(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191322
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221220BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20221220BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221220BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221220BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221220BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20221220BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20221220BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221220BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20221220BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20221220BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B32B27/10
B32B27/40
B32B27/36
B32B27/00 104
C09J7/30
C09J109/00
C09J167/00
C09J201/00
C09J175/06
C09J7/29
B65D65/40 D
B32B27/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159576
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2018248070の分割
【原出願日】2018-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】勝又 しおり
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
(57)【要約】
【課題】内容物を取り出した後の包装袋や包装容器の包装材から、プラスチック材料を分離することができる積層体を提供する。
【解決手段】積層体10は、基材層11と、バリア層12と、接着剤層13と、シーラント層14とを備える。接着剤層が14は、少なくとも水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)との化合物を含む酸素吸収性樹脂(A)と、酸化促進触媒(B)と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)と、を備えた酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とを備え、
前記接着剤層が、少なくとも水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)との化合物を含む酸素吸収性樹脂(A)と、酸化促進触媒(B)と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)と、を備えた酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物を有し、
前記基材層が、紙を含むことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記酸素吸収性樹脂(A)が、前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)と前記ポリエステル樹脂(a2)との化学結合を有するウレタン化物である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、炭素-炭素二重結合を、主鎖と側鎖との少なくとも何れか一方に含む請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(a2)が、炭素-炭素二重結合を含まない請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、水酸基末端ポリイソプレンまたは水酸基末端ポリブタジエンである請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、1.4ポリイソプレンと、1.2ポリブタジエンとからなり、かつ、該1.4ポリイソプレンと該1.2ポリブタジエンとの配合比率が質量比で80:20~100:0である請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(a2)100質量部に対する前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)の配合割合が、100質量部未満である請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材層と前記バリア層との間に、中間層を備える請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体からなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料のリサイクル性に優れた積層体及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品等の包装に用いられる包装材は、基材層やバリア層やシーラント層などの複数の層を積層させた積層体からなることが一般的である。また、食品や薬品等に用いられる包装材には、酸素吸収層を備えるものがある。酸素吸収層は、その包装材を用いた包装袋内や包装容器内の酸素を吸収して、内容物である食品等の酸化を防止するためのものである。この酸素吸収層として、接着剤層が酸素吸収能を有するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球環境保護や省資源等の観点からプラスチック材料をリサイクルすることが求められるようになり、食品や薬品等のユーザにおいても、リサイクルされるプラスチック材料と、焼却される可燃性材料とを分別することが自治体の要請等により行われるようになってきている。ここに、包装材のなかには、基材層に紙を含むものやバリア層にアルミニウムフィルム(膜、箔)を含むものがある。かかる包装材の積層体を構成する紙やアルミニウムは、焼却される可燃性材料に相当するが、積層体のプラスチック材料と分離されることはなく、したがって、包装袋や包装容器から内容物を取り出した後の包装材について、プラスチック材料のみを分別することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、内容物を取り出した後の包装袋や包装容器の包装材から、プラスチック材料を分離することができる積層体及びその積層体を用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層体は、基材層と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とを備え、
前記接着剤層が、少なくとも水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)との化合物を含む酸素吸収性樹脂(A)と、酸化促進触媒(B)と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)と、を備えた酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の積層体においては、上記酸素吸収性樹脂(A)が、前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)と前記ポリエステル樹脂(a2)との化学結合を有するウレタン化物であることが好ましく、上記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、炭素-炭素二重結合を、主鎖と側鎖との少なくとも何れか一方に含むことが好ましく、上記ポリエステル樹脂(a2)が、炭素-炭素二重結合を含まないことが好ましく、上記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、水酸基末端ポリイソプレンまたは水酸基末端ポリブタジエンであることが好ましく、上記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が、1.4ポリイソプレンと、1.2ポリブタジエンとからなり、かつ、該1.4ポリイソプレンと該1.2ポリブタジエンとの配合比率が質量比で80:20~100:0であることが好ましく、上記ポリエステル樹脂(a2)100質量部に対する前記水酸基末端ジエン系樹脂(a1)の配合割合が、100質量部未満であることが好ましい。
また、本発明の積層体においては、上記基材層が、紙を含むことが好ましく、上記基材層と上記バリア層との間に、中間層を備えることができる。
本発明の包装材は、上記の積層体からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体によれば、内容物を取り出した後の包装袋や包装容器の包装材から、プラスチック材料を分離することができ、ひいてはリサイクル性の高い包装材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の包装材の実施形態1の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の積層体及び当該積層体を用いた包装材の実施形態を、図面を用いつつ具体的に説明する。
(実施形態1)
図1に、本発明の積層体の一実施形態の模式的な断面図を示す。なお、本発明の包装材は、
図1の積層体からなるものとすることができるので、
図1は、本発明の包装材の一実施形態の模式的な断面図ともいえる。
図1において、積層体10は、多層フィルムよりなり、基材層11と、中間層12と、バリア層13と、接着剤層14と、シーラント層15とを、この順に積層して備えている。接着剤層14は、少なくとも水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)との化合物を含む酸素吸収性樹脂(A)と、酸化促進触媒(B)と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)と、を備えた酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物を有している。
かかる特定組成の酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物は、包装材用の積層体10の接着剤として十分な接着力を有しているばかりでなく、高い酸素吸収性を有していることから、積層体10が、包装袋や包装容器として用いられたときに、密閉された内部空間中に含まれる酸素を吸収し、内容物の酸化劣化を抑制することができる。また、積層体10の密閉された内部空間中に、脱酸素剤を別途に用意して収容する必要がないので、内容物の袋詰め時の作業やコストを下げることができ、また、脱酸素剤を廃棄する必要がなく、脱酸素剤の誤飲を防止することもできる。
【0011】
更に、発明者の研究により、上記特定組成の酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物は、酸素を吸収することにより、接着強度が低下する特性を見出し、そこから更に、かかる特性を利用して、接着剤層14の一方の表面に積層する部分と、他方の表面に積層する部分とを分離することができること見出した。
【0012】
接着剤の接着強度が低下することは、常識的には好ましいこととは言えない。しかし、接着強度が低下することにより、密閉された包装袋や包装容器を開封した後に、接着剤層14を境界にして積層体10(包装材)の一部分を分離し、特に、プラスチック部分を分離することができるという本発明の積層体10の効果が得られる。
そして、接着剤層14の接着強度が低下するのは、通常は包装袋や包装容器を開封後のことである。開封前で包装袋や包装容器が内容物を密閉しているときには接着剤層14は酸素を大量に吸収することはなく、接着強度の低下は抑制され積層体10が接着剤層14で分離することはなく、包装袋や包装容器の機能は十分に果たされる。開封後は、包装袋や包装容器の密閉機能等を果たした後であるので、接着剤層14の接着強度が低下しても問題は生じ難いのである。
【0013】
以下、本発明の積層体10及び包装材を構成する各層について具体的に説明する。
[基材層]
基材層11として、通常の包装材の基材層を構成する各種のフィルム、例えば紙や樹脂フィルムやこれらの積層体10を適宜使用することができる。基材層11が紙である場合には、積層体10を接着剤層14によりシーラント層15から分離した後で、基材層11を含む部分を焼却処理に供することができる。したがって、本発明の積層体10は、特に基材層11が紙である場合に本発明の有効性が現われる。もっとも基材層11は紙に限定されない。基材層11が樹脂フィルムである場合には、後述するバリア層13の種類にもよるが、基材層11を含む部分を焼却処理に供することができるし、また、リサイクルに供することもできる。
【0014】
紙基材としては、印刷適性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができ、例えば、晒または未晒のクラフト紙、ロール紙、板紙、加工紙等の各種の紙を使用することができる。また、これらの各種の紙の片面又は両面に、ポリエチレン等のラミネートフィルムを貼り合わせたものを使用することもできる。さらに、印刷層を備えるものを用いることもできる。紙基材の坪量には制限はないが、好ましくは坪量50~500g/m2の範囲のもの、より好ましくは坪量100~350g/m2のものである。10g/m2を下回ると、紙基材が薄いために明瞭な印字ができる印刷層を形成しづらい場合があり、かつ食品包装用の積層体に占める紙基材の質量比が小さくなりすぎ、好ましくない。一方、350g/m2を超えると、紙基材が厚くなるため、印刷時の溶媒が残存する場合があり、溶媒臭が残存する一因となる。また、コシが強いため、成形後に内容物の収納が困難となる場合がある。
【0015】
基材層11に用いられる樹脂フィルムとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテン、ポリブテン、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、低結晶性の飽和ポリエステルまたは非晶性のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、MXD6等からなるフィルムを使用することができる。
上掲した樹脂フィルムのなかでも、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも言う。)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル樹脂;ポリカプロンアミド(ナイロン6)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等は好ましい。上掲ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂は、それらの混合物であってもよい。
【0016】
基材層11は、樹脂フィルムを2層以上積層した多層フィルムであってもよい。多層フィルムである場合、各層は、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
また、基材層11の表面は、接着性の向上のために、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の濡れ性を向上させる表面処理を施してもよい。
【0017】
基材層11の厚さは特に限定されないが、5~50μm程度、好ましくは10~40μm、より好ましくは12~30μmである。
【0018】
[中間層]
中間層12は、基材層11とバリア層13とを接着するものであり、基材層11が紙である場合に特に有効である。基材層11が樹脂フィルムであって、その樹脂フィルムの基材層11が、次に述べるバリア層13に対し十分な接着強度を有することができる場合には、中間層12は、必ずしも要しない。中間層12には、低密度ポリエチレン、アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等が使用できる。
【0019】
[バリア層]
バリア13層は、ガスの透過を防止して、内容物の重量減少や内容物の劣化を、効果的に抑制するものである。バリア層13は、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)等のフィルムのほか、アルミニウム箔(AL)、或いは、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの蒸着膜を設けた二軸延伸ナイロンフィルム(蒸着ONy)、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの蒸着層を設けたニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(蒸着PET)等を使用することができる。なかでもバリア層13がアルミニウム箔である場合には、当該アルミニウム箔がプラスチックのリサイクルにおいては不要な材料であり、次に述べるシーラント層15とは分離されて焼却処分されることが好ましいものである。したがって、本発明の積層体10は、特にバリア層13がアルミニウム箔の金属箔である場合に本発明の有効性が現われる。
【0020】
[接着剤層]
接着剤層14は、少なくとも水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とを含む酸素吸収性樹脂(A)と、酸化促進触媒(B)と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)とを備えた酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物からなるものである。
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物の性状は適宜変更し得るが、酸素吸収性樹脂(A)を用いた主剤と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)との2液性接着剤樹脂組成物として実施し得るものであり、酸化促進触媒(B)は、酸素吸収性樹脂(A)とポリイソシアネート系硬化剤(C)とを配合する際に配合することができる。
なお、酸化促進触媒(B)は、酸素吸収性樹脂(A)と予め配合しておいてもかまわないし、あるいは、ポリイソシアネート系硬化剤(C)と予め配合しておいてもかまわない。
【0021】
(水酸基末端ジエン系樹脂(a1)について)
水酸基末端ジエン系樹脂(a1)は、炭素-炭素二重結合を含むもので、この炭素-炭素二重結合が、主鎖にあっても、側鎖にあっても良い。例えば、1,2-ポリイソプレン、1,4-ポリイソプレン、3,4-ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエンなどが挙げられ、共役二重結合がシス位、トランス位のどちらでも構わない。しかし、酸素との反応速度の観点からは、共役二重結合は主鎖にあり、かつシス位であることが好ましい。また、特に限定されるものではないが、炭素-炭素二重結合をもつ炭素が電子供与性置換基と結合していることが好ましい。また、水酸基末端ジエン系樹脂(a1)は、単独でも2種以上を併用してもよい。
水酸基末端ジエン系樹脂(a1)は、好ましくは、1.4ポリイソプレンと、1.2ポリブタジエンとからなり、かつ、該1.4ポリイソプレンと該1.2ポリブタジエンとの配合比率が質量比で80:20~100:0であるものである。1.4ポリイソプレンと該1.2ポリブタジエンとの配合比率が質量比で100:0である場合は、両成分のうち1.4ポリイソプレンのみを含み、1.2ポリブタジエンを含まないことを意味する。
【0022】
(ポリエステル樹脂(a2)について)
酸素吸収性樹脂(A)中のポリエステル樹脂(a2)は多塩基酸とグリコールを脱水縮合することで得られる。ポリエステル樹脂(a2)中の芳香族ジカルボン酸の配合割合が80質量部を超える場合ではガラス転移温度が高くなり、接着強度が低下する。さらに、硬化膜は硬く、脆くなり凝集破壊が起こり易くなる。また、芳香族ジカルボン酸の配合割合が5質量部未満の場合、ジエン系ポリマーとウレタン化後のガラス転移温度が低くなるため、耐熱性の低下や凝集力不足により接着力が低下する。一方、脂肪族ジカルボン酸の配合割合が20質量部未満では柔軟性が失われ、プラスチックや、金属基材への接着力が低下、或いは凝集破壊が起こり易くなる。また、脂肪族ジカルボン酸の配合割合が50質量部を超える場合では耐熱性の低下や凝集力不足により接着力が低下する。
【0023】
接着剤層14の酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物は、前述のように炭素-炭素二重結合を含む水酸基末端ジエン系樹脂(a1)を用いたため、ポリエステル樹脂(a2)について二重結合を持つ特殊な酸成分を必ずしも用いる必要がなく、一般的なラミネート接着剤樹脂組成物に用いられるポリエステル樹脂を用いても実施することができる。従って、目的のラミネート接着剤の条件に最適なポリエステル樹脂を選択することができると共に、酸素吸収性樹脂(A)とポリイソシアネート系硬化剤(C)と反応させて接着機能を発揮させる際に遷移金属などの酸化促進触媒を配合することによって、優れた酸素吸収性能を発現させることができるものである。
【0024】
前記芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などを単独或いは2種以上併用することができ、脂肪族ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アゼライン酸やこれらの酸無水物などを単独或いは2種以上併用することができる。
また、構造内に2重結合を持つジカルボン酸も使用が可能であり、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸やこれらの酸無水物などを単独或いは2種以上併用することができる。
【0025】
また、酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物の酸素吸収性能を向上させる目的で、還元鉄粉、還元セリウム、還元チタン、その他の水素還元金属を添加することも出来る。
【0026】
前記芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸の他に多塩基酸として無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸なども使用することができるが、これら3価以上の多塩基酸を使用すると合成時にゲル化し易いため、好ましくは全多塩基酸中に30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらには10質量部以下になるよう配合することが最も好ましい。
【0027】
前記グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエタノールアミン、水素化ビスフェノールAなどを単独或いは2種以上併用することができる。
【0028】
前記グリコール以外の多価アルコールとしてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリエタノールアミンなどの3価のアルコールやペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの4価以上のアルコールなども使用することができるが、これら3価以上のアルコールを使用すると合成時にゲル化し易いため、好ましくは全多価アルコール中に30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらには10質量部以下になるよう配合することが最も好ましい。
【0029】
また、酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物に用いられるポリエステル樹脂(a2)は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0030】
(水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)との配合)
水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とは、単に混合しただけではなく、ウレタン化などで化学結合していることが適当である。水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とを化学結合させずにブレンドしただけの場合、相溶性が著しく低下し、仕上がり外観の低下などの問題が生じる。配合割合としては、ポリエステル樹脂(a2)100質量部に対して、水酸基末端ジエン系樹脂(a1)が20質量部~80質量部であることが好ましい。水酸基末端ジエン系樹脂(a1)の配合割合が100質量部を超える場合、酸素吸収性能は向上するが、様々な種類のプラスチック及び金属フィルムとの貼り合わせを想定した場合、接着性能が低下する場合がある。
なお、水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とを化学結合させる例としては、前記ウレタン化以外にエステル化、アミド化、アロファネート化などを挙げることができる。
【0031】
(鎖伸長剤(a3)について)
水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とを化学結合させる際には、各種鎖伸長剤(a3)を用いて実施することができる。
水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とをウレタン化させる場合には、ウレタン鎖伸長剤として、公知のイソシアネート化合物など、種々のイソシアネート化合物が使用できる。具体的には、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートやそれらのビューレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、ヌレート体などを用いることができ、アロファネート体を用いることにより前記のアロファネート化をなすことができる。
なお、ジイソシアネートの官能基の数はとくに限定されるものではないが、主として2官能性であるジイソシアネートにて鎖伸長することが、塗工適性、接着力の面から好ましい。
【0032】
また前記両樹脂をエステル化させる場合には、マレイン酸やフマル酸などのカルボン酸などを鎖伸長剤(a3)として用いることができ、さらにアミン成分を加えてアミド化することもできる。
【0033】
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物の酸素吸収性樹脂(A)の合成は、鎖伸長剤(a3)と反応する成分を含まない溶媒(例えば、ウレタン化の場合には水やアルコールなどのイソシアネート基と反応する成分を含まないエステル系またはケトン系溶媒)中、あるいはノンソルベントで必要に応じて有機スズなどの公知のウレタン化触媒を適量存在させ、50~90℃程度の温度で反応させればよい。この際、必ず不活性ガス雰囲気下で合成しなければならない。不活性ガス雰囲気下で合成しなかった場合、酸素吸収性能が低下するだけでなく、二重結合の開裂によるゲル化が起きる可能性がある。
【0034】
(酸化促進触媒(B)について)
接着剤層14の酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物は、酸素吸収性樹脂(A)が酸化することにより酸素吸収機能が発揮されるものであり、酸化促進触媒(B)を配合することによりその酸化作用を促進する。酸化促進触媒(B)としては、水酸基末端ジエン系樹脂(a1)の酸化促進を目的とした遷移金属触媒を示すことができ、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、などの遷移金属触を例示することができる。塩の種類としては、ステアリン酸、ナフテン酸、オクチル酸などが好適である。これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。添加量としては、酸素吸収性樹脂(A)に対して10ppm~6000ppmであることが好ましく、添加量が10ppm未満の場合、酸素吸収性能が不十分となる場合があり、添加量が6000ppmを超える場合は、酸素吸収性樹脂(A)の安定性が損なわれ不具合が生じる可能性が高くなる。また、本発明のような薄膜用途においては、特にコバルトが迅速な酸素吸収性発現の観点で好ましい。
【0035】
(反応調整剤について)
酸素吸収性樹脂(A)は、硬化剤(C)と配合する際に、酸化促進触媒(B)として用いる触媒の作用により、接着剤のポットライフが短縮してしまう場合がある。そこで、反応調整剤を併用することも好ましく、この反応調整剤としてリン酸類を添加することが好ましい。添加量としては、200ppm~400ppmであることが好ましく、200ppm未満ではポットライフの改善に至らず、400ppmを超えると、主剤である酸素吸収性樹脂(A)と硬化剤(C)の反応を阻害する可能性がある。
リン酸類としては、正リン酸、メタリン酸、ポリリン酸やそれらのエステル誘導体が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0036】
(酸化防止剤について)
酸素吸収性樹脂(A)は、保存時、及びラミネート後の条件が、低温もしくは不活性ガス雰囲気下の場合、必ずしも酸化防止剤は必要としない。しかし、外的要因による酸素吸収性能低下を保護する目的で、酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0037】
酸化防止剤としては、フェノール系、ラクトン系、チオエーテル系、没食子酸系、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール、亜リン酸エステル、ヒンダードアミン、芳香族アミン系などが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。添加量としては、酸素吸収性樹脂(A)に対して10ppm~10000ppmであることが好ましく、10ppm未満の場合、酸素吸収性樹脂(A)に配合して保存する場合などに、酸化反応が進み、実際の酸素吸収性能が低下してしまう可能性がある。また、添加量が10000ppmを超える場合は、接着剤として使用する際に酸素吸収性樹脂(A)と酸素の反応が妨げられるため、酸素吸収性能が低下してしまう可能性がある。また、熱や光を酸素吸収性能発現のトリガーとして用いることを想定した場合、アスコルビン酸、トコフェロールなどの耐熱性、耐光性の低い酸化防止剤を用いることが好ましく、フェノール系などの高耐熱性、高耐光性の酸化防止剤を用いた場合、酸素吸収性能が発現しない可能性がある。
【0038】
(その他の配合物について)
酸素吸収性樹脂(A)には、所望の目的が損なわれない範囲で、接着付与剤として知られるシランカップリング剤、粘着付与剤や、反応促進剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの各種添加剤、または、着色顔料や、体質顔料も添加ができる。
【0039】
シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランやこれらのエトキシ誘導体が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0040】
粘着付与剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ロジン、ロジングリセリンエステル、テルペン、アルキルフェノールなどが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0041】
反応促進剤としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなど金属系触媒や、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7
、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7などの3級アミンや、トリエタノールアミンのような反応性3級アミンなどが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0042】
レベリング剤としては、アクリルポリマー系、変性シリコーン系、アセチレンジオール系など、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ヒンダードアミン系など、消泡剤としては、ポリエーテルや界面活性剤シリコーン変性などが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0043】
着色顔料としては、アンスラキノン、ジケトピロロピロール、ペリレンマルーン、カーボンブラック、ジオキサジン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、フタロシアニン系、インダンスレンなどの有機系顔料や、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、アゾメチン銅錯体、酸化チタン、酸化ケイ素などの無機系顔料が挙げられ、体質顔料としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、タルクなどの無機系顔料が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0044】
(硬化剤(C)について)
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物に使用できる硬化剤(C)としては、一分子に2個以上のイソシアネート基を有すものであれば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート系の何れも使用できる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、などの、トリメチロールプロパンアダクトや、ビューレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体(三量体)が挙げられる。主剤(酸素吸収性樹脂(A))との配合割合としては、一般的なラミネート接着剤と同等の割合で配合出来る。具体的には、NCO/OHが1.0~3.0であることが好ましく、1.0未満では十分なラミネート強度が発現せず、3.0を超える場合、ポットライフの短縮などの不具合が生じる。
【0045】
(2液性接着剤樹脂組成物としての実施について)
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物を、酸素吸収性樹脂(A)を用いた主剤と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)との2液性接着剤樹脂組成物として実施する場合、上述の反応調整剤、酸化防止剤、その他の配合物のそれぞれについては、酸素吸収性樹脂(A)を用いた主剤に予め配合して実施することができるが、ポリイソシアネート系硬化剤(C)に配合して実施してもかまわない。また前記酸素吸収性樹脂(A)を用いた主剤と、ポリイソシアネート系硬化剤(C)とを配合する際に、上述の反応調整剤、酸化防止剤、その他の配合物のそれぞれを配合してもかまわない。
【0046】
(塗布量について)
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物の塗布量については、2~5g/m2程度、好ましくは3~5g/m2程度である。塗布量が2g/m2未満の場合、十分な酸素吸収性能が得られない。また5g/m2を越える場合は、経済性において不利となる。一般的に、ラミネートされたフィルムは、通常室温~50℃で2日~5日間の養生が必要であるが、酸素吸収性能を低下させないため、低温もしくは不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
【0047】
(数平均分子量について)
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物における水酸基末端ジエン系樹脂(a1)とポリエステル樹脂(a2)とを化学結合させた酸素吸収性樹脂(A)の数平均分子量は、3000~10000の範囲が好ましく、10000を越える場合、得られた樹脂の粘度が高くなり、塗工時の希釈溶剤の使用量が増える問題や塗工適性が悪くなる問題が発生する。一方、数平均分子量が3000未満の場合、分子量が低い為に、ラミネート初期の接着力が劣る傾向にあり、巻き取り時に、所謂、巻きズレを引き起こすことがある。数平均分子量は、塗工適性やラミネート初期時の物性確保の観点から、より好ましくは、4500~9000程度がよい。
【0048】
(使用方法について)
酸素吸収性付与ラミネート接着剤樹脂組成物の酸素吸収性樹脂(A)の具体的な使用方法としては特に問わないが、例えば適切な粘度となるよう加温し、硬化剤(C)を配合してから用いるノンソルベント型ラミネーション方式と、溶剤にて配合接着剤を適切な塗工粘度に希釈調整して用いるドライラミネーション方式とが挙げられる。
【0049】
[シーラント層]
図1に示した積層体10は、シーラント層15を、更に備えている。このシーラント層15は包装袋にした時に最内層となる層であり、一枚の積層体10を、シーラント層15を内側にして折り畳んで対向させることにより、又は二枚の積層体10の各シーラント層15を対向させることにより、シーラント層15同士を、縁部で加熱押圧してシールすることで三方袋、スタンド袋等の各種の包装袋を作製することができる。
シーラント層15は、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂層である。シーラント層15に用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリアクリロニトリル(PAN)等があり、それらの1種又は2種以上からなる樹脂を使用することができる。本発明の積層体10は、接着剤層14が酸素を吸収することにより接着強度が低下してシーラント層15の部分を、他の部分と分離してリサイクルすることができる。
【0050】
シーラント層15の厚さは、特に限定はないが30~100μm程度とすることが好ましい。好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下である。
【0051】
[積層体の製造方法]
図1に示した本実施形態の積層体10は、次のようにして製造することができる。基材層11の一表面上に、必要に応じて中間層12を押出成形する。次いで、バリア層13を、基材層11(基材層11に中間層が形成されている場合には中間層12)の一表面上に、バリア層13を貼り合わせる。次いで、バリア層13の一表面上に、接着剤層14を形成させてから、この接着剤層14を介してシーラント層15を貼り合わせてドライラミネートする。
製造された積層体10は、包装材として用いることができる。包装材を用いて使用する包装袋、包装容器は、特に限定されないが、食品の包装袋、より具体的にはインスタントコーヒーのスティック状の包装袋等に用いることができる。
【実施例0052】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
基材層として紙(上質紙、坪量150g/m2)を用意し、この紙の表面上に、中間層として低密度ポリエチレンを押出した後、アルミニウムフィルム(厚さ7μm)を貼り合わせた。
次に接着剤層として酸素吸収性付与ラミネート接着剤を作製した。この接着剤の作製では、水酸基末端1.4ポリイソプレン、1.2ポリブタジエン樹脂(a1)それぞれの比率が80対20となるよう混合したものとポリエステル樹脂(ロックペイント社製、RU77T)(a2)とにより酸素吸収性樹脂(A)を合成し、この酸素吸収性樹脂を酢酸エチルで希釈し、酸化促進触媒(B)としてのオクチル酸コバルトと、及びポリイソシアネート系硬化剤(C)を添加した。作製した接着剤を、乾燥塗布量が3.0g/m2になるように上述の積層体のアルミニウムフィルム表面に塗工し、無延伸無添加LLDPEフィルム(N-165、(アイセロ社製、厚さ40μm)とドライラミネート法により貼り合わせ、ラミネートフィルムを得た。
【0054】
[実施例2]
実施例1の接着剤の水酸基末端1.4ポリイソプレンと1.2ポリブタジエン樹脂(a1)の割合を100対0に変更した以外は同じにして、ラミネートフィルムを得た。
【0055】
[実施例3]
実施例1の基材層/中間層/アルミニウムフィルムを大日本印刷株式会社製透明蒸着バリアPETフィルムIB-PET(厚さ12μm)に変更し、そのコロナ処理面に実施例1の接着剤を塗布・乾燥した以外は同じにしてラミネートフィルムを得た。
【0056】
[実施例4]
実施例1の接着剤の水酸基末端1.4ポリイソプレンと1.2ポリブタジエン樹脂(a1)の割合を70対30に変更した以外は同じにして、ラミネートフィルムを得た。
【0057】
[実施例5]
実施例1の接着剤の水酸基末端1.4ポリイソプレンと1.2ポリブタジエン樹脂(a1)の割合を60対40に変更した以外は同じにして、ラミネートフィルムを得た。
【0058】
[比較例1]
実施例1の接着剤を、酸素吸収接着剤から汎用接着剤(TM570、東洋モートン社製)に変更した以外は同じにして、ラミネートフィルムを得た。
【0059】
上記実施例1、2及び上記比較例1~3のラミネートフィルムを40℃2日間エージングした後、シーラント側に紫外線250mJ/cm2を照射し、辺の長さが10cm×10cm×1cmであるヘッドスペース100ccの容器を作製し、22℃にて14日間保管後の容器内の酸素濃度を、酸素計(CheckPointO2/CO2、Dansensor社製)を用い破壊試験にて測定し、酸素吸収量を算出した。
酸素吸収前と、22℃14日間保管後のAL/無添加LLDPE間の接着強度を調べ、更に、保管後の各ラミネートフィルムを手作業により分離可能であるか否かを調べた。これらの結果を表1に示す。なお、上記の接着強度は、ラミネート強度をテンシロン万能試験機を用いて測定した。
・測定条件
幅:15mm
【0060】
【0061】
表1から分かるように、実施例1~5は、酸素吸収後に接着強度が低下し、特に実施例1~3は、LLDPEフィルムを分離させることができた。
【0062】
以上、実施の形態および実施例を用いて本発明の積層体及び包装材を具体的に説明したが、本発明の積層体及び包装材は、これらの実施形態および実施例の記載に限定されることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。