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特開2022-191317乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191317
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221220BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221220BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q5/00
B01J13/00 A
A61K8/06
A61K8/36
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159317
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019183252の分割
【原出願日】2019-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛人
(57)【要約】
【課題】油性成分が植物油に限られるということがなく、また、キサンタンガムやウェランガムを必須の成分とする必要のない乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】乳化組成物は、油性成分、水系分散媒、乳化剤、及びセルロースナノファイバーを含み、セルロースナノファイバーは、乳化安定化剤であり、未変性のセルロースを解繊したものであり、乳化剤の配合量が乳化組成物全量の20質量%未満である。化粧料組成物は、前記乳化組成物を含む。乳化組成物の製造方法は、油相を調整する工程、水相を調整する工程、及び前記油相及び前記水相を混合する乳化工程を有し、未変性のセルロースを解繊して得たセルロースナノファイバーを、水相の調整工程及び乳化工程の少なくともいずれか一方で添加し、乳化剤を、油相の調成工程、水相の調整工程、及び乳化工程の少なくともいずれかで添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分、水系分散媒、乳化剤、及びセルロースナノファイバーを含み、
前記セルロースナノファイバーは、乳化安定化剤であり、未変性のセルロースを解繊したものであり、
前記乳化剤の配合量が、乳化組成物全量の20質量%未満である、
ことを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記乳化剤が、脂肪酸及び脂肪酸エステルの少なくともいずれか一方を含む非イオン界面活性剤である、
請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーの配合量(絶乾固形分換算)が、前記乳化剤の配合量の2.0質量%を超える量である、
請求項1又は請求項2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物を含む、
ことを特徴とする化粧料組成物。
【請求項5】
油相を調整する工程、水相を調整する工程、及び前記油相及び前記水相を混合する乳化工程を有し、
未変性のセルロースを解繊して得たセルロースナノファイバーを、前記水相の調整工程及び前記乳化工程の少なくともいずれか一方で添加し、
乳化剤を、前記油相の調成工程、前記水相の調整工程、及び前記乳化工程の少なくともいずれかで添加する、
ことを特徴とする乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリームや乳液、リキッドファンデーション、ヘアコンディショナー等の化粧品、ペンキ等の塗料、マヨネーズやドレッシング等の食用品などでは、油性成分及び水系媒体を混合した際に油相及び水相が分離しないように、乳化(エマルション)技術が使用されている。また、近年、バイオマス由来のセルロースの有効利用として、ナノレベルの繊維が分散したセルロースナノファイバー(CNF)が注目されている。セルロースナノファイバーは、静置粘度高さやチキソトロピー性等から、上記化粧品や塗料、食料品等への展開が期待されている。しかしながら、セルロースナノファイバーを配合したエマルションについての報告や提案は多くない。
【0003】
例えば、セルロースナノファイバー(分散液)を用いた乳化液や乳化方法の提案としては、特許文献1が存在する。この提案は、セルロースナノファイバー(分散液)を乳化剤として添加し、機械的せん断力を加えて乳化させるというものである。しかしながら、この提案において使用可能な油性成分は、菜種油やオリーブオイル等の天然の植物油に限られている。植物油はカルボン酸を有し、セルロースとの親和性があるため、セルロースナノファイバーが乳化剤として働くものと考えられる。しかしながら、親水基を有さない油性成分の使用も望まれる。
【0004】
また、特許文献2は、水中油型乳化外用剤組成物を提案する。この提案は、発酵セルロース及び/又はセルロースナノファイバーに加え、これらセルロースに対して特定量のキサンタンガム及び/又はウェランガムを併用するとするものである。しかしながら、特定量のキサンタンガム及び/又はウェランガムを併用するというのは、極めて用途が限られ、他の解決方法の提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-157796号公報
【特許文献2】特開2017-222594号公報
【特許文献3】特開2019-156824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、油性成分が植物油に限られるということがなく、また、キサンタンガムやウェランガム等の多糖類の増粘剤を必須の成分とする必要のない乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、油性成分、水系分散媒、乳化剤、及びセルロースナノファイバーを含み、セルロースナノファイバーは、乳化安定化剤であり、未変性のセルロースを解繊したものであり、前記乳化剤の配合量が、乳化組成物全量の20質量%未満であることを特徴とする乳化組成物であれば解決される。
【0008】
この点、乳化組成物に関する提案としては、例えば、セルロースナノファイバーが「セルロース原料を化学処理して得られる化学変性(カルボキシメチル化、カルボキシル化、リン酸エステル化、カチオン化等)したセルロース(変性セルロース)を解繊することによって得られたものであるとする提案が存在する(特開2019-156824号(特許文献3))。この提案は、「乳化安定性、特に長期間の乳化安定性に優れた乳化剤組成物を提供することを目的とする」ものである。要するに、乳化安定性の観点からは、変性セルロースを用いるのが好ましいとするのである。しかしながら、本発明者等は、油性成分の限定(制限)をいかに無くすかということをも課題とし、この観点からはセルロースが未変性である方が好ましいことを突き止めた。もっとも、セルロースが単に未変性であるとするのみでは、乳化安定性の観点からは必ずしも好ましいとは言えないことも突き止めた。そこで、種々、研究を重ね、もって乳化剤及びセルロースナノファイバーの役割の違いを知見するに至り、結果、上記手段を想到するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、油性成分が植物油に限られるということがなく、また、キサンタンガムやウェランガム等の多糖類の増粘剤を必須の成分とする必要のない乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0012】
本形態の乳化組成物は、油性成分、水系分散媒、乳化剤、及び未変性のセルロースナノファイバーを含む。本形態において乳化剤は、油性成分と水系媒体とを乳化させるために相溶性を向上する役割を有する。一方、未変性のセルロースナノファイバーは、乳化後の安定化剤(乳化安定化剤)としての役割を有する。これらの事実により、水系媒体と従来対象とされていなかった植物油以外の油性成分との乳化が可能になる。しかも、経時的に相分離(水相と油相とが分離すること)するのを防止することができ、乳化安定性を維持することができる。以下、詳細に説明する。
【0013】
(用途)
本形態の乳化組成物は、例えば、化粧料組成物、医薬中間原料、食品原料、塗料、樹脂等の成分として使用することができ、特に化粧料組成物の成分として使用するに好適である。
【0014】
ここで化粧料組成物とは、例えば、皮膚用化粧料や毛髪用化粧料等として使用されるものである。皮膚用化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、コールドクリーム、バニシングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、美容液、パック、ファンデーション、サンスクリーン化粧料、サンタン化粧料、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、美白乳液、各種ローション等を例示することができる。
【0015】
また、毛髪用化粧料としては、例えば、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー、ヘアスタイリング剤(ヘアフォームやジェル状整髪料等)、ヘアトリートメント剤(ヘアクリームやトリートメントローション等)、染毛剤、ローションタイプの育毛剤や養毛剤等を例示することができる。
【0016】
さらに、化粧料組成物としては、例えば、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、歯磨剤、軟膏、貼布剤、ハンドクリーナー等の洗浄剤、芳香剤なども例示することができる。
【0017】
なお、本形態の乳化組成物は乳化安定性に優れるものであり、その用途が化粧料組成物に限られるものではない。
【0018】
(油性成分)
本形態の乳化組成物に使用可能な油性成分は植物油に限定されない。油性成分としては、例えば、油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル類、炭化水素類等を使用することができる。後述する実施例においては、ひまし油、ジメチルシリコーンオイル、パルミチン酸エチルヘキシル、ヘプタンを使用した例を示している。
【0019】
本形態の乳化組成物を化粧料組成物の成分として使用する場合は、油性成分としてスクワラン、パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ミネラルオイルから選択される1種又は2種以上の炭化水素を含むものを使用するのが好ましい。
【0020】
また、油性成分としては、例えば、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ごま油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナバウロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル- オクチルドデシル- ベヘニル等のコレステロール及びその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2 エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコン樹脂、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類などの中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0021】
なお、近年、ウォーターリッチ処方などと言われる水(水相)が高配合の化粧液(乳化液)が開発されるに至っている。この化粧液においては、油性成分の配合割合が10~20質量%程度と低いものになっている。そして、このように油性成分の配合割合が低い化粧液は乳化し易いため、乳化の問題が顕在化しない場合がある。したがって、本形態の乳化組成物は、油性成分の配合割合が多い場合、例えば20質量%以上、特に30質量%以上である場合に、その効果がより顕著になるということができる。
【0022】
(水系媒体)
本形態における乳化組成物の水系媒体としては、水を単独で使用しても、水に所定の成分を混合させた混合液を使用してもよい。
【0023】
水に混合させる所定の成分としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の水溶性アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ブタンジオール等の親水性多価アルコール類などを例示することができる。
【0024】
(乳化剤)
本形態の乳化組成物には、セルロースナノファイバー、あるいはセルロースナノファイバーの分散液とは別に乳化剤を混合させる。
【0025】
乳化剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン(アニオン)性界面活性剤、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、両性界面活性剤、リン脂質等を使用することができる。ただし、非イオン性界面活性剤のエステル型又はエステル・エーテル型を使用するのが好ましい。非イオン性界面活性剤エステル型又はエステル・エーテル型を使用すると乳化剤の選択枠が豊富になることから、油相の初期分散性を向上するための設計が容易となり、乳化組成物の設計、例えば、乳化組成物の感触や流動性を制御するための設計が容易となる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビトールの脂肪酸エステル、並びにこれらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を例示することができる。
【0027】
ただし、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)等の非イオン界面活性剤を使用するのも好適である。
【0028】
また、本発明による効果を阻害しない範囲であれば、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニン等の界面活性能を有する天然物、スルホコハク酸エステル類やエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等のような低刺激性界面活性剤を使用することもできる。
【0029】
乳化剤の配合量は、乳化組成物全量の、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。乳化剤の配合量が20質量%以上であると、乳化安定性が劣る傾向にある。これは、過剰に乳化剤を添加するとセルロースナノファイバーを含む水相部分の流動性が低下する傾向、あるいはゲル化する傾向があり、結果として水相と油相の均一分散性が低下するためと考えられる。
【0030】
セルロースナノファイバーの配合量(絶乾固形分換算)は、乳化剤の配合量の2.0質量%を超えるように乳化剤及び/又はセルロースナノファイバーの配合量を調節するのが好ましく、2.1質量%以上に調節するのがより好ましく、2.2質量%以上となるように調節するのが特に好ましい。また、セルロースナノファイバーの配合量(2.0質量%濃度の分散液)は、乳化剤の配合量を超えるように(100質量%超)乳化剤及び/又はセルロースナノファイバーの配合量を調節するのが好ましく、105質量%以上となるように調節するのがより好ましく、110質量%以上となるように調節するのが特に好ましい。乳化剤の配合量に対するセルロースナノファイバーの配合量が少な過ぎるとセルロースナノファイバーを含む水相の分散性の悪化し、特にセルロースの凝集やゲル化が生じ易くなる傾向がある。
【0031】
なお、例えば、グリセリンやプロピレングリコール、ベベニルアルコール等は、保湿剤や粘度調整剤等の補助剤として使用されることもあるが、これらの補助剤は、乳化剤としても機能している。したがって、本形態においては、乳化剤の配合量を算出するにおいて以上の補助材が乳化剤に含まれるものとする。
【0032】
(セルロースナノファイバー)
本形態の乳化組成物においては、乳化剤とは別に乳化安定化剤(乳化助剤)として未変性のセルロースナノファイバーを、必要により分散液の状態で混合させる。以下、セルロースナノファイバーについて詳細に説明する。
【0033】
セルロース原料(以下、「原料パルプ」ともいう。)としては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物(粉状物)の状態等であってもよい。
【0034】
ただし、不純物の混入を可及的に避け、セルロース成分の中でもアルカリに不溶なα-セルロースを高配合で得られることから、非木材パルプや古紙パルプよりも木材パルプを使用する方が好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0035】
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
【0036】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0037】
本形態においては、セルロース原料が未変性であるのが、つまり、TEMPO酸化、リン酸、亜リン酸等のリンのオキソ酸による変性、カルバメート変性等の化学変性がされていないのが好ましい。この点、セルロース原料が化学変性されていると、一般に、その後の解繊によって得られるセルロースナノファイバーの均一性が高くなる。特に、本形態においては、乳化組成物全量に対するセルロースナノファイバーの配合量が少ないため、均一性向上は、乳化安定性の重要なファクターとなる。しかしながら、化学変性されたセルロールを使用すると、静電反発による影響により、乳化(混合)液の乳化安定性が劣るようになる。したがって、セルロースナノファイバーを乳化安定化剤として使用する本形態においては、未変性である方が好ましい。未変性のセルロースナノファイバーを使用すると、乳化組成物が糊状化するのも防止され、化粧料組成物とする場合においては、ぬめり感等の使用感が向上する。なお、本発明において未変性とは、セルロースの解繊工程の前に、セルロース表面の水酸基を変性をしてないことを意味するものと定義する。
【0038】
セルロース原料は、解繊してセルロースナノファイバーとする。このセルロースナノファイバーは、通常、分散液の状態で得られる。
【0039】
セルロースナノファイバーを解繊するに先立っては、化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、硫酸等の酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)を例示することができる。
【0040】
ただし、酸処理及び酵素処理の少なくともいずれかの方法によるのが好ましい。これらの方法によると、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、セルロースナノファイバーの均一性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロースナノファイバーの分散液(スラリー)の脱水性が向上する。また、パルプ(セルロース原料)が持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。なお、セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロースナノファイバーの均一性向上に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0041】
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、解繊が容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
【0042】
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
【0043】
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
【0044】
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
【0045】
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4-O-メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から微細繊維を得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)から微細繊維を得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
【0046】
セルロース原料に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース原料に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%、特に好ましくは0.3~3質量%である。酵素の添加量が0.1質量%を下回ると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が10質量%を上回ると、セルロースが糖化され、微細繊維の収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
【0047】
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。他方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
【0048】
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
【0049】
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5~24時間である。
【0050】
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80~100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
【0051】
ちなみに、解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進されるが、本形態においてセルロースの変性が好ましくないのは、前述したとおりである。
【0052】
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
【0053】
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、重合度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0054】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~1000nm、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは10~80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回るとセルロースナノファイバー分散液の粘度が過剰に上昇し、乳化組成物の粘度も相対的に増加し、所望の量のセルロースナノファイバーを配合することができなくなるおそれがある。
【0055】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が1000nmを上回ると、乳化組成物の流動性の悪化、また感触として不快感を与えてしまうおそれがある。
【0056】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0057】
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0058】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3~200μm、より好ましくは0.4~200μm、特に好ましくは0.5~200μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が200μmを上回ると、繊維同士が凝集し、乳化組成物の流動性悪化、すなわち感触の悪化につながるおそれがある。
【0059】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0060】
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0061】
セルロースナノファイバーの保水度は、好ましくは500%以下、より好ましくは300~480%である。セルロースナノファイバーの保水度が300%を下回ると、乳化安定感が得られない、また異物感の発生に繋がる可能性がある。
【0062】
他方、セルロースナノファイバーの保水度が500%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり乳化安定化につながるものの、水滴、あるいは油適の均一化が困難となるおそれがある。
【0063】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0064】
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0065】
セルロースナノファイバー結晶化度は、50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましい。また、CNFの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、86%以下であるのがより好ましい。CNFの結晶化度が以上の範囲内であれば、乳化で使用するセルロース以外の材料との物理的・化学的な影響を受けにくく、乳化安定性を維持しやすい。
【0066】
セルロースナノファイバーの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
【0067】
セルロースナノファイバーの結晶化度は、JIS K 0131(1996)に準拠して測定した値である。
【0068】
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
【0069】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1~100μm、好ましくは3~80μm、より好ましくは5~60μmである。
【0070】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0071】
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
【0072】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、乳化安定性につながり、異物感の発生を抑制できる。
【0073】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
【0074】
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他の成分と混合するに先立って水系媒体中に分散して所望の分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0075】
セルロースナノファイバーの重合度は、好ましくは300以上、より好ましくは350~1800、特に好ましくは400~1700である。重合度が300を下回ると、乳化安定性の阻害、乳化組成物の異物感につながるおそれがある。なお、重合度は、セルロースの最小構成単位である「β-グルコース2分子」の連結数である。本形態において重合度は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法で求める。
【0076】
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1.5%)のB型粘度は、好ましくは1,000cps~20,000cps、より好ましくは1,000~10,000cps、特に好ましくは1,000~5,000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、乳化組成物を構成する他の成分との混合・分散が容易になる。
【0077】
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(濃度1.5%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0078】
セルロースナノファイバーの固形分濃度は、好ましくは0.1%~5.0%、より好ましくは0.3~4.0%、特に好ましくは0.5~3.0%である。セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.1%を下回ると、流動性が高くなり過ぎ、乳化後の分散安定化を損なうおそれがある。また、セルロースナノファイバーの固形分濃度が5.0質量%を上回っても流動性が著しく低下することで、他の成分と混合するのが困難になるおそれがありスラリー自体の流動性が低下してしまい均一に混合できなくなるおそれがある。
【0079】
乳化組成物中のセルロースナノファイバー(2.0質量%濃度の分散液)の含有率は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは5~85質量%、特に好ましくは5~80質量%である。セルロースナノファイバーの含有率が5質量%を下回ると、乳化安定性が無くなり、乳化組成物の沈殿・分離が発生しやすくなるおそれがある。
【0080】
(その他の成分)
乳化安定性を増強させる成分として、セルロースナノファイバーとは別にキサンタンガム、カルボキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の高分子系成分を併用することもできる。これら高分子系成分は、いずれも水を増粘させて乳化組成物を安定化させるものである。
【0081】
本形態の乳化組成物を化粧料組成物の成分として使用する場合は、機能性成分として、例えば、パラアミノ安息香酸及びその誘導体、ホモメチル-7N-アセチルアラントイラニレート、ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2- エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート等のパラメトキシケイ皮酸誘導体、アミルサリシレート等のサリチル酸誘導体、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル、酢酸液状ラノリン、コガネバナ根抽出エキス、トリアニリノ-p-カルボエチルヘキシルオキシートリアジン等の紫外線吸収剤;アルブチン、コウジ酸、リン酸アスコルビン酸マグネシウム等のアスコルビン酸及びその誘導体、グルタチオン、甘草エキス、チョウジエキス、茶抽出物、アスタキサンチン、牛胎盤エキス、トコフェロール及びその誘導体、トラネキサム酸及びその塩、アズレン、γ-ヒドロキシ酪酸等の美白成分;マルチトール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコール等の多価アルコール、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ、クエン酸ソーダ等有機酸及びその塩、ヒアルロン酸ソーダ等ヒアルロン酸及びその塩、酵母及び酵母抽出液の加水分解物、酵母培養液、乳酸菌培養液など醗酵代謝産物、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性蛋白、コラーゲン加水分解物、カゼイン加水分解物、シルク加水分解物、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のぺプチド類及びその塩、トレハロース、キシロビオース、マルトース、蔗糖、ブドウ糖、植物性粘質多糖等の糖類・多糖類及びその誘導体、水溶性キチン、キトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩等のグリコサミノグリカン及びその塩、グリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン酸等のアミノ酸、アミノカルボニル反応物等の糖アミノ酸化合物、アロエ、マロニエ等の植物抽出液、トリメチルグリシン、尿素、尿酸、アンモニア、レシチン、ラノリン、スクワラン、スクワレン、グルコサミン、クレアチニン、DNA、RNA等の核酸関連物質等の保湿剤;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デンプン、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、シリコーンレジン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド等のポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド、テトラデセンスルホン酸等のα-オレフィンスルホン酸等の増粘剤;エチレンジアミン四酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン3 酢酸及びその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩類などの金属イオン封鎖剤;エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレグリコール等の有機溶剤、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸等の酸化防止剤;安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、ホウ酸、レゾルシン、トリブロムサラン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、チラム、感光素201号、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、酢酸トコフェロール、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、2,4,4- トリクロロ-2-ヒドロキシフェノール、ヘキサクロロフェン等の抗菌、防腐剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸等の有機酸;ビタミンA及びその誘導体;ビタミンB6塩酸塩、ビタミン6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体等のビタミンB類;アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル等のビタミンC類、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸等のビタミン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモールイノシトール、サポニン類(キラヤサポニン、アズキサポニン、ヘチマサポニン等)トラネキサム酸、パントテルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、セファランジン、プラセンタエキス、センブリエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、ガンマーオリザノールなどの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤、ビタミンA類、ビタミンB群、ビタミンD群、ビタミンE、パントテン酸、ビタミンHなどの各種ビタミンやアミノ酸などの栄養剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、塩化カルプロニウム、ノニル酸ワニリルアミド、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコン系物質、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸、NDGAなどの酸化防止剤等の各種薬剤;サッカロマイセスなどの酵母、糸状菌、バクテリア、牛胎盤、人胎盤、人臍帯、酵母、牛コラーゲン、牛乳由来蛋白、小麦、大豆、牛血液、ブタ血液、鶏冠、カミツレ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、茶、トマト、ニンニク、ハマメリス、バラ、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、アロエベラ、オウゴン、オウバク、コウカ、ベニバナ、サンシン、シコン、タイソウ、チンピ、ニンジン、ヨクイニン、ハトムギ、クチナシ、サワラ等の動植物・微生物及びその一部から有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出又は加水分解して得た天然エキス;色素類;炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、イオウ、ラウロイルリジン、微粒子シリカ、二酸化チタン、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ナイロン12粉末、ポリメチルメタクリレート粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末等の粉末成分;カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースなどの高分子添加剤;香料類;キレート剤;トリエタノールアミンや水酸化カリウム、ホウ砂などのアルカリ;酸化防止剤などを好適に使用することができる。これらの成分の配合量は、化粧料組成物の目的に応じて適宜決められる。
【0082】
(製造方法)
本形態の乳化組成物の製造方法は、油相を調整する工程、水相を調整する工程、及び油相及び水相を混合する乳化工程を少なくとも有する。
【0083】
本形態の方法においては、セルロースナノファイバーを、通常、分散液の状態で水相の調整工程及び乳化工程の少なくともいずれか一方で、好ましくは水相工程で添加する。一方、乳化剤は、油相の調成工程、水相の調整工程、及び乳化工程の少なくともいずれかで、好ましくは油相工程で添加する。
【0084】
乳化処理(工程)は、種々考えることができるが、乳化安定性に優れ、かつ使用感にも優れる乳化組成物を得る方法として、例えば、機械乳化法、D相乳化法、転相乳化法、液晶乳化法、アミノ酸ゲル乳化法を例示することができる。機械乳化法には、例えば、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、プロペラ付攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等を使用することができる。また、プロペラ付攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等を用いる場合は、回転数500rpm以上、好ましくは800rpm以上、更に好ましくは2000rpm以上、特に好ましくは5000rpm以上である。
【実施例0085】
次に、本発明の試験例を説明する。
(試験例1~4)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリコーンオイル、ひまし油、又はヘプタン132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを入れ、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化においては、プロペラ攪拌機で1000rpmの条件で5分間撹拌した。質量比で油性成分(パルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリコーンオイル、ひまし油、ヘプタン)66%(油相)、未変性のCNF(乳化安定化剤)を含む水系媒体33%(水相)、界面活性剤(乳化剤)1%である。
【0086】
試験結果としては、乳化安定性として攪拌直後の乳化安定性(初期乳化安定性)と、24時間後の乳化安定性(24時間後乳化安定性)とを確認した。均一に乳化した場合を○、凝集物があった場合を△、水相と油相が分離した場合を×とした。以下の試験例においても同様である。なお、
図1に示すのは、左から1本目が均一に乳化した場合(○)の例(試験例1)、左から2本目が凝集物があった場合(△)の例(試験例11)、左から3本目が水相と油相が分離した場合(×)の例(試験例14)の写真である。試験例1~4においては、いずれの油性成分であっても乳化組成物は分離しなかった。
【0087】
(試験例5)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル128gを量り、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)60gと界面活性剤であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン12gとを混合攪拌したものを油性成分に投入し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0088】
(試験例6)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル128gを量り、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)60gと界面活性剤であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン12gとを混合攪拌したものを油性成分に投入し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0089】
(試験例7)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル149gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)49gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0090】
(試験例8)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを99gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)49gと精製水を50gを混合し、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。この撹拌したものを、上記油性成分に投入し乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0091】
(試験例9)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを66g、ジメチルシリコーンを66gを量り混合し、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを油性成分に添加し、最後に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0092】
(試験例10)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを120gを量り、界面活性剤(乳化剤)であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン30gを油性成分に入れプロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)50gを油性成分に添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0093】
(試験例11)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤としてTEMPO酸化CNF(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間撹拌して行った。攪拌直後から均一分散はせず、凝集物が生成した。
【0094】
(試験例12)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に精製水66gを添加し(乳化安定化剤(CNF)を含まない条件)、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。初期分散性は良かったが、24時間後、水相及び油相の分離が発生した。
【0095】
(試験例13)
300mlビーカーに、油性成分としてひまし油132gを量り、次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。この試験においては、乳化剤は使用しなかった。初期分散性は良かったが、24時間後、水相及び油相の分離が発生した。
【0096】
(試験例14)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル120gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン40gを油性成分に入れ、プロペラ攪拌機で300rpm条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)40gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。攪拌直後から均一分散はせず、初期分散から分離する傾向があり、相分離が発生した。
【0097】
【0098】
なお、使用したCNFは、以下のとおりである。
未変性機械処理CNF:大王製紙社製の機械処理CNF
【0099】
TEMPO酸化CNF:第一工業製薬社製
【0100】
(考察)
試験例1と試験例12との対比で、油性成分と乳化剤とを混合した場合、一時的に乳化状態になるが経時安定性がなく、CNFを配合することで経時安定性が向上することが分かる。
試験例3と試験例13との対比で、油性成分とCNFとを混合すると一時的には乳化状態になるが、乳化剤を配合しないと経時安定性に劣ることが分かる。
【0101】
本試験結果より、油性成分と水系媒体とを乳化させ、かつ安定化させるためには、未変性のCNFを乳化安定化剤として添加することが適していることが分かる。この点、変性CNFは、乳化安定剤として好ましくないことも分かる。
【0102】
試験例10と試験例14との対比で、乳化剤の配合量を20%未満とすると好ましいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法として利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリームや乳液、リキッドファンデーション、ヘアコンディショナー等の化粧品、ペンキ等の塗料、マヨネーズやドレッシング等の食用品などでは、油性成分及び水系媒体を混合した際に油相及び水相が分離しないように、乳化(エマルション)技術が使用されている。また、近年、バイオマス由来のセルロースの有効利用として、ナノレベルの繊維が分散したセルロースナノファイバー(CNF)が注目されている。セルロースナノファイバーは、静置粘度高さやチキソトロピー性等から、上記化粧品や塗料、食料品等への展開が期待されている。しかしながら、セルロースナノファイバーを配合したエマルションについての報告や提案は多くない。
【0003】
例えば、セルロースナノファイバー(分散液)を用いた乳化液や乳化方法の提案としては、特許文献1が存在する。この提案は、セルロースナノファイバー(分散液)を乳化剤として添加し、機械的せん断力を加えて乳化させるというものである。しかしながら、この提案において使用可能な油性成分は、菜種油やオリーブオイル等の天然の植物油に限られている。植物油はカルボン酸を有し、セルロースとの親和性があるため、セルロースナノファイバーが乳化剤として働くものと考えられる。しかしながら、親水基を有さない油性成分の使用も望まれる。
【0004】
また、特許文献2は、水中油型乳化外用剤組成物を提案する。この提案は、発酵セルロース及び/又はセルロースナノファイバーに加え、これらセルロースに対して特定量のキサンタンガム及び/又はウェランガムを併用するとするものである。しかしながら、特定量のキサンタンガム及び/又はウェランガムを併用するというのは、極めて用途が限られ、他の解決方法の提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-157796号公報
【特許文献2】特開2017-222594号公報
【特許文献3】特開2019-156824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、油性成分が植物油に限られるということがなく、また、キサンタンガムやウェランガム等の多糖類の増粘剤を必須の成分とする必要のない乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
油性成分、水系分散媒、乳化剤、及びセルロースナノファイバー分散液を含み、
前記セルロースナノファイバーは、未変性のセルロースを解繊したもので、
前記油性成分は、植物油以外を少なくとも含み、
前記セルロースナノファイバー分散液の配合量は、前記乳化剤の配合量を超え、かつ
前記セルロースナノファイバーの配合量(絶乾固形分換算)は、前記乳化剤の配合量の2.0質量%を超える、
ことを特徴とする乳化組成物であれば解決される。
【0008】
この点、乳化組成物に関する提案としては、例えば、セルロースナノファイバーが「セルロース原料を化学処理して得られる化学変性(カルボキシメチル化、カルボキシル化、リン酸エステル化、カチオン化等)したセルロース(変性セルロース)を解繊することによって得られたものであるとする提案が存在する(特開2019-156824号(特許文献3))。この提案は、「乳化安定性、特に長期間の乳化安定性に優れた乳化剤組成物を提供することを目的とする」ものである。要するに、乳化安定性の観点からは、変性セルロースを用いるのが好ましいとするのである。しかしながら、本発明者等は、油性成分の限定(制限)をいかに無くすかということをも課題とし、この観点からはセルロースが未変性である方が好ましいことを突き止めた。もっとも、セルロースが単に未変性であるとするのみでは、乳化安定性の観点からは必ずしも好ましいとは言えないことも突き止めた。そこで、種々、研究を重ね、もって乳化剤及びセルロースナノファイバーの役割の違いを知見するに至り、結果、上記手段を想到するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、油性成分が植物油に限られるということがなく、また、キサンタンガムやウェランガム等の多糖類の増粘剤を必須の成分とする必要のない乳化組成物、化粧料組成物、及び乳化組成物の製造方法になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0012】
本形態の乳化組成物は、油性成分、水系分散媒、乳化剤、及び未変性のセルロースナノファイバーを含む。本形態において乳化剤は、油性成分と水系媒体とを乳化させるために相溶性を向上する役割を有する。一方、未変性のセルロースナノファイバーは、乳化後の安定化剤(乳化安定化剤)としての役割を有する。これらの事実により、水系媒体と従来対象とされていなかった植物油以外の油性成分との乳化が可能になる。しかも、経時的に相分離(水相と油相とが分離すること)するのを防止することができ、乳化安定性を維持することができる。以下、詳細に説明する。
【0013】
(用途)
本形態の乳化組成物は、例えば、化粧料組成物、医薬中間原料、食品原料、塗料、樹脂等の成分として使用することができ、特に化粧料組成物の成分として使用するに好適である。
【0014】
ここで化粧料組成物とは、例えば、皮膚用化粧料や毛髪用化粧料等として使用されるものである。皮膚用化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、コールドクリーム、バニシングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、美容液、パック、ファンデーション、サンスクリーン化粧料、サンタン化粧料、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、美白乳液、各種ローション等を例示することができる。
【0015】
また、毛髪用化粧料としては、例えば、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー、ヘアスタイリング剤(ヘアフォームやジェル状整髪料等)、ヘアトリートメント剤(ヘアクリームやトリートメントローション等)、染毛剤、ローションタイプの育毛剤や養毛剤等を例示することができる。
【0016】
さらに、化粧料組成物としては、例えば、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、歯磨剤、軟膏、貼布剤、ハンドクリーナー等の洗浄剤、芳香剤なども例示することができる。
【0017】
なお、本形態の乳化組成物は乳化安定性に優れるものであり、その用途が化粧料組成物に限られるものではない。
【0018】
(油性成分)
本形態の乳化組成物に使用可能な油性成分は植物油に限定されない。油性成分としては、例えば、油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル類、炭化水素類等を使用することができる。後述する実施例においては、ひまし油、ジメチルシリコーンオイル、パルミチン酸エチルヘキシル、ヘプタンを使用した例を示している。
【0019】
本形態の乳化組成物を化粧料組成物の成分として使用する場合は、油性成分としてスクワラン、パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ミネラルオイルから選択される1種又は2種以上の炭化水素を含むものを使用するのが好ましい。
【0020】
また、油性成分としては、例えば、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ごま油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナバウロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル- オクチルドデシル- ベヘニル等のコレステロール及びその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2 エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコン樹脂、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類などの中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0021】
なお、近年、ウォーターリッチ処方などと言われる水(水相)が高配合の化粧液(乳化液)が開発されるに至っている。この化粧液においては、油性成分の配合割合が10~20質量%程度と低いものになっている。そして、このように油性成分の配合割合が低い化粧液は乳化し易いため、乳化の問題が顕在化しない場合がある。したがって、本形態の乳化組成物は、油性成分の配合割合が多い場合、例えば20質量%以上、特に30質量%以上である場合に、その効果がより顕著になるということができる。
【0022】
(水系媒体)
本形態における乳化組成物の水系媒体としては、水を単独で使用しても、水に所定の成分を混合させた混合液を使用してもよい。
【0023】
水に混合させる所定の成分としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の水溶性アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ブタンジオール等の親水性多価アルコール類などを例示することができる。
【0024】
(乳化剤)
本形態の乳化組成物には、セルロースナノファイバー、あるいはセルロースナノファイバーの分散液とは別に乳化剤を混合させる。
【0025】
乳化剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン(アニオン)性界面活性剤、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、両性界面活性剤、リン脂質等を使用することができる。ただし、非イオン性界面活性剤のエステル型又はエステル・エーテル型を使用するのが好ましい。非イオン性界面活性剤エステル型又はエステル・エーテル型を使用すると乳化剤の選択枠が豊富になることから、油相の初期分散性を向上するための設計が容易となり、乳化組成物の設計、例えば、乳化組成物の感触や流動性を制御するための設計が容易となる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビトールの脂肪酸エステル、並びにこれらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を例示することができる。
【0027】
ただし、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)等の非イオン界面活性剤を使用するのも好適である。
【0028】
また、本発明による効果を阻害しない範囲であれば、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニン等の界面活性能を有する天然物、スルホコハク酸エステル類やエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等のような低刺激性界面活性剤を使用することもできる。
【0029】
乳化剤の配合量は、乳化組成物全量の、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。乳化剤の配合量が20質量%以上であると、乳化安定性が劣る傾向にある。これは、過剰に乳化剤を添加するとセルロースナノファイバーを含む水相部分の流動性が低下する傾向、あるいはゲル化する傾向があり、結果として水相と油相の均一分散性が低下するためと考えられる。
【0030】
セルロースナノファイバーの配合量(絶乾固形分換算)は、乳化剤の配合量の2.0質量%を超えるように乳化剤及び/又はセルロースナノファイバーの配合量を調節するのが好ましく、2.1質量%以上に調節するのがより好ましく、2.2質量%以上となるように調節するのが特に好ましい。また、セルロースナノファイバーの配合量(2.0質量%濃度の分散液)は、乳化剤の配合量を超えるように(100質量%超)乳化剤及び/又はセルロースナノファイバーの配合量を調節するのが好ましく、105質量%以上となるように調節するのがより好ましく、110質量%以上となるように調節するのが特に好ましい。乳化剤の配合量に対するセルロースナノファイバーの配合量が少な過ぎるとセルロースナノファイバーを含む水相の分散性の悪化し、特にセルロースの凝集やゲル化が生じ易くなる傾向がある。
【0031】
なお、例えば、グリセリンやプロピレングリコール、ベベニルアルコール等は、保湿剤や粘度調整剤等の補助剤として使用されることもあるが、これらの補助剤は、乳化剤としても機能している。したがって、本形態においては、乳化剤の配合量を算出するにおいて以上の補助材が乳化剤に含まれるものとする。
【0032】
(セルロースナノファイバー)
本形態の乳化組成物においては、乳化剤とは別に乳化安定化剤(乳化助剤)として未変性のセルロースナノファイバーを、必要により分散液の状態で混合させる。以下、セルロースナノファイバーについて詳細に説明する。
【0033】
セルロース原料(以下、「原料パルプ」ともいう。)としては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物(粉状物)の状態等であってもよい。
【0034】
ただし、不純物の混入を可及的に避け、セルロース成分の中でもアルカリに不溶なα-セルロースを高配合で得られることから、非木材パルプや古紙パルプよりも木材パルプを使用する方が好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0035】
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
【0036】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0037】
本形態においては、セルロース原料が未変性であるのが、つまり、TEMPO酸化、リン酸、亜リン酸等のリンのオキソ酸による変性、カルバメート変性等の化学変性がされていないのが好ましい。この点、セルロース原料が化学変性されていると、一般に、その後の解繊によって得られるセルロースナノファイバーの均一性が高くなる。特に、本形態においては、乳化組成物全量に対するセルロースナノファイバーの配合量が少ないため、均一性向上は、乳化安定性の重要なファクターとなる。しかしながら、化学変性されたセルロールを使用すると、静電反発による影響により、乳化(混合)液の乳化安定性が劣るようになる。したがって、セルロースナノファイバーを乳化安定化剤として使用する本形態においては、未変性である方が好ましい。未変性のセルロースナノファイバーを使用すると、乳化組成物が糊状化するのも防止され、化粧料組成物とする場合においては、ぬめり感等の使用感が向上する。なお、本発明において未変性とは、セルロースの解繊工程の前に、セルロース表面の水酸基を変性をしてないことを意味するものと定義する。
【0038】
セルロース原料は、解繊してセルロースナノファイバーとする。このセルロースナノファイバーは、通常、分散液の状態で得られる。
【0039】
セルロースナノファイバーを解繊するに先立っては、化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、硫酸等の酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)を例示することができる。
【0040】
ただし、酸処理及び酵素処理の少なくともいずれかの方法によるのが好ましい。これらの方法によると、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、セルロースナノファイバーの均一性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロースナノファイバーの分散液(スラリー)の脱水性が向上する。また、パルプ(セルロース原料)が持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。なお、セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロースナノファイバーの均一性向上に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0041】
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、解繊が容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
【0042】
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
【0043】
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
【0044】
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
【0045】
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4-O-メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から微細繊維を得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)から微細繊維を得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
【0046】
セルロース原料に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース原料に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%、特に好ましくは0.3~3質量%である。酵素の添加量が0.1質量%を下回ると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が10質量%を上回ると、セルロースが糖化され、微細繊維の収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
【0047】
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。他方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
【0048】
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
【0049】
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5~24時間である。
【0050】
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80~100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
【0051】
ちなみに、解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進されるが、本形態においてセルロースの変性が好ましくないのは、前述したとおりである。
【0052】
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
【0053】
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、重合度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0054】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~1000nm、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは10~80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回るとセルロースナノファイバー分散液の粘度が過剰に上昇し、乳化組成物の粘度も相対的に増加し、所望の量のセルロースナノファイバーを配合することができなくなるおそれがある。
【0055】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が1000nmを上回ると、乳化組成物の流動性の悪化、また感触として不快感を与えてしまうおそれがある。
【0056】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0057】
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0058】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3~200μm、より好ましくは0.4~200μm、特に好ましくは0.5~200μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が200μmを上回ると、繊維同士が凝集し、乳化組成物の流動性悪化、すなわち感触の悪化につながるおそれがある。
【0059】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0060】
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0061】
セルロースナノファイバーの保水度は、好ましくは500%以下、より好ましくは300~480%である。セルロースナノファイバーの保水度が300%を下回ると、乳化安定感が得られない、また異物感の発生に繋がる可能性がある。
【0062】
他方、セルロースナノファイバーの保水度が500%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり乳化安定化につながるものの、水滴、あるいは油適の均一化が困難となるおそれがある。
【0063】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0064】
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0065】
セルロースナノファイバー結晶化度は、50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましい。また、CNFの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、86%以下であるのがより好ましい。CNFの結晶化度が以上の範囲内であれば、乳化で使用するセルロース以外の材料との物理的・化学的な影響を受けにくく、乳化安定性を維持しやすい。
【0066】
セルロースナノファイバーの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
【0067】
セルロースナノファイバーの結晶化度は、JIS K 0131(1996)に準拠して測定した値である。
【0068】
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
【0069】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1~100μm、好ましくは3~80μm、より好ましくは5~60μmである。
【0070】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0071】
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
【0072】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、乳化安定性につながり、異物感の発生を抑制できる。
【0073】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
【0074】
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他の成分と混合するに先立って水系媒体中に分散して所望の分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0075】
セルロースナノファイバーの重合度は、好ましくは300以上、より好ましくは350~1800、特に好ましくは400~1700である。重合度が300を下回ると、乳化安定性の阻害、乳化組成物の異物感につながるおそれがある。なお、重合度は、セルロースの最小構成単位である「β-グルコース2分子」の連結数である。本形態において重合度は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法で求める。
【0076】
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1.5%)のB型粘度は、好ましくは1,000cps~20,000cps、より好ましくは1,000~10,000cps、特に好ましくは1,000~5,000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、乳化組成物を構成する他の成分との混合・分散が容易になる。
【0077】
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(濃度1.5%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0078】
セルロースナノファイバーの固形分濃度は、好ましくは0.1%~5.0%、より好ましくは0.3~4.0%、特に好ましくは0.5~3.0%である。セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.1%を下回ると、流動性が高くなり過ぎ、乳化後の分散安定化を損なうおそれがある。また、セルロースナノファイバーの固形分濃度が5.0質量%を上回っても流動性が著しく低下することで、他の成分と混合するのが困難になるおそれがありスラリー自体の流動性が低下してしまい均一に混合できなくなるおそれがある。
【0079】
乳化組成物中のセルロースナノファイバー(2.0質量%濃度の分散液)の含有率は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは5~85質量%、特に好ましくは5~80質量%である。セルロースナノファイバーの含有率が5質量%を下回ると、乳化安定性が無くなり、乳化組成物の沈殿・分離が発生しやすくなるおそれがある。
【0080】
(その他の成分)
乳化安定性を増強させる成分として、セルロースナノファイバーとは別にキサンタンガム、カルボキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の高分子系成分を併用することもできる。これら高分子系成分は、いずれも水を増粘させて乳化組成物を安定化させるものである。
【0081】
本形態の乳化組成物を化粧料組成物の成分として使用する場合は、機能性成分として、例えば、パラアミノ安息香酸及びその誘導体、ホモメチル-7N-アセチルアラントイラニレート、ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2- エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート等のパラメトキシケイ皮酸誘導体、アミルサリシレート等のサリチル酸誘導体、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル、酢酸液状ラノリン、コガネバナ根抽出エキス、トリアニリノ-p-カルボエチルヘキシルオキシートリアジン等の紫外線吸収剤;アルブチン、コウジ酸、リン酸アスコルビン酸マグネシウム等のアスコルビン酸及びその誘導体、グルタチオン、甘草エキス、チョウジエキス、茶抽出物、アスタキサンチン、牛胎盤エキス、トコフェロール及びその誘導体、トラネキサム酸及びその塩、アズレン、γ-ヒドロキシ酪酸等の美白成分;マルチトール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコール等の多価アルコール、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ、クエン酸ソーダ等有機酸及びその塩、ヒアルロン酸ソーダ等ヒアルロン酸及びその塩、酵母及び酵母抽出液の加水分解物、酵母培養液、乳酸菌培養液など醗酵代謝産物、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性蛋白、コラーゲン加水分解物、カゼイン加水分解物、シルク加水分解物、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のぺプチド類及びその塩、トレハロース、キシロビオース、マルトース、蔗糖、ブドウ糖、植物性粘質多糖等の糖類・多糖類及びその誘導体、水溶性キチン、キトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩等のグリコサミノグリカン及びその塩、グリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン酸等のアミノ酸、アミノカルボニル反応物等の糖アミノ酸化合物、アロエ、マロニエ等の植物抽出液、トリメチルグリシン、尿素、尿酸、アンモニア、レシチン、ラノリン、スクワラン、スクワレン、グルコサミン、クレアチニン、DNA、RNA等の核酸関連物質等の保湿剤;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デンプン、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、シリコーンレジン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド等のポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド、テトラデセンスルホン酸等のα-オレフィンスルホン酸等の増粘剤;エチレンジアミン四酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン3 酢酸及びその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩類などの金属イオン封鎖剤;エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレグリコール等の有機溶剤、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸等の酸化防止剤;安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、ホウ酸、レゾルシン、トリブロムサラン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、チラム、感光素201号、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、酢酸トコフェロール、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、2,4,4- トリクロロ-2-ヒドロキシフェノール、ヘキサクロロフェン等の抗菌、防腐剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸等の有機酸;ビタミンA及びその誘導体;ビタミンB6塩酸塩、ビタミン6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体等のビタミンB類;アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル等のビタミンC類、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸等のビタミン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモールイノシトール、サポニン類(キラヤサポニン、アズキサポニン、ヘチマサポニン等)トラネキサム酸、パントテルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、セファランジン、プラセンタエキス、センブリエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、ガンマーオリザノールなどの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤、ビタミンA類、ビタミンB群、ビタミンD群、ビタミンE、パントテン酸、ビタミンHなどの各種ビタミンやアミノ酸などの栄養剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、塩化カルプロニウム、ノニル酸ワニリルアミド、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコン系物質、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸、NDGAなどの酸化防止剤等の各種薬剤;サッカロマイセスなどの酵母、糸状菌、バクテリア、牛胎盤、人胎盤、人臍帯、酵母、牛コラーゲン、牛乳由来蛋白、小麦、大豆、牛血液、ブタ血液、鶏冠、カミツレ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、茶、トマト、ニンニク、ハマメリス、バラ、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、アロエベラ、オウゴン、オウバク、コウカ、ベニバナ、サンシン、シコン、タイソウ、チンピ、ニンジン、ヨクイニン、ハトムギ、クチナシ、サワラ等の動植物・微生物及びその一部から有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出又は加水分解して得た天然エキス;色素類;炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、イオウ、ラウロイルリジン、微粒子シリカ、二酸化チタン、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ナイロン12粉末、ポリメチルメタクリレート粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末等の粉末成分;カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースなどの高分子添加剤;香料類;キレート剤;トリエタノールアミンや水酸化カリウム、ホウ砂などのアルカリ;酸化防止剤などを好適に使用することができる。これらの成分の配合量は、化粧料組成物の目的に応じて適宜決められる。
【0082】
(製造方法)
本形態の乳化組成物の製造方法は、油相を調整する工程、水相を調整する工程、及び油相及び水相を混合する乳化工程を少なくとも有する。
【0083】
本形態の方法においては、セルロースナノファイバーを、通常、分散液の状態で水相の調整工程及び乳化工程の少なくともいずれか一方で、好ましくは水相工程で添加する。一方、乳化剤は、油相の調成工程、水相の調整工程、及び乳化工程の少なくともいずれかで、好ましくは油相工程で添加する。
【0084】
乳化処理(工程)は、種々考えることができるが、乳化安定性に優れ、かつ使用感にも優れる乳化組成物を得る方法として、例えば、機械乳化法、D相乳化法、転相乳化法、液晶乳化法、アミノ酸ゲル乳化法を例示することができる。機械乳化法には、例えば、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、プロペラ付攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等を使用することができる。また、プロペラ付攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等を用いる場合は、回転数500rpm以上、好ましくは800rpm以上、更に好ましくは2000rpm以上、特に好ましくは5000rpm以上である。
【実施例0085】
次に、本発明の試験例を説明する。
(試験例1~4)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリコーンオイル、ひまし油、又はヘプタン132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)としてオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを入れ、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化においては、プロペラ攪拌機で1000rpmの条件で5分間撹拌した。質量比で油性成分(パルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリコーンオイル、ひまし油、ヘプタン)66%(油相)、未変性のCNF(乳化安定化剤)を含む水系媒体33%(水相)、界面活性剤(乳化剤)1%である。
【0086】
試験結果としては、乳化安定性として攪拌直後の乳化安定性(初期乳化安定性)と、24時間後の乳化安定性(24時間後乳化安定性)とを確認した。均一に乳化した場合を○、凝集物があった場合を△、水相と油相が分離した場合を×とした。以下の試験例においても同様である。なお、
図1に示すのは、左から1本目が均一に乳化した場合(○)の例(試験例1)、左から2本目が凝集物があった場合(△)の例(試験例11)、左から3本目が水相と油相が分離した場合(×)の例(試験例14)の写真である。試験例1~4においては、いずれの油性成分であっても乳化組成物は分離しなかった。
【0087】
(試験例5)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル128gを量り、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)60gと界面活性剤であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン12gとを混合攪拌したものを油性成分に投入し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0088】
(試験例6)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル128gを量り、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)60gと界面活性剤であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン12gとを混合攪拌したものを油性成分に投入し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0089】
(試験例7)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル149gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)49gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0090】
(試験例8)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを99gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、一方、水分調整として乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)49gと精製水を50gを混合し、プロペラ攪拌機で300rpmの条件で攪拌した。この撹拌したものを、上記油性成分に投入し乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0091】
(試験例9)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを66g、ジメチルシリコーンを66gを量り混合し、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを油性成分に添加し、最後に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0092】
(試験例10)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシルを120gを量り、界面活性剤(乳化剤)であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン30gを油性成分に入れプロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)50gを油性成分に添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。乳化組成物は分離しなかった。
【0093】
(試験例11)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に乳化安定化剤としてTEMPO酸化CNF(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間撹拌して行った。攪拌直後から均一分散はせず、凝集物が生成した。
【0094】
(試験例12)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル132gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン2gを油性成分に入れ、プロペラ撹拌機で300rpmの条件で攪拌した。次に精製水66gを添加し(乳化安定化剤(CNF)を含まない条件)、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。初期分散性は良かったが、24時間後、水相及び油相の分離が発生した。
【0095】
(試験例13)
300mlビーカーに、油性成分としてひまし油132gを量り、次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)66gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。この試験においては、乳化剤は使用しなかった。初期分散性は良かったが、24時間後、水相及び油相の分離が発生した。
【0096】
(試験例14)
300mlビーカーに、油性成分としてパルミチン酸エチルヘキシル120gを量り、次に界面活性剤(乳化剤)であるモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン40gを油性成分に入れ、プロペラ攪拌機で300rpm条件で攪拌した。次に乳化安定化剤として未変性のCNF分散液(2.0%濃度)40gを添加し、乳化させた。この乳化は、プロペラ攪拌機で1,000rpmの条件で5分間攪拌して行った。攪拌直後から均一分散はせず、初期分散から分離する傾向があり、相分離が発生した。
【0097】
【0098】
なお、使用したCNFは、以下のとおりである。
未変性機械処理CNF:大王製紙社製の機械処理CNF
【0099】
TEMPO酸化CNF:第一工業製薬社製
【0100】
(考察)
試験例1と試験例12との対比で、油性成分と乳化剤とを混合した場合、一時的に乳化状態になるが経時安定性がなく、CNFを配合することで経時安定性が向上することが分かる。
試験例3と試験例13との対比で、油性成分とCNFとを混合すると一時的には乳化状態になるが、乳化剤を配合しないと経時安定性に劣ることが分かる。
【0101】
本試験結果より、油性成分と水系媒体とを乳化させ、かつ安定化させるためには、未変性のCNFを乳化安定化剤として添加することが適していることが分かる。この点、変性CNFは、乳化安定剤として好ましくないことも分かる。
【0102】
試験例10と試験例14との対比で、乳化剤の配合量を20%未満とすると好ましいことが分かる。