(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191378
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する酵母ベースのマスク
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20221220BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61Q19/00
A61Q5/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163795
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2020504214の分割
【原出願日】2018-07-17
(31)【優先権主張番号】62/538,152
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック ケン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コスメティック酵母ベースのマスクを用いて、顔面皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する方法を提供する。
【解決手段】特定の実施形態において、本発明は、顔の健康と外観を改善するために、顔に適用する酵母ベースのマスクを提供する。他の特定の実施形態において、本発明は、抜け毛を防ぎ、毛髪及び頭皮の健康と外観を改善する、毛髪及び頭皮に適用する酵母ベースのマスクを提供する。酵母ベースのマスクを用いる方法も提供される。前記酵母ベースのマスクは、酵母細胞を含むフェイシャルマスク組成物の薄層を皮膚に適用するものであり、前記酵母細胞は、Pichia anomala、Pichia kudriavzevii、Pichia guilliermondii、又はこれらの組み合わせである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の顔面皮膚の健康を改善する方法であって、
a)非薬用クレンザーを用いて対象者の顔面皮膚をクリーニングして、メイクアップ、汚れ、油を前記皮膚から除去し、
b)酵母細胞を含むフェイシャルマスク組成物を提供し、前記酵母細胞は、Pichia anomala(Wickerhamomyces anomalus)、Pichia kudriavzevii(Wickerhamomyces kudriavzevii)、Pichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)、又はこれらの組み合わせであり、
c)前記フェイシャルマスク組成物の薄層を、前記顔面皮膚に適用し、
d)前記フェイシャルマスク組成物を、数分間、前記皮膚で乾燥させ、
e)前記皮膚に残った前記マスク組成物のあらゆる部分を、水を使って洗い流す、
ことを含む、方法。
【請求項2】
ステップb)は、1つ以上の微生物成長副生成物及び/又は1つ以上のコスメティック添加剤及び/又はアジュバントを、前記組成物に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の微生物成長副生成物は、微生物界面活性剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)は、ステップc)の直前に行われ、直前とは、ステップc)の5分以下を意味する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)は、30~50gの前記酵母細胞を、50~300mlのヤシ油又はオリーブ油と混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)は、
前記酵母細胞を、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土及びピロリン酸四ナトリウムを含む粉末混合物に添加して、酵母粉末混合物を形成し、
前記酵母粉末混合物を、約1:25の比率で水と混合して、液体又は半液体フェイシャルマスク組成物を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)は、前記フェイシャルマスク組成物を、数分間、前記皮膚で乾燥させて、コンパクトフィルムを形成することを含み、前記方法は、さらに、e)前記皮膚から剥がすことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マスクは、対象者の瞼、前記対象者の目の周りの前記対象者の皮膚、又は前記対象者の唇には適用しない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フェイシャルマスク組成物を前記対象者の顔面皮膚に適用する前、前記方法は、さらに、前記対象者の顔を蒸して、前記皮膚の毛穴を開くことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1日に1回又は2回行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象者の頭皮及び毛髪の健康を改善する方法であって、
a)約30~50gの酵母細胞をヤシ油又はオリーブ油と混合し、
b)水を前記酵母オリーブ油混合物に添加して、固練ペーストを形成し、
c)前記ペーストを、対象者の乾燥毛髪及び頭皮に適用し、
d)前記対象者の毛髪をプラスチックラップでカバーし、
e)前記ペーストを前記毛髪と頭皮に少なくとも1時間放置し、
f)前記ペーストを前記毛髪と頭皮から濯ぎ流す、ことを含み、
前記酵母細胞は、Pichia anomala(Wickerhamomyces anomalus)、Pichia kudriavzevii(Wickerhamomyces kudriavzevii)、及びPichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)から選択される、方法。
【請求項12】
ステップb)は、1つ以上の微生物成長副生成物及び/又は1つ以上のコスメティック添加剤及び/又はアジュバントを組成物に添加することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物を毎日適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記毎日の適用を、1週間以上繰り返す、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2017年7月28日出願の米国仮出願第62/538,152号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
外観を良くするための化粧品は、数十年にわたって、人間の日常生活の一部となってきた。コスメ美容における全ての関心のうち、顔面皮膚の健康と外観を向上させることは、最も望まれていることの1つである。顔のケアの選択は、消費者にとって非常に重要なものである。有益な成分や組成物を顔に与えるのに、ローション、スクラブ、洗浄液、トニック、クリーム、スプレー、スプラッシュ、ゲルやスティックといった様々なコスメティックデリバリーシステムがある。特に、コスメティックマスクは、最も一般的で入手可能な便利なデリバリーシステムである。
【0003】
顔、頬、首、耳に適用される様々なマスク製品が処方され、こうした部分の皮膚に特定の恩恵をもたらしている。こうした恩恵としては、エージング、皺の削減、ニキビ処理、トーン、明るみ、引き締め、保湿、滑らか、角質除去その他多くが挙げられる。さらに、マスクは、最大の吸収、バイオアベイラビリティ、皮膚に対する全体的な恩恵のために、人間の体の部位に特異的な位置に適用される。さらに、マスクは、皮膚に吸着し、望ましくない、脂、汚れ、不純物、バクテリア、死細胞をそこから取り除く。例えば、顔で乾燥してから剥がしたり、洗い流したりしてマスクを除去する際に、顔面皮膚のさらなるディープクレンジングがなされる。
【0004】
コスメティック皮膚改善マスク分野における1つの最新動向は、マスク処方に微生物を用いることである。Saccharomyces酵母は、皮膚を生成し、保湿する力があり、健康、美しさ、若々しさの天然源と考えられ、血液循環や代謝の改善を促し、皮膚をフリーラジカルの影響から保護する。酵母は、活性成分の豊かな組み合わせにより、皮膚改善の民間療法として数十年にわたって用いられてきた。特に、酵母は、毒素除去に一役買う物質を向上させるアミノ酸やペプチドを与え、色素沈着のプロセスを遅らせ、コラーゲン生成のメカニズムを活性化する。
【0005】
さらに、酵母は、皮膚の健康に必須の特定のビタミンを与える。例えば、B1(チアミン)は炭水化物、脂肪とタンパク質の代謝、エネルギー、水塩平衡の調整、尚早な皮膚エージングに対抗する。B2(リボフラビン)は、酸化還元反応、体内での他のビタミン合成に重要な役割を演じ、顔の血色やシェーディングを改善する。B3(ニコチンアミド、ナイアシン)は、血管拡張性を有し、脂肪と糖をエネルギーに変えるのを促す。B5(パントテン酸)は、例えば、ウイルス感染に対する免疫防御を増大する抗体を生成するのを助ける。ビオチン(B7又はH)は、循環系を二酸化炭素が巡るのを助け、グルコキナーゼのマキシムに参加し、皮膚細胞再生を刺激するのに重要なアスコルビン酸の活性に必要である。B9(葉酸)は、赤血球細胞の生成に不可欠で、全ての組織の発現と成長に影響し、ニキビの広がりを効果的に止めて繰り返す発疹をブロックする。ビタミンE(トコフェロール)は、細胞膜を、フリーラジカルによる悪影響から保護し、病的過酸化メカニズムを防ぐことによって、エージングプロセスに対抗する。
【0006】
酵母はまた、代謝に積極的に関与し、炎症プロセスを減じ、皮膚を若返らせ、皮下脂肪の皮脂腺の分泌を制御する多量及び微量元素(例えば、ナトリウム、リン、カリウム、鉄、カルシウム、ヨウ素、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、その他ミネラル)も提供する。
【0007】
酵母組成物が有用な他のコスメティック分野は、毛髪及び頭皮の健康である。抜け毛は、一般的な問題であり、毛根が弱まること、酸素不足、フリーラジカルの蓄積、必須栄養素の欠乏が原因である。抜け毛に対抗し、頭皮の健康を改善して、髪の成長を刺激する様々なトリートメントがある。例えば、植毛、薬剤やホルモン治療、薬以外の治療、例えば、UV照射、運動療法、血行再建手術、鍼等がある。市販の製品、例えば、シャンプーや角質除去剤は、無効だったり、使い続けるには高価だったりする。
【0008】
しかしながら、酵母ベースの生成物は、抜け毛を治療するコスト有効な代替として期待される結果と頭皮の健康の改善を示している。毛髪及び頭皮の健康の最も知られた用途としては、ビール酵母やパン酵母(Saccharomyces)を用いるものである。顔面皮膚の健康に有益な酵母により提供される同じビタミン、ミネラル及びタンパク質がまた、毛根を強化し、髪の成長を促し、抜け毛を防ぐのに役立つ。
【0009】
しかしながら、これらの種類の酵母は、脱毛、薄毛、ふけ症といった状態につながる病原菌やバクテリアの制御に無効である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
コスメティック業界は、健康と外観を改善する製品を消費者に提供する数十億ドルの業界である。しかしながら、多くのコスメティックは、人間や環境に害のある成分を含んでおり、さらに、多くのコスメティック製品は当該目的に有効ではない。このように、経済的で、消費者にとって安全かつ有効なコスメティック製品が求められている。特に必要とされているのは、顔面皮膚、頭皮及び毛髪の健康及び外観を改善する組成物及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、微生物ベースの生成物、その製造及び局所化粧組成物における使用方法を提供する。より具体的に、本発明は、微生物ベースの生成物を含む局所化粧組成物を用いて、皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する材料及び方法を提供する。利点を挙げると、本発明の局所組成物及び方法は、環境に優しく、非薬理学的で、費用対効果が高い。
【0012】
好ましい実施形態において、治療有効量の微生物及び/又はその成長副生成物を含む局所化粧組成物が提供される。
【0013】
一実施形態において、局所化粧組成物は、顔面皮膚を改善するためのフェイシャルマスクとして処方される。好ましい実施形態において、フェイシャルマスクは、ピールオフマスクである。マスクはまた、ウォッシュオフマスクやペーパーマスクとして処方することもできる。
【0014】
一実施形態において、局所化粧組成物は、頭皮や毛髪の健康を改善するためのヘアマスクとして処方される。
【0015】
一実施形態において、組成物は、治療有効量の酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含む。さらなる成分、例えば、植物系油、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土、ピロリン酸四ナトリウム及び水も含むことができる。組成物は、酵母エキス(例えば、 Saccharomyces酵母加水分解物や自己融解物)をさらに含むことができる。
【0016】
ある実施形態において、皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する組成物は、微生物により生成される1つ以上の生物界面活性剤をさらに含む。具体的に、特定の実施形態において、組成物は、治療有効量のグリコリピド(例えば、マンノシルエリスリトールリピド(MEL)、ソホロリピド(SLP)、ラムノリピド(RLP)、トレハロースリピド(TL))、リポペプチド(例えば、サーファクチン、リチェニシン、イツリンやフェンギシン)又はこれらの組み合わせを含む。生物界面活性剤は精製したり、粗形態で用いることができる。すなわち、培養した発酵ブロスから分離しないということである。
【0017】
ある実施形態において、局所組成物は、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の外観や健康を、何らかのやり方で、例えば、治癒、補充、回復、保湿、保護及び/又は改善することが知られている治療有効量の1つ以上の溶剤をさらに含む(例えば、レスベラトール、ヒアルロン酸、抗菌剤や抗ニキビ剤)。
【0018】
ある実施形態において、局所組成物は、局所的に許容できるビヒクル、例えば油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン又は水性セラムをさらに含むことができる。
【0019】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、化粧組成物に典型的に含まれている追加のアジュバントや添加剤、例えば、有機溶剤、シリコーン、抗菌剤、安定剤、増粘剤、軟化剤、日焼け止め、保湿剤、コンディショナー又は香料をさらに含むことができる。
【0020】
ある実施形態において、対象者の顔面皮膚の健康及び/又は外観を改善する方法であって、a)非薬用クレンザーを用いて対象者の顔面皮膚をクリーニングして、メイクアップ、汚れ、油を皮膚から除去し、b)酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含むフェイシャルマスク組成物を生成し、c)フェイシャルマスク組成物の薄層を、顔面皮膚に適用し、d)フェイシャルマスク組成物を、数分間、皮膚で乾燥させ、e)皮膚に残ったマスク組成物のあらゆる部分を、温水を使って洗い流す、ことを含む、方法が提供される。
【0021】
一実施形態において、ステップb)は、酵母細胞を植物系油、例えば、ヤシ油やオリーブ油に添加し、水と混合して、固練ペーストを形成することを含む。例えば、一実施形態において、ステップb)は、約30~50gの酵母細胞を天然油、例えば、オリーブ油やヤシ油と混合することを含む。
【0022】
ある特定の実施形態において、方法は、a)非薬用クレンザーを用いて対象者の顔面皮膚をクリーニングして、メイクアップ、汚れ、油を皮膚から除去し、b)酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含むピールオフフェイシャルマスク組成物を生成し、c)フェイシャルマスク組成物の薄層を、顔面皮膚に適用し、d)フェイシャルマスク組成物を、数分間、皮膚で乾燥させ、コンパクトフィルムを形成し、e)フィルムを皮膚から剥がし、f)フェイシャルマスク組成物を、温水を使って洗い流す、ことを含む。
【0023】
ある実施形態において、ステップb)は、酵母細胞を、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土及びピロリン酸四ナトリウムを含む粉末混合物に添加して、酵母粉末混合物を形成し、酵母粉末混合物を、例えば、約1:25の比率で水と混合して、液体又は半液体フェイシャルマスク組成物を形成することを含む。
【0024】
ステップb)は、他の成分又は好適な添加剤及び/又はアジュバントを、組成物、例えば、微生物界面活性剤又は皮膚活性化剤に添加することを含む。
【0025】
本方法は、対象者が顔面皮膚に所望の改善がなされるのに必要な日数、週間又は月にわたって、1日1回か2回適用することができる。本方法をさらに用いて、皮膚症状、例えば、尋常性ざ瘡を処置することができる。
【0026】
ある実施形態において、本発明は、毛髪及び頭皮の健康を改善する方法を提供する。本方法は、皮膚、毛髪又は頭皮の健康及び/又は外観に所望量の改善がなされるのに十分な数分間にわたって、有効量の局所化粧組成物を、頭皮及び毛髪に直接適用することを含む。
【0027】
一実施形態において、毛髪及び頭皮の健康を改善する方法であって、a)約30~50gの酵母細胞をヤシ油又はオリーブ油と混合し、b)水を酵母オリーブ油混合物に添加して、固練ペーストを形成し、c)ペーストを、対象者の乾燥毛髪及び頭皮に適用し、d)対象者の毛髪をプラスチックラップでカバーし、e)ペーストを毛髪と頭皮に少なくとも60分間放置し、f)ペーストを毛髪と頭皮から濯ぎ流す、ことを含む。
【0028】
ステップa)及び/又はb)は、他の成分又は好適な添加剤及び/又はアジュバントを、組成物、例えば、微生物界面活性剤又は皮膚活性化剤に添加することを含む。
【0029】
方法は、対象者が毛髪及び/又は頭皮の健康及び/又は外観に、所望の改善がなされるのに必要な日数、週間又は月にわたって、1日1回か2回適用することができる。
【0030】
本方法は、頭皮状態、例えば、フケや脱毛を処置するのにさらに用いられる。このような用途では、局所組成物は、このような状態が存在する領域に、状態の症状を緩和したり、減少するのに十分な時間にわたって、直接適用される。
【0031】
記載した通り、本発明の組成物は、酵母細胞を含み、生細胞や不活性細胞として組成物に含まれている。「酵母細胞」というときは、「酵母エキス」及び/又はSaccharomyces加水分解物や自己融解物は、含まれない。
【0032】
好ましくは、酵母細胞は、例えば、生物界面活性剤、酵素及び/又はタンパク質のような1つ以上の所望の成長副生成物を生成することができる。ある実施形態において、酵母は、Pichiaクレード酵母、例えば、P. anomala(Wickerhamomyces anomalus)、P. kudriavzevii(Wickerhamomyces kudriavzevii)、及び/又はP. guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)である。ある実施形態において、酵母は、生化学生成酵母、例えば、グリコリピド生物界面活性剤(例えば、 Starmerella、Pseudozyma等)等を生成することのできる酵母である。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明は、皮膚、頭皮、毛髪の健康と外観を改善する本組成物の調製と使用のための家庭用キットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、生化学生成酵母及び/又はその成長副生成物を含む局所化粧組成物を用いて、皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する材料及び方法を提供する。利点を挙げると、本発明の局所組成物及び方法は、環境に優しく、非薬理学的で、費用対効果が高い。
【0035】
好ましい実施形態において、組成物は、治療有効量の酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含む。組成物は、1つ以上の他の成分、例えば、植物系油、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土、ピロリン酸四ナトリウム及び水をさらに含むことができる。組成物は、酵母エキス(例えば、 Saccharomyces酵母加水分解物や自己融解物)をさらに含むことができる。
【0036】
一実施形態において、局所化粧組成物は、顔面皮膚を改善するためのフェイシャルマスクとして処方される。好ましい実施形態において、フェイシャルマスクは、ピールオフマスクである。マスクはまた、ウォッシュオフマスクやペーパーマスクとして処方することもできる。
【0037】
一実施形態において、局所化粧組成物は、頭皮や毛髪の健康を改善するためのヘアマスクとして処方される。
【0038】
記載した通り、本発明の組成物は、酵母細胞を含み、生細胞や不活性細胞として組成物に含まれている。「酵母細胞」というときは、「酵母エキス」及び/又はSaccharomyces加水分解物や自己融解物は、含まれない。
【0039】
好ましくは、酵母細胞は、例えば、生物界面活性剤、酵素及び/又はタンパク質のような1つ以上の所望の成長副生成物を生成することができる。ある実施形態において、酵母は、Pichiaクレード酵母、例えば、P. anomala(Wickerhamomyces anomalus)、P. kudriavzevii(Wickerhamomyces kudriavzevii)、及び/又はP. guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)である。ある実施形態において、酵母は、グリコリピド生物界面活性剤(例えば、 Starmerella、Pseudozyma等)を生成することができる。
【0040】
本発明は、さらに、皮膚、頭皮、毛髪の健康と外観を改善する本組成物の調製と使用のための家庭用キットも提供する。
【0041】
選択された定義
本明細書で用いる、「微生物ベースの組成物」とは、微生物やその他細胞培養物の結果生成された成分を含む組成物を意味する。このように、微生物ベースの組成物は、微生物自体及び/又は微生物成長副生成物(例えば、生物界面活性剤、溶剤及び/又は酵素)を含む。細胞は、植物状態、胞子の形態、又は両方の混合であってよい。細胞は、プランクトン、又はバイオフィルム形態、又は両方の混合であってよい。細胞は、無傷又は溶解していてもよい。細胞は、例えば、組成物1ミリリトル当たり、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010又は1×1011以上の濃度で、成長したブロスに存在する。一実施形態において、微生物ベースの組成物は、細胞が成長し、細胞が除去されたブロスのみを含む。成長副生成物は、ブロスに存在し、例えば、代謝物、細胞膜成分、発現タンパク質及び/又は他の細胞状成分を含む。
【0042】
本発明は、所望の結果を得るために、実際適用されるべき生成物である、「微生物ベースの生成物」をさらに提供する。微生物ベースの生成物は、微生物培養プロセスから収穫された単純な微生物ベースの組成物である。或いは、微生物ベースの生成物は、添加された成分をさらに含む場合もある。追加された成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤、担体(例えば、水や塩溶液)、さらなる微生物成長をサポートする添加栄養素、適用される環境において微生物及び/又は組成物の追跡を促す非栄養素成長因子及び/又は栄養素成長剤が挙げられる。微生物ベースの生成物は、微生物ベースの組成物の混合物であってもよい。微生物ベースの生成物はまた、これらに限られるものではないが、ろ過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等、何らかの方法で、処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0043】
「代謝物」とは、代謝により生成された物質(すなわち、成長副生成物)又は特定の代謝プロセスに参加する必要のある物質を指す。代謝物は、代謝の出発材料(例えば、グルコース)、中間体(例えば、アセチル-CoA)又は最終生成物(例えば、n-ブタノール)である有機化合物である。代謝物としては、これらに限定されるものではないが、生物界面活性剤、酵素、酸、溶剤、ガス、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸及びポリマーが例示される。
【0044】
本明細書で用いる、「単離」又は「精製」という用語は、核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、有機化合物、例えば、小分子、微生物細胞/菌株や宿主細胞のような、生物学的又は天然材料と関連して用いるとき、自然状態で結合した細胞材料等の他の化合物を実質的に含まない材料を意味する。すなわち、こうした材料は、他の化合物なしには自然に生じず、天然材料とは異なる独特な性質を持っている。
【0045】
ある実施形態において、精製化合物は、少なくとも60重量%の当該化合物である。好ましくは、処方は、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは、少なくとも99重量%又は100重量%(w/w)の所望の化合物である。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析等、適切な標準的な方法により測定される。
【0046】
本明細書で用いる、「界面活性剤」は、2つの液体間、液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を下げる表面活性物質を指す。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び/又は分散剤として作用する。生細胞により生成された表面活性物質は、「生物界面活性剤」と呼ばれる。
【0047】
本明細書で用いる「対象者」という用語は、動物、特に、哺乳類を指す。好ましい実施形態において、対象者は、性的区別なく人間である。対象者は、乳児、幼児、子供、青年、成年、中高年を含むいずれの年齢や発達段階にあってよい。
【0048】
本明細書で用いる「化粧料として許容できる」、「局所的に許容できる」及び「皮膚科学的に許容できる」は区別なく用いられ、用いるレベルで人の外皮(皮膚)に適用される特定の成分が安全で無害であることを意味する。一実施形態において、組成物の成分は、一般に安全と認められる(GRAS)と認識される。
【0049】
本明細書で用いる「改善」、「増進」及び「補充」は、皮膚(顔面皮膚を含む)、頭皮や毛髪に関して用いるとき、皮膚、頭皮及び/又は毛髪に恩恵や好ましい変化を与えることである。こうした変化は、皮膚、頭皮及び/又は毛髪の外観ばかりでなく、皮膚、頭皮及び/又は毛髪の健康にも恩恵や好ましい変化である。恩恵や好ましい変化は永続的又は一時的である。
【0050】
「改善」にはまた、皮膚、頭皮、毛髪の何らかの症状を処置することも含む。本明細書で用いる「処置」という用語は、状態や障害のサインや兆候を、ある程度まで、根絶、減少、緩和、改善又は覆すことを指し、状態や障害の、必要条件とはされないが、完全な治癒を含む。処置とは、障害の治癒、部分的な現象又は改善を含む。
【0051】
本明細書で用いる、状態や障害の「予防」とは、状態や障害の特定のサインや兆候の兆しを排除、遅延、未然に防いだり、最小にすることを指す。予防には、必要条件ではないが、絶対的又は完全に、サインや兆候の発生を遅らせる意味もある。予防は、状態や障害の発症の重度を減少したり、状態や障害が、より深刻な状態や障害へ進むのを阻止するものである。
【0052】
本明細書で用いる、「治療有効量」、「治療有効用量」、「有効量」及び「有効用量」という用語は、対象者の状態や障害を処置したり予防できる何か(例えば、化合物、組成物、時間)の量を指すのに用いられる。実際の量は、これらに限られるものではないが、特定の状態や障害、状態や障害の重症度、対象者の体格、年齢や健康状態、投与経路をはじめとする数多くの因子に応じて異なる。
【0053】
本明細書で用いる「皮膚の状態」という用語には、皮膚に影響する人間や動物の状態、障害や疾患が含まれる。このような皮膚の状態としては、これらに限られるものではないが、上皮、真皮(結合組織、皮脂腺、毛包を含む)及び皮下組織(下皮)を含む状態が挙げられる。皮膚の状態の兆候は、例えば、ざ瘡の兆候、色素沈着又は喪失、顔面紅潮、炎症、シワ、乾燥、たるみ、肥厚、スケーリング、傷跡、剥離、発疹、蕁麻疹、水疱、潰瘍、剥皮、抜け毛やその他皮膚の外観における変化が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書に記載した組成物、生成物及び方法を用いて、処置及び/又は防止できる皮膚の状態としては、これらに限られるものではないが、ニキビ、傷、酒さ、毛包炎、癌腫、メラノーマ、口周囲皮膚炎、蜂巣織炎、吹き出物、光障害、皮膚のエージング(例えば、シワや乾燥)、肝斑、傷跡、ループス、乾癬、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、慢性的な傷、床擦れ、毛孔性角化症、脂腺嚢胞、白斑、メリスマ、イボ、炎症性皮膚疾患、炎症後色素沈着過度、角化症、湿疹、乾燥症、心因性掻痒症、扁平苔癬、結節性痒疹、微生物感染、体臭及び汗疹が挙げられる。
【0054】
本明細書で用いる「頭皮の状態」及び「毛髪の状態」という用語には、頭皮及び/又は毛髪に影響する人間や動物の状態、障害や疾患が含まれる。このような状態としては、これらに限られるものではないが、乾燥毛髪又は頭皮、薄毛、脆弱毛、抜け毛、壮年性脱毛症、脱毛、白癬、脂漏性湿疹、脂漏性湿疹、乳痂、ニキビ、アタマジラミ、アタマジラミ、裂毛症、例えば、Malassezia菌が原因のフケ、例えば、Staphylococcus aureusが原因の毛包炎等が挙げられる。
【0055】
移行句「含む」は、「有する」、「含有する」と同義であり、包括的で、制限がなく、追加の、列挙されていない、要素や方法ステップを排除しない。対照的に、移行句「からなる」は、請求項で指定していない要素、ステップや成分を排除する。移行句「から実質的になる」は、請求項の範囲を、指定した材料やステップ、そして請求した発明の、「基本かつ新規な特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。
【0056】
特に断りのない限り、本明細書で用いる「又は」という用語は、包括的と考えられる。特に断りのない限り、本明細書で用いる「1つの」は単数又は複数と考えられる。
【0057】
特に断りのない限り、本明細書で用いる「約」は、通常の許容範囲と考えられ、例えば、平均の2標準偏差以内である。「約」は、表示値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と考えられる。
【0058】
本明細書の可変要素の定義において、化学基の列挙には、単一の基又は列挙した基の組み合わせとしての可変要素の定義が含まれる。本明細書の可変基や態様についての実施形態の列挙には、単一の実施形態や他の実施形態やその一部との組み合わせとしての実施形態が含まれる。
【0059】
本明細書に示した組成物や方法は、本明細書に示した他の組成物や方法の1つ以上と組み合わせることができる。
【0060】
本発明の他の特徴や利点は、好ましい実施形態の説明や請求項より明らかになる。本明細書に挙げた参考文献は参照として組み込まれる。
【0061】
皮膚、頭皮及び毛髪の健康を改善する化粧組成物
本発明は、治療有効量の培養微生物及び/又はその成長副生成物を含む、皮膚、頭皮及び/又は毛髪の健康を改善する局所化粧組成物を提供する。好ましくは、化粧組成物は、フェイシャルマスク又はヘアマスクの形態にある。一実施形態において、組成物は、10%~50%w/w酵母細胞、より好ましくは、20%~40%、さらにより好ましくは、30%w/w含む。
【0062】
「フェイシャルマスク」又は「フェイスマスク」は、除去前のある期間にわたって、顔及び/又は首に適用される組成物である。フェイシャルマスクは、一時的又は永続的に、顔の皮膚に活力を与えたり、補充、治癒、リフレッシュしたり、その他有益なことや処置を行う成分を含む。マスクは、顔で乾燥固化するように設計されていたり、濡れたままやゲル形態のものもある。マスクは、水で濯ぐ、布で拭き取る、顔から剥がすことにより除去することができる。
【0063】
「ヘアマスク」は、毛髪や頭皮に適用して、除去する(例えば、水で濯ぐ)前、ある期間にわたってそのままにしておく、毛髪及び/又は頭皮のコンディショニングや補強トリートメントを指す。典型的に、ヘアマスクは、ディープコンディショニングや保湿成分、オイルやエキス、補強タンパク質、ビタミンその他有益な成分を含む。ヘアマスクは、オイリーからドライ、カラーリング等、あらゆる種類の毛髪の人にとって有用である。
【0064】
一実施形態において、組成物は、治療有効量の生又は不活性酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含む。例えば、植物系油、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土、ピロリン酸四ナトリウム及び水のようなさらなる成分も含むことができる。組成物は、酵母細胞に加え、酵母エキス(例えば、 Saccharomyces酵母加水分解物及び/又は自己融解物)をさらに含む。
【0065】
ある実施形態において、皮膚、毛髪及び頭皮の健康を改善する組成物は、微生物により生成される1つ以上の生物界面活性剤をさらに含む。具体的に、特定の実施形態において、組成物は、治療有効量のグリコリピド(例えば、マンノシルエリスリトールリピド(MEL)、ソホロリピド(SLP)、ラムノリピド(RLP)、トレハロースリピド(TL))、リポペプチド(例えば、サーファクチン、リチェニシン、イツリンやフェンギシン)又はこれらの組み合わせを含む。生物界面活性剤は精製したり、粗形態で用いることができる。すなわち、培養した発酵ブロスから分離しないということである。
【0066】
ある実施形態において、局所組成物は、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の外観や健康を、何らかのやり方で、例えば、治癒、補充、回復、保湿、保護及び/又は改善することが知られている治療有効量の1つ以上の溶剤をさらに含む(例えば、レスベラトール、ヒアルロン酸、抗菌剤や抗ニキビ剤)。
【0067】
一実施形態において、局所化粧組成物は、皮膚の起伏を平らにし、シワを伸ばし、肝斑を減らし、過剰のテカリを排除し、炎症を減少し、毛穴を清浄にし、皮膚の自然な色を回復し、皮膚の張り、膨らみ、弾性を増大することにより、顔面皮膚を改善したり、補充するフェイスマスクとして処方される。
【0068】
好ましい実施形態において、顔面皮膚を改善する組成物は、ピールオフマスクとして処方される。マスクはまた、ウォッシュオフマスクやペーパーマスクとして処方することもできる。
【0069】
特定の実施形態において、顔面皮膚を改善する組成物は、治療有効量の酵母細胞及び/又はその成長副生成物、及び次のうち1つ以上を含む。すなわち、植物系油、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、珪藻土、ピロリン酸四ナトリウム及び水である。これらの成分の量は、例えば、カバーされる顔面皮膚の量、及び所望の顔面皮膚に対する特定の改善に応じて調節することができる。
【0070】
例示の実施形態において、ある用途のフェイシャルマスク組成物は、20~70gの酵母細胞、より好ましくは、30~50g、約50ml~300mlの植物系油、例えば、ヤシ油、オリーブ油、ホホバオイル、ローズヒップ種油、植物油、アラガンオイル又はアボカドオイルを含む。
【0071】
例示の実施形態において、フェイスマスク組成物は、30%w/w酵母細胞、5.0%~15.0%w/wアルギン酸ナトリウム、好ましくは、10.0%w/w、1.0%~5.0%キサンタンガム、好ましくは、2.0%w/w、1.0%~20%w/w、硫酸カルシウム二水和物、好ましくは、10.0%w/w、1.0%~20%w/wソルビトール、好ましくは、10.0%w/w、1.0%~10.0%w/w酸化マグネシウム、好ましくは、4.5%w/w、1.0%~5.0%w/wグアーガム、好ましくは、2.0%w/w、10.0%~50.0%w/w珪藻土、好ましくは、30.0%w/w及び0.5%~5.0%w/wピロリン酸四ナトリウム、好ましくは、1.5%w/wを含むピールオフマスクとして処方することができる。
【0072】
酵母エキスが含まれる場合、約5~約25g、より好ましくは約5~15gが添加される。
【0073】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、頭皮及び毛髪の健康を改善するのに用いることのできるヘアマスクとして処方される。
【0074】
例えば、ヘアマスク組成物は、治療有効量の酵母細胞及び/又はその成長副生成物、及び天然油(植物系油、例えば、オリーブ油、ヤシ油、ホホバオイル、ローズヒップ種油、植物油、アラガンオイル又はアボカドオイル)。組成物は、酵母エキス(例えば、Saccharomyces酵母自己融解物)及び/又は化粧添加剤、例えば、天然毛髪用着色剤をさらに含むことができる。
【0075】
例示の実施形態において、ある用途のマスク組成物は、20~70gの酵母細胞、より好ましくは、30~50g、及び約50ml~300mlもオイルを含む。
【0076】
酵母エキスが含まれている場合、約5~約25g、より好ましくは、約5~15gを添加する。
【0077】
各成分の量は、例えば、カバーされる毛髪や頭皮の量、及び所望の毛髪や頭皮に対する特定の改善に応じて調節することができる。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、微生物及び/又はその成長副生成物を含む。微生物は、例えば、バクテリア、酵母及び/又は菌類を含む。これらの微生物は、天然又は遺伝子組換え微生物であってよい。例えば、微生物は、特異的遺伝子により微生物を変形して、特定の特徴を示すようにしてもよい。微生物はまた、所望の菌株の変異体であってもよい。本明細書で用いる「変異体」は、菌株、遺伝子変異体又は標準微生物のサブタイプを意味し、変異体は、標準微生物に比べて、1つ以上の遺伝的変異(例えば、点突然変異、ミスセンス突然変異、ノンセンス突然変異、欠失、複製、フレームシフト突然変異又はリピート伸長)を有している。突然変異を生成する手順は、微生物業界において周知されている。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的で広く用いられている。
【0079】
好ましい実施形態において、微生物は、酵母又は菌類である。本発明に従って用いるのに好適な酵母及び菌類種としては、Acaulospora、Aspergillus、Aureobasidium(例えば、A. pullulans)、Blakeslea、Candida(例えば、C. albicans、C. apicola)、Debaryomyces(例えば、D. hansenii)、Entomophthora、Fusarium、Hanseniaspora(例えば、H. uvarum)、Hansenula、Issatchenkia、Kluyveromyces、Mortierella、Mucor(例えば、 M. piriformis)、Penicillium、Phythium、Phycomyces、Pichia(例えば、 P. anomala、P. guielliermondii、P. occidentalis、P. kudriavzevii)、Pseudozyma(例えば、P. aphidis)、Rhizopus、Saccharomyces(S. cerevisiae、S. boulardii sequela、S. torula)、Starmerella(例えば、S. bombicola)、Torulopsis、Thraustochytrium、Trichoderma(例えば、T. reesei、T. harzianum、T. virens)、Ustilago(例えば、U. maydis)、Wickerhamomyces(例えば、W. anomalus)、Williopsis及び/又はZygosaccharomyces(例えば、Z. bailii)が挙げられる。
【0080】
さらにより好ましくは、微生物は、「キラー酵母」として知られた酵母である。本明細書で用いる「キラー酵母」は、菌株自体が免疫である毒性タンパク質又は糖タンパク質を特徴とする酵母の菌株を意味する。キラー酵母が分泌する外毒素は、酵母、菌類又はバクテリアの他の菌株を制御することができる。例えば、キラー酵母により制御できる微生物としては、Fusarium及びその他糸状菌が挙げられる。このような酵母としては、これらに限られるものではないが、Wickerhamomyces、Pichia、Hansenula、Hanseniaspora、Ustilago
Debaryomyces、Candida、Cryptococcus、Kluyveromyces、Torulopsis、Williopsis、Zygosaccharomycesその他が挙げられる。
【0081】
特定の実施形態において、微生物は、Pichia anomala(Wickerhamomyces anomalus)、P. kudriavzevii(Wickerhamomyces kudriavzevii)、P. guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)及び/又はこれらの組み合わせを含むPichiaクレード酵母である。
【0082】
微生物は、生、不活性及び/又は乾燥の細胞形態で用いることができる。酵母のこれらの種は、Saccharomyces酵母より優れているため、本発明で用いるのに特に有利である。例えば、これらの種は、微生物細胞壁を破壊可能な加水分解酵素を生成する。
【0083】
Pichia酵母の使用による更なる利点は、食品産業の様々な領域において用いられていることからも明らかなように、人間に対して非病原性であることである。さらに、これらの種類の酵母及びその誘導体の菌株は、人間の皮膚や粘膜に悪影響を生じない(当然のことながら、対象者が酵母アレルギーがなければ)。
【0084】
Pichia anomalaの使用に対する特定の恩恵としては、人間の皮膚と粘膜の多くの菌類を殺すことのできる、広域スペクトル抗真菌性/抗菌性毒、エキソ-ベータ-1,3-グルカナーゼの生成が挙げられる。さらに、この酵母の毒性はまた、皮膚の質を改善するのに有益なエステラーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼも生成することができる。
【0085】
Pichia kudriavzeviiは、例えば、人間の健康に重要な特定の病原体を抑制できるタンパク質を生成する。例えば、 Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Klebsiella spp、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas alcaligenes及びPropionibacterium acnesである。
【0086】
Pichia guilliermondiiは、酵素キチナーゼを生成する。これは、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、フケ、乾燥肌、癜風、酒さ、脂漏性皮膚炎及び真菌性ニキビの原因及び/又は促進剤、Malasseziaをはじめとする、菌類を殺す大きな能力を有している。
【0087】
ある実施形態において、本発明の組成物は、生化学生成微生物の培養により生成される微生物成長副生成物、例えば、生物学的両親媒性分子(例えば、生物界面活性剤)を含む。ある実施形態において、生物学的両親媒性分子は、粗形態で用いられ、分子は、微生物が培養され、精製せずに収集されたブロス中に存在している。粗形態は、例えば、ブロスに少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%の両親媒性分子を含む。ある実施形態において、生物学的両親媒性分子は、培養生成物から精製された。
【0088】
ある実施形態において、組成物は、治療有効量のグリコリピド、例えば、マンノシルエリスリトールリピド(MEL)、ソホロリピド(SLP)、トレハロースリピド(TL)及びラムノリピド(RLP)及び/又はリポペプチド、例えば、サーファクチン、イツリンA及びフェンギシンを含む。一実施形態において、組成物は、これら生物界面活性剤の組み合わせを含む。
【0089】
本発明による生物学的両親媒性分子は、次のうち1つ以上のことができる。すなわち、皮膚にある病原体を殺す、皮膚の免疫システムを調節する、メラノサイトを殺して、入れ替わりの細胞を成長させる、酸化ストレスを減少する、ケラチノサイト及び線維芽細胞の増幅及び機能を高める、例えば、生物界面活性剤と組成物中の1つ以上のその他活性成分の両方の皮膚浸透を高める。このように、治療の恩恵自体を与えつつ、こうした有益な分子はまた、例えば、微生物剤の存在に関連する頭皮及び/又は毛髪の状態を処置する際の、局所組成物の全体の有効性も高めることができる。
【0090】
MELは、主に、酵母属Pseudozymaにより生成されたグリコリピドである。MELは非毒性であり、広い温度及びpH範囲で安定している。さらに、MELは、防腐剤を追加することなく用いることができる。
【0091】
好ましい実施形態において、局所化粧組成物におけるMEL濃度は、組成物全体の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは、0.1重量%~2.0重量%である。
【0092】
SLPは、いくつかの非毒性酵母種(Starmerella bombicolaが最も研究されている)により大量に生成される。Pichia酵母(例えば、P. anomala)の中にもSLPを生成できるものがある。SLPは、広い温度、pH及び塩分条件範囲で、環境適合性があり、生分解性が高く、毒性が低く、選択性及び比活性度が高い。
【0093】
好ましい実施形態において、局所化粧組成物中のSLP濃度は、組成物全体の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは、0.1重量%~2.0重量%である。一実施形態において、局所組成物は、酸性形態のSLPである。
【0094】
RLPは、主に、Pseudomonasバクテリアにより生成されたグリコリピドである。それらは、天然乳化剤であり、本発明により用いて、化粧組成物中の非生物界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム及びラウレス硫酸ナトリウムと置き換えることができる。さらに、RLPを処方すると、保湿を増したり、皮膚を潤したり、シワを減らしたり、皮膚の滑らかを増すことができる。さらに、RLPは、抗菌(グラム陽性)及び抗真菌薬として用いることができる。
【0095】
好ましい実施形態において、局所化粧組成物中のRLP濃度は、組成物全体の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは、0.1重量%~2.0重量%である。
【0096】
トレハロースリピド(TL)は、例えば、バクテリアRhodococcus erythropolisにより生成されたグリコリピドである。TLは、乳化分散特性を有している。それらは、表面活性レベルの増大を示し、特定の抗ウイルス及び抗菌特性を有している。
【0097】
好ましい実施形態において、局所化粧組成物中のTL濃度は、組成物全体の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、好ましくは、0.1重量%~2.0重量%である。
【0098】
サーファクチンは、あるバクテリア菌株、主に、Bacillus subtilisにより生成されたリポペプチドである。サーファクチンは、高レベルの表面活性機能を有し、非常に親水性で、他の生物界面活性剤よりも広範囲の濃度で、透明ゲルを形成する。この生物界面活性剤は、化粧製品、発泡剤及び乳化剤の皮膚浸透剤として作用し得る。さらに、サーファクチンは、有効な抗菌(グラム陰性)、抗真菌及び抗ウイルス性を示す。
【0099】
好ましい実施形態において、局所化粧組成物におけるサーファクチン濃度は、組成物全体の0.001重量%~90重量%、0.01重量%~50重量%、0.05重量%~10重量%、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは、0.01重量%~2.0重量%である。
【0100】
本発明により有用な追加の生物学的両親媒性分子としては、マンノプロテイン、ベータグルカン、バイオ乳化及び表面/界面張力減少性を有するその他代謝物が挙げられる。
【0101】
ある実施形態において、局所化粧組成物中の微生物成長副生成物は、微生物により生成された治療有効量の酵素及び/又はタンパク質を含む。例えば、約0.001重量%~約20重量%、好ましくは、約0.01重量%~約15重量%、又は0.05重量%~約10重量%の1つ以上の酵素及び/又はタンパク質が含まれる。これらに限られるものではないが、皮膚、頭皮及び/又は毛髪の健康を改善するのに有益なエキソ-ベータ-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼが挙げられる。
【0102】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、治療有効量のレスベラトールをさらに含む。ある実施形態において、本局所組成物の総重量に対するレスベラトールの両は、0.001~5.0重量%、より好ましくは、0.05~2.0重量%、最も好ましくは、0.2~1.0重量%である。
【0103】
レスベラトールは、グレープ、ブルーベリー、ラズベリーやマルベリー等の果物の皮にある天然起源の物質である。非常に強い酸化防止剤、シグナル伝達による遺伝子発現の修飾薬、炎症仲介物質の抑制剤とされており、また、多様な機構に同時に作用することにより、ガン予防と治療の両方についての有望なマルチターゲットの抗ガン剤とされている。さらに、レスベラトールは、メラニンの合成を減じるため、独特な漂白能力を有している。
【0104】
一実施形態において、局所化粧組成物はさらに、ポリマー安定剤、例えば、約0.01%~約5.0%、約0.05%~約2.0%、又は約0.5%~約1.0%ポリ(アクリル)酸をさらに含む。ポリ(アクリル)酸は、レスベラトールが結晶化するのを防ぐのを補助する。
【0105】
ある実施形態において、局所組成物は、治療有効量のヒアルロン酸をさらに含む。ヒアルロン酸は、人間の皮膚の線維芽細胞に自然に生成されるものであり、火傷や潰瘍といった皮膚の傷の治癒に、そして、皮膚の保湿剤として用いられる。ヒアルロン酸は、保湿、組織修復、皮膚の構造成分を作るコラーゲンとエラスチンを併せて保持するのを助ける。また、望ましくない微生物に対する保護バリアを形成するのも助ける。
【0106】
一実施形態において、局所組成物は、約0.01重量%~約10.0重量%、約0.05重量%~約8.0重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約3.0重量%のヒアルロン酸を含む。
【0107】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、局所又は化粧料として許容できるビヒクルをさらに含む。
【0108】
化粧料として許容できるビヒクルは、エマルジョンの形態であってもよい。好適なエマルジョンとしては、これらに限られるものではないが、クリーム、ゲル又はマイクロエマルジョンの外観を有する、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水-油-水トリプルエマルジョン等が挙げられる。
【0109】
本明細書で用いる「油」という用語には、特に断りのない限り、シリコーン油が含まれる。エマルジョンは、乳化剤、例えば、ノニオン、アニオン又は両性界面活性剤、又はジェラン(ゲル化剤)を、典型的に、約0.001重量%~約5重量%の量で含む。
【0110】
化粧料として許容できるビヒクルは、水、植物油、鉱油、エステル油、例えば、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピル、エーテル、例えば、ジカプリルエーテル及びジメチルイソソルバイド、アルコール、例えば、エタノール及び色プロパノール、脂肪族アルコール、例えば、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール、イソパラフィン、例えば、イソオクタン、イソドデカン(IDD)及びイソヘキサデカン、シリコーン油、例えば、シクロメチコン、ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー、ポリシロキサン及びその誘導体、好ましくは、PDMSを含む有機変性誘導体、ジメチコンコポリオール及びアモジメチコノール、炭化水素油、例えば、鉱油、ペトロラタム、イソエイコサン及びポリオレフィン、例えば、(水素化)ポリイソブテン、ポリオール、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ろう、例えば、蜜蝋、カルナウバ、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びボタニカルワックス、又はこれらの組み合わせや混合物が挙げられる。水性ビヒクルは、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールを含む、水と混和する1種類以上の溶剤を含む。ビヒクルは、約1重量%~約99重量%、10重量%~約85重量%、25重量%~75重量%、50重量%~約65重量%の組成物を含む。
【0111】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、例えば、有機溶剤、コンディショナー、安定剤、シリコーン、増粘剤、軟化剤、日焼け止め、保湿剤、香料といった一般的に化粧組成物に含まれる追加のコスメティックアジュバントをさらに含む。各成分の量は、活性でも不活性でも化粧品分野で通常用いられ、意図する用途が達成できるものであればよく、通常、組成物の約0.0001%~約25%、約0.001%~約20%であるが、この範囲外であってもよい。成分の性質及び量は、本開示の組成物の生成と機能に適合するものでなければならない。
【0112】
一実施形態において、組成物は、追加の皮膚活性化剤、例えば、これらに限られるものではないが、数例を挙げると、レチノイド、ボタニカルズ、角質溶解剤、落屑剤、ケラチノサイト増殖エンハンサー、コラゲナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、脱色剤、抗炎症剤、ステロイド、抗ニキビ剤、酸化防止剤及び後期糖化生成物(AGE)阻害剤を含んでいてもよい。
【0113】
一実施形態において、組成物は、追加の老化防止成分、これらに限られるものではないが、ボタニカルズ(例えば、Butea frondosaエキス、Aloe veraエキス)、フィトール、フィタン酸、ホスホリピド、シリコーン、ペトロラタム、トリグリセリド、オメガ脂肪酸、レチノイド、ヒドロキシ酸(アルファ-ヒドロキシ酸及びベータ-ヒドロキシ酸)、サリチル酸、アルキルサリチル酸塩、剥脱剤(例えば、グリコール酸、3,6,9-トリオキシウンデカン二酸等)、エストロゲン合成酵素刺激化合物(例えば、カフェイン及び誘導体)、5-アルファ還元活性を阻害することのできる化合物(例えば、リノレン酸、リノール酸、フィナステリド及びこれらの混合物)、並びにバリア機能向上剤(例えば、セラミド、グリセリド、コレステロール及びそのエステル、アルファ-ヒドロキシ及びオメガ-ヒドロキシ脂肪酸及びそのエステル)を含んでいてもよい。
【0114】
例示のレチノイドとしては、これらに限られるものではないが、レチノイン酸(例えば、オールトランス又は9-シス、13-シス)及びその誘導体、レチンアルデヒド、レチノール(ビタミンA)及びそのエステル、例えば、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール及びプロピオン酸レチノール並びにその塩が挙げられる。存在するとき、レチノイドは、典型的に、約0.0001重量%~約5重量%、より典型的には、約0.01重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%の量含まれる。組成物は、アスコルビン酸及び/又はBHTのような酸化防止剤、及び/又はEDTAやその塩のようなキレート化剤をさらに含む(例えば、二ナトリウムEDTA)。
【0115】
他の実施形態において、本発明の局所組成物はまた、次のうち1つ以上を含んでいてもよい。すなわち、皮膚浸透剤、エモリエント、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ペトロラタム、揮発性又は不揮発性シリコーン油(例えば、メチコン、ジメチコン)、エステル油、鉱油及び脂肪酸エステル、保湿剤、例えば、グリセリン、ヘキシレングリコールやカプリリルグリコール、皮膚プランパー、例えば、パルミトイルオリゴペプチド、コラーゲン及び/又はグリコサミノグリカン(GAG)向上剤、日焼け止め、例えば、アボベンゾンやメトキシケイヒ酸オクチル、角質除去剤及び酸化防止剤。
【0116】
好適な角質除去剤としては、例えば、アルファヒドロキシ酸、ベータヒドロキシ酸、シュウ酸、オキサ二酸及びそれらの誘導体、例えば、そのエステル、無水物及び塩が挙げられる。好適なヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、2-ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸及びそれらの誘導体が挙げられる。角質除去剤の一例を挙げるとグリコール酸である。存在するとき、角質除去剤は、組成物の約0.001重量%~約20重量%含まれる。
【0117】
本組成物に用いてよい酸化防止剤としては、フェノール系水酸基を有する化合物、例えば、アスコルビン酸とその誘導体/エステル、ベータカロテン、カテキン、クルクミン、フェルラ酸誘導体(例えば、フェルラ酸エチル、フェルラ酸ナトリウム)、没食子酸誘導体(例えば、 没食子酸プロピル)、リコピン、還元酸、ロスマリン酸、タンニン酸、テトラヒドロクルクミン、トコフェロール及び酢酸トコフェリルをはじめとするその誘導体、尿酸又はこれらの混合物が例示される。その他の好適な酸化防止剤は、還元か非還元形態にある、1つ以上のチオール基(--SH)を有するもの、例えば、グルタチオン、リポ酸、チオグリコール酸及びその他スルフヒドリル化合物である。酸化防止剤は、無機、例えば、重亜硫酸塩、異性重亜硫酸塩、亜硫酸塩又は硫黄を含むその他無機塩及び酸である。酸化防止剤は、個々に又は集合的に、組成物の約0.001%~約10%(w/w)、約0.01%~約5%(w/w)である。
【0118】
非生物界面活性剤もまた、処方に添加することができる。表面活性剤としては、これらに限られるものではないが、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム/アンモニウム及びラウレス硫酸ナトリウム/アンモニウム)、両性のもの(例えば、アンフォアセテート及びアンフォプロピオネート)、スルホサクシネート、アルキルポリグルコシド、ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン(CAPB))、スルタイン、サルコシネート、イセチオネート、タウレート、エトキシル化ソルビタンエステル、アルカノールアミド及びアミノ酸系界面活性剤が例示される。
【0119】
粘度調節剤をまた、組成物に添加することができる。例を挙げると、コカミドDEA、オレアミドDEA、塩化ナトリウム、セルロースポリマー、ポリアクリレート、エトキシル化エステル、アルコール、グリコール、キシレンスルホネート、ポリソルベート20、アルカノールアミド及びセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース)がある。
【0120】
ポリマーもまた、添加することができ、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ポリクオタニウム-10、PEG-120メチルグルコースジオレエート、PEG-150ジステアレート、PEG-150トリステアリン酸ポリグリセリル-2及びPEG-150テトラステアリン酸ペンタエリスリチル。
【0121】
その他添加剤としては、ビタミン、例えば、トコフェロールやアスコルビン酸、ビタミン誘導体、例えば、モノパルミチン酸アスコルビル、酢酸トコフェリル及びビタミンEパルミテート、増粘剤、例えば、ヒドロキシアルキルセルロール、カルボキシメチルセルロース、カルボマー及び植物ゴム、例えば、キサンタンガム、ゲル化剤、例えば、エステル末端ポリエステルアミド、構造剤、顔料、着色剤又は染料、タンパク質、例えば、ラクトフェリン、並びにpH調節剤(クエン酸、エタノールアミン、水酸化ナトリウム等)。
【0122】
組成物は、当業者に知られた他の成分を任意で含んでいてもよく、例えば、これらに限られるものではないが、ミネラル、粘度及び/又はレオロジー調整剤、皮膚清涼化合物、皮膚保護剤、潤滑油、香料、防腐剤、安定剤、パール、クロマライト、マイカ、防腐剤、コンディショナー、麻酔薬、抗アレルギー剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、消毒薬、脱色剤、成膜剤、医薬品、光安定剤、表面平滑化剤及び光散乱剤が挙げられる。
【0123】
前述のものに加えて、本発明の化粧組成物は、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の健康及び/又は外観を改善するための他の化合物を含有していてもよい。好適なコスメティック成分に関しては、内容を参照することにより組み込まれる「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第10版(2004年)、the Cosmetic、Toiletry、and Fragrance Association(CTFA)より出版、2177~2299ページ)に記載されている。様々な物質の量は、美容医療分野で従来から用いられている量であり、組成物の総重量の約0.01%~約20%である。
【0124】
組成物は、広範囲のpHレベル内で処方することができる。一実施形態において、局所組成物のpHは1.0~13.0である。ある実施形態において、局所組成物のpHは、2.0~12.0である。本組成物に好適な他のpH範囲としては、3.5~7.0、又は7.0~10.5が挙げられる。好適なpH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、クエン酸及びトリエタノールアミンを添加して、pHを所望の範囲内にしてもよい。
【0125】
ある実施形態において、本発明は、本組成物の調製と使用のための家庭用キットを提供する。
【0126】
微生物の成長及び微生物成長副生成物の生成
本発明は、微生物を培養し、微生物代謝物及び/又は微生物成長のその他副生成物を生成する方法を提供する。微生物培養システムは、典型的に、浸水培養発酵を用いるが、表面培養及びハイブリッドシステムも用いることができる。本明細書で用いる「発酵」は、制御された条件下での細胞の成長を指す。成長は、好気性又は嫌気性とすることができる。
【0127】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生細胞材料)、細胞外代謝物(例えば、小分子及び排泄タンパク質)、残余栄養素及び/又は細胞内成分(例えば、酵素及びその他タンパク質)の生成のための材料及び方法を提供する。
【0128】
本発明に従って用いる微生物成長容器は、工業用の任意の発酵槽又は培養リアクターとすることができる。一実施形態において、容器は、機能制御/センサを有している、又は機能制御/センサに接続されて、pH、酸素、圧力、温度、撹拌軸動力、湿度、粘度及び/又は微生物密度及び/又は代謝物濃度といった培養プロセスにおいて重要な因子を測定する。
【0129】
さらなる実施形態において、容器はまた、容器内の微生物の成長をモニターすることもできる(例えば、細胞数及び成長段階)。あるいは、デイリーサンプルを容器から取り出して、希釈平板法等、業界で公知の方法により数える。希釈平板は、サンプル中の微生物の数を推定するのに用いる単純な方法である。この方法はまた、異なる環境や処理を比べる指標も提供する。
【0130】
一実施形態において、本方法は、培養物に窒素源を補充することを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素及び/又は塩化アンモニウムとすることができる。これらの窒素源は、独立に、又は2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
方法は、増殖培養物を酸素化する。一実施形態は、緩慢な動きの空気を利用して、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するものである。酸素化空気は、液体を機械的に撹拌するためのインペラと、酸素を液体に溶解するために液体に気泡を供給するための空気スパージャを含む機構により毎日補充される周囲空気である。
【0132】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含む。炭素源は、典型的に、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール及び/又はマルトース、有機酸、例えば、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸及び/又はピルビン酸、アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール及び/又はグリセロール、油脂、例えば、大豆油、米糠油、オリーブ油、コーン油、ごま油及び/又は亜麻仁油等である。これらの炭素源は、独立に、又は2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
一実施形態において、微生物の成長因子及び微量栄養素が培地に含まれる。必要な全てのビタミンを生成できない微生物を成長させるときはこれは特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトといった微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含めてよい。さらに、ビタミン、必須アミノ酸および微量元素の源を、例えば、小麦粉やミール、例えば、コーンスターチの形態で、又は、エキス、例えば、酵母エキス、ポテトエキス、ビーフエキス、大豆エキス、バナナピールエキス等の形態で、又は精製した形態で含めることができる。アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用なものを含めることもできる。
【0134】
一実施形態において、無機塩を含めてもよい。有用な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム及び/又は炭酸ナトリウムである。これらの無機塩は、単体または2つ以上の組み合わせで用いてよい。
【0135】
ある実施形態において、培養方法は、培養プロセスの前及び/又は後に、追加の酸や抗菌剤を、液体培地に添加することをさらに含む。抗菌剤や抗生物質は、培養液を汚染から守るのに用いることができる。さらに、培養中にガスが生成されるときは、泡の形成や堆積を防ぐために、消泡剤も添加してよい。
【0136】
混合物のpHは、対象の微生物に好適なものとする。緩衝剤、pH調節剤、例えば、炭酸塩やリン酸塩を用いて、好ましい値近くにpHを安定化する。金属イオンが高濃度で存在しているときは、液体培地中のキレート化剤の使用が必要となる。
【0137】
微生物の培養及び微生物副生成物の生成のための方法及び機器は、バッチ、準連続又は連続プロセスで実行することができる。
【0138】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約5℃~約100℃、好ましくは、15℃~60℃、より好ましくは、25~50℃で実施される。さらなる実施形態において、培養は、一定の温度で連続して行われる。他の実施形態において、培養は温度を変えて行われる。
【0139】
一実施形態において、本方法及び培養プロセスで用いる機器は、無菌である。リアクター/容器等の培養機器は、殺菌ユニット、例えば、オートクレーブから離れているが、接続されている。培養機器はまた、接種を開始する前に、現場で殺菌する殺菌ユニットも有していてよい。空気は、業界に公知の方法により殺菌される。例えば、周囲空気は、容器に入れる前に、少なくとも1つのフィルタを通過させる。他の実施形態において、培地は、殺菌し、任意で、熱を全く加えなくてもよい。そうすると、低水分活性と低pHが、バクテリアの成長をコントロールするのに役立つ。
【0140】
一実施形態において、本発明は、成長副生成物製造に適した条件下で、本発明の微生物菌株を培養し、任意で、副生成物を精製することにより、微生物成長副生成物(例えば、生物界面活性剤、酵素、タンパク質及び/又はその他代謝物)を製造する方法を提供する。
【0141】
一実施形態において、本発明は、エタノール、乳酸、ベータグルカン、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸及びリピド等の他の微生物代謝物を生成する方法をさらに提供する。本方法により生成される代謝含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。
【0142】
発酵ブロスのバイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l以上である。一実施形態において、ブロスの固体含量は、10g/l~150g/lである。
【0143】
対象の微生物により生成された微生物成長副生成物は、微生物に保持されたり、液体培地に分泌されてもよい。
【0144】
ある実施形態において、成長副生成物は、精製せずに粗形態に保持される。この粗成長副生成物は、成長副生成物と発酵ブロスを含む液体混合物の形態を採り得る。この粗形態溶液は、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、又は約50%の純粋な成長副生成物を含む。
【0145】
他の実施形態において、微生物成長副生成物を製造する方法は、対象微生物成長副生成物を濃縮し精製するステップをさらに含む。さらなる実施形態において、液体培地は、微生物成長副生成物の活性を安定化する化合物を含有していてよい。
【0146】
一実施形態において、微生物培養組成物は全て、培養完了時に(例えば、所望の細胞密度やブロス中の特定の代謝物の密度が得られたら)取り出す。このバッチ手順において、第1のバッチの収穫時に全く新しいバッチを開始する。
【0147】
他の実施形態において、培養生成物の一部のみを任意の時点で取り出す。本実施形態において、生存可能な細胞によるバイオマスは、新たな培養バッチのための接種として容器に残る。取り出された組成物は、細胞を含まないブロスとしたり、細胞を含むことができる。このようにして、準連続システムが形成される。
【0148】
利点を挙げると、本方法は、複雑な機器や高エネルギー消費を必要としない。対象の微生物は、現場で小規模又は大規模に培養でき、培地と混合したままで用いることができる。同様に、微生物代謝物も必要な現場で対象に生成することもできる。
【0149】
微生物ベースの生成物の調製
本発明の1つの微生物ベースの生成物は、単に、微生物を含む発酵ブロス及び/又は微生物により生成された微生物代謝物及び/又は残余の栄養素である。発酵生成物は、抽出や精製なしで直接使用される。
【0150】
しかしながら、所望であれば、文献に記載された標準的な抽出及び/又は精製方法や技術を用いて容易に行うことができる。例えば、ある実施形態において、微生物ベースの生成物は、粗形態か精製形態の微生物成長副生成物を単に含む。特定の実施形態において、副生成物は、本発明により成長した微生物により生成された生物界面活性剤である。
【0151】
微生物成長により得られた微生物及び/又はブロスを、成長容器から取り出し、例えば、管を通して移し、すぐに使用することができる。
【0152】
他の実施形態において、組成物(微生物、ブロス、又は微生物とブロス)は、例えば、意図する用途、適用の考えられる方法、発酵タンクのサイズや、微生物成長設備から使用地への搬送形式を考慮に入れて、適切なサイズの容器に入れることもできる。このように、微生物ベースの組成物を入れる容器は、例えば、1ガロン~1,000ガロン以上である。特定の実施形態において、容器は、2ガロン、5ガロン、25ガロン以上である。
【0153】
ある実施形態において、本発明の組成物には、例えば、生物界面活性剤単体より優れた利点がある。利点としては、次の1つ以上が挙げられる。酵母細胞壁外側表面の一部としての高濃度のマンノタンパク質(マンノタンパク質は、高効率生物乳化剤である)、酵母細胞壁にあるバイオポリマーベータグルカン(他の乳化剤)の存在、培養液中にある、表面張力と界面張力の両方を減じることのできる生物界面活性剤の存在、及びその他代謝物(例えば、乳酸、エタノール等)。
【0154】
微生物ベースの組成物を成長容器から収穫するにあたり、収穫生成物を容器に入れ、管に通す(その他使用のために搬送する)際に、さらなる成分を添加することができる。添加剤としては、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる設備で生成されたその他微生物ベースの組成物、粘度調節剤、保存料、微生物成長のための栄養素、追跡剤、殺虫剤及び意図する用途に特化されたその他成分がある。
【0155】
本発明による処方に含まれてよいその他の好適な添加剤としては、このような処方に通常用いられるものが挙げられる。このような添加剤としては、界面活性剤、乳化剤、潤滑剤、緩衝剤、徐溶解剤、pH調節剤、防腐剤、安定剤及び紫外線防止剤が例示される。
【0156】
一実施形態において、組成物は、有機及びアミノ酸又はその塩をはじめとする緩衝剤をさらに含む。好適な緩衝剤としては、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタル酸塩、グルカル酸塩、タルトロン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン、リシン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニン及びこれらの混合物が挙げられる。リン酸及び亜リン酸又はそれらの塩を用いてもよい。合成緩衝剤は、用いるのに好適であるが、上記の有機及びアミノ酸又はその塩のような天然緩衝剤を用いるのが好ましい。
【0157】
さらなる実施形態において、pH調節剤としては、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸又は重炭酸カリウム、塩酸、硝酸、硫酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0158】
一実施形態において、重炭酸又は炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムや二リン酸ナトリウムといった塩水溶液のような追加の成分を微生物ベースの組成物に含めることができる。
【0159】
利点を挙げると、微生物ベースの生成物は、微生物が成長したブロスを含む。生成物は、例えば、少なくとも、重量基準で、1%、5%、10%、25%、50%、75%又は100%ブロスである。組成物中のバイオマスの量は、重量基準で、例えば、0%~100%であり、間の全てのパーセンテージが含まれる。
【0160】
任意で、組成物は、使用前、保管することができる。保管時間は短い方が好ましい。従って、保管時間は、60日、45日、30日、20日、15日、10日、7日、5日、3日、2日、1日又は12時間未満とする。好ましい実施形態において、生成物中に生存細胞が存在する場合には、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃又は5℃未満といった低温で保管する。一方、生物界面活性剤組成物は、典型的に、周囲温度で保管することができる。
【0161】
一実施形態において、微生物菌株を、不活性(非生存)微生物ベースの組成物を生成する目的で培養する。組成物は、所望の微生物を培養し、顕微溶液化やガンマ放射線(又は、タンパク質変性を生じない業界に公知のその他方法)により微生物を分解し、低温殺菌することにより調製される。一実施形態において、不活性化は、低温殺菌温度(酵母細胞を100%不活性化するのに十分な時間にわたって、65℃~70℃まで)かつ、約10.0までの増加pH値でなされる。これにより、細胞の部分加水分解がなされ、中の栄養成分の中には解放されるものもある。次に、組成物を約7.0~7.5のpHまで中和し、加水分解の様々な生物を混合する。
【0162】
顔面皮膚、頭皮、毛髪の健康及び/又は外観を改善する方法
本発明は、微生物ベースの組成物を利用して、対象者の顔面皮膚、頭皮及び/又は毛髪の健康を改善する方法を提供する。より具体的に、本方法は、本発明の局所化粧組成物を利用して、対象者の顔面皮膚、頭皮及び/又は毛髪の健康及び/又は外観を改善するものである。
【0163】
本方法に従って用いられる酵母細胞は、例えば、Pichia酵母又は他の生化学的に生成される酵母(例えば、Starmerella、Pseudozyma又はWickerhamomyces)。さらに、本発明によるマスク組成物を生成するときは、さらなる成分又は好適な添加剤及び/又はアジュバントを、組成物、例えば、微生物界面活性剤又は皮膚活性化剤に添加することができる。
【0164】
ある実施形態において、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の健康を改善する方法が提供される。本方法は、本発明の有効量の局所コスメティック組成物を、皮膚、毛髪及び/又は頭皮に、皮膚、毛髪又は頭皮の健康及び/又は外観に所望量の改善がなされるのに十分な、数分間(例えば、10分)にわたって、ある一定期間(例えば、1か月~1年以上)、直接適用することを含む。組成物は、指、手、くし、刷毛、スパチュラ、布、スポンジ、コットンを用いて、又は、美容業界に知られたその他の道具や方法を用いて、適用することができる。好ましくは、マスク組成物を対象者の瞼、目の周りの皮膚や唇に適用しないよう注意する。
【0165】
ある実施形態において、対象者の顔面皮膚の健康及び/又は外観を改善する方法であって、
a)非薬用クレンザーを用いて対象者の顔面皮膚をクリーニングして、メイクアップ、汚れ、油を皮膚から除去し、
b)酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含むフェイシャルマスク組成物を生成し、
c)フェイシャルマスク組成物の薄層を、顔面皮膚に適用し、
d)フェイシャルマスク組成物を、数分間、皮膚で乾燥させ、
e)フェイシャルマスク組成物を、温水を使って洗い流す、
ことを含む、方法が提供される。
【0166】
好ましくは、ステップb)は、ステップc)の直前になされる。本実施形態によれば、「直前」とは、5分以下、好ましくは、4、3又は2分以下、より好ましくは、1分以下前を意味する。
【0167】
ステップb)は、酵母細胞を植物系油、例えば、ヤシ油やオリーブ油に添加し、水と混合して、固練ペーストを形成することを含む。例えば、一実施形態において、ステップb)は、約30~50gの酵母細胞を天然油、例えば、オリーブ油やヤシ油と混合することを含む。
【0168】
一実施形態において、ステップd)は、フェイシャルマスク組成物を皮膚上で10~15又は20分乾燥させることを含む。
【0169】
ある実施形態において、対象者は、フェイシャルマスク組成物を適用する前に、顔に蒸気を当てて、皮膚の毛穴を開く。蒸気を当てるのは、公知の安全な手段により、例えば、ボウルに沸騰水を注ぎ、ボウルの上に顔を当てて、蒸気が顔面皮膚に当たるようにする。
【0170】
ある特定の実施形態において、方法は、
a)非薬用クレンザーを用いて対象者の顔面皮膚をクリーニングして、メイクアップ、汚れ、油を皮膚から除去し、
b)酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含むピールオフフェイシャルマスク組成物を生成し、
c)フェイシャルマスク組成物の薄層を、顔面皮膚に適用し、
d)フェイシャルマスク組成物を、数分間、皮膚で乾燥させ、コンパクトフィルムを形成し、
e)フィルムを皮膚から剥がし、
f)フェイシャルマスク組成物を、温水を使って洗い流す、
ことを含み、
ステップb)は、酵母細胞を、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土及びピロリン酸四ナトリウムを含む粉末混合物に添加して、酵母粉末混合物を形成し、酵母粉末混合物を、例えば、約1:25の比率で水と混合して、液体又は半液体フェイシャルマスク組成物を形成することを含む。
【0171】
好ましくは、ステップb)は、ステップc)の直前になされる。本実施形態によれば、「直前」とは、5分以下、好ましくは、4、3又は2分以下、より好ましくは、1分以下前を意味する。
【0172】
一実施形態において、ステップd)は、フェイシャルマスク組成物を皮膚上で10~15又は20分乾燥させることを含む。
【0173】
ある実施形態において、本発明は、頭皮及び毛髪を改善する方法であって、
a)約30~50gの酵母細胞を天然油、例えば、ヤシ油又はオリーブ油と混合して、酵母油混合物を形成し、
b)水を酵母油混合物に添加して、固練ペーストを形成し、
c)ペーストを、対象者の乾燥毛髪及び頭皮に適用し、
d)対象者の毛髪をプラスチックラップでカバーし、
e)ペーストを毛髪と頭皮に少なくとも1時間放置し、
f)ペーストを毛髪と頭皮から濯ぎ流すことを含む。任意で、方法は、乾燥及び/又は毛髪をファッションでスタイリングすることをさらに含むことができる。
【0174】
ステップa)及び/又はb)は、他の成分又は好適な添加剤及び/又はアジュバントを、組成物、例えば、微生物界面活性剤又はヘアコンディショニング剤に添加することを含む。
【0175】
ある実施形態において、局所化粧組成物は、1日当たり数分間、1日当たり数回の繰り返し、そして、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の健康及び/又は外観に所望の改善がなされるのに十分な日数にわたって適用される。
【0176】
方法は、さらに、頭皮状態、例えば、フケや脱毛を処置するのにさらに用いられる。このような用途では、局所組成物は、このような症状が存在する皮膚の領域に、1日当たり数分間、1日当たり数回の繰り返し、そして、症状の外観や関連する兆候の減少がなされるのに十分な日数にわたって直接適用される。
【0177】
所望の効果を達成し、維持するために、皮膚、毛髪及び/又は頭皮の健康を改善する方法は、効果が望ましい限りは、例えば、症状の軽減や根絶がなされるまで、又は、皮膚の好ましい変化が達成されるまで、続けることができる。これには、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間、又は少なくとも8週間以上にわたって、毎日少なくとも1回の局所適用が必要とされる。ある実施形態において、組成物は、1週間以上の期間にわたって、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、1週間に1回というように適用される。局所組成物の適用を中止すると、皮膚、頭皮又は毛髪の健康における所望の改善も減じる。
【0178】
顔、頭皮及び毛髪に加えて、本組成物及び方法はまた、対象者の皮膚、すなわち、外皮のあらゆる部分で用いるのにも好適である。こうした場所としては、これらに限られるものではないが、耳、首、背中、肩、腕、手、胸、腹、臀部、脚及び足がある。
【0179】
一実施形態において、本発明の組成物は、約0.001~約100mg/cm2、より典型的には、約0.01~約20mg/cm2、又は約0.1~約10mg/cm2の量で適用される。
【0180】
実施例
本明細書に記載した実施例及び実施形態は例示のためのみであり、それを考慮して様々な修正や変更が当業者には示唆され、本出願の原理及び範囲に含まれるものとする。
【0181】
実施例1-キット
ある実施形態において、本発明は、本局所化粧微生物ベースの組成物の調製と使用のための便利な家庭用キットを提供する。
【0182】
キットは、フェイスやヘアマスクの作製や適用のための全てのコンポーネントとその解説書が全て入ったボックスやその他パッケージを含む。
【0183】
ボックスは、マスク組成物を形成するのに用いる各コンポーネントのために、それぞれ予め測定したパッケージを含む。1つの密封パッケージは、酵母細胞及び/又はその成長副生成物を含む。これは、例えば、酵母細胞を培養した発酵ブロスを含む液体形態のものである。
【0184】
ピールオフフェイシャルマスクの場合には、2つ目の密封パッケージが、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、ソルビトール、酸化マグネシウム、グアーガム、珪藻土及び/又はピロリン酸四ナトリウムを含む粉末混合物を含有する。任意で、他の密封パッケージが、化粧料として許容できる添加剤、例えば、生物界面活性剤組成物をさらに含むことができ、これらの成分もまた、2つ目の密封パッケージの粉末混合物とすることができる。
【0185】
ヘアマスクの場合には、密封ボトルや容器に、例えば、オリーブ油やヤシ油が含まれる。3つ目の密封パッケージは、酵母エキスを含み、任意で、化粧料として許容できる添加剤、例えば、生物界面活性剤組成物を含む。キットはまた、天然毛髪用着色剤及び/又はくしを含む。
【0186】
キットは、組成物の異なる成分を一緒に混合するための容器又はボウルをさらに含む。水は、水道水が考えられる。キットは混合するためのツールをさらに含むことができる。混合ツールは、多目的とする、つまり、組成物を、対象者の顔、毛髪又は頭皮に適用するのに用いることができる。組成物を適用するのに別個のツールを含めてもよく、手を使ってもよい。キットは、手を清浄に保つために手袋をさらに含んでいてもよい(必要であれば)。
【0187】
キットを用いて、本発明の方法を実施することができる。例えば、キットを用いて局所化粧組成物を調製し、フェイスマスクかヘアマスクの形態として、本方法に従って、対象者の顔、髪又は頭皮に直ぐに適用することができる。
【0188】
実施例2-酵素生成のためのPICHIA酵母の培養及びパーソナルケア組成物における使用
Pichia酵母を用いて、様々なパーソナルケア組成物を生成することができ、その細胞誘導体は、皮膚を汚染する菌類を除去し、皮膚や粘膜表面で成長する病原性酵母を減じ、皮膚や粘膜のバクテリア汚染を減じ、コラーゲンやエラスチンの皮膚細胞での生成を刺激する(いくつか例を挙げたに過ぎない)。
【0189】
Pichia anomala(Wickerhamomyces anomalus)、Pichia kudriavzevii及びPichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)を生成する基本的な培養培地は、全ての3つの種について同一である。培地は、2%グルコース、1%酵母エキス、1%キャノーラ油、5%グリセロール及び50mMクエン酸緩衝液を含む。Pichia guilliermondiiを、キチナーゼの生成のために培養している場合は、0.1%微粒子化キチンを添加する。化粧製品に有機ステータスが望ましい場合には、無機塩を用いず、全ての栄養培地成分は、有機ステータス認証されなければならない。
【0190】
発酵温度は、25~30℃、初期pHは5.5~6.0である。飽和酸素は、15~25%(100%周囲空気の)。合計発酵時間は、72時間までである(静止期に達することにより判断)。
【0191】
濃縮酵素及び/又はタンパク質の生成については、培養液が生成されたら、直ぐに5~10℃まで冷やすと、上澄み液中の活性物質の分解を防ぐことができる。酵母バイオマス及び酵母上澄み液を、遠心分離又は精密ろ過(又はこれらの組み合わせ)により、0.1ミクロンのフィルタを通して分離する。プロセスの温度は10℃以下に保つ。
【0192】
タンパク質分子は、塩析技術を用いて沈殿させることができる。タンパク質は、塩、すなわち、硫酸アンモニウムの濃度を増やすことにより塩析される。タンパク質が、10~20倍(以上、最終パーソナルケア製品に必要な濃度に応じて)濃縮されたら、タンパク質を集め、冷生理食塩水で2~3回洗う(毎回1時間常時混合しながら)。
【0193】
濃縮生成物の酵素活性は、1%アルギン酸ナトリウムの最終濃度までアルギン酸ナトリウムと混合するか、又は0.5%キサンタンガムの最終濃度までキサンタンガムと混合することにより安定化することができる。
【0194】
最終的に得られた基質の抗菌又は抗真菌活性を試験することができる。抗菌性は、Candida酵母(臨床的有意性)及びMalassezia菌類によるウェルプレートアッセイで試験することができる。一方、抗菌活性については、E. coli及びP. aeruginosaの培養液を用いることができる。増殖阻害は、ウェル周囲のミリメートル単位での阻害直径を用いて測定されるものとする。
【0195】
試験が実施されたら、濃縮酵母副生成物、及び残った酵母バイオマスを用いて、様々なパーソナルケア製品を生成することができる。
【0196】
実施例3-生物界面活性剤生成のためのWICKERHAMOMYCES ANOMALUS及びPSEUDOZYMA APHIDISの培養
Wickerhamomyces anomalus酵母を、殺菌されていない状態で、バイオマス及びソホロリピド生成のための800Lの作業用溶液を備えたリアクターで成長させる。空容器衛生法を用いて、内面を2~3%の過酸化水素で処理して、漂白剤及び高圧温水で濯ぐ。必要な成分を全て含む培養培地成分は、85~90℃で浄化するか、3%過酸化水素に溶解する。発酵温度は、25~30℃に保つ。pHは、5.0~5.5で始め、3.0~3.5まで下げて安定化させる。バイオマスの生成は、発酵約48時間でなされる。
【0197】
発酵7~9日後にソホロリピドの堆積が生じる。発酵完了の際、バイオマスを含む培養液及び、適用可能であれば、低濃度のソホロリピドの両方をフェイス及びヘアマスク組成物に添加することができる。
【0198】
Pseudozyma aphidisは、同じ容器で同じ条件下で成長する。ただし、2つの例外がある。最小のpHは5.0~5.5の間に保ち、バイオマス及びマンノシルエリスリトールリピド(MEL)は7~12日で得られる。MELは、本発明の組成物に含めることができる。
【0199】
実施例4-SLP生成のためのSTARMERELLA BOMBICOLAの発酵及び精製
SLP生成のために、Starmerella bombicolaの発酵を、流加発酵で、0.5%酵母エキス、10%グルコース、10%キャノーラ油、1%尿素を含有する栄養培地にて、14リットルのリアクターで行った。初期pHは、5.5であった。培養温度は、25℃であった。
【0200】
最初は、発酵を5日間続け、得られたSLPを取り出した。追加の量の栄養成分をリアクターに入れ、同じ比率を保って、プロセスを続けた。2~3日中に、新たなポーションのSLPを取り出した。
【0201】
各サイクルで得られたSLPの量は、最終生成物の0.5~1.0リットルであった。生成物中のSLPの濃度は、典型的に50%に達した。この準連続技術プロセスは、典型的に2週間続け、その後新たなサイクルを始める。
【0202】
SLPを発酵製品から取り出した後、2ミクロンの細孔径のフィルタを通した、10%溶液のろ過を実施することにより、SLPを精製した。生成物は、化粧組成物を製造するために、冷蔵庫に保管することができる。