(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191364
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ポリマーナノ粒子およびその調整のプロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 17/08 20060101AFI20221220BHJP
C07K 14/62 20060101ALI20221220BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20221220BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20221220BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221220BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221220BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221220BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221220BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20221220BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20221220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221220BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20221220BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C07K17/08
C07K14/62 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
A61K9/16
A61K47/34
A61K45/00
A61K31/704
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/28
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P3/10
C08G81/00
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163169
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2020179393の分割
【原出願日】2013-04-22
(31)【優先権主張番号】61/714,994
(32)【優先日】2012-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1249/DEL/2012
(32)【優先日】2012-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519009954
【氏名又は名称】ナノプロティアジェン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハルパル シング
(57)【要約】
【課題】ブロックコポリマーで構成されている生分解性ポリマーナノ粒子およびそれを生成するためのプロセスを提供すること。
【解決手段】本ナノ粒子は、いかなる乳化剤も使用することなく生成され、30~120nmの範囲の大きさを有する。物質負荷(entity-loaded)ナノ粒子を生成するプロセスと共に、薬物負荷容量を制御する方法を開示する。本ナノ粒子を含む組成物ならびに治療、診断、およびセラノスティクスにおけるその用途もまた開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール(PLA-PEG-PPG-PEG)テトラブロックコポリマーまたはPLA-PEG-PPG-PEG-PLAペンタブロックコポリマーを含む生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項2】
前記PLAが、4,000~90,000g/molの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項3】
前記PLAが、45,000~60,000g/molの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項4】
前記PEG-PPG-PEGが、4,000~15,000g/molの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項5】
前記生分解性ポリマーナノ粒子の大きさが、10~200nmの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項6】
前記生分解性ポリマーナノ粒子の大きさが、30~120nmの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項7】
前記生分解性ポリマーナノ粒子が、乳化剤を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項8】
前記生分解性ポリマーナノ粒子が、0.5重量%~5重量%の外部の乳化剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項9】
前記PLAの平均分子量が、4,000~90,000g/molの範囲であり、前記PEG-PPG-PEGの平均分子量が、4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、前記生分解性ポリマーナノ粒子が、0.5重量%~5重量%の外部の乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項10】
前記PLAの平均分子量が、16,000g/mol以下であり、前記PEG-PPG-PEGの平均分子量が、4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、前記生分解性ポリマーナノ粒子が、乳化剤を含まない、請求項1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項11】
治療薬をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項12】
前記治療薬が、前記生分解性ポリマーナノ粒子にカプセル封入されるか、表面複合体化されるか、または吸着される、請求項11に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項13】
前記治療薬が、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、および造影剤を含む群から選択される、請求項12に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項14】
前記ペプチドが、抗癌ペプチドまたはインスリンである、請求項13に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項15】
前記抗癌ペプチドが、疎水性ポリマーで化学的に修飾される、請求項14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項16】
前記抗癌ペプチドが、CQCRRKNのアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項17】
前記抗癌ペプチドが、FSRSLHSLL(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、該FSRSLHSLLが、DまたはL-立体配置のいずれかにある、請求項14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項18】
前記治療薬が、化学療法薬である、請求項13に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項19】
前記化学療法薬が、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリンから成る群から選択される、請求項18に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項20】
ビタミン、小分子薬、リガンド、アミン、ペプチド断片、抗体、およびアプタマーから成る群から選択される標的成分をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項21】
前記抗癌ペプチドが、タンパク質形質導入ドメインに連結される、請求項16に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項22】
前記タンパク質形質導入ドメインが、ポリアルギニンである、請求項21に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項23】
前記抗癌ペプチドが、RRRRRRRRRCQCRRKN(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子、および少なくとも1つの薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物であって、必要に応じて、該医薬組成物が、静脈内注射、筋肉内注射、または経口経路のいずれかによる対象中の送達に適している、医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであって、該プロセスが、
(a)ポリ(乳酸)(PLA)および親水性-疎水性ブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解し、溶液を得るステップ;
(b)カルボジイミドカップリング剤および塩基を該溶液に添加し、反応混合物を得るステップ;
(c)該反応混合物を撹拌し、該親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたPLAのブロックコポリマーを得るステップ;
(d)ステップ(c)からの該ブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解および均質化し、均質化された混合物を得るステップ;
(e)該均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得るステップ;および
(f)該エマルションを撹拌し、生分解性ポリマーナノ粒子を得るステップ、
を含む、プロセス。
【請求項26】
前記プロセスが、前記生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄するステップと、前記生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥するステップとを含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
ステップ(a)が、必要に応じて、乳化剤を添加することを含む、請求項25または26に記載のプロセス。
【請求項28】
請求項1~23のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであって、該生分解性ポリマーナノ粒子が、治療薬をさらに含み、該プロセスが、
(a)治療薬を前記生分解性ポリマーナノ粒子で有機溶媒中に均質化し、一次エマルションを得るステップ;
(b)ステップ(a)の該一次エマルションを水相中でさらに乳化し、二次エマルションを得るステップ;および
(c)該二次エマルションを撹拌し、該治療薬を含む該生分解性ポリマーナノ粒子を得るステップ、
を含む、プロセス。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子を含む、疾患を治療するための組成物であって、該組成物が、少なくとも1つの治療薬と組み合わせて、それを必要とする対象に投与されることを特徴とし、該治療薬が、該生分解性ポリマーナノ粒子によってカプセル封入される、組成物。
【請求項30】
前記疾患が癌であり、該治療薬が抗癌ペプチドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記疾患が癌であり、該治療薬が化学療法薬である、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記疾患が糖尿病であり、前記治療薬がインスリンである、請求項29に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年4月23日に出願されたインド特許出願第1249/DEL/2012号ならびに2012年10月17日に出願された米国仮特許出願第61/714,994号の利益を主張するものである。これらの出願のそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ナノテクノロジーの分野、特に、生分解性ポリマーナノ粒子の生成に関する。本発明はまた、治療薬および/または標的薬剤を輸送することができる生分解性ポリマーナノ粒子を生成する方法に関する。これらの生分解性ポリマーナノ粒子は、治療、診断、およびセラノスティクスにおける非常に大きな可能性を有する。
【背景技術】
【0003】
分子標的療法は、癌治療における従来の化学療法薬の特異性の欠如を克服する有望な手段として登場した。癌治療において合成ペプチド薬は、従来のタンパク質と比較して高い特異性、安定性、および合成の容易さを示す。しかしながら、これらの抗癌ペプチドの標的部位への送達は、酵素分解、免疫原性、および血液中での短い寿命等の要因による大きな問題を引き起こす。抗癌薬の標的化された送達は、送達系が、その体積または血液循環中での活性度の損失を最小限に抑えて体内の障壁の透過を通して所望の腫瘍組織に達し、選択的に腫瘍細胞を死滅させることが可能であれば、より効果的であろう。これは、薬物の細胞内濃度を高め、同時に用量制限毒性を減少させることにより、患者の生存率および生活の質を改善するであろう。ペプチド薬物の送達のための戦略の1つは、薬物を細胞基質内への直接送達するためにペプチドを細胞透過性ペプチド(CPP)と複合体化することに関する。しかしながら、CPPとの複合体化は、ペプチド薬物の費用を増加し、その効果および安定性を減少させ、時には毒性を増加させ得る。NuBCP-9およびBax-BH3等のいくつかのペプチド治療薬は、癌性細胞への選択的結合を示し、アポトーシスを開始する。残念ながら、ペプチド治療薬の遊離薬物製剤は、ペプチドの大量の使用およびペプチドの頻繁な投与を必要とし、そのため費用が増加し、治療に不都合である。
【0004】
治療用ペプチドを含む治療薬を癌性細胞の細胞基質内に効果的に送達することが可能な送達系に対する差し迫った必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
生分解性ブロックコポリマー、その生分解性ブロックコポリマーから形成されるナノ粒子、その調製のためのプロセス、その組成物、治療薬および標的薬剤を含む種々の物質のための担体としてのその用途、ならびに疾患の治療のための方法を本明細書に提供する。これらのポリマーナノ粒子は、非毒性および生分解性であり、調節可能な大きさを有し、カプセル封入薬物のインビボ半減期を上昇させることができる。
【0006】
本発明の1つの態様は、親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたポリ(乳酸)(PLA)から本質的に成るブロックコポリマーから形成される生分解性ポリマーナノ粒子であり、その親水性-疎水性ブロックコポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチル)-ポリ(メチルアクリル酸)(PMMA-PMAA)、ポリ(スチレン-ポリアクリル)酸(PS-PAA)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(ビニルピリジン)(PAA-PVP)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(N,N-メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAA-PDMAEMA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(PEG-PBG)、およびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)から本質的に成るブロックコポリマーから選択される。
【0007】
1つの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子は、ブロックコポリマーPLA-PEG-PPG-PEGから形成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子のポリ(乳酸)(PLA)成分は、約4,000g/mol~90,000g/molの平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子のポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)成分は、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲の平均分子量を有する。
【0009】
別の実施形態において、生分解性ナノ粒子は、ブロックコポリマーPLA-PEG-PPG-PEG-PLAから形成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、PLAは、共有結合を用いて親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾される。
【0011】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子の大きさは、30~120nmの範囲である。
【0012】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子は、乳化剤を実質的に含まないか、または約0.5重量%~5重量%の外部の乳化剤をさらに含むかのいずれかである。
【0013】
ある実施形態において、ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量は、約4,000g/mol~90,000g/molの範囲であり、PEG-PPG-PEGブロックの平均分子量は、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、外部の乳化剤は、約0.5重量%~5重量%である。
【0014】
別の実施形態において、ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量は約16,000g/mol以下であり、PEG-PPG-PEGブロックの平均分子量は約4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、組成物は乳化剤を実質的に含まない。
【0015】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子は、治療薬をさらに含む。治療薬は、生分解性ポリマーナノ粒子上でカプセル封入されるか、表面で複合体化されるか、または吸着されてもよい。治療薬は、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、および造影剤を含む群から選択され得る。
【0016】
さらなる実施形態において、治療薬は、抗癌ペプチドである。ある実施形態において、抗癌ペプチドは、FSRSLHSLL(配列番号1)または実質的にFSRSLHSLL(配列番号1)を組み込む任意のポリペプチドのいずれかであり、そのFSRSLHSLL(配列番号1)は、DまたはL-立体配置のいずれかにある。別の実施形態において、抗癌ペプチドは、疎水性ポリマーで化学的に修飾される。1つの実施形態において、抗癌ペプチドは、ポリ(乳酸)で化学的に修飾されたFSRSLHSLL(配列番号1)である。
【0017】
他の実施形態において、抗癌ペプチドは、CQRRKN(配列番号2)またはAQARRKN(配列番号4)のいずれかといったMUC1-CDドメインからの配列または修飾配列を含む。
【0018】
他の実施形態において、MUC1-CDからの配列または修飾配列を含む抗癌ペプチドは、ポリアルギニン等のタンパク質形質導入ドメインに連結し得る。いくつかの実施形態において、ポリアルギニンは、9個のアルギニン残基から成る。
【0019】
さらなる実施形態において、治療薬は、化学療法薬であり、パクリタキセル、ドキソルビシン、ピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
別の実施形態において、治療薬は、インスリンである。
【0021】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーナノ粒子は、ビタミン、小分子薬物、リガンド、アミン、ペプチド断片、抗体、およびアプタマーから成る群から選択される標的成分をさらに含む。特定の実施形態において、標的成分は葉酸である。
【0022】
本発明の別の態様は、生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスを提供し、
a.ポリ-乳酸(PLA)および親水性-疎水性ブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、
b.カルボジイミドカップリング剤および塩基を溶液に添加し、反応混合物を得ることと、
c.反応混合物を撹拌し、親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたPLAのブロックコポリマーを得ることと、
d.ステップ(c)からのブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、
e.均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、
f.エマルションを撹拌し、生分解性ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む。
【0023】
ある実施形態において、プロセスは任意に、生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄するステップと、生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥するステップとを含む。
【0024】
さらなる実施形態において、プロセスは、30~120nmの範囲の大きさを有する生分解性ポリマーナノ粒子をもたらす。
【0025】
別の実施形態において、プロセスは任意に、ステップ(a)において乳化剤を添加することを含む。
【0026】
本発明のさらなる態様は、治療薬をさらに含む生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、
a.上述の生分解性ポリマーナノ粒子を有する治療薬を有機溶媒中で均質化し、一次エマルションを得ることと、
b.ステップ(a)の一次エマルションを水相中でさらに乳化し、二次エマルションを得ることと、
c.二次エマルションを撹拌し、治療薬をさらに含むポリマーナノ粒子を得ることと、を含む。
【0027】
ある実施形態において、プロセスは任意に、治療薬を含む生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄するステップと、生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥するステップとを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、プロセスは、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、および造影剤から成る群から選択される治療薬の組み込みを含む。さらなる実施形態において、治療薬は抗癌ペプチドであり、その抗癌ペプチドは、FSRSLHSLL(配列番号1)または実質的にFSRSLHSLL(配列番号1)を組み込む任意のポリペプチドであり、FSRSLHSLL(配列番号1)は、DまたはL-立体配置のいずれかにある。特定の実施形態において、抗癌ペプチドは、疎水性ポリマーで化学的に修飾される。1つの実施形態は、ポリ(乳酸)で化学的に修飾された抗癌ペプチドFSRSLHSLL(配列番号1)である。
【0029】
他の実施形態において、抗癌ペプチドは、CQRRKN(配列番号2)またはAQARRKN(配列番号4)のいずれかといったMUC1-CDドメインからの配列または修飾配列である。
【0030】
他の実施形態において、MUC1-CDからの配列または修飾配列を含む抗癌ペプチドは、ポリアルギニン等のタンパク質形質導入ドメインに連結し得る。いくつかの実施形態において、ポリアルギニンは、9個のアルギニン残基から成る。
【0031】
さらなる実施形態において、治療薬は、化学療法薬であり、パクリタキセル、ドキソルビシン、ピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリン挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明のさらなる態様は、PLA-PEG-PPG-PEGテトラブロックコポリマーを含む生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであり、生分解性ポリマーナノ粒子は遊離または修飾治療薬をさらに含み、そのプロセスは、
a.治療薬をPLA-PEG-PPG-PEGテトラブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子で有機溶媒中にて均質化し、一次エマルションを得ることと、
b.ステップ(a)の一次エマルションを水相中でさらに乳化し、二次エマルションを得ることと、
c.二次エマルションを撹拌し、遊離または修飾治療薬を含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む。
【0033】
ある実施形態において、PLAの分子量は、約3,000g/mol~10,000g/molの範囲である。別の実施形態において、PLAの分子量は、約4,000g/mol~90,000g/molの範囲である。
【0034】
いくつかの実施形態において、PEG-PPG-PEG親水性-疎水性ブロックコポリマーの分子量は、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲である。
【0035】
さらなる実施形態において、治療薬は、疎水性ポリマーと共有結合している。ある実施形態において、治療薬は、ポリ(乳酸)と共有結合している。
【0036】
本明細書に提供される本発明の別の態様は、本出願のプロセスにより得たPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子である。
【0037】
別の態様は、少なくとも1つの治療薬をさらに含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患を治療するための方法である。
【0038】
いくつかの実施形態において、疾患は癌であり、治療薬は、抗癌ペプチドまたは化学療法薬のいずれかである。いくつかの実施形態において、癌は乳癌であり、抗癌ペプチドはCQRRKN(配列番号2)またはAQARRKN(配列番号4)等のMUC1-CDドメインからの配列または修飾配列である。
【0039】
他の実施形態において、MUC1-CDからの配列または修飾配列を含む抗癌ペプチドは、ポリアルギニン等のタンパク質形質導入ドメインに連結し得る。いくつかの実施形態において、ポリアルギニンは、9個のアルギニン残基から成る。
【0040】
特定の実施形態において、疾患は糖尿病であり、治療薬はインスリンである。
【0041】
本発明の追加の態様は、本発明の生分解性ポリマーナノ粒子および少なくとも1つの薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0042】
1つの実施形態において、医薬組成物は、静脈内注射、筋肉内注射、または経口経路のいずれかによる対象中の送達に適している。
【0043】
さらなる態様は、ポリ(乳酸)(PLA)のセグメントおよびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)のセグメントから本質的に成るブロックコポリマーである。
【0044】
別の態様は、疎水性ポリマーと共有結合している治療薬を含む複合体である。いくつかの実施形態において、治療薬は、ポリ(乳酸)と共有結合している。いくつかの実施形態において、治療薬は、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドからなる群から選択される。
【0045】
本明細書に提供される別の態様は、ポリ(乳酸)と共有結合している治療薬を含む複合体を調製するためのプロセスであり、そのプロセスは、カルボジイミドカップリング剤およびヒドロキシ誘導体の存在下で、治療薬とポリ(乳)酸との反応を含む。
【0046】
さらなる態様は、ポリ(乳酸)と共有結合している少なくとも1つの治療薬をさらに含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患を治療するための方法である。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたポリ(乳酸)(PLA)から本質的に成るブロックコポリマーから形成される生分解性ポリマーナノ粒子であって、前記親水性-疎水性ブロックコポリマーが、ポリ(メタクリル酸メチル)-ポリ(メチルアクリル酸)(PMMA-PMAA)、ポリ(スチレン-ポリアクリル)酸(PS-PAA)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(ビニルピリジン)(PAA-PVP)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(N,N-メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAA-PDMAEMA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(PEG-PBG)、およびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)から本質的に成るブロックコポリマーから選択される、生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目2)
前記生分解性ナノ粒子が、テトラブロックコポリマーPLA-PEG-PPG-PEGから形成される、項目1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目3)
前記ポリ(乳酸)(PLA)が、約4,000~90,000g/molの範囲の平均分子量を有する、項目1または2に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目4)
前記ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール(PEG-PPG-PEG)が、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲の平均分子量を有する、項目2に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目5)
前記生分解性ナノ粒子が、前記ペンタブロックコポリマーPLA-PEG-PPG-PEG-PLAから形成される、項目1に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目6)
前記PLAが、共有結合を用いて親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されている、項目1~5のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目7)
前記生分解性ポリマーナノ粒子の大きさが、約30~120nmの範囲である、項目1~6のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目8)
前記生分解性ポリマーナノ粒子が、乳化剤を実質的に含まない、項目1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目9)
前記生分解性ポリマーナノ粒子が、約0.5重量%~5重量%の外部の乳化剤をさらに含む、項目1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目10)
前記ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量が、約4,000~90,000g/molの範囲であり、前記PEG-PPG-PEGブロックの平均分子量が、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、前記外部の乳化剤が、約0.5重量%~5重量%である、項目1または2に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目11)
前記ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量が、約16,000g/mol以下であり、前記PEG-PPG-PEGブロックの平均分子量が、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲であり、前記組成物が、乳化剤を実質的に含まない、項目1または2に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目12)
治療薬をさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目13)
前記治療薬が、前記生分解性ポリマーナノ粒子上にカプセル封入されるか、表面複合体化されるか、または吸着される、項目12に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目14)
前記治療薬が、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、および造影剤を含む群から選択される、項目13に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目15)
前記ペプチドが、抗癌ペプチドである、項目14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。(項目16)
前記抗癌ペプチドが、FSRSLHSLLまたは実質的に前記FSRSLHSLLを組み込む任意のポリペプチドのいずれかであり、前記FSRSLHSLLが、DまたはL-立体配置のいずれかにある、項目15に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目17)
前記抗癌ペプチドが、疎水性ポリマーで化学的に修飾される、項目15または16に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目18)
前記抗癌ペプチドが、FSRSLHSLLまたは実質的に前記FSRSLHSLLを組み込む任意のポリペプチドのいずれかであり、前記FSRSLHSLLがDまたはL-立体配置のいずれかにあり、前記疎水性ポリマーがポリ(乳酸)である、項目17に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目19)
前記抗癌ペプチドが、MUC1-CDドメインからの配列であるCQRRKNである、項目15に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目20)
前記抗癌ペプチドが、MUC1-CDドメインからの修飾配列であるAQARRKNである、項目15に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目21)
前記抗癌ペプチドが、タンパク質形質導入ドメインに連結される、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記タンパク質形質導入ドメインが、ポリアルギニンである、項目21に記載の方法。(項目23)
前記治療薬が化学療法薬である、項目14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目24)
前記化学療法薬が、パクリタキセル、ドキソルビシン、ピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリンから成る群から選択される、項目23に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目25)
前記ペプチドがインスリンである、項目14に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目26)
ビタミン、小分子薬、リガンド、アミン、ペプチド断片、抗体、およびアプタマーから成る群から選択される標的成分をさらに含む、項目1~11に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目27)
前記ビタミンが葉酸である、項目26に記載の生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目28)
生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒中でポリ(乳酸)(PLA)および親水性-疎水性ブロックコポリマーを溶解し、溶液を得ることと、
b.カルボジイミドカップリング剤および塩基を前記溶液に添加し、反応混合物を得ることと、
c.前記反応混合物を撹拌し、前記親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたPLAのブロックコポリマーを得ることと、
d.ステップ(c)からの前記ブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解し、および均質化し、均質化された混合物を得ることと、
e.前記均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、
f.前記エマルションを撹拌し、生分解性ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む、プロセス。
(項目29)
前記プロセスが、前記生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄するステップと、前記生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥するステップとを任意に含む、項目28に記載のプロセス。
(項目30)
前記生分解性ポリマーナノ粒子が、約30~120nmの範囲の大きさを有する、項目28または29に記載のプロセス。
(項目31)
ステップ(a)が、任意に乳化剤を添加することを含む、項目28~30のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目32)
項目1~11のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであって、前記生分解性ポリマーナノ粒子が、治療薬をさらに含み、
a.項目1~11のいずれか1項に記載の前記生分解性ポリマーナノ粒子を有する治療薬を有機溶媒中で均質化し、一次エマルションを得ることと、
b.ステップ(a)の前記一次エマルションを水相中でさらに乳化し、二次エマルションを得ることと、
c.前記二次エマルションを撹拌し、治療薬をさらに含む前記ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む、プロセス。
(項目33)
前記プロセスが、前記治療薬をさらに含む前記生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄するステップと、前記治療薬をさらに含む前記生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥するステップとを任意に含む、項目32に記載のプロセス。
(項目34)
前記治療薬が、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、および造影剤から成る群から選択される、項目32または33に記載のプロセス。
(項目35)
前記ペプチドが抗癌ペプチドである、項目34に記載のプロセス。
(項目36)
前記抗癌ペプチドが、FSRSLHSLLまたは実質的に前記FSRSLHSLLを組み込む任意のポリペプチドのいずれかであり、前記FSRSLHSLLが、DまたはL-立体配置のいずれかにある、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
前記抗癌ペプチドが、疎水性ポリマーで化学的に修飾される、項目35に記載のプロセス。
(項目38)
前記抗癌ペプチドが、FSRSLHSLLまたは実質的に前記FSRSLHSLLを組み込む任意のポリペプチドのいずれかであり、前記FSRSLHSLLがDまたはL-立体配置のいずれかにあり、前記疎水性ポリマーがポリ(乳酸)である、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
前記抗癌ペプチドが、MUC1-CDドメインからの配列であるCQRRKNである、項目35に記載のプロセス。
(項目40)
前記抗癌ペプチドが、前記MUC1-CDドメインからの修飾配列であるAQARRKNである、項目35に記載のプロセス。
(項目41)
前記抗癌ペプチドが、タンパク質形質導入ドメインに連結する、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
前記タンパク質形質導入ドメインが、ポリアルギニンである、項目41に記載の方法。(項目43)
前記治療薬が化学療法薬である、項目34に記載のプロセス。
(項目44)
前記化学療法薬が、パクリタキセル、ドキソルビシン、ピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリンから選択される、項目43に記載のプロセス。
(項目45)
PLA-PEG-PPG-PEGテトラブロックコポリマーを含む生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスであって、前記生分解性ポリマーナノ粒子が、治療薬をさらに含み、
a.前記治療薬をPLA-PEG-PPG-PEGテトラブロックコポリマーの前記生分解性ポリマーナノ粒子で有機溶媒中にて均質化し、一次エマルションを得ることと、
b.ステップ(a)の前記一次エマルションを水相中でさらに乳化し、二次エマルションを得ることと、
c.前記二次エマルションを撹拌し、前記遊離または修飾治療薬を含むPLA-PEG-PPG-PEGの前記生分解性ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む、プロセス。
(項目46)
前記PLAの分子量が、約3,000g/mol~10,000g/molの範囲である、項目45に記載のプロセス。
(項目47)
前記PLAの分子量が、約4,000g/mol~90,000g/molの範囲である、項目45に記載のプロセス。
(項目48)
前記PEG-PPG-PEG親水性-疎水性ブロックコポリマーの分子量が、約4,000g/mol~15,000g/molの範囲である、項目45~47のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目49)
前記治療薬が、疎水性ポリマーと共有結合している、項目45に記載のプロセス。
(項目50)
前記疎水性ポリマーが、ポリ(乳酸)である、項目49に記載のプロセス。
(項目51)
項目45に記載のプロセスによって得られた、PLA-PEG-PPG-PEGテトラブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子。
(項目52)
疾患を治療するための方法であって、少なくとも1つの治療薬をさらに含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を、その方法を必要とする対象に投与することを含む、方法。
(項目53)
前記疾患が癌であり、前記治療薬が抗癌ペプチドである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記疾患が癌であり、前記治療薬が化学療法薬である、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記疾患が糖尿病であり、前記治療薬がインスリンである、項目51に記載の方法。
(項目56)
前記癌が乳癌であり、前記抗癌ペプチドが、MUC1-CDドメインからの配列であるCQRRKN、または前記MUC1-CDドメインからの修飾配列であるAQARRKNのいずれかである、項目53に記載の方法。
(項目57)
前記抗癌ペプチドが、タンパク質形質導入ドメインに連結する、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記タンパク質形質導入ドメインが、ポリアルギニンである、項目57に記載の方法。(項目59)
項目1~27のいずれか1項に記載の生分解性ポリマーナノ粒子および少なくとも1つの薬剤的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(項目60)
前記医薬組成物が、静脈内注射、筋肉内注射、または経口経路のいずれかによる対象中の送達に適している、項目59に記載の医薬組成物。
(項目61)
ポリ(乳酸)(PLA)のセグメントおよびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)のセグメントから本質的に成る、ブロックコポリマー。
(項目62)
疎水性ポリマーと共有結合している治療薬を含む複合体。
(項目63)
前記疎水性ポリマーが、ポリ(乳酸)である、項目62に記載の複合体。
(項目64)
前記治療薬が、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドから成る群から選択される、項目62または63に記載の複合体。
(項目65)
ポリ(乳酸)と共有結合している治療薬を含む複合体を調製するためのプロセスであって、カルボジイミドカップリング剤およびヒドロキシ誘導体の存在下で、前記治療薬とポリ(乳)酸との反応を含む、プロセス。
(項目66)
疾患を治療するための方法であって、ポリ(乳酸)と共有結合している少なくとも1つの治療薬をさらに含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を、その方法を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下の図は、本明細書の一部を成し、本発明の態様をさらに例示することを意図する。本発明は、本明細書にある特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてその図を参照することにより、より良く理解され得る。
【0048】
【
図1】PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子の概略図を提供する。
【
図2】PLA、PEG-PPG-PEG、およびPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子のFTIRスペクトルを提供する。
【
図3】(
図3A)1,100g/molのPEG-PPG-PEGのブロックコポリマーから合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。(
図3B)4,400g/molのPEG-PPG-PEGのブロックコポリマーから合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。(
図3C)8,400g/molのPEG-PPG-PEGのブロックコポリマーから合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
【
図4】PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子の透過電子顕微鏡写真(TEM)画像を示す。
【
図5】MCF-7細胞中に蛍光色素であるローダミンBをカプセル封入するPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の細胞内在化を示す。
【
図6A】25℃で異なるコポリマーを用いて合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子からのカプセル封入されたL-PLBCL2P9の経時的なインビトロ放出を示す。
【
図6B】MCF-7細胞株中のL-PLBCL2P9薬物放出を負荷した、異なるブロックコポリマーを用いて合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果および細胞増殖を示す。
【
図7A】一次HUVEC細胞株上の抗癌ペプチド、L-PLBCL2P9を負荷したPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果を示す。
【
図7B】細胞透過性ペプチド(CPP)を用いた薬物送達と比較した、MCF-7細胞増殖における抗癌ペプチドL-PLBCL2P9を負荷したPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の送達の効果を示す。
【
図8】(
図8A)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウスのヘモグロビンを示す。(
図8B)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウス中の好中球およびリンパ球数を示す。(
図8C)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウスの血中血球容積、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、およびMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)を示す。
【
図9】(
図9A)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウスのアスパラギン酸トランスアミナーゼおよびアラニントランスアミナーゼのレベルを示す。(
図9B)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウスのアルカリホスファターゼのレベルを示す。(
図9C)150mg/kg(体重)の用量で単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したBALB/cマウスの尿素および血中尿素窒素(BUN)のレベルを示す。
【
図10】単純PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を注射したBALB/cマウスの脳、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、および肺の組織病理学を示す。
【
図11A】L-PLBCL2P9カプセル封入PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子(8,800g/mol)で治療したエールリッヒ腹水癌(EAT)マウスの腫瘍退縮を示す。
【
図11B】L-PLBCL2P9カプセル封入PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子(8,800g/mol)で治療したエールリッヒ腹水癌(EAT)マウスの腫瘍退縮を示す。
【
図12】(
図12A)1日目のエールリッヒ腹水癌(EAT)マウスを示す。(
図12B)PL-BCL2P9カプセル封入PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子(8,800g/mol)で治療したEATマウスの21日目の腫瘍成長抑制を示す。(
図12C)21日目の未治療の対照マウスを示す。
【
図13】糖尿病ウサギの血糖値の制御におけるインスリン負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果を示す。
【
図14】PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子からのポリアルギニン配列(RRRRRRRRRCQCRRKN(配列番号3))に連結するMUC1細胞質ドメインペプチドの放出データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
ナノ粒子は、ナノカプセルまたはナノ球体を生成することができる。ナノ粒子中へのタンパク質負荷は、吸着プロセスまたはカプセル封入プロセスのいずれかによって行われ得る(Spada et al.,2011;Protein delivery of polymeric nanoparticles;World Academy of Science,Engineering and Technology:76)。受動的および能動的標的化計画の両方を用いることによって、ナノ粒子は、正常細胞における毒性を回避しながら癌細胞における薬物の細胞内濃度を高めることができる。ナノ粒子が特定の受容体に結合して細胞内に進入する際、それらは通常、受容体媒介性エンドサイトーシスを介してエンドソームで覆われ、それにより、主要な薬物耐性機序の1つであるP-糖タンパク質の認識を迂回する(Cho et al.,2008,Therapeutic Nanoparticles for Drug Delivery in Cancer,Clin.Cancer Res.,2008,14:1310-1316)。ナノ粒子は、オプソニン作用および食作用によって身体から除去される(Sosnik et al.,2008;Polymeric Nanocarriers:New Endeavors for the Optimization of the Technological Aspects of Drugs;Recent Patents on Biomedical Engineering,1:43-59)。ナノ担体に基づくシステムは、改善した細胞内透過、局所的送達、早期分解に対する薬物の保護、制御された薬物動態および薬物組織分布特性、低い必要用量、および費用対効果の利点を有する効果的な薬物送達のために使用され得る(Farokhzad OC,Cheng J,Teply BA,Sherifi I,Jon S,Kantoff PW;Targeted nanoparticle-aptamer bioconjugates for cancer chemotherapy in vivo.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2006,103(16):6315-20;Fonseca C,Simoes S,Gaspar RE,Paclitaxel-loaded PLGA nanoparticles:preparation,physicochemical characterization and in vitro anti-tumoral activity.J.Controlled Release 2002;83(2):273-86;Hood et al.,Nanomedicine,2011,6(7):1257-1272)。
【0050】
ナノ粒子の取り込みは、その小さい寸法に間接的に比例する。その小さい大きさのため、ポリマーナノ粒子は、細網内皮系(RES)による認識および取り込みを逃れることが分かっており、このため、血液中を長時間循環することができる(Borchard et al.,1996,Pharm.Res.7:1055-1058)。ナノ粒子はまた、固形腫瘍の漏出性脈管構造のような病的部位で血管外遊出することができ、受動的標的化機構をもたらす。より速い可溶化速度に繋がるより大きな表面積のため、ナノサイズの構造は通常、より高い血漿濃度および曲線下面積(AUC)値を示す。小さい粒径は、宿主防御機構を逃れるのに役立ち、血液循環時間を上昇させる。ナノ粒径は、薬物放出に影響する。より大きな粒子は、系中への薬物のより緩徐な拡散を有する。より小さい粒子は、より大きい表面積を提供するが、速い薬物放出をもたらす。より小さい粒子は、貯蔵およびナノ粒子分散の輸送の間に凝集する傾向がある。よって、ナノ粒子の小さい大きさと最大安定性との折衷が望ましい。薬物送達系において使用されるナノ粒子の大きさは、その毛細血管中への急速な漏出を防ぐのに十分大きいが、肝臓および脾臓等の網内系中に留まっている固定マクロファージによる捕捉を逃れるのに十分小さくなければならない。
【0051】
そのサイズに加えて、ナノ粒子の表面特性もまた、循環中の寿命および運命の決定における重要な要因である。ナノ粒子は、理想的に、マクロファージ捕捉を逃れるために親水性表面を有するべきである。親水性および疎水性ドメインを有するブロックコポリマーから形成されたナノ粒子は、これらの基準を満たす。制御されたポリマー分解もまた、疾患状態への薬剤送達のレベルを上昇させる効果がある。ポリマー分解はまた、粒径の影響を受ける場合がある。分解速度は、インビトロの粒径の増大と共に増大する(Biopolymeric nanoparticles;Sundar et al.,2010,Science and Technology of Advanced Materials;doi:10.1088/1468-6996/11/1/014104)。
【0052】
ポリ(乳酸)(PLA)は、組織工学、医療材料、および薬物担体に関する申請に対して米国のFDAによって認可されており、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)PLA-PEGに基づく薬物送達系は、当該技術分野において既知である。米国第2006/0165987A1号は、ポリ(エステル)-ポリ(エチレン)マルチブロックコポリマーおよびナノ球体に強剛性を与える任意の成分を含み、薬学的化合物を組み込む、ステルス性のポリマー生分解性ナノ球体を記載している。米国第2008/0081075A1号は、グラフト高分子および1つ以上のブロックコポリマーから自己組織化した、機能的内部コアおよび親水性外部シェルを有する新規の混合ミセル構造を記載している。米国第2010/0004398A1号は、相間領域を持つコア/シェル立体配置のポリマーナノ粒子およびそれを生成するためのプロセスを記載している。
【0053】
しかしながら、これらのポリマーナノ粒子は本質的に、ナノ粒子の安定性のために約1%~2%の乳化剤の使用を必要とする。乳化剤は、培地中の分散粒子を安定化させる。PVA、PEG、Tween 80、およびTween 20は、一般的な乳化剤の一部である。しかしながら、乳化剤の使用は、乳化剤の浸出が対象に対する毒性となり得るため、インビボ用途の懸念の理由となる(Safety Assessment on polyethylene glycols(PEGS)and their derivatives as used in cosmetic products,Toxicology,2005 Oct.15;214(1-2):1-38)。乳化剤の使用はまた、ナノ粒子の質量を増加させ、それにより薬物負荷を減少させ、より多い投薬量の必要性を引き起こす。ナノ粒子薬物担体システムにおいて依然として広く存在する他の不利益は、不十分な経口での生物学的利用能、循環における不安定性、不適当な組織分布、および毒性である。上記の不利益を伴わずに治療用ペプチドを含む治療薬を癌性細胞の細胞基質内に効果的に送達することができる送達系に対する緊急の必要性が存在する。
【0054】
インビボでの薬物の半減期を上昇させる、調節可能な大きさを有する非毒性、生分解性のポリマーナノ粒子を含む、効果的な治療用送達系を本明細書に提供する。当業者であれば、本明細書に記載の発明は、具体的に記載されるもの以外の変化および修正を受けることに気付くであろう。本明細書に記載の発明が、すべてのそのような変化および修正を含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書において、個々にもしくはまとめて参照されるか、または示されるすべてのそのようなステップ、特徴、組成物、および化合物、ならびにそのステップまたは特徴のうちの任意の2つ以上の任意の、およびすべての組み合わせを含む。
定義
【0055】
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いるある特定の用語をここにまとめる。これらの定義は、残りの開示を考慮して解釈し、当業者によって理解されるように理解されるべきである。別途定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書全体を通して使用される用語は、別途特定の事例において制限されない限り、以下のように定義される。
【0056】
「a」、「an」、および「the」という冠詞は、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0057】
「含む」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること」、「~を特徴とする」、およびそれらの文法的同等物は、包括的、開放的な意義において使用され、追加の構成要素が含まれ得ることを意味する。「~だけから成る」と解釈されるとは意図されない。
【0058】
本明細書に使用される場合、「~から成る」およびその文法的同等物は、特許請求の範囲において特定されない任意の構成要素、ステップ、または成分を排除する。
【0059】
本明細書に使用される場合、「約」または「およそ」という用語は通常、所与の値または範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、および最も好ましくはさらに5%以内を意味する。
【0060】
本明細書に使用される場合、「生分解性」という用語は、酵素的および非酵素的破壊の両方、またはポリマー構造の分解を指す。
【0061】
本明細書に使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、直径10nm~1000nmの範囲内の粒子を指し、直径は、粒子と同じ容積を有する完全な球体の直径を指す。「ナノ粒子」という用語は、「ナノ粒子(複数可)」と同義に使用される。場合によっては、粒子の直径は、約1~1000nm、10~500nm、または30~120nmの範囲である。
【0062】
場合によっては、粒子の集団が存在してもよい。本明細書に使用される場合、ナノ粒子の直径は、特定の集団における分布の平均である。
【0063】
本明細書に使用される場合、「ポリマー」という用語は、当該技術分野において用いられるその通常の意味、すなわち、共有結合によって結合される1つ以上の反復単位(モノマー)を含む分子構造として用いられる。反復単位は、すべてが同じであり得るか、または場合によっては、ポリマー内に存在する反復単位のうちの2種類以上が存在し得る。
【0064】
「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、その変異形、およびそれらの誘導体等のポリヌクレオチドを指す。
【0065】
本明細書に使用される場合、「治療薬」および「薬物」という用語は、同義に使用され、本質的に薬剤的もしくは生物学的に活性な化合物または種だけではなく、それらの活性化合物または種のうちの1つ以上を含む材料、ならびに複合体、修飾体、および薬理学的に活性な断片、ならびにそれらの抗体誘導体を包含することも意図される。
【0066】
「標的成分」または「標的薬剤」は、標的化される細胞の表面に選択的に結合する分子である。例えば、標的成分は、特定の種類の細胞上で発見されるか、または標的細胞上で他の細胞よりも高い頻度で発現される、細胞表面受容体に結合するリガンドである。
【0067】
標的薬剤または治療薬は、ペプチドまたはタンパク質である。「タンパク質」および「ペプチド」は、当該技術分野において周知の用語であり、本明細書に使用される場合、これらの用語は、当該技術分野におけるその通常の意味で用いられる。概して、ペプチドは、約100個未満のアミノ酸長であるが、最大300個のアミノ酸を含むことができるアミノ酸配列である。タンパク質は、概して、少なくとも100個のアミノ酸の分子であると考えられる。アミノ酸は、DまたはL-立体配置にあり得る。タンパク質は、例えば、タンパク質薬物、抗体、組換え抗体、組換えタンパク質、酵素等であり得る。場合によっては、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸のうちの1つ以上は、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、複合体化のためのリンカー等の化学物質の添加、機能化、または環化、副次的環化、ならびにペプチドおよびタンパク質により有利な特性を与えることが意図される多数の他の修飾のいずれかといった他の修飾によって、修飾され得る。他の事例において、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸のうちの1つ以上は、1つ以上の天然に生じないアミノ酸による置換によって修飾され得る。ペプチドまたはタンパク質は、ファージライブラリー、酵母ライブラリー、またはインビトロ組み合わせライブラリー等の組み合わせライブラリーから選択され得る。
【0068】
本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、任意の種からの分子と接触する免疫グロブリン可変領域によって示される結合親和性と同様であるか、またはそれよりも大きい結合親和性を所与の抗原に与える二次または三次構造類似性を有するアミノ酸配列または分子を組み込む任意の分子を指す。抗体という用語は、限定することなく、2つの重鎖および2つの軽鎖から成る自然抗体、軽鎖、重鎖、もしくはその両方の断片、可変ドメイン断片、重鎖もしくは軽鎖のみの抗体、またはこれらのドメインの任意の改変された組み合わせに由来する結合分子を含み、単一特異性または二重特異性かどうか、また造影剤もしくは化学療法薬分子等の二次診断用または治療的成分と複合体化するかどうかは問わない。本用語は、限定することなく、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ラマ、ラクダ、ヒト、または任意の他の脊椎動物種に由来するかは問わない、結合成分に由来する免疫グロブリン可変領域を含む。本用語は、発見方法(ハイブリドーマ由来、ヒト化、ファージ由来、酵母由来、コンビナトリアルディスプレイ由来、もしくは当該技術分野で既知の任意の類似の誘導方法)、または生成方法(細菌、酵母、哺乳類細胞培養、もしくは遺伝子導入動物、もしくは当該技術分野で既知の任意の類似の生成方法)にかかわらず、任意のそのような免疫グロブリン可変領域結合成分を指す。
【0069】
本発明は、ブロックコポリマーで構成されている非毒性、安全、生分解性ポリマーナノ粒子およびそれを調製するためのプロセスを提供する。本発明の生分解性ポリマーナノ粒子は、親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたポリ(乳酸)(PLA)から本質的に成るブロックコポリマーから形成され、その親水性-疎水性ブロックコポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチル)-ポリ(メチルアクリル酸)(PMMA-PMAA)、ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(ビニルピリジン)(PAA-PVP)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(N,N-メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAA-PDMAEMA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(PEG-PBG)、およびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)から選択される。
【0070】
本発明は、本発明の生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスを提供する。結果として生じるナノ粒子は、非毒性、安全、および生分解性であるだけではなく、インビボで安定しており、高い貯蔵安定性を有し、医療分野におけるナノ担体系または薬物送達系で安全に使用することができる。実際に、本発明のナノ粒子は、送達可能薬物または治療薬のインビボでの半減期を上昇させる。本発明はまた、効果的および標的化される薬物送達ナノ担体系の形成する、生分解性ポリマーナノ粒子上の効果的な薬物負荷のためのプロセスを提供し、それは活性薬剤の早期分解を防ぎ、癌治療における用途に対する強い可能性を有する。
【0071】
また、医療および他の分野における用途のための生分解性ポリマーナノ粒子を含む組成物も提供し、それはナノ粒子の担体系またはリザーバーまたはデポーを用いる。本発明のナノ粒子は、予後の、治療の、診断の、またはセラノスティクスの組成物において広範囲に使用されてもよい。好適には、本発明のナノ粒子は、薬物および薬剤送達のために、ならびにヒトまたは動物における疾患診断および医用画像のために使用される。このため、本発明は、本明細書に記載されるように治療薬をさらに含むナノ粒子を使用する疾患の治療のための方法を提供する。本発明のナノ粒子はまた、リザーバーもしくはデポーが必要とされる場合、バイオセンサーとして、固定化酵素のための薬剤としてなど、化学または生体反応等の他の用途において使用され得る。
【0072】
本発明者らが、いかなる乳化剤または安定剤も用いずに生分解性ポリマーナノ粒子を生成することを試みた際、予想外の驚くべき結果が得られた。そのプロセスによって得られた生分解性ポリマーナノ粒子は、安全、安定、および非毒性である。ある実施形態において、ブロックコポリマーPEG-PPG-PEGは、ポリ-乳酸(PLA)マトリックスと共有結合しており、ブロックコポリマーをマトリックスの一部、すなわちナノ粒子送達系にする。対照的に、先行技術において、乳化剤(例えば、PEG-PPG-PEG)は、ナノ粒子マトリックスの一部ではなく、ゆえに浸出する(
図1)。先行技術のナノ粒子とは対照的に、本明細書に提供されるナノ粒子から培地中への乳化剤の浸出はない。
【0073】
本プロセスによって得られたナノ粒子は、インビボで浸出し得る追加の乳化剤がないため、非毒性および安全である。乳化剤がないこと、または減少されることはまた、より高い薬物対ポリマー比を有するナノ粒子をもたらす。これらのナノ粒子は、当該技術分野に存在するポリマーナノ粒子と比較して、より高い安定性および増加した貯蔵保存期間を有する。本発明のポリマーナノ粒子は、分解生成物が身体から容易に排泄され得るように生分解性に調製される。分解はまた、ナノ粒子中にカプセル封入された内容物を身体内の部位で放出できるようにするための方法を提供する。
【0074】
ポリ(乳酸)(PLA)は、疎水性ポリマーであり、本発明のポリマーナノ粒子の合成に好ましいポリマーである。しかしながら、ポリ(グリコール酸)(PGA)およびポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)のブロックコポリマーもまた使用され得る。疎水性ポリマーはまた、生物学的に由来するか、またはバイオポリマーであってもよい。
【0075】
用いられるPLAの分子量は概して、約4,000g/mol~90,000g/molの範囲である。PLAの平均分子量はまた、約60,000g/molであってもよい。
【0076】
ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)、ポリ(メタクリル酸メチル)-ポリ(メチルアクリル酸)(PMMA-PMAA)、ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(ビニルピリジン)(PAA-PVP)、ポリ(アクリル酸)-ポリ(N,N-メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAA-PDMAEMA)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(PEG-PBG)、ならびにPG-PR(アジピン酸、ピメリン酸、およびセベシン酸(sebecicacid)を含むポリエステル(PR)を有するポリグリセロール(PG)およびそのコポリマー)のようなブロックコポリマーは、本発明において使用され得る親水性または親水性-疎水性コポリマーであり、PEG-PPG-PEG等のABA型ブロックコポリマー、PPG-PEG-PPG等のBABブロックコポリマー、(AB)n型交互マルチブロックコポリマー、およびランダムマルチブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、2、3、またはそれを超える数のはっきりと異なるブロックを有し得る。PEGは、親水性、マクロファージに対する抗食作用、および免疫認識への耐性を与えるため、好ましい成分である。
【0077】
いくつかの実施形態において、親水性-疎水性ブロックコポリマーの平均分子量(Mn)は概して、1,000~20,000g/molの範囲である。さらなる実施形態において、親水性-疎水性ブロックコポリマーの平均分子量(Mn)は、約4,000g/mol~15,000g/molである。場合によっては、親水性-疎水性ブロックコポリマーの平均分子量(Mn)は、4,400g/mol、8,400g/mol、または14,600g/molである。
【0078】
本発明のブロックコポリマーは、ポリ(乳酸)(PLA)のセグメントおよびポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PEG-PPG-PEG)のセグメントから本質的に成り得る。
【0079】
本発明の特定の生分解性ポリマーナノ粒子は、ブロックコポリマーポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)(PLA-PEG-PPG-PEG)から形成される。
【0080】
本発明の別の特定の生分解性ポリマーナノ粒子は、ブロックコポリマーポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)(PLA-PEG-PPG-PEG-PLA)から形成される。
【0081】
本発明の生分解性ポリマーは、PLA共有結合を用いて親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されることによって形成可能である。
【0082】
本発明の生分解性ポリマーナノ粒子は、約30~120nmの範囲の大きさを有する。
【0083】
ある実施形態において、本発明の生分解性ポリマーは、乳化剤を実質的に含まないか、または約0.5重量%~5重量%の量の外部の乳化剤を含み得る。
【0084】
ある実施形態において、本発明の生分解性ポリマーナノ粒子は、PLA-PEG-PPG-PEGであり、ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量は約60,000g/molであり、PEG-PPG-PEGブロックの平均重量は約8,400または約14,600g/molであり、外部の乳化剤は約0.5重量%~5重量%である。
【0085】
別の実施形態において、本発明の生分解性ポリマーナノ粒子はPLA-PEG-PPG-PEGであり、ポリ(乳酸)ブロックの平均分子量はおよそ16,000g/mol以下であり、PEG-PPG-PEGブロックの平均重量は約8,400g/molまたは約14,600g/molであり、その組成物は、乳化剤を実質的に含まない。
【0086】
本発明において、本明細書で調製されるナノ粒子の調製において有用な有機溶媒は、好適に、アセトニトリル(C2H3N)、ジメチルホルムアミド(DMF;C3H7NO)、アセトン((CH3)2CO)、およびジクロロメタン(CH2Cl2)である。
【0087】
本発明の生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスは、ポリ(乳酸)(PLA)および親水性-疎水性ブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、カルボジイミドカップリング剤および塩基をその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、その反応混合物を撹拌し、親水性-疎水性ブロックコポリマーで化学的に修飾されたPLAのブロックコポリマーを得ることと、前のステップからのブロックコポリマーを有機溶媒中で溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、そのエマルションを撹拌し、ポリマーナノ粒子を得ることと、を含む。
【0088】
カルボジイミドカップリング剤は、当該技術分野において周知である。好適なカルボジイミドカップリング剤には、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジエチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)、およびN,N-ジイソプロピルカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
カップリング反応は通常、トリアルキルアミン、ピリジン、または4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の触媒および/または補助塩基の存在下で行われる。
【0090】
カップリング反応は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等のヒドロキシ誘導体と組み合わせても行われ得る。他のヒドロキシ誘導体には、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(Cl-HOBt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
上述のプロセスは、生分解性ポリマーナノ粒子を水で洗浄する追加のステップと、ポリマー生分解性ポリマーナノ粒子を乾燥する追加のステップと、を任意に含んでもよい。プロセスはまた、乳化剤を添加する最初のステップを任意に含んでもよい。このプロセスから結果として生じるナノ粒子は、30~120nmの範囲の大きさを有し得る。
【0092】
特定のプロセスにおいて、PLAおよびコポリマーPEG-PPG-PEGを有機溶媒中で溶解し、ポリマー溶液を得る。この溶液に、N,N-ジシクロヘキシルカルボイミド(dicyclohexylcarbodimide)(DCC)を、続いて4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を-4℃~0℃で添加する。この溶液を250~300rpmで、-40℃~0℃の範囲の低温で20~28時間かけて撹拌してもよい。PLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子は、PEG-PPG-PEGに共有結合するPLAを有し、PLA-PEG-PPG-PEGマトリックスを形成する。ナノ粒子をジエチルエーテル、メタノール、またはエタノールといった有機溶媒によって沈殿させ、濾過、超遠心分離、または限外濾過を含む、当該技術分野における従来の方法によって溶液から分離する。ナノ粒子を2℃~8℃の範囲の温度で保管する。
【0093】
本発明のプロセスは、本プロセスにおいて乳化剤を全く使用しない、または最小限の乳化剤を使用するように、追加の凍結ステップまたはデコイタンパク質の使用を必要としない追加の利点を提供する。本発明は、25℃~30℃環境室温条件下で容易に行われ、所望の小粒径を得るために過剰なせん断を必要としない。
【0094】
本発明のナノ粒子の一例のFTIRスペクトルを
図2に提供する。そのナノ粒子のNMRスペクトルを
図3A、3B、および3Cに提供する。ナノ粒子は、
図4Aおよび4BのTEM画像に示されるように立体配置中で実質的に球状であるが、しかしながら、ナノ粒子は、膨張または収縮に応じて非球状立体配置を採用しうる。ナノ粒子は、自然状態で両親媒性である。ナノ粒子のゼータ電位およびPDI(多分散性指数)を表2に提供する。本発明のナノ粒子の貯蔵安定性は、任意の遊離乳化剤をプロセスに追加しないため、従来の乳化剤ベースの系と比較して優れており、PEG成分を含むブロックコポリマーは、全体のPLA-PEG-PPG-PEGマトリックスと共有結合している。ナノ粒子の貯蔵保存期間は、6~18カ月の範囲である。
【0095】
本発明のナノ粒子は、透過電子顕微鏡を用いて測定されるように30~120nmの範囲の寸法を有する(
図4)。好適な実施形態において、本発明のナノ粒子の直径は、直径200nm未満であり、およびより好適には、直径約100nm未満である。ある特定のそのような実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径約10~200nmの範囲、約20~150nmの範囲、または約30~120nmの範囲である。
【0096】
本発明のナノ粒子は、活性薬剤または物質を特定の部位に送達することができる(
図5)。本発明のPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の粒径および放出特性は、ポリマーマトリックス中のPLAまたはPEG-PPG-PEGの分子量を変化させることによって制御することができる。活性薬剤または物質の放出は、12時間~60日間制御することができ、それは当該技術分野において利用可能な従来のPLA-PEG系を上回る改善である(
図6A)。ナノ粒子の薬物負荷容量もまた、ナノ粒子のポリマーマトリックス中のブロックコポリマーの平均分子量を変化させることによって制御することができる。ナノ粒子の薬物負荷容量は、PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのブロック長の増加に伴ってした(表3)。
【0097】
PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーで構成されているポリマーナノ粒子は自然状態で両親媒性であるため、疎水性および親水性薬物の両方をナノ粒子に負荷することができる。本発明のナノ粒子は、乳化剤を含まないか、または乳化剤の最小限の使用のため、高い薬物負荷容量を持ち、負荷用量および治療の頻度を減少させる。活性薬剤または物質のナノ粒子に対する比率は、乳化剤の重量が総製剤重量の50%を増加し得るため、乳化剤を用いる従来の系と比較して本発明のナノ粒子において高い(International Journal of Pharmaceutics,15 June
2011,Volume 411,Issues 1-2,Pages 178-187;International Journal of Pharmaceutics,2010,387:253-262)。ナノ粒子は、減少された毒性に加えて、単一および低用量の薬物送達の実現を補助する。活性薬剤のPLA-PEG-PPG-PEGのナノ担体系に対する重量割合は、ナノ粒子に対して2~20%の範囲である。ナノ粒子のより高い薬物負荷は、低減された投薬レベルで有効量が投与され得るため、薬物用量の必要量を減少させる。ナノ粒子の総負荷容量を妨害することなく、負荷した物質の長時間活性を有するポリマーナノ粒子中の増強された内部負荷は、非常に将来性のある治療の効果的な送達をもたらす。
図7Bは、一次HUVEC細胞株における、ナノ粒子製剤中に負荷した、本明細書において「L-PLBCL2P9」(アミノ酸配列FSRSLHSLL(配列番号1)のL-立体配置)とも称される抗癌ペプチドL-NuBCP-9の効果を遊離ペプチド薬物製剤および従来の細胞透過性ペプチド複合体化薬物製剤と比較して示す。
【0098】
本発明のPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子は、インビトロ細胞株試験およびインビボマウスモデル試験によって確認されるように非毒性である。150mg/kg(体重)の用量でPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療されたマウスにおいて評価された血液学的パラメーターは、対照群と比べて全血球数、赤血球数、白血球数、好中球、およびリンパ球レベルに関して有意な変化は示さなかった(
図8)。肝臓および腎機能に関して評価された生化学的パラメーターは、対照とナノ粒子治療群との間において、総タンパク質、アルブミン、およびグロブリンレベルに関して有意な変化を示さなかった。肝臓酵素、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)のレベルは、
図9Aおよび9Bに示されるように、対照群と比較してPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子治療群において、有意には上昇しなかった。尿素および血中尿素窒素(BUN)のレベルに関して、対照と比較してPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したマウスにおいて有意な変化はなかった(
図9C)。PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を注射されたマウスの臓器、脳、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、および肺の組織病理学を
図10に示す。
【0099】
本発明のナノ粒子は、1つ以上の物質をカプセル封入する、および/または吸着することができる。物質はまた、生分解性ナノ粒子のブロックコポリマーと直接複合体化してもよい。本発明の物質には、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、SiRNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、アミン、抗体およびその変異形、抗生物質、低分子量分子、化学療法薬、薬物もしくは治療薬、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、ならびに/または造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
カプセル封入され得る好適な分子は、治療薬である。タンパク質もしくはペプチドまたはそれらの断片、インスリン等、ドキソルビシン(doxorubcin)、パクリタキシル(paclitaxil)、ゲムセタビン(gemcetabin)、ドセタキセル等といった疎水性薬物、アンホテリシンB、イソニアジド(INH)等といった抗生物質、および核酸が治療薬に含まれる。治療薬はまた、パクリタキセル、ドキソルビシンピモジド、ピリメタミン、インデノイソキノリン、またはノル-インデノイソキノリン等の化学療法薬を含む。
【0101】
治療薬は、天然および非天然(合成)アミノ酸を含み得る。非限定的な例として、二環式化合物および環状ペプチド模倣薬等のペプチド模倣薬を含む。
【0102】
L形態またはL-立体配置の治療用ペプチドは、経済的に安価に製造することができるが、それらは、それらのD形態と比較してインビボ系において急速に分解することが知られているため、薬物適用における不利益を有することが分かっている。しかしながら、本発明のナノ粒子によるそのようなL-ペプチドのカプセル封入は、インビボ試験において確認されるように、ナノ粒子の核内へのカプセル封入のため、循環中の分解をもたらさない(
図11、12、および13)。
【0103】
抗癌薬物を負荷したナノ粒子の標的化された送達は、当該技術分野において普及している遊離薬物製剤と比較して実現することができる。本発明のナノ粒子はまた、ナノ粒子の表面上の標的成分を含む1つ以上の物質と表面複合体化されるか、生体複合体化(bioconjugated)されるか、または吸着され得る。標的成分は、ナノ粒子を腫瘍または疾患部位に局所化させ、治療薬を放出させる。標的成分は、リンカー分子と結合するか、または会合することができる。標的分子には、抗体分子、成長受容体リガンド、ビタミン、ペプチド、ハプテン、アプタマー、および当業者に既知の他の標的分子が挙げられるが、これらに限定されない。薬物分子および造影分子は、直接またはリンカー分子を介してナノ粒子の表面上で標的成分に結合し得る。
【0104】
標的成分の特定の、非限定的な例として、ビタミン、リガンド、アミン、ペプチド断片、抗体、アプタマー、トランスフェリン、抗体もしくはその断片、シアリルルイスX抗原、ヒアルロン酸、マンノース誘導体、グルコース誘導体、細胞特異的レクチン、ガラプチン、ガレクチン、ラクトシルセラミド、ステロイド誘導体、RGD配列、EGF、EGF結合ペプチド、ウロキナーゼ受容体結合ペプチド、トロンボスポンジン由来ペプチド、アルブミン誘導体、および/またはコンビナトリアルケミストリーに由来する分子が挙げられる。
【0105】
さらに、本発明のナノ粒子は、目的とする他の分子と表面機能化および/または複合体化され得る。葉酸といった低分子量小分子、前立腺膜特異的抗原(PSMA)、抗体、アプタマー、細胞表面で受容体もしくは抗原に結合する分子等は、ブロックコポリマーPEG-PPG-PEGまたはポリマーマトリックスのPEG成分に共有結合され得る。本発明の好適な実施形態において、マトリックスは、ポリマーおよび物質を含む。場合によっては、物質または標的成分は、ポリマーマトリックスの表面と共有結合し得る。治療薬は、ポリマーマトリックスの表面と会合するか、またはナノ粒子のポリマーマトリックスの至る所でカプセル封入され得る。複合体化されたナノ粒子の細胞取り込みは、単純なナノ粒子と比較して高い。
【0106】
本発明のナノ粒子は、多機能ナノ粒子として機能するように、当該技術分野で周知の方法を介してナノ粒子の表面に結合した1つ以上の薬剤を含んでもよく、また1つ以上の薬剤をカプセル封入してもよい。本発明のナノ粒子は、腫瘍の標的化、腫瘍の治療、および腫瘍の造影を一体化システムに結びつけることができる多機能ナノ粒子として機能することができ、癌との闘いにおいて有用な集学的アプローチを提供する。多機能ナノ粒子は、類似のもしくは異なる作用機序、類似のもしくは異なる作用部位、または類似のもしくは異なる機能を持つ1つ以上の活性薬剤を有し得る。
【0107】
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子中への物質のカプセル封入は、エマルジョン沈殿法によって調製される。本発明のプロセスを用いて調製されたPLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子は、有機溶媒を含む有機溶媒中で溶解される。ポリマーの10~20重量%の重量範囲で、物質をポリマー溶液に添加する。次いで、ポリマー溶液を水相に液滴で添加し、溶媒を蒸発させ、かつナノ粒子を安定化させるために室温で10~12時間かけて撹拌した。物質負荷ナノ粒子を遠心分離によって収集し、乾燥し、2℃~8℃でさらなる使用まで保管する。物質負荷ポリマーナノ粒子の調製のプロセスにおいて、糖、アミノ酸、メチルセルロース等の他の添加剤を水相に添加してもよい。
【0108】
本発明のナノ粒子の物質負荷容量は高く、表3に示されるように、ほぼ約70~90%に達する。本発明のPLA-PEG-PPG-PEGベースのナノ担体系は、早期分解を防ぎ、抗癌ペプチドを癌細胞に効果的かつ標的化して送達する。NuBCP-9、Bax BH3等の治療用ペプチドを核中にカプセル封入する表面葉状(Surface foliated)生分解性PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子は、いかなる細胞透過性ペプチドの使用も伴わずに、癌細胞の細胞基質中に効果的に送達され得る。L-PLBCL2P9負荷ナノ粒子によって誘発されるMCF-7細胞株を用いたインビトロ試験は、XTTアッセイ(
図7B)ならびにインビボ試験(
図11および12)によって評価されるように、48~72時間で完全な細胞の死滅を示した。
図7Bはまた、MCF-7細胞株における遊離薬物製剤と比較した薬物の持続放出および効率的な送達に対するナノ粒子の効果も示す。
【0109】
好適な実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子中への物質のより高い負荷は、活性薬剤を低分子量PLAと結合させることによって実現される。物質は、ヒドロキシ誘導体と組み合わせてカルボジイミドカップリング試薬との反応によって低分子量PLAと共有結合される。一例として、カルボジイミドカップリング剤は、エチル-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドであり、ヒドロキシ誘導体は、N-ヒドロキシ-スクシンイミド(EDC/NHS)化学である。PLAの分子量は、約3,000~10,000g/molの範囲である。PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子中への疎水性および親水性薬物の両方のより高い負荷が達成される(実施例5、表4および5)。カプセル封入されたPLA-薬物を有するナノ粒子は、細胞透過性ペプチド(CPP)を用いずに細胞基質中に送達された。
【0110】
ナノ粒子形成のための特定のプロセスおよび医薬組成物における用途を、参照目的で本明細書に提供する。これらのプロセスおよび用途は、当業者には明らかである様々な方法を通して実施され得る。
【0111】
本発明の別の実施形態は、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスを提供し、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含む。
【0112】
本発明の別の実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含み、そのプロセスは、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を水で洗浄するステップと、従来の方法でナノ粒子を乾燥するステップと、を任意に含む。
【0113】
本発明の別の実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、を含むs(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ-乳酸(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含み、ナノ粒子の大きさは、30~120nmの範囲である。
【0114】
本発明のさらに別の実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ-乳酸(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含み、PEG-PPG-PEGコポリマーの分子量は、1,000g/mol~10,000g/molの範囲である。
【0115】
本発明のさらなる実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含み、PLAの分子量は、10,000g/mol~60,000g/molの範囲である。
【0116】
本発明のさらなる実施形態において、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含み、ステップ(a)の溶液は、任意に乳化剤等の添加剤を含む。
【0117】
本発明の別の実施形態は、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスによって得られたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を提供し、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含む。
【0118】
本発明の別の実施形態は、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子の調製のためのプロセスによって得られたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を含む組成物を提供し、そのプロセスは、(a)PEG-PPG-PEGコポリマーおよびポリ(乳酸)(PLA)を有機溶媒中で溶解し、溶液を得ることと、(b)N,N,-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を-4℃~0℃の範囲の温度でその溶液に添加し、反応混合物を得ることと、(c)その反応混合物を250~400rpmで、-4℃~0℃の範囲の室温で20~28時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを得ることと、(d)そのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーを有機溶媒中で、250~400rpmで溶解および均質化し、均質化された混合物を得ることと、(e)その均質化された混合物を水相に添加し、エマルションを得ることと、(f)そのエマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を得ることと、を含む。
【0119】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含む。
【0120】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含み、そのプロセスは、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのナノ粒子を水で洗浄するステップと、従来の方法でナノ粒子を乾燥するステップと、を任意に含む。
【0121】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含み、物質は、有機小分子、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗生物質、低分子量分子、薬理学的に活性な分子、薬物、金属イオン、色素、放射性同位体、コントラスト剤、造影剤、および標的成分から成る群から選択される。
【0122】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含み、その物質は、ビタミン、リガンド、アミン、ペプチド断片、抗体、およびアプタマーから成る群から選択される標的成分である。
【0123】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含み、物質は、PLAに結合する。
【0124】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの生分解性ポリマーナノ粒子を調製するためのプロセスが提供され、そのプロセスは、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含み、物質は、3,000g/mol~10,000g/molの範囲の分子量のPLAに結合する。
【0125】
本発明の別の実施形態は、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含むプロセスによって得られた少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を提供する。
【0126】
本発明の別の実施形態は、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含む、プロセスから得られた少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を含む組成物を提供する。
【0127】
本発明の別の実施形態において、(a)250~400rpmで、有機溶媒中で溶解されたPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子を有する物質を均質化し、一次エマルションを得ることと、(b)その一次エマルションを水相において250~400rpmで乳化し、二次エマルションを得ることと、(c)その二次エマルションを25℃~30℃で、250~400rpmで10~12時間かけて撹拌し、物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGのナノ粒子を得ることと、を含む、プロセスから得られた少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を含む組成物が提供され、その組成物は、任意に、保存剤、抗酸化剤、増粘剤、キレート剤、等張剤、着香剤、甘味剤、着色剤、可溶化剤、染料、香味料、結合剤、軟化剤、フィラー、潤滑剤、および保存剤から成る群から選択される、少なくとも1つの薬学的賦形剤を含む。
【0128】
本発明さらに別の態様は、少なくとも1つの治療薬をさらに含むPLA-PEG-PPG-PEGの生分解性ポリマーナノ粒子を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患を治療するための方法を提供する。
【0129】
別の態様において、本発明は、薬物の製造のための少なくとも1つの物質を含むPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーで構成されている生分解性ポリマーナノ粒子の用途を提供する。
【0130】
また、本明細書に提供されるナノ粒子および薬剤的に許容される担体もしくは賦形剤を含む、医薬組成物または製剤も本明細書に提供される。
【0131】
好適な薬学的製剤は、例えば、活性成分(複数可)の約0.1%~約99.9%、好ましくは約1%~約60%を含有し得る。経腸または非経口投与用の薬学的製剤は、例えば、糖コーティング錠剤、錠剤、カプセル、もしくは坐剤等の単位剤形のもの、またはアンプルである。別途指示されない場合、これらは、それ自体が既知の手法において、例えば、従来の混合、造粒、糖コーティング、溶解、または凍結乾燥プロセスの方法によって、調製される。各剤形の個々の用量に含まれている併用パートナーの単位含有量は、必須有効量が多量の投薬単位の投与によって達しうるため、それ自体が有効量を構成する必要はないことが理解されよう。
【0132】
医薬組成物は、活性成分として、1つ以上の薬剤的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて本発明のナノ粒子のうちの1つ以上を含有し得る。本発明の組成物の作製において、活性成分は通常、賦形剤と混合されるか、賦形剤によって希釈されるか、または例えば、カプセル、小袋、紙、もしくは他の容器の形態のそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として役立つ場合、それは、活性成分のビヒクル、担体、もしくは培地として作用する固体、半固体、または液体材料であり得る。このため、組成物は、例えば、活性化合物の最大10重量%を含有する、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体として、または液体培地中で)、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射剤、および滅菌パッケージ化粉末の形態であり得る。
【0133】
好適な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、右旋糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン)、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。本製剤は、タルク、マグネシウムステアリン酸塩、および鉱物油等の平滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、メチル-およびプロピルヒドロキシ-安息香酸塩等の保存剤、甘味剤、および着香剤をさらに含み得る。
【0134】
本発明の化合物および組成物が経口または注射による投与のために組み込まれ得る液体形態には、水性溶液、好適に着香シロップ、水性もしくは油性懸濁液、および綿実油、胡麻油、ヤシ油、もしくは落花生油等の食用油を用いた着香エマルション、ならびにエリキシル剤、および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。
【0135】
本主題は、それらのある特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に記載されているが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨と範囲は、そこに含まれるその好ましい実施形態の説明に制限されるべきではない。
【実施例0136】
本開示はここで、実施例を用いて例示され、それは本開示の作業を例示することを意図し、本開示の範囲における制限的ないかなる限定も意図しない。別途定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本開示がそこに属する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。開示される方法および組成の実施に際して、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を用いることができるが、例示的な方法、装置、および材料を本明細書に記載する。
実施例1
PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子の調製
【0137】
ポリ(乳酸)(Mw.約45,000~60,000g/mol)、PEG-PPG-PEG(表1)、および組織培養試薬をSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。すべての試薬は分析グレードかまたはそれ以上であり、別途明記されない限り、容認されているように使用した。細胞株をNCCS Pune,Indiaから入手した。Nur-9ペプチドを95%の純度でカスタム合成した。
PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの調製
【0138】
60,000g/molの平均分子量を有する5gmのポリ(乳酸)(PLA)を250ml丸底フラスコ内で100mlのCH2Cl2(ジクロロメタン)中に溶解した。この溶液に、0.7gのPEG-PPG-PEGポリマー(分子量範囲1100~8400Mn)を添加した。この溶液を0℃で10~12時間かけて撹拌した。この反応混合物に、5mlの1%N,N-ジシクロヘキシルカルボイミド(dicyclohexylcarbodimide)(DCC)溶液を添加し、続いて、5mlの0.1%4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を-4℃~0℃/サブゼロ温度でゆっくりと添加した。この反応混合物を次の24時間撹拌し、その後、ジエチルエーテルでのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの沈殿ならびにWhatman濾紙No.1を用いた濾過が続く。そのようにして得たこのPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマー沈殿物を低真空下で乾燥し、さらなる使用まで2℃~8℃で保管した。
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の調製
【0139】
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子をエマルション沈殿法によって調製した。上述のプロセスによって得た100mgのPLA-PEG-PPG-PEGコポリマーを別々に有機溶媒、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジクロロメタン中で溶解し、ポリマー溶液を得た。
【0140】
このポリマー溶液の液滴を20mlの蒸留水の水相に添加することによってナノ粒子を調製した。この溶液を、磁気を用いて10~12時間かけて室温で撹拌し、残りの溶媒を蒸発させ、かつナノ粒子を安定化させた。次いで、ナノ粒子を25,000rpmで10分かけて遠心分離することにより収集し、蒸留水を用いて3度洗浄した。ナノ粒子をさらに凍結乾燥し、さらなる使用まで2℃~8℃で保管した。
PLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーのポリマーナノ粒子の特徴付け
【0141】
上述のプロセスによって得たナノ粒子の形状は、
図4A~Bに示される透過電子顕微鏡画像に見られるように本質的に球状である。TEM画像によって粒径範囲の判定が可能となり、それは約30~120nmであった。ナノ粒子の流体力学半径を、動的光散乱(DLS)機器を用いて測定し、それは110~120nmの範囲であった(表2)。
【0142】
ブロックコポリマーPEG-PPG-PEGの分子量の範囲を用いて合成されたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の特性を表2に示す。PLA、PLA-PEG、ブロックコポリマーPEG-PPG-PEG、およびポリマーナノ粒子PLA-PEG-PPG-PEGのFTIRスペクトルを
図2Aに示す。FTIRは、これらの種の間の違いに反応しにくいことを証明した。そのため、NMRを用いてさらなる特徴付けを行った。
【0143】
ブロックコポリマーPEG-PPG-PEGの異なる分子量を用いて得たPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子のNMRスペクトルを
図3A~Cに示す。図中において、約5.1の化学シフトを有するプロトンは、PLAのエステルプロトンを表し、約3.5の化学シフトを有するプロトンは、PEG-PPG-PEGのエーテルプロトンを表す。スペクトル中の両方のプロトンの存在は、PLAのPEG-PPG-PEGとの複合体化を確信させる。
実施例2
物質をカプセル封入したナノ粒子の調製
薬物カプセル封入ポリマーナノ粒子の調製
【0144】
本発明のナノ粒子は、自然状態で両親媒性であり、ドキソルビシンのような疎水性薬物および抗癌9量体ペプチド(L-NuBCP-9またはL-PLBCL2P9、FSRSLHSLL(配列番号1)のL-立体配置)、16量体BH3ドメイン等の親水性薬物の両方を負荷することができる。
【0145】
実施例1のプロセスを用いて調整した100gのPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を、5mlのアセトニトリル(CH3CN)、ジメチルホルムアミド(DMF;C3H7NO)、アセトン、またはジクロロメタン(CH2Cl2)といった有機溶媒中で溶解する。
【0146】
1~5mgの薬物物質、L-PLBCL2P9(FSRSLHSLL(配列番号1)のL-立体配置)を水性溶液中で溶解し、上記のポリマー溶液に添加した。物質は通常、ポリマーの約10~20%重量の重量範囲で用いられる。この溶液を250-400rpmで10~15秒の短時間で超音波処理し、微細な一次エマルションを生成する。
【0147】
この微細な一次エマルションをシリンジ/マイクロピペットを用いて20mlの蒸留水の水相に液滴で添加し、溶媒を蒸発させ、かつナノ粒子を安定化させるために250~400rpmで、磁気を用いて10~12時間かけて25℃~30℃で撹拌する。水相は、糖添加物をさらに含む。結果として生じるナノ粒子懸濁液を、残りの有機溶媒を蒸発させるように開放され、覆われていない条件下で一晩かけて撹拌した。L-PLBCL2P9カプセル封入ポリマーナノ粒子を、10分間の遠心分離によって10,000g、または15分間の限外濾過によって3000g収集する(Amicon Ultra、100,000NMWLのUltracel膜、Millipore,USA)。ナノ粒子を蒸留水中で再懸濁し、3回洗浄し、凍結乾燥する。これらを2℃~8℃でさらなる使用まで保管した。このポリマーナノ粒子は高度に安定しており、ステルス特徴を有さない。
異なる重量のコポリマーを用いて調整されたポリマーナノ粒子の負荷効果の比較
【0148】
PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子を、上述のプロセスを使用し、異なる分子量のPEG-PPG-PEGポリマーを用いて調整した。ピレン負荷PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子を、異なる分子量のPEG-PPG-PEGポリマーを用いて合成されたPLA-PEG-PPG-PEGコポリマーを用いて調製した。ピレンをPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの2~20%重量の範囲で使用し、蛍光色素負荷ナノ粒子を調製した。ナノ粒子の物質負荷能力は、ナノ粒子の合成に用いたPEG-PPG-PEGポリマーの分子量によって異なった。表3は、異なる分子量のブロックコポリマーを用いて生成されたポリマーナノ粒子によってカプセル封入された造影分子の割合を提供する。
蛍光色素、ローダミンの細胞内部移行
【0149】
上述のプロセスを用いて、ローダミン負荷PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子を調製した。ローダミンをPLA-PEG-PPG-PEGブロックコポリマーの2~20重量%の範囲で使用し、蛍光色素負荷ナノ粒子を調製した。
1×10
5MCF-7細胞を最初に蒔き、カバーガラスフラスコ上で60%コンフルエンスまで成長させた。次いで、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する10mlのDMEM培地中で24時間かけて培養した。次いで、その成長した培地を吸引し、細胞をPBSで2回洗浄した。ローダミン負荷ナノ粒子をカバーガラスに付着させた細胞に添加し、37℃で12時間かけてインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、カバーガラスを取り外した。これを続いてPBS溶液で洗浄し、最後に室温で20分間かけて4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定剤を除去した後、細胞を洗浄し、細胞を5分間かけてDAPI(蛍光染色着色核細胞)で染色し、次いで、流れる水道水で1分間漱いだ。次いで、カバーガラスを共焦点蛍光顕微鏡(Olympus,Fluoview FV1000 Microscope,Japan)を使用して分析した。MCF-7細胞中のナノ粒子の細胞内部移行を、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)と併せて蛍光色素(ローダミンB)負荷ナノ粒子を使用することによって確認した(
図5)。
実施例3
標的成分を用いた薬物カプセル封入ポリマーナノ粒子の調製
【0150】
それぞれ-COOHまたは-NH2官能基をもたらすアミンまたはアミノ酸といった様々な小分子が、本発明のポリマーナノ粒子上の標的成分として生体分子の複合体化に使用され得る。
PLA-PEG-PPG-PEG-リジンの調製
【0151】
PLA-PEG-PPG-PEGコポリマーをアミノ酸、リジンと複合体化し、-NH2基を持たせた。5gのPLA-PEG-PPG-PEGおよび0.05gのリジンを250mlRBフラスコ内で100mlのアセトニトリル/ジクロロメタン(1:1)中で溶解し、-4~0℃で撹拌できるようにした。この溶液に、1%N,N-ジシクロヘキシルカルボイミド(dicyclohexylcarbodimide)(DCC)溶液を添加し、続いて、0.1%4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を0℃でゆっくりと添加した。この反応混合物を24時間かけて撹拌し、その後、PLA-PEG-PPG-PEG-リジンをジエチルエーテルで沈殿させ、Whatman濾紙No.1を通して濾過した。沈殿物を低真空下で乾燥し、2℃~8℃でさらなる使用まで保持した。
PLA-PEG-PPG-PEG-リジンからのナノ粒子の調製
【0152】
ナノ粒子調製のため、PLA-PEG-PPG-PEG-リジンコポリマー(100mg)をアセトニトリル(またはジメチルホルムアミド(DMF)もしくはジクロロメタン)中で溶解した。次いで、薬物(ポリマーの約10~20重量%)をその溶液に添加し、15秒の短時間の超音波処理を用いて一次エマルション生成した。結果として生じた一次エマルションを蒸留水(20ml)の水相に液滴で添加し、溶媒を蒸発させ、かつナノ粒子を安定化させるために磁気を用いて室温で10~12時間かけて撹拌した。25,000rpmで10分間の遠心分離により形成されたナノ粒子を収集し、蒸留水を用いて3回洗浄し、凍結乾燥し、続いて、さらなる使用のため2-8℃で貯蔵した。
ナノ粒子と葉酸(FA)との生体複合体化(Bio-conjugation)
【0153】
20mgの凍結乾燥させたPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子をmilliQ水中で溶解し、N-(3-ジエチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC)(50μl、400mM)およびN-ヒドロキシスクシンアミド(NHS)(50μl、100mM)で処置し、その混合物を20分かけて穏やかに振盪した。この後、10mMの葉酸溶液を添加し、その溶液を30分かけて穏やかに振盪し、続いてアミコンフィルターを用いて濾過し、濾液中に残った未反応FAを除去した。ナノ粒子と複合体化させた葉酸を凍結乾燥し、続いて-20℃で貯蔵した。
実施例4
PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子の送達可能性の評価
ポリマーナノ粒子PLA-PEG-PPG-PEGによるカプセル封入薬物のインビトロ放出
【0154】
10mlのリン酸緩衝食塩水およびローダミンB複合体化L-PLBCL2P9(薬物)をカプセル封入した10mgのPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を含有する混合物を200rpmで、37℃で撹拌した。混合物の上清試料を6日間かけて異なる時間間隔で25,000rpmでの遠心分離によって収集した。各遠心分離後、ナノ粒子を新しい緩衝液中で再懸濁した。2mlの上清を、BCAキット(Pierce,USA)を使用したタンパク質評価に供し、562nmでの分光測定で薬物放出の量を評価した。薬物放出を標準検量線の方法を用いて計算した。PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子による薬物の放出が、従来のPLAナノ粒子よりも優れて制御され得ることが観察された(
図6A)。
XTT(ナトリウム2,3,-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)-カルボニル]-2H-テトラゾリウム内塩)アッセイ
【0155】
XTT(ナトリウム2,3,-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)-カルボニル]-2H-テトラゾリウム内塩)アッセイを使用して一次HUVEC細胞株およびMCF-7細胞株における細胞生存率を評価した(
図6B、7A、および7B)。
【0156】
合計1×10
4MCF-7細胞を96ウェルプレートの各ウェル上に播種し、24時間かけて培養した。24時間後、各プレート内の細胞を5μMのL-PLBCL2P9ペプチドを含有する本発明のポリマーナノ粒子またはいかなるペプチドも含まない対照ナノ粒子で処置した。また細胞を別々にいかなる細胞透過性ペプチド(CPP)も伴わない同じ濃度のL-PLBCL2P9ペプチドで処置した。16時間、24時間、48時間、72時間、および96時間の異なる時間間隔でナノ粒子を有する細胞をインキュベートした。インキュベーション後、抗癌ペプチドL-PLBCL2P9を負荷したPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を含有する培地を新しい培地と交換し、10μlの再構成XTT混合物キット試薬を各ウェルに添加した。4時間かけて培養した後、試料の吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(Bio-Rad,CA,U.S.A.)を使用して450nmで測定した。無治療対照の生存細胞の割合として細胞の増殖を決定し、3組で分析した。
図6Bは、時間との関連で、MCF-7細胞株の細胞生存率におけるL-PLBCL2P9負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果を示す。
図7Aは、時間との関連で、一次HUVEC細胞株の細胞生存率における薬物L-PLBCL2P9負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果を示す。
実施例5
ナノ粒子中のより高い治療負荷を実現するためのペプチド薬物の修飾
【0157】
疎水性ならびに親水性治療薬のより高い負荷を、薬物成分を低分子量PLAで共有結合修飾することによって実現した。ペプチド薬物をエチル-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびN-ヒドロキシ-スクシンイミド(EDC/NHS)化学を使用して低分子量のPLAを用いて修飾した。成分を結合するために用いたPLAの平均分子量は通常、約3,000~10,000g/molの範囲である。
【0158】
5,000g/molの分子量を有する1gのPLAを10mlのアセトニトリル中で溶解した。この溶液に、ジクロロメタン中の500μlのN-(3-ジエチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC;400mM)およびジクロロメタン中の500μlのN-ヒドロキシスクシンアミド(NHS;100mM)を添加した。この混合物を2時間かけて穏やかに振盪し、続いて、PLAをジエチルエーテルで沈殿させた。このPLAを「活性化」PLAと名付けた。1mmolの活性化PLAをアセトニトリル中で溶解し、この溶液に、1mmolのペプチド薬物L-PLBCL2P9を添加し、この反応混合物を再度穏やかに30分間振盪した。次いで、この混合物をジエチルエーテルで沈殿させ、低真空下で乾燥し、続いて、-20℃でさらなる使用まで貯蔵した。
【0159】
ポリマーナノ粒子の薬物負荷容量は、ナノ粒子の調製に用いたブロックコポリマーの重量の増加に伴って増加した。表4および5に示されるように、ナノ粒子の薬物負荷容量もまた、薬物をポリマーナノ粒子に負荷する前に、低分子量PLAを治療薬(すなわち、L-PLBCL2P9)と複合体化することによって著しく増加する。本発明のナノ粒子の薬物負荷容量の増加は、5%~10%である。
実施例6
ナノ粒子の安全性および毒性を評価するためのインビボ試験
【0160】
実施例1に示されるプロセスを使用して調製されたPLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子の毒性および安全性を評価するための試験をBALB/cマウスにおいて行った。
血液学的パラメーター
【0161】
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を150mg/kg(体重)の単一用量で動物群に静脈内に注射し、21日間にかけて7日間の間隔で対照群およびナノ粒子治療群における血液学的パラメーターを評価した。対照群はナノ粒子を受容しなかった。
【0162】
図8に見られるように、対照群とナノ粒子治療群との間に全血球数(CBC)、赤血球(RBC)数、白血球(WBC)数、好中球、リンパ球、血中血球容積、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、およびMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)における有意な変化はなかった。
肝臓および腎臓機能に対する生化学血液アッセイ
【0163】
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を150mg/kg(体重)の単一用量で動物群に静脈内に注射し、21日間にかけて7日間の間隔で対照群およびナノ粒子治療群における血液学的パラメーターを評価した。
【0164】
対照群と治療群の間に総タンパク質、アルブミン、およびグロブリンレベルにおける有意な変化はなかった。
図9に見られるように、肝臓酵素、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)のレベルは、PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子治療群において有意には上昇しなかった。尿素および血中尿素窒素(BUN)は、腎機能の良い指標である。
図9に見られるように、対照と比較して治療されたマウスの尿素およびBUNレベルにおいて有意な変化はなかった。
PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療したマウスの臓器の組織病理学
【0165】
BALB/cマウスを150mg/kg(体重)の単回用量で、PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子で治療した。21日後、動物を屠殺し、臓器組織の組織学的検査を実施し、PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子またはその分解生成物によって引き起こされた毒性による任意の組織損傷、炎症、または病変を評価した。
図10に示されるように、ナノ粒子治療動物の脳、心臓、肝臓、脾臓、肺、および腎臓において明白な病理組織学的な異常または病変は観察されなかった。
実施例7
インビボでのナノ担体系としてのPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果
【0166】
ナノ担体系としてのナノ粒子の効果を評価するためにBALB/c型の系統のエールリッヒ腹水癌(EAT)モデルの遺伝子導入マウスを用いた。20gの体重を有する動物を本試験に使用した(
図12a)。
【0167】
抗癌ペプチド薬物、L-PLBCL2P9をPLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子に負荷した。マウスに、実施例2において調製したように、PLA-PEG-PPG-PEG中にカプセル封入された、200-1000μgのペプチドの用量で抗癌ペプチド、L-PLBCL2P9を含むポリマーナノ粒子の腹腔内製剤を与えた。動物に与えられた抗癌ペプチドの総重量は、300μg~600μg/マウスであった。製剤の投与頻度は、21日間にわたり隔週であり、動物は60日間観察下におかれた。
【0168】
L-PLBCL2P9を負荷したナノ粒子の投与後、60日間にわたってマウスにおいて腫瘍成長抑制が観察された(
図11)。L-PLBCL2P9負荷ナノ粒子で治療されたマウスは、対照群(
図12c)と比較して腫瘍を完治した(
図12b)ことが分かった。対照群は、任意の治療薬を含まない単純なナノ粒子を受容していた。
糖尿病ウサギにおける非経口デポーとしてのインスリン負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の評価
インスリンのPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子へのカプセル封入
【0169】
二重エマルション溶媒蒸発法によってPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子にカプセル封入されたインスリンを調製した。ナノ粒子調製において、1gのPLA-PEG-PPG-PEGコポリマーをアセトニトリル中で溶解した。インスリン(500I.U.)を溶液に添加し、15秒の短時間の超音波処理を用いて一次エマルション生成した。結果として生じた一次エマルションを30mlの水相に液滴で添加し、溶媒を蒸発させ、かつナノ粒子を安定化させるために磁気を用いて室温で6~8時間かけて撹拌した。10分間の21,000rpmでの遠心分離によりナノ粒子を収集し、蒸留水を用いて3回洗浄した。インスリン負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を凍結乾燥し、4℃でさらなる使用まで保管した。
インビボ試験
【0170】
糖尿病ウサギに50I.U./kg(体重)の単回用量のインスリン負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を皮下に投与し、10日間監視した。
【0171】
50I.U./kg(体重)のインスリン用量を与えられた動物において、血糖値は、血糖値の漸進的な上昇が観察された後、最大8日間、120~150mg/dlで維持された。薬物負荷ポリマーナノ粒子は、注射の部位でデポーを形成し、緩徐な分解および拡散により、持続的な様式で封入されているインスリンを放出する。グルコースレベルは、8日後であっても最初の糖尿病レベル(500mg/dl)には戻らず、1週間を超えて生理活性インスリンを保持し、持続的な様式で放出するポリマーナノ粒子の能力を示す(
図13)。
MUC1負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の評価:
ポリマーナノ粒子PLA-PEG-PPG-PEGによるカプセル封入されたMUC1のインビトロ放出
【0172】
10mlのリン酸緩衝食塩水およびポリアルギニンタンパク質形質導入ドメイン(Ac-RRRRRRRRRCQCRRKN-NH2(配列番号3))に連結するMUC1細胞質ドメインペプチドと複合体化されたローダミンBをカプセル封入する10mgのPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を含有する混合物を200rpmで、37℃で撹拌した。混合物の上清試料を6日間かけて異なる時間間隔で25,000rpmでの遠心分離によって収集した。各遠心分離後、ナノ粒子を新しい緩衝液中で再懸濁した。2mlの上清を、BCAキット(Pierce,USA)を使用したタンパク質評価に供し、562nmでの分光測定で薬物放出の量を評価した。薬物放出を標準検量線の方法を用いて計算した。PLA-PEG-PPG-PEGポリマーナノ粒子による薬物の放出が、最大60日間制御され得ることが観察された(
図14)。
XTT(ナトリウム2,3,-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)-カルボニル]-2H-テトラゾリウム内塩)アッセイ
【0173】
XTT(ナトリウム2,3,-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)-カルボニル]-2H-テトラゾリウム内塩)アッセイを使用して一次HUVEC細胞株およびMCF-7細胞株における細胞生存率を評価した(表6)。
【0174】
合計1×104MCF-7細胞を96ウェルプレートの各ウェル上に播種し、24時間かけて培養した。24時間後、プレート内の細胞を、ポリアルギニン配列(RRRRRRRRRCQCRRKN(配列番号3))に連結する20もしくは30μMいずれかのMUC1-細胞質ドメインペプチドを含有する本発明のポリマーナノ粒子で、またはいかなるペプチドも含まない対照ナノ粒子で処置した。16時間、24時間、48時間、72時間、および96時間の異なる時間間隔でナノ粒子を有する細胞をインキュベートした。インキュベーション後、MUC1-細胞質ドメインペプチド負荷したPLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子を含有する培地を、新しい培地と交換し、10μlの再構成XTT混合物キット試薬を各ウェルに添加した。4時間かけて培養した後、試料の吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(Bio-Rad,CA,U.S.A.)を使用して450nmで測定した。無治療対照の生存細胞の割合として細胞の増殖を決定し、3組で分析した。表6は、ホルモン依存性乳癌細胞株、MCF-7の細胞生存率におけるMUC1-細胞質ドメインペプチド負荷PLA-PEG-PPG-PEGナノ粒子の効果を示す。
【0175】
当業者であれば、単なる慣例に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の同等物を理解するか、または確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0176】
表の一覧
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】