(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191311
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】MITRAチップ抽出を使用してDNAの変異を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20221220BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20221220BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20221220BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20221220BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20221220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221220BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6886 Z
A61K45/00
A61P35/00
G01N33/53 M
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157362
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2019546777の分割
【原出願日】2017-11-13
(31)【優先権主張番号】62/422,334
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517308264
【氏名又は名称】クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】サンダース,ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ニゲル ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの変異を検出するための方法、および該方法において使用するキットを提供する。
【解決手段】(a)マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから溶出させた乾燥生体液サンプルから、ゲノムDNAを抽出すること;(b)複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれぞれに対応するアンプリコンを含むライブラリーを生成すること;ならびに(c)ハイスループット大規模並列シーケンシングを使用して、複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける少なくとも1つの変異を検出することを含む、方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの
変異を検出するための方法であって、
(a)マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから溶出させた乾燥生体液サンプ
ルから、ゲノムDNAを抽出すること;
(b)複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれぞれに対応するアンプリコンを含むラ
イブラリーを生成することであって、前記複数の遺伝性がんに関連する遺伝子は、APC
、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1
、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、M
EN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、P
MS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SD
HB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLを含み、
アダプター配列が複数のアンプリコンの末端にライゲートされている、生成すること;な
らびに
(c)ハイスループット大規模並列シーケンシングを使用して、複数のアンプリコンの
少なくとも1つにおける少なくとも1つの変異を検出すること
を含む、方法。
【請求項2】
乾燥生体液サンプルが、遺伝性がんを有するかまたは有する疑いのある患者から得られ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥生体液サンプルが、乾燥血漿、乾燥血清、または乾燥全血である、請求項1または
2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップ上の乾燥生体液サンプルが、指先穿刺を
介して患者から収集される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
乾燥生体液サンプルの溶出が、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、溶解
緩衝液およびプロテイナーゼKと接触させることによって実行される、請求項1から4の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶解緩衝液が、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびT
riton X-100を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
乾燥生体液サンプルの溶出が、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、溶解
緩衝液と、90℃で最大15分接触させることによって実行される、請求項5または6に
記載の方法。
【請求項8】
乾燥生体液サンプルの溶出が、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、プロ
テイナーゼKと、56℃で最大1時間接触させることによって実行される、請求項5から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乾燥生体液サンプルの溶出が、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、プロ
テイナーゼKと、56℃で最大16~18時間接触させることによって実行される、請求
項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
マイクロサンプリングデバイスが、MITRA(登録商標)チップである、請求項1か
ら9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
マイクロサンプリングデバイスのサンプル体積が、10~20μL以下である、請求項
1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
遺伝性がんが、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんである、請求項2から1
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから、400ng以下のゲノムDNAが
溶出される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから、約100ngから約400ngの
ゲノムDNAが溶出される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ハイスループット大規模並列シーケンシングが、パイロシーケンシング、可逆的ダイタ
ーミネーターシーケンシング、SOLiDシーケンシング、イオン半導体シーケンシング
、ヘリオスコープ単一分子シーケンシング、合成によるシーケンシング、ライゲーション
によるシーケンシング、またはSMRT(商標)シーケンシングを使用して実行される、
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
アダプター配列が、P5アダプター、P7アダプター、P1アダプター、Aアダプター
、またはIon Xpress(商標)バーコードアダプターである、請求項1から15
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複数のアンプリコンが、固有のインデックス配列をさらに含む、請求項1から16のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
複数のアンプリコンが、複数のアンプリコンの少なくとも1つに相補的な核酸配列を含
むベイトのセットを使用して濃縮される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項19】
ベイトのセットの核酸配列が、RNAベイト、DNAベイト、またはそれらの組合せで
ある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの
変異を検出するための方法であって、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから
溶解緩衝液およびプロテイナーゼKを用いて溶出させた乾燥生体液サンプルから、ゲノム
DNAを単離することを含み、複数の遺伝性がんに関連する遺伝子は、APC、ATM、
BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4
、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、M
LH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、P
OLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SD
HC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLを含む、方法。
【請求項21】
複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの変異が、ハイスループッ
ト大規模並列シーケンシングを使用して検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
溶解緩衝液が、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびT
riton X-100を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
遺伝性がんに関するがんの症状を示す患者またはそのリスクがある患者を、抗がん治療
剤での処置のために選択するための方法であって、
(a)血液細胞からのゲノムDNAの放出が起こる条件下で、乾燥血液サンプルを溶出
させることであって、乾燥血液サンプルは、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデ
バイスを用いて患者から収集される、溶出させること;
(b)溶出させた乾燥血液サンプルから、ゲノムDNAを単離すること;
(c)APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRI
P1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、
EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、
PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D
、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、および
VHLを含む複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれぞれに対応するアンプリコンを含
むライブラリーを生成することであって、アダプター配列が複数のアンプリコンの末端に
ライゲートされている、生成すること;
(d)ハイスループット大規模並列シーケンシングを使用して、複数のアンプリコンの
少なくとも1つにおける少なくとも1つの変異を検出すること;ならびに
(e)APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRI
P1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、
EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、
PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D
、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、および
VHLの1つまたは複数に対応する複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける変異が
検出される場合、患者を、抗がん治療剤での処置のために選択すること
を含む、方法。
【請求項24】
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスが、MITRA(登録商標)チップ
である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者が、乳がん、卵巣がん、皮膚がん、または結腸がんからなる群から選択される遺伝
性がんを有するかまたはそのリスクがある、請求項23から24のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項26】
抗がん治療剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5-フルオロウラシ
ルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダトレキセート(10-エチル-10-デ
アザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン、パクリ
タキセル、タンパク質が結合したパクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキ
シフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテ
カン、イキサベピロン、テモゾロミド、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、
エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロ
ゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、
リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、
ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、アントラサイクリン、ベバシズマブ、ア
ルデスロイキン、コビメチニブ、ダブラフェニブ、ダカルバジン、タリモジーンラハーパ
レプベック、イミキモド、組換えインターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ペン
ブロリズマブ、トラメチニブ、ニボルマブ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ソニ
デギブ、ビスモデギブ、ベムラフェニブ、セツキシマブ、塩酸イリノテカン、ロイコボリ
ンカルシウム、トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩、オキサリプラチン、パニツムマ
ブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、ならびにziv-アフリベルセプトからなる群から
選択される1種または複数の薬剤である、請求項23から25のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項27】
乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの
変異を検出するためのキットであって、皮膚を穿刺するツール、容量測定式の吸収性マイ
クロサンプリングデバイス、溶解緩衝液、およびプロテイナーゼKを含み、複数の遺伝性
がんに関連する遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、B
RCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16
)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、
NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51
C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、
TP53、およびVHLを含む、キット。
【請求項28】
複数の遺伝性がんに関連する遺伝子の1つまたは複数の、1つまたは複数の領域または
エクソンにハイブリダイズする1つまたは複数のプライマー対をさらに含む、請求項27
に記載のキット。
【請求項29】
複数の遺伝性がんに関連する遺伝子の1つまたは複数の、1つまたは複数の領域または
エクソンにハイブリダイズする1つまたは複数のベイト配列をさらに含む、請求項27ま
たは28に記載のキット。
【請求項30】
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスが、MITRA(登録商標)チップ
である、請求項27から29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
溶解緩衝液が、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびT
riton X-100を含む、請求項27から30のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんなどの遺伝性がんに関
するがんの症状を示すかまたはそのリスクがある患者が、1種または複数の治療剤での処
置によって利益を得るかどうかを決定するための方法を提供する。これらの方法は、容量
測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを使用して収集される少量の乾燥生体液サ
ンプル中の遺伝性がんに関連する変異を検出することに基づく。遺伝性がんに関連する1
種または複数の遺伝子に対応する標的核酸配列における変更は、次世代シーケンシング(
NGS)を使用して検出することができる。本方法の実施において使用するためのキット
も提供される。
【背景技術】
【0002】
以下の本発明の開示の背景の記載は、単に読者が本開示を理解するのを助けるために提
供され、本発明の開示に対する従来技術を記載または構成することを認めるものではない
。
【0003】
遺伝性がんは、全てのがんの5~10%を占め、高浸透率の生殖細胞系の変異が原因で
生じる。最も一般的な遺伝性がんは、乳がん、卵巣がん、結腸がん、および皮膚がんであ
る。遺伝子変異または病原性バリアントが遺伝することは、がんを発症させる患者のリス
クを増加させる。したがって、遺伝した病原性バリアントが原因でがんが生じるかどうか
を決定することは、がんを発症させる患者のリスクを評価することにおいて有用な可能性
があり、さらに、がんのスクリーニング、予防、および療法のための選択肢を明らかにす
ることができる。
【0004】
次世代シーケンシング(NGS)は、単一のアッセイにおいてハイスループットの様式
で複数の遺伝子の変更を検出するその能力により、がんの診断に広く使用されている。し
かしながら、生体サンプル(例えば血液)から核酸を収集し調製することに関連する手順
は通常厄介であり、特殊化した器具または専門的な能力を必要とすることが多い。さらに
、重症の患者、例えばがん患者は、繰り返しの試験のために大量の血液を提供することが
できない。
【0005】
したがって、患者が、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんなどの遺伝性がん
のリスクがあるかどうかを決定するための迅速で非侵襲的な方法への必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明の開示は、乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連す
る遺伝子における少なくとも1つの変異を検出するための方法であって、(a)マイクロ
サンプリングデバイスの吸収性チップから溶出させた乾燥生体液サンプルから、ゲノムD
NAを抽出すること;(b)複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれぞれに対応するア
ンプリコンを含むライブラリーを生成することであって、前記複数の遺伝性がんに関連す
る遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、B
RIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK
2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF
1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD5
1D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、お
よびVHLを含み、アダプター配列が複数のアンプリコンの末端にライゲートされている
、生成すること;ならびに(c)ハイスループット大規模並列シーケンシングを使用して
、複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける少なくとも1つの変異を検出することを
含む、方法を提供する。一部の実施形態において、乾燥生体液サンプルは、乾燥血漿、乾
燥血清、または乾燥全血である。一部の実施形態において、乾燥生体液サンプルは、抗凝
血剤(例えば、EDTA、ヘパリン)を含む。特定の実施形態において、乾燥生体液サン
プルは、遺伝性がんを有するかまたは有する疑いのある患者から得られる。遺伝性がんは
、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんであり得る。
【0007】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイス
の吸収性チップ上の乾燥生体液サンプルは、指先穿刺を介して患者から収集される。特定
の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップ
である。乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを
、溶解緩衝液およびプロテイナーゼKと接触させることによって実行することができる。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tw
een 20、およびTriton X-100を含む。さらなる実施形態において、溶
解緩衝液は、800mMの塩酸グアニジン;30mMのトリスCl、pH8.0;30m
MのEDTA、pH8.0;5%のTween 20;および0.5%のTriton
X-100を含む。他の実施形態において、溶解緩衝液は、2.5~10%のドデシル硫
酸ナトリウムを含む。
【0008】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、乾燥生体液サンプルの溶出は、
マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、溶解緩衝液と、90℃で最大15分接
触させることによって実行される。加えて、または代替として、特定の実施形態において
、乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、プロ
テイナーゼKと、56℃で最大1時間接触させることによって実行される。他の実施形態
において、乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップ
を、プロテイナーゼKと、56℃で最大16~18時間接触させることによって実行され
る。一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスのサンプル体積は、10~
20μL以下である。
【0009】
本方法の一部の実施形態において、400ng以下のゲノムDNAが、マイクロサンプ
リングデバイスの吸収性チップから溶出される。本方法の他の実施形態において、約10
0ngから約400ngのゲノムDNAが、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チッ
プから溶出される。
【0010】
特定の実施形態において、ハイスループット大規模並列シーケンシングは、パイロシー
ケンシング、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、SOLiDシーケンシング、イ
オン半導体シーケンシング、ヘリオスコープ単一分子シーケンシング、合成によるシーケ
ンシング、ライゲーションによるシーケンシング、またはSMRT(商標)シーケンシン
グを使用して実行される。本方法の一部の実施形態において、アダプター配列は、P5ア
ダプター、P7アダプター、P1アダプター、Aアダプター、またはIon Xpres
s(商標)バーコードアダプターである。
【0011】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、複数のアンプリコンは、固有の
インデックス配列をさらに含む。特定の実施形態において、複数のアンプリコンは、複数
のアンプリコンの少なくとも1つに相補的な核酸配列を含むベイトのセットを使用して濃
縮される。一部の実施形態において、ベイトのセットの核酸配列は、RNAベイト、DN
Aベイト、またはそれらの組合せである。
【0012】
別の態様において、本発明の開示は、乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連
する遺伝子における少なくとも1つの変異を検出するための方法であって、マイクロサン
プリングデバイスの吸収性チップから溶解緩衝液およびプロテイナーゼKを用いて溶出さ
せた乾燥生体液サンプルから、ゲノムDNAを単離することを含み、複数の遺伝性がんに
関連する遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA
2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、C
HEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN
、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、R
AD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP5
3、およびVHLを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、複数の遺伝性がん
に関連する遺伝子における少なくとも1つの変異は、ハイスループット大規模並列シーケ
ンシングを使用して検出される。一部の実施形態において、溶解緩衝液は、塩酸グアニジ
ン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびTriton X-100を含む
。
【0013】
一態様において、本発明の開示は、遺伝性がんに関するがんの症状を示す患者またはそ
のリスクがある患者を、抗がん治療剤での処置のために選択するための方法であって、(
a)血液細胞からのゲノムDNAの放出が起こる条件下で、乾燥血液サンプルを溶出させ
ることであって、乾燥血液サンプルは、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイ
スを用いて患者から収集される、溶出させること;(b)溶出させた乾燥血液サンプルか
ら、ゲノムDNAを単離すること;(c)APC、ATM、BARD1、BMPR1A、
BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14AR
Fおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6
、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTE
N、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4
、STK11、TP53、およびVHLを含む複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれ
ぞれに対応するアンプリコンを含むライブラリーを生成することであって、アダプター配
列が複数のアンプリコンの末端にライゲートされている、生成すること;(d)ハイスル
ープット大規模並列シーケンシングを使用して、複数のアンプリコンの少なくとも1つに
おける少なくとも1つの変異を検出すること;ならびに(e)APC、ATM、BARD
1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDK
N2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、
MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1
、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、S
DHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLの1つまたは複数に対応する
複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける変異が検出される場合、患者を、抗がん治
療剤での処置のために選択することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップで
ある。特定の実施形態において、患者は、乳がん、卵巣がん、皮膚がん、または結腸がん
からなる群から選択される遺伝性がんを有するかまたはそのリスクがある。
【0014】
上記実施形態のいずれかにおいて、抗がん治療剤は、シクロホスファミド、フルオロウ
ラシル(または5-フルオロウラシルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダトレ
キセート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン
、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質が結合したパクリタキセル、ド
セタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベス
トラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド〔temozolmide
〕、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシ
タビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリク
ス、ブセレリン〔buserlin〕、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミ
ドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラ
スツズマブ、タイケルブ、アントラサイクリン、ベバシズマブ、アルデスロイキン、コビ
メチニブ、ダブラフェニブ、ダカルバジン、タリモジーンラハーパレプベック、イミキモ
ド、組換えインターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、トラメ
チニブ、ニボルマブ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ソニデギブ、ビスモデギブ
、ベムラフェニブ、セツキシマブ、塩酸イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、トリフ
ルリジンおよびチピラシル塩酸塩、オキサリプラチン、パニツムマブ、ラムシルマブ、レ
ゴラフェニブ、ならびにziv-アフリベルセプトからなる群から選択される1種または
複数の薬剤である。
【0015】
乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの
変異を検出するためのキットであって、皮膚を穿刺するツール、容量測定式の吸収性マイ
クロサンプリングデバイス、溶解緩衝液、およびプロテイナーゼKを含み、複数の遺伝性
がんに関連する遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、B
RCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16
)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、
NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51
C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、
TP53、およびVHLを含む、キットも本明細書で開示される。溶解緩衝液は、塩酸グ
アニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびTriton X-100
を含んでいてもよい。
【0016】
一部の実施形態において、本発明の技術のキットは、複数の遺伝性がんに関連する遺伝
子の1つまたは複数の、1つまたは複数の領域またはエクソンにハイブリダイズする1つ
または複数のプライマー対をさらに含む。加えて、または代替として、一部の実施形態に
おいて、本発明の技術のキットは、複数の遺伝性がんに関連する遺伝子の1つまたは複数
の、1つまたは複数の領域またはエクソンにハイブリダイズする1つまたは複数のベイト
配列をさらに含む。
【0017】
本発明の技術のキットの上記実施形態のいずれかにおいて、容量測定式の吸収性マイク
ロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1に記載された3つの異なる抽出方法を使用したMITRA(登録商標)チップ1つ当たりのDNA収量を示す。
【
図2(a)】
図2(a)は、34種の遺伝子のがん素因パネル(MyVantage(商標)遺伝性包括的がんパネル〔Hereditary Comprehensive Cancer Panel〕)における、MITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルから得られた標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度を示す。
【
図2(b)】
図2(b)は、34種の遺伝子のがん素因パネル(MyVantage(商標)遺伝性包括的がんパネル)における、単一または二重のMITRA(登録商標)チップ抽出を使用して得られた乾燥血液サンプルを用いた標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度を示す。「Ops」は、慣例的な操作サンプルを指す。
【
図3】
図3は、異なるDNA抽出方法を使用した場合の、MITRA(登録商標)チップから得られたDNA収量の比較を示す。「ON」は、サンプルを特定の溶解緩衝液と共に一晩インキュベートしたことを意味する。
【
図4(a)】
図4(a)は、34種の遺伝子のがん素因パネル(MyVantage(商標)遺伝性包括的がんパネル)における、単一のMITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルから得られた標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度を示す(DNA収量は109~358ngの範囲)。QIAsymphony(登録商標)プラットフォームを使用して、DNA抽出を実行した。
【
図4(b)】
図4(b)は、34種の遺伝子のがん素因パネル(MyVantage(商標)遺伝性包括的がんパネル)における、単一または二重のMITRA(登録商標)チップ抽出を使用して得られた乾燥血液サンプルを用いた標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度を示す。4つのサンプルを二重のMITRA(登録商標)チップ抽出に供し、340~543ngの範囲のDNA収量を得た。1つのサンプル(AS)を単一のチップ抽出に供したところ、DNA収量は214ngであった。
【
図5】
図5は、MITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルを使用する場合の、ロングレンジPCRを介した、それぞれCHEK2およびPMS2標的領域に対応する10kbおよび18kbの領域の有効な増幅を示す。
【
図6】
図6は、MITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルから得られた様々なCHEK2およびPMS2エクソンの最小の読み取りカバー度を示す。
【
図7】
図7は、(a)指先穿刺を介してMITRA(登録商標)チップによって収集された血液、(b)EDTA全血と共に吸い上げたMITRA(登録商標)チップ、および(c)従来の血液採取により得られたEDTA全血、から得られたDNAを使用した標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の開示は、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんなどの遺伝性がんに関
するがんの症状を示すかまたはそのリスクがある患者が、1種または複数の治療剤での処
置によって利益を得るかどうかを決定するための方法を提供する。これらの方法は、容量
測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを使用して収集される少量の乾燥生体液サ
ンプル中の、遺伝性がんに関連する変異を検出することに基づく。さらに、本明細書で開
示される方法は、公知のPCR阻害剤であるEDTAなどの抗凝血剤を含有する乾燥生体
液サンプルで使用されても、それらの分析感度を保持する。Huggett et al
.,BMC Res Notes.1:70(2008)を参照されたい。本方法の実施
において使用するためのキットも提供される。
【0020】
定義
別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、本
発明の技術が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
数値への言及における用語「約」は、本明細書で使用される場合、一般的に、別段の指
定がない限り、または文脈からそうではないことが明白でない限り、その数値のいずれか
の方向で(それより大きいかまたはそれより小さい方向で)1%~10%の範囲内に入る
数値を包含すると解釈される。
【0022】
用語「アダプター」は、別の分子への付着を容易にするために核酸配列の末端にライゲ
ートするのに使用できる、短い化学合成された核酸配列を指す。アダプターは、一本鎖で
あってもよいし、または二本鎖であってもよい。アダプターは、PCR増幅またはシーケ
ンシングに有用な短い(典型的には50塩基対未満の)配列を取り込んでいてもよい。
【0023】
対象への治療剤または薬物の「投与」は、本明細書で使用される場合、化合物を、その
意図した機能を発揮させるために対象に導入または送達するあらゆる経路を包含する。投
与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所など
のあらゆる好適な経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他者による投
与を包含する。
【0024】
遺伝子または遺伝子産物(例えば、マーカー遺伝子または遺伝子産物)の「変更」は、
本明細書で使用される場合、遺伝子または遺伝子産物内の1つまたは複数の変異、例えば
、正常なまたは野生型遺伝子と比較して遺伝子または遺伝子産物の量または活性に影響を
与える変異の存在を指す。遺伝子の変更は、正常または健康な組織または細胞(例えば対
照)における遺伝子または遺伝子産物の量、構造および/または活性と比較した場合の、
がん組織またはがん細胞における遺伝子または遺伝子産物の量、構造および/または活性
における変化をもたらすことができる。例えば、がんに関連する変更としては、正常な健
康な組織または細胞と比較した、がん組織またはがん細胞における、変更されたヌクレオ
チド配列(例えば、変異)、アミノ酸配列、染色体転移、染色体内の逆位、コピー数、発
現レベル、タンパク質レベル、タンパク質活性を挙げることができる。例示的な変異とし
ては、これらに限定されないが、点変異(例えば、サイレント、ミスセンス、またはナン
センス)、欠失、挿入、転位、連鎖変異、重複、転移、染色体間および染色体内再編成が
挙げられる。変異は、遺伝子のコードまたは非コード領域中に存在していてもよい。特定
の実施形態において、変更は、表現型、例えば、がん表現型(例えば、がんのリスク、が
んの進行、がんの処置またはがん処置に対する耐性の1つまたは複数)と関連する。
【0025】
核酸配列に関する用語「増幅する」または「増幅」は、本明細書で使用される場合、サ
ンプル中の核酸配列の集団としてあるものを増加させる方法を指す。増幅反応においてイ
ンビトロで生成した特定の標的核酸配列のコピーは、「アンプリコン」または「増幅生成
物」と呼ばれる。増幅は、指数関数的であってもよいし、または一次関数的であってもよ
い。標的核酸は、DNA(例えば、ゲノムDNAおよびcDNAなど)であってもよいし
、またはRNAであってもよい。後述される例示的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(P
CR)を使用した増幅に関するが、例えば等温法、ローリングサークル方法などの多数の
他の方法が当業者周知である。当業者は、これらの他の方法が、PCR方法の代わりに、
またはそれと一緒に使用できることを理解するであろう。例えば、Saiki,“Amp
lification of Genomic DNA” in PCR Protoc
ols,Innis et al.,Eds.,Academic Press,San
Diego,CA 1990,pp 13-20;Wharam,et al.,Nu
cleic Acids Res.29(11):E54-E54(2001)を参照さ
れたい。
【0026】
「ベイト」は、本明細書で使用される場合、シーケンシングのために標的核酸配列を検
索するハイブリッド捕捉試薬の一種である。ベイトは、標的核酸にハイブリダイズするこ
とができ(例えば、それに相補的であり)、それにより標的核酸の捕捉を可能にする核酸
分子、例えば、DNAまたはRNA分子であり得る。一実施形態において、ベイトは、R
NA分子(例えば、天然に存在するまたは改変されたRNA分子);DNA分子(例えば
、天然に存在するまたは改変されたDNA分子)、またはそれらの組合せである。他の実
施形態において、ベイトとしては、結合性の実体が挙げられ、例えば親和性タグであり、
それは例えば結合性の実体に結合することによって、ベイトとベイトにハイブリダイズし
た核酸とによって形成されたハイブリッドの捕捉および分離を可能にするものである。一
実施形態において、ベイトは、液相ハイブリダイゼーションに好適である。
【0027】
「ベイトのセット」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数のベイト分子を指
す。
【0028】
用語「がん」または「腫瘍」は、同義的に使用され、がんの原因となる細胞に典型的な
特徴、例えば制御不能な増殖、不死、転移能、迅速な成長および増殖速度、およびある種
の特徴的な形態学的特色を有する細胞の存在を指す。がん細胞は、腫瘍の形態であること
が多いが、このような細胞は、動物中において単独で存在する場合もあり、または非腫瘍
形成性のがん細胞の場合もある。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、前がん状
態のがん、加えて悪性がんを包含する。
【0029】
用語「相補物」、「相補的」または「相補性」は、本明細書でポリヌクレオチド(すな
わち、オリゴヌクレオチドまたは標的核酸などのヌクレオチドの配列)の言及において使
用される場合、ワトソン/クリックの塩基対合ルールを指す。核酸配列の相補物は、本明
細書で使用される場合、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対合するように核酸配
列と並べた場合に「逆平行会合」の状態であるオリゴヌクレオチドを指す。例えば、配列
「5’-A-G-T-3’」は、配列「3’-T-C-A-5’」に相補的である。本明
細書に記載される核酸中に、天然に存在する核酸に一般的に見出されない特定の塩基が包
含されていてもよい。そのようなものとしては、例えば、イノシン、7-デアザグアニン
、ロックド核酸(LNA)、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる。相補性は必ず
しも完全でなくてもよく、安定な二重鎖は、ミスマッチした塩基対、変性性の、またはマ
ッチしない塩基を含有する場合もある。核酸技術分野の当業者は、例えば、オリゴヌクレ
オチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、ミスマッチした塩基対のイオ
ン強度および発生率などの可変値の数を経験的に検討して、二重鎖の安定性を決定するこ
とができる。また相補配列は、DNA配列に相補的なRNA配列またはその相補配列であ
ってもよいし、cDNAであってもよい。
【0030】
用語「実質的に相補的な」は、本明細書で使用される場合、2つの配列が、ストリンジ
ェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味する。当業者は
、実質的に相補的な配列が、必ずしもそれらの全長にわたりハイブリダイズしていなくて
もよいことを理解するであろう。特に、実質的に相補的な配列は、ストリンジェントなハ
イブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズする隣接する塩基配列に対して
3’または5’に位置する標的配列にハイブリダイズしない隣接する塩基配列を含んでい
てもよい。
【0031】
「対照」は、本明細書で使用される場合、比較目的のために実験で使用される代替サン
プルである。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。「対照核酸サンプル」または
「参照核酸サンプル」は、本明細書で使用される場合、対照または参照サンプルからの核
酸分子を指す。特定の実施形態において、参照または対照核酸サンプルは、野生型または
変異していないDNAまたはRNA配列である。特定の実施形態において、参照核酸サン
プルは、精製または単離される(例えば、参照核酸サンプルが、その天然の状態から取り
出される)。他の実施形態において、参照核酸サンプルは、同じまたは異なる対象からの
、非腫瘍サンプル、例えば、血液対照、正常な隣接する腫瘍(NAT)、または他のあら
ゆる非がん性サンプルである。
【0032】
用語「検出すること」は、本明細書で使用される場合、サンプル中の目的の核酸におけ
る変異または変更の存在を決定することを指す。検出は、100%の感度をもたらすため
の方法を必要としない。
【0033】
用語「有効量」は、本明細書で使用される場合、所望の治療的および/または予防的作
用を達成するのに十分な量、例えば、遺伝性がんまたは遺伝性がんに関連する1つまたは
複数の症状の予防またはその減少をもたらす量を指す。治療または予防的適用の状況にお
いて、対象に投与される治療剤の量は、疾患のタイプおよび重症度、ならびに個体の特徴
、例えば全身の健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐性によって決まる。またこのよ
うな量は、疾患の程度、重症度およびタイプによっても決まる。当業者は、これらおよび
他の要因に応じて適切な投薬量を決定できるであろう。治療薬物または薬剤の「治療有効
量」は、本明細書で使用される場合、乳がん、卵巣がん、結腸がん、または皮膚がんなど
の遺伝性がんの生理学的作用が最低限でも改善されるレベルを意味する。治療有効量は、
1回または複数の投与で与えることができる。
【0034】
用語「抽出」または「単離」は、本明細書で使用される場合、サンプル中に存在する他
の細胞性物質から核酸を分離すると解釈されるあらゆる作用を指す。抽出または単離とい
う用語は、機械的または化学的な溶解、界面活性物質またはプロテアーゼの添加、または
他の細胞性物質の沈殿および除去を包含する。
【0035】
「遺伝子」は、本明細書で使用される場合、RNAの産生に必要な調節およびコード配
列を含むDNA配列を指し、このようなRNAは、非コード機能を有していてもよいし(
例えば、リボソームまたはトランスファーRNA)、またはポリペプチドまたはポリペプ
チド前駆体を包含していてもよい。RNAまたはポリペプチドは、全長コード配列によっ
てコードされていてもよいし、または所望の活性または機能が保持される限り、コード配
列のいずれの部分によってコードされていてもよい。核酸の配列はDNAの形態で示すこ
とができるが、対応するRNA配列は、チミンがウラシルで置き換えられた、すなわち「
T」が「U」で置き換えられた類似の配列を有することを、当業者は認識している。
【0036】
用語「ハイブリダイズする」は、本明細書で使用される場合、2つの実質的に相補的な
(少なくとも14から25ヌクレオチドのストレッチにわたり、少なくとも約65%相補
的な、少なくとも約75%、または少なくとも約90%相補的な)核酸鎖が適切にストリ
ンジェントな条件下で互いにアニールして、相補的塩基対間の水素結合の形成を介して二
重鎖またはヘテロ二重鎖を形成するプロセスを指す。ハイブリダイゼーションは、典型的
には、さらに好ましくは、プローブの長さの核酸分子、好ましくは15~100ヌクレオ
チドの長さ、より好ましくは18~50ヌクレオチドの長さの核酸分子を用いて実行され
る。核酸ハイブリダイゼーション技術は当技術分野において周知である。例えば、Sam
brook,et al.,1989,Molecular Cloning:A La
boratory Manual,Second Edition,Cold Spri
ng Harbor Press,Plainview,N.Y.を参照されたい。ハイ
ブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強
度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、および形成された
ハイブリッドの熱融点(Tm)のような要因の影響を受ける。当業者は、少なくとも所望
のレベルの相補性を有する配列が、安定してハイブリダイズするが、より低い相補性を有
するものはハイブリダイズしないようなハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシ
ーをどのように推測し調整するかを理解している。ハイブリダイゼーション条件およびパ
ラメーターの例については、例えば、Sambrook,et al.,1989,Mo
lecular Cloning:A Laboratory Manual,Seco
nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Plai
nview,N.Y.;Ausubel,F.M.et al.1994,Curren
t Protocols in Molecular Biology,John Wi
ley & Sons,Secaucus,N.J.を参照されたい。一部の実施形態に
おいて、特異的なハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーショ
ン条件下で起こる。標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド(例
えば、プローブまたはプライマー)は、好適な条件下で標的核酸に「ハイブリダイズする
」ことになる。
【0037】
用語「個体」、「患者」、または「対象」は、本明細書で使用される場合、個々の生物
、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトであり得る。好ましい実施形態において、個体、患者
または対象は、ヒトである。
【0038】
用語「ライブラリー」は、本明細書で使用される場合、核酸配列の集合体、例えば、ゲ
ノム全体、サブゲノム断片、cDNA、cDNA断片、RNA、RNA断片、またはそれ
らの組合せ由来の核酸の集合体を指す。一実施形態において、ライブラリー核酸配列の一
部または全ては、アダプター配列を含む。アダプター配列は、一方または両方の末端に配
置されていてもよい。アダプター配列は、例えば、シーケンシング方法(例えば、NGS
方法)、増幅、逆転写、またはベクターへのクローニングにとって有用であり得る。
【0039】
ライブラリーは、核酸配列、例えば、標的核酸配列(例えば、腫瘍核酸配列)、参照核
酸配列、またはそれらの組合せ)の集合体を含んでいてもよい。一部の実施形態において
、ライブラリーの核酸配列は、単一の対象由来であってもよい。他の実施形態において、
ライブラリーは、1人より多くの対象(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、20、30人またはそれより多くの対象)からの核酸配列を含んでいてもよい。一部の
実施形態において、異なる対象からの2つまたはそれより多くのライブラリーを組み合わ
せて、1人より多くの対象からの核酸配列を有するライブラリーを形成してもよい。一実
施形態において、対象は、遺伝性がんを有するかまたは有するリスクがあるヒトである。
【0040】
「ライブラリー核酸配列」は、ライブラリーのメンバーである核酸分子、例えば、DN
A、RNA、またはそれらの組合せを指す。典型的には、ライブラリー核酸配列は、DN
A分子、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAである。一部の実施形態において、ライブ
ラリー核酸配列は、断片化された、例えば、剪断された、または酵素によって調製された
ゲノムDNAである。特定の実施形態において、ライブラリー核酸配列は、対象からの配
列、および対象由来ではない配列、例えば、アダプター配列、プライマー配列、または同
定を可能にする他の配列、例えば「バーコード」配列を含む。
【0041】
「次世代シーケンシングまたはNGS」は、本明細書で使用される場合、個々の核酸分
子のヌクレオチド配列を決定するか(例えば、単一分子シーケンシングで)、またはハイ
スループットの並列様式で個々の核酸分子につきクローン的に拡張された代用データ〔pr
oxies〕のヌクレオチド配列を決定するか(例えば、103個より多く、104個、10
5個またはそれより多くの分子が同時にシーケンシングされる)のいずれかの、あらゆる
シーケンシング方法を指す。一実施形態において、ライブラリー中の核酸種の相対的な存
在度は、シーケンシング実験によって作成されたデータにおけるそれらの同族配列の相対
的な発生数を数えることによって推測することができる。次世代シーケンシング方法は当
技術分野において公知であり、例えば、Metzker,M.Nature Biote
chnology Reviews11:31-46(2010)で説明されている。
【0042】
「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、主として規定の間隔の同一な
単量体単位で構成される骨格上に核酸塩基の配列を有する分子を指す。塩基は、それらが
オリゴヌクレオチドの塩基に相補的な塩基配列を有する核酸と結合できるような様式で骨
格上に配置される。最も一般的なオリゴヌクレオチドは、糖リン酸単位の骨格を有する。
2’位にヒドロキシル基を有さないオリゴデオキシリボヌクレオチドと、2’位にヒドロ
キシル基を有するオリゴリボヌクレオチドとは、区別することができる。またオリゴヌク
レオチドは、ヒドロキシル基の水素が有機基、例えばアリル基で置き換えられた誘導体を
包含する場合もある。プライマーまたはプローブとして機能するオリゴヌクレオチドは、
一般的に、少なくとも約10~15ヌクレオチドの長さ、または最大約70、100、1
10、150または200ヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも約15から2
5ヌクレオチドの長さである。特定の標的核酸を特異的に増幅したり、または特異的に検
出したりするためのプライマーまたはプローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、
一般的に、標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能である。
【0043】
用語「プライマー」は、本明細書で使用される場合、標的核酸鎖に相補的なプライマー
の伸長生成物の合成が誘導される条件下、すなわち、適切な緩衝液(「緩衝液」は、pH
、イオン強度、補因子などを包含する)中において好適な温度で、異なるヌクレオチド三
リン酸およびポリメラーゼの存在下に配置された場合、核酸配列合成の開始点として作用
することができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーのヌクレオチドの1つまたは複
数は、例えばメチル基、ビオチンもしくはジゴキシゲニン部分、蛍光性タグの付加によっ
て、または放射性ヌクレオチドを使用することによって修飾されていてもよい。プライマ
ー配列は、必ずしもテンプレートの正確な配列を反映していなくてもよい。例えば、非相
補的ヌクレオチド断片が、プライマーの5’末端に付着されており、プライマー配列の残
りが、鎖に実質的に相補的であってもよい。本明細書で使用されるプライマーという用語
は、合成することができるプライマーの全ての形態、例えばペプチド核酸プライマー、ロ
ックド核酸プライマー、ホスホロチオエートで修飾されたプライマー、標識されたプライ
マーなどを包含する。用語「フォワードプライマー」は、本明細書で使用される場合、二
本鎖DNA(dsDNA)のアンチセンス鎖にアニールするプライマーを意味する。「リ
バースプライマー」は、dsDNAのセンス鎖にアニールする。
【0044】
プライマーは、典型的には、少なくとも10、15、18、または30ヌクレオチドの
長さ、または最大約100、110、125、または200ヌクレオチドの長さである。
一部の実施形態において、プライマーは、好ましくは約15から約60ヌクレオチドの間
の長さであり、最も好ましくは約25から約40ヌクレオチドの間の長さである。一部の
実施形態において、プライマーは、15から35ヌクレオチドの長さである。最適なハイ
ブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応増幅にとって標準的な長さはない。特定
のプライマーの適用にとって最適な長さは、H.Erlich,PCR Technol
ogy,PRINCIPLES AND APPLICATION FOR DNA A
MPLIFICATION,(1989)に記載される方式で容易に決定することができ
る。
【0045】
用語「プライマー対」は、本明細書で使用される場合、目的の核酸の所与の領域を増幅
するのに一緒に使用できるフォワードプライマーとリバースプライマーとの対(すなわち
、左側のプライマーと右側のプライマーとの対)を指す。
【0046】
「プローブ」は、本明細書で使用される場合、ハイブリダイゼーションを介して標的核
酸と相互作用する核酸を指す。プローブは、標的核酸配列に完全に相補的であってもよい
し、または部分的に相補的であってもよい。相補性のレベルは、一般的にプローブの機能
に基づく多くの要因によって決まる。プローブは、標識されていてもよいし、もしくは非
標識でもよく、または当技術分野において周知の様々な方法のいずれかで修飾されていて
もよい。プローブは、標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。プローブは
、DNA、RNAまたはRNA/DNAハイブリッドであり得る。プローブは、オリゴヌ
クレオチド、人工染色体、断片化した人工染色体、ゲノム核酸、断片化したゲノム核酸、
RNA、組換え核酸、断片化した組換え核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸、
環状の複素環のオリゴマー、または核酸のコンジュゲートであり得る。プローブは、修飾
された核酸塩基、修飾された糖部分、および修飾されたインターヌクレオチド結合を含ん
でいてもよい。プローブは、典型的には、少なくとも約10、15、20、25、30、
35、40、50、60、75、100ヌクレオチドの長さであるか、またはそれより長
い。
【0047】
用語「サンプル」は、本明細書で使用される場合、患者から得られた臨床サンプルを指
す。好ましい実施形態において、サンプルは、対象から収集される組織または体液などの
生物学的な源から得られる(すなわち、「生体サンプル」)。サンプル源としては、これ
らに限定されないが、粘液、痰(処理済みまたは未処理)、気管支肺胞洗浄液(BAL)
、気管支洗浄液(BW)、血液、体液、髄液(CSF)、尿、血漿、血清、または組織(
例えば、生検材料)が挙げられる。好ましいサンプル源としては、血漿、血清、または全
血が挙げられる。
【0048】
用語「感度」は、本明細書で本発明の技術の方法への言及において使用される場合、配
列のヘテロジニアスな集団中で予め選択された配列バリアントを検出する方法の能力の尺
度である。予め選択された配列バリアントがサンプル中の配列の少なくともF%として存
在するサンプルと仮定して、方法が、予め選択されたC%の信頼性、時間のS%で予め選
択された配列を検出することができる場合、その方法は、F%のバリアントに対してS%
の感度を有する。一例として、予め選択されたバリアント配列がサンプル中の配列の少な
くとも5%として存在するサンプルと仮定して、方法が、予め選択された99%の信頼性
、10回のうち9回(F=5%;C=99%;S=90%)で予め選択された配列を検出
することができる場合、その方法は、5%のバリアントに対して90%の感度を有する。
例示的な感度としては、少なくとも50、60、70、80、90、95、98、および
99%が挙げられる。
【0049】
用語「特異的な」は、本明細書でオリゴヌクレオチドプライマーへの言及において使用
される場合、オリゴヌクレオチドと核酸とを並べたときに、プライマーのヌクレオチド配
列が、増幅しようとする核酸の一部と少なくとも12塩基の配列同一性を有することを意
味する。核酸に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーは、ストリンジェントなハイブリ
ダイゼーションまたは洗浄条件下で、目的の標的にハイブリダイズできるが、目的ではな
い核酸に実質的にハイブリダイズしないものである。より高いレベルの配列同一性が好ま
しく、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90
%、少なくとも85~95%であり、より好ましくは、少なくとも98%の配列同一性で
ある。配列同一性は、市販のコンピュータープログラムを、当技術分野において周知のア
ルゴリズムを採用するデフォルト設定で使用して決定することができる。「高い配列同一
性」を有する配列は、本明細書で使用される場合、並べられたヌクレオチド位置の少なく
とも約50%、好ましくは並べられたヌクレオチド位置の少なくとも約60%、より好ま
しくは並べられたヌクレオチド位置の少なくとも約75%に、同一なヌクレオチドを有す
る。
【0050】
「特異性」は、本明細書で使用される場合、実際に存在する予め選択された配列バリア
ントを、シーケンシングアーティファクトまたは他の密接に関連した配列から区別する方
法の能力の尺度である。これは、偽陽性検出を回避する能力である。偽陽性検出は、サン
プル調製中に目的の配列に導入されたエラー、シーケンシングのエラー、または偽遺伝子
もしくは遺伝子ファミリーのメンバーのような密接に関連した配列の不注意なシーケンシ
ングに起因する可能性がある。XTrue種の配列が実際にバリアントであり、XNot
true種が実際にバリアントではないNTotal種の配列のサンプルセットに適用
されたとき、方法が、実際にバリアントではないものの少なくともX%をバリアントでは
ないとして選択する場合、その方法は、X%の特異性を有する。例えば、500種の配列
が実際にバリアントであり、500種が実際にバリアントではない1,000種の配列の
サンプルセットに適用されたとき、方法が、500種の実際にバリアント配列ではないも
のの90%をバリアントではないとして選択する場合、その方法は、90%の特異性を有
する。例示的な特異性としては、少なくとも50、60、70、80、90、95、98
、および99%が挙げられる。
【0051】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、本明細書で使用される場
合、以下:50%ホルムアミド、5×SSC、50mMのNaH2PO4、pH6.8、
0.5%SDS、0.1mg/mLの超音波破砕したサケ精子DNA、および5×デンハ
ルト溶液中での、42℃で一晩のハイブリダイゼーション;2×SSC、0.1%SDS
を用いた、45℃での洗浄;および0.2×SSC、0.1%SDSを用いた、45℃で
の洗浄と少なくとも同程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を指す。別
の例において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、20個の隣接するヌ
クレオチドのストレッチにわたり2つより多くの塩基が異なる2つの核酸のハイブリダイ
ゼーションを許容しないはずである。
【0052】
用語「標的核酸」または「標的配列」は、本明細書で使用される場合、分析しようとす
るサンプル中の、検出および/または定量化しようとする目的の核酸配列を指す。標的核
酸は、染色体のセグメント、遺伝子間配列を有するまたは有さない完全な遺伝子、遺伝子
間配列を有するまたは有さない遺伝子のセグメントもしくは一部、またはプローブまたは
プライマーが設計される核酸の配列で構成されていてもよい。標的核酸としては、野生型
配列、変異、欠失、挿入もしくは重複、タンデムリピートエレメント、目的の遺伝子、目
的の遺伝子の領域、またはそれらのあらゆる上流もしくは下流の領域を挙げることができ
る。標的核酸は、特定の遺伝子の代替配列または対立遺伝子を表す場合もある。標的核酸
は、ゲノムDNA、cDNA、またはRNAから誘導されたものでもよい。
【0053】
用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、本明細書で使用される場合、
有益なまたは所望の臨床結果、例えば、これらに限定されないが、疾患または状態の1つ
または複数の徴候または症状の軽減または改善(例えば、部分的または完全な後退)、疾
患の程度を低減すること、疾患の安定した状態(すなわち、悪化しないこと、疾患の安定
を達成すること)、疾患の状態の改善または一時的緩和、進行速度または進行時間を低減
すること、および寛解(部分寛解または完全寛解のいずれも)などを達成するための行為
を指す。
【0054】
本発明の技術の方法で採用されるマイクロサンプリングデバイス
従来の乾燥血液のスポット技術は、不正確なサンプル体積や、一定のサンプル粘度への
依存(すなわち、サンプルがサンプルカード上に均一に塗り広げられるという見込み)な
どの多数の欠点が付随する。カード上に等しい体積サンプルが投与される場合、粘度が一
定であれば、血液スポットの直径は一定のままになる。しかしながら、粘度は、血液中の
ヘマトクリット(HCT)またはパック細胞容積(PCV)レベルが異なるために、血液
サンプル間で顕著に変動する。高いヘマトクリットレベルを有するサンプルは、血液スポ
ット紙上により小さい直径のスポットを形成することから、サンプリングしたスポットの
固定した直径内に異なる濃度の血液をもたらす。PCVレベルは、スポット直径において
約45%の変動を示すと考えられる。内部標準はスポットされた血液上に噴霧されるため
、これは、定量化において45%のエラーを引き起こす可能性がある。本明細書で開示さ
れた方法で採用されるマイクロサンプリングデバイスは、より正確な血液体積を回収でき
ること、ヘマトクリットの偏りがないこと、および実験室での処理のために標準的な液体
を取り扱う者でも簡単に自動化できる能力などの数々の利点を付与する。
【0055】
加えて、従来の血液スポット技術は、開示されたマイクロサンプリングデバイスと比べ
て比較的大量の血液を必要とする。乾燥血液スポットは、一般的に、スポット1つ当たり
50~75μlを必要とするが、マイクロサンプリングデバイスは、およそ20μlから
結果を得ることができる。乾燥血液スポットはしばしば、ウイルス負荷量を検出する場合
、血漿などの他のサンプルタイプと比較して性能が一定しない問題を有すること(Pan
nus et al.,Medicine,95:48(e5475)(2016))、
さらに、特定のタイプの評価(例えば、光学密度)の場合、乾燥血液スポットの体積を、
血清などの他のサンプルタイプと比較して著しく多くする必要性がある場合があること(
Brandao et al.,J.Clin.Virol.,57:98-102(2
013))が当技術分野において認識されている。実際に、抗レトロウイルス剤療法を受
けているHIV患者においてウイルス負荷量および処置の失敗を検出するための乾燥血液
スポットと血漿スポットの両方のスクリーニングを使用したところ、どちらも高い割合の
偽陽性を生じたことが見出された(Sawadogo et al.,J.Clin.M
icrobiol.,52(11):3878-83(2014))。
【0056】
本発明の技術の方法において有用なマイクロサンプリングデバイスは、遠位端および近
位端を有する吸収性チップを含む。吸収性チップの遠位端の幅は、近位端の幅と比較して
狭い。近位端は、ホルダーに取り付けられ、それに対して遠位端は、血液などの吸収させ
ようとする流体と接触するように設計される。マイクロサンプリングデバイスは、血液な
どの生体液サンプルを、容易に乾燥させ、輸送し、次いで後で分析することを可能にする
。特定の実施形態において、生体液は、指先穿刺による血液である。
【0057】
吸い上げ作用により、血液は吸収性チップに吸い込まれる。吸収性チップとホルダーと
の間に任意選択の障壁があってもよく、それにより血液がホルダーに通過したりまたは吸
い上げられたりすることを防ぐ。吸収性チップは、過量の流体が利用可能であっても、実
質的に同じ体積の流体を吸い上げる材料で構成される(容量測定式の吸収性マイクロサン
プリングまたはVAMS(商標))。吸収性チップの体積は、吸収された流体の体積に影
響を与える。吸収性チップのサイズおよび形状は、吸収される血液の体積および吸収の速
度を調整するために、変更することができる。約7~15μL、約20μL、さらには最
大約30μLもの血液体積を受け入れることができる。サンプリング時間は、約2秒、約
3秒、約5秒、または最大約10秒であり得る。
【0058】
一部の実施形態において、吸収性チップに使用される材料は、親水性である(例えば、
ポリエステル)。代替として、材料は、最初のうちは疎水性であってもよく、その後、そ
れを親水性になるように処理してもよい。疎水性マトリックスは、様々な公知の方法、例
えばマトリックスのプラズマ処理または界面活性剤処理(例えば、Tween-40また
はTween-80)によって親水性にすることができる。一部の実施形態において、プ
ラズマ処理は、ポリオレフィン、例えばポリエチレンなどの疎水性材料を親水性にするの
に使用される。代替として、表面への親水性ポリマーのグラフト化、および糖などの極性
または親水性分子での表面上の活性基の化学的官能化が、吸収性チップのために親水性表
面を達成するのに使用することができる。また共有結合による改変も、吸収性チップの表
面に極性または親水性官能基を付加するのに使用することができる。吸収性チップにとっ
て好適な他の材料としては、焼結ガラス、焼結鋼、焼結セラミック、および焼結プラスチ
ックポリマー、および焼結ポリエチレンが挙げられる。
【0059】
一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスは、約2~5秒で最大約20
μLの血液を吸収するのに十分なサイズを有し、約5mm(0.2インチ)未満の長さ、
および約20mm2未満の断面積、および約4g/cc未満の密度を有する、親水性のポ
リマー性材料で作製された吸収性チップを含む。一部の実施形態において、吸収性チップ
は、ポリエチレンで構成され、好ましくは1~7秒以内、より好ましくは約1~5秒以内
に約1~20マイクロリットルの血液を吸収するように設計される。吸収性チップは、乾
燥血液、乾燥抗凝血剤または内部標準の1つまたは複数を含有していてもよい。
【0060】
特定の実施形態において、吸収性チップは、約35mm3の体積を有し、約3秒で約1
3~14マイクロリットルの血液を吸収し、約2.5秒で9~10マイクロリットルの血
液を吸収し、約38%の細孔容積を有する。他の実施形態において、吸収性チップは、約
24マイクロリットルの体積、約0.6g/ccの密度を有し、約2.5秒で約10マイ
クロリットルの血液を吸収し、約40%の細孔容積を有する。一部の実施形態において、
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスは、参照によりその全体が本明細書に
組み入れられるUS2013/0116597に記載されるようなMITRA(登録商標
)チップである。
【0061】
吸収性チップは、狭く丸い遠位端を有する円錐台に似た外形に成形されてもよい。一部
の実施形態において、ホルダーは、吸収性チップの中心内部の凹部にはまり、吸収性チッ
プとホルダーの縦軸に沿って伸びる円筒状の柱を有する。吸収性チップの円錐型の形状は
、サンプルを迅速かつ均一に吸い上げることを助ける。
【0062】
ホルダーは、ピペットとの使用に適合させることができる。一部の実施形態において、
管状の円錐型の形状のホルダーが好ましく、吸収性チップは、ホルダーの狭い末端上にあ
る。ホルダーのより幅広な逆の末端は、閉じていてもよいし、または開いていて中空であ
ってもよく、任意選択で、ピペットチップに取り付けられるように設計されていてもよい
。ホルダーは、外側に伸長するフランジを有していてもよく、このようなフランジは、ホ
ルダー、乾燥棚または試験器具中の合わせ構造を突き合わせて、このようなホルダー、乾
燥棚および試験器具中の所望の位置に吸収性チップを位置決めするのを助けるように配置
される。
【0063】
特定の実施形態において、ホルダーは、ピペットチップ、またはピペットチップと入れ
子になるように設計された先細の管状構造を包含していてもよい。吸収性チップは、ポリ
エチレンで構成されていてもよく、吸収性チップとホルダーはどちらも、無菌条件下で作
製されるか、または最後に滅菌される。吸収性チップは、乾燥抗凝血剤を含有していても
よい。一部の実施形態において、ホルダーは、ホルダーの長さに沿って伸長する複数のリ
ブを有する。リブは、輸送のために、または吸収性チップ中の乾燥血液の抽出のために、
吸収性チップが、ホルダーおよび吸収性チップが設置されている凹部の壁と接触すること
を防ぐように選択された高さおよび長さを有していてもよい。
【0064】
少量のサンプルを吸収した後、吸収性チップを乾燥させる。一部の実施形態において、
少量の血液サンプルを、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、少な
くとも40分、少なくとも50分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3
時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少
なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少
なくとも48時間、少なくとも72時間、または少なくとも96時間、周囲温度または室
温で乾燥させる。特定の実施形態において、少量の血液サンプルを約2~3時間乾燥させ
る。
【0065】
乾燥は、好適な棚またはホルダー上で行ってもよいし、または好ましくは、吸収性チッ
プおよびホルダーは、吸収性チップと乾燥容器の壁または他の可能性のある汚染物質表面
との接触を最小化しながら、乾燥を促進するように設計された特殊な乾燥容器に移しても
よい。乾燥容器は、乾燥を促進するために、乾燥剤を有していてもよい。また乾燥容器は
、汚染を防ぐために、運送のために密封できる保護カバーを備えていてもよい。一部の実
施形態において、カバーは、表面を有し、その上に、乾燥血液サンプルの源を識別し、他
の関連情報を提供するために、印刷された表示が記載されていてもよい。一部の実施形態
において、容器の寸法、および容器内のホルダーの相対的な位置は、SBS Micro
wellのプレートの仕様に従うものとする。マイクロサンプリングデバイスおよび乾燥
容器は、乾燥を助けるために乾燥剤と共にプラスチックバッグ中に入れてもよく、さらに
、この様式で輸送されるか、または乾燥剤を除去した後に輸送されるかのいずれでもよい
。
【0066】
一部の実施形態において、ホルダーのより幅広な逆の末端は、中空であり、容器は、ホ
ルダーの中空の末端にはまり、取り外し可能にかみ合う大きさの、据え付けの突出部分を
有する第1の部分を有する。加えて、または代替として、容器は、第1の部分に取り外し
可能に留められた第2の部分を有し、さらに、ホルダーの運送のために、ホルダーの一部
を内包するように設計された凹部を有する。容器は、空気をマイクロサンプリングデバイ
スの吸収性チップと接触させる複数の開口部を含んでいてもよい。さらに、第1の部分は
、その中にアクセスポートを有する面を有していてもよく、このような面は、ポート全体
に、さらにホルダーが据え付けの突出部上にある場合はホルダー上に表示を適用できるよ
うに、十分なサイズを有し、そのように配置される。
【0067】
吸収性チップは、試験場所で受け取ったら、手作業かまたは自動化手段を介するかのい
ずれかで、予め決定された体積の好適な緩衝液(本明細書に記載されるように)中で溶出
させて、乾燥血液から目的の核酸またはタンパク質を抽出することができる。流体および
/または吸収性チップの物理的なかき混ぜ技術、例えば超音波破砕またはボルテックス混
合は、乾燥血液から液体サンプルマトリックスへの抽出プロセスを促進することができる
。さらなる分析のためのサンプルマトリックスをさらに簡易化にするために、物理的な分
離技術、例えば遠心分離、蒸発/再溶解、濃縮、沈殿、液体/液体抽出、および固相抽出
を使用することができる。
【0068】
各容器が複数のホルダーを内包していてもよく、その場合、各ホルダーは、その遠位端
に吸収性チップを含み、中空の近位端を有する。容器は同様に、それぞれ複数のホルダー
の中空の末端にはまり、取り外し可能にかみ合う大きさの複数の細長い据え付けの突出部
を有する。容器の第2の部分は、容器内の別々の囲いの中に複数のホルダーのそれぞれを
別々に内包するように設計された凹部を有する。特定の実施形態において、複数のホルダ
ーのそれぞれは、ホルダーの長さに沿って伸長する複数のリブを有し、リブは、吸収性チ
ップが容器の壁と接触することを防ぐように設計されている。要求に応じて、吸収性チッ
プ中の血液の乾燥または乾燥の維持を助けるために、容器の内部に乾燥剤が入れられてい
てもよい。各ホルダーは、シリアルナンバーなどの、ホルダーを容器や少なくとも1つの
他のホルダーと関連付ける可視的な表示を有していてもよく、シリアルナンバーの様々な
部分は、関連するホルダー/吸収性チップおよびその中にホルダーを輸送する容器を示す
。
【0069】
核酸の抽出
一態様において、本発明の開示は、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイス
(例えば、MITRA(登録商標)チップ)を用いて収集された乾燥生体液サンプルから
ゲノムDNAを抽出するための方法を提供する。一部の実施形態において、乾燥生体液サ
ンプルは、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、溶解緩
衝液およびプロテイナーゼKと接触させることによって溶出される。溶解緩衝液は、塩酸
グアニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびTriton X-10
0を含んでいてもよい。プロテイナーゼKは、広範囲のpH範囲(4~12)にわたり安
定な広範に使用されるセリンプロテアーゼであり、最適なpHはpH8.0である。プロ
テイナーゼK切断の優勢な部位は、ブロックされたアルファアミノ基を有する脂肪族およ
び芳香族アミノ酸のカルボキシル基に隣接するペプチド結合である。反応温度を37℃か
ら50~60℃に上昇させることは、プロテイナーゼK活性を数倍に増加させる可能性が
ある。プロテイナーゼK活性は、0.5~1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、3M
塩化グアニジニウム、1Mグアニジニウムチオシアネート、または4M尿素の添加によっ
て強化することができる。
【0070】
代替として、核酸の抽出のための他のプロトコールを本発明の技術の方法で使用しても
よい。他の市販の核酸精製キットの例としては、Molzym GmbH&Co KG(
Bremen、DE)、Qiagen(Hilden、DE)、Macherey-Na
gel(Dueren、DE)、Roche(Basel、CH)またはSigma(D
eisenhofen、DE)が挙げられる。また、支持体材料としてのポリスチレンビ
ーズなどの使用に基づく核酸精製のための他のシステムも使用することができる。
【0071】
一部の実施形態において、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを用いて
収集された乾燥生体液サンプルからのゲノムDNAの抽出は、乾燥生体液サンプル中に存
在する細胞中の核タンパク質複合体を変性させることを含む。特定の実施形態において、
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを用いて収集された乾燥生体液サンプ
ルからのゲノムDNAの抽出は、タンパク質汚染物質を除去すること、ヌクレアーゼ活性
を不活性化すること、および/または乾燥生体液サンプル中に存在する生物学的および/
または化学的な汚染物質を除去することを含む。
【0072】
一部の実施形態において、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを用いて
収集された乾燥生体液サンプルからのゲノムDNAの抽出は、自動DNA抽出プラットフ
ォームを使用して実行することができる。一部の実施形態において、自動DNA抽出プラ
ットフォームは、ハイスループット能力を有し、例えば1サイクル当たり最大100種の
抽出能を有する。特定の実施形態において、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデ
バイスを用いて収集された乾燥生体液サンプルからのゲノムDNAの抽出は、市販の自動
ワークステーション、例えばQIAsymphony(登録商標)またはHamilto
n(登録商標)オートメーションを使用して実行することができる。一部の実施形態にお
いて、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスを用いて収集された乾燥生体液
サンプルからのゲノムDNAの抽出は、Biorobot(登録商標)EZ1(商標)自
動システムで実行される。一部の実施形態において、容量測定式の吸収性マイクロサンプ
リングデバイスを用いて収集された乾燥生体液サンプルからのゲノムDNAの抽出は、市
販の試薬キットを使用して実行される。
【0073】
マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅〔Multiplex Ligation-dependent P
robe Amplification〕(MLPA)
マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)は、単一のプライマ
ー対のみで複数の標的の増幅が可能なマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応のバリエー
ションである。MLPA反応は、4つの主要な工程:1)DNA変性およびMLPA半プ
ローブのハイブリダイゼーション;2)ライゲーション反応;3)PCR増幅;4)電気
泳動による増幅生成物の分離に分けることができる。第1の工程中、DNAを変性させ、
MLPAプローブの混合物と共に一晩インキュベートする。各MLPAプローブは、DN
Aにおける隣接する標的部位を認識する2つのオリゴヌクレオチド(または半プローブ)
からなる。一方の半プローブオリゴヌクレオチドは、フォワードプライマーによって認識
される配列を含み、他方の半プローブは、リバースプライマーによって認識される配列を
含む。半プローブオリゴヌクレオチドの両方がそれらそれぞれの標的にハイブリダイズす
るときにのみ、半プローブは完全なプローブにライゲートする。半プローブを使用する利
点は、ライゲートしたオリゴヌクレオチドのみが増幅されるが、未結合の半プローブオリ
ゴヌクレオチドは増幅されないことである。ライゲートしたプローブのみがそれに続くP
CR反応で指数関数的に増幅することになるため、プローブライゲーション生成物の数が
、サンプル中の標的配列の数の尺度になる。
【0074】
それぞれの完全なプローブは、その結果得られたアンプリコンが(キャピラリー)電気
泳動によって分離し同定できるように、固有の長さを有する。この特色は、マルチプレッ
クスPCRの分解能の限界を回避する。プローブ増幅に使用されるフォワードプライマー
は検出可能に標識されているため、各アンプリコンは、キャピラリーシーケンサーによっ
て検出可能な蛍光性のピークを生成する。所与のサンプルで得られたピークパターンを、
様々な参照サンプルで得られたものと比較することにより、各アンプリコンの相対量を決
定することができる。この比率は、サンプルDNA中に存在する標的配列の比率の尺度で
ある。
【0075】
NGSプラットフォーム
アダプターでタグ付けされたアンプリコンライブラリーの産生後、アンプリコンは、ハ
イスループット大規模並列シーケンシング(すなわち次世代シーケンシング)を使用して
シーケンシングされる。一部の実施形態において、ハイスループットの大規模並列シーケ
ンシングは、可逆的ダイターミネーターを用いた合成によるシーケンシングを採用する。
他の実施形態において、シーケンシングは、ライゲーションによるシーケンシングを介し
て実行される。他の実施形態において、シーケンシングは、単一分子シーケンシングであ
る。次世代シーケンシング技術の例としては、これらに限定されないが、パイロシーケン
シング、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、SOLiDシーケンシング、イオン
半導体シーケンシング、ヘリオスコープ単一分子シーケンシングなどが挙げられる。
【0076】
Ion Torrent(商標)(Life Technologies、Carls
bad、CA)アンプリコンシーケンシングシステムは、DNA複製における未改変ヌク
レオチドの取り込み中の水素イオンの放出によって引き起こされるpH変化を検出するフ
ローベースのアプローチを採用する。このシステムとの併用のために、シーケンシングラ
イブラリーは、最初に、シーケンシングアダプターを端部に有するDNA断片を生成する
ことによって産生される。一部の実施形態において、これらの断片は、エマルジョンPC
Rにより粒子上でクローン的に増幅することができる。次いで増幅したテンプレートを有
する粒子は、シリコン半導体シーケンシングチップ中に入れられる。複製中、チップに順
次1種ずつヌクレオチドが注入され、チップの特定のマイクロウェル中でヌクレオチドが
DNA分子を補完すると、それが取り込まれることになる。ポリメラーゼによってヌクレ
オチドがDNA分子中に取り込まれるときに、プロトンが自然に放出され、結果としてp
Hの検出可能な局所的変化が生じる。次いで、そのウェル中で溶液のpHが変化し、それ
がイオンセンサーによって検出される。テンプレート配列中にホモポリマーの反復が存在
する場合、1回のサイクルで複数のヌクレオチドが取り込まれることになる。それにより
、対応する数の放出された水素および比例的により多くの電子シグナルが生じる。
【0077】
454(商標) GS FLX(商標)シーケンシングシステム(Roche、ドイツ
)は、ラージスケールの並列パイロシーケンシングシステムにおいて光ベースの検出手法
を採用する。パイロシーケンシングは、DNA重合、一度に1種のヌクレオチド種を付加
すること、および付着したピロリン酸の放出によって放出された光により所与の配置に付
加されたヌクレオチドの数を検出し定量化することを使用する。454(商標)システム
との併用のために、アダプターがライゲートしたDNA断片を、油中水型エマルジョン中
の低分子DNA捕捉ビーズに固定し、PCR(エマルジョンPCR)によって増幅する。
DNAが結合したビーズのそれぞれをピコタイタープレート上のウェルに入れ、シーケン
シング試薬をプレートのウェルにわたり送達する。シーケンシング処理中に、4種のDN
Aヌクレオチドを、ピコタイタープレートデバイスにわたり固定した順番で逐次的に添加
する。ヌクレオチドのフロー中、ビーズのそれぞれに結合したDNAの数百万のコピーが
並行してシーケンシングされる。テンプレート鎖に相補的なヌクレオチドがウェルに添加
されると、ヌクレオチドは既存のDNA鎖上に取り込まれ、光シグナルを生成し、これが
機器中のCCDカメラによって記録される。
【0078】
可逆的ダイターミネーター:DNA分子に基づくシーケンシング技術は、まずスライド
上にプライマーを付着させ、局所的なクローンのコロニーが形成されるように増幅する。
4種のタイプの可逆的ターミネーター塩基(RT-塩基)を添加し、取り込まれなかった
ヌクレオチドを洗い落とす。パイロシーケンシングとは異なり、DNAは、一度に1種の
ヌクレオチドだけ伸長する。カメラで蛍光標識ヌクレオチドの画像を撮影し、次いで末端
の3’ブロッカーを伴う色素がDNAから化学的に除去されて、次のサイクルが可能にな
る。
【0079】
Helicos Biosciences社(Cambridge、MA)の単一分子
シーケンシングは、フローセル表面に付着させた、ポリAテールアダプターが付加された
DNAフラグメントを使用する。各サイクルで、DNAポリメラーゼおよび単一種の蛍光
標識ヌクレオチドを添加し、その結果、表面に固定されたプライマー-テンプレート二重
鎖のテンプレート依存性の伸長が起こる。読み取りは、ヘリオスコープシーケンサーによ
って実行される。フルアレイをタイリングした画像獲得後、蛍光標識を化学的に切断およ
び放出することにより、それに続く伸長および画像化のサイクルを可能にする。
【0080】
合成によるシーケンシング(SBS)は、「オールドスタイルの」ダイターミネーショ
ン電気泳動シーケンシングのように、塩基配列を決定するためにDNAポリメラーゼによ
るヌクレオチドの取り込みに頼る。アダプターが取り付けられたDNAライブラリーを一
本鎖に変性させ、フローセルにグラフト化し、続いてブリッジ増幅して、ガラスチップ上
にスポットの高密度アレイを形成する。可逆的ターミネーター方法は、ダイターミネータ
ーの可逆的バージョンを使用するものであり、一度に1種のヌクレオチドを添加し、ブロ
ッキング基の繰り返しの除去によって各位置で蛍光を検出して、別のヌクレオチドの重合
を可能にする。ヌクレオチド取り込みのシグナルは、いずれも使用された、蛍光標識ヌク
レオチド、リン酸によって駆動する光反応、および水素イオンの感知に応じて様々であり
得る。SBSプラットフォームの例としては、IlluminaGA、HiSeq250
0、HiSeq1500、HiSeq2000、またはHiSeq1000が挙げられる
。またMiSeq(登録商標)パーソナルシーケンシングシステム(Illumina,
Inc.)も、可逆的ターミネーター化学を用いた合成によるシーケンシングを採用する
。
【0081】
合成によるシーケンシング方法とは対照的に、ライゲーションによるシーケンシング方
法は、標的配列を決定するのにDNAリガーゼを使用する。このシーケンシング方法は、
テンプレートDNA鎖上での、局所的な相補性を介した隣接するオリゴヌクレオチドの酵
素によるライゲーションに頼る。この技術は、シーケンシングした位置に従って標識され
た、固定した長さの全ての存在し得るオリゴヌクレオチドのパーティションを採用する。
オリゴヌクレオチドがアニールされ、ライゲートされると、配列を一致させるためのDN
Aリガーゼによる優先的なライゲーションにより、その位置で、ジヌクレオチドによって
コードされた色空間シグナルが生じる(オリゴに沿った公知の位置における公知のヌクレ
オチドに対応する蛍光標識プローブの放出を介して)。この方法は、主としてLife
TechnologiesのSOLiD(商標)シーケンサーによって使用される。シー
ケンシングの前、DNAをエマルジョンPCRによって増幅する。得られたビーズはそれ
ぞれ同じDNA分子のコピーのみを含有し、それを固体の平面の基質上に堆積させる。
【0082】
SMRT(商標)シーケンシングは、合成によるシーケンシングアプローチに基づく。
DNAは、ゼロモードウェーブガイド〔zero-mode wave-guides〕(ZMWs)、すなわ
ちウェルの底部に配置された捕捉ツールを備えた、小さいウェル様の容器で合成される。
シーケンシングは、未改変ポリメラーゼ(ZMWの底部に付着した)、および溶液中を自
由に流動する蛍光標識ヌクレオチドの使用により実行される。ウェルは、ウェルの底部で
発生する蛍光のみを検出するように構築される。蛍光標識は、それがDNA鎖に取り込ま
れるときにヌクレオチドから取り外されて、未改変DNA鎖が残る。
【0083】
またDNAのハイスループットシーケンシングは、生物学的プロセス(例えば、miR
NA発現または対立遺伝子の変異性(SNP検出))のモニターを可能にするAnyDo
t-チップ(Genovoxx、ドイツ)を使用して行うこともできる。例えば、Any
Dot-チップは、ヌクレオチド蛍光シグナル検出の10倍~50倍の強化を可能にする
。他のハイスループットシーケンシングシステムとしては、Venter,J.,et
al.,Science 16 February 2001;Adams,M.et
al.,Science 24 March 2000;およびM.J,Levene,
et al.,Science 299:682-686,January 2003;
ならびに米国特許出願公開第2003/0044781号および2006/007893
7号で開示されたものが挙げられる。
【0084】
本発明の技術の遺伝性がん検出アッセイ
乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの
変異を検出するための方法であって、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップ(例
えば、MITRA(登録商標)チップ)から溶解緩衝液およびプロテイナーゼKを用いて
溶出させた乾燥生体液サンプルから、ゲノムDNAを単離することを含み、複数の遺伝性
がんに関連する遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、B
RCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16
)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、
NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51
C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、
TP53、およびVHLを含む、方法が、本明細書で提供される。特定の実施形態におい
て、複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少なくとも1つの変異は、ハイスループ
ット大規模並列シーケンシングを使用して検出される。一部の実施形態において、溶解緩
衝液は、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tween 20、およびTrito
n X-100を含む。
【0085】
一態様において、本発明の技術は、乾燥生体液サンプル中の複数の遺伝性がんに関連す
る遺伝子における少なくとも1つの変異を検出するための方法であって、(a)マイクロ
サンプリングデバイスの吸収性チップから溶出させた乾燥生体液サンプルから、ゲノムD
NAを抽出すること;(b)複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれぞれに対応するア
ンプリコンを含むライブラリーを生成することであって、前記複数の遺伝性がんに関連す
る遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、B
RIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK
2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF
1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD5
1D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、お
よびVHLを含み、アダプター配列が複数のアンプリコンの末端にライゲートされている
、生成すること;ならびに(c)ハイスループット大規模並列シーケンシングを使用して
、複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける少なくとも1つの変異を検出することを
含む、方法を提供する。一部の実施形態において、乾燥生体液サンプルは、乾燥血漿、乾
燥血清、または乾燥全血である。特定の実施形態において、乾燥生体液サンプルは、遺伝
性がんを有するかまたは有する疑いのある患者から得られる。遺伝性がんは、乳がん、卵
巣がん、結腸がん、または皮膚がんであり得る。
【0086】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイス
の吸収性チップ上の乾燥生体液サンプルは、指先穿刺を介して患者から収集される。特定
の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップ
である。乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを
、溶解緩衝液およびプロテイナーゼKと接触させることによって実行することができる。
特定の実施形態において、溶解緩衝液は、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tw
een 20、およびTriton X-100を含む。さらなる実施形態において、溶
解緩衝液は、800mMの塩酸グアニジン;30mMのトリスCl、pH8.0;30m
MのEDTA、pH8.0;5%のTween 20;および0.5%のTriton
X-100を含む。
【0087】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、乾燥生体液サンプルの溶出は、
マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、溶解緩衝液と、90℃で最大15分接
触させることによって実行される。加えて、または代替として、特定の実施形態において
、乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、プロ
テイナーゼKと、56℃で最大1時間接触させることによって実行される。他の実施形態
において、乾燥生体液サンプルの溶出は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップ
を、プロテイナーゼKと、56℃で最大16~18時間接触させることによって実行され
る。一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスのサンプル体積は、10~
20μL以下である。
【0088】
本方法の一部の実施形態において、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップから
、400ng以下のゲノムDNAが溶出される。本方法の他の実施形態において、マイク
ロサンプリングデバイスの吸収性チップから、約100ngから約400ngのゲノムD
NAが溶出される。
【0089】
加えて、または代替として、一部の実施形態において、複数のアンプリコンは、固有の
インデックス配列をさらに含む。特定の実施形態において、複数のアンプリコンは、複数
のアンプリコンの少なくとも1つに相補的な核酸配列を含むベイトのセットを使用して濃
縮される。一部の実施形態において、ベイトのセットの核酸配列は、RNAベイト、DN
Aベイト、またはそれらの組合せである。
【0090】
一実施形態において、本発明の技術で取り上げた方法は、マルチプレックスの多重遺伝
子アッセイ様式、例えば、多数の遺伝子における多数の異なる遺伝子の変更からの複数の
シグナルを取り込むアッセイで使用される。
【0091】
本方法の一部の実施形態において、検出される少なくとも1つの変異は、APC、AT
M、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CD
K4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1
、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2
、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、
SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLにおける変異で
ある。
【0092】
一部の実施形態において、単一のプライマーまたはプライマー対の一方もしくは両方の
プライマーは、プライマーの標的特異的な配列部分の5’末端にライゲートした特異的な
アダプター配列(シーケンシングアダプターとも称される)を含む。このシーケンシング
アダプターは、隣接する未知の標的核酸の増幅とシーケンシングの両方のためのプライミ
ング部位を提供できる、公知の配列を有する短いオリゴヌクレオチドである。そのような
ものとして、アダプターは、次世代シーケンシングのためのフローセルへの断片の結合を
可能にする。本発明の技術で使用されるプライマー中に、あらゆるアダプター配列が包含
されていてもよい。特定の実施形態において、APC、ATM、BARD1、BMPR1
A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14
ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MS
H6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、P
TEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMA
D4、STK11、TP53、およびVHLの特異的な領域に対応するアンプリコンは、
アダプターでタグ付けされたアンプリコンを産生するために、オリゴヌクレオチドシーケ
ンシングアダプターを含有するプライマーを使用して増幅される。
【0093】
他の実施形態において、採用されたプライマーは、アダプター配列を含有せず、産生さ
れたアンプリコンは、その後(すなわち増幅後)、アンプリコンの一方または両方の末端
でオリゴヌクレオチドシーケンシングアダプターにライゲートする。一部の実施形態にお
いて、全てのフォワードアンプリコン(すなわち、標的核酸のアンチセンス鎖とハイブリ
ダイズしたフォワードプライマーから伸長したアンプリコン)は、同じアダプター配列を
含有する。一部の実施形態において、二本鎖シーケンシングが実行される場合、全てのフ
ォワードアンプリコンは、同じアダプター配列を含有し、全ての逆のアンプリコン(すな
わち、標的セグメントのセンス鎖とハイブリダイズしたリバースプライマーから伸長した
アンプリコン)は、フォワードアンプリコンのアダプター配列とは異なるアダプター配列
を含有する。一部の実施形態において、アダプター配列は、インデックス配列(インデッ
クスタグ、「バーコード」またはマルチプレックス識別子〔multiplex identifier〕(M
ID)とも称される)をさらに含む。
【0094】
一部の実施形態において、アダプター配列は、Illuminaのシーケンサー(Mi
SeqおよびHiSeq)に関して推奨されるP5および/またはP7アダプター配列で
ある。例えば、Williams-Carrier et al.,Plant J.,
63(1):167-77(2010)を参照されたい。一部の実施形態において、アダ
プター配列は、P1、A、またはLife Technologiesのシーケンサーに
関して推奨されるIon Xpress(商標)バーコードアダプター配列である。他の
アダプター配列は当技術分野において公知である。一部の製造元は、それらの製造元が提
供する特定のシーケンシング技術および機構と共に使用するための特異的なアダプター配
列を推奨する。
【0095】
加えて、または代替として、上記の方法の一部の実施形態において、1つより多くのサ
ンプルからの、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、
BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHE
K2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、N
F1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD
51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、
およびVHLの特異的な領域に対応するアンプリコンがシーケンシングされる。一部の実
施形態において、全てのサンプルが同時に並行してシーケンシングされる。
【0096】
上記の方法の一部の実施形態において、少なくとも1、5、10、20、30個、また
は最大35、40、45、48もしくは50個の異なるサンプルからの、APC、ATM
、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK
4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、
MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、
POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、S
DHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLの特異的な領域に
対応するアンプリコンが、本明細書に記載される方法を使用して増幅およびシーケンシン
グされる。
【0097】
加えて、または代替として、本方法の一部の実施形態において、単一のサンプル由来の
アンプリコンは、アンプリコン生成のもととなった源を示す同一なインデックス配列をさ
らに含み、各サンプルのインデックス配列は、全ての他のサンプルからのインデックス配
列と異なる。したがって、インデックス配列の使用は、シーケンシング処理ごとに複数の
サンプルをプールすることを可能にし、その後、サンプル源を、インデックス配列に基づ
き確認する。一部の実施形態において、Access Array(商標)システム(F
luidigm Corp.、San Francisco、CA)またはApollo
324システム(Wafergen Biosystems、Fremont、CA)は
、1回のセットアップでサンプルからの核酸を同時に増幅することによってバーコード付
きの(インデックス付きの)アンプリコンライブラリーを生成するのに使用される。
【0098】
一部の実施形態において、インデックス付きのアンプリコンは、インデックス配列を含
有するプライマー(例えば、フォワードプライマーおよび/またはリバースプライマー)
を使用して生成される。このようなインデックス付きのプライマーは、特異的なアンプリ
コンを特定のサンプル源に由来するとして同定するための「バーコード化」ツールとして
、ライブラリー調製中に包含させることができる。アダプターがライゲートした、および
/またはインデックス付きのプライマーが採用される場合、アダプター配列および/また
はインデックス配列は、増幅中に、アンプリコンに組み込まれる(標的特異的なプライマ
ー配列と共に)。それゆえに、得られたアンプリコンは、シーケンシングに適切であり、
従来のライブラリー調製プロトコールを必要としない。さらに、インデックスタグの存在
は、複数のサンプル源からの配列の区別を可能にする。
【0099】
一部の実施形態において、アンプリコンは、アダプターがライゲートしていない、およ
び/またはインデックス付きではないプライマーを用いて増幅してもよく、その後、シー
ケンシングアダプターおよび/またはインデックス配列を、得られたアンプリコンのそれ
ぞれの一方または両方の末端にライゲートしてもよい。一部の実施形態において、アンプ
リコンライブラリーは、マルチプレックスPCRアプローチを使用して生成される。
【0100】
1つより多くのサンプル源からのインデックス付きのアンプリコンは、個々に定量化さ
れ、次いでハイスループットシーケンシングの前にプールされる。したがって、インデッ
クス配列の使用は、シーケンシング処理ごとに複数のサンプル(すなわち、1つより多く
のサンプル源からのサンプル)をプールすることを可能にし、その後、サンプル源を、イ
ンデックス配列に基づき確認する。「マルチプレックス化」は、複数のアダプターでタグ
付けされた、およびインデックス付きのライブラリーのプールを、単一のシーケンシング
で処理することである。インデックス付きのプライマーセットが使用される場合、この能
力は、比較研究のために活用することができる。一部の実施形態において、最大48個の
別々の源からのアンプリコンライブラリーが、シーケンシングの前にプールされる。
【0101】
アダプターでタグ付けされたアンプリコンライブラリー、任意選択でインデックス付き
のアンプリコンライブラリーの産生後、アンプリコンは、ハイスループット大規模並列シ
ーケンシング(すなわち次世代シーケンシング)を使用してシーケンシングされる。ハイ
スループット大規模並列シーケンシングを実行するための方法は、当技術分野において公
知である。本方法の一部の実施形態において、ハイスループット大規模並列シーケンシン
グは、454TM GS FLX(商標)パイロシーケンシング、可逆的ダイターミネー
ターシーケンシング、SOLiDシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、ヘリオ
スコープ単一分子シーケンシング、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシ
ーケンシング、またはSMRT(商標)シーケンシングを使用して実行される。一部の実
施形態において、ハイスループット大規模並列シーケンシングは、読み取り深度アプロー
チを使用して実行することができる。
【0102】
遺伝性がんの処置
患者が1種または複数の抗がん治療剤での処置によって利益を得るかどうかを決定する
ための方法が、本明細書で開示される。
【0103】
乳がんおよび卵巣がん療法の例は、当技術分野において周知であり、外科手術、放射線
療法、ホルモン療法、化学療法、免疫療法またはそれらの組合せが挙げられる。免疫療法
剤としては、抗体、ラジオイムノコンジュゲートおよび免疫サイトカインが挙げられる。
【0104】
化学療法剤のクラスとしては、アルキル化剤、白金剤、タキサン、ビンカ剤〔vinca ag
ent〕、抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、卵巣機能抑制剤、VEGF/VEGF
R阻害剤、EGF/EGFR阻害剤、PARP阻害剤、細胞増殖抑制性のアルカロイド、
細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗物質、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤、お
よび標的化された生物学的療法剤(例えば、US6306832、WO20120071
37、WO2005000889、WO2010096603などに記載の治療用ペプチ
ド)を挙げることができる。
【0105】
具体的な化学療法剤としては、これらに限定されないが、シクロホスファミド、フルオ
ロウラシル(または5-フルオロウラシルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダ
トレキセート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラ
チン、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質が結合したパクリタキセル
、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フル
ベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド、トポテカ
ン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナ
ストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリ
ン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネ
ート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、
アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、ベバシズマブ、
またはそれらの組合せが挙げられる。
【0106】
併用化学療法的な治療法としては、AT:Adriamycin(登録商標)(ドキソ
ルビシン)およびTaxotere(登録商標)(ドセタキセル);AC:Adriam
ycin(登録商標)、Cytoxan(登録商標)(シクロホスファミド);AC+T
axol(登録商標);AC+Taxotere(登録商標);CMF:Cytoxan
(登録商標)、メトトレキセート、5-フルオロウラシル;CEF:Cytoxan(登
録商標)、Ellence(登録商標)(エピルビシン)、およびフルオロウラシル;E
C:Ellence(登録商標)、Cytoxan(登録商標);FAC:5-フルオロ
ウラシル、Adriamycin(登録商標)、およびCytoxan(登録商標);G
ET:Gemzar(登録商標)(ゲムシタビン)、Ellence(登録商標)、およ
びTaxol(登録商標);TC:Taxotere(登録商標)、Cytoxan(登
録商標);TC:Taxotere(登録商標)、Paraplatin(登録商標)(
カルボプラチン);TAC:Taxotere(登録商標)、Adriamycin(登
録商標)、Cytoxan(登録商標)またはTCH:Taxotere(登録商標)、
Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、およびParaplatin(登
録商標)を挙げることができる。転移性の乳がんまたは卵巣がんのための追加の併用化学
療法的な治療法としては、タキソールおよびXeloda(登録商標)(カペシタビン)
;タキソテールおよびXeloda(登録商標);タキソテールおよびParaplat
in(登録商標);Taxol(登録商標)およびParaplatin(登録商標);
Taxol(登録商標)およびGemzar(登録商標);Abraxane(登録商標
)(タンパク質が結合したパクリタキセル)およびXeloda(登録商標);Abra
xane(登録商標)およびParaplatin(登録商標);Camptosor(
登録商標)(イリノテカン)およびTemodar(登録商標)(テモゾロミド);Ge
mzar(登録商標)およびParaplatin(登録商標)またはIxempra(
登録商標)(イキサベピロン)およびXeloda(登録商標)が挙げられる。一部の実
施形態において、化学療法剤は、シクロホスファミドおよび5-フルオロウラシルを包含
するか、またはメトトレキセート、シクロホスファミドおよび5-フルオロウラシルを包
含する。
【0107】
皮膚がんを処置するための抗がん薬物の非限定的な例としては、アルデスロイキン、コ
ビメチニブ、ダブラフェニブ、ダカルバジン、フルオロウラシル、タリモジーンラハーパ
レプベック、イミキモド、組換えインターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ペン
ブロリズマブ、トラメチニブ、ニボルマブ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ソニ
デギブ、ビスモデギブ、およびベムラフェニブが挙げられる。
【0108】
結腸がんを処置するための抗がん薬の非限定的な例としては、ベバシズマブ、カペシタ
ビン、セツキシマブ、塩酸イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、トリフルリジンおよ
びチピラシル塩酸塩、オキサリプラチン、パニツムマブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ
、ならびにziv-アフリベルセプトが挙げられる。
【0109】
一態様において、本発明の開示は、遺伝性がんに関するがんの症状を示す患者またはそ
のリスクがある患者を、抗がん治療剤での処置のために選択するための方法であって、(
a)血液細胞からのゲノムDNAの放出が起こる条件下で、乾燥血液サンプルを溶出させ
ることであって、乾燥血液サンプルは、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイ
スを用いて患者から収集される、溶出させること;(b)溶出させた乾燥血液サンプルか
ら、ゲノムDNAを単離すること;(c)APC、ATM、BARD1、BMPR1A、
BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14AR
Fおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6
、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTE
N、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4
、STK11、TP53、およびVHLを含む複数の遺伝性がんに関連する遺伝子のそれ
ぞれに対応するアンプリコンを含むライブラリーを生成することであって、アダプター配
列が複数のアンプリコンの末端にライゲートされている、生成すること;(d)ハイスル
ープット大規模並列シーケンシングを使用して、複数のアンプリコンの少なくとも1つに
おける少なくとも1つの変異を検出すること;ならびに(e)APC、ATM、BARD
1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDK
N2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、
MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1
、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、S
DHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLの1つまたは複数に対応する
複数のアンプリコンの少なくとも1つにおける変異が検出される場合、患者を、抗がん治
療剤での処置のために選択することを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、
容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップで
ある。一部の実施形態において、患者は、乳がん、卵巣がん、皮膚がん、または結腸がん
からなる群から選択される遺伝性がんを有するかまたはそのリスクがある。
【0110】
遺伝性がんのリスクがある患者としては、(a)がんと診断されている2人以上の近親
者;(b)複数の原発性腫瘍;(c)両側性のまたはまれながん;(d)複数の世代にわ
たるがんの家族性の発生;(e)特定のがん症候群と一致する腫瘍の配置;(f)特定の
民族学的なバックグラウンド(例えば、アシュケナージ系ユダヤ人の先祖);または若年
層で顕著ながん、を有する対象が挙げられる。
【0111】
がんの症状としては、これらに限定されないが、持続性の咳または血液が混ざった唾液
、排便習慣における変化、血便、貧血、乳房のしこりまたは乳房からの分泌物、精巣のし
こり、排尿頻度における変化、血尿、嗄声、持続性の腺のしこりまたは肥大、出血を伴う
または境界が不規則なあざ、消化不良または嚥下困難、異常な膣の出血または分泌物、予
想外の体重の減少、寝汗、発熱、肛門または生殖器部における持続性の痒み、難治性のた
だれ、頭痛、背痛、骨盤疼痛、およびむくみが挙げられる。
【0112】
上記実施形態のいずれかにおいて、抗がん治療剤は、シクロホスファミド、フルオロウ
ラシル(または5-フルオロウラシルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダトレ
キセート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン
、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質が結合したパクリタキセル、ド
セタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベス
トラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド、トポテカン、
ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナスト
ロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン、
ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート
、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、アン
トラサイクリン、ベバシズマブ、アルデスロイキン、コビメチニブ、ダブラフェニブ、ダ
カルバジン、タリモジーンラハーパレプベック、イミキモド、組換えインターフェロンア
ルファ-2b、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、トラメチニブ、ニボルマブ、ペグイン
ターフェロンアルファ-2b、ソニデギブ、ビスモデギブ、ベムラフェニブ、セツキシマ
ブ、塩酸イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、トリフルリジンおよびチピラシル塩酸
塩、オキサリプラチン、パニツムマブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、ならびにziv
-アフリベルセプトからなる群から選択される1種または複数の薬剤である。
【0113】
キット
本発明の開示は、乾燥生体液サンプル中の、本明細書に記載される複数の遺伝性がんに
関連する遺伝子における1つまたは複数の変異を検出するためのキットを提供する。一部
の実施形態において、キットは、皮膚を穿刺するツール、容量測定式の吸収性マイクロサ
ンプリングデバイス、溶解緩衝液、およびプロテイナーゼKを含み、複数の遺伝性がんに
関連する遺伝子は、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA
2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、C
HEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN
、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、R
AD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP5
3、およびVHLを含む。溶解緩衝液は、塩酸グアニジン、トリスCl、EDTA、Tw
een 20、およびTriton X-100を含んでいてもよい。代替として、溶解
緩衝液は、2.5~10%のドデシル硫酸ナトリウムを含んでいてもよい。
【0114】
一部の実施形態において、キットは、乾燥生体液サンプル中に存在する細胞中の核タン
パク質複合体を変性させるための1つまたは複数の成分をさらに含む。加えて、または代
替として、一部の実施形態において、キットは、タンパク質汚染物質を除去するため、ヌ
クレアーゼ活性を不活性化するため、および/または乾燥生体液サンプル中に存在する生
物学的および/または化学的な汚染物質を除去するための1つまたは複数の成分をさらに
含む。
【0115】
一部の実施形態において、キットは、複数の遺伝性がんに関連する遺伝子の1つまたは
複数の、1つまたは複数の領域またはエクソンにハイブリダイズする、1つまたは複数の
プライマー対をさらに含む。加えて、または代替として、一部の実施形態において、キッ
トは、複数の遺伝性がんに関連する遺伝子の1つまたは複数の、1つまたは複数の領域ま
たはエクソンにハイブリダイズする、1つまたは複数のベイト配列をさらに含む。
【0116】
特に、一部の実施形態において、本発明の技術のキットは、APC、ATM、BARD
1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDK
N2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、
MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1
、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、S
DHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLからなる群から選択される遺
伝子の1つまたは複数に選択的にハイブリダイズし、それらの増幅または捕捉において有
用な、1つまたは複数のプライマー対またはベイト配列を含む。
【0117】
一部の実施形態において、本発明の技術のキットは、APC、ATM、BARD1、B
MPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A
(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH
2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、PO
LE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD
、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLからなる群から選択される単一の遺
伝子の領域またはエクソンにハイブリダイズする、単一のプライマー対またはベイト配列
を含む。他の実施形態において、本発明の技術のキットは、APC、ATM、BARD1
、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN
2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、M
SH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、
POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SD
HD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLからなる群から選択される単一
の遺伝子の1つまたは複数の領域またはエクソンにハイブリダイズする、複数のプライマ
ー対またはベイト配列を含む。特定の実施形態において、本発明の技術のキットは、AP
C、ATM、BARD1、BMPR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH
1、CDK4、CDKN2A(p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、
MEN1、MLH1、MSH2、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、
PMS2、POLD1、POLE、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、S
DHB、SDHC、SDHD、SMAD4、STK11、TP53、およびVHLのそれ
ぞれの単一の遺伝子の領域またはエクソンに特異的にハイブリダイズする単一のプライマ
ー対またはベイト配列を含む、複数のプライマー対またはベイト配列を含む。特定の実施
形態において、本発明の技術のキットは、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、
BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14AR
Fおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6
、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTE
N、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4
、STK11、TP53、およびVHLのそれぞれの1つまたは複数の領域またはエクソ
ンにハイブリダイズする1つより多くのプライマー対または1つより多くのベイト配列を
含む、複数のプライマー対またはベイト配列を含む。
【0118】
したがって、本発明の技術のキットは、APC、ATM、BARD1、BMPR1A、
BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(p14AR
Fおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2、MSH6
、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POLE、PTE
N、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、SMAD4
、STK11、TP53、およびVHLからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝
子の1つまたは複数の領域またはエクソンを認識し、それに特異的にハイブリダイズする
プライマー対またはベイト配列を含んでいてもよいことが本明細書において予期される。
【0119】
本発明の技術のキットの上記実施形態のいずれかにおいて、容量測定式の吸収性マイク
ロサンプリングデバイスは、MITRA(登録商標)チップである。
【0120】
一部の実施形態において、キットは、複数の容量測定式の吸収性マイクロサンプリング
デバイスを含んでいてもよく、それぞれのデバイスは、近位端に中空のホルダー、および
遠位端に吸収性チップを有する。吸収性チップは、約10秒以内またはそれ未満で30マ
イクロリットルまたはそれ未満の血液を吸収するように設計された親水性のポリマー性材
料を含む。キットはまた、複数の区画を有する容器も包含する。各区画は、容量測定式の
吸収性マイクロサンプリングデバイスと取り外し可能にかみ合うように設計されている。
容器は、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップが、中にマイクロサンプリングデ
バイスが設置される区画と隣り合わないように設計されている。
【0121】
加えて、または代替として、特定の実施形態において、キットは、複数のアクセスポー
トを包含していてもよく、各ポートは、個々の区画と関連付けられる。各ポートは、ポー
トが関連付けられる区画内に存在する容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバイス
のホルダー上への印刷が可能になるように配置される。特定の実施形態において、容量測
定式の吸収性マイクロサンプリングデバイスのホルダーは、ホルダーの長さに沿って伸長
する複数のリブを有し、リブは、吸収性チップが容器の壁と接触することを防ぐように設
計されている。容器は、好ましくは、管状の形態の区画を形成するように設計された2つ
のパートを有する。容器は、それぞれ異なる区画の一部に沿って伸長する複数の細長い据
え付けの突起を有する第1のパートを有していてもよい。容量測定式の吸収性マイクロサ
ンプリングデバイスのホルダーの中空の末端が据え付けの突起上にはまると、ホルダーが
据え付けの突起上に取り外し可能に固定される。
【0122】
一部の実施形態において、キットは、少なくとも1種の標的に特異的な核酸プローブを
250nMまたはそれ未満の濃度で含有する液状媒体を含む。このようなキットを用いる
場合、プローブは、本発明の技術に従って信頼できるマルチプレックス検出反応を実行す
るのに必要な量で提供される。
【0123】
一部の実施形態において、キットは、乾燥生体液サンプル中の、本明細書に記載される
複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における1つまたは複数の変異の増幅および/または
検出などのアッセイまたは反応を行うのに必要な、緩衝液、ポリメラーゼ活性を有する酵
素、ポリメラーゼ活性を有し、5’から3’のエキソヌクレアーゼ活性または5’から3
’および3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性の両方が欠失した酵素、酵素補因子、例
えばマグネシウムまたはマンガン、塩、鎖伸長ヌクレオチド、例えばデオキシヌクレオシ
ド三リン酸(dNTP)、修飾されたdNTP、ヌクレアーゼ耐性dNTPまたは標識さ
れたdNTPをさらに含む。
【0124】
一実施形態において、本発明の技術のキットは、実験処理中のアッセイの完全性を確認
するための陽性対照核酸配列および陰性対照核酸配列をさらに含む。またキットは、使用
説明書、自動分析のためのソフトウェア、容器、パッケージ、例えば市販を意図したパッ
ケージングなどを含んでいてもよい。
【0125】
キットは、洗浄緩衝液および/または試薬、ハイブリダイゼーション緩衝液および/ま
たは試薬、標識付けの緩衝液および/または試薬、ならびに検出手段の1種または複数を
さらに含んでいてもよい。緩衝液および/または試薬は通常、キットが意図される特定の
増幅/検出技術に最適化される。また、手順の様々な工程を実行するためのこれらの緩衝
液および試薬を使用するためのプロトコールがキットに包含されていてもよい。
【0126】
本発明の技術のキットは、それに続く増幅および/または本明細書で開示される複数の
遺伝性がんに関連する遺伝子に対応する標的核酸配列における変更の検出のために、乾燥
生体液サンプルから核酸を調製するのに使用される成分を包含していてもよい。このよう
なサンプル調製成分は、乾燥生体液サンプル、例えば乾燥血清、乾燥血漿、または乾燥全
血から核酸の抽出物を産生するのに使用することができる。上述された方法で使用される
試験サンプルは、アッセイ様式、検出方法の性質、およびアッセイしようとする試験サン
プルとして使用される具体的な細胞または抽出物などの要因に基づき様々となる。サンプ
ルから核酸を抽出する方法は当技術分野において周知であり、利用されるシステムに適合
するサンプルが得られるように容易に適合させることができる。試験サンプルから核酸を
抽出するための自動サンプル調製システム、例えば、Roche Molecular
SystemsのCOBAS AmpliPrep System、QiagenのBi
oRobot 9600、QiagenのBioRobot EZ1、QIAsymph
ony(登録商標)、およびApplied BiosystemsのPRISM(商標
)6700サンプル調製システムが市販されている。
【実施例0127】
[実施例1]
MITRA(登録商標)チップを使用して収集された乾燥血液サンプルからのゲノムDN
Aの抽出
この実施例は、本発明の技術の方法が、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデバ
イスを使用して収集された乾燥生体液サンプル(例えば、乾燥血液)から高い収量のゲノ
ムDNAを抽出するのに有用であることを実証する。
【0128】
合計4人のヒト対象を研究に登録した。3つの抽出方法を同時に試験するために、3つ
の血液のMITRA(登録商標)チップを、4人の血液ドナーのそれぞれから収集した。
指先穿刺を介して各MITRA(登録商標)チップ収集デバイスで10μLの固定した体
積の血液を収集した。血液サンプルを乾燥させた後、MITRA(登録商標)チップ収集
デバイスの吸収性チップを次いで、180μLの緩衝液G2(800mMの塩酸グアニジ
ン;30mMのトリスCl、pH8.0;30mMのEDTA、pH8.0;5%のTw
een 20;0.5%のTriton X-100を含有する溶解緩衝液)中に入れ、
ボルテックスで15秒混合した。3つの抽出方法それぞれの残りのサンプル処理工程を以
下に要約する。
【0129】
【0130】
次いで抽出されたゲノムDNAを、dsDNAの存在下でのみ蛍光を発するdsDNA
インターカレート色素を使用するQubit(登録商標)dsDNA HSアッセイキッ
トを使用して定量化した。それゆえに、Qubit(登録商標)dsDNA HSアッセ
イキットを使用するdsDNAの定量化は、他の定量化方法に影響を与える可能性がある
RNA、タンパク質、塩、または他の汚染物質によって影響されない。表1および
図1は
、各MITRA(登録商標)チップから得られたDNA収量が抽出方法に従って変化する
ことを実証する。抽出方法3(MITRA(登録商標)チップを緩衝液G2と90℃で1
5分、およびプロテイナーゼKと56℃で一晩インキュベートすること)が、最大のDN
A量を生じたことが決定された。
【0131】
【0132】
加えて、
図3は、MITRA(登録商標)チップから回収されたDNA収量が、抽出手
順中に利用される溶解緩衝液、溶解期間、抽出プラットフォーム、およびMITRA(登
録商標)チップの数に応じて顕著に変化することを実証する。例えば、Qiagen A
TL緩衝液(2.5~10%のドデシル硫酸ナトリウムを含む)と共に1時間インキュベ
ートした単一のMITRA(登録商標)チップから回収されたDNA収量は、Roche
MagNA Pureプラットフォーム(<30ng)と比較して、Qiagenプラ
ットフォーム(110~456ng)でより高かった。対照的に、特定の溶解緩衝液、例
えばRoche溶解緩衝液、Roche External溶解緩衝液、およびReli
aprep(商標)(Promega)を用いて得られたDNA収量は、低かった(<1
0ng)。
図3を参照されたい。
【0133】
これらの結果は、本発明の技術の方法が、容量測定式の吸収性マイクロサンプリングデ
バイスを使用して収集された乾燥生体液サンプル(例えば、乾燥血液)から高い収量のゲ
ノムDNAを抽出するのに有用であることを実証する。
【0134】
[実施例2]
MITRA(登録商標)チップから抽出された乾燥血液サンプルを使用した遺伝性がんに
関連する変異の検出
実施例1に記載したように、抽出方法3(MITRA(登録商標)チップを、緩衝液G
2と90℃で15分、およびプロテイナーゼKと56℃で一晩インキュベートすること)
を使用して、MITRA(登録商標)チップを介して各ドナーから収集された乾燥血液サ
ンプルから、ゲノムDNAを抽出した。ドナー1人当たり2つのMITRA(登録商標)
チップから抽出されたDNAをプールした。次いで、APC、ATM、BARD1、BM
PR1A、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDH1、CDK4、CDKN2A(
p14ARFおよびp16)、CHEK2、EPCAM、MEN1、MLH1、MSH2
、MSH6、MUTYH、NBN、NF1、PALB2、PMS2、POLD1、POL
E、PTEN、RAD51C、RAD51D、RET、SDHB、SDHC、SDHD、
SMAD4、STK11、TP53、およびVHLを含む34個の遺伝性がんに関連する
遺伝子の複数に対応する、731個のアンプリコンを評価するMyVantage(商標
)遺伝性包括的がんパネルで、プールしたDNAを試験した。Illumina Nex
tSeq(登録商標)シーケンサーで次世代シーケンシングを実行した。カバーされた領
域の成功したシーケンシングを評価するための品質測定法は、所与の領域におけるカバー
された位置1つ当たり最小でも20個の読み取りを包含していた。
【0135】
結果。
図2(a)は、3つのサンプルにおいて、731個の評価された領域の100%
がQC基準に合格したことを示す。1つのサンプルは、QC基準に合格した731個の評
価された領域のうち730個を有していた。さらに、単一のチップに供したサンプルのシ
ーケンシング性能と、二重のチップ抽出に供したサンプルのシーケンシング性能も比較し
た。
図2(b)および
図4(b)は、単一のチップ抽出が採用されたかまたは二重のチッ
プ抽出が採用されたかどうかに関係なく、731個の評価された領域の100%がQC基
準に合格したことを示す。
【0136】
図5は、MITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルを使用する場
合、それぞれCHEK2およびPMS2標的領域に対応する10kbおよび18kbアン
プリコンを、ロングレンジPCRを介して効果的に増幅したことを実証する。
図6は、M
ITRA(登録商標)チップから溶出させた乾燥血液サンプルから抽出されたゲノムDN
Aが、数種のCHEK2およびPMS2エクソンの十分なカバー度を示したことを実証す
る。
【0137】
さらに、
図7は、EDTA全血と共に吸い上げたMITRA(登録商標)チップから得
られたDNAを使用した標的領域1つ当たりの最小の読み取りカバー度が、指先穿刺を介
してMITRA(登録商標)チップによって収集された血液から得られたDNAで観察さ
れたカバー度と同等であったことを実証する。したがって、これらの結果から、本発明の
技術の方法が、公知のPCR阻害剤、例えばEDTAを含有する乾燥生体液サンプル中の
遺伝性がんに関連する変異を検出することにおいて効果的であることが実証される。
【0138】
これらの結果から、本発明の技術の方法が、容量測定式の吸収性マイクロサンプリング
デバイス(例えば、MITRA(登録商標)チップ)を用いて収集された少量の乾燥生体
液サンプル中の、本明細書に記載される複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少な
くとも1つの変異を検出することが可能であることが実証される。
【0139】
[実施例3]
QIAsymphony(登録商標)プラットフォームを介してMITRA(登録商標)
チップから抽出された乾燥血液サンプルを使用した遺伝性がんに関連する変異の検出
ゲノムDNAを、QIAsymphony(登録商標)プラットフォーム(これは、同
時に96個のサンプルのオートメーションが可能である)を使用して、MITRA(登録
商標)チップを介して収集された20μLの乾燥血液サンプルから抽出した。MITRA
(登録商標)チップを、Qiagen ATL緩衝液と共に56℃で一晩インキュベート
した。その後、QIAsymphony(登録商標)プラットフォームで、DNA抽出を
製造元の説明書に従って実行した。全てのサンプルを単一のチップ抽出に供し、109~
358ngの範囲のDNA収量を得た。次いでMyVantage(商標)遺伝性包括的
がんパネルでDNAを試験し、Illumina NextSeq(登録商標)シーケン
サーで次世代シーケンシングを実行した。カバーされた領域の成功したシーケンシングを
評価するための品質測定法は、所与の領域におけるカバーされた位置1つ当たり最小でも
20の読み取りを包含していた。
【0140】
結果。
図4(a)は、109ng(単一のMITRA(登録商標)チップから得られた
)もの低いDNAインプットレベルでも、単一のヌクレオチドバリエーション(SNV)
と挿入/欠失(INDEL)検出の両方に関して、MyVantage(商標)遺伝性包
括的がんパネルにおいて十分なカバー度を呈したことを実証する。
【0141】
これらの結果から、本発明の技術の方法が、容量測定式の吸収性マイクロサンプリング
デバイス(例えば、MITRA(登録商標)チップ)を用いて収集された少量の乾燥生体
液サンプル中の、本明細書に記載される複数の遺伝性がんに関連する遺伝子における少な
くとも1つの変異を検出することが可能であることが実証される。
【0142】
均等物
本発明の技術は、本出願に記載された特定の実施形態の観点で限定されないものとし、
それらは本発明の技術の個々の態様の単なる例示であることが意図される。当業者には明
らかであろうが、本発明の技術の多くの改変およびバリエーションを、その本質および範
囲から逸脱することなく作製することができる。本明細書で列挙されたものに加えて、本
発明の技術の範囲内の機能的に同等な方法および装置が、前述の説明から当業者には明ら
かであろう。このような改変およびバリエーションは、本発明の技術の範囲内に含まれる
ことが意図される。本発明の技術は特定の方法、試薬、化合物の組成または生物系に限定
されず、当然ながら様々であってもよいことが理解されるものとする。また、本明細書に
おいて使用される用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、限定するこ
とを意図しないことも理解されるものとする。
【0143】
用語「含む」、「包含する」、「含有する」などは、拡張的に非限定的に解釈されるも
のとする。加えて、本明細書で採用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語と
して使用されており、このような用語および発現の使用において、示された、および記載
された特徴またはそれらの一部のあらゆる均等物を排除する意図はないが、特許請求され
た開示の範囲内で様々な改変が可能であることが認識されている。
【0144】
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群の形式で記載される場合、それによ
り本開示は、マーカッシュ群のいずれの個々のメンバーまたはメンバーの下位群の形式で
も記載されることを当業者は認識するであろう。
【0145】
当業者であれば理解するであろうが、ありとあらゆる目的に関して、特に記載された説
明の提供に関して、本明細書で開示される全ての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分
範囲およびそれらの部分範囲の組合せも包含する。あらゆる列挙された範囲は、同じ範囲
が、少なくとも等しく2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割
されることを十分に記載し、それが可能であるとして、容易に認識することができる。非
限定的な例として、本明細書で論じられたそれぞれの範囲は、下部3分の1、中央3分の
1および上部3分の1などに容易に分割できる。やはり当業者であれば理解するであろう
が、例えば「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの全ての言
語は、列挙された数値を包含し、上記で論じられたようにそれに続いて部分範囲に分割で
きる範囲を指す。結論として、当業者には理解されるであろうが、範囲は、それぞれ個々
の要素を包含する。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または
3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、
または5個の細胞を有する群などを指す。
【0146】
本明細書で言及または引用された全ての特許、特許出願、仮出願、および公報は、それ
らが本明細書の明確な教示と矛盾しない程度に、参照により全ての図面および表を含めそ
れら全体が本明細書に組み入れられる。
乾燥生体液サンプルの溶出が、マイクロサンプリングデバイスの吸収性チップを、プロテイナーゼKと、56℃で最大16~18時間接触させることによって実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
ハイスループット大規模並列シーケンシングが、パイロシーケンシング、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、SOLiDシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、ヘリオスコープ単一分子シーケンシング、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、またはSMRT(商標)シーケンシングを使用して実行される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
抗がん治療剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5-フルオロウラシルもしくは5-FU)、メトトレキセート、エダトレキセート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質が結合したパクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、アントラサイクリン、ベバシズマブ、アルデスロイキン、コビメチニブ、ダブラフェニブ、ダカルバジン、タリモジーンラハーパレプベック、イミキモド、組換えインターフェロンアルファ-2b、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、トラメチニブ、ニボルマブ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ソニデギブ、ビスモデギブ、ベムラフェニブ、セツキシマブ、塩酸イリノテカン、ロイコボリンカルシウム、トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩、オキサリプラチン、パニツムマブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、ならびにziv-アフリベルセプトからなる群から選択される1種または複数の薬剤である、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。