IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特開2022-191367VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法
<>
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図1
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図2
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図3
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図4
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図5
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図6
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図7
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図8
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図9
  • 特開-VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191367
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】VEGF-A及びANG2に結合する抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221220BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20221220BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221220BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221220BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221220BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P43/00 105
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163264
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2022521292の分割
【原出願日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20194610.0
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20209591.5
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】フェン,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,グイド
(72)【発明者】
【氏名】インホフ-ユング,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クリスチャン・ホボルト
(72)【発明者】
【氏名】モルケン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】モルホイ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シャンツ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュペック,ヤニナ
(72)【発明者】
【氏名】ウルマー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイザー,バルバラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二重特異性Fabフラグメントの形態の抗VEGF-A/抗ANG2抗体及びその使用方法を提供する。
【解決手段】ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、VEGF-Aパラトープが、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、ANG2パラトープが、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む、抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む、抗体。
【請求項2】
ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン、並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、前記VHドメイン及び前記VLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、抗体。
【請求項3】
(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99のアミノ酸残基を含むVHドメイン;並びに、(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95のアミノ酸残基を含むVLドメインを含み、前記VHドメイン及び前記VLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号19のVH配列及び配列番号20のVL配列を含む、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体。
【請求項7】
前記抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
180mg/mlの前記抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体がFabフラグメントである、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項12】
ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を産生する方法であって、前記抗体が産生されるように請求項11に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項13】
前記宿主細胞がCHO細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬製剤。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体を含むポート送達装置。
【請求項16】
医薬として使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗VEGF-A/抗ANG2抗体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VEGF及びANG2に結合する二重特異性抗体は以前に報告されており、加齢黄斑変性症などの眼血管疾患の治療のために示唆されている。VEGFに特異的に結合するFab結合アーム及びANG2に特異的に結合する第2のFab結合アームを含む完全長IgG1抗体であるファリシマブ(INN)は、DME及びnAMDの処置について臨床第III相試験で現在評価されている最も進歩した二重特異性治療薬である(Sharma,A.,Kumar,N.,Kuppermann,B.D.et al.Eye 34,802-804(2020))。
【0003】
眼血管疾患の処置のためのVEGF及びANG2を標的とするさらなる組み合わせ処置がここ数年で示唆されている(例えば、国際公開第2016/122996号、国際公開第2018/037000号、国際公開第2019/200006号、米国特許出願公開第2020/0102381号明細書)。
【0004】
可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)の1つの対に2つのパラトープを含む多重特異性抗体は、国際公開第2008/027236号;国際公開第2010/108127号及びBostrom,J.,et al.,Science 323(2009)1610-1614並びに国際公開第2012/163520号に記載されている。
【0005】
国際公開第2012/163520号は、一対のVH及びVLドメインに2つのパラトープを含む二重特異性抗体を開示している(「DutaFab」)。国際公開第2012/163520号の二重特異性抗体の各パラトープは、重鎖CDR-H1及びCDR-H3並びに軽鎖CDR-L2が第一パラトープに寄与し、軽鎖CDR-L1及びCDR-L3並びに重鎖CDR-H2が第二パラトープに寄与する、重鎖及び軽鎖CDRからのアミノ酸を含む。個々のパラトープを含む単一特異性抗体は、第1のパラトープ又は第2のパラトープのいずれかが多様化している異なるFabライブラリーから独立して単離される。上記単一特異性抗体のアミノ酸配列が同定され、バイパラトピックVH及びVL対に融合される。VEGF及びIL-6に特異的に結合する例示的なFabフラグメントの一例は、国際公開第2012/163520号に開示されている。
【0006】
しかし、例えば、標準治療と比較して有効性を改善し、作用持続時間を改善し、ひいては硝子体内注射の頻度を減少させ、患者の投与負荷を少なくすることによって、VEGF及びANG2に結合する改善された治療用抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2抗体及びその使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、VEGF-Aパラトープが、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、ANG2パラトープが、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む、抗体を提供する。
【0009】
一態様において、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインの対がヒトVEGF-A及びヒトANG2に同時に結合する抗体を提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、配列番号19の可変重鎖ドメイン及び配列番号20の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同一のヒトVEGF-A上のエピトープ及び同一のヒトANG2上のエピトープに結合する抗体を提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する抗体を提供する。
【0012】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、静的光散乱(SLS)によって測定して、一実施形態では材料及び一般的方法のセクションの「熱安定性」に記載されているSLSによって測定して、70℃以上の凝集開始温度を示す抗体を提供する。
【0013】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、静的光散乱(SLS)によって測定して、一実施形態では材料及び一般的方法のセクションの「熱安定性」に記載されているSLSによって測定して、80℃を超える融解温度を示す抗体を提供する。
【0014】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH 6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体を提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、配列番号21のアミノ酸配列、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインであって、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供する。
【0017】
一態様において、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びにアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている、抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、VHドメイン中に以下のアミノ酸残基D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、及びD95と、VLドメイン中に以下のアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、R92、Y93、H94、及びP95とを含むVEGF-Aパラトープ;並びに、VHドメイン中に以下のアミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、R94、V96、F98、及びF99と、VLドメイン中に以下のアミノ酸残基E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、及びY91とを含むANG2パラトープを含む。
【0018】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0019】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0020】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりH3、D26、F27、E29、Y30、R66及びR94を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりI2、Y3、L46、F49、及びE57を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供する。
【0021】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0022】
一態様において、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号19の1、2、4~25、28、35d~54、59、60、67~93、97、101~113の1つ又は複数の位置にあるVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号20の1、4~26、27b~27d、33~45、47、48、51、52、58~90、96~107の位置にある可変軽鎖ドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供する。
【0023】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びにVLドメイン(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含んでおり、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む抗体を提供する。
【0024】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワーク;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン含む抗体を提供する。
【0025】
一態様では、本発明は、配列番号19のVH配列及び配列番号20のVL配列を含む、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、配列番号24の重鎖アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF-及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。
【0027】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体を提供し、抗体の抗体Fabフラグメントは、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する。
【0028】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する。
【0029】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体を提供し、抗体の抗体Fabフラグメントは、70℃以上の凝集開始温度を示す。
【0030】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、70℃以上の凝集開始温度を示す、抗体。
【0031】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体を提供し、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体を提供する。
【0032】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱法により測定して80℃を超える融解温度を示す。
【0033】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体を提供し、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl,pH 6.0溶液は、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する。
【0034】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液は、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する。
【0035】
本発明の一実施形態は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体フラグメントに関する。本発明の一実施形態は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する二重特異性抗体フラグメントに関する。一実施形態では、抗体フラグメントは、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)又はそれに由来する単鎖抗体から選択される。本発明の一実施形態は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合するFabフラグメントに関する。本発明の一実施形態は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合するFvフラグメントに関する。
【0036】
本発明の一実施形態は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する完全長IgG抗体に関する。
【0037】
一態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0038】
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含む宿主細胞を提供する。一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。一実施形態では、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0039】
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0040】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を産生する方法であって、抗体が産生されるように本発明の宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0041】
一態様では、本発明は、本発明の方法によって産生される抗体を提供する。
【0042】
一態様では、本発明は、本発明の抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。
【0043】
一態様では、本発明は、本発明の抗体及び薬学的に許容される担体を含むプレフィルド・シリンジを提供する。
【0044】
一態様では、本発明は、本発明の抗体及び薬学的に許容される担体を含む眼インプラントを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗体を含むポート送達装置を含む。
【0045】
本発明の一態様では、抗体又は医薬製剤は、ポート送達装置によって投与される。
【0046】
一態様では、本発明は、医薬として使用するための、一実施形態では血管疾患の処置に使用するための本発明の抗体を提供する。
【0047】
一態様では、本発明は、医薬、一実施形態では血管疾患を処置するための医薬の製造における本発明の抗体又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0048】
一態様では、本発明は、有効量の本発明の抗体又は本発明の医薬組成物を個体に投与することを含む、血管疾患を有する個体を処置する方法を提供する。
【0049】
一態様において、本発明は、個体における血管新生を阻害する方法であって、血管新生を阻害するために有効量の本発明の抗体又は本発明の医薬組成物を個体に投与することを含む方法を提供する。
【0050】
本発明によれば、抗体Fabフラグメントの形態で提供される場合であっても、その標的抗原に独立して結合することができる治療用の抗VEGF-A/抗ANG2抗体が提供される。本発明の抗体は、眼血管疾患の処置に適している。本発明の抗体は、低い有効用量を支持する両方の標的に対する高い親和性、及び長期間に有利な高い安定性のような、その治療適用を可能にするいくつかの有益な特性を提供する。非抗体アプローチと比較して、本発明の抗体は、その高いヒト性並びに人工のドメイン及びリンカーの欠如のために、許容され得る傾向がより高い。また、本発明の抗体は、眼への適用に適した粘度を有する高濃度液体製剤で提供されることが有利である。高濃度で提供可能であるため、より高い用量の治療薬を1回の処置で適用することができ、より長い処置サイクルを可能にするので、本発明の抗体による処置は患者にとってより許容され得る。さらに、治療のための二重特異性Fabフラグメントとして使用される場合、本発明の抗体は、二重特異性完全長IgG抗体と比較して、用量あたりより多くの結合部位を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の抗VEGF-A/抗ANG2抗体のFabフラグメントの概略図。CDRアミノ酸の配置を含む同族VH/VL対の上面図が示されている(上の画像)。VHドメインは灰色で示され、VLドメインは白色で示される。さらに、CDR領域の空間的配置が示されている。本発明の抗体のパラトープ領域が強調されており(下の画像)、VEGF-AパラトープがH-CDR2、L-CDR1及びL-CDR2の領域に配置され、ANG2パラトープがH-CDR1、H-CDR3及びL-CDR2の領域に配置される。
図2】本発明の例示的な抗VEGF-A/抗ANG2抗体のVHドメインのアミノ酸配列。アミノ酸位置のKabatナンバリング、並びにCDR及びFR領域が示されている。VEGF-Aパラトープ及び実施例13で同定されたANG2パラトープに寄与するアミノ酸位置を強調している。
図3】本発明の例示的な抗VEGF-A/抗ANG2抗体のVLドメインのアミノ酸配列。アミノ酸位置のKabatナンバリング、並びにCDR及びFR領域が示されている。VEGF-Aパラトープ及び実施例13で同定されたANG2パラトープに寄与するアミノ酸位置を強調している。
図4】実施例5に従ってSPRによって評価された、VEGF-A及びANG2に対する二重特異性抗体P1AD9820の独立した抗原結合。
図5】実施例11で試験した、示された抗体のVEGF-A121及びVEGF-A165ブロッキング活性。
図6】実施例11で試験した、本発明の示された抗体及び先行技術の抗体類似体のVEGF-A121及びVEGF-A165ブロッキング活性。
図7】実施例10で試験した、本発明の示された抗体及び先行技術の抗体類似体のVEGF-A阻害の分析のためのレポーター遺伝子アッセイ(RGA)。
図8】実施例10で試験した、本発明の示された抗体及び先行技術の抗体類似体のANG2阻害の分析のためのpTie2アッセイ。
図9】実施例12で試験した、P1AD9820によって媒介されるANG1阻害。
図10】実施例8で試験した、大腸菌で産生されたP1AA0902(左上)及びP1AD9820(右上)Fabフラグメント並びにCHOで産生されたP1AD9820(中央)のラテックス-ビーズDLS法で測定した粘度。
【発明を実施するための形態】
【0052】
1.定義
本明細書で特に定義されていない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的な用語は、当技術分野の当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本開示の方法及び技術は、一般的に、当技術分野で周知の従来の方法に従って行われる。一般的に、本明細書中に記載されている生化学、酵素学、分子生物学、及び細胞生物学、微生物学、遺伝学、及びタンパク質及び核酸の化学、並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法並びに技術は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。
【0053】
本明細書で特に定義されていない限り、「含む」という用語は、「からなる)」という用語を含むものとする。
【0054】
特定の値(例えば、温度、濃度、時間など)に関連して本明細書で使用される「約」という用語は、「約」という用語が指す特定の値の+/-1%の変動を指すものとする。
【0055】
本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味で使用されており、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、及び抗体フラグメントを含む多様な抗体構造を包含するが、これらに限られない。
【0056】
「単離された」抗体とは、その自然環境の構成要素から分離されているものである。いくつかの実施形態では、抗体は、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点フォーカシング(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィ(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)の方法によって決定される95%超又は99%超の純度に精製される。抗体純度の評価のための方法の総説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一であり、及び/又は同一のエピトープと結合しているが、例えば、自然に生じる突然変異を含むか、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性のあるバリアント抗体を除いて、そのようなバリアントは、一般的に微量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、改変詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。
【0058】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0059】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の型を指す。抗体には、次の5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分けることができる。特定の実施形態では、抗体はIgG1アイソタイプである。特定の実施形態では、抗体は、Fc領域エフェクター機能を低下させるためのP329G、L234A及びL235A変異を有するIgG1アイソタイプのものである。他の実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプのものである。特定の実施形態では、抗体は、IgG4抗体の安定性を改善するためにヒンジ領域にS228P変異を有するIgG4アイソタイプのものである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。
【0060】
用語「Fc領域」とは、本明細書では定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域とを含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0061】
「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体と抗原との結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインである。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、概して、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(framework region:FR)と、3つの超可変領域(hypervariable region:HVR)とを含む(例えば、Kindt等のKuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。本発明の抗体において、VHドメイン及びVLドメインの単一の対、すなわち同族VH/VL対は、その2つの標的:VEGF-A及びANG2に特異的に結合する。
【0062】
「DutaFab」は、国際公開第2012/163520号に開示されている二重特異性抗体である。DutaFabでは、VHドメインとVLドメインの単一の対が2つの異なるエピトープに特異的に結合し、一方のパラトープはCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、他方のパラトープはCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ残基を含む。DutaFabは、同族VH/VL対内に2つの重複しないパラトープを含み、2つの異なるエピトープに同時に結合し得る。DutaFab及び単一特異性Fabフラグメントを含むライブラリーのスクリーニングによるそれらの作製方法は、国際公開第2012/163520号に開示されている。
【0063】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、又はヒト抗体レパートリなどのヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体フラグメントは、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体フラグメントとみなされる。
【0064】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991)、第1-3巻におけるようなサブグループである。一実施形態では、VLについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループIIIである。
【0065】
「抗体フラグメント」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子である。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限られない。
【0066】
「パラトープ」又は「抗原結合部位」とは、抗原を認識して抗原に結合する抗体の一部分を指し、本明細書では互換可能に使用される。パラトープは、Fv領域の三次構造において空間的に近接して配置された、抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインからの複数の個別のアミノ酸残基によって形成される。本発明の抗体は、1つの同族VH/VL対に2つのパラトープを含む。
【0067】
本明細書で使用される場合、「VEGF-Aパラトープ」は、VEGF-Aに結合するパラトープ又は抗原結合部位である。本発明の抗体のVEGF-Aパラトープは、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「ANG2パラトープ」は、ANG2に結合するパラトープ又は抗原結合部位である。本発明の抗体のANG2パラトープは、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む。
【0069】
本明細書で使用される「血管内皮成長因子」、略して「VEGF」という用語は、特に示さない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源からの任意の天然VEGFを指す。この用語は、「完全長」の未処理のVEGFだけでなく、細胞内での処理に起因する任意の形態のVEGFをも包含する。この用語はまた、VEGFの自然発生的なバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントをも包含する。例示的なヒトVEGFのアミノ酸配列は、配列番号26に示されている。
【0070】
用語「抗VEGF-A抗体」及び「VEGF-Aに結合する抗体」とは、抗体がVEGF-Aの標的化において診断剤及び/又は治療薬剤として有用であるような充分な親和性を有して、VEGF-Aに結合可能である抗体を指す。一実施形態では、無関係な非VEGF-Aタンパク質への抗VEGF-A抗体の結合の程度は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されたVEGF-Aへの抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、VEGF-Aに結合する抗体は、解離定数(K)が1nM以下、0.1nM以下、又は0.01nM以下である。抗体が1μM以下のKを有する場合、抗体はVEGF-Aに「特異的に結合」すると言われる。
【0071】
本明細書で使用される「アンジオポエチン-2」、略して「ANG2」という用語は、特に示さない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源からの任意の天然ANG2を指す。この用語は、「完全長」の未処理のANG2だけでなく、細胞内での処理に起因する任意の形態のANG2をも包含する。この用語はまた、ANG2の自然発生的なバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントをも包含する。例示的なヒトANG2のアミノ酸配列は、配列番号27に示されている。
【0072】
用語「抗ANG2抗体」及び「抗-ANG2に結合する抗体」とは、抗体が抗-ANG2の標的化において診断剤及び/又は治療薬剤として有用であるような充分な親和性を有して、抗-ANG2に結合可能である抗体を指す。一実施形態では、無関係な非抗-ANG2タンパク質への抗-抗-ANG2抗体の結合の程度は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された抗-ANG2への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、ANG2に結合する抗体は、解離定数(K)が1nM以下、0.1nM以下、又は0.03nM以下である。抗体が1μM以下のKを有する場合、抗体は抗-ANG2に「特異的に結合」すると言われる。
【0073】
本発明の抗体は、「ヒトVEGF-A及びヒトANG2に同時に結合」し、これは、(a)ヒトANG2に結合した本発明の抗体Fabフラグメントが(同様に)ヒトVEGF-Aに特異的に結合し、(b)ヒトVEGF-Aに結合した本発明の抗体Fabフラグメントが(同様に)ヒトANG2に特異的に結合することを意味する。同時に結合することは、当技術分野で公知の方法で、例えば本明細書に記載の表面プラズモン共鳴によって評価され得る。
【0074】
本明細書において使用する用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、配列が超可変で、抗原に接触する残基を含む、抗体の可変ドメインの各領域を指す。一般的に抗体は、6つのCDRを含む:VHドメインに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、VLドメインに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。特に断りのない限り、本明細書では、CDR残基及び可変ドメインの他の残基(例えば、FR残基)は、Kabatナンバリングシステムに従って付番されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)。
【0075】
本明細書で使用する「フレームワーク」又は「FR」は、CDR残基以外の可変ドメインのアミノ酸残基を指す。可変ドメインのフレームワークは一般的に、4つのフレームワークドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。したがって、CDR及びFRアミノ酸配列は、一般に、以下の順番で現れる。(a)VHドメイン中:FR1-CDR-H1-FR2-CDR-H2-FR3-CDR-H3-FR4;及び(b)VLドメイン中:FR1-CDR-L1-FR2-CDR-L2-FR3-CDR-L3-FR4。
【0076】
Kabatナンバリングシステムによれば、本明細書で使用される場合、フレームワーク及びCDR領域は、可変ドメインの以下の領域に位置する。
【表1】
【0077】
本明細書で言及されるKabatナンバリングシステムによるアミノ酸位置は、本発明の抗体のアミノ酸配列と並べて図2及び図3に示されている。アミノ酸配列内のある特定の位置のアミノ酸への言及は、それぞれのアミノ酸及びアミノ酸位置を述べることによって当技術分野で周知のように本明細書でなされ、例えば、「E2」は、それぞれの抗体ドメインのアミノ酸配列のKabat位置2に位置するグルタミン酸残基を指す。
【0078】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一の結合部位の間の非共有性相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(K)によって表し得る。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的、例示的な実施形態は、本明細書に記載されている。
【0079】
「エピトープ」との用語は、抗体が結合する相手である、タンパク質性又は非タンパク質性のいずれかの、抗原上の部位を示す。エピトープは、連続したアミノ酸ストレッチ部位から形成される場合(線状エピトープ)、又は非連続のアミノ酸を含む場合(構造的エピトープ)の両方があり、例えば、抗原の折り畳みに起因して(すなわち、タンパク質性抗原の三次折り畳みによって)空間的に近接して形成される。線状エピトープは、典型的には、タンパク質性抗原を変性剤に曝露した後も依然として抗体によって結合されているが、コンフォメーションエピトープは、典型的には、変性剤での処理により破壊される。エピトープは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は8~10個のアミノ酸を、独特な空間的構造で含む。
【0080】
特定のエピトープに結合する抗体(すなわち、同じエピトープに結合する抗体)のスクリーニングは、例えば、限定されないが、アラニンスキャニング、ペプチドブロット(Meth.Mol.Biol.248(2004)443-463)、ペプチド切断分析、エピトープ切除、エピトープ抽出、抗原の化学的修飾(Prot.Sci.9(2000)487-496を参照)、及びクロスブロッキング(「Antibodies」,Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NYを参照)などの、当該技術分野で慣用の方法を用いて行われ得る。
【0081】
抗原構造系抗体プロファイリング(Antigen Structure-based Antibody Profiling:ASAP)は、変性促進型プロファイリング(Modification-Assisted Profiling:MAP)としても知られ、VEGF-A又はANG2に特異的に結合する多数のモノクローナル抗体を、化学的又は酵素的に修飾された抗原表面に対する多数の抗体のそれぞれの結合プロファイルに基づいて区分けすることができる(例えばUS 2004/0101920参照)。区分けされた各抗体は同じエピトープに結合するが、このエピトープは、他の区分けで表されるエピトープとは明確に異なることがあるか、又は部分的に重なっている独特なエピトープであり得る。
【0082】
また、競合結合は、抗体が本発明の参照抗体と同じVEGF-A又はANG2のエピトープに結合するか、又は結合について競合するかを容易に決定するために使用することができる。たとえば、参照抗体と「同じVEGF-A及びANG2上のエピトープに結合する抗原」は、それぞれの競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする抗体を指し、逆に、参照抗体は、それぞれの競合アッセイにおいて、抗体のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする。また例えば、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和状態でVEGF-A又はANG2に結合させることができる。過剰な参照抗体を除去した後、問題の抗体がVEGF-A又はANG2に結合する能力が評価される。問題の抗体が参照抗体の飽和結合後にVEGF-A又はANG2に結合できる場合、対象の抗体は、参照抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。しかし、問題の抗体が参照抗体の飽和結合後にVEGF-A又はANG2に結合できない場合、対象の抗体は、参照抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。問題の抗体が同じエピトープに結合しているのか、又は立体的な理由で結合が妨害されているだけなのかを確認するためには、慣用的な実験を用いることができる(例えばペプチド変異や、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能なその他の定量的又は定性的な抗体結合アッセイを用いた結合分析など)。このアッセイは、2つのセットアップ、すなわち、両方の抗体が飽和抗体である状態で実施されるべきである。両方の設定において、第1の(飽和)抗体のみがVEGF-A又はANG2に結合できる場合、問題の抗体と参照抗体は、VEGF-A又はANG2への結合をめぐって競合すると結論付けることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、競合結合アッセイで測定して、一方の抗体の1、5、10、20又は100倍過剰が他方の結合を少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、さらには99%以上阻害する場合、2つの抗体は同じ又は重複するエピトープに結合すると見なされる。(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.50(1990)1495-1502を参照)。
【0084】
いくつかの実施形態では、一方の抗体の結合を低下又は排除する抗原のアミノ酸変異のうち、実質的にすべてのアミノ酸変異が他方の抗体の結合も低下又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。2つの抗体は、一方の抗体の結合を減少又は排除するアミノ酸変異のサブセットのみが、他方の抗体の結合を減少又は排除する場合、「重複エピトープ」を有するとみなされる。
【0085】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性率(%)」は、アラインメントの目的で、配列をアラインメントし、最大の配列同一性率を達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性率を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。あるいは、同一性率の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成されており、ソースコードは、U.S.Copyright Office(Washington D.C.,20559)のユーザドキュメンテーションにファイルされており、U.S.Copyright Registration No.TXU510087の下に登録されており、かつ、国際公開第2000/005319号に記載されている。
【0086】
しかしながら、別段の指定がない限り、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラムを使用するか、又はその後にBLOSUM50比較マトリックスを用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson and D.J.Lipman(1988),「Improved Tools for Biological Sequence Analysis」PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)「Effective protein sequence comparison」Meth.Enzymol.266:227-258;及び、Pearson et.al.(1997)Genomics 46:24-36により記載されており、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml or www.ebi.ac.uk/Tools/sss/fastaから公に利用可能である。あるいは、ggsearch(グローバルタンパク質:タンパク質)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公共サーバを使用して配列を比較し、ローカルではなくグローバルなアライメントを確実に実行することができる。アミノ酸同一性率は、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
【0087】
「免疫コンジュゲート」は、1つ以上の異種分子にコンジュゲートされている抗体であり、限定されないが、細胞傷害剤を含む。
【0088】
「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、ここで、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線形構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線形又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。天然に存在しないヌクレオチドの例としては、誘導体化された糖若しくはリン酸骨格結合を有する修飾ヌクレオチド塩基又は化学的に修飾された残基が挙げられる。核酸分子は、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子及びRNA分子も包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾されていなくてもよく、又は修飾されていてもよい。例えば、mRNAは、インビボで抗体を産生するために対象にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい(例えば、Stadler ert al,Nature Medicine 2017、2017年6月12日にオンラインで公開、doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2101823B1号明細書を参照)。
【0089】
「単離された」核酸とは、自然環境の構成要素から切り離されている核酸分子のことである。単離された核酸には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、核酸分子は、染色体外、又は天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0090】
抗体を「コードする単離された核酸」とは、抗体の重鎖及び軽鎖(又はそのフラグメント)をコードする1つ又は複数の核酸分子を指し、そのような核酸分子を単一のベクター又は別個のベクターに含み、そのような核酸分子が宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在する。
【0091】
「ベクター」という用語は、本明細書では、連結している別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターだけでなく、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも含まれる。特定のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを本明細書では、「発現ベクター」と呼ぶ。
【0092】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は、互換可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫も含まれる。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらは、継代数によらず、一次形質転換細胞及びそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と完全に同一の核酸含量でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか若しくは選択されるのと同じ機能、又は生物活性を有する突然変異型の後代が本発明に含まれる。
【0093】
「医薬組成物」又は「医薬製剤」という用語は、調製物に含まれる有効成分の生物活性が有効になるような形態をしており、かつ、医薬組成物が投与されるであろう対象に対して容認できないほど毒性のある追加の成分を含まない、調製物を指す。
【0094】
「医薬的に許容される担体」は、有効成分以外の医薬組成物又は製剤中の成分であって、対象にとって非毒性である成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
薬剤、例えば、医薬組成物の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な投薬量及び所要期間で有効な量を指す。
【0096】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体又は対象は、ヒトである。
【0097】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」(及びその文法的な変化形、例えば、「処置(treat)する」又は「処置すること(treating)」)は、処置される個体において疾患の本来の経過を変える試行における臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。処置の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行率を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるため、又は疾患の進行を遅延させるために使用される。
【0098】
本明細書で使用される「眼疾患」という用語は、病理学的血管新生及び/又は萎縮に関連する任意の眼疾患を含む。眼疾患は、網膜又は角膜などの眼組織の構造内への新生血管の増殖及び/又は浸潤の変化又は非調節によって特徴付けることができる。眼疾患は、網膜組織(光受容体並びにその下の網膜色素上皮(RPE)及び脈絡毛細管板)の萎縮によって特徴付けることができる。非限定的な眼疾患には、例えば、AMD(例えば、滲出型AMD、乾燥型AMD、中間型AMD、進行型AMD、及び地図状萎縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(例えば、焦点、非中心DME、及び、びまん性、中心関与DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高所DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞(RVO)(例えば、中心(CRVO)及び分岐(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連する疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連する疾患、中心性漿液性網膜症(CSR)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノーリー病、骨粗鬆症性偽神経膠腫症候群(OPPG)に関連する網膜異常、結膜下出血、ルベオーシス、眼血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性、類嚢胞黄斑浮腫(CME)、血管炎、乳頭浮腫、限定されないが以下を含む網膜炎:CMV網膜炎、眼黒色腫、網膜芽細胞腫、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天性黒丸症(レーバー先天性黒丸症又はLCAとしても知られる)、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、ドライアイ、外傷性眼損傷、シェーグレン病、並びに、疾患又は疾患が眼血管新生、血管漏出、及び/又は網膜浮腫若しくは網膜萎縮に関連する他の眼疾患を含む。さらなる例示的な眼疾患には、網膜分離症(網膜神経感覚層の異常な分裂)、ルベオーシス(隅角の血管新生)に関連する疾患、及び線維血管組織又は線維組織の異常な増殖によって引き起こされる疾患(増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む)が含まれる。角膜血管新生に関連する例示的な疾患には、限定するものではないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズオーバーウェア、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎、翼状片、乾性角膜炎、シェーグレン症候群、酒さ性ざ瘡(acne rosacea)、フリクテン症(phylectenulosis)、梅毒、マイクバクテリア感染症、脂肪変性症、化学的火傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹感染症、原虫感染症、カポシ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン周辺角膜変性、周辺角質溶解、リウマチ性関節炎、全身性紅斑、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンジョンソン症候群、類天疱瘡、角膜放射状切開、及び角膜移植後拒絶反応が含まれる。血管漏出の増加、動脈瘤及び毛細血管脱落を含む、脈絡膜新生血管形成及び網膜血管系の欠陥に関連する例示的な疾患には、糖尿病性網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、網膜浮腫(黄斑浮腫を含む)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を引き起こす感染症(例えば、多焦点脈絡膜)、推定眼ヒストプラズマ症、ベスト病(硝子体黄斑変性)、近視、視神経乳頭、扁平部炎、網膜剥離(例えば、慢性網膜剥離)、過粘度症候群、トキソプラスマ症、外傷及びレーザー後合併症が含まれるが、これらに限定されない。網膜組織の萎縮に関連する例示的な疾患(光受容体及びその下のRPE)には、萎縮性又は非滲出性AMD(例えば、地図状萎縮又は進行性乾燥型AMD)、黄斑萎縮(例えば、新生血管形成及び/又は地図状萎縮に関連する萎縮)、糖尿病性網膜症、シュタルガルト病、Sorsby Fundusジストロフィー、網膜分離症及び網膜色素変性症が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
「パッケージ添付文書」との用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、このような治療製品に関する適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む。
【0100】
2.本発明の実施形態の詳細な記載
一態様において、本発明は、部分的には、治療適用のための二重特異性抗体の提供に基づく。ある特定の態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、血管疾患、例えば眼血管疾患の診断又は処置に有用である。
【0101】
A.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する例示的抗体
一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。一態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する単離された抗体が提供される。一態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体を提供する。
【0102】
ある特定の態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、VLドメイン及びVHドメインの1つの同族対内にVEGF-Aパラトープ(すなわち、VEGF-Aに結合する抗原結合部位)及びANG2パラトープ(すなわち、ANG2に結合する抗原結合部位)を含み、
VEGF-Aパラトープは、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、ANG2パラトープは、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む;及び/又は
可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインとの対は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に同時に結合する;及び/又は
配列番号19の可変重鎖ドメイン及び配列番号20の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同一のヒトVEGF-A上のエピトープ及び同一のヒトANG2上のエピトープに結合する;及び/又は
抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する;及び/又は
抗体の抗体Fabフラグメントが、70℃以上の凝集開始温度を示す;及び/又は
抗体の抗体Fabフラグメントが、動的光散乱法により測定して80℃を超える融解温度を示す;及び/又は
180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH 6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する、抗体が提供される。
【0103】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む、抗体を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワーク;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、抗体を提供する。
【0105】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びにアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている、抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、VHドメイン中に以下のアミノ酸残基D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、及びD95と、VLドメイン中に以下のアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、R92、Y93、H94、及びP95とを含むVEGF-Aパラトープ;並びに、VHドメイン中に以下のアミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、R94、V96、F98、及びF99と、VLドメイン中に以下のアミノ酸残基E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、及びY91とを含むANG2パラトープを含む。
【0106】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99のアミノ酸残基を含むVHドメイン;並びに、(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95のアミノ酸残基を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、抗体を提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0109】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりH3、D26、F27、E29、Y30、R66及びR94を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりI2、Y3、L46、F49、及びE57を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供する。
【0110】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体を提供する。
【0111】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む抗体を提供する。
【0112】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号19の1、2、4~25、28、35d~54、59、60、67~93、97、101~113の1つ又は複数の位置にあるVHドメイン;及び(b)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号20の1、4~26、27b~27d、33~45、47、48、51、52、58~90、96~107の位置にある可変軽鎖ドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている抗体を提供する。
【0113】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含んでおり、(a)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む抗体を提供する。
【0114】
別の態様では、本発明は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)1個~15個、1個~10個又は1個~5個のアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン含む抗体を提供する。
【0115】
一態様では、本発明は、配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVHドメインを含むヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。ある特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含むヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、配列番号19において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。特定の態様では、VHは、a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0116】
一態様では、本発明は、配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVLドメインを含むヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。ある特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含むヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、配列番号20において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。特定の態様では、VLは、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0117】
別の態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、上に提供される態様のいずれかのVH配列及び上に提供される態様のいずれかVL配列を含む抗体が提供される。一態様では、抗体は、それぞれ配列番号19及び配列番号20のVH及びVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
【0118】
別の態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、配列番号24の重鎖アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖アミノ酸配列を含む抗体が提供される。
【0119】
別の態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む抗体が提供される。
【0120】
本発明のさらなる態様では、上記態様のいずれかによるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体はモノクローナル抗体である。一態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体は、抗体フラグメント、例えばFv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)フラグメントである。別の態様では、抗体は、完全長抗体である。
【0121】
さらなる態様では、上記態様のいずれかによるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体は、以下のセクション1~5に記載されるように、任意の特徴を単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0122】
1.抗体親和性
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、≦1nM、≦0.1nM又は≦0.01nMの解離定数(K)でVEGF-Aに結合する。好ましい実施形態では、本明細書に提供される抗体は、≦10pM、好ましい実施形態では≦5pMの解離定数(K)でヒトVEGF-Aに結合する。好ましい実施形態では、本明細書に提供される抗体は、≦10pM、好ましい実施形態では≦5pMの解離定数(K)でヒトVEGFA-121に結合する。好ましい実施形態では、本明細書に提供される抗体は、≦10pM、好ましい実施形態では≦5pMの解離定数(K)でヒトVEGFA-165に結合する。
【0123】
特定の実施形態では、ANG2に結合する抗体は、解離定数(K)が1nM以下、0.1nM以下、又は0.03nM以下である。好ましい実施形態では、本明細書に提供される抗体は、≦10pM、好ましい実施形態では≦5pMの解離定数(K)でヒトANG2に結合する。
【0124】
一態様では、Kは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。
【0125】
別の態様では、Kは、KinExAアッセイを使用して測定される。一実施形態では、Kは、VEGF-A結合のKの検出又はANG2結合のKの検出に関する材料及び一般的方法のセクションにおいて下記に記載されるような条件下で、KinExAアッセイを使用して測定される。
【0126】
例えば、VEGF-Aに結合する抗体のKを、Sapidyne Instruments(Boise,ID)製のKinExA 3200機器を使用するアッセイで測定し、1mlのPBS(pH7.4)中の30μgの抗VEGF抗体MAB293(R&D)を使用してKinExAハンドブックのプロトコル(Adsorption coating,Sapidyne)に従って抗原でPMMAビーズをコーティングする。ランニング緩衝液として0.01% BSA及び0.01% Tween20を含むPBS(pH7.4)を使用して、KinExA平衡アッセイを室温で行い、試料及びビーズをLowCross緩衝液(Candor Bioscience)中で調製する。流速は0.25ml/分とする。一定量のVEGFA-121-His(50pM及び第2の実験では500pM)を、試験抗体で滴定し、平衡化した混合物を、KinExAシステム中の抗VEGF抗体(Mab293)が結合したビーズのカラムに、50pMの一定VEGFについては750μlの容量で、500pMの一定VEGFについては125μlの容量で吸引した。結合したVEGFA-121の検出は、250ng/mlの濃度の二次ビオチン化抗VEGF抗体(BAF293)を使用し、続いて、試料緩衝液中の250ng/mlのストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートを注射することによって行う。Kは、「標準分析」法を使用して、KinExAソフトウェア(バージョン4.0.11)に含まれる一部位均一結合モデルを使用したデータの非線形回帰分析から得られる。ソフトウェアはKを計算し、データ点を理論的K曲線に当てはめることによって95%信頼区間を決定する。95%信頼区間は、K低及びK高として与えられる。
【0127】
例えば、ANG2に結合する抗体のKを、Sapidyne Instruments(Boise,ID)製のKinExA 3200機器を使用するアッセイで測定し、1mlのPBS(pH7.4)中の20μgの抗Ang2抗体MAB098(R&D)を使用してKinExAハンドブックのプロトコル(Adsorption coating,Sapidyne)に従って抗原でPMMAビーズをコーティングする。ランニング緩衝液として0.01% BSA及び0.01% Tween20を含むPBS(pH7.4)を使用して、KinExA平衡アッセイを室温で行い、試料及びビーズをLowCross緩衝液(Candor Bioscience)中で調製する。流速は0.25ml/分とする。一定量Ang2-RBD-muFc(50pM及び第2の実験では500pM)を、試験抗体で滴定し、平衡化した混合物を、KinExAシステム中の抗Ang2抗体(MAB098)が結合したビーズのカラムに、50pMの定常Ang2については750μlの容量で、500pMの定常Ang2については188μlの容量で吸引した。結合したAng2の検出は、250ng/mlの濃度の二次ビオチン化抗Ang2抗体(BAM0981)を使用し、続いて、試料緩衝液中の250ng/mlのストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートを注射することによって行う。Kは、「標準分析」法を使用して、KinExAソフトウェア(バージョン4.0.11)に含まれる一部位均一結合モデルを使用したデータの非線形回帰分析から得られる。ソフトウェアはKを計算し、データ点を理論的K曲線に当てはめることによって95%信頼区間を決定する。95%信頼区間は、K低及びK高として与えられる。
【0128】
2.抗体フラグメント
ある特定の態様では、本明細書に提供される抗体は、抗体フラグメントである。
【0129】
一態様では、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、又はF(ab’)断片、特にFab断片である。無傷の抗体をパパイン消化すると、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ順にVH及びVL)に加えて、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)もそれぞれが含む、2つの同一の抗原結合フラグメント(いわゆる「Fab」フラグメント)が得られる。よって「Fabフラグメント」とは、VLドメイン及びCLドメインを含む軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメインを含む重鎖フラグメントを有する抗体フラグメントのことである。「Fab’フラグメント」は、抗体ヒンジ領域から1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にて、残基を添加することによって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数価)が遊離チオール基を保持するFab’フラグメントである。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFabフラグメント)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)フラグメントが得られる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長くなったFab及びF(ab’)フラグメントの説明については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0130】
抗体フラグメントは、限定されないが、本明細書に記載される、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌、CHO)による組み換え産生を含む種々の技術によって作製することができる。
【0131】
好ましい実施形態では、本明細書において提供される抗体はFabフラグメントである。
【0132】
1つの実施形態において、本明細書において提供する抗体のVHドメインはヒトVH3フレームワークを含む。
【0133】
1つの実施形態において、本明細書において提供する抗体のVLドメインはヒトVkappa1フレームワークを含む。
【0134】
1つの実施形態において、本明細書において提供する抗体のCLドメインはκアイソタイプのものである。
【0135】
1つの実施形態において、本明細書において提供する抗体のCH1ドメインはヒトIgG1アイソタイプのものである。
【0136】
好ましい実施形態では、本明細書において提供される抗体は、κアイソタイプのCLドメイン及びヒトIgG1アイソタイプのCH1ドメインを含むFabフラグメントである。
【0137】
3.熱安定性
本明細書で提供される抗体は、優れた熱安定性を示す。ある特定の実施形態では、本明細書中に提供される抗体のFabフラグメントは、70℃以上の凝集開始温度を示す。ある特定の実施形態では、本明細書中に提供される抗体のFabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す。
【0138】
4.多重特異性抗体
ある特定の態様では、本明細書で提供される抗体は多重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位、すなわち、異なる抗原上の異なるエピトープ又は同じ抗原上の異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の態様では、多重特異性抗体は3つ以上の結合特異性を有する。
【0139】
本明細書で提供される抗体を含む3つ以上の結合特異性を有する多重特異性抗体は、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを持つ非対称の形で、すなわちVH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号を参照)、CH1/CLドメイン(国際公開第2009/080253号を参照)又は完全なFabアーム(国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照、Schaefer et al,PNAS,108(2011)1187-1191、及びKlein at al.,MAbs 8(2016)1010-20も参照)を交換することによっても提供され得る。多重特異性抗体の様々なさらなる分子形式が当技術分野で知られており、本明細書に含まれる(例えばSpiess et al.,Mol Immunol 67(2015)95-106参照)。
【0140】
5.抗体変異体
ある特定の態様では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的性質を変化させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適正な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製されてもよい。このような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入及び置換の任意の組合せは、最終コンストラクトが、所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終コンストラクトに到達するように行うことができる。
【0141】
ある特定の態様では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発に関心のある部位には、CDR及びFRが含まれる。保存的置換は、以下の表において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載されるとおりである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入することができ、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングする。
【0142】
【表2】
【0143】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る。
【0144】
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0145】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴うことになる。
【0146】
ある種類の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上のCDR残基を置換することを伴う。一般的に、更なる研究のために選択された結果の変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)において修飾(例えば、改善)を有し、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用い、簡便に作製され得る。簡単に言えば、1つ以上のCDR残基が変異され、そしてファージ上に表示された変異体抗体が、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)のためにスクリーニングされる。
【0147】
ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のCDR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的な変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)は、CDRにおいて行われてもよい。そのような改変は、例えば、CDR中の抗原接触残基の外側であってもよい。上述の特定のバリアントVH及びVL配列において、各CDRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、又は3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0148】
変異導入の標的となり得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。この方法では、標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)の残基又はグループを同定し、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)で置換して、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点が特定され得る。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。変異体は、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0149】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ治療法のための)又はポリペプチドへの抗体のN末端若しくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
【0150】
a) グリコシル化変異体
ある特定の態様では、本明細書において提供する抗体を変えて、抗体のグリコシル化の程度を増減させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0151】
抗体がFc領域を含む場合には、それに結合しているオリゴ糖を変化させることができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N-結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの態様では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾が、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを生成するために行われてもよい。
【0152】
一態様では、非フコシル化オリゴ糖、即ち、Fc領域へのフコース結合(直接又は間接)が欠落した、オリゴ糖構造を有する抗体多様体を提供する。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分枝オリゴ糖構造の幹に第1のGlcNAcが結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。一態様では、内在性又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した抗体バリアントを提供する。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(即ち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、国際公開第2006/082515号に記載のMALDI-TOF質量分析法により測定した、Asn297に結合した全てのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、及びハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング);ただし、Asn297はまた、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流又は下流、すなわち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸に位置していてもよい。Fc領域に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合及び/又は改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。
【0153】
フコシル化が低下した抗体を産生可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が不足しているLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子のFUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614-622(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)、又はGDP-フコース合成若しくはトランスポータータンパク質の活性が低下若しくは消滅した細胞(例えば、米国特許出願公開第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号を参照されたい)が挙げられる。
【0154】
さらなる態様では、抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分されたオリゴ糖と共に提供される。このような抗体バリアントは、上述のとおり、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。このような抗体バリアントの例は、例えばUmana et al.,Nat Biotechnol 17,176-180(1999);Ferrara et al.,Biotechn Bioeng 93,851-861(2006);国際公開第99/54342号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2003/011878号に記載されている。
【0155】
Fc領域に付着したオリゴ糖の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。このような抗体変異体は、CDCの機能を改善している可能性がある。かかる抗体変異型は、例えば、国際公開第WO1997/30087号、同第WO1998/58964号、及び同第WO1999/22764号に記載されている。
【0156】
b) Fc領域変異体
ある特定の態様では、1つ以上のアミノ酸改変は、本明細書で提示される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域変異体を作製する。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG、IgG、IgG、又はIgGFc領域)を含み得る。
【0157】
ある特定の態様では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有することで、抗体のインビボ半減期が重要でありながら、特定のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC))が不必要、又は有害である用途に対して望ましい候補となる、抗体バリアントを想到する。CDC及び/又はADCC活性の低下/消失を確認するために、インビトロ及び/又はインビボの細胞毒性アッセイを実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確認することができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。代替としては、非放射性アッセイ法を採用してもよい(例えば、ACTI(商標)フローサイトメトリー用非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA)、及び CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性試験法(Promega、Madison、WI)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)及びナチュラルキラー(Natural Killer:NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は加えて、目的のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて、インビトロで評価され得る。また、抗体がC1qに結合することができず、CDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)、FcRn結合及びインビトロクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野に既知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);WO2013/120929Alを参照されたい)。
【0158】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0159】
FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
ある特定の態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。
【0160】
ある特定の態様では、抗体バリアントは、FcγR結合を減少さあせる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置234及び235(EU付番の残基)を有するFc領域を含む。一態様では、置換はL234A及びL235A(LALA)である。ある特定の態様では、抗体バリアントは、ヒトIgGFc領域に由来するFc領域に、D265A及び/又はP329Gを更に含む。一態様において、置換は、ヒトIgGFc領域に由来するFc領域における、L234A、L235A、及びP329G(LALA-PG)である。(例えば、国際公開第2012/130831号を参照されたい。)別の態様において、置換は、ヒトIgGFc領域に由来するFc領域における、L234A、L235A、及びD265A(LALA-DA)である。
【0161】
いくつかの態様では、例えば米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち向上又は低下のいずれか)をもたらすFc領域内で変化が起こる。
【0162】
半減期が増大し、胎生Fc受容体(FcRn)への結合が向上した、母体IgGを胎児に移行する役割を果たす抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つ以上の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFc変異体としては、Fc領域残基:238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ以上において置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(例えば、米国特許第7,371,826号;Dall’Acqua,W.F.,et al.J.Biol.Chem.281(2006)23514-23524を参照のこと)。
【0163】
マウスFcマウスFcRn相互作用に決定的なFc領域残基は、部位特異的突然変異誘発により識別されている(例えば、Dall’Acqua,W.F.,et al.J.Immunol 169(2002)5171-5180を参照のこと)。残基I253、H310、H433、N434、及びH435(EUインデックス付番)が、相互作用に関与する(Medesan,C.,et al.,Eur.J.Immunol.26(1996)2533;Firan,M.,et al.,Int.Immunol.13(2001)993;Kim,J.K.,et al.,Eur.J.Immunol.24(1994)542)。残基I253、H310、及びH435が、ヒトFcとマウスFcRnの相互作用に決定的であることが発見された(Kim,J.K.,et al.,Eur.J.Immunol.29(1999)2819)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の研究により、残基I253、S254、H435、及びY436が相互作用に決定的であることが示されている(Firan,M.,et al.,Int.Immunol.13(2001)993;Shields,R.L.,et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604)。Yeung,Y.A.,et al.(J.Immunol.182(2009)7667-7671)において、残基248~259、及び301~317、及び376~382、及び424~437の様々な変異が報告され、調査されている。
【0164】
ある特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fcの領域位置253、及び/又は310、及び/又は435(EU付番の残基)における変異を有するFc領域を含む。ある特定の態様では、抗体バリアントは、位置253、310、及び435におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、I253A、H310A、及びH435Aである。例えば、Grevys,A.,et al.,J.Immunol.194(2015)5497-5508を参照のこと。
【0165】
ある特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置310、及び/又は433、及び/又は436(EU付番の残基)における変異を有するFc領域を含む。ある特定の態様では、抗体バリアントは、位置310、433、及び436におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、H310A、H433A、及びY436Aである。(例えば、国際公開第2014/177460号を参照されたい。)
【0166】
ある特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を増加させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fcの領域位置252、及び/又は254、及び/又は256(EU付番の残基)における変異を有するFc領域を含む。ある特定の態様では、抗体バリアントは、位置252、254、及び256におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG Fc領域に由来するFc領域におけるM252Y、S254T、及びT256Eである。Fc領域の変異体の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0167】
本明細書に報告されるような抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうち1つ又は2つが除去された、短くなったC末端であってもよい。1つの好ましい態様では、重鎖のC末端は短縮C末端末端PGである。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン-リシンジペプチドを含む(G446及びK447、EUインデックス付番のアミノ酸位置)。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン残基を含む(G446、EUインデックス付番のアミノ酸位置)。
【0168】
c) システイン操作抗体変異体
ある特定の態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、THIOMABTMを生成することが望ましい場合がある。特定の態様では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書に更に記載されるように、抗体を薬物部位又はリンカー薬物部位等のような他の部位に複合して免疫コンジュゲートを作成するために使用することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、又は国際公開第2016040856号に記載のように生成することができる。
【0169】
6.免疫コンジュゲート
本発明はまた、1つ以上の薬剤にコンジュゲート(化学的に結合)された本明細書で提供される抗体を含む免疫コンジュゲートを提供し、1つの実施形態において、細胞傷害剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそのフラグメント)、又は放射性同位体などである。
【0170】
1つの実施形態において、本発明は、ポリマーにコンジュゲートされた本明細書に提供される抗体を含む免疫コンジュゲートを提供する。本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、化学ポリマー及びタンパク質ポリマーを含む。1つの実施形態において、免疫コンジュゲートは、拡張された組換えポリペプチド(XTEN)にコンジュゲートされた本明細書に提供される抗体を含む。「拡張された組換えポリペプチド」は当技術分野で公知であり、例えば米国特許出願公開第20190083577号に開示されている。1つの実施形態において、免疫コンジュゲートは、(a)GGSPAGSCTSP、GASASCAPSTG、TAEAAGCGTAEAA、及びGPEPTCPAPSGから選択される配列を含み、(b)36~3000個のL-アミノ酸残基長であり、及び/又は、(c)グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)残基の合計がXTENの全アミノ酸残基の90%超を構成する、XTENを含む。
【0171】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生することができる。これらの方法のために、抗体をコードする1つ又は複数の単離された核酸が提供される。
【0172】
一態様では、本発明の抗体をコードする単離された核酸が提供される。
【0173】
一態様では、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を作製する方法であって、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養物)から回収することとを含む、方法が提供される。
【0174】
ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体の組換え産生に関しては、例えば、上述の抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/又は発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。このような核酸は、容易に単離することができ、一般的な手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。
【0175】
抗体コード化ベクターのクローニング又は発現のための好適な宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に糖鎖修飾やFcエフェクター機能を必要としない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌中の抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、US 5,648,237号、US 5,789,199号及びUS 5,840,523号を参照。(大腸菌における抗体フラグメントの発現を記載するCharlton,K.A.,In:Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2003),pp.245-254も参照。)発現後、抗体は、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。1つの実施形態において、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0176】
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74に記載されるような293細胞又は293T細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載)、MRC5細胞及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)、及び、骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki,P.and Wu,A.M.,Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2004),pp.255-268を参照。
【0177】
一態様において、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。1つの好ましい実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。CHO細胞における本発明の抗体の産生は、抗体の注射可能性を改善し得る。
【0178】
C.医薬組成物
さらなる態様において、例えば、以下の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗体のいずれかを含む、医薬組成物が提供される。一態様では、医薬組成物は、本明細書に提供される抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様では、医薬組成物は、本明細書で提供される抗体のいずれかと、少なくとも1つのさらなる治療剤、例えば、以下に記載するものとを含む。
【0179】
本明細書に記載されているヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体の医薬組成物は、所望の純度を有するかかる抗体を1つ又は複数の必要に応じて存在する薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と、凍結乾燥された組成物又は水溶液の形態で混合することによって調製される。薬学的に許容される担体は、一般的に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、ヒスチジン、ホスファート、シトラート、アセタート及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Halozyme,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含む、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わせる。
【0180】
例示の凍結乾燥抗体組成物は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体組成物としては、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載のものが挙げられ、後者の組成物は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0181】
本明細書の医薬組成物はまた、処置されている特定の徴候に必要とされる複数の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものも含みうる。そのような有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0182】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0183】
徐放性の医薬組成物を調製することができる。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスは、成形物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0184】
インビボ投与に使用される医薬組成物は、一般に無菌である。滅菌は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。
【0185】
D.治療方法及び投与経路
本明細書中に提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する任意の抗体を治療方法において使用され得る。
【0186】
一態様では、医薬として使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体が提供される。さらなる態様では、血管疾患の処置に使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体が提供される。ある特定の態様では、処置方法に使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体が提供される。ある特定の態様では、本発明は、血管疾患を有する個体を処置する方法に使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する有効量の抗体を個体に投与することを含む抗体を提供する。そのような一態様では、本方法は、例えば以下に記載されるように、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのさらなる治療剤)を個体に投与することをさらに含む。さらなる態様では、本発明は、血管新生の阻害に使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を提供する。ある特定の態様では、本発明は、個体における血管新生を阻害する方法で使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、血管新生を阻害するためにヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する有効量の抗体を個体に投与することを含む抗体を提供する。上記の態様のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0187】
さらなる態様では、眼疾患の処置に使用するためのヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体が提供される。一実施形態では、眼疾患は、AMD(一実施形態では、滲出型AMD、乾燥型AMD、中間型AMD、進行型AMD、及び地図状萎縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(一実施形態では、焦点、非中心DME、及び、びまん性、中心関与DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(一実施形態では、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高所DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞(RVO)(一実施形態では、中心(CRVO)及び分岐(BRVO)形態)、CNV(一実施形態では、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連する疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連する疾患、中心性漿液性網膜症(CSR)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノーリー病、骨粗鬆症性偽神経膠腫症候群(OPPG)に関連する網膜異常、結膜下出血、ルベオーシス、眼血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性、類嚢胞黄斑浮腫(CME)、血管炎、乳頭浮腫、限定されないが以下を含む網膜炎:CMV網膜炎、眼黒色腫、網膜芽細胞腫、結膜炎(一実施形態では、感染性結膜炎及び非感染性(一実施形態では、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天性黒丸症(レーバー先天性黒丸症又はLCAとしても知られる)、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(一実施形態では、多巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、ドライアイ、外傷性眼損傷、シェーグレン病、並びに、疾患又は疾患が眼血管新生、血管漏出、及び/又は網膜浮腫若しくは網膜萎縮に関連する他の眼疾患から選択される。一実施形態では、眼疾患は、AMD(一実施形態では、滲出型AMD、乾燥型AMD、中間型AMD、進行型AMD、及び地図状萎縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(一実施形態では、焦点、非中心DME、及び、びまん性、中心関与DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(一実施形態では、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高所DRから選択される。
【0188】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製におけるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体の使用を提供する。一態様では、医薬は血管疾患の処置用である。さらなる態様では、医薬は、血管疾患を有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、血管疾患を処置する方法に使用するためのものである。そのような一つの態様では、該方法は、有効量の少なくとも1つの更なる治療剤、例えば、以下に記載されるものを個体に投与することを更に含む。
【0189】
一態様では、医薬は眼疾患の処置用である。さらなる態様では、医薬は、眼疾患を有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、眼疾患を処置する方法に使用するためのものである。そのような一つの態様では、該方法は、有効量の少なくとも1つの更なる治療剤、例えば、以下に記載されるものを個体に投与することを更に含む。
【0190】
さらなる態様では、本発明は、血管疾患を処置する方法を提供する。一態様では、本方法は、そのような血管疾患を有する個体に、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する有効量の抗体を投与することを含む。そのような一つの態様では、該方法は、有効量の少なくとも1つの更なる治療剤、以下に記載されるものを個体に投与することを更に含む。
【0191】
さらなる態様では、本発明は、眼疾患を処置する方法を提供する。一態様では、本方法は、そのような眼疾患を有する個体に、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する有効量の抗体を投与することを含む。そのような一つの態様では、該方法は、有効量の少なくとも1つの更なる治療剤、以下に記載されるものを個体に投与することを更に含む。
【0192】
上記の態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0193】
さらなる態様では、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書で提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体のいずれかを含む医薬組成物を提供する。一態様では、医薬組成物は、本明細書で提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様では、医薬組成物は、本明細書で提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体のいずれかと、例えば以下に記載される少なくとも1つのさらなる治療薬とを含む。
【0194】
本発明の抗体は、硝子体内投与(例えば、硝子体内注射)によって、又はポート送達装置を使用して投与され得る。一実施形態では、本発明の抗体は、ポート送達装置が再充填される前に、6ヶ月以上、一実施形態では8ヶ月以上、一実施形態では9ヶ月以上、一実施形態では12ヶ月以上の期間にわたってポート送達装置を使用して投与される。一実施形態では、本発明の抗体は、ポート送達装置を使用して投与され、抗体は、150mg/ml以上の濃度で、一実施形態では200mg/ml以上の濃度でポート送達装置に適用される。
【0195】
本発明の抗体は、単独で投与され得るか、又は併用療法において使用され得る。例えば、該併用療法には、本発明の抗体を投与することと、少なくとも1種類の追加の治療薬(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、又は6種類の追加の治療薬)を投与することとが含まれる。
【0196】
上の実施形態のいずれかに従った(又は適用される)特定の実施形態では、眼疾患は、増殖性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性及び他の虚血関連網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、病理学的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラズマ症、CRVO及びBRVOを含む網膜静脈閉塞症(RVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、及び未熟児網膜症(ROP)からなる群から選択される眼内血管新生疾患である。
【0197】
いくつかの例において、本明細書中に提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体は、眼障害、例えば、本明細書中に記載される眼障害(例えば、AMD(例えば、滲出型AMD)、DME、DR、RVO、又はGA)を処置するための少なくとも1つのさらなる治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0198】
任意の適切なAMD治療剤は、眼障害(例えば、AMD、DME、DR、RVO、又はGA)を処置するために本明細書中に提供されるヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体と組み合わせてさらなる治療剤として投与することができ、限定するものではないが、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体(例えば、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、RTH-258(以前はESB-1008、抗VEGF一本鎖抗体フラグメント;Novartis)、又は二重特異性抗VEGF抗体(例えば、抗VEGF/抗アンジオポエチン2二重特異性抗体、例えば、ファリシマブ;Roche))、可溶性VEGF受容体融合タンパク質(例えば、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト))、抗VEGF DARPin(登録商標)(例えば、アビシパル・ペゴル;Molecular Partners AG/Allergan)、又は抗VEGFアプタマー(例えば、MACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム);血小板由来成長因子(PDGF)アンタゴニスト、例えば、抗PDGF抗体、抗PDGFR抗体(例えば、REGN2176-3)、抗PDGF-BBペグ化アプタマー(例えば、FOVISTA(登録商標);Ophthotech/Novartis)、可溶性PDGFR受容体融合タンパク質、又は二重PDGF/VEGFアンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤(例えば、DE-120(Santen)又はX-82(TyrogeneX))又は二重特異性抗PDGF/抗VEGF抗体));光線力学的療法と組み合わせたVISUDYNE(登録商標)(verteporfin);酸化防止剤;補体系アンタゴニスト、例えば補体因子C5アンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤(例えば、ARC-1905;Opthotech)又は抗C5抗体(例えば、LFG-316;Novartis)、プロパージンアンタゴニスト(例えば、抗プロパージン抗体、例えば、CLG-561;Alcon)、又は補体因子Dアンタゴニスト(例えば、抗補体因子D抗体、例えば、ランパリズマブ;Roche));C3ブロッキングペプチド(例えば、APL-2、Appellis);視覚サイクル調整剤(例えば、エミクススタット塩酸塩);スクアラミン(例えば、OHR-102;Ohr Pharmaceutical);ビタミン及びミネラル補助剤(例えば、加齢性眼疾患試験1(AREDS1;亜鉛及び/又は酸化防止剤)及び試験2(AREDS2;亜鉛、酸化防止剤、ルテイン、ゼアキサンチン、及び/又はオメガ-3脂肪酸)に記載されているもの);細胞ベースの治療、例えば、NT-501(Renexus);PH-05206388(Pfizer)、huCNS-SC細胞移植(StemCells)、CNTO-2476(臍帯幹細胞株;Janssen)、OpRegen(RPE細胞の懸濁液;Cell Cure Neurosciences)、又はMA09-hRPE細胞移植(Ocata Therapeutics);組織因子アンタゴニスト(例えば、hI-con1;Iconic Therapeutics);α-アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、酒石酸ブリモニジン;Allergan);ペプチドワクチン(例えば、S-646240;Shionogi);アミロイドβ拮抗薬(例えば、抗βアミロイドモノクローナル抗体、例えばGSK-933776);S1Pアンタゴニスト(例えば、抗S1P抗体、例えばiSONEP(商標);Lpath Inc);ROBO4アンタゴニスト(例えば、抗ROBO4抗体、例えばDS-7080a;Daiichi Sankyo);エンドスタチン及びアンジオスタチンを発現するレンチウイルスベクター(例えば、RetinoStat);及びそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、AMD治療剤(前述のAMD治療剤のいずれかを含む)を共製剤化することができる。例えば、抗PDGFR抗体REGN2176-3は、アフリベルセプト(EYLEA(登録商標))と共製剤化することができる。いくつかの例では、そのような共製剤は、本発明のヒトVEGF及びヒトANG2に結合する抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの例では、眼障害はAMD(例えば、滲出型AMD)である。
【0199】
限定されないが、VEGFアンタゴニスト(例えば、LUCENTIS(登録商標)又はEYLEA(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、コルチコステロイドのインプラント(例えば、OZURDEX(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)又はILUVIEN(登録商標)(フルオシノロンアセトニド硝子体内インプラント))又は硝子体内注射による投与のために製剤化されたコルチコステロイド(例えば、トリアムシノロンアセトニド))、又はそれらの組み合わせを含む任意の適切なDME及び/又はDR治療剤は、眼障害(例えば、AMD、DME、DR、RVO、又はGA)の処置のために、本発明のヒトVEGF及びヒトANG2に結合する抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの例では、眼障害はDME及び/又はDRである。
【0200】
本明細書で提供されるヒトVEGF及びヒトANG2に結合する抗体は、例えば、レーザー光凝固(例えば、汎網膜光凝固(PRP))、ドルーゼンレーザー発振、黄斑円孔手術、黄斑転座手術、埋め込み型小型望遠鏡、PHI運動血管造影法(マイクロレーザー治療及びフィーダー血管処置としても知られる)、陽子線療法、微小刺激療法、網膜剥離及び硝子体手術、強膜バックル、黄斑下手術、経乳頭温熱療法、光化学系I療法、RNA干渉(RNAi)の使用、体外レオフェレーシス(膜分画濾過及びレオセラピーとしても知られる)、マイクロチップ移植、幹細胞療法、遺伝子置換療法、リボザイム遺伝子療法(低酸素応答エレメントの遺伝子療法を含む、Oxford Biomedica;Lentipak、Genetix;及びPDEF遺伝子療法、GenVec)、光受容体/網膜細胞移植(移植可能な網膜上皮細胞を含む、Diacrin,Inc.;網膜細胞移植、例えば、Astellas Pharma US,Inc.、ReNeuron、CHA Biotech)、穿刺、及びそれらの組み合わせを含む、眼障害(例えば、AMD、DME、DR、RVO、又はGA)の処置のための治療又は外科的手順と組み合わせて投与され得る。
【0201】
上述したそのような併用療法は、併用投与(ここでは、2つ以上の治療剤が同一又は別個の製剤中に含まれる)及び別個の投与を包含し、この場合、ヒトVEGF及びヒトANG2に結合する本発明の抗体の投与は、追加の治療剤又は薬剤の投与に先立って、同時に、及び/又はそれに続いて、行われ得る。一実施形態では、本発明のヒトVEGF及びヒトANG2に結合する抗体の投与及びさらなる治療薬の投与は、互いに約1、2、3、4、若しくは5ヶ月以内、又は約1、2、若しくは3週間以内、又は約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に行われる。
【0202】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所的な処置のために望まれる場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口輸液には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期又は長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射等の注射によるものであり得る。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0203】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致した方法で製剤化され、投与され、投与されるであろう。これに関連して考慮すべき要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。抗体は、問題の疾患を予防又は処置するために現在使用されている1種以上の薬剤と一緒に製剤化されている必要はないが、任意に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、医薬組成物中に存在する抗体の量、疾患又は処置の種類、及び上述した他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0204】
疾患の予防又は処置について、本発明の抗体の適切な投薬量は(単独で、又は1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、並びに主治医の裁量に依存するだろう。本発明の抗体は、好適には、患者に一度に又は一連の治療にわたって投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初期候補投薬量であり得る。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、状態に応じ、処置は通常、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)のうちの1つ以上の用量が、患者に投与され得る。かかる用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。最初の多めの投与量、それに続く1回以上の量の少ない用量を投与してよい。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0205】
E.製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の処置、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造品は、容器と、容器上の又は容器に関連付けられたラベル又は添付文書を含む。適切な容器としては、例えば、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、状態を処置、予防、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と単独で又は組み合わせて使用される組成物を保持し、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を処置するために使用されることを示す。
【0206】
更に、製造物品は、(a)組成物を含む第1の容器を含み、この組成物は本発明の抗体を含み、(b)組成物を含む第2の容器を含み、この組成物は細胞疾患性又は他の治療剤を更に含む。本発明のこの態様における製造物品は、組成物が特定の状態を処置するために使用され得ることを示すパッケージ添付文書を更に含んでいてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、薬学的に許容され得る緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、注射器等、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0207】
F.装置
本発明の抗体は、眼インプラントを使用して、一実施形態ではポート送達装置を使用して眼に投与され得る。
【0208】
ポート送達装置は、数ヶ月(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、又はそれ以上)にわたって治療薬(例えば、本発明の抗体)を放出することができる埋め込み可能で再充填可能な装置である。使用され得る例示的なポート送達装置には、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2010/088548号、国際公開第2015/085234号、国際公開第2013/116061号、国際公開第2012/019176号、国際公開第2013/040247号及び国際公開第2012/019047号に記載されているようなForSight Labs,LLC及び/又はForSight VISION4からのものが含まれる。
【0209】
例えば、本発明は、本明細書中に記載される抗体のいずれかを含有するリザーバを備えるポート送達装置を提供する。ポート送達装置は、近位領域と、リザーバと流体連通して近位領域に結合された管状体と、リザーバと流体連通し、組成物を眼の中に放出するように構成された1つ以上の出口とをさらに備えてよい。管状体は、約0.5mm以下の眼の切開部又は開口部を通して挿入されるように構成された外径を有してよい。装置は、長さが約1mm~約15mm(例えば、約1mm、約2mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約9mm、約11mm、約13mm、又は約15mmの長さ)であってもよい。リザーバは、任意の適切な容積を有してもよい。場合によっては、リザーバは、約1μl~約100μl(例えば、約1μl、約5μl、約10μl、約20μl、約50μl、約75μl、又は約100μl)の容積を有する。デバイス又はその構成部品は、任意の適切な材料、例えばポリイミドで作製されてもよい。
【0210】
いくつかの例では、ポート送達装置は、本明細書に記載の抗体のいずれか及び1つ以上の追加の化合物を含有するリザーバを備える。
【0211】
いくつかの例では、ポート送達装置は、本明細書に記載の抗体又は抗体コンジュゲートのいずれか及び追加のVEGFアンタゴニストを含む。
【0212】
3.本発明の特定の実施形態
以下に、本発明の特定の実施形態を列挙する。
【0213】
1.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、VEGF-Aパラトープが、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、ANG2パラトープが、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む抗体。
【0214】
2.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインの対がヒトVEGF-A及びヒトANG2に同時に結合する抗体。
【0215】
3.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、配列番号19の可変重鎖ドメイン及び配列番号20の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同一のヒトVEGF-A上のエピトープ及び同一のヒトANG2上のエピトープに結合する抗体。
【0216】
4.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープを含み、
・VEGF-Aパラトープは、抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3由来のアミノ酸残基を含み、ANG2パラトープは、抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2由来のアミノ酸残基を含む;及び/又は
・可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインとの対は、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に同時に結合する;及び/又は
・配列番号19の可変重鎖ドメイン及び配列番号20の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同一のヒトVEGF-A上のエピトープ及び同一のヒトANG2上のエピトープに結合する;及び/又は
・抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する;及び/又は
・抗体の抗体Fabフラグメントが、70℃以上の凝集開始温度を示す;及び/又は
・抗体の抗体Fabフラグメントが、動的光散乱法により測定して80℃を超える融解温度を示す;及び/又は
・180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する、抗体。
【0217】
5.(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0218】
6.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む、抗体。
【0219】
7.(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0220】
8.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、抗体。
【0221】
9.アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びにアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0222】
10.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、配列番号19のVHドメイン及び配列番号20のVLドメインを有する抗体のVEGF-Aパラトープ及びANG2パラトープに含まれるアミノ酸残基を含む、抗体。
【0223】
11.実施形態9又は10に記載の抗体であって、
--VHドメイン中に以下のアミノ酸残基D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、及びD95、並びにVLドメイン中に以下のアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、R92、Y93、H94、及びP95を含むVEGF-Aパラトープ;及び
--VHドメイン中に以下のアミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、R94、V96、F98、及びF99、並びにVLドメイン中に以下のアミノ酸残基E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、及びY91を含むANG2パラトープを含む、抗体。
【0224】
12.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びにアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている、抗体。
【0225】
13.実施形態12に記載の抗体であって、
--VHドメイン中に以下のアミノ酸残基D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、及びD95、並びにVLドメイン中に以下のアミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、R92、Y93、H94、及びP95を含むVEGF-Aパラトープ;及び
--VHドメイン中に以下のアミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、R94、V96、F98、及びF99、並びにVLドメイン中に以下のアミノ酸残基E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、及びY91を含むANG2パラトープを含む、抗体。
【0226】
14.(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0227】
15.先行する実施形態のいずれか一項に記載の抗体であって、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99のアミノ酸残基を含むVHドメイン;並びに、(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95のアミノ酸残基を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っている、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0228】
16.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体。
【0229】
17.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりH3、D26、F27、E29、Y30、R66及びR94を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでおりI2、Y3、L46、F49、及びE57を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている抗体。
【0230】
18.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体。
【0231】
19.(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0232】
20.(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号19の1、2、4~25、28、35d~54、59、60、67~93、97、101~113の1つ又は複数の位置にあるVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含んでおり該アミノ酸置換が配列番号20の1、4~26、27b~27d、33~45、47、48、51、52、58~90、96~107の位置にある可変軽鎖ドメインを含む抗体であって、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っている、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0233】
21.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びにVLドメイン(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含んでおり、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む抗体。
【0234】
22.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン含む抗体。
【0235】
23.配列番号19のVH配列及び配列番号20のVL配列を含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0236】
24.配列番号19のVH配列及び配列番号20のVL配列を含む、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体。
【0237】
25.配列番号24の重鎖アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれか一つの抗体。
【0238】
26.配列番号24の重鎖アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体。
【0239】
27.配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれか一つの抗体。
【0240】
28.配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体。
【0241】
29.抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0242】
30.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合する抗体。
【0243】
31.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する、抗体。
【0244】
32.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントが、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する抗体。
【0245】
33.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、1対のVH及びVLドメイン中に、(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びに、(ii)アミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントは、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する、抗体。
【0246】
34.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、(i)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトVEGF-A121に結合し、(ii)KinExAによって測定して50pM未満のKでヒトANG2に結合する、抗体。
【0247】
35.抗体Fabフラグメントが70℃以上の凝集開始温度を示す、先行する実施形態のいずれか一つの抗体。
【0248】
36.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが70℃以上の凝集開始温度を示す抗体。
【0249】
37.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、70℃以上の凝集開始温度を示す、抗体。
【0250】
38.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントは70℃以上の凝集開始温度を示す、抗体。
【0251】
39.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、1対のVH及びVLドメイン中に、(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びに(ii)アミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントは70℃以上の凝集開始温度を示す、抗体。
【0252】
40.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、70℃以上の凝集開始温度を示す、抗体。
【0253】
41.抗体の抗体Fabフラグメントが、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0254】
42.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、抗体の抗体Fabフラグメントが、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体。
【0255】
43.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体。
【0256】
44.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体。
【0257】
45.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、1対のVH及びVLドメイン中に、(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びに(ii)アミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っており、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体。
【0258】
46.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗体の抗体Fabフラグメントは、動的光散乱によって測定して80℃を超える融解温度を示す、抗体。
【0259】
47.180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0260】
48.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体。
【0261】
49.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl,pH6.0溶液は、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法を用いた動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体。
【0262】
50.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29及びY30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66及びR94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメイン;並びに、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2及びY3を含むFR1、(ii)アミノ酸残基L46及びF49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基E57を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従っており、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法による動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体。
【0263】
51.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、1対のVH及びVLドメイン中に、(i)アミノ酸残基H3、D26、F27、E29、Y30、D35b、D35c、D55、H56、K57、Y58、T61、K62、F63、I64、G65、R66、R94、D95、V96、F98、及びF99を含むVHドメイン、並びに(ii)アミノ酸残基I2、Y3、Y27、W27a、E32、L46、F49、D50、F53、K54、V55、Y56、E57、Y91、R92、Y93、H94、及びP95を含むVLドメインを含み、VH及びVLドメインのナンバリングはKabatナンバリングシステムに従っており、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法による動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体。
【0264】
52.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに、(d)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含み、(a)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、180mg/mlの抗体Fabフラグメントを含む20mM His/HisHCl、pH6.0溶液が、実施例8に記載されるラテックス-ビーズDLS法による動的光散乱によって検出して20℃で20cP未満の粘度を有する抗体。
【0265】
53.モノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0266】
54.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体フラグメントである、先行する実施形態のいずれか一つの抗体。
【0267】
55.二重特異性である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0268】
56.Fabフラグメントである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0269】
57.二重特異性抗体フラグメントである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0270】
58.多重特異性抗体である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0271】
59.ヒトVEGF-Aに特異的に結合する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0272】
60.ヒトANG2に特異的に結合する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の抗体。
【0273】
61.実施形態1から58のいずれか一つに記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【0274】
62.実施形態59の核酸を含む、宿主細胞。
【0275】
63.実施形態61の核酸を含む、発現ベクター。
【0276】
64.ヒトVEGF-A及びヒトANG2に結合する抗体を産生する方法であって、抗体が産生されるように実施形態60に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、方法。
【0277】
65.抗体を宿主細胞から回収することをさらに含む、実施形態64に記載の方法。
【0278】
66.宿主細胞がE.coli細胞である、実施形態64又は65に記載の方法。
【0279】
67.宿主細胞がCHO細胞である、実施形態64又は65に記載の方法。
【0280】
68.実施形態64又は65の方法によって産生される抗体。
【0281】
69.実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬製剤。
【0282】
70.医薬として使用するための、実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体。
【0283】
71.血管疾患の処置における使用のための実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体。
【0284】
72.眼血管疾患の処置における使用のための実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体。
【0285】
73.医薬の製造における実施形態1から60のいずれか1つに記載の抗体又は実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
【0286】
74.血管新生を阻害するための医薬の製造における実施形態1から60のいずれか1つに記載の抗体又は実施形態65に記載の医薬組成物の使用。
【0287】
75.血管疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤を個体に投与することを含む方法。
【0288】
76.眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の実施形態1から60のいずれか一項に記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤を個体に投与することを含む方法。
【0289】
77.個体における血管新生を阻害する方法であって、血管新生を阻害するために有効量の実施形態1から60のいずれかに記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤を個体に投与することを含む方法。
【0290】
78.実施形態1から60のいずれかに記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤を含むポート送達装置。
【0291】
79.ポート送達装置による眼投与のための実施形態1から60のいずれかに記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤。
【0292】
80.投与が、ポート送達装置が補充される前の6ヶ月以上、一実施形態では8ヶ月以上、一実施形態では9ヶ月以上の期間にわたる、実施形態79に記載のポート送達装置による眼投与のための実施形態1から60のいずれかに記載の抗体又は実施形態69に記載の医薬製剤。
【0293】
81.ポート送達装置を使用して抗体又は医薬製剤を投与することによって医薬として使用するための実施形態1から60のいずれかに記載のもの又は実施形態69に記載の医薬製剤であって、抗体は150mg/ml以上の濃度で、一実施形態では200mg/ml以上の濃度でポート送達装置に適用される。
【0294】
【表3】



【実施例0295】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、特許請求の範囲に明記されている。本発明の要旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【0296】
材料及び一般的方法
ヒトVEGF-A 121親和性Kinexa:
・ 機器及び材料:
Sapidyne Instruments(Boise,ID)製のKinExA 3200機器とオートサンプラーを使用した。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズはSapidyneから購入し、抗VEGF抗体はR&D Systemsから購入した(Mab293、BAF293)。ストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートは、Thermo Fisher scientificから購入した(S21374)。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、BSA(ウシ血清アルブミン画分V)、VEGFA-121(配列番号28)を社内で調製した(Roche)。
【0297】
・ 抗原被覆ビーズの調製
PMMAビーズをKinExAハンドブックのプロトコル(Adsorption coating,Sapidyne)に従ってコーティングした。最初に、1mlのPBS(pH7.4)中の30μgの抗VEGF抗体MAB293(R&D)を、吸着コーティングのためのビーズのバイアル(200mg)あたり添加した。室温で2時間回転させた後、上清を除去し、1mlのブロッキング溶液(緩衝液中10mg/ml BSA)で満たし、1時間ロックした。
【0298】
・ KinExA平衡アッセイ
すべてのKinExA実験を、ランニング緩衝液として0.01% BSA及び0.01% Tween20(BioRad、#161-0781)を含むPBS pH7.4を使用して室温(RT)で行った。試料及びビーズをLowCross緩衝液(Candor Bioscience)中で調製して、以前の測定で観察された非特異的結合を減少させた。流速は0.25ml/分とした。一定量のVEGFA-121-His(50pM及び第2の実験では500pM)を、4nMで開始する2倍段階希釈(濃度範囲1.95pM~4000pM)によって試験抗体で滴定した。抗原-抗体複合体をRTで少なくとも8時間インキュベートして、平衡に到達させた。平衡化した混合物を、KinExAシステム中の抗VEGF抗体(Mab293)が結合したビーズのカラムに、50pMの一定VEGFについては750μlの容量で、500pMの一定VEGFについては125μlの容量で吸引し、溶液の平衡状態を乱すことなく未結合VEGFA-121をビーズによって捕捉することを可能にした。250ng/mlの濃度の二次ビオチン化抗VEGF抗体(BAF293)を使用し、続いて、試料緩衝液中の250ng/mlのストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートを注射することにより、結合したVEGFA-121を検出した。各試料を、すべての平衡実験について2連で測定した。Kは、「標準分析」法を使用して、KinExAソフトウェア(バージョン4.0.11)に含まれる一部位均一結合モデルを使用したデータの非線形回帰分析から得た。ソフトウェアはKを計算し、データ点を理論的K曲線に当てはめることによって95%信頼区間を決定する。95%信頼区間は、K低及びK高として与えられる。
【0299】
最終K決定のために、異なる一定のVEGFA-121濃度を有する2つの測定値のn曲線決定を行った。n曲線分析を使用して、同軸上で複数の標準K実験を分析して、Kのより正確な決定を得ることができる。
【0300】
ヒトANG2親和性Kinexa:
・ 機器及び材料
Sapidyne Instruments(Boise,ID)製のKinExA 3200機器とオートサンプラーを使用した。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ビーズはSapidyneから購入し、抗Ang2抗体はR&D Systemsから購入した(MAB098,BAM0981)。ストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートは、Thermo Fisher scientificから購入した(S21374)。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、BSA(ウシ血清アルブミン画分V)、Ang2(配列番号27)を社内で調製した(Roche)。
【0301】
・ 抗原被覆ビーズの調製
PMMAビーズをKinExAハンドブックのプロトコル(Adsorption coating,Sapidyne)に従ってコーティングした。最初に、1mlのPBS(pH7.4)中の20μgの抗Ang2抗体MAB098(R&D)を、吸着コーティングのためのビーズのバイアル(200mg)あたり添加した。室温で2時間回転させた後、上清を除去し、1mlのブロッキング溶液(緩衝液中10mg/ml BSA)で満たし、1時間ロックした。
【0302】
・ KinExA平衡アッセイ
すべてのKinExA実験を、ランニング緩衝液として0.01% BSA及び0.01% Tween20(BioRad、#161-0781)を含むPBS pH7.4を使用して室温(RT)で行った。試料及びビーズをLowCross緩衝液(Candor Bioscience)中で調製して、以前の測定で観察された非特異的結合を減少させた。流速は0.25ml/分とした。一定量のAng2-RBD-muFc(50pM及び第2の実験では500pM)を、4nMで開始する2倍段階希釈(濃度範囲1.95pM~4000pM)によって試験抗体で滴定した。抗原-抗体複合体をRTで少なくとも8時間インキュベートして、平衡に到達させた。平衡化した混合物を、KinExAシステム中の抗Ang2抗体(MAB098)が結合したビーズのカラムに、50pMの一定Ang2については750μlの容量で、500pMの一定Ang2については188μlの容量で吸引し、溶液の平衡状態を乱すことなく未結合Ang2をビーズによって捕捉することを可能にした。250ng/mlの濃度の二次ビオチン化抗Ang2抗体(BAM0981)を使用し、続いて、試料緩衝液中の250ng/mlのストレプトアビジンAlexa Fluor(商標)647コンジュゲートを注射することにより、結合したAng2を検出した。各試料を、すべての平衡実験について2連で測定した。Kは、「標準分析」法を使用して、KinExAソフトウェア(バージョン4.0.11)に含まれる一部位均一結合モデルを使用したデータの非線形回帰分析から得た。ソフトウェアはKを計算し、データ点を理論的K曲線に当てはめることによって95%信頼区間を決定する。95%信頼区間は、K低及びK高として与えられる。
【0303】
最終K決定のために、異なる一定のAng2濃度を有する2つの測定値のn曲線決定を行った。n曲線分析を使用して、同軸上で複数の標準K実験を分析して、Kのより正確な決定を得ることができる。
【0304】
表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した場合のヒトVEGF-A結合動態:
抗His捕捉抗体(anti-His capturing antibody:GE Healthcare 28995056)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてSeries S Sensor Chip C1(GE Healthcare BR100535)に固定化し、約600共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニングバッファー及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES,150mM NaCl pH 7.4,0.05%界面活性剤P20)を使用した。ヒトVEGF-A121-Hisを表面に捕捉した結果、それぞれ約10及び20RUのリガンド密度であった。試験抗体の段階希釈(3.7~300nM、1:3希釈)をそれぞれ60秒間連続して注入し、30μl/minの流速で3600秒間解離をモニターした(シングルサイクル動態)。5μl/分の流量で60秒間、10mMグリシンpH1.5を注入することによって表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことで補正し、ヒトVEGF-A121を捕捉していない対照フローセルから得られた応答を差し引くことで補正した。Biacore評価ソフトウェア内の1:1 Langmuir結合モデルを用いて、曲線適合を行った。
【0305】
交差反応性試験のための表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した場合のVEGF-A結合動態:
抗His捕捉抗体(anti-His capturing antibody:GE Healthcare 28995056)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてSeries S Sensor Chip C1(GE Healthcare BR100535)に固定化し、約600共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニングバッファー及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES,150mM NaCl pH 7.4,0.05%界面活性剤P20)を使用した。示された種由来のVEGF-A121-Hisを表面に捕捉した結果、それぞれ約10及び20RUのリガンド密度であった。試験抗体の段階希釈(3.7~300nM、1:3希釈)をそれぞれ60秒間連続して注入し、30μl/minの流速で3600秒間解離をモニターした(シングルサイクル動態)。5μl/分の流量で60秒間、10mMグリシンpH1.5を注入することによって表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことで補正し、VEGF-A121を捕捉していない対照フローセルから得られた応答を差し引くことで補正した。Biacore評価ソフトウェア内の1:1 Langmuir結合モデルを用いて、曲線適合を行った。
【0306】
表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した場合のヒトANG 2結合動態:
抗Fab捕捉抗体(anti-His capturing antibody:GE Healthcare 28958325)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてSeries S Sensor Chip C1(GE Healthcare BR100535)に固定化し、約800共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニングバッファー及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES,150mM NaCl pH 7.4,0.05%界面活性剤P20)を使用し、測定温度は25℃とした。試験抗体は、50nMの溶液を5μl/minの流量で60秒間注入することによって捕捉された。30μl/分(0.07nM-50nM、1:3希釈)の流量で180秒間、溶液中の様々な濃度のヒトAng2-RBDを注射することによって会合を測定した。解離段階は、最大900秒間モニタリングされ、30μl/分の流速で試料溶液からランニングバッファーに切り替えることで誘発された。10mMグリシンpH2.1を流速30μl/分で60秒間注入することによって表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことで補正し、試験抗体を捕捉していない参照フローセルから得られた応答を差し引くことで補正した。Biacore評価ソフトウェア内の1:1 Langmuir結合モデルを用いて、曲線適合を行った。
【0307】
交差反応性試験のための表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した場合のANG2結合動態:
抗Fab捕捉抗体(anti-His capturing antibody:GE Healthcare 28958325)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてSeries S Sensor Chip C1(GE Healthcare BR100535)に固定化し、約800共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニングバッファー及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES,150mM NaCl pH 7.4,0.05%界面活性剤P20)を使用し、測定温度は25℃とした。試験抗体は、50nMの溶液を5μl/minの流量で60秒間注入することによって捕捉された。30μl/分(0.07nM-50nM、1:3希釈)の流量で180秒間、溶液中の様々な濃度の示された種由来のAng2-RBDを注射することによって会合を測定した。解離段階は、最大600秒間モニタリングされ、30μl/分の流速で試料溶液からランニングバッファーに切り替えることで誘発された。10mMグリシンpH2.1を流速30μl/分で60秒間注入することによって表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことで補正し、抗体を捕捉していない参照フローセルから得られた応答を差し引くことで補正した。Biacore評価ソフトウェア内の1:1 Langmuir結合モデルを用いて、曲線適合を行った。
【0308】
表面プラズモン共鳴(SPR)による標的抗原への独立した結合の評価
捕捉システム(抗Fab補足抗体(GE Healthcare 28958325))の約5000レゾナンスユニット(RU)を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0において、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)に結合した。試料及び系緩衝液はHBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)であった。フローセルの温度を25℃に設定し、試料ブロックの温度を12℃に設定した。捕捉前に、フローセルをランニングバッファーで3回プライミングした。
【0309】
6.5μg/ml溶液を5μl/分の流量で60秒間注入することによって、二重特異性Fabを捕捉した。二重特異性Fabへの各リガンドの独立した結合を、順次又は同時に追加された(10μl/分の流量)各リガンドの活性結合能を決定することによって分析した。
【0310】
1) 1μg/mlの濃度のヒトVEGFA-121を60秒間注入する(抗原の単一結合を同定する)。
【0311】
2) 5μg/mlの濃度のヒトAng2を60秒間注入する(抗原の単一結合を同定する)。
【0312】
3) 1μg/mlの濃度のヒトVEGFA-121を60秒間注入し、続いて5μg/mlの濃度のヒトAng2を60秒間追加注入する(VEGFA-121の存在下でのAng2の結合を同定する)。
【0313】
4) 5μg/mlの濃度のヒトAng2を60秒間注入し、続いて1μg/mlの濃度のヒトVEGFA-121を60秒間追加注入する(Ang2の存在下でのVEGFA-121の結合を同定する)。
【0314】
5) 1μg/mlの濃度のヒトVEGFA-121及び5μg/mlの濃度のヒトAng2の60秒間の同時注入(VEGFA-121とAng2の結合を同時に同定する)。
【0315】
10mMグリシンpH2.1を流速30μl/分で60秒間注入することによって表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことで補正し、二重特異性Fabを捕捉していない参照フローセルから得られた応答を差し引くことで補正した。手法3、4、及び5の結果として得られる最終シグナルが、手法1及び2の個々の最終シグナルの合計に等しい場合、二重特異性抗体は、両方の抗原を互いに独立して結合することができる。
【0316】
熱安定性
二重特異性抗体Fabフラグメントの試料を、20mMヒスチジン/塩化ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中、1mg/mLの濃度で調製し、10μLマイクロキュベットアレイに移した。試料を30℃から90℃まで0.1℃/分の速度で加熱しながら、UNcle機器(Unchained Labs)を使用して、静的光散乱データ並びに266nmレーザーで励起した際の蛍光データを記録する。サンプルを3連で測定した。
【0317】
開始温度の評価は、UNcle分析ソフトウェアによって行った。凝集開始温度は、散乱光強度が増加し始める温度であると定義される。タンパク質の変性を、熱に対する蛍光シグナルの重心平均(BCM)のシフトによってモニターした。融解温度は、温度曲線に対するBCM(nm)の変曲点として定義される。
【0318】
物理化学的安定性:
抗体試料を20mM His/HisCl、140mM NaCl、pH6.0中に製剤化し、3つのアリコートに分割して、一方のアリコートをそれぞれPBS中に再緩衝化し、2つのアリコートを元の製剤中に維持した。PBSアリコート及び1つのHis/HisClアリコートを1mg/ml中40℃(His/NaCl)又は37℃(PBS)で2週間(2w)インキュベートし、PBS試料をさらに合計4週間(4w)インキュベートした。第三の対照アリコート試料を-80℃で保存した。インキュベーションが終了した後、試料を相対活性濃度(Biacore;両方のストレスを受けたアリコートの各結合剤の活性濃度は、ストレスを受けていない4℃のアリコートに対して正規化される)、凝集(SEC)及びフラグメント化(キャピラリー電気泳動又はSDS-PAGE、CE-SDS)について分析し、未処理対照と比較した。
【0319】
機能安定性試験のためにSPRによって評価されたヒトVEGF-A及びヒトANG2結合動態
VEGFA-121(社内)、プロテインA(Pierce/Thermo Scientific 21181)及び抗ヒトFab捕捉抗体(GE Healthcare 28958325)を、標準的なアミンカップリング化学反応を使用してSeries S Sensor Chip CM5(GE Healthcare 29104988)に異なるフローセル上に固定化し、その結果、hVEGFA-121及びプロテインAについては3000の表面密度及び抗ヒトFab捕捉抗体については12000の共鳴単位(RU)が得られた。ランニングバッファー及び希釈バッファーとして、HBS-N(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、GE Healthcare)を用いた。以下の濃度測定のための試料及びランニングバッファーは、HBS-P(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20;GE Healthcare)であった。フローセルの温度を25℃に設定し、試料ブロックの温度を12℃に設定した。濃度測定の前に、フローセルをランニングバッファーで2回プライミングした。まず、ヒトAng2-RBD-hFc二量体を、10μg/ml溶液を10μl/分の流量で120秒間注入することによって捕捉した。試験した抗体を、1μg/mlの濃度で5μl/分の流速で60秒間溶液に注入した。解離段階は、最大30秒間モニタリングされ、試料溶液からランニングバッファーに切り替えることで誘発された。
【0320】
30μl/分の流速で10mMグリシンpH2.0溶液で30秒間洗浄することによって、hVEGFA-121表面を再生した。30μl/分の流速で10mMグリシンpH1.5溶液で30秒間洗浄することによって、プロテインA表面を再生した。最後に、10mMグリシンpH2.1溶液を流速30μl/分で60秒間洗浄することによって、抗ヒトFab抗体表面を再生した。
【0321】
ブランク表面から得られた応答を差し引くことにより、バルク屈折率の差異を補正した。評価のために、結合応答を得た。
【0322】
相対活性濃度は、各温度ストレスを加えられた試料を、対応するストレスを加えられていない試料に対して参照することにより計算した。
【数1】

抗原の結合シグナルを正規化するために、hVEGF-A121結合及びAng2結合を、抗体試料のその抗Fab結合に対して正規化した:
【数2】
【0323】
実施例1:
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの作製
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントは、VEGF-A及びANG2に結合する単一特異性抗体の独立したスクリーニング、及びその後のVEGF-A及びANG2に結合するFabフラグメントを形成するバイパラトピックHC/LC対へのアミノ酸配列の併合によって、例えば国際公開第2012/163520号に記載されている方法によって生成された。
【0324】
合成Fabフラグメントの2つの異なるファージディスプレイライブラリーを利用し、第1のファージディスプレイライブラリーでは、FabフラグメントのCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2領域内の残基が多様化しており、第2のファージディスプレイライブラリーでは、FabフラグメントのCDR-L1、CDR-L3及びCDR-H2領域内の残基が多様化していた。各ライブラリーにおいて、他の3つのCDR領域は不変ダミー配列として多様化されないままであった。両方のライブラリーにおいて、ファージディスプレイを促進するために、FabフラグメントのCH1ドメインをリンカーを介して切断型遺伝子-IIIタンパク質に融合した。
【0325】
ファージライブラリーパニングによって、第1のライブラリーをヒトANG2に対する結合剤について濃縮し、第2のライブラリーをヒトVEGF-Aに対する結合剤について濃縮した。パニング後、ファージミドベクターの両方の濃縮プールについてプラスミドミニプレップを作製した。ミニプレップを制限酵素で消化して、切断型遺伝子-IIIタンパク質をコードする領域を切り出し、ライゲーションによって再環状化して、それぞれANG2結合剤又はVEGF-A結合剤が濃縮された可溶性Fabフラグメントをコードする発現ベクターのプールを得た。これらのベクタープールをTG1大腸菌細胞に形質転換し、個々のコロニーを採取し、マイクロタイタープレートにおける個々のFabクローンの可溶性発現のために培養した。可溶性Fabフラグメントを含む上清を、標準的なELISA法を使用してANG2又はVEGF-Aへの結合についてスクリーニングし、特異的結合剤を産生するTG1クローンをDNAプラスミド調製及び配列決定に供して、それぞれANG2又はVEGF-Aのいずれかに特異的に結合するVH及びVL配列の対を得た。
【0326】
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2のVH及びVL配列の対を、(1)ANG2特異的FabのVH配列中の無関係なVH残基52b~65をVEGF-A特異的Fabの選択されたVH残基52b~65で置換し、その結果、潜在的にVEGF-A特異的パラトープの一部であるCDR-H2残基をANG2結合剤重鎖に置換すること、及び(2)VEGF-A特異的FabのVL配列中の無関係なVL残基49~57をANG2特異的Fabの選択されたVL残基49~57で置換し、その結果、潜在的にANG2特異的パラトープの一部であるCDR-L2残基をVEGF-A結合剤軽鎖に置換することによって、インシリコで設計した。
【0327】
実施例2:
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 FabフラグメントP1AA8906の発現
得られた二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2のVH及びVL配列の設計された対を合成し、CH1及びCkappaドメインをコードする遺伝子配列とインフレームで大腸菌発現ベクターにクローニングした。ベクターをTG1大腸菌細胞に形質転換し、二重特異性抗体Fabフラグメントの可溶性発現のために個々のコロニーを培養した。TG1培養上清からアフィニティークロマトグラフィにより二重特異性抗体を精製し、ANG2及びVEGF-Aの両方に対する特異的結合を検証した。
【0328】
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2抗体「P1AA8906」を選択し、配列番号9の重鎖と配列番号10の軽鎖とを特徴とする。
【0329】
さらなる分析のために、本発明の抗VEGF-A/抗ANG2抗体を、標準的な組換え方法によってCHO細胞に形質転換して発現させた。
【0330】
実施例3:
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 FabフラグメントP1AA8906の特徴付け
二重特異性抗体P1AA8906の結合親和性を、「材料及び一般的方法」のセクションで上記したようにSPR及びKinExAによって評価した。
【0331】
【表4】
【0332】
KinExA分析を以下の条件下で行った:VEGF-A-121濃度:100pM/1000pM(CBP)、P1AA8906 4nM-0pM(1:2希釈、12倍)、プレインキュベーション時間RTで約8時間。
【0333】
【表5】
【0334】
KinExA分析を以下の条件下で行った:VEGF-A-121濃度:100pM/1000pM(CBP)、P1AA8906 4nM-0pM(1:2希釈、12倍)、プレインキュベーション時間RTで約8時間。
【0335】
二重特異性抗体P1AA 8906の熱安定性を、「材料及び一般的方法」のセクションで上記したように評価した。
【0336】
【表6】
【0337】
二重特異性抗体P1AA 8906の物理化学的安定性を、「材料及び一般的方法」のセクションで上記したように評価した。
【0338】
【表7】
【0339】
【表8】
【0340】
実施例4:
二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 FabフラグメントP1AA8906の改善
上記のように、P1AA8906は、高い熱安定性及びVEGF-Aに対する有利な親和性を示しながら、ナノモル範囲でのANG2に対する親和性、並びにストレス下で増加する高分子量不純物を形成する傾向を示す。眼への治療薬の注入を必要とする眼血管疾患の処置のために、治療効果の持続性を高め、患者にとっての不都合を最小限に抑えるために、標的抗原に対する高い親和性及び非常に高い濃度で治療薬を提供することが望ましい。したがって、意図された目的のために、親和性を高め、物理化学的安定性を改善することが望ましい。
【0341】
その結果、臨床適用のために、抗体は、例えばANG2結合に関して、さらなる改善(特にoff-rateを改善することによる)、及びストレスに対する感受性の低減を必要とした。VH及びVLドメインに異なるアミノ酸置換を導入することによって、数回の成熟を行った。熟成中、抗体P1AA8906に由来する候補抗体をスクリーニングし、収率、親和性、同時抗原結合、親水性、安定性、粘度及び他のパラメータに関するそれらの所望の特性に基づいて選択した。
【0342】
改善された候補抗体P1AA0902を、複数の試験された候補抗体分子から選択した。この分子から開始して、VH及びVLドメインに異なるアミノ酸置換を再度導入することによって、さらなる最適化ラウンドを行った。候補選択は、他の有利な特性、例えばVEGF-A親和性、同時抗原結合及び熱安定性を維持しながら、その所望の特性、特にANG2結合の改善及び高濃度での注射可能性の保証に基づいた。
【0343】
さらに改善された候補抗体P1AD9820を、複数の試験された候補抗体分子から選択した。
【0344】
【表9】
【0345】
図2及び図3は、生成された二重特異性フラグメントの可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインのアラインメントを示す。VH及びVLドメイン内のアミノ酸位置のナンバリングは、Kabatナンバリングシステムに従う。簡単にするために、ナンバリングを図に含め、フレームワーク及びCDRアミノ酸位置をさらに例示する。
【0346】
候補抗体を実施例2に記載のように発現させた。
【0347】
実施例5:
改善された抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの抗原結合速度論
候補抗体についてのヒトVEGF-A及びヒトANG2に対する結合速度論を、示されたFabフラグメント(表4に示されるアミノ酸配列)を使用して上記のように評価した。本発明の抗体の抗原結合動態を先行技術の分子であるファリシマブ(INN、以前はRG7716とも呼ばれていた)、抗VEGF結合剤アフリベルセプト(INN)、及びブロルシズマブ(INN)、及び抗ANG2結合剤ネスバクマブ(INN)と比較するために、前述の先行技術の抗体を、それぞれのINNに開示されている同一のアミノ酸配列の組換え発現によって調製した。参照分子は、本明細書では、それらがインハウス調製物であったことを強調するために「類似体」とも呼ばれる。
【0348】
【表10】
【0349】
【表11】
【0350】
【表12】
【0351】
【表13】
【0352】
【表14】
【0353】
【表15】
【0354】
ヒトVEGF-A及びヒトANG2に対する候補抗体の独立した結合を、「材料及び一般的方法」のセクションで上記したようにSPRによって分析した。
【0355】
【表16】
【0356】
他の種由来のVEGF-A及びANG2に対する交差反応性を、「材料及び一般的方法」のセクションに上述したように評価した。
【0357】
【表17】
【0358】
【表18】
【0359】
実施例6
改善された抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの熱安定性
示された二重特異性抗体の熱安定性を、「材料及び一般的方法」のセクションにおいて上記で記載されるように、実施例3の場合と同じ条件下で評価した。
【0360】
【表19】
【0361】
実施例7:
改善された二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの生物物理学的特性(安定性)
示された二重特異性抗体の物理化学的安定性を、「材料及び一般的方法」のセクションにおいて上記で記載されるように、実施例3の場合と同じ条件下で評価した。
【0362】
【表20】
【0363】
実施例8:
改善された二重特異性抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの生物物理学的特性(動的光散乱(DLS)による粘度評価)
前述のP1AA0902及びP1AD9820 Fabフラグメントを、標準的な方法によって大腸菌細胞で発現させた。
【0364】
粘度は、前述のようにラテックス-ビーズDLS法を用いて測定した(He F et al.;Anal Biochem.2010 Apr 1;399(1):141-3)。具体的には、示された材料を使用して以下のプロトコルに従った。
【0365】
粘度評価:
機器及び材料
・ Greiner Bio-Oneマイクロプレートを備えたWyatt DLSプレートリーダー
・ 3000 Series Nanosphere(商標)サイズ規格(Thermofisherカタログ-番号3300A)
・ Tween20(Roche、カタログ番号11332465001)及びシリコーン油、例えば(Alfa Aesarカタログ番号A12728)
・ 濃度決定のためのUV光度計(例えば、Nanodrop 8000)。
【0366】
サンプル調製
抗体試料を再緩衝化し、20mM His/HCl、pH6.0(緩衝液)及び0.02% Tween20(最終濃度)で希釈した。0.03%固形分のビーズ濃度を添加した。少なくとも4つの異なる濃度を調製し、可能な限り最高濃度は約200mg/mLであった。抗体を含まない対照として2つのブランク試料が必要であった:1つは水に再懸濁したナノスフェアビーズを含み、もう1つは緩衝液に再懸濁したナノスフェアビーズを含む。試料をマイクロプレートに移し、各ウェルをシリコーン油で覆った。
【0367】
Wyatt DLSプレートリーダーによる測定
すべての試料及びブランクを、15℃~35℃の異なる温度で5℃ステップで分析した。取得時間は30秒であり、取得数は試料及び温度あたり40であった。
【0368】
データ解析
nm単位の生データDapp(見かけの半径)をソフトウェアテンプレート(Microsoft Dynamics 7.0以上)の概要に示した。粘度は、式(ηreal=Dapp*ηH2O/Dreal)を用いて算出した。Drealはブランク試料で測定されたビーズサイズであり、これはビーズサイズ(300nm)に等しい。計算した粘度をエクセル曲線で示した。ムーニー曲線フィット(Excel)を用いて、所与の濃度で粘度を外挿することが可能である。ここで、粘度が20cPを超える場合の最大タンパク質濃度を算出した。
【0369】
20℃で20cPの粘度を達成するための示された抗体の最大濃度を以下に示す。結果を図10にも示す。
【0370】
【表21】
【0371】
結果は、本発明の抗体が、注射可能性のための許容され得る粘度限界未満の粘度を含む高濃度で製剤化され得ることを示す。両方の試験された抗体が高度に濃縮可能であることが示されているが、その効果はP1AD9820抗体においてより顕著である。
【0372】
結果として、本発明の抗体は、制限された注射体積で高モル用量を提供することを可能にするので、眼用途に非常に適しており、これは、高い効力と組み合わせた場合、高い耐久性をもたらし、その結果、投与頻度を低下させ、これは、患者側の困難を軽減するために望ましい。
【0373】
別の一連の実験において、標準的な組換え方法に従ってCHO細胞中で生成されたP1AD9820の粘度を上記のように分析した。
【0374】
20℃で20cPの粘度を達成するための示された抗体の最大濃度を以下に示す。結果を図10にも示す。
【0375】
【表22】
【0376】
実施例9:
改善された抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの機能的安定性
P1AD9820 Fabフラグメントを、「材料及び一般的方法」のセクション(物理化学的安定性)で上述したように異なるストレス条件下で処理した。得られたストレス負荷抗体試料の抗原結合を上記のように分析した(「材料及び一般的方法」のセクション:機能安定性試験のためにSPRによって評価されたヒトVEGF-A及びヒトANG2結合動態)。
【0377】
【表23】
【0378】
実施例10:
改善された抗VEGF-A/抗ANG2 Fabフラグメントの機能的特徴付け
候補抗体のANG2及びVEGF-A阻害を細胞ベースのアッセイで評価した:
ANG2阻害:pTie2-アッセイ
候補抗体及び選択された参照分子(配列番号29及び30による組換え発現によるインハウス調製物のネスバクマブ類似体)を、MEM Alpha-Medium中250nM~0.14nMの範囲の11の濃度でプレインキュベートした。40μl中の3倍濃縮抗Ang2抗体を、3倍濃縮c=3.9μg/mlで40μlのAng-2と混合し、細胞インキュベーター内で30分間インキュベートした。次いで、ウェルあたり40000細胞の密度で選択せずにFreeStyle培地に懸濁した40μl/ウェルのHek293_HOMSA-Tie2-Clone22_B11細胞を室温で10分間添加した。次いで、プロテアーゼ阻害剤を含む冷溶解緩衝液の添加によってAng2リン酸化を停止した。次いで、maxisorp-プレートに結合した抗Tie2抗体によって、細胞溶解物からTie2を、振盪しながら室温で90分間固定化した。PBS、0.05% Tween20での洗浄工程の後、リン酸化Tie2に特異的なビオチン化抗体をRTで1時間、3μg/mlの最終濃度まで添加した。3回の洗浄工程の後、HRP結合ストレプトアビジン(strepavidine)を最終濃度100mU/mlまで添加し、Tecan Sunriseプレートリーダーを用いて405/690nmで1M H2SO2による停止後、最終測色エンドポイント評価のために常温で30分間POD変換した(wich converted POD)。結果を以下及び図8に示す。
【0379】
【表24】
【0380】
VEGF-A阻害:レポーター遺伝子アッセイ(RGA)
アッセイのために、37.5μlの4倍濃縮試験抗体又は参照分子を、4倍濃縮37.5μlのVEGF-A121(R&D、c=100μg/ml)と共に室温で15分間プレインキュベートした。次いで、混合物を、40000細胞/ウェルの密度で75μl/ウェルのHek_NFAT_KDR_Luc細胞に添加し、細胞インキュベーター内で5時間インキュベートした。最後に、ウェルあたり100μlのBioGlo試薬を添加した後、Infinite Pro Platereader(Tecan)を使用して発光を評価した。結果を以下及び図7に示す。
【0381】
【表25】
【0382】
実施例11:
hVEGF-A121及びhVEGF-A165のブロッキング活性(VEGFベースラインアッセイ)
Maxisorp 96ウェルプレート(ThermoScientific#442404)を、1μg/mLの最終濃度で室温で1時間、200mM NaHCO、pH9.4中の50μL/ウェルのhVEGFR-1-Fcでコーティングした。示されている候補Fabフラグメントを、280μLのPBST-1%BSA中409.6 nMの濃度に希釈した。2倍段階希釈では、この希釈Fab試料140μLを、140μLのPBST-1%BSAと混合し、穏やかなピペッティングによって7回混合した。この2倍希釈工程をさらに9回繰り返した。丸底96ウェルプレートに、PBST-1%BSA中の2nM VEGF-A121又は2nM VEGF-A165を50μL/ウェルで予め充填した。50μLのFab希釈液をVEGFプレートに添加し、6回混合し、1.5時間インキュベートした。続いて、maxisorpプレートをPBSTで2回洗浄した後、200μLの2% MPBSTを添加し、続いて室温で45分間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで2回洗浄した。50μlのFab-VEGFプレミックスをMaxisorpプレートに移し、室温で1.5時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで2回洗浄し、50μLの抗VEGF-バイオ抗体(PBSTで1:2000希釈)及びSA-HRP(PBSTで1:2000希釈)を添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄し、50μLのTMB基質溶液を添加し、室温で30分間インキュベートした。最後に、50μLの1N硫酸を添加して反応を停止させ、450nmで吸光度を読み取る。結果を図5及び図6に示す。
【0383】
実施例12:
ANG1に対するANG2の選択的結合
Ang-1に対するAng-2の選択性は、眼の安全性にとって重要な属性であり得る:P1AD9820 FabのANG1阻害を細胞ベースのアッセイで評価した。
【0384】
ANG-1は、飢餓条件下で増殖させたHUVECの生存率のわずかな誘導物質である。したがって、ANG-1中和抗体で生存率を阻害することができる。抗体RO5314196(以前はLC-08-Thomas M,Kienast Y,Scheuer W,et al.A novel angiopoietin-2 selective fully human antibody with potent anti-tumoral and anti-angiogenic efficacy and superior side effect profile compared to Pan-Angiopoietin-1/-2 inhibitors.PLoS One.2013;8(2):e54923.doi:10.1371/journal.pone.0054923)は、ANG-1を中和することによってHUVEC生存率を阻害し、アッセイの陽性対照として使用した。Gibco製のAF(付着因子)(カタログ番号S-006-100)でコーティングされたCorning製の細胞培養フラスコT162(カタログ番号3151)を、第5継代までHUVECを維持するために使用した。生存率アッセイのために、Accutase(登録商標)を用いてHUVECを剥離し、続いてPBS-/-を用いて洗浄工程を行った。その後、細胞を、フィブロネクチンでコーティングされた96ウェルプレート上の0.5% FBSを含むEBM-2に、100μl中10.000細胞/ウェルの細胞密度で播種した。細胞を37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。翌日、P1AD9820又はAng-1結合陽性対照RO5314196をEBM/0.5% FBSで希釈して、10倍の作業濃度にした。開始濃度は1000μg/mlであり、続いて3倍8段階希釈系列で457.2μg/mlで終了した。ANG-1を、2400ng/mlに相当する20倍の作業濃度に設定した。次に、10μlの10倍予備希釈したP1AD9820、続いて5μlの20xANG-1溶液をプレートあたり4連ウェルで細胞に添加した。各実験日に、各条件を二連のプレートで実施した。細胞を37℃、5% CO2で72時間インキュベートした。分析のために、11μlのalamarBlue(登録商標)を各ウェルに添加し、続いて細胞培養インキュベーター内で4時間インキュベートした。600nmの参照波長を用いて570nmで吸光度を検出した。
【0385】
各実験について、各条件を四連で実施した2つのアッセイプレートを使用して条件を複製した。刺激されていない細胞のバックグラウンドシグナルを実験ウェルから差し引いて、条件ごとの平均シグナルを計算した。100%応答レベルを、追加の処理なしでANG-1(120ng/ml)で刺激した細胞から計算し、抗体処理ウェルからのシグナルを100%応答の阻害率として表した。P1AD9820及びRO5314196については、各抗体処理に対する阻害率をn=4の独立した実験で測定し、平均及び平均の標準誤差を計算した。IC50値を、ExcelXLfitソフトウェア(IDBS)を使用して各抗体濃度についての平均データから計算した。濃度-応答曲線を、基礎阻害活性及び最大阻害活性に対して計算された5パラメーターロジスティックモデル(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))を使用して非線形回帰分析によってフィッティングした。
【0386】
細胞ベースのアッセイは、P1AD9820によって媒介されるANG1阻害を検出しなかった。
【0387】
実施例13:
P1AD9820 Fabフラグメントの構造解析
P1AD9820 Fabの構造分析を、以下のようにX線結晶学によって行った:
三元複合体アンジオポエチン2-RBD-VEGF-A121-P1AD9820の複合体形成及び精製。複合体形成のために、P1AD9820 FabとヒトVEGF-A121(Peprotech)を1.1:1のモル比で混合した。4℃で45分間インキュベートした後、アンジオポエチン2-RBDを、P1AD9820に対するモル比1.25:1で添加し、続いて4℃でさらに60分間インキュベートした。得られた三元複合体をPNGaseF(NEB)で37℃にて13時間さらに脱グリコシル化し、最終工程においてSuperdex200(16/600)カラムでのゲルろ過クロマトグラフィによって精製した。三元複合体を含有する画分をプールし、3.55mg/mlに濃縮した。
【0388】
三元アンジオポエチン2-RBD-VEGF-A121-P1AD9820の結晶化。最初の結晶化試験は、21℃のシッティングドロップ型蒸気拡散装置を用いて、タンパク質濃度14.5mg/mlで行った。結晶は35% MPD、0.1Mリン酸Na/K pH6.2の外に、1日以内に出現した。プレート状の結晶は1週間で成長し、最終的なサイズは100x80x30μmになった。この結晶は、さらなる最適化の手順を踏むことなく、スクリーニングプレートから直接採取した。
【0389】
データ収集と構造決定。データ収集のために、結晶を追加の凍結保護剤なしで沈殿剤溶液中100Kでフラッシュ冷却した。回折データは、Swiss Light Source(スイス・ビリゲン)のビームラインX10SAにおいて、PILATUS 6M検出器を用いて波長1.0000Åで収集した。データはXDS(Kabsch,W.Acta Cryst.D66,133-144(2010))で処理され、SADABS(BRUKER)でスケーリングされている。結晶は空間群C2に属し、セル軸はa=165.74Å、b=90.27Å、c=127.89Å、β=112.05°で、2.08Åの分解能で回折している。構造は、探索モデルとしてAng2-VEGF-Fab三元複合体の関連するインハウス構造の座標を使用して、PHASERでの分子置換(McCoy,A.J,Grosse-Kunstleve,R.W.,Adams,P.D.,Storoni,L.C.,and Read,R.J.J.Appl.Cryst.40,658-674(2007))によって決定した。CCP4スイート(Collaborative Computational Project,Number 4 Acta Cryst.D50,760-763(1994))及びBuster(Bricogne,G.,Blanc,E.,Brandl,M.,Flensburg,C.,Keller,P.,Paciorek,W.,Roversi,P.,Sharff,A.,Smart,O.S.,Vonrhein,C.,Womack,T.O.(2011).Buster version 2.9.5 Cambridge,United Kingdom:Global Phasing Ltd)からのプログラムを使用して、その後データを改良した。差動電子密度を用いたタンパク質の手動による再構築はCOOTを用いて行った(Emsley,P.,Lohkamp,B.,Scott,W.G.and Cowtan,K.Acta Cryst D66,486-501(2010))。両構造体のデータ収集と精密化の統計を表23にまとめた。グラフィック表示はすべて、PYMOL(DeLano Scientific,Palo Alto,CA,2002)で作成した。
【0390】
【表26】
【0391】
それぞれの抗原VEGF-A及びANG2と接触しているアミノ酸残基を、三元複合体アンジオポエチン2-RBD-VEGF-A121-P1AD9820の結晶構造から同定した。VH及びVLドメイン内のパラトープアミノ酸残基の位置の例示を図2及び図3に示す。
【0392】
抗原結合に寄与すると同定されたアミノ酸残基を表24(可変重鎖ドメインアミノ酸残基について)及び表25(可変軽鎖ドメインアミノ酸残基について)に同定する。アミノ酸位置は、Kabatナンバリングシステムに従ってナンバリングされる(図2及び図3において同じナンバリングが使用される)。抗原結合に関与するアミノ酸位置は、VH又はVLドメイン中のそれらのKabat位置によって同定される(図2及び図3のナンバリングも参照)。
【0393】
【表27】
【0394】
【表28】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022191367000001.app
【外国語明細書】