチング工程の際に、金属板64の第1面64aの隙間予定部にハーフエッチングが施されない。このため、金属板64の厚みが小さい場合であっても、第1のエッチング工程の後に金属板64の隙間予定部に折れが生じてしまうことを抑制することができる。
【0073】
隙間55の寸法は、中間製品50の搬送などの際に蒸着マスク部分51が支持部分56や他の蒸着マスク部分51に接触しないよう、設定される。蒸着マスク部分51と支持部分56との間の隙間55の、幅方向T2における寸法S1は、例えば0.1mm以上且つ5mm以下である。また、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の間の隙間55の、幅方向T2における寸法S2は、例えば0.1mm以上且つ5mm以下である。また、蒸着マスク部分51の短辺53と支持部分56との間の、搬送方向T1における寸法S3は、例えば30μm以上且つ100μm以下である。また、短辺53の方向における凸部53aのピッチPは、例えば200μm以上且つ400μm以下である。
【0074】
(分離工程)
続いて、上述の中間製品50において蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する分離工程を実施する。まず、
図9に示すように、金属板64を加工することによって得られた中間製品50を、分離工程を実施するための分離装置73へ搬送する。例えば、中間製品50を狭持した状態で回転する搬送ローラー72,72により、分離装置73へ搬送する。ところで、上述のように中間製品50において蒸着マスク部分51の長辺52が支持部分56に接続されていない場合、搬送時に蒸着マスク部分51が揺れたり撓んだりし易いと考えられる。この点を考慮し、蒸着マスク部分51の揺れや撓みを抑制する抑制手段を、中間製品50、搬送ローラー72又は搬送路に設けてもよい。例えば、抑制手段は、中間製品50の第1面側及び第2面側に設けられた一対のフィルムを含む。中間製品50を一対のフィルムで挟んだ状態で中間製品50を73へ搬送することにより、蒸着マスク部分51が揺れたり撓んだりすることを抑制することができる。
【0075】
図20は、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する分離工程を示す図である。上述のように、蒸着マスク部分51の長辺52と支持部分56とは接続されていない。このため、短辺53において蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54を破断させることにより、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離して蒸着マスク20を得ることができる。
図21は、中間製品50から得られた蒸着マスク20を拡大して示す平面図である。
【0076】
分離工程は、例えば、蒸着マスク部分51の短辺53のうち支持部分56に接続されている接続箇所54を破断させる破断工程を含む。この場合、
図21に示すように、蒸着マスク20のうち接続箇所54が破断された箇所、例えば短辺53の凸部53aの先端が、破断面27bとなる。このように、蒸着マスク20の短辺27には部分的に破断面27bが存在する。
図22は、
図21の矢印XXIIの方向から蒸着マスク20の短辺27の凸部27aの破断面27bを見た場合を示す側面図である。
【0077】
破断工程においては、蒸着マスク部分51を支持部分56に対して例えば
図22の上方向に引っ張ることによって、蒸着マスク部分51の短辺53と支持部分56との間の接続箇所54を破断させる。この場合、凸部27aの破断面27bには、
図22に示すように、破断時に支持部分56から受けた力に起因するバリ27cが生じることがある。バリ27cは、破断時に支持部分56から受けた力の方向(
図22においては下方向)に向かって延びている。破断面27bは、このようなバリ27cが存在する面として定義され得る。一方、蒸着マスク部分51の長辺52は支持部分56に接続されていないので、蒸着マスク20の長辺26には破断面が存在しない。
【0078】
図23A及び
図23Bはそれぞれ、
図22の蒸着マスク20のうち符号XXIIIが付された点線で囲われた長辺26の領域を、第1面20a側及び第2面20b側から観察した結果を示す図である。また、
図24A及び
図24Bはそれぞれ、
図22の蒸着マスク20のうち符号XXIVが付された点線で囲われた短辺27の領域を、第1面20a側及び第2面20b側から観察した結果を示す図である。
図23A、
図23B、
図24A及び
図24Bのいずれにおいても、観察時の倍率は10倍である。
【0079】
図24Aに示すように、短辺27の凸部27aの先端には、黒く見える部分(以下、暗部とも称する)27xが観察された。暗部27xの幅は、13.8μmであった。
図24Bに示すように、蒸着マスク20の第2面20b側から観察した場合にも同様の暗部27yが確認された。
【0080】
一方、長辺26の領域には、暗部が確認されなかったか、若しくは、短辺27の場合よりも小さな厚みを有する暗部が確認された。例えば
図23Bに示すように、第2面20b側から見た場合に、5.1μmの幅の暗部26yが確認された。
【0081】
図25Aは、
図22の蒸着マスク20のうち符号XXIIIが付された点線で囲われた領域、すなわち蒸着マスク20の長辺26の断面形状を模式的に示す図である。また、
図25Bは、長辺26の断面形状の一変形例を示す図である。
図25A及び
図25Bに示すように、蒸着マスク20の長辺26には、貫通孔25を形成するために実施するエッチング工程の際に生じるサイドエッチングに起因して、内側に凸となる形状の湾曲面が形成されることがある。
図25Aは、金属板64の第2面64bのみからのエッチングによって隙間55を形成する場合の、長辺26の断面形状の一例を示す図である。また、
図25Bは、金属板64の第1面64a及び第2面64bの両側からのエッチングによって隙間55を形成する場合の、長辺26の断面形状の一例を示す図である。
図23A及び
図23Bに示す平面写真に対応する断面形状は、
図25Aの方である。
【0082】
金属板64の第2面64bのみからのエッチングによって隙間55を形成する場合、長辺26には、
図25Aに示すように、第2面20b側から第1面20a側に向かうにつれて外側に広がる湾曲面が形成される。この湾曲面は、長辺26を第2面20b側から観察した場合には視認されるが、長辺26を第1面20a側から観察した場合には視認されない。言い換えると、長辺26は、第1面20aと交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有する。長辺26を第2面20b側から観察した場合に確認された暗部26yは、湾曲面における光の散乱に起因していると考えられる。
【0083】
金属板64の第1面64a及び第2面64bの両側からのエッチングによって隙間55を形成する場合、長辺26には、
図25Bに示すように、第1面20a側に位置する、第1凹部30を形成する際のサイドエッチングに起因する湾曲面と、第2面20b側に位置する、第2凹部35を形成する際のサイドエッチングに起因する湾曲面とが形成される。この場合、長辺26は、第1面20a側の湾曲面と第2面20b側の湾曲面とが交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有する。第2面20b側の第2凹部35の寸法の方が第1面20a側の第1凹部30の寸法よりも大きいので(
図5~7参照)、サイドエッチングの程度も第2面20b側の方が大きくなる。このため、長辺26に形成される湾曲面も、第2面20b側の方が大きくなる。従って、長辺26を第2面20b側から観察した場合に確認される暗部の幅も、長辺26を第1面20a側から観察した場合に確認される暗部の幅よりも大きくなると考えられる。
【0084】
図25Cは、
図25Aに示す断面形状を有する長辺26を備えた蒸着マスク20が有機EL基板92に対面している様子を示す図である。また、
図25Dは、
図25Bに示す断面形状を有する長辺26を備えた蒸着マスク20が有機EL基板92に対面している様子を示す図である。
図25C及び
図25Dに示す例においては、複数の蒸着マスク20が短辺27の方向に所定の間隔Mを空けて並ぶように配列されている。間隔Mは、隣接する2つの蒸着マスク20の長辺26同士が接触することを防ぐよう、所定の離間距離以上に設定されている。間隔Mは、隣接する2つの蒸着マスク20の長辺26のうち外側に最も突出している部分の間の間隔である。
図25Cに示す例においては、長辺26のうち第1面20aと交わる部分における間隔Mが所定の離間距離以上になるよう、蒸着マスク20が配列される。
図25Dに示す例においては、長辺26のうち第1面20a側の湾曲面と第2面20b側の湾曲面とが交わる部分における間隔Mが所定の離間距離以上になるよう、蒸着マスク20が配列される。
【0085】
図25Cに示す例と
図25Dに示す例を比較すると、
図25Cに示す例の方が、有機EL基板92に対する接触面積が大きくなる。このため、有機EL基板92に対する密着性という点で、
図25Cに示す例の方が有利である。
【0086】
なお、仮に
図25Dに示す例において、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の第1面20aの接触面積を
図25Cに示す例の場合と同等にしようとすると、隣接する2つの蒸着マスク20の長辺26の間の距離が小さくなり、蒸着マスク20同士が接触するリスクが高くなる。
【0087】
このように、有機EL基板92に対する密着性の向上と、隣接する2つの蒸着マスク20同士の接触リスクの低減は、互いにトレードオフの関係にある。
図25Cに示す例によれば、トレードオフの関係にある2つの要求を、
図25Dに示す例の場合に比べて高いレベルで満たすことができる。
【0088】
なお、蒸着マスク20同士が接触すると、蒸着マスク20の損傷や変形が生じてしまう。蒸着マスク20が変形すると、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の第1面20aの接触面積が減少し、有機EL基板92に対する密着性が低下してしまう。このように、隣接する2つの蒸着マスク20の間の距離を過剰に縮めることは、有機EL基板92に対する密着性の低下を生じさせ得る。
【0089】
図26は、
図22の蒸着マスク20のうち符号XXIVが付された点線で囲われた領域を模式的に示す断面図である。
図26に示すように、蒸着マスク20の短辺27には、上述の破断工程の際に短辺27が支持部分56から第1面20a側へ引っ張られることに起因して、第2面20b側に、外側に凸となる形状の湾曲面が形成されることがある。短辺27を第2面20b側から観察した場合に確認された暗部27yは、湾曲面における光の散乱に起因していると考えられる。また、第1面20a側には、第1面20aから突出したバリ27cが形成されることがある。短辺27を第1面20a側から観察した場合に確認された暗部27xは、バリ27cにおける光の散乱に起因していると考えられる。
【0090】
(本実施の形態の作用)
蒸着マスク20の長辺26から貫通孔25までの、基材21の面方向における最短距離S4(
図21参照)は、一般に、短辺27から貫通孔25までの、基材21の面方向における最短距離に比べて小さい。このため、長辺26に波打ち形状などの変形が現れると、長辺26の近傍に位置する貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する蒸着材料98の寸法精度や位置精度が低下してしまう。ここで本実施の形態においては、中間製品50の蒸着マスク部分51が支持部分56に接続されていない。このため、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する分離工程の際に、長辺52は、支持部分56からの力を受けないので、長辺26に波打ち形状などの変形が現れることを抑制することができる。これによって、高い寸法精度や位置精度で有機EL基板92に蒸着材料98を付着させることができる。
【0091】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0092】
(接続箇所及び破断面の変形例)
上述の実施の形態においては、中間製品50の蒸着マスク部分51の長辺52の全域が支持部分56に接続されていない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、貫通孔25の位置精度に影響を及ぼさない範囲内で、中間製品50の蒸着マスク部分51の長辺52が支持部分56に接続されていてもよい。例えば、長辺52のうち、中間製品50の幅方向T2に沿って長辺52を見た場合に貫通孔25と重ならない領域において、長辺52が支持部分56に接続されていてもよい。言い換えると、蒸着マスク部分51の長辺52のうち、少なくとも、中間製品50の幅方向T2に沿って長辺52を見た場合に貫通孔25と重なる領域は、支持部分56に接続されていないことが好ましい。この場合、蒸着マスク20の幅方向において長辺26を見た場合に貫通孔25と重なる領域には破断面が存在しない。言い換えると、蒸着マスク20の幅方向において長辺26を見た場合に貫通孔25と重ならない領域には、破断面が存在していてもよい。蒸着マスク部分51の長辺52のうち幅方向T2において貫通孔25と重なる領域を支持部分56に接続しないことにより、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する際に蒸着マスク部分51に生じる変形が貫通孔25の位置精度に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0093】
好ましくは、中間製品50において、蒸着マスク部分51の長辺52のうち支持部分56に接続されている箇所の比率が、蒸着マスク部分51の短辺53のうち支持部分56に接続されている箇所の比率よりも小さくなるようにする。これによって、破断時の長辺52の変形に起因して蒸着工程の精度が低下してしまうことを抑制することができる。この場合、分離工程によって得られる蒸着マスク20において、長辺26における破断面の比率が、短辺27における破断面の比率よりも小さくなる。
【0094】
蒸着マスク部分51の短辺53のうち支持部分56に接続されている箇所の比率は、例えば、短辺53のうち支持部分56に接続されている部分の幅K4(
図19参照)の総和を短辺53の長さK2(
図18参照)で割ることにより算出される。幅K4は、例えば
図19に示すように、支持部分56に接続されている凸部53aのうち最も狭い部分の幅である。同様に、蒸着マスク部分51の長辺52のうち支持部分56に接続されている箇所の比率は、例えば、長辺52のうち支持部分56に接続されている部分の幅の総和を長辺52の長さK1(
図18参照)で割ることにより算出される。
【0095】
また、蒸着マスク20の短辺27における破断面27bの比率は、例えば、短辺27に存在する破断面27bの幅K6(
図21参照)の総和を短辺27の長さK5(
図21参照)で割ることにより算出される。同様に、蒸着マスク20の長辺26における破断面の比率は、例えば、長辺26に存在する破断面の幅の総和を長辺26の長さで割ることにより算出される。
【0096】
若しくは、蒸着マスク部分51の短辺53のうち支持部分56に接続されている箇所の比率は、短辺53のうち支持部分56に接続されている部分の個数を短辺53の長さK2で割ることにより算出されてもよい。
図19に示す例において、短辺53のうち支持部分56に接続されている部分の個数は4である。同様に、蒸着マスク部分51の長辺52のうち支持部分56に接続されている箇所の比率は、長辺52のうち支持部分56に接続されている部分の個数を長辺52の長さK1で割ることにより算出されてもよい。
【0097】
同様に、蒸着マスク20の短辺27における破断面27bの比率は、短辺27に存在する破断面27bの個数を短辺27の長さK5で割ることにより算出されてもよい。同様に、蒸着マスク20の長辺26における破断面の比率は、長辺26に存在する破断面の個数を長辺26の長さで割ることにより算出されてもよい。
【0098】
(支持部分の変形例)
上述の実施の形態においては、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間に支持部分56が存在しない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、
図27に示すように、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間に、搬送方向T1に延び、且つ蒸着マスク部分51の長辺52に接続されていない支持部分56が存在していてもよい。
【0099】
本発明のその他の態様を説明する。
【0100】
ミシン目を破断させるとき、蒸着マスクが金属板から引っ張られ、これによって金属板が変形してしまうことが考えられる。例えば、蒸着マスクの長辺に波打ち形状などの変形が現れ得る。この結果、蒸着マスクの長辺の近傍に位置する貫通孔を通って基板に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
【0101】
本発明のその他の態様は、このような課題を効果的に解決し得る蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0102】
本発明のその他の態様は、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスクの製造方法であって、金属板を準備する工程と、前記金属板を、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された複数の蒸着マスク部分と、前記複数の蒸着マスク部分を囲むとともに前記複数の蒸着マスク部分の前記短辺に部分的に接続されている支持部分と、を備える中間製品に加工する加工工程と、前記蒸着マスク部分を前記支持部分から分離して前記蒸着マスクを得る分離工程と、を備え、前記中間製品において、前記蒸着マスク部分の前記長辺は、前記支持部分に接続されていない、蒸着マスクの製造方法である。
【0103】
本発明のその他の態様は、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスクの製造方法であって、金属板を準備する工程と、前記金属板を、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された複数の蒸着マスク部分と、前記複数の蒸着マスク部分を囲むとともに前記複数の蒸着マスク部分に部分的に接続されている支持部分と、を備える中間製品に加工する加工工程と、前記蒸着マスク部分を前記支持部分から分離して前記蒸着マスクを得る分離工程と、を備え、前記中間製品において、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率が、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率よりも小さい、蒸着マスクの製造方法である。
前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記長辺のうち前記支持部分に接続されている部分の幅の総和を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記短辺のうち前記支持部分に接続されている部分の幅の総和を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
若しくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記長辺のうち前記支持部分に接続されている部分の個数を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記短辺のうち前記支持部分に接続されている部分の個数を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
【0104】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法において、好ましくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち、前記中間製品の幅方向に沿って前記長辺を見た場合に前記貫通孔と重なる領域は、前記支持部分に接続されていない。より好ましくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺の全域が前記支持部分に接続されていない。
【0105】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法において、前記中間製品において、前記蒸着マスク部分の前記短辺は、前記支持部分に向かって突出し、且つ前記支持部分に接続されている複数の凸部を含んでいてもよい。
【0106】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法において、前記中間製品において、前記複数の蒸着マスク部分は、前記長辺に交差する方向に並んでおり、隣り合う2つの前記蒸着マスク部分の前記長辺の間には、前記支持部分が存在しなくてもよい。
【0107】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法において、前記加工工程は、前記金属板をエッチングして、前記貫通孔、及び、前記蒸着マスク部分の前記長辺と前記支持部分との間の隙間を形成する工程を含んでいてもよい。
【0108】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法の前記加工工程において、前記蒸着マスク部分の前記長辺の方向に沿って前記金属板を搬送しながら前記金属板を加工してもよい。
【0109】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法の前記分離工程において、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所を破断させることによって、前記蒸着マスク部分を前記支持部分から分離してもよい。
【0110】
本発明のその他の態様による蒸着マスクの製造方法において、前記金属板の厚みが、50μm以下であってもよい。
【0111】
本発明のその他の態様は、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスクが割り付けられた、金属製の板状の中間製品であって、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスク部分と、前記蒸着マスク部分を囲むとともに前記蒸着マスク部分の前記短辺に部分的に接続されている支持部分と、を備え、前記蒸着マスク部分の前記長辺は、前記支持部分に接続されていない、中間製品である。
【0112】
本発明のその他の態様は、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスクが割り付けられた、金属製の板状の中間製品であって、一対の長辺及び一対の短辺を含むとともに複数の貫通孔が形成された蒸着マスク部分と、前記蒸着マスク部分を囲むとともに前記蒸着マスク部分に部分的に接続されている支持部分と、を備え、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率が、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率よりも小さい、中間製品である。
前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記長辺のうち前記支持部分に接続されている部分の幅の総和を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記短辺のうち前記支持部分に接続されている部分の幅の総和を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
若しくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記長辺のうち前記支持部分に接続されている部分の個数を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記蒸着マスク部分の前記短辺のうち前記支持部分に接続されている箇所の比率は、前記短辺のうち前記支持部分に接続されている部分の個数を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
【0113】
本発明のその他の態様による中間製品において、好ましくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺のうち、前記中間製品の幅方向に沿って前記長辺を見た場合に前記貫通孔と重なる領域は、前記支持部分に接続されていない。より好ましくは、前記蒸着マスク部分の前記長辺の全域が前記支持部分に接続されていない。
【0114】
本発明のその他の態様による中間製品において、前記蒸着マスク部分の前記短辺は、前記支持部分に向かって突出し、且つ前記支持部分に接続されている複数の凸部を含んでいてもよい。
【0115】
本発明のその他の態様による中間製品において、前記蒸着マスク部分及び前記支持部分の厚みが、50μm以下であってもよい。
【0116】
本発明のその他の態様による中間製品において、前記複数の蒸着マスク部分は、前記長辺に交差する方向に並んでおり、隣り合う2つの前記蒸着マスク部分の前記長辺の間には、前記支持部分が存在しなくてもよい。
【0117】
本発明のその他の態様は、蒸着マスクであって、一対の長辺及び一対の短辺を含む、金属製の板状の基材と、前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、前記基材の前記短辺には部分的に破断面が存在し、一方、前記基材の前記長辺には破断面が存在しない、蒸着マスクである。
【0118】
本発明のその他の態様は、蒸着マスクであって、一対の長辺及び一対の短辺を含む、金属製の板状の基材と、前記基材に形成された複数の貫通孔と、を備え、前記基材の前記長辺における破断面の比率が、前記基材の前記短辺における破断面の比率よりも小さい、蒸着マスクである。
前記基材の前記長辺における破断面の比率は、前記長辺に存在する前記破断面の幅の総和を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記基材の前記短辺における破断面の比率は、前記短辺に存在する前記破断面の幅の総和を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
若しくは、前記基材の前記長辺における破断面の比率は、前記長辺に存在する前記破断面の個数を前記長辺の長さで割ることにより算出され、前記基材の前記短辺における破断面の比率は、前記短辺に存在する前記破断面の個数を前記短辺の長さで割ることにより算出されてもよい。
【0119】
本発明のその他の態様による蒸着マスクにおいて、好ましくは、前記破断面は、前記蒸着マスクの幅方向に沿って前記長辺を見た場合に前記貫通孔と重なる領域には存在しない。より好ましくは、前記基材の前記長辺には全域にわたって破断面が存在しない。
【0120】
本発明のその他の態様による蒸着マスクにおいて、前記基材の前記短辺は、外方に突出するとともに前記破断面を有する複数の凸部を含んでいてもよい。
【0121】
本発明のその他の態様による蒸着マスクにおいて、前記基材の前記長辺から前記貫通孔までの、前記基材の面方向における最短距離が、50μm以下であってもよい。
【0122】
本発明のその他の態様による蒸着マスクにおいて、前記基材は、前記貫通孔を通った蒸着材料が付着する基板に対面する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、前記基材の前記長辺は、前記第1面と交わる部分において最も外側に突出した断面形状を有していてもよい。
【0123】
本発明のその他の態様による蒸着マスクにおいて、前記基材の厚みが、50μm以下であってもよい。
【0124】
本発明のその他の態様によれば、長辺の変形が抑制された蒸着マスクを製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
20 蒸着マスク
21 基材
22 有効領域
23 周囲領域
25 貫通孔
26 長辺
27 短辺
27a 凸部
27b 破断面
27c バリ
30 第1凹部
31 壁面
35 第2凹部
36 壁面
41 接続部
43 トップ部
50 中間製品
51 蒸着マスク部分
52 長辺
53 短辺
53a 凸部
54 接続箇所
55 隙間
56 支持部分
64 金属板
65a 第1レジストパターン
65b 第2レジストパターン
65c 第1レジスト膜
65d 第2レジスト膜
70 加工装置
72 搬送ローラー
73 分離装置
90 蒸着装置
92 有機EL基板
98 蒸着材料